JP2018035424A - 銀粉の製造方法及び銀粉 - Google Patents

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俊昭 寺尾
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Takahiro Kamata
隆弘 鎌田
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Abstract

【課題】混練する際に、銀粉が粗大に凝集した凝集塊を生成せず、安定してフレークの発生を抑制される銀ペーストの原料となる銀粉と、その製造方法の提供。
【解決手段】銀塩を錯化剤によって銀錯体とし、該銀錯体を還元して銀粉を得る銀粉の製造方法において、前記銀塩を錯化剤の含む溶液に溶解し銀錯体溶液とする銀錯体化工程S1と、該銀錯体溶液と還元剤溶液とを混合し銀錯体を還元して銀スラリーを得る還元工程S2と、該銀スラリーを洗浄、乾燥し銀乾燥物を回収する回収工程S3と、該銀乾燥物を解砕し銀粉を得る解砕工程S4と、を有し、銀錯体化工程S1における銀錯体溶液、還元工程S2における還元剤溶液から選ばれる1種以上の溶液に含まれる銀に対し、合計して1.5〜5質量%の水溶性高分子を添加し、かつ、解砕工程S4において、羽根の周速が5〜40m/s、好ましくは5〜30m/s、である攪拌羽根を備えた整粒機を用いる銀粉の製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、銀粉の製造方法及び銀粉に関するものであり、更に詳しくは、電子機器の配線層や電極などに使用される銀ペーストの原料となる銀粉の製造方法及び銀粉に関する。
電子機器の配線層や電極などの形成には、樹脂型、焼成型の銀ペーストが多用されている。近年、部品電極または回路基板用パターンなどの電子部品の微細化に伴い、銀ペースト中の銀粉の分散性が強く求められ、それに応えるべく銀粉の分散性を向上させる銀粉の製造方法が提案されてきている。
例えば、特許文献1には、滑剤を表面に持った扁平状の銀粉を原料とし、これを分散させた溶剤と塩基性化合物を含む溶剤とを混合した後に溶剤を分離洗浄するという方法により、大きさのそろった、容易に一次粒子に解凝集できる塊状の形状を持った凝集構造の銀粉を製造することができ、この銀粉を特定量用いた導電性接着剤は高分散性で、銀粉の分散不良に由来する導電性の悪化を引き起こすことなく、安定した電気伝導性を発現できることが開示されている。
特許文献2には、銀粒子の凝集を防ぎ還元剤の拡散を促進するために非イオン性界面活性剤を加えておき、還元剤含有水溶液の添加速度を早くすることで優れた分散性を有する銀粉が得られることが提案されている。
特許文献3には、次式から定義される凝集度、
凝集度=凝集粒子平均径/一次粒子平均径
を制御することにより、熱硬化性樹脂を主成分とするバインダーに、導電性粒子を分散性良く分散させることで、粘度を抑えた導電性ペーストが提案されている。
特許文献4には、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50と画像解析により得られる平均粒径DIAとの比D50/DIAから定義した凝集度をコントロールすることにより、その銀粉を用いて製造する導電性ペーストの粘度のコントロールが可能となることを見出し、上記低凝集性の銀粉を得るために、エチレンジアミンテトラ酢酸塩を用いた銀キレート錯体スラリーを湿式還元する製造方法が開示されている。
ここで、特許文献1〜4に提案されているような分散性の良い銀粉を用いた場合には、銀ペースト作製時にペーストの粘度低下が大きくなりやすく、フレーク発生の可能性がある。
このため特許文献5では、一次粒子から形成された二次粒子と、一次粒子及び二次粒子の集合体からなる凝集体を含み、BET法により測定した比表面積が0.3〜1.5m/gであり、JIS−K6217−4法で測定したフタル酸ジブチルの吸収量が7.0〜9.5ml/100gであり、かつ吸収量測定時の吸油プロファイルに2個のピーク又は半値幅が1.5ml/100g以下の1個のピークを有することにより、ペースト製造時に適切な粘度範囲を有し、混練が容易でフレークの発生を抑制した銀粉及びその製造方法が提案されている。
特開2004−197030号公報 特開2000−129318号公報 特開2004−265901号公報 特開2004−100013号公報 特開2015―183200号公報
しかし、上記銀粉及びその製造方法によれば、ペーストを混練する際にフレークの発生は抑制されるが、その後の検討によれば、粒度分布の調整のために強い解砕を必要とする場合には、二次粒子のネッキングが破壊され、溶媒、樹脂等、他の構成成分とのなじみの悪化から、混練時にフレークが発生することがあり、製造安定性に欠ける。
また、吸油プロファイルを特定形状に制御するために、異なる吸油プロファイル、つまり、異なる粒度分布を有する銀粉を追加混合することが提案されていたが、追加混合する銀粉を別途確保しておく必要があることから、追加混合を必要とせず、混練時にフレークの発生を防止できる銀粉及びその製造方法が望まれている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、混練時にフレークの発生が抑制される銀ペーストの原料となる銀粉と、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、銀塩を錯化剤によって銀錯体とし、該銀錯体を還元して銀粉を得る銀粉の製造方法において、前記銀塩を錯化剤の含む溶液に溶解し銀錯体溶液とする銀錯体化工程と、該銀錯体溶液と還元剤溶液とを混合し銀錯体を還元して銀スラリーを得る還元工程と、該銀スラリーを洗浄、乾燥し銀乾燥物を回収する回収工程と、該銀乾燥物を解砕し銀粉を得る解砕工程と、を有し、前記銀錯体化工程における銀錯体溶液、前記還元工程における還元剤溶液から選ばれる1種以上の溶液に含まれる銀に対し、合計して1.5〜5質量%の水溶性高分子を添加し、かつ、前記解砕工程において、攪拌羽根を備えた整粒機を用いて、該攪拌羽根の周速が5〜40m/sで、かつ解砕時と空運転時の電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値が180W以下で解砕し、前記銀粉表面の有機物に対し1g/100ml以上の溶解度を持つ溶媒中でレーザー回折散乱式粒度分布測定法による前記銀粉の体積積算85%径(D85)が10μm以下とすることを特徴とする。
このようにすれば、解砕エネルギーが強くなり過ぎないので、二次粒子の大きさ及びネッキングの強さを抑制し、混練する際に、銀粉が粗大に凝集した凝集塊を生成せず、安定してフレークの発生が抑制できる。
このとき、本発明の一態様では、前記エネルギーの最大値が80W以上となる範囲で解砕することとしてもよい。
このようにすれば、解砕エネルギーが弱くなり過ぎないので、大きな凝集体が多く残らず、安定してフレークの発生が抑制できる。
また、本発明の一態様では、前記解砕工程において、前記整粒機の前記羽根の周速を、5〜30m/sとしてもよい。
このようにすれば、二次粒子の大きさ及びネッキングの強さを抑制し、また大きな凝集体が多く残らず、安定してフレークの発生が抑制できる。
また、本発明の一態様では、前記還元工程において、前記銀錯体溶液に含まれる銀に対して2〜5質量%の前記水溶性高分子を前記還元剤溶液に添加してもよい。
このようにすれば、より適度に銀の粒子に水溶性高分子を迅速に吸着させることができ、解砕工程において適切なエネルギーでの解砕による粒度分布の調整が更に容易となり、二次粒子が破壊される可能性をより低くできる。
また、本発明の一態様では、前記銀錯体化工程と、前記還元工程と、前記回収工程の少なくとも1工程において、カチオン系界面活性剤単独、又は、カチオン系界面活性剤及び脂肪酸又はその塩を処理剤として添加して、前記銀の粒子表面に表面処理してもよい。
このようにすれば、銀の粒子表面を構造的に安定させ、銀の粒子同士が接触した際に、接触部で金属結合して粗大な二次粒子や凝集塊が形成されることを防止でき混練時のフレークの発生を抑制できる。
また、前記還元工程、又は前記回収工程での1回目の固液分離後であって、少なくとも凝集を抑制できる量の前記水溶性高分子が、前記粒子表面に残存した状態で前記表面処理を行うこととしてもよい。
このようにすれば、銀の粒子に対して効率的に表面処理を施すことができ、粗大な凝集体がなく、分散性のよい銀粉を製造することができる。
また、本発明の他の態様では、一次粒子と、二次粒子と、一次粒子及び二次粒子が集合してなる凝集体を含む銀粉であって、銀粉表面の有機物に対し1g/100ml以上の溶解度を持つ溶媒中でレーザー回折散乱式粒度分布測定法で測定した体積積算85%径(D85)が10μm以下であり、BET法により測定した比表面積が0.3〜1.5m/gであり、JIS−K6217−4法で測定したフタル酸ジブチルの吸収量が7.0〜9.5ml/100gであり、かつ吸収量測定時の吸油プロファイルに2個のピークを有するか、又は前記吸油プロファイルの半値幅が1.5ml/100g以下の1個のピークを有することを特徴とする。
このようにすれば、各ドメイン間に速やかに溶媒、樹脂等、他の構成成分が回りこみ、混合が十分に行われるため、混練時のフレークの発生を抑制できる。
以上説明したように本発明によれば、混練する際に、銀粉が粗大に凝集した凝集塊を生成せず、安定してフレークの発生が抑制できる銀ペーストを、安定して製造できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る銀粉の形状を模式的に示した図であり、図1(A)は一次粒子、図1(B)は二次粒子、図1(C)は凝集体を模式的に示した図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る銀粉の製造方法の概略を示す工程図である。 図3(A)は、実施例1の吸油プロファイルを示す図であり、図3(B)は、実施例2の吸油プロファイルを示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について以下の順序に沿って詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.銀粉
1−1.一次粒子、二次粒子、凝集体
1−2.BET比表面積
1−3.面積比・SABET/SASEM
1−4.JIS−K6217−4法による測定
2.銀粉の製造方法
2−1.銀錯体化工程
2−2.還元工程
2−3.回収工程
2−4.解砕工程
本発明者らは、ペースト製造時の粘度変化は、銀粉のフタル酸ジブチル吸収量測定時の吸油プロファイルが特定形状となるようにすることで抑制されるとの知見を得ていたが、銀粉の製造過程、特に、解砕工程S4において、あるいは、銀ペーストの製造工程において、二次粒子のネッキングが破壊された銀粉は、混練時にフレーク発生の原因となるだけでなく、凝集の発生からフタル酸ジブチル吸収量測定時の吸油プロファイルを特定の形状とすることが難しくなり、調整のために銀粉の追加混合が必要となる場合があることを知見した。
上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、二次粒子の大きさが10μmを超える場合には、ロールミルでの混練前に、銀ペーストの他の構成成分である溶媒、樹脂等と、十分に混合させることが難しい場合があり、粗大な凝集体を形成する要因となること、更に、銀粉製造の還元工程S2において、適切なネッキング部を持つ二次粒子を形成し、解砕に強い二次粒子とすること、及び、銀粉製造の解砕工程S4において、銀粉にかかるエネルギーを制御し、二次粒子の破壊を防止すること、が特に重要であることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されたものである。以下、銀粉の特徴となる項目ごとに詳細に説明する。
[1.銀粉]
[1−1.一次粒子、二次粒子、凝集体]
本発明の一実施形態に係る銀粉は、一次粒子の他に、二次粒子と、一次粒子及び二次粒子が集合してなる凝集体を含むものである。ここで、「一次粒子」「二次粒子」とは、物理的な破壊無しに分散させることができない、構造の最小単位を指す。以下の説明において、ドメインとは、一次粒子、二次粒子、凝集体を構成する、幾何学的形態から判断できる最小単位である、銀の球形又はほぼ球形の形状をした各部分をいう。
一次粒子とは、図1(A)に示すような単粒子であり、すなわちドメイン=粒子となる銀粉をいう。二次粒子(アグリゲート)とは、図1(B)に示すような、複合粒子であり、すなわち一次粒子が2個以上ネッキングによって連結した結合体である銀粉をいい、ネッキングによって連結した結合体である銀の粒子全体が二次粒子であり、二次粒子を構成する、ネッキングによって連結している、ほぼ球形の形状をした各部分がドメインとなる。
上記ネッキングは本発明の一実施形態に係る還元工程S2において形成されるために、この結合は物理的な破壊なしに分離することはなく、破壊された場合には銀の新生面が露出することになり、上記したように、混練時にフレークが発生する。
凝集体(アグロメレート)とは、図1(C)に示すような、分散しているこれらの一次粒子及び二次粒子が集合した銀の粒子をいう。以下、製造工程について説明するように、上記凝集体(アグロメレート)の結合は、当該凝集体を構成している一次粒子及び二次粒子が、各々表面処理剤を介してされているため、溶剤などに投入すれば、表面処理剤同士の接合界面で銀の新生面が露出することがなく容易に分離する、弱い結合である。
