JP5326211B2 - ケージ状シクロブタン酸二無水物の製造法 - Google Patents
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Description
近年、この分野の発展は目覚ましく、それに対応して、用いられる材料に対しても益々高度な特性が要求されるようになっている。すなわち、単に耐熱性、耐溶剤性に優れるだけでなく、用途に応じた性能を多数併せ持つことが期待されている。
(1)第1工程の光反応では反応時間が1〜5日間と非常に長い。
(2)第2工程の異性化反応では、300℃という高温を要する。
(3)第2工程の別法では、6当量の塩基を必要とし、収率も非常に低い。
(4)第3工程の加水分解反応では、濃塩酸を使用し、収率が不明である。
一方、非特許文献2に記載の方法では、目的物の式(E)で表される1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物が着色した固体として析出するという問題がある。また、非特許文献2では、目的物の化学構造決定はIRのみから行われており、単結晶X線による絶対構造決定法ではなく、実際に目的とする環状構造を有する化合物が得られているか否かは定かではない。
さらに、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物のシクロブタン環にアルキル基が置換した化合物は未だ知られていない。
(1) 式[1]
(2) 前記酸触媒が、硫酸である(1)のシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物の製造法。
(3) 式[1]
(4) 前記式[7]で表されるジアルキル硫酸化合物が、ジメチル硫酸である(3)のシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物の製造法。
(5) 前記塩基触媒が、脂肪族アミンである(3)のシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物の製造法。
(6) 式[1]
(7) 式[1]
(8) 前記R1及びR2が、水素原子である(1)又は(2)のシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物の製造法。
(9) 前記R1及びR2が、水素原子である(6)の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物化合物の製造法。
(10) 前記R1及びR2が、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基である(3)〜(5)のいずれかのシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物の製造法。
(11) 前記R1及びR2が、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基である(7)の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物化合物の製造法。
(12) 前記R1及びR2が、メチル基である(3)〜(5)のいずれかのシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物の製造法。
(13) 前記R1及びR2が、メチル基である(7)の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物化合物の製造法。
上記式[6]で表される1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物化合物(以下、ケージ状CBDA化合物と略記する)は、下記の第1工程、第2工程、第3工程及び第4工程を含む製造法により製造することができる。ここで別法として、第1工程は第1’工程とすることもでき、第3工程は第3’工程とすることもできる。なお、各工程は、第1工程、第2工程、第3工程、第4工程の順序で行われる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子が挙げられる。
炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖、分岐のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等が挙げられる。中でも、炭素数1〜5のアルキル基であるメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が好ましく、立体障害の影響が小さいという点で、特に、炭素数1〜3のアルキル基であるメチル基、エチル基、n−プロピル基等がより好ましい。
炭素数3〜8のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。この場合も、立体障害の影響が小さいという点で、炭素数3〜4のシクロアルキル基であるシクロプロピル基、シクロブチル基が好ましい
炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。中でも、炭素数1〜5のアルキル基であるメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が好ましく、立体障害の影響が小さいという点で、特に炭素数1〜3のアルキル基であるメチル基、エチル基、n−プロピル基等がより好ましい。
