JP5288063B2 - 銀粉及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、銀粉及びその製造方法に関し、より詳しくは電子機器の配線層、電極等の形成に利用される銀ペーストの主たる成分となる銀粉及びその製造方法に関する。
本出願は、日本国において2011年6月8日に出願された日本特許出願番号特願2011−128015を基礎として優先権を主張するものであり、これらの出願を参照することにより、本出願に援用される。
電子機器の配線層や電極等の形成には、樹脂型銀ペーストや焼成型銀ペースト等の銀ペーストが広く使用されている。配線層や電極等の導電膜は、銀ペーストを塗布又は印刷した後、加熱硬化あるいは加熱焼成することで形成される。
例えば、樹脂型銀ペーストは銀粉、樹脂、硬化剤、溶剤等からなり、この樹脂型銀ペーストを導電体回路パターン又は端子上に印刷した後、100℃〜200℃で加熱硬化させ導電膜とすることにより、配線や電極を形成する。また、焼成型銀ペーストは、銀粉、ガラス、溶剤などからなり、この焼結型銀ペーストを導電体回路パターン又は端子上に印刷した後、600℃〜800℃に加熱焼成させて導電膜とすることにより、配線や電極を形成する。銀ペーストを加熱して形成されたこれらの配線や電極の導電性には、銀粉の充填性と焼結性が重要である。
導電性銀ペーストには一般的に粒径が0.1μmから数μmの銀粉が用いられているが、使用する銀粉の粒径は、目的とする配線の太さや電極の厚さに合わせて細かく選定されている。また、形成された配線の太さや電極の厚さに高い均一性が求められており、それには銀粉のペースト中での分散性が重要である。分散性の向上は充填性の向上にも繋がる。
導電性銀ペースト用銀粉に求められる特性は、用途及び使用条件により様々であるが、一般的には、ペースト中での高い分散性、及び焼結性である。ペースト中での分散性が低い銀粉を用いた場合は、配線の太さや電極の厚さが不均一となるばかりか、硬化や焼成の処理も不均一となり、導電膜の抵抗の増大や導電膜の脆化を招くことになる。また、焼結性の悪化は、導電膜の抵抗の増大に直結する。しかし、これら3つの特性については、銀粉製造プロセスの安定性、銀粉の表面処理に拠る所が大きい。
ところで、銀ペーストを作製するに際しては、まず、銀粉を溶媒等の他の構成成分と混練してなじませ、その後、3本ロールミル等で所定の圧力をかけながら混練することにより作製する。このとき、銀粉には、ロールで効率的に混練できること、すなわち良好な混練性を有することが求められる。
しかしながら、ペースト中に大きな銀粉の塊が存在すると、ロールで混練していくことによって、ペースト中の銀粉の塊がつぶれ、数mm単位の薄片状粉(フレーク)等の粗大な粉体が発生してしまう。発生したフレークをそのままペースト中に残しておくことは望ましくないため、メッシュ等を用いて篩をかけて除去するが、あまりに多くのフレークができるとメッシュの間に粗大粉体が詰まる等の不具合も生じて効率的に除去できず、生産性が著しく損なわれることになる。
また、上述のようにフレークがペースト中に発生すると、そのペーストを用いてスクリーン印刷した場合、微細なスクリーンに粗大なフレークが目詰まってしまい、パターンの正確な印刷が困難となる。
このように、フレークの発生は、ペースト作製時の混練性やスクリーン印刷する際の印刷性に大きく影響する。そのため、銀粉には、ペースト作製時の溶媒中での分散性が良好であるとともに、フレーク等の粗大な粉体が発生しないことが望まれている。
特開2004−197030号公報 特開2000−129318号公報
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、ペースト作製時に溶媒中での分散性がよく、混練時にフレーク等の粗大な粉体が発生することを抑制した銀粉及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、略球状の粒子が所定の大きさに連結し形成された凝集体を有する銀粉が、ペースト中で良好な分散性を有し、混練時にフレーク等の粗大な粉体の発生を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明に係る銀粉は、凝集力が−0.2N/cm以上0.7N/cm以下であり、粉体層せん断力測定における圧縮率が20〜50%であり、かつJIS−K6217−4法で測定したフタル酸ジブチルの吸収量が3.0〜9.0ml/100gであることを特徴とする。
また、本発明に係る銀粉の製造方法は、塩化銀と錯化剤により溶解して得られた銀錯体含有溶液と還元剤溶液とを混合し、銀錯体を還元して銀粉を製造する銀粉の製造方法であって上記銀錯体含有溶液及び上記還元剤溶液の両方、又はいずれか一方に、銀に対して0.1〜15質量%の水溶性高分子を添加し、還元後、乾燥前にカチオン系界面活性剤、又は、カチオン系界面活性剤及び脂肪酸又はその塩により表面処理することを特徴とする。
本発明によれば、ペーストの溶媒中での分散性に優れ、ペースト作製の混練時においてフレーク等の粗大な粉体の発生を効果的に抑制することができる。
銀粒子形態について模式的に示す図である。
以下、本発明に係る銀粉及びその製造方法の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限りにおいて適宜変更することができる。
説明に当たって、銀粒子形態に対する呼称を図1のように定義する。すなわち、図1(A)に示すように、銀粒子を、外見上の幾何学的形態から判断して、単位粒子と考えられるものを一次粒子と呼ぶ。また、図1(B)に示すように、一次粒子がネッキングにより2乃至3以上連結した粒子を二次粒子と呼ぶ。さらに、図1(C)に示すように、一次粒子及び二次粒子の集合体を凝集体と呼ぶ。
従来、銀ペーストの作製において、個々の一次粒子ができるだけ分散し、かつ平均粒径が0.1〜1.5μmである銀粉が用いられてきたが、このような一次粒子が分散した微細な銀粒子は、密に充填されるため、他の粒子との接点が多く凝集力が大きくなり、ペースト中において銀粒子同士が容易に凝集して大きな塊が形成されてしまう。すると、例えばペースト作製で一般的に用いられる3本ロールミルによって混練を行ったとき、その凝集した塊は壊れることなくロールにそのまま入り込み、その結果、フレーク等のmmオーダーの粗大な粉体が形成されてしまうことが分かった。
これに対し、所定の割合で一次粒子及び二次粒子が疎に凝集した凝集体を有する粒度分布の大きい銀粉の場合には、凝集体間に十分な空隙を有し、接点数が少ないため、ペースト中において大きな塊を形成せず、フレークが発生しないことが確認された。このような銀粉は、一次粒子及び二次粒子が所定の大きさで凝集して連結し、例えばぶどうの房状の図1(C)に示したような凝集体を形成している。この凝集体は、およそ5〜10μm程度の大きさであり、数個の一次粒子の比較的強い結合による二次粒子と、その二次粒子と一次粒子とが比較的弱い結合で連結した構造とからなっているものと推測される。このことから、本件発明者らは、所定の大きさに一次粒子又は二次粒子が連結した凝集体が適度に形成され、かつその凝集体が所定の強度を有するものであることにより、凝集体も1個の粒子として見た場合における銀粒子間の凝集力が低減され、分散性に優れ、ペースト作製の混練時においてフレーク等の粗大な粉体の発生を効果的に抑制し、混練性を改善できることが分かった。
すなわち、本実施の形態に係る銀粉は、凝集力が−0.2N/cm以上0.7N/cm以下であり、粉体層せん断力測定における圧縮率が20〜50%であり、かつJIS−K6217−4法で測定したフタル酸ジブチルの吸収量が3.0〜9.0ml/100gである。このような特性を有する銀粉は、ペースト作製時に溶媒中での分散性がよく、混練に際してフレーク等の粗大な粉体の発生を効果的に抑制することができる。
