JP6727922B2 - 銀粉およびその製造方法、ならびに導電性ペースト - Google Patents

銀粉およびその製造方法、ならびに導電性ペースト Download PDF

Info

Publication number
JP6727922B2
JP6727922B2 JP2016101679A JP2016101679A JP6727922B2 JP 6727922 B2 JP6727922 B2 JP 6727922B2 JP 2016101679 A JP2016101679 A JP 2016101679A JP 2016101679 A JP2016101679 A JP 2016101679A JP 6727922 B2 JP6727922 B2 JP 6727922B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
silver powder
silver
mass
bet specific
surface area
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016101679A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017206763A (ja
Inventor
直樹 田原
直樹 田原
太郎 中野谷
太郎 中野谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dowa Electronics Materials Co Ltd
Original Assignee
Dowa Electronics Materials Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dowa Electronics Materials Co Ltd filed Critical Dowa Electronics Materials Co Ltd
Priority to JP2016101679A priority Critical patent/JP6727922B2/ja
Publication of JP2017206763A publication Critical patent/JP2017206763A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6727922B2 publication Critical patent/JP6727922B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Photovoltaic Devices (AREA)
  • Conductive Materials (AREA)
  • Non-Insulated Conductors (AREA)
  • Manufacture Of Metal Powder And Suspensions Thereof (AREA)
  • Powder Metallurgy (AREA)

