JP5290278B2 - 水圧転写用多層ベースフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、水溶性ポリビニルアルコールを含有する層を有する水圧転写用多層ベースフィルムおよび水圧転写フィルムに関する。
凹凸のある立体面や曲面を有する構造体に文字や絵柄を印刷する方法として、水溶性ポリビニルアルコールフィルム(以下、ポリビニルアルコールフィルムをPVAフィルムと略記することがあり、その原料であるポリビニルアルコールをPVAと略記することがある)の片面を印刷した転写フィルムを、印刷面を上にして水面に浮かべ、その上方から構造体を押しつけることにより印刷面を構造体表面に水圧転写する方法がある。しかしながら、このようなPVA単層の水圧転写フィルムでは、水面に浮かべた際、フィルムが吸水して膨張し、比較的膨張しにくい印刷面を巻くようにカールするため、水圧転写フィルムの端部が使用できなくなり、その結果、収率が低下するという問題がある。
PVAフィルムに、例えばスチレン−メタクリル酸メチル共重合体のような溶解度パラメータが7〜11の樹脂からなる微粒子とバインダーとしてのPVAとを含有する層を配してなる水圧転写用フィルム(ベースフィルム)や、当該水圧転写用フィルム(ベースフィルム)の上に印刷を施した水圧転写シートはすでに知られている(特許文献1)。しかしながら、この水圧転写シートを転写に用いると、転写がされる成形体(被転写体)への転写性は良好であるが、後述するように水面カール防止効果は充分ではない。
特開2004−18776号公報 特開2003−261694号公報
本発明は、上記した従来技術の問題を解消するものであり、印刷適性が良好な水圧転写用多層ベースフィルム、および水面に浮かべたときにカールが発生しにくい水圧転写フィルムを提供することを目的とする。
上記目的は、下記のX1層〜X3層より選ばれるX層と、水溶性PVA(PY)を含有するY層とを有する水圧転写用多層ベースフィルムにより達成される。
X1層:水溶性PVA(PX1)を含有する層。但し、当該水溶性PVA(PX1)のけん化度および重合度をそれぞれAモル%およびBとし、前記Y層における水溶性PVA(PY)のけん化度および重合度をそれぞれCモル%およびDとするとき、下記式(1)〜(6)を満足する。
(1)2≦|A−C|≦20
(2)0≦|B−D|≦2000
(3)80≦A≦99
(4)500≦B≦2500
(5)75≦C≦99
(6)300≦D≦2500
X2層:水溶性PVA(PX2)と、平均粒子径2〜20μmの無機物粒子を含有する層。
X3層:多糖類およびアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性樹脂(X3)を含有する層。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムは、前記X層がX1層であって、当該X1層および前記Y層の膨潤度をそれぞれE(%)およびF(%)とするとき、下記式(7)〜(9)を満足することが好ましい。
(7)0.1≦|E−F|≦29.5
(8)0.5≦E≦20
(9)0.6≦F≦30
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムは、前記X層がX2層であって、前記水溶性ポリビニルアルコール(PX2)のけん化度および重合度をそれぞれAモル%およびBとし、前記Y層における水溶性ポリビニルアルコール(PY)のけん化度および重合度をそれぞれCモル%およびDとするとき、下記式(1)〜(6)を満足することが好ましい。
(1)2≦|A−C|≦20
(2)0≦|B−D|≦2000
(3)80≦A≦99
(4)500≦B≦2500
(5)75≦C≦99
(6)300≦D≦2500
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムは、前記X層がX3層であって、前記水溶性樹脂(X3)がセルロースであることが好ましい。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムは、前記X層がX1層またはX3層であって、前記X層がさらに平均粒子径2〜20μmの無機物粒子を含有することが好ましい。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムは、前記X層が水圧転写用多層ベースフィルムの少なくとも一方の表面に配置されており、かつ表面に配置された該X層のフィルム表面粗さ(Ra)が0.1〜2μmであることが好ましい。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムは、前記水溶性ポリビニルアルコール(PX1)、水溶性ポリビニルアルコール(PX2)、および水溶性ポリビニルアルコール(PY)のうちの少なくとも1つが2種以上の異種ポリビニルアルコールのブレンド物であることが好ましい。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムは、前記X層および/または前記Y層が架橋剤を0.01〜3質量%含有することが好ましい。このとき、架橋剤がホウ素化合物であることが好ましい。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムは、前記X層および/または前記Y層が界面活性剤を0.1〜10質量%含有することが好ましい。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムは、前記Y層が水圧転写用多層ベースフィルムの少なくとも一方の表面に配置されていることが好ましい。
また上記の目的は、上記の水圧転写用多層ベースフィルムの一方の表面に印刷を施してなる水圧転写フィルムにより達成される。
本発明の水圧転写フィルムは、前記Y層面に印刷を施してなることが好ましい。
本発明の水圧転写フィルムは、長さ35cm×幅25cmのフィルムを使用して測定した幅方向の最大カール長さが0.2〜8cmであることが好ましい。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムは、印刷適性が良好である。また、本発明の水圧転写フィルムは、水面に浮かべたときカールが発生しにくいので、フィルムの収率が高く、さらに印刷面が変形しにくい。このため、本発明の水圧転写フィルムは、特に曲面構造体への転写に使用される曲面印刷用水圧転写フィルムとして優れた性能を発揮する。
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムは、下記のX1層〜X3層より選ばれるX層と、水溶性PVA(PY)を含有するY層とを有する。
X1層:水溶性PVA(PX1)を含有する層。但し、当該水溶性PVA(PX1)のけん化度および重合度をそれぞれAモル%およびBとし、前記Y層における水溶性PVA(PY)のけん化度および重合度をそれぞれCモル%およびDとするとき、下記式(1)〜(6)を満足する。
(1)2≦|A−C|≦20
(2)0≦|B−D|≦2000
(3)80≦A≦99
(4)500≦B≦2500
(5)75≦C≦99
(6)300≦D≦2500
X2層:水溶性PVA(PX2)と、平均粒子径2〜20μmの無機物粒子を含有する層。
X3層:多糖類およびアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性樹脂(X3)を含有する層。
本発明においてX層およびY層に使用されるPVA(PX1、PX2)およびPVA(PY)は、いずれも水溶性であることが重要である。ここで水溶性とは、20℃の水中における完溶時間が800秒以下、好適には500秒以下、より好適には300秒以下であるか、または30℃の水中における完溶時間が600秒以下、好適には500秒以下、より好適には300秒以下であることを意味する。上記完溶時間の下限については特に制限はないが、好適には1秒以上、より好適には2秒以上である。PVAの完溶時間は、具体的には後述する実施例に記載された方法により求めることができる。PVAの水溶性は、けん化度、重合度、コモノマー等による変性度等を適宜選択することにより、調整することができる。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムがX1層を有する場合において、上記PVA(PX1)および(PY)のけん化度をそれぞれAモル%およびCモル%とし、上記PVA(PX1)および(PY)の重合度をそれぞれBおよびDとするとき、下記式(1)〜(6)を満足することが非常に重要である。
(1)2≦|A−C|≦20
(2)0≦|B−D|≦2000
(3)80≦A≦99
(4)500≦B≦2500
(5)75≦C≦99
(6)300≦D≦2500
このように、X層とY層との多層構造とし、両層に互いに異なる水溶性PVAを使用し、さらに上記式(1)〜(6)を満足することにより、印刷適性が良好な水圧転写用多層ベースフィルムが得られ、また水面に浮かべたときにカールが発生しにくい水圧転写フィルムが得られる。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムがX1層を有する場合において、上記PVA(PX1)のけん化度Aは、80〜99モル%であることが必要であり、好適には85〜98モル%である。また重合度Bは、500〜2500であることが必要であり、好適には700〜2400である。一方、上記PVA(PY)のけん化度Cは、75〜99モル%であることが必要であり、好適には80〜97モル%である。また重合度Dは、300〜2500であることが必要であり、好適には400〜2400である。PVA(PX)および(PY)のけん化度が所定の数値を超えると、PVAの水への溶解度が低下して、転写時にフィルムの伸展性が低下し、まとわりつき性が悪化する。一方、けん化度が所定の数値を下回ると、膨潤、溶解が短時間のうちに進行し、柄曲がりが発生する、プロセス上調整時間がなくなる等の問題がある。また、PVA(PX1)および(PY)の重合度が所定の数値を超えると、転写時の伸展性が低下し、まとわりつき性が悪化する。一方、重合度が所定の数値を下回ると、柄曲がりが発生しやすくなり、また、フィルム強度が低下して印刷時に切断しやすくなる。
また、本発明の水圧転写用多層ベースフィルムがX1層を有する場合において、上記PVA(PX1)および(PY)のけん化度AおよびCは、以下の関係式(1)を満足することが必要であり、関係式(1’)を満足することが好ましい。

(1) 2≦|A−C|≦20
(1’) 3≦|A−C|≦15
|A−C|が2未満である場合、水面でのカールが大きくなる。また、|A−C|が20を超える場合、層間の溶解性の差が大きくなり、転写時にフィルムの伸びの差に起因する細かいシワが発生し、柄にシワの痕跡が残りやすくなる。さらに、後述するように、Y層が印刷を施す面として適していることから、Y層に使用されるPVA(PY)のけん化度Cが、X層に使用されるPVA(PX1)のけん化度Aよりも小さいことがより好ましい。
さらに、本発明の水圧転写用多層ベースフィルムがX1層を有する場合において、前記のPVA(PX1)および(PY)の重合度BおよびDは、以下の関係式(2)を満足することが必要であり、関係式(2’)を満足することが好ましい。