本実施の形態において用いられる銀粒子は、一次粒子が平均粒径0.1〜1.5μmの範囲であることが好ましい。一次粒子の平均粒径が0.1μm以上であることにより、導電性ペーストにした場合に大きな抵抗を生じさせず導電性が良好なものとなる。また、一次粒子の平均粒径が1.5μm以下とすることにより、後述するように一次粒子が所定の大きさに連結して凝集体を形成したときでも、分散性を悪化させることなく、混練性及び印刷性が良好なものとなる。
凝集力は、銀粉そのものの凝集のし易さを表すものであり、ペースト中で銀粒子が凝集する指標となる。この凝集力は、銀粉の加重のない状態におけるせん断応力と定義することができる。したがって、例えば粉体層せん断力測定装置を用いて、せん断応力と垂直応力とのグラフから求めることができ、垂直応力に対するせん断応力のグラフにおいて、Y切片のせん断応力値が凝集力となる。つまり、そのY切片が上昇するほど凝集力が大きいことを意味する。なお、垂直応力に対するせん断応力のグラフの傾きは、銀粉の内部摩擦力となり、粉体の滑りやすさの指標となる。
本実施の形態に係る銀粉は、その凝集力が−0.2N/cm以上0.7N/cm以下である。凝集力が上述した範囲内であることにより、ペースト中において過剰に銀粒子が凝集されることなく、粗大なフレークが発生することが抑制される。
フタル酸ジブチルの吸収量は、JIS−K6217−4法に基づいて測定することができる。本実施の形態に係る銀粉は、そのフタル酸ジブチルの吸収量が3.0〜9.0ml/100gである。フタル酸ジブチルの吸収量が3.0〜9.0ml/100gである銀粉は、所定の大きさで銀粒子が連結して例えばぶどうの房状の凝集体を適度に形成していることを示す。
すなわち、所定の大きさで銀粒子が連結して形成された凝集体を有する銀粉においては、空隙が多くなり、フタル酸ジブチルを滴下していくと、その凝集体を形成する銀粒子間にフタル酸ジブチルが吸収(吸油)されるようになる。凝集体の形成が少ない銀粉では、銀粒子間の空隙が少ないため、吸収量も減少する。したがって、このフタル酸ジブチルの吸収量を測定することにより、その凝集体がどの程度形成されているかを判断することができる。また、所定の吸収量を有することにより、ペーストの溶媒等の成分と銀粒子とがなじみ易くなり良好に混練することができる。
また、このフタル酸ジブチルの吸収量に基づいて、その銀粉を用いて作製したペーストの粘性を判断することもできる。上述のように、銀粒子が連結した凝集体を有する銀粉は、その凝集体を構成する粒子間にペーストの溶媒成分を取り込むようになるため、凝集体外のペースト中の溶媒成分の量が相対的に減少し、ペーストの粘度が上がる。高粘度となることによって、混練時にロール間で発生するせん断力が、銀粉を分散させる分散力として効率よくペーストに伝播し、銀粉同士が凝集せず分散しやすくなる。
なお、フタル酸ジブチルの吸収量が3.0ml/100gより少ない場合には、形成されている上述した凝集体の数が少ないことを示し、ペースト作製時にフレークを発生させてしまう。一方、吸収量が9.0ml/100gより多い場合には、銀粒子が凝集し過ぎていることを示し、分散性が悪化し、フレークを発生させてしまう。
圧縮率は、設定荷重ゼロから設定荷重を負荷した状態までの銀粉の体積減少率であり、銀粒子間の空隙量と銀粉の凝集体の構造的な強度を表す指標となる。この圧縮率は、粉体層せん断力測定装置を用いて、所定量の銀粉をセルに充填し無荷重で測定した体積(静嵩高さ)と、設定荷重(60N)を負荷した際の体積(嵩高さ)から測定することができる。粉体層せん断力測定装置により銀粉に対して荷重をかけると粉体層が圧縮されていくが、銀粒子が一次粒子に分離していると、圧縮後の粒子間の空隙量が少なくなり、圧縮率が大きい。一方、銀粒子が上述した凝集体を形成すると、凝集体の内部の空隙も含めて圧縮後の空隙が多くなるため、圧縮率が小さい。しかしながら、凝集体を形成していても、設定荷重を負荷した状態において、圧縮率が大きくなり過ぎる場合は、凝集体が十分な強度を有しておらず、混練時に容易に一次粒子に解砕されてしまうことを示している。
上述したように、本実施の形態に係る銀粉は、所定の大きさに銀粒子が連結して形成された凝集体を含有している。この凝集体が存在することにより、フレークの発生を効果的に抑制することができるため、凝集体は容易にその構造が変わるものではなく、構造的な強度を有していることが好ましい。
例えば、銀粉中に含有される凝集体は、ペースト作製の作業者の手によって容易に壊れてしまうものでは好ましくない。また、銀粉を用いてペーストを作製するに際しては、一般的に自公転ミキサー等による予備混練と3本ロールミル等による本混練が行われる。このとき、構造的強度が低い凝集体を有する銀粉の場合には、混練中の初期段階にその凝集体が壊れて一次粒子又は二次粒子となることにより、ペースト中で密に詰まり、他の粒子との接点が多くなって凝集力が大きくなるため、ペースト中で凝集し易くなり、フレークを発生させてしまう。これにより、混練性は著しく損なわれる。
したがって、形成された凝集体は構造的な強度を有し、容易に構造変化が生じないものであることが好ましい。これにより、銀粉中に凝集体が存在している状態が維持され、粘度の低下がなくフレーク等の粗大な粉体の発生を抑制することができ、良好な混練性を発揮させることができる。
本実施の形態に係る銀粉は、その圧縮率が20〜50%である。圧縮率が20%より小さい場合には、上述した凝集体の構造が強く、その凝集構造が壊れ難いことを示し、ペースト作製時にフレークを生じさせてしまう。一方で、圧縮率が50%より大きい場合には、凝集体の機械的強度が弱く容易にその凝集構造が壊れることを示し、ペースト作製時に銀粒子が密に詰まり、他の粒子との接点が多くなって凝集力が大きくなるため、ペースト中で凝集し易くなり、フレークを生じさせてしまう。
このように、凝集力が−0.2N/cm以上0.7N/cm以下であり、粉体層せん断力測定における圧縮率が20〜50%であり、かつJIS−K6217−4法で測定したフタル酸ジブチルの吸収量が3.0〜9.0ml/100gである銀粉は、所定の大きさに銀粒子が連結した空隙の多い凝集体が存在しており、かつ、その凝集体が所定の強度を維持している。このような銀粉によれば、ペースト作製時に溶媒中での分散性がよく、混練に際してフレーク等の粗大な粉体が発生することを効果的に抑制することができる。
以上のような銀粉に含まれる凝集体の存在は、以下のように平均粒径を比較することによっても判断することができる。具体的には、レーザー回折散乱法を用いて測定した体積積算の平均粒径D50と、走査型電子顕微鏡(SEM)の画像解析により得られた平均粒径DSとを比較することによって判断することができる。
レーザー回折錯乱法による粒径測定は、溶媒中で分散した単位の粒子の粒径、すなわち、凝集した粒子が含まれる場合に、単体で分散した一次粒子のみならず、その凝集体や二次粒子を含む粒径を表している。これに対し、SEMの画像解析により得られる平均粒径は、一次粒子の粒径の平均値である。したがって、D50/DSで求められる比が1より大きくなるほど、一次粒子同士が所定の割合で連結した二次粒子や凝集体が形成されていることを示す。
本実施の形態に係る銀粉は、レーザー回折散乱法を用いて測定した体積積算の平均粒径をD50とし、SEMの画像解析により得られた平均粒径をDSとしたとき、D50/DSで求められる比が1.5〜5.0となる。
