JP5786755B2 - 鉄系焼結材料の製造方法 - Google Patents

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本発明は炭素を含有した鉄粉末と、銅からなる純銅粉末と、マンガンを主成分としたマンガン粉末とを混合した混合粉末に係り、特に、鉄系焼結材料用に好適な混合粉末と、この混合粉末を用いた鉄系焼結材料の製造方法に関する。
従来から、炭素含有の鉄系焼結材料は、炭素を含有した鉄粉末を、成形金型に充填したのち、加圧成形して成形体を製造し、該成形体を焼結することにより得られる。ここで、鉄系焼結材料に、より高い強度を付与するために、鉄と合金化する合金元素が添加されることが一般的である。ここで、鉄が溶融した段階(溶湯の段階)で予め合金元素を添加して作製された鉄粉末(鉄合金粉末)を用いて、鉄系焼結材料を製造した場合、合金元素は予め鉄粉末に均一に分散しているので、得られた鉄系焼結材料の鉄基地中には、合金元素が均一に分散して鉄と合金化している。
しかしながら、このようにして得られた鉄合金粉末は、合金元素の合金化(固溶体硬化)により、合金元素を添加しない場合に比べて硬くなるため、上述した成形体への成形性が低下してしまう。これにより、得られた鉄系焼結材料は、所望の密度が得られない場合があった。
このような点を鑑みて、たとえば、炭素を含有した鉄粉末と、合金元素からなる添加粉末とを混合した混合粉末を用い、この混合粉末を加圧成形後、焼結する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、原料粉末として、マンガン1.0質量%、クロム1.0質量%、モリブデン1.0質量%、炭素0.35質量%、ニッケル1.0質量%、銅2.0質量%、ホウ素0.2質量%、残部が鉄および不可避不純物からなる鉄系焼結材料になるように、鉄系粉末に、クロム粉末、マンガン粉末、ニッケル粉末等の添加粉末を混合した混合粉末を用いて、鉄系焼結材料を製造する方法が提案されている。
特開昭63−227750号公報(第3頁右下欄、第1表の2)
しかしながら、このような添加粉末(合金元素からなる粉末)を用いた場合には、混合された添加粉末の元素が、焼結時において、鉄粉末に由来する鉄基地内に拡散する速度が十分でないことがあり、得られる鉄系焼結材料の成分が均一とならず、これらの添加粉末由来の元素が組織偏析することがあった。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とすることころは、成形性を高めると共に、焼結時における鉄系焼結材料の成分が均一となる鉄系焼結材料用の混合粉末およびこれを用いた鉄系焼結材料の製造方法を提供することにある。
発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、添加する元素として、銅とマンガンに着目した。具体的には、マンガン(Mn)は鉄(Fe)よりも銅(Cu)に拡散しやすい点に着眼し、これにより得られた、銅−マンガン合金は、焼結時に銅の融点よりも低い融点となり液相状態となる。この結果、液相状態の銅−マンガン合金により、銅およびマンガンの鉄基地への拡散性が向上するとの新たな知見を得た。ここで、クロムと銅の合金、モリブデンと銅の合金は、合金化すると融点が上がるため、焼結時にこれらの合金は液相化し難い。
本発明は、発明者の新たな知見に基づくものであり、本発明に係る鉄系焼結材料は、炭素を含有した鉄粉末と、銅からなる純銅粉末と、マンガンを主成分としたマンガン粉末とを混合した鉄系焼結材料用の混合粉末であって、前記純銅粉末は、混合粉末に対して、3〜5質量%含有されており、前記混合粉末に含まれるマンガン/銅の質量比は、0.25〜0.5の範囲にあることを特徴とする。
本発明によれば、鉄に銅およびマンガンを添加した鉄合金粉末を用いた場合に比べて、鉄粉末、純銅粉末、およびマンガン粉末を混合した混合粉末を用いた場合には、これらの粉末は、成形時には合金化していないので、粉末から成形体(鉄系焼結材料)への成形性を高めることができる。
