JP5609651B2 - テトラカルボン酸誘導体、その製造方法、及び液晶配向剤 - Google Patents
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Description
例えば、主鎖にシクロブタン骨格を有するポリイミドの合成例としては、ビス(クロロカルボニル)シクロブタンジカルボン酸ジメチルエステルとジアミンとを反応させてポリアミド酸メチルエステルを得た後、これを加熱してポリイミドとした例が報告されている(非特許文献1参照)。
しかしながら、シクロブタン環上に置換基を有するシクロブタンテトラカルボン酸類では、テトラカルボン酸ジアルキルエステル、及びこれを塩素化したビス(クロロカルボニル)化合物を合成した報告例はない。
一方、ポリイミドなどの樹脂は、その特徴である高い機械的強度、耐熱性、絶縁性、耐溶剤性のために、液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料、カラーフィルターなどの電子材料として広く用いられており、また、最近では、光導波路用材料等の光通信用材料としての用途も期待されている。そして、このような分野で用いられる樹脂は、近年、益々高度な特性、並びに品質が要求される様になってきており、これらの樹脂の原料となるモノマーの構造や品質などは、これまで以上に重要となってきている。
他方、液晶テレビ、液晶ディスプレイなどに用いられる液晶表示素子は、通常、液晶の配列状態を制御するための液晶配向膜が素子内に設けられている。
現在、工業的に最も普及している方法によれば、この液晶配向膜は、電極基板上に形成されたポリイミド膜の表面を、綿、ナイロン、ポリエステル等の布で一方向に擦る、いわゆるラビング処理を行うことで作製されている。
ポリイミド膜をラビング処理する方法は、簡便で生産性に優れた工業的に有用な方法である。しかし、液晶表示素子の高性能化、高精細化、大型化への要求は益々高まり、ラビング処理によって発生する配向膜表面の傷、発塵、機械的な力や静電気による影響、配向処理の面内均一性など様々な問題が明らかとなってきている。
ラビング処理に代わる手段としては、偏光された放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する光配向法が知られている。光配向法による液晶配向のメカニズムとしては、光異性化反応を利用したもの、光架橋反応を利用したもの、光分解反応を利用したものなどが提案されている(非特許文献2参照)。
特許文献1では、主鎖にシクロブタン環などの脂環構造を有するポリイミドを光配向法に用いることが提案されている。ポリイミドを用いた光配向用配向膜に用いた場合、他に比べて高い耐熱性を有することからその有用性が期待されている。
上記のような光配向法は、ラビングレス配向処理方法として、工業的にも簡便な製造プロセスで生産できることが利点であり、新たな液晶配向処理方法として注目されているが、液晶テレビや液晶ディスプレイなどに利用するためには、液晶の配向規制力や液晶表示素子としての電気特性、これら特性の安定性などに課題があり、一般的には実用化に至っていない。
すなわち、ラビング法により配向処理を行った液晶配向膜は、物理的な力により高分子鎖が延伸されるため、ラビング方向に対して高い異方性を有する。この異方性が高いほど、高い液晶配向規制力を発現する。これに対して、光配向法により得られる液晶配向膜は、ラビングによるものに比べて、高分子膜の配向処理方向に対する異方性が小さいという課題があった。
また、本発明は、上記ビス(クロロカルボニル)化合物を原料とするポリアミック酸及び/又はポリイミドを含む液晶配向剤を提供することも目的とする。
1.下記式[1]又は式[2]で表される、テトラカルボン酸ジアルキルエステル。
2.下記式[1−a]、式[2−a]又は式[2−b]で表される、上記1に記載のテトラカルボン酸ジアルキルエステル。
4.下記式[3−a]、式[4−a]又は式[4−b]で表される、上記3に記載のビス(クロロカルボニル)化合物。
5.下記式[5]で表されるテトラカルボン酸二無水物と炭素数1〜5のアルコールとを反応させる、前記式[1]又は式[2]で表されるテトラカルボン酸ジアルキルエステルの製造方法。
6.下記式[5−a]で表されるテトラカルボン酸二無水物と炭素数1〜5のアルコールとを反応させる、前記式[1−a]又は式[2−a]で表されるテトラカルボン酸ジアルキルエステルの製造方法。
7.下記式[5−b]で表されるテトラカルボン酸二無水物と炭素数1〜5のアルコールとを反応させる、前記式[2−b]で表されるテトラカルボン酸ジアルキルエステルの製造方法。
8.テトラカルボン酸二無水物と炭素数1〜5のアルコールとを、酸性化合物又は塩基性化合物の存在下で反応させる、上記5〜7のいずれかに記載の製造方法。
9.テトラカルボン酸二無水物と炭素数1〜5のアルコールとを、塩基性化合物の存在下で反応させる、上記5〜7のいずれかに記載の製造方法。
10.前記式[1]又は式[2]で表されるテトラカルボン酸ジアルキルエステルと塩素化剤とを反応させる、前記式[3]又は式[4]で表されるビス(クロロカルボニル)化合物の製造方法。
11.前記式[1−a]で表されるテトラカルボン酸ジアルキルエステルと塩素化剤とを反応させる、前記式[3−a]で表されるビス(クロロカルボニル)化合物の製造方法。
12.前記式[2−a]で表されるテトラカルボン酸ジアルキルエステルと塩素化剤とを反応させる、前記式[4−a]で表されるビス(クロロカルボニル)化合物の製造方法。
13.前記式[2−b]で表されるテトラカルボン酸ジアルキルエステルと塩素化剤とを反応させる、前記式[4−b]で表されるビス(クロロカルボニル)化合物の製造方法。
14.テトラカルボン酸ジアルキルエステルと塩素化剤とを、塩基性化合物存在下で反応させる上記10〜13のいずれかに記載の製造方法。
15.テトラカルボン酸ジアルキルエステルと塩素化剤とを、ピリジン存在下で反応させる上記10〜13のいずれかに記載の製造方法。
16.下記式[3]又は式[4]で表されるビス(クロロカルボニル)化合物とジアミンとを反応させて得られるポリアミド酸エステルを含有することを特徴とする液晶配向剤。
17.ビス(クロロカルボニル)化合物が、下記式[3−a]、式[4−a]又は式[4−b]で表される構造を有する、上記16に記載の液晶配向剤。
19.上記16または17に記載の液晶配向剤を塗布、焼成して得られる被膜に、偏光させた放射線を照射する液晶配向膜の製造方法。
本発明による液晶配向剤は、加熱イミド化時に高分子鎖の分解反応が起こらず、尚且つ、高秩序の高分子膜が得られるため、光配向法においても配向処理方向に対して高い異方性を有する液晶配向膜が得られる。
さらに、本発明による液晶配向膜は、温度・湿度などの外部環境に対して安定であり、液晶表示素子とした場合、高温時で高い電圧保持率、低いイオン密度を有するため、安定で良好な表示特性を有する液晶表示素子が得られる。
本発明のテトラカルボン酸ジアルキルエステルは、下記一般式[1]又は式[2]で表される化合物である。
R1は炭素数1〜5のアルキル基であり、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリーブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基などが挙げられる。なお、本発明のテトラカルボン酸ジアルキルエステルからポリアミド酸エステルを合成した後、イミド化することでポリイミドとして使用する場合は、R1は炭素数が少なく脱離しやすいものが好ましく、より好ましくはメチル基である。
R2は炭素数1〜5のアルキル基であり、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリーブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基などが挙げられる。
nは1〜4を表し、好ましくは2である。
Me:メチル基、Et:エチル基、Pr−n:ノルマルプロピル基、Pr−iso:イソプロピル基、Bu−n:ノルマルブチル基、Bu−sec:セカンダリーブチル基、Bu−iso:イソブチル基、Bu−t:ターシャリーブチル基、Pen−n:ノルマルペンチル基、OMe:メトキシ基、OEt:エトキシ基、OPr−n:ノルマルプロピルエーテル基、OPr−iso:イソプロピルエーテル基、OBu−n:ノルマルブトキシ基、OBu−sec:セカンダリーブトキシ基、OBu−iso:イソブトキシ基、OBu−t:ターシャリーブトキシ基、OPen−n:ノルマルペンチルエーテル基
本発明のテトラカルボン酸ジアルキルエステルにおいて、化合物の合成し易さ、および収率の観点から特に好ましい化合物は、下記式[1−a]、[2−a]、又は[2−b]で表される化合物である。
本発明のテトラカルボン酸ジアルキルエステルは、下記反応式に示すように、テトラカルボン酸二無水物[5]とR1OHで表される炭素数が1〜5のアルコールとを反応させることにより製造することができる。
