JP6769355B2 - ヤード管理装置、ヤード管理方法、およびプログラム - Google Patents
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Description
本明細書、特許請求の範囲、および図面では、「既着山」、「仮想山」、「初期山」、「最終山」、「仮山」を以下の意味で用いることとする。
既着山:現時点で、既にヤードにおいて形作られている山。
仮想山:現時点で、ヤードに到着していない金属材を、ヤードへの到着順が早いものほど上に山積みすると仮定した場合の山(現実に存在する山ではない)。
初期山:既着山と仮想山の総称。
最終山:後工程に払出すために積み上げた最終的な山(払出山ともいう)。
仮山:現時点以降に、初期山から、最終山へ移送する際に、やむを得ず仮置きを行う山。
従って、ヤードへの到着前後の様々な事情により、ヤード到着時の積み姿が払出順でなくなった山を払出順に積み替える作業を効率的に(即ち、できるだけ少ない搬送数で)行うニーズは極めて高い。
まず、最終山の山姿と、初期山から最終山へ搬送する際の各鋼材の搬送数とを同時に最適化することとした経緯について説明する。
特許文献4には、未到着材を対象に山仕分け計画を行うケースに対する発明が開示されている。既到着材を積み替える問題(以下、「既到着材積み替え問題」と称する)は、特許文献4に開示されているような未到着材を山分けする問題(以下、「未到着材山分け問題」と称する)とは本質的な違いがあり、それを以下に示す。
まず、第1の実施形態を説明する。
本実施形態では、以下の前提の下で、初期山から最終山への鋼材を積み替える際の鋼材の搬送順および最終山の山姿を求める場合を例に挙げて説明する。
(1) 各鋼材の初期山の山姿および払出順(圧延順)は所与とする。ここで、鋼材グループの集合をN={1,2,・・・,n}と表記する。鋼材グループとは、搬送機器(主にクレーン)にて搬送する際に、分割されることのない(最小単位となる)複数の鋼材の纏まりを指す。
(2) 最終山の山姿は未知とし、決定変数とする。最終山の山姿は、その最終山の上から払出順になるように決定されることとする。従って、初期山の山姿から、未知の最終山の山姿と、初期山を最終山に積み替える際の鋼材の搬送順とを決定する。
(4) 初期山と最終山の置場は異なっており、必ず全ての鋼材を初期山(初期置場)から最終山(最終置場)へ搬送する必要があるものとする(即ち、全ての鋼材が搬送対象になる)。
(i) 最終山は、積み姿制約を満たし、上から順に払出順に積まれるものとする。
(ii) 各初期山の鋼材は、当該初期山の上から順にしか搬送できない。
(iii) 最終山を作成する際には、最下段から順に上にしか積み上げることができない。
(iv) 同時に搬送できる鋼材の数は、使用可能な搬送機器の数および能力に依存する。
前述したように、初期山(初期置場)から最終山(最終置場)への搬送回数は、何れの鋼材についても最大2回とするので(前記(3)の前提を参照)、鋼材の搬送回数を最小とすることは、仮置きの回数を最小にすることと等しい。
また、本実施形態では、前記(i)に示す積み姿制約には、以下の幅条件、長さ条件、および高さ条件が含まれる。
・幅条件
或る鋼材グループの最大幅が、当該或る鋼材グループの下に位置する鋼材グループの最小幅よりも狭いならば無条件で、当該或る鋼材グループを、当該下に位置する鋼材グループの上に置ける。或る鋼材グループの最大幅が、当該或る鋼材グループの下に位置する鋼材グループの最小幅よりも広い場合には、両者の幅の差が、作業制約により定まる基準値(例えば200[mm])未満であれば、当該或る鋼材グループを、当該下に位置する鋼材グループの上に置けるが、それを越えると置けない。
或る鋼材グループの最大長が、当該或る鋼材グループの下に位置する鋼材グループの最小長よりも短いならば無条件で、当該或る鋼材グループを、当該下に位置する鋼材グループの上に置ける。或る鋼材グループの最大長が、当該或る鋼材グループの下に位置する鋼材グループの最小長よりも長い場合には、両者の長さの差が、作業制約により定まる基準値(例えば2000[mm])未満であれば、当該或る鋼材グループを、当該下に位置する鋼材グループの上に置けるが、それを越えると置けない。
最終山の積段数hは、最終山として山積みできる鋼材の数の上界hmax以下でなければならない。最終山として山積みできる鋼材の数の上界hmaxは、例えば10である。