本発明者らは、銀ペーストが適度な粘度を維持し、良好な混練性を有するためには、混練時のペースト中における銀粉の構成が、一次粒子と、二次粒子と、一次粒子及び二次粒子が集合してなる凝集体を含んでなり、その中で、特に、二次粒子の大きさが重要との知見を得た。
通常、凝集体は空隙の多い構造を持ち、上記銀ペースト製造時には、当該空隙部に溶媒成分が保持されている。従って、混練中にペーストの粘度が高くなり、ロールミルの剪断力によって凝集体の構成粒子が分離すると、空隙部に保持していた溶媒成分が放出され、その結果ペーストの粘度が下がるものと推定される。その一方で粘度が低くなると、ロールミルの剪断力が弱くなるために再び集合、凝集し、溶媒成分が凝集体の空隙部に保持されることで、再度粘度が上昇すると考えられる。
ここで、再度保持される溶媒の量は、再び形成される凝集体の空隙部の大きさにより、それは再凝集する直前の銀粉の分散状態による。ロールミルでの分散が進みすぎていた場合には、形成される凝集体は必然的に、緻密で密度が高く、空隙の少ないものとなる。このために凝集体が形成されても粘度が上がらず、更に凝集が進むこととなる。密度の高い凝集体はやがて凝集塊となり、当該凝集塊がロールミルの圧力によりつぶされることで、フレークが生成することとなる。
一次粒子主体で構成された銀粉を強い剪断力で混練した場合には、ロールミルでの分散が進みやすい。これは一次粒子が球状に近く、互いに滑りやすいことによる。
それに対し、二次粒子は非球形であるために、当該二次粒子主体で構成された凝集体が変形する際には、複数の粒子が互いに阻害しあい、強い抵抗力を生ずる。そのためロールミルのような強い剪断力で混練しても、分散が進みにくい。分散や凝集の状態が適度に制御されることにより、混練中にペーストの粘度が適正に維持され、ロールの剪断力により、銀粉と溶媒、樹脂等、他の構成成分との混合が十分に行われ、過剰に凝集した粗大な凝集塊の生成を抑制し、フレークの発生を防止できる。
二次粒子は、例えばぶどうの房状の形状をしており、その各ドメイン間に速やかに溶媒、樹脂等、他の構成成分が回りこみ、混合が十分に行われるためには、二次粒子の大きさが、およそ2〜10μmである必要がある。
二次粒子に10μmを超えているものがほとんど無いことを確認するためには、分散性が高く、容易に凝集体を分散できる分散媒を用い、必要に応じてヘキサメタリン酸ナトリウム等の分散剤を添加して、凝集体を一次粒子と二次粒子に分散させた状態で、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定し、体積積算での85%径(D85)が10μmを超えていなければよい。
ここで粒子の最大径を85%径(D85)で規定しているのは、回折散乱式粒度分布測定法においては、レーザー光の照射によるブラウン運動から粒径を計測するが、測定対象の粒子が一次粒子であれば、球形粒子であるため、誤差は無視できる。測定対象の粒子が二次粒子であっても、ほぼ球形であれば誤差は小さい。しかし、測定対象の二次粒子が非球形である場合には測定値に誤差が発生する。本発明の一実施形態に係る銀粉は上記のように二次粒子を多く含むものであり、二次粒子には非球形のものが多く含まれる。非球形の粒子を回折散乱式粒度分布測定法で測定した場合には、得られた測定値は、粒度分布が実際よりも広めであることが知られている。本発明の一実施形態に係る銀粉を測定する際には、体積積算での測定値の85%径(D85)が実際の最大径(D100)の目安になることが判った。したがって本発明の一実施形態に係る銀粉において、銀粉の最大径は体積積算での85%径(D85)で規定している。また、この測定においては、凝集を十分に分散させた状態で測定することが重要であるが、容易に凝集体を分散できる分散媒の選定方法としては、ハンセン溶解度パラメータ等を参考とし、銀粉表面の有機物に対し1g/100ml以上の溶解度を持つ溶媒を選択し、粒度分布測定時の濃度で、十分な分散状態が保てるよう、超音波の印加、分散剤の使用など、適宜調整すればよい。
本発明の一実施形態に係る銀粉は、一次粒子と二次粒子の大きさの指標となる、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により、上記のように凝集体を一次粒子と二次粒子に分散させた状態で測定した、体積基準での50%径(D50)を、SEM像を用いて測定した一次粒子の粒径の平均値(DSEM)で除することにより求められる凝集度(D50/DSEM)が1.5〜4.0である銀粉であることが必要であり、好ましくは、2.5〜3.5であることがよく、良好な粘度であり、かつフレークの発生を防止する効果が高い。凝集度が1.5より小さい場合には、3本ロールミル等で混練する際に、粘度を保てず、フレークが発生し、4.0を超える場合には、予備混錬時の作業性が悪く、混練時に粘度が上昇する可能性がある。尚、レーザー回折散乱法を用いて測定した各集団の全体積を100%とした、体積基準の累積粒度分布において、その累積が50%となる粒子径がD50である。
銀粉の凝集度を求めるには、走査型電子顕微鏡で計測した上記一次粒子の平均粒子径DSEMおよび体積基準の粒度分布から求めたD50が必要となる。ここで、上記一次粒子の平均粒子径DSEMは、走査型電子顕微鏡を用いて、任意の1000個以上の一次粒子の粒径を測長し、個数平均することにより求める。また、体積基準の粒度分布は、例えばレーザー回折散乱法を用いて測定することができる。
[1−2.BET比表面積]
本発明の一実施形態に係る銀粉は、BET法により測定した比表面積が0.3〜1.5m/gであることが必要である。凝集体の強度は、凝集体を構成する各粒子間の連結の強さ、すなわち結合部(ネッキング)の太さによる。BET法による測定において、各粒子間の連結が弱い場合、例えば、粒子が接点でのみ連結している凝集(アグロメレート)のような状態であれば、表面積が粒子の接点部に相当する面積だけ減少するため、測定される比表面積は、一次粒子が完全に分散している状態の比表面積よりも僅かに減少したものとなる。
これに対して、二次粒子(アグリゲート)のように、ドメインの連結部がより太い場合には、表面積がより大きく減少するため、測定される比表面積は、一次粒子が完全に分散している状態の比表面積よりも大きく減少したものとなる。
[1−3.面積比・SABET/SASEM]
上記のことから、BET法により測定した比表面積SABETを走査型電子顕微鏡で計測した銀粉を構成する一次粒子径DSEMから算出した比表面積SASEMで除した面積比(SABET/SASEM)は銀粉を構成する二次粒子(アグリゲート)のネッキングの太さを評価する指標となる。
本実施の形態に係る銀粉は、当該面積比(SABET/SASEM)が0.6〜0.8であることが好ましく、0.65〜0.75であることがより好ましい。(SABET/SASEM)が0.6未満になると、太いネッキングが多く、二次粒子の内部に、速やかに溶媒、樹脂等、他の構成成分が回りこむことが出来ない場合がある。一方、(SABET/SASEM)が0.8を超えると、二次粒子の結合が弱く、混練物を3本ロールミル等で混練した際に、二次粒子が破壊されやすくなり、表面処理をされていない銀の新生面が露出することから、フレークが発生する場合がある。
さらに、本発明の一実施形態に係る銀粉は、ペースト中での二次粒子の割合及び均一性の指標となる、オイル吸収量とその吸油プロファイルを制御された銀粉であることが必要である。
[1−4.JIS−K6217−4法による測定]
オイル吸収量、及び吸油プロファイルについて説明する。具体的には、日本工業規格JISK6217−4(2008)に準じて行う。
JISK6217−4では、アブソープトメータを用いたオイル吸収量の測定方法が規定されている。規定においてはオイルとしてのフタル酸ジブチルエステルを滴下し、最大トルク値の70%のトルク値を示した時のオイル滴下量をオイル吸収量としている。本発明の一実施形態に係る銀粉においては、JISK6217−4に記載のカーボンブラックのかわりに銀粉を用いて測定を行い、オイルはフタル酸ジブチルを用いる。測定は混合室を十分に満たして測定を行うことが重要であり、JISK6217−4に記載されているカーボンブラックと銀粉とは比重が大きく異なることから、本実施形態においてはカーボンブラックのおよそ5〜10倍の重量となる銀粉を装置に投入する。
本発明の一実施形態に係る銀粉は、一次粒子と二次粒子の占める割合の指標としてJIS−K6217−4法で測定したフタル酸ジブチルの吸収量が7.0〜9.5ml/100gであることが必要である。さらに、7.5〜8.5ml/100gであることがさらに好ましい。
吸収量が7.0ml/100g未満の銀粉では、二次粒子(アグリゲート)の占める割合が少なく、一次粒子の割合が多いため、銀ペーストを3本ロールミル等で混練した際に、分散が容易に進み、フレークが発生してしまう。一方、吸収量が9.5ml/100gを超える銀粉では、一次粒子の占める割合が少なく、二次粒子が多すぎることとなり、予備混錬時の粘度が高くなり作業性が悪くなる。
以下、アブソープトメータを用いた吸収量の測定で見られる現象のトルクの上昇、下降に注目する。ここでのトルクは、銀粉を攪拌する冶具にかかるトルクであり、二次粒子の均一性の指標である。上記吸収量の測定は、銀粉を攪拌しながら、オイル添加を行い、オイル添加に伴い攪拌する冶具にかかるトルクの変化を測定するものである。
オイル添加に伴う銀粉の状態を見ると、オイルが添加されると、まず、銀粉の二次粒子(アグリゲート)の空隙に、速やかに吸収される。一次粒子や二次粒子の表面が十分に濡れないため、この段階では、銀粉とオイルの混合物は粘りの無い粉体状である。
更にオイルを添加すると二次粒子の内部に取り込めなくなり、余剰のオイルが一次粒子、二次粒子の表面にオイルの膜を形成する。粒子がこの液膜を介して接触すると表面張力による粒子間の吸着力が生ずる。これにより銀粉とオイルの混合物は粘度をもつ塊状となり、攪拌している冶具にかかるトルクが上昇する。さらに過剰のオイルを供給すると、液膜の厚みが増すことにより、表面張力による粒子間の吸着力が減少し粘度が急激に下がる。それに伴いトルクは急激に減少する。
微細で分散性の高い一次粒子を多く含む銀粉を用いた場合には、二次粒子(アグリゲート)がほとんど存在しないため、粒子の表面にオイルが膜を形成することでトルクが発生するまでに添加されるオイルの量、すなわちオイル吸収量は少ない。二次粒子を多く含む銀粉では、トルクが発生するまでに添加されるオイルの量は比較的大きくなるが、二次粒子径にバラツキが大きく、比較的小さい二次粒子が存在する場合には、トルクが発生するまでに添加されるオイルの量は相対的に少なく、トルクのピーク位置まで緩やかに上昇するものとなる。比較的小さい二次粒子の表面には、少ない添加量でオイルの膜が形成され、トルクが発生するからである。この現象は、二次粒子の粒径が2μm以下のもので顕著となる。
上記したように、本発明の一実施形態に係る銀粉では、二次粒子の好ましい粒径範囲は2〜10μmであり、一次粒子が少ない二次粒子が主体の銀粉を用いた場合、吸収量測定時の吸油プロファイルは、半値幅が狭い急峻な1個のピークとなる場合が多い。二次粒子が主体であるが、一次粒子の割合が比較的大きい場合には、上記吸油プロファイルは、二次粒子に由来するオイル吸収のトルクピークと一次粒子に由来するオイル吸収のトルクピークの、2個のピークを持つものとなる。
したがって、本発明の一実施形態に係る銀粉はJIS−K6217−4法で測定したフタル酸ジブチルの吸収量が7.0〜9.5ml/100gであり、半値幅(半値全幅)が1.5ml/100g以下である1個のピーク、又は、吸収量測定時の吸油プロファイルに2個のピークを有し、当該2個のピークをピーク時のオイル滴下量によってP2<P1とした場合に、ピークのトルク値がP2≦0.75P1である銀粉である。
ピークの有無を判断する方法について説明する。アブソープトメータを用いた吸油プロファイルの測定は、不均一系の測定であるために、トルク値が絶えず細かく増減する。従って吸油プロファイルにおいての横軸(測定時間)について、データのサンプリング周期を細かくし過ぎた場合には、偽ピークが現れることがある。従って、本実施形態においては、通常の条件で測定した吸油プロファイルに加えて、新たにサンプリング周期を0.5mlとした場合の吸油プロファイルを描き、それをもとにピークの有無を判断し、更に通常のサンプリング周期の条件で測定したものと照合して、そのトルクのピーク位置及び最大トルク、及び半値幅を得ることとしている。
半値幅が1.5ml/100g以下の1個のピークを有する本発明の一実施形態に係る銀粉では、トルクが発生するまでに添加されるオイル量が比較的に多く、それは二次粒子(アグリゲート)が多いことを示す。このような銀粉を用いた混練物を3本ロールミル等で混練した際には、粘度は低下せずに適切な範囲に維持され、フレークの発生が抑制され良好に混練できる。
一方、吸油プロファイルにおけるピークの半値幅が1.5ml/100gを超える銀粉では、トルクが発生するまでと、トルクピークまでに添加されたオイル量の幅が比較的大きいことから、前述したように、二次粒子の大きさにばらつきが多いことを示す。このような銀粉を用いた混練物を3本ロールミル等で混練した際には、凝集体の変形により粘度が低下しやすいため、フレークが発生しやすい。
