JP5750076B2 - 成形用粉末およびその製造方法 - Google Patents
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(1)本発明の成形用粉末は、鉄基粉末を含む原料粉末と、該原料粉末中に混在した内部潤滑剤およびカーボンブラックとからなり、金型のキャビティへ充填された後に加圧成形されて成形体となる成形用粉末であって、前記内部潤滑剤は、脂肪酸アミドと高級アルコール、エステルワックス、アミドワックス、金属石鹸の1種以上との複合潤滑剤からなり、前記成形用粉末全体を100質量%(単に「%」という。)としたときに合計で0.2〜0.9%含まれ、前記原料粉末と完全溶融状態で混合されて該原料粉末の構成粒子の表面に付着しており、前記カーボンブラックは、粒径が50nm以下でBET法により求まる比表面積が95m2/g以下であり、前記成形用粉末全体を100%としたときに0.005〜0.05%含まれ、前記完全溶融状態後に固化した複合潤滑剤の表面に付着しており、前記キャビティへの充填速度を指標する流動度が20秒/50g以下であることを特徴とする。
(1)本発明は上述した成形用粉末としてのみならず、その製造方法としても把握できる。すなわち本発明は、鉄基粉末を含む原料粉末と内部潤滑剤を混合した第一混合粉末を得る第一混合工程と、該第一混合粉末とカーボンブラックを混合した第二混合粉末を得る第二混合工程とからなり、金型のキャビティへ充填された後に加圧成形されて成形体となる成形用粉末の製造方法であって、前記第一混合工程は、脂肪酸アミドと高級アルコール、エステルワックス、アミドワックス、金属石鹸の1種以上とからなり前記成形用粉末全体を100質量%(単に「%」という。)としたときに合計で0.2〜0.9%含まれる複合潤滑剤を、完全溶融状態で前記原料粉末と混合して該原料粉末の構成粒子の表面に付着させる工程であり、前記第二混合工程は、粒径が50nm以下でBET法により求まる比表面積が95m2/g以下であり前記成形用粉末全体を100%としたときに0.005〜0.05%含まれるカーボンブラックを、該完全溶融状態後に固化した前記複合潤滑剤の表面に付着させる工程であり、前記キャビティへの充填速度を指標する流動度が20秒/50g以下となる成形用粉末が得られることを特徴とする成形用粉末の製造方法としても把握できる。
(1)本発明は、上述した成形用粉末やその製造方法のみならず、その成形用粉末を用いて製作された成形体、さらにはその成形体を焼結させた焼結体としても把握できる。
(1)本発明に係る複合潤滑剤は、構成粒子の表層部分を局所的に観察した際に、上述した二種以上の各潤滑剤が均一的な融合状態となっている場合の他、異なる潤滑剤が偏在的(例えば多層状等)となっていてもよい。また原料粉末と混合される二種以上の潤滑剤は、同時に混合されてもよいし、個別に順次混合されてもよい。例えば、高級アルコール等を先に混合して下層を形成した後に、脂肪酸アミドを混合して表層を形成して、多層状となった複合潤滑剤が鉄基粒子の表面に付着した状態でもよい。
(1)鉄基粉末
鉄基粉末は、鉄(Fe)を主成分とする鉄基粒子から構成される。鉄基粒子の組成は、純鉄でも鉄合金でもよい。また鉄基粉末は、単種の粉末からなってもよいが、組成、製法、粒形分布等の異なる二種以上の素粉末を組み合わせたものでもよい。例えば、鉄基粉末は、鉄合金または非鉄合金からなる合金粉末と純鉄粉末の混合粉末でもよいし、製法または粒子形状(粒形)の異なる二種以上のアトマイズ粉末(例えば水アトマイズ粉末とガスアトマイズ粉末)の混合粉末でもよい。なお、水アトマイズ粉末は、適度な凹凸状表面を有する粒子が多いため、充填特性と成形体の抗折力との両立を図り易い。
原料粉末は、焼結体を強化する強化元素または改質する改質元素を含むと好ましい。強化される特性として、例えば、強度、伸び、靱性等性があり、改質される特性として、例えば、焼結性、寸法安定性、切削性等がある。なお、両者を厳密に区別する必要はない。このような元素として、例えば、C、Cu、Ni、Cr、Mn、Si、V、Mo、P、S、W等がある。これらの元素は、上記の鉄基粉末に含まれてもよいが、別粉末(強化粉末または改質粉末)として原料粉末中に混在させると組成調整が容易となる。このような粉末として、例えば、グラファイト(Gr)粉末、Cu粉末、Cu合金粉末、Fe−Mn−Si系合金粉末、Fe−P粉末等がある。
