JP6389091B2 - 銀被覆銅粉及びその製造方法、並びに導電性ペースト - Google Patents

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Description

本発明は、銀被覆銅粉及びその製造方法、並びに導電性ペーストに関する。
従来から、電子部品等の電極や回路、電磁波シールドフィルム、電磁波シールド材等を形成するために、銀粉を有機成分中に分散させた導電性ペーストが使用されている。前記導電性ペーストの中でも、樹脂硬化型の導電性ペースト(特許文献1参照)は、樹脂の体積収縮により銀粉同士が接触して導通が取られる。前記樹脂硬化型の導電性ペーストに配合される銀粉としては、接触面積が大きいフレーク状銀粉が使用されている(特許文献2参照)。
しかし、フレーク状銀粉を配合した「銀系ペースト」は、フレーク状銅粉を配合した「銅系ペースト」と比べて、地金価格が高いため高価でマイグレーションが起こりやすい。また、「銅系ペースト」はマイグレーションが起こりにくいが酸化しやすく導電性が悪化するという欠点がある。これら欠点を克服する手法の一つとして、銅粉を扁平化処理し、銀を被覆した銀被覆フレーク状銅粉が提案されている。
前記銀被覆フレーク状銅粉に用いられる銅粉は、アトマイズ法、湿式還元法、電気分解法により製造されている。これらの中でも、価格的にも大量生産性にも有利な点から、アトマイズ法が好ましく、アトマイズ法による球状の銅粉を扁平化処理した銀被覆フレーク状銅粉が提案されている(特許文献3参照)。
しかしながら、前記アトマイズ法による銀被覆フレーク状銅粉は、特に低フィラー含量ペーストでは導電性の点で十分満足できる性能を有しておらず、更なる改善が望まれている。
特開2002−150837号公報 特許第3874634号公報 特開2002−245849号公報
銀被覆銅粉の欠点として、経時変化による銅の酸化があり、酸化しにくい銀で覆われていても、銀粉と比較すると導電性ペーストの劣化が起きやすい。特に銀被覆銅粉の表面積が大きいほど劣化しやすい。その解決策として銀被覆銅粉の銀の割合を高めるという手法が知られていたが、銀の割合を高めることは、銅粉を使用する利点であるコスト低減の効果を減じてしまうため、好ましくない。
そこで、本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、銀の割合を高めることなく、優れた導電性を有し、かつ該導電性の経時変化が少ない導電膜を形成することができる銀被覆銅粉及び銀被覆銅粉の製造方法、並びに前記銀被覆銅粉を用いた導電性ペーストを提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明の銀被覆銅粉は、銅粉に銀を被覆してなる銀被覆銅粉の表面にリンを含有する化合物を少なくとも有する。
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、銀の割合を高めることなく、優れた導電性を有し、かつ該導電性の経時変化が少ない導電膜を形成することができる銀被覆銅粉及び銀被覆銅粉の製造方法、並びに前記銀被覆銅粉を用いた導電性ペーストを提供することができる。
図1は、実施例1で用いた電解銅粉のSEM写真(2,000倍)である。 図2は、図1の電解銅粉から作製した実施例1の銀被覆フレーク状銅粉のSEM写真(2,000倍)である。 図3は、実施例1のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 図4は、実施例2のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 図5は、比較例1のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 図6は、比較例2のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 図7は、比較例3のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 図8は、実施例1〜2及び比較例1〜3の熱重量測定(TG)による400℃での重量増加率の結果を示すグラフである。 図9は、実施例1〜2及び比較例1〜5の導電膜の体積抵抗率の結果を示すグラフである。 図10は、比較例4のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 図11は、比較例5のTG−DTA測定結果を示すグラフである。
(銀被覆銅粉)
本発明の銀被覆銅粉は、銅粉に銀を被覆してなる銀被覆銅粉の表面にリンを含有する化合物を少なくとも有する。
<銀被覆銅粉>
前記銀被覆銅粉は、銅粉の表面を銀で被覆したものであり、前記銅粉は、アトマイズ法、湿式還元法、又は電気分解法により製造され、いずれの銅粉を用いてもよいが、例えば、低フィラー濃度の導電性ペーストを用いた導電膜を作製する場合は、そのタップ密度の低さから電気分解法が特に好ましい。
また、前記銅粉は、該銅粉を扁平化処理したフレーク状銅粉であることが、接触面積が大きく、導電性に優れている点で好ましい。目的によりフレーク化処理されていない球状粉、粒状粉を用いてもよいが、低フィラー濃度の導電性ペーストを用いた導電膜を作製する場合は、後述するBET比表面積を有するものの方が導電性に優れている点から好ましい。前記扁平化処理については、後述する銀被覆銅粉の製造方法で説明する。
<リンを含有する化合物>