本実施形態では、任意の鋼材グループのペアに対し、初期山から鋼材を取り除く順序を定める変数と、任意の鋼材グループが何れの最終山(の位置)lに属するかを表す変数と、仮置きの発生の有無を表す変数とを決定変数とする。以下の説明では、任意の鋼材グループのペアに対し、初期山から鋼材を取り除く順序を定める変数を必要に応じて、初期搬送順序変数y(s,s')と称する。また、任意の鋼材グループが何れの最終山(の位置)lに属するかを表す変数を必要に応じて、最終山割り当て変数r(s,l)と称する。また、任意の鋼材グループに対し、仮置きの発生の有無を表す変数を必要に応じて、仮置き発生有無変数x(s)と称する。
鋼材グループの集合Nの各要素が1つの頂点を持つ完全有向グラフをG=(N,E)とする。このとき、E={(s,s')∈N2|s≠s')である。有向枝集合E上に定義された0−1変数y(e)(∀e∈E)を導入し、以下の(2)式のように初期搬送順変数y(s,s')を定義する。
(b)最終山割り当て変数r(s,l)=変数の数=n×Lmax
最終山割り当て変数r(s,l)は、変数s(∈N)で特定される鋼材グループを配置する最終山l(∈L)を指定する0−1変数である。従って、以下の(3)式のように最終山割り当て変数r(s,l)を定義する。Lmaxは、最終山の数として想定される数の最大値である。Lmaxは、例えば、鋼材グループ数nである。
仮置き発生有無変数x(s)は、初期山から最終山へ鋼材グループを初期搬送する際に、当該初期搬送が、仮山(仮置場)への搬送であるか、最終山(最終置場)への搬送であるのかを表す0−1変数である。従って、以下の(4)式のように仮置き発生有無変数x(s)を定義する。
その他、最終山有無変数δ(l)を定義する。最終山有無変数δ(l)は、最終山lのそれぞれについて、山として存在するか否か(鋼材が積まれた山であるか否か)を表す0−1変数である。従って、以下の(5)式のように最終山有無変数δ(l)を定義する。
図1は、ヤード管理装置100の機能的な構成の一例を示す図である。ヤード管理装置100のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のインターフェースを備える情報処理装置、または専用のハードウェアを用いることにより実現される。図2は、ヤード管理装置100により実行されるヤード管理方法の一例を説明するフローチャートである。
[鋼材情報取得部101、ステップS201]
鋼材情報取得部101は、山積みの対象となる鋼材についての鋼材情報を取得する。鋼材情報は、鋼材グループ情報と、各鋼材グループの初期山の山姿を特定する情報と、山の最大高さを特定する情報と、を含む。
識別情報は、各鋼材グループを一意に識別する識別情報(鋼材グループID)である。
払出順は、各鋼材グループの払出順(圧延工程への搬送順)である。
最大幅・最小幅は、それぞれ、各鋼材グループを構成する鋼材の最大幅・最小幅である。尚、最大幅・最小幅に代えて、各鋼材グループを構成するスラブのそれぞれの幅を鋼材グループ情報に含めてもよい。
最大長・最小長は、それぞれ、各鋼材グループを構成する鋼材の最大長・最小長である。尚、最大長・最小長に代えて、各鋼材グループを構成する鋼材のそれぞれの長さを鋼材グループ情報に含めてもよい。
前述したように、初期山には、既着山と仮想山とが含まれる。既着山は、最終山の作成対象となる鋼材のうち、鋼材情報が作成された時点(即ち、最終山を作成する時点)でヤードに山積みされている山である。仮想山は、最終山の作成対象となる鋼材のうち、鋼材情報が作成された時点(即ち、最終山を作成する時点)でヤードに未だ山積みされていない鋼材を、ヤードへの予定到着順が早いものほど上になるように山積みしたと仮定した場合の山である。本実施形態では、最終山の作成対象となる鋼材のうちヤードに未到着で未だ山積みされていない全ての鋼材が1つの仮想山に山積みされるものとする。このように本実施形態では、ヤードに未到着で未だ山積みされていない鋼材も仮想山として山積みされているとし(即ち、最終山の作成対象となる全ての鋼材がヤードにおいて山積みされているものとし)、その積姿を所与とする。
尚、最終山の作成対象となる全ての鋼材を1つずつ搬送する場合には、個々の鋼材について、識別情報(鋼材ID)、払出順、幅、および長さの情報が鋼材グループ情報の代わりに取得される。また、初期山の山姿を特定する情報として、初期山の識別情報(初期山ID)が取得されると共に、初期山の各積段に位置する鋼材グループIDの代わりに、初期山の各積段に位置する鋼材IDが取得される。