(2) 0≦|B−D|≦2000
(2’) 0≦|B−D|≦1500
|B−D|が2000を超える場合、層間の溶解性の差が大きくなり、転写時にフィルムの伸びの差に起因する細かいシワが発生し、柄にシワの痕跡が残りやすくなる。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムがX2層を有する場合において、上記PVA(PX2)および(PY)のけん化度をそれぞれAモル%およびCモル%とし、上記PVA(PX2)および(PY)の重合度をそれぞれBおよびDとするとき、下記式(1)〜(6)を満足することが好ましい。
(1)2≦|A−C|≦20
(2)0≦|B−D|≦2000
(3)80≦A≦99
(4)500≦B≦2500
(5)75≦C≦99
(6)300≦D≦2500
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムがX2層を有する場合において、X2層に使用されるPVA(PX2)のけん化度Aは、好適には80〜99モル%、より好適には85〜97モル%である。また重合度Bは、好適には500〜2500、より好適には600〜2200である。一方、本発明の水圧転写用多層ベースフィルムがX2層を有する場合においてY層に使用されるPVA(PY)のけん化度Cは、好適には75〜99モル%、より好適には80〜97モル%である。また重合度Dは、好適には300〜2500、より好適には500〜2200である。
また、本発明の水圧転写用多層ベースフィルムがX2層を有する場合において、前記のPVA(PX2)および(PY)のけん化度AおよびCは、以下の関係式(1)を満足することが好ましく、関係式(1’)を満足することがより好ましい。

(1) 2≦|A−C|≦20
(1’) 3≦|A−C|≦15
後述するように、Y層は印刷を施す面として適していることから、Y層に使用されるPVA(PY)のけん化度Cが、X2層に使用されるPVA(PX2)のけん化度Aよりも小さいことがより好ましい。
さらに、本発明の水圧転写用多層ベースフィルムがX2層を有する場合において、前記のPVA(PX2)および(PY)の重合度BおよびDは、以下の関係式(2)を満足することが好ましく、関係式(2’)を満足することがより好ましい。

(2) 0≦|B−D|≦2000
(2’) 0≦|B−D|≦1500
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムがX3層を有する場合において、Y層に使用されるPVA(PY)のけん化度は、好適には75〜99モル%、より好適には80〜97モル%である。またPVA(PY)の重合度は、好適には300〜2500、より好適には400〜2400である。
本明細書においてPVA(PX1、PX2およびPY)のけん化度は、けん化によりビニルアルコール単位に変換され得る単位の中で、実際にビニルアルコール単位にけん化されている単位の割合を示し、JIS K6726に準じて測定される。また、重合度(Po)は、JIS K6726に準じて測定される値であり、PVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から次式により求められる。

Po = ([η]×10/8.29)(1/0.62)
本発明においては、前記のPVA(PX1、PX2)およびPVA(PY)のうちの少なくとも1つが、2種以上の異種PVAのブレンド物であることも好適な態様の1つである。具体例には次のような態様が挙げられる。
<1>本発明の水圧転写用多層ベースフィルムがX1層またはX2層を有する場合において、PVA(PX1またはPX2)は1種のPVAを含み、PVA(PY)は2種以上の異種PVAのブレンド物である。
<2>本発明の水圧転写用多層ベースフィルムがX1層またはX2層を有する場合において、PVA(PX1またはPX2)は2種以上の異種PVAのブレンド物であり、PVA(PY)は1種のPVAを含む。
<3>本発明の水圧転写用多層ベースフィルムがX1層またはX2層を有する場合において、PVA(PX1またはPX2)およびPVA(PY)のいずれも、2種以上の異種PVAのブレンド物である。
<4>本発明の水圧転写用多層ベースフィルムがX3層を有する場合において、PVA(PY)が2種以上の異種PVAのブレンド物である。
PVA(PX1、PX2)および/またはPVA(PY)として、2種以上のPVAをブレンドして用いる場合、けん化度90モル%以上、重合度1500以上のPVAを、それらが含まれる層におけるPVAの総質量の5〜30質量%混合することは、フィルムの強度および転写性の向上の観点から好ましい。
PVA(PX1、PX2およびPY)は、ビニルエステル系モノマーを重合し、得られるビニルエステル系重合体をけん化することにより製造することができる。ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等を挙げることができ、これらのなかでも酢酸ビニルが好ましい。
ビニルエステル系モノマーを重合させる際に、必要に応じて、共重合可能な他のモノマーを、発明の効果を損なわない範囲内で共重合させることもできる。このようなビニルエステル系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数2〜30のオレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステル;イタコン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル;ジヒドロキシブテン誘導体;ビニルエチルカーボネート;3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、3,4−ジエトキシ−1−ブテン等が挙げられる。
また、上記した以外に好適な共重合可能なモノマーとしては、下記式(I)で示される単量体、N−ビニル−2−ピロリドン類、N−ビニル−2−カプロラクタム類等のN−ビニルアミド類が挙げられる。

CH=CH−N(R)−C(=O)−R (I)

(式中、Rは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
上記式(I)において、Rで表される炭素数1〜3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等を挙げることができ、また、Rで表される炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基等を挙げることができる。上記式(I)で示される単量体としては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド等を例示することができる。また、N−ビニル−2−ピロリドン類としては、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−プロピル−2−ピロリドン、N−ビニル−5,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−ピロリドン等を例示することができる。
さらに好適な共重合可能なモノマーとしては、スルホン酸基含有単量体が挙げられる。スルホン酸基含有単量体は、分子内にスルホン酸基またはその塩を含有し、ビニルエステルと共重合可能なものであれば使用できる。具体例としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそれらのアルカリ金属塩;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアクリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸およびそれらのアルカリ金属塩が挙げられる。これらの中でも、ビニルエステルと共重合させる際の反応性やけん化時の安定性等の点から、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩が好ましい。ここでアルカリ金属としては、Na、K、Li等が挙げられる。
これらの共重合可能なモノマーの共重合比率は、好適には15モル%以下であり、より好適には10モル%以下である。下限値については好適には0.01モル%以上であり、より好適には0.05モル%以上である。
上記したX2層は、前記PVA(PX2)と、平均粒子径2〜20μmの無機物粒子とを含有することが重要である。従来のPVA単層の水圧転写フィルムでは、高温下や多湿下でのフィルムロールの保管時や転写作業の際に、吸湿や軟化によりフィルム同士が密着し、またフィルムのロール端部が水分の付着等により溶解、膠着し、巻き出し時に切断するという問題があった。また、上記した特許文献1の水圧転写シートにおいては、水面カール防止効果が充分ではないことに加えて密着防止、切断防止効果も充分ではなかった。さらに、20℃、乾燥雰囲気条件下での貯蔵弾性率と20℃、80%RH条件下での貯蔵弾性率の比が10以下であるPVA系フィルムを水圧転写用フィルムに使用することも提案されており(特許文献2)、上記の条件を満足するために、けん化度の異なる2種のPVAをブレンドし、さらに、無機粉体を配合することも開示されているが、このようなPVAフィルムを水圧転写用フィルムに用いても、密着防止、切断防止、水面カール防止効果を全て満足することは期待できなかった。これに対して、水溶性PVA(PX2)および平均粒子径2〜20μmの無機物粒子を含有するX2層とY層とを有する構成とすることにより、後述の実施例からも明らかなように、印刷適性が良好な水圧転写用多層ベースフィルムを得ることができ、また水面に浮かべたときにカールの発生が抑制されるとともに、フィルム同士の密着がなく、フィルムのロール端部の膠着による切断がなく、さらに剥離性にも優れる水圧転写フィルムを得ることができる。
前記無機物粒子を構成する無機物としては、他の物性に悪影響を及ぼすものでなければ特に制限されず、例えば、二酸化ケイ素、ケイ藻土、ケイ素バルーン、ガラスビーズ、ガラス繊維等のケイ素化合物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の無機硫酸塩;亜硫酸カルシウム等の無機亜硫酸塩;硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の無機硝酸塩;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等の無機塩化物;リン酸ナトリウム、クロム酸カリウム、タルク、クレー、カオリン、マイカ、ベントナイト、モンモリロナイト、石膏、ドーソナイト、ドロマイト、酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。これらの中でも、ケイ素化合物、タルク、クレーが好ましく、ケイ素化合物がより好ましい。
X2層において、前記無機物粒子の平均粒子径は、2〜20μmであることが必要であり、3〜15μmであることが好ましく、4.5〜12μmであることがさらに好ましい。無機物粒子の平均粒子径が2μm未満であると、得られるフィルムが密着しやすくなる。一方、無機物粒子の平均粒子径が20μmを超えると、ロール状に巻き取られて該X層が反対側の表面に接触する際に、無機物粒子の凸部がその表面に転移されたり、印刷抜けを発生するおそれがある。
なお、本明細書において無機物粒子の平均粒子径は、それが含まれている層の断面100μmの範囲を電子顕微鏡で観察し、観察される、粒子径が0.2μm以上の全粒子について個々の粒子の粒子径を求め、さらに観察点を変えて同じ作業を繰り返し、合計10点の観察点において観察される、粒子径が0.2μm以上の全粒子の粒子径を求め、得られた観察点10点分の個々の粒子の粒子径を単純平均して算出することができる。ここで、個々の粒子の粒子径とは、観察される最長径と最短径を0.1μm精度で求め、両者を単純平均して求めたものである。
前記無機物粒子は、X2層に0.1〜8質量%含有することが好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。無機物粒子の含有量が0.1質量%未満であると、無機物粒子の添加効果が得られないおそれがある。一方、無機物粒子の含有量が8質量%を超えると、フィルムが硬くなって切断しやすくなったり、ロール状に巻き取られて該X2層が反対側の表面に接触する際に、無機物粒子の凸部がその表面に転移されたり、印刷抜けを発生したりするおそれがある。ここで、無機物粒子の含有量は下記式により算出される。

無機物粒子の含有量(質量%)=(X2層中の無機物粒子の質量/X2層の質量)×100
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムを構成するX層がX1層またはX3層である場合においても、当該X層は、上記した平均粒子径2〜20μmの無機物粒子を含有することが、フィルムの密着を防止し、かつ加工時の滑りやすさを向上させることができるので好ましい。このような態様は水圧転写用多層ベースフィルムにおいてX層が表面に配置されており、かつ印刷面ではない場合、特に好ましい。
前記無機物粒子は、X1層またはX3層に0.5〜8質量%含有することが好ましい。無機物粒子の含有量が0.5質量%未満であると、無機物粒子の添加効果が得られないおそれがある。一方、無機物粒子の含有量が8質量%を超えると、フィルムが硬くなって切断しやすくなったり、ロール状に巻き取られて該X1層またはX3層が反対側の表面に接触する際に、無機物粒子の凸部がその表面に転移されたり、印刷抜けを発生したりするおそれがある。ここで、無機物粒子の含有量は下記式により算出される。