吸油プロファイルに2個のピークを有する場合にも、フタル酸ジブチルの吸収量は、JIS−K6217−4に基づき、最大トルクを基準として算出する。また、2個のピークを有する場合には、当該2個のピークをピーク時のオイル滴下量によってP2<P1とした場合に、ピークのトルク値がP2≦0.75P1である銀粉は、トルクが低下するまでのオイル滴下量、すなわち二次粒子及び凝集体の吸収することのできるオイル量が多く、凝集体の強度が大きいと判断される。
ピークのトルク値がP2>0.75P1である銀粉を用いた混練物を3本ロールミル等で混練した際には、吸収量が少ない状態でトルクが急激に低下することがあり、一次粒子や解砕により破断した二次粒子の影響が強い為、凝集体の強度が低く、ペースト化時にフレークが発生するおそれがある。
[2.銀粉の製造方法]
次に、本実施形態に係る銀粉の製造方法について図を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る銀粉の製造方法の概略を示す工程図である。図2に示すように、銀塩を錯化剤の含む溶液に溶解し銀錯体溶液とする銀錯体化工程S1と、銀錯体を還元して銀スラリーを得る還元工程S2と、銀スラリーを洗浄・乾燥し銀乾燥物を回収する回収工程S3と、銀乾燥物を解砕し銀粉を得る解砕工程S4とを有する。
すなわち本実施形態に係る銀粉の製造方法は、銀塩を錯化剤によって銀錯体とし、当該銀錯体を還元して銀粉を得るものであり、上記銀塩を錯化剤を含む溶液に溶解し銀錯体溶液とする銀錯体化工程S1と、当該銀錯体溶液と還元剤溶液とを混合し上記銀錯体を還元して銀スラリーを得る還元工程S2と、当該銀スラリーを洗浄、乾燥し銀乾燥物を回収する回収工程S3と、当該銀乾燥物を解砕し銀粉を得る解砕工程S4とを有する。そして、上記銀錯体化工程S1における銀錯体溶液、上記還元工程における上記還元剤溶液から選ばれる1種以上の溶液に含まれる銀に対し、合計して1.5〜5質量%の水溶性高分子を添加し、かつ、上記解砕工程S4において、攪拌羽根を備えた整粒機を用いて、当該攪拌羽根の周速が5〜40m/sで、かつ解砕時と空運転時の電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値が180W以下で解砕することを特徴としている。以下に、本実施形態に係る銀粉の製造方法について、工程ごとに説明する。
[2−1.銀錯体化工程S1]
銀錯体化工程S1では、銀塩を錯化剤を含む溶液に溶解し、銀錯体溶液を得る。銀塩については特に限定されない。工業的に用いられる公知のものが使用できるが、高純度のものを用いることが好ましい。例えば、硝酸銀、硫酸銀、炭酸銀、塩化銀が挙げられる。当当該銀塩の錯体化剤溶液中に、10nm以上の粒径の不純物が存在する場合には、還元中の銀粒子の数が増加し、粒子径が小さくなりやすい。このため、不純物が相当量存在する場合は、濾過を行い、不純物量を低減させ、銀粉の粒子径(ドメイン径)及びBETを調整することが好ましい。
錯化剤としては、特に限定されるものではないが、銀塩と錯体を形成しやすく、かつ洗浄除去しやすいアンモニア水が好ましい。
水に対する溶解度の低い銀塩を錯化剤の含む溶液に溶解する方法として、例えば錯化剤としてアンモニア水を用いる場合には、銀塩の水系スラリーにアンモニア水を添加する方法もあるが、銀錯体溶液の濃度を高めて生産性を上げるためには、アンモニア水に直接銀塩を投入、溶解して銀錯体溶液とする方法が好ましい。水に対する溶解度の高い銀塩を用いる場合には、水に高濃度で溶解した後、銀を錯体化するに最低限必要な量のアンモニア水を添加する方法が好ましい。
[2−2.還元工程S2]
還元工程S2では、還元剤溶液を作製し、当該還元剤溶液と、上記銀錯体化工程S1において、銀塩を錯体化剤溶液に溶解して得た銀錯体溶液とを混合して銀錯体を還元する、湿式還元法によって銀の粒子を含むスラリーを得る。
還元剤溶液に使用される還元剤は、一般的に工業的に用いられるものであればよく、特に限定されない。例えば、金属元素を含む還元剤としては、アルカリ金属や亜鉛などの金属単体、金属のアマルガム、ホウ素やアルミニウムなどの水素化物、低酸化状態の金属塩が挙げられる。金属を含まない還元剤としては、硫化物、チオ硫酸塩、シュウ酸、ギ酸、アルデヒド、アルコール、糖類などが挙げられるが、不純物の混入を避けるためには、金属を含まない還元剤を用いることが好ましい。
その中でも、反応性が有る程度安定しており、かつ銀を速やかに還元できる還元剤としては、ヒドラジン、ホルマリン、アスコルビン酸などが挙げられるが、反応の安定性の観点から、特にアスコルビン酸を用いることが好ましい。アスコルビン酸を用いることで銀の結晶粒の成長を制御することが容易となり、銀粉の比表面積を適度な範囲に調整することができる。
一方、ヒドラジンあるいはホルマリン等、アスコルビン酸よりも還元力が強いものを用いる場合には、銀の結晶粒が小さくなり、比表面積が大きくなり過ぎることがあるため、温度や添加速度を細かく調整する必要がある。
また、上記還元剤中に20〜100nm程度の銀ナノ粒子を分散させ、当該銀ナノ粒子を種材とする、種成長法を用いることもできる。尚、上記銀錯体溶液及び還元剤溶液を調製する際に用いる水は、不純物の混入を防止するため、不純物を除去した純水が好ましい。
上記銀錯体溶液と当該還元剤溶液とを混合して銀錯体を還元する際には、過度な凝集を防止するために、凝集制御剤を添加することが必要である。銀に対して1.5〜5質量%の凝集制御剤を還元剤溶液に添加することが好ましい。より好ましくは2〜5質量%の凝集制御剤を添加することが良い。還元剤水溶液に添加する凝集抑制剤としては、水溶性高分子が好ましい。本実施形態において、銀粉のネッキングや比表面積などを制御するため、水溶性高分子の添加量の調整が重要である。
水溶性高分子としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン等の少なくとも1種であることが好ましく、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンの少なくとも1種であることがより好ましい。これら水溶性高分子を適宜添加することにより、ネッキングや比表面積などの特性を適切に制御した銀粉を形成することができる。
凝集制御剤として水溶性高分子を添加することにより所定の大きさの銀の単粒子が連結して複合粒子(二次粒子)が形成されるメカニズムは以下のように考えられる。
還元剤溶液により還元され生成した銀の単粒子は、凝集制御剤が添加されていない状態では、表面が活性であるために、他の単粒子、あるいは二次粒子と連結しやすく、速やかに複合粒子(二次粒子)を生成、更には粗大化して、10μmを超える大きさに成長する。一方、一般的な凝集制御剤を使用すると、銀の単粒子表面をすべて覆ってしまうために、二次粒子の形成を阻害する効果が大きすぎることがある。
しかし、水溶性高分子は適度な凝集制御効果を有するため、銀に対して所定量の水溶性高分子を添加することで、単粒子表面の一部に水溶性高分子が存在しない表面を存在させることができる。従って、その表面を介して単粒子同士が連結し、適切なネッキングをもつ、所定の大きさの二次粒子を形成する、と考えられる。従って、当該水溶性高分子を用いる際には、添加量の調整が重要である。尚、この水溶性高分子は、銀の粒子表面が表面処理剤などで安定化されるまで銀粒子の表面を被覆し、凝集を制御していることが重要である。
水溶性高分子の添加量は、銀に対して1.5〜5質量%が好ましい。水溶性高分子の添加量が銀に対して1.5質量%未満の場合は、銀の粒子表面において水溶性高分子が存在しない部分が多くなるため、銀粒子が過度に連結し、二次粒子が粗大化する。このような場合には解砕工程S4において、粒度分布の調整のために高いエネルギーを必要とし、二次粒子が破壊される可能性が高くなる。一方で、水溶性高分子の添加量が銀に対して5質量%より多い場合には、ほぼ全ての単粒子表面が水溶性高分子で覆われ、単粒子同士が連結せず、二次粒子を形成しない。その結果、一次粒子が主となる銀粉となり、上記のようにペースト製造時にフレークが発生する。
銀に対して1.5〜5質量%の水溶性高分子を添加することによって、単粒子表面で水溶性高分子が存在しない表面部が適度に残っており、水溶性高分子が存在しない表面を介して銀の粒子が適度なネッキングで連結した、所定の大きさの二次粒子を含む銀粉が得られる。当該銀粉を用いて銀ペーストを製造する際には、混練時に粘度が適切に保たれ、分散性も良好であることから、フレークの発生が抑制できる。
また、銀に対して2〜5質量%の割合で水溶性高分子を添加することがより好ましい。添加量を2〜5質量%とすることにより、より適度に銀の粒子に水溶性高分子を吸着させることができ、解砕工程S4において適切なエネルギーでの解砕による粒度分布の調整が更に容易となり、二次粒子が破壊される可能性をより低くできる。従って、より効果的に混練時のフレークの発生を抑制できる。
さらに、上記水溶性高分子は還元剤溶液に添加することが好ましい。水溶性高分子を還元剤溶液に添加しておくことで、銀核あるいは銀の単粒子表面に迅速に吸着し、粒子の連結を効率よく制御できる。
なお、上記水溶性高分子を、銀錯体溶液に添加量の一部もしくは全量を添加することもできる。この場合には、銀核あるいは銀の単粒子表面に適度に上記水溶性高分子を吸着させることができないおそれがあるため、水溶性高分子を銀錯体溶液に添加する場合には、銀に対して3〜15質量%とすることが好ましい。
また、水溶性高分子を用いることにより、還元反応時に発泡することがあるため、銀錯体溶液又は還元剤溶液に消泡剤を添加することが好ましい。消泡剤は、特に限定されるものではなく、工業的に用いられているものでよい。ただし、還元反応を阻害させないために、消泡剤の添加量は消泡効果が得られる最低量とすることが好ましい。
還元工程S2では、次に上記銀錯体溶液と還元剤溶液とを混合し、銀錯体を還元して銀スラリーとする。この還元工程S2は、バッチ法、あるいはチューブリアクター法やオーバーフロー法のような連続還元法を用いることができる。均一性の高い銀粉を得るには、粒子成長の時間制御が容易なチューブリアクター法を用いることが好ましい。また、この方法によればネッキングや二次粒子の大きさ等の特性を、銀錯体溶液と還元剤溶液の混合速度や濃度によって容易に制御できる。
[2−3.回収工程S3]
回収工程S3においては、上記還元工程S2で、銀錯体を還元して得られた当該銀の粒子を含むスラリーを洗浄、乾燥し銀乾燥物を回収する。
回収工程S3においては、銀錯体を還元して得られた当該銀の粒子を含むスラリーを洗浄する。銀の粒子の表面には、過剰な水溶性高分子等、不要な吸着物質が存在する。したがって、当該銀粒子を使用した銀ペーストを使った配線層や電極の導電性を低下させないため、かつ効率的に表面処理を行うために、洗浄し、水溶性高分子を除去することが好ましい。
洗浄方法としては、特に限定されるものではないが、還元工程S2において銀スラリーをフィルタープレス等で固液分離した後、得られた銀の殿物を洗浄液に投入し、撹拌機又は超音波洗浄器を使用して混合洗浄した後、更に固液分離して銀の殿物を再び回収する、固液分離と洗浄を繰り返す、一般的な方法が用いられる。また、不要な吸着物質を十分に除去するためには、上記操作を、数回繰り返すことが好ましい。
洗浄液は、水であってもよいが、塩素等、銀の粒子表面に強固に吸着した不純物を効率よく除去するために、アルカリ水溶液を用いてもよい。アルカリ水溶液としては、特に限定されるものではないが、洗浄効果が高く、かつ安価である水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合には、洗浄後に銀の粒子表面に残留するナトリウムを極力除去するために、回収した銀の殿物をさらに水洗することが望ましい。
また、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は0.01〜0.3mol/Lとすることが好ましい。濃度が0.01mol/L未満では洗浄効果が不十分であり、一方で濃度が0.3mol/Lを超えると、洗浄後に残留するナトリウムを除去するための水洗回数が増え、コスト増となる。なお、洗浄液に用いる水は、銀の粒子に対して有害な不純物元素を含有しない純水が好ましい。
洗浄後に固液分離し、得られた銀の殿物を乾燥し、回収する。乾燥方法としては、例えば、銀の殿物をステンレスパッド上に置き、大気オーブン又は真空乾燥機等、市販の乾燥装置を用いて、40〜80℃の温度で加熱保持すればよい。
[2−4.解砕工程S4]
解砕工程S4では、還元工程S2で銀の粒子の凝集を制御し、表面処理により構造を安定化させた乾燥後の銀乾燥物に対して、二次粒子を破壊しないよう、解砕エネルギーを一定範囲に制御した解砕処理を行うことが必要である。更に攪拌羽根については形状が鋭利でないもの、表面の凹凸が小さいものなど、二次粒子を破壊しにくいものを用いることが好ましい。上述した水溶性高分子(凝集制御剤)による表面処理後の銀乾燥物は、その後の乾燥等により表面処理を介して銀の粒子同士が凝集している場合があるが、その接着力は弱いため、ペースト作製時に容易に分離する。しかしながら、予備混練における作業性のためには、解砕することが好ましい。
