JP5376165B2 - 液晶配向剤および液晶表示素子 - Google Patents
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Description
これらの液晶表示素子における液晶配向膜の材料としては、従来ポリイミド、ポリアミドおよびポリエステルなどが知られているが、特にポリイミドは、耐熱性、液晶との親和性、機械的強度などに優れており、多くの液晶表示素子に使用されている(特許文献6)。
ところで近年、液晶表示素子の適用範囲が広がっており、特に液晶テレビの普及が進んでいる。液晶テレビ用途においては、最近の動画の精細化、動画固定技術の進歩と相俟って、高速応答性液晶が用いられている。しかし、高速応答性液晶を用いた液晶表示素子を長時間(例えば1,000時間以上)連続駆動すると、素子の明暗のコントラストが低下するとの問題点があった。この不具合は、長時間駆動による熱ストレスのために液晶配向膜が熱劣化し、その結果液晶の電圧保持率が低下することに起因するものと考えられている。そのため、液晶表示素子を長時間駆動した場合でも安定した電圧保持率を示す、耐熱性に優れる液晶配向膜が要求されているが、かかる液晶配向膜を与える液晶配向剤は未だ知られていない。
さらに、液晶配向剤を有効に利用するため、印刷時に使用する液晶配向剤の液量を低減する試みがなされており、少ない液量でも優れた印刷性を示す液晶配向剤が望まれている。
本発明の別の目的は、長期にわたって表示品位に優れる信頼性を有する液晶表示素子を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
下記式(1)
本発明の上記目的および利点は、第二に、
上記液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する液晶表示素子によって達成される。
本発明の液晶配向剤は、TN型、STN型、IPS型、VA型、PSA(Polymer Sustained Alignment)型などの種々の液晶表示素子に好適に適用することができる。
<ポリアミック酸>
本発明におけるポリアミック酸は、上記式(1)で表される化合物を含むテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより合成することができる。
[テトラカルボン酸二無水物]
上記式(1)で表される化合物は、例えばビニルグルタル酸とシクロペンタジエンとのディールスアルダー反応を好ましくは適当な触媒(例えば四塩化スズ)の存在下で行い、その反応生成物をバナジン(V)酸アンモニウムおよび硝酸の存在下に処理して酸化するか、あるいは、硫酸および硝酸にて順次に処理して酸化することによりテトラカルボン酸とし、次いで適当な脱水剤(例えば無水酢酸)を用いてカルボキシル基を脱水閉環する方法により、合成することができる。ビニルグルタル酸は、例えばホルマリンとマロン酸とをピペラジンの存在下に反応させる方法、アクリル酸メチルをトリ−n−ブチルリンの存在下で二量化した後に加水分解する方法などにより合成することができる。上記式(1)で表される化合物を用いて得られたポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体は後述する有機溶媒に対する溶解性に優れる利点を有する。この利点は、前記重合体としてイミド化率の高いポリイミドを適用した場合であっても損なわれることはないため、本発明の液晶配向剤は、高度の印刷性と得られる配向膜の高い耐熱性とを両立することができるのである。
本発明においては、テトラカルボン酸二無水物として上記式(1)で表される化合物のみを用いてもよく、あるいは上記式(1)で表される化合物と他のテトラカルボン酸二無水物とを併用してもよい。
のそれぞれで表される化合物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物および脂環式テトラカルボン酸二無水物;
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−ブタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,8−オクタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−ビス(アンヒドロトリメリテート)、下記式(T−1)〜(T−4)
本発明における他のテトラカルボン酸二無水物としては、上記のうちのブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,2,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、上記式(T−I)で表される化合物のうち下記式(T−5)〜(T−7)
他の特定テトラカルボン酸二無水物としては、特に1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、ピロメリット酸二無水物および上記式(T−5)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明におけるテトラカルボン酸二無水物は、上記式(1)で表される化合物を、全テトラカルボン酸二無水物に対して、20モル%以上含むものであることが好ましく、50モル%以上含むものであることがより好ましく、特に80モル%以上含むものであることが好ましい。かかる割合で上記式(1)で表される化合物を含むテトラカルボン酸二無水物を用いることにより、耐熱性により優れる液晶配向膜を与えることができるとともに印刷性により優れる液晶配向剤とすることができることとなり、好ましい。
本発明におけるテトラカルボン酸二無水物において上記の如き他の特定テトラカルボン酸二無水物の占める割合は、全テトラカルボン酸二無水物に対して、80モル%以下であることが好ましく、50モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましい。
本発明におけるテトラカルボン酸二無水物は、上記式(1)で表される化合物のみからなるものであるか、あるいは上記式(1)で表される化合物と他の特定テトラカルボン酸二無水物とを含み且つこれら以外のテトラカルボン酸二無水物を含有しないものであることが、特に好ましい。
本発明で使用されるジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ジメチル−2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニルなどの芳香族ジアミン;
