JP2019206414A - ヤード管理装置、ヤード管理方法、およびプログラム - Google Patents

ヤード管理装置、ヤード管理方法、およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】 初期山から最終山に金属材を積み替えるための金属材の搬送計画を作成する際に、最終山の総数が最小となる範囲で、移動する金属材の数が最小となるように、移動すべき金属材と移動すべきではない金属材とを判別する。【解決手段】 ヤード管理装置100は、最終山の高さ上限により定まる最小の数の最終山を構成するものとする場合に、非移動鋼材の上に積むことができる移動鋼材の数と、当該非移動鋼材の上に積む必要がある移動鋼材の数とが一致することを決定変数(非移動最上段鋼材判別変数xiおよび移動有無判別変数yi)を用いて表す制約式を設定する。そして、ヤード管理装置100は、制約式を満足するように、非移動鋼材グループの総数を最大(または、移動鋼材グループの総数を最小)にすることを目的とする目的関数Jの値が最大(または最小)になるときの決定変数を導出し、非移動鋼材および移動鋼材を決定する。【選択図】 図1

Description

本発明は、ヤード管理装置、ヤード管理方法、およびプログラムに関し、金属製造プロセスにおいて、スラブやコイルなどの金属材を次工程へ円滑に供給するために設けられたヤードで金属材の山仕分けを行うために用いて好適なものである。
金属製造プロセスの一例である製鉄プロセスにおいて、例えば製鋼工程から次工程の圧延工程へ、金属材の一例である鋼材を搬送する際、鋼材は、一旦ヤードと呼ばれる一時保管場所に置かれた後、次工程である圧延工程の処理時刻に合わせてヤードから搬出される。そのヤードのレイアウトの一例を図8に示す。ヤードとは、図8に示すように、上流工程より払い出されたスラブなどの鋼材を、下流工程に供給するためのバッファーエリアとして、縦横に区画された置場801〜804である。縦方向の分割区分を"棟"、横方向の分割区分を"列"と称することが多い。つまり、クレーン(1A、1B、2A、2B)は棟内を移動可能であり、同一棟内での異なる列の間で鋼材の移送を行う。また搬送テーブルにより棟間の鋼材の移送を行う。搬送指令を作成する際は"棟"および"列"を指定することにより、どこへ鋼材を搬送するかを示す(図8の置場801〜804に括弧書きで付されている番号(11)、(12)、(21)、(22)を参照)。
次に、図8を例にヤードでの基本的な作業の流れを示す。まず、前工程である製鋼工程の連鋳機810から搬出された鋼材は、パイラー811を経由して受入テーブルXでヤードまで運ばれ、クレーン1A、1B、2A、2Bにより、区画された置場801〜804の何れかに搬送され、山積みして置かれる。そして、後工程である圧延工程の製造スケジュールに合わせ、再びクレーン1A、1B、2A、2Bにより払出テーブルZに載せられ、圧延工程へと搬送される。一般に、ヤードにおいて鋼材は、前記の様に山積みされた状態で置かれる。これは、限られたヤード面積を有効に活用するためである。
本明細書、特許請求の範囲、および図面では、「既着山」、「仮想山」、「初期山」、「最終山」、「仮山」を以下の意味で用いることとする。
既着山:現時点で、既にヤードにおいて形作られている山。
仮想山:現時点で、ヤードに到着していない金属材を、ヤードへの到着順が早いものほど上に山積みすると仮定した場合の山(現実に存在する山ではない)。
初期山:既着山と仮想山の総称。
最終山:後工程に払出すために積み上げた最終的な山(払出山ともいう)。
仮山:現時点以降に、初期山から、最終山へ移送する際に、やむを得ず仮置きを行う山。
ヤードでは、次工程である熱間圧延工程における加熱炉の燃料原単位の削減のため、鋼材ができるだけ高い温度を保持した状態で加熱炉に装入されるようにすることが求められる。そのため、昨今ヤード内に保温設備を設置し、その中に鋼材を山積みされた状態で保管する場合がある。限られた保温設備を有効に活用するため、できるだけ設備限界まで高く鋼材を積み上げることが必要となる。一方、鋼材を積み上げる際には、次工程へ供給し易いよう、最終山において、次工程における処理順番に鋼材が上から積まれていること、最終山の積み形状が不安定な逆ピラミッド状でないことなどの制約(これを「積姿制約」と称する)がある。更に、山立て(最終山をつくること)を行う際の作業負荷も見逃せない要素である。従って、ヤード管制では、前述した積姿制約の下でできるだけ少ない作業負荷で、できるだけ高い最終山となるように山立てを行う作業計画を策定することが望まれる。
また、ヤードにおいて後工程にスムーズに要求された鋼材を払い出すべく行う山仕分け(鋼材を複数の山に分けること)を行う際には、到着予定の鋼材が降格となる(鋼材の造り込みの際に生ずる品質トラブルなどの理由により当初予定の用途からグレードを下げ別の用途に振り替える)こと、或いは到着予定の鋼材に対して予定されていない精整処理が必要となったり、サイズが変わったりすることにより、当初の予定通りの鋼材が到着しないことは頻繁に起こり得る。また、ヤードの置場の状態も当初の予定通りに淡々と遷移することは、ほとんど期待できず、予定していない鋼材を予定していない置場に置かざるを得ないことは日常茶飯事である。
更には、ヤードから後工程である熱間圧延工程への払出順に山に積まれていた鋼材の、後工程である熱間圧延工程における圧延順が、当該鋼材がヤードに到着した後に変更となることにより、当該山が払出順に積まれていなくなり、変更された圧延順に従い鋼材の積み替えを余儀なくされるケースも頻繁に起こり得る。ここで、鋼材が払出順に山に積まれるとは、当該山の何れの積位置においても、相対的に上にある1つまたは同時に搬送される複数の鋼材の方が、当該鋼材よりも下にある鋼材よりも早く後工程に払い出されることをいう。
しかしながら、ここで要求される積み替え作業は、ヤードへの鋼材の受入作業や、ヤードからの鋼材の払出作業と並行して行う必要があることから、鋼材の積み替えの対応が可能な時間帯や、置場スペースが限られる。このため、効率的に且つ省スペースで鋼材の積み替え作業を実行することが求められる。
従って、ヤードへの到着前後の様々な事情により、ヤード到着時の積み姿が払出順でなくなった山を払出順に積み替える作業を、効率的に(即ち、できるだけ少ない搬送数で)且つできるだけ少ない最終山数となるようにすると共に、できるだけ少ない仮置き場に留めて行うニーズは極めて高い。
以上のような初期山から最終山に鋼材を積み替える問題に対する従来技術として、特許文献1〜3に記載の発明がある。
まず、特許文献1には、既にヤードにある既着山の鋼材を払出順に積み替える際、必要とされる配替負荷や積姿制約を考慮して最適な最終山の山姿を、組み合わせ最適化問題として定式化し、タブサーチ手法を用いて算出する手法が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の発明では、最終山の山姿を求める手法は示されているが初期山から最終山へ至る搬送順を求める手法をどのようにするかという点は明確に示されていない。
次に、特許文献2には、ヤードに到着済みの鋼材と未到着材とが混在する状況下で、当該時点での初期山の状態と最終山の状態とが与えられた場合の、初期山の状態から最終山の状態への鋼材の積み替え搬送問題に対し、各鋼材の搬送は高々2回という前提で初期搬送時刻変数および最終搬送時刻変数を用いて混合整数計画問題として定式化する手法が開示されている。
最後に、特許文献3には、山立ておよび搬送に関する制約条件を満たす数理計画問題に帰着させ、山仕分けおよび搬送順を同時に最適化する手法が開示されている。
特許第4935032号公報 特許第5365759号公報 特許第5434267号公報 特開2016−81186号公報 特開2007−84201号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載の技術では、山の積み替えに際しては、全ての鋼材を移動するか或いは、移動しない(固定する)鋼材は予め与えられている前提で問題を設定する。
既にヤードに積まれている山を積み替える際には、実操業では、山の置場自体を変更したいという要請がない限り、山毎にまとめて移動することで山を積み替えるのではなく、出来るだけ積み替え数を少なくするため、不要な鋼材の移動を回避するという方法が採られる。つまり、このような積み替えの場合には、初期山において移動の必要のない鋼材は、そのままの状態とした最小の搬送数での積み替えを行うことが求められる。これを実現するのに、非移動(固定)とすることができる全ての鋼材を移動させない方法が必ずしもベストであるとは限らない。非移動(固定)とすることができる鋼材の移動を行わないが故に、最終山の山数が増えるケースが起こり得るからである。従って、特許文献1〜3に記載の技術のように、最終山の山数を最小化するための鋼材の移動の是非を考慮しないと、最終山の山数が増える虞がある。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、初期山から最終山に金属材を積み替えるための金属材の搬送計画を作成する際に、最終山の総数が最小となる範囲で、移動する金属材の数が最小となるように、移動すべき金属材と移動すべきではない金属材とを判別することができるようにすることを目的とする。
