JP2013194254A - 鉄基粉末、成形用粉末および焼結体 - Google Patents
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Abstract
【課題】流動性や充填安定性に優れた鉄基粒子を提供する。
【解決手段】本発明の鉄基粉末は、金型のキャビティへ充填された後に加圧成形されて成形体となる成形用粉末の少なくとも一部を構成する鉄基粒子からなる鉄基粉末に関する。この鉄基粉末は、粒子投影像を画像処理して算出される円形度(Ψc)が0.8超となる前記鉄基粒子が40〜75%存在し、粉末全体の平均円形度(Ψcm)が0.92以下であることを特徴とする。この鉄基粉末は、例えば、水アトマイズ粉末と5〜50%のガスアトマイズ粉末とを混合して得られる。粒形分布を調整した本発明の鉄基粉末を用いることにより、流動度の著しい向上や充填密度の安定化を図れ、質量変動の少ない成形体や焼結体を効率的に安定して生産できる。
【選択図】図5
【解決手段】本発明の鉄基粉末は、金型のキャビティへ充填された後に加圧成形されて成形体となる成形用粉末の少なくとも一部を構成する鉄基粒子からなる鉄基粉末に関する。この鉄基粉末は、粒子投影像を画像処理して算出される円形度(Ψc)が0.8超となる前記鉄基粒子が40〜75%存在し、粉末全体の平均円形度(Ψcm)が0.92以下であることを特徴とする。この鉄基粉末は、例えば、水アトマイズ粉末と5〜50%のガスアトマイズ粉末とを混合して得られる。粒形分布を調整した本発明の鉄基粉末を用いることにより、流動度の著しい向上や充填密度の安定化を図れ、質量変動の少ない成形体や焼結体を効率的に安定して生産できる。
【選択図】図5
Description
本発明は、高流動性と充填安定性を実現できる鉄基粉末または成形用粉末と、それらを用いて得られる高品質安定性の成形体または焼結体に関する。
複雑な形状の金属部材は、粉末冶金法で製造することにより、切削加工等を大幅に削減でき、製造コストの低減を図れる。この粉末冶金法は、通常、強化粉末や内部潤滑剤等を適宜含む粉末を、金型のキャビティへ充填し、それを加圧成形して得られた成形体を、加熱して焼結体を得ることによりなされる。
このような粉末冶金法による生産性向上や生産コスト削減を図る場合、品質(例えば、質量、密度、強度等)を安定化させつつ、金型キャビティへの粉末充填性(充填速度、充填密度等)を向上させることが重要となる。これに関連した提案が、例えば下記の特許文献にある。
特許文献1は、粉末粒子の形状や粒度を制御して、流動度や充填密度を改善できる圧粉磁心用の鉄基粉末を提案している。具体的にいうと、平均アスペクト比が3〜10の粒子からなり、目開き250μmの篩いを通過した割合が95質量%以上となる鉄基粉末を提案している。この鉄基粉末は圧粉磁心用であり、金型潤滑により高圧成形されることが前提となっている。つまり内部潤滑剤を用いる場合について、特許文献1では何ら考慮も想定もされていない。
特許文献2は、粒度分布を調整して、高密度(見掛密度)な充填を図れる鉄基粉末を提案している。具体的にいうと、ガスアトマイズ粉末または水アトマイズ粉末のいずれか一方のみを、所定の粒度分布に分級した後に配合した鉄基粉末を提案している。この鉄基粉末を用いると、確かに見掛密度等の充填性は向上する。しかし、特許文献2にあるように、円形度0.8以上の粒子が90%含まれるような鉄基粉末からなる成形体(成形圧力686MPa)は、崩壊し易く取扱性が悪い。従って、特許文献2のような粒度分布を調整しただけの鉄基粉末の使用は現実的ではない。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、従来とは異なる粒子制御により、内部潤滑剤を含有させた場合でも、高流動性と充填安定性を実現できる鉄基粉末および成形用粉末を提供することを目的とする。また、これら粉末を用いて得られる品質安定性に優れた焼結体を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、水アトマイズ粉末に所定割合のガスアトマイズ粉末を配合した鉄基粉末が、粉末充填時の超高流動性と充填安定性を発現させ得ることを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《鉄基粉末》
(1)本発明の鉄基粉末は、金型のキャビティへ充填された後に加圧成形されて成形体となる成形用粉末の少なくとも一部を構成する鉄基粒子からなる鉄基粉末であって、粒子投影像を画像処理して算出される円形度(Ψc)が0.8超となる前記鉄基粒子が40〜75%存在し、粉末全体の平均円形度(Ψcm)が0.92以下であることを特徴とする。
(1)本発明の鉄基粉末は、金型のキャビティへ充填された後に加圧成形されて成形体となる成形用粉末の少なくとも一部を構成する鉄基粒子からなる鉄基粉末であって、粒子投影像を画像処理して算出される円形度(Ψc)が0.8超となる前記鉄基粒子が40〜75%存在し、粉末全体の平均円形度(Ψcm)が0.92以下であることを特徴とする。
(2)本発明の鉄基粉末は、単独でも優れた流動性や充填安定性を発現するが、内部潤滑剤を粒子表面に付着させた成形用粉末としたときに、著しく高い流動性および充填安定性を発現する。このため本発明の鉄基粉末を用いると、内部潤滑剤を用いる場合でも、キャビティへの粉末充填時間を短縮できると共に、キャビティに充填された粉末の重量変動を非常に少なくできる。しかも本発明の鉄基粉末からなる成形体は、適度な抗折力を有し、取扱性にも優れる。従って本発明の鉄基粉末によれば、成形体や焼結体の歩留まりや品質を確保しつつ、生産性の大幅な向上を図れる。