無機物粒子の含有量(質量%)=(X1層またはX3層中の無機物粒子の質量/X1層またはX3層の質量)×100
また、本発明においては、Y層にも同様の無機物粒子を配合することにより、フィルムの硬度、強度が改善され、印刷適性および転写時のフィルムのまとわりつき性が向上されることが期待できる。このような態様はY層が表面に配置されており、かつ印刷面でない場合、特に好ましい。
上記したX3層に使用される水溶性樹脂(X3)は、多糖類およびアクリル系樹脂からなる群より選ばれることが重要である。多糖類としては、デンプン、セルロース等が挙げられる。デンプンとしては、とうもろこしデンプン、ばれいしょデンプン等の天然デンプン;エーテル化デンプン、エステル化デンプン、架橋デンプン、グラフト化デンプン、培焼デキストリン、酵素変性デキストリン、アルファ化デンプン、酸化デンプン等の変性デンプンが好ましく、セルロースとしては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、カチオン化セルロース、およびそのナトリウム塩等の金属塩が好ましい。また、アクリル系樹脂としては、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、およびそのナトリウム塩等の金属塩が挙げられる。これらの樹脂のうち、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、多糖類、特にセルロースが、本発明の目的達成のためにはより好ましい。水溶性樹脂(X3)の水溶液の粘度は、層の形成に適していれば特に制限はない。具体的には、1質量%の水溶液をB型粘度計で20℃で測定したときの粘度が1〜10000Pa・sであるものが好ましい。
上記したX3層に使用される水溶性樹脂(X3)は、20℃の水中における完溶時間が2000秒以下、好適には500秒以下であることが重要である。上記完溶時間の下限については特に制限はないが、好適には1秒以上、より好適には2秒以上である。水溶性樹脂(X3)の完溶時間は、具体的には後述する実施例に記載された方法により求めることができる。水溶性樹脂(X3)の水溶性は、原料として用いられる樹脂の変性種および変性度、重合度等を適宜選択することにより、調整することができる。
近年、被転写体の大型化や、コスト削減のための小型部品の多頭化が進んでいる中で、水面に浮かべてからの転写が可能な時間範囲の拡大が大きな課題となっている。従来のPVA単層の水圧転写フィルムでは、転写可能な時間範囲が限られているため、PVAの分子構造の制御、組成の変更、溶解性の異なる樹脂の混合等による改良が検討されてきたが、他の物性を損なわない範囲で転写可能な時間範囲を拡大するには限界があった。また、上記した特許文献1の水圧転写シートでも、カールの防止効果が充分には期待できないことに加えて、転写可能な時間範囲が充分広いとは言えなかった。これに対して、上記水溶性樹脂(X3)を含有するX3層とY層とを有する構成とすることにより、後述の実施例からも明らかなように、印刷適性が良好な水圧転写用多層ベースフィルムを得ることができ、またフィルム同士の密着がなく、フィルムのロール端部の膠着による切断がなく、しかも水面に浮かべてからの転写可能な時間範囲が広く、かつカールが発生しにくい水圧転写フィルムを得ることができる。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムは、上記したように、X1層〜X3層より選ばれるX層と、水溶性PVA(PY)を含有するY層とを有する。具体的な層構成としては、X層/Y層の2層構成、X層/Y層/X層の3層構成、Y層/X層/Y層の3層構成、またはそれ以上の多層構成が挙げられる。また、本発明の水圧転写用多層ベースフィルムは、X層およびY層のみからなっていてもよいが、X層およびY層以外の他の水溶性の層を本発明の目的が阻害されない範囲で設けてもよい。本発明の水圧転写用多層ベースフィルムにおいて、後述するように、Y層が印刷を施す面として適していることから、Y層が該水圧転写用多層ベースフィルムの少なくとも一方の表面に配置されていることが好ましく、生産性の点からX層/Y層の2層構成がより好ましい。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムにおいて、上記X層は水圧転写用多層ベースフィルムの少なくとも一方の表面に配置されていることも好ましい。この場合において、表面に配置された上記X層の、JIS B0601により測定されたフィルム表面粗さ(Ra)は0.1〜2μmであることが好ましく、0.4〜2μmであることがより好ましい。X層のフィルム表面粗さ(Ra)が0.1μm未満であると、得られるフィルムが密着しやすくなるおそれがある。一方、X層のフィルム表面粗さ(Ra)が2μmを超えると、ロール状に巻き取られて該X層が反対側の表面に接触する際に、無機物粒子の凸部がその表面に転移されたり、印刷抜けを発生するおそれがある。X層のフィルム表面粗さは、例えば、無機物粒子を使用する場合におけるそれの平均粒子径、添加量、および後述するフィルムの製膜条件、延伸条件、加熱・熱処理条件などにより、適宜調整することができる。
本発明において、X1層は水溶性PVA(PX1)のみからなっていてもよいが、本発明の効果を阻害しない限り、PVA(PX1)以外の他の成分を含んでいてもよい。X1層における水溶性PVA(PX1)の含有率は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であってもよい。
また本発明において、X2層は水溶性PVA(PX2)および上記の無機物粒子のみからなっていてもよいが、本発明の効果を阻害しない限り、PVA(PX2)および上記の無機物微粒子以外の他の成分を含んでいてもよい。X2層における水溶性PVA(PX2)および上記の無機物微粒子の合計の含有率は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であってもよい。
また本発明において、X3層は上記の水溶性樹脂(X3)のみからなっていてもよいが、本発明の効果を阻害しない限り、上記の水溶性樹脂(X3)以外の他の成分を含んでいてもよい。X3層における上記の水溶性樹脂(X3)の含有率は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であってもよい。
さらに本発明において、Y層は水溶性PVA(PY)のみからなっていてもよいが、本発明の効果を阻害しない限り、PVA(PY)以外の他の成分を含んでいてもよい。Y層における水溶性PVA(PY)の含有率は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であってもよい。
本発明において、X層および/またはY層が架橋剤を含有することが、転写性を向上させることができる点、さらには印刷適性および適性転写時間の拡大の点から好ましい。後述する印刷においては、この架橋剤を含有する層に印刷を施すことが好ましい。架橋剤の含有量は、0.01〜3質量%であることが好ましく、0.03〜2.5質量%がより好ましく、0.03〜2質量%がより好ましい。ここで、架橋剤の含有量とは、下記式により計算される値である。

架橋剤含有量(質量%) = (層中の架橋剤の質量/層の質量)×100
架橋剤としては、PVA(PX1、PX2またはPY)、または水溶性樹脂(X3)と架橋反応を起こすものであれば特に制限はなく、例えばホウ酸、ホウ酸カルシウム、ホウ酸コバルト、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウムカリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸カドミウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸銅、ホウ酸鉛、ホウ酸ニッケル、ホウ酸バリウム、ホウ酸ビスマス、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸マンガン、ホウ酸リチウム、ホウ砂、カーナイト、インヨーアイト、コトウ石、スイアン石、ザイベリ石等のホウ素化合物;クエン酸三カリウム等が挙げられる。これらの中でも、ホウ素化合物が好ましく、ホウ酸およびホウ砂がより好ましい。
また、本発明において、X層および/またはY層が可塑剤を含有することも、フィルムの強度や切断防止の点から好ましい。可塑剤の含有量は、1〜30質量%が好ましく、2〜25質量%がより好ましい。ここで、可塑剤の含有量とは、下記式により計算される値である。

可塑剤含有量(質量%) = (層中の可塑剤の質量/層の質量)×100
可塑剤としては、多価アルコールが好ましく、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、エチレングリコール、グリセリンおよびジグリセリンが好ましい。
X層および/またはY層が界面活性剤を含有することも、製膜性、転写適性の点から好適である。界面活性剤の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましく、0.2質量%以上であることが特に好ましい。また界面活性剤の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。ここで、界面活性剤の含有量とは、下記式により計算される値である。

界面活性剤含有量(質量%) = (層中の界面活性剤の質量/層の質量)×100
界面活性剤の種類としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型;オクチルサルフェート等の硫酸エステル型;ドデシルベンゼンスルホネート、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸型;ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、オクチルリン酸エステルカリウム塩、ラウリルリン酸エステルカリウム塩、ステアリルリン酸エステルカリウム塩、オクチルエーテルリン酸エステルカリウム塩、ドデシルリン酸エステルナトリウム塩、テトラデシルリン酸エステルナトリウム塩、ジオクチルリン酸エステルナトリウム塩、トリオクチルリン酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルリン酸エステルカリウム塩、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルリン酸エステルアミン塩などが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型などが挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミン塩酸塩等のアミン類;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩類;ラウリルピリジニウムクロライド等のピリジニウム塩などが挙げられる。
さらに、両性界面活性剤としては、例えば、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン等が挙げられる。
界面活性剤は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、前記X層および/またはY層には、生デンプン、各種変性デンプンに代表される難溶性粒子を配合することもできる。これらを配合することにより、フィルムの硬度、強度、印刷適性および転写時のフィルムのまとわりつき性を向上させることができる。
上記した無機物微粒子、架橋剤、可塑剤、界面活性剤等は、X層および/またはY層を製造する際に、または、PVAおよび/または水溶性樹脂(X3)を含むコーティング液を製造する際に、予め配合して使用することができる。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムがX1層を有する場合において、当該X1層および前記Y層の膨潤度をそれぞれE(%)およびF(%)とするとき、下記式(7)〜(9)を満足することが好ましい。
(7)0.1≦|E−F|≦29.5
(8)0.5≦E≦20
(9)0.6≦F≦30
前記X1層の膨潤度Eは、0.5〜20%であることが好ましく、0.7〜15%がより好ましい。また、前記Y層の膨潤度Fは、0.6〜30%であることが好ましく、0.8〜20%がより好ましい。X1層およびY層の膨潤度が所定の数値を超えると、膨張によって印刷柄に歪みが発生するおそれがある。一方、膨潤度が所定の数値を下回ると、伸展性が不足し、まとわりつき性が悪化するおそれがある。
また、上記EおよびFは、以下の関係式(7)を満足することが好ましく、関係式(7’)を満足することがより好ましい。