[1]第1工程
この工程は、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸1,2:3,4−二無水物化合物(CBDA化合物と略記する。)と、式[2]で表されるアルコール化合物とを、酸触媒の存在下で反応させて式[3]で表されるシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物(cis,trans,cis−TMCB化合物と略記する。)を製造する工程である。
原料である式[1]で表されるCBDA化合物は、置換無水マレイン酸の光二量化反応等で製造することができる。光二量化反応の代表的製造例は、特開昭59−212495号公報に記載されている。
アルコール化合物の使用量は、基質に対して4モル倍〜100モル倍が好ましく、特に10モル倍〜50モル倍が適当である。
酸触媒としては、塩酸や硫酸等の無機酸、ヘテロポリ酸や陽イオン交換樹脂等の固体酸等が使用できるが、硫酸が好ましい。
酸触媒の使用量は、基質に対して0.1重量%〜20重量%が好ましく、特に1重量%〜10重量%が適当である。
反応の進行は、ガスクロマトグラフィー分析により確認することができる。
反応終了後の操作は特に限定されず、例えば、以下の方法が挙げられる。
原料の消失を確認した後、酸触媒として硫酸を用いる場合は、反応後、室温に戻して析出する結晶を濾取し、用いたアルコール化合物でこの結晶を洗浄した後、乾燥して目的のcis,trans,cis−TMCB化合物が得られる。
なお、本工程は、R1及びR2が、それぞれ水素原子の場合に適している。
この工程は、CBDA化合物と、式[7]で表されるジアルキル硫酸とを、塩基触媒の存在下で反応させてcis,trans,cis−TMCB化合物を製造する工程である。
ジアルキル硫酸としては、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジn−プロピル硫酸、ジi−プロピル硫酸,ジn−ブチル硫酸、ジi−ブチル硫酸、ジs−ブチル硫酸、ジn−アミル硫酸、ジn−ヘキシル硫酸、ジn−ヘプチル硫酸、ジn−オクチル硫酸、ジn−ノニル硫酸、ジn−デシル硫酸等に代表される炭素数1〜10のジアルキル硫酸類が挙げられる。中でも経済的なジメチル硫酸が好ましい。
ジアルキル硫酸の使用量は、基質に対して2モル倍〜10モル倍が好ましく、特に2モル倍〜4モル倍が適当である。
本工程は、無溶媒で行うこともできるが、溶媒を用いて行うこともできる。
溶媒としてはアルコール化合物が好ましい。その種類としては、ジアルキル硫酸に対応したアルキル基を有するアルコール化合物が好ましい。すなわち、例えばジメチル硫酸の場合は、メタノールが、ジエチル硫酸の場合は、エタノールが好適である。
溶媒の使用量は、基質に対して1質量倍〜20質量倍が好ましく、特に2質量倍〜10質量倍が適当である。
反応の進行は、ガスクロマトグラフィー分析により確認することができる。
反応終了後の操作は特に限定されず、例えば、以下の方法が挙げられる。
原料の消失を確認した後、濃縮して得られた残渣に、トルエンと希塩酸とを加えてこれを溶解した後、有機層を重曹水及び水で洗浄して目的物の粗結晶を得る。この粗結晶をトルエン及びn−ヘプタンに溶かして再結晶し、高純度のcis,trans,cis−TMCB化合物が得られる。
本工程は、R1及びR2が、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、例えば共にメチル基の場合に適している。
この工程は、cis,trans,cis−TMCB化合物を塩基触媒で異性化させ、式[4]で表されるトランス、トランス,トランス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物(“all trans”−TMCB化合物と略記する。)を製造する工程である。
塩基触媒としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコラート、炭酸塩、水酸化物又は酸化物などが挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。
これらの中でも、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルコラートが好適であり、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシドがより好ましく、カリウムt−ブトキシドが最適である。
塩基触媒の使用量は、基質に対して0.1モル%〜100モル%が好ましく、特に0.5モル%〜20モル%が適当である。
溶媒の使用量は、基質に対して1〜50質量倍が好ましく、特に2〜10質量倍が適当である。
反応の進行は、ガスクロマトグラフィー分析により確認することができる。
反応終了後の操作としては、特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。
反応終了後、濃縮して得られた残渣を1,2−ジクロロエタン(EDC)と水で抽出し、35%塩酸で酸性にしてからEDC層を分離し、濃縮すると白色結晶が得られる。この白色結晶をメタノールに溶解させた後、やや濃縮してから氷冷すると結晶が析出する。この結晶を濾取し、メタノール洗浄してから減圧乾燥することにより、単一の“all trans”−TMCB化合物が得られる。この操作は、R1及びR2が、水素原子の場合に適している。