(3)本発明の鉄基粉末が、そのような優れた特性を発現する理由は定かではないが、現状では次のように考えられる。本発明の鉄基粉末は、上述したような粒形分布をもつ鉄基粒子からなるため、球状な鉄基粒子(「球状粒子」という。)が適度に含まれる一方で、凹凸な表面をもつ鉄基粒子(「凹凸粒子」という。)も一定割合で含まれる。このような粒子形状(粒形)の異なる鉄基粒子が相乗的に作用する結果、本発明の鉄基粉末は、粉末充填時に著しく高い流動性および充填安定性を発現させるに至ったと考えられる。
特に鉄基粉末内に内部潤滑剤が存在する場合、内部潤滑剤は凹凸粒子の表面に優先して付着または堆積する。逆にいうと、球状粒子の表面には内部潤滑剤があまり付着等しない。この結果、凹凸粒子は見かけ上の円形度が向上し、球状粒子は元々有する高円形度がある程度維持される。つまり本発明の鉄基粉末に内部潤滑剤を適当な方法で混在させると、粉末全体として観たときに、高円形度の粒子が増加し、平均円形度が向上する。このような粒形分布をもつ粉末は、粒子間の干渉が少なくなり、前述したように非常に高い流動度や充填密度が粉末充填時毎に安定して発現されるようになる。
ここで、平均円形度を高める内部潤滑剤は、鉄基粉末の粒子表面に一時的に付着等しているに過ぎず、加圧成形時は流動する。このため、凹凸粒子の表面性状は加圧成形時に復活し、構成粒子間にはアンカー効果が作用し易くなる。従って、充填時には平均円形度の高い粉末でも、加圧成形されると適度な抗折力をもつ成形体となる。
こうして本発明の鉄基粉末は、成形体特性を損なうことなく、上述した非常に高い流動性や充填安定性を発現するようになったと考えられる。
《成形用粉末》
(1)本発明は鉄基粉末としてのみならず、前述したように、内部潤滑剤を含む成形用粉末としても把握できる。すなわち本発明は、上述した鉄基粉末を含む原料粉末と、該原料粉末の粒子表面に付着した内部潤滑剤と、からなることを特徴とする成形用粉末でもよい。
(1)本発明は鉄基粉末としてのみならず、前述したように、内部潤滑剤を含む成形用粉末としても把握できる。すなわち本発明は、上述した鉄基粉末を含む原料粉末と、該原料粉末の粒子表面に付着した内部潤滑剤と、からなることを特徴とする成形用粉末でもよい。
(2)本発明の成形用粉末は、さらに、前記粒子表面または前記内部潤滑剤表面に付着するカーボンブラック(CB)を含むと好適である。少量のCBを含有することにより、成形用粉末の流動性や充填安定性がより一層向上する。この理由は必ずしも定かではないが現状では次のように考えられる。CBは内部潤滑剤の表面(または後述する強化粉末の粒子表面)に選択的に付着することがわかっている。このようなCBは、内部潤滑剤を介した粒子同士の結着等を抑制することにより、成形用粉末の流動性や充填安定性を一層向上させたと考えられる。
(3)ところで、内部潤滑剤は、その融点以上の第一温度で原料粉末と溶融混合されることにより、前述した流動性や充填安定性に優れる成形用粉末が安定して得られる。逆に、CBは、内部潤滑剤の融点未満の第二温度で溶融混合後の原料粉末と混合すると、鉄基粒子表面を覆う内部潤滑剤表面に効率良く付着して好ましい。
《成形体または焼結体》
本発明は、上述した鉄基粉末や成形用粉末のみならず、それを用いて製作された成形体またはその成形体を焼結させた焼結体としても把握できる。特に成形体は、本発明の成形用粉末を内部潤滑剤の融点未満の第三温度で加圧成形したものであると好ましい。これは内部潤滑剤の過度なしみ出しを防ぐためである。
本発明は、上述した鉄基粉末や成形用粉末のみならず、それを用いて製作された成形体またはその成形体を焼結させた焼結体としても把握できる。特に成形体は、本発明の成形用粉末を内部潤滑剤の融点未満の第三温度で加圧成形したものであると好ましい。これは内部潤滑剤の過度なしみ出しを防ぐためである。
《その他》
(1)本明細書でいう「流動性」は、例えば、粉末をキャビティへ充填するときの速度(充填速度)を指標する流動度(FR)により評価される。また「充填安定性」は、例えば、キャビティへ充填した際の粉末密度やその変動量を指標する見掛密度(AD)やタップ密度(TD)、それらに基づいて算出される圧縮率(Cp)やHausner比(HR)により評価される。なお本明細書では、流動性と充填安定性を併せて適宜「流動性」という。
(1)本明細書でいう「流動性」は、例えば、粉末をキャビティへ充填するときの速度(充填速度)を指標する流動度(FR)により評価される。また「充填安定性」は、例えば、キャビティへ充填した際の粉末密度やその変動量を指標する見掛密度(AD)やタップ密度(TD)、それらに基づいて算出される圧縮率(Cp)やHausner比(HR)により評価される。なお本明細書では、流動性と充填安定性を併せて適宜「流動性」という。
(2)本発明の鉄基粉末や成形用粉末は、その充填特性が特に限定されないが、例えば、FR(JIS Z2502に準拠)が20秒/50g以下、19秒/50g以下さらには18秒/50g以下であると好ましい。またCpが20%以下、18%以下さらには16%以下であると好ましい。さらにHRが1.25以下、1.23以下さらには1.2以下であると好ましい。
(3)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
本明細書で説明する内容は、本発明の鉄基粉末や成形用粉末のみならず、それを用いた成形体や焼結体、さらにはそれらの調製方法や製造方法にも適宜該当し得る。方法に関する記載内容は、プロダクトバイプロセスとして理解すれば物に関する構成要素ともなり得る。本明細書中から任意に選択した一以上の記載内容を上述した本発明に自在に付加し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《鉄基粉末》