鋼材情報の取得形態としては、例えば、ヤード管理装置100のユーザインターフェースの入力操作、外部装置からの送信、または可搬型の記憶媒体からの読み出しが挙げられる。
制約式・目的関数設定部102は、前述した制約を数式で表した制約式と、前述した目的を数式で表した目的関数とを設定する。
<<制約式>>
まず、制約式について説明する。
(a)初期搬送順変数y(s,s')の定義制約
任意の2つの鋼材グループを初期山から取り除く順序は、鋼材グループの集合Nの全順序(推移的(以下の(7)式)であり、反対称且つ完全(以下の(6)式)な二項関係を言う)となることから、任意の2つの鋼材を初期山から取り除く相対的な順序を定める初期搬送順変数y(s,s')は、以下の(6)式で表される完全律(比較可能)および以下の(7)式で表される推移律を満たす。また、以下の(6)式および(7)式を満たす初期搬送順変数y(s,s')は、鋼材の全順序に対応する。
(7)式は、変数sで特定される鋼材グループの初期搬送が、変数s'で特定される鋼材グループの初期搬送よりも先であり、変数s'で特定される鋼材グループの初期搬送が、変数s''で特定される鋼材グループの初期搬送よりも先であるなら、変数sで特定される鋼材グループの初期搬送は、変数s''で特定される鋼材グループの初期搬送よりも先であることを示す。尚、これら3つの鋼材グループは、別の鋼材グループである。
最終山への山分け制約は、以下の(9)式〜(11)式を含む。
まず、以下の(9)式のように、最終山割り当て変数r(s,l)を使って、全ての鋼材グループは必ず何れかの最終山に山積みされなければならないことを表す制約式を用いる。
また、高さ条件を表す制約式は、(5)式で定義される最終山有無変数δ(l)を用いて、以下の(11)式のように表される。尚、(11)式の替わりに、以下の(12)式を用いてもよい。(11)式および(12)式の何れを用いても、最終山として山積みできる鋼材の数が、その上限値を上回らないようにする制約を課すことができる。(11)式および(12)式において、w(s)は、変数sで特定される鋼材グループに含まれる鋼材の数である。
最終山有無変数δ(l)は、最終山割り当て変数r(s,l)を用いて、以下の(13)式のように定義される。
鋼材グループの最終搬送順は、最終山lの山姿において、山ごとに当該山の最下段からその積順に従う。従って、同じ最終山lに配置される2つの鋼材グループにおいて、最終搬送順(最終山の積順)と初期搬送順との関係が逆になる場合、先に初期搬送される鋼材グループは仮置きが必要になる。つまり、変数sで特定される鋼材グループの初期搬送が、変数s'で特定される鋼材グループの初期搬送よりも先であり、且つ、同一の最終山lにおいて、変数s'で特定される鋼材グループの方が、変数sで特定される鋼材グループよりも下に積まれる(同一の最終山lにおいて、変数sで特定される鋼材グループの最終搬送順が、変数s'で特定される鋼材グループの最終搬送順よりも後である)場合、変数sで特定される鋼材グループは、仮置きが必要になる。従って、最終山において、変数s'で特定される鋼材グループの積順が、変数sで特定される鋼材グループの積順よりも下であるとすると、この条件を表す制約式は、以下の(14)式のようになる。
最終山位置区別制約は、最終山(の位置)lの区別をつけるための制約である。本実施形態では、以下の(15)式のように、最終山位置区別制約は、変数lが小さいものほど、高い最終山とする(最終山に含まれる鋼材の数を多くする)ことを表す制約であるものとする。
また、(14)式を設定する際には、鋼材グループ情報から、各鋼材グループの払出順を特定し、2つの鋼材グループのうち、払出順が先の鋼材グループに対して設定されている変数をs、後の鋼材グループに対して設定されている変数をs'とする。
次に、目的関数について説明する。
前述したように本実施形態では、鋼材グループの総搬送回数(即ち、仮置きの総回数)を少なくすることと最終山の山数を少なくすることとを目的とするので、以下の(16)式に示す目的関数Jを用いる。
制約式・目的関数設定部102は、例えば、(16)式に対し、変数s、N、k1、k2を設定することにより、(16)式の目的関数Jを設定する。
最適化計算部103は、(6)式〜(11)式、(13)式〜(15)式の制約式を満足する範囲で、(16)式の目的関数Jの値が最小になるときの初期搬送順序変数y(s,s')、最終山割り当て変数r(s,l)、および仮置き発生有無変数x(s)を最適解として算出する。また、最適解の算出は、最適化問題を混合整数計画法等の数理計画法により解くための公知のアルゴリズム(solver等の利用を含む)を用いることにより実現できる。