また、反応終了後、濃縮して得られた残渣をトルエン及び水で抽出し、有機層を分離し、濃縮すると白色結晶が得られる。この白色結晶を、トルエン及びn−ヘプタンに溶解し、再結晶させることで、ガスクロマトグラフィーで単一の“all trans”−TMCB化合物が得られる。この操作は、R1及びR2が、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、例えば、共にメチル基の場合に適している。
この工程は、“all trans”−TMCB化合物を有機酸と反応させ、式[5]で表されるトランス,トランス,トランス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸化合物(“all trans”−CBTC化合物と略記する。)を製造する工程である。
酸の種類としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸類;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸類が挙げられる。中でも、反応操作が簡便になるという点から、蟻酸が好適である。
酸の使用量は、基質に対して4モル当量以上が好ましい。なお、副生する酸エステルを、酸の一部と共に留出させると、反応が促進されることから、酸は10〜100モル当量の過剰量存在させることが好ましい。
これらの添加量は、基質に対して0.1〜10重量%が好ましく、特に0.5〜5重量%が好ましい。
1H−NMRで原料が消失するまで副生する酸エステルを留去していると、酸エステルを留去するにつれて白色の結晶が析出し、その量が増加する。原料消失後、室温まで冷却して析出した結晶を濾取し、これを酢酸エチルで洗浄してから減圧乾燥し、“all trans”−CBTC化合物の白色結晶が得られる。
本工程は、R1及びR2が、水素原子の場合に適している。
この工程は、“all trans”−TMCB化合物を無機酸と反応させて、“all trans”−CBTC化合物を製造する工程である。
無機酸の種類としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、燐酸等が挙げられる。これらの中で、塩酸による方法が簡便である。
無機酸の使用量は、基質に対して4〜50モル当量の過剰量存在させることが好ましい。
この場合、副生するアルコールを留去すると、反応が促進されることから、当該反応は、副生するアルコールを留去しながら行うことが好ましい。
反応液は、1H−NMRで原料が消失するまで留去した後、トルエンを加えて共沸脱水・乾固した後、酢酸エチルで再結晶することにより、“all trans”−CBTC化合物の白色結晶が得られる。
本工程は、R1及びR2が、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基の場合、例えば、共にメチル基の場合に適している。
この工程は、“all trans”−CBTC化合物を脱水剤と反応させて、ケージ状CBDA化合物を製造する工程である。
脱水剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸無水物、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCと略記)、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロライド(DMCと略記)等が用いられるが、好ましくは安価な脂肪族カルボン酸無水物、特に無水酢酸が用いられる。
脱水剤の使用量は、基質に対して2〜50当量、好ましくは2〜10当量である。
有機溶媒の使用量は、基質に対して1〜20質量倍、好ましくは1〜10質量倍である。
反応時間は、反応温度によって変動するものであるため一概には規定できないが、実用的には、1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。
反応後、脱水剤及び必要に応じて用いられる溶媒を留去すると、目的物であるケージ状CBDA化合物が得られる。なお、得られた化合物は、そのままでも十分な純度を有しているが、必要に応じて再結晶法により精製してもよい。
なお、上述した各工程の反応は、バッチ式又は流通式で行うことができ、また常圧下でも加圧下でも行うことができる。
例えば、1,4−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸1,2:3,4−二無水物は、特開平4−106127号公報に記載の方法で得られる。
[1] ガスクロマトグラフィー(GC)
機種: Shimadzu GC−17A,Column:キャピラリカラム CBP1−W25−100(25m×0.53mmφ×1μm),カラム温度:100℃(保持 2min.)〜290℃(保持 10min.),8℃/min.(昇温速度),注入口温度:290℃,検出器温度:290℃,キャリアガス:ヘリウム,検出法:FID法
[2] 質量分析(MASS)
機種:LX−1000(JEOL Ltd.),検出法:FAB法
[3] 1H NMR
機種:ECP500 (JEOL),測定溶媒:DMSO−d6
[4] 13C NMR
機種: ECP500(JEOL),測定溶媒:DMSO−d6
[5] 融点(mp.)
測定機器:自動融点測定装置、FP62(METTLER TOLEDO)
[6] 液体クロマトグラフィー (LC)
機種: Shimadzu LC−10A,Column:Inertsil ODS−3(5μm,250mm×4.6mmφ), カラム温度:40℃,検出器:RI, 溶離液:H2O/CH3CN=4/6,流速:1ml/min.