2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、5,6−ジアミノ−2,3−ジシアノピラジン、5,6−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、4,6−ジアミノ−2−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−5−フェニルチアゾール、2,6−ジアミノプリン、5,6−ジアミノ−1,3−ジメチルウラシル、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、6,9−ジアミノ−2−エトキシアクリジンラクテート、3,8−ジアミノ−6−フェニルフェナントリジン、1,4−ジアミノピペラジン、3,6−ジアミノアクリジン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ジ(4−アミノフェニル)−ベンジジン、下記式(D−I)
で表される化合物、下記式(D−II)
で表される化合物などの分子内に2つの1級アミノ基および該1級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミン;
下記式(D−III)
で表されるモノ置換フェニレンジアミン;
下記式(D−IV)
で表される化合物などのジアミノオルガノシロキサン;
下記式(D−1)〜(D−5)
のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
本発明において使用されるジアミンとしては、上記のうちp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、上記式(D−1)〜(D−5)のそれぞれで表される化合物、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ジ(4−アミノフェニル)−ベンジジン、上記式(D−I)で表される化合物のうちの下記式(D−6)
本発明において用いられるジアミンは、さらに上記の如き特定ジアミンを、全ジアミンに対して20モル%以上含むものであることが好ましく、50モル%以上含むものであることがより好ましく、さらに80モル%以上含むものであることが好ましい。本発明において用いられるジアミンは、上記の如き特定ジアミンのみからなるものであることが、特に好ましい。
本発明におけるポリアミック酸は、上記の如き、上記式(1)で表される化合物を含むテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることができる。
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合は、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、有機溶媒中において、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは0〜100℃の温度条件下で行われる。反応時間は、好ましくは1〜240時間であり、より好ましくは2〜12時間である。ここで、有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を挙げることができる。また、有機溶媒の使用量(a:ただし有機溶媒と後述の貧溶媒とを併用する場合には、それらの合計量をいう。)は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
ポリアミック酸を合成するに際して有機溶媒と上記の如き貧溶媒とを併用する場合、貧溶媒の使用割合は、有機溶媒と貧溶媒との合計に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。
この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。
ポリアミック酸の単離は、上記反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥する方法、あるいは、反応溶液中の有機溶媒をエバポレーターで減圧留去する方法により行うことができる。また、このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、次いで貧溶媒で析出させる方法、あるいは、ポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解して得た溶液を洗浄後、該溶液中の有機溶媒をエバポレーターで減圧留去する工程を1回または数回行う方法により、ポリアミック酸を精製することができる。
本発明におけるポリイミドは、上記の如きポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
本発明におけるポリイミドは、前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミドは、イミド化率が20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、特に80%以上であることが好ましい。
上記イミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。このとき、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。イミド化率は、ポリイミドを適当な重水素化溶媒(例えば重水素化ジメチルスルホキシド)に溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温で1H−NMRを測定した結果から、下記数式(1)により求めることができる。
イミド化率(%)=(1−A1/A2×α)×100 (1)
(数式(1)中、A1は化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、A2はその他のプロトン由来のピーク面積であり、αはポリイミドの前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
上記ポリイミドを合成するためのポリアミック酸の脱水閉環は、(i)ポリアミック酸を加熱する方法により、または(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。
