JP5750076B2 - 成形用粉末およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高流動性や充填安定性を実現できる成形用粉末とその製造方法に関する。
複雑な形状の金属部材は、粉末冶金法により製造すると、切削加工等を大幅に削減でき、製造コストの低減を図れる。粉末冶金法は、通常、改質粉末や内部潤滑剤等を適宜含む金属粉末を、金型のキャビティへ充填し、それを加圧成形して得られた成形体を、加熱して焼結体を得ることによりなされる。
このような粉末冶金法による生産性向上や生産コスト低減を図る場合、品質(例えば、質量、密度、強度等)を安定化させつつ、金型キャビティへの粉末充填性(充填速度、充填密度等)を向上させることが重要となる。これに関連した提案が、例えば下記の特許文献にある。
特許4832433号公報 特表2009−522447号公報 特開2010−53437号公報
特許文献1は、鉄粉等と結合剤(例えばポリエチレン)および潤滑剤(例えばエチレンビスステアルアミド)とを、結合剤の融点以上で潤滑剤の融点未満の温度で加熱混合した後、その結合剤の融点未満まで冷却して、比表面積が100m/gより大きく粒径が100nmより小さいカーボンブラック(CB)を添加してなる粉末冶金組成物を提案している。この粉末冶金組成物は流動性等に優れるものの、最速でも20.8(秒/50g)の流動度に留まっている。
特許文献2では、結合剤として脂肪族アルコールを用い、潤滑剤としてC18〜C22第一級アミド(ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドおよびベヘン酸アミドの複合物)を用いているが、基本的な内容は特許文献1と同様である。しかも特許文献2の場合は、特許文献1の場合よりも流動度が劣り最速でも23.2(秒/50g)に留まっている。
特許文献3も、結合剤の融点以上で加熱混合を行っている点で特許文献1または特許文献2と同様である。但し、特許文献3では、加熱後に結合剤が固化した段階で、CBの他に遊離潤滑剤(ステアリン酸亜鉛)も加えている。このような遊離潤滑剤の添加は流動性を低下させ好ましくない。事実、特許文献3には具体的な流動度に関する記載がされていない。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、従来とは異なる調製方法により、さらなる高流動性や充填安定性を実現できる成形用粉末およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、内部潤滑剤が完全に溶融する状態で、内部潤滑剤と鉄基粉末等とを混合すると共に、その冷却後の混合粉末へ、従来とは特性の異なるカーボンブラックを添加することにより、流動度が従来よりも遥かに優れた超高流動性の成形用粉末を得ることに成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《成形用粉末》
(1)本発明の成形用粉末は、鉄基粉末を含む原料粉末と、該原料粉末中に混在した内部潤滑剤およびカーボンブラックとからなり、金型のキャビティへ充填された後に加圧成形されて成形体となる成形用粉末であって、前記内部潤滑剤は、脂肪酸アミドと高級アルコール、エステルワックス、アミドワックス、金属石鹸の1種以上との複合潤滑剤からなり、前記成形用粉末全体を100質量%(単に「%」という。)としたときに合計で0.2〜0.9%含まれ、前記原料粉末と完全溶融状態で混合されて該原料粉末の構成粒子の表面に付着しており、前記カーボンブラックは、粒径が50nm以下でBET法により求まる比表面積が95m/g以下であり、前記成形用粉末全体を100%としたときに0.005〜0.05%含まれ、前記完全溶融状態後に固化した複合潤滑剤の表面に付着しており、前記キャビティへの充填速度を指標する流動度が20秒/50g以下であることを特徴とする。