[7] [X線結晶解析]
装置: DIP2030K(マックサイエンス製)
X線:MoKα(45kV,200mA)
測定温度:室温
結晶:板状結晶(0.2×0.1×0.1mm)
反応終了後、室温に戻してから析出した結晶を濾取し、水及びメタノールで洗浄した後、減圧乾燥し、ガスクロマトグラフィー(GC)で単一ピークの白色結晶23.5g(収率97.5%)を得た。
この結晶は、以下の単結晶X線解析により、シス,トランス,シス−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレートであることが確認された。また、MASS、1H−NMR、13C−NMRのデータからもこの構造が支持された。
1H−NMR(DMSO−d6,δppm):3.6778(s,4H),3.6039(s,12H)
13C−NMR(DMSO−d6,δppm):40.0868,52.1500,170.8977(各4個の炭素分を表す)
mp.:146.5〜147.5℃
シス,トランス,シス−テトラメチル1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレートを、アセトニトリルに溶解させ、自然濃縮により単結晶を作成してX線測定を行ったところ、下記の結果が得られた。図1にこの単結晶X線のチャートを示す。
分子量 288.25
色相,形状 colorless, plate
晶系 triclinic
空間群 P−1
結晶系 plane
格子定数 a=5.971(1)Å
b=6.461(1)Å
c=8.949(1)Å
α=98.534(8)°
β=101.277(6)°
γ=95.189(7)°
V=332.29(8)Å3
Z値=1
Dx=1.441Mg/m3
Mo K<α> radiation
λ(MoKa)=0.70926Å, μ(MoKa)0.12mm-1
No. of measured reflections=1414
No. of observed reflections=1386
R(gt)=0.09
wR(gt)=0.37
Temp.=298K
分離したEDC層を濃縮すると、白色結晶2.7gが得られた。さらに、この白色結晶をメタノールに溶解し、やや濃縮してから氷冷すると結晶が析出した。この結晶を濾取し、メタノール洗浄してから減圧乾燥し、ガスクロマトグラフィー(GC)で単一ピークの白色結晶2.0gを得た。
この結晶は、MASS、1H−NMR、及び13C−NMR解析によってトランス,トランス,トランス−テトラメチル1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレートであることが確認された。
1H−NMR(DMSO−d6,δppm):3.4217(s,4H),3.6428(s,12H)
13C−NMR(DMSO−d6,δppm):39.3470,52.2496,171.0202(各4個の炭素分を表す)
mp.:127.5〜128.0℃
内容積300mlパイレックス(登録商標)ガラス製四つ口反応フラスコに、シス,トランス,シス−テトラメチル1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート35g(121.4mmol)、t−ブトキシカリウム(純度95%)2.72g(20mol%)、及びメタノール175gを仕込み、62℃で2時間還流した。反応終了後、52℃まで冷却し、種晶“all trans”−TMCBを投入すると、白色結晶が析出した。この状態で2時間攪拌した後、40℃まで冷却して2時間攪拌し、さらに25〜30℃まで冷却して2時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、メタノール洗浄した後に減圧乾燥し、ガスクロマトグラフィー(GC)で単一ピークの白色結晶26.9g(収率76.9%)を得た。
この結晶は、MASS、1H−NMR、及び13C−NMR解析によってトランス,トランス,トランス−テトラメチル1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレートであることが確認された。
この際、副生した蟻酸メチルを蟻酸とともに留去しながら1H−NMRで原料が消失するまで反応を行った。なお、留去した蟻酸メチルの量は180gであった。留去するにつれて白色結晶が析出した。
反応終了後、室温まで冷却した後、析出した結晶を濾取し、酢酸エチルで洗浄してから減圧乾燥し、白色結晶22.7g(収率93.9%)を得た。
この結晶は、MASS、1H−NMR、及び13C−NMR解析によってトランス,トランス,トランス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸であることが確認された。
1H−NMR(DMSO−d6,δppm):3.1351(s,4H),12.7567(s,4H)
13C−NMR(DMSO−d6,δppm):40.3808,172.8627(各4個の炭素分を表す)
mp.:280.0℃
続いて、室温まで冷却した後、析出した結晶を濾取し、酢酸エチルで洗浄してから減圧乾燥し、白色結晶15.1g(収率74.5%)を得た。
この結晶は、MASS、1H−NMR、及び13C−NMR解析によって、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物であることが確認された。
1H−NMR(DMSO−d6,δppm):4.2455(s,4H),12.7714(s,4H)
13C−NMR(DMSO−d6,δppm):43.3971,163.5640(各4個の炭素分を表す)
mp.:258.0℃