Description

本発明は、銀粉およびその製造方法、ならびに導電性ペーストに関する。
従来より、積層コンデンサの内部電極、回路基板の導体パターンや太陽電池用基板の電極等を形成する方法として、銀粉をガラスフリットと共に有機ビヒクル中に加えて混練することによって製造される焼成型の導電性ペーストを基板上に所定のパターンに形成した後、加熱焼成することによって、有機成分を除去し、銀粉同士を焼結させて導電膜を形成する方法が広く用いられている。
このような用途に使用される焼成型の導電性ペーストに対しては、電気を効率良く流す必要があるため、より高い導電性が要求されている。
前記焼成型の導電性ペーストに用いられる銀粉を製造する方法としては、例えば、銀イオンを含有する水性反応系に還元剤を加えることによって球状銀粉を還元析出させる湿式還元法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、2種の還元剤を用いることで、分散剤(表面処理剤ともいう)が無くても分散性に優れた銀粉を得る方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、還元前にポリエチレンイミンを混合することで、球状かつ高分散で粒径の揃った銀粉を得る方法が知られている(例えば、特許文献3および4参照)。
特開平8−176620号公報 特開2006−161145号公報 特開2009−221591号公報 特開2012−214873号公報
前述したように、焼成型の導電性ペーストに対しては高い導電性を有することが要求されている。このような、高い導電性を確保するために、焼結性が良好であり、かつ低い比抵抗値が得られる銀粉の開発が進められてきた。
例えば、前記特許文献2に記載されている手法では、累積50%粒子径(D50)の値に対してBET比表面積の大きい銀粉が得られるが、この特許文献2に記載されている手法では、累積50%粒子径(D50)とBET比表面積との積が1未満となる銀粉を得ることは困難であった。
前記特許文献3および4に記載されている手法では、累積50%粒子径(D50)の値に対してBET比表面積の小さい球状の銀粉が得られ、累積50%粒子径(D50)とBET比表面積との積は1未満となる。しかしながら、前記特許文献4に記載のポリエチレンイミンを用いた銀粉の強熱減量値は小さく、強熱減量値から表面処理剤量を差し引いた銀粉内部の含有物量(強熱減量差)の値も小さく、強熱減量差/BET比表面積が1.46(比較例3)、1.40(比較例6)であり、ポリエチレンイミンを用いた銀粉では、還元剤の種類によらず、ペースト化した場合は、比抵抗値の改善効果は大きくなかった。
本発明は、このような問題点に鑑み、湿式還元法よって製造され、焼結特性が良好な銀粉およびその製造方法、ならびに良好な導電性を有する導電性ペーストを提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明の銀粉の製造方法は、銀アンミン錯体水溶液と還元剤とを混合する銀粉の製造方法であって、
前記銀アンミン錯体水溶液と前記還元剤との混合前に前記銀アンミン錯体水溶液にカルボキシル基を有する平均分子量1,000以上の水溶性高分子を含む前添加剤を添加し、前記還元剤混合後のスラリーに脂肪酸およびその塩、アゾール類、界面活性剤、有機金属化合物、ならびにキレート剤から選ばれる表面処理剤を添加する。
この場合、前記水溶性高分子が、ポリカルボン酸またはその塩であることが好ましい。
前記水溶性高分子の添加量が、前記銀アンミン錯体水溶液中の銀量に対して0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましい。
前記還元剤が、ホルマリンであることが好ましい。
前記表面処理剤が、脂肪酸またはその塩であることが好ましい。
本発明の銀は、表面に脂肪酸およびその塩、アゾール類、界面活性剤、有機金属化合物、ならびにキレート剤から選ばれる表面処理剤を有する銀粉であって、
強熱減量(質量%)から前記銀粉表面の有機物量(質量%)を引いた値をBET比表面積(m/g)で除した値が1.50以上5.0以下であり、かつ酸素の含有量(質量%)をBET比表面積(m/g)で除した値が0.8以上2.0以下である。
この場合、前記BET比表面積(m/g)と累積50%粒子径(D50)(μm)との積が1未満であることが好ましい。
前記BET比表面積が0.20m/g以上0.50m/g以下であり、累積50%粒子径(D50)が0.3μm以上3.0μm以下であることが好ましい。
前記表面処理剤が、脂肪酸またはその塩であることが好ましい。
本発明の導電性ペーストは、本発明の前記銀粉を含有する。この場合、太陽電池の電極形成に用いられることが好ましい。
本発明によると、湿式還元法によって製造され、焼結特性が良好な銀粉およびその製造方法、ならびに良好な導電性を有する導電性ペーストを提供することができる。
図1は、実施例1で得られた銀粉の5,000倍のSEM像である。 図2は、比較例2で得られた銀粉の5,000倍のSEM像である。 図3は、実施例1で得られた銀粉を用いた導電膜の表面の10,000倍のSEM像である。 図4は、実施例2で得られた銀粉を用いた導電膜の表面の10,000倍のSEM像である。 図5は、比較例1で得られた銀粉を用いた導電膜の表面の10,000倍のSEM像である。
(銀粉の製造方法)
本発明の銀粉の製造方法は、銀アンミン錯体水溶液と還元剤とを混合する銀粉の製造方法であって、前記銀アンミン錯体水溶液と前記還元剤との混合前に前記銀アンミン錯体水溶液に前添加剤を添加する工程(以下、「前添加剤の添加工程」と称することもある)、前記還元剤混合後のスラリーに表面処理剤を添加する工程(以下、「表面処理剤の添加工程」と称することもある)を含み、「銀アンミン錯体水溶液の調液工程」、「銀の還元工程」、「銀粉の回収および洗浄工程」、および「銀粉の乾燥工程」を含むことが好ましく、さらに必要に応じて「その他の工程」を含む。
<銀アンミン錯体水溶液の調液工程>
前記銀アンミン錯体水溶液の調液工程は、銀アンミン錯体を含有する水溶液(銀アンミン錯体水溶液)を調液する工程である。
前記銀アンミン錯体水溶液は、硝酸銀水溶液または酸化銀懸濁液にアンモニア水またはアンモニウム塩を添加することにより生成することができる。これらの中でも、銀粉が適当な粒径と球状の形状を有するようにするためには、硝酸銀水溶液にアンモニア水を添加して得られる銀アンミン錯体水溶液を使用することが好ましい。
前記銀アンミン錯体中におけるアンモニアの配位数は2であるため、銀1モル当たりアンモニアを2モル以上添加する。前記アンモニアの添加量が多過ぎると、銀アンミン錯体が安定化し過ぎて還元が進み難くなるため、アンモニアの添加量は銀1モル当たりアンモニアが8モル以下であることが好ましい。なお、還元剤の添加量を多くする等の調整を行えば、アンモニアの添加量が8モルを超えても適当な粒径の球状銀粉を得ることは可能である。また、銀イオンを含有する水性反応系にpH調整剤を添加してもよい。前記pH調整剤としては、特に制限はなく、一般的な酸や塩基が使用することができ、例えば、硝酸、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。
<前添加剤の添加工程>
前記前添加剤の添加工程は、前記銀アンミン錯体水溶液と前記還元剤との混合前に前記銀アンミン錯体水溶液にカルボキシル基を有する平均分子量1,000以上の水溶性高分子を含む前添加剤を添加する工程である。
本発明の銀粉の製造方法においては、前記銀アンミン錯体水溶液と前記還元剤との混合前に銀アンミン錯体水溶液に対してカルボキシル基を有する平均分子量1,000以上の水溶性高分子を含む前添加剤を添加する必要がある。
銀の還元工程の前に前添加剤を添加することによって、前記水溶性高分子中のカルボキシル基と銀アンミン錯体水溶液中の銀イオンとが相互作用し、還元剤を混合したときの還元析出反応において、銀粉内部へより多くの有機成分および酸素源を取り込むことが可能となる。
前記カルボキシル基を有する平均分子量1,000以上の水溶性高分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、入手のしやすさの点から、例えば、ポリアクリル酸に代表されるポリカルボン酸またはその塩などが好ましい。なお、前記ポリカルボン酸またはその塩が主成分とされているのであれば、市販される薬液に通常含まれるような不純物や添加剤は含まれていてもよい。なお、前記平均分子量とは、重量平均分子量とする。
前記ポリカルボン酸の塩としては、銀アンミン錯体水溶液に対して適当な塩であることが好ましく、ナトリウム塩やカリウム塩、アンモニウム塩などが例示され、最も好ましくはアンモニウム塩である。
前記前添加剤の添加方法としては、直接添加する、および水に溶かした水溶液として添加する、のどちらでもよい。
