JP5365759B1 - ヤード管理装置、ヤード管理方法およびコンピュータプログラム - Google Patents

ヤード管理装置、ヤード管理方法およびコンピュータプログラム Download PDF

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Abstract

本発明は、金属材を配置するヤード(501−504)に既到着の金属材とヤードに未到着の金属材とを搬送単位毎に搬送機器(1A,1B,2A,2B)により搬送して、ヤード(501−504)の後工程への払い出し順に応じた積順で山積みされた金属材からなる本山(X,Y)を作成するためのヤード管理装置であって、未到着材と既到着材とを含む搬送対象の金属材の初期搬送時刻又は最終搬送時刻を決定変数として用いて、金属材の搬送順に関する搬送制約式と、本山(X,Y)に搬送される過程で金属材が滞留する時間を最小化する搬送目的関数とを表現し、搬送制約式を満足する範囲で搬送目的関数を最小化し、金属材の初期搬送時刻及び最終搬送時刻の最適値を導出するとともに、両最適値に基づいて、本山(X,Y)に配置される前に金属材をヤード(501−504)に仮置きして仮山を形成する必要があるか否かを、金属材のそれぞれについて判定して、仮置き対象となる金属材を決定するものである。

Description

本発明は、ヤード管理装置、ヤード管理方法およびコンピュータプログラムに関し、特に、金属製造プロセスにおいて、スラブやコイルなどの金属材を次工程へ円滑に供給するために設けられたヤードで金属材の山仕分けや物流分野等でコンテナの山分けを行うために用いて好適なものである。
金属製造プロセスの一例である製鉄プロセスにおいて、例えば製鋼工程から次工程の圧延工程へ、金属材の一例である鋼材を搬送する際、鋼材は、一旦ヤードと呼ばれる一時保管場所に置かれた後、次工程である圧延工程の処理時刻に合わせてヤードから搬出される。そのヤードのレイアウトの一例を図5に示す。ヤードとは、図5に示すように、上流工程より払い出されたスラブなどの鋼材を、下流工程に供給するためのバッファーエリアとして、縦横に区画された置場501〜504である。縦方向の分割区分を“棟”、横方向の分割区分を“列”と称することが多い。つまり、クレーン(1A、1B、2A、2B)は棟内を移動可能であり、同一棟内での異なる列の間で鋼材の移送を行う。また搬送テーブルにより棟間の鋼材の移送を行う。搬送指令を作成する際は“棟”及び“列”を指定することにより、どこへ鋼材を搬送するかを示す(図5の置場501〜504に括弧書きで付されている番号(11)、(12)、(21)、(22)を参照)。
次に、図5を例にヤードでの基本的な作業の流れを示す。まず、前工程である製鋼工程の連鋳機510から搬出された鋼材は、パイラー511を経由して受入テーブルXでヤードまで運ばれ、クレーン1A、1B、2A、2Bにより、区画された置場501〜504の何れかに搬送され、山積みして置かれる。そして、後工程である圧延工程の製造スケジュールに合わせ、再びクレーン1A、1B、2A、2Bにより払出テーブルZに載せられ、圧延工程へと搬送される。一般に、ヤードにおいて鋼材は、前記の様に山積みされた状態で置かれる。これは、限られたヤード面積を有効に活用するためである。一方、当然、鋼材を積上げる際、次工程へ供給し易いよう、次工程処理順番に鋼材が上から積まれている必要がある。ここで、鋼材を複数の山に分けることを山仕分けと呼ぶ。
ここで、本明細書、特許請求の範囲、および図面では、「本山」、「元山」、「仮山」を以下の意味で用いることとする。
本山:後工程に払出すために積み上げた最終的な山(払出山ともいう)。
元山:現時点で、既にヤードにおいて形作られている山。
従って、元山には本置き部分と仮置き部分とがある。
仮山:現時点以降に、元山或いは受入テーブルから、本山へ移送する際に、やむを得ず仮置きを行う山。
ヤードにおいて後工程にスムーズに要求された鋼材を払出すべく行う山仕分け処理では、到着予定の鋼材が降格となる(鋼材の造り込みの際に生ずる品質トラブルなどの理由により当初予定の用途からグレードを下げ別の用途に振り替える)こと、或いは到着予定の鋼材に対して予定されていない精整処理が必要となったり、サイズが変わったりすることにより、当初の予定通りの鋼材が到着しないことは頻繁に起こり得る。また、ヤードの置場の状態も当初の予定通りに淡々と遷移することは、ほとんど期待できず、予定していない鋼材を予定していない置場に置かざるを得ないことは日常茶飯事である。
従って、このような事態に対処する方法として頻繁に(数分間間隔で)リスケジュールを行い、払出山姿(本山姿)及びそれを作成するための搬送処理手順を見直している。
特に、払出山姿(本山姿)を実現するための搬送処理手順をリスケジュールするには、ヤード内の様々な状況から払出山姿を実現するために要する数多くの搬送処理を想定し、その実行順を効率的に定める必要がある。
このようにして搬送処理手順をリスケジュールすることは、以下の理由により少なからず難解であり、対応を誤ると、受入テーブルが渋滞することや、クレーンの能力以上の搬送負荷が発生して搬送作業が滞ることや、ヤード内に置場が見つからずにヤード管理に破たんをきたすことも起こり得る。
このリスケジュールの問題が難解であるのは、まず、ヤードには仮置きの状態(最終的には分解され、それぞれの払出山へ搬送されるが、しかるべきタイミングが来るまで一時的に積まれた山状態)で置かれている鋼材もあれば、本置き(払出山の一部)として置かれている場合もあり、それぞれの鋼材がどちら(仮置き、または本置き)に属するのかを見極め、最も効率的に(最小の搬送回数で)仮置きのものは払出山姿となるよう各鋼材の搬送順を定める必要がある。更に、払出山は、既にヤードにある鋼材と、これからヤードに到着する鋼材とが混在して構成されることがあることから、前述したリスケジュールは、ヤードに到着済みの鋼材だけでは決められず、今後到着する予定の鋼材との兼ね合いで決めざるを得ない。つまり、静的要素である到着済み鋼材の搬送(配替え処理)と、動的要素としての到着予定鋼材の搬送(受入処理)との両方をミックスして考えてリスケジュールを行わなければならない。従って、配替え処理(静的要素)だけであれば積状態を考慮し物理的に処理可能な順番に搬送を行い積み替えることになるが、未到着の鋼材と既到着の鋼材とが混在している場合には、未到着の鋼材の到着タイミングを計り、そちらとの兼ね合いで配替え処理(元山の分解処理)を行わなければならなくなるので、配替え処理のタイミングも容易に決められなくなる。
未到着材に対する搬送処理のバリエーションとしては、受入テーブルから直接、本山(払出山)に搬送できる場合と、受入の際は一旦、本山とは違う場所(仮山)に搬送、仮置きし、しかるべき条件が整ったら本山へ搬送しなくてはならない場合と、がある。また、既到着材に対する搬送処理のバリエーションに関しても、元山から動かす必要がない場合と、元山から直接本山へ搬送できる場合と、一旦、本山とは違う場所(仮山)に搬送、仮置きしてから本山へ搬送する必要がある場合と、がある。
以上のように、仮置きを必要とする場合には、受入テーブル、或いは既に置かれている場所(元山)から仮置き場所(仮山)への搬送と仮置き場所(仮山)から本山への搬送の二回の搬送が必要となるため、このようなケースを少なくすることが、トータルの搬送回数を減らす上で重要となる。
ヤードにおける鋼材の搬送計画が不適切な場合の深刻な事態として、仮置きの対象となる鋼材の数が多くなり過ぎることや、仮置き時間が長くなりすぎることにより、ヤード内に置場を確保できず、ヤード管理が破綻してしまう場合がある。また、ヤード内の配替え処理に手間を掛け過ぎ、受入れ処理に対応できず受入テーブルが渋滞を起こし、前工程を止めざるを得ないという状況を起こす場合もある。何れの場合も、生産に多大な悪影響を与えることから、何としても防がねばならない事態である、よって、ヤードにおける鋼材の搬送計画を適切に立案することが重要となる。
従来、鋼材の山仕分けのための鋼材搬送計画は、計画作成担当者が、これからヤードに受け入れる鋼材の情報と、ヤードに既に置かれている鋼材の情報と、払出山姿(本山姿)の情報とを基に、試行錯誤的に行っていた。しかし、このような人手による計画では、計画対象鋼材が多く、搬送回数も多数となる場合には、“効率的な”搬送計画が作成できないことが多かった。また、計画の作成には熟練を要するため、作成された計画に個人差が発生し、計画の作成者によっては、ヤードの有効利用ができず置場がなくなるという問題があった。さらに、熟練担当者の育成に長期間を要する点も問題であった。ちなみに、ここでの“適切な”搬送計画とは、現在のヤード山状態から払出山姿を実現するため、受入での渋滞を引き起こすことなく、搬送回数や仮置きスペース、仮置き時間を出来るだけ少なくすることである。
これらのことが要求される置場管理方法に対し、いくつかの方法が開発されている。特許文献1に記載の技術は、山入れに関する情報ファイルを利用し、払い出しの際に山繰りが生じないよう順に製品を積むという基本的なものである。特許文献2でも大ロットの物品を単独の山とすることにより、小ロットの物品の上に大ロットの物品が積上げられる事態を防ぐことなどにより出荷の際の配替え作業を削減するという極基本的な置場管理方法が提案されている。
また、特許文献3では、計画対象の鋼板の数が膨大になった場合においても、ヤードに積む際の条件を満たす最適な山積み順番の計画を、自動的に且つ比較的短時間に作成することを目的とした鋼板山積み計画方法が提案されている。この技術は、鋼板のサイズ、圧延順番等の条件を基に鋼板をグループ化し、その各グループの配列順番が異なる配列パターンを複数作成し、その配列パターンの先頭のグループから積山判定条件を基に山積みシミュレーションを行い、その結果に基づいて配列パターン毎に積山数を求め、この積山数が最少の配列パターンを選定し、更に、作成した配列パターンの中から積山数が少ない順番に所定個数の配列パターンを選定し、その選定した配列パターン間相互におけるグループ配列順番の組み替えを行って新たな配列パターンを複数作成し、この作成した配列パターンと積山数が最少の配列パターンとから同様に積山数が最少の配列パターンを選定する手順をとるものである。
更に、特許文献4には、どのスラブをどの山に割り当てるかを決める山仕分け工程と、スラブをどのような搬送ロットに分割するか決めるロット分け工程と、該ロット分け工程で決めた搬送ロットをどういう順番で生成するかを決めるロット生成順決定工程と、該ロット生成順決定工程で決めたロット生成順を実行するためのハンドリング装置の作業指示を生成する作業指示生成工程と、対象スラブを掘り出す際の邪魔なスラブをどこに退避させるか決める空き番地決定工程とを有する置場管理方法が提案されている。
また、特許文献5では、山仕分け対象となる鋼材を集合とみなし、まず、その集合の部分集合である鋼材部分集合を生成し、続いて鋼材部分集合の内、山積み制約を満たす部分集合である実現可能山を抽出した後、置き場管理上最適な実現可能山の部分集合としての最適解を算出することにより山仕分けを実現する方法が開示されている。
最後に、特許文献6では、山仕分け計画において、山高さを最大化する指標とそれを実現する搬送回数を最小化する指標とを合わせ持つ目的関数を設定し、山立て及び搬送に関する制約条件を満たす数理計画問題に帰着させ、山仕分けおよび搬送順を同時に最適化する技術が開示されている。
特開平6−179525号公報 特開2000−226123号公報 特開平11−255336号公報 特開2007−84201号公報 特開2008−260630号公報 特開2010−269929号公報
特許文献1、2、3、5に記載の発明は、これからヤードに到着予定のいわゆる未到着材を対象に山仕分け計画を行うケースに対する発明であり、払出山姿(本山姿)、即ち、対象となる鋼材の山仕分けをいかに適切に行うかという点に対する検討はなされている。しかしながら、そのような払出山を作るための、鋼材の搬送順を適正化する課題については検討がなされていない。
また、払出山姿(本山姿)及びそれを実現するために搬送順の両方の課題について、特許文献4、6が検討している。特許文献4では、まず、払出山姿(本山姿)を最適化して、その後、それを作るための鋼材の搬送順を最適化するという二段階の最適化方法を採用している。一方、特許文献6では、山仕分けとそれを実現するための搬送順との両方を同時に最適化する方法が提案されている。
従って、特許文献4、6では、搬送順についての計画を立案しているが、両方ともヤードに既に置かれた鋼材に対し、それだけで、払出山姿(本山姿)を実現しようとする場合のみを想定したものである。このような想定をしているのは、鋼材が前工程から到着した時点では次工程への払出順が決まっておらず、ヤード内に滞留している内に次工程への払出順が決まるため、その時点で初めてしかるべき払出山姿を求めることができるという前提が置かれているためである。尚、この様な状況を特許文献6では「受入済材山立てケース」と称している。
しかし、現実には、「受入済材山立てケース」の他に、鋼材が前工程から到着する時点で、次工程への払出順が決まっている、即ち払出山姿(本山姿)が決められる場合の方が多い。
そのように受入時点で払出山姿(本山姿)が決まっている場合には、到着予定材情報を基に予め全ての鋼材の搬送順を定め、それに従い処理をすれば良いかというと、前述したように、到着予定の鋼材が降格となることや、到着予定の鋼材に対して予定されていない精整処理が必要となったり、サイズが変わったりすることにより、当初の予定通りの鋼材が到着しないことが頻繁に起こり得る。かといって、鋼材の受入が終わってから鋼材を積み直すのでは手戻りも多くなるので、鋼材を受入ながら払出山に近づけていく方が効率的であることは、当然である。
従って、前述したように、ヤードにおける鋼材の搬送順の決定は、ヤードに到着済みの鋼材だけ、或いは到着予定の鋼材だけでは決められず、ヤードに到着済みの鋼材と今後到着する予定の鋼材との兼ね合いで決めざるを得ない。つまり、前述したように、静的要素である到着済み鋼材の搬送(配替え処理)と、動的要素としての到着予定の鋼材の搬送(受入処理)との両方をミックスして、ヤードにおける搬送順を考えなければならない。従って、配替え処理(静的要素)だけであれば、鋼材の積状態を考慮して物理的に処理可能な順番に搬送を行い、鋼材を積み替えることになるのに対し、配替え処理(静的要素)と受入処理(動的処理)とをミックスする場合には、未到着の鋼材の到着タイミングを計り、それとの兼ね合いで配替え処理を行わなければならなくなるので、配替え処理のタイミングも容易に決められなくなる。
以上のような従来技術の問題点に鑑みると、静的要素である到着済み鋼材の搬送(配替え処理)のみならず、動的要素としての到着予定の鋼材の搬送(受入処理)との両方をミックスして、未到着の鋼材の到着タイミングを計り、それとの兼ね合いで配替え処理のタイミングをしかるべく決定する搬送計画を立てることが重要な課題となる。
ここで、未到着の鋼材と既到着の鋼材とをミックスして払出山を作成する際に搬送順を決めることの難しさについて例を挙げて説明する。
図6は、未到着の鋼材と既到着の鋼材とをミックスして払出山を作成する第1の例を概念的に示す図である。
例えば、図6に示すように、既到着材である鋼材Aを元山Zから、しかるべきタイミングに本山(払出山)へ搬送する必要があるケースを考えてみる。つまり、本山Xで既到着材である鋼材Aの上下に配置される鋼材B(下:到着時刻T)と鋼材C(上:到着時刻T(>T))とが未到着材である場合には、それらの到着時刻の間に、鋼材Aを本山Xへ搬送すれば、仮置きなしでの搬送が可能となる。そのためには、仮に鋼材Aの存在する元山Zにて、鋼材Aの上に、その上積材である鋼材Dがある場合には、遅くとも鋼材Cの到着時刻Tの前には、それを取り除くことが必要となる。ここで、鋼材Dも仮置きが必要な鋼材(仮置き材)だとすると、鋼材Dも鋼材Aと同様に、その本山Yにて、その上下に配置される鋼材E(下:到着時刻T)と鋼材F(上:到着時刻T(>T))との到着時刻の間に搬送することが望ましいが、ここで(搬送所要時間などを無視すると)、T<Tの場合には、ここに登場する仮置き材A、Dとも更に仮置きすることなく直接本山Y(払出山)へ搬送することができる。しかし、T>Tの場合には、鋼材Cが到着するときに鋼材Eが未到着であるので、時刻Tにおいても元山Zにおいて鋼材Aの上にある鋼材Dを、本山Yへ直接搬送できないので、仮置きを行わざるを得ない。