また、マンガンは鉄よりも銅に拡散しやすいことから、焼結時に、純銅粉末の銅と、マンガン粉末のマンガンとが、加熱されて合金化して銅−マンガン合金となり、さらに、銅−マンガン合金は液相状態となる。この結果、銅−マンガン合金を構成する元素が、鉄粉末由来の鉄基地に拡散しやすくなる。このようにして、得られた鉄系焼結材料のマンガンは、組織偏析することがほとんどなく、添加元素の成分が、鉄基地内において均一に拡散した状態となる。
ここで、銅の含有量を3〜5質量%とし、かつ、マンガン/銅の質量比は、0.25〜0.5の範囲とすることにより、得られる鉄系焼結材料の機械的強度を高めることができる。
銅の含有量が3質量%未満の場合には、降伏比(引張強度に対する降伏強度)が低くなり、加工硬化が大きくなり、加工し難くなる傾向にある。一方、銅の含有量が5質量%を越えた場合には、これ以上の機械的強度向上の効果を期待することができない。
また、マンガン/銅の質量比が、0.25未満の場合には、鉄系焼結材料に含まれるマンガンの量が少なくなるため、得られる鉄系焼結材料の機械的強度の向上を期待できない場合がある。一方、マンガン/銅の質量比が、0.5を超えた場合には、マンガンの含有量が増えるため、銅−マンガン合金の融点が上がってしまい、焼結時に液相化し難くなる。
ここで本発明でいう「鉄系焼結材料」とは、鉄を主成分(鉄基地)とした焼結体からなる材料のことをいい、「炭素を含有した鉄粉末」とは、炭素および鉄からなる鉄主成分の粉末のことをいい、「純銅粉末」とは銅および不可避不純物からなる粉末をいう。
さらに、「マンガン粉末」とは、マンガンを主成分とした粉末をいい、マンガンおよび不可避不純物からなる純マンガン粉末を含み、その他の成分として鉄を含有した粉末を含むものである。
さらに好ましい態様としては、前記マンガン粉末の粒径は、75μm以下である。このようなマンガン粉末の粒径を用いることにより、マンガン粉末のマンガンがより効率的に純銅粉末に拡散して銅と合金化し、鉄基地に拡散するので、得られた鉄系焼結材料の機械的強度を高めることができる。また、マンガン粉末の粒径は、小さくなるとコストアップすることから、10μm以上であることが好ましい。
上述した混合粉末を用いて、以下に示す鉄系焼結材料を製造する。この製造方法は、混合粉末を成形体に成形する成形工程と、該成形体を加熱することにより、前記銅と前記マンガンとを合金化すると共に、合金化した銅−マンガン合金を液相状態にして、銅−マンガン合金の各元素を前記成形体の内部の鉄に拡散させながら、前記成形体を焼結する焼結工程と、を少なくとも含む。
この態様によれば、成形工程において、鉄に銅およびマンガンを添加した鉄合金粉末を用いた場合に比べて、鉄粉末、純銅粉末、およびマンガン粉末を用いた場合には、これらの粉末は、成形時には合金化していないので、粉末から成形体(鉄系焼結材料)への成形性を高めることができる。これにより、得られる鉄系焼結材料の密度を高め、機械的強度を高めることができる。
そして、焼結工程において、純銅粉末の銅と、マンガン粉末のマンガンとが、加熱されて合金化して銅−マンガン合金となり、さらに、この銅−マンガン合金は液相状態となる。この結果、銅−マンガン合金を構成する元素が、鉄粉末由来の鉄基地に拡散し、得られた鉄系焼結材料には、添加元素が組織偏析する(マンガンが残留する)ことがほとんどなく、均一に拡散する。このようにして、鉄系焼結材料の機械的強度を高めることができる。
本発明に係る鉄系焼結材料用の混合粉末によれば、成形性を高めると共に、焼結時における鉄系焼結材料の成分が均一となる。