(1)組成
鉄基粉末を構成する鉄基粒子は、鉄(Fe)が主成分であれば、純鉄でも鉄合金でもよい。また鉄基粉末は、単種の粉末(素粉末)からなってもよいが、組成、製法、粒形分布等の異なる二種以上の素粉末を組み合わせたものでもよい。例えば、組成が異なる二種以上のアトマイズ粉末を、仕様に適した所望組成となるように組み合わせて、本発明の鉄基粉末としてもよい。
(1)組成
鉄基粉末を構成する鉄基粒子は、鉄(Fe)が主成分であれば、純鉄でも鉄合金でもよい。また鉄基粉末は、単種の粉末(素粉末)からなってもよいが、組成、製法、粒形分布等の異なる二種以上の素粉末を組み合わせたものでもよい。例えば、組成が異なる二種以上のアトマイズ粉末を、仕様に適した所望組成となるように組み合わせて、本発明の鉄基粉末としてもよい。
(2)円形度(Ψc)と平均円形度(Ψcm)
鉄基粒子の粒形を指標する円形度(Ψc)と、鉄基粉末全体の粒形分布を指標する平均円形度(Ψcm)は、次のようにして算出される。
鉄基粒子の粒形を指標する円形度(Ψc)と、鉄基粉末全体の粒形分布を指標する平均円形度(Ψcm)は、次のようにして算出される。
先ず、測定対象である粉末を顕微鏡で観察して、その構成粒子の粒子投影像である画像(粒子画像)を撮影する。次に、得られた粒子画像を画像処理することにより、二次元的な投影面における各構成粒子の面積(S)と周囲長(L)をそれぞれ計測する。そして、Ψc=4πS/L2 により円形度を算出する。仮に構成粒子が真球で粒子投影像が真円となる場合はΨc=1となるが、通常は 0<Ψc<1 である。
こうして求まった各構成粒子のΨcを、測定対象となった構成粒子の個数で相加平均すると、平均円形度(Ψcm)が求まる。例えば、全測定粒子数をN個とすると、Ψcm=ΣΨc/N となる。測定粒子数は、例えば、2000個(N=2000)とするとよい。
また、各構成粒子について算出したΨcに基づいて、Ψcが特定範囲内となる粒子数をカウントする。これにより、その範囲に属する粒子の存在率(粒形分布)を知ることができる。例えば、全測定粒子数がN個で、Ψc>aとなる粒子数がn個の場合、Ψc>aとなる粒子の存在率は (n/N)×100(%) として求まる。
ところで本発明の鉄基粉末は、Ψc>0.8となる鉄基粒子が40〜75%さらには45〜70%含まれると好適である。またΨc>0.7となる鉄基粒子なら、65〜90%さらには70〜85%含まれると好ましい。さらにΨc>0.9となる鉄基粒子なら、10〜55%さらには15〜50%含まれると好ましい。各範囲に属する鉄基粒子が、過少なら充填性の向上効果が乏しく、過多なら適度な抗折力の成形体が得られない。
なお、本発明の鉄基粉末の粒形分布を規定するΨcの範囲は任意に選択可能であるが、市販の水アトマイズ鉄粉のΨcmは0.75前後であるため、Ψc>0.8が最も好ましい。
本発明の鉄基粉末は、Ψcmが0.92以下、0.9以下さらには0.89以下であると好適である。またΨcmは0.75以上、0.77以上さらには0.8以上であると好ましい。Ψcmが過少では充填性の向上効果が乏しく、過多なら適度な抗折力の成形体が得られない。なお、特定範囲のΨcに属する鉄基粒子の存在割合(粒子存在率)のみならず、Ψcmによる規定を導入したのは、ΨcmとΨcは単純な比例関係になく、Ψcmにより成形用粉末の流動性が変化するためである。
(3)粒度分布
本発明に係る充填性の向上は上述した粒形分布に大きく依存しており、粒度分布による影響は小さい。もっとも、粉末自体の取扱性や入手性、成形体の抗折力の確保等の観点から、本発明の鉄基粉末は、粒径が212μm以下の鉄基粒子からなると好ましい。
本発明に係る充填性の向上は上述した粒形分布に大きく依存しており、粒度分布による影響は小さい。もっとも、粉末自体の取扱性や入手性、成形体の抗折力の確保等の観点から、本発明の鉄基粉末は、粒径が212μm以下の鉄基粒子からなると好ましい。
なお、本明細書でいう粒径は、JIS Z 8801に準拠した篩分けにより規定した。例えば、粒径が212μm以下の鉄基粒子とは、公称目開き212μmの篩を通過した鉄基粒子という意味である。
(4)素粉末
本発明の鉄基粉末は、前述したように原料となる粉末(素粉末)の製法や種類を問わない。もっとも、粒形や粒度分布が安定しているアトマイズ粉末を用いると好ましい。アトマイズ粉末としては、水アトマイズ粉末、ガスアトマイズ粉末、水ガスアトマイズ粉末などがあり、いずれをも用いることができる。もっとも、球状表面からなる粒子(Ψcが1に近い粒子)が多いガスアトマイズ粉末を素粉末の一つとして用いると、粒形分布の調整が容易となり好ましい。すなわち、本発明の鉄基粉末は、一部にガスアトマイズ粉末を含むガスアトマイズ混合粉末であると好ましい。さらに、このガスアトマイズ粉末と混合する粉末として、滑らかな凹凸状表面を有する粒子が多い水アトマイズ粉末を用いると好ましい。これにより粒形分布の調整をより安定して行うことが可能となる。
本発明の鉄基粉末は、前述したように原料となる粉末(素粉末)の製法や種類を問わない。もっとも、粒形や粒度分布が安定しているアトマイズ粉末を用いると好ましい。アトマイズ粉末としては、水アトマイズ粉末、ガスアトマイズ粉末、水ガスアトマイズ粉末などがあり、いずれをも用いることができる。もっとも、球状表面からなる粒子(Ψcが1に近い粒子)が多いガスアトマイズ粉末を素粉末の一つとして用いると、粒形分布の調整が容易となり好ましい。すなわち、本発明の鉄基粉末は、一部にガスアトマイズ粉末を含むガスアトマイズ混合粉末であると好ましい。さらに、このガスアトマイズ粉末と混合する粉末として、滑らかな凹凸状表面を有する粒子が多い水アトマイズ粉末を用いると好ましい。これにより粒形分布の調整をより安定して行うことが可能となる。