ちなみに、この場合には、鋼材Dを仮置きし、鋼材Aを本山Xへ搬送した後、鋼材Cが到着してから本山Xへ直送するか、先に到着する鋼材Cを仮置きし、鋼材Eが到着した後、鋼材Dの本山Yへ直接するか、の何れかとなる。この例のように、互いに関連し合う搬送連鎖の中で、何れかの鋼材を仮置きしないと搬送が繋がらない状態を「コンフリクト」と称することとする。以上の例(T>Tの場合)では、鋼材D或いは鋼材Cの何れかを仮置きせざるを得ないコンフリクトが生じている状態といえる。この例からも想定できるが、このコンフリクトは何重にも連鎖して生起し得るものである。このことを、図7を参照しながら説明する。
図7は、未到着の鋼材と既到着の鋼材とをミックスして払出山を作成する第2の例を概念的に示す図である。
図7に示すように、鋼材Aが到着した時点で鋼材Aを本山Xに直送するには、元山Y1の下積材である鋼材Bの準備(本山Xに鋼材Bが搬送されていること)が必要である。しかし、元山Yでは、鋼材Bの上に鋼材Cがあるため、鋼材Cを本山Xへ搬送するには、鋼材Dの準備が必要である。しかし、元山Yでは、鋼材Dの上に鋼材Eがあるため、鋼材Eを本山Xへ送るには、鋼材Fの準備が必要である。しかし、鋼材Fは未到着であるため、事前に準備することはできない。つまり、この連鎖では、最後の鋼材Fから本山作りを始めなければならないが、鋼材Fが未到着であることにより、本山作りを始められないので、連鎖の何れかを切り(すなわち、仮置きを行い)搬送作業を行うしかない。
この場合には、以下の方法があり得るので、以下の3つのパターンでのコンフリクトといえる。
・鋼材Eを仮置→鋼材Dを準備→鋼材Cを直送(鋼材D、Cの本山Xの完成、鋼材Bの準備)→鋼材Aを直送(鋼材B、Aの本山Xの完成)→鋼材Fの到着後、鋼材Eを二次搬送(鋼材E、Fの本山Xの完成)
・鋼材Cを仮置→鋼材Bを準備→鋼材Aを直送(鋼材B、Aの本山Xの完成)→鋼材Fの到着後、鋼材Eを二次搬送(鋼材E、Fの本山Xの完成、鋼材Dの準備)→鋼材Cを二次搬送(鋼材D、Cの本山Xの完成)
・鋼材Aを仮置→鋼材Fの到着後、鋼材Eを二次搬送(鋼材E、Fの本山Xの完成、鋼材Dの準備)→鋼材Cを直送(鋼材D、Cの本山Xの完成、鋼材Bの準備)→鋼材Aを二次搬送(鋼材B、Aの本山Xの完成)
この例からも分かるように、このようなコンフリクトは、下記の様に幾重にも繋がり得る。
鋼材Aが到着時点で鋼材Aを本山Xに直送するには、元山Yの下積材である鋼材Bの準備が必要である。本山Xでは、鋼材Bが下積材であり、鋼材Aが上積材であるからである。
しかし、鋼材Bの上に鋼材Cがあるため、鋼材Cを本山Xへ搬送するには鋼材Dの準備が必要である。しかし、鋼材Dの上に鋼材Eがあるため、鋼材Eを本山Xへ搬送するには鋼材Fの準備が必要である。しかし、鋼材Fは未到着である。
以上のように、何重にも起こり得るコンフリクトの連鎖状態に対し、どの鋼材(搬送ロット)でそれを解消すべきか(仮置きすべきか)を判断するのは、そもそもどのようにコンフリクトが生じているかを検知すること自体が容易でないことから極めて厄介な課題である。ここで、搬送ロットとは、1つの搬送機器で搬送することができる鋼材の纏まりを指すものである。
特許文献6では、仮置き判定変数(y[p][s1][s2])なる概念を導入し、仮置きの発生を定式化し、それを最小限に留めるような対策を行っている。しかし、前述したように特許文献6では、既にヤードに存在する山を分解して払出山(本山)を作成する前提での問題設定となっているので、先の例の様な未到着材と既到着材とが混在した状態での搬送順や搬送ロット間のコンフリクトは考慮されていない。従って、未到着材と既到着材との間で起こるコンフリクトについては全く対処できない。
また、仮置きが生じる場合に、仮置き場所を少なくするためには、それを出来るだけまとめて置くことが要請されるが、前述した何れの文献においても、それに対し明確な対策を示していない。
加えて、当然のことではあるが、特許文献6では搬送順のみならず、払出山姿(本山姿)の最適化も同時に行っているので、対象数が少量でも非常に大きな規模の数理計画問題となってしまう。
以上のような従来技術の問題点に鑑みると、未到着材と既到着材とが混在した状態でのヤードにおける鋼材の搬送順計画を策定する際に、前述したように、何重にも起こり得るコンフリクトの連鎖状態の生起を考慮し、どの搬送ロットでそれを解消(仮置き)すべきかを判断することにより、鋼材の搬送回数を少なくすること(即ち仮置き回数を少なくすること)や、仮置き時間および受入テーブルでの待ち時間の少ない搬送順計画を現実規模の問題に対し短時間に策定することが必要である。
以上の課題は、鋼材に限らず、スラブやコイルなどの形態でヤードに搬送されるその他の金属材にも生じるものである。
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、ヤードに既に到着している既到着材とヤードにこれから到着する予定の未到着材とが混在している状況下であっても、どの金属材で仮置きをすべきかを決定することができるようにすることを第1の目的とする。
また、本発明は、金属材の仮置きを可及的に少なくすることを第2の目的とする。
本発明のヤード管理装置は、工程間の置場として、半製品と最終製品とコンテナとの何れか1つを含む金属材を配置するヤードに既到着の金属材と当該ヤードに未到着の金属材とを、1つまたは複数の金属材により構成される搬送単位毎に搬送機器により搬送して、当該ヤードの後工程への払い出し順に応じた積順で山積みされた金属材からなる本山を作成するためのヤード管理装置であって、前記既到着の金属材と前記未到着の金属材とのそれぞれについての、当該金属材を識別するための金属材識別情報と、前記既到着の金属材と前記未到着の金属材とのそれぞれについての、搬送先の前記本山を特定する情報および当該本山における当該金属材の積位置の情報を含む本山情報と、前記既到着の金属材のそれぞれについての、ヤードに現時点において山積みされている金属材からなる元山への当該金属材の帰属を特定する情報および当該元山における当該既到着の金属材の積位置の情報を含む元山情報と、前記未到着の金属材のそれぞれについての、前記ヤードの受入口への到着予定時刻を示す到着予定時刻情報と、を含む情報を外部から取り込む情報取込手段と、前記搬送単位の数の金属材からなる搬送対象金属材のそれぞれについての、現時点を基準とした最初の搬送開始時刻である初期搬送時刻および前記本山を搬送先とするときの搬送開始時刻である最終搬送時刻との少なくとも何れか一方を変数として含む制約式であって、前記搬送対象金属材の前記搬送機器による搬送時刻に係る制約を表す制約式である搬送時刻制約式を、前記情報取込手段により取り込まれた情報に基づいて設定する搬送時刻制約式設定手段と、前記搬送対象金属材のそれぞれについての、前記初期搬送時刻および前記最終搬送時刻の少なくとも何れか一方を変数として含む目的関数であって、前記本山に搬送される過程で前記搬送対象金属材が滞留する時間を表す目的関数である搬送時刻目的関数を、前記情報取込手段により取り込まれた情報に基づいて設定する搬送時刻目的関数設定手段と、前記搬送時刻制約式を満足し、かつ、前記搬送時刻目的関数の値が最小となるように、前記搬送対象金属材のそれぞれについて、前記初期搬送時刻の最適値と、前記最終搬送時刻の最適値とを算出する搬送時刻最適解算出手段と、前記初期搬送時刻の最適値と、前記最終搬送時刻の最適値とに基づいて、前記本山に配置される前に前記搬送対象金属材を前記ヤードに仮置きして仮山を形成する必要があるか否かを、前記搬送対象金属材のそれぞれについて判定して、仮置き対象となる前記搬送対象金属材を決定する仮山決定手段と、を有することを特徴とする。
本発明のヤード管理方法は、工程間の置場として、半製品と最終製品とコンテナとの何れか1つを含む金属材を配置するヤードに既到着の金属材と当該ヤードに未到着の金属材とを、1つまたは複数の金属材により構成される搬送単位毎に搬送機器により搬送して、当該ヤードの後工程への払い出し順に応じた積順で山積みされた金属材からなる本山を作成するためのヤード管理方法であって、前記既到着の金属材と前記未到着の金属材とのそれぞれについての、当該金属材を識別するための金属材識別情報と、前記既到着の金属材と前記未到着の金属材とのそれぞれについての、搬送先の前記本山を特定する情報および当該本山における当該金属材の積位置の情報を含む本山情報と、前記既到着の金属材のそれぞれについての、ヤードに現時点において山積みされている金属材からなる元山への当該金属材の帰属を特定する情報および当該元山における当該既到着の金属材の積位置の情報を含む元山情報と、前記未到着の金属材のそれぞれについての、前記ヤードの受入口への到着予定時刻を示す到着予定時刻情報と、を含む情報を外部から取り込む情報取込工程と、前記搬送単位の数の金属材からなる搬送対象金属材のそれぞれについての、現時点を基準とした最初の搬送開始時刻である初期搬送時刻および前記本山を搬送先とするときの搬送開始時刻である最終搬送時刻との少なくとも何れか一方を変数として含む制約式であって、前記搬送対象金属材の前記搬送機器による搬送時刻に係る制約を表す制約式である搬送時刻制約式を、前記情報取込工程により取り込まれた情報に基づいて設定する搬送時刻制約式設定工程と、前記搬送対象金属材のそれぞれについての、前記初期搬送時刻および前記最終搬送時刻の少なくとも何れか一方を変数として含む目的関数であって、前記本山に搬送される過程で前記搬送対象金属材が滞留する時間を表す目的関数である搬送時刻目的関数を、前記情報取込工程により取り込まれた情報に基づいて設定する搬送時刻目的関数設定工程と、前記搬送時刻制約式を満足し、かつ、前記搬送時刻目的関数の値が最小となるように、前記搬送対象金属材のそれぞれについて、前記初期搬送時刻の最適値と、前記最終搬送時刻の最適値とを算出する搬送時刻最適解算出工程と、前記初期搬送時刻の最適値と、前記最終搬送時刻の最適値とに基づいて、前記本山に配置される前に前記搬送対象金属材を前記ヤードに仮置きして仮山を形成する必要があるか否かを、前記搬送対象金属材のそれぞれについて判定して、仮置き対象となる前記搬送対象金属材を決定する仮山決定工程と、を有することを特徴とする
本発明のコンピュータプログラムは、工程間の置場として金属材を配置するヤードに既到着の金属材と当該ヤードに未到着の金属材とを、1つまたは複数の金属材により構成される搬送単位毎に搬送機器により搬送して、当該ヤードの後工程への払い出し順に応じた積順で山積みされた金属材からなる本山を作成するためのヤード管理のための処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、前記既到着の金属材と前記未到着の金属材とのそれぞれについての、当該金属材を識別するための金属材識別情報と、前記既到着の金属材と前記未到着の金属材とのそれぞれについての、搬送先の前記本山を特定する情報および当該本山における当該金属材の積位置の情報を含む本山情報と、前記既到着の金属材のそれぞれについての、ヤードに現時点において山積みされている金属材からなる元山への当該金属材の帰属を特定する情報および当該元山における当該既到着の金属材の積位置の情報を含む元山情報と、前記未到着の金属材のそれぞれについての、前記ヤードの受入口への到着予定時刻を示す到着予定時刻情報と、を含む情報を外部から取り込む情報取込工程と、前記搬送単位の数の金属材からなる搬送対象金属材のそれぞれについての、現時点を基準とした最初の搬送開始時刻である初期搬送時刻および前記本山を搬送先とするときの搬送開始時刻である最終搬送時刻との少なくとも何れか一方を変数として含む制約式であって、前記搬送対象金属材の前記搬送機器による搬送時刻に係る制約を表す制約式である搬送時刻制約式を、前記情報取込工程により取り込まれた情報に基づいて設定する搬送時刻制約式設定工程と、前記搬送対象金属材のそれぞれについての、前記初期搬送時刻および前記最終搬送時刻の少なくとも何れか一方を変数として含む目的関数であって、前記本山に搬送される過程で前記搬送対象金属材が滞留する時間を表す目的関数である搬送時刻目的関数を、前記情報取込工程により取り込まれた情報に基づいて設定する搬送時刻目的関数設定工程と、前記搬送時刻制約式を満足し、かつ、前記搬送時刻目的関数の値が最小となるように、前記搬送対象金属材のそれぞれについて、前記初期搬送時刻の最適値と、前記最終搬送時刻の最適値とを算出する搬送時刻最適解算出工程と、前記初期搬送時刻の最適値と、前記最終搬送時刻の最適値とに基づいて、前記本山に配置される前に前記搬送対象金属材を前記ヤードに仮置きして仮山を形成する必要があるか否かを、前記搬送対象金属材のそれぞれについて判定して、仮置き対象となる前記搬送対象金属材を決定する仮山決定工程と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
本発明によれば、搬送対象金属材のそれぞれについての初期搬送時刻および最終搬送時刻の最適値を求めるようにした。よって、ヤードに既到着の金属材と未到着の金属材とが混在している場合でも、どの搬送対象金属材で仮置きをすべきか(コンフリクトの連鎖状態を断ち切ればよいのか)を判断することができる。
また、本発明の他の特徴によれば、初期搬送時刻および最終搬送時刻の最適値から仮置き対象となる搬送対象金属材を特定し、仮山の数が少なくなる搬送対象金属材の仮山への配置を求めるようにした。よって、搬送対象金属材の仮置きを可及的に少なくすることができる。
図1は、ヤード管理装置の機能的な構成の一例を示す図である。 図2は、ヤード管理装置が行う処理の一例を説明するフローチャートである。 図3は、図2のステップS203の搬送時刻決定処理の詳細を説明するフローチャートである。 図4は、図2のステップS204の仮山決定処理の詳細を説明するフローチャートである。 図5は、ヤードのレイアウトの一例を示す図である。 図6は、未到着の鋼材と既到着の鋼材とをミックスして払出山を作成する第1の例を概念的に示す図である。 図7は、未到着の鋼材と既到着の鋼材とをミックスして払出山を作成する第2の例を概念的に示す図である。 図8は、ヤード管理装置のハードウェアの構成の一例を示す図である。
(本実施形態の要旨)
前述したように、何重にも起こり得るコンフリクト(互いに関連し合う搬送連鎖の中で、何れかの搬送ロットを仮置きしないと搬送連鎖が繋がらないケースでどれを仮置きとすべきかという意味の競合状態)の連鎖状態に対し、どの搬送ロットでそれを解消(仮置き)すべきかを判断するのは、そもそもどのようにコンフリクトが生じているかを検知すること自体が容易でないことから極めて厄介な課題である。
本実施形態では、このコンフリクトの連鎖状態を後述する巧妙な手法で定式化することにより、数理計画問題の解法という形で極めて合理的にこの課題を解決する手法を提案する。
本実施形態では、コンフリクトの連鎖状態を定式化するため、各搬送ロットに対し初期(一次)搬送時刻と、最終(二次)搬送時刻という二つの変数を定義する。これらの変数を用いることにより、複雑なコンフリクトの連鎖現象を数式により簡潔に表現することを可能とした。コンフリクトは、現時点での元山の状態から本山を作成する過程において以下の物理的な原則を満たせない場合に生ずる。
つまり、元山にある搬送ロットは、「(1):元山にある搬送ロットは上から順に(分解)搬送される。」、「(2):同一の本山に搬送される搬送ロットは本山の下に位置するものから順に(作成)搬送される。」という順に従い、既存の搬送ロットは元山から本山へ直接搬送でき、且つ、未到着の搬送ロットは先の順番通りに搬送テーブルから直接本山へ搬送できれば仮置きを生ずることはない。しかし、必ずしもこの(1)、(2)の順番通りに搬送ロットを搬送することができないことから、仮置き或いはコンフリクトの連鎖状態が生ずる。
さらに、次の事実が定式化のもう一つの鍵となる。「何れの搬送ロットも高々2回の搬送で、本山への搬送が可能である」、つまり、仮置き場(元山)、或いは搬送テーブルから本山へは、直接あるいは1回の仮置きを経由すれば、搬送可能であるということである。一度仮置きをすれば、それを本山へ搬送する準備ができるまでそこで待てば良いので、二回以上の仮置きの必要がないからである。ただし、仮山から本山へ搬送する際に仮置きが発生しないような考慮が必要となる(積み順(姿)制約((13−1)式〜(13−3)式)を参照)。
以下の説明では、最初の搬送を一次搬送、最後の搬送を二次搬送と称するものとする。勿論、仮置きがなく直接本山へ搬送できる場合は、一次搬送と二次搬送とが一致する。
以上の事実を考慮すると、コンフリクトの連鎖状態は、以下の二つの原則をきちんと定式化すればその発生可否を表現できていることとなる。
(1'):元山にある搬送ロットは上から順に”一次”搬送されなければならない(元山分解制約)。