前記リンを含有する化合物としては、フィチン酸が好ましい。
前記銀被覆銅粉は、表面に前記リンを含有する化合物としてフィチン酸を有することにより、電気抵抗を低減し、又は電気抵抗の上昇を起こさずに銅の酸化を防止することができる。
前記銀被覆銅粉におけるリンの含有量は、0.01質量%(100ppm)以下であり、0.003質量%(30ppm)以下が好ましい。酸化しやすい銅が露出している表面部分は少ないため、前記リンの含有量が0.00001質量%(0.1ppm)以上あれば耐酸化性は向上し、リンの含有量はできるだけ少ない方が抵抗値の上昇が抑えられるため好ましい。
前記リンの含有量が、0.01質量%を超えると、前記リンの含有量の銀被覆銅粉を含む導電性ペーストからなる導電膜の体積抵抗率が悪化してしまうことがある。
前記銀被覆銅粉におけるリンの含有量は、例えば、銀被覆銅粉を塩酸抽出した液を、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製プラズマ発光分光装置 SPS5100により測定することができる。
前記フィチン酸は、イノシトールの6リン酸エステルであり、組成式はC1824であり、以下の構造式で表される。
ここで、前記「銀被覆銅粉の表面にフィチン酸を有する」とは、銀被覆銅粉の表面に吸着、被覆などの何らかの方法によってフィチン酸が付着している状態を含む意味であり、銀被覆銅粉の表面の少なくとも一部にフィチン酸を有していればよく、銀被覆銅粉の表面全体がフィチン酸を有していてもよいし、銀被覆銅粉の表面の一部がフィチン酸を有していてもよい。なお、銀被覆銅粉の内部にフィチン酸を有していても構わない。好ましくは、銀被覆銅粉において酸化しやすい銅が露出している表面部分にフィチン酸が付着していればよい。フィチン酸のリン酸基は銀よりも銅と反応性が高いと考えられることから、銀被覆銅粉の表面全体を覆う量よりも少ない量で、銅が露出している部分にフィチン酸による耐酸化性を付与できる。
前記銀被覆銅粉の表面には、更に脂肪酸を含有することが好ましい。前記脂肪酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、例えば、プロピオン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、アクリル酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ステアリン酸が好ましい。
前記銀被覆銅粉を脂肪酸で表面処理する場合には、前記フィチン酸で表面処理してから、脂肪酸での表面処理を行うことが好ましい。前記フィチン酸は親水性であるため、疎水性であるステアリン酸などの脂肪酸で先に処理するとフィチン酸の付着が抑制される可能性があるからである。
前記銀被覆銅粉の表面にフィチン酸を有することは、一般的には硝酸により前記銀被覆銅粉を溶解、あるいは塩酸で抽出した後に、ICP−OES(誘導結合プラズマ発光分光装置)又はHPLC(液体クロマトグラフィー)により分析することができる。例えば、銀被覆銅粉を1質量%トリクロロ酢酸又はHCl/MeOHにて抽出した溶液について、イオンクロマトグラフ(ダイオネクス社製DC−500、カラムはダイオネクス社製IonpacAS17−C)を用いて測定することにより、フィチン酸を示すピークを検出することにより、銀被覆銅粉表面のフィチン酸を定性分析できる。
本発明の銀被覆銅粉は、銅粉に銀を被覆してなる銀被覆銅粉を表面処理剤で表面処理してなり、
銀の被覆量は20質量%以下が好ましく、
熱重量測定(TG)による400℃での重量増加率は13重量%以下が好ましく、
BET比表面積は0.7m/g以上が好ましい。
前記銀の被覆量は、20質量%以下が好ましく、0.3質量%〜20質量%がより好ましく、0.5質量%〜15質量%が更に好ましい。前記銀の被覆量が、20質量%を超えると、コスト高となって銀単体に対するメリットが大きく減少することがある。
前記銀の被覆量は、例えば、硝酸により銀被覆銅粉を溶解後、塩酸を加え生じた塩化銀の沈殿の重量を測定することにより測定することができる。
なお、銅粉に銀を被覆する方法については、後述する銀被覆銅粉の製造方法において説明する。
ここで、図3に示すように、フィチン酸及びステアリン酸で表面処理した実施例1の銀被覆銅粉は、図5に示すように、ステアリン酸のみで表面処理した比較例1の銀被覆銅粉に比べて、熱重量測定(TG)による400℃での重量増加率が有意に低くなっており、フィチン酸の添加による大気中での銀被覆銅粉の酸化抑制効果が認められる。図8に実施例1と比較例1の重量増加率の差をグラフに示す。
前記熱重量測定(TG)による温度に対する重量増加率の測定は、例えば、株式会社リガク製ThermoPlus TG−8120を用いて、試料20mgを室温から10℃/分の速度で昇温させ、2秒間ごとに各温度における試料増加重量を測定し、試料増加重量÷試料重量×100により測定し、算出することができる。
また、図9に示すように、フィチン酸のみで表面処理した実施例2の銀被覆銅は、ステアリ酸のみで表面処理した比較例1、ステアリアン酸及びベンゾトリアゾールで表面処理した比較例2、ベンゾトリアゾールのみで表面処理した比較例3に比べて、導電膜の体積抵抗率が有意に低くなっており、優れた導電性を持たせる効果が認められる。
前記銀被覆銅粉のBET比表面積は、0.7m/g以上が好ましく、0.7m/g〜4m/gがより好ましく、0.7m/g〜1.5m/gが更に好ましい。
前記BET比表面積が0.7m/g未満であると、低フィラー濃度の導電性ペーストを用いた導電膜を作製する場合は、前記導電膜の体積抵抗率が不十分になることがある。