ガスアトマイズ粉末と水アトマイズ粉末の混合割合は、所望する粒形分布に応じて適宜調整される。例えば、ガスアトマイズ混合粉末全体を100%としたときに、ガスアトマイズ粉末が5〜55%、15〜50%さらには25〜45%含まれ、残部が水アトマイズ粉末とすると好ましい。
《成形用粉末》
本発明の成形用粉末は、金型のキャビティへ充填される粉末である。この成形用粉末は、鉄基粉末単体でも、鉄基粉末を含む原料粉末に内部潤滑剤等を混在させた混合粉末でもよい。鉄基粉末だけでも金型潤滑成形法等によって成形可能であるが、一般的には内部潤滑剤を含む混合粉末が成形用粉末として使用される。特に本発明の鉄基粉末は内部潤滑剤が粒子表面に付着することにより充填性が著しく向上するため、本発明の成形用粉末は内部潤滑剤を含むと好ましい。
本発明の成形用粉末は、金型のキャビティへ充填される粉末である。この成形用粉末は、鉄基粉末単体でも、鉄基粉末を含む原料粉末に内部潤滑剤等を混在させた混合粉末でもよい。鉄基粉末だけでも金型潤滑成形法等によって成形可能であるが、一般的には内部潤滑剤を含む混合粉末が成形用粉末として使用される。特に本発明の鉄基粉末は内部潤滑剤が粒子表面に付着することにより充填性が著しく向上するため、本発明の成形用粉末は内部潤滑剤を含むと好ましい。
内部潤滑剤として、例えば、脂肪酸アミド、金属石鹸、高級アルコール、エステルワックス、アミド系ワックス等の1種または2種以上の混合物がある。なお、本発明では、一般的な称呼を問わず、鉄基粉末、後述の強化粉末、CB以外であって、成形性を向上させるために添加される物質を内部潤滑剤とよぶ。従って、一般的に結合剤といわれるような物質も本発明に係る内潤滑剤に含まれる。
成形用粉末を構成する原料粉末は、鉄基粉末以外に種々の粉末を含んでいてもよい。例えば、原料粉末は、焼結体を強化する元素を含む強化粉末と鉄基粉末との混合原料粉末でもよい。このような強化粉末として、例えば、グラファイト(Gr)粉末、CuまたはCu合金の粉末、Fe−Mn−Si系合金粉末、Ni、Mo、Fe−P粉末等がある。
なお既述した通り、成形用粉末がCBを含有すると、さらに充填性の向上が図られる。このCBは、BET法で求まる比表面積が95m2/g以下、粒径50nm以下であると好ましい。また成形用粉末全体を100質量%として、CBは0.01〜0.04質量%含まれると十分である。
《成形と焼結》
本発明の鉄基粉末や成形用粉末は、成形される際の条件を問わない。冷間成形されても温間成形されてもよいし、印加される成形圧力も一般的な500〜850MPaでもよいし、それを超えるような超高圧でもよい。また、金型内壁面(キャビティ面)とのかじり等を防止するためになされる成形時の潤滑は、内部潤滑剤を原料粉末に混在させる内部潤滑法によっても、金型内壁面に潤滑剤を塗布等する金型潤滑法によってもよい。
本発明の鉄基粉末や成形用粉末は、成形される際の条件を問わない。冷間成形されても温間成形されてもよいし、印加される成形圧力も一般的な500〜850MPaでもよいし、それを超えるような超高圧でもよい。また、金型内壁面(キャビティ面)とのかじり等を防止するためになされる成形時の潤滑は、内部潤滑剤を原料粉末に混在させる内部潤滑法によっても、金型内壁面に潤滑剤を塗布等する金型潤滑法によってもよい。
さらに本発明の鉄基粉末や成形用粉末からなる成形体を焼結する条件も、本発明では問わず、焼結体の要求仕様等に応じて適宜選択される。一般的には、窒素雰囲気等の酸化防止雰囲気中で、1050〜1250℃、20〜120分間の加熱に焼結される。また焼結体は、適宜、焼鈍、焼準、時効、調質(焼き入れ、焼き戻し)、浸炭、窒化等の熱処理が施されてもよい。
《用途》
本発明の鉄基粉末や成形用粉末により得られる成形体や焼結体は、その形態や用途を問わない。用途例として、自動車分野では、各種プーリー、変速機のシンクロハブ、エンジンのコンロッド、ハブスリーブ、スプロケット、リングギヤ、パーキングギヤ、ピニオンギヤ等がある。その他、サンギヤ、ドライブギヤ、ドリブンギヤ、リダクションギヤ等もある。
本発明の鉄基粉末や成形用粉末により得られる成形体や焼結体は、その形態や用途を問わない。用途例として、自動車分野では、各種プーリー、変速機のシンクロハブ、エンジンのコンロッド、ハブスリーブ、スプロケット、リングギヤ、パーキングギヤ、ピニオンギヤ等がある。その他、サンギヤ、ドライブギヤ、ドリブンギヤ、リダクションギヤ等もある。
実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
《第一実施例》
〈ベース粉末:試料No.11〜17〉
(1)調製
先ず、素粉末として水アトマイズ鉄粉(ヘガネスAB社製ASC100.29/−212μm)と、ガスアトマイズ鉄粉(山陽特殊鋼株式会社製/−212μm)を用意した。両素粉末を種々の割合で混合することにより、表1に示すような粒形分布の異なる各種のベース粉末(鉄基粉末、ガスアトマイズ混合粉末)を得た。なお、ガスアトマイズ粉末を「GA」、ガスアトマイズ粉末の混合割合を「GA率」と適宜表記する。表1中、GA率:0%である試料11は上記の水アトマイズ粉末のみからなり、GA率:100%である試料17は上記のガスアトマイズ粉末のみからなる。
〈ベース粉末:試料No.11〜17〉
(1)調製
先ず、素粉末として水アトマイズ鉄粉(ヘガネスAB社製ASC100.29/−212μm)と、ガスアトマイズ鉄粉(山陽特殊鋼株式会社製/−212μm)を用意した。両素粉末を種々の割合で混合することにより、表1に示すような粒形分布の異なる各種のベース粉末(鉄基粉末、ガスアトマイズ混合粉末)を得た。なお、ガスアトマイズ粉末を「GA」、ガスアトマイズ粉末の混合割合を「GA率」と適宜表記する。表1中、GA率:0%である試料11は上記の水アトマイズ粉末のみからなり、GA率:100%である試料17は上記のガスアトマイズ粉末のみからなる。