(2'):同一の本山に搬送される搬送ロットは本山の下に位置するものから順に”二次”搬送されなければならない(本山作成制約)
補足すると、この表現方法のポイントは(1')では”一次”搬送、(2')では”二次”搬送となっている点である。前記の様に、「何れの搬送ロットも高々2回の搬送で、本山への搬送が可能である」から、仮置きが発生するか否か(2回の搬送が必要であるか否か)は、”一次”搬送と”二次”搬送とが一致するか否かによる。つまり、元山から本山へ搬送ロットを搬送する際、搬送ロットを直接搬送できる場合は、”一次”搬送と”二次”搬送とが一致する。一方、搬送ロットを一旦仮置きした後、本山へ搬送する場合は、”一次”搬送と”二次”搬送とが一致しない。
従って、元山を分解して搬送ロットを搬送するときは一次搬送となり、本山へ搬送ロットを搬送するときは二次搬送となる。よって、(1')および(2')とが定式化できておれば、コンフリクトの連鎖状態がある場合は、それが表現されていることになり、それを制約条件として、しかるべき目的関数(例えば、仮置き時間を最小にする目的関数等)を設定して解けば、何れかの搬送ロットにおいて、初期(一次)搬送時刻と最終(二次)搬送時刻とが一致しない解が導出されるので、そのロットが仮置き対象となることが判る。
また、本実施形態では、特許文献6に記載の技術とは異なり、搬送”順”でなく搬送”時刻”を変数とすることにより、既到着材と、到着時刻が問題となる未到着材とのコンフリクトを適正に表現することを可能としている。
以上のように本実施形態では、任意の搬送ロットに対し、初期(一次)搬送時刻、最終(二次)搬送時刻という二つの連続(離散でない)変数を用意し、それを用いて(1')および(2')を制約条件とし、鋼材の搬送回数を少なくすること(すなわち、仮置き回数を少なくすること)や、仮置き時間および受入テーブルでの待ち時間を短くすることを目的(評価)関数とすることにより、コンフリクトの連鎖状態を伴う搬送ロットの搬送順に関する最適化問題を、数理計画問題に帰着させ、いちいちそれぞれのコンフリクトをチェックすることなく、数理問題の解法という形で、鋼材の搬送回数の少ない(すなわち、仮置き回数が少なく)、仮置き時間や受入テーブルでの待ち時間の少ない「望ましい搬送計画」を立案することが可能となる。
(本実施形態の詳細)
以下に、本発明の一実施形態について、工程間の置場として、金属製造プロセスである鉄鋼製造プロセスにおける工程間の置場を対象とし、また、金属材として鋼材を対象として、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の鉄鋼プロセスなどにおけるヤード管理装置100の機能的な構成の一例を示す図である。ヤード管理装置のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、通信インターフェース、及びユーザインタフェース等を備えたコンピュータシステム(例えばパーソナルコンピュータ)を用いることにより実現できる。また、図2は、ヤード管理装置100が行う処理の一例を説明するフローチャートであり、図3は、図2のステップS203の搬送時刻決定処理の詳細を説明するフローチャートであり、図4は、図2のステップS204の仮山決定処理の詳細を説明するフローチャートである。
<鋼材情報取込部110(ステップS201)>
鋼材情報取込部110は、ビジネスコンピュータなどの鋼材全般に関するデータベースである鋼材管理系計算機200より、山仕分けの対象となる鋼材に関する鋼材情報を受け取る。即ち、鋼材情報取込部110は、搬送対象となる全ての鋼材について、鋼材識別情報、本山番号、本山積位置および鋼材サイズの情報を含む鋼材情報を受け取る。本山番号は、対象となる鋼材が搬送される本山(払出山)を特定する情報である。本山積位置は、搬送対象となる鋼材の本山における積位置を示す情報である。このように、本実施形態では、対象となる鋼材のそれぞれに対し、どの本山の上から(下から)何番目に積まれるのかが、予め設定されている。鋼材サイズは、鋼材の厚み、幅および長さの情報である。
また、ヤードに既に到着している鋼材である既到着材については、元山番号および元山積位置の情報が鋼材情報にさらに含まれている。元山番号とは、対象となる鋼材(既到着材)が積まれている元山を特定する情報である。元山積位置は、対象となる鋼材(既到着材)の元山における積位置を示す情報である。
更に、山仕分けの対象となる鋼材を受け入れる時間帯に、払出が行われる鋼材がある場合には、それらの鋼材の払出時刻の情報を受け取る。
一方、ヤードに未だ到着していない鋼材である未到着材については、その受入テーブルへの到着予定時刻と、受入テーブル上での受入鋼材の積位置(積順)とが鋼材情報として含まれる。受入積位置は、受入口(受入テーブルXあるいはY(図5))上で対象となる鋼材が積まれている山における各鋼材の積位置(積順)を示す情報である。
さらに、鋼材情報取込部110は、鋼材情報に加えて、後述する2つの目的関数J、Jのバランスを取るための調整係数Weight((10)式を参照)と、ヤードにおける空き番地の情報を、鋼材管理系計算機200より受け取る。ここで、番地とは、例えば、図5の置場501〜504にかっこ書きで付されている(11)、(12)、(21)、(22)のように、棟と列とにより定まるものである。
鋼材情報取込部110は、受け取った鋼材情報から、元山における本山と同一の山姿の部分を識別し、元山における本山と同一の山姿の部分については、元山(以下の計算対象)から除外する。すなわち、本実施形態のヤード管理装置100は、元山のうち、現時点で仮置きされた仮置き部分(本山と異なる部分)のみを搬送時刻の計算(最適化)の対象とする。以下の説明では、「元山」と称するものは、元山のうち、本山と同一の山姿の部分を除く部分を指すものとする。尚、本実施形態では、鋼材情報取込部110が、元山における本山と同一の山姿の部分を除外するようにした。しかしながら必ずしもこのようにする必要はない。すなわち、鋼材管理系計算機200で、元山における本山と同一の山姿の部分を除外し、残った元山の情報を元山の情報としてヤード管理装置100に送信してもよい。
鋼材情報取込部110は、ヤードにある鋼材を搬送する搬送機器が2つ以上の鋼材を一度に搬送可能である場合、以下に説明する搬送ロット情報生成部120に対し、鋼材識別情報と、鋼材識別情報に紐付けられている「本山番号、本山積位置、元山番号・元山積位置(または到着予定時刻・受入積位置)、および鋼材サイズ」を出力する。
一方、搬送機器が一度に1つの鋼材しか搬送できない場合、鋼材情報取込部110は、搬送時刻変数設定部131に対し、鋼材識別情報を出力する。
また、鋼材情報取込部110は、搬送時刻制約式設定部132に対し、鋼材識別情報と、鋼材識別情報に紐付けられている「本山番号、本山積位置、および元山番号・元山積位置(または到着予定時刻)」を出力する。ここで、山仕分けの対象となる鋼材を受け入れる時間帯に、払出が行われる鋼材がある場合には、鋼材情報取込部110は、搬送時刻制約式設定部132に対し、それらの鋼材の払出時刻(それらの鋼材の鋼材識別情報に紐付けられている払出時刻)を、本山番号、本山積位置、および元山番号・元山積位置(または到着予定時刻)と併せて出力する。
また、鋼材情報取込部110は、搬送時刻目的関数設定部133に対し、鋼材識別情報と、鋼材識別情報に紐付けられている「元山番号・元山積位置(または到着予定時刻)」と、調整係数を出力する。
また、鋼材情報取込部110は、搬送作業指示生成部150に対し、鋼材識別情報と、鋼材識別情報に紐付けられている「本山番号、本山積位置、および元山番号・元山積位置(または到着予定時刻)」と、ヤードにおける空き番地の情報を出力する。
また、鋼材情報取込部110は、仮山制約式設定部142に対し、鋼材識別情報と、鋼材識別情報に紐付けられている「本山番号、本山積位置、元山番号・元山積位置(または到着予定時刻)、および鋼材サイズ」を出力する。
鋼材情報取込部110は、鋼材管理系計算機200から、例えば数分間間隔で、前述した情報を取り込む。鋼材情報取込部110に情報が取り込まれる度に、以下の各部が起動する。
鋼材情報取込部110は、例えば、ヤード管理装置100の通信インターフェースが前述した情報を受信し、ヤード管理装置100のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
<搬送ロット情報生成部120(ステップS202)>
搬送ロット情報生成部120は、搬送機器が2つ以上の鋼材を一度に搬送可能である場合に起動するものである。搬送ロット情報生成部120は、未到着材については搬送テーブル上の積姿より、既到着材については元山姿より、各積姿の鋼材を、クレーンなどの搬送機器により搬送する際の鋼材のまとまり(つまり搬送ロット)に分割する。搬送ロットへの分割は、例えば、以下のルールに基づき行われる。
すなわち、搬送ロット情報生成部120は、搬送対象の積段(山)の最上段の鋼材から下段に向かって順に積順をチェックし、チェックした積順が、本山における積順と一致しており、且つ、重量やサイズから搬送機器が把握可能な範囲を一つの搬送単位(搬送ロット)とする。ここでの把握可能な範囲とは、搬送機器が搬送すること(例えば、クレーンが吊ること)が可能な重量や厚みの制限範囲を意味する。そして、搬送ロット情報生成部120は、上記の搬送単位(搬送ロット)を生成(仕分け)する操作により搬送単位とされた単位の内の最終の鋼材(最下段の鋼材)の次の鋼材(下の鋼材)より、同様の操作を行い、改めて新たな搬送ロットを生成する。搬送ロット情報生成部120は、このような操作を、搬送対象の積段(山)の最下段の鋼材を含む搬送ロットを生成するまで繰り返し行う。さらに、搬送ロット情報生成部120は、以上の操作を、受入テーブル上にある山とヤードにおける元山の全てについて個別に行う。
以上のようにして搬送ロット情報生成部120は、搬送対象の積段の鋼材を複数の搬送ロットに分割する。
尚、搬送機器が一度に1つの鋼材しか搬送することができない場合には、各搬送ロットは1つの鋼材から成る。
搬送ロット情報生成部120は、例えば、ヤード管理装置100のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
<搬送時刻決定部130(ステップS203)>
搬送時刻決定部130は、全ての搬送対象の鋼材(または搬送ロット)iについて、初期(一次)搬送時刻k_it[i]と、最終(二次)搬送時刻k_ft[i]の最適値k_itopt[i]、k_ftopt[i]を決定する。そのための機能として、搬送時刻決定部130は、搬送時刻変数設定部131と、搬送時刻制約式設定部132と、搬送時刻目的関数設定部133と、搬送時刻最適解算出部134とを有する。以下、これらの各部が有する機能の一例を説明する。尚、以下の説明では、「搬送対象の鋼材(または搬送ロット)i」を、必要に応じて「搬送対象鋼材(ロット)i」と称する。
[搬送時刻変数設定部131(ステップS301、S302)]
搬送時刻変数設定部131は、搬送機器が一度に一つの鋼材しか搬送できない場合には、鋼材情報取込部110より、鋼材識別情報を取得する。一方、搬送機器が2つ以上の鋼材を一度に搬送可能な場合には、搬送時刻変数設定部131は、搬送ロット情報生成部120より、搬送ロット識別情報を取得する。
そして、搬送時刻変数設定部131は、後述する最適化計算にて変数となる決定変数を以下の様に定める。
(i)搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時刻(k_it[i])
未到着材では、受入テーブルなどの受入口に到着した後、最初にヤードへの搬送を開始する時刻(仮置きまたは本置きを開始する時刻)が、搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時刻(k_it[i])となる。一方、既到着材では、現時刻において置かれている場所から最初に搬送を開始する時刻が、搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時刻(k_it[i])となる。
(ii)搬送対象鋼材(ロット)iの最終搬送時刻(k_ft[i])
搬送対象鋼材(ロット)iについての本山(払出山)へ搬送を開始する時刻(本置きを開始する時刻)が、搬送対象鋼材(ロット)iの最終搬送時刻(k_ft[i])となる。
搬送時刻変数設定部131は、鋼材識別情報または搬送ロット識別情報を、搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時刻(k_it[i])および最終搬送時刻(k_ft[i])のiに与えることにより、搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時刻(k_it[i])および最終搬送時刻(k_ft[i])を設定する。これにより、搬送対象鋼材(ロット)iの数と同数の「搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時刻(k_it[i])および最終搬送時刻(k_ft[i])」が生成される。
搬送時刻変数設定部131は、例えば、ヤード管理装置100のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
[搬送時刻制約式設定部132(ステップS303〜S308)]
搬送時刻制約式設定部132は、搬送時刻変数設定部131で設定(定義)された決定変数(k_it[i]、k_ft[i])が満たすべき基本的な(変数の定義に付随する)以下の搬送制約式を設定する。
(i)搬送時刻基本関係制約(ステップS303)
搬送時刻基本関係制約とは、搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時刻(k_it[i])と最終搬送時刻(k_ft[i])との基本的な関係を表すものである。具体的に、搬送時刻基本制約は、何れの搬送対象鋼材(ロット)iに対しても、初期搬送時刻変数(k_it[i])の方が最終搬送時刻変数(k_ft[i])よりも遅れることはないという両者の関係を定義する制約である。よって、搬送時刻基本関係制約式は、以下の(1)式で表される。
任意の搬送ロットiに対し、k_it[i]≦k_ft[i] ・・・(1)
前述したように、搬送ロットiを直接本山へ搬送できる場合には、初期搬送時刻変数
k_it[i]と最終搬送時刻変数k_ft[i]とが一致する。すなわち、(1)式における等号が成立する。
搬送時刻制約式設定部132は、搬送時刻変数設定部131で設定(定義)された決定変数(k_it[i]、k_ft[i])を(1)式に与えることにより、搬送時刻基本関係制約式を設定する。
(ii)第1の未到着ロット用初期搬送時刻制約式(ステップS304)
第1の未到着ロット用初期搬送時刻制約とは、未到着の搬送対象鋼材(ロット)iの「受入テーブルへの到着予定時刻」に基づく初期搬送時刻k_it[i]の制約である。具体的に、第1の未到着ロット用初期搬送時刻制約とは、未到着の搬送対象鋼材(ロット)iは、受入時刻(上工程からヤードの受入口(例えば受入テーブル)へ到着する時刻)以降でないと、ヤードへの初期搬送はできないという、初期搬送時刻k_it[i]の物理的な制約である。よって、第1の未到着ロット用初期搬送時刻制約式は、以下の(2)式で表される。
k_it[i] ≧ arrival_t(i) ・・・(2)
(2)式において、arrival_t(i)は、未到着の搬送対象鋼材(ロット)iの受入テーブルへの到着予定時刻である。前述したように、arrival_t(i)は、鋼材情報取込部110により予め取り込まれているものである。
搬送時刻制約式設定部132は、搬送時刻変数設定部131で設定(定義)された決定変数(k_it[i]、k_ft[i])のうち、未到着の搬送対象鋼材(ロット)iに対する決定変数と、鋼材情報取込部110から受け取った受入テーブルへの到着予定時刻arrival_t(i)とを(2)式に与えることにより、第1の未到着ロット用初期搬送時刻制約式を設定する。
(iii)第2の未到着ロット用初期搬送時刻制約式(ステップS305)
第2の未到着ロット用初期搬送時刻制約とは、未到着の搬送対象鋼材(ロット)iの初期受入順に基づく初期搬送時刻k_it[i]の制約である。未到着の搬送対象鋼材(ロット)iの初期受入は、到着後直ぐに行われる搬送処理であり、通常、受入口となる受入テーブル上での到着順の入替ができない。そこで、本実施形態では、第2の未到着ロット用初期搬送時刻制約として、初期搬送時刻k_it[i]は、到着順に拘束されるという制約を採用する。第2の未到着ロット用初期搬送時刻制約式は、以下の(3)式で表される。