本発明のヤード管理装置は、工程間の置場であるヤードに山積みされる金属材からなる初期山の当該金属材を、搬送機器により搬送して、当該ヤードの後工程への払出順に従った積順で山積みされる金属材からなる最終山を作成するときに、前記置場において前記初期山から前記最終山に搬送される金属材である移動金属材と、前記初期山そのままの場所に前記最終山を作成するために当該初期山の場所に固定される非移動金属材とを決定するためのヤード管理装置であって、前記初期山を構成する前記金属材が、当該初期山において、前記非移動金属材の中で最上段にある金属材であるか否かを示す非移動最上段金属材判別変数と、前記金属材が移動金属材であるか否かを示す移動有無判別変数とを決定変数とし、前記初期山を構成する前記金属材の総数を、それぞれの前記最終山を構成する前記金属材の数の上限値である高さ上限値で割った値以上の最小の整数値を前記最終山の総数とし、前記初期山の識別情報と、当該初期山の各積位置における前記金属材の識別情報と、前記金属材の前記払出順とを含む金属材情報を取得する金属材情報取得手段と、前記非移動金属材の中で最上段にある前記非移動金属材の上に積むことが可能な移動金属材の数と、前記移動金属材であって、前記非移動金属材の中で最上段にある前記非移動金属材の上に移動される必要がある移動金属材の数とが、前記非移動金属材のそれぞれにおいて一致することが必要であることを、前記決定変数を用いて表す制約式である積み替え制約式を含む制約式を、前記金属材情報に基づいて設定する制約式設定手段と、前記移動金属材の総数が最小となることを目的とする目的関数、または、前記非移動金属材の総数が最大となることを目的とする目的関数を、前記金属材情報に基づいて設定する目的関数設定手段と、前記制約式を満足する範囲で前記目的関数の値が最小または最大になるときの前記決定変数の値を最適解として導出することを、数理計画法による最適化計算を行うことにより実行する最適化計算手段と、を有することを特徴とする。
本発明のヤード管理方法は、工程間の置場であるヤードに山積みされる金属材からなる初期山の当該金属材を、搬送機器により搬送して、当該ヤードの後工程への払出順に従った積順で山積みされる金属材からなる最終山を作成するときに、前記置場において前記初期山から前記最終山に搬送される金属材である移動金属材と、前記初期山そのままの場所に前記最終山を作成するために当該初期山の場所に固定される非移動金属材とを決定するためのヤード管理方法であって、前記初期山を構成する前記金属材が、当該初期山において、前記非移動金属材の中で最上段にある金属材であるか否かを示す非移動最上段金属材判別変数と、前記金属材が移動金属材であるか否かを示す移動有無判別変数とを決定変数とし、前記初期山を構成する前記金属材の総数を、それぞれの前記最終山を構成する前記金属材の数の上限値である高さ上限値で割った値以上の最小の整数値を前記最終山の総数とし、前記初期山の識別情報と、当該初期山の各積位置における前記金属材の識別情報と、前記金属材の前記払出順とを含む金属材情報を取得する金属材情報取得ステップと、前記非移動金属材の中で最上段にある前記非移動金属材の上に積むことが可能な移動金属材の数と、前記移動金属材であって、前記非移動金属材の中で最上段にある前記非移動金属材の上に移動される必要がある移動金属材の数とが、前記非移動金属材のそれぞれにおいて一致することが必要であることを、前記決定変数を用いて表す制約式である積み替え制約式を含む制約式を、前記金属材情報に基づいて設定する制約式設定ステップと、前記移動金属材の総数が最小となることを目的とする目的関数、または、前記非移動金属材の総数が最大となることを目的とする目的関数を、前記金属材情報に基づいて設定する目的関数設定ステップと、前記制約式を満足する範囲で前記目的関数の値が最小または最大になるときの前記決定変数の値を最適解として導出することを、数理計画法による最適化計算を行うことにより実行する最適化計算ステップと、を有することを特徴とする。
本発明のプログラムは、前記ヤード管理装置の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
本発明によれば、初期山から最終山に金属材を積み替えるための金属材の搬送計画を作成する際に、最終山の山数が最小となる範囲で、移動する金属材の数が最小となるように、移動すべき金属材と移動すべきではない金属材とを判別することができる。
図1は、ヤード管理装置の機能的な構成の一例を示す図である。 図2は、ヤード管理方法の一例を説明するフローチャートである。 図3は、積み替え対象の鋼材のリストの一例を示す図である。 図4は、本実施形態の手法による計算結果の一例を示す図である。 図5は、最終山の総数を本実施形態の手法で得られる数よりも多くすることを許容した場合の計算結果の第1の例を示す図である。 図6は、最終山の総数を本実施形態の手法で得られる数よりも多くすることを許容した場合の計算結果の第1の例を示す図である。 図7は、実操業における種々のデータを用いた場合の本実施形態の手法による計算結果の一例を示す図である。 図8は、ヤードのレイアウトの一例を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。本実施形態では、鉄鋼製造プロセスにおいて、初期山の山姿を所与として、最終山の山数を最小とする前提の下で、初期山を構成する鋼材から、移動(搬送)すべきである鋼材と移動(搬送)すべきではない鋼材とを決定する。そして、移動すべきである鋼材のみを移動するものとして、公知の手法により、最終山の山姿と、初期山から最終山へ搬送する際の各鋼材の搬送順とを導出する。尚、初期山の少なくとも一部では、製鋼工程で製造された鋼材(スラブ)が圧延工程への搬送順に積まれていないものとする。また、以下の説明では、各鋼材の圧延工程への搬送順を必要に応じて払出順と称する。また、本発明によって移動すべきであると決定される鋼材を必要に応じて移動鋼材と称し、移動すべきではないと決定される鋼材を必要に応じて非移動鋼材と称する。さらに、以降の説明では、「移動鋼材」、「非移動鋼材」を、それぞれ、「移動する鋼材」、「移動しない鋼材」とも呼ぶことがある。
まず、本実施形態を実現するに際しての着眼点について説明する。
最終山の総数が最小になることを実現する前提で、非移動鋼材の総数を最大にする問題を考える。ここで、全ての鋼材は、移動鋼材および非移動鋼材の何れかに識別することができる。
また、非移動鋼材となり得る鋼材は、初期山の山姿より判定することが可能である。非移動鋼材となり得る鋼材は、初期山の最下段からの積順が払出順(下から上に向かって払出順が降順)となっている部分である。また、各初期山において、ある鋼材が非移動鋼材ならば、その下にある鋼材群も非移動鋼材としなくてはならない。非移動鋼材よりも下にある鋼材群を移動させるためには、当該非移動鋼材を移動させなければならないからである。従って、各初期山における非移動鋼材のうち、最上段にある非移動鋼材より上の鋼材は全て移動鋼材となる。
(問題の前提)
本実施形態では、各鋼材の初期山の山姿および払出順(圧延順)は所与とする。
ここで、鋼材グループの集合をN={1,2,・・・,ng}と表記する。鋼材グループとは、搬送機器(主にクレーン)にて搬送する際に、分割されることのない(最小単位となる)一枚以上の鋼材の纏まりを指す。従って、本実施形態では、鋼材の移動(搬送)が、鋼材グループの単位で行われる場合を基本として説明する。従って、本発明によって移動すべきであると決定される鋼材グループを必要に応じて移動鋼材グループと称し、移動すべきではないと決定される鋼材グループを必要に応じて非移動鋼材グループと称する。但し、説明の簡潔化のために、「移動鋼材グループ」、「非移動鋼材グループ」をそれぞれ単に「移動鋼材」、「非移動鋼材」と呼ぶ場合がある。また、鋼材の移動(搬送)が、鋼材一枚単位で行われる場合には、以降の説明に於いて、「鋼材グループ」を「鋼材」と読み替えればよい。
前述したように初期山には、既着山と仮想山とが含まれる。既着山は、最終山の作成対象となる鋼材のうち、鋼材情報が作成された時点(即ち、最終山を作成する時点)でヤードに山積みされている山である。仮想山は、最終山の作成対象となる鋼材のうち、鋼材情報が作成された時点(即ち、最終山を作成する時点)でヤードに未だ山積みされていない鋼材を、ヤードへの予定到着順が早いものほど上になるように山積みしたと仮定した場合の山である。本実施形態では、最終山の作成対象となる鋼材のうちヤードに未到着で未だ山積みされていない全ての鋼材が1つの仮想山に山積みされるものとする。このように本実施形態では、ヤードに未到着で未だ山積みされていない鋼材も仮想山として山積みされているとし(即ち、最終山の作成対象となる全ての鋼材がヤードにおいて山積みされているものとし)、その積姿を所与とする。尚、仮想山を構成する鋼材(未到着材)については、非移動鋼材は存在しないものとし、全てを移動鋼材とする。従って、仮想山を構成する鋼材については、移動鋼材と非移動鋼材との何れかを決定する際に、移動鋼材として取り扱う。
初期山の山姿は既知であるが、最終山の山姿は未知であるとする。最終山は、上から払出順に積まれた山であるものとする。また、最終山は、山積みできる鋼材があれば、その高さ制限の限界まで鋼材を積むものとする。従って、最終山の高さの上限値をhとすると、最終山の総数zは、以下の(1)式で表される。ここでnは全鋼材数をあらわす。このように最終山の総数zは、その高さ制限から定まる最小の数になる。