実施例1および比較例1の鉄系焼結材料の密度を測定した結果を示した図。 実施例1および比較例1の鉄系焼結材料の引張強度の結果を示した図。 (a)は、実施例1の鉄系焼結材料の組織写真図であり、(b)は、(a)の拡大写真図。 (a)は、実施例1の鉄系焼結材料のSEM像を示した図であり、(b)は、実施例1の鉄系焼結材料のMnのマッピングを示した図であり、(c)は、比較例2の鉄系焼結材料のSEM像を示した図であり、(d)は、比較例2の鉄系焼結材料のMoのマッピングを示した図。 実施例1の試験片(鉄系焼結材料)の各成分の濃度を示した図であり、(a)は、鉄(Fe)の濃度を示した図であり、(b)は、炭素(C)の濃度を示した図であり、(c)は、銅(Cu)の濃度を示した図であり、(d)は、マンガン(Mn)の濃度を示した図。 実施例2、実施例3および比較例3の鉄系焼結材料の引張強度の結果を表した図。 実施例4の鉄系焼結材料の銅添加量と強度との関係を示した図。 実施例4の鉄系焼結材料の銅添加量と降伏比との関係を示した図。 実施例5および6、比較例4の成形体の成形圧と成形体密度との関係を示した図。 実施例7の鉄系焼結材料のマンガン粉末の粒径と、引張強さとの関係を示した図。
以下に、本発明の実施形態を詳述する。本発明に係る鉄系焼結材料用の混合粉末およびこれを用いた鉄系焼結材料の製造方法の実施形態を以下に説明する。
本実施形態の焼結体の製造方法は、主に、混合工程、成形工程および焼結工程からなり、適宜、熱処理工程が行われる。以下、各工程について詳しく説明する。
(1)混合工程
混合工程は、以下に示す原料粉末を混合して混合粉末とする工程であり、この工程で、本実施形態にかかる鉄系焼結材料用の混合粉末が製造される。本実施形態では、以下に示す鉄粉末と、純銅粉末と、マンガン粉末とを準備し、これらの粉末を均一に混合し、混合粉末を製造する。この混合工程により各種の原料粉末は均一に混合され、均質な焼結体(鉄系焼結材料)を安定して得ることができる。
鉄粉末は、炭素を含有し、鉄元素を主成分とした粒子からなる粉末であり、炭素を含有した鉄の溶湯から、たとえば、粉砕法、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法などにより製造することができる。鉄粉末の平均粒径は70〜100μmで、混合粉末の総量に対して、40〜90質量%含有することがより好ましい。
純銅粉末は、純銅からなる粉末であり、銅と不可避不純物からなる粉末である。純銅粉末は、鉄粉末と同様の製造方法により製造することができる。純銅粉末の平均粒径は10〜80μmで、混合粉末の総量に対して、3〜5質量%含有している。
ここで、後述するマンガンは鉄よりも銅に拡散しやすいため、純銅粉末を用いることにより、焼結時において、銅とマンガンとを合金化させ、これを液相状態にすることができる。これにより、液相状態となった銅−マンガン合金が上述した鉄粉末の鉄基地中に均一に拡散し易くなる。これにより、鉄系焼結材料の機械的強度(引張強さ、0.2%耐力など)を向上させることができる。
さらに、純銅粉末の含有量(混合粉末に対する銅の含有量)を、3質量%以上とすることにより、鉄系焼結材料の降伏比をさらに向上させることができる。また、純銅粉末の含有量が5質量%を超えたとしても、これ以上の機械的強度向上の効果を期待することができない。
マンガン粉末は、マンガンを主成分とした粉末である。マンガン粉末の平均粒径は10〜75μmである。発明者の後述する実験によれば、マンガン粉末の粒径を、75μm以下にしたことにより、得られた鉄系焼結材料の機械的強度を画期的に高めることができる。
マンガン粉末は、マンガンおよび不可避不純物からなる純マンガン粉末、または、鉄(Fe)が添加された粉末であってもよい。マンガン粒子のマンガンは、焼結時に、上述した如く、純銅粉末の銅と合金化して液相状態となり、鉄粉末由来の鉄基地に効率よく拡散するため、鉄系焼結材料の機械的強度を高めることができる。
本実施形態では、混合粉末に含まれるマンガン/銅の質量比は、0.25〜0.5の範囲にある。発明者の実験によれば、この範囲を満たす混合粉末を用いて、得られた鉄系焼結材料の引張強度が向上することがわかっている。