(7) 0.1≦|E−F|≦29.5
(7’) 0.2≦|E−F|≦20

|E−F|が0.1未満である場合、単層フィルム同様に水面でのカールが激しくなるおそれがある。なお、EおよびFが上記の関係式(8)および(9)を満足する場合は、|E−F|は常に29.5以下となるが、層間の膨潤性の差を抑えて水面上でのカールの発生を小さくするために、|E−F|は20以下とすることが好ましい。X1層およびY層の膨潤度は、後述する実施例に記載された方法により求められ、転写槽の水温、転写前のフィルムの水分率等を選択することにより調整することができる。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムの製造方法に特に制限はなく、予め製膜されたX層およびY層をラミネートする方法、製膜されたX層に、Y層に使用されるPVA(PY)を含むコーティング液をコートする方法、製膜されたY層に、X1層に使用されるPVA(PX1)を含むコーティング液、X2層に使用されるPVA(PX2)および無機物粒子を含むコーティング液、またはX3層に使用される水溶性樹脂(X3)を含むコーティング液をコートする方法、X層とY層を共押し出しする方法等が挙げられる。これらの中でも、製膜されたY層に、X1層に使用されるPVA(PX1)を含むコーティング液、X2層に使用されるPVA(PX2)および無機物粒子を含むコーティング液、またはX3層に使用される水溶性樹脂(X3)を含むコーティング液をコートする方法が好ましい。
X層またはY層を予め製膜する方法としては、例えば、PVA(PX1、PX2、またはPY)または水溶性樹脂(X3)を含み、必要に応じてさらに無機物粒子を含む溶液を使用して、流延製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中へ吐出する方法)、ゲル製膜法(PVA水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去する方法)、およびこれらの組み合わせによる方法;可塑剤および必要に応じて無機物微粒子や後述する溶剤を含むPVA(PX1、PX2、またはPY)または水溶性樹脂(X3)を溶融して行う溶融押出製膜法などが挙げられる。これらの中でも、流延製膜法、溶液コーティング法および溶融押出製膜法が好ましい。
予め製膜されたX層に、Y層に使用されるPVA(PY)を含むコーティング液をコートする方法、または、予め製膜されたY層に、X1層に使用されるPVA(PX1)を含むコーティング液、もしくはX2層に使用されるPVA(PX2)および無機物粒子を含むコーティング液をコートする方法としては、PVAを濃度が1〜40質量%(より好ましくは2〜20質量%)になるように溶剤に溶解し、必要に応じて無機物粒子や他の添加剤を配合し、これを通常のコーティング方法、例えば、グラビアロールコーティング、マイヤーバーコーティング、リバースロールコーティング、エアーナイフコーティング、スプレーコーティング等によってコートする方法が挙げられる。コーティングする工程、条件は特に制限されないが、最初の層(コーティング液によりコートされる層)の製膜中にロールまたはベルト上でコーティングを行い、その後、熱風乾燥、熱ロール乾燥、遠赤外線乾燥等の公知の手段で乾燥または固化する方法、一旦最初の層を製膜し、後工程にてコーティングを行い、その後、乾燥または固化する方法が挙げられる。その際、予め製膜された層の物性を損なわないために、コーティング液の温度、量、乾燥または固化の温度、タイミング等を調整することは重要である。乾燥条件としては、温度30〜120℃、時間3〜200秒が好ましい。
PVAの溶剤としては、水が代表的であるが、メタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の有機溶剤を使用することもできる。これらの有機溶剤を使用する場合は、水と併用するのが好ましい。特にコーティングの際は、メタノール、エタノール、プロパノールを混合することにより乾燥時間を短縮できコート前のフィルムの変質を低減できるため好ましい。
また予め製膜されたY層に、X3層に使用される水溶性樹脂(X3)を含むコーティング液をコートする方法としては、水溶性樹脂(X3)を濃度が1〜30質量%になるように溶剤に溶解し、これを通常のコーティング方法、例えば、グラビアロールコーティング、マイヤーバーコーティング、リバースロールコーティング、エアーナイフコーティング、スプレーコーティング等によってコートする方法が挙げられる。ここで、水溶性樹脂(X3)の溶剤としては、水;メタノール、エタノール、プロパノ−ル等のアルコール類;ジメチルスルホキシド、水/アルコール混合液等が挙げられる。これらの中でも、乾燥時間を短縮できることから水/アルコール混合液が好ましい。コーティングする工程、条件は特に制限されないが、Y層の製膜中にロールまたはベルト上で水溶性樹脂(X3)を含むコーティング液によるコーティングを行い、その後、熱風乾燥、熱ロール乾燥、遠赤外線乾燥等の公知の手段で乾燥または固化する方法、一旦Y層を製膜し、後工程にて水溶性樹脂(X3)を含むコーティング液によるコーティングを行い、その後、乾燥または固化する方法が挙げられる。その際、Y層の物性を損なわないために、コーティング液の温度、量、乾燥または固化の温度、タイミング等を調整することは重要である。乾燥条件としては、温度30〜120℃、時間3〜400秒が好ましい。
このようにして得られた多層フィルムは、必要に応じ、乾燥工程の前後で一軸または二軸の延伸を行うこともできる。延伸条件としては、温度20〜120℃、延伸倍率1.05〜5倍が好ましく、1.1〜3倍がより好ましい。さらに必要であれば、延伸後にフィルムを熱固定して残存応力を低下させることもできる。
X層およびY層の厚みは、それぞれがフィルムの場合(コート層でない場合)は、水溶性の点からそれぞれ10〜90μmが好ましく、15〜80μmがより好ましく、20〜80μmがさらに好ましく、20〜50μmが特に好ましく、25〜50μmであってもよい。それぞれがコート層の場合は、それぞれの厚みは0.05〜20μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましく、0.1〜5μmがさらに好ましい。また、水圧転写用多層ベースフィルム全体の厚みは、10〜100μmが好ましく、20〜45μmがより好ましい。
X層、Y層、および、水圧転写用多層ベースフィルム全体の水分率は、フィルムの強度の点などから、それぞれ1〜10質量%であることが好ましく、1〜8質量%がより好ましい。各層または水圧転写用多層ベースフィルム全体の水分率が1質量%未満であると、層が脆くなったり、フィルムが裂けやすくなったりするおそれがある。一方、各層または水圧転写用多層ベースフィルム全体の水分率が10質量%を超えると、印刷時にフィルムが伸びて印刷柄がずれたり、多色柄が抜けたりするおそれがある。各層の水分率は、X層およびY層または前述のPVAコーティング液を製造する際の溶剤(水など)の量、製膜またはコーティング後の乾燥条件等を適宜調整することにより、決定することができる。
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムは、X層、Y層いずれの面が印刷面となってもよいが、X層がX1層である場合には、使用されるPVAのけん化度が低い層が印刷面になることが、後述するカールの発生を低減し、また転写後の被写体の洗浄を容易にするという点から好適であり、Y層が印刷面となることが好ましい。X層がX2層またはX3層である場合にも、後述するカールの発生の低減、被転写体の洗浄の容易さなどの点から、Y層が印刷面となることが好ましい。
この印刷面は、印刷適性を向上させたり、印刷装置との摩擦を低減させたりする目的で、エンボス加工を施したり、でんぷん、シリカ等のスリップ剤を予め層に含有させることも好適である。エンボス加工の方法としては、例えば、一般的な硬度A10〜100(JIS K 6301)のゴムロールと、エンボス表面を持ち、表面温度が10〜150℃に設定された金属ロールとの間に、水圧転写用多層ベースフィルムを5〜50m/分の速度で走行させて加工する方法が挙げられる。また、上記スリップ剤を含有させる場合において、スリップ剤の含有量としては、各層に対し好適には0.1〜10質量%、より好適には0.5〜5質量%である。エンボス加工を施す方法とスリップ剤を含有させる方法のどちらか一方を採用してもよいし、両者を併用することもできる。
こうして得られた本発明の水圧転写用多層ベースフィルムは、その一方の表面に印刷を施すことにより水圧転写フィルムとすることができ、例えば、X層またはY層(好ましくはY層)面に非水溶性のインク等により絵模様または文字等を印刷して水圧転写フィルムとすることができる。この水圧転写フィルムを、印刷層を上にして水面に浮かべ、必要に応じて印刷面にインクの活性剤をスプレーし、上方から被転写体を押し付け、印刷層を被転写体の表面に充分固着させ、次いで水等によってX層およびY層を除去し、乾燥した後、アクリル樹脂等の保護膜塗装を施して、表面に印刷された製品が得られる。
印刷方法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、ロールコート等が挙げられる。印刷は水圧転写用多層ベースフィルムに直接印刷してもよいし、また別のフィルムに一旦印刷し、これを水圧転写用多層ベースフィルムに再転写してもよい。
被転写体としては、表面が平坦な構造体、表面が曲面となっている構造体(曲面構造体)が挙げられるが、本発明の水圧転写フィルムは、曲面構造体の転写に極めて有用である。また、X3層を有する水圧転写用多層ベースフィルムを用いて得られた水圧転写フィルムは、転写可能時間の範囲が広いことが要求される曲面構造体の転写に特に有用である。ここで、曲面とは、球面、起伏面、凹凸のある立体面等を意味する。構造体の具体例としては、木板、合板、パーティクルボード等の木質基材;各種プラスチック成形品;パルプセメント、スレート板、ガラス繊維補強セメント、コンクリート板等のセメント製品;石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、ケイ酸マグネシウム等の無機質製品;鉄、スチール、銅、アルミニウム、合金等の金属製品、ガラス製品などが挙げられる。
本発明の水圧転写フィルムは、水面で吸水により柔軟化したフィルムが破れることなく被転写体にまとわりつく性質、「まとわりつき性」が優れている。まとわりつき性は、後述の実施例に記載された方法で評価され、8cm以上であることが好ましく、10cm以上がより好ましい。
また、本発明の水圧転写フィルムは、寸法変化が少なく、水面に浮べた際にもカールが少ない。具体的には、後述する実施例に記載された方法により決定される最大カール長さ(長さ35cm×幅25cmのフィルムを使用して測定した幅方向の最大カール長さ)が、好適には0.2〜8cm、より好適には0.4〜6cmとなる。最大カール長さが上記の上限以下であることにより、転写有効面積が減少することによるロスが少なくなる。また、最大カール長さが上記の下限以上であることにより、水面に浮かべたフィルムのわずかなカールによってフィルム端部の膨張が抑えられ、印刷ボケが少なくなるので好ましい。最大カール長さは、上記式(1)〜(6)を満足させたり、前述の水圧転写用多層ベースフィルム製造時の延伸条件、乾燥条件などを適宜選択したりすることによって調整することができる。
一方、水圧転写に使用できる印刷柄の有効幅は、水圧転写フィルムがカールすることにより小さくなり、さらにそのカールによって端部の印刷柄が歪みを生じるため、実際にはカールしない部分よりも小さくなる。水圧転写フィルムの有効幅は、使用するフィルムの幅によって変化するが、後述する実施例に記載された方法により決定される幅有効率は、好適には60%以上、より好適には70%以上である。
水圧転写を行う際、転写が可能な時間範囲は、水圧転写フィルムが十分軟化し、かつある程度の粘度を保持している間である。転写の開始時間は、水圧転写フィルムが水面上で吸水して十分軟化した時点であり、通常、被転写体を押しつけて、底から8cmの高さまで正常に転写できることを合格の目安とする。例えば厚み30μmのフィルムでは、多くの場合、水温30℃で40秒前後である。水圧転写フィルムを水面に浮かべる時間がこれよりも短いと、フィルムの吸水が不足し、硬く伸びにくいままとなりやすい。その結果、被転写体を押しつけた際に、フィルムにシワが発生し、印刷柄が折りたたまれたまま転写され、柄にシワの跡や歪みが生じやすい。また、フィルムに被転写体を押しつけたときにフィルムが破れ、被転写体上に柄が抜けた部分ができることもある。
一方、水圧転写フィルムを上記の時間よりも長く水面に浮かべると、吸水、溶解が進んでフィルムの粘性が低下する。ついには、被転写体を押しつけたときにフィルムが破れ、やはり転写が不可能となる。この限界時間は、例えば厚み30μmのフィルムでは、多くの場合、水温30℃で2分程度である。
本発明の水圧転写フィルムは、X層およびY層を有する多層フィルムであるため、単層フィルムの場合と比較して、他の物性を損なうことなく溶解性を調整するのが容易である。例えば、Y層に対して、該Y層を構成するPVA(PY)よりも溶解性の低いPVA(PX1)、PVA(PX2)、または水溶性樹脂(X3)を含有するX層を積層することにより、転写可能な時間範囲を大幅に拡大することができる。
以下に本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において採用された、水溶性PVAおよび水溶性樹脂(X3)の、20℃または30℃の水中における完溶時間;X層およびY層の膨潤度;印刷適性;および転写性の各測定または評価方法を以下に示す。
[水溶性PVAおよび水溶性樹脂(X3)の、20℃または30℃の水中における完溶時間の測定方法]
500mlのガラスビーカーにイオン交換水325mlを入れて水温を20℃(30℃の水中における完溶時間の測定の場合には30℃)に保持する。サンプルとなる厚み約30μmの水溶性PVAフィルム(水溶性樹脂(X3)の完溶時間の測定の場合には厚み約10μmの水溶性樹脂(X3)フィルム)を20℃(30℃の水中における完溶時間の測定の場合には30℃)、65%RHに調温調湿した後、3.5cm×4cmの大きさに切り出し、窓枠の大きさが2.3cm×3.4cmのスライドマウントに挟んで固定する。上記のガラスビーカーの水を、マグネチックスターラを用いて長さが5cmの回転子で280回転/分の速度で撹拌しながら、ビーカーの中央にスライドマウントに挟んだフィルムをすばやく浸漬し、観察を行う。水中に浸漬したフィルムは時間の経過と共にスライドマウント上で溶解するか、または破れた後、スライドマウントから外れ、水中を浮遊しながら徐々に溶解し、肉眼では見えなくなる。フィルムを浸漬した直後から肉眼で見えなくなるまでの時間を計測して、これを完溶時間とする。
[PVA層、または多層フィルムの水分率の測定法]
PVA層、または多層フィルムの水分率Hは、ヤマト科学(株)製真空乾燥機DP33および日立工機(株)製真空ポンプVR16LPを用い、試料を1Pa以下の減圧下、50℃で4時間の乾燥を行ったときの、フィルムの乾燥前の質量M0および乾燥後の質量Mdから、下記式により算出した。