Figure 2019206414
尚、最終山の高さの上限値hは、最終山として積むことができる鋼材の数で表されるものとする。また、(1)式において、ceil(n/h)は、天井関数(n/h以上の最小の整数値)を表す。
非移動鋼材の総数を最大化する場合、(1)式の仮定がないと、非移動鋼材が自明となる場合があり得る。しかしながら、(1)式の仮定を設けることにより、初期山の最下段からの積順が払出順(下から上に向かって払出順が降順)となっている鋼材グループであっても、最終山の高さを高くするために移動鋼材となる場合が生じる。
また、初期山(初期置場)から最終山(最終置場)への搬送回数は、何れの鋼材グループについても最大2回とする。即ち、2回搬送する鋼材グループは仮置きされることになるが、仮山(仮置場)に搬送された鋼材グループは、次の搬送時には必ず最終山(最終置場)に搬送されるものとし、異なる仮山(仮置場)間で搬送されることはないものとする。
また、非移動鋼材のある初期山の置場が、当該非移動鋼材を含む最終山の置場となる。移動鋼材のみで構成される最終山は、当該移動鋼材の全てが仮置きされなければ、当該移動鋼材を含む初期山の置場とは異なる置場に置かれることになる。一方、移動鋼材のみで構成される最終山であっても、当該移動鋼材の一部が仮置きされ、当該仮置きされた移動鋼材のあった初期山に再び搬送される場合、当該最終山は、当該移動鋼材の初期山の置場と同じ置場に置かれることになる。
また、本実施形態では、以下の幅制約、長さ制約、および高さ制約を積姿制約とする。
・幅制約
或る鋼材グループの最大幅が、当該或る鋼材グループの下に位置する鋼材グループの最小幅よりも狭いならば、当該或る鋼材グループを、当該下に位置する鋼材グループの上に無条件で置ける。或る鋼材グループの最大幅が、当該或る鋼材グループの下に位置する鋼材グループの最小幅よりも広い場合には、両者の幅の差が、作業制約により定まる基準値(例えば200[mm])未満であれば、当該或る鋼材グループを、当該下に位置する鋼材グループの上に置けるが、それを越えると置けない。
即ち、幅制約を満たすのは、或る鋼材グループの最大幅が、当該或る鋼材グループの下に位置する鋼材グループの最小幅よりも狭い場合と、或る鋼材グループの最大幅が、当該或る鋼材グループの下に位置する鋼材グループの最小幅よりも広く、且つ、両者の幅の差が基準値(例えば200[mm])未満である場合である。
・長さ制約
或る鋼材グループの最大長が、当該或る鋼材グループの下に位置する鋼材グループの最小長よりも短いならば、当該或る鋼材グループを、当該下に位置する鋼材グループの上に無条件で置ける。或る鋼材グループの最大長が、当該或る鋼材グループの下に位置する鋼材グループの最小長よりも長い場合には、両者の長さの差が、作業制約により定まる基準値(例えば2000[mm])未満であれば、当該或る鋼材グループを、当該下に位置する鋼材グループの上に置けるが、それを越えると置けない。
即ち、長さ制約を満たすのは、或る鋼材グループの最大長が、当該或る鋼材グループの下に位置する鋼材グループの最小長よりも短い場合と、或る鋼材グループの最大長が、当該或る鋼材グループの下に位置する鋼材グループの最小長よりも長く、且つ、両者の長さの差が基準値(例えば2000[mm])未満である場合である。
・高さ制約
1つの最終山として山積みできる鋼材の数は、最終山の高さの上限値h以下でなければならない。最終山の高さの上限値hは、例えば10である。
(決定変数)
<非移動鋼材および移動鋼材を決定する際に用いる決定変数>
本実施形態では、任意の鋼材グループiに対し、非移動最上段鋼材判別変数xiと、移動有無判別変数yiとを決定変数とする。非移動最上段鋼材判別変数xiは、以下の(2)式のように定義され、移動有無判別変数yiは、以下の(3)式のように定義される。
Figure 2019206414
非移動最上段鋼材判別変数xiは、或る初期山を構成する鋼材グループiが、非移動鋼材グループのうち最上段にある非移動鋼材グループである場合に1となり、そうでない場合に0(ゼロ)となる0−1変数である。このように、初期山に、非移動鋼材グループが1つもなければ、当該初期山を構成する全ての鋼材グループiに対する非移動最上段鋼材判別変数xiは、0(ゼロ)になる。一方、初期山に、非移動鋼材グループが1つ以上あれば、当該非移動鋼材グループのうち最上段にある非移動鋼材グループiに対する非移動最上段鋼材判別変数xiのみが1となる。この場合、当該初期山を構成するその他の鋼材グループiに対する非移動最上段鋼材判別変数xiは、(当該鋼材グループiが非移動鋼材グループであっても)0(ゼロ)になる。即ち、1つの初期山について、非移動最上段鋼材判別変数xiが1となる鋼材グループの数は最大で1である。
移動有無判別変数yiは、鋼材グループiが移動鋼材グループである場合に1となり、そうでない場合に0(ゼロ)となる0−1変数である。
<搬送順、最終山の山姿を決定する際に用いる決定変数>
本実施形態では、非移動鋼材グループおよび移動鋼材グループを決定した後、移動鋼材グループのみを移動(搬送)させるものとして、初期山から最終山に積み替える際の各鋼材グループiの搬送順と最終山の山姿とを決定する。初期山から最終山に積み替える際の各鋼材グループiの搬送順と最終山の山姿を決定する手法は、公知の技術で実現することができる。本実施形態では、特許文献3に記載の手法を用いる場合を例に挙げて説明する。特許文献3では、山仕分け・搬送順変数x[i][m][s]と、仮置き判定変数y[p][s1][s2]と、最適山存在判定変数δ[m]とを決定変数としている。これらの決定変数の詳細は特許文献3に記載されているので、ここでは、その詳細な説明を省略し、概要のみを説明する。
山仕分け・搬送順変数x[i][m][s]は、鋼材グループiを最終山m(m:最終山ID)に搬送順sで搬送する場合に1となり、そうでない場合に0(ゼロ)となる0−1変数である。仮置き判定変数y[p][s1][s2]は、初期山において上下に隣接して積まれている鋼材グループのペアpを、搬送順s1、s2の順に搬送する場合に1、そうでない場合に0(ゼロ)となる0−1変数である。最適山存在判定変数δ[m]は、最終山mが存在する場合に1、存在しない場合に0(ゼロ)となる0−1変数である。
(ヤード管理装置100の機能構成)
図1は、ヤード管理装置100の機能的な構成の一例を示す図である。ヤード管理装置100のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のインターフェースを備える情報処理装置、または専用のハードウェアを用いることにより実現される。図2は、ヤード管理装置100により実行されるヤード管理方法の一例を説明するフローチャートである。
[鋼材情報取得部101、鋼材情報取得ステップS201]
鋼材情報取得部101は、山積みの対象となる鋼材についての鋼材情報を取得する。鋼材情報は、鋼材グループ情報と、各鋼材グループの初期山の山姿を特定する情報と、最終山の高さの上限値hを特定する情報とを含む。
鋼材グループ情報には、最終山の作成対象となる鋼材グループ(鋼材グループの集合N={1,2,・・・,ng})のそれぞれについて、識別情報と、払出順と、鋼材数と、最大幅と、最小幅と、最大長と、最小長の情報が含まれる。鋼材グループとは、搬送機器(主にクレーン)にて搬送する際に、分割されることのない(最小単位となる)鋼材の纏まりを指す。尚、ここでは、説明を簡単にするため、全ての鋼材の厚みは同じであるものとする。
識別情報は、各鋼材グループを一意に識別する識別情報(鋼材グループID)である。
払出順は、各鋼材グループの払出順(圧延工程への搬送順)である。尚、本実施形態では、識別情報を払出順としているので、払出順は、鋼材グループ情報に含まれていなくてもよい。
鋼材数(wi:N→Z+)は、各鋼材グループを構成する鋼材の数である。1つの鋼材グループに含まれる鋼材の数wiは、例えば、1以上6以下(∀i∈N、1≦wi≦6)である。このように鋼材グループには、複数の鋼材が含まれる場合だけでなく、1つの鋼材のみが含まれる場合もある。
最大幅・最小幅は、それぞれ、各鋼材グループを構成する鋼材の最大幅・最小幅である。
最大長・最小長は、それぞれ、各鋼材グループを構成する鋼材の最大長・最小長である。また、全鋼材数nは以下の(4)式で表されるものとする。
Figure 2019206414
初期山の山姿を特定する情報は、初期山を一意に識別する識別情報である初期山IDと、当該初期山IDで識別される初期山の各積段に位置する鋼材グループIDとを含む。
最終山の高さの上限値hは、1つの最終山として山積みできる鋼材の数の上限値である。
尚、最終山の作成対象となる全ての鋼材を1つずつ搬送する場合には、個々の鋼材について、識別情報(鋼材ID)、払出順、幅、および長さの情報が鋼材グループ情報の代わりに取得される。また、初期山の山姿を特定する情報として、初期山の識別情報(初期山ID)が取得されると共に、初期山の各積段に位置する鋼材グループIDの代わりに、初期山の各積段に位置する鋼材IDが取得される。
鋼材情報の取得形態としては、例えば、ヤード管理装置100のユーザインターフェースの入力操作、外部装置からの送信、または可搬型の記憶媒体からの読み出しが挙げられる。
[制約式・目的関数設定部102、制約式設定ステップS202、目的関数設定ステップS203]