上記の反応は、対応するアルコール(R1OH)中で行うことができ、また、必要に応じて溶媒を使用することができる。溶媒は反応に不活性なものであれば特に限定はないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン又はトルエンなどの炭化水素類、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン又はクロロベンゼンなどのハロゲン系炭化水素類、ジエチルエーテル又は1,4−ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトン又はメチルエチルケトンなどのケトン類、アセトニトリル又はプロピオニトリル等のニトリル類、並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、酢酸エチル、又はアセトニトリルが挙げられ、より好ましくは、アセトニトリルである。
上記の反応は、中性条件下において進行するが、塩基又は酸を添加しても良い。塩基又は酸は特に限定されるものではない。
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム又は炭酸水素ナトリウムなどの無機塩基類、トリエチルアミン、ピリジン、キノリン、8−キノリノール、1,10−フェナンスロリン、バソフェナンスロリン、バソクプロイン、2,2’−ビピリジル、2−フェニルピリジン、2,6−ジフェニルアミノピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−(2−ヒドロキシルエチル)ピリジン、N、N−ジメチルアニリン、1,8−ジアザビシクロ[5、4、0]−7−ウンデン(DBU)などの有機塩基類、並びに、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド又はカリウムt−ブトキシドなどの金属アルコキシド類が挙げられる。好ましくは、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、又はピリジンが挙げられる。より好ましくは、ピリジンが挙げられる。
酸としては、リンモリブデン酸、リンタングステン酸などのヘテロポリ酸、トリメチルボレート、トリフェニルホスフィンなどの有機酸、塩酸、硫酸又は燐酸などの無機酸、蟻酸、酢酸又はp−トルエンスルホン酸などの炭化水素酸、並びにトリフルオロ酢酸などのハロゲン系炭化水素酸が挙げられる。好ましくは、p−トルエンスルホン酸、燐酸、又は酢酸が挙げられる。より好ましくは、p−トルエンスルホン酸が挙げられる。
塩基又は酸はテトラカルボン酸二無水物[5]に対して通常0〜100倍モル、好ましくは0.01〜10倍モル使用される。
反応温度は特に限定されないが、例えば−90〜200℃、好ましくは−30〜100℃である。
反応時間は、通常、0.05ないし200時間、好ましくは0.5ないし100時間である。
式[1−a]又は式[2−a]で表される化合物の場合、前記反応式のテトラカルボン酸二無水物[5]として、下記式[5−a]で表されるテトラカルボン酸二無水物を使用することにより製造することができる。
このとき、反応温度が低い程、式[1−a]の選択率が向上する。このため、式[1−a]の反応収率を向上させたい場合、より好ましい反応温度は10〜30℃である。一方、式[2−a]の反応収率を向上させたい場合、より好ましい反応温度は50〜100℃である。
また、塩基又は酸を添加して反応させた場合にも、式[1−a]の選択率および反応速度を向上させることができ、より好ましくは塩基性化合物を添加することである。このとき使用する塩基又は酸は前記で例示したものが挙げられ、好ましい塩基又は酸、及び好ましい添加量も前記したとおりである。
このとき、塩基又は酸を添加して反応させることで、式[2−b]の選択率および反応速度を向上させることができ、より好ましくは塩基性化合物を添加することである。このとき使用する塩基又は酸は前記で例示したものが挙げられ、好ましい塩基又は酸、及び好ましい添加量も前記したとおりである。
また、本発明では、反応で生成する目的物の分離が容易であるところに特徴がある。例えば、式[5−a]を原料とした場合、反応終了後、使用したアルコールを留去し、析出した結晶を有機溶媒中で加熱還流した後、冷却することで析出した結晶を濾取・洗浄し乾燥すると式[1−a]の高純度品の一次結晶が得られる。有機溶媒としては、例えば、トルエン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸エチル・n−ヘプタン混合液、酢酸エチル・各種アルコール混合液、アセトニトリル・各種アルコール混合液等が使用できる。好ましくはアセトニトリル、酢酸エチル、酢酸エチル・各種アルコール混合液、又はアセトニトリル・各種アルコール混合液である。各種アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール等が挙げられる。
これら一次結晶を得る場合に使用する有機溶媒量は、通常、原料から目的生成物が100%の収率で得られた場合の重量を基準とし、その2倍〜20倍量使用される。また、収率を向上させたい場合は有機溶媒使用量を少なくした方が好ましく、高純度品を得たい場合は有機溶媒使用量を多くした方が好ましい。これら収率、純度を考慮した場合、2.5倍〜5倍がより好ましい。
二次結晶は洗浄や再結晶によって更に純度を上げることもできる。再結晶方法としては、二次結晶に有機溶媒を加えて加温した後、氷冷・ろ過・乾燥する方法が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、トルエン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸エチル・n−ヘプタン混合液、酢酸エチル・各種アルコール混合液、アセトニトリル・各種アルコール混合液等が使用できる。好ましくはアセトニトリル、酢酸エチル、酢酸エチル・各種アルコール混合液、又はアセトニトリル・各種アルコール混合液である。各種アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール等が挙げられる。
これら二次結晶を得る場合に使用する有機溶媒量は、通常、原料から目的生成物が100%の収率で得られた場合の重量から上記で取り出した一次結晶の重量の分を引いた重量を基準とし、その2倍〜20倍量使用される。また、収率を向上させたい場合は有機溶媒使用量を少なくした方が好ましく、高純度品を得たい場合は有機溶媒使用量を多くした方が好ましい。これら収率、純度を考慮した場合、2.5倍〜5倍量がより好ましい。
これら一次結晶を得る場合に使用する有機溶媒量は、通常、原料から目的生成物が100%の収率で得られた場合の重量を基準とし、その2倍〜20倍量使用される。また、収率を向上させたい場合は有機溶媒使用量を少なくした方が好ましく、高純度品を得たい場合は有機溶媒使用量を多くした方が好ましい。これら収率、純度を考慮した場合、2.5倍〜5倍量がより好ましい。
本発明のビス(クロロカルボニル)化合物は、下記一般式[3]又は[4]で表される化合物である。
R1は炭素数1〜5のアルキル基であり、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリーブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基などが挙げられる。なお、本発明のビス(クロロカルボニル)化合物からポリアミド酸エステルを合成した後、イミド化することでポリイミドとして使用する場合は、R2は炭素数が少なく脱離しやすいものが好ましく、より好ましくはメチル基である。
R2は炭素数1〜5のアルキル基であり、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリーブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基などが挙げられる。
nは1〜4を表し、好ましくは2である。
Me:メチル基、Et:エチル基、Pr−n:ノルマルプロピル基、Pr−iso:イソプロピル基、Bu−n:ノルマルブチル基、Bu−sec:セカンダリーブチル基、Bu−iso:イソブチル基、Bu−t:ターシャリーブチル基、Pen−n:ノルマルペンチル基、OMe:メトキシ基、OEt:エトキシ基、OPr−n:ノルマルプロピルエーテル基、OPr−iso:イソプロピルエーテル基、OBu−n:ノルマルブトキシ基、OBu−sec:セカンダリーブトキシ基、OBu−iso:イソブトキシ基、OBu−t:ターシャリーブトキシ基、OPen−n:ノルマルペンチルエーテル基
本発明のビス(クロロカルボニル)化合物において、原料となるテトラカルボン酸ジアルキルエステルの入手が容易であり、高い収率で得られることから、下記式[3−a]、[4−a]又は[4−b]で表される化合物が特に好ましい。
さらには、式[3−a]の高純度品を用いたポリマーは、式[4−a]の高純度品又は式[3−a]と式[4−a]の混合物を用いたポリマーよりも高分子量かつ低分散のポリマーを得ることが可能であるため、高分子量かつ低分散のポリマーを得る観点からは式[3−a]で表される化合物が好ましい。
本発明のビス(クロロカルボニル)化合物[3]又は化合物[4]は、下記の反応式に示すように、式[1]又は式[2]で表されるテトラカルボン酸ジアルキルエステルを塩素化することで製造することができる。
上記反応式で、式[3]及び式[4]のR2の置換位置は、対応する式[1]及び式[2]と同じ置換位置を表す。即ち、ビス(クロロカルボニル)化合物[3−a]は、前記テトラカルボン酸ジアルキルエステル[1−a]を塩素化することで製造することができ、同様に化合物[4−a]は化合物[2−a]を塩素化することで、化合物[4−b]は化合物[2−b]を塩素化することでそれぞれ製造することができる。