以上のようにして初期搬送順変数y(s,s')が導出されると、鋼材グループの集合Nに含まれるそれぞれの鋼材グループの初期搬送順(初期山から取り除く順序)を決定することができる。ただし、仮置きが発生すると判定された鋼材グループ(仮置き発生有無変数x(s)が「1」となる変数sが設定された鋼材グループ)の最終搬送順(仮山(仮置場)から最終山(最終置場)への搬送順)が定まらないので、これを決定する必要がある。即ち、前述したようにして決定した初期搬送順のどこに、仮置きが発生すると判定された鋼材グループの最終搬送順を割り込ませるのかを決定する必要がある。そこで、本実施形態では、後処理部104は、以下のようにして、各鋼材グループの最終的な搬送順を決定する。
次に、最終山の山姿は、最終山姿特定情報に対し、仮置き対象鋼材グループとなる鋼材グループの鋼材IDを、当該仮置き対象鋼材グループに与えられた仮想鋼材グループIDに置き換えたものとなる。
出力部105は、後処理部104で導出された、鋼材集合N及び仮想鋼材グループ集合Tに含まれる各鋼材の初期山から最終山に至るまでの搬送順を示す情報を出力する。出力の形態は、コンピュータディスプレイへの表示、ヤード管理装置100の内部または外部の記憶媒体への記憶、および外部装置への送信のうち、少なくとも1つを含む。外部装置としては、例えば、クレーン、またはクレーンの動作を制御する制御装置が挙げられる。
以上のように本実施形態では、ヤード管理装置100は、任意の2つの鋼材グループの初期搬送の相対的な順序を定める二項変数である初期搬送順変数y(s,s')と、最終山の位置を指定する変数である最終山割り当て変数r(s,l)と、初期搬送が仮山への搬送であるか否かを定める変数である仮置き発生有無変数x(s)とを用いて、同じ最終山に配置される任意の2つの鋼材グループについて、初期搬送順と払出順とが同じ関係になる場合、当該2つの鋼材グループのうち、初期搬送順が先の鋼材グループは仮置きが必要であることを表す線形不等式を含む制約式を設定する。そして、ヤード管理装置100は、設定した制約式を満足するように、最終山の山数と仮置きの発生とが、それらの評価のバランスに応じて最小になることを目的とする目的関数Jの値が最小になるときの初期搬送順変数y(s,s')、最終山割り当て変数r(s,l)、および仮置き発生有無変数x(s)を導出し、これらに基づいて、鋼材グループの集合Nに含まれる各鋼材グループの初期山から最終山に至るまでの搬送順を導出する。従って、初期山から最終山へ鋼材グループを積み替える際の最終山の山姿と鋼材グループの搬送順とを同時に最適化することを、実操業上使用可能な時間内に実現することができる。
本実施形態では、目的関数Jを最小化する問題を例に挙げて説明した。しかしながら、鋼材グループの総搬送回数を評価する評価指標と、最終山の山数を評価する評価指標とを含む目的関数を用いていれば、目的関数Jを最小化する問題としなくてもよい。例えば、(16)式の右辺の各項に(−1)を掛けたものを目的関数とし、当該目的関数を最大化する問題としてもよい。
次に、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、初期山と最終山の置場は異なっており、必ず全ての鋼材グループを初期山(初期置場)から最終山(最終置場)へ搬送する必要があることを前提とする場合を例に挙げて説明した。しかしながら、初期山において既に、最下段からの積順が払出順(下から上に向かって払出順が降順)となっている場合がある。このような場合、初期山において最下段からの積順が払出順(下から上に向かって払出順が降順)となっている部分は、積み替える必要がない。そこで、本実施形態では、このような部分については、初期山と最終山の置場が同一となることも許容する(即ち、初期山の状態から動かさない)場合について説明する。このように本実施形態と第1の実施形態とは、第1の実施形態で説明した(4)の前提が異なることによる処理が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図2に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
(5) 初期山と最終山の置場が同一となることも許容し、初期山において最下段からの積順が払出順(下から上に向かって払出順が降順)となっている部分は搬送しないこととする(即ち、初期山の一部の鋼材グループ(最下段から連続する1つまたは複数の鋼材グループ)が搬送対象とならない場合があるものとする)。