上記(ii)のポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01〜20モルとするのが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとするのが好ましい。なお、脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。そして、脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は、好ましくは1〜24時間であり、より好ましくは2〜8時間である。
上記方法(i)において得られるポリイミドは、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、あるいは得られるポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。一方、上記方法(ii)においてはポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除くには、例えば溶媒置換などの方法を適用することができる。ポリイミドの単離、精製は、ポリアミック酸の単離、精製方法として上記したのと同様の操作を行うことにより行うことができる。
本発明におけるポリアミック酸およびポリイミドは、それぞれ、分子量が調節された末端修飾型の重合体であってもよい。末端修飾型の重合体を用いることにより、本発明の効果が損なわれることなく液晶配向剤の塗布特性などをさらに改善することができる。このような末端修飾型の重合体は、ポリアミック酸を合成する際に、分子量調節剤を重合反応系に添加することにより行うことができる。分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。
上記酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを挙げることができる。上記モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなどを挙げることができる。上記モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを挙げることができる。
分子量調節剤の使用割合は、ポリアミック酸を合成する際に使用するテトラカルボン酸二無水物およびジアミンの合成100重量部に対して、好ましくは20重量以下であり、より好ましくは5重量部以下である。
[溶液粘度]
本発明におけるポリアミック酸およびポリイミドは、それぞれ濃度10重量%の溶液としたときに、20〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、30〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。
上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
本発明の液晶配向膜は、上記の如きポリアミック酸およびこれを脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えば分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物などを挙げることができる。
上記エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサンなどを好ましいものとして挙げることができる。これらエポキシ化合物の配合割合は、重合体の合計(液晶配向剤に含有されるポリアミック酸およびポリイミドの合計量をいう。以下同じ。)100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは0.1〜30重量部である。
これら官能性シラン含有化合物の配合割合は、重合体の合計100重量部に対して、好ましくは40重量部以下である。
本発明の液晶配向剤に使用できる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成反応に用いられるものとして例示した溶媒を挙げることができる。また、ポリアミック酸の合成反応の際に併用することができるものとして例示した貧溶媒も適宜選択して併用することができる。かかる有機溶媒の好ましい例としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを挙げることができる。これらは単独で使用することができ、または2種以上を混合して使用することができる。
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えば、スピンナー法による場合には1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
本発明の液晶表示素子は、上記の如き本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備するものであり、好ましくは垂直配向型の液晶表示素子である。
本発明の液晶表示素子は、例えば下記の方法により製造することができる。
(1)パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤を、例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法などの方法によって塗布し、次いで、塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。本発明の液晶配向剤は、塗布法として特にオフセット印刷を採用した場合、従来必要とされていた液量よりも少ない液量で印刷を行っても良好な塗膜を形成することができるとの利点を有するので、液晶表示素子の製造コストの削減に資する。
ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィンなどのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In2O3−SnO2)からなるITO膜などを用いることができる。パターニングされた透明導電膜を得るには、例えば基板上にパターンなしの透明導電膜を形成した後フォト・エッチングにより所望のパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いてパターニングされた透明導電膜を直接形成する方法などを用いることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面と樹脂膜との接着性をさらに良好にするために、例えば官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布しておいてもよい。