上記反応に使用する塩素化剤としては、塩化チオニル、オギザリルクロライド、ホスゲン、塩素、オキシ塩化リン、五塩化リン、N−クロロコハク酸イミドなどが挙げられる。好ましくは、塩化チオニル、オギザリルクロライド、ホスゲン、塩素、オキシ塩化リン、又は五塩化リンが挙げられる。また、より好ましくは、塩化チオニル、オギザリルクロライド、又はホスゲンが挙げられる。塩素化剤はテトラカルボン酸ジアルキルエステルに対して、通常2〜100倍モル、好ましくは2〜30倍モル、より好ましくは2〜3倍モル使用される。
また、上記の反応は、触媒なしでも進行するが、触媒を添加することで塩素化剤の使用量を減らすことができ、かつ反応の進行を早くすることができる。触媒の具体例を挙げると、トリエチルアミン、ピリジン、キノリン、N、N−ジメチルアニリン、N、N−ジメチルホルムアミドなどの有機塩基類、並びに、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド又はカリウムt−ブトキシドなどの金属アルコキシド類が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、トリエチルアミン、ピリジン、又はN、N−ジメチルホルムアミドが挙げられる。また、より好ましくは、ピリジンが挙げられる。これら触媒はテトラカルボン酸ジアルキルエステルに対して通常0〜100倍モル、好ましくは0.01〜10倍モル使用される。
反応時間は、通常、0.05〜200時間、好ましくは0.5〜100時間、より好ましくは0.5〜5時間である。
また、上記のようにして得られたビス(クロロカルボニル)化合物は、例えば、以下のようにして単離精製することができる。
反応終了後、残った塩素化剤を留去し、その後溶媒を一定量加え、加熱撹拌させる。その後、冷却して析出した結晶をろ取し、洗浄し乾燥すると目的物の一次結晶が得られる。また、上記の加熱撹拌時、結晶を溶解させた後必要に応じてさらに熱時ろ過にて不溶物をろ過し、その後同様の操作をすることにより、より高純度の目的物が得られる。また、塩素化剤が使用溶媒よりも留去しやすい場合は、反応終了後残った塩素化剤および溶媒を一定量留去後、残液を加熱することで結晶を溶解あるいは加熱撹拌させた後、冷却して析出した結晶をろ取し、洗浄、乾燥すると目的物の一次結晶が得られる。上記の溶媒留去時、および加熱溶解時あるいは加熱撹拌時の温度としては例えば30〜100℃、好ましくは30〜50℃である。有機溶媒としては、例えば、トルエン、アセトニトリル、酢酸エチル、n−ヘキサン、n−ヘプタン又は酢酸エチル・n−ヘプタン混合液、酢酸エチル・n−ヘキサン混合液等が使用できる。好ましくはn−ヘキサン又はn−ヘプタン、酢酸エチル・n−ヘキサン混合液、又は酢酸エチル・n−ヘプタン混合液である。又、一次結晶の精製方法は洗浄方法や再結晶法によって更に純度を上げることもできる。再結晶方法としては、一次結晶にトルエン、アセトニトリル、酢酸エチル、n−ヘキサン、n−ヘプタン又は酢酸エチル・n−ヘプタン混合液、酢酸エチル・n−ヘキサン混合液等を加えて加温し、結晶を溶解させた後、氷冷・ろ過・乾燥することにより高純度品が得られる。
一方、原料となるテトラカルボン酸ジアルキルエステルを精製した高純度の単一の立体異性体[1]を用いて塩素化反応を行い、反応終了後上記と同様の操作をするとより高純度の化合物[3]を高収率で得ることができる。同様に高純度の単一の立体異性体[2]を用いることで、高純度の化合物[4]を高収率で得ることができる。
以上のようにして得た本発明のテトラカルボン酸ジアルキルエステルあるいはビス(クロロカルボニル)化合物は、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステルなどのモノマー原料として用いることができる。例えば、本発明のテトラカルボン酸ジアルキルエステルと種々のジアミン化合物とを縮合剤存在下、重縮合させることにより、又は本発明のビス(クロロカルボニル)化合物と種々のジアミン化合物とを反応させることによりポリアミドを合成することができる。また、それらポリアミドに必要に応じて触媒を添加し、加熱することでポリイミドを合成することもできる。一方、上記のジアミン化合物に替えて種々のジアルコール化合物を用いることでポリエステルを合成することができる。
以上のように、本発明のこれらの化合物は、材料分野などに有用なシクロブタン環上にアルキル基を有するポリイミド、ポリアミド又はポリエステルを提供することができる。
偏光させた放射線によるポリイミドの異方的な光分解反応を利用した光配向法により得られる液晶配向膜は、一般的に、ラビングによるものに比べて、高分子鎖の配向方向に対する異方性が小さくなる。これは、光分解反応によりポリイミドの分子量が低下し、かつ配向方向以外に低分子量成分が多く存在することに起因すると考えられる。
ポリイミド前駆体として、ポリアミド酸を使用した場合、焼成時にイミド化と同時にジアミンと酸二無水物への逆反応が進行し、結果として得られるポリイミドの分子量はもとのポリアミド酸よりも低下する。よって、焼成による分子量低下も異方性を低下させる要因となる。また、酸二無水物とジアミンから得られるポリアミド酸は下記式(A)、(B)、(C)、(D)に示すようにアミド結合の結合位置が異なる4種類の構造が存在し、且つ分子鎖中にはこれらの構造がランダムに存在する。ポリアミド酸の塗膜は、焼成することで脱水閉環し、ポリイミドとすることができるが、イミド化が完全に進行しなかった場合、上記4種類の構造がランダムに存在するポリアミド酸が残存するため、高分子鎖の秩序性は低下する。高分子鎖の秩序性が低下すると、立体反発によりポリマー同士の相互作用が低下し、高秩序のポリイミド膜を得ることができない。よって、ポリアミド酸のように、アミド基の結合位置がランダムであると、得られるポリイミド膜の配向方向に対する異方性は小さくなると考えられる。
本発明に用いるシクロブタン環の1,3位にクロロカルボニル基、2,4位にエステル基が結合した酸クロライドは下記式(101)で表される。
式(101)で表される酸クロライドにおいて、R1は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリーブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基などが挙げられる。一般に、ポリアミド酸エステルは、メチル基、エチル基、プロピル基と炭素数が増えるに従ってイミド化が進行する温度が高くなる。したがって、熱によるイミド化のしやすさの観点から、メチル基、又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
式(101)で表される酸クロライドにおいて、R2、R3、R4、R5は、水素原子および炭素数1〜30の1価炭化水素基を表し、同一でも異なってもよい。
なお、これらの一価炭化水素基の水素原子の一部または全部は、ハロゲン原子、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、オルガノオキシ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などで置換されていてもよい。
R2、R3、R4、R5、クロロカルボニル基およびエステル基の立体配置の具体例としては、下記式(106)〜(121)が挙げられる。
式(101)中のR2、R3、R4、R5のうち1つ以上が水素原子である場合の酸クロライドの具体的な構造としては、下記式(122)〜(129)が挙げられる。
加えて、R2、R3、R4、R5が同一の置換基である場合、酸クロライドの対称性が向上し、高秩序のポリアミド酸エステルが得られるため、下記式(102)が好ましい。
以上から、式(101)で表される酸クロライドの具体例としては、式(103)又は(104)が特に好ましい。
上記のエステル化反応後には、2,4位以外の位置がエステル基となっている異性体が多く含まれていることが多々あるので、本発明に用いる酸クロライドを得るためには、2,4位がエステル基であるジエステル体を精製することが望ましい。精製方法としては、再結晶やカラムクロマトグラフィーなどの種々の精製方法が挙げられ、操作の簡便性から、再結晶による精製が好ましい。再結晶溶媒としては、種々の有機溶剤を組み合わせることができる。
塩素化剤としては、塩化チオニル、オギザリルクロライド、ホスゲン、塩素、オキシ塩化リン、五塩化リン、N−クロロコハク酸イミドなどが挙げられる。
上記の塩素化反応は、触媒なしでも進行するが、触媒を添加することで塩素化剤の使用量を減らすことができ、かつ反応の進行を早くすることができる。触媒としては、トリエチルアミン、ピリジン、キノリン、N、N−ジメチルアニリン、N、N−ジメチルホルムアミドなどの有機塩基類、並びに、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシドまたはカリウムt−ブトキシドなどの金属アルコキシド類が挙げられる。これら触媒はエステル体に対して例えば0〜100倍モル、好ましくは0.01〜10倍モル使用される。
酸クロライドの純度が高いほど、得られるポリアミド酸エステルの分子量が向上するため、塩素化反応後、反応生成物を精製するのが好ましい。精製方法としては、再結晶が挙げられ、再結晶溶媒としては、酸クロライドと反応しない有機溶剤であれば、特に限定されない。