前記水溶性高分子の添加量は、前記銀アンミン錯体水溶液中の銀量に対して、0.001質量%以上1質量%以下が好ましく、0.001質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。前記添加量が、少なすぎると、反応液を取り込む効果が得られず、前記添加量が多すぎると、銀の還元を阻害してしまうため効率的に銀粒子を得ることが難しくなる。また、理由は定かではないが添加する水溶性高分子の平均分子量が小さいと銀粉内部へ反応液が十分に取り込まれないため、前記水溶性高分子の平均分子量は1,000以上であることが好ましく、3,000以上であることがより好ましく、5,000以上であることがさらに好ましい。前記平均分子量が、1,000未満であると、銀粉内部の含有物量を向上させることが困難となることがある。また、前記平均分子量は20万以下であることが好ましく、3万以下であることがより好ましい。前記平均分子量が20万を超えると、水溶液の粘性が増して取扱いが難しくなるためである。
<銀の還元工程>
前記銀の還元工程は、湿式還元法であり、還元剤により銀を還元析出する工程である。
前記還元剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホルマリン、ヒドラジンなどが挙げられ、ホルマリンが特に好ましい。
前記還元剤を使用することにより、適当な粒径の球状の銀粉を効率的に得ることができる。
前記還元剤の添加量は、銀の反応収率を上げるためには、銀に対して1当量以上であることが好ましい。還元力の弱い還元剤を使用する場合には、銀に対して2当量以上が好ましく、10当量以上20当量以下がより好ましい。
前記還元剤の添加方法については、銀粉の凝集を防ぐために、1当量/分間以上の速さで添加することが好ましい。また、還元の際には、より短時間で反応が終了するように反応液を攪拌することが好ましい。また、還元反応時の液温は5℃以上80℃以下とすることが好ましく、15℃以上40℃以下がより好ましい。
<表面処理剤の添加工程>
前記表面処理剤の添加工程は、前記還元剤混合後のスラリーに脂肪酸およびその塩、界面活性剤、有機金属化合物、ならびにキレート剤から選ばれる表面処理剤を添加する工程である。
前記銀の還元工程にて生じた銀粉を含むスラリーに表面処理剤を添加して、銀粉表面に表面処理剤を吸着させる。なお、表面処理剤が吸着すると銀粉の粒成長は止まる。
前記表面処理剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪酸またはその塩、アゾール類、界面活性剤、有機金属化合物、キレート剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
前記脂肪酸としては、例えば、リシノール酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、またはこれらの塩などが挙げられる。
前記アゾール類としては、例えば、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、またはこれらの塩などが挙げられる。
前記界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等の陰イオン界面活性剤、脂肪族4級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤、イミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤などが挙げられる。
前記有機金属化合物としては、例えば、アセチルアセトントリブトキシジルコニウム、クエン酸マグネシウム、ジエチル亜鉛、ジブチルスズオキサイド、ジメチル亜鉛、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、トリエチルインジウム、トリエチルガリウム、トリメチルインジウム、トリメチルガリウム、モノブチルスズオキサイド、テトライソシアネートシラン、テトラメチルシラン、テトラメトキシシラン、ポリメトキシシロキサン、モノメチルトリイソシアネートシラン、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などが挙げられる。
前記キレート剤としては、例えば、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、セレナゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、1H−1,2,3−トリアゾール、2H−1,2,3−トリアゾール、1H−1,2,4−トリアゾール、4H−1,2,4−トリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1H−1,2,3,4−テトラゾール、1,2,3,4−オキサトリアゾール、1,2,3,4−チアトリアゾール、2H−1,2,3,4−テトラゾール、1,2,3,5−オキサトリアゾール、1,2,3,5−チアトリアゾール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、グリセリン酸、酒石酸、リンゴ酸、タルトロン酸、ヒドロアクリル酸、マンデル酸、クエン酸、アスコルビン酸、またはこれらの塩などが挙げられる。
前記表面処理剤の中でも、脂肪酸またはその塩が好ましく、リシノール酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、またはこれらの塩が特に好ましい。
前記表面処理剤の添加量は、前記銀粉質量に対して、0.05質量%以上3質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。
<銀粉の回収および洗浄工程>
前記銀粉の回収および洗浄工程は、得られた銀粉を回収し、洗浄する工程である。
前記還元工程を経て得られた銀粉は、ろ過および洗浄して回収することが好ましい。洗浄溶媒としては、純水を用いることが好適である。
前記回収および洗浄の方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、デカンテーション、フィルタープレスなどが挙げられる。洗浄の終点は、洗浄後の水の電気伝導度を用いて判断できる。
<銀粉の乾燥工程>
前記銀粉の乾燥工程は、洗浄後の銀粉を乾燥する工程である。
洗浄後の銀粉は多くの水分を含有しているため、使用前に水分を除去することが好ましい。
水分除去の方法としては、例えば、真空乾燥が好適である。乾燥温度は100℃以下とすることが好適である。あまり熱をかけてしまうと乾燥の時点で銀粉同士が焼結してしまうため、好ましくない。
<その他の工程>
得られた銀粉は、必要に応じて、乾式解砕工程や分級工程等のその他の工程を施してもよい。
前記乾式解砕工程の代わりに、銀粉を機械的に流動化させることができる装置に銀粉を投入して、銀粉同士を機械的に衝突させることによって、銀粉の粉表面の凹凸や角張った部分を滑らかにする表面平滑化処理を行ってもよい。また、解砕や平滑化処理の後に分級処理を行ってもよい。なお、乾燥、粉砕、および分級のうち2つ以上を共に行うことができる一体型の装置を用いて乾燥、粉砕および分級を行ってもよい。
(銀粉)
本発明の銀粉は、表面に表面処理剤を有する銀粉であって、強熱減量(質量%)から前記銀粉表面の有機物量(質量%)を引いた値をBET比表面積(m/g)で除した値が1.50以上5.0以下であり、かつ酸素の含有量(質量%)をBET比表面積(m/g)で除した値が0.8以上2.0以下である。この場合、BET比表面積(m/g)と累積50%粒子径(D50)(μm)との積が1未満であることが好ましい。
前記表面処理剤としては、例えば、脂肪酸またはその塩、アゾール類、界面活性剤、有機金属化合物、キレート剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、脂肪酸またはその塩が好ましく、リシノール酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、またはこれらの塩が特に好ましい。
本発明の銀粉を用いることで、焼結性が上がり高い導電性(低い比抵抗)をもつ導電膜が得られる理由について、本発明者らは、例えば、以下のように考えている。
銀粉表面の表面処理剤は、ペースト混練および塗布する際においてペーストを構成するビヒクルや溶剤、添加剤等との関係から重要であると考えられる。塗布の後、塗布膜を加熱し、焼結が開始して銀粉同士がネッキングを開始するまでにおいては、先ず溶剤や表面処理剤が揮発または燃焼して収縮し、塗布膜の銀粉等の構成材同士を接触させる。そして、銀粉同士がネッキングを開始するとき、および、その後において、銀粉内に熱源となる有機物や酸素が適度に含まれている方が、銀粉の表面だけでなく銀粉全体が寄与した焼結が進みやすくなり、結果として高い導電性(低い比抵抗)をもつ導電膜が得られると考えられる。