まず、第1の実施形態で説明した(6)式〜(15)式の制約式に対し追加する制約式について説明する。
全ての鋼材グループを搬送対象とせず、初期山の一部をそのまま最終山として流用する場合には、全ての鋼材を搬送対象とする場合にはない以下のケースが想定されるので、そのための新たな制約を追加する必要がある。
図3は、初期山に固定部がある場合の鋼材の搬送の形態の一例を示す図である。
図3に示す初期山において、最下段から2段の鋼材グループI、IIが固定部であり、その上の鋼材グループIII、IV、Vが移動部であるとする。この場合、最終山では、固定部の鋼材グループI、IIがそのままである。また、初期山の移動部の鋼材グループIII、IV、Vのうち、鋼材グループIII、Vは別の最終山に搬送され、鋼材グループIVは仮山に搬送された後、再び当該初期山(即ち最終山)に搬送され、その鋼材グループIVの上に別の初期山から鋼材グループVI、VIIが搬送される。この様なケースに対しても適切に搬送順を計算するために、初期搬送順に制約を設ける必要がある。
即ち、初期山lの移動部の鋼材グループの初期搬送を特定する変数をiUとし、初期山lとは別の山(初期山または仮山)から初期山lに搬送される鋼材グループの初期搬送を特定する変数をiTとし、以下の(19)式の制約式を追加する。
また、図3の例における鋼材グループIVの様な、初期山lから初期搬送されて再び当該初期山lに戻る鋼材グループ(即ち、iUでありiTである)場合には(19)式は意味をなさなくなるが、この様な鋼材グループに対しては、以下の(20)式を設定する。
初期搬送を特定する変数s、s'、s''のうち、少なくとも何れか1つが、初期山の固定部の鋼材グループに対して設定された変数である場合には、それらの変数s、s'、s''による初期搬送順変数y(s,s')、y(s',s)、y(s',s'')、y(s,s'')については、(6)式および(7)式の制約式を設定しないものとする。あるいは(8)式を以下の様に拡張することにより、固定部の鋼材に対しても(8)式以外の制約式は全て移動部(非固定部)の鋼材グループと同様に設定すれば良い。
また、本実施形態においても第1の実施形態で説明した変形例を採用することができる。
次に、実施例を説明する。
以下の実施例では、以下の計算環境で計算を行った。
(i)プロセッサ:Intel(登録商標) Xeon(登録商標) CPU E5-2687W @ 3.1.GHz (2プロセッサ)
(ii)実装メモリ(RAM):128GB
(iii)OS: Windows(登録商標)7 Professional 64ビットオペレーティングシステム
(iv)最適計算ソフト:ILOG CPLEX Cplex11.0 Concert25(登録商標)
また、特許文献3に記載の手法は、第1、第2の実施形態の手法と同様に、最終山と搬送順とを同時に最適化する手法である。そこで、第1の実施形態の手法(発明例)に対する比較例として、特許文献3に記載の手法を用い、両者の比較を行った。
図4において、計算条件のDataは、鋼材情報を識別するものであり、12通りの鋼材情報について、発明例と比較例との比較を行っていることを示す。また、計算条件のSLは、最終山の作成対象の鋼材の数である。また、計算条件の初期山数は、初期山の数である。比較例・発明例における最終山、仮置数は、それぞれ、最適化計算の結果として得られた最終山の数、仮置き数である。また、比較例・発明例における時間は、最適化計算に要した時間である。
まず、小規模の問題(n<20)で、両者の解が一致することを確認した。この結果を、図4のData1、2、3に示す。両者の解で、最終山数および仮置き数が一致していることが分かる。また、比較的規模の大きい問題でも、両者の解の一致を確認した(図4のData4を参照)。
次に、実際の操業と同程度の規模の問題で、計算時間を比較した結果を、図4のData5〜12に示す。ここでは、実用上許容される計算時間の限界値として想定される10分で解が求まらない場合には、その段階で計算を打ち切り、その段階で得られた実行可能解を記載している。最適解に到達していない場合にはその時点での双対ギャップを記載している(Data8、10を参照)。Data5〜12の8つのケースのうち、比較例では10分かけても実行可能解すら得られないケースが6つあり(Data5、6、7、19、11、12を参照)、残りの2つのケース(Data8、10)も最適解が得られなかった。これに対し、発明例ではいずれの場合も3分以内には最適解が得られることが分かる。