本発明の液晶配向剤に使用するポリアミド酸エステルは、上述した式(101)で表される酸クロライドを必須成分として含有するビス(クロロカルボニル)化合物とジアミンとの反応により得られるものである。
この反応に用いるビス(クロロカルボニル)化合物は、式(101)で表される以外の酸クロライド、例えば、シクロブタン環の1,4位にクロロカルボニル基、2,3位にアルキルエステル基が結合した酸クロライドが混在していても構わないが、この場合は式(101)で表される酸クロライドが60モル%以上であることが望ましい。得られるポリアミド酸エステルをより高秩序のものとし、配向処理方向に対する異方性をより高めるという観点からは、式(101)で表される酸クロライドが80モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95〜100モル%である。
ビス(クロロカルボニル)化合物と反応させるジアミンとしては下記式(130)で表されるジアミンが挙げられる。
以下に式(130)中のXの構造の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されない。
ポリアミド酸エステルは、ジアミンとビス(クロロカルボニル)化合物とを塩基と有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、多すぎると除去が難しく、少なすぎると分子量が小さくなるため、ビス(クロロカルボニル)化合物に対して、2〜4倍モルであることが好ましい。
ポリアミド酸エステルの合成に用いる溶媒は、モノマーおよびポリマーの溶解性からN−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、高すぎるとポリマーの析出が起こりやすく、低すぎると分子量が上がらないので、1〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。また、ビス(クロロカルボニル)化合物の加水分解を防ぐため、ポリアミド酸エステルの合成に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることが良く、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが良い。
以上のようにして得られるポリアミド酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミド酸エステルの粉末を得ることができる。
前記貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
重合反応に用いるジアミン成分とビス(クロロカルボニル)化合物の比率は分子量制御の観点からモル比で1.0/0.5〜1.0であることが好ましい。このモル比が1:1に近いほど得られる重合体の分子量は大きくなる。重合体の分子量は、液晶配向剤の粘度や、液晶配向膜の物理的な強度に影響を与え、重合体の分子量が大きすぎると液晶配向剤の塗布作業性や塗膜均一性が悪くなる場合があり、分子量が小さすぎると液晶配向剤から得られる塗膜の強度が不十分となる場合がある。従って、本発明の液晶配向剤に用いる重合体の分子量は、重量平均分子量で2,000〜500,000が好ましく、より好ましくは5,000〜300,000であり、さらに好ましくは、10,000〜100,000である。
本発明の液晶配向剤は、上記のように得られたポリマーが有機溶媒に均一に溶解している液晶配向剤形成用の塗布液である。
本発明の液晶配向剤に使用される溶媒は、液晶配向剤に含有される重合体を溶解させるものであれば特に限定されない。あえて、その具体例を挙げるならば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。更に、単独では重合体を溶解させない溶媒であっても、重合体が析出しない範囲であれば、混合してもよい。
本発明の液晶配向剤に、基板に対する塗膜の密着性を向上させるために、シランカップリング剤などの添加剤を加えても良い。前記シランカップリング剤は、公知のものであれば、その種類を選ばない。
前記カップリング剤を配合するにあたって、添加後に加熱しポリマーと反応させることで、密着性が向上し、また、液晶配向剤の特性への影響を抑えることができる。添加後、20℃〜80℃で、より好ましくは40℃〜60℃で、1〜24時間反応させると良い。
シランカップリング剤の添加量は、多すぎると未反応のものが液晶配向性に悪影響を及ぼすことがあり、少なすぎると密着性への効果が現れないため、ポリマー粉末に対して0.01〜5.0重量%が好ましく、0.1〜1.0重量%がより好ましい。
本発明の液晶配向剤に、さらに架橋剤、イミド化促進剤などの各種添加剤などを使用しても構わないことは言うまでもない。また、本発明の液晶配向剤に含有される重合体は2種類以上であってもよく、少なくとも1種類が本発明のポリアミド酸エステルであれば、その他の重合体についてその種類は限定されない。
本発明の液晶配向剤は、以下の方法で製造することができる。
ポリアミド酸エステルの粉末を、前記溶媒に溶解させて、ポリアミド酸エステル溶液とする。この時、ポリマー濃度は10〜30%が好ましく、10〜15%が特に好ましい。また、ポリアミド酸エステルの粉末を溶解する際に加熱してもよい。加熱温度は、20℃〜150℃が好ましく、20℃〜80℃が特に好ましい。
得られたポリアミド酸エステル溶液は、前記した溶媒で所定のポリマー濃度になるように希釈することで、本発明の液晶配向剤とすることができる。
シランカップリング剤や架橋剤を添加する場合は、ポリマーの析出を防ぐため、ポリマーの溶解性が低い溶媒を加える前に添加するのが好ましい。イミド化促進剤を添加する場合は、加熱することでイミド化が進行する可能性があるため、希釈工程の後に加えるのが好ましい。
本発明の液晶配向剤は、ろ過した後、基板に塗布し、乾燥、焼成して塗膜とすることができ、この塗膜面を配向処理することにより液晶配向膜として使用されるものである。
液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などが挙げられる。
液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができる。例えば、液晶配向剤に含有される有機溶媒を十分に除去するために50℃〜120℃で1分〜10分乾燥させ、その後150℃〜300℃で5分〜120分焼成される。
焼成後の塗膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5〜300nm、好ましくは10〜200nmである。
この塗膜を配向処理する方法としては、ラビング法、光配向処理法などが挙げられるが、本発明の液晶配向剤は光配向処理法で使用する場合に特に有用である。
光配向処理法の具体例としては、前記塗膜表面に、一定方向に偏向した放射線を照射し、場合によってはさらに150〜250℃の温度で加熱処理を行い、液晶配向能を付与する方法が挙げられる。放射線としては、100nm〜800nmの波長を有する紫外線および可視光線を用いることができる。このうち、100nm〜400nmの波長を有する紫外線が好ましく、200nm〜400nmの波長を有するものが特に好ましい。また、液晶配向性を改善するために、塗膜基板を50〜250℃で加熱しつつ、放射線を照射してもよい。前記放射線の照射量は、1〜10,000mJ/cm2の範囲にあることが好ましく、100〜5,000mJ/cm2の範囲にあることが特に好ましい。
以上の様にして作製した液晶配向膜は、液晶分子を一定の方向に安定して配向させることができる。
エバポレーターにて、この反応液から溶媒を留去した後、酢酸エチル1301gを加えて80℃まで加熱し、30分還流させた。その後、10分間に2〜3℃の速度で内温が25℃になるまで冷却し、そのまま25℃で30分撹拌した。析出した白色結晶をろ過によって取り出し、この結晶を酢酸エチル141gにて2回洗浄した後、減圧乾燥することで、白色結晶を103.97g得た。
この結晶は、1H NMR分析、及びX線結晶構造解析の結果により、化合物(1−1)であることを確認した(HPLC相対面積97.5%)(収率36.8%)。
1H NMR (DMSO-d6, δppm);12.82 (s, 2H), 3.60 (s, 6H), 3.39 (s, 2H), 1.40 (s, 6H).
一方、上記の白色結晶を取り出した後のろ液をエバポレーターにて溶媒留去したところ、172.24gの白色結晶が得られた。この白色結晶156.01gにアセトニトリル385.09gを加え、65℃まで加熱すると、結晶は完全に溶解した。その後、1時間かけて30℃まで冷却し、その後2時間かけて内温が25℃になるまで冷却した。そのまま25℃で30分撹拌させた後、析出した白色結晶をろ過により取りだし、この結晶をアセトニトリル30.7gにて洗浄した。これを減圧乾燥することで、52.74gの白色結晶を得た。
この結晶は、1H NMR分析、及びX線結晶構造解析の結果により、化合物(2−1)であることを確認した(HPLC相対面積99.2%)(収率20.6%)。
1H NMR (DMSO-d6, δppm);12.82 (s, 2H), 3.60 (s, 6H), 3.48 (s, 1H), 3.30(s, 1H), 1.45 (s, 3H), 1.38 (s, 3H).