上記のような効果を示す有機物や酸素が適度に含まれている銀粉の指標として、「強熱減量(質量%)」から「銀粉表面の有機物量(質量%)」を引いた値を「銀粉内部の含有物量(質量%)」として定義した場合に、銀粉内部の含有物量(質量%)をBET比表面積(m/g)で除した値を用いることとした。また、酸素に関しては、分析上、表面と内部の区別をすることが困難であるため、酸素の含有量(質量%)をBET比表面積(m/g)で除した値とした。
そして、BET比表面積(m/g)と累積50%粒子径(D50)(μm)との積が1未満であることで、塗布しやすく、収縮時の塗布膜中の充填率が上がりやすい銀粉とすることも銀粉全体の焼結を進め、高い導電性(低い比抵抗)をもつ導電膜を得るうえで効果的であると考えられる。
<銀粉の強熱減量>
前記銀粉の強熱減量(W)の測定は、以下の手法にて算出することができる。
まず、銀粉試料を準備して秤量し(秤量値:w1)、磁性るつぼに入れ800℃で30分間する。冷却をした後、再度秤量をし(秤量値:w2)、秤量値w1、w2より下記の式にて強熱減量を算出することができる。
強熱減量値:W(質量%)=(w1−w2)/w1×100
<酸素含有量>
前記銀粉の酸素含有量の測定は、酸素・窒素・水素同時分析装置(LECO社製、ONH836)を使用し、インパルス炉の電力値を4,000Wとしてヘリウムガス雰囲気中において、銀粉0.05g中の酸素含有量を測定することによって行うことができる。含有される酸素の割合が多くなることにより銀粒子が焼結しやすくなるため、強熱減量における酸素含有量は、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。
<銀粉表面の有機物量>
前記銀粉表面の有機物量(S)の測定方法は、以下のとおりである。
銀粉0.5gを、酸を用いて溶解する。用いる酸としては6M〜12Mの硝酸等が好ましい。前記酸の添加量としては、銀粉の反応当量に比して過剰量を添加する。例えば、濃度6M〜10Mの硝酸を用いるのであれば10mLを添加する。前記溶解の際、混合物の温度が50℃以下を保つように留意し、銀溶液のpHは3以下とすることが好ましい。
銀粉の表面に存在する有機物の大部分は表面処理剤であると考えられる。銀溶液の温度が25℃となったら、本発明で用いる表面処理剤を溶解可能であり、25℃にて液体であり、沸点が50℃以下であり、水に不溶である有機溶媒(例えば、n−ヘキサン)を、銀溶液と同量程度添加し十分に撹拌する。前記構成により、表面処理剤は安定的に有機溶媒相へ移行する。そこで、前記銀溶液と有機溶媒の混合物を遠心分離等により水相と有機溶媒相へ分離する。分離後、有機溶媒相より試料を1mL分取する。
前記分取試料を燃焼用ボートに含浸させた後、前記燃焼用ボートを加熱して有機溶媒を蒸発乾燥させて乾固させる。前記乾固させたボートを炭素・硫黄分析装置に装填し炭素量を測定する。なお、前記炭素硫黄分析装置は、既知量の表面処理剤を含有する標準試料によりあらかじめ校正し検量線を作成しておく。
測定された炭素量から、銀粉の表面に存在する有機物量の定量を行うことができる。
また、銀粉表面の表面処理剤の種類の分析方法としては、以下のとおりである。
銀粉をパイロライザー(フロンティア・ラボ株式会社製、EGA/Py3030D)を用いて300℃で加熱することで表面処理剤を銀粉表面より脱離させ、GC−MS(ガスクロマト質量分析計、アジレントテクノロジー株式会社製、7890A/5975C)を用いて、銀粉表面における表面処理剤の定性分析を行うことができる。
<銀粉内部の含有物量>
前記銀粉内部の含有物量は、前記銀粉の強熱減量(W)と前記銀粉表面の有機物量(S)との差分(W−S)であると定義する。
銀粉内部に含有される物質としては、湿式反応の前添加剤(前記水溶性高分子)、水、還元剤を含む反応液などが挙げられるが、これらは活性が高いためにある程度存在することで銀粉が焼結をする際に焼結助剤のような効果をもたらす。一般的に銀粉のBET比表面積が高くなることで銀粉内部の含有物量は増える傾向にあるため、銀粉内部の含有物量をBET比表面積で除したものを指標として用いることが好ましい。
前記銀粉内部の含有物量(質量%)を前記銀粉のBET比表面積(m/g)で除したものの値は、1.50以上5.0以下であり、1.5以上4.0以下が好ましい。この値が低すぎると焼結助剤としての効果が低くなってしまい、高すぎると逆に焼結を阻害することとなってしまう。
前記銀粉内部の含有物量をBET比表面積で除したものの値を、前添加剤としてカルボキシル基を有する平均分子量1,000以上の水溶性高分子を用いることで、主に水溶性高分子の銀イオンへの吸着による銀の還元析出時の水溶性高分子の銀粉内部への取り込まれにより、適当な範囲に高めることができると考えられる。そして、本発明による銀粉内部の含有物量を同定分析することが将来可能になるならば、前記前添加剤の成分が検出されることが予想される。
また、銀粉の焼結性を高めるために一定量の酸素が含有されていることが好ましい。この酸素の含有量においても、銀粉のBET比表面積に応じて増えていく傾向にあるため、前記銀粉の酸素の含有量を前記銀粉のBET比表面積で除したものを指標として用いることが好ましく、前記銀粉の酸素の含有量(質量%)を前記銀粉のBET比表面積(m/g)で除した値は、0.8以上2.0以下であり、1.0以上2.0以下が好ましい。
前記銀粉のBET比表面積は、0.20m/g以上0.50m/g以下が好ましい。前記BET比表面積が、0.20m/g未満であると、銀粉のサイズが大きくなり微細配線の描画に向かなくなる。一方、前記BET比表面積が、0.50m/gを超えると、導電性ペーストにした際に粘度が高くなり過ぎるために印刷時にかすれや断線を生じる可能性がある。
ここで、前記銀粉のBET比表面積は、Macsorb HM−model 1210(MOUNTECH社製)を用いて窒素吸着によるBET1点法で測定することができる。なお、前記BET比表面積の測定において、測定前の脱気条件は60℃、10分間とした。
前記銀粉の累積50%粒子径(D50)は、0.3μm以上3.0μm以下が好ましい。
累積90%粒子径(D90)および累積10%粒子径(D10)に対する前記D50の比[(D90−D10)/D50]は、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。
前記銀粉のBET比表面積(m/g)と、前記銀粉の累積50%粒子径(D50)(μm)との積が1未満であることが好ましい。
前記BET比表面積と同様に、銀粉の粒度分布が大きすぎると、微細配線の描画が困難になることがあり、小さすぎると、導電性ペースト中の銀濃度を上げることが困難となる。また、粒度分布のピーク幅が狭く、粒径のばらつきが少なく、揃った銀粉であることが好ましい。
前記銀粉の粒度分布の測定は、以下の手順に示す湿式レーザー回折式の粒度分布測定により行うことができる。
まず、銀粉0.3gをイソプロピルアルコール30mLに加え、出力45Wの超音波洗浄器により5分間分散させ、銀分散液を得る。次に、前記銀分散液をマイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラックMT3300EXII)を用いて測定する。測定結果をグラフ化し、銀粉の体積基準の粒度分布の頻度と累積を求める。累積10%粒子径(D10)、累積50%粒子径(D50)、および累積90%粒子径(D90)と表記する。
(導電性ペースト)
本発明の導電性ペーストは、本発明の前記銀粉を含有し、樹脂および溶剤を含有することが好ましく、さらに必要に応じてその他の成分を含有する。
<樹脂>
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、エチルセルロースなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<溶剤>
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<その他の成分>
前記その他の成分としては、ガラスフリット、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤などが挙げられる。
前記導電性ペーストの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記銀粉を、前記ポリマー、および必要に応じて前記その他の成分を、例えば、超音波分散、ディスパー、三本ロールミル、ボールミル、ビーズミル、二軸ニーダー、自公転式攪拌機などを用い、混合することにより作製することができる。
本発明の導電性ペーストは、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フォトリソグラフィ法などにより、基板上に印刷することができる。
前記導電性ペーストの特性評価として、導電性ペーストの粘度および導電膜の体積抵抗値の測定方法を以下に示す。
<導電性ペーストの粘度>