前記BET比表面積は、例えば、MONOSORB装置(湯浅アイオニクス株式会社製)で、He:70%、N:30%のキャリアガスを用い、銅粉3gをセルに入れて脱気を60℃で10分間行った後、BET1点法により測定することができる。
前記銀被覆銅粉のレーザー回折式粒度分布測定法による体積基準の粒子径分布における累積50%粒子径(D50)は、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜15μmがより好ましい。
前記累積50%粒子径(D50)は、例えば、マイクロトラック粒度分布測定装置(ハネウエル(Honeywell)−日機装株式会社製、9320HRA(X−100))などを用いて測定することができる。
前記表面処理剤としては、脂肪酸と、リンを含有する化合物とを併用することが好ましく、前記リンを含有する化合物としては、銀被覆銅粉に対する酸化防止効果の点から、フィチン酸が特に好ましい。フィチン酸を用いることで、酸化防止剤のデメリットとして予想される電気抵抗の上昇を抑えることができ、結果として導電膜の体積抵抗率の上昇を抑えることができる。リンを含有する化合物により粉体表面を被覆してから、脂肪酸を用いて被覆する順番が好ましい。前記脂肪酸としては、上述したものを用いることができ、これらの中でも、ステアリン酸が好ましい。
前記表面処理剤による銀被覆銅粉の表面処理方法については、後述する銀被覆銅粉の製造方法で説明する。
(銀被覆銅粉の製造方法)
本発明の銀被覆銅粉の製造方法は、第1の表面処理工程を少なくとも含み、第2の表面処理工程、銀粉作製工程、扁平化工程、及び銀被覆工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
<第1の表面処理工程>
前記第1の表面処理工程は、銅粉の表面に銀を被覆してなる銀被覆銅粉をフィチン酸で表面処理する工程である。
前記フィチン酸の表面処理は、前記銀被覆銅粉を含むスラリーにフィチン酸を添加(湿式添加)して行うことが好ましい。
前記湿式添加は、例えば、銅粉に銀を被覆する湿式反応の直後に、撹拌中の当該粉を含むスラリーにフィチン酸を水又はアルコール等で溶解させたものを滴下することにより行うことができる。前記第1の表面処理工程(フィチン酸の添加)を銅粉に銀を被覆する湿式反応の直後、即ち、銀被覆銅粉の固液分離の前に行うことで、被覆時の反応により液中に遊離した銅イオンの再析出の抑制も同時に行うことができる。
前記フィチン酸の添加量は、前記銀被覆銅粉に対して、0.001質量%〜10質量%が好ましい。そして、濾過、水洗、乾燥後に銀被覆銅粉に付着しているフィチン酸は、リンの含有量として0.01質量%(100ppm)以下であり、0.003質量%(30ppm)以下が好ましい。酸化しやすい銅が露出している表面部分は少ないため、フィチン酸の付着量はリンの含有量として0.00001質量%(0.1ppm)以上あれば耐酸化性は向上し、リンの含有量はできるだけ少ない方が抵抗値の上昇が抑えられるため好ましい。
<第2の表面処理工程>
前記第2の表面処理工程は、フィチン酸で表面処理した銀被覆銅粉を脂肪酸で表面処理する工程である。
前記脂肪酸の表面処理は、前記フィチン酸で表面処理した銀被覆銅粉に脂肪酸を湿式添加して行うことが好ましい。
前記脂肪酸としては、例えば、プロピオン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、アクリル酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ステアリン酸が好ましい。
前記湿式添加は、前記第1の表面処理工程と同様であるが、脂肪酸をアルコール等の有機溶剤で希釈したものを添加する、又は脂肪酸のエマルジョンを直接あるいは水で希釈したものを投入することが好ましい。
前記脂肪酸の添加量は、前記銀被覆銅に対して、0.001質量%〜10質量%が好ましい。
以下、銀被覆銅粉が銀被覆フレーク状銅粉である場合を例にして、各工程を説明する。
<銅粉作製工程>
前記銅粉作製工程は、銅粉を作製する工程であり、通常、銅粉は、アトマイズ法、湿式還元法、又は電気分解法により製造されているが、特に制限はなく、いずれの方法を用いてもよい。例えば、低フィラー濃度の導電膜を形成する場合においては、そのタップ密度の低さの点から、電気分解法が特に好ましい。
前記電気分解法としては、例えば、銅イオンを含む硫酸酸性の電解液に陽極と陰極を浸漬し、これに直流電流を流して電気分解を行い、陰極表面に粉末状に銅を析出させ、機械的又は電気的方法により掻き落として回収し、洗浄し、乾燥し、必要に応じて篩別工程などを経て電解銅粉を製造する方法などが挙げられる。
前記電気分解法で銅粉を製造する場合、銅の析出に伴って電解液中の銅イオンが消費されるため、電極板付近の電解液の銅イオン濃度は薄くなり、そのままでは電解効率が低下してしまう。そのため、通常は電解効率を高めるために、電解槽内の電解液の循環を行って電極間の電解液の銅イオン濃度が薄くならないようにする。
<扁平化工程>
前記扁平化工程は、前記銅粉を扁平化処理する工程である。
前記扁平化処理を行う装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、転動ボールミル、アトライター、SCミル等のメディア式ミル(ボール、ビーズによる粉砕ミル)などが挙げられる。前記装置としては、市販されているものをそのまま使用可能である。