なお、D50/DSで求められる比が1.5よりも小さい場合には、上述した凝集体が少なく、ペースト作製時においてフレークを生じさせてしまう可能性がある。一方で、D50/DSで求められる比が5.0より大きい場合には、銀粒子が凝集し過ぎて大きな凝集体が多量に形成されており、ペーストの溶媒中における分散安定性が悪化するとともにフレークの原因となる可能性がある。
また、凝集体の強度については、以下のように比表面積を比較することによって判断することもできる。具体的には、BET法により求められた比表面積とSEMの画像解析により得られた平均粒径から求めた比表面積とを比較することによって判断することができる。
ここで、BET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法であり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、すなわち比表面積を求める方法である。吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧力、又は容積の変化から測定する方法が多用される。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けることによって比表面積を求めることができる。
凝集体の強度は、各銀粒子間の連結の強さに関係する。BET法による測定において、粒子間の連結が弱い場合、例えば球状の一次粒子が接点でのみ連結しているような場合には、表面積は粒子が連結している接点部のみが減少するため、その結果測定される比表面積の減少は、完全に粒子が分散している状態の比表面積の合計、すなわち、一次粒子の比表面積より僅かなものとなる。これに対して、粒子間の連結が強い場合、喩えれば二次粒子がひょうたん状や雪だるま状となるように一次粒子が強く連結している場合には、太い連結部の比表面積が減少するため、その結果BET法により測定される比表面積は一次粒子の比表面積より大きく減少する。一方、上述したようにSEMの画像解析により得られる平均粒径は一次粒子の粒径の平均値であり、この平均粒径から求められる比表面積は個々の粒子を球とした表面積の総計となり、一次粒子の比表面積に近似した値となる。
したがって、BET法により求められた比表面積SSAと、SEMの画像解析により得られた平均粒径から求めた比表面積SSAとの比(SSA/SSA)は、銀粉の凝集指標や球形指標となり、これにより、上述の連結粒子がどの程度強固に連結しているかを判断することができ、凝集体の強度を判断することができる。
本実施の形態に係る銀粉は、BET法により求められた比表面積をSSAとし、SEMの画像解析により得られた平均粒径から求めた比表面積をSSAとしたとき、SSA/SSAで求められる比が1.0未満となる。このように、SSA/SSAで求められる比が1.0未満である銀粉は、形成された凝集体が所定の強度を有することを意味し、例えば混練によってもその凝集構造が維持され、ペースト作製時におけるフレークの発生を、より効果的に抑制することができる。一方で、SSA/SSAで求められる比が0.7以上であることが好ましい。0.7未満の場合、凝集が進み、粗大で強度が高い凝集体が銀粉に含まれることを示している。このような凝集体が銀粉に含まれると、スクリーン印刷をする際の目詰まりの原因になり、また銀ペーストで形成された配線層や電極の均一性を損なうおそれがある。
なお、SSA/SSAで求められる比が1.0以上の場合には、凝集体が形成されていないか、連結粒子の連結が弱い場合であり、例えば所定以上の圧力で混練処理した場合に容易にその凝集構造が壊れ、フレークを発生させてしまう可能性がある。
ところで、一般に、銀粉を用いて焼成型ペースト等を製造する場合、各構成要素を計量して所定の容器に入れ、自公転ミキサー等を用いて予備混練した後、3本ロールで本混練することによって作製する。上述のように、所定の大きさに銀粒子が連結して形成された凝集体は、その凝集構造を維持することが重要となり、ペースト作製時において予備混練及び本混練の混練処理を行っても高い水準でその凝集構造が維持されることが望ましい。つまり、その凝集体は構造の適度な安定性を有することが望ましい。
そこで、試験的に銀粉とエポキシ樹脂とを420Gの遠心力で混練してペーストを作製し、そのペースト中の銀粉をレーザー回折散乱法を用いて測定した体積積算の平均粒径D1と、その後さらに3本ロールミルにより混練して得られたペースト中の銀粉をレーザー回折散乱法を用いて測定した体積積算の平均粒径D2とを比較することによって、凝集構造の安定性を判断することができる。すなわち、一般には混練に伴って凝集体の構造が崩れていき、銀粉の平均粒径は小さくなるようにシフトするため、予備混練後の平均粒径D1と本混練後の平均粒径D2とを比較することによって、凝集体の構造の安定性を判断することができる。
本実施の形態に係る銀粉は、上述した凝集体の構造安定性の評価として、当該銀粉とエポキシ樹脂とを420Gの遠心力で混練して得られたペースト中の銀粉をレーザー回折散乱法を用いて測定した体積積算の平均粒径をD1とし、その後さらに3本ロールミルにより混練して得られたペースト中の銀粉をレーザー回折散乱法を用いて測定した体積積算の平均粒径をD2としたとき、D2/D1で求められる比が0.5〜1.5となる。
D2/D1で求められる比が0.5〜1.5であることにより、予備混練及び本混練によっても凝集体の構造が安定していると判断できる。なお、D2/D1で求められる比が0.5より小さい場合には、凝集体の構造の安定性がなく、混練によってその構造が壊れ、急激な粘度の低下を生じさせるとともにフレークを発生させる可能性がある。
なお、D1を求める場合において、銀粉とエポキシ樹脂とを420Gの遠心力で混練(予備混練)を行う装置としては、その420Gの遠心力で混練できるものであれば特に限定されず、例えば自公転ミキサー等を用いることができる。また、D2を求める場合において、3本ロールミルによる混練(本混練)は、例えば、ロール径150mm、ロール圧10barの条件で行う。
また、凝集体の構造の安定性については、上述のように混練後の平均粒径を比較することのほかに、混練後のペーストの粘度を測定することによっても評価することができる。
すなわち、上述しているように本実施の形態に係る銀粉は、所定の大きさに銀粒子(一次粒子及び二次粒子)が凝集した空隙の多い凝集体を有している。そのため、上述のようにペースト作製の初期においては、その粘度が上昇するが、凝集体の強度が弱い場合には、混練に伴って次第に粘度が小さくなるようにシフトする。したがって、試験的に銀粉とエポキシ樹脂とによりペーストを作製し、予備混練後のペーストの粘度η1と本混練後のペーストの粘度η2とを比較することによって、その凝集体の構造の安定性を判断することができる。
本実施の形態に係る銀粉は、上述した凝集体の構造安定性の評価として、当該銀粉とエポキシ樹脂とを420Gの遠心力で混練して得られたペーストを粘弾性測定装置により測定したせん断速度4sec−1における粘度をη1とし、その後さらに3本ロールミルにより混練して得られたペーストを粘弾性測定装置により測定したせん断速度4sec−1における粘度をη2としたとき、η2/η1で求められる比が0.5〜1.5となる。
η2/η1で求められる比が0.5〜1.5であることにより、予備混練及び本混練によっても凝集体の構造が安定していると判断できる。なお、η2/η1で求められる比が0.5より小さい場合には、凝集体の構造の安定性がなく、混練によってその構造が壊れ、急激な粘度の低下を生じさせるとともにフレークを発生させる可能性がある。