前記導電性ペーストの粘度は、BROOKFIELD社製の粘度計5XHBDV−III UCにおいて、コーン:CP52を用いて25℃、1回転で測定した値とする。前記導電性ペーストの粘度は各種印刷方式に適した粘度に合わせることが好ましい。例えば、スクリーン印刷の場合、25℃、1回転において10Pa・s以上1,000Pa・s以下であることが好ましい。前記導電性ペーストの粘度が、10Pa・s未満であると、印刷時に「にじみ」が発生することがあり、1,000Pa・sを超えると、「かすれ」等の印刷むらが発生することがある。
<体積抵抗値>
前記導電膜の体積抵抗値は、以下の方法により算出することができる。
前記導電性ペーストを用い、スクリーン印刷にて幅500μm、長さ37.5mmの配線をシリコンウエハ上に印刷する。得られた配線を、大気循環式乾燥機(ヤマト科学株式会社製、DK−43)を用い、200℃で10分間の条件で乾燥した後、日本ガイシ株式会社製の高速焼成試験炉を用いピーク温度780℃、インアウト21秒間の条件で焼成し導電膜を作製する。
得られた導電膜について、抵抗値をデジタルマルチメーター(三菱ケミカル株式会社製、MCP−T410)を用いて抵抗値を測定する。その後、基板上で配線を印刷していない部分と配線を印刷している部分との差を表面粗さ計(東京精密株式会社製、サーフコム480B)にて測定し配線の膜厚とした。得られた抵抗値、膜厚より、以下の計算式を用いて導電膜の体積抵抗率を算出することができる。
[計算式]
体積抵抗率(Ω・cm)=抵抗値(Ω)×膜厚(cm)×線幅(cm)/線長(cm)
本発明の前記銀粉を含む本発明の前記導電性ペーストは、例えば、太陽電池用のシリコンウエハ、タッチパネル用フィルム、EL素子用ガラス等の各種基体上に直接、あるいは必要に応じて基体上にさらに透明導電膜を設けたその膜上に、塗布又は印刷して導電膜の形成に好適に用いることができる。
本発明の導電性ペーストを用いて得られた導電膜は、例えば、太陽電池セルの集電電極、チップ型電子部品の外部電極、RFID、電磁波シールド、振動子接着、メンブレンスイッチ、エレクトロルミネセンス等の電極又は電気配線用途などに好適に用いられる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下のようにして、銀粉を製造した。得られた銀粉を用いて、導電性ペーストを作製した。また、得られた導電性ペーストを塗布し、加熱処理することにより導電膜を形成した。
なお、得られた銀粉の諸特性、および導電膜の諸特性については、上述した測定方法により測定した。
(実施例1)
−銀粉の作製−
銀を49g含有する硝酸銀溶液を3,500g準備し、十分に撹拌を行いながら濃度28質量%のアンモニア水溶液を144gと濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液9gを加えて銀アンミン錯体を含有する水性反応液を調製し、液温を28℃とした。前記銀アンミン錯体を含有する水性反応液に対し、平均分子量5,000のポリアクリル酸(和光純薬工業株式会社製、1級試薬)の5質量%水溶液を作製し、ポリアクリル酸が銀に対して0.08質量%となるように添加した後、還元剤として37質量%ホルマリン水溶液241.5gを加え、銀粉を含むスラリーを得た。
さらに、還元剤投入から15秒間後、得られたスラリーに対し表面処理剤としてステアリン酸エマルションをステアリン酸が銀に対して0.18質量%となるように加えた後、2分間保持して熟成させた。前記により熟成されたスラリーを濾過、水洗し、解砕して実施例1の銀粉を得た。
−銀粉の物性値の測定−
得られた銀粉を評価した結果、BET比表面積が0.49m/gであり、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製のマイクロトラックMT3300EXII)による累積10%粒子径(D10)が1.0μm、累積50%粒子径(D50)が1.8μm、および累積90%粒子径(D90)が3.1μmであった。
銀粉試料3gを用いて測定した強熱減量(Ig−Loss)が1.01質量%であり、また、酸素・窒素・水素同時分析装置(LECO社製、ONH836)を用いて測定した酸素量は0.51質量%であり、強熱減量における酸素の割合は50質量%であった。
また、銀粉表面の有機物量はステアリン酸0.15質量%であったため、銀粉内部の含有物量(すなわち、銀粉の強熱減量(Ig−Loss)から銀粉表面の有機物量を引いた値)は0.86質量%と算出され、銀粉内部の含有物量をBET比表面積で除した値は1.76であった。また、酸素量をBET比表面積で除した値は1.04であり、BET比表面積と累積50%粒子径(D50)の積は0.88であった。
−導電性ペーストの作製−
得られた銀粉91.0質量%、エチルセルロース10cps(和光純薬工業株式会社製)を1.6質量%、およびブチルカルビトールアセテート(和光純薬工業株式会社製)7.4質量%の混合比で混合した後、プロペラレス自公転式攪拌脱泡装置(シンキー株式会社製、AR250)を用いさらに混合した。その後、3本ロールミル(EXAKT社製、EXAKT80S)を用いて、ロールギャップを徐々に狭めながら通過させた。さらに、ブチルカルビトールアセテートをペーストの粘度が200Pa・s〜400Pa・sとなるように加えて、導電性ペーストを作製した。
−導電膜の作製−
得られた導電性ペーストを用いて導電膜を作製し、評価を行ったところ、導電膜の抵抗値は0.27Ω、膜厚は7.3μmであり、体積抵抗値を算出すると、2.63μΩ・cmであった。
(実施例2)
−銀粉の作製−
実施例1において、ポリアクリル酸の添加量を銀に対して0.16質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の銀粉を得た。
−銀粉の物性値の測定−
得られた銀粉を評価した結果、BET比表面積0.42m/gであり、累積10%粒子径(D10)が1.2μm、累積50%粒子径(D50)が2.3μm、および累積90%粒子径(D90)が3.9μmであった。
強熱減量が1.26質量%、内酸素は0.64質量%であり、強熱減量における酸素の割合は51質量%であった。また、銀粉表面の有機物量はステアリン酸0.14質量%であったため、銀粉内部の含有物量は1.12質量%と算出され、銀粉内部の含有物量をBET比表面積で除した値は2.67、酸素量をBET比表面積で除した値は1.52、BET比表面積と累積50%粒子径(D50)の積は0.97であった。
−導電性ペーストおよび導電膜の作製、評価−
次に、実施例1と同様の方法で導電性ペーストを作製し、評価を行ったところ、導電膜の抵抗値は0.26Ω、膜厚は7.4μmであり、体積抵抗値を算出すると2.57μΩ・cmであった。
(実施例3)
−銀粉の作製−
実施例1において、ポリアクリル酸の平均分子量を25,000(和光純薬工業株式会社製、1級試薬)とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の銀粉を得た。
−銀粉の物性値の測定−
得られた銀粉を評価した結果、BET比表面積0.41m/gであり、累積10%粒子径(D10)が1.2μm、累積50%粒子径(D50)が2.2μm、および累積90%粒子径(D90)が3.8μmであった。強熱減量が0.99質量%、内酸素は0.50質量%であり、強熱減量における酸素の割合は51質量%であった。また、銀粉表面の有機物量はステアリン酸0.14質量%であったため、銀粉内部の含有物量は0.85質量%と算出され、銀粉内部の含有物量をBET比表面積で除した値は2.07、酸素量をBET比表面積で除した値は1.22、BET比表面積と累積50%粒子径(D50)の積は0.90であった。
−導電性ペーストおよび導電膜の作製、評価−
次に、実施例1と同様の方法で導電性ペーストを作製し、評価を行ったところ、導電膜の抵抗値は0.27Ω、膜厚は7.4μmであり、体積抵抗値を算出すると2.66μΩ・cmであった。
(実施例4)
−銀粉の作製−
実施例1において、ポリアクリル酸を、ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(和光純薬工業株式会社製、1級試薬)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の銀粉を得た。ポリアクリル酸アンモニウムの平均分子量は不明であるが、6,000程度であると考えられる。
−銀粉の物性値の測定−
得られた銀粉を評価した結果、BET比表面積0.44m/gであり、累積10%粒子径(D10)が1.1μm、累積50%粒子径(D50)が2.0μm、および累積90%粒子径(D90)が3.4μmであった。強熱減量が0.92質量%、内酸素は0.47質量%であり、強熱減量における酸素の割合は51質量%であった。また、銀粉表面の有機物量はステアリン酸0.15質量%であったため、銀粉内部の含有物量は0.77質量%と算出され、銀粉内部の含有物量をBET比表面積で除した値は1.75、酸素量をBET比表面積で除した値は1.07、BET比表面積と累積50%粒子径(D50)の積は0.88であった。