ここで、マンガン/銅の質量比が、0.25未満の場合には、鉄系焼結材料に含まれるマンガンの量が少なくなるため、得られる鉄系焼結材料の機械的強度の向上を期待できない場合がある。一方、マンガン/銅の質量比が、0.5を超えた場合には、マンガンの含有量が増えるため、銅−マンガン合金の融点が上がってしまい、焼結時に液相化し難くなる。
さらに、この他にも、MnSからなる粉末を、混合粉末に対して0.05〜1.0質量%の範囲となるように添加してもよい。MnSは、快削成分であるため、得られた鉄系焼結材料の切削性を向上させることができる。ここで、MnS粉末が0.05質量%未満では、快削性の効果が十分であるといえず、1.0質量%を超えた場合には、鉄系焼結材料の強度低下を招くおそれがある。
(2)成形工程
(1)で得られた混合粉末から、成形用の金型を用いて成形体を成形する。これらの混合粉末を金型に充填する前に、金型の内面に高級脂肪酸系潤滑剤を塗布してもよい。ここで使用する高級脂肪酸系潤滑剤は、高級脂肪酸自体の他、高級脂肪酸の金属塩であってもよい。塗布するにあたって、加熱された金型内に水、水溶液またはアルコール溶液等に分散させた高級脂肪酸系潤滑剤を噴霧して行う。
次に、高級脂肪酸系潤滑剤が内面に塗布された金型へ、混合粉末を充填し、充填された混合粉末を、常温で加圧成形する。ここでは、鉄系焼結材料の密度を高めるべく、温間金型潤滑法により成形体を成形してもよく、混合粉末を所望の形状および密度に成形することができるのであれば、特にこの方法に限定される必要はない。
このようにして、鉄に銅およびマンガンを添加した鉄合金粉末を用いた場合に比べて、鉄粉末、純銅粉末、およびマンガン粉末を含む混合粉末を用いた場合には、これらの粉末は、成形時には合金化していないので、粉末から成形体(鉄系焼結材料)への成形性を高めることができる。
(3)焼結工程
(2)で得られた成形体を加熱して、たとえば不活性ガス雰囲気下で焼結する。具体的には、成形体を加熱することにより、純銅粉末の銅とマンガン粉末のマンガンとを合金化すると共に、合金化した銅−マンガン合金を液相状態にして、銅−マンガン合金の各元素を前形体の内部の鉄に拡散させながら、成形体を焼結する。
焼結温度および焼結時間は、焼結体の所望特性、生産性等を考慮して適宜選択される。焼結温度は高い程、短時間で高強度な鉄基焼結合金(焼結体)が得られる。本実施形態における焼結温度は、870℃〜1250℃の範囲にあり、焼結時間は、焼結温度、焼結体(鉄基焼結合金)の仕様、生産性、コスト等を考慮しつつ0.1〜3時間の範囲とするのがよい。
このような温度範囲で成形体を加熱することにより、銅とマンガンとが合金化すると共に、合金化した銅−マンガン合金が溶融して液相状態となる。これにより、銅−マンガン合金の各元素の基地への拡散性を高めることができる。これにより、マンガン粒子が内部に溶け残ることがほとんどなく、均一な成分の鉄系焼結材料を得ることができる。
このようにして得られた鉄系焼結材料は、一般的な焼結部品ばかりでなく、コンロッド、歯車等の機械部品に好適に用いることができる。
以下に、本発明を具体的に実施した実施例について比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
以下に示す方法で、実施例1の鉄系焼結材料を製造した。得られる成分が、銅:4.0質量%、マンガン:1.25質量%、炭素:0.8質量%、残部鉄および不可避不純物となるように、炭素を含有した粒径80μmの鉄粉末と、銅からなる粒径28μmの純銅粉末と、マンガンからなる粒径30μmの純マンガン粉末と準備し、これらをV型混粉機で回転混合して種々の混合粉末(原料粉末)を調製した。なお本明細書でいう粒径は、篩い分けにより特定されるものである。
成形型を用い、成形型内部に、ステアリン酸亜鉛を塗布し、上記したように配合した混合粉末を78.4×10Pa(8tonf/cm)の加圧力で試験片を圧縮成形し、圧粉成形体(成形体)を形成した。成形体を1150℃の不活性雰囲気(窒素ガス雰囲気)下で30分間焼結し、鉄系焼結材料(Fe−4Cu−1.25Mn−0.8C)を作製した。