H(質量%) = [(M0 − Md) / M0] × 100
[X層およびY層の膨潤度の測定方法]
以下の実施例および比較例において、それぞれX層およびY層と同じ組成を持つ30±3μmの単層フィルムを別に作製し、20℃、65%RHに調湿後、25cm×25cmの大きさに切り出し、その中心部に10cm×10cmの枠を油性マジックで書いた後、マジックで書いた面を上にして、四辺を固定することなく30℃のイオン交換水に浮かべ、10秒経過後のフィルムのマジックで書いた正方形の縦および横の長さ(L1、L2)(単位:cm)を定規で測り、下記式にしたがって膨潤度Sを算出した。この測定を5回繰り返し、その平均を各層の膨潤度とした。

S(%) = [{(L1+L2)/2−10}/10] × 100
[印刷適性評価方法]
ピッチズレ
得られた印刷物について、各色のピッチズレを以下の基準により判定した。
極小・・各色のズレが0.1mm未満
小 ・・各色のズレが0.1mm以上、0.3mm未満
大 ・・各色のズレが0.3mm以上
印刷抜け
得られた印刷物について、印刷抜けを以下の基準により判定した。
なし・・50cm×50cm内に1mm以上の印刷抜けがない
あり・・50cm×50cm内に1mm以上の印刷抜けがある
切断回数
印刷工程でフィルムを1000m印刷する間に、フィルム、特にフィルム端面の密着によって発生したフィルム切断(機械の変動によるフィルム切断は考慮しない)の回数を切断回数とした。
印刷剥がれ(密着性)
印刷物(水圧転写フィルム)のロール状物を開放下、40℃、80%RHにて1週間保持した。その後、ロールからフィルムを巻き出した際に、印刷面のインクが隣接しているフィルム面に移行して剥がれる様子を観察し、以下の基準により判定した。
なし・・剥がれが全くない
小 ・・剥がれた部分の全体に対する面積比が5%未満
中 ・・剥がれた部分の全体に対する面積比が5%以上、20%未満
大 ・・剥がれた部分の全体に対する面積比が20%以上
[転写性評価方法]
まとわりつき性
得られた印刷物を直径20cmの円形に切り出し、20℃、65%RHで24時間調湿した。一方、底辺が45cm×35cmの長方形で、深さが25cmの直方体の水槽にイオン交換水35L(水深約22cm)を注ぎ、転写中に溶け出すPVAの影響をなくすためにあらかじめフィルム53gを溶解させた後、30±2℃に調温した。転写体として口径7cm、長さ23cmの円筒の紙管に厚み50μmのPETフィルムを巻きつけたものを準備した。上記の印刷した円形フィルムを水槽に浮かべて1分間待ち、ブチルセルソルブアセテート26質量部、ブチルカルビトールアセテート26質量部、ブチルメタクリレート重合体8質量部、ブチルフタレート20質量部および硫酸バリウム20質量部の混合物からなるインクの活性剤をフィルム1mあたり10〜15gスプレーし、転写体の円筒の底面を下にして、20cm/分の速度でフィルム中心部に沈めて転写を行った。フィルムが溶解したり、切断したりして、印刷が途切れた点を観察し、カップ底部からその点までの距離を測定した。同様の測定を5回行って平均値を取り、その結果をまとわりつき性とした。
最大カール長さ
30℃、80%RHに調湿した印刷物から、製膜方向に43cm、幅方向に25cm(元のフィルムの中央と切り出す試験片の中央が一致する)の長方形の試験片を切り出し、フィルムの短辺(25cmの辺)の両端部を各1cmずつ印刷面側に折り込んで細長い筒状の部分を作り、その中に直径2mmの鉄棒を挿入してフィルムの折り込み部分でくるみ、紙テープで固定した。一方、35cm×50cm×5.5cmのバットに、上記の鉄棒2本を35cm間隔で渡して固定できるように、バットの長辺上の淵に鉄棒がはまる窪みを2対設けた。このバットにイオン交換水5Lを注ぎ、ホットプレート上に置いて水温を30±1℃に調整した。次に、フィルムの印刷面を上にして、両端に鉄棒を挿入したフィルムの一方の鉄棒をバットの窪みにはめ込み、もう一方の鉄棒を、フィルムが水面に接触するように他方の窪みにはめ込んだ。このとき、フィルムが泡を噛んだり、フィルム端部が水中に沈み込むことのないように注意した。水に浮かべてフィルムにカールを生じさせ、10秒経過後、フィルムの膨潤が始まる前に、フィルム中央部の最もカールが進行している部分の幅を測定した。同様の測定を5回行って平均値を取り、その値を元のフィルム幅25cmから差し引いて最大カール長さ(長さ35cm×幅25cmのフィルムを使用して測定した幅方向の最大カール長さ)とした。
幅有効率
上記の最大カール長さの測定と同様の操作を行い、水に浮かべてから20秒経過後のフィルムについて、印刷柄の実質的に歪みのない部分の幅W(cm)を測定した。同様の測定を5回行って平均値を取り、その値を用いて下記式にて幅有効率を算出した。