−導電性ペーストおよび導電膜の作製、評価−
次に、実施例1と同様の方法で導電性ペーストを作製し、評価を行ったところ、導電膜の抵抗値は0.30Ω、膜厚は7.2μmであり、体積抵抗値を算出すると2.88μΩ・cmであった。
(実施例5)
−銀粉の作製−
実施例1において、ポリアクリル酸を、サンノプコ社製のノプコサントRFA(ポリカルボン酸アンモニウム水溶液)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の銀粉を得た。なお、含まれるポリカルボン酸アンモニウムの平均分子量は不明であるが、6,000程度であると考えられる。
−銀粉の物性値の測定−
得られた銀粉を評価した結果、BET比表面積0.45m/gであり、累積10%粒子径(D10)が1.1μm、累積50%粒子径(D50)が1.9μm、および累積90%粒子径(D90)が3.2μmであった。強熱減量が0.94質量%、内酸素は0.46質量%であり、強熱減量における酸素の割合は49質量%であった。また、銀粉表面の有機物量はステアリン酸0.16質量%であったため、銀粉内部の含有物量は0.78質量%と算出され、銀粉内部の含有物量をBET比表面積で除した値は1.73、酸素量をBET比表面積で除した値は1.02、BET比表面積と累積50%粒子径(D50)の積は0.86であった。
−導電性ペーストおよび導電膜の作製、評価−
次に、実施例1と同様の方法で導電性ペーストを作製し、評価を行ったところ、導電膜の抵抗値は0.23Ω、膜厚は8.8μmであり、体積抵抗値を算出すると2.70μΩ・cmであった。
(実施例6)
−銀粉の作製−
実施例5において、サンノプコ社製のノプコサントRFA(ポリカルボン酸アンモニウム水溶液)の添加量を銀に対して0.02質量%に変えた以外は、実施例5と同様にして、実施例6の銀粉を得た。
−銀粉の物性値の測定−
得られた銀粉を評価した結果、BET比表面積0.35m/gであり、累積10%粒子径(D10)が1.4μm、累積50%粒子径(D50)が2.3μm、および累積90%粒子径(D90)が3.8μmであった。強熱減量が0.70質量%、内酸素は0.35質量%であり、強熱減量における酸素の割合は50質量%であった。また、銀粉表面の有機物量はステアリン酸0.14質量%であったため、銀粉内部の含有物量は0.56質量%と算出され、銀粉内部の含有物量をBET比表面積で除した値は1.60、酸素量をBET比表面積で除した値は1.00、BET比表面積と累積50%粒子径(D50)の積は0.81であった。
−導電性ペーストおよび導電膜の作製、評価−
次に、実施例1と同様の方法で導電性ペーストを作製し、評価を行ったところ、導電膜の抵抗値は0.25Ω、膜厚は8.2μmであり、体積抵抗値を算出すると2.73μΩ・cmであった。
(比較例1)
−銀粉の作製−
実施例1において、ポリアクリル酸を添加しない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の銀粉を得た。
−銀粉の物性値の測定−
得られた銀粉を評価した結果、BET比表面積0.47m/gであり、累積10%粒子径(D10)が1.2μm、累積50%粒子径(D50)が2.0μm、および累積90%粒子径(D90)が3.1μmであった。強熱減量が0.65質量%、内酸素は0.32質量%であり、強熱減量における酸素の割合は49質量%であった。また、銀粉表面の有機物量はステアリン酸0.15質量%であったため、銀粉内部の含有物量は0.50質量%と算出され、銀粉内部の含有物量をBET比表面積で除した値は1.06、酸素量をBET比表面積で除した値は0.68、BET比表面積と累積50%粒子径(D50)の積は0.94であった。
−導電性ペーストおよび導電膜の作製、評価−
次に、実施例1と同様の方法で導電性ペーストを作製し、評価を行ったところ、導電膜の抵抗値は0.29Ω、膜厚は8.5μmであり、体積抵抗値を算出すると3.29μΩ・cmであった。
(比較例2)
−銀粉の作製−
実施例1において、ポリアクリル酸をクエン酸(和光純薬工業株式会社製、1級試薬)に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の銀粉を得た。クエン酸にはカルボキシル基があり水溶性であるが、分子量が小さく高分子ではない。クエン酸の分子量は一般に192である。
−銀粉の物性値の測定−
得られた銀粉を評価した結果、BET比表面積0.69m/gであり、累積10%粒子径(D10)が0.8μm、累積50%粒子径(D50)が1.6μm、および累積90%粒子径(D90)が2.6μmであった。強熱減量が0.91質量%、内酸素は0.45質量%であり、強熱減量における酸素の割合は49質量%であった。また、銀粉表面の有機物量はステアリン酸0.15質量%であったため、銀粉内部の含有物量は0.76質量%と算出され、銀粉内部の含有物量をBET比表面積で除した値は1.10、酸素量をBET比表面積で除した値は0.65、BET比表面積と累積50%粒子径(D50)の積は1.10であった。
−導電性ペーストおよび導電膜の作製、評価−
次に、実施例1と同様の方法で導電性ペーストを作製し、評価を行ったところ、導電膜の抵抗値は0.32Ω、膜厚は7.9μmであり、体積抵抗値を算出すると3.37μΩ・cmであった。
(比較例3)
−銀粉の作製−
実施例1において、ポリアクリル酸を、ポリビニルピロリドン(和光純薬工業株式会社製、1級試薬)に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の銀粉を得た。なお、ポリビニルピロリドンにカルボキシル基は無く、平均分子量は40,000以上である。
−銀粉の物性値の測定−
得られた銀粉を評価した結果、BET比表面積0.46m/gであり、累積10%粒子径(D10)が1.2μm、累積50%粒子径(D50)が2.0μm、および累積90%粒子径(D90)が3.2μmであった。強熱減量が0.71質量%、内酸素は0.34質量%であり、強熱減量における酸素の割合は48質量%であった。また、銀粉表面の有機物量はステアリン酸0.16質量%であったため、銀粉内部の含有物量は0.55質量%と算出され、銀粉内部の含有物量をBET比表面積で除した値は1.20、酸素量をBET比表面積で除した値は0.74、BET比表面積と累積50%粒子径(D50)の積は0.92であった。
−導電性ペーストおよび導電膜の作製、評価−
次に、実施例1と同様の方法で導電性ペーストを作製し、評価を行ったところ、導電膜の抵抗値は0.35Ω、膜厚は7.7μmであり、体積抵抗値を算出すると3.59μΩ・cmであった。
次に、実施例1〜6および比較例1〜3について、銀粉の製造における前添加剤およびその添加量を表1に、銀粉の特性を表2−1および表2−2に、ならびに導電膜の特性を表3にまとめて示した。
また、実施例1により得られた銀粉のSEM像を図1に示す。この図1のSEM像からわかるように、実施例1により得られた銀粉は球形状で滑らかであり粒度の揃った銀粉が得られることがわかる。
次いで、比較例2により得られた銀粉のSEM像を図2に示す。この図2のSEM像からわかるように比較例2により得られた実施例1の銀粉に比べて、いびつで粒度が揃っておらず、銀粉同士も凝集していることがわかる。
銀粉の表面観察は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製のJSM−IT300LV)を使用し、5,000倍にて観察を行った。
次いで、実施例1および2により得られた銀粉を用いた導電膜の表面SEM像を図3および図4に示す。また、比較例1より得られた銀粉を用いた導電膜の表面SEM像を図5に示す。
導電膜の表面観察は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製のJSM−IT300LV)を使用し、10,000倍にて観察を行った。
これらのSEM像からわかるように比較例1の銀粉から得られた導電膜は丸印で示したような元の銀粒子の形状を保ったようなものが多く十分に焼結が進んでいないのに対し、実施例1および2の銀粉から得られた導電膜は元の銀粒子の形状を保ったようなものは少なく、より焼結が進んでいることが確認された。
したがって、実施例および比較例を比較すると、還元剤を添加する前に前記水溶性高分子を有する前添加剤を銀アンミン錯体水溶液に添加することにより、適度な粒子形状を維持しながら銀粉内部の含有物量をBET比表面積で除した値、および酸素量をBET比表面積で除した値が高くなり、結果として導電性ペーストの体積抵抗値を低下できることが分かった。
本発明における銀粉を用いて作製される導電性ペーストは、従来のものに比べて体積抵抗値を低下できるため、種々の電子部品や太陽電池において電極や回路を形成するための導電性ペーストとして好適に利用可能であり、特に太陽電池用の電極形成用ペーストとして好適に利用可能である。