〔比較例1〕
以下に示す方法で、比較例1の鉄系焼結材料を製造した。得られる成分が、銅:4.0質量%、マンガン:1.25質量%、炭素:0.8質量%、残部鉄および不可避不純物となる、鉄系合金粉末(Fe−1.25Mn)と、銅からなる純銅粉末とを準備した。実施例1と同様に、混合粉末から成形型を用いて成形体を成形し、同様の条件で成形体を焼結し、鉄系焼結材料(Fe−4Cu−1.25Mn−0.8C)を作製した。
〔比較例2〕
以下に示す方法で、比較例2の鉄系焼結材料を製造した。得られる成分が、銅:4.0質量%、モリブデン:1.25質量%、炭素:0.8質量%、残部鉄および不可避不純物となるように、炭素を含有した鉄粉末と、銅からなる純銅粉末と、モリブデンからなる純モリブデン粉末と準備し、これらをV型混粉機で回転混合して種々の混合粉末(原料粉末)を調製した。実施例1と同様に、混合粉末から成形型を用いて成形体を成形し、同様の条件で成形体を焼結し、鉄系焼結材料(Fe−4Cu−1.25Mo−0.8C)を作製した。
<密度の測定>
実施例1および比較例1の試験片(鉄系焼結材料)の密度の測定を行なった。図1は、実施例1および比較例の鉄系焼結材料の密度を測定した結果を示した図である。
図1に示すように、実施例1の鉄系焼結材料は、比較例1のものに比べて、密度が高かった。このような結果となった理由は、鉄にマンガンを添加した鉄合金粉末を用いた比較例1の場合に比べて、鉄粉末、純銅粉末、および純マンガン粉末を含む混合粉末を用いた実施例1の場合、混合粉末は、成形時には合金化していないので、粉末から成形体(鉄系焼結材料)への成形性を高めることができたからであると考えられる。
<引張強度の測定>
実施例1および比較例1の試験片(鉄系焼結材料)を加工して、中心部分での円筒の直径3.75mm、長さ9.65mmの試験片を作製し、これらの試験片の引張強度を測定した。図2は、実施例1および比較例1の鉄系焼結材料の引張強度の結果を示した図である。
図2に示すように、実施例1の鉄系焼結材料は、比較例1のものに比べて、引張強度が高かった。これは、図1に示すように実施例1の鉄系焼結材料が比較例1のものよりも密度が高いことが起因していると考えられる。
<組織観察>
実施例1の試験片(鉄系焼結材料)を顕微鏡で組織観察した。図3(a)は、実施例1の鉄系焼結材料の組織写真図であり、(b)は、(a)の拡大写真図である。図3(a)、(b)に示すように、実施例1の鉄系焼結材料には、純マンガン粉末由来のマンガンが溶け残っていなかった。このことから、実施例1の場合には、純マンガン粉末由来のマンガンは、すべて、鉄基地内に拡散したものと考えられる。
<EDAXマッピング分析>
実施例1および比較例2の試験片(鉄系焼結材料)のSEM観察と、Mn(実施例1),Mo(比較例2)元素をEDAXによりマッピング分析した。図4(a)は、実施例1の鉄系焼結材料のSEM像を示した図であり、(b)は、実施例1の鉄系焼結材料のMnのマッピングを示した図であり、(c)は、比較例2の鉄系焼結材料のSEM像を示した図であり、(d)は、比較例2の鉄系焼結材料のMoのマッピングを示した図である。
図4(a),(b)に示すように、実施例1の場合には、鉄系焼結材料にマンガンの溶け残りはなかったが、図4(c),(d)に示すように、比較例2の場合には、鉄系焼結材料にモリブデンの溶け残りがあった(モリブデンが偏析していた)。
この結果から、実施例1の場合には、マンガンは鉄よりも銅に拡散しやすいため、焼結時に銅−マンガン合金となり、さらに銅−マンガン合金が液相状態となったと考えられる。これにより、液相状態の銅−マンガン合金により、銅およびマンガンの鉄基地への拡散性が向上したものと考えられる。
<EPMA分析>
実施例1の試験片(鉄系焼結材料)をEPMA分析した。図5(a)は、鉄実施例1の試験片(鉄系焼結材料)の各成分の濃度を示した図であり、(a)は、鉄(Fe)の濃度を示した図であり、(b)は、炭素(C)の濃度を示した図であり、(c)は、銅(Cu)の濃度を示した図であり、(d)は、マンガン(Mn)の濃度を示した図である。