幅有効率(%)=(W/25)×100
転写可能時間(開始時間および限界時間)
上記のまとわりつき性を、フィルムを水槽に浮かべてから転写するまでの時間を変えて測定し、カップ底面から8cmの高さまで、しわやフィルムの破れが発生することなく柄が正確に転写された最短の時間を転写可能な開始時間とした。一方、転写までの時間を長くするにしたがってまとわりつき性は短くなるので、まとわりつき性が8cmになった時間を転写可能な限界時間とした。
[実施例1]
けん化度88モル%、重合度1700、20℃の水中における完溶時間24秒のPVA15質量部、グリセリン0.65質量部を含有する、PVA濃度15質量%の水溶液(Y液)をコンベアベルト上に流延し、ベルト上で120℃の熱風をあてながら5分間乾燥して厚み30.2μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は3.0質量%、グリセリン含有量は4.0質量%であった。
次いで、けん化度94モル%、重合度2000、20℃の水中における完溶時間51秒のPVAを含有する、PVA濃度12質量%の水溶液をコート液(X液)とし、グラビア幅54cmのグラビアロールを用いて上記フィルムに15m/分の速度でコートし、直ちに100℃の熱風で30秒間乾燥し、厚み1.9μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。この多層フィルムの水分率は3.1質量%であった。また別に作製したX層およびY層の単層フィルムを使用して、上記の方法によって膨潤度を求めたところ、X層の膨潤度は8%、Y層の膨潤度は21%であった。これらの結果を表1に示した。
この多層フィルムの両端をスリット装置により各5cm切り落とし、幅50cm、長さ1000mとした後、表面がポリエチレン加工された外径88.2mmの円筒状の紙管に、巻き取り張力15kg/m、巻き取り速度40m/分、タッチロール圧3kg/mの条件で連続して巻き取り、水圧転写用多層ベースフィルムのロール状物を得た。
染料と硫酸バリウムの混合物70質量%、アルキッド樹脂とニトロセルロースの混合物30質量%からなる建材用インキを3色使用し、20℃、65%RHの雰囲気下で上記の水圧転写用多層ベースフィルムのY層側に木目をグラビア印刷した。印刷層の厚みは各2μmとし、巻き出し張力は1kg/m、印刷速度は50m/分とした。印刷後は、多層フィルムを60℃の熱風で加熱された1mの乾燥ゾーンで乾燥し、巻き取り張力5kg/mで巻き取った。得られた印刷物(水圧転写フィルム)を、上記した方法により各種評価に供した。結果を表2に示した。
[実施例2]
コート液(X液)に使用するPVAとして、けん化度96モル%、重合度1000、20℃の水中における完溶時間450秒のPVAを使用したこと以外は実施例1と同様にして、厚み2.1μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。この多層フィルムの水分率は3.2質量%であった。また別に作製したX層およびY層の単層フィルムを使用して、上記の方法によって膨潤度を求めたところ、X層の膨潤度は5%、Y層の膨潤度は21%であった。これらの結果を表1に示した。
続いて、実施例1と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表2に示した。
[実施例3]
実施例1のY液に、ホウ酸を濃度が0.15質量%となるように添加したものを使用したこと以外は実施例1と同様にして、厚み32.6μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は3.2質量%、グリセリン含有量は4.0質量%、ホウ酸含有量は0.9質量%であった。
次いで、実施例1と同様にして、厚み2.4μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。この多層フィルムの水分率は3.4質量%であった。また別に作製したX層およびY層の単層フィルムを使用して、上記の方法によって膨潤度を求めたところ、X層の膨潤度は8%、Y層の膨潤度は12%であった。これらの結果を表1に示した。
続いて、実施例1と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表2に示した。
[実施例4]
コート液(X液)として、実施例1のX液に、平均粒子径6.6μmのシリカ(東ソー製「NIPGEL0063」)を、0.4質量%となるように添加したものを使用したこと以外は実施例1と同様にして、厚み2.8μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。コート液(X液)の全固形分に対するシリカの仕込み量(含有量)は3.1質量%であった。この多層フィルムの水分率は3.2質量%であった。また別に作製したX層およびY層の単層フィルムを使用して、上記の方法によって膨潤度を求めたところ、X層の膨潤度は6%、Y層の膨潤度は21%であった。これらの結果を表1に示した。
続いて、実施例1と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表2に示した。
[実施例5]
コート液(X液)として、実施例3のX液に、ホウ酸を濃度が0.15質量%となるように添加したものを使用したこと以外は実施例3と同様にして、厚み2.6μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。コート液(X液)の全固形分に対するホウ酸の仕込み量(含有量)は1.2質量%であった。この多層フィルムの水分率は3.3質量%であった。また別に作製したX層およびY層の単層フィルムを使用して、上記の方法によって膨潤度を求めたところ、X層の膨潤度は3%、Y層の膨潤度は12%であった。これらの結果を表1に示した。
続いて、実施例1と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表2に示した。
[比較例1]
多層フィルムの代わりに、実施例1で得られたフィルム(Y層)を単層で用いた。実施例1と同様にして、このフィルム(Y層)から印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表1および表2に示した。
[比較例2]
多層フィルムの代わりに、実施例3で得られたフィルム(Y層)を単層で用いた。実施例1と同様にして、このフィルム(Y層)から印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表1および表2に示した。
[比較例3]
実施例1の水溶液(Y液)の代わりに実施例1のコート液(X液)を使用したこと以外は実施例1におけるフィルム(Y層)の製造と同様にして、厚み31.9μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は2.9質量%であった。
続いて、多層フィルムの代わりに、上記の方法により得られたフィルム(Y層)を単層で用いて、実施例1と同様にして、このフィルム(Y層)から印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表1および表2に示した。
[比較例4]
実施例1の水溶液(Y液)の代わりに実施例2のコート液(X液)を使用したこと以外は実施例1におけるフィルム(Y層)の製造と同様にして、厚み33.1μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は3.4質量%であった。
続いて、多層フィルムの代わりに、上記の方法により得られたフィルム(Y層)を単層で用いて、実施例1と同様にして、このフィルム(Y層)から印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表1および表2に示した。
[比較例5]
実施例1の水溶液(Y液)の代わりに実施例4のコート液(X液)を使用したこと以外は実施例1におけるフィルム(Y層)の製造と同様にして、厚み30.7μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は2.9質量%、シリカ含有量は3.1質量%であった。
続いて、多層フィルムの代わりに、上記の方法により得られたフィルム(Y層)を単層で用いて、実施例1と同様にして、このフィルム(Y層)から印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表1および表2に示した。
[比較例6]
コート液(X液)として、平均粒子径0.8μmのスチレン−メタクリル酸メチル共重合体(スチレン/メタクリル酸メチル=50/50、質量比)を分散質とし、けん化度88モル%、重合度1700のPVAを分散剤とする樹脂エマルジョン(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体の濃度1質量%、バインダーとしてのけん化度88モル%、重合度1750のPVAの濃度1質量%、合計固形分濃度2質量%)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、厚み1.8μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。この多層フィルムの水分率は3.3質量%であった。また別に作製したX層およびY層の単層フィルムを使用して、上記の方法によって膨潤度を求めたところ、X層の膨潤度は16%、Y層の膨潤度は21%であった。これらの結果を表1に示した。
続いて、実施例1と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表2に示した。
[比較例7]
けん化度70モル%、重合度1700、20℃の水中における完溶時間35秒のPVA15質量部、グリセリン0.65質量部を含有する、PVA濃度15質量%の水溶液(Y液)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、厚み31.2μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は2.8質量%、グリセリン含有量は4.1質量%であった。
次いで、実施例1と同様にして、厚み2.2μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。この多層フィルムの水分率は3.0質量%であった。また別に作製したX層およびY層の単層フィルムを使用して、上記の方法によって膨潤度を求めたところ、X層の膨潤度は8%、Y層の膨潤度は28%であった。これらの結果を表1に示した。
続いて、実施例1と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表2に示した。
[比較例8]
けん化度88モル%、重合度100、20℃の水中における完溶時間20秒のPVA15質量部、グリセリン0.65質量部を含有する、PVA濃度15質量%の水溶液(Y液)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、厚み25.7μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は2.7質量%、グリセリン含有量は4.1質量%であった。
次いで、実施例2と同様にして、厚み2.4μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。この多層フィルムの水分率は3.1質量%であった。また別に作製したX層およびY層の単層フィルムを使用して、上記の方法によって膨潤度を求めたところ、X層の膨潤度は5%、Y層の膨潤度は36%であった。これらの結果を表1に示した。
続いて、実施例1と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表2に示した。
[比較例9]
コート液(X液)に使用するPVAとして、けん化度94モル%、重合度3000、20℃の水中における完溶時間105秒のPVAを使用したこと以外は実施例1と同様にして、厚み2.6μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。この多層フィルムの水分率は3.5質量%であった。また別に作製したX層およびY層の単層フィルムを使用して、上記の方法によって膨潤度を求めたところ、X層の膨潤度は6%、Y層の膨潤度は21%であった。これらの結果を表1に示した。
続いて、実施例1と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表2に示した。
Figure 0005290278
Figure 0005290278
[実施例6]
けん化度88モル%、重合度2000、30℃の水中における完溶時間29秒のPVA15質量部、グリセリン0.65質量部を含有する、PVA濃度15質量%の水溶液(Y液)をコンベアベルト上に流延し、ベルト上で120℃の熱風をあてながら5分間乾燥して厚み30.4μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は3.1質量%、グリセリン含有量は4.0質量%であった。
次いで、上記の水溶液(Y液)と同じ組成の水溶液に平均粒子径6.6μmのシリカ(東ソー製「NIPGEL0063」)を0.53質量%となるように添加してコート液(X液)とし、グラビア幅54cm、深さ30μmの全面網状グラビアロールを用いて上記フィルムに15m/分の速度でコートし、直ちに100℃の熱風で30秒間乾燥し、厚み2.1μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。コート液(X液)の全固形分に対するシリカの仕込み量(含有量)は3.3質量%であった。
この多層フィルムのコート層(X層)の断面100μmの範囲を電子顕微鏡で観察し、ひとつのシリカ粒子の最長径と最短径を0.1μm精度で求め、両者を単純平均してこの粒子の粒子径とした。同様にして観察される全粒子について粒子径を求め、さらに観察点を変えて同じ作業を繰り返し、合計10点の観察点において観察される全粒子の粒子径を求めた。このうち、粒子径が0.2μm以上の粒子について単純平均して平均粒子径を算出したところ、6.2μmであった。また、JIS B0601により測定した、コート層(X層)の表面粗さ(Ra)は1.2μmであった。さらに、多層フィルムの水分率は3.3質量%であった。これらの結果を表3に示した。
この多層フィルムの両端をスリット装置により各5cm切り落とし、幅50cm、長さ1000mとした後、表面がポリエチレン加工された外径88.2mmの円筒状の紙管に、巻き取り張力15kg/m、巻き取り速度40m/分、タッチロール圧3kg/mの条件で連続して巻き取り、水圧転写用多層ベースフィルムのロール状物を得た。
染料と硫酸バリウムの混合物70質量%、アルキッド樹脂とニトロセルロースの混合物30質量%からなる建材用インキを3色使用し、20℃、65%RHの雰囲気下で上記の水圧転写用多層ベースフィルムのY層側に木目をグラビア印刷した。印刷層の厚みは各2μmとし、巻き出し張力は1kg/m、印刷速度は50m/分とした。印刷後は、多層フィルムを60℃の熱風で加熱された1mの乾燥ゾーンで乾燥し、巻き取り張力5kg/mで巻き取った。得られた印刷物(水圧転写フィルム)を、上記した方法により各種評価に供した。結果を表4に示した。
[実施例7]
コート液(X液)として、けん化度96モル%、重合度1700、30℃の水中における完溶時間63秒のPVA15質量部、グリセリン0.65質量部を含有する、PVA濃度15質量%の水溶液に、平均粒子径6.6μmのシリカ(東ソー製「NIPGEL0063」)を、0.53質量%となるように添加したものを使用したこと以外は実施例6と同様にして、厚み1.9μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。コート液(X液)の全固形分に対するシリカの仕込み量(含有量)は3.3質量%であった。この多層フィルムについて、コート層(X層)におけるシリカの平均粒子径およびコート層(X層)の表面粗さ(Ra)を実施例6と同様にして測定したところ、平均粒子径は6.0μm、表面粗さは0.9μmであった。また、この多層フィルムの水分率は2.8質量%であった。これらの結果を表3に示した。
続いて、実施例6と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表4に示した。
[実施例8]
実施例6の水溶液(Y液)の代わりに、けん化度88モル%、重合度2000のPVAと、けん化度96モル%、重合度1700のPVAとを、質量比90/10で混合したもの(30℃の水中における完溶時間36秒)15質量部、グリセリン0.65質量部を含有する、PVA濃度15質量%の水溶液(Y液)を使用したこと以外は実施例6におけるフィルム(Y層)の製造と同様にして、厚み31.1μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は2.9質量%、グリセリン含有量は4.3質量%であった。
次いで、コート液(X液)として、けん化度88モル%、重合度1700、30℃の水中における完溶時間24秒のPVA15質量部、グリセリン0.65質量部を含有する、PVA濃度15質量%の水溶液に、平均粒子径6.6μmのシリカ(東ソー製「NIPGEL0063」)を、0.53質量%となるように添加したものを使用したこと以外は実施例6と同様にして、厚み2.2μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。コート液(X液)の全固形分に対するシリカの仕込み量(含有量)は3.3質量%であった。この多層フィルムについて、コート層(X層)におけるシリカの平均粒子径およびコート層(X層)の表面粗さ(Ra)を実施例6と同様にして測定したところ、平均粒子径は5.8μm、表面粗さは1.7μmであった。また、この多層フィルムの水分率は3.3質量%であった。これらの結果を表3に示した。
続いて、実施例6と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表4に示した。
[実施例9]
