JP5381262B2 - 粉末冶金用鉄基粉末およびその流動性改善方法 - Google Patents
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Description
(a)混合粉末を貯蔵用のホッパーへ輸送する途中で生じる振動や落下の影響を受けて、鉄基粉末,副原料粉末,潤滑剤が局部的に偏って分布する、
(b)ホッパーに投入された混合粉末の粒子間に比較的大きい隙間が生じるので、混合粉末の見掛け密度が低下する、
(c)ホッパーの下部に堆積した混合粉末の見掛け密度が時間の経過とともに(すなわち重力の影響を受けて)上昇する一方で上部の見掛け密度は低い状態で貯蔵されるので、ホッパーの上部と下部では混合粉末の見掛け密度が不均一になる
という問題が生じる。このような混合粉末では、均一な強度を有する機械部品を大量に製造することは困難である。
そこで特許文献4には、所定の範囲の粒径を有する鉄粉を主体とする鉄基粉末が開示されている。しかしながら、この技術では、規定された範囲を外れる鉄粉を使用できないので鉄粉の歩留りが低下するばかりでなく、歯車刃先のような薄肉のキャビティーに鉄基粉末を均一かつ十分に充満させることは困難である。
鉄基粉末の素材となる鉄粉あるいは合金鋼粉は、その製法に応じてアトマイズ鉄粉,還元鉄粉等があり、これらの分類では鉄粉は合金鋼粉を含む広い意味で用いられる。
さらに本発明は、粒子径5〜100nmのカーボンブラックを50〜100質量%含有する流動性改善粒子と、合金成分としての黒鉛粉とを、鉄粉の表面に結合剤を介して付着させて、結合剤の添加量を鉄粉100質量部に対して0.05〜0.8質量部の範囲内とし、結合剤による鉄粉の被覆率を10%以上50%以下、かつ流動性改善粒子による結合剤の被覆率を50%以上とする粉末冶金用鉄基粉末の流動性改善方法である。
また本発明では、結合剤がステアリン酸亜鉛,ステアリン酸リチウム,ステアリン酸カルシウム,ステアリン酸モノアミドおよびエチレンビスステアロアミドのうちの1種または2種以上であることが好ましい。鉄粉は、合金成分としてCu,C,NiおよびMoの中から選ばれる1種または2種以上を含有することが好ましく、さらにアトマイズ鉄粉,還元鉄粉,および前記合金成分を部分拡散付着させた鉄粉の中から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。また、鉄粉のうち50質量%未満が結合剤のない鉄粉であることが好ましい。さらに上記結合剤が、鉄粉粒子全体を被覆するのではなく、結合剤による鉄粉の被覆率が50%以下であることが好ましく、10%以上50%以下であることがより好ましい。被覆率は30%以上50%以下が一層好ましい。また本発明では、結合剤で鉄粉の表面を被覆した後に、その結合剤の表面に流動性改善粒子を付着させるが、結合剤の表面に付着した流動性改善粒子の被覆率が50%以上であることが好ましい。なお被覆率は、いずれも被覆された面積が粒子表面の面積に占める比率である。
また鉄粉のうちの50%未満が、結合剤のない鉄粉であることが好ましい。その際、上記した結合剤による単位総カーボン添加量あたり被覆率は、結合剤のない鉄粉を含めた平均的な被覆率とする。
また流動性改善粒子がカーボンブラックに加えて、Al2O3・MgO・2SiO2・xH2O,SiO2 ,TiO2およびFe2O3のうちの1種または2種以上を含有し、かつ流動性改善粒子の平均粒径が5〜500nmの範囲内であることが好ましい。
なお本発明の粉末冶金用鉄基粉末においては、流動性改善粒子を、鉄粉100質量部に対して、0.01〜0.3質量部の割合で混合することが好ましい。
カーボンブラックを主成分とする流動性改善粒子は、この遊離潤滑剤を添加するときに同時に添加する。このとき、結合剤は完全に固化しているが、流動性改善粒子は極めて微細(すなわち粒子径5〜500nm)であるから、ファンデルワールス力や静電力で鉄粉粒子に付着する。なお、流動性改善粒子については後述する。
ここで、結合剤による被覆率は、SEMで鉄粉の粒子1個を観察したときに、図1に示すような鉄粉の表面に付着した結合剤によって被覆された部分の面積率(%)の値を指す。
そこで種々検討を行なった結果、加速電圧を5kV以下、より好ましくは3kV以下での形状強調像により、鉄粉と結合剤の差が非常に明確になることを見出した。
また、鉄粉と鉄粉との間の付着力を低下させるためには、鉄粉の一部を結合剤で被覆し、結合剤で被覆されていない鉄粉を後から添加することも有効である。その結果、結合剤と結合剤が接触する確率を低下させることができる。その際、結合剤による被覆率は、結合剤のない鉄粉を含めた平均的な被覆率とする。