前記扁平化処理は溶媒を添加して行うことが好ましい。前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、有機溶媒などが挙げられる。
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、分子量200以下の有機溶媒が好ましく、分子量200以下のアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、又はこれらの混合物)がより好ましい。
前記溶媒の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、扁平化処理する銅粉に対し、質量で0.1倍〜3倍が好ましい。前記添加量が、0.1倍未満であると、溶媒添加の効果が不十分であることがあり、3倍を超えると、十分なアスペクト比が得られないことがある。
前記ボール(メディア)としては、直径が0.1mm〜3mmで形状が球状のボール(メディア)である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ボール(メディア)の直径が、0.1mm未満であると、扁平化処理後のフレーク状銅粉とメディアを分離する際、メディアの目詰まり等により、分離の効率が低下し、3mmを超えると、得られるフレーク状銅粉の粒径が過大になることがある。
前記ボール(メディア)の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス(SUS)等の金属、アルミナ、ジルコニア等のセラミックスなどが挙げられる。これらの中でも、製品へのコンタミネーションを考えると、ステンレス(SUS)が特に好ましい。
前記ボール(メディア)の扁平化処理時における添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、扁平化処理する銅粉に対し、質量で1倍〜50倍が好ましい。前記添加量が、1倍未満であると、十分なアスペクト比が得られないことがあり、50倍を超えると、1回に扁平化処理できる銅粉の量が少なくなり、処理コストが高くなることがある。
前記扁平化処理の処理時間は、特に制限はなく、フレーク装置やボール・銅粉の添加量に応じて適宜選択することができるが、例えば、アトライターを用いるなら、10分間〜180分間が好ましく、60分間〜150分間がより好ましい。前記処理時間が、10分間未満であると、扁平化が不十分になりやすく、180分間を超えると、扁平化が進みすぎてBET比表面積が大きくなり、また凝結が起きやすく導電性ペーストとした場合の電気抵抗が上がりやすくなる。
なお、前記扁平化処理は、投入した全ての銅粉が扁平化される必要はなく、扁平化処理後に扁平化が進んでいない銅粉が混在していてもよい。扁平化処理の前後で、投入した銅粉に対して上記のフレーク状銅粉が一つでも形成されていれば扁平化処理されたということができる。
得られるフレーク状銅粉の分散性を向上させるためには、公知の分散剤を扁平化処理する銅粉に対して、0.1質量%〜5質量%添加することができる。なお、前記扁平化工程前の銅粉に分散剤を添加する代わりに、溶媒とともに前記分散剤を添加することもできる。前記分散剤を扁平化工程前の銅粉に添加し、かつ前記分散剤を扁平化工程で溶媒とともに添加してもよい。
<銀被覆工程>
前記銀被覆工程は、銅粉又は扁平化処理後のフレーク状銅粉表面に銀を被覆する工程である。
前記銅粉又はフレーク状銅粉表面に銀を被覆させる方法としては、例えば、還元法と置換法の2種類を挙げることができる。
前記還元法は、銅粉粒子の表面に、還元剤で還元された銀の微粒子を緻密に被覆させていく方法である(例えば、特開2000−248303号公報等参照)。
前記置換法は、銅粉粒子の界面で、銀イオンが金属の銅と電子の授受を行い、銀イオンが金属の銀に還元され、代わりに金属の銅が酸化され銅イオンになることで、銅粉粒子の表面層を銀層とする方法である(例えば、特開2006−161081号公報等参照)。
これらの中でも、銀被覆の均一性、銅表面への銀層の密着の点から、置換法が好ましい。
前記置換法において、銀被覆反応を行わせる際には、まず、銀塩を添加する前の液中に銅粉原料を入れて攪拌し、銅粉が液中に十分分散している状態で銀塩を含んだ液を添加することが好ましい。反応温度は、反応液が凝固したり蒸発したりしなければ特に規定されるものではないが、概ね20℃〜80℃で設定可能である。反応時間は、銀の被覆量・反応温度によって異なるが、概ね1分間〜5時間の範囲で設定可能である。
前記銀被覆反応を行う反応液としては、有機溶媒を含む溶液、又は有機溶媒相と水溶媒相からなるエマルジョンを用いる。水に対する溶解度が大きい有機溶媒を使用する場合は均一な混合溶液となるが、溶解度が低い有機溶媒の場合は、静止状態では水相と有機溶媒相が分離するため、液を攪拌することによりエマルジョンを形成させた状態で銀被覆反応を行う。これらの反応液を使用することにより、扁平化の際に添加した助剤を除去することなく、フレーク状銅粉をそのままの銀被覆反応に供することができる。