(2)本発明の成形用粉末は、著しく高い流動性や充填安定性を発現する。このため本発明の成形用粉末を用いると、金型キャビティへの粉末充填時間が短縮されると共に、キャビティに充填された粉末の重量変動も非常に少なくなり、高品質な成形体や焼結体を歩留まりよく効率的に生産できるようになる。
(3)本発明の成形用粉末が、そのような優れた特性を発現する理由は定かではないが、現状では次のように考えられる。本発明に係る内部潤滑剤(複合潤滑剤)は、完全に溶融した状態で鉄基粉末と混合される(これを適宜「完全溶融混合」という。)。このため内部潤滑剤は、混合される鉄基粉末の構成粒子(鉄基粒子)の表面と接触し易くなり、特に、鉄基粒子の表面にある小さな凹部へも流入し易くなる。これにより見掛け上、鉄基粒子は、比較的滑らかな表面性状を有し、球状に近くなる。なお、原料粉末が鉄基粉末以外にGr等の強化粉末やその他の改質粉末等を含む場合、これら粉末は内部潤滑剤と共に鉄基粒子の凹部等に堆留、付着等する。つまり原料粉末が鉄基粉末以外を含む場合でも、見掛け上、本発明の成形用粉末の構成粒子は球状に近くなり得る。
このような傾向は、内部潤滑剤が上述した複合潤滑剤である場合に限らず、脂肪酸アミド単体のみからなる場合でも同様に生じると考えられる。しかし、理由は定かではないが、内部潤滑剤が上述したような特定の二種以上の複合潤滑剤からなる場合に、その傾向が顕著に現れた。
さらに本発明の成形用粉末は、その完全溶融混合後に固化した複合潤滑剤表面上にも、特異なカーボンブラック(CB)が付着している。一般的にCBが流動化剤となり得ることは、前述した特許文献等1にも記載があり、公知である。しかし、CBはその比表面積や粒形の相違によって多種多様であり、用いるCBの特性により、成形用粉末の充填特性も大きく影響を受けることが新たにわかった。
例えば、これまで流動化剤として一般的に用いられてきたCBは、特許文献1等にもあるように、比表面積が100m/g超で比較的大きいものであった。しかし本発明では逆に、従来のCBと異なり、比表面積が95m/g以下と比較的小さいCBを用いている。これにより、本発明の成形用粉末は流動性や充填安定性が従来よりもさらに向上するようになったと考えられるが、その詳細な機構は現状定かではない。
但し、本発明に係るCBは、完全溶融混合後の固化した複合潤滑剤の表面に選択的に付着することがわかっている。原料粉末が強化粉末等を含む場合は、その構成粒子の表面にもCBが選択的に付着している。つまり、本発明に係るCBは、成形用粉末の流動性等を阻害し易い内部潤滑剤等の表面に効率的に付着している。このようなCBの粒子表面における分散状態により、本発明の成形用粉末の構成粒子は、表面に付着した複合潤滑剤等同士が直接接触したり、相互に結着したりすることが抑止され、非常に高い流動性や充填安定性等が発現されるに至ったと考えられる。
《成形用粉末の製造方法》
(1)本発明は上述した成形用粉末としてのみならず、その製造方法としても把握できる。すなわち本発明は、鉄基粉末を含む原料粉末と内部潤滑剤を混合した第一混合粉末を得る第一混合工程と、該第一混合粉末とカーボンブラックを混合した第二混合粉末を得る第二混合工程とからなり、金型のキャビティへ充填された後に加圧成形されて成形体となる成形用粉末の製造方法であって、前記第一混合工程は、脂肪酸アミドと高級アルコール、エステルワックス、アミドワックス、金属石鹸の1種以上とからなり前記成形用粉末全体を100質量%(単に「%」という。)としたときに合計で0.2〜0.9%含まれる複合潤滑剤を、完全溶融状態で前記原料粉末と混合して該原料粉末の構成粒子の表面に付着させる工程であり、前記第二混合工程は、粒径が50nm以下でBET法により求まる比表面積が95m/g以下であり前記成形用粉末全体を100%としたときに0.005〜0.05%含まれるカーボンブラックを、該完全溶融状態後に固化した前記複合潤滑剤の表面に付着させる工程であり、前記キャビティへの充填速度を指標する流動度が20秒/50g以下となる成形用粉末が得られることを特徴とする成形用粉末の製造方法としても把握できる。