解砕方法は、具体的には乾燥後の銀乾燥物を、攪拌羽根を備えた整粒機等の解砕力の弱い装置を用いて、例えば攪拌羽根の周速5〜40m/sで攪拌しながら解砕することが好ましい。攪拌羽根の周速5〜30m/sで攪拌しながら解砕することが更に好ましい。好適に用いられる公知の装置としては転動式攪拌機が挙げられ、具体的にはナウターミキサ(登録商標)、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ等があげられる。
更にいずれの攪拌羽根の周速においても、駆動電圧と、駆動電流から計算した、解砕時の銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値が180W以下となるように回転数を調整する。この調整のためには電流値と電圧値から、所定のエネルギーの範囲に自動で調整できる機構を設けることが好ましい。
解砕時の銀1kgにかかるエネルギーの最大値が80W以上であれば、10μm以上の大きさの凝集体の残留が十分に抑制される解砕エネルギーとなり、ペースト混練時にフレークが発生する可能性を十分に防止できる。一方で解砕時の銀1kgにかかるエネルギーの最大値が180Wより大きい場合は、解砕エネルギーが強くなり二次粒子が破壊され、表面処理されていない銀破断面が露出してしまいフレークが発生する可能性が有る。
ここで、解砕エネルギーは、解砕エネルギーとして使用されている電動機に印加される駆動電圧(解砕時の電圧と空運転時の電圧の差)と、駆動電流(解砕時の電流値と空運転時の電流値との差)の、積を算出し、解砕時の銀1kgあたりにかかるエネルギーとする。
上記銀殿物の乾燥が不完全な場合、ここで解砕する銀乾燥物は水分を含有するが、解砕時の銀粉としては水分を除いた状態であるものが好ましく、具体的には、水分率は0〜20%程度までであることが好ましい。水分が含まれる場合の解砕エネルギーは、水分量を考慮し足した値となる。明細書中では、エネルギーの最大値は、水分を除いた銀1kgにかかるエネルギーとしたものである。
当該攪拌羽根を備えた整粒機等の解砕力の弱い装置としては、乾燥機能(真空引き、加熱等)を備えたものであっても良い。水分率は、乾燥後の銀乾燥物から数箇所サンプリングし、加熱乾燥方式測定器等を用いて120℃程度まで測定した平均値を用いることが好ましい。
解砕時間は、還元工程S2、乾燥工程に起因する銀の粒子の大きさや凝集状態によって適宜調節することが好ましい。
また、乾燥と解砕を同時に行ってもよい。例えば、固液分離後の銀の殿物を真空減圧雰囲気下の整粒機内で加熱撹拌しながら、乾燥解砕することができる。
上述した解砕後には分級を行うことができる。分級装置としては、特に限定されるものではなく、気流式分級機、篩い等を用いることができる。
本発明の一実施形態に係る銀粉の製造方法では、上記銀錯体化工程S1と、上記還元工程S2と、上記回収工程S3の少なくとも1工程において、カチオン系界面活性剤単独、又は、カチオン系界面活性剤及び脂肪酸又はその塩を処理剤として添加して、上記銀の粒子表面に表面処理することが好ましい。表面処理によって、銀の粒子表面を構造的に安定させ、銀の粒子同士が接触した際に、接触部で金属結合して粗大な二次粒子や凝集塊が形成されることを防止できる。
表面処理工程では、界面活性剤と分散剤を用いて表面処理することが好ましい。界面活性剤と分散剤の相互作用により銀の粒子表面に強固な表面処理層を形成するため、接触部の結合を防止する効果が高く、銀の粒子表面を安定化させることができる。
上記表面処理工程における表面処理は、本発明の一実施形態に係る銀粉の製造方法の回収工程S3の乾燥前に行うことが好ましい。特に乾燥された銀の粒子同士が接触した場合には金属結合が起こりやすく、結合や凝集が進行してからでは、その結合部や凝集部に表面処理剤を塗布出来ないためである。還元工程S2で表面処理剤を添加する場合には、水溶性高分子の添加と同様に還元剤溶液に添加することが好ましいが、水溶性高分子の効果を阻害しない界面活性剤を選定する必要がある。
凝集制御剤として銀の粒子表面に吸着させた水溶性高分子は、洗浄によって容易に除去され、その効果が失われる。従って還元工程S2後に表面処理する場合は、洗浄前、または1回目の洗浄時でかつ、その固液分離を行う前に行うことが好ましい。1回目の洗浄時に行う理由は、洗浄によって銀の粒子表面に水溶性高分子が強固に付着していない状態とし、表面処理剤の吸着を容易とするためである。固液分離前に行う理由は、固液分離によって銀の殿物とした際に、銀の粒子同士が接触するため、それ以前に表面処理を行い、銀の粒子の活性な表面同士が接触することを防止するためである。これにより銀の粒子に対して効率的に表面処理を施し、粗大な凝集体がなく、分散性のよい銀粉を製造することができる。
具体的な表面処理方法としては、例えばフィルタープレス等で回収した銀の殿物を界面活性剤及び分散剤を添加した水に投入して撹拌する、あるいは界面活性剤を添加した水に上記銀の殿物を投入して撹拌分散した後、さらに分散剤を添加して撹拌する方法がある。
銀の粒子に界面活性剤及び分散剤を、強固に吸着させるためには、界面活性剤を添加した水又は洗浄液に上記銀の殿物を投入して撹拌した後に、分散剤を添加し撹拌することが好ましい。
また、他の方法としては、界面活性剤を還元剤溶液に投入し、銀錯体溶液と還元剤溶液とを混合して得られた銀のスラリーに、分散剤を投入して撹拌してもよい。この方法によれば、生成した銀の粒子の表面に迅速に界面活性剤を吸着させ、さらに分散剤を吸着させることで、より安定で均一な表面処理を施すことができるが、水溶性高分子の効果を阻害しない界面活性剤を選定する必要がある。
界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤を用いることが好ましい。カチオン系界面活性剤は、pHの影響を受けることなく正イオンに電離するため、銀の粒子への吸着性が優れる。
カチオン系界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、モノアルキルアミン塩に代表されるアルキルモノアミン塩型、N−アルキル(C14〜C18)プロピレンジアミンジオレイン酸塩に代表されるアルキルジアミン塩型、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドに代表されるアルキルトリメチルアンモニウム塩型、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドに代表されるアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩型、アルキルジポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライドに代表される4級アンモニウム塩型、アルキルピリジニウム塩型、ジメチルステアリルアミンに代表される3級アミン型、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンアルキルアミンに代表されるポリオキシエチレンアルキルアミン型、N、N’、N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−アルキル(C14〜18)1,3−ジアミノプロパンに代表されるジアミンのオキシエチレン付加型、更には3級アミン塩型、4級アンモニウム塩型のいずれか1種又はその混合物が好ましい。
また、上記カチオン系界面活性剤は、メチル基、ブチル基、セチル基、ステアリル基、牛脂系、硬化牛脂系、植物系ステアリルに代表されるC4〜C36の炭素数を持つアルキル基を少なくとも1個有することが好ましい。アルキル基としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸から選択される少なくとも1種を付加されたものであることが好ましい。これらのアルキル基は、後述する分散剤として用いる脂肪酸との吸着が強いため、界面活性剤を介して、脂肪酸を強く吸着させることができる。
上記界面活性剤の添加量は、銀に対して0.05〜1質量%とすることが、分散性、導電性を良好とするに好ましい。界面活性剤の添加量が0.05質量%未満では、銀の粒子の凝集抑制あるいは分散剤の吸着性改善の効果が得られないことがある。一方、添加量が1質量%を超えると、銀ペーストを用いて形成された配線層や電極の導電性が低下することがあり、好ましくない。
分散剤としては、例えば脂肪酸、有機金属、ゼラチン等の保護コロイドを用いることができるが、界面活性剤との吸着性が高く、不純物混入のおそれがない、脂肪酸又はその塩を用いることが好ましい。なお、当該脂肪酸又はその塩は、エマルジョンとして添加してもよい。
分散剤として用いる脂肪酸は、特に限定されるものではないが、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸、リノレン酸から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの脂肪酸は、沸点が比較的低いため、銀ペーストを用いて形成された配線層や電極への悪影響が少ない。
分散剤の添加量は、銀に対して1〜2質量%とすることが、銀の粒子の結合防止効果や、分散剤の吸着性改善効果や、導電性を良好とするに好ましい。分散剤の種類により銀の粒子への吸着量は異なるが、添加量が1質量%未満である場合には、銀の粒子の結合防止効果や、分散剤の吸着性改善効果が十分に得られないことがある。一方、分散剤の添加量が2質量%を超えると、銀ペーストを用いて形成された配線層や電極の導電性が低下することがある。
以下、本実施形態に係る銀粉の製造方法で得られた銀粉は、一次粒子と、二次粒子と、一次粒子及び二次粒子が集合してなる凝集体を含む銀粉であって、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積積算85%径(D85)が10μm以下であり、BET法により測定した比表面積が0.3〜1.5m/gであり、JIS−K6217−4法で測定したフタル酸ジブチルの吸収量が7.0〜9.5ml/100gであり、かつ吸収量測定時の吸油プロファイルに2個のピークを有するか、又は上記吸油プロファイルの半値幅が1.5ml/100g以下の1個のピークを有することを特徴とする。このため、この銀粉を用いることで、粗大な凝集塊を起因とする粗大フレークのない、適度な粘度を有する、銀の粒子の分散が良好な銀ペーストを安価に製造できる。更に、この銀粉を用いた銀ペーストは印刷性に優れ、導電性に優れた導電膜を形成することができる。以下に銀ペーストについて説明する。
銀ペーストを製造する方法としては、製造コストを低く抑えつつ、少ない手順で大量に製造できることから、一般には、銀粉を溶媒、樹脂等の他の構成成分と予備混練して馴染ませた予備混練物を得た後に、3本ロールミル等で一定の圧力をかけながら混練する方法が用いられている。
本発明の一実施形態に係る銀粉を用いて銀ペーストを製造する方法については特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、使用する溶媒としては、アルコール系、エーテル系、エステル系等、ビヒクルとしては各種セルロース、フェノール樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。
上記製造方法において、ロールミル等で混練する際に銀粉が圧縮され、数mm程度の薄片状の銀粉(以下、フレークと記す場合がある)が発生することがあり、当該フレークは製造した銀ペースト中に含まれる。上記フレークが含まれる銀ペーストを用いてスクリーン印刷を行った場合には、フレークがスクリーンに詰まり、正確なパターン印刷が困難になるという問題が発生する。このため、銀ペースト中に上記フレークが存在する場合には、当該銀ペーストを篩に通すなどの処理を行い、フレークを除去する処理が行われる。しかし、フレークが多く発生した銀ペーストには、篩を通した後も一部のフレークが残留することがあり、スクリーン印刷を行った際にフレークがスクリーンに詰まり、正確なパターン印刷が困難となる場合があった。
銀粉を含有する予備混練物をロールミルなどで混練して銀ペーストを得る際には、当該予備混練物が十分に混合されたものであることが重要であるが、フレークの発生を防止するには、更に、ロールミルなどで混練する前後で、銀ペーストの粘度変化が小さいことが重要であり、それには二次粒子が大きく影響する。
銀粉と溶媒、樹脂等、他の構成成分とのなじみが悪い場合には、銀粉表面が溶媒、樹脂等、他の構成成分よりも、他の銀粉表面との親和性が高いために、銀粉が凝集しやすく、予備混練物の混合度合いが不十分となりやすい。予備混練物をロールミルで混練する際にもこのような特性は変わらないため、ロールミル等での混練中に、更に凝集が進み凝集塊が生成することが多い。
銀粉と溶媒、樹脂等、他の構成成分とのなじみが良い場合でも、銀粉中に二次粒子が存在しない場合は、銀粉表面が溶媒、樹脂等、他の構成成分とのなじみが良いことから、銀粉中の凝集が解けやすく銀粉が分散しやすい。しかし、予備混練は比較的小さい圧力で行うことから凝集が残留しやすく、後述するように凝集と類似した構造を持つ二次粒子を含まなくとも、ある程度の粘度は維持される。しかし、ロールミル等で混練する際には、より高い圧力によってこれら残留していた凝集が解けることで、ペーストの粘度が大きく低下し、ロール間で、いわゆる擦り抜け現象が発生しやすくなる。擦り抜け現象が発生するとロールミルのずり応力、すなわち剪断力が加わらないために、ペースト中の銀粉の分散が維持できず、凝集が進んでしまう。その結果として、混練が進むにつれて凝集体が次第に大きくなり、凝集塊となる場合がある。