本発明で使用する流動性改善粒子は、鉄粉の流動性を改善する効果を有する微細な粉末であり、カーボンブラックを50〜100質量%含有する。カーボンブラックはトナーや塗料で使用されるものであり、その粒子径は5〜100nmの範囲内とする。また、結合剤の表面に付着した流動性改善粒子の被覆率は50%以上である。これは、結合剤と結合剤との間の付着力を低下させるためである。結合剤の表面に付着した流動性改善粒子の被覆率の上限は、特に限定する必要はなく、100%であっても問題はない。ただし、成形時の抜出力が増大する懸念を回避する観点から、90%以下に限定しても良い。
上記のSEM観察において、種々検討を行なった結果、鉄粉表面に付着した結合剤の表面を被覆するカーボンブラックの割合を求める際には、加速電圧を0.1〜2kVとすることが必要で、特に0.1〜1kVの範囲で鉄粉,結合剤,カーボンブラックを識別するためのコントラストが最も明瞭に得られることを見出した。このとき用いる検出器は、形状強調像が得られる二次電子検出器よりも物質強調像が得られるInlens検出器であることが好ましい。
カーボンブラックに加えて流動性改善粒子に添加される成分は、
(A)Al2O3・MgO・2SiO2・xH2O(ケイ酸アルミン酸マグネシウム),SiO2 ,TiO2およびFe2O3のうちの1種または2種以上、
(B)ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびポリエチレン(PE)のうちの1種または2種、
の2種類に大別される。
一般に金属酸化物は、焼結の際に鉄粉粒子同士の焼結を阻害し、焼結体の強度低下を招く。したがって流動性改善粒子としては、金属酸化物(たとえばAl2O3・MgO・2SiO2・xH2O,SiO2 ,TiO2 ,Fe2O3等)の添加量をできるだけ低減することが好ましい。また、有機物(たとえばPMMA,PE等)は高価であるから、有機物の添加量をできるだけ低減することが好ましい。このような理由でカーボンブラックの含有量は50〜100質量%の範囲内とする。
これらの流動性改善粒子の平均粒径が5nm未満では、鉄粉表面の凹凸や鉄粉表面に存在する潤滑剤中に埋没する可能性がある。また、これらの微粒子は凝集して存在するが、細か過ぎると凝集体のまま鉄粉表面に付着することになり、好ましくない。また一般に微粒子の製造コストは、細かくなるほど高くなる。一方、500nmを超えると、初めから鉄粉表面に存在する凹凸の曲率と同じになり、わざわざこれらの粒子を付着させる意味がなくなる。特に(A)の流動性改善粒子は、焼結時に分解することなく、そのまま焼結体中に存在する。これらは鋼中介在物と見ることもでき、その大きさが大きすぎると、焼結体の強度を落とすことになる。これらの理由から、流動性改善粒子の平均粒径は5〜500nmの範囲内が好ましい。より好ましくは100nm以下である。なお、流動性改善粒子の粒径は、カーボンブラックについては電子顕微鏡観察による算術平均で求めた値を用い、上記(A)についてはBET比表面積により粒子形状を球形として求めた値を用い、また上記(B)についてはエタノールを分散媒としたマイクロトラック法により測定した値を用いるものとする。
本発明のもう一つの形態として、結合剤のない鉄粉が含まれる鉄基粉末がある。これは上記した観点に基づくもので、鉄粉のうち50質量%未満が結合剤のない鉄粉である。表面に結合剤のない鉄粉は、50質量%以上で成形時に抜出力が高くなり、場合によっては型かじり現象を生じたり、成形体に欠損を生じる惧れがある。
このような鉄基粉末は、偏析防止処理を施した鉄粉に、偏析防止処理を施していない鉄粉を混合することで得られる。添加に好適な鉄粉の平均粒径の範囲は、上記の一般の鉄粉と同じである。
Al2O3・MgO・2SiO2・xH2Oで表わされる物質は、ケイ酸アルミン酸マグネシウムと呼ばれ、xは複合化合物が安定性を示すいずれの数であっても良いが、通常は1〜2程度と言われている。
このようにして得られた鉄基粉末の充填性を、図3に示す充填試験機にて評価した。その評価は、容器7内に設けた長さ20mm,深さ40mm,幅0.5mmのキャビティー6内に鉄基粉末を充填して行なった。鉄基粉末5を充填した箱体4(長さ60mm,高さ50mm,幅25mm)は図3中の矢印の方向に移動し、その移動速度は200mm/秒,キャビティー6上での箱体4の保持時間は0.5秒とした。充填した後の充填密度(充填重量/キャビティー体積)を充填前の見掛け密度の百分率で表わしたものを充填率(充填率100%は完全充填を意味する)とし、同じ試験を10回繰り返して、その充填バラツキを充填率の標準偏差で表わした。
参考例3,4は、結合剤の被覆率が50%を超える例である。これらの発明例も、他の発明例に比べて充填バラツキが大きくなった。