(2)ここで完全溶融状態となっているか否かは、複合潤滑剤を構成する潤滑剤の内で最も高い融点(適宜「最高融点」という。)以上の温度(第一温度)で第一混合工程が行われてるか否かで判断する。また複合潤滑剤が固化しているか否かは、複合潤滑剤を構成する潤滑剤の内で最も低い融点(適宜「最低融点」という。)未満の温度(第二温度)で第二混合工程が行われてるか否かで判断する。
《成形体または焼結体》
(1)本発明は、上述した成形用粉末やその製造方法のみならず、その成形用粉末を用いて製作された成形体、さらにはその成形体を焼結させた焼結体としても把握できる。
(2)成形体は、上記の最低融点未満の温度(第三温度)で成形用粉末を加圧成形してなると好ましい。これにより成形中も複合潤滑剤が全体的に均一に分散された状態が維持され、構成粒子間の摩擦等が低減されて、均質的で高密度な成形体が得られ易くなる。
なお、本発明に係る複合潤滑剤やCBは、鉄基粉末の粒子表面に一時的に付着等しているに過ぎない。従って、加圧成形時、複合潤滑剤は当然に流動し、鉄基粒子が元々有していた表面性状(表面の凹凸)が出現し、鉄基粒子間にはアンカー効果等が作用して、適度な抗折力をもつ成形体が得られるようになる。
《その他》
(1)本発明に係る複合潤滑剤は、構成粒子の表層部分を局所的に観察した際に、上述した二種以上の各潤滑剤が均一的な融合状態となっている場合の他、異なる潤滑剤が偏在的(例えば多層状等)となっていてもよい。また原料粉末と混合される二種以上の潤滑剤は、同時に混合されてもよいし、個別に順次混合されてもよい。例えば、高級アルコール等を先に混合して下層を形成した後に、脂肪酸アミドを混合して表層を形成して、多層状となった複合潤滑剤が鉄基粒子の表面に付着した状態でもよい。
(2)本明細書でいう「流動性」は、例えば、成形用粉末をキャビティへ充填するときの速度(充填速度)を指標する流動度(FR)により評価される。また「充填安定性」は、例えば、キャビティへ充填した際の粉末密度やその変動量を指標する見掛密度(AD)やタップ密度(TD)、それらに基づいて算出される圧縮率(Cp)やHausner比(HR)により評価される。なお本明細書では、流動性と充填安定性を併せて適宜「流動性」という。
(3)本発明の成形用粉末は、その充填特性が特に限定されないが、例えば、FR(JIS Z2502に準拠)が21秒/50g以下、20秒/50g以下さらには19秒/50g以下であると好ましい。またCpが18%以下、17%以下さらには16%以下であると好ましい。さらにHRが1.21以下、1.20以下さらには1.19以下であると好ましい。
(4)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
試料1の成形用粉末に係るSEM写真である。 試料7の成形用粉末に係るSEM写真である。 試料22の成形用粉末に係るFE−SEM写真である。 その拡大FE−SEM写真(1万倍)である。 その拡大FE−SEM写真(3万倍)である。 CB添加量と流動度の関係を示すグラフである。 CB添加量と見掛密度の関係を示すグラフである。 CB添加量と流動度の関係を示すグラフである。 CB添加量と見掛密度の関係を示すグラフである。
本明細書で説明する内容は、本発明の成形用粉末のみならず、それを用いた成形体や焼結体、それらの製造方法にも適宜該当し得る。方法に関する記載内容は、プロダクトバイプロセスとして理解すれば物に関する構成要素ともなり得る。本明細書中から任意に選択した一以上の記載内容を上述した本発明に自在に付加し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《原料粉末》
(1)鉄基粉末