前記有機溶媒としては、水との相溶性、銀塩(主として硝酸銀)の溶解度を有する、アルコール、ケトン、アルデヒド、エーテルを使用することができる。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−メチルプロパノール、3−メチルプロパノール、1,1−ジメチルエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、テルピネオール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルエーテル、エチルエーテル、メチルエチルエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、水を含有せず有機溶媒を単独の反応液として使用する場合は、銀塩を直接溶解することが可能な多価アルコールが好ましく、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
有機溶媒と水との混合溶液、又はエマルジョン中にて銀被覆を行う場合は、有機溶媒として室温(20℃〜30℃)において液体となるものを用いる必要がある。前記水と前記有機溶媒との混合比率は、使用する有機溶媒により適宜調整することができる。また、有機溶媒と混合する水としては、不純物が混入する恐れがなければ、蒸留水、イオン交換水、工業用水等のいずれを用いてもよい。
銀被覆反応に使用する銀原料としては、銀イオンを液中に存在させる必要があるため、水あるいは多くの有機溶媒に対して溶解度を有する硝酸銀を用いることが好ましい。できるだけ均一な被覆反応を実現するために、硝酸銀を固体状で添加せず、水溶液、有機溶媒、又は水−有機溶媒混合液に硝酸銀を溶解した硝酸銀溶液として使用することが好ましい。目的とする銀被覆量に応じて、使用する硝酸銀溶液の濃度、有機溶媒量、及び使用する硝酸銀溶液量を決める。
銀被覆層をより均一に形成させるために、有機溶媒を含有する反応液(混合溶液又はエマルジョン)中にキレート化剤を添加してもよい。前記キレート化剤としては、銀イオンと金属銅との置換反応により副生成する銅イオンが再析出しないよう、銅イオンとの錯安定度定数の高いものが好ましい。具体的には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノジ酢酸、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、又はこれらの塩を使用することができる。
銀被覆反応を安定かつ安全に行うにあたり、pH緩衝剤を添加してもよい。具体的には、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニア水、炭酸水素ナトリウムをpH緩衝剤として使用することができる。
なお、銀被覆層の形成時にフィチン酸などの表面処理剤があると銀被覆反応自体を阻害するおそれがあるため、表面処理剤の添加は銀被覆層の形成後が好ましい。
前記フレーク状銅粉を被覆する銀の銅に対する割合(銀の被覆量)は、20質量%以下が好ましく、0.3質量%〜20質量%がより好ましく、0.5質量%〜15質量%が更に好ましい。前記銀の被覆量が、0.3質量%未満であると、前記銀被覆銅粉を含む導電性ペーストからなる導電膜の体積抵抗率を十分に低減することができないことがあり、20質量%を超えると、前記導電膜の体積抵抗率の低減効果に大きな差は見られず、銀の割合が増えることでコストが増大してしまう。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、例えば、洗浄及び乾燥工程などが挙げられる。
−洗浄及び乾燥工程−
前記洗浄及び乾燥工程は、得られた銀被覆銅粉を固液分離し、必要に応じて、洗浄を行い、乾燥する工程である。
前記洗浄及び乾燥としては、特に制限はなく、銅粉に対する公知の方法を適宜使用することができ、乾燥後において解砕を行ってもよい。
得られた本発明の前記銀被覆銅粉は、以下に説明する導電性ペーストに配合して用いることが好ましい。
(導電性ペースト)
本発明の導電性ペーストは、本発明の前記銀被覆銅粉と、樹脂とを含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記導電性ペーストとしては、例えば、樹脂硬化型ペーストなどが挙げられる。
前記導電性ペーストにおける前記銀被覆銅粉の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<樹脂>
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<溶剤>
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラデカン、テトラリン、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、テルピネオール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−エチルエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<その他の成分>
前記その他の成分としては、例えば、界面活性剤、ガラスフリット、分散剤、粘度調整剤などが挙げられる。
前記導電性ペーストの作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記銀被覆銅粉を、前記樹脂、前記溶剤、及び必要に応じて前記その他の成分を、例えば、超音波分散、ディスパー、三本ロールミル、ボールミル、ビーズミル、二軸ニーダー、自公転式攪拌機などを用い、混合することにより作製することができる。
前記導電性ペーストの粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃で、5Pa・s〜100Pa・sが好ましい。前記導電性ペーストの粘度が、5Pa・s未満であると、印刷時に「にじみ」が発生することがあり、100Pa・sを超えると、印刷むらが発生することがある。