以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
以下に、請求項と実施形態との関係の一例を示す。尚、請求項の記載が実施形態の記載に限定されないことは、変形例などに示した通りである。
(請求項1)
初期搬送順変数は、例えば、初期搬送順変数y(s,s')を用いることにより実現される。仮置き発生有無変数は、例えば、仮置き発生有無変数x(s)を用いることにより実現される。最終山割り当て変数は、例えば、最終山割り当て変数r(s,l)を用いることにより実現される。
金属材情報取得手段は、例えば、鋼材情報取得部101を用いることにより実現される。鋼材情報は、例えば、鋼材グループ情報を用いることにより実現される。初期山の識別情報および当該初期山の各積位置における前記金属材の識別情報は、例えば、各鋼材グループの初期山の山姿を特定する情報(初期山IDと、当該初期山IDで識別される初期山の各積段に位置する鋼材グループID)を用いることにより実現される。前記金属材の前記払出順は、例えば、各鋼材グループの払出順(圧延工程への搬送順)を用いることにより実現される。
制約式設定手段は、例えば、制約式・目的関数設定部102を用いることにより実現される。第1の制約式は、例えば、(14)式を用いることにより実現される。
目的関数設定手段は、例えば、制約式・目的関数設定部102を用いることにより実現される。目的関数は、例えば、(16)式を用いることにより実現される。
最適化計算手段は、例えば、最適化計算部103を用いることにより実現される。
(請求項2)
第2の制約式は、例えば、(6)式を用いることにより実現される。
第3の制約式は、例えば、(7)式を用いることにより実現される。
(請求項3)
第4の制約式は、例えば、(10)式を用いることにより実現される。
第5の制約式は、例えば、(11)式または(12)式を用いることにより実現される。
禁止対集合は、例えば、禁止対集合Fを用いることにより実現される。
(請求項4)
第6の制約式は、例えば、(8)式を用いることにより実現される。
(請求項5)
第7の制約式は、例えば、(9)式を用いることにより実現される。
Claims (10)
- 工程間の置場であるヤードに山積みされる金属材からなる初期山の当該金属材を、搬送機器により搬送して、当該ヤードの後工程への払出順に従った積順で山積みされる金属材からなる最終山を作成するためのヤード管理装置であって、
任意の2つの前記金属材についての、前記初期山からの搬送である初期搬送の相対的な順序を定める二項変数である初期搬送順変数と、前記金属材の前記初期山からの初期搬送が前記ヤードの仮置場への搬送であるか否かを定める変数である仮置き発生有無変数と、前記金属材が何れの前記最終山に属するかを表す変数である最終山割り当て変数とを決定変数とし、
前記初期山の識別情報および当該初期山の各積位置における前記金属材の識別情報と、前記金属材の前記払出順とを含む金属材情報を取得する金属材情報取得手段と、
任意の2つの前記金属材について、同じ前記最終山に山積みされ、且つ、前記初期山からの搬送順の先後と前記払出順の先後とが同じになる場合、当該2つの金属材のうち、前記初期山からの搬送順が先の金属材は、前記最終山への搬送の前に前記仮置場に仮置きすることが必要になることを前記決定変数を用いて表す第1の制約式を含む制約式を、前記金属材情報に基づいて設定する制約式設定手段と、
前記最終山の数を評価する評価指標と、前記仮置きが発生する前記金属材の数を評価する評価指標とを含む目的関数を、前記金属材情報に基づいて設定する目的関数設定手段と、
前記制約式を満足する範囲で前記目的関数の値が最小または最大になるときの前記決定変数の値を最適解として導出することを、数理計画法による最適化計算を行うことにより実行する最適化計算手段とを有することを特徴とするヤード管理装置。 - 前記初期搬送順変数は、前記金属材の前記初期山からの初期搬送の順序を全順序とみなして任意の2つの前記金属材の前記初期山からの初期搬送の相対的な順序を定める二項変数であり、