水アトマイズ粉末(試料11)の粒子(鉄基粒子)とガスアトマイズ粉末(試料17)の粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した写真をそれぞれ図1Aおよび図1Bに示した。
(2)粒度分布
表1に示した各ベース粉末の粒度分布を表1に併せて示した。本明細書および各表等に示す粒度分布は、JIS Z 8801に準拠した篩分けにより分級して求めた。粒度分布の表記は次のようにした。すなわち、「−M1」は公称目開きがM1(μm)の篩を通過した粒子からなることを意味し、「−M1/M2」は公称目開きがM1(μm)の篩を通過した粒子のうちで、公称目開きがM2(μm)の篩を通過しなかった粒子からなることを意味する。各級に存在する粒子の割合は、ベース粉末全体に対する質量%で表示した。
表1に示した各ベース粉末の粒度分布を表1に併せて示した。本明細書および各表等に示す粒度分布は、JIS Z 8801に準拠した篩分けにより分級して求めた。粒度分布の表記は次のようにした。すなわち、「−M1」は公称目開きがM1(μm)の篩を通過した粒子からなることを意味し、「−M1/M2」は公称目開きがM1(μm)の篩を通過した粒子のうちで、公称目開きがM2(μm)の篩を通過しなかった粒子からなることを意味する。各級に存在する粒子の割合は、ベース粉末全体に対する質量%で表示した。
(3)粒形分布
表1に示した各ベース粉末の粒形分布を表1に併せて示した。表1に示した円形度(Ψc)および平均円形度(Ψcm)は既述した方法により算出した。Ψcが所定範囲となる粒子の存在率は、全測定粒子数に対する該当粒子の個数割合である。この算出に必要な各粒子画像には、株式会社ニコン製光学顕微鏡を用いて撮影した100倍の明視野像を用いた。画像処理は旭化成エンジニアリング株式会社製の画像解析ソフトA像君により行った。計測した粒子個数(全測定粒子数)は2000個程度とした。ΨcまたはΨcmの算出に用いた粒子画像の一例を図2A〜2Dに示した。
表1に示した各ベース粉末の粒形分布を表1に併せて示した。表1に示した円形度(Ψc)および平均円形度(Ψcm)は既述した方法により算出した。Ψcが所定範囲となる粒子の存在率は、全測定粒子数に対する該当粒子の個数割合である。この算出に必要な各粒子画像には、株式会社ニコン製光学顕微鏡を用いて撮影した100倍の明視野像を用いた。画像処理は旭化成エンジニアリング株式会社製の画像解析ソフトA像君により行った。計測した粒子個数(全測定粒子数)は2000個程度とした。ΨcまたはΨcmの算出に用いた粒子画像の一例を図2A〜2Dに示した。
(4)充填特性
表1に示した各ベース粉末単体の充填特性を表1に併せて示した。評価した充填特性は、流動度(FR)、見掛密度(AD)、タップ密度(TD)、圧縮率(Cp)およびHausner比(HR)である。FRおよびADは、それぞれJIS Z 2502に準拠して測定した。TDは、各ベース粉末100gを入れた100mlのメスシリンダーを100回タップした後に測定した密度である。メスシリンダーへのベース粉末の充填はJIS Z 2502に準拠して行い、タップは落下高さ25mmとして行った。またCpおよびHRは、それぞれCp=100×(TD−AD)/TD(%)、HR=TD/ADにより算出した。
表1に示した各ベース粉末単体の充填特性を表1に併せて示した。評価した充填特性は、流動度(FR)、見掛密度(AD)、タップ密度(TD)、圧縮率(Cp)およびHausner比(HR)である。FRおよびADは、それぞれJIS Z 2502に準拠して測定した。TDは、各ベース粉末100gを入れた100mlのメスシリンダーを100回タップした後に測定した密度である。メスシリンダーへのベース粉末の充填はJIS Z 2502に準拠して行い、タップは落下高さ25mmとして行った。またCpおよびHRは、それぞれCp=100×(TD−AD)/TD(%)、HR=TD/ADにより算出した。
〈処理粉末:試料No.21〜27〉
(1)調製
先ず、上述した各ベース粉末に強化粉末である黒鉛粉末(Gr):0.8%を加えた混合原料粉末と、内部潤滑剤(Lub):0.4%とを150℃(第一温度)で5分間混合した(溶融混合処理)。この溶融混合処理は、加熱混合装置(深江パウテック株式会社製ハイスピードミキサーLFS−SG−2J)を用いて行った。この際、容器内のアジテータの回転数は150rpmとした。こうして全体を100質量%(単に「%」という。)として、配合組成:Fe−0.8%Gr−0.4%Lubとなる混合粉末を得た。
(1)調製
先ず、上述した各ベース粉末に強化粉末である黒鉛粉末(Gr):0.8%を加えた混合原料粉末と、内部潤滑剤(Lub):0.4%とを150℃(第一温度)で5分間混合した(溶融混合処理)。この溶融混合処理は、加熱混合装置(深江パウテック株式会社製ハイスピードミキサーLFS−SG−2J)を用いて行った。この際、容器内のアジテータの回転数は150rpmとした。こうして全体を100質量%(単に「%」という。)として、配合組成:Fe−0.8%Gr−0.4%Lubとなる混合粉末を得た。
なお黒鉛粉末には、日本黒鉛工業株式会社製J−CPB(平均粒径:5μm)を用いた。また内部潤滑剤には、脂肪酸アミドであるステアリン酸モノアミド(日本油脂株式会社製アルフローS10/融点:102℃)と、高級アルコールであるベヘニルアルコール(花王株式会社製カルコール220−80/融点:70℃)を用いた。それぞれの添加量は共に0.2%とし、合計で0.4%とした。