制約式・目的関数設定部102は、前述した制約を数式で表した制約式と、前述した目的を数式で表した目的関数とを設定する。
<<制約式>>
まず、制約式について説明する。
(2)式および(3)式で定義した非移動最上段鋼材判別変数xiおよび移動可否有無変数yiを、所与の初期山の山姿により予め決定することができる鋼材グループiがある。また、非移動最上段鋼材判別変数xiおよび移動可否判別変数yiは、互いに従属関係にある。以上のことから、本実施形態では、非移動最上段鋼材判別変数xiおよび移動可否判別変数yiのそれぞれを定義する制約式((7)式〜(11)式)と、非移動最上段鋼材判別変数xiおよび移動可否判別変数yiの関係を定義する制約式((12)式〜(15)式)を用いる。
(a)移動鋼材についての制約
ここで、鋼材グループの集合Nを分割した鋼材グループの部分集合Sk(⊂N)の集合をS={S1,S2,・・・,Sr}と表記する。この鋼材グループの部分集合Skのそれぞれが初期山となる。また、鋼材グループを識別する変数iは、当該鋼材グループの払出順にナンバリングされている(払出順が前であるほど変数iの値は小さい)ものとする。従って、以下の(5)式および(6)式が成立する。
Figure 2019206414
各初期山Skにおいて、最下段から積順が払出順(下から上に向かって払出順が降順)になっている全ての鋼材グループの部分を当該初期山Skから抜き出して得られる部分山をmax(Sk)とする。ここで言う部分山とは、与えられた山の或る鋼材グループからその下にある鋼材グループの全てを、与えられた山と同じ順序で積んで構成される山のことである。このとき、max(Sk)の中に無い鋼材グループは、必ず移動鋼材グループとなる。このことを以下の(7)式および(8)式で表す。
Figure 2019206414
(7)式は、初期山Skからmax(Sk)を除いた部分にある鋼材グループiは移動する(移動鋼材グループになる)ことを表す。(8)式は、初期山Skからmax(Sk)を除いた部分にある鋼材グループiは、初期山Skにおいて、非移動鋼材グループのうち最上段にある鋼材グループになることはないことを表す。(7)式および(8)式により、各初期山Skにおいて、最下段から積順が払出順(下から上に向かって払出順が降順)になっていない鋼材グループiは、移動することが表される。
(b)非移動最上段鋼材判別変数xiに関する制約
各初期山Skにおいて、非移動最上段鋼材判別変数xiが1(xi=1)となる鋼材グループiの数の最大値は1である。従って、以下の(9)式が成り立つ。
Figure 2019206414
また、非移動鋼材グループiがある初期山の数は、最終山の総数zを上回ることはできない。従って、以下の(10)式が成り立つ。
Figure 2019206414
(c)移動有無判別変数yiに関する制約
各初期山Skにおいて、移動鋼材グループiより上にある鋼材グループは全て移動する。従って、各初期山Skで最下段から上に向かって見た場合の払出順(=i(鋼材グループの識別番号))を、k1,k2,・・・とすると、以下の(11)式が成り立つ。
Figure 2019206414
(d)非移動最上段鋼材判別変数xiと移動有無判別変数yiとの関係を規定する制約
全ての鋼材グループiは、移動鋼材グループおよび非移動鋼材グループの何れかに一意に識別される。初期山Skにおいて、鋼材グループiの一番上にある鋼材の最下段から数えた場合の積段数(当該鋼材を含み、それより下にある鋼材の数)をbiとすると、非移動鋼材グループの総数は、非移動最上段鋼材判別変数xiを用いて、Σi∈Ni・xiと表記できる。また、移動鋼材の総数は、移動有無判別変数yiを用いて、Σi∈Ni・wiと表記できる。従って、非移動鋼材の総数と移動鋼材の総数との和が、初期山(既着山および仮想山)を構成する鋼材の総数であることを示す以下の(12)式が成り立つ。
Figure 2019206414
鋼材グループiに対する移動有無判別変数yiが1(yi=1)ならば、初期山Skにおいて、当該鋼材グループiとそれより上にある鋼材グループiとの全てに対する非移動最上段鋼材判別変数xiは0(ゼロ、xi=0)になる。逆に、鋼材グループiに対する移動有無判別変数yiが0(ゼロ、yi=1)ならば、初期山Skにおいて、当該鋼材グループiと、それより上にある鋼材グループiのうち、1つの鋼材グループiに対する非移動最上段鋼材判別変数xiのみが1(xi=1)になる。従って、鋼材グループi∈Skに対し、初期山Skにおいて、当該鋼材グループiと、それより上にある鋼材グループiとの集合をSk (i)と定義すると(以下の(14)式を参照)、以下の(13)式が成り立つ。
Figure 2019206414
(13)式は、初期山Skの任意の鋼材グループiについて、当該鋼材グループiが移動鋼材グループであるならば、それより上に非移動鋼材グループはなく、当該鋼材グループiが移動鋼材グループでないならば、当該鋼材グループiまたは当該鋼材グループiより上の鋼材グループの1つが、非移動鋼材グループのうち最上段に位置する非移動鋼材グループになる(即ち、xi=1になる非移動鋼材グループが1つだけある)ことを表す。
(e)積み替えに関する制約
任意の払出順(鋼材グループ)iに対し、i以前の払出順となる鋼材グループj(≦i)のうち、非移動最上段鋼材判別変数xjが1(xj=1)となる鋼材グループj(非移動鋼材グループ)があれば、最小となる最終山の総数zを達成するには、当該鋼材グループjの上に、(h−bj)・xj枚の鋼材を積む必要がある。つまり、初期山Skにおいて、非移動鋼材の中で最上段にある非移動鋼材iの上に移動鋼材により埋めるべき空きスペースに埋められる鋼材の総数が、Σj:ij(h−bj)・xjあることになる。この
空きスペースに積むことができる鋼材は、払出順がq(≦i)の移動鋼材でなければならない。その移動鋼材の総数は、Σq:iqq・wqである。従って、この制約は以下の
(15)式のように記述できる。
Figure 2019206414
(15)式の左辺は、初期山Skに非移動鋼材グループがある場合(非移動最上段鋼材判別変数xjが1(xj=1)の場合)に、当該非移動鋼材グループの中で最上段にある非移動鋼材グループjの上にできる空きスペース(鋼材の数)を表す。この空きスペースは、移動鋼材により埋め合わせるべきスペースである。この空きスペースに移動鋼材を移動させることができるための必要条件は、搬送順qがi以下となる移動鋼材グループ(yq=1)であることである。その移動鋼材グループに含まれる移動鋼材の総数を表すのが(15)式の右辺であることから、(15)式の制約が課せられる。
(15)式のiを固定した一つ一つの式は必要条件であるが、 任意の払出順i(∈N)に対し、(15)式の制約を課すことで、前述した空きスペースに移動させるのに必要な移動鋼材の数を確保するための十分性を満たすことができる。 そして、(15)式の不等号の右辺(大なり)は、最小化したい量(移動鋼材の数)なので、 必要以上に増えることはないことから、(15)式は、 空きスペースと移動鋼材の数とを一致させる制約と見ることができる。 更に(15)式は、最小化したい移動鋼材の数を反映する移動有無判別変数yqの下限を、最大化したい非移動鋼材の数を反映する非移動最上段鋼材判別変数xjにより表現している一方、非移動鋼材の数を反映する非移動最上段鋼材判別変数xjの上限を、最小化したい移動鋼材の数を反映する移動有無判別変数yqにより規制するという巧妙な補間関係により記述することができている。このため、(15)式は、非常に強力な制約となり、最適解が求解し易くなることが期待できる。
ただし、(15)式のままでは、移動鋼材の数を多く要請しすぎる。なぜなら(z・h−n)の分の移動鋼材は無くてよいからである。例えば、最終山の総数zが3であり、最終山の高さの上限値hが10であり、鋼材の数が28であるとすると、2枚(=3×10−28)の移動鋼材は、空きスペースに移動させなくても、最終山の総数を最小(この例では3)にすることができる。従って、この点を補正するには、nd=(z・h−n)(≧0)とすると、以下の(15')式とすればよい。
Figure 2019206414
(f)幅・長さ制約
本実施形態では、移動鋼材グループおよび非移動鋼材グループを決定する際に、最終山の山姿を規定しないので、積姿制約(幅制約および長さ制約)を完全に考慮することは難しい。しかしながら、非移動鋼材グループと移動鋼材グループとの間における積姿制約(幅制約および長さ制約)は扱うことができる。そこで、本実施形態では、非移動鋼材グループと移動鋼材グループとの間における積姿制約(幅制約および長さ制約)を課す。
具体的に、初期山Skにおいて、非移動鋼材グループのうち最上段にある非移動鋼材グループj(xj=1となる鋼材グループj)の上に移動させることができる鋼材グループは、搬送順がi(≦j)の鋼材グループであり、且つ、鋼材グループjとの間で積姿制約(幅制約および長さ制約)を満たすものでなければならない。この条件を満足する鋼材グループiの集合をIjとする。そうすると、その集合の要素数|Ij|が、空きスペース(=h−bj)より少なければ、鋼材グループjは、非移動鋼材グループのうち最上段の非移動鋼材グループとはなり得ない(鋼材グループjに対する非移動最上段鋼材判別変数xjは1(xj=1)となり得ない)とみなすことができる。この制約は以下の(16)式、(17)式のように記述することができる。