前記制約式は、前記初期搬送順変数が比較可能であることが、前記初期搬送順変数を用いて表された式である第2の制約式と、前記初期搬送順変数が推移的であることを、前記初期搬送順変数を用いて表した線形不等式である第3の制約式とを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のヤード管理装置。 - 前記制約式は、第1の積み姿制約を満たさない2つの前記金属材は同じ最終山に山積みすることができないことを、禁止対集合に含まれる2つの前記金属材についての前記最終山割り当て変数を用いて表した線形不等式である第4の制約式と、第2の積み姿制約を、前記最終山割り当て変数を用いて表した線形不等式である第5の制約式とを更に含み、
前記第1の積み姿制約は、前記金属材のサイズに基づいて定められる制約であって、同じ前記最終山における複数の前記金属材の積み方に関する制約であり、
前記禁止対集合は、前記第1の積み姿制約を満たさない2つの前記金属材の集合であり、
前記第2の積み姿制約は、前記最終山の高さがその上限値を上回らないことを示す制約であることを特徴とする請求項1または2に記載のヤード管理装置。 - 前記制約式は、同一の前記初期山において、下にある前記金属材よりも上にある前記金属材を先に前記初期山から初期搬送しなければならないことを、前記初期搬送順変数を用いて表した式である第6の制約式を更に有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヤード管理装置。
- 前記制約式は、前記金属材は、必ず何れかの前記最終山に山積みされなければならないことを、前記最終山割り当て変数を用いて表した式である第7の制約式を更に有することを特徴とする請求項4に記載のヤード管理装置。
- 前記初期山は、既着山と仮想山とを含み、
前記既着山は、前記最終山を作成するときに前記ヤードにおいて山積みされている山であり、
前記仮想山は、前記最終山を作成するときに前記ヤードに未到着の金属材であって、前記最終山の作成の対象となる金属材を、前記ヤードへの予定到着順が早いものほど上になるように山積みしたと仮定した場合の1つの山であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヤード管理装置。 - 前記金属材は、金属材グループであり、
前記金属材グループは、搬送機器にて前記金属材を搬送する際に分割されることのない複数の前記金属材からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のヤード管理装置。 - 前記ヤードは、鉄鋼製造プロセスにおける製鋼工程と圧延工程との間の置場であり、
前記金属材は、鋼材であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のヤード管理装置。 - 工程間の置場であるヤードに山積みされる金属材からなる初期山の当該金属材を、搬送機器により搬送して、当該ヤードの後工程への払出順に従った積順で山積みされる金属材からなる最終山を作成するためのヤード管理方法であって、
任意の2つの前記金属材についての、前記初期山からの搬送である初期搬送の相対的な順序を定める二項変数である初期搬送順変数と、前記金属材の前記初期山からの初期搬送が前記ヤードの仮置場への搬送であるか否かを定める変数である仮置き発生有無変数と、前記金属材が何れの前記最終山に属するかを表す変数である最終山割り当て変数とを決定変数とし、
前記初期山の識別情報および当該初期山の各積位置における前記金属材の識別情報と、前記金属材の前記払出順とを含む金属材情報を取得する金属材情報取得ステップと、
任意の2つの前記金属材について、同じ前記最終山に山積みされ、且つ、前記初期山からの搬送順の先後と前記払出順の先後とが同じになる場合、当該2つの金属材のうち、前記初期山からの搬送順が先の金属材は、前記最終山への搬送の前に前記仮置場に仮置きすることが必要になることを前記決定変数を用いて表す第1の制約式を含む制約式を、前記金属材情報に基づいて設定する制約式設定ステップと、
前記最終山の数を評価する評価指標と、前記仮置きが発生する前記金属材の数を評価する評価指標とを含む目的関数を、前記金属材情報に基づいて設定する目的関数設定ステップと、
前記制約式を満足する範囲で前記目的関数の値が最小または最大になるときの前記決定変数の値を最適解として導出することを、数理計画法による最適化計算を行うことにより実行する最適化計算ステップとを有することを特徴とするヤード管理方法。 - 請求項1〜8のいずれか1項に記載のヤード管理装置の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
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