k_it[ix] + transf_time ≦ k_it[ix+1] ・・・(3)
(3)式において、transf_timeは、搬送機器による搬送所要時間である。本実施形態では、搬送機器による搬送所要時間transf_timeとして、搬送機器の平均的な1回あたりの搬送時間を、ヤード管理装置100に予め記憶しておくものとする。また、(3)式においては、未到着の搬送対象鋼材(ロット)iの次に到着する未到着の搬送対象鋼材(ロット)搬送ロットをix+1としている。
搬送時刻制約式設定部132は、搬送時刻変数設定部131で設定(定義)された決定変数(k_it[i]、k_ft[i])のうち、未到着の搬送対象鋼材(ロット)iに対する決定変数と、搬送機器による搬送所要時間(transf_time)とを(3)式に与えることにより、第2の未到着ロット用初期搬送時刻制約式を設定する。
(iv)既到着ロット用初期搬送時刻制約式(ステップS306)
既到着ロット用初期搬送時刻制約とは、既到着の搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送順に基づく初期搬送時刻k_it[i]の制約である。具体的に、既到着ロット用初期搬送時刻制約とは、元山が同じである既到着の搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送順は、元山の積順に拘束される(すなわち、元山mxにおいて上に位置する搬送対象鋼材(ロット)からしか初期搬送(分解)はできない)という制約である。よって、既到着ロット用初期搬送時刻制約式は、以下の(4)式で表される。
k_it[mx i] + transf_time ≦ k_it[mx i+1] ・・・(4)
(4)式において、同一の元山mxで上下関係にある既到着の搬送対象鋼材(ロット)iのうち、上にあるものをmx i、その下にあるものをmx i+1とする。
搬送時刻制約式設定部132は、搬送時刻変数設定部131で設定(定義)された決定変数(k_it[i])のうち、既到着の搬送対象鋼材(ロット)iに対する決定変数と、搬送機器による搬送所要時間(transf_time)とを(4)式に与えることにより、既到着ロット用初期搬送時刻制約式を設定する。
(v)搬送機器同時搬送制約式(ステップS307)
搬送機器同時搬送制約(重複搬送防止制約式)とは、搬送機器の数に基づく同時搬送に関する制約である。具体的に、搬送機器同時搬送制約とは、任意の時間帯に同時に搬送される搬送対象鋼材(ロット)iの数は、搬送機器の数を超えることはできないという制約である。
ヤードでの鋼材の搬送処理には、受入処理(前工程からヤードへの受入搬送処理)と、配替え処理(ヤード内での搬送処理)と、払出処理(ヤードから後工程への払出搬送処理)との3つの搬送処理がある。通常、ヤードは複数の棟に分かれており、棟毎にこれらの処理が1〜2機の搬送機器(主にクレーン)により行われる。搬送機器(クレーン)が1機しかない場合には、受入処理と配替え処理とを同時に行うことはできないので、このことを制約として表現する必要がある。
また、同時に複数の配替え処理を行うことはできないので、このことを制約として表現する必要がある。
尚、受入処理同士が重ならないようにするための制約は、前述した(iii)第2の未到着ロット用初期搬送時刻制約(初期搬送時刻k_it[i]は、到着順に拘束されるという制約)にて実現される((3)式を参照)。
また、同一の元山を構成する既到着の搬送対象鋼材(ロット)i間の搬送処理が重複しないようにするための制約は、既到着ロット用初期搬送時刻制約(元山が同じである既到着の搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送順は、元山の積順に拘束されるという制約)にて実現される((4)式を参照)。
従って、未到着材および既到着材の搬送と、既到着材における異なる元山間での搬送に対し、搬送の重複を防ぐための制約を表現する必要がある。
ここでは、未到着の搬送対象鋼材(ロット)をi,i,・・・,iniとする。既到着の搬送対象鋼材(ロット)となる元山をm,mとする。元山mを構成する既到着の搬送対象鋼材(ロット)を、元山mの上からm11,m12,・・・,m1m1とし、元山mを構成する既到着の搬送対象鋼材(ロット)を元山mの上からm21,m22,・・・,m2m2とする。また、これらの搬送を行う搬送機器は1機しかないとする。この条件の下では、重複搬送を防止するための制約を以下のように表現すればよい。
ここでは一例として、未到着の搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送と、既到着の搬送対象鋼材(ロット)m11の初期搬送との重複を防ぐための制約式を示す。
まず、未到着の搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時間帯は、時刻k_it[i1]〜時刻k_it[i1] + transf_time である。一方、既到着の搬送対象鋼材(ロット)m11の初期搬送時間帯は、時刻k_it[m11]〜時刻k_it[m11] + transf_time である。この両者の搬送時間帯が重複しないようにするには、次の条件1または条件2((5−1)式または(5−2)式)が成り立つように、k_it[i1]およびk_it[m11]を定めればよい。
・条件1
既到着の搬送対象鋼材(ロット)m11を搬送した後、未到着の搬送対象鋼材(ロット)を搬送する場合には、以下の(5−1)式が成り立つ必要がある。
k_it[m11] + transf_time ≦k_it[i1] ・・・(5−1)
・条件2
一方、未到着の搬送対象鋼材(ロット)iを搬送した後、既到着の搬送対象鋼材(ロット)m11を搬送する場合には、以下の(5−2)式が成り立つ必要がある。
k_it[i1] + transf_time ≦k_it[m11] ・・・(5−2)
これらの条件1および条件2を、数理計画問題として定式化する。そのために、以下の1-0変数δ[i1][m11],δ[m11][i1]を定義する。
まず、δ[i1][m11]として、その値が「1」(δ[i1][m11]=1)ならば、必ず(5−1)式(k_it[m11] + transf_time ≦k_it[i1])が成り立つ(δ[i1][m11]=1⇒ k_it[m11] + transf_time ≦k_it[i1]) 1-0変数を定義する。
また、δ[m11][i1]として、その値が「1」(δ[m11][i1]=1)ならば、必ず(5−2)式(k_it[i1] + transf_time ≦k_it[m11])が成り立つ(δ[m11][i1]=1⇒ k_it[i1] + transf_time ≦k_it[m11])1-0変数を定義する。
このように、1-0変数δ[i1][m11]、δ[m11][i1]を定義できれば、前記条件1または条件2のいずれかが必ず成立するためには、以下の(6−1)式の制約式を用いればよい。 また、1-0変数δ[i1][m11]、δ[m11][i1]を定義するための不等式制約式として、(6−2)式および(6−3)式を用いればよい。
δ[i1][m11] + δ[m11][i1] ≧ 1 ・・・(6−1)
(k_it[m11] + transf_time) − k_it[i1] ≦ M_t×(1 − δ[i1][m11]) ・・・(6−2)
(k_it[i1] + transf_time) − k_it[m11] ≦ M_t×(1 − δ[m11][i1]) ・・・(6−3)
(6−2)式および(6−3)式において、M_tは、今回の搬送を行う際に要する総時間を超える大きな値である。本実施形態では、この値を、ヤード管理装置100に予め記憶しておくものとする。
(6−2)式において1-0変数δ[i1][m11]の値を「1」とすると(5−1)式となる。よって、(6−2)式により前記条件1が表現される。(6−3)式において1-0変数δ[m11][i1]の値を「1」とすると(5−2)式となる。よって、(6−3)式により前記条件2が表現される。そして、(6−1)式の制約式により、1-0変数δ[i1][m11]、δ[m11][i1]の何れかの値が「1」であれば、前記条件1または条件2が成立することが表現される。
以上が、未到着の搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送と、既到着搬送ロットm11の初期搬送との時間的な重複を防ぐための制約式となる。
搬送時刻制約式設定部132は、搬送時刻変数設定部131で設定(定義)された決定変数(k_it[i1]、k_it[m11])と、搬送機器による搬送所要時間(transf_time)と、未到着の搬送対象鋼材(ロット)の鋼材識別情報iと、既到着の搬送対象鋼材(ロット)の鋼材識別情報m11とを、(6−1)式〜(6−3)式に与えることにより、搬送機器同時搬送制約式を設定する。
搬送時刻制約式設定部132は、このような搬送機器同時搬送制約式を、未到着の搬送対象鋼材(ロット)i,i,・・・,iniと、既到着の搬送対象鋼材(ロット)m11,m12,・・・,m1m1およびm21,m22,・・・,m2m2との全ての組合せについて設定する。これにより、未到着の搬送対象鋼材(ロット)と、既到着搬送ロットとの全ての組合せについて、これらの初期搬送の時間的な重複を防ぐための制約式を設定することができる。尚、これらの制約式は、(6−1)式〜(6−3)式と変数が異なるだけであるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
さらに、搬送時刻制約式設定部132は、このような搬送機器同時搬送制約式を、全ての既到着の搬送対象鋼材(ロット)m11,m12,・・・,m1m1とm21,m22,・・・,m2m2の組合せについても設定する。これにより、異なる既到着搬送鋼材(ロット)の全ての組合せについて、それらの初期搬送の時間的な重複を防ぐための制約式を設定することができる。尚、これらの制約式は、(6−1)式〜(6−3)式と変数が異なるだけであるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
また、払出と受入を同一の搬送機器で行う場合には、払出と受入とが重複しないように(5−1)式および(5−2)式と同様の制約を設ける必要がある。通常払出時刻が後工程の予定により定まっているので,例えば、該当する時間帯に払出予定鋼材j(j=1,・・・,J)の払出開始予定時刻k_out_j(所与)とすると、未到着の搬送対象鋼材(ロット)iと払出開始時刻k_out_jの払出とが重複しないようにするには、先と同様に、任意の未到着の搬送対象鋼材(ロット)iと任意の払出予定鋼材jとの間で以下の(5−3)式および(5−4)式の様な制約式を設定し、これらのいずれかが成り立つよう(6−1)式〜(6−3)式に対応する制約式を設定すれば良い。
k_out_j + transf_time ≦k_it[i] ・・・(5−3)
k_it[i] + transf_time ≦k_out_j ・・・(5−4)
(vi)最終搬送時刻制約式(ステップS308)
最終搬送時刻制約とは、最終搬送順に基づく最終搬送時刻k_ft[i]の制約である。本山(払出山)は、物理的にも下から順に構築され(積み上げられ)なければならない。そこで、本実施形態では、最終搬送時刻制約として、その本山(払出山)を構成する各鋼材(搬送ロット)の最終搬送時刻k_ft[i]は、本山における積順が下のものである程、早くなるという制約を採用する。すなわち、最終搬送時刻制約は、本山(払出山)が同じである鋼材(搬送ロット)の最終搬送順は、本山の積姿(積順)に拘束されるという制約(本山の下からしか最終搬送(積上げ)はできないという物理的な制約)である。最終搬送時刻制約式は、(7)式で表される。
k_ft[mx+1] + transf_time ≦ k_ft[mx] ・・・(7)
(7)式において、、同一の本山(払出山)で上下関係にある搬送対象鋼材(ロット)iのうち、上にあるものをmx、その下にあるものをmx+1とする。
搬送時刻制約式設定部132は、搬送時刻変数設定部131で設定(定義)された決定変数(k_ft[i])と、搬送機器による搬送所要時間(transf_time)とを、(7)式に与えることにより、最終搬送時刻制約式を設定する。
搬送時刻制約式設定部132は、例えば、ヤード管理装置100のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
<搬送時刻目的関数設定部133(ステップS309〜S311)>
搬送時刻目的関数設定部133は、搬送時刻目的関数Jを設定する。本実施形態では、搬送時刻目的関数Jは、仮置き総時間を短くする目的関数である仮置き総時間最小化目的関数Jと、未到着の搬送対象鋼材(ロット)の受入テーブルでの総待ち時間を短くする目的関数である受入テーブル総待ち時間最小化目的関数Jとの重み付き線形和で表される。このように、本実施形態では、仮置き総時間と、未到着の搬送対象鋼材(ロット)の受入テーブルでの総待ち時間が、本山に搬送される過程で搬送対象鋼材が滞留する時間となる。
ここで、仮置き総時間を短くすることの意図について説明する。
まず、仮置きされる搬送対象鋼材(ロット)の数を少なくして、搬送対象鋼材(ロット)の搬送を効率的に行うために、仮置き総時間を短くする必要がある。
次に、仮置き時間が長くなると、搬送対象鋼材(ロット)を仮置きするためのスペースを確保する必要があるため、通常、それほどスペースに余裕のないヤードのスペースを窮乏化させる。このことからも、仮置き総時間を短く必要がある。
さらに、搬送対象鋼材(ロット)が仮置きされている間は、当該搬送対象鋼材(ロット)を含む本山は完成していないので、当該本山に属する搬送対象鋼材(ロット)は、当該本山となっている部分とそうでない部分とに分かれた状態になっている。したがって、その分かれている数に応じて、最上面、最下面の鋼材の数が増える。よって、鋼材の温度の低下が、本山となっている部分とそうでない部分とに分かれない場合(本山が完成している場合)よりも大きくなってしまう。また、搬送対象鋼材(ロット)を仮置きするためのスペースは、通常、保温車の外であるため、それによる温度降下が発生する。これらのことからも、仮置き総時間を短くする必要がある。
次に、未到着の搬送対象鋼材(ロット)の受入テーブルでの待ち時間を少なくすること意図について説明する。
まず、ヤードにおける不具合事象として、受入テーブルの渋滞による上工程への悪影響がある。製鋼工程と熱延工程と間に位置するヤードでは、ヤードへの受入処理の方法が拙いとヤードに空き(スペース)があっても、受入テーブルの渋滞により、上工程である製鋼からの鋼材の受入が不能な状態となり、最悪の場合には製鋼を止めざるをいない事態が発生する。棟毎に設置された搬送機器の数が少ないと、払出処理や配替え処理に搬送機器が使用されている間に、受入テーブルに鋼材が溜り得る容量を超えてしまうことが容易に起こり得る。したがって、それらの処理作業の調整を行い、できるだけ受入テーブルでの総待ち時間を少なくすることにより、受入テーブルでの鋼材の渋滞の発生を未然に防ぐ必要がある。このことから、未到着の搬送対象鋼材(ロット)の受入テーブルでの待ち時間を少なくする必要がある。
(i)仮置き総時間最小化目的関数J(ステップS309)
仮置き時間は、決定変数として設定されている最終搬送時刻k_ft[i]と初期搬送時刻k_it[i]との差により表すことができる。よって、仮置き総時間を短くする目的関数である仮置き総時間最小化目的関数Jは、未到着および既到着の全ての搬送対象鋼材(ロット)iに対して、最終搬送時刻k_ft[i]と初期搬送時刻k_it[i]との差を足し合わせればよい。すなわち、仮置き総時間最小化目的関数Jは、以下の(8)式で表される。
Figure 0005365759
搬送時刻目的関数設定部133は、未到着および既到着の全ての搬送対象鋼材(ロット)iの総数Nと、搬送時刻変数設定部131で設定(定義)された決定変数(k_it[i]、k_ft[i])とを(8)式に与えることにより、仮置き総時間最小化目的関数Jを設定する。尚、本山へ直接搬送できる搬送対象鋼材(ロット)については、最終搬送時刻k_ft[i]と初期搬送時刻k_it[i]とが等しくなる。
(ii)受入テーブル総待ち時間最小化目的関数J(ステップS310)