銀粉と溶媒、樹脂等、他の構成成分とのなじみが良く、銀粉中に二次粒子が存在する場合には、上記二次粒子が存在しない場合に起こる粘度低下を防止できるため、粗大フレークのない、適度な粘度を有する、銀の粒子の分散が良好な銀ペーストを安価に製造できる。
二次粒子が存在するがネッキング構造が弱い場合には、当該構造がロールミルのずり応力によって容易に破壊され、当該破壊によって溶媒、樹脂等、他の構成成分とのなじみが悪い銀の新生面が露出する。露出した銀の新生面は、他の銀の新生面との親和性が高いため、上記、銀粉と溶媒、樹脂等、他の構成成分とのなじみが悪い場合と同様に、凝集しやすい。そのため、混練中に凝集が進み、凝集塊が生成してしまう。凝集塊が発生したペーストを3本ロールミルで混練すると、当該凝集塊がつぶれ、数mm程度の薄片状粉(フレーク)となる。混練が終了し、得られた銀ペースト中にフレークが多く含まれている場合には、上記したような問題が発生することとなる。
本発明の一実施形態に係る銀粉は、一次粒子の他に、二次粒子と、一次粒子及び二次粒子が集合してなる凝集体を含むものであり、当該二次粒子の大きさ及びネッキングの強さを制御することにより、当該銀粉と溶媒、樹脂等の他の構成成分とを予備混練して馴染ませて得た予備混練物を、3本ロールミル等で一定の圧力をかけながら混練する際に、銀粉が粗大に凝集した凝集塊を生成せず、フレークの発生が抑制できるため、上述したように適切な粘度を有する銀ペーストを製造することが可能であり、一般的に用いられる組成の銀ペーストの主たる成分として好適である。
次に、本発明の一実施形態に係る銀粉の製造方法及び銀粉について実施例により詳しく説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
本実施例においては、銀粉の粒度分布はレーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装製、MICROTRACHRA9320X−100)を用いて測定した。イソプロピルアルコールを分散媒とし、機器内を循環させた状態で、超音波で分散させた銀粉0.1gを投入し、測定を行った。凝集体を分散させ、一次粒子と二次粒子の大きさを測定するためである。得られた体積基準の累積粒度分布から粒子径(D85)を求めた。
比表面積は、多検体BET比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、Multisorb―16)を用いて測定した。
フタル酸ジブチルの吸収量は、吸収量測定器(あさひ総研製、S−500)を用いて測定した。測定方法はJISK6217−4(2008)に準じて行った。
(実施例1)
<銀錯体溶液>
38℃の温浴中で液温36℃に保持した25%アンモニア水36L、塩化銀2130g(住友金属鉱山(株)製、塩化銀中の銀1600g)を撹拌しながら投入して、銀錯体溶液を作製した。消泡剤((株)アデカ製、アデカノール(登録商標)LG−126)を体積比で100倍に希釈した消泡剤希釈液18.7mLを銀錯体溶液に添加し、得られた銀錯体溶液Aを温浴中で36℃に保持した。
<還元剤溶液>
一方、還元剤のアスコルビン酸921g(関東化学(株)製、試薬、銀に対して57.6質量%)を、36℃の純水14.61Lに溶解して還元剤溶液とした。
<水溶性高分子、表面処理剤>
次に、水溶性高分子のポリビニルアルコール56.0g((株)クラレ製、クラレポバール(登録商標)PVA205、銀に対して3.5質量%)を分取し、36℃の純水1Lに溶解した溶液と、表面処理剤として市販のカチオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン付加4級アンモニウム塩1.15g(クローダジャパン(株)製、シラソル、銀に対して0.072質量%)と、を還元剤溶液に混合し、表面処理剤含有還元剤溶液Aとした。
次に、作製した銀錯体溶液Aと表面処理剤含有還元剤溶液Aとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液を2.7L/分、表面処理剤含有還元剤溶液を0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分であった。銀錯体の供給速度に対する表面処理剤含有還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6であった。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物と、分散剤であるステアリン酸エマルジョン24.5g(中京油脂(株)製、セロゾール920(登録商標)、銀に対してステアリン酸分で1.7質量%)とを純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して表面処理を行った後、固液分離し、銀殿物を回収した。
回収した銀殿物を、自然乾燥する前に0.05mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液15.4Lに投入し、15分間撹拌保持した後、固液分離し、銀の殿物を回収した。
次に、回収した銀の殿物を、40℃に保持した23Lの純水に投入撹拌し、濾過した後、銀の殿物を回収した。当該銀の殿物をステンレスパッドに移し、真空乾燥機にて60℃で10時間乾燥した。
加熱乾燥方式測定器(エー・アンド・デイ社製 MX−50)を用いて、120℃までの加熱における重量減少分から当該銀乾燥物の水分率を求めたところ、12wt%であった。従って銀粉にかかるエネルギーは、解砕時と空転時の電圧差及び電流値差から計算した解砕エネルギーの88%と概算した。
乾燥後の銀乾燥物から1〜1.5kgをとり、3Lのヘンシェルミキサ(日本コークス工業(株)製、FM3C)に投入し、解砕した。解砕条件は、60分間、毎分2300回転(撹拌羽根の周速は18.2m/s)以下で予備解砕、2880回転(撹拌羽根の周速は22.8m/s)以下で本解砕を、上記解砕時の銀1kgにかかるエネルギーが低下した場合には回転速度を増加し、エネルギーが増加した場合には回転速度を減少するように、電流と電圧を常時監視しながら回転数を調節する装置を組み込むことで、上記解砕時の銀1kgにかかるエネルギーが80〜180Wとなるよう自動調整しつつ解砕を行った。
本解砕の終点は、上記解砕機より10分おきに一定量のサンプルを取出し、それを用いて予備混練を行うことで、そのペースト硬さが適正であること、をもって判断し、銀粉Aを得た。解砕時の平均周速は14m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は130W、解砕時間は44分であった。
得られた銀粉の粒度分布をレーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装製、MICROTRACHRA9320X−100)を用いて測定した。イソプロピルアルコールを分散媒とし、機器内を循環させた状態で、超音波で分散させた銀粉0.1gを投入し、測定を行った。得られた体積基準の累積粒度分布から粒子径(D85)を求めたところ、5.3μmであった。
また、解砕後の銀粉の粒子径(ドメイン)を、銀粉を走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM−6360L)の観察により得たSEM像から、無作為に1000個を選んで測長し、平均粒子径(DSEM)を求めたところ、0.86μmであった。
比表面積は、多検体BET比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、Multisorb―16)を用いて測定したところ、0.8m/gであった。
吸収量は、吸収量測定器(あさひ総研製、S−500)を用いて測定した。測定方法はJISK6217−4(2008)に準じて行った。吸油プロファイルは半値幅が0.7ml/100gの急峻な1個のピークであり、吸収量は8.4ml/100gであった。得られた吸油プロファイルを図3(A)に示す。
<銀ペースト>
ステンレス製の小皿に、上記銀被覆銅微粒子100gと、エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:JER(登録商標)828)及び硬化剤(三菱化学(株)製、商品名:ST11)とタ一ピネオールとを、重量比が5:3:1で含まれるビヒクル180gを秤量し、更に分散剤(ビックケミー・ジャパン社製、商品名:DISPERBYK(登録商標)−190)を20g添加し、金属性のヘラを用いて混合した後に、に3本ロールミル((株)小平製作所製、卓上型3本ロールミル RIII−1CR−2型)を用いて混練し、フレークの発生の観察を行った。
混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢が確認された場合(表中:×)、更に開口20μmの篩を用いて吸引濾過を行い、篩上の粒子を採取し、倍率500のSEM像より測定した結果、20μm以上の径である粒子が5個以上の場合(表中:×)、20μm以上の径である粒子が2個以上5個未満の場合(表中:○)、及び1個以下の場合(表中:◎)とに分類することにより評価した。
本実施例1においては、混練時に目視によってはフレークの確認はされず、当該篩後のSEM像による評価によって確認された20μm以上の径である粒子数は1個であった。
(実施例2)
<銀錯体溶液、還元剤溶液>
実施例1と同じ条件で銀錯体溶液Bを作製し、温浴中で36℃に保持した。また、実施例1と同じ条件で還元剤溶液を作製した。
<水溶性高分子、表面処理剤>
次に、水溶性高分子のポリビニルアルコール80.0g((株)クラレ製、クラレポバール(登録商標)PVA205、銀に対して5.0質量%)を分取し、36℃の純水1Lに溶解した溶液と、表面処理剤として市販のカチオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン付加4級アンモニウム塩1.15g(クローダジャパン(株)製、シラソル、銀に対して0.072質量%)と、を還元剤溶液に混合し、表面処理剤含有還元剤溶液Bとした。
次に、作製した銀錯体溶液Bと表面処理剤含有還元剤溶液Bとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液2.7L/分、表面処理剤含有還元剤溶液0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分である。銀錯体の供給速度に対する表面処理剤含有還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6である。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物と、分散剤であるステアリン酸エマルジョン24.5g(中京油脂(株)製、セロゾール920(登録商標)、銀に対してステアリン酸分で1.7質量%)とを純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して表面処理を行った後、固液分離し、銀殿物を回収した。以降の工程は実施例1と同様に行い、銀粉Bを得た。銀乾燥物の水分率は1.3wt%であった。解砕時の平均周速は12m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は82W、解砕時間は31分であった。
また、実施例1と同様に評価も行った。体積基準の累積粒度分布からを求めた粒子径(D85)は4.5μmであった。SEM像の観察により得られ、平均粒子径(DSEM)を求めた。0.50μmであった。比表面積は1.4m/gであった。吸油プロファイルは2個のピークがあり、ピーク時のオイル滴下量はP1が7.2ml/100g、P2が4.9ml/100gであった。得られた吸油プロファイルを図3(B)に示す。フレークの発生の観察を行ったところ、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢は確認されず、篩後のSEM像による評価によって確認された20μm以上の径である粒子数は4個であった。
(実施例3)
<銀錯体溶液、還元剤溶液>
実施例1と同じ条件で銀錯体溶液Cを作製し、温浴中で36℃に保持した。また、実施例1と同じ条件で還元剤溶液を作製した。
<水溶性高分子、表面処理剤>
次に、水溶性高分子のポリビニルアルコール24.0g((株)クラレ製、クラレポバール(登録商標)PVA205、銀に対して1.5質量%)を分取し、36℃の純水1Lに溶解した溶液と、表面処理剤として市販のカチオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン付加4級アンモニウム塩1.15g(クローダジャパン(株)製、シラソル、銀に対して0.072質量%)と、を還元剤溶液に混合し、表面処理剤含有還元剤溶液Cとした。