次に、溶融混合処理後に冷却して室温(第二温度)になった混合粉末へ、カーボンブラック(東海カーボン株式会社製トーカブラック#7350F、比表面積:80m2/g、平均粒径:28nm)を0.03%加えて混合した。この混合は、回転混合機を用いて室温域で行った。こうして表2に示すようなベース粉末の異なる種々の処理粉末を得た。
一例として、試料17をベース粉末とした処理粉末(試料27)の粒子をSEMで観察した写真を図3に示した。
(2)粉末特性(粒形分布および充填特性)
ベース粉末の場合と同様にして、各処理粉末についても、Ψcm、FR、AD、TD、CpおよびHRを測定、算出した。それらの結果を表2に併せて示した。
ベース粉末の場合と同様にして、各処理粉末についても、Ψcm、FR、AD、TD、CpおよびHRを測定、算出した。それらの結果を表2に併せて示した。
(3)成形体特性
各処理粉末を金型のキャビティへ充填し、温間加圧成形して、φ23mm×10mmの円柱試験片と10mm×55mm×5mmの抗折試験片(成形体)を製作した。この際、金型温度:60℃(第三温度)、成形圧力:686MPaとした。
各処理粉末を金型のキャビティへ充填し、温間加圧成形して、φ23mm×10mmの円柱試験片と10mm×55mm×5mmの抗折試験片(成形体)を製作した。この際、金型温度:60℃(第三温度)、成形圧力:686MPaとした。
円柱試験片の重量および寸法を測定し、計算により密度(GD)を求めた。その抗折試験片を用いて、標点間距離30mmとする3点曲げ試験(JPMA M09−1992に準拠)を行った。得られた抗折力(TRS)を表2に併せて示した。
(4)焼結体特性
平板引張試験片型を用いて抗折試験片と同条件で成形した成形体を窒素雰囲気中で1150℃×30分加熱した後、50℃/分の冷却速度で冷却して、図10に示す形状をもつ平板引張試験片(焼結体)を製作した。この平板引張試験片を用いて引張試験を行った。得られた最大引張強さ(UTS)を表2に併せて示した。
平板引張試験片型を用いて抗折試験片と同条件で成形した成形体を窒素雰囲気中で1150℃×30分加熱した後、50℃/分の冷却速度で冷却して、図10に示す形状をもつ平板引張試験片(焼結体)を製作した。この平板引張試験片を用いて引張試験を行った。得られた最大引張強さ(UTS)を表2に併せて示した。
《第二実施例》
〈素粉末:I〜IV〉
(1)調製
先ず、表3に示す4種の素粉末(鉄基粉末)を用意した。素粉末Iは試料17と同じで前述したガスアトマイズ粉末単体からなる。素粉末II〜IVは、表3に示す粒度分布となるように、素粉末Iを前述の篩い分けにより分級して調製したものである。適宜、素粉末I〜IVを順に、標準粉、粗粉、細粉、微粉という。
〈素粉末:I〜IV〉
(1)調製
先ず、表3に示す4種の素粉末(鉄基粉末)を用意した。素粉末Iは試料17と同じで前述したガスアトマイズ粉末単体からなる。素粉末II〜IVは、表3に示す粒度分布となるように、素粉末Iを前述の篩い分けにより分級して調製したものである。適宜、素粉末I〜IVを順に、標準粉、粗粉、細粉、微粉という。
(2)粉末特性
各素粉末単体の粒形分布および充填特性を前述した方法により求めた。それらの結果を表3に併せて示した。
各素粉末単体の粒形分布および充填特性を前述した方法により求めた。それらの結果を表3に併せて示した。
〈ベース粉末:試料No.31〜34〉
(1)調製
(1)調製
素粉末I〜IVの各一種と前述した水アトマイズ鉄粉とを混合することにより、表4に示す4種のベース粉末(鉄基粉末)を得た。いずれのベース粉末も、全体を100質量%(単に「%」という。)として、各素粉末の配合量は20%とした。つまり各ベース粉末は粒度分布等が異なるが、いずれもGA率は20%である。
(2)粉末特性
各ベース粉末の粒度分布および充填特性を前述した方法により求めた。それらの結果を表4に併せて示した。なお、表4中の試料No.31は表1中の試料No.13と同じである。
各ベース粉末の粒度分布および充填特性を前述した方法により求めた。それらの結果を表4に併せて示した。なお、表4中の試料No.31は表1中の試料No.13と同じである。
〈処理粉末:試料No.41〜44〉
(1)調製
試料No.31〜44に係るベース粉末を用いて、前述した方法で調製することにより、表5に示す4種の処理粉末を得た。なお表5には、前述した試料21に係る処理粉末も比較のために掲載した。
(1)調製
試料No.31〜44に係るベース粉末を用いて、前述した方法で調製することにより、表5に示す4種の処理粉末を得た。なお表5には、前述した試料21に係る処理粉末も比較のために掲載した。
(2)粉末特性
得られた各処理粉末の粒形分布および充填特性を前述した方法により求めた。それらの結果を表5に併せて示した。
得られた各処理粉末の粒形分布および充填特性を前述した方法により求めた。それらの結果を表5に併せて示した。
(3)成形体特性
各処理粉末を用いて、前述した円柱試験片と抗折試験片(成形体)を同方法により製作した。この密度(GD)は、円柱試験片の質量と寸法を測定して計算により求めた。また、そのTRSも前述した方法により測定した。それらの結果を表5に併せて示した。
各処理粉末を用いて、前述した円柱試験片と抗折試験片(成形体)を同方法により製作した。この密度(GD)は、円柱試験片の質量と寸法を測定して計算により求めた。また、そのTRSも前述した方法により測定した。それらの結果を表5に併せて示した。
(4)焼結体特性