未到着の搬送対象鋼材(ロット)の受入テーブルでの待ち時間は、搬送対象鋼材(ロット)が、受入テーブルへ到着した後、ヤード内へ搬送されるまでの時間である。よって、未到着の搬送対象鋼材(ロット)の受入テーブルでの総待ち時間を少なくする目的関数である受入テーブル総待ち時間最小化目的関数Jは、初期搬送時刻k_it[i]と受入テーブルへの到着予定時刻との差によって表すことができる。よって、受入テーブル総待ち時間最小化目的関数Jは、全ての未到着の搬送対象鋼材(ロット)iに対して、初期搬送時刻k_it[i]と受入テーブルへの到着予定時刻との差を足し合わせればよい。すなわち、受入テーブル総待ち時間最小化目的関数Jは、以下の(9)式で表される。
Figure 0005365759
(9)式において、Aは、未到着の搬送対象鋼材(ロット)に対応するiの集合を表す。搬送時刻目的関数設定部133は、この集合Aと、搬送時刻変数設定部131で設定(定義)された決定変数(k_it[i])と、鋼材情報取込部110から受け取った受入テーブルへの到着予定時刻arrival_t(i)とを(9)式に与えることにより、受入テーブル総待ち時間最小化目的関数Jを設定する。
(iii)搬送時刻目的関数J(ステップS311)
前述したように、搬送時刻目的関数Jは、仮置き総時間の最小化と受入テーブルでの総待ち時間の最小化とのバランスを調整するために、総時間最小化目的関数Jと、受入テーブル総待ち時間最小化目的関数Jとの重み付き線形和で表される。よって、本実施形態では、搬送時刻目的関数Jは、目的関数のバランスを取るための調整係数Weightを用いて、以下の(10)式で表される。
=Weight×J+ J ・・・(10)
搬送時刻目的関数設定部133は、鋼材情報取込部110より受け取った「目的関数のバランスを取るための調整係数Weight」と、前述したようにして設定した「仮置き総時間最小化目的関数Jと受入テーブル総待ち時間最小化目的関数J」を(10)式に与えることにより、搬送時刻目的関数Jを設定する。
搬送時刻目的関数設定部133は、例えば、ヤード管理装置100のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
<搬送時刻最適解算出部134(ステップS312)>
搬送時刻最適解算出部134は、搬送時刻制約式設定部132で設定された搬送制約式((1)式〜(4)式、(6−1)式〜(6−3)式、(7)式)を満足する範囲で、搬送時刻目的関数設定部133により設定された搬送時刻目的関数Jの値を最小化する決定変数(k_it[i]およびk_ft[i])を算出する。このようにして算出された決定変数が、初期(一次)搬送時刻の最適値(k_itopt[i])、最終(二次)搬送時刻の最適値(k_ftopt[i])となる。尚、最適解の算出は、例えば、公知の混合整数計画問題解法solverを用いることにより実現できる。
搬送時刻最適解算出部134は、例えば、ヤード管理装置100のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
<仮山決定部140(ステップS204)>
後述するように、搬送作業指示生成部150は、搬送時刻最適解算出部134(図3のステップS312)により算出された「初期(一次)搬送時刻の最適値(k_itopt[i])、最終(二次)搬送時刻の最適値(k_ftopt[i])」に基づき、各搬送対象鋼材(ロット)の搬送順を定める。その際、最終(二次)搬送時刻の最適値(k_ftopt[i])が、初期(一次)搬送時刻の最適値(k_itopt[i])未満(k_itopt[i]<k_ftopt[i])となる搬送対象鋼材(ロット)iは、仮置きの対象であるとみなされる。したがって、それらの搬送対象鋼材(ロット)iに対しては、仮置き場所となる仮山を決定する必要がある。
そのために、それぞれの仮置き対象となる搬送対象鋼材(ロット)i毎に異なる仮山を作成するという方法が最も単純な方法として考えられる。
しかしながら、この方法では、仮置きが必要な搬送対象鋼材(ロット)iの数だけ、仮山のスペースが必要となる。前述したように、通常、ヤード内の置場スペースにはそれほど余裕がないことに鑑みると、この方法は必ずしも適切な方法とはいえない。よって、置場スペースを少なくするという観点から、できるだけ搬送対象鋼材(ロット)i同士をまとめて仮山を構成することが望ましい。そのためには、仮山の総数をできるだけ少なくするための何らかの対策が必要となる。
そこで、本実施形態では、仮山決定部140は、仮置きの対象となる搬送対象鋼材(ロット)iについて、仮山における積順を表す積段関係変数(y[i1][i2][m])の最適値(yopt[i1][i2][m])を決定する。そのための機能として、仮山決定部140は、仮山変数設定部141と、仮山制約式設定部142と、仮山目的関数設定部143と、仮山最適解算出部144とを有する。以下、これらの各部が有する機能の一例を説明する。
[仮山変数設定部141(ステップS401〜S404)]
仮山変数設定部141は、搬送時刻最適解算出部134により算出された「初期(一次)搬送時刻の最適値k_itopt[i]と最終(二次)搬送時刻の最適値k_ftopt[i]」に基づいて、初期(一次)搬送時刻の最適値(k_itopt[i])が、最終(二次)搬送時刻の最適値(k_ftopt[i])未満(k_itopt[i]<k_ftopt[i])となる搬送対象鋼材(ロット)iの集合Tを求める。ここで、集合Tに属する要素の数、すなわち、初期(一次)搬送時刻の最適値(k_itopt[i])が、最終(二次)搬送時刻の最適値(k_ftopt[i])未満(k_itopt[i]<k_ftopt[i])となる搬送対象鋼材(ロット)iの数をNとする。この集合Tに属する要素が、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iとなる。
そして、仮山変数設定部141は、後述する最適化計算の制約式、目的関数を定式化するために、以下の決定変数を設定する。
(i)仮山割当変数(x[i][m])(ステップS402)
仮山割当変数(x[i][m])は、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iを仮山mへ割り当てる場合に「1」となり、割当てない場合に「0」となる1-0変数である。ただし、i∈T、m=1,・・・,Nとする。
(ii)積段関係変数(y[i1][i2][m])(ステップS403)
積段関係変数(y[i1][i2][m])は、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iのペア(i,i:iが下、iがその上)を仮山mに割当てる場合に「1」となり、割り当てない場合に「0」となる1-0変数である。
(iii)仮山要否判定変数(δ[m])(ステップS404)
仮山要否判定変数(δ[m])は、仮山mに、少なくとも1つ以上の仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iが割当てられる場合に「1」、割り当てられない場合に「0」となる1-0変数である。
仮山変数設定部141は、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iと仮山mを、仮山割当変数(x[i][m])のi、mに与えることと、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iのうち相互に異なるものと仮山mとを積段関係変数(y[i1][i2][m])のi、i、mに与えることと、仮山mを仮山要否判定変数(δ[m])のmに与えることにより、これらの変数を設定する。
仮山変数設定部141は、例えば、ヤード管理装置100のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
[仮山制約式設定部142(ステップS405〜S406)]
仮山制約式設定部142は、仮山変数設定部141で設定(定義)された「仮山割当変数(x[i][m])、積段関係変数(y[i1][i2][m])、仮山要否判定変数(δ[m])」が満たすべき基本的な(変数の定義に付随する)以下の仮山制約式を設定する。
(i)搬送ロット一意性制約(ステップS405)
搬送ロット一意性制約とは、全ての仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iは、何れかの仮山mに必ず1回のみ割当られねばならないという制約である。すなわち、搬送ロット一意性制約とは、何れの仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iも、その初期搬送先となる唯一つ仮山mに割り当てられる必要があるという制約である。よって、搬送ロット一意性制約式は、以下の(11)式で表される。この(11)式は、仮山割当変数(x[i][m])の定義制約式と見なすこともできる。
Figure 0005365759
仮山制約式設定部142は、仮山変数設定部141で設定(定義)された「仮山割当変数(x[i][m])と、仮山mの候補の数(すなわち、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの数)N」を、(11)式に与えることにより、搬送ロット一意性制約式を設定する。
(ii)積段関係変数定義制約(ステップS406)
積段関係変数定義制約は、積段関係変数(y[i1][i2][m])を定義するための制約である。積段関係変数定義制約式は、以下の(12−1)式〜(12−3)式で表される。
x[i1][m] + x[i2][m] − 1 ≦ y[i1][i2][m] + y[i2][i1][m] ・・・(12−1)
x[i1][m] + x[i2][m] ≧ 2 × ( y[i1][i2][m] + y[i2][i1][m] ) ・・・(12−2)
y[i1][i2][m] + y[i2][i1][m] ≦ 1 ・・・(12−3)
表1に、仮山割当変数(x[i1][m]、x[i2][m])と積段関係変数(y[i1][i2][m])との関係を示す。
Figure 0005365759
(12−1)式〜(12−3)式に示すように、積段関係変数定義制約式は、仮山変数設定部141で設定(定義)された「仮山割当変数(x[i1][m]、x[i2][m])を用いて、積段関係変数(y[i1][i2][m])を定義する式である。
表1に示す表の4列目(x[i1][m]+x[i2][m]−1)と5列目(y[i1][i2][m]+y[i2][i1][m])の部分の関係を(12−1)式で表現している。この(12−1)式により、積段関係変数(y[i1][i2][m])の下限が定められる。(12−1)式は、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)i、iの両方が、同一の仮山mに割り当てられるならば、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iが上、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iがその下、または、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iが下、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iがその上になることを表す。
表1に示す表の3列目(x[i1][m]+x[i2][m])と6列目(2 × ( y[i1][i2][m] + y[i2][i1][m])の部分を(12−2)式で表現している。この(12−2)式により、積段関係変数(y[i1][i2][m])の上限が定められる。(12−2)式は、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iが上、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iがその下、または、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iが下、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iがその上に仮置きされるならば、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)i、iの両方が、仮山mに割り当てられることを表す。
また、(12−3)式は、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iが上、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iがその下に仮置きされることと、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iが下、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iがその上に仮置きされることとが同時に成立することはないことを表す。
仮山制約式設定部142は、仮山変数設定部141で設定(定義)された「仮山割当変数(x[i][m])と、積段関係変数(y[i1][i2][m])」を、(12−1)式、(12−2)式に与えると共に、仮山変数設定部141で設定(定義)された「積段関係変数(y[i1][i2][m])」を、(12−3)式に与えることにより、積段関係変数定義制約式を設定する。
(iii)積み順(姿)制約(ステップS407)
積み順(姿)制約とは、仮山mにおける仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの積順(積姿)に関する制約である。以下に、積み順(姿)制約について説明する。
本実施形態では、仮山mにおける積姿制約(鋼材(または搬送ロット)間の上下関係の制約)は、(A)到着順、(B)最終搬送順、(C)サイズの3つの要素により定まるものとする。
まず、仮山mにおいては、「到着順」、すなわち、初期搬送時刻の最適値k_itopt[i]が早いものから順に下から積まれなければならない。
次に、仮山mにおいては、「最終搬送順」、すなわち、最終搬送時刻の最適値k_ftopt[i]が早いものから順に本山へ搬送する必要があるので、仮山mにおいては、最終搬送時刻の最適値k_ftopt[i]が早いものから順に上から積まれていなければならない。
最後に、「サイズ」については、仮山mとはいえ一時的ではあるがヤード内に山として存在するからには、長さ、幅などにおいて山姿が不安定となるような逆積とならないようにしなければならない。
本実施形態では、これらの3つの制約が全て(同時に)満たされる必要があるので、任意の2つの仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)i、iの配置の関係を、以下の4通りに分類できる。
a)仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)i、iを、同一の仮山mの上下何れにも配置できる。
b)同一の仮山mに配置する場合には、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iが下、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iがその上となるように仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)i、iを配置しなければならない。
c)同一の仮山mに配置する場合には、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iが上、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iがその下となるように仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)i、iを配置しなければならない。
d)仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)i、iを、同一の仮山mに配置できない。
2つの仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)i、iの「初期搬送時刻の最適値(k_itopt[i1]、k_itopt[i2])、最終搬送時刻の最適値(k_ftopt[i1]、k_ftopt[i2])」を用いて、2つの仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)i、iが前述したa)〜d)の何れに分類されるのかを判定する方法は、以下のようになる。