実施例6のY液に、ホウ酸を濃度が0.05質量%となるように添加したものを使用したこと以外は実施例6と同様にして、厚み30.4μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は2.7質量%、グリセリン含有量は3.8質量%、ホウ酸含有量は0.3質量%であった。
次いで、コート液(X液)として、けん化度94モル%、重合度2000、30℃の水中における完溶時間51秒のPVA15質量部、グリセリン0.65質量部を含有する、PVA濃度15質量%の水溶液に、平均粒子径6.6μmのシリカ(東ソー製「NIPGEL0063」)を、0.53質量%となるように添加したものを使用したこと以外は実施例6と同様にして、厚み2.4μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。コート液(X液)の全固形分に対するシリカの仕込み量(含有量)は3.3質量%であった。この多層フィルムについて、コート層(X層)におけるシリカの平均粒子径およびコート層(X層)の表面粗さ(Ra)を実施例6と同様にして測定したところ、平均粒子径は6.1μm、表面粗さは1.1μmであった。また、この多層フィルムの水分率は2.8質量%であった。これらの結果を表3に示した。
続いて、実施例6と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表4に示した。
[実施例10]
実施例6のY液に、平均粒子径6.6μmのシリカ(東ソー製「NIPGEL0063」)を濃度が0.3質量%となるように添加したものを使用したこと以外は実施例6と同様にして、厚み30.4μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は3.3質量%、グリセリン含有量は4.1質量%、シリカ含有量は1.9質量%であった。
次いで、実施例8と同様にして、厚み2.0μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。この多層フィルムについて、コート層(X層)におけるシリカの平均粒子径およびコート層(X層)の表面粗さ(Ra)を実施例6と同様にして測定したところ、平均粒子径は5.7μm、表面粗さは0.7μmであった。また、この多層フィルムの水分率は3.1質量%であった。これらの結果を表3に示した。
続いて、実施例6と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表4に示した。
[実施例11]
実施例6のY液に、界面活性剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルを濃度が0.4質量%となるように添加したものを使用したこと以外は実施例6と同様にして、厚み29.1μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は3.0質量%、グリセリン含有量は4.0質量%、界面活性剤含有量は2.5質量%であった。
次いで、コート液(X液)として、実施例6のX液に、界面活性剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルを濃度が0.4質量%となるように添加したものを使用したこと以外は実施例6と同様にして、厚み2.2μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。コート液(X液)の全固形分に対するシリカの仕込み量(含有量)は3.2質量%、界面活性剤の仕込み量(含有量)は2.4質量%であった。この多層フィルムについて、コート層(X層)におけるシリカの平均粒子径およびコート層(X層)の表面粗さ(Ra)を実施例6と同様にして測定したところ、平均粒子径は6.3μm、表面粗さは1.5μmであった。また、この多層フィルムの水分率は3.1質量%であった。これらの結果を表3に示した。
続いて、実施例6と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表4に示した。
[実施例12]
コート液(X液)において、シリカの代わりに平均粒子径4.5μmのタルク(日本タルク株式会社製「P−4」)を添加したこと以外は実施例6と同様にして、厚み2.5μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。コート液(X液)の全固形分に対するタルクの仕込み量(含有量)は3.3質量%であった。この多層フィルムについて、コート層(X層)におけるタルクの平均粒子径およびコート層(X層)の表面粗さ(Ra)を実施例6と同様にして測定したところ、平均粒子径は4.5μm、表面粗さは1.0μmであった。また、この多層フィルムの水分率は2.9質量%であった。これらの結果を表3に示した。
続いて、実施例6と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表4に示した。
[比較例10]
多層フィルムの代わりに、実施例6で得られたフィルム(Y層)を単層で用いた。このフィルムについて、表面粗さ(Ra)を実施例6と同様にして測定したところ、0.08μmであった。これらの結果を表3に示した。
続いて、実施例6と同様にして、このフィルム(Y層)から印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表4に示した。
[比較例11]
コート液(X液)として、平均粒子径0.8μmのスチレン−メタクリル酸メチル共重合体(スチレン/メタクリル酸メチル=50/50、質量比)を分散質とし、けん化度88モル%、重合度1700のPVAを分散剤とする樹脂エマルジョン(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体の濃度1質量%、バインダーとしてのけん化度88モル%、重合度1750のPVAの濃度1質量%、合計固形分濃度2質量%)を使用したこと以外は実施例6と同様にして、厚み2.8μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。この多層フィルムについて、コート層(X層)の表面粗さ(Ra)を実施例6と同様にして測定したところ、2.2μmであった。また、この多層フィルムの水分率は3.2質量%であった。これらの結果を表3に示した。
続いて、実施例6と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表4に示した。
[比較例12]
実施例6の水溶液(Y液)の代わりに実施例6のコート液(X液)を使用したこと以外は実施例6におけるフィルム(Y層)の製造と同様にして、厚み29.0μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は2.7質量%、グリセリン含有量は3.9質量%であった。また、このフィルムについて、シリカの平均粒子径および表面粗さ(Ra)を実施例6と同様にして測定したところ、平均粒子径は6.0μm、表面粗さは1.0μmであった。これらの結果を表3に示した。
続いて、多層フィルムの代わりに、上記の方法により得られたフィルム(Y層)を単独で用いて、実施例6と同様にして、このフィルム(Y層)から印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表4に示した。
[比較例13]
けん化度70モル%、重合度1700、30℃の水中における完溶時間35秒のPVA15質量部、グリセリン0.65質量部を含有する、PVA濃度15質量%の水溶液(Y液)を使用したこと以外は実施例6と同様にして、厚み25.0μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は3.0質量%、グリセリン含有量は4.3質量%であった。
Y層として上記のフィルムを使用するとともに、コート液(X液)において、シリカの代わりに平均粒子径21.8μmのガラス粉末(日硝マテリアル製「N粉」)を添加したこと以外は実施例6と同様にして、厚み4.5μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。コート液(X液)の全固形分に対するガラス粉末の仕込み量(含有量)は3.3質量%であった。この多層フィルムについて、コート層(X層)におけるガラス粉末の平均粒子径およびコート層(X層)の表面粗さ(Ra)を実施例6と同様にして測定したところ、平均粒子径は21.8μm、表面粗さは23μmであった。また、この多層フィルムの水分率は2.7質量%であった。これらの結果を表3に示した。
続いて、実施例6と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表4に示した。
[比較例14]
コート液(X液)において、シリカの代わりに株式会社ホージュン製ベントナイト「スーパークレイ」を粉砕したもの(平均粒子径1.2μm、HORIBA製粒度分析機LA920で測定)を添加したこと以外は実施例6と同様にして、厚み2.8μmのコート層(X層)を有する多層フィルムを得た。コート液(X液)の全固形分に対するベントナイトの仕込み量(含有量)は3.3質量%であった。この多層フィルムについて、コート層(X層)におけるベントナイトの平均粒子径およびコート層(X層)の表面粗さ(Ra)を実施例6と同様にして測定したところ、平均粒子径は1.2μm、表面粗さは0.07μmであった。また、この多層フィルムの水分率は3.2質量%であった。これらの結果を表3に示した。
続いて、実施例6と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表4に示した。
Figure 0005290278
Figure 0005290278
[実施例13]
けん化度88モル%、重合度1700、20℃の水中における完溶時間22秒のPVA15質量部、グリセリン0.65質量部を含有する、PVA濃度15質量%の水溶液(Y液)をコンベアベルト上に流延し、ベルト上で120℃の熱風をあてながら5分間乾燥して厚み30.2μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は3.0質量%、グリセリン含有量は4.0質量%であった。
次いで、20℃の水中における完溶時間80秒のダイセル化学工業株式会社製水溶性セルロース「CMC(カルボキシメチルセルロース)ダイセル1160」の濃度が7質量%である水溶液をコート液(X液)とし、グラビア幅54cmのグラビアロールを用いて上記フィルムに15m/分の速度でコートし、直ちに100℃の熱風で30秒間乾燥して多層フィルムを得た。この多層フィルムの断面を顕微鏡で観察したところ、コート層(X層)の平均厚みは2.1μmであった。また、JIS B0601により測定した、コート層(X層)の表面粗さ(Ra)は1.4μmであった。さらに、この多層フィルムの水分率は3.0質量%であった。これらの結果を表5に示した。
この多層フィルムの両端をスリット装置により各5cm切り落とし、幅50cm、長さ1000mとした後、表面がポリエチレン加工された外径88.2mmの円筒状の紙管に、巻き取り張力15kg/m、巻き取り速度40m/分、タッチロール圧3kg/mの条件で連続して巻き取り、水圧転写用多層ベースフィルムのロール状物を得た。
染料と硫酸バリウムの混合物70質量%、アルキッド樹脂とニトロセルロースの混合物30質量%からなる建材用インキを3色使用し、20℃、65%RHの雰囲気下で上記の水圧転写用多層ベースフィルムのY層側に木目をグラビア印刷した。印刷層の厚みは各2μmとし、巻き出し張力は1kg/m、印刷速度は50m/分とした。印刷後は、多層フィルムを60℃の熱風で加熱された1mの乾燥ゾーンで乾燥し、巻き取り張力5kg/mで巻き取った。得られた印刷物(水圧転写フィルム)を、上記した方法により各種評価に供した。結果を表6に示した。
[実施例14]
コート液(X液)に使用する水溶性セルロースとして、20℃の水中における完溶時間70秒の信越化学工業株式会社製水溶性セルロース「メトローズ6−SH−50」(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、HPMC)を使用したこと以外は実施例13と同様にして、多層フィルムを得た。この多層フィルムの断面を顕微鏡で観察したところ、コート層(X層)の平均厚みは1.9μmであった。また、JIS B0601により測定した、コート層(X層)の表面粗さ(Ra)は0.9μmであった。さらに、この多層フィルムの水分率は3.1質量%であった。これらの結果を表5に示した。
続いて、実施例13と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表6に示した。
[実施例15]
実施例13のY液に、ホウ酸を濃度が0.15質量%となるように添加したものを使用したこと以外は実施例13と同様にして、厚み32.6μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は3.2質量%、グリセリン含有量は4.0質量%、ホウ酸含有量は0.9質量%であった。
次いで、実施例13と同様にして、多層フィルムを得た。この多層フィルムの断面を顕微鏡で観察したところ、コート層(X層)の平均厚みは2.4μmであった。また、JIS B0601により測定した、コート層(X層)の表面粗さ(Ra)は1.3μmであった。この多層フィルムの水分率は3.4質量%であった。これらの結果を表5に示した。
続いて、実施例13と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表6に示した。
[実施例16]
実施例13のX液に、平均粒子径6.6μmのシリカ(東ソー株式会社製「NIPGEL0063」)を、濃度が0.4質量%となるように添加したものを使用したこと以外は実施例13と同様にして、多層フィルムを得た。コート液(X液)の全固形分に対するシリカの仕込み量(含有量)は5.2質量%であった。
この多層フィルムのコート層(X層)の断面100μmの範囲を電子顕微鏡で観察し、ひとつのシリカ粒子の最長径と最短径を0.1μm精度で求め、両者を単純平均してこの粒子の粒子径とした。同様にして観察される全粒子について粒子径を求め、さらに観察点を変えて同じ作業を繰り返し、合計10点の観察点において観察される全粒子の粒子径を求めた。このうち、粒子径が0.2μm以上の粒子について単純平均して平均粒子径を算出したところ、6.1μmであった。また、この多層フィルムの断面を顕微鏡で観察したところ、コート層(X層)の平均厚みは3.1μmであり、JIS B0601により測定した、コート層(X層)の表面粗さ(Ra)は1.5μmであった。さらに、この多層フィルムの水分率は3.2質量%であった。これらの結果を表5に示した。
続いて、実施例13と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表6に示した。
[比較例15]
多層フィルムの代わりに、実施例13で得られたフィルム(Y層)を単層で用いた。JIS B0601により測定した、このフィルムの表面粗さ(Ra)は0.08μmであった。これらの結果を表5に示した。
続いて、実施例13と同様にして、このフィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表6に示した。
[比較例16]
実施例13の水溶液(Y液)の代わりに実施例13のコート液(X液)を使用したこと以外は実施例13におけるフィルム(Y層)の製造と同様にして、厚み29.4μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は2.4質量%であった。また、JIS B0601により測定した、このフィルムの表面粗さ(Ra)は1.2μmであった。これらの結果を表5に示した。
続いて、多層フィルムの代わりに、上記の方法により得られたフィルム(Y層)を単層で用いて、実施例13と同様にして、このフィルム(Y層)から印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。このフィルムは印刷時に破れやすく、取り扱いが困難であった。また転写においても、1分では溶解が不十分で、まとわりつき性を得るためには長時間の保持が必要であった。結果を表6に示した。
[比較例17]
実施例13の水溶液(Y液)の代わりに実施例14のコート液(X液)を使用したこと以外は実施例13におけるフィルム(Y層)の製造と同様にして、厚み27.8μm、幅60cm、長さ1050mのフィルム(Y層)を得た。このフィルムの水分率は2.8質量%であった。また、JIS B0601により測定した、このフィルムの表面粗さ(Ra)は1.4μmであった。これらの結果を表5に示した。
続いて、多層フィルムの代わりに、上記の方法により得られたフィルム(Y層)を単層で用いて、実施例13と同様にして、このフィルム(Y層)から印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。このフィルムは印刷時に破れやすく、取り扱いが困難であった。また転写においても、1分では溶解が不十分で、まとわりつき性を得るためには長時間の保持が必要であった。結果を表6に示した。
[比較例18]
多層フィルムの代わりに、実施例15で得られたフィルム(Y層)を単層で用いた。JIS B0601により測定した、このフィルムの表面粗さ(Ra)は0.1μmであった。これらの結果を表5に示した。
続いて、実施例13と同様にして、このフィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表6に示した。
[比較例19]
多層フィルムとして比較例6で得られた多層フィルムを用いた。この多層フィルムのJIS B0601により測定した、コート層(X層)の表面粗さ(Ra)は1.3μmであった。結果を表5に示した。
続いて、実施例13と同様にして、この多層フィルムから印刷物(水圧転写フィルム)を得て、上記した方法により各種評価に供した。結果を表6に示した。
Figure 0005290278
Figure 0005290278
本発明の水圧転写用多層ベースフィルムおよび水圧転写フィルムは、印刷適性が良好で、しかも水面に浮かべたときにカールが発生しにくいので、特に曲面構造体の転写に有用である。