次に、作製した銀錯体溶液Cと表面処理剤含有還元剤溶液Cとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液2.7L/分、表面処理剤含有還元剤溶液0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分である。銀錯体の供給速度に対する表面処理剤含有還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6である。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物と、分散剤であるステアリン酸エマルジョン24.5g(中京油脂(株)製、セロゾール920(登録商標)、銀に対してステアリン酸分で1.7質量%)とを純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して表面処理を行った後、固液分離し、銀殿物を回収した。以降の工程は実施例1と同様に行い、銀粉Cを得た。銀乾燥物の水分率は5wt%であった。解砕時の平均周速は31m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は172W、解砕時間は57分であった。
また、実施例1と同様に評価も行った。体積基準の累積粒度分布からを求めた粒子径(D85)は9.4μmであった。SEM像の観察により得られ、平均粒子径(DSEM)を求めた。2.40μmであった。比表面積は0.3m/gであった。吸油プロファイルは半値幅が0.9ml/100gの急峻な1個のピークであり、吸収量は9.4ml/100gであった。フレークの発生の観察を行ったところ、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢は確認されず、篩後のSEM像による評価によって確認された20μm以上の径である粒子数は2個であった。
(実施例4)
実施例1と同じ条件で銀錯体溶液を作製し、銀錯体溶液Dとした。実施例1と同様にして、還元剤溶液に水溶性高分子、表面処理剤を混合して、表面処理剤含有還元剤溶液Dとした。
次に、作製した銀錯体溶液Dと表面処理剤含有還元剤溶液Dとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液2.7L/分、還元剤溶液0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分である。銀錯体の供給速度に対する表面処理剤含有還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6である。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物と、分散剤であるステアリン酸エマルジョン24.5g(中京油脂(株)製、セロゾール920(登録商標)、銀に対してステアリン酸分で1.7質量%)とを純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して表面処理を行った後、固液分離し、銀殿物を回収した以降の工程は、解砕エネルギーを制御する機構を用いず、一定の周速5.0m/sで解砕を行った以外は実施例1と同様に行い、銀粉Dを得た。銀乾燥物の水分率は2wt%であった。解砕時の平均周速は5.0m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は91W、解砕時間は49分であった。
また、実施例1と同様に評価も行った。体積基準の累積粒度分布からを求めた粒子径(D85)は7.8μmであった。SEM像の観察により得られ、平均粒子径(DSEM)を求めた。0.85μmであった。比表面積は0.7m/gであった。吸油プロファイルは半値幅が0.8ml/100gの急峻な1個のピークであり、吸収量は8.5ml/100gであった。フレークの発生の観察を行ったところ、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢は確認されず、篩後のSEM像による評価によって確認された20μm以上の径である粒子数は0個であった。
(実施例5)
実施例1と同じ条件で銀錯体溶液を作製し、銀錯体溶液Eとした。実施例1と同様にして、還元剤溶液に水溶性高分子、表面処理剤を混合して、表面処理剤含有還元剤溶液Eとした。
次に、作製した銀錯体溶液Eと表面処理剤還元剤溶液Eとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液2.7L/分、還元剤溶液0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分である。銀錯体の供給速度に対する表面処理剤含有還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6である。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物と、分散剤であるステアリン酸エマルジョン24.5g(中京油脂(株)製、セロゾール920(登録商標)、銀に対してステアリン酸分で1.7質量%)とを純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して表面処理を行った後、固液分離し、銀殿物を回収した。以降の工程は、解砕エネルギーを制御する機構を用いず、一定の周速40m/sで解砕を行った以外は実施例1と同様に行い、銀粉Eを得た。銀乾燥物の水分率は4wt%であった。解砕時の平均周速は40m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は154W、解砕時間は23分であった。
また、実施例1と同様に評価も行った。体積基準の累積粒度分布からを求めた粒子径(D85)は4.9μmであった。SEM像の観察により得られ、平均粒子径(DSEM)を求めた。0.83μmであった。比表面積は0.9m/gであった。吸油プロファイルは2個のピークがあり、ピーク時のオイル滴下量はP1が7.4ml/100g、P2が5.1ml/100gであった。フレークの発生の観察を行ったところ、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢は確認されず、篩後のSEM像による評価によって確認された20μm以上の径である粒子数は2個であった。
(実施例6)
実施例1と同じ条件で銀錯体溶液を作製し、銀錯体溶液Fとした。
実施例1と同様にして、還元剤溶液に水溶性高分子、表面処理剤を混合して、表面処理剤含有還元剤溶液Fとした。
次に、作製した銀錯体溶液Fと表面処理剤含有還元剤溶液Fとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液2.7L/分、還元剤溶液0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分である。銀錯体の供給速度に対する表面処理剤含有還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6である。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物と、分散剤であるステアリン酸エマルジョン24.5g(中京油脂(株)製、セロゾール920(登録商標)、銀に対してステアリン酸分で1.7質量%)とを純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して表面処理を行った後、固液分離し、銀殿物を回収した。以降の工程は、解砕エネルギーを制御する機構を用いず、一定の解砕エネルギー80Wで解砕を行った以外は実施例1と同様に行い、銀粉Fを得た。銀乾燥物の水分率は0.2wt%であった。解砕時の平均周速は11m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は80W、解砕時間は51分であった。
また、実施例1と同様に評価も行った。体積基準の累積粒度分布からを求めた粒子径(D85)は9.6μmであった。SEM像の観察により得られ、平均粒子径(DSEM)を求めた。0.88μmであった。比表面積は0.8m/gであった。吸油プロファイルは半値幅が0.7ml/100gの急峻な1個のピークであり、吸収量は8.5ml/100gであった。フレークの発生の観察を行ったところ、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢は確認されず、篩後のSEM像による評価によって確認された20μm以上の径である粒子数は0個であった。
(実施例7)
実施例1と同じ条件で銀錯体溶液を作製し、銀錯体溶液Gとした。実施例1と同様にして、還元剤溶液に水溶性高分子、表面処理剤を混合して、表面処理剤含有還元剤溶液Gとした。
次に、作製した銀錯体溶液Gと表面処理剤含有還元剤溶液Gとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液2.7L/分、還元剤溶液0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分である。銀錯体の供給速度に対する表面処理剤含有還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6である。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物と、分散剤であるステアリン酸エマルジョン24.5g(中京油脂(株)製、セロゾール920(登録商標)、銀に対してステアリン酸分で1.7質量%)とを純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して表面処理を行った後、固液分離し、銀殿物を回収した。以降の工程は、解砕エネルギーを制御する機構を用いず、一定の解砕エネルギー180Wで解砕を行った以外は実施例1と同様に行い、銀粉Fを得た。銀乾燥物の水分率は3wt%であった。解砕時の平均周速は38m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は180W、解砕時間は21分であった。
また、実施例1と同様に評価も行った。体積基準の累積粒度分布からを求めた粒子径(D85)は4.6μmであった。SEM像の観察により得られ、平均粒子径(DSEM)を求めた。0.87μmであった。比表面積は0.9m/gであった。吸油プロファイルは2個のピークがあり、ピーク時のオイル滴下量はP1が7.3ml/100g、P2が4.7ml/100gであった。フレークの発生の観察を行ったところ、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢は確認されず、篩後のSEM像による評価によって確認された20μm以上の径である粒子数は3個であった。
(実施例8)
実施例1と同じ条件で銀錯体溶液Hを作製し、温浴中で36℃に保持した。また、実施例1と同じ条件で還元剤溶液を作製した。次に、水溶性高分子のポリビニルアルコール56.0g((株)クラレ製、クラレポバール(登録商標)PVA205、銀に対して3.5質量%)を分取し、36℃の純水1Lに溶解した溶液を還元剤溶液に混合し、還元剤溶液Hとした。なお、実施例8では表面処理剤は用いなかった。
次に、作製した銀錯体溶液Hと還元剤溶液Hとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液2.7L/分、還元剤溶液0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分である。銀錯体の供給速度に対する還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6である。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、得られた銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物を純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して、固液分離し、銀殿物を回収した。以降の工程は実施例1と同様に行い、銀粉Hを得た。銀乾燥物の水分率は7wt%であった。解砕時の平均周速は16m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は151W、解砕時間は54分であった。
また、実施例1と同様に評価も行った。体積基準の累積粒度分布からを求めた粒子径(D85)は8.7μmであった。SEM像の観察により得られ、平均粒子径(DSEM)を求めた。0.86μmであった。比表面積は0.7m/gであった。吸油プロファイルは半値幅が0.6ml/100gの急峻な1個のピークであり、吸収量は8.5ml/100gであった。フレークの発生の観察を行ったところ、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢は確認されず、篩後のSEM像による評価によって確認された20μm以上の径である粒子数は1個であった。
(実施例9)
実施例1と同じ条件で銀錯体溶液Iを作製し、温浴中で36℃に保持した。また、実施例1と同じ条件で還元剤溶液を作製した。次に、水溶性高分子のポリビニルアルコール56.0g((株)クラレ製、クラレポバール(登録商標)PVA205、銀に対して3.5質量%)を分取し、36℃の純水1Lに溶解した溶液と、表面処理剤として市販のカチオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン付加4級アンモニウム塩1.15g(クローダジャパン(株)製、シラソル、銀に対して0.072質量%)と、を還元剤溶液に混合し、表面処理剤含有還元剤溶液Iとした。