なお、上述のように、銀粉とエポキシ樹脂とを420Gの遠心力で混練(予備混練)を行う装置としては、例えば自公転ミキサー等を用いることができる。また、3本ロールミルによる混練(本混練)は、例えば、ロール径150mm、ロール圧10barの条件で行う。また、粘弾性測定装置についても、所望のせん断速度における粘度測定が可能なものであれば特に限定されない。
また、この粘度測定において作製する評価用のペーストの組成は、例えば銀粉を80質量%、エポキシ樹脂(100〜200P(10〜20Pa・s)/25℃、好ましくは120〜150P(12〜15Pa・s)/25℃)を20質量%とすることが好ましい。
以上のように、本実施の形態に係る銀粉は、凝集力が−0.2N/cm以上0.7N/cm以下であり、粉体層せん断力測定における圧縮率が20〜50%であり、かつJIS−K6217−4法で測定したフタル酸ジブチルの吸収量が3.0〜9.0ml/100gであるという特性を有する。すなわち、この銀粉は、所定の大きさに銀粒子が連結した空隙の多い凝集体を有しており、かつ、その凝集体は所定の強度を有する。このような銀粉によれば、ペースト作製時において溶媒中での分散性が良好となり、銀粉同士がペースト中で凝集して塊になることを抑制し、フレーク等の粗大な粉体が発生することを抑制することができる。
そして、このようなフレークの発生を抑制できる銀粉によれば、ペースト作製の混練時に混練性が損なわれることなく、またスクリーン印刷をする際にも目詰まりを防止することができ、優れた印刷性を実現することができる。
次に、上述した銀粉の製造方法について説明する。本実施の形態に係る銀粉の製造方法は、例えば塩化銀や硝酸銀を出発原料とするものであって、基本的には、塩化銀等を錯化剤により溶解して得た銀錯体を含む溶液(銀錯体含有溶液)と還元剤溶液とを混合し、銀錯体を還元して銀粒子を析出させることにより銀粒子スラリーを得る。なお、塩化銀を出発原料とした場合においては、硝酸銀を出発原料とする方法で必要とされた亜硝酸ガスの回収装置や廃水中の硝酸系窒素の処理装置を設置する必要がなく、環境への影響も少ないプロセスであることから、製造コストの低減を図ることができる。
そして、本実施の形態に係る銀粉の製造方法においては、銀錯体含有溶液及び還元剤溶液の両方、又はいずれか一方に、銀に対して0.1〜15質量%の水溶性高分子を添加する。また、より好ましくは、銀に対して3.0質量%を超えて10質量%以下の水溶性高分子を添加する。このように、銀に対して0.1〜15質量%の水溶性高分子を銀錯体含有溶液及び還元剤溶液の両方、又はいずれか一方に添加することによって、凝集力が−0.2N/cm以上0.7N/cm以下であり、粉体層せん断力測定における圧縮率が20〜50%であり、かつJIS−K6217−4法で測定したフタル酸ジブチルの吸収量が3.0〜9.0ml/100gである銀粉を製造することができる。
本実施の形態に係る銀粉の製造においては、凝集防止剤として水溶性高分子を選択することとその添加量が重要となる。還元剤溶液により還元され生成した銀粒子(一次粒子)は表面が活性であり、容易に他の銀粒子と連結して二次粒子を形成する。さらに二次粒子は凝集して凝集体を形成する。このとき、凝集防止効果が高い凝集防止剤、例えば界面活性剤や脂肪酸を用いると、二次粒子や凝集体の形成が十分に行われず、一次粒子が多くなり、適度な凝集体が形成されない。一方、凝集防止効果が低い凝集防止剤を用いた場合には、二次粒子や凝集体の形成が過剰になるため、過剰に凝集した粗大な凝集塊を含んだ銀粉となる。水溶性高分子は、適度な凝集防止効果を有するため、添加量を調整することで、二次粒子や凝集体の形成を容易に制御することが可能となり、還元剤溶液添加後の銀錯体含有溶液中に適度な大きさの凝集体を形成させることができる。
添加する水溶性高分子としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンの少なくとも1種であることが好ましい。これらの水溶性高分子によれば、特に過剰な凝集を防止するとともに、成長した核の凝集が不十分で銀粒子(一次粒子)が微細になることを防止し、所定の大きさの凝集体を有する銀粉を容易に形成できる。
ここで、水溶性高分子を添加することにより所定の大きさに銀粒子が連結して凝集体が形成されるメカニズムとしては以下のものと考えられる。すなわち、水溶性高分子を添加することにより、水溶性高分子は銀粒子表面に吸着する。このとき、銀粒子表面のほぼ全てが水溶性高分子で覆われると銀粒子がそれぞれ単体で存在するようになるが、銀に対して0.1〜15質量%の水溶性高分子を添加することで、一部水溶性高分子が存在しない表面が残り、その表面を介して銀粒子同士が連結し、凝集体を形成するものと考えられる。
このことから、水溶性高分子の添加量については、銀に対して0.1〜15質量%を添加する。水溶性高分子の添加量が銀に対して0.1質量%未満の場合には、銀粒子スラリー中での分散性が悪くなり、銀粉が過度に凝集してしまい、多くの粗大な凝集塊であるフレークを発生させてしまう。一方で、銀に対する添加量が15質量%より多い場合には、ほぼ全ての銀粒子表面が水溶性高分子で覆われてしまい、銀粒子同士が連結することができず、凝集体を形成させることができない。その結果、一次粒子からなる銀粉となり、この場合においてもペースト作製時にフレークを発生させてしまう。したがって、銀に対して0.1〜15質量%の水溶性高分子を添加することによって、適度な凝集力で銀粒子を連結させ、構造的に安定した凝集体を形成させることができ、ペースト中での分散性を良好にさせるとともに、フレークの発生を効果的に抑制することができる。
また、水溶性高分子は、銀錯体含有溶液及び還元剤溶液の両方、又はいずれか一方に添加する。銀錯体含有溶液及び還元剤溶液の両方、又はいずれか一方への水溶性高分子の添加については、還元処理に先立ち予め添加対象の溶液に添加してもよく、還元処理のための銀錯体含有溶液及び還元剤溶液の混合時に添加するようにしてもよい。
より好ましくは、水溶性高分子を、予め還元剤溶液に添加しておくとよい。このように、予め還元剤溶液に水溶性高分子を添加しておくことによって、核発生あるいは核成長の場に水溶性高分子が存在し、生成した核あるいは銀粒子の表面に迅速に水溶性高分子を吸着させ、銀粒子の凝集を効率よく制御できる。そして、さらに好ましくは、その濃度を3.0質量%を超え10質量%以下となるように添加することにより、より適度に銀粒子を所定の大きさまで連結させて安定性の高い凝集体を形成させることができ、フレークの発生をより効果的に抑制できる。
なお、水溶性高分子を、予め銀錯体含有溶液に添加した場合には、核発生あるいは核成長の場に水溶性高分子が供給され難く、銀粒子の表面に適度に水溶性高分子を吸着させることができないおそれがある。そのため、予め銀錯体含有溶液に添加する場合には、水溶性高分子の添加量を3.0質量%を超える量とすることが好ましい。
次に、銀粉の製造方法について、工程毎にさらに具体的に説明する。まず、還元工程においては、錯化剤を用いて塩化銀等の出発原料を溶解し、銀錯体を含む溶液を調製する。錯化剤としては、特に限定されるものではないが、塩化銀等と錯体を形成し易くかつ不純物として残留する成分が含まれないアンモニア水を用いることが好ましい。また、塩化銀を用いる場合には、高純度のものを用いることが好ましい。
塩化銀等の溶解方法としては、例えば錯化剤としてアンモニア水を用いる場合、塩化銀等のスラリーを作製してアンモニア水を添加してもよいが、錯体濃度を高めて生産性を上げるためにはアンモニア水中に塩化銀を添加して溶解することが好ましい。溶解に用いるアンモニア水は、工業的に用いられる通常のものでよいが、不純物混入を防止するため可能な限り高純度のものが好ましい。