鉄基粉末は、鉄(Fe)を主成分とする鉄基粒子から構成される。鉄基粒子の組成は、純鉄でも鉄合金でもよい。また鉄基粉末は、単種の粉末からなってもよいが、組成、製法、粒形分布等の異なる二種以上の素粉末を組み合わせたものでもよい。例えば、鉄基粉末は、鉄合金または非鉄合金からなる合金粉末と純鉄粉末の混合粉末でもよいし、製法または粒子形状(粒形)の異なる二種以上のアトマイズ粉末(例えば水アトマイズ粉末とガスアトマイズ粉末)の混合粉末でもよい。なお、水アトマイズ粉末は、適度な凹凸状表面を有する粒子が多いため、充填特性と成形体の抗折力との両立を図り易い。
(2)強化粉末・改質粉末
原料粉末は、焼結体を強化する強化元素または改質する改質元素を含むと好ましい。強化される特性として、例えば、強度、伸び、靱性等性があり、改質される特性として、例えば、焼結性、寸法安定性、切削性等がある。なお、両者を厳密に区別する必要はない。このような元素として、例えば、C、Cu、Ni、Cr、Mn、Si、V、Mo、P、S、W等がある。これらの元素は、上記の鉄基粉末に含まれてもよいが、別粉末(強化粉末または改質粉末)として原料粉末中に混在させると組成調整が容易となる。このような粉末として、例えば、グラファイト(Gr)粉末、Cu粉末、Cu合金粉末、Fe−Mn−Si系合金粉末、Fe−P粉末等がある。
(3)粒度分布
本発明の成形用粉末に係る充填性は、粒度分布による影響をあまり受けない。もっとも、粉末自体の取扱性や入手性、成形体の抗折力の確保等の観点から、本発明の鉄基粉末は、粒径が212μm以下の鉄基粒子からなると好ましい。なお、本明細書でいう粒径(粒度)は、JIS Z 8801に準拠した篩分けにより規定した。例えば、粒径が212μm以下の鉄基粒子とは、公称目開き212μmの篩を通過した鉄基粒子という意味である。
《内部潤滑剤》
本発明に係る内部潤滑剤は、脂肪酸アミドと、高級アルコール、エステルワックス、アミドワックス、金属石鹸の1種以上との複合潤滑剤からなる。脂肪酸アミドは、例えば、ステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等の一種以上である。高級アルコールは、例えば、ベヘニルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、リグノセリルアルコール等の一種以上である。2なお、高級アルコールは、複合潤滑剤全体を100%としたときに15〜60%さらには5〜45%であると好ましい。
エステルワックスは、例えば、脂肪酸アルキルエステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステール等の一種以上である。金属石鹸は、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の一種以上である。
内部潤滑剤は、成形用粉末全体を100質量%(単に「%」という。)としたときに合計で0.2〜0.9%さらには0.15〜0.7%含まれると好ましい。内部潤滑剤が過少でも過多でも、充填特性の向上を図れない。勿論、内部潤滑剤が過少になると、鉄基粒子間の潤滑性や鉄基粒子と金型の潤滑性が確保できず成形性が低下し、過多になると、成形体密度ひいては焼結体密度が低下して好ましくない。
《カーボンブラック》
本発明に係るCBは、粒径が50nm以下さらには40nm以下であると好ましい。粒径が過大では、偏在し易くなり、成形用粉末の構成粒子の被覆率が小さくなり、好ましくない。粒径の下限値は問わないが、通常、CBの粒径は10nm以上である。なお、CBの粒径は透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると球状の粒子がいくつか融着している。この球状の粒子1コの径を測定することにより特定する。
本発明に係るCBは、比表面積が95m/g以下さらには90m/g以下であると好ましい。比表面積が過大では、凝集が激しく、均一分散し難いため好ましくない。比表面積の下限値は問わないが、通常、CBの比表面積は50m/g以上である。なお、CBの比表面積はBET法により求まる。