Claims (11)

  1. 銀アンミン錯体水溶液と還元剤とを混合する銀粉の製造方法であって、
    前記銀アンミン錯体水溶液と前記還元剤との混合前に前記銀アンミン錯体水溶液に平均分子量1,000以上20万以下ポリカルボン酸またはその塩からなる前添加剤を添加し、前記還元剤混合後のスラリーに脂肪酸およびその塩、アゾール類、界面活性剤、有機金属化合物、ならびにキレート剤から選ばれる表面処理剤を添加することを特徴とする銀粉の製造方法。
  2. 前記ポリカルボン酸またはその塩が、ポリアクリル酸またはその塩であることを特徴とする請求項1に記載の銀粉の製造方法。
  3. 前記ポリカルボン酸またはその塩の添加量が、前記銀アンミン錯体水溶液中の銀量に対して0.001質量%以上1質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の銀粉の製造方法。
  4. 前記還元剤が、ホルマリンであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の銀粉の製造方法。
  5. 前記表面処理剤が、脂肪酸またはその塩であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の銀粉の製造方法。
  6. 表面に脂肪酸およびその塩、アゾール類、界面活性剤、有機金属化合物、ならびにキレート剤から選ばれる表面処理剤を有する銀粉であって、
    強熱減量(質量%)から前記銀粉表面の有機物量(質量%)を引いた値をBET比表面積(m/g)で除した値が1.50以上5.0以下であり、かつ酸素の含有量(質量%)をBET比表面積(m/g)で除した値が0.8以上2.0以下であることを特徴とする銀粉。
  7. 前記BET比表面積(m/g)と累積50%粒子径(D50)(μm)との積が1未満であることを特徴とする請求項6に記載の銀粉。
  8. 前記BET比表面積が0.20m/g以上0.50m/g以下であり、累積50%粒子径(D50)が0.3μm以上3.0μm以下であることを特徴とする請求項6または7に記載の銀粉。
  9. 前記表面処理剤が、脂肪酸またはその塩であることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の銀粉。
  10. 請求項6から9のいずれかに記載の銀粉を含有することを特徴とする導電性ペースト。
  11. 太陽電池の電極形成に用いられることを特徴とする請求項10に記載の導電性ペースト。
JP2016101679A 2016-05-20 2016-05-20 銀粉およびその製造方法、ならびに導電性ペースト Active JP6727922B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016101679A JP6727922B2 (ja) 2016-05-20 2016-05-20 銀粉およびその製造方法、ならびに導電性ペースト