次に、銀錯体溶液と混合する還元剤溶液を調製する。還元剤としては、アスコルビン酸、ヒドラジン、ホルマリン等の還元力が強いものを用いることが好ましい。アスコルビン酸は、銀粒子中の結晶粒が成長し易く特に好ましい。ヒドラジン又はホルマリンは、銀粒子中の結晶を小さくすることができる。また、反応の均一性又は反応速度を制御するために、還元剤を純水等で溶解又は希釈して濃度調整した水溶液として用いることもできる。
上述したように、この銀粉の製造方法においては、銀錯体含有溶液及び還元剤の両方、又はいずれか一方に、銀に対して0.1〜15質量%の水溶性高分子を添加するが、このとき、水溶性高分子の添加により還元反応時に発泡することがあるため、銀錯体溶液又は還元剤混合液に消泡剤を添加することもできる。消泡剤としては、特に限定されるものではなく、通常還元時に用いられているものでよい。ただし、還元反応を阻害させないため、消泡剤の添加量は消泡効果が得られる最小限程度にしておくことが好ましい。
なお、銀錯体溶液及び還元剤溶液を調製する際に用いる水については、不純物の混入を防止するため、不純物が除去された水を用いることが好ましく、純水を用いることが特に好ましい。
次に、上述のようにして調製した銀錯体溶液と還元剤溶液とを混合し、銀錯体を還元して銀粒子を析出させる。この還元反応は、バッチ法でもよく、チューブリアクター法やオーバーフロー法のような連続還元法を用いて行ってもよい。また、銀粒子の粒径は、銀錯体溶液と還元剤溶液の混合速度や銀錯体の還元速度で制御することが可能であり、目的とする粒径に容易に制御することができる。
還元工程で得られた銀粒子は、表面に多量の塩素イオン及び水溶性高分子が吸着している。したがって、銀ペーストを用いて形成される配線層や電極の導電性を十分なものとするために、得られた銀粒子のスラリーを次の洗浄工程において洗浄し、表面吸着物を洗浄により除去することが好ましい。なお、後述するが、銀粒子表面に吸着した水溶性高分子を除去することにより過剰な凝集が生じることを抑制するために、洗浄工程は、銀粒子への表面処理工程後等に行うことが好ましい。
洗浄方法としては、特に限定されるものではないが、スラリーからフィルタープレス等で固液分離した銀粒子を洗浄液に投入し、撹拌機又は超音波洗浄器を使用して撹拌した後、再び固液分離して銀粒子を回収する方法が一般的に用いられる。また、表面吸着物を十分に除去するためには、洗浄液への投入、撹拌洗浄、及び固液分離からなる操作を、数回繰り返して行うことが好ましい。
洗浄液は、水を用いてもよいが、塩素を効率よく除去するためにアルカリ水溶液を用いてもよい。アルカリ溶液としては、特に限定されるものではないが、残留する不純物が少なくかつ安価な水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。洗浄液として水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合、水酸化ナトリウム水溶液での洗浄後、ナトリウムを除去するために銀粒子又はそのスラリーをさらに水で洗浄することが望ましい。
また、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は0.01〜1.00mol/lとすることが好ましい。濃度が0.01mol/l未満では洗浄効果が不十分であり、一方で濃度が1.00mol/lを超えると、銀粒子にナトリウムが許容以上に残留することがある。なお、洗浄液に用いる水は、銀粒子に対して有害な不純物元素を含有していない水が好ましく、特に純水を用いることが好ましい。
本実施の形態に係る銀粉の製造においては、銀錯体含有溶液中で還元され形成された凝集体がさらに凝集して粗大な凝集塊を形成する前に、その形成された凝集体の表面を凝集防止効果が高い処理剤で表面処理して過剰な凝集を防止することが第2に重要な要素となる。すなわち、上述した凝集体が形成された後、過剰な凝集が進行する前に、銀粒子を界面活性剤で処理するか、より好ましくは界面活性剤と分散剤で処理する銀粒子への表面処理工程を行う。これにより、過剰な凝集が生じることを防止でき、所望とする凝集体の構造的な安定性を維持させ、フレークの発生をより効果的に抑制できる。
過剰な凝集は、乾燥によって特に進行することから、表面処理は、銀粒子が乾燥する前であればいずれの段階で行っても効果が得られる。例えば、還元工程後であり上述した洗浄工程前、洗浄工程と同時、あるいは洗浄工程後に行うことができる。
その中でも、特に、還元工程後であり洗浄工程の前に行うことが好ましい。または、1回の洗浄工程後に行うことが好ましい。これにより、還元処理を経て形成された、所定の大きさに凝集した凝集体を維持することができ、その凝集体を含めた銀粒子に表面処理が施されるため、分散性のよい銀粉を製造することができる。
より具体的に説明すると、本実施の形態に係る銀粉の製造方法においては、上述したように、銀に対して0.1〜15質量%の水溶性高分子を添加することによって、銀粒子表面に適度に水溶性高分子を吸着させて、所定の大きさに銀粒子が連結した凝集体を形成させている。しかしながら、銀粒子表面に吸着させた水溶性高分子は、比較的容易に洗浄工程によって洗浄されてしまう。そのため、表面処理に先立って洗浄工程を行った場合には、銀粒子表面の水溶性高分子が洗浄され、銀粒子同士が互いに過度な凝集をはじめ、形成された凝集体よりも大きく多量の凝集塊が形成されるおそれがある。そして、これによりフレークの原因になってしまう可能性が生じる。
したがって、このことから、表面処理工程は、洗浄工程よりも前、もしくは1回の洗浄工程後、すなわち、銀粒子表面に少なくとも銀粒子の凝集を抑制できる量の水溶性高分子が残存した状態で行うことが好ましい。なお、還元処理後であり洗浄工程前の表面処理は、還元工程終了後に銀粒子を含有するスラリーをフィルタープレス等で固液分離した後でもよい。このように固液分離後に表面処理を行うことによって、生成された銀粒子に対して直接表面処理剤である界面活性剤や分散剤を作用させることができるので、形成された凝集体に的確に表面処理剤が吸着し、過剰な凝集により凝集構造が大きくなってフレークが発生することを効果的に抑制できる。
この表面処理工程では、界面活性剤と分散剤の両方で表面処理することがより好ましい。このように界面活性剤と分散剤の両方で表面処理すると、その相互作用により銀粒子表面に強固な表面処理層を形成することができるため、過剰な凝集の防止効果が高く、所望とする凝集体を維持することに有効である。界面活性剤と分散剤を用いる好ましい表面処理の具体的方法としては、銀粒子を界面活性剤及び分散剤を添加した水中に投入して撹拌するか、界面活性剤を添加した水中に投入して撹拌した後、さらに分散剤を添加して撹拌すればよい。また、洗浄工程と同時に表面処理を行う場合には、洗浄液に界面活性剤及び分散剤を同時に添加するか、又は界面活性剤の添加後に分散剤を添加すればよい。銀粒子への界面活性剤及び分散剤の吸着性をより良好にするためには、界面活性剤を添加した水又は洗浄液に銀粒子を投入して撹拌した後、分散剤をさらに添加し撹拌することが好ましい。
ここで、界面活性剤としては、特に限定されないが、カチオン系界面活性剤を用いることが好ましい。カチオン系界面活性剤は、pHの影響を受けることなく正イオンに電離するため、例えば塩化銀を出発原料とした銀粉への吸着性の改善効果が得られる。