本発明に係るCBは、成形用粉末全体を100%としたときに0.005〜0.05%さらには0.01〜0.04%含まれると好ましい。CBが過少では成形用粉末の充填特性の向上を図れない。CBが過多では焼結体に膨れ等が生じ易くなり好ましくない。
《成形と焼結》
本発明の成形用粉末は、成形時の条件を問わない。冷間成形されても温間成形されてもよいし、印加される成形圧力も一般的な500〜850MPaでもよいし、それを超えるような超高圧でもよい。用いる潤滑剤の融点にも依るが、金型温度が60〜100℃となる温間成形を行うことにより、成形体ひいては焼結体の高密度化も図れ、高特性の焼結部品が得られる。なお、本発明の成形用粉末は内部潤滑剤を含むため必要ないが、本発明は金型潤滑成形される場合を除くものではない。
焼結条件も問わないが、一般的には、窒素雰囲気等の酸化防止雰囲気中で、1050〜1250℃、20〜120分間加熱されて焼結される。また焼結体は、適宜、焼鈍、焼準、時効、調質(焼き入れ、焼き戻し)、浸炭、窒化等の熱処理が施されてもよい。
《用途》
本発明の成形用粉末により得られる成形体や焼結体は、その形態や用途を問わない。焼結体の用途例として、自動車分野では、各種プーリー、変速機のシンクロハブ、エンジンのコンロッド、ハブスリーブ、スプロケット、リングギヤ、パーキングギヤ、ピニオンギヤ等がある。その他、サンギヤ、ドライブギヤ、ドリブンギヤ、リダクションギヤ等もある。
実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
《第一実施例:試料1〜28》
〈試料の製造〉
(1)原料
先ず原料粉末として、鉄基粉末である純鉄粉(ヘガネスAB社製ASC100.29/−212μm)およびFe−10質量%Cu合金粉(ヘガネスAB社製Distaloy ACu/−212μm)と、強化粉末である黒鉛粉末(Gr)(日本黒鉛工業株式会社製J−CPB/平均粒径:5μm)を用意した。なお、鉄基粉末はいずれも水アトマイズ粉末である。
次に、内部潤滑剤として表1に示す7種類を用意した。さらに、カーボンブラック(CB)粉末(東海カーボン株式会社製トーカブラック#7350F、比表面積:80m/g、平均粒径:28nm)も用意した。
(2)調製(完全溶融混合)
これら原料を用いて、表2に示す各組成となるように配合した。得られた各混合物を、150℃(第一温度)で5分間混合した(完全溶融混合)。なお、表2に示した配合組成は、混合物全体に対する質量割合(質量%)である。なお、本明細書では特に断らない限り、組成または添加量は質量割合であり、単に「%」で表記する。
この完全溶融混合は、加熱混合装置(深江パウテック株式会社製ハイスピードミキサーLFS−SG−2J)を用いて行った。この際、容器内のアジテータの回転数は150rpmとした。なお、表1から明らかなように、いずれの内部潤滑剤の融点よりも高い温度となるように上記の第一温度を選択した。従って、内部潤滑剤は全て、混合中に少なくとも一旦は完全に溶融した状態になっていると考えられる。
(3)CBの添加
次に、完全溶融混合後に冷却して室温(第二温度)になった混合粉末へ、上述したCBを0.03%加えてさらに混合した。この混合は、ボールミル式回転混合機を用いて室温域で行った。こうして表2に示す各種の試料(成形用粉末)を得た。なお、CBの添加量は、その添加後の混合物全体を100質量%としたときの質量割合である。
(4)参考試料
参考試料として、上述した純鉄粉のみ(試料C1)と、純鉄粉にCBを0.03%添加して単純混合した粉末(試料C2)と、純鉄粉とGr粉とステアリン酸亜鉛(ZnSt.)を室温で単純混合した粉末(試料C3)を用意した。これらも表2に併せて示した。
〈試料の観察・測定〉
(1)粒子の表面性状
成形用粉末を構成する粒子形状(粒形)の代表例として、試料1、試料7および試料22に係る粒子を走査型電子顕微鏡(SEM/FE−SEM)で観察した写真を、図1A、図1Bおよび図2Aにそれぞれ示した。写真中で白く見える部分は、鉄基粒子に内部潤滑剤が付着している部分である.