発明例10,11,13,14,および結合剤による被覆率が10%未満の参考例1では、表1に示すステアリン酸アミドとエチレンビスステアロアミドを結合剤として、表1,2に示す鉄粉(ただし表1に示された量より5質量%少ない量、すなわち92.4質量%),Cu粉,黒鉛粉をヘンシェルタイプの高速ミキサーで加熱混合した。その後、60℃まで冷却した後、結合剤の付着していない鉄粉(5質量%相当)を、表1に示す遊離潤滑剤と表2に示す流動性改善粒子と共に投入し、混合した。得られた鉄基粉末について、発明例1〜9,12と同様の調査を行なった。その結果を表2に示す。
なお発明例においては、成形体の圧粉密度は686MPa成形時に6.9〜7.1Mg/m3、そのときの抜出力は10〜15MPaであり、いずれも問題のない範囲であった。
なお、各比較例の充填試験,引張試験,シャルピー試験は、発明例と同じであるから説明を省略する。
これに対して、比較例1は充填バラツキが大きく、比較例2は引張強度とシャルピー衝撃値が低かった。
2 結合剤,黒鉛,カーボンブラックで被覆された部位
3 カーボンブラックの粒子
4 箱体
5 鉄基粉末
6 キャビティー
7 容器
Claims (12)
- 粒子径5〜100nmのカーボンブラックを50〜100質量%含有する流動性改善粒子と、合金成分としての黒鉛粉とを、鉄粉の表面に結合剤を介して付着させてなり、該結合剤の添加量が前記鉄粉100質量部に対して0.05〜0.8質量部の範囲内であり、前記結合剤による前記鉄粉の被覆率が10%以上50%以下、かつ前記流動性改善粒子による前記結合剤の被覆率が50%以上であることを特徴とする粉末冶金用鉄基粉末。
- 前記結合剤が、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸モノアミドおよびエチレンビスステアロアミドのうちの1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の粉末冶金用鉄基粉末。
- 前記鉄基粉末が、合金成分としてCu、C、NiおよびMoの中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の粉末冶金用鉄基粉末。
- 前記鉄粉が、アトマイズ鉄粉、還元鉄粉、および前記合金成分を部分拡散付着させた鉄粉の中から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉末冶金用鉄基粉末。
- 前記鉄粉のうち50質量%未満が、結合剤のない鉄粉であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉末冶金用鉄基粉末。
- 前記流動性改善粒子が前記カーボンブラックに加えて、Al2O3・MgO・2SiO2・xH2O、SiO2 、TiO2およびFe2O3のうちの1種または2種以上を含有し、かつ前記流動性改善粒子の平均粒径が5〜500nmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の粉末冶金用鉄基粉末。
- 前記流動性改善粒子を、前記鉄粉100質量部に対して、0.01〜0.3質量部の割合で混合することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の粉末冶金用鉄基粉末。
- 前記流動性改善粒子が前記カーボンブラックに加えて、PMMAおよび/またはPEを含有し、かつ前記流動性改善粒子の平均粒径が5〜500nmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の粉末冶金用鉄基粉末。
- 粒子径5〜100nmのカーボンブラックを50〜100質量%含有する流動性改善粒子と、合金成分としての黒鉛粉とを、鉄粉の表面に結合剤を介して付着させて、該結合剤の添加量を前記鉄粉100質量部に対して0.05〜0.8質量部の範囲内とし、前記結合剤による前記鉄粉の被覆率を10%以上50%以下、かつ前記流動性改善粒子による前記結合剤の被覆率を50%以上とすることを特徴とする粉末冶金用鉄基粉末の流動性改善方法。
- 前記流動性改善粒子が前記カーボンブラックに加えて、Al2O3・MgO・2SiO2・xH2O、SiO2 、TiO2およびFe2O3のうちの1種または2種以上を含有し、かつ前記流動性改善粒子の平均粒径を5〜500nmの範囲内とすることを特徴とする請求項9に記載の粉末冶金用鉄基粉末の流動性改善方法。
- 前記流動性改善粒子を、前記鉄粉100質量部に対して、0.01〜0.3質量部の割合で混合することを特徴とする請求項9または10に記載の粉末冶金用鉄基粉末の流動性改善方法。
- 前記流動性改善粒子に前記カーボンブラックに加えて、PMMAおよび/またはPEを含有させ、かつ前記流動性改善粒子の平均粒径を5〜500nmの範囲内とすることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の粉末冶金用鉄基粉末の流動性改善方法。
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