本発明の成形用粉末に係る充填性は、粒度分布による影響をあまり受けない。もっとも、粉末自体の取扱性や入手性、成形体の抗折力の確保等の観点から、本発明の鉄基粉末は、粒径が212μm以下の鉄基粒子からなると好ましい。なお、本明細書でいう粒径(粒度)は、JIS Z 8801に準拠した篩分けにより規定した。例えば、粒径が212μm以下の鉄基粒子とは、公称目開き212μmの篩を通過した鉄基粒子という意味である。
本発明に係る内部潤滑剤は、脂肪酸アミドと、高級アルコール、エステルワックス、アミドワックス、金属石鹸の1種以上との複合潤滑剤からなる。脂肪酸アミドは、例えば、ステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等の一種以上である。高級アルコールは、例えば、ベヘニルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、リグノセリルアルコール等の一種以上である。2なお、高級アルコールは、複合潤滑剤全体を100%としたときに15〜60%さらには5〜45%であると好ましい。
本発明に係るCBは、粒径が50nm以下さらには40nm以下であると好ましい。粒径が過大では、偏在し易くなり、成形用粉末の構成粒子の被覆率が小さくなり、好ましくない。粒径の下限値は問わないが、通常、CBの粒径は10nm以上である。なお、CBの粒径は透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると球状の粒子がいくつか融着している。この球状の粒子1コの径を測定することにより特定する。
本発明の成形用粉末は、成形時の条件を問わない。冷間成形されても温間成形されてもよいし、印加される成形圧力も一般的な500〜850MPaでもよいし、それを超えるような超高圧でもよい。用いる潤滑剤の融点にも依るが、金型温度が60〜100℃となる温間成形を行うことにより、成形体ひいては焼結体の高密度化も図れ、高特性の焼結部品が得られる。なお、本発明の成形用粉末は内部潤滑剤を含むため必要ないが、本発明は金型潤滑成形される場合を除くものではない。
本発明の成形用粉末により得られる成形体や焼結体は、その形態や用途を問わない。焼結体の用途例として、自動車分野では、各種プーリー、変速機のシンクロハブ、エンジンのコンロッド、ハブスリーブ、スプロケット、リングギヤ、パーキングギヤ、ピニオンギヤ等がある。その他、サンギヤ、ドライブギヤ、ドリブンギヤ、リダクションギヤ等もある。
〈試料の製造〉
(1)原料
先ず原料粉末として、鉄基粉末である純鉄粉(ヘガネスAB社製ASC100.29/−212μm)およびFe−10質量%Cu合金粉(ヘガネスAB社製Distaloy ACu/−212μm)と、強化粉末である黒鉛粉末(Gr)(日本黒鉛工業株式会社製J−CPB/平均粒径:5μm)を用意した。なお、鉄基粉末はいずれも水アトマイズ粉末である。
これら原料を用いて、表2に示す各組成となるように配合した。得られた各混合物を、150℃(第一温度)で5分間混合した(完全溶融混合)。なお、表2に示した配合組成は、混合物全体に対する質量割合(質量%)である。なお、本明細書では特に断らない限り、組成または添加量は質量割合であり、単に「%」で表記する。
次に、完全溶融混合後に冷却して室温(第二温度)になった混合粉末へ、上述したCBを0.03%加えてさらに混合した。この混合は、ボールミル式回転混合機を用いて室温域で行った。こうして表2に示す各種の試料(成形用粉末)を得た。なお、CBの添加量は、その添加後の混合物全体を100質量%としたときの質量割合である。
参考試料として、上述した純鉄粉のみ(試料C1)と、純鉄粉にCBを0.03%添加して単純混合した粉末(試料C2)と、純鉄粉とGr粉とステアリン酸亜鉛(ZnSt.)を室温で単純混合した粉末(試料C3)を用意した。これらも表2に併せて示した。
(1)粒子の表面性状
成形用粉末を構成する粒子形状(粒形)の代表例として、試料1、試料7および試料22に係る粒子を走査型電子顕微鏡(SEM/FE−SEM)で観察した写真を、図1A、図1Bおよび図2Aにそれぞれ示した。写真中で白く見える部分は、鉄基粒子に内部潤滑剤が付着している部分である.