図5(c)および(d)に示すように、マンガンは、銅と同様の濃度分布を示しており、マンガンが銅粒子に沿って拡散したと考えられる。この結果から、焼結時に銅−マンガン合金となったと考えられる。
〔実施例2〕
以下に示す方法で、実施例2の鉄系焼結材料を製造した。得られる成分が、銅:4.0質量%、炭素:0.8質量%、マンガンを0質量%,0.5質量%,0.75質量%,1.00質量%,1.25質量%,または1.5質量%とし、残部鉄および不可避不純物となるように、炭素を含有した鉄粉末と、銅からなる純銅粉末と、マンガンからなる純マンガン粉末と準備し、これらをV型混粉機で回転混合して種々の混合粉末(原料粉末)を調製した。実施例1と同様に、混合粉末から成形型を用いて成形体を成形し、同様の条件で成形体を焼結し、鉄系焼結材料(Fe−4Cu−0,0.5,0.75,1.00,1.25,1.5Mn−0.8C)を作製した。
〔実施例3〕
以下に示す方法で、実施例3の鉄系焼結材料を製造した。得られる成分が、銅:3.0質量%、炭素:0.8質量%、マンガンを0質量%,0.5質量%,0.75質量%,1.00質量%,または1.25質量%とし、残部鉄および不可避不純物となるように、炭素を含有した鉄粉末と、銅からなる純銅粉末と、マンガンからなる純マンガン粉末と準備し、これらをV型混粉機で回転混合して種々の混合粉末(原料粉末)を調製した。実施例1と同様に、混合粉末から成形型を用いて成形体を成形し、同様の条件で成形体を焼結し、鉄系焼結材料(Fe−3Cu−0,0.5,0.75,1.00,1.25Mn−0.8C)を作製した。
〔比較例3〕
以下に示す方法で、比較例3の鉄系焼結材料を製造した。得られる成分が、銅:2.0質量%、炭素:0.8質量%、マンガンを0質量%,0.5質量%,0.75質量%,または1.00質量%とし、残部鉄および不可避不純物となるように、炭素を含有した鉄粉末と、銅からなる純銅粉末と、マンガンからなる純マンガン粉末と準備し、これらをV型混粉機で回転混合して種々の混合粉末(原料粉末)を調製した。実施例1と同様に、混合粉末から成形型を用いて成形体を成形し、同様の条件で成形体を焼結し、鉄系焼結材料(Fe−2Cu−0,0.5,0.75,1.00Mn−0.8C)を作製した。
実施例2、3および比較例3の鉄系焼結材料に対して、実施例1と同様の引張試験を行い、各鉄系焼結材料の引張強度を測定した。図6は、実施例2(○)、実施例3(□)および比較例3(△)の鉄系焼結材料の引張強度とマンガン/銅の質量比(Mn/Cu)の関係を表した図である。または、表1は、これら鉄系焼結材料の引張強度の結果とマンガン/銅の質量比(Mn/Cu)の関係を示した表である。
Figure 0005786755
この結果から、実施例2および3の引張強度は、比較例3のものに比べて、大きかった。
鉄系焼結材料の銅の含有量が3質量%以上とし、図6から判断して、マンガン/銅の質量比は、0.25〜0.5の範囲とすることにより、得られる鉄系焼結材料の機械的強度を高めることができると考えられる。マンガン/銅の質量比(Mn/Cu)が、0.25未満の場合には、鉄系焼結材料に含まれるマンガンの量が少なくなるため、得られる鉄系焼結材料の機械的強度の向上を期待できない場合があると考えられる。一方、マンガン/銅の質量比(Mn/Cu)が、0.5を超えた場合には、マンガンの含有量が増えるため、銅−マンガン合金の融点が上がってしまい、焼結時に銅−マンガン合金が液相化し難くなると考えられる。
〔実施例4〕
実施例1と同じようにして、鉄系焼結材料を製造した。実施例1と相違する点は、図7および8に示すように、純マンガン粉末を添加せずに、銅の添加量を、0質量%、2質量%、3質量%、4質量%とした点である。