また試料22に係る粒子をさらに拡大して観察したFE−SEM写真を図2B(1万倍)および図2C(3万倍)に示した。黒く見える部分は、鉄基粒子に潤滑剤が付着している部分であり、その潤滑剤上に付着した灰色(100nm未満の粒子状)に見える部分がCB粒子である。なお、各写真で白く見える部分は鉄基粒子の表面(地肌)である。
図2Bまたは図2Cに示した写真を用いて画像解析により、粒子表面に付着しているCBの付着面積を測定した。これに基づき求めたCBによる被覆率は26%であった。なお、この被覆率は、特定視野内の2次元投影像の面積比率である。
(2)粉末の充填特性
各試料の成形用粉末の充填特性を表2に併せて示した。評価した充填特性は、流動度(FR)、見掛密度(AD)、タップ密度(TD)、圧縮率(Cp)およびHausner比(HR)である。FRおよびADは、それぞれJIS Z 2502に準拠して測定した。TDは、各成形用粉末100gを入れた100mlのメスシリンダーを100回タップした後に測定した密度である。成形用粉末のメスシリンダーへの充填はJIS Z 2502に準拠して行い、タップは落下高さ25mmとして行った。またCpおよびHRは、それぞれCp=100×(TD−AD)/TD(%)、HR=TD/ADにより算出した。
《第二実施例:試料221〜225および試料C21〜C26》
表2に示した試料22および試料C2のCB添加量を種々変更した試料も調製し、それぞれの充填特性を測定した。その結果をCB添加量と共に表3に併せて示した。CB添加量を除き、成形用粉末の調製方法および充填特性の測定方法は、前述した第一実施例と同様である。
表3に基づき、試料221〜225に係るCB添加量と流動度(FR)または見掛密度(AD)との関係を、それぞれ図3Aおよび図3Bに示した。また試料C21〜C26に係るCB添加量と流動度(FR)または見掛密度(AD)との関係を、それぞれ図4Aおよび図4Bに示した。
《評価》
(1)内部潤滑剤
表2からわかるように、完全溶融混合後にCBを添加した成形用粉末は、概して充填特性が優れている。特に、試料1〜4と試料5〜28を比較すると明らかなように、内部潤滑剤が複合潤滑剤である場合に、より高い充填特性が得られた。さらに複合潤滑剤中に脂肪酸アミド(潤滑剤No.I)が含まれると、充填特性がより高くなった。特に脂肪酸アミドと高級アルコール(潤滑剤No.IV)が含まれている場合、流動度が19秒/50g以下という超高流動性を発現する試料が多かった。
このことは、図1Aおよび図1Bに示した成形用粉末の構成粒子の形態からも理解される。つまり、内部潤滑剤が一種類だけの試料1(図1A)の場合、内部潤滑剤が鉄基粒子の表面に点在した状態となっており、全体的にいびつな粒形となっている。これに対して内部潤滑剤が二種以上の試料7(図1B)の場合、内部潤滑剤(複合潤滑剤)が鉄基粒子の凹部に流れ込み、粒子表面は凹凸が少なく滑らかな状態で、粒子全体が球状に近くなっていた。このような粒形の相違が、各構成粒子の充填特性の相違として出現したと考えられる。
また試料1〜16と、試料17〜23または試料24〜28とを比較するとわかるように、内部潤滑剤の合計量が増加しても、また合金粉末や強化粉末を含む場合でも、良好な充填特性が得られることが確認された。但し、試料1〜16と試料17〜28を比較するとわかるように、Gr粉末を含む試料の方が充填特性に優れており、その特性が安定していた。これは強化粉末が内部潤滑剤と融合して鉄基粒子の凹部を一層埋めるようになり、成形用粉末の構成粒子の粒形がより球状に近くなったためと考えられる。
(2)カーボンブラック