なお、上記で得られた化合物(1−1)、化合物(2−1)等を標品に用いて、反応終了時のHPLCの測定データを解析したところ、反応生成物全体に対する化合物(1−1)の割合は、HPLC相対面積で50%、化合物(2−1)は47%であった。また、反応液から化合物(1−1)の結晶を取り出した後のろ液では、化合物(1−1)の割合がHPLC相対面積で21%、化合物(2−1)は74%であった。
装置:DIP2030(MacScience社製)
X線:Mokα(40kV,200mA)
測定温度:298.0K
測定用試料は、得られた化合物をアセトニトリルに溶解させ、室温でゆっくり濃縮して単結晶を作成した。
結晶データー
分子式 C12H16O8
分子量 288.252
色相、形状 colorless, block
晶系 Monoclinic
空間群 P21/c
格子定数 a=8.3460(10)Å,b=8.256(2)Å,c=10.630(2)Å
α=90.00°,β=109.738(10)°,γ=90.00°
V=689.4(3)Å3
Z値=2
R(gt)=0.111
wR(gt)=0.548
結晶データー
分子式 C12H16O8
分子量 288.252
色相、形状 colorless, cube
晶系 triclinic
空間群 P−1
格子定数 a=7.422(2)Å,b=8.0390(10)Å,c=12.232(2)Å
α=106.055(10)°,β=99.018(10)°,γ=103.537(10)°
V=662.4(2)Å3
Z値=2
R(gt)=0.06
wR(gt)=0.07
窒素気流下中、200mLの四つ口フラスコに、1,3−DM−CBDAを10g(0.045mol)と、メタノールを50g(1.56mol、1,3−DM−CBDAに対して5wt倍)仕込み、14〜20℃で69時間撹拌したところ均一な反応溶液が得られた。この反応液をHPLCにて分析したところ、化合物(1−1)のHPLC相対面積は56%であり、化合物(2−1)のHPLC相対面積は44%であった。
エバポレーターにて、この反応液から溶媒を留去した後、酢酸エチル60gを加えて80℃まで加熱し、30分還流させた。その後、10分間に2〜3℃の速度で内温が25℃になるまで冷却し、そのまま25℃で30分撹拌した。析出した白色結晶をろ過によって取り出し、酢酸エチル6.43gにて2回洗浄した後、減圧乾燥することで、白色結晶を5.50g得た。
この結晶は、1H NMR分析、及びX線結晶構造解析の結果により、化合物(1−1)であることを確認した(HPLC相対面積99.0%)(収率45.7%)。
窒素気流下中、200mLの四つ口フラスコに、1,3−DM−CBDAを10g(0.045mol)と、メタノールを50g(1.56mol、1,3−DM−CBDAに対して5wt倍)仕込み、40℃で7時間30分撹拌したところ均一な反応溶液が得られた。この反応液をHPLCにて分析したところ、化合物(1−1)のHPLC相対面積は48%であり、化合物(2−1)のHPLC相対面積は45%であった。
窒素気流下中、3Lの四つ口フラスコに、1,3−DM−CBDAを240g(1.07mol)と、酢酸エチル720gとを仕込み、ピリジン8.47g(0.107mol)を加え、マグネチックスターラー攪拌下25℃にて懸濁させた。この懸濁液に、メタノール600g(18.73mol、1,3−DM−CBDAに対して2.5wt倍)を内温が25℃以下になるように1時間かけて滴下し、滴下終了後も20分攪拌したところ均一な反応溶液が得られた。この反応液をHPLCにて分析したところ、化合物(1−1)のHPLC相対面積は77%であり、化合物(2−1)のHPLC相対面積は22%であった。
この反応液をエバポレーターにて内容量が561.65gになるまで水浴40℃、170〜140Torrにて溶媒留去した。続いて酢酸エチル1450gを加え撹拌した後、エバポレーターにて内容量が597.51gになるまで水浴40℃、170〜140Torrにて溶媒留去した。その後、再度酢酸エチル1450gを加え撹拌した後、エバポレーターにて内容量が1852gになるまで水浴40℃、170〜140Torrにて溶媒留去した。また、この時留去した溶媒をガスクロマトグラフィーで分析したところ、メタノールの面積%は0.3%であった。続いて残ったスラリー溶液を80℃まで加熱し、30分還流させた後10分間に2〜3℃の速度で内温が25℃になるまで冷却した。そのまま25℃で30分撹拌させた後、析出した白色結晶をろ過により取り出し、この結晶を酢酸エチル192.88gにて2回洗浄した。これを減圧乾燥することで白色結晶を223.77g得た。この結晶は、1H NMR分析結果により、化合物(1−1)であることを確認した(HPLC相対面積99.0%)(収率72.5%)。
窒素気流下中、100mLの四つ口フラスコに、1,3−DM−CBDAを5g(0.022mol)と、メタノールを25g(0.78mol、1,3−DM−CBDAに対して5wt倍)と、ピリジンを0.176g(0.0022mol)とを仕込み、マグネチックスターラー攪拌下0℃にて8時間撹拌したところ、均一な反応溶液が得られた。この反応液をHPLCにて分析したところ、化合物(1−1)のHPLC相対面積は79%であり、化合物(2−1)のHPLC相対面積は20%であった。
窒素気流下中、100mLの四つ口フラスコに、1,3−DM−CBDAを5g(0.022mol)と、メタノールを25g(0.78mol、1,3−DM−CBDAに対して5wt倍)と、ピリジンを0.176g(0.0022mol)とを仕込み、マグネチックスターラー攪拌下40℃にて20分間撹拌したところ、均一な反応溶液が得られた。この反応液をHPLCにて分析したところ、化合物(1−1)のHPLC相対面積は74%であり、化合物(2−1)のHPLC相対面積は25%であった。
一連の操作は実施例4と同様に、添加したピリジンの当量数、温度をそれぞれ以下の表に示す値にて実施した。また、ここで得られた反応液のHPLCによる分析結果、及び実施例1〜6で得られた反応液の結果を合わせて表に示す。
カラム:Atlantis cd18 (Waters)、 5um、4.6×250mm
オーブン:40℃
溶離液:アセトニトリル/0.5%リン酸水溶液=22/78、検出波長:209nm
流速:1.0mL/分、サンプル注入量:10μL
一連の操作は実施例4と同様にし、ピリジンに替えて種々の添加物を加えて反応を行った。この際の添加物の種類、添加物の当量数、温度、反応時間、HPLCによる反応液の分析結果を以下の表に示す。なお、表中に記した添加物は次に示すとおりである。
Add−1:カリウムメトキシド
Add−2:炭酸カリウム
Add−3:トリエチルアミン
Add−4:t−ブトキシカリウム
Add−5:キノリン
Add−6:8−キノリノール
Add−7:1,10−フェナンスロリン
Add−8:バソフェナンスロリン
Add−9:バソクプロイン
Add−10:2,2’−ビピリジル
Add−11:2−フェニルピリジン
Add−12:2,6−ジフェニルアミノピリジン
Add−13:2−ジメチルアミノピリジン
Add−14:4−ジメチルアミノピリジン
Add−15:2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン
Add−16:5−ブロモ−2−クロロピリジン
Add−17:1,8−ジアザビシクロ[5、4、0]−7−ウンデン
Add−18:p−トルエンスルホン酸
Add−19:リン酸
Add−20:蟻酸
Add−21:トリフェニルホスフィン
Add−22:トリメチルボレート
Add−23:リンタングステン酸( H3[PW12O40]・30H2O )
Add−24:リンモリブデン酸( H3[PMo12O40]・30H2O )
Add−25:水
この反応液をエバポレーターにて溶媒留去した後、酢酸エチル70.55gを加え、80℃まで加熱撹拌し、30分還流させた後、10分間に2〜3℃の速度で内温が25℃になるまで冷却した。そのまま25℃で30分撹拌させた後、析出した白色結晶をろ過により取り出し、この結晶を酢酸エチル7.05gにて2回洗浄した。これを減圧乾燥することで白色結晶を9.15gを得た。
この結晶は、1H NMR分析結果により、化合物(1−4)であることを確認した(HPLC相対面積99.6%)(収率64.8%)。
1H NMR (DMSO-d6, δppm) : 12.82 (s, 2H), 4.09-4.04 (q, 4H), 3.36 (s, 2H), 1.41 (s, 6H), 1.16-1.41 (t, 6H).
なお、反応溶液のHPLC測定データを、標品を用いて解析した結果、化合物(1−4)と(2−4)のHPLC相対面積は、それぞれ83%、17%であった。
この反応液をエバポレーターにて溶媒留去した後(13.05g)、アセトニトリル52.20g、2−プロパノール6.53gを加え、71℃まで加熱溶解させ、内温27℃まで1時間放冷した。これを、水冷にて1時間撹拌させた後、析出した白色結晶をろ過により取り出し、この結晶をアセトニトリル13.05gにて洗浄した。これを減圧乾燥することで白色結晶を6.08g得た。
この結晶は、1H NMR分析結果により、(1−10)であることを確認した(HPLC相対面積88.8%)(収率46.6%)。
1H NMR (DMSO-d6, δppm) : 12.76 (s, 2H), 4.92-4.85 (m, 2H), 3.31 (s, 2H), 1.41 (s, 6H), 1.19-1.17 (q, 6H).