カチオン系界面活性剤は、特に限定されるものではないが、モノアルキルアミン塩に代表されるアルキルモノアミン塩型、N−アルキル(C14〜C18)プロピレンジアミンジオレイン酸塩に代表されるアルキルジアミン塩型、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドに代表されるアルキルトリメチルアンモニウム塩型、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドに代表されるアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩型、アルキルジポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライドに代表される4級アンモニウム塩型、アルキルピリジニウム塩型、ジメチルステアリルアミンに代表される3級アミン型、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンアルキルアミンに代表されるポリオキシエチレンアルキルアミン型、N、N’、N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−アルキル(C14〜18)1,3−ジアミノプロパンに代表されるジアミンのオキシエチレン付加型から選択される少なくとも1種が好ましく、4級アンモニウム塩型、3級アミン塩型のいずれか又はその混合物がより好ましい。
また、界面活性剤は、メチル基、ブチル基、セチル基、ステアリル基、牛脂、硬化牛脂、植物系ステアリルに代表されるC4〜C36の炭素数を持つアルキル基を少なくとも1個有することが好ましい。アルキル基としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸から選択される少なくとも1種を付加されたものであることが好ましい。これらのアルキル基は、後述する分散剤として用いる脂肪酸との吸着が強いため、界面活性剤を介して銀粒子に分散剤を吸着させる場合に脂肪酸を強く吸着させることができる。
また、界面活性剤の添加量は、銀粒子に対して0.002〜1.000質量%の範囲が好ましい。界面活性剤はほぼ全量が銀粒子に吸着されるため、界面活性剤の添加量と吸着量はほぼ等しいものとなる。界面活性剤の添加量が0.002質量%未満になると、銀粒子の凝集抑制あるいは分散剤の吸着性改善の効果が得られないことがある。一方、添加量が1.000質量%を超えると、銀ペーストを用いて形成された配線層や電極の導電性が低下するため好ましくない。
分散剤としては、例えば脂肪酸、有機金属、ゼラチン等の保護コロイドを用いることができるが、不純物混入のおそれがなくかつ界面活性剤との吸着性を考慮すると、脂肪酸又はその塩を用いることが好ましい。なお、脂肪酸又はその塩は、エマルジョンとして添加してもよい。
分散剤として用いる脂肪酸としては、特に限定されるものではないが、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸、リノレン酸から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの脂肪酸は、沸点が比較的低いため、銀ペーストを用いて形成された配線層や電極への悪影響が少ないからである。
また、分散剤の添加量は、銀粒子に対して0.01〜3.00質量%の範囲が好ましく、銀粒子に対して0.01〜1.00質量%の範囲がより好ましい。分散剤の種類により銀粒子への吸着量は異なるが、添加量が0.01質量%未満になると、銀粒子の凝集抑制あるいは分散剤の吸着性改善の効果が十分に得られる量の分散剤が銀粉に吸着されないことがある。一方、分散剤の添加量が3.00質量%を超えると、銀粒子に吸着される分散剤が多くなり、銀ペーストを用いて形成された配線層や電極の導電性が十分に得られないことがある。
洗浄及び表面処理を行った後、固液分離して銀粒子を回収する。なお、洗浄及び表面処理に用いられる装置は、通常用いられるものでよく、例えば撹拌機付きの反応槽等を用いることができる。また、固液分離に用いられる装置も、通常用いられるものでよく、例えば遠心機、吸引濾過機、フィルタープレス等を用いることができる。
洗浄及び表面処理が終了した銀粒子は、乾燥工程において水分を蒸発させて乾燥させる。乾燥方法としては、例えば、洗浄及び表面処理の終了後に回収した銀粉をステンレスパッド上に置き、大気オーブン又は真空乾燥機等の市販の乾燥装置を用いて、40〜80℃の温度で加熱すればよい。
さらに、乾燥後の銀粉を解砕し、分級処理する。上述した表面処理後の銀粉は、その後の乾燥等により凝集体間でさらに凝集していても、その結合力は弱いため、ペースト作製時に所定の大きさの凝集体まで容易に分離する。しかしながら、ペーストを安定化させるためには、解砕し分級処理することが好ましい。解砕方法は、特に限定されるものではないが、ジェットミル、高速撹拌機等の解砕力が弱い装置を用いることが好ましい。解砕力が強い装置では、上述した凝集体までも解砕されるか、銀粉が変形することがあり好ましくない。また、解砕条件としては、形成された凝集体が維持される程度に調整すればよい。分級装置は、特に限定されるものではなく、気流式分級機、篩い等を用いることができる。
以下に、本発明の具体的な実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
38℃の温浴中で液温36℃に保持した25%アンモニア水36Lに、塩化銀2492g(住友金属鉱山(株)製)を撹拌しながら投入して銀錯体溶液を作製し、得られた銀錯体溶液を温浴中で36℃に保持した。
一方、還元剤のアスコルビン酸1068g(関東化学(株)製、試薬)を、36℃の純水14Lに溶解して還元剤溶液とした。次に、水溶性高分子であるポリビニルアルコール64.1g((株)クラレ製、PVA205、銀に対して3.5質量%)を36℃の純水550mlに溶解した後、還元剤溶液に混合した。
作製した銀錯体溶液と還元剤溶液とを、モーノポンプ(兵神装備(株)製)を使用し、銀錯体溶液2.7L/min、還元剤溶液0.9L/minで混合管内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で127g/minである。また、銀の供給速度に対する還元剤の供給速度の比は1.4とした。なお、混合管には内径25mm及び長さ725mmの塩ビ製パイプを使用した。銀錯体の還元により得られた銀粒子を含むスラリーは撹拌しながら受槽に受け入れた。
その後、還元により得られた銀粒子スラリーへ、表面処理剤として市販のカチオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン付加4級アンモニウム塩0.88g(クローダジャパン(株)製、商品名 シラソルG−265、銀粒子に対して0.048質量%)及び分散剤であるステアリン酸エマルジョン16.47g(中京油脂(株)製、セロゾール920、銀粒子に対して0.90質量%)を投入し、60分間撹拌して表面処理を行った。表面処理後、銀粒子スラリーをフィルタープレスを使用して濾過し、銀粒子を固液分離した。
引き続き、回収した銀粒子が乾燥する前に、銀粒子を40℃に保持した0.2質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液23L中に投入し、15分間撹拌して洗浄した後、フィルタープレスで濾過し、銀粒子を回収した。
次に、回収した銀粒子を、40℃に保持した23Lの純水中に投入し、撹拌及び濾過した後、銀粒子をステンレスパッドに移し、真空乾燥機にて60℃で10時間乾燥した。続いて、乾燥した銀粒子を、5Lの高速攪拌機(日本コークス工業(株)製、FM5C)を用いて、周速22.7m/秒で解砕を行った。解砕処理後、銀粒子を気流式分級機(日本鉱業(株)、EJ−3)を用い、分級点7μmとして粗大粒子を除去し、銀粒子を得た。