Figure 2019206414
(16)式の制約式は、(15')式で考慮した余裕分(=nd)を考慮していない点で、強すぎる制約といえる。一方、異なる鋼材グループjに対し、搬送順がi(≦j)の鋼材グループであり、且つ、鋼材グループjとの間で積姿制約(幅制約および長さ制約)を満たす鋼材グループの集合Ijは重複すると考えられるので、(16)式は、十分条件でなく必要条件にすぎない。また、(16)式では、移動鋼材グループ同士の積み制約(幅制約および長さ制約)は考慮されていない。ただし、この点は、後述する後処理で考慮される。
制約式・目的関数設定部102は、例えば、(7)式〜(13)式、(15')式、(16)式に対し、S、Sk、N、h、z、bi、wi、nd、Ijを設定することにより、(7)式〜(13)式、(15')式、(16)式の制約式を設定する。
<<目的関数>>
次に、目的関数について説明する。
前述したように本実施形態では、移動鋼材グループの総数を最小、または非移動鋼材グループの総数を最大にすることを目的とするので、以下の(18)式または(19)式に示す目的関数Jを用いる。
Figure 2019206414
制約式・目的関数設定部102は、例えば、(18)式を目的関数Jとして用いる場合には、(18)式に対してiを設定し、(19)式を目的関数Jとして用いる場合には、(19)式に対してi、biを設定することにより、(18)式または(19)式の目的関数を設定する。
[最適化計算部103、最適化計算ステップS204]
最適化計算部103は、(9)式〜(13)式、(15')式、(16)式の制約式を満足する範囲で、(18)式または(19)式の目的関数Jの値が最小になるときの非移動最上段鋼材判別変数xjおよび移動有無判別変数yiを最適解として算出する。また、最適解の算出は、最適化問題を混合整数計画法などの数理計画法により解くための公知のアルゴリズム(solverなどの利用を含む)を用いることにより実現できる。
[後処理部104、後処理ステップS205]
以上のようにして非移動最上段鋼材判別変数xjおよび移動有無判別変数yiの最適解が導出されると、鋼材グループの集合Nに含まれるそれぞれの鋼材グループを移動させるか否か(即ち、移動鋼材グループと非移動鋼材グループの何れとするか)を決定することができる。更に非移動鋼材グループについては移動(搬送)せずに移動鋼材グループについてのみ移動(搬送)するものとして、初期山から最終山に鋼材グループを積み替える際の各鋼材グループの搬送順と、最終山の山姿とを後処理として決定してもよい。以下、後処理部104によって、初期山から最終山に鋼材グループを積み替える際の各鋼材グループの搬送順と、最終山の山姿とを決定する場合の処理の詳細を説明する。前述したように本実施形態では、特許文献3に記載の手法を用いて、初期山から最終山に鋼材グループを積み替える際の鋼材グループの搬送順と、最終山の山姿とを決定する。また、本実施形態では、初期山から最終山に鋼材グループを積み替える際の鋼材グループの搬送順と、最終山の山姿とを決定する際に仮置きされると判定された鋼材グループをどのような仮山に積むのかも決定する。このような仮山の山姿の決定も、公知の技術で実現することができる。本実施形態では、特許文献4に記載の手法を用いる場合を例に挙げて説明する。
まず、特許文献3に記載の最適化計算の概要を説明する。尚、当該最適化計算の詳細については、特許文献3に記載されているので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
前述したように特許文献3では、山仕分け・搬送順変数x[i][m][s]と、仮置き判定変数y[p][s1][s2]と、最適山存在判定変数δ[m]とを決定変数とする。制約式としては、1つの鋼材グループiが、複数の搬送順、複数の最終山に割り当てられることはないとする制約(搬送ロットの一意制約)と、1つの搬送順sに複数の鋼材グループi或いは最終山mが割り当てられることはないとする制約(搬送順の一意制約)と、積姿制約(長さ制約、幅制約、高さ制約)とを用いる。目的関数J'としては、以下の(20)式に示すように、最終山の総山数を評価する目的関数J1と総搬送回数を評価する目的関数J2との重み付き線形和を用いる。
Figure 2019206414
尚、(20)式において、重み係数Weight1、Weight2は、それぞれの評価項目をどの程度重視するかによって予め設定されるものであり、各評価項目(最終山の山数、総搬送回数)間の評価のバランスを表す。例えば、鋼材グループの総搬送回数よりも、最終山の山数を重要な評価項目とする場合には、重み係数Weight1の大きさを重み係数Weight2の大きさよりも大きくする。
特許文献3では、前述した制約式を満足する範囲で目的関数J'の値が最小となる決定変数(山仕分け・搬送順変数x[i][m][s]、仮置き判定変数y[p][s1][s2]と、最適山存在判定変数δ[m])を求める。これらの決定変数により、各鋼材グループiの搬送順と最終山の山姿を求めることができる。ここで、仮置き判定変数の最適解yopt[p][s1][s2]が1となった変数のうち、s1>s2となるものがあれば、鋼材グループのペアpのうち、上にある鋼材グループが仮置きの対象となる。このようにして仮置きの対象となる鋼材グループiを求めることができる。
特許文献3では、全ての鋼材グループを移動することが前提となっている。従って、本実施形態のように、非移動鋼材グループについては移動(搬送)せずに移動鋼材グループについてのみ移動(搬送)するものとして特許文献3に記載の手法を適用する場合、以下のようにする必要がある。
まず、非移動鋼材グループと同一の最終山とすることができない鋼材グループiの当該最終山mに対する山仕分け・搬送順変数x[i][m][s]を0(ゼロ)に固定する。前述したように山仕分け・搬送順変数x[i][m][s]は、鋼材グループiを最終山mに搬送順sで搬送する場合に1となり、そうでない場合に0(ゼロ)となる0−1変数である。
例えば、鋼材グループi1、i2の2つの鋼材グループを非移動鋼材グループとして含む初期山を最終山m1に割り付けるとすると、最終山m1に対する山姿制約として、以下の(21)式の制約を追加する必要がある。尚、F(i1)は、鋼材グループi1と同一の最終山とすることができない鋼材グループの集合を表す。
Figure 2019206414
また、特許文献3の(式4−1)、(式4−2)の山高さ制約は、非移動鋼材グループを考慮して以下の(22)式、(23)式のように書き換えられる。
Figure 2019206414
ここで、Hfは、全ての非移動鋼材グループに属する鋼材の厚みの総和である。Pfは、全ての非移動鋼材グループに属する鋼材の総枚数である。H、Pは、それぞれ、厚み、枚数で記述される最終山の高さ上限値を表す。また、thickness[i]は、鋼材グループiに属する鋼材の厚みの総和である。
そして、以上のようにして仮置きと判定された鋼材グループに対し、特許文献4に記載の手法を適用することにより、それらの鋼材グループをどのような仮山にまとめるかを求めることができる。
ここで、特許文献4に記載の最適化計算の概要を説明する。尚、当該最適化計算の詳細については、特許文献4に記載されているので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
特許文献4では、山分けの対象となる鋼材グループごとに、当該鋼材グループと同一の山に積む場合の山積み制約を満たす鋼材グループの集合を抽出しておき、分枝法によって、山積み制約を満たす鋼材グループの集合である実現可能山を抽出する。制約式としては、何れの鋼材グループも複数の実現可能山に重複使用されてはならず、また、何れか1つの実現可能山にて使用されなければならないことを示す制約式を用いる。また、評価関数としては、実現可能山を最適解として採用するか否かを示す0−1変数である決定変数と、当該実現可能山を選択する場合の評価値との積の、各実現可能山についての総和を用いる。制約式を満足する範囲で目的関数の値を最小とする決定変数(実現可能山の集合)を求める。
特許文献4では、未到着材に対する山分け方法を示すものである。そこで、仮置きと判定された鋼材グループに対し、特許文献4に記載の手法を適用するためには、特許文献4における未到着材を、前述した特許文献3に記載の手法で仮置きと判定された鋼材グループと見なし、特許文献4におけるヤードへの到着順を、前述した特許文献3に記載の手法で得られた仮置きと判定された鋼材グループの仮置き場への搬送順と見なせばよい。
後処理部104は、以上のようにして、移動鋼材グループの搬送順と、最終山の山姿と、仮山の山姿とを導出する。
[出力部105、出力ステップS206]
出力部105は、後処理部104で導出された、鋼材集合Nに含まれる各鋼材グループの初期山から最終山に至るまでの搬送順を示す情報を出力する。出力の形態は、コンピュータディスプレイへの表示、ヤード管理装置100の内部または外部の記憶媒体への記憶、および外部装置への送信のうち、少なくとも1つを含む。外部装置としては、例えば、クレーン、またはクレーンの動作を制御する制御装置が挙げられる。
(まとめ)