各試料の成形用粉末の充填特性を表2に併せて示した。評価した充填特性は、流動度(FR)、見掛密度(AD)、タップ密度(TD)、圧縮率(Cp)およびHausner比(HR)である。FRおよびADは、それぞれJIS Z 2502に準拠して測定した。TDは、各成形用粉末100gを入れた100mlのメスシリンダーを100回タップした後に測定した密度である。成形用粉末のメスシリンダーへの充填はJIS Z 2502に準拠して行い、タップは落下高さ25mmとして行った。またCpおよびHRは、それぞれCp=100×(TD−AD)/TD(%)、HR=TD/ADにより算出した。
表2に示した試料22および試料C2のCB添加量を種々変更した試料も調製し、それぞれの充填特性を測定した。その結果をCB添加量と共に表3に併せて示した。CB添加量を除き、成形用粉末の調製方法および充填特性の測定方法は、前述した第一実施例と同様である。
(1)内部潤滑剤
表2からわかるように、完全溶融混合後にCBを添加した成形用粉末は、概して充填特性が優れている。特に、試料1〜4と試料5〜28を比較すると明らかなように、内部潤滑剤が複合潤滑剤である場合に、より高い充填特性が得られた。さらに複合潤滑剤中に脂肪酸アミド(潤滑剤No.I)が含まれると、充填特性がより高くなった。特に脂肪酸アミドと高級アルコール(潤滑剤No.IV)が含まれている場合、流動度が19秒/50g以下という超高流動性を発現する試料が多かった。
先ず、表3、図3Aおよび図3Bから明らかなように、原料粉末と内部潤滑剤を完全溶融混合した場合、CBを0.005%微量添加するだけで、流動度、見掛密度等の充填特性が急激に改善されることがわかる。しかも、これら充填特性は、CB添加量が増加するほど向上し、CB添加量が0.05%となったあたりでほぼ飽和状態となった。一方、表3、図4Aおよび図4Bから明らかなように、内部潤滑剤を含まない場合(完全溶融混合を行わない場合)、充填特性はCB添加量が微量(0.01%まで)なら改善されるが、それ以上の改善は望めないことも確認された。
Claims (8)
- 鉄基粉末を含む原料粉末と、該原料粉末中に混在した内部潤滑剤およびカーボンブラックとからなり、金型のキャビティへ充填された後に加圧成形されて成形体となる成形用粉末であって、
前記内部潤滑剤は、脂肪酸アミドと高級アルコール、エステルワックス、アミドワックス、金属石鹸の1種以上との複合潤滑剤からなり、前記成形用粉末全体を100質量%(単に「%」という。)としたときに合計で0.2〜0.9%含まれ、前記原料粉末と完全溶融状態で混合されて該原料粉末の構成粒子の表面に付着しており、
前記カーボンブラックは、粒径が50nm以下でBET法により求まる比表面積が95m2/g以下であり、前記成形用粉末全体を100%としたときに0.005〜0.05%含まれ、前記完全溶融状態後に固化した複合潤滑剤の表面に付着しており、
前記キャビティへの充填速度を指標する流動度が20秒/50g以下であることを特徴とする成形用粉末。 - 前記原料粉末は、前記成形体を焼結してなる焼結体を、強化する強化元素または改質する改質元素を含む請求項1に記載の成形用粉末。
- 前記鉄基粉末は、粒径が212μm以下の鉄基粒子からなる請求項1または2に記載の成形用粉末。
- 前記鉄基粉末は、水アトマイズ粉末を含む請求項3に記載の成形用粉末。
- 前記脂肪酸アミドは、ステアリン酸アミドである請求項1または4に記載の成形用粉末。
- 前記複合潤滑剤は、前記高級アルコールの一種であるベヘニルアルコールを含む請求項1または5に記載の成形用粉末。
- 前記高級アルコールは、前記複合潤滑剤全体を100%としたときに15〜60%である請求項1または6に記載の成形用粉末。
- 鉄基粉末を含む原料粉末と内部潤滑剤を混合した第一混合粉末を得る第一混合工程と、
該第一混合粉末とカーボンブラックを混合した第二混合粉末を得る第二混合工程とからなり、金型のキャビティへ充填された後に加圧成形されて成形体となる成形用粉末の製造方法であって、
前記第一混合工程は、脂肪酸アミドと高級アルコール、エステルワックス、アミドワックス、金属石鹸の1種以上とからなり前記成形用粉末全体を100質量%(単に「%」という。)としたときに合計で0.2〜0.9%含まれる複合潤滑剤を、完全溶融状態で前記原料粉末と混合して該原料粉末の構成粒子の表面に付着させる工程であり、
前記第二混合工程は、粒径が50nm以下でBET法により求まる比表面積が95m2/g以下であり前記成形用粉末全体を100%としたときに0.005〜0.05%含まれるカーボンブラックを、該完全溶融状態後に固化した前記複合潤滑剤の表面に付着させる工程であり、
前記キャビティへの充填速度を指標する流動度が20秒/50g以下となる成形用粉末が得られることを特徴とする成形用粉末の製造方法。
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