次に、作製した銀錯体溶液Iと表面処理剤含有還元剤溶液Iとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液2.7L/分、還元剤溶液0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分である。銀錯体の供給速度に対する表面処理剤含有還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6である。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、得られた銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物を純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して、固液分離し、銀殿物を回収した。以降の工程は実施例1と同様に行い、銀粉Iを得た。銀乾燥物の水分率は6wt%であった。解砕時の平均周速は15m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は142W、解砕時間は51分であった。
また、実施例1と同様に評価も行った。体積基準の累積粒度分布からを求めた粒子径(D85)は6.9μmであった。SEM像の観察により得られ、平均粒子径(DSEM)を求めた。0.88μmであった。比表面積は0.8m/gであった。吸油プロファイルは半値幅が0.7ml/100gの急峻な1個のピークであり、吸収量は8.3ml/100gであった。フレークの発生の観察を行ったところ、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢は確認されず、篩後のSEM像による評価によって確認された20μm以上の径である粒子数は1個であった。
(実施例10)
実施例1と同じ条件で銀錯体溶液及び還元剤溶液を作製し銀錯体溶液J、表面処理剤含有還元剤溶液Jとした。実施例1と同様にして、還元剤溶液に水溶性高分子、表面処理剤を混合して、表面処理剤含有還元剤溶液Jとした。
次に、作製した銀錯体溶液Jと表面処理剤含有還元剤溶液Jとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液2.7L/分、還元剤溶液0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分である。銀錯体の供給速度に対する表面処理剤含有還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6である。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物と、分散剤であるステアリン酸エマルジョン24.5g(中京油脂(株)製、セロゾール920(登録商標)、銀に対してステアリン酸分で1.7質量%)とを純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して表面処理を行った後、固液分離し、銀殿物を回収した。以降の工程は、2Lのハイスピードミキサ(アーステクニカ(株)製、LFS2)に投入し、解砕した。以外は実施例1と同様に行い、銀粉Jを得た。銀乾燥物の水分率は2wt%であった。解砕時の平均周速は12m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は157W、解砕時間は39分であった。
また、実施例1と同様に評価も行った。体積基準の累積粒度分布からを求めた粒子径(D85)は5.2μmであった。SEM像の観察により得られ、平均粒子径(DSEM)を求めた。0.82μmであった。比表面積は0.8m/gであった。吸油プロファイルは半値幅が0.8ml/100gの急峻な1個のピークであり、吸収量は8.1ml/100gであった。フレークの発生の観察を行ったところ、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢は確認されず、篩後のSEM像による評価によって確認された20μm以上の径である粒子数は0個であった。
(実施例11)
<銀錯体溶液>
38℃の温浴中で液温36℃に保持した25%アンモニア水36L、硫酸銀2320g(和光純薬製、硫酸銀中の銀1600g)を撹拌しながら投入して、銀錯体溶液を作製した。消泡剤((株)アデカ製、アデカノール(登録商標)LG−126)を体積比で100倍に希釈した消泡剤希釈液18.7mLと、水溶性高分子のポリビニルピロリドン56.0g((株)ISP製、K15、銀に対して3.5質量%)を銀錯体溶液に添加し、得られた銀錯体溶液Kを温浴中で36℃に保持した。
<還元剤溶液>
一方、還元剤のアスコルビン酸921g(関東化学(株)製、試薬、銀に対して57.6質量%)を、36℃の純水14.61Lに溶解して還元剤溶液とした。
次に、表面処理剤として市販のカチオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン付加4級アンモニウム塩1.15g(クローダジャパン(株)製、シラソル、銀に対して0.072質量%)と、を分取し、36℃の純水1Lに溶解した溶液を還元剤溶液に混合し、表面処理剤含有還元剤溶液Kとした。
次に、作製した銀錯体溶液Kと表面処理剤含有還還元剤溶液Kとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液2.7L/分、還元剤溶液0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分である。銀錯体の供給速度に対する表面処理剤含有還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6である。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物と、分散剤であるステアリン酸エマルジョン24.5g(中京油脂(株)製、セロゾール920(登録商標)、銀に対してステアリン酸分で1.7質量%)とを純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して表面処理を行った後、固液分離し、銀殿物を回収した。以降の工程は実施例1と同様に行い、銀粉Kを得た。銀乾燥物の水分率は1.5wt%であった。解砕時の平均周速は14m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は125W、解砕時間は41分であった。
また、実施例1と同様に評価も行った。体積基準の累積粒度分布からを求めた粒子径(D85)は3.9μmであった。SEM像の観察により得られ、平均粒子径(DSEM)を求めた。0.86μmであった。比表面積は0.9m/gであった。吸油プロファイルは2個のピークがあり、ピーク時のオイル滴下量はP1が7.2ml/100g、P2が5.1ml/100gであった。フレークの発生の観察を行ったところ、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢は確認されず、篩後のSEM像による評価によって確認された20μm以上の径である粒子数は3個であった。
(比較例1)
実施例1と同じ条件で銀錯体溶液L及び還元剤溶液を作製し、温浴中で36℃に保持した。一方、還元剤のアスコルビン酸921g(関東化学(株)製、試薬、銀に対して57.6質量%)を、36℃の純水14.61Lに溶解して還元剤溶液とした。次に、水溶性高分子のポリビニルアルコール8.0g((株)クラレ製、クラレポバール(登録商標)PVA205、銀に対して0.5質量%)を分取し、36℃の純水1Lに溶解した溶液と、表面処理剤として市販のカチオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン付加4級アンモニウム塩1.15g(クローダジャパン(株)製、シラソル、銀に対して0.072質量%)と、を還元剤溶液に混合し、表面処理剤含有還元剤溶液Lとした。
次に、作製した銀錯体溶液Lと表面処理剤含有還元剤溶液Lとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液2.7L/分、還元剤溶液0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分である。銀錯体の供給速度に対する表面処理剤含有還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6である。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物と、分散剤であるステアリン酸エマルジョン24.5g(中京油脂(株)製、セロゾール920(登録商標)、銀に対してステアリン酸分で1.7質量%)とを純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して表面処理を行った後、固液分離し、銀殿物を回収した。以降の工程は実施例1と同様に行い、銀粉Lを得た。銀乾燥物の水分率は21wt%であった。解砕時の平均周速は31m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は172W、解砕時間は59分であった。
また、実施例1と同様に評価も行った。体積基準の累積粒度分布からを求めた粒子径(D85)は13.7μmであった。SEM像の観察により得られ、平均粒子径(DSEM)を求めた。1.8μmであった。比表面積は0.2m/gであった。吸油プロファイルは半値幅が0.8ml/100gの急峻な1個のピークであり、吸収量は9.7ml/100gであった。フレークの発生の観察を行ったところ、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢が確認された。
(比較例2)
実施例1と同じ条件で銀錯体溶液M及び還元剤溶液を作製し、温浴中で36℃に保持した。一方、還元剤のアスコルビン酸921g(関東化学(株)製、試薬、銀に対して57.6質量%)を、36℃の純水14.61Lに溶解して還元剤溶液とした。次に、水溶性高分子のポリビニルアルコール160.0g((株)クラレ製、クラレポバール(登録商標)PVA205、銀に対して10質量%)を分取し、36℃の純水1Lに溶解した溶液と、表面処理剤として市販のカチオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン付加4級アンモニウム塩1.15g(クローダジャパン(株)製、シラソル、銀に対して0.072質量%)と、を還元剤溶液に混合し、表面処理剤含有還元剤溶液Mとした。
次に、作製した銀錯体溶液Mと表面処理剤含有還元剤溶液Mとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液2.7L/分、還元剤溶液0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分である。銀錯体の供給速度に対する表面処理剤含有還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6である。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物と、分散剤であるステアリン酸エマルジョン24.5g(中京油脂(株)製、セロゾール920(登録商標)、銀に対してステアリン酸分で1.7質量%)とを純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して表面処理を行った後、固液分離し、銀殿物を回収した。以降の工程は実施例1と同様に行い、銀粉Mを得た。銀乾燥物の水分率は4wt%であった。解砕時の平均周速は12m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は82W、解砕時間は21分であった。
また、実施例1と同様に評価も行った。体積基準の累積粒度分布からを求めた粒子径(D85)は3.8μmであった。SEM像の観察により得られ、平均粒子径(DSEM)を求めた。0.42μmであった。比表面積は1.6m/gであった。吸油プロファイルは2個のピークがあり、ピーク時のオイル滴下量はP1が8.1ml/100g、P2が5.1ml/100gであり、ピークのトルク値がP2>0.75P1であった。フレークの発生の観察を行ったところ、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢が確認された。
(比較例3)
実施例1と同じ条件で銀錯体溶液及び還元剤溶液を作製し銀錯体溶液N、表面処理剤含有還元剤溶液Nとした。実施例1と同様にして、還元剤溶液に水溶性高分子、表面処理剤を混合して、表面処理剤含有還元剤溶液Nとした。