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物の単結晶は、上記反応で得られた白色結晶をそのまま使用してX線測定をしたところ、下記の結果が得られた。図2にこの単結晶X線のチャートを示す。
分子量 196.114
色相, 形状 colorless, plate
晶系 triclinic
空間群 P−1
結晶系 plane
格子定数 a=9.0610(10)Å
b=8.3480(10)Å
c=9.6980(10)Å
α=90.00°
β=90.00°
γ=90.00°
V=733.57(14)Å3
Z値=4
Dx=1.776Mg/m3
Mo K<α> radiation
λ(MoKa)=0.70926Å, μ(MoKa)=0.16mm-1
No. of measured reflections=950
No. of observed reflections=885
R(gt)=0.034
wR(gt)=0.075
Temp.=130K
続いて、ジメチル硫酸16.5g(131mmol、2.1モル当量)を滴下した後、60℃で1時間半還流した。反応終了後、濃縮乾固して粗物52.9gを得た。この粗物にトルエン70g及び2%塩酸水70gを滴下し、粗物を溶解させてから分液した。分液した有機層に、5%重曹水42gを加えて洗浄した後、さらに水42gで洗浄した。洗浄後の有機層を濃縮して粗結晶19.2gを得た。この粗結晶に、トルエン9.6g及びヘプタン38.4gを加えて加温して粗結晶を溶解させた後、冷却しながら52℃で目的物の種晶を加え、20℃で30分間静置した。析出した結晶を濾取し、減圧乾燥して、ガスクロマトグラフィー(GC)で単一ピークの白色結晶14.9g(収率81.1%)を得た。
この結晶は、1H−NMR及び13C−NMRからシス,トランス,シス−テトラメチル1,4−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレートであることが確認された。
13C−NMR(DMSO−d6,δppm):19.9048(2),45.0419(2),51.5986(2),52.2327(4),170.9263(2),171.8576(2)(かっこ内の数字は炭素数を表す)
mp.:86.1℃
その後、溶媒を濃縮除去し、その残渣にトルエン134g(5質量倍)を添加し、これを濃縮留去した。この残渣に、さらにトルエン134g(5質量倍)と水134g(5質量倍)を添加し、これを溶解させて分液した後、有機層を濃縮し、粗結晶26.8gを得た。この粗結晶に、トルエン26.7g及びヘプタン48gを加えて加温溶解後、冷却しながら35〜40℃で目的物の種晶を加え、さらに20〜25℃に冷却して30分間攪拌した。析出した結晶を濾取した後、減圧乾燥し、ガスクロマトグラフィー(GC)で単一ピークの白色結晶16.7g(収率62.5%)を得た。また、濾液を濃縮すると結晶8.6gが得られた。
得られた白色結晶は、1H−NMR及び13C−NMR解析によってトランス,トランス,トランス−テトラメチル1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレートであることが確認された。
13C−NMR(DMSO−d6,δppm):15.3129(2),39.7827(2),49.2593(2),51.9986(2),52.4945(2),170.2656(2),171.3643(2)(かっこ内の数字は炭素数を表す)
mp.:82.4℃
この残渣にトルエン75gを加えて加熱共沸脱水し、固形物11.6gを得た。さらに、この固形物に酢酸エチル45gを加えて30分加熱還流した後、冷却し、20〜25℃で30分攪拌して結晶を析出させた。得られた結晶を濾取し、トルエンで洗浄した後、酢酸エチルで洗浄して減圧乾燥し、白色結晶11.1g(収率89.7%)を得た。
この結晶は、1H−NMR及び13C−NMR解析によってトランス,トランス,トランス−1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸であることが確認された。
13C−NMR(DMSO−d6,δppm):15.5255(2),39.8732(2),40.0030(2),48.4648(2),172.2102(2),173.0419(2)(かっこ内の数は炭素数を表す)
mp.:280.4℃
反応終了後、20℃まで冷却し、析出した結晶を濾取し、トルエンで洗浄してから40℃以下で減圧乾燥し、白色結晶10.9g(収率86.3%)を得た。
この結晶は、MASS、1H−NMR及び13C−NMR解析によって、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物であることが確認された。
1H−NMR(DMSO−d6,δppm):1.3162(s,6H),4.4171(s,2H)
13C−NMR(DMSO−d6,δppm):12.6168(4),45.8766(4),52.7284(2),162.9991(2),165.1050(2)(かっこ内は炭素数を表す)
mp.:234.1℃
1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物として、上記反応で得られた白色結晶を70℃の無水酢酸・トルエン混合溶液に溶解させた後、ゆっくりと室温まで冷却して得られた無色柱状の単結晶を用いてX線測定をしたところ、下記の結果が得られた。図3にこの単結晶X線のチャートを示す。
分子量 224.168
色相,形状 colorless,柱状
晶系 Orthorhombic
空間群 Pbcn
格子定数 a=9.902(1)Å
b=9.000(1)Å
c=11.096(1)Å
α=90.00°
β=90.00°
γ=90.00°
V=988.9(2)Å3
Z値=4