以上のように本実施形態では、ヤード管理装置100は、最終山の高さ上限により定まる最小の数の最終山を構成するものとする場合に、最上段にある非移動鋼材の上に積むことができる移動鋼材の数と、当該非移動鋼材の上に積む必要がある移動鋼材の数とが一致することを決定変数(非移動最上段鋼材判別変数xiおよび移動有無判別変数yi)を用いて表す制約式を設定する。そして、ヤード管理装置100は、設定した制約式を満足するように、非移動鋼材グループの総数を最大(または、移動鋼材グループの総数を最小)にすることを目的とする目的関数Jの値が最大(または最小)になるときの非移動最上段鋼材判別変数xiおよび移動有無判別変数yiを導出し、非移動鋼材グループおよび移動鋼材グループを決定する。従って、初期山から最終山に鋼材を積み替えるための鋼材の搬送計画を作成する際に、最終山の総数が最小となるように、移動が必要な鋼材と移動不要な鋼材とを決定することができる。
<計算例>
次に、計算例を説明する。本計算例では、非移動鋼材の総数を最大化(または移動鋼材の総数を最小化)するように本実施形態の手法で非移動鋼材と移動鋼材とを決定し、非移動鋼材を移動せずに移動鋼材を移動させることを前提として、本実施形態で説明した特許文献3、4に基づく後処理を実施して、各鋼材の搬送順と最終山の山姿とを決定する。尚、本計算例では、鋼材を鋼材グループに纏めずに、鋼材を1枚ずつ搬送するものとする。
(検証方法)
本計算例では、本実施形態で説明した手法で決定した非移動鋼材が正しいものとして、本実施形態で説明した特許文献3に基づく後処理を実行して、最終山の数と鋼材の搬送順とを求める。特許文献3に記載のアルゴリズムでは本来、最終山の総山数・総搬送回数のそれぞれに適切な重み係数Weight1、Weight2を設定し、それを乗じた総和を最小化する。しかしながら、本実施形態で説明した移動鋼材の総数を最小化(非移動鋼材の総数を最大化)するアルゴリズム(以下の説明では、「本アルゴリズム」と称する)の検証のため、最終山の総数zは(1)式で定められる数以下とする。つまり、本アルゴリズムの前提によれば、本アルゴリズムにより定まった非移動鋼材を基に鋼材の積み替えを行えば、最終山の総数は、山高さ制限より定まる最小数(=z)となるはずである。従って、この点の検証のために、本実施形態で説明した特許文献3に基づく後処理に対し、この制約(最終山の総数をz以下とする制約)を課すこととする。そして、このような手法で仮置きと判定された鋼材に対し、本実施形態で説明した特許文献4に基づく処理を実行し、仮山の山姿を求める。
本アルゴリズムは、最終山の総数が最小であることを前提に、非移動鋼材の総数を最大化(移動鋼材の総数を最小化)するものであることから、以下の検証を行う。
本アルゴリズムにより得られた非移動鋼材が、前記部分山max(Sk)と一致しておれば、それは最適解とみなすことができる。尚、当該部分山max(Sk)は、「(a)移動鋼材についての制約」の項で説明したものである(以下の説明では、この部分山max(Sk)を必要に応じて極大部分山max(Sk)と称する)。
一方、本アルゴリズムにより得られた非移動鋼材が、極大部分山max(Sk)と一致していない場合は、本アルゴリズムで決定した非移動鋼材(移動鋼材)と、極大部分山max(Sk)とを比較し、極大部分山max(Sk)に含まれながら移動鋼材と判定された鋼材の何れか1枚を非移動鋼材に変更し(非移動鋼材の総数を本アルゴリズムによる最適解より1枚増やして)、本実施形態で説明した特許文献3、4に基づく後処理を実行して、最終山の総数などを求める。
この後処理の結果、最終山の総数が(1)式で定められる数(=z)よりも増えるか否かを確認する。本アルゴリズムが正しければ、本アルゴリズムによる最適解よりも多い非移動鋼材を指定した場合には、最終山の総数が(1)式で定められる数(=z)よりも増えるはずである。
(計算条件)
操業データを基に初期山の山姿を与え、本アルゴリズムにより非移動鋼材と移動鋼材とを識別する。そして、それを前提に、本実施形態で説明した特許文献3、4に基づく後処理を実行して、最終山の総数などを求める。本アルゴリズムにより得られた非移動鋼材に対して、非移動鋼材の数を1つ増やして本実施形態で説明した特許文献3、4に基づく後処理を実行して、最終山の総数を求め、求めた最終山の総数から、本アルゴリズムにより得られた非移動鋼材が本当に最大数(最適値)となっているかどうかを調べる。
ここで、最終山の高さの上限値hを10段(h=10)とした。また、(20)式の重み係数Weight1、Weight2を、それぞれ10、1(Weight1=10、Weight2=1)とした。ただし、本実施形態で説明した特許文献3、4に対し、最終山の総数を(1)式で定められる数(=z)以下とする制約を加える場合、(20)式の重み係数Weight1は0(ゼロ、(Weight1=0))とする。
また、計算環境は、以下の通りである。
プロセッサ:Intel(登録商標) Xeon(登録商標) CPU E5-2687W @ 3.1GHz(2プロセッサ)
実装メモリ(RAM):128GB
OS:Windows(登録商標)7 Professional 64ビットオペレーティングシステム
最適計算ソフト: ILOG CPLEX(登録商標) Cplex11.0 Concert25
図3に、積み替え対象の鋼材のリストの一例を示す。
図3において、SL IDは、鋼材の識別番号である。払出順は、最終山から次工程への搬送順である。幅は、鋼材の幅であり、長さは、鋼材の長さである。置場は、初期山の置場の識別番号であり、積段は、初期山の最下段からの積段数である。例えば、SL IDが229の鋼材は、払出順が120、幅が1365[mm]、長さが9700[mm]であり、識別番号が1の置場の初期山の最下段にあることを示す。また、図3において、グレーで示している鋼材は、極大部分山max(Sk)に含まれる鋼材であることを示す。
まず、本実施形態で説明した手法(本アルゴリズムと、特許文献3、4に基づく後処理)を実行した結果について説明する。図4にその結果の一例を示す。
図4において、最終山IDは、最終山の識別番号である、(最終山IDの隣の)積段は、最終山の最下段からの積段数である。SL IDは、鋼材の識別番号である。払出順は、最終山から次工程への搬送順である。幅は、鋼材の幅であり、長さは、鋼材の長さである。仮置は、仮置きの有無を表し、仮置が0(ゼロ)であることは、仮置きがないことを示す。初送順は、初期山からの搬送順である。終送順は、仮山からの搬送順である。仮山IDは、仮山の識別番号である。(仮山IDの隣の)積段は、仮山の最下段からの積段数である。初期山IDは、初期山の識別番号である。(初期山IDの隣の)積段は、初期山の最下段からの積段数である。
図3に示した初期山を最小数(=z)の最終山に積み替える際、本アルゴリズムにより、移動鋼材の総数を最小化した結果、SL IDが、221(初期山ID=2)、222(初期山ID=2)、219(初期山ID=2)、236(初期山ID=4)、228(初期山ID=5)の5枚の鋼材(スラブ)を非移動鋼材として固定でき、それ以外の鋼材が移動鋼材となった。図4に示すのは、この結果を用いて、本実施形態で説明した特許文献3、4に基づく後処理を実行して、最終山の山姿、仮山の山姿、搬送順を求めた結果である。
図4において、グレーで示す鋼材が本アルゴリズムにより非移動鋼材と判定されたものである。図4において、初期山IDが2、4、5の初期山が非移動鋼材をもつ山となる。この例では、移動鋼材のみの山はなくこの結果、最終山の総数は3(=ceil(29/10))となり、最終山の総数が、(1)式で定められる数(=z)になる。また、この例では、1枚の仮置きもなく全ての移動鋼材を直接初期山から最終山へ搬送できている(図4において、終送順、仮山ID、積段の欄の「/」は、値がないことを示す(このことは他の図でも同じである))。
次に、前述したようにして本アルゴリズムにより非移動鋼材とされた鋼材(SL IDが、221(初期山ID=2)、222(初期山ID=2)、219(初期山ID=2)、236(初期山ID=4)、228(初期山ID=5)の5枚の鋼材)よりも非移動鋼材を1枚増やすと共に、本実施形態で説明した特許文献3、4に基づく後処理に対して、最終山の総数をz(=3)以下とする制約を課して、最終山の山姿、仮山の山姿、搬送順を求めた。
まず、前述したようにして本アルゴリズムにより非移動鋼材とされた5枚の鋼材を6枚の鋼材(SL IDが、221(初期山ID=2)、222(初期山ID=2)、219(初期山ID=2)、223(初期山ID=3)、224(初期山ID=3)、228(初期山ID=5)の6枚の鋼材)に変更した場合について説明する。即ち、SL IDが、236(初期山ID=4)の鋼材を、SL IDが、223(初期山ID=3)、224(初期山ID=3)の鋼材と入れ替えた場合について説明する。
この場合、特許文献3に記載のアルゴリズムにおいて求解不能となった。そこで、最終山の総数の上限値を3から4に変更した。その結果、図5に示す結果が得られた。このように、非移動鋼材の総数を本アルゴリズムによる求解の結果よりも増やすと、最終山の総数を最小にすることを実現することができなかった。
次に、前述したようにして本アルゴリズムにより非移動鋼材とされた5枚の鋼材を前述したものと異なる6枚の鋼材(SL IDが、221(初期山ID=2)、222(初期山ID=2)、219(初期山ID=2)、225(初期山ID=8)、215(初期山ID=8)、236(初期山ID=4)の6枚の鋼材)に変更した場合について説明する。即ち、SL IDが、228(初期山ID=5)の鋼材を、SL IDが、225(初期山ID=8)、215(初期山ID=8)の鋼材に変更した場合について説明する。