各処理粉末を用いて、前述した円柱試験片と平板引張試験片(焼結体)を同方法により製作した。この円柱試験片の密度(SD)を焼結後の重量と寸法を測定して計算により求めた。また、この焼結体の成形体に対する寸法変化率(ΔD)も求めた。この寸法変化率は、円柱試験片の直径を焼結前後で測定し、その寸法差を焼結前の直径で除することにより算出した。さらに引張試験を行い、平板引張試験片の最大引張強さ(UTS)および破断伸び(EL)も求めた。これらの結果を表5に併せて示した。
各処理粉末を用いて、前述した円柱試験片と平板引張試験片(焼結体)を同方法により製作した。この円柱試験片の密度(SD)を焼結後の重量と寸法を測定して計算により求めた。また、この焼結体の成形体に対する寸法変化率(ΔD)も求めた。この寸法変化率は、円柱試験片の直径を焼結前後で測定し、その寸法差を焼結前の直径で除することにより算出した。さらに引張試験を行い、平板引張試験片の最大引張強さ(UTS)および破断伸び(EL)も求めた。これらの結果を表5に併せて示した。
《評価》
〈鉄基粉末:ベース粉末〉
(1)粒子形状
図1Aおよび図1B(両図を合わせて図1という。)からわかるように、水アトマイズ粉末の構成粒子(鉄基粒子)は、かなり大きな凹凸表面からなるが、ガスアトマイズ粉末の構成粒子は滑らかな球面からなり真球に近い球状体であることがわかる。
〈鉄基粉末:ベース粉末〉
(1)粒子形状
図1Aおよび図1B(両図を合わせて図1という。)からわかるように、水アトマイズ粉末の構成粒子(鉄基粒子)は、かなり大きな凹凸表面からなるが、ガスアトマイズ粉末の構成粒子は滑らかな球面からなり真球に近い球状体であることがわかる。
(2)粒形分布
図1と同様のことは、表1に示した試料11と試料17の粒形分布からも明らかである。つまり、水アトマイズ粉末のみからなる試料11は、平均円形度(Ψcm)が0.74程度と小さく、円形度(Ψc)>0.9の粒子割合は9%程度に過ぎない。一方、ガスアトマイズ粉末のみからなる試料17は、平均円形度(Ψcm)が0.95程度で非常に大きく、Ψc>0.9の粒子割合が66%を超えている。
図1と同様のことは、表1に示した試料11と試料17の粒形分布からも明らかである。つまり、水アトマイズ粉末のみからなる試料11は、平均円形度(Ψcm)が0.74程度と小さく、円形度(Ψc)>0.9の粒子割合は9%程度に過ぎない。一方、ガスアトマイズ粉末のみからなる試料17は、平均円形度(Ψcm)が0.95程度で非常に大きく、Ψc>0.9の粒子割合が66%を超えている。
その水アトマイズ粉末に、5%以上さらには10%以上のガスアトマイズ粉末を混合すると、得られた混合粉末は、Ψc>0.8となる構成粒子の存在率が40%を超え、Ψcmも0.75を超えるようになる。
そして表1からも明らかなように、水アトマイズ粉末へ混合するガスアトマイズ粉末の割合(GA率)を変更することにより、粒形分布が広範囲にわたり種々異なる混合粉末(ガスアトマイズ混合粉末)が得られることがわかる。このことは、表1に示した各試料の粒形分布に基づき、GA率とΨcが特定範囲内となる粒子の存在率との関係を示した図4からも明らかである。
なお、表1に示した粒度分布と粒形分布を観ると、両者に相関がないことは明らかである。上述したようにGA率が変化すると粒形分布は広範囲にわたって大きく変化するが、粒度分布はGA率が変化してもほとんど変わっていない。
(3)充填特性
表1からわかるように、GA率が高くなるほど、換言するならΨcmが高くなるほど若しくは高Ψcとなる粒子の存在率が高くなるほど、ベース粉末は流動度(FR)および充填密度(AD、TD)、Cp、HR)が単調的に向上した。この様子を図5および図6に示した。
表1からわかるように、GA率が高くなるほど、換言するならΨcmが高くなるほど若しくは高Ψcとなる粒子の存在率が高くなるほど、ベース粉末は流動度(FR)および充填密度(AD、TD)、Cp、HR)が単調的に向上した。この様子を図5および図6に示した。
〈成形用粉末:処理粉末〉
(1)充填性
表2に示した各処理粉末に係る流動度を図5に重ねて示した。この図5からわかるように、処理粉末の流動度はGA率の増加に対して単調には変化しない。つまり、処理粉末の流動度は、当初はGA率の増加と共に減少するが、GA率が50%を超えるあたりから急激に増加を始め、GA率が40%付近で流動度は最小となる。またGA率:100%の流動度はGA率:0%の流動度よりも高くなった。しかもGA率:0〜50%のとき、ベース粉末に内部潤滑剤等を加えた処理粉末は、ベース粉末に対して流動度が大幅に小さくなり、超高流動性を発現することが明らかとなった。
(1)充填性
表2に示した各処理粉末に係る流動度を図5に重ねて示した。この図5からわかるように、処理粉末の流動度はGA率の増加に対して単調には変化しない。つまり、処理粉末の流動度は、当初はGA率の増加と共に減少するが、GA率が50%を超えるあたりから急激に増加を始め、GA率が40%付近で流動度は最小となる。またGA率:100%の流動度はGA率:0%の流動度よりも高くなった。しかもGA率:0〜50%のとき、ベース粉末に内部潤滑剤等を加えた処理粉末は、ベース粉末に対して流動度が大幅に小さくなり、超高流動性を発現することが明らかとなった。
表2に示した各処理粉末に係る見掛密度を図6にそれぞれ重ねて示した。この図6からわかるように、ベース粉末も処理粉末も、見掛密度はGA率の増加と共に単調に増加したが、処理粉末の方がベース粉末よりも遥かに見掛密度が大きくなった。つまり、処理粉末の方がベース粉末よりも高密度に充填され易いことがわかった。同様の傾向がタップ密度(TD)にもあることは表1および表2からわかる。
このように、処理粉末の流動度や充填密度がベース粉末よりも向上した理由は、両粉末の粒形分布の相違にあると考えられる。例えば、表1および表2に示した平均円形度(Ψcm)およびそれをグラフにした図7を観るとわかるように、GA率:0〜50%のとき、処理粉末はベース粉末よりもΨcmが高くなっている。すなわち、特定の粒形分布を有するベース粉末を溶融混合処理することにより、多くの粒子がより球状に近くなったことが、処理粉末の流動度や充填密度が大幅に向上した理由と考えられる。