そして、これらの試験片(鉄系焼結材料)に対して、引張試験を行い引張強さ、0.2%耐力、降伏比を測定した。図7は、実施例4の鉄系焼結材料の銅添加量と強度との関係を示した図であり、図8は、実施例4の鉄系焼結材料の銅添加量と降伏比との関係を示した図である。
図7に示すように、銅を添加することにより、鉄系焼結材料の引張強さと0.2%耐力は増加する。さらに、図8に示すように、純銅粉末の含有量(混合粉末に対する銅の含有量)を、3質量%以上とすることにより、鉄系焼結材料の降伏比をさらに向上させることができる。また、純銅粉末の含有量が5質量%を超えたとしても、これ以上の機械的強度向上の効果を期待することができないと考えられる。
〔実施例5〕
以下に示す方法で、実施例5の成形体を製造した。得られる成分が、銅:3.0質量%、炭素:0.8質量%、マンガン:1.25質量%とし、残部鉄および不可避不純物となるように、炭素を含有した鉄粉末と、銅からなる純銅粉末と、マンガンからなる純マンガン粉末と準備し、これらをV型混粉機で回転混合して種々の混合粉末(原料粉末)を調製した。実施例1と同様に、成形型を用いて、この混合粉末から、成形圧4〜7tonにおける成形体を製作し、この成形体の密度を測定した。
〔実施例6〕
実施例5と同じようにして、成形体を製造した。実施例5と相違する点は、純マンガン粉末の代わりに、78質量%のマンガン、残り鉄及び不可避不純物からなる粉末(Fe―78Mn)を用いた点であり、この成形体の密度を測定した。
〔比較例4〕
実施例5と同じようにして、焼結前の成形体を製造した。実施例5と相違する点は、比較例1に示した合金粉末を用いて成形体を作製した点であり、この成形体の密度を測定した。
図9は、実施例5および6、比較例4の成形体の成形圧と成形体密度との関係を示した図である。図9に示すように、実施例5の純マンガン粉末(Mn)の場合(○)、および、実施例6の、78質量%のマンガン、残り鉄及び不可避不純物からなる粉末(Fe―78Mn)の場合(△)のいずれの場合であっても、比較例4のものに比べて、成形体の密度は、高くなった。このことから、マンガンを主材として鉄を含有するマンガン粉末であっても、純マンガン粉末と同様の効果を期待することができると考えられる。
〔実施例7〕
実施例1と同じようにして、鉄系焼結材料を製造した。実施例1と相違する点は、図10に示すように、純マンガン粉末の粒径を45μm,75μm,106μmに変更した点である。そして、実施例1と同様に、引張強さを測定した。図10は、実施例7の鉄系焼結材料のマンガン粉末の粒径と、引張強さとの関係を示した図である。図10に示すように、マンガン粉末の粒径は、75μm以下であれば、鉄系焼結材料の引張強度は高い状態にあるといえる。
このような粒径のマンガン粉末において、マンガン粉末のマンガンがより効率的に純銅粉末に拡散して銅と合金化し、鉄基地に拡散するので、得られた鉄系焼結材料の機械的強度を高めることができると考えられる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。

Claims (2)

  1. 炭素を含有した鉄粉末と、銅からなる純銅粉末と、マンガンを主成分としたマンガン粉末とを混合した合粉末であって、前記純銅粉末は、混合粉末に対して、3〜5質量%含有されており、前記混合粉末に含まれるマンガン/銅の質量比は、0.25〜0.5の範囲にあ混合粉末を、成形体に成形する成形工程と、
    該成形体を加熱することにより、前記銅と前記マンガンとを合金化すると共に、合金化した銅−マンガン合金を液相状態にして、銅−マンガン合金の各元素を前記成形体の内部の鉄に拡散させながら、前記成形体を焼結する焼結工程と、を少なくとも含むことを特徴とする鉄系焼結材料の製造方法。
  2. 前記マンガン粉末の粒径は、75μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の鉄系焼結材料の製造方法
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