先程の例では、初期山IDが4の非移動鋼材を移動鋼材とし、初期山IDが3の移動鋼材を非移動鋼材としたが、この例では、初期山IDが5の非移動鋼材を移動鋼材とし、初期山IDが8の非移動鋼材を移動鋼材とする。
この場合も、特許文献3に記載のアルゴリズムにおいて求解不能となった。そこで、最終山の総数の上限値を3から4に変更した。その結果、図6に示す結果が得られた。この例でも、非移動鋼材の総数を本アルゴリズムによる求解の結果よりも増やすと、最終山の総山数を最小にすることを実現することができなかった。図4、図5、および図6に示す結果から、最終山の総山数を最小にするための非移動鋼材の総数の最大値は、本アルゴリズムによって得られた非移動鋼材の総数であることが推察される。
次に、実操業での初期山の状態に基づく鋼材情報を本アルゴリズムに与え、本アルゴリズムにより、移動鋼材および非移動鋼材を決定し、その決定を前提に、本実施形態で説明した特許文献3、4に基づく後処理を実施し、最終山の山姿、搬送順、および仮山の山姿を求めた。その結果から得られる最終山の総数が、本アルゴリズムで想定した数z((1)式で定められる数)となっているかを確認した。その結果を図7に示す。
図7において、入力データは、本アルゴリズムへ与えるデータを示す。移動数最小化は、本アルゴリズムによる結果を示す。山姿積み替え問題は、本実施形態で説明した特許文献3、4に基づく後処理の結果を示す。
Dataは、入力データの識別番号である。SL数は、初期山を構成する鋼材(スラブ)の総数である。初期山数は、初期山の総数である。最終山数は、高さ制限から定まる最終山の総数の最小値z((1)式で定められる数)である。移動数は、本アルゴリズムで決定された移動鋼材の総数である。固定山数は、本アルゴリズムで非移動鋼材と決定された鋼材を含む初期山の総数である。時間は、本アルゴリズムの計算時間[s]である。最終山数は、本実施形態で説明した特許文献3、4に基づく後処理で決定された最終山の総数である。仮置数は、本実施形態で説明した特許文献3、4に基づく後処理で仮置きされると決定された鋼材の総数である。仮山数は、本実施形態で説明した特許文献3、4に基づく後処理で決定された仮山の総数である。
図7に示すように、高さ制限から定まる最終山の総数の最小値(入力データの最終山数の欄の値)と、本実施形態で説明した特許文献3、4に基づく後処理で決定された最終山の総数(山姿積み替え問題の最終山数の欄の値)とが一致することが分かる。また、鋼材の総数が30〜50程度の何れの入力データを本アルゴリズムに与えた場合でも、実用的な時間内で移動鋼材(非移動鋼材)を高速に(0.1[s]程度で)決定することができた。また、平均で21.5%(=(7.83/36.5)×100)の鋼材を非移動鋼材として固定できた。
ヤードにおいて積姿が上から払出順となっていない初期山の鋼材を、上から払出順となるように積み替える作業(配替)を行う際に、山毎に鋼材を移動し、新たな置場に積み替える場合と、初期山の最下層に、下から上に向かって払出順が降順になっている部分がある場合には、それをできるだけ活かして、初期山の上層部のみを配替することで総搬送回数を少なくする場合とがある。本実施形態では、後者のケースに対し、最終山の総数を最小数に保持する条件で、移動鋼材の総数を最小化(非移動鋼材の総数を最大化)する問題に対する求解アルゴリズム(本アルゴリズム)を構築した。そして、本計算例では、実データに基づく検証試験により、本アルゴリズムによる求解の結果よりも非移動鋼材の総数を増やすと、最終山の総数が増えてしまうことを示し、本アルゴリズムの正当性を示した。また、本計算例では、本アルゴリズムにより高速求解が可能であることを示した。
以上のように、初期山の山姿が所与で、当該初期山の鋼材を上から払出順に積まれた最終山へ積み替える際に、その最終山の総数を山高さの上界から定まる最小の数にするという前提の下で、移動しない鋼材の総数を最大化(移動する鋼材の総数を最小化)するための積み替え搬送計画を作成することができる。
(変形例)
本実施形態では、(18)式の目的関数Jを用いる場合には最小化問題とし、(19)式の目的関数Jを用いる場合には最大化問題とした。しかしながら、例えば、(18)式の右辺に(−1)を掛けることにより、最大化問題としてもよい。同様に、例えば、(19)式の右辺に(−1)を掛けることにより、最小化問題としてもよい。また、(20)式の右辺の各項に(−1)を掛けたものを目的関数とし、当該目的関数を最大化する問題としてもよい。
また、後処理において、特許文献3に記載の技術を用いる場合を例に挙げて説明したが、最終山の山姿と鋼材の搬送順とを決定する手法を用いていれば、必ずしも特許文献3に記載の技術を用いる必要はない。例えば、特許文献5に記載の技術を用いてもよい。また、後処理において、必ずしも仮山の山姿を求める必要はない。また、仮山の山姿を求める手法は、特許文献4に記載の技術に限定されない。例えば、分枝法を用いずに実現可能山を抽出してもよい。このように、後処理は、公知の技術で実現することができる。
また、工程間の置場として、2つの製造工程間の置場を対象とし、金属材として、半製品を対象としてもよいし、工程間の置場として、製造工程と出荷工程の間の置場を対象とし、金属材として、最終製品を対象としてもよい。この際に、複数の金属材をコンテナに収容して輸送、配置する場合には、金属材が収容されたコンテナを1つの金属材として取り扱ってもよい。さらに、工程間の置場としては、金属製造プロセスにおける置場に限定されるものでなく、一般的な工程間の物流、搬送を対象としてもよい。物流分野では内容物に限定されずコンテナの搬送、配置でも適用できる。従って、本発明では、金属材は、最終製品と、半製品と、コンテナとの何れか1つを含むものとする。
<その他の変形例>
以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体および前記プログラムなどのコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
(請求項との関係)
以下に、請求項と実施形態との関係の一例を示す。尚、請求項の記載が実施形態の記載に限定されないことは、変形例などに示した通りである。
<請求項1、9>
非移動最上段金属材判別変数は、例えば、非移動最上段鋼材判別変数xiを用いることにより実現される。
移動有無判別変数は、例えば、移動有無判別変数yiを用いることにより実現される。
前記初期山を構成する前記金属材の総数を、前記最終山を構成する前記金属材の数の上限値で割った値は、例えば、(1)式の右辺の(n/h)に対応する。
前記最終山の総数は、例えば、最終山の総数zに対応する。
金属材情報取得手段(ステップ)は、例えば、鋼材情報取得部101(鋼材情報取得ステップS201)を用いることにより実現される。
金属材情報は、例えば、鋼材グループ情報を用いることにより実現される。初期山の識別情報および当該初期山の各積位置における前記金属材の識別情報は、例えば、各鋼材グループの初期山の山姿を特定する情報(初期山IDと、当該初期山IDで識別される初期山の各積段に位置する鋼材グループID)を用いることにより実現される。
制約式設定手段(ステップ)は、例えば、制約式・目的関数設定部102(制約式設定ステップS202)を用いることにより実現される。
積み替え制約式は、例えば、(15')式を用いることにより実現される。
前記非移動金属材の中で最上段にある前記非移動金属材の上に積むことが可能な金属材の数は、例えば、1つの最終山(1つのxj)における(h−bj)・xjの値に対応する。
前記初期山から移動する金属材である移動金属材であって、前記非移動金属材の中で最上段にある前記非移動金属材の上に移動される移動金属材の数は、例えば、1つの最終山におけるyp+ndの値に対応する。
目的関数設定手段(ステップ)は、例えば、制約式・目的関数設定部102(制約式・目的関数設定ステップS203)を用いることにより実現される。
前記移動金属材の総数が最小となることを目的とする目的関数は、例えば、(18)式を用いることにより実現される。
前記非移動金属材の総数が最大となることを目的とする目的関数は、例えば、(19)式を用いることにより実現される。
最適化計算手段(ステップ)は、例えば、最適化計算部103(最適化計算ステップS204)を用いることにより実現される。
<請求項2>
後処理手段は、例えば、後処理部104を用いることにより実現される。
<請求項3>
前記非移動金属材の中で最上段にある前記非移動金属材の最下段から数えた場合の積段を前記高さ上限値から減算した値の総和から、余剰分を減算した値は、例えば、Σj:ij(h−bj)・xjからnd(=(z・h−n)(≧0))を減算した値に対応する。
<請求項4>
前記金属材の前記払出順は、例えば、各鋼材グループの払出順(圧延工程への搬送順)を用いることにより実現される。
前記非移動金属材の中で最上段にある前記非移動金属材であって、任意の金属材よりも払出順が前になる前記非移動金属材の最下段から数えた場合の積段を前記高さ上限値から減算した値の総和は、例えば、(15')式の左辺に対応する。
当該任意の金属材よりも払出順が前になる前記移動金属材の総和と、前記余剰分との和は、例えば、(15')式の右辺に対応する。