ちなみに、図3に示すように真球に近い鉄基粒子の表面に内部潤滑剤等が付着すると、表面の凹凸が却って増加し、そのΨcは低下する。図7において、GA率が50%を超えたとき処理粉末のΨcmはあまり増加していないのは、そのためと考えられる。
さらに表1および表2に示したCpおよびHRを対比すると次のことがわかる。先ず、ベース粉末では、GA率の増加に伴ってCpもHRも単調に減少しており、それらの変動が大きい。一方、処理粉末では、GA率が変化してもCpもHRもほとんど変化せず、安定していることがわかる。従ってGA率:5〜50%さらには10〜45%のベース粉末(鉄基粉末)を用いることにより、内部潤滑剤等を加えた処理粉末の充填安定性が大幅に改善される。
(2)成形体特性
表2に示した各処理粉末に係る成形体のTRSを図8に示した。この図8からわかるように、GA率の増加に伴い高円形度の粒子が増加するため、抗折力は単調に減少している。しかし、成形体のハンドリングを考慮すると、抗折力は8MPa以上、複雑な形状の成形体でも10MPa以上あると問題ない。従って、GA率:5〜50%のベース粉末(鉄基粉末)を用いれば、高流動性と充填安定性に加えて、成形体の抗折力も確保されることがわかる。
表2に示した各処理粉末に係る成形体のTRSを図8に示した。この図8からわかるように、GA率の増加に伴い高円形度の粒子が増加するため、抗折力は単調に減少している。しかし、成形体のハンドリングを考慮すると、抗折力は8MPa以上、複雑な形状の成形体でも10MPa以上あると問題ない。従って、GA率:5〜50%のベース粉末(鉄基粉末)を用いれば、高流動性と充填安定性に加えて、成形体の抗折力も確保されることがわかる。
(3)粒度分布の影響
表3〜表5からわかるように、ベース粉末の粒度分布を変化させた場合でも、GA率が5〜50%内なら、処理粉末の流動性や充填密度はいずれも良好で安定していた。また成形体の密度も安定しており、重量変動もほとんど生じないことも確認された。さらに、成形体の抗折力も十分であった。同様のことは焼結体についてもいえる。つまり、焼結体密度(SD)、寸法変化率(ΔD)、最大引張強さ(UTS)および破断伸び(EL)のいずれも良好で安定していた。
表3〜表5からわかるように、ベース粉末の粒度分布を変化させた場合でも、GA率が5〜50%内なら、処理粉末の流動性や充填密度はいずれも良好で安定していた。また成形体の密度も安定しており、重量変動もほとんど生じないことも確認された。さらに、成形体の抗折力も十分であった。同様のことは焼結体についてもいえる。つまり、焼結体密度(SD)、寸法変化率(ΔD)、最大引張強さ(UTS)および破断伸び(EL)のいずれも良好で安定していた。
表5に示した各試料に係る焼結体の断面組織写真(エッチングなし)を図9A〜図9Eに示した。GA率:20%で粒形分布が本発明の範囲内にある試料41〜44(図9A〜図9D)はいずれも球状粒子が相互に焼結しており、比較的空隙が少ないことがわかる。一方、試料21(図9E)は、焼結した粒子形状がいびつであり、比較的空隙が多いことがわかる。これらの結果は、表5に示した試料41〜44のSD、UTSおよびELが、試料21のSD、UTSおよびELよりも大きいことと一致している。
このように、粒形分布が本発明の範囲内にあれば、ベース粉末の粒度分布が変化しても、充填特性、成形体特性および焼結体特性がいずれも良好であることがわかった。つまり、充填性等の各特性にはベース粉末の粒形分布が大きく影響するが、その粒度分布は殆ど影響しないことが確認された。
Claims (11)
- 金型のキャビティへ充填された後に加圧成形されて成形体となる成形用粉末の少なくとも一部を構成する鉄基粒子からなる鉄基粉末であって、
粒子投影像を画像処理して算出される円形度(Ψc)が0.8超となる前記鉄基粒子が40〜75%存在し、粉末全体の平均円形度(Ψcm)が0.92以下であることを特徴とする鉄基粉末。 - 前記Ψcmは、0.75以上である請求項1に記載の鉄基粉末。
- 前記鉄基粉末は、ガスアトマイズ粉末を一部含むガスアトマイズ混合粉末からなる請求項1または2に記載の鉄基粉末。
- 前記ガスアトマイズ混合粉末は、全体を100%としたときに、前記ガスアトマイズ粉末が5〜55%含まれ、残部が水アトマイズ粉末からなる請求項3に記載の鉄基粉末。
- 粒径が212μm以下の鉄基粒子からなる請求項1〜4のいずれかに記載の鉄基粉末。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の鉄基粉末を含む原料粉末と、
該原料粉末の粒子表面に付着した内部潤滑剤と、
からなることを特徴とする成形用粉末。 - 前記内部潤滑剤は、該内部潤滑剤の融点以上の第一温度で前記原料粉末と溶融混合されてなる請求項6に記載の成形用粉末。
- さらに、前記内部潤滑剤表面に付着したカーボンブラックを含む請求項6または7に記載の成形用粉末。
- 前記カーボンブラックは、前記内部潤滑剤の融点未満の第二温度で前記溶融混合後の原料粉末と混合されてなる請求項8に記載の成形用粉末。
- 前記原料粉末は、焼結体を強化する元素を含む強化粉末と前記鉄基粉末との混合原料粉末である請求項6〜9のいずれかに記載の成形用粉末。
- 請求項6〜10のいずれかに記載の成形用粉末を前記内部潤滑剤の融点未満の第三温度で加圧成形した成形体を焼結させてなることを特徴とする焼結体。
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