Dx=1.506Mg/m3
Mo K<α> radiation
λ(MoKa)=0.70926Å, μ(MoKa)=0.13mm-1
No. of measured reflections=1282
No. of observed reflections = 1081
R(gt)=0.067
wR(gt)=0.145
Temp.=298K
Claims (13)
- 式[1]
で表される1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物と、式[2]
で表されるアルコール化合物と、を酸触媒の存在下で反応させることを特徴とする式[3]
で表されるシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物の製造法。 - 前記酸触媒が、硫酸である請求項1記載のシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物の製造法。
- 式[1]
で表される1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物と、式[7]
で表されるジアルキル硫酸化合物とを、塩基触媒の存在下で反応させることを特徴とする式[3]
で表されるシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物の製造法。 - 前記式[7]で表されるジアルキル硫酸化合物が、ジメチル硫酸である請求項3記載のシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物の製造法。
- 前記塩基触媒が、脂肪族アミンである請求項3記載のシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物の製造法。
- 式[1]
で表される1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物と、式[2]
で表されるアルコール化合物と、を酸触媒の存在下で反応させて式[3]
で表されるシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物を得、この式[3]で示される化合物を塩基触媒で異性化させて式[4]
で表されるトランス,トランス,トランス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物を得、この式[4]で示される化合物を有機酸と反応させて式[5]
で表されるトランス,トランス,トランス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸化合物を得、さらにこの式[5]で示される化合物を脱水剤と反応させる、式[6]
で表される1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物化合物の製造法。 - 式[1]
で表される1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物と、式[7]
で表されるジアルキル硫酸化合物とを、塩基触媒の存在下で反応させて式[3]
で表されるシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物を得、この式[3]で示される化合物を塩基触媒で異性化させて式[4]
で表されるトランス,トランス,トランス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物を得、この式[4]で示される化合物を無機酸と反応させて式[5]
で表されるトランス,トランス,トランス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸化合物を得、さらにこの式[5]で示される化合物を脱水剤と反応させる、式[6]
で表される1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物化合物の製造法。 - 前記R1及びR2が、水素原子である請求項1又は2記載のシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物の製造法。
- 前記R1及びR2が、水素原子である請求項6記載の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物化合物の製造法。
- 前記R1及びR2が、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基である請求項3〜5のいずれか1項記載のシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物の製造法。
- 前記R1及びR2が、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基である請求項7記載の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物化合物の製造法。
- 前記R1及びR2が、メチル基である請求項3〜5のいずれか1項記載のシス,トランス,シス−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸テトラエステル化合物の製造法。
- 前記R1及びR2が、メチル基である請求項7記載の1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物化合物の製造法。
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