まず、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時刻の最適値(k_itopt[i1])が、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時刻の最適値(k_itopt[i2])未満であるならば(k_itopt[i1]<k_itopt[i2])、前記b)または前記d)に分類される可能性がある。
更に、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの最終搬送時刻の最適値(k_ftopt[i2])が、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの最終搬送時刻の最適値(k_ftopt[i1])未満であり(k_ftopt[i1]>k_ftopt[i2])、かつ、サイズの制約により、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iを下、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iをその上に積める場合には、前記b)に分類される。
一方、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの最終搬送時刻の最適値(k_ftopt[i1])が、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの最終搬送時刻の最適値(k_ftopt[i2])未満である場合((k_ftopt[i1]<k_ftopt[i2])、または、サイズの制約により、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iを下、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iをその上に積めない場合には、前記d)に分類される。
仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時刻の最適値(k_itopt[i2])が、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時刻の最適値(k_itopt[i1])未満であるならば(k_itopt[i1]>k_itopt[i2])、前記c)または前記d)に分類される可能性がある。
更に、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの最終搬送時刻の最適値(k_ftopt[i1])が、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの最終搬送時刻の最適値(k_ftopt[i2])未満であり(k_ftopt[i1]<k_ftopt[i2])、かつ、サイズの制約により、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iを上、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iをその下に積める場合には、前記c)に分類される。
一方、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの最終搬送時刻の最適値(k_ftopt[i2])が、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの最終搬送時刻の最適値(k_ftopt[i1])未満である場合((k_ftopt[i1]>k_ftopt[i2])、または、サイズの制約により、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iを上、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iをその下に積めない場合には、前記d)に分類される。
尚、結果的に、前記a)に分類されることはない。
そして、前記b)に分類される場合の積み順(姿)制約式は、以下の(13−1)式、前記c)に分類される場合の積み順(姿)制約式は、以下の(13−2)式、前記d)に分類される場合の積み順(姿)制約式は、以下の(13−3)式のようになる。
任意のm(=1,・・・,N)に対し、y[i2][i1][m] = 0 ・・・(13−1)
任意のm(=1,・・・,N)に対し、y[i1][i2][m] = 0 ・・・ (13−2)
任意のm(=1,・・・,N)に対し、y[i1][i2][m] + y[i2][i1][m]
= 0 ・・・(13−3)
仮山制約式設定部142は、異なる2つの仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)i、iの「初期搬送時刻の最適値(k_itopt[i1]、k_itopt[i2])、最終搬送時刻の最適値(k_ftopt[i1]、k_ftopt[i2])、鋼材サイズ」に基づいて、異なる2つの仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)i、iが、前記b)〜d)の何れに分類されるのかを判定する。そして、判定した結果に対応する積み順(姿)制約式((12−1)式、(12−2)式または(12−3)式)に対し、積段関係変数(y[i1][i2][m]、y[i2][i1][m])を与えることにより、積み順(姿)制約式を設定する。
(iv)山高さ制約式設定(ステップS408)
前述したように、一時的にヤードに存在する仮山mとはいえヤードの山高さ制約を受ける。よって、仮山mの高さの上限に関する山高さ制約を用いる必要がある。ここで、山積上限数(仮山mに積むことができる仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)の上限数)をHとし、各仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)に属する鋼材の数をhとすると、山高さ制約式は、以下の(14)式で表される。尚、搬送ロット情報が生成されていない場合(搬送機器が2以上の鋼材を一度に搬送できない場合)には、hの値は「1」となる。また、山積上限数は、ヤード管理装置100に予め記憶されているものとする。
Figure 0005365759
仮山制約式設定部142は、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iに属する鋼材の数hを求める。そして、仮山制約式設定部142は、当該「仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iに属する鋼材の数h」と、仮山変数設定部141で設定された「集合T、仮山割当変数(x[i][m])および仮山要否判定変数(δ[m])」と、「山積上限数H」とを(14)式に与えることにより、山高さ制約式を設定する。
尚、(14)式は、仮山要否判定変数(δ[m])の総和(すなわち、後述する仮山目的関数J((15)式を参照))の下限(下回ることができない値)を規定する式となっている。
仮山制約式設定部142は、例えば、ヤード管理装置100のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
[仮山目的関数設定部143(ステップS409)]
仮山目的関数設定部143は、仮山目的関数Jを設定する。本実施形態では、仮山目的関数Jは、仮山mの総数を少なくする目的関数である。このようにすれば、仮置きスペースを少なくすることができるからである。
仮山目的関数Jは、以下の(15)式で表される。
Figure 0005365759
仮山目的関数設定部143は、仮山変数設定部141により設定された「集合Tと、仮山要否判定変数(δ[m])」を(15)式に与えることにより、仮山目的関数Jを設定する。
仮山目的関数設定部143は、例えば、ヤード管理装置100のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
[仮山最適解算出部144(ステップS410)]
仮山最適解算出部144は、仮山制約式設定部142で設定された仮山制約式((11)式、(12−1)式〜(12−3)式、(13−1)式〜(13−3)式)を満足する範囲で、仮山目的関数設定部143により設定された仮山目的関数Jの値を最小化する決定変数(y[i1][i2][m])を算出する。このようにして算出された決定変数が、積段関係変数の最適値(yopt[i1][i2][m])となる。尚、最適解の算出は、例えば、公知の0-1整数計画問題解法solverを用いることにより実現できる。
仮山最適解算出部144は、例えば、ヤード管理装置100のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
[仮山情報生成部145(ステップS411)]
仮山情報生成部145は、積段関係変数の最適値(yopt[i1][i2][m])の値が「1」(yopt[i1][i2][m]=1)となる仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)i、iのペアを仮山m毎に整理する。
ここで、積段関係変数の最適値(yopt[i1][i2][m])の値が「1」であることは、仮山mにおいて、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iが下、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iがその上に配置されることを示す。
よって、積段関係変数の最適値(yopt[i1][i2][m])の値が「1」となる仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)i、iのペアを仮山m毎に整理することにより、各仮山mにおける、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの積順を決定することができる。例えば、以下の(16−1)式〜(16−3)式が成立する場合には、仮山1(m=1)における、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの積順は、下から、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)4、3、5(i=4、3、5)という積順になる。このようにすることにより、最適な仮山m(すなわち、可及的に少ない数の仮山m)を構成することができる。
このように、仮山情報生成部145は、各仮山mにおける、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの積順の情報を最適仮山情報として生成する。
yopt[3][5][1]=1 ・・・(16−1)
yopt[4][5][1]=1 ・・・(16−2)
yopt[4][3][1]=1 ・・・(16−3)
<搬送作業指示生成部150>(ステップS205)
以上の処理で、全ての搬送対象鋼材(ロット)に対する搬送順が定まり、仮置きが必要な搬送対象鋼材(ロット)に対しては、搬送すべき仮山とその積順とが定まる。尚、仮置きが不要な搬送対象鋼材(ロット)は直接、本山へ搬送される。
そこで、以上のようにして定まった各搬送対象鋼材(ロット)の搬送順毎に、どこからどこへ(From-To)搬送すべきかを定めれば、搬送命令を確定することができる。この搬送命令を定めるに当たり、搬送作業指示生成部150は、搬送順が早い搬送対象鋼材(ロット)から順に、その時点での空き番地となっている置場を、その置場の役割に従い、本山および仮山の置場(ヤード内での番地)として適当に割り当てるものとする。
まず、未到着の搬送対象鋼材(ロット)についての初期搬送時のFrom番地は、ヤードの受入場所(例えば受入テーブル)となり、To番地は、仮置き不要の場合には、その搬送対象鋼材(ロット)の本山の番地となり、仮置きが必要な場合には、その搬送対象鋼材(ロット)の仮山の番地となる。
また、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)の最終搬送時のFrom番地は、当該搬送対象鋼材(ロット)の仮山の番地であり、To番地は、当該搬送対象鋼材(ロット)の本山の番地となる。
また、既到着の搬送対象鋼材(ロット)については、初期搬送時のFrom番地だけが、未到着の搬送対象鋼材(ロット)の場合と異なり、既存の元山の番地(元山積位置)となる。それ以外は、未到着の搬送対象鋼材(ロット)の場合と同じである。
搬送作業指示生成部150は、以上のようにして、初期搬送時刻の最適値(k_itopt[i])、最終搬送時刻の最適値(k_ftopt[i])、最適仮山情報、元山の番地および空き番地などに基づいて、各搬送対象鋼材(ロット)の搬送順に、どこからどこへ(From-To)搬送すべきかを示す搬送経路であるFrom-To番地を定める。
搬送作業指示生成部150は、例えば、ヤード管理装置100のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
<搬送作業指示部160>(ステップS206)
搬送作業指示部160は、搬送作業指示生成部150により得られた搬送指示(各搬送対象鋼材(ロット)の搬送順、移動開始位置、および移動先の位置を含む搬送作業指示)を適宜、搬送機器300へ出力しヤード内の物流を管理する。
ここで、搬送機器300が運転者の運転操作によって動作するものであれば、搬送作業指示部160は、例えば、搬送機器300に備わる表示装置に、搬送作業指示に基づく画像を表示させることを指示するための表示指示信号を、搬送指示信号として送信する。搬送指示信号を受信すると、搬送機器300が備えるコンピュータは、当該搬送指示信号に基づく搬送指示の内容を表示する表示データを生成し、生成した表示データに基づく画像を、当該搬送機器300に備わる表示装置に表示する。この画像の表示に基づいて、運転者は、自身が運転する搬送機器300が鋼材の搬送を行う必要があるタイミングと、当該鋼材と、当該鋼材が存在している番地及び当該鋼材の搬送先となる番地(From-To番地)と、を特定し、当該搬送機器300を運転操作する。その結果、搬送機器300は、搬送指示信号に基づく搬送作業指示に従って、鋼材を搬送させるための動作をする。
一方、搬送機器300が運転者の運転操作によらずに自動的に動作するものである場合には、搬送作業指示に従って搬送機器300を動作させることを指示するための制御信号を、搬送指示信号として送信する。また、この場合、搬送機器300は、ヤードに置かれている各鋼材の現在の状態を示すヤード現況信号を、鋼材管理系計算機200から定期的に受信する。具体的にヤード現況信号は、例えば、現時点において、どの鋼材が、ヤードにおけるどの番地に、上から(下から)何番目に積まれているのかを示す信号である。搬送機器300は、搬送作業指示部160から送信された制御信号と、鋼材管理系計算機200から送信されたヤード現況信号とに基づいて、搬送指示信号に基づく搬送作業指示に従って、鋼材を搬送させるための動作を行う。
以上のように、搬送機器300が運転者の運転操作によらずに自動的に動作するものである場合には、ヤード管理装置100は、搬送機器300の動作を制御する搬送機器制御装置としての機能を有する。この場合、搬送機器制御装置として機能するヤード管理装置100と、1つ又は複数の搬送機器300と、を有するヤード管理システムを構成することができる。この場合、前述したように、搬送機器300は、搬送作業指示部160から受信した搬送作業指示信号と、外部装置である鋼材管理系計算機200から受信した前記ヤード現況信号と、に基づいて、搬送指示信号に基づく搬送作業指示に従って、鋼材を搬送させるための動作を自動的に行う。
搬送作業指示部160は、例えば、ヤード管理装置100の通信インターフェースがクレーン等の搬送機器300と通信すると共に、ヤード管理装置100のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