Claims (13)

  1. 下記のX1層およびX2層より選ばれるX層と、水溶性ポリビニルアルコール(PY)を含有するY層とを有する水圧転写用多層ベースフィルム。
    X1層:水溶性ポリビニルアルコール(PX1)を含有する層。但し、当該水溶性ポリビニルアルコール(PX1)のけん化度および重合度をそれぞれAモル%およびBとし、前記Y層における水溶性ポリビニルアルコール(PY)のけん化度および重合度をそれぞれCモル%およびDとするとき、下記式(1)〜(6)を満足する。
    (1)2≦|A−C|≦20
    (2)0≦|B−D|≦2000
    (3)80≦A≦99
    (4)500≦B≦2500
    (5)75≦C≦99
    (6)300≦D≦2500
    X2層:水溶性ポリビニルアルコール(PX2)と、平均粒子径2〜20μmの無機物粒子を含有する層
  2. 前記X層がX1層であって、当該X1層および前記Y層の膨潤度をそれぞれE(%)およびF(%)とするとき、下記式(7)〜(9)を満足する、請求項1に記載の水圧転写用多層ベースフィルム。
    (7)0.1≦|E−F|≦29.5
    (8)0.5≦E≦20
    (9)0.6≦F≦30
  3. 前記X層がX2層であって、前記水溶性ポリビニルアルコール(PX2)のけん化度および重合度をそれぞれAモル%およびBとし、前記Y層における水溶性ポリビニルアルコール(PY)のけん化度および重合度をそれぞれCモル%およびDとするとき、下記式(1)〜(6)を満足する、請求項1に記載の水圧転写用多層ベースフィルム。
    (1)2≦|A−C|≦20
    (2)0≦|B−D|≦2000
    (3)80≦A≦99
    (4)500≦B≦2500
    (5)75≦C≦99
    (6)300≦D≦250
  4. 前記X層がX1層であって、前記X層がさらに平均粒子径2〜20μmの無機物粒子を含有する、請求項に記載の水圧転写用多層ベースフィルム。
  5. 前記X層が水圧転写用多層ベースフィルムの少なくとも一方の表面に配置されており、かつ表面に配置された該X層のフィルム表面粗さ(Ra)が0.1〜2μmである、請求項1〜のいずれか1項に記載の水圧転写用多層ベースフィルム。
  6. 前記水溶性ポリビニルアルコール(PX1)、水溶性ポリビニルアルコール(PX2)、および水溶性ポリビニルアルコール(PY)のうちの少なくとも1つが2種以上の異種ポリビニルアルコールのブレンド物である、請求項1〜のいずれか1項に記載の水圧転写用多層ベースフィルム。
  7. 前記X層および/または前記Y層が架橋剤を0.01〜3質量%含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の水圧転写用多層ベースフィルム。
  8. 前記架橋剤がホウ素化合物である、請求項に記載の水圧転写用多層ベースフィルム。
  9. 前記X層および/または前記Y層が界面活性剤を0.1〜10質量%含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の水圧転写用多層ベースフィルム。
  10. 前記Y層が水圧転写用多層ベースフィルムの少なくとも一方の表面に配置されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の水圧転写用多層ベースフィルム。
  11. 請求項1〜1のいずれか1項に記載の水圧転写用多層ベースフィルムの一方の表面に印刷を施してなる水圧転写フィルム。
  12. 前記Y層面に印刷を施してなる請求項1に記載の水圧転写フィルム。
  13. 長さ35cm×幅25cmのフィルムを使用して測定した幅方向の最大カール長さが0.2〜8cmである、請求項1または1に記載の水圧転写フィルム。
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