前記導電性ペーストを用いた導電膜の体積抵抗率は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1×10−2Ω・cm以下が好ましく、1×10−3Ω・cm以下がより好ましく、5×10−4Ω・cm以下が更に好ましい。前記体積抵抗率が、1×10−2Ω・cm以下であると、極めて低い体積抵抗率の導電膜が実現可能である。前記体積抵抗率が、1×10−2Ω・cmを超えると、導電膜の導電性が不十分となることがある。
前記導電膜の体積抵抗率は、例えば、デジタルマルチメーター(ADVANTEST社製、R6551)を用いて、導電膜の長手方向の2点間の抵抗値を測定し、体積抵抗率=抵抗値×導電膜の厚み×導電膜の幅÷導電膜の長さを算出することにより測定することができる。
本発明の前記銀被覆銅粉を含む本発明の前記導電性ペーストは、例えば、太陽電池用のシリコンウエハー、タッチパネル用フィルム、EL素子用ガラス等の各種基体上に直接、あるいは必要に応じて前記基体上に更に透明導電膜を設けたその膜上に、塗布又は印刷して導電膜の形成に好適に用いることができる。
本発明の導電性ペーストを用いて得られた導電膜は、例えば、太陽電池セルの集電電極、チップ型電子部品の外部電極、RFID、電磁波シールド、振動子接着、メンブレンスイッチ、エレクトロルミネセンス等の電極又は電気配線用途に好適に用いられる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下のようにして、銀被覆銅粉を製造した。また、得られた銀被覆銅粉を用い、導電性ペーストを作製した。また、前記導電性ペーストを塗布し、加熱処理することにより導電膜を形成した。
前記銀被覆銅粉のBET比表面積、粒度分布(D10、D50、及びD90)、タップ密度、及び銀被覆量の測定方法は、以下に示す通りである。
<BET比表面積の測定方法>
銀被覆銅粉のBET比表面積は、MONOSORB装置(湯浅アイオニクス株式会社製)で、He:70%、N:30%のキャリアガスを用い、銀被覆銅粉3gをセルに入れて脱気を60℃で10分間行った後、BET1点法により測定を行った。
<粒度分布(D10、D50、及びD90)の測定方法>
銀被覆銅粉の粒度分布は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、MICROTORAC HRA)を用いて、銀被覆銅粉0.3gをイソプロパノール30mLに加え、超音波分散処理を5分間行って試料を準備し、全反射モードで粒径の測定を行った。測定により得た質量累積分布により、累積10質量%粒径(D10)、累積50質量%粒径(D50)、及び累積90質量%粒径(D90)の値を求めた。
<タップ密度の測定>
タップ密度は、タップ密度測定装置(柴山科学株式会社製、カサ比重測定装置SS−DA−2)を使用し、銀被覆銅粉15gを計量して、容器(20mL試験管)に入れ、落差20mmで1,000回タッピングし、タップ密度=試料重量(15g)/タッピング後の試料体積から算出した。
<銀被覆量の実測値>
前記銀の被覆量は、銀被覆銅粉を硝酸で溶解後に塩酸を添加し、生じた塩化銀の沈殿を乾燥し、重量を測定することにより求めた。
<銀被覆銅粉におけるリンの含有量(実測値)>
銀被覆銅粉を塩酸抽出した液を、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製プラズマ発光分光装置 SPS5100により、銀被覆銅粉におけるリンの含有量を測定した。
(実施例1)
<銀被覆フレーク状銅粉の作製>
−電解銅粉−
電解銅粉として、JX日鉱日石金属株式会社製 #51−R(A)を用意した。
電解銅粉について、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子工業株式会社製、JSM−6100)を使用し、2,000倍にて観察を行った。得られたSEM写真を図1に示した。
−扁平化工程−
前記電解銅粉1,254gとネオエタノールP−7(大伸化学株式会社製)624gをSUSボール(直径1.6mm)10.5kgとともにアトライター(日本コークス工業株式会社製、MA−1SE−X)に入れて、回転数360rpm、処理時間120分間の条件で扁平化処理を実施し、フレーク状銅粉スラリーを得た。得られたフレーク状銅粉スラリーとSUSボールの分離後、濾過して得られたウェットケーキを70℃で真空乾燥を行い、フレーク状銅粉を得た。
−銀被覆工程及び表面処理工程−
炭酸アンモニウム175gとエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩溶液(EDTA・4Na)735gを純水1,136gに溶解し、液温を35℃に調整した。この溶液と銀38.9g含有の硝酸銀水溶液を混合して、銀錯塩溶液を調整した。また、炭酸アンモニウム9.1gとEDTA・4Na 113gを純水1,404gに溶解させた後、前記フレーク銅粉350gを加え攪拌してフレーク状銅粉分散液を準備した。このフレーク状銅粉分散液を乾燥窒素ガス雰囲気にて液温を35℃に調整し、前記銀錯塩溶液を添加し銀被覆反応を実施し、30分間攪拌しながら保持した。
−表面処理工程−
前記銀被覆後のスラリーを撹拌しながら、表面処理剤1として純正化学株式会社製フィチン酸50%水溶液(フィチン酸含有率50質量%)1.61gを純水8.05gで希釈した後、この希釈液を添加し5分間撹拌を継続した。