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016101679A JP6727922B2 (ja) 2016-05-20 2016-05-20 銀粉およびその製造方法、ならびに導電性ペースト

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017206763A JP2017206763A (ja) 2017-11-24
JP6727922B2 true JP6727922B2 (ja) 2020-07-22

Family

ID=60416348

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016101679A Active JP6727922B2 (ja) 2016-05-20 2016-05-20 銀粉およびその製造方法、ならびに導電性ペースト

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6727922B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6754852B2 (ja) * 2019-01-11 2020-09-16 Jx金属株式会社 導電性組成物
JPWO2022202563A1 (ja) * 2021-03-26 2022-09-29
KR20240048000A (ko) 2021-09-17 2024-04-12 도와 일렉트로닉스 가부시키가이샤 은분 및 은분의 제조 방법
JP2023164095A (ja) * 2022-04-28 2023-11-10 Dowaエレクトロニクス株式会社 球状銀粉、球状銀粉の製造方法、球状銀粉製造装置、及び導電性ペースト

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5305789B2 (ja) * 2007-08-31 2013-10-02 Dowaエレクトロニクス株式会社 銀粉の製造方法
WO2012063747A1 (ja) * 2010-11-08 2012-05-18 ナミックス株式会社 金属粒子及びその製造方法
TWI574761B (zh) * 2011-06-08 2017-03-21 Sumitomo Metal Mining Co Silver powder and its manufacturing method

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017206763A (ja) 2017-11-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20180096747A1 (en) Spherical silver powder and method for producing same
JP5843821B2 (ja) 金属粉ペースト、及びその製造方法
JP6727922B2 (ja) 銀粉およびその製造方法、ならびに導電性ペースト
KR101554580B1 (ko) 도전용 은코팅 유리분말 및 그 제조 방법, 및 도전성 페이스트
JP6666723B2 (ja) 銀被覆テルル粉及びその製造方法、並びに導電性ペースト
JP6389091B2 (ja) 銀被覆銅粉及びその製造方法、並びに導電性ペースト
JP6423139B2 (ja) フレーク状銀粉及びその製造方法、並びに導電性ペースト
JP2015232180A (ja) 球状銀粉およびその製造方法
JP5847511B2 (ja) 導電用銀被覆硝子粉及びその製造方法、並びに導電性ペースト
JP2014164994A (ja) 導電用銀被覆硝子粉末及びその製造方法、並びに導電性ペースト及び導電膜
JP6167060B2 (ja) フレーク状銅粉及びその製造方法
JPWO2012077548A1 (ja) 導電ペーストおよびこれを用いた導電膜付き基材、ならびに導電膜付き基材の製造方法
JP2004330247A (ja) ニッケル粉末、及び導電性ペースト、並びに積層セラミック電子部品
JP5830237B2 (ja) 銀粒子含有組成物、分散液ならびにペーストの製造方法
JP6466758B2 (ja) 銀被覆フレーク状銅粉およびその製造方法、並びに当該銀被覆フレーク状銅粉を用いた導電性ペースト
TWI794371B (zh) 球狀銀粉及其製造方法
JP5790433B2 (ja) 銀粉及びその製造方法
JP5756694B2 (ja) 扁平金属粒子
JP6213301B2 (ja) ニッケル粉末の製造方法
JP2016216824A (ja) 銀粉およびその製造方法
JP6131773B2 (ja) ニッケル粉とその製造方法、及びそれを用いたニッケルペースト
JP6065699B2 (ja) ニッケル粉末の製造方法
JP6270035B2 (ja) ニッケル粉末の製造方法
JP2023042574A (ja) 銀粉の製造方法
JP2023049023A (ja) 銀粉、導電性ペースト及び銀粉の製造方法、並びに混合銀粉

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20190220

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190312

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200217

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200303

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20200331

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200410

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200616

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200701

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6727922

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250