次に、作製した銀錯体溶液Nと表面処理剤含有還元剤溶液Nとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液2.7L/分、還元剤溶液0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分である。銀錯体の供給速度に対する表面処理剤含有還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6である。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物と、分散剤であるステアリン酸エマルジョン24.5g(中京油脂(株)製、セロゾール920(登録商標)、銀に対してステアリン酸分で1.7質量%)とを純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して表面処理を行った後、固液分離し、銀殿物を回収した。以降の工程は、解砕エネルギーを制御する機構を用いず、一定の周速3.0m/sで解砕を行った以外は実施例1と同様に行い、銀粉Nを得た。銀乾燥物の水分率は4wt%であった。解砕時の平均周速は3.0m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は61W、解砕時間は185分であった。
また、実施例1と同様に評価も行った。体積基準の累積粒度分布からを求めた粒子径(D85)は19.2μmであった。SEM像の観察により得られ、平均粒子径(DSEM)を求めた。0.85μmであった。比表面積は0.7m/gであった。吸油プロファイルは半値幅が1.9ml/100gの1個のピークであり、吸収量は9.9ml/100gであった。フレークの発生の観察を行ったところ、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢は確認されず、篩後のSEM像による評価によって確認された20μm以上の径である粒子数は17個であった。
(比較例4)
実施例1と同じ条件で銀錯体溶液及び還元剤溶液を作製し銀錯体溶液O、表面処理剤含有還元剤溶液Oとした。実施例1と同様にして、還元剤溶液に水溶性高分子、表面処理剤を混合して、表面処理剤含有還元剤溶液Oとした。
次に、作製した銀錯体溶液Oと表面処理剤含有還元剤溶液Oとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液2.7L/分、還元剤溶液0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分である。銀錯体の供給速度に対する表面処理剤含有還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6である。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物と、分散剤であるステアリン酸エマルジョン24.5g(中京油脂(株)製、セロゾール920(登録商標)、銀に対してステアリン酸分で1.7質量%)とを純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して表面処理を行った後、固液分離し、銀殿物を回収した。以降の工程は、解砕エネルギーを制御する機構を用いず、一定の周速45m/sで解砕を行った以外は実施例1と同様に行い、銀粉Oを得た。銀乾燥物の水分率は20wt%であった。解砕時の平均周速は45.0m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は197W、解砕時間は30分であった。
また、実施例1と同様に評価も行った。体積基準の累積粒度分布からを求めた粒子径(D85)は4.2μmであった。SEM像の観察により得られ、平均粒子径(DSEM)を求めた。0.83μmであった。比表面積は0.83m/gであった。吸油プロファイルは2個のピークがあり、ピーク時のオイル滴下量はP1が7.9ml/100g、P2が4.2ml/100gであり、ピークのトルク値がP2>0.75P1であった。フレークの発生の観察を行ったところ、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢が確認された。
(比較例5)
実施例1と同じ条件で銀錯体溶液P及び還元剤溶液を作製し、温浴中で36℃に保持した。一方、還元剤のアスコルビン酸921g(関東化学(株)製、試薬、銀に対して57.6質量%)を、36℃の純水14.61Lに溶解して還元剤溶液とした。次に、水溶性高分子のポリビニルピロリドン24.0g((株)ISP製、K15、銀に対して1.5質量%)を分取し、36℃の純水1Lに溶解した溶液と、表面処理剤として市販のカチオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン付加4級アンモニウム塩1.15g(クローダジャパン(株)製、シラソル、銀に対して0.072質量%)と、を還元剤溶液に混合し、表面処理剤含有還元剤溶液Pとした。
次に、作製した銀錯体溶液Pと表面処理剤含有還元剤溶液Pとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液2.7L/分、還元剤溶液0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分である。銀錯体の供給速度に対する表面処理剤含有還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6である。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物と、分散剤であるステアリン酸エマルジョン24.5g(中京油脂(株)製、セロゾール920(登録商標)、銀に対してステアリン酸分で1.7質量%)とを純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して表面処理を行った後、固液分離し、銀殿物を回収した。以降の工程は実施例1と同様に行い、銀粉Pを得た。銀乾燥物の水分率は3wt%であった。解砕時の平均周速は35m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は198W、解砕時間は54分であった。
また、実施例1と同様に評価も行った。体積基準の累積粒度分布からを求めた粒子径(D85)は12.1μmであった。SEM像の観察により得られ、平均粒子径(DSEM)を求めた。1.1μmであった。比表面積は0.6m/gであった。吸油プロファイルは半値幅が1.1ml/100gの急峻な1個のピークであり、吸収量は7.5ml/100gであった。フレークの発生の観察を行ったところ、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢が確認された。
(比較例6)
実施例1と同じ条件で銀錯体溶液Q及び還元剤溶液を作製し、温浴中で36℃に保持した。一方、還元剤のアスコルビン酸921g(関東化学(株)製、試薬、銀に対して57.6質量%)を、36℃の純水14.61Lに溶解して還元剤溶液とした。次に、水溶性高分子のポリビニルピロリドン80.0g((株)ISP製、K15、銀に対して5.0質量%)を分取し、36℃の純水1Lに溶解した溶液と、表面処理剤として市販のカチオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン付加4級アンモニウム塩1.15g(クローダジャパン(株)製、シラソル、銀に対して0.072質量%)と、を還元剤溶液に混合し、表面処理剤含有還元剤溶液Qとした。
次に、作製した銀錯体溶液Mと表面処理剤含有還元剤溶液Mとを、定量ポンプを使用し、銀錯体溶液2.7L/分、還元剤溶液0.9L/分で反応チューブ内に送液して、銀錯体を還元した。このときの還元速度は銀量で120g/分である。銀錯体の供給速度に対する表面処理剤含有還元剤の供給速度の比は化学当量で1.6である。なお、反応チューブには内径10mmφのY字型チューブを用いた。銀スラリーを当該Y字型チューブ出口より受槽に受け入れ、1時間攪拌保持した。
その後、銀スラリーをフィルタープレスで固液分離し、得られた乾燥前の銀殿物と、分散剤であるステアリン酸エマルジョン24.5g(中京油脂(株)製、セロゾール920(登録商標)、銀に対してステアリン酸分で1.7質量%)とを純水15.4Lに投入し、60分間撹拌保持して表面処理を行った後、固液分離し、銀殿物を回収した。以降の工程は実施例1と同様に行い、銀粉Qを得た。銀乾燥物の水分率は8wt%であった。解砕時の平均周速は10m/s、電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値は72W、解砕時間は21分であった。
また、実施例1と同様に評価も行った。体積基準の累積粒度分布からを求めた粒子径(D85)は3.5μmであった。SEM像の観察により得られ、平均粒子径(DSEM)を求めた。0.6μmであった。比表面積は1.2m/gであった。吸油プロファイルは2個のピークがあり、ピーク時のオイル滴下量はP1が7.1ml/100g、P2が4.5ml/100gであり、ピークのトルク値がP2>0.75P1であった。フレークの発生の観察を行ったところ、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢は確認されず、篩後のSEM像による評価によって確認された20μm以上の径である粒子数は25個であった。以上の製造条件を表1に、試験結果を表2に示す。
実施例1乃至11については、表2に示すようにフレークの有無に関しては全て◎又は○であり、フレークの発生を抑制できた。
一方、比較例1、2、4、5については、混練中に目視によりフレークの発生に伴う光沢が確認され、比較例3、6は開口20μmの篩を用いて吸引濾過を行い、篩上の粒子を採取し、倍率500のSEM像より測定した結果、20μm以上の径である粒子が5個以上となり、フレークの発生を抑制できなかった。
よって本発明の一実施形態に係る銀粉の製造方法及び銀粉では、上記のとおり混練する際に、銀粉が粗大に凝集した凝集塊を生成せず、安定してフレークの発生が抑制できた。
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、銀粉の製造方法、銀粉の構成、動作も本発明の各実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
S1 銀錯体化工程 S2 還元工程 S3 回収工程 S4解砕工程

Claims (7)

  1. 銀塩を錯化剤によって銀錯体とし、該銀錯体を還元して銀粉を得る銀粉の製造方法において、
    前記銀塩を錯化剤の含む溶液に溶解し銀錯体溶液とする銀錯体化工程と、
    該銀錯体溶液と還元剤溶液とを混合し前記銀錯体を還元して銀スラリーを得る還元工程と、
    該銀スラリーを洗浄、乾燥し銀乾燥物を回収する回収工程と、
    該銀乾燥物を解砕し銀粉を得る解砕工程と、を有し、
    前記銀錯体化工程における前記銀錯体溶液、前記還元工程における前記還元剤溶液から選ばれる1種以上の溶液に含まれる銀に対し、合計して1.5〜5質量%の水溶性高分子を添加し、かつ、
    前記解砕工程において、攪拌羽根を備えた整粒機を用いて、該攪拌羽根の周速が5〜40m/sで、かつ解砕時と空運転時の電圧差及び電流値差から計算した銀1kgあたりにかかるエネルギーの最大値が180W以下で解砕し、
    前記銀粉表面の有機物に対し1g/100ml以上の溶解度を持つ溶媒中でレーザー回折散乱式粒度分布測定法による前記銀粉の体積積算85%径(D85)が10μm以下とすることを特徴とする銀粉の製造方法。
  2. 前記解砕工程において、前記エネルギーの最大値が80W以上となる範囲で解砕することを特徴とする請求項1に記載の銀粉の製造方法。
  3. 前記解砕工程において、前記整粒機の前記撹拌羽根の周速が、5〜30m/sであることを特徴とする請求項1又は2に記載の銀粉の製造方法。
  4. 前記還元工程において、前記銀錯体溶液に含まれる銀に対して2〜5質量%の前記水溶性高分子を前記還元剤溶液に添加することを特徴とする請求項2又は3に記載の銀粉の製造方法。
  5. 前記銀錯体化工程と、前記還元工程と、前記回収工程の少なくとも1工程において、
    カチオン系界面活性剤単独、又は、
    カチオン系界面活性剤及び脂肪酸又はその塩
    を処理剤として添加して、前記銀の粒子表面に表面処理することを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の銀粉の製造方法。
  6. 前記還元工程、又は前記回収工程での1回目の固液分離後に、少なくとも凝集を抑制できる量の前記水溶性高分子が、前記粒子表面に残存した状態で前記表面処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の銀粉の製造方法。
  7. 一次粒子と、二次粒子と、一次粒子及び二次粒子が集合してなる凝集体を含む銀粉であって、
    銀粉表面の有機物に対し1g/100ml以上の溶解度を持つ溶媒中でレーザー回折散乱式粒度分布測定法で測定した体積積算85%径(D85)が10μm以下であり、
    BET法により測定した比表面積が0.3〜1.5m/gであり、
    JIS−K6217−4法で測定したフタル酸ジブチルの吸収量が7.0〜9.5ml/100gであり、
    かつ吸収量測定時の吸油プロファイルに2個のピークを有するか、又は前記吸油プロファイルの半値幅が1.5ml/100g以下の1個のピークを有することを特徴とする銀粉。
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