得られた銀粒子について、粉体層せん断力測定装置((株)ナノシーズ製、NS−S300)を用いて凝集力を測定した。測定は、銀粉18gを使用し、内径15mmの測定容器に入れ、設定の印加荷重を20N、40N、60Nとして、銀粉を入れた状態で連続的に測定した。このとき、銀粉への押し込み速度は0.2mm/秒とし、設定の印加荷重まで達したら押し込みを停止し、そこから100秒待機させた後にせん断力測定のため横摺りを10μm/秒の速度で開始し、せん断力を測定した。なお、せん断力のサンプリング周波数は10Hzとした。せん断力の最大値及び横摺り開始直前の垂直荷重から、20N、40N、60Nの各設定印加荷重におけるせん断応力及び垂直応力を求め、垂直応力に対するせん断応力のグラフを作り、これら3点について最小自乗法を用いた直線の関係式を求めた。その結果、Y切片に相当する凝集力は0.37N/cmであった。また、圧縮率は印加荷重を60Nとしたときの値であり、30.1%であった。また、吸収量測定装置((株)あさひ総研製)を用いてJIS−K6217−4法で測定したフタル酸ジブチルの吸収量は6.9ml/100gであった。
また、SEM観察により測定した銀粉の平均粒径DSは1.12μmであった。また、イソプロピルアルコール中に銀粉を分散させレーザー回折散乱法を用いて測定した体積積算の平均粒径D50は2.37μmであった。よって、D50/DSで求められる比は2.12であった。また、BET法により測定した比表面積SSAは0.42m/gであり、SEM観察により得られた平均粒径DSから求められた比表面積SSAは0.51m/gであり、SSA/SSAで求められる比は0.82であった。
次に、得られた銀粉を80質量%、エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、819)を20質量%となるように秤量し、自公転ミキサー((株)シンキー製、ARE−250)を用いて、420Gの遠心力で混練してペースト化した後、さらに3本ロールミル(ビューラー(株)製、3本ロールミル SDY−300)を用いて混練して評価を行った。3本ロールミルによる混練中、目視によるフレークの発生は認められず、混練性は良好であった。
得られたペーストについて、粘弾性測定装置(Anton Paar社、MCR−301)を用いてせん断速度4sec−1における粘度を求めた。自公転ミキサーによる混練後の粘度η1は62.7(Pa・s)であり、3本ロールミルによる混練後の粘度η2は56.3(Pa・s)であり、η2/η1で求められる比は0.90であった。
また、3本ロールミルによる混練を行ったペースト2gをイソプロピルアルコール40ml中に投入して超音波分散を行った後、開口20μmの篩を用いて吸引ろ過を行い、篩上の粒子を採取し500倍のSEM像より数を測定した。その結果、20μm以上の粒子は2個であった。また、イソプロピルアルコール中にペーストを分散させ、レーザー回折散乱法を用いて体積積算の平均粒径を測定したところ、自公転ミキサーによる混練後のペーストの平均粒径D1が2.35μm、3本ロールミル後の平均粒径D2が2.10μmであり、D2/D1で求められる比は0.89であった。
以上のように、実施例1では、所定の大きさに銀粒子が連結した凝集体が形成されたことにより、ペースト中にフレークがほとんど発生しないことが確認された。また、自公転ミキサーによる混練後と3本ロールミルによる混練後で粘度と平均粒径の変化が少なく、その凝集体の凝集構造は維持されていたことが分かった。
[実施例2]
実施例2では、水溶性高分子であるポリビニルアルコールの量を183g(銀に対して10質量%)としたこと以外は、実施例1と同様にして銀粉を製造した。
得られた銀粉について、実施例1と同様に評価した結果、凝集力は0.14N/cmであり、圧縮率は35.0%であった。また、JIS−K6217−4法で測定したフタル酸ブチルの吸収量は7.0ml/100gであった。
また、SEM観察により測定した銀粉の平均粒径DSは1.05μmであった。また、イソプロピルアルコール中に銀粉を分散させレーザー回折散乱法を用いて測定した体積積算の平均粒径D50は2.16μmであった。よって、D50/DSで求められる比は2.06であった。また、BET法により測定した比表面積SSAは0.46m/gであり、SEM観察により得られた平均粒径DSから求められた比表面積SSAは0.55m/gであり、SSA/SSAで求められる比は0.84であった。
次に、実施例1と同様にして、得られた銀粉を用いてペーストを作製した。実施例2においても、3本ロールミルを用いてペースト化した際に目視によるフレーク発生は認められず、混練性は良好であった。
得られたペーストについて、粘弾性測定装置(Anton Paar社、MCR−301)を用いてせん断速度4sec−1における粘度を求めたところ、自公転ミキサーによる混練後の粘度η1は58.6(Pa・s)であり、3本ロールミルによる混練後の粘度η2は46.4(Pa・s)であり、η2/η1で求められる比は0.79であった。
また、3本ロールミルによる混練を行ったペースト2gをイソプロピルアルコール40ml中に投入して超音波分散を行った後の開口20μm篩上のフレーク個数は6個であることが確認された。また、イソプロピルアルコール中にペーストを分散させレーザー回折散乱法を用いて体積積算の平均粒径を測定したところ、自公転ミキサーによる混練後のペーストの平均粒径D1が2.14μm、3本ロールミル後の平均粒径D2が2.13μmであり、D2/D1で求められる比は0.99であった。
以上のように、実施例2では、実施例1と同様に、所定の大きさに銀粒子が連結した凝集体が形成されたことにより、ペースト中にフレークがほとんど発生しないことが確認された。また、自公転ミキサーによる混練後と3本ロールミルによる混練後で、粘度と平均粒径の変化が少なく、その凝集体の凝集構造は維持されていたことが分かった。
[比較例1]
比較例1では、水溶性高分子であるポリビニルアルコールの量を329.4g(銀に対して18質量%)としたこと以外は、実施例1と同様にして銀粉を製造した。
得られた銀粉について、実施例1及び2と同様に評価した結果、凝集力は0.80N/cmであり、圧縮率は38.1%であった。また、JIS−K6217−4法で測定したフタル酸ブチルの吸収量は2.5ml/100gであった。
また、SEM観察により測定した銀粉の平均粒径DSは1.04μmであった。また、イソプロピルアルコール中に銀粉を分散させレーザー回折散乱法を用いて測定した体積積算の平均粒径D50は1.51μmであった。よって、D50/DSで求められる比は1.45であった。また、BET法により測定した比表面積SSAは0.62m/gであり、SEM観察により得られた平均粒径DSから求められた比表面積SSAは0.55m/gであり、SSA/SSAで求められる比は1.13であった。
次に、実施例1及び2と同様に、得られた銀粉を用いてペーストを作製した。すると、3本ロールミルを用いてペースト化したところ、目視によるフレーク発生が認められた。
得られたペーストについて、粘弾性測定装置(Anton Paar社、MCR−301)を用いてせん断速度4sec−1における粘度を求めたところ、自公転ミキサーによる混練後の粘度η1は42.8(Pa・s)であり、3本ロールミルによる混練後の粘度η2は38.1(Pa・s)であり、η2/η1で求められる比は0.89であり、粘度の変化は小さかった。
また、3本ロールミルによる混練を行ったペースト2gをイソプロピルアルコール40ml中に投入して超音波分散を行った後の開口20μm篩上のフレーク個数は36個であり、多数のフレークが発生したことが確認された。また、イソプロピルアルコール中にペーストを分散させレーザー回折散乱法を用いて体積積算の平均粒径を測定したところ、自公転ミキサー後の平均粒径D1が1.62μm、3本ロールミル後の平均粒径D2が1.56μmであり、D2/D1で求められる比は0.96で、D1とD2がほぼ同じであり、自公転ミキサーの混練によって銀粉は分散されていた。