任意の前記金属材のそれぞれについて、(15')式の左辺に対応する前者が(15')式の右辺に対応する後者以下であることが必要であることは、(15')式が全ての鋼材グループiについて満足する必要があること(∀i∈N)に対応する。
<請求項5>
第1の変数関係規定制約式は、例えば、(12)式を用いることにより実現される。前記移動金属材の総数と、前記非移動金属材の総数との和は、例えば、(12)式の左辺に対応する。前記初期山を構成する前記金属材の総数は、例えば、(12)式の右辺に対応する。
<請求項6>
第2の変数関係規定制約式は、例えば、(13)式を用いることにより実現される。
前記金属材が前記移動金属材である場合、前記初期山において当該金属材よりも上にある前記金属材は前記非移動金属材とはならないことは、例えば、(13)式において、移動有無判別変数yiの値が1である場合に対応する。
前記金属材が前記非移動金属材である場合、前記初期山において当該金属材または当該金属材よりも上にある前記金属材のうち1つのみが、前記非移動金属材の中で最上段にある金属材となることは、例えば、(13)式において、移動有無判別変数yiの値が0(ゼロ)である場合に対応する。
<請求項7>
積姿制約式は、例えば、(16)式を用いることにより実現される。
100:ヤード管理装置、101:鋼材情報取得部、102:制約式・目的関数設定部、103:最適化計算部、104:後処理部、105:出力部

Claims (11)

  1. 工程間の置場であるヤードに山積みされる金属材からなる初期山の当該金属材を、搬送機器により搬送して、当該ヤードの後工程への払出順に従った積順で山積みされる金属材からなる最終山を作成するときに、前記置場において前記初期山から前記最終山に搬送される金属材である移動金属材と、前記初期山そのままの場所に前記最終山を作成するために当該初期山の場所に固定される非移動金属材とを決定するためのヤード管理装置であって、
    前記初期山を構成する前記金属材が、当該初期山において、前記非移動金属材の中で最上段にある金属材であるか否かを示す非移動最上段金属材判別変数と、前記金属材が移動金属材であるか否かを示す移動有無判別変数とを決定変数とし、
    前記初期山を構成する前記金属材の総数を、それぞれの前記最終山を構成する前記金属材の数の上限値である高さ上限値で割った値以上の最小の整数値を前記最終山の総数とし、
    前記初期山の識別情報と、当該初期山の各積位置における前記金属材の識別情報と、前記金属材の前記払出順とを含む金属材情報を取得する金属材情報取得手段と、
    前記非移動金属材の中で最上段にある前記非移動金属材の上に積むことが可能な移動金属材の数と、前記移動金属材であって、前記非移動金属材の中で最上段にある前記非移動金属材の上に移動される必要がある移動金属材の数とが、前記非移動金属材のそれぞれにおいて一致することが必要であることを、前記決定変数を用いて表す制約式である積み替え制約式を含む制約式を、前記金属材情報に基づいて設定する制約式設定手段と、
    前記移動金属材の総数が最小となることを目的とする目的関数、または、前記非移動金属材の総数が最大となることを目的とする目的関数を、前記金属材情報に基づいて設定する目的関数設定手段と、
    前記制約式を満足する範囲で前記目的関数の値が最小または最大になるときの前記決定変数の値を最適解として導出することを、数理計画法による最適化計算を行うことにより実行する最適化計算手段と、
    を有することを特徴とするヤード管理装置。
  2. 前記非移動金属材は、前記初期山から移動せず、前記移動金属材を移動することによって、前記初期山から前記最終山への積み替えを行うときの、前記金属材のそれぞれの搬送順と、前記最終山の各段に配置される前記金属材とを決定する後処理手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載のヤード管理装置。
  3. 前記非移動金属材の中で最上段にある前記非移動金属材の上に積む必要がある金属材の総数は、前記非移動金属材の中で最上段にある前記非移動金属材の最下段から数えた場合の積段を前記高さ上限値から減算した値の総和から、余剰分を減算した値であり、
    前記余剰分は、前記最終山の総数と前記高さ上限値とを掛けた値から前記初期山を構成する前記金属材の総数を減算した値であることを特徴とする請求項1または2に記載のヤード管理装置。
  4. 前記積み替え制約式は、前記非移動金属材の中で最上段にある前記非移動金属材であって、任意の金属材よりも払出順が前になる前記非移動金属材の最下段から数えた場合の積段を前記高さ上限値から減算した値の総和が、当該任意の金属材よりも払出順が前になる前記移動金属材の総和と、前記余剰分との和以下であることが、任意の前記金属材のそれぞれについて必要であることを示す制約式であることを特徴とする請求項3に記載のヤード管理装置。
  5. 前記制約式は、前記移動金属材の総数と、前記非移動金属材の総数との和が、前記初期山を構成する前記金属材の総数と等しいことを、前記決定変数を用いて表す制約式である第1の変数関係規定制約式を更に含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のヤード管理装置。
  6. 前記制約式は、前記金属材が前記移動金属材である場合、前記初期山において当該金属材よりも上にある前記金属材は前記非移動金属材とはならず、前記金属材が前記非移動金属材である場合、前記初期山において当該金属材または当該金属材よりも上にある前記金属材のうち1つのみが、前記非移動金属材の中で最上段にある金属材となることを、前記決定変数を用いて表す第2の変数関係規定制約式を更に含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のヤード管理装置。
  7. 前記制約式は、前記非移動金属材の中で最上段にある前記非移動金属材よりも上に移動される前記移動金属材は、その払出順が、当該非移動金属材の払出順よりも前であり、且つ、当該非移動金属材との間で、金属材の幅および長さにより定まる制約を満たさなければならないことを、前記決定変数を用いて表す積姿制約式を更に含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のヤード管理装置。
  8. 前記移動は、金属材グループの単位で行われ、
    前記金属材グループは、搬送機器にて前記金属材を搬送する際に分割されることのない複数の前記金属材からなることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のヤード管理装置。
  9. 前記ヤードは、鉄鋼製造プロセスにおける製鋼工程と圧延工程との間の置場であり、
    前記金属材は、鋼材であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のヤード管理装置。
  10. 工程間の置場であるヤードに山積みされる金属材からなる初期山の当該金属材を、搬送機器により搬送して、当該ヤードの後工程への払出順に従った積順で山積みされる金属材からなる最終山を作成するときに、前記置場において前記初期山から前記最終山に搬送される金属材である移動金属材と、前記初期山そのままの場所に前記最終山を作成するために当該初期山の場所に固定される非移動金属材とを決定するためのヤード管理方法であって、
    前記初期山を構成する前記金属材が、当該初期山において、前記非移動金属材の中で最上段にある金属材であるか否かを示す非移動最上段金属材判別変数と、前記金属材が移動金属材であるか否かを示す移動有無判別変数とを決定変数とし、
    前記初期山を構成する前記金属材の総数を、それぞれの前記最終山を構成する前記金属材の数の上限値である高さ上限値で割った値以上の最小の整数値を前記最終山の総数とし、
    前記初期山の識別情報と、当該初期山の各積位置における前記金属材の識別情報と、前記金属材の前記払出順とを含む金属材情報を取得する金属材情報取得ステップと、
    前記非移動金属材の中で最上段にある前記非移動金属材の上に積むことが可能な移動金属材の数と、前記移動金属材であって、前記非移動金属材の中で最上段にある前記非移動金属材の上に移動される必要がある移動金属材の数とが、前記非移動金属材のそれぞれにおいて一致することが必要であることを、前記決定変数を用いて表す制約式である積み替え制約式を含む制約式を、前記金属材情報に基づいて設定する制約式設定ステップと、
    前記移動金属材の総数が最小となることを目的とする目的関数、または、前記非移動金属材の総数が最大となることを目的とする目的関数を、前記金属材情報に基づいて設定する目的関数設定ステップと、
    前記制約式を満足する範囲で前記目的関数の値が最小または最大になるときの前記決定変数の値を最適解として導出することを、数理計画法による最適化計算を行うことにより実行する最適化計算ステップと、
    を有することを特徴とするヤード管理方法。
  11. 請求項1〜9の何れか1項に記載のヤード管理装置の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
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