先ず、表3、図3Aおよび図3Bから明らかなように、原料粉末と内部潤滑剤を完全溶融混合した場合、CBを0.005%微量添加するだけで、流動度、見掛密度等の充填特性が急激に改善されることがわかる。しかも、これら充填特性は、CB添加量が増加するほど向上し、CB添加量が0.05%となったあたりでほぼ飽和状態となった。一方、表3、図4Aおよび図4Bから明らかなように、内部潤滑剤を含まない場合(完全溶融混合を行わない場合)、充填特性はCB添加量が微量(0.01%まで)なら改善されるが、それ以上の改善は望めないことも確認された。
CBによる充填特性の向上機構は必ずしも定かではない。しかし、図2Bおよび図2Cに示した構成粒子の表面状態から、CBが完全溶融混合後の複合潤滑剤上に選択的に付着していることは明らかである。そして最表面近傍にあるCBが、各構成粒子同士が潤滑剤部分で接触したり結着したりして充填特性が低下する事態を、抑止していると考えられる。

Claims (8)

  1. 鉄基粉末を含む原料粉末と、該原料粉末中に混在した内部潤滑剤およびカーボンブラックとからなり、金型のキャビティへ充填された後に加圧成形されて成形体となる成形用粉末であって、
    前記内部潤滑剤は、脂肪酸アミドと高級アルコール、エステルワックス、アミドワックス、金属石鹸の1種以上との複合潤滑剤からなり、前記成形用粉末全体を100質量%(単に「%」という。)としたときに合計で0.2〜0.9%含まれ、前記原料粉末と完全溶融状態で混合されて該原料粉末の構成粒子の表面に付着しており、
    前記カーボンブラックは、粒径が50nm以下でBET法により求まる比表面積が95m/g以下であり、前記成形用粉末全体を100%としたときに0.005〜0.05%含まれ、前記完全溶融状態後に固化した複合潤滑剤の表面に付着しており、
    前記キャビティへの充填速度を指標する流動度が20秒/50g以下であることを特徴とする成形用粉末。
  2. 前記原料粉末は、前記成形体を焼結してなる焼結体を、強化する強化元素または改質する改質元素を含む請求項1に記載の成形用粉末。
  3. 前記鉄基粉末は、粒径が212μm以下の鉄基粒子からなる請求項1または2に記載の成形用粉末。
  4. 前記鉄基粉末は、水アトマイズ粉末を含む請求項3に記載の成形用粉末。
  5. 前記脂肪酸アミドは、ステアリン酸アミドである請求項1または4に記載の成形用粉末。
  6. 前記複合潤滑剤は、前記高級アルコールの一種であるベヘニルアルコールを含む請求項1または5に記載の成形用粉末。
  7. 前記高級アルコールは、前記複合潤滑剤全体を100%としたときに15〜60%である請求項1または6に記載の成形用粉末。
  8. 鉄基粉末を含む原料粉末と内部潤滑剤を混合した第一混合粉末を得る第一混合工程と、
    該第一混合粉末とカーボンブラックを混合した第二混合粉末を得る第二混合工程とからなり、金型のキャビティへ充填された後に加圧成形されて成形体となる成形用粉末の製造方法であって、
    前記第一混合工程は、脂肪酸アミドと高級アルコール、エステルワックス、アミドワックス、金属石鹸の1種以上とからなり前記成形用粉末全体を100質量%(単に「%」という。)としたときに合計で0.2〜0.9%含まれる複合潤滑剤を、完全溶融状態で前記原料粉末と混合して該原料粉末の構成粒子の表面に付着させる工程であり、
    前記第二混合工程は、粒径が50nm以下でBET法により求まる比表面積が95m/g以下であり前記成形用粉末全体を100%としたときに0.005〜0.05%含まれるカーボンブラックを、該完全溶融状態後に固化した前記複合潤滑剤の表面に付着させる工程であり、
    前記キャビティへの充填速度を指標する流動度が20秒/50g以下となる成形用粉末が得られることを特徴とする成形用粉末の製造方法。
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