次いで、表面処理剤2としてのステアリン酸15質量%のステアリン酸エマルジョン5.7gを添加し、5分間攪拌を継続して、銀被覆銅粉への表面処理を行った。
得られた銀被覆フレーク銅粉を濾過して、イオン交換水で洗浄し、更にイソプロパノールで洗浄し、得られたウェットケーキを70℃で真空乾燥を行い、実施例1の銀被覆フレーク状銅粉を得た。
得られた実施例1の銀被覆フレーク状銅粉の走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子工業株式会社製、JSM−6100)によるSEM写真を図2に示した。
(実施例2)
実施例1において、表面処理工程においてステアリン酸を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、実施例2の銀被覆フレーク状銅粉を得た。
(比較例1)
実施例1において、表面処理工程においてフィチン酸を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1の銀被覆フレーク状銅粉を得た。
(比較例2)
比較例1において、表面処理工程においてフィチン酸をベンゾトリアゾール(BTA)に代えた以外は、比較例1と同様にして、比較例2の銀被覆フレーク状銅粉を得た。
(比較例3)
比較例1において、表面処理工程においてフィチン酸をベンゾトリアゾール(BTA)に代え、ステアリン酸を用いなかった以外は、比較例1と同様にして、比較例3の銀被覆フレーク状銅粉を得た。
(比較例4)
実施例1において、銀被覆反応の直後には表面処理剤1及び表面処理剤2を添加せず、銀被覆フレーク銅粉を濾過して固液分離し、イオン交換水で洗浄した後に再度純水3,800gを添加して攪拌したところに表面処理剤1及び表面処理剤2を添加し、再度、銀被覆フレーク銅粉を濾過して、イオン交換水で洗浄し、更にイソプロパノールで洗浄し、得られたウェットケーキを70℃で真空乾燥を行った以外は、実施例1と同様にして、比較例4の銀被覆フレーク状銅粉を得た。
(比較例5)
比較例4において、表面処理剤1のフィチン酸をリン酸(和光純薬工業株式会社製)1.00gに変えた以外は、比較例4と同様にして、比較例5の銀被覆フレーク状銅粉を得た。
次に、実施例1〜2及び比較例1〜5の条件などについて表1にまとめて示した。得られた実施例1〜2及び比較例1〜5の銀被覆フレーク状銅粉の諸特性を評価した。結果を表2に示した。
*表1中の表面処理剤の添加のタイミングは、銀被覆反応の直後をAとし、洗浄後をBとした。
表2の結果から、実施例1〜2と比較例1〜3とは表面にフィチン酸を有する以外は、同等の銀被覆フレーク銅粉であることが分かった。
<TG−DTA測定>
作製した実施例1〜2及び比較例1〜5について、以下の装置及び条件でTG−DTA測定を行った。400℃での重量増加率の結果を表3に示した。実施例1の結果を図3、実施例2の結果を図4、比較例1の結果を図5、比較例2の結果を図6、比較例3の結果を図7、比較例4の結果を図10、比較例5の結果を図11にそれぞれ示した。
<<TG−DTA装置及び条件>>
株式会社リガク製ThermoPlus TG−8120を用い、試料20mgを10℃/分の速度で昇温し、重量の変化を測定した。(重量増加値÷試料重量)×100=重量増加率(重量%)を算出した。
表3の実施例1と比較例1との対比から、フィチン酸の添加により、400℃における重量増加率(重量%)が減少していること、即ち、酸化が抑制された銀被覆銅粉が得られることが分かった。
<導電性ペーストの作製>
次に、作製した実施例1〜2及び比較例1〜5の各銀被覆銅粉、ポリエステル樹脂、及び溶剤を下記の組成で混合し、3本ロール(オットハーマン社製、EXAKT80S)を用いて、ロールギャップを100μm〜20μmまで通過させて混練処理を行い、更に適宜溶剤を追加し粘度を約8Pa・s(ブルックフィールド社製粘度計DV−III URTRAにて回転数1rpm時の値)に調整を行うことにより、実施例及び比較例の各導電性ペーストを得た。
・各銀被覆銅粉・・・60質量部
・ポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製、バイロン200)・・・12質量部
・溶剤〔ECA(酢酸ジエチレングリコールモノ−n−エチルエーテル)、和光純薬工業株式会社製〕・・・28質量部
次に、アルミナ基板上にスクリーン印刷で、作製した導電性ペーストの膜を形成した。スクリーン印刷条件は、下記のとおりであった。
・印刷装置:マイクロテック社製 MT−320T
・印刷条件:スキージ圧0.18MPa、膜は、幅500μm、長さ37.5mmの回路形成をした。
得られた膜を、大気循環式乾燥機を用い、130℃、30分間の条件で加熱処理し、導電膜を形成した。
得られた各導電膜について、以下のようにして、平均厚み、及び体積抵抗率を測定した。結果を表4及び図9に示した。
<導電膜の平均厚み>
得られた各導電膜を、表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、SE−30D)を用いて、
アルミナ基板上で膜を印刷していない部分と導電膜の部分との段差を測定することにより、導電膜の平均厚みを測定した。
<導電膜の体積抵抗率>
デジタルマルチメーター(ADVANTEST社製、R6551)を用いて、各導電膜の長さ(間隔)の位置の抵抗値を測定した。各導電膜のサイズ(膜厚、幅、長さ)より、導電膜の体積を求め、この体積と測定した抵抗値から、体積抵抗率を求めた。