本発明の液晶配向剤は、これを塗布した後に有機溶媒を除去することによって配向膜である塗膜となるが、本発明の液晶配向剤に含有される重合体がポリアミック酸またはイミド環構造とアミック酸構造とを併有するポリイミドである場合には、塗膜形成後にさらに加熱することによって脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜としてもよい。
ここで形成される塗膜(液晶配向膜)の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。本発明の液晶配向剤は、垂直配向性に優れた液晶配向膜を形成することができるため、ODF法によりVA型液晶表示素子を製造したときでもODFムラが発生しない液晶表示素子を得ることができる利点を有する。
いずれの方法による場合でも、次いで、液晶セルを、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、注入時の流動配向を除去することが望ましい。
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。
液晶としては、ネマティック型液晶およびスメクティック型液晶を挙げることができる。その中でもネマティック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック型液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などをさらに添加して使用してもよい。
液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
下記スキーム1aおよび1b
[化合物(1A)の合成]
滴下ロート、温度計および窒素導入管を備えた1Lの三口フラスコに、メタクリル酸メチル555mL(6.2モル)およびヒドロキノン34g(0.31モル)を秤り取り、ドライアイスバスを用いて−20〜0℃に冷却した。ここにトリ−n−ブチルホスフィン125g(0.62モル)を滴下ロートを用いて滴下し、反応系の温度を室温に昇温した後3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、減圧蒸留することにより、化合物(1A)を175g得た。
[化合物(1B)の合成]
還流管を備えた3Lナスフラスコに、上記で得た化合物(1A)175g(1モル)、テトラヒドロフラン1L、水1Lおよび水酸化ナトリウム80g(2モル)を仕込み、7時間還流下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に塩酸を加えて液性を酸性にした後、酢酸エチルで抽出して有機層を得た。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で溶媒を除去することにより、化合物(1B)の黄白色固体を137g得た。
[化合物(1C)の合成]
還流管を備えた3Lフラスコに、上記で得た化合物(1C)140g(1モル)および無水酢酸2Lを仕込み、オイルバスを用いて100℃において5時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、減圧下で反応混合物から溶媒を除去することにより、褐色オイル状の化合物(1C)を120g得た。
温度計、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた5L三口フラスコに、上記で得た化合物(1C)65g(0.5モル)および塩化メチレン1Lを仕込み、ドライアイスバスを用いて約−30℃に冷却した後、ZnCl2のテトラヒドロフラン溶液(濃度0.5モル/L)1.5L(ZnCl2換算で0.75モルに相当)を加えた。しばらく撹拌した後、シクロペンタジエンの塩化メチレン溶液(濃度5モル/L)300mL(シクロペンタジエン換算で99g(1.5モル)に相当)を滴下した。−30℃で1時間撹拌した後、50℃で5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチルを加えて有機層を回収し、これを水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で溶媒を除去することにより、淡褐色オイル状の化合物(1D)を115g得た。
[化合物(1E)の合成]
温度計および窒素導入管を備えた2Lの三口フラスコに、硝酸700mLおよびバナジン(V)酸アンモニウム2.6gを仕込んで60℃にて1時間撹拌した後、ここに上記で得た化合物(1D)96gを少しずつ加え、65℃で6時間反応を行った。反応終了後、減圧下で反応混合物を容量1/3程度まで濃縮し、一昼夜静置して析出した結晶をろ取し、水および酢酸エチルで洗浄した後、乾燥することにより、化合物(1E)の白色粉末を25g得た。
[化合物(1)の合成]
還流管を備えた1Lのナスフラスコに、上記で得た化合物(1E)25g、トルエン160mLおよび無水酢酸140mLを仕込み、5時間還流下に反応を行った。反応終了後、反応混合物を静置して析出した析出物をろ取し、これをクロロホルムで洗浄した後、乾燥することにより、化合物(1)の白色粉末を15g得た。
テトラカルボン酸二無水物として上記合成例1で得た化合物(1)19gならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン7.1gおよび上記式(D−6)で表される化合物8.6gをN−メチル−2−ピロリドン140gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。このポリアミック酸溶液の溶液粘度は2,200mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン325gを追加し、ピリジン32gおよび無水酢酸25gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶剤を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶剤置換(本操作にて脱水閉環反応に使用したピリジンおよび無水酢酸を系外に除去した。以下同じ。)することにより、イミド化率約90%のポリイミド(PI−1)を20重量%含有する溶液を得た。この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンで希釈して重合体濃度6.0重量%の溶液として測定した溶液粘度は21mPa・sであった。