以上のように、本実施形態では、未到着材と既到着材とを含む搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時刻(k_it[i])・最終搬送時刻(k_ft[i])を決定変数として用いて、搬送対象鋼材(ロット)iの搬送順に関する搬送制約式と、本山に搬送される過程で搬送対象鋼材(ロット)iが滞留する時間を最小化する搬送目的関数とを表現し、搬送制約式を満足する範囲で搬送目的関数Jを最小化する、搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時刻・最終搬送時刻の最適値(k_itopt[i]、k_ftopt[i])を導出する。したがって、既到着材と未到着材とが混在している状況下であっても、搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時刻・最終搬送時刻の最適値(k_itopt[i]、k_ftopt[i])により、どの搬送対象鋼材(ロット)iで仮置きをすべきか(コンフリクトの連鎖状態を断ち切ればよいのか)を判断することができる。よって、既到着材と未到着材とが混在している状況下であっても、ヤードにおけるそれらの最適な搬送タイミングを算出することができる。その結果、鋼材を適切なタイミングで搬送することができる。
また、本実施形態では、搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時刻・最終搬送時刻の最適値(k_itopt[i]、k_ftopt[i])から仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iを特定する。そして、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iについて、同一の仮山mにおいて隣接して上下に位置する場合に「1」、位置しない場合に「0」の値をとる1-0変数である積段関係変数(y[i1][i2][m])を決定変数として用いて、仮山における積順に関する仮山制約式と、仮山の数を最小化する仮山目的関数とを表現し、仮山制約式を満足する範囲で仮山目的関数Jを最小化する、積段関係変数の最適値(yopt[i1][i2][m])を導出する。したがって、積段関係変数の最適値(yopt[i1][i2][m])から、各仮山mにおける、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの積順を決定することができ、仮置きスペースを可及的に少なくすることができる。
そして、搬送対象鋼材(ロット)iの初期搬送時刻・最終搬送時刻の最適値(k_itopt[i]、k_ftopt[i])と、積段関係変数の最適値(yopt[i1][i2][m])とに基づいて、搬送対象鋼材(ロット)iの搬送経路を定める。よって、搬送回数、仮置き時間、仮置きスペースを可及的に少なくし、ヤード管理を効率化し、ヤードにおける受入破綻や、受入テーブルにおける鋼材の渋滞を回避することが可能となる。
以上のことから、鋼材の温度が低下してしまうことによって、後工程の加熱炉における加熱の制御が複雑になったり、鋼材製品の品質が低下したりすることを防止することができる。
(変形例)
本実施形態のように、積段関係変数の最適値(yopt[i1][i2][m])を求めて、仮山mの数を出来るだけ少なくするのが好ましい。しかしながら、必ずしも積段関係変数の最適値(yopt[i1][i2][m])を求める必要はない。例えば、ヤードの置き場に余裕がある場合や、仮置きする搬送対象鋼材(ロット)iの数が少ない場合には、搬送対象鋼材(ロット)i毎に仮山をつくるようにしてもよい。このようにした場合には、仮山決定部140は、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの数の仮山を作成することを搬送作業指示生成部150に出力する不要になる。
また、本実施形態のように、From-To番地を導出すれば、各搬送対象鋼材(ロット)の搬送順と、搬送経路とを自動的に導出することができるので好ましい。しかしながら、初期搬送時刻の最適値(k_itopt[i])、最終搬送時刻の最適値(k_ftopt[i])、最適仮山情報(各仮山mにおける、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)i(及びその積順))を求め、それらをユーザが知ることができるようにしていれば、必ずしも、From-To番地を導出しなくてもよい。このようにする場合には、例えば、これらに基づいて、ユーザがFrom-To番地を決定するようにしてもよい。また、本実施形態では、ヤード管理装置100が、From-To番地に基づいて搬送機器300の動作を制御するようにしたが、ヤード管理装置100とは別の情報処理装置にFrom-To番地を入力し、当該情報処理装置が搬送機器300の動作を制御するようにしてもよい。
また、本実施形態では、鋼材を搬送の対象とする場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしも鋼材を搬送の対象にする必要はない。例えば、鋼材の代わりに、アルミニウム、チタン、又は銅等の金属材を製造する金属製造プロセスに本実施形態を適用することができる。この場合、前述した説明において「鋼材」を「アルミニウム材」等の「金属材」に置き換えることができる。
また、工程間の置場として、2つの製造工程間の置場を対象とし、金属材として、半製品を対象としてもよいし、工程間の置場として、製造工程と出荷工程の間の置場を対象とし、金属材として、最終製品を対象としてもよい。この際に、複数の金属材をコンテナに収容して輸送、配置する場合には、金属材が収容されたコンテナを1つの鋼材として取り扱ってもよい。さらに、工程間の置場としては、金属製造プロセスにおける置場に限定されるものでなく、一般的な工程間の物流、搬送を対象としてもよい。物流分野では内容物に限定されずコンテナの搬送、配置でも適用できる。従って、本発明では、金属材は、最終製品と、半製品と、コンテナとの何れか1つを含むものとする。
コンテナのように大きさが同一の寸法(大きさ)の場合、逆積が起こらないので、前述した説明において、(iii)積み順(姿)制約における(C)サイズに関する制約は不要になる。
(ハードウェア構成)
図8は、ヤード管理装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
図8に示すように、ヤード管理装置100は、CPU(Central Processing Unit)801と、ROM(Read Only
Memory)802と、RAM(Random Access Memory)803と、PD(Pointing Device)804と、HD(Hard Disk)805と、表示装置806と、スピーカ807と、通信I/F(Interface)808と、システムバス809とを有している。
CPU801は、ヤード管理装置100における動作を統括的に制御するものであり、システムバス809を介して、ヤード管理装置100の各構成部(802〜808)を制御する。
ROM802は、CPU801の制御プログラムであるBIOS(Basic Input/Output System)やオペレーティングシステムプログラム(OS)、CPU801が前述した処理を実行するために必要なプログラム等を記憶する。
RAM803は、CPU801の主メモリ、ワークエリア等として機能する。CPU801は、処理の実行に際して、ROM802から必要なコンピュータプログラム等や、HD805から必要な情報等をRAM803にロードし、当該コンピュータプログラム等や当該情報等の処理を実行することで各種の動作を実現する。
PD804は、例えば、マウスやキーボード等からなり、操作者が必要に応じて、ヤード管理装置100に対して操作入力を行うための操作入力手段を構成する。
HD805は、各種の情報やデータ、ファイル等を記憶する記憶手段を構成する。
表示装置806は、CPU801の制御に基づいて、各種の情報や画像を表示する表示手段を構成する。
スピーカ807は、CPU801の制御に基づいて、各種の情報に係る音声を出力する音声出力手段を構成する。
通信I/F808は、CPU801の制御に基づいて、外部装置とネットワークを介して各種の情報等の通信を行う。
システムバス809は、CPU801、ROM802、RAM803、PD804、HD805、表示装置806、スピーカ807及び通信I/F808を相互に通信可能に接続するためのバスである。
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
(請求項との関係)
<請求項1(8、15)>
情報取込手段(工程)は、例えば、鋼材情報取込部110(ステップS201)により実現される。
金属材識別情報は、例えば、搬送対象鋼材(ロット)iにより実現される。
本山情報は、例えば、本山番号、本山積位置により実現される。
本山を特定する情報は、例えば、本山番号により実現される。
当該本山における当該金属材の積位置の情報は、例えば、本山積位置により実現される。
元山情報は、例えば、元山番号、元山積位置により実現される。
ヤードに現時点において山積みされている金属材からなる元山への当該金属材の帰属を特定する情報は、例えば、元山番号により実現される。
当該元山における当該既到着の金属材の積位置の情報は、例えば、元山積位置により実現される。
到着予定時刻情報は、例えば、受入テーブルへの到着予定時刻により実現される。
搬送時刻制約式設定手段(工程)は、例えば、搬送時刻変数設定部131、搬送時刻制約式設定部132(ステップS301〜S308)により実現される。
搬送時刻制約式は、例えば、(1)式、(2)式、(3)式、(4)式、(5−1)式、(5−2)式、(6−1)式、(6−2)式、(6−3)式、(7)式により実現される。
搬送時刻目的関数設定手段(工程)は、例えば、搬送時刻変数設定部131、搬送時刻目的関数設定部133(ステップS301、S302、S309〜S311)により実現される。
搬送時刻目的関数は、例えば、(10)式により実現される。ここで、前記本山に搬送される過程で前記搬送対象鋼材が滞留する時間は、例えば、仮置き総時間と受入テーブルでの総待ち時間(の重み付き線形和)により実現される。
搬送時刻最適解算出手段(工程)は、例えば、搬送時刻最適解算出部134(ステップS312)により実現される。
仮山決定手段(工程)は、例えば、仮山決定部140により、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iを決定することにより実現される。
<請求項2、3(9、10)>
仮山制約式設定手段(工程)は、例えば、仮山変数設定部141、仮山制約式設定部142(ステップS401〜S408)により実現される。
第1の仮山制約式は、例えば、(13−1)式、(13−2)式、(13−3)式により実現される。
積段関係1-0変数は、例えば、積段関係変数(y[i1][i2][m])により実現される。
第2の仮山制約式は、例えば、(14)式により実現される。
仮山要否1-0変数は、例えば、仮山要否判定変数(δ[m])により実現される。
仮山目的関数設定手段(工程)は、例えば、仮山変数設定部141、仮山目的関数設定部143(ステップS403、S409)により実現される。
仮山目的関数は、例えば、(15)式により実現される。
仮山最適解算出手段(工程)は、例えば、仮山最適解算出部144(ステップS410)により実現される。
仮山情報生成手段(工程)は、例えば、仮山情報生成部145(ステップS411)により実現される。
仮山情報は、例えば、各仮山mにおける、仮置き対象の搬送対象鋼材(ロット)iの積順の情報により実現される。
<請求項5(11)>
第1の初期搬送時刻制約式は、例えば、(3)式により実現される。
第2の初期搬送時刻制約式は、例えば、(4)式により実現される。
最終搬送時刻制約式は、例えば、(7)式により実現される。
搬送機器同時搬送制約式は、例えば、(6−1)式、(6−2)式、(6−3)式により実現される。
搬送時刻目的関数は、例えば、(8)式により実現される。
<請求項5(12)>
空きスペース情報は、例えば、空き番地により実現される。
搬送作業指示生成手段(工程)は、例えば、搬送作業指示生成部150(ステップS205)により実現される。
搬送作業指示手段(工程)は、例えば、搬送作業指示部160(ステップS206)により実現される。
本発明は、ヤードに既到着の金属材と未到着の金属材を搬送機器により搬送して、次工程に排出する用途等に適用できる。

Claims (15)

  1. 工程間の置場として、半製品と最終製品とコンテナとの何れか1つを含む金属材を配置するヤードに既到着の金属材と当該ヤードに未到着の金属材とを、1つまたは複数の金属材により構成される搬送単位毎に搬送機器により搬送して、当該ヤードの後工程への払い出し順に応じた積順で山積みされた金属材からなる本山を作成するためのヤード管理装置であって、
    前記既到着の金属材と前記未到着の金属材とのそれぞれについての、当該金属材を識別するための金属材識別情報と、前記既到着の金属材と前記未到着の金属材とのそれぞれについての、搬送先の前記本山を特定する情報および当該本山における当該金属材の積位置の情報を含む本山情報と、前記既到着の金属材のそれぞれについての、ヤードに現時点において山積みされている金属材からなる元山への当該金属材の帰属を特定する情報および当該元山における当該既到着の金属材の積位置の情報を含む元山情報と、前記未到着の金属材のそれぞれについての、前記ヤードの受入口への到着予定時刻を示す到着予定時刻情報と、を含む情報を外部から取り込む情報取込手段と、
    前記搬送単位の数の金属材からなる搬送対象金属材のそれぞれについての、現時点を基準とした最初の搬送開始時刻である初期搬送時刻および前記本山を搬送先とするときの搬送開始時刻である最終搬送時刻との少なくとも何れか一方を変数として含む制約式であって、前記搬送対象金属材の前記搬送機器による搬送時刻に係る制約を表す制約式である搬送時刻制約式を、前記情報取込手段により取り込まれた情報に基づいて設定する搬送時刻制約式設定手段と、
    前記搬送対象金属材のそれぞれについての、前記初期搬送時刻および前記最終搬送時刻の少なくとも何れか一方を変数として含む目的関数であって、前記本山に搬送される過程で前記搬送対象金属材が滞留する時間を表す目的関数である搬送時刻目的関数を、前記情報取込手段により取り込まれた情報に基づいて設定する搬送時刻目的関数設定手段と、
    前記搬送時刻制約式を満足し、かつ、前記搬送時刻目的関数の値が最小となるように、前記搬送対象金属材のそれぞれについて、前記初期搬送時刻の最適値と、前記最終搬送時刻の最適値とを算出する搬送時刻最適解算出手段と、
    前記初期搬送時刻の最適値と、前記最終搬送時刻の最適値とに基づいて、前記本山に配置される前に前記搬送対象金属材を前記ヤードに仮置きして仮山を形成する必要があるか否かを、前記搬送対象金属材のそれぞれについて判定して、仮置き対象となる前記搬送対象金属材を決定する仮山決定手段と、を有することを特徴とするヤード管理装置。
  2. 前記仮山決定手段は、
    前記仮置き対象となる複数の前記搬送対象金属材の仮山への割り当てと当該仮山における積順を表す1-0変数である積段関係1-0変数を変数として含む制約式であって、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材の前記仮山における積順に係る制約を表す第1の仮山制約式と、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材の数と同数の仮山の候補のそれぞれについて、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材の少なくとも1つが割り当てられるか否かを表す仮山要否1-0変数を変数として含む制約式であって、当該仮山要否1-0変数の総和の下限を定める第2の仮山制約式と、を含む仮山制約式を、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材の情報に基づいて設定する仮山制約式設定手段と、
    前記仮山要否1-0変数を変数として含む目的関数であって、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材が割り当てられる仮山の数を前記仮山要否1-0変数の総和により表した目的関数である仮山目的関数を、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材の情報に基づいて設定する仮山目的関数設定手段と、