以上のように、比較例1では、急激な粘度の低下や分散性の低下は生じなかったものの、フレークが多量に発生し、混練性の低下を招いた。このことは、凝集体の形成が十分ではなく、またその凝集構造の強度も弱く混練によって容易に解れてしまったために、過剰な凝集を生じさせてしまったと考えられる。
[比較例2]
比較例2では、水溶性高分子であるポリビニルアルコールの量を0.92g(銀に対して0.05質量%)としたこと以外は、実施例1と同様にして銀粉を製造した。
得られた銀粉について、実施例1及び2と同様に評価した結果、凝集力は−0.82N/cmであり、圧縮率は18.4%であった。また、JIS−K6217−4法で測定したフタル酸ブチルの吸収量は14.8ml/100gであった。
また、SEM観察により測定した銀粉の平均粒径DSは1.02μmであった。また、イソプロピルアルコール中に銀粉を分散させレーザー回折散乱法を用いて測定した体積積算の平均粒径D50は5.92μmであった。よって、D50/DSで求められる比は5.80であった。また、BET法により測定した比表面積SSAは0.12m/gであり、SEM観察により得られた平均粒径DSから求められた比表面積SSAは0.56m/gであり、SSA/SSAで求められる比は0.21であった。
次に、実施例1及び2と同様に、得られた銀粉を用いてペーストを作製した。すると、自公転ミキサーによる混練では、非常に硬いペーストとなった。さらに、3本ロールミルを用いて混練したところ、混練中にフレークの発生が確認された。
得られたペーストについて、粘弾性測定装置(Anton Paar社、MCR−301)を用いてせん断速度4sec−1における粘度を求めたところ、自公転ミキサーによる混練後の粘度η1は211.3(Pa・s)であり、3本ロールミルによる混練後の粘度η2は95.1(Pa・s)であり、η2/η1で求められる比は0.45であった。
また、3本ロールミルによる混練を行ったペースト2gをイソプロピルアルコール40ml中に投入して超音波分散を行った後の開口20μm篩上のフレーク個数は134個であり、特に50μmを超える大きなフレークが発生したことが確認された。また、イソプロピルアルコール中にペーストを分散させレーザー回折散乱法を用いて体積積算の平均粒径を測定したところ、自公転ミキサー後の平均粒径D1が5.94μm、3本ロールミル後の平均粒径D2が2.49μmであり、D2/D1で求められる比は0.42であった。
以上のように、比較例2では、ペースト中に多量のフレークが発生し、また急激な粘度の低下や分散性の低下を生じさせ、ペースト化が困難であったとともに混練性の著しい低下を招いた。このことは、過剰に凝集した大きな凝集塊が多量に形成され、解れにくい銀粉となったためと考えられる。
下記の表1に各実施例及び比較例における評価結果をまとめて示す。
Figure 0005288063
なお、実施例1及び2と、比較例1の銀粉を用いて、エポキシ樹脂、硬化剤(フェノール樹脂)及び溶剤(トリメチレングリコール、ジプロレングリコ−ル)を混練し、市販型の一般的な銀ペーストを作製して、混練性を確認した。なお、混練には、量産型のニーダーと3本ロールを用い、予備混練と本混練を行った。
その結果、実施例1及び2の銀粉を用いて作製したペーストでは、フレークの発生がほとんどなく良好な混練性を示した。一方で、比較例1の銀粉を用いて作製したペーストでは、フレーク発生が多く混練性が悪い結果となった。
以上の結果から分かるように、銀粉が、凝集力が−0.2以上0.7N/cm以下であり、粉体層せん断力測定における圧縮率が20〜50%であり、かつJIS−K6217−4法で測定したフタル酸ジブチルの吸収量が3.0〜9.0ml/100gであることにより、ペースト作製時においてフレークの発生を効果的に抑制することができ、良好な混練性を発揮できることが分かった。また、適度な粘度を維持でき、優れた印刷性を実現できることも分かった。

Claims (11)

  1. 凝集力が−0.2N/cm以上0.7N/cm以下であり、粉体層せん断力測定における圧縮率が20〜50%であり、かつJIS−K6217−4法で測定したフタル酸ジブチルの吸収量が3.0〜9.0ml/100gであることを特徴とする銀粉。
  2. レーザー回折散乱法を用いて測定した体積積算の平均粒径をD50とし、SEMの画像解析により得られた平均粒径をDSとしたとき、D50/DSで求められる比が1.5〜5.0であることを特徴とする請求項1記載の銀粉。
  3. BET法により求められた比表面積をSSAとし、SEMの画像解析により得られた平均粒径から求めた比表面積をSSAとしたとき、SSA/SSAで求められる比が1.0未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の銀粉。
  4. 当該銀粉とエポキシ樹脂とを420Gの遠心力で混練して得られたペースト中の銀粉をレーザー回折散乱法を用いて測定した体積積算の平均粒径をD1とし、その後さらに3本ロールミルにより混練して得られたペースト中の銀粉をレーザー回折散乱法を用いて測定した体積積算の平均粒径をD2としたとき、D2/D1で求められる比が0.5〜1.5であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の銀粉。
  5. 当該銀粉とエポキシ樹脂とを420Gの遠心力で混練して得られたペーストを粘弾性測定装置により測定したせん断速度4sec−1における粘度をη1とし、その後さらに3本ロールミルにより混練して得られたペーストを粘弾性測定装置により測定したせん断速度4sec−1における粘度をη2としたとき、η2/η1で求められる比が0.5〜1.5であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の銀粉。
  6. 塩化銀と錯化剤により溶解して得られた銀錯体含有溶液と還元剤溶液とを混合し、銀錯体を還元して銀粉を製造する銀粉の製造方法において、
    上記銀錯体含有溶液及び上記還元剤溶液の両方、又はいずれか一方に、銀に対して0.1〜15質量%の水溶性高分子を添加し、還元後、乾燥前にカチオン系界面活性剤、又は、カチオン系界面活性剤及び脂肪酸又はその塩により表面処理することを特徴とする銀粉の製造方法。
  7. 上記表面処理を、洗浄前、もしくは1回の洗浄後で、少なくとも銀粒子の凝集を抑制できる量の水溶性高分子が銀粒子表面に残存した状態で行うことを特徴とする請求項6記載の銀粉の製造方法。
  8. 上記洗浄を0.01〜1.00mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて行うことを特徴とする請求項7記載の銀粉の製造方法。
  9. 上記水溶性高分子は、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項記載の銀粉の製造方法。
  10. 上記水溶性高分子を、上記還元剤溶液に予め添加しておくことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項記載の銀粉の製造方法。
  11. 上記還元剤溶液は、アスコルビン酸、ヒドラジン及びホルマリンから選択される少なくとも1種を含有する溶液であることを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項記載の銀粉の製造方法。
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