*表4中の体積抵抗率に示した数値において、記号“E”は、その次に続く数値が10を底とした“べき指数”であることを示し、その10を底とした指数関数で表される数値が“E”の前の数値に乗算されることを示す。例えば、「1.0E−04」であれば、「1.0×10−4」であることを示す。
以上の実施例1、2及び比較例1〜3の体積抵抗率の結果から、フィチン酸を用いて表面処理を行うと、導電膜の体積抵抗率を低減できることが分かった。また、体積抵抗率の結果及びTGの重量増加率の結果から、フィチン酸と脂肪酸を用いて表面処理を行うと、銀の割合を高めることなく、導電膜の体積抵抗率が低減し、かつ優れた酸化防止効果が得られることがわかった。
ただし、比較例4のように表面処理後の銀被覆銅粉に含まれるリンの含有量が0.01質量%を超えて多いと、導電膜の体積抵抗率は逆に悪化することが分かった。そして、体積抵抗率はリン酸を用いた比較例5の方が悪化しやすく、リンを含有する化合物の中でもフィチン酸が優れた導電性を有し、かつ該導電性の経時変化を少なくするのに有効であることが分かった。
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 銅粉に銀を被覆してなる銀被覆銅粉の表面にリンを含有する化合物を少なくとも有し、リンの含有量が0.01質量%以下であることを特徴とする銀被覆銅粉である。
<2> 前記リンを含有する化合物が、フィチン酸である前記<1>に記載の銀被覆銅粉である。
<3> 前記銀被覆銅粉の表面に、脂肪酸を更に含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の銀被覆銅粉である。
<4> 前記脂肪酸が、ステアリン酸である前記<3>に記載の銀被覆銅粉である。
<5> 前記銅粉に銀を被覆してなる銀被覆銅粉を表面処理剤で表面処理してなり、
銀の被覆量が20質量%以下であり、
熱重量測定(TG)による400℃での重量増加率が13重量%以下であり、
BET比表面積が0.7m/g以上である前記<3>から<4>のいずれかに記載の銀被覆銅粉である。
<6> 前記銅粉が、該銅粉をフレーク化処理したフレーク状銅粉である前記<1>から<5>のいずれかに記載の銀被覆銅粉である。
<7> 前記銅粉が、電気分解法により得られた電解銅粉である前記<6>に記載の銀被覆銅粉である。
<8> 銅粉の表面に銀を被覆してなる銀被覆銅粉をフィチン酸で表面処理する第1の表面処理工程を少なくとも含み、前記第1の表面処理工程後の銀被覆銅粉におけるリンの含有量が0.01質量%以下であることを特徴とする銀被覆銅粉の製造方法である。
<9> 前記フィチン酸で表面処理した銀被覆銅粉を脂肪酸で表面処理する第2の表面処理工程を更に含み、
前記脂肪酸が、ステアリン酸である前記<8>に記載の銀被覆銅粉の製造方法である。
<10> 前記表面処理工程を銅粉に銀を被覆する湿式反応の後で固液分離の前に行う前記<8>から<9>のいずれかに記載の銀被覆銅粉の製造方法。
<11> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の銀被覆銅粉を含有することを特徴とする導電性ペーストである。
本発明の前記銀被覆銅粉を含む本発明の前記導電性ペーストは、例えば、太陽電池用のシリコンウエハー、タッチパネル用フィルム、EL素子用ガラス等の各種基体上に直接、あるいは必要に応じて前記基体上に更に透明導電膜を設けたその膜上に、塗布又は印刷して導電膜の形成に好適に用いることができる。
本発明の導電性ペーストを用いて得られた導電膜は、例えば、太陽電池セルの集電電極、チップ型電子部品の外部電極、RFID、電磁波シールド、振動子接着、メンブレンスイッチ、エレクトロルミネセンス等の電極又は電気配線用途に好適に用いられる。

Claims (10)

  1. 銅粉に銀を被覆してなる銀被覆銅粉の表面にフィチン酸を少なくとも有し、リンの含有量が0.01質量%以下であることを特徴とする銀被覆銅粉。
  2. 前記銀被覆銅粉の表面に、脂肪酸を更に含有する請求項1に記載の銀被覆銅粉。
  3. 前記脂肪酸が、ステアリン酸である請求項2に記載の銀被覆銅粉。
  4. 前記銅粉に銀を被覆してなる銀被覆銅粉を表面処理剤で表面処理してなり、
    銀の被覆量が20質量%以下であり、
    熱重量測定(TG)による400℃での重量増加率が13重量%以下であり、
    BET比表面積が0.7m /g以上である請求項2から3のいずれかに記載の銀被覆銅粉。
  5. 前記銅粉が、該銅粉をフレーク化処理したフレーク状銅粉である請求項1から4のいずれかに記載の銀被覆銅粉。
  6. 前記銅粉が、電気分解法により得られた電解銅粉である請求項5に記載の銀被覆銅粉。
  7. 銅粉の表面に銀を被覆してなる銀被覆銅粉をフィチン酸で表面処理する第1の表面処理工程を少なくとも含み、前記第1の表面処理工程後の銀被覆銅粉におけるリンの含有量が0.01質量%以下であることを特徴とする銀被覆銅粉の製造方法。
  8. 前記フィチン酸で表面処理した銀被覆銅粉を脂肪酸で表面処理する第2の表面処理工程を更に含み、
    前記脂肪酸が、ステアリン酸である請求項7に記載の銀被覆銅粉の製造方法。
  9. 前記表面処理工程を銅粉に銀を被覆する湿式反応の後で固液分離の前に行う請求項7から8のいずれかに記載の銀被覆銅粉の製造方法。
  10. 請求項1から6のいずれかに記載の銀被覆銅粉を含有することを特徴とする導電性ペースト。
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