    前記仮山制約式を満足し、かつ、前記仮山目的関数の値が最小となるように、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材のそれぞれについて、前記積段関係1-0変数の最適値を算出する仮山最適解算出手段と、
    前記積段関係1-0変数の最適値に基づいて、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材が割当てられる仮山を特定する情報と、当該仮置き対象となる前記搬送対象金属材の当該仮山における積位置の情報とを含む仮山情報を生成する仮山情報生成手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載のヤード管理装置。
  3. 前記積段関係1-0変数は、同一の仮山において、前記仮置き対象となる2つの前記搬送対象金属材のうち、一方の前記搬送対象金属材が下に、他方の前記搬送対象金属材がその上に割り当てられる場合に「1」となり、そうでない場合に「0」となる1-0変数であり、
    前記第1の仮山制約式は、前記初期搬送時刻の最適値が早いものから順に、前記仮山の下に配置されることと、前記最終搬送時刻の最適値が早いものから順に、前記仮山の上から配置されることとを、前記積段関係1-0変数を用いて表した積み順制約式を含み、
    前記第2の仮山制約式は、前記仮山における、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材の積数は、所定の数以下であることを、前記仮山要否1-0変数を用いて表した山高さ制約式を含むことを特徴とする請求項2に記載のヤード管理装置。
  4. 前記搬送時刻制約式は、
    前記未到着の搬送対象金属材の前記初期搬送時刻に、前記搬送機器による搬送時間を加算した時刻は、その次に到着する前記未到着の搬送対象金属材の前記初期搬送時刻よりも早いことを表した第1の初期搬送時刻制約式と、
    同一の前記元山において上に配置されている前記搬送対象金属材の前記初期搬送時刻は、その下に配置されている前記搬送対象金属材の前記初期搬送時刻よりも早いことを表した第2の初期搬送時刻制約式と、
    同一の前記本山において上に配置される前記搬送対象金属材の前記最終搬送時刻は、その下に配置される前記搬送対象金属材の前記最終搬送時刻に、前記搬送機器による搬送時間を加算した時刻よりも早いことを表した最終搬送時刻制約式と、
    前記未到着の搬送対象金属材が現時点を基準として前記搬送機器で最初に搬送される時間帯と、前記既到着の搬送対象金属材が現時点を基準として前記搬送機器で最初に搬送される時間帯とが重複しないことを、前記初期搬送時刻を用いて表した搬送機器同時搬送制約式と、を含み、
    前記搬送時刻目的関数は、
    前記搬送対象金属材のそれぞれについての、前記最終搬送時刻と前記初期搬送時刻との時間差の総和と、前記未到着の前記搬送対象金属材のそれぞれについての、前記初期搬送時刻と前記到着予定時刻との時間差の総和との重み付き線形和であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のヤード管理装置。
  5. 前記搬送対象金属材のそれぞれの、前記搬送機器による搬送経路を含む搬送作業指示情報を生成する搬送作業指示生成手段と、
    前記搬送作業指示情報に基づく搬送作業指示信号を前記搬送機器に対して出力する搬送作業指示手段と、を有し、
    前記情報取込手段は、前記ヤードの空きスペースの位置を示す空きスペース情報を外部から更に取り込み、
    前記搬送作業指示生成手段は、前記初期搬送時刻と、前記最終搬送時刻と、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材を特定する情報を含む仮山情報と、前記本山情報と、前記元山情報と、前記空きスペース情報と、に基づいて、前記搬送対象金属材のそれぞれの、前記搬送機器による搬送経路を含む搬送作業指示情報を生成することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のヤード管理装置。
  6. 前記搬送作業指示手段は、前記搬送作業指示情報を表示させることを指示するための表示指示信号を、前記搬送作業指示信号として前記搬送機器に送信して、当該搬送機器に備わる表示装置に、前記搬送作業指示情報を表示させることを特徴とする請求項5に記載のヤード管理装置。
  7. 前記搬送機器は、制御信号に基づいて自動的に動作する搬送機器を含み、
    前記搬送作業指示手段は、前記搬送作業指示情報に従って動作させることを指示するための制御信号を、前記搬送作業指示信号として前記搬送機器に送信して、当該搬送機器を、前記制御信号に基づいて自動的に動作させることを特徴とする請求項5に記載のヤード管理装置。
  8. 工程間の置場として、半製品と最終製品とコンテナとの何れか1つを含む金属材を配置するヤードに既到着の金属材と当該ヤードに未到着の金属材とを、1つまたは複数の金属材により構成される搬送単位毎に搬送機器により搬送して、当該ヤードの後工程への払い出し順に応じた積順で山積みされた金属材からなる本山を作成するためのヤード管理方法であって、
    前記既到着の金属材と前記未到着の金属材とのそれぞれについての、当該金属材を識別するための金属材識別情報と、前記既到着の金属材と前記未到着の金属材とのそれぞれについての、搬送先の前記本山を特定する情報および当該本山における当該金属材の積位置の情報を含む本山情報と、前記既到着の金属材のそれぞれについての、ヤードに現時点において山積みされている金属材からなる元山への当該金属材の帰属を特定する情報および当該元山における当該既到着の金属材の積位置の情報を含む元山情報と、前記未到着の金属材のそれぞれについての、前記ヤードの受入口への到着予定時刻を示す到着予定時刻情報と、を含む情報を外部から取り込む情報取込工程と、
    前記搬送単位の数の金属材からなる搬送対象金属材のそれぞれについての、現時点を基準とした最初の搬送開始時刻である初期搬送時刻および前記本山を搬送先とするときの搬送開始時刻である最終搬送時刻との少なくとも何れか一方を変数として含む制約式であって、前記搬送対象金属材の前記搬送機器による搬送時刻に係る制約を表す制約式である搬送時刻制約式を、前記情報取込工程により取り込まれた情報に基づいて設定する搬送時刻制約式設定工程と、
    前記搬送対象金属材のそれぞれについての、前記初期搬送時刻および前記最終搬送時刻の少なくとも何れか一方を変数として含む目的関数であって、前記本山に搬送される過程で前記搬送対象金属材が滞留する時間を表す目的関数である搬送時刻目的関数を、前記情報取込工程により取り込まれた情報に基づいて設定する搬送時刻目的関数設定工程と、
    前記搬送時刻制約式を満足し、かつ、前記搬送時刻目的関数の値が最小となるように、前記搬送対象金属材のそれぞれについて、前記初期搬送時刻の最適値と、前記最終搬送時刻の最適値とを算出する搬送時刻最適解算出工程と、
    前記初期搬送時刻の最適値と、前記最終搬送時刻の最適値とに基づいて、前記本山に配置される前に前記搬送対象金属材を前記ヤードに仮置きして仮山を形成する必要があるか否かを、前記搬送対象金属材のそれぞれについて判定して、仮置き対象となる前記搬送対象金属材を決定する仮山決定工程と、を有することを特徴とするヤード管理方法。
  9. 前記仮山決定工程は、
    前記仮置き対象となる複数の前記搬送対象金属材の仮山への割り当てと当該仮山における積順を表す1-0変数である積段関係1-0変数を変数として含む制約式であって、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材の前記仮山における積順に係る制約を表す第1の仮山制約式と、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材の数と同数の仮山の候補のそれぞれについて、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材の少なくとも1つが割り当てられるか否かを表す仮山要否1-0変数を変数として含む制約式であって、当該仮山要否1-0変数の総和の下限を定める第2の仮山制約式と、を含む仮山制約式を、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材の情報に基づいて設定する仮山制約式設定工程と、
    前記仮山要否1-0変数を変数として含む目的関数であって、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材が割り当てられる仮山の数を前記仮山要否1-0変数の総和により表した目的関数である仮山目的関数を、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材の情報に基づいて設定する仮山目的関数設定工程と、
    前記仮山制約式を満足し、かつ、前記仮山目的関数の値が最小となるように、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材のそれぞれについて、前記積段関係1-0変数の最適値を算出する仮山最適解算出工程と、
    前記積段関係1-0変数の最適値に基づいて、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材が割当てられる仮山を特定する情報と、当該仮置き対象となる前記搬送対象金属材の当該仮山における積位置の情報とを含む仮山情報を生成する仮山情報生成工程と、を有することを特徴とする請求項8に記載のヤード管理方法。
  10. 前記積段関係1-0変数は、同一の仮山において、前記仮置き対象となる2つの前記搬送対象金属材のうち、一方の前記搬送対象金属材が下に、他方の前記搬送対象金属材がその上に割り当てられる場合に「1」となり、そうでない場合に「0」となる1-0変数であり、
    前記第1の仮山制約式は、前記初期搬送時刻の最適値が早いものから順に、前記仮山の下に配置されることと、前記最終搬送時刻の最適値が早いものから順に、前記仮山の上から配置されることとを、前記積段関係1-0変数を用いて表した積み順制約式を含み、
    前記第2の仮山制約式は、前記仮山における、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材の積数は、所定の数以下であることを、前記仮山要否1-0変数を用いて表した山高さ制約式を含むことを特徴とする請求項9に記載のヤード管理方法。
  11. 前記搬送時刻制約式は、
    前記未到着の搬送対象金属材の前記初期搬送時刻に、前記搬送機器による搬送時間を加算した時刻は、その次に到着する前記未到着の搬送対象金属材の前記初期搬送時刻よりも早いことを表した第1の初期搬送時刻制約式と、
    同一の前記元山において上に配置されている前記搬送対象金属材の前記初期搬送時刻は、その下に配置されている前記搬送対象金属材の前記初期搬送時刻よりも早いことを表した第2の初期搬送時刻制約式と、
    同一の前記本山において上に配置される前記搬送対象金属材の前記最終搬送時刻は、その下に配置される前記搬送対象金属材の前記最終搬送時刻に、前記搬送機器による搬送時間を加算した時刻よりも早いことを表した最終搬送時刻制約式と、
    前記未到着の搬送対象金属材が現時点を基準として前記搬送機器で最初に搬送される時間帯と、前記既到着の搬送対象金属材が現時点を基準として前記搬送機器で最初に搬送される時間帯とが重複しないことを、前記初期搬送時刻を用いて表した搬送機器同時搬送制約式と、を含み、
    前記搬送時刻目的関数は、
    前記搬送対象金属材のそれぞれについての、前記最終搬送時刻と前記初期搬送時刻との時間差の総和と、前記未到着の前記搬送対象金属材のそれぞれについての、前記初期搬送時刻と前記到着予定時刻との時間差の総和との重み付き線形和であることを特徴とする請求項8〜10の何れか1項に記載のヤード管理方法。
  12. 前記搬送対象金属材のそれぞれの、前記搬送機器による搬送経路を含む搬送作業指示情報を生成する搬送作業指示生成工程と、
    前記搬送作業指示情報に基づく搬送作業指示信号を前記搬送機器に対して出力する搬送作業指示工程と、を有し、
    前記情報取込工程は、前記ヤードの空きスペースの位置を示す空きスペース情報を外部から更に取り込み、
    前記搬送作業指示生成工程は、前記初期搬送時刻と、前記最終搬送時刻と、前記仮置き対象となる前記搬送対象金属材を特定する情報を含む仮山情報と、前記本山情報と、前記元山情報と、前記空きスペース情報と、に基づいて、前記搬送対象金属材のそれぞれの、前記搬送機器による搬送経路を含む搬送作業指示情報を生成することを特徴とする請求項8〜11の何れか1項に記載のヤード管理方法。
  13. 前記搬送作業指示工程は、前記搬送作業指示情報を表示させることを指示するための表示指示信号を、前記搬送作業指示信号として前記搬送機器に送信して、当該搬送機器に備わる表示装置に、前記搬送作業指示情報を表示させることを特徴とする請求項12に記載のヤード管理方法。
  14. 前記搬送機器は、制御信号に基づいて自動的に動作する搬送機器を含み、
    前記搬送作業指示工程は、前記搬送作業指示情報に従って動作させることを指示するための制御信号を、前記搬送作業指示信号として前記搬送機器に送信して、当該搬送機器を、前記制御信号に基づいて自動的に動作させることを特徴とする請求項12に記載のヤード管理方法。
  15. 工程間の置場として金属材を配置するヤードに既到着の金属材と当該ヤードに未到着の金属材とを、1つまたは複数の金属材により構成される搬送単位毎に搬送機器により搬送して、当該ヤードの後工程への払い出し順に応じた積順で山積みされた金属材からなる本山を作成するためのヤード管理のための処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
    前記既到着の金属材と前記未到着の金属材とのそれぞれについての、当該金属材を識別するための金属材識別情報と、前記既到着の金属材と前記未到着の金属材とのそれぞれについての、搬送先の前記本山を特定する情報および当該本山における当該金属材の積位置の情報を含む本山情報と、前記既到着の金属材のそれぞれについての、ヤードに現時点において山積みされている金属材からなる元山への当該金属材の帰属を特定する情報および当該元山における当該既到着の金属材の積位置の情報を含む元山情報と、前記未到着の金属材のそれぞれについての、前記ヤードの受入口への到着予定時刻を示す到着予定時刻情報と、を含む情報を外部から取り込む情報取込工程と、
    前記搬送単位の数の金属材からなる搬送対象金属材のそれぞれについての、現時点を基準とした最初の搬送開始時刻である初期搬送時刻および前記本山を搬送先とするときの搬送開始時刻である最終搬送時刻との少なくとも何れか一方を変数として含む制約式であって、前記搬送対象金属材の前記搬送機器による搬送時刻に係る制約を表す制約式である搬送時刻制約式を、前記情報取込工程により取り込まれた情報に基づいて設定する搬送時刻制約式設定工程と、
    前記搬送対象金属材のそれぞれについての、前記初期搬送時刻および前記最終搬送時刻の少なくとも何れか一方を変数として含む目的関数であって、前記本山に搬送される過程で前記搬送対象金属材が滞留する時間を表す目的関数である搬送時刻目的関数を、前記情報取込工程により取り込まれた情報に基づいて設定する搬送時刻目的関数設定工程と、
    前記搬送時刻制約式を満足し、かつ、前記搬送時刻目的関数の値が最小となるように、前記搬送対象金属材のそれぞれについて、前記初期搬送時刻の最適値と、前記最終搬送時刻の最適値とを算出する搬送時刻最適解算出工程と、
    前記初期搬送時刻の最適値と、前記最終搬送時刻の最適値とに基づいて、前記本山に配置される前に前記搬送対象金属材を前記ヤードに仮置きして仮山を形成する必要があるか否かを、前記搬送対象金属材のそれぞれについて判定して、仮置き対象となる前記搬送対象金属材を決定する仮山決定工程と、をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
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