なお、反応溶液のHPLC測定データを、標品を用いて解析した結果、化合物(1−10)と(2−10)のHPLC相対面積は、それぞれ88%、12%であった。
窒素気流下中、200mLの四つ口フラスコに、1,3−DM−CBDA 10g(0.045mol)、アセトニトリル50g(1.22mol、1,3−DM−CBDAに対して5wt倍)を仕込み、ピリジン0.353g(0.0045mol)を加え、マグネチックスターラー攪拌下50℃に加熱撹拌し、2−プロパノール50g(0.416mol、1,3−DM−CBDAに対して2.5wt倍)を1時間かけて滴下した。滴下終了後7日間撹拌した。
反応液をHPLCにて分析した結果、化合物(1−10)と(2−10)のHPLC相対面積%は、それぞれ83%、17%であった。
続いて窒素気流下中、3Lの四つ口フラスコに、上記で得られた白色結晶226.09g、n−ヘプタン452.18gを仕込んだ後、60℃に加熱撹拌して結晶を溶解させた。その後、25℃まで10分間に1℃の速度で冷却撹拌し、結晶を析出させた。そのまま25℃で1時間撹拌させた後、析出した白色結晶をろ過により取り出し、この結晶をn−ヘキサン113.04gにて洗浄した後、減圧乾燥することで白色結晶を203.91g得た。この結晶は、1H NMR分析結果により、化合物(3−1)すなわち、ジメチル−1,3−ビス(クロロカルボニル)−1,3−ジメチルシクロブタン−2,4−ジカルボキシレート(以下、1,3−DM−CBDE−C1という。)であるであることを確認した(HPLC相対面積99.5%)(収率77.2%)。
1H NMR (CDCl3, δppm) : 3.78 (s, 6H), 3.72 (s, 2H), 1.69 (s, 6H).
一連の操作は実施例47と同様にし、触媒の種類、触媒の当量数、温度をそれぞれ下記表に示す値にて実施した。また、反応終了時間は、反応液が均一溶液且つ、ガスの発生が完全に停止した時点とした。
1H NMR (CDCl3, δppm) : 4.15 (s, 1H), 3.84(s, 3H), 3.80 (s, 3H), 3.44 (s, 1H), 1.74 (s, 3H), 1.59 (s, 3H).
この反応液をエバポレーターにて内容量が51.18gになるまで水浴40℃、170〜140Torrにて溶媒留去した。続いて酢酸エチル127.94gを加え撹拌した後、エバポレーターにて内容量が51.18gになるまで水浴40℃、170〜140Torrにて溶媒留去した。その後、再度酢酸エチル127.94gを加え撹拌した後、エバポレーターにて内容量が117.71gになるまで水浴40℃、170〜140Torrにて溶媒留去した。また、この時留去した溶媒をガスクロマトグラフィーにて測定した結果、メタノールの面積は0.3%であった。続いて残ったスラリー溶液を80℃まで加熱し、30分還流させた後、10分間に2〜3℃の速度で内温が25℃になるまで冷却した。そのまま25℃で30分撹拌させた後、析出した白色結晶をろ過によって取り出し、この結晶を酢酸エチル12.8gにて2回洗浄した。これを減圧乾燥することで、白色結晶を16.96g得た。この結晶は、1H NMR分析結果により、化合物(2−2)であることを確認した(HPLC相対面積95.5%)(収率66.7%)。
1H NMR (DMSO-d6, δppm) : 13.16 (s, 2H), 3.56 (s, 6H), 3.21 (s, 2H), 1.30 (s, 6H).
なお、反応溶液のHPLC測定データを、標品を用いて解析した結果、化合物(2−2)のHPLC相対面積は96%であった。
1H NMR (CDCl3, δppm) : 3.72 (s, 6H), 3.42 (s, 2H), 1.82 (s, 6H).
この反応液をエバポレーターにて内容量が796.08gになるまで水浴40℃にて溶媒留去した。続いてアセトニトリル995.10gを加え撹拌した後、エバポレーターにて内容量が796.08gになるまで水浴40℃にて溶媒留去した。さらに、再度アセトニトリル995.10gを加え撹拌した後、エバポレーターにて内容量が796.08gになるまで水浴40℃にて溶媒留去した。また、この時留去した溶媒をガスクロマトグラフィーにて測定した結果、メタノールの面積は0.3%であった。続いてアセトニトリル398.04gを加え、80℃まで加熱し30分還流させた後、10分間に2〜3℃の速度で内温が25℃になるまで冷却した。そのまま25℃で30分撹拌させた後、析出した白色結晶をろ過によって取り出し、この結晶をアセトニトリル199.02gにて2回洗浄した。これを減圧乾燥することで白色結晶を157.54g得た。この結晶は、1H NMR分析結果により、CB−2,4−DMEであることを確認した(HPLC相対面積96.4%)(収率39.6%)。
1H NMR (DMSO-d6, δppm) : 12.81 (s, 2H), 3.61 (s, 6H), 3.59-3.54 (m, 2H).
窒素気流下中、50mLの二口フラスコに、パラフェニレンジアミン0.6005g(5.5527mmol)、N−メチルピロリドン10mL、γ−ブチロラクトン10mL、ピリジン1.06mLを仕込み、25℃にてマグネチックスターラーにて攪拌し、パラフェニレンジアミンを完全溶解させた。その後、反応液を氷冷し、マグネチックスターラーにて攪拌しながら化合物(3−1)をロートを使用して30秒かけて添加した。その後添加に使用したロートをN−メチルピロリドン3mLで洗浄し、窒素置換を行い、20分間0℃にて撹拌した。20分後、温度を20℃にあげ、その後3時間20℃にて撹拌した。この重合溶液を1時間後、2時間後サンプリングして粘度を測定したところ1時間後(1300mPa・s)、2時間後(1500mPa・s)であった。
窒素気流下中、50mLの二口フラスコに、パラフェニレンジアミン0.6005g(5.5527mmol)、N−メチルピロリドン10mL、γ−ブチロラクトン10mL、ピリジン1.06mLを仕込み、25℃にてマグネチックスターラーにて攪拌し、パラフェニレンジアミンを完全溶解させた。その後、反応液を氷冷し、マグネチックスターラーにて攪拌しながら化合物(4−1)をロートを使用して30秒かけて添加した。その後添加に使用したロートをN−メチルピロリドン3mLで洗浄し、窒素置換を行い、20分間0℃にて撹拌した。20分後、温度を20℃にあげ、その後3時間20℃にて撹拌した。この重合溶液を1時間後、2時間後サンプリングして粘度を測定したところ1時間後(28mPa・s)、2時間後(28mPa・s)であった。
以下に、下記の合成例、比較合成例、実施例、及び比較例で使用した化合物の略号と構造を示す。
1,3−DM−CBDA:1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
1,3−DM−CBDE:2,4−ビス(メトキシカルボニル)−1,3−ジメチルシクロブタン−1,3−ジカルボン酸
p−PDA:p−フェニレンジアミン
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
γ−BL:γ−ブチロラクトン
BCS:ブチルセロソルブ
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
DEF:N,N−ジエチルホルムアミド
装置:フーリエ変換型超伝導核磁気共鳴装置(FT−NMR)INOVA−400(Varian社製):400MHz
標準物質:テトラメチルシラン(TMS)
装置:NICOLET5700(Thermo ELECTRON社製)
Smart Orbitアクセサリー
測定法:ATR法
装置:DIP2030(MacScience社製)
X線:Mokα(40kV,200mA)
測定温度:298.0K
合成例において、ポリアミド酸エステルおよびポリアミド酸溶液の粘度はE型粘度計TVE−22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE−1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
また、ポリアミド酸エステルおよびポリアミド酸の分子量はGPC(常温ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド換算値として数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)を算出した。
GPC装置:Shodex社製(GPC−101)
カラム:Shodex社製(KD803、KD805の直列)
カラム温度:50℃
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・H2O)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(重量平均分子量(Mw) 約900,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp) 約12,000、4,000、1,000)。測定は、ピークが重なるのを避けるため、900,000、100,000、12,000、1,000の4種類を混合したサンプル、および150,000、30,000、4,000の3種類を混合したサンプルの2サンプルを別々に測定。
配向膜の異方性の測定は以下のようにして行った。
モリテックス社製の液晶配向膜評価システム「レイ・スキャン ラボH」(LYS−LH30S−1A)を用いて測定を行った。膜厚100nmのポリイミド膜に偏光板を介して紫外線を照射し、得られた配向膜の配向方向に対する異方性の大きさを測定した。
液晶セルの電圧保持率の測定は以下のようにして行った。
4Vの電圧を60μs間印加し、16.67ms後の電圧を測定することで、初期値からの変動を電圧保持率として計算した。測定の際、液晶セルの温度を23℃、60℃とし、それぞれの温度で測定を行った。
液晶セルのイオン密度の測定は以下のようにして行った。
東陽テクニカ社製の6254型液晶物性評価装置を用いて測定を行った。10V、0.01Hzの三角波を印加し、得られた波形のイオン密度に相当する面積を三角形近似法により算出し、イオン密度とした。測定の際、液晶セルの温度を23℃、60℃とし、それぞれの温度で測定を行った。
<ジメチル 1,3−ビス(クロロカルボニル)−1,3−ジメチルシクロブタン−2,4−ジカルボキシレート(1,3−DM−CBDE−Cl)の合成>
続いて窒素気流下中、3L の四つ口フラスコに、上記で得られた白色結晶226.09g、n−ヘプタン452.18gを仕込んだ後、60℃に加熱撹拌して結晶を溶解させた。その後、25℃まで10分間に1℃の速度で冷却撹拌し、結晶を析出させた。そのまま25℃で1時間撹拌させた後、析出した白色結晶をろ過により取り出し、この結晶をn−ヘキサン113.04gにて洗浄した後、減圧乾燥することで白色結晶を203.91g得た(HPLC相対面積99.5%)。
この結晶は、1H NMR等の分析結果により、目的化合物である1,3−DM−CBDE−Cl、即ち、シクロブタン環の1,3位にクロロカルボニル基、2,4位にメチルエステル基が結合した酸クロライドであることを確認した。
1H NMR (CDCl3,δppm) : 3.78(s,6H), 3.72 (s,2H), 1.69(s,6H).