比較合成例1(ポリイミドの比較合成例)
テトラカルボン酸二無水物として下記式(t−1)
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン325gを追加し、ピリジン33gおよび無水酢酸26gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶剤を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶剤置換することにより、イミド化率約90%のポリイミド(PI−2)を20重量%含有する溶液を得た。この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンで希釈して重合体濃度6.0重量%の溶液として測定した溶液粘度は13mPa・sであった。
実施例1
[印刷性評価用液晶配向剤の調製]
上記合成例2で得たポリイミド(PI−1)を含有する溶液に、エポキシ化合物としてN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンを、上記溶液に含有されるポリイミド(PI−1)100重量部に対して20重量部加え、さらにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびブチルセロソルブ(BC)を加えて溶媒組成がNMP:BC=40:60(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、印刷性評価用液晶配向剤を調製した。
この液晶配向剤につき、25℃で測定した溶液粘度は20mPa・sであった。
[印刷性の評価]
上記で調製した印刷性評価用液晶配向剤につき、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製、型式「オングストローマーS40L−532」)を用い、アニロックスロールへの液晶配向剤滴下量を往復20滴(約0.2g)の条件にてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布した。なお、この液晶配向剤の滴下量は、同型の印刷機について通常採用される滴下量(往復30滴(約0.3g))と比較して液量が少なく、より厳しい印刷条件である。
塗布後の基板につき、80℃で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、180℃で10分間加熱(ポストベーク)することにより、膜厚約80nmの塗膜を形成した。この塗膜を目視で観察してハジキおよび塗布ムラの有無を調べたところ、塗膜の全領域について印刷ムラおよびピンホールとも観察されず、上記液晶配向剤の印刷性は「良好」であった。
上記「印刷性評価用液晶配向剤の調製」において、溶液の固形分濃度を4.0重量%とした以外は「印刷性評価用液晶配向剤の調製」と同様にして、液晶表示素子製造用液晶配向剤を調製した。
[垂直配向型液晶表示素子の製造]
厚さ1mmのガラス基板の片面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、上記で調製した液晶表示素子製造用液晶配向剤をスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレート上で1分間プレベークし、次いで200℃のオーブン中で60分間ポストベークすることにより、膜厚0.08μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この操作を繰り返し、透明導電膜上に液晶配向膜を有するガラス基板を一対(2枚)得た。
上記一対の液晶配向膜を有するガラス基板につき、液晶配向膜を有する面のそれぞれの外縁に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、基板の間隙に、ネガ型液晶(メルク社製、MLC−6608)を液晶注入口より注入して充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止し、基板の外側の両面に偏光板を貼り合わせることにより、垂直配向型液晶表示素子を製造した。
(1)液晶配向性の評価
上記で製造した垂直配向型液晶表示素子につき、クロスニコル下で電圧をオン・オフしたときの異常ドメインの有無を、顕微鏡により観察し、異常ドメインが観察されなかった場合を液晶配向性「良好」、異常ドメインが観察された場合を液晶配向性「不良」として評価したところ、この垂直配向型液晶表示素子の液晶配向性は「良好」であった。
(2)耐熱性の評価
上記で製造した垂直配向型液晶表示素子につき、先ず5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。このときの数値を初期電圧保持率(VHRBF)とした。
VHRBF測定後の液晶表示素子を100℃のオーブンに入れ、1,000時間熱ストレスを印加した。次いで該液晶表示素子を室温下に静置して室温まで冷却した後、上記初期電圧保持率の測定と同じ条件で熱ストレス印加後の電圧保持率(VHRAF)を測定した。
下記数式(2)
△VHR(%)=((VHRBF−VHRAF)÷VHRBF)×100 (2)
により、熱ストレス印加前後の電圧保持率の変化率(△VHR)を求め、この変化率が5%未満であった場合を耐熱性「良好」、5%以上であった場合を耐熱性「不良」として評価したところ、上記垂直配向型液晶表示素子の耐熱性は「良好」であった。
ポリイミド(PI−1)を含有する溶液の代わりに上記比較合成例1で得たポリイミド(PI−2)を含有する溶液を用いたほかは上記実施例1と同様にして印刷性評価用液晶配向剤を調製して印刷性を評価し、さらに液晶表示素子製造用液晶配向剤を調製し、これを用いて垂直配向型液晶表示素子を製造して評価した。
その結果、印刷性および垂直配向型液晶表示素子の液晶配向性は良好であったが、耐熱性は不良であった。
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