撹拌装置付きの50mL四つ口フラスコを窒素雰囲気とし、p−PDAを0.600 g(5.55mmol)入れ、NMP 27.5g、塩基としてピリジン 1.03g(13.05mmol) を加え、撹拌して溶解させた。次にこのジアミン溶液を撹拌しながら合成例101の1,3DM−CBDE−Clを1.77g(5.44mmol)添加し、水冷下2時間反応させた。得られたポリアミド酸エステルの溶液を、197gの水に撹拌しながら投入し、析出した白色沈殿をろ取し、続いて、197gの水で1回、197gのメタノールで1回、49gのメタノールで3回洗浄し、乾燥することで白色のポリアミド酸エステル樹脂(A−1)の粉末1.72gを得た。収率は、87.4%であった。また、このポリアミド酸エステルの分子量はMn=24,868、Mw=51,727であった。
(合成例103)ポリアミド酸エステル樹脂(A−2)の製造
撹拌装置付きの300mL四つ口フラスコを窒素雰囲気とし、p−PDAを2.820 g(26.08mmol)、4,4’−ジアミノトランを1,357g(6.519mmol)入れ、NMP226g、塩基としてピリジン 5.82g(73.54mmol) を加え、撹拌して溶解させた。次にこのジアミン溶液を撹拌しながら合成例1の1,3DM−CBDE−Clを9.963g(30.64mmol)添加し、水冷下4時間反応させた。得られたポリアミド酸エステルの溶液を、1190gの水に撹拌しながら投入し、析出した白色沈殿をろ取し、続いて、1190gの水で1回、1190gのエタノールで1回、298gのエタノールで3回洗浄し、乾燥することで白色のポリアミド酸エステル樹脂(A−2)の粉末10.64gを得た。収率は、89.4%であった。また、このポリアミド酸エステルの分子量はMn=14,153、Mw=35,239であった。
(合成例104)ポリアミド酸エステル樹脂(A−3)の製造
撹拌装置付きの50mL四つ口フラスコを窒素雰囲気とし、4,4’−エチレンジアニリンを0.998g(4.70mmol)入れ、NMP19.7g、塩基としてピリジン 0.783g(9.89mmol) を加え、撹拌して溶解させた。次にこのジアミン溶液を撹拌しながら合成例101の1,3DM−CBDE−Clを1.532g(4.71mmol)添加し、水冷下2時間反応させた。得られたポリアミド酸エステルの溶液を、197gの水に撹拌しながら投入し、析出した白色沈殿をろ取し、続いて、219gの水で1回、219gのメタノールで1回、55gのメタノールで3回洗浄し、乾燥することで白色のポリアミド酸エステル樹脂(A−3)の粉末1.70gを得た。収率は、77.7%であった。また、このポリアミド酸エステルの分子量はMn=19,210、Mw=35,076であった。
(比較合成例101)ポリアミド酸(B−1)の溶液の調製
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの300mL四つ口フラスコに1,3DM−CBDAを19.05g(85.98mol)取り、γ−BL63gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。この酸二無水物溶液を撹拌しながらNMP100gを加えた後、p−PDA8.87(82.02mmol)を添加し、更に固形分濃度が10質量%になるようにNMPを加え、室温で24時間撹拌してポリアミド酸(B−1)の溶液を得た。このポリアミド酸溶液の温度25℃における粘度は356mPa・sであった。また、このポリアミド酸の分子量はMn=21,137、Mw=43,145であった。
(比較合成例102)ポリアミド酸(B−2)の溶液の調製
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコにp−PDAを1.730g(16.0mmol)、4,4’−ジアミノトランを0.835g(4.01g)取り、γ−BL21.23g、NMP24.81gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら1,3DM−CBDAを4.46g(19.90mol)を添加し、更に固形分濃度が10質量%になるようにNMPを加え、室温で24時間撹拌してポリアミド酸(B−2)の溶液を得た。このポリアミド酸溶液の温度25℃における粘度は158.8mPa・sであった。また、このポリアミド酸の分子量はMn=15,213、Mw=31,700であった。
(比較合成例103)ポリアミド酸(B−3)の溶液の調製
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコに4,4’−エチレンジアニリンを4.314g(20.32mmol)取り、γ−BL26.90g、NMP30.73gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら1,3DM−CBDAを4.45g(19.85mol)を添加し、更に固形分濃度が10質量%になるようにNMPを加え、室温で24時間撹拌してポリアミド酸(B−3)の溶液を得た。このポリアミド酸溶液の温度25℃における粘度は168.7mPa・sであった。また、このポリアミド酸の分子量はMn=19,322、Mw=45,601であった。
合成例102で得られたポリアミド酸エステル樹脂(A−1)の粉末1.28gを撹拌子の入った50mL三角フラスコに取り、DMF12.71g を加え、室温で24時間撹拌し溶解させてポリアミド酸エステル樹脂溶液とした。この溶液にγ−BL4.36g、BCS4.20gを加え、マグネチックスターラーで30分間撹拌して本発明の液晶配向剤(A−I)を得た。
<実施例102>液晶配向剤(A−II)の調製
合成例103で得られたポリアミド酸エステル樹脂(A−2)の粉末1.66gを撹拌子の入った50mL三角フラスコに取り、DEF14.96gを加え、室温で24時間撹拌し溶解させてポリアミド酸エステル樹脂(A−2)の溶液を得た。この溶液6.61gを撹拌子の入った別の50mL三角フラスコに分取し、γ−BL2.20g、BCS2.20gを加え、マグネチックスターラーで30分間撹拌して本発明の液晶配向剤(A−II)を得た。
<実施例103>液晶配向剤(A−III)の調製
合成例104で得られたポリアミド酸エステル樹脂(A−3)の粉末1.15gを撹拌子の入った50mL三角フラスコに取り、DEF10.42gを加え、室温で24時間撹拌し溶解させてポリアミド酸エステル樹脂(A−3)の溶液を得た。この溶液5.66gを撹拌子の入った別の50mL三角フラスコに分取し、γ−BL1.90g、BCS1.92gを加え、マグネチックスターラーで30分間撹拌して本発明の液晶配向剤(A−III)を得た。
<実施例104>液晶配向剤(A−IV)の調製
実施例102で得られたポリアミド酸エステル樹脂(A−2)の溶液4.12gを撹拌子の入った50mL三角フラスコに取り、γ−BL1.38g、BCS1.40g、イミド化促進剤としてN−α, N−ω1, N−ω2−トリ−t−ブトキシカルボニル−L−アルギニン(以下、Boc−Argと略す)を0.1084g(アミド酸エステル基1モルに対して0.1モル当量)加え、室温で30分撹拌し、Boc−Argを完全に溶解させて、本発明の液晶配向剤 (A−IV)を得た。
<実施例105>液晶配向剤(A−V)の調製
実施例103で得られたポリアミド酸エステル樹脂(A−3)の溶液3.16gを撹拌子の入った50mL三角フラスコに取り、γ−BL1.03g、BCS1.03g、イミド化促進剤としてBoc−Argを0.0650g(アミド酸エステル基1モルに対して0.1モル当量)加え、室温で30分撹拌し、Boc−Argを完全に溶解させて、本発明の液晶配向剤 (A−V)を得た。
<比較例101>液晶配向剤(B−I)の調製
比較合成例101で得られたポリアミド酸(B−1)の溶液14.10gを撹拌子の入った50mL三角フラスコに分取し、NMP13.57g、BCS6.93gを加え、マグネチックスターラーで30分間撹拌して液晶配向剤(B−I)を得た。
<比較例102>液晶配向剤(B−II)の調製
比較合成例102で得られたポリアミド酸(B−2)の溶液6.34gを撹拌子の入った50mL三角フラスコに分取し、NMP2.34g、BCS2.17gを加え、マグネチックスターラーで30分間撹拌して液晶配向剤(B−II)を得た。
<比較例103>液晶配向剤(B−III)の調製
比較合成例103で得られたポリアミド酸(B−3)の溶液6.47gを撹拌子の入った50mL三角フラスコに分取し、NMP1.85g、BCS2.10gを加え、マグネチックスターラーで30分間撹拌して液晶配向剤(B−III)を得た。
実施例101で得られた液晶配向剤(A−I)を1.0μmのフィルターで濾過した後、ガラス基板上にスピンコートし、温度80℃のホットプレート上で5分間の乾燥後、230℃で30分(焼成条件1)、又は250℃で30分(焼成条件2)焼成し、膜厚100nmのポリイミド膜を得た。この塗膜面に偏光板を介して254nmの紫外線を1.0J/cm2照射し、液晶配向膜を得た。得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさを測定した。また、各焼成条件でのイミド化率をIRにて測定した。異方性の大きさ及びイミド化率の測定結果は後述する表に示す。
<実施例107>
実施例102で得られた液晶配向剤(A−II)を用いた以外は、実施例106と同様にして液晶配向膜を作製し、配向方向に対する異方性の大きさ及びイミド化率を測定した。異方性の大きさ及びイミド化率の測定結果は後述する表に示す。
<実施例108>
実施例103で得られた液晶配向剤(A−III)を用いた以外は、実施例106と同様にして液晶配向膜を作製し、配向方向に対する異方性の大きさ及びイミド化率を測定した。異方性の大きさ及びイミド化率の測定結果は後述する表に示す。
<実施例109>
実施例104で得られた液晶配向剤(A−IV)を1.0μmのフィルターで濾過した後、ガラス基板上にスピンコートし、温度80℃のホットプレート上で5分間の乾燥後、230℃で30分(焼成条件1)焼成し、膜厚100nmのポリイミド膜を得た。この塗膜面に偏光板を介して254nmの紫外線を1.0J/cm2照射し、液晶配向膜を得た。得られた液晶配向膜の配向方向に対する異方性の大きさを測定した。また、各焼成条件でのイミド化率をIRにて測定した。異方性の大きさ及びイミド化率の測定結果は後述する表に示す。
<実施例110>
実施例105で得られた液晶配向剤(A−V)を用いた以外は、実施例109と同様にして液晶配向膜を作製し、配向方向に対する異方性の大きさ及びイミド化率を測定した。異方性の大きさ及びイミド化率の測定結果は後述する表に示す。
比較例101で得られた液晶配向剤(B−I)を用いた以外は、実施例106と同様にして液晶配向膜を作製し、配向方向に対する異方性の大きさ及びイミド化率を測定した。異方性の大きさ及びイミド化率の測定結果は後述する表に示す。
<比較例105>
比較例102で得られた液晶配向剤(B−II)を用いた以外は、実施例106と同様にして液晶配向膜を作製し、配向方向に対する異方性の大きさ及びイミド化率を測定した。異方性の大きさ及びイミド化率の測定結果は後述する表に示す。
<比較例106>
比較例103で得られた液晶配向剤(B−III)を用いた以外は、実施例106と同様にして液晶配向膜を作製し、配向方向に対する異方性の大きさ及びイミド化率を測定した。異方性の大きさ及びイミド化率の測定結果は後述する表に示す。
実施例106〜110及び比較例104〜106における配向方向に対する異方性測定結果を下記の表8に示す。
実施例101で得られた液晶配向剤(A−I)を1.0μmのフィルターで濾過した後、透明電極付きガラス基板上にスピンコートし、温度80℃のホットプレート上で5分間の乾燥、温度230℃で20分間の焼成を経て膜厚100nmのポリイミド膜を得た。この塗膜面に偏光板を介して254nmの紫外線を1.0J/cm2照射し、液晶配向膜付き基板を得た。このような液晶配向膜付き基板を2枚用意し、一方の基板の液晶配向膜面に4μmのスペーサーを散布した後、2枚の基板の配向方向が平行から85度捩れるように組み合わせ、液晶注入口を残して周囲をシールし、セルギャップが4μmの空セルを作製した。この空セルに液晶(MLC−2041、メルク社製)を常温で真空注入し、注入口を封止してツイストネマチック液晶セルとした。
この液晶セルの配向状態を偏光顕微鏡にて観察したところ、欠陥のない均一な配向をしていることが確認された。この液晶セルについて、電圧保持率を測定し、その後イオン密度の測定を行った結果、電圧保持率は温度23℃で98.5%、温度60℃で97.2%であり、イオン密度は23℃で79pC/cm2、温度60℃で584pC/cm2であった。
比較例101で得られた液晶配向剤(B−I)を用いた以外は、実施例111と同様にしてツイストネマチック液晶セルを作製した。
この液晶セルの配向状態を偏光顕微鏡にて観察したところ、欠陥のない均一な配向をしていることが確認された。このセルについて、電圧保持率を測定し、その後イオン密度の測定を行った結果、電圧保持率は温度23℃で98.4%、温度60℃で96.4%であり、イオン密度は23℃で247pC/cm2、温度60℃で1160pC/cm2であった。
本発明の液晶配向剤は、光配向処理で液晶配向膜を作製する用途に好適に利用できる。また、本発明の方法によって作製された液晶配向膜は、各種の液晶素子を作製するのに有用である。
なお、2009年2月12日に出願された日本特許出願2009−030285号及び2009年2月12日に出願された日本特許出願2009−030292号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
Claims (19)
- テトラカルボン酸二無水物と炭素数1〜5のアルコールとを、酸性化合物又は塩基性化合物の存在下で反応させる、請求項5〜7のいずれかに記載の製造方法。
- テトラカルボン酸二無水物と炭素数1〜5のアルコールとを、塩基性化合物の存在下で反応させる、請求項5〜7のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項1に記載の式[1]又は式[2]で表されるテトラカルボン酸ジアルキルエステルと塩素化剤とを反応させる、請求項3に記載の式[3]又は式[4]で表されるビス(クロロカルボニル)化合物の製造方法。
- 請求項2に記載の式[1−a]で表されるテトラカルボン酸ジアルキルエステルと塩素化剤とを反応させる、請求項4に記載の式[3−a]で表されるビス(クロロカルボニル)化合物の製造方法。
- 請求項2に記載の式[2−a]で表されるテトラカルボン酸ジアルキルエステルと塩素化剤とを反応させる、請求項4に記載の式[4−a]で表されるビス(クロロカルボニル)化合物の製造方法。
- 請求項2に記載の式[2−b]で表されるテトラカルボン酸ジアルキルエステルと塩素化剤とを反応させる、請求項4記載の式[4−b]で表されるビス(クロロカルボニル)化合物の製造方法。
- テトラカルボン酸ジアルキルエステルと塩素化剤とを、塩基性化合物存在下で反応させる請求項10〜13のいずれかに記載の製造方法。
- テトラカルボン酸ジアルキルエステルと塩素化剤とを、ピリジン存在下で反応させる請求項10〜13のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項16または17に記載の液晶配向剤を塗布、焼成して得られる被膜に、偏光させた放射線を照射して得られる液晶配向膜。
- 請求項16または17に記載の液晶配向剤を塗布、焼成して得られる被膜に、偏光させた放射線を照射する液晶配向膜の製造方法。
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