JP6213301B2 - ニッケル粉末の製造方法 - Google Patents

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本発明は、ニッケル粉末の製造方法に関し、さらに詳しくは、積層セラミックコンデンサの内部電極として好適な、微細で粒径の均一性に優れ、ニッケル粉末の触媒活性を抑制し、酸素含有量の少ない硫黄を含むニッケル粉末の製造方法に関する。
従来から、ニッケル粉末は、厚膜導電体を作製するための導電ペーストの材料として、使用されている。前記厚膜導電体は、電気回路の形成、積層セラミックコンデンサ及び多層セラミック基板等の積層セラミック部品の電極などに用いられている。
上記積層セラミック部品である積層セラミックコンデンサは、次のように製造されている。
まず、ニッケル粉末とエチルセルロース等の樹脂とターピネオール等の有機溶剤等とを混練した導電ペーストを、誘電体グリーンシート上にスクリーン印刷する。印刷された導電ペーストが交互に重なるように、誘電体グリーンシートを積層し、圧着する。
その後、積層体を所定の大きさにカットし、有機バインダとして使用したエチルセルロース等の樹脂の燃焼、除去を行う脱バインダ処理を行って、1300℃まで高温焼成する。そして、このセラミック体に外部電極を取り付けて積層セラミックコンデンサとする。
近年、小型化、大容量化が求められている積層セラミックコンデンサは、内部電極、誘電体ともに薄層化が進められている。
こうした薄層化に用いられるニッケル粉末は、粒径が均一であるとともに、触媒活性の低いニッケル粉末が求められている。その理由としては、触媒活性の高いニッケル粉末を用いた場合、脱バインダ処理時に急激な樹脂分解とともに多量のガスが発生し、コンデンサ内に滞留する問題が発現しやすくなるためである。この問題は、ニッケル自体に樹脂の加熱分解を促進する作用があることに起因しており、ニッケル粉末の触媒活性と呼ばれている。しかし、ニッケル粉末を用いていない誘電体層などの樹脂は、この温度では分解されないため、部分的樹脂分解にて発生したガスがコンデンサ内部に閉じ込められるため、内部電極の不連続性やデラミネーションといった問題が発現しやすくなる。
更には、ニッケル粉末には、酸素含有量が低いものが求められている。その理由は、酸素含有値が高いニッケル粉末を用いて1300℃まで高温焼成した際には、熱収縮量が大きくなり、その結果、セラミック体の応力が大きくなり、クラックやデラミネーションといった問題点が発現しやすいためである。
このため、触媒活性を制御するために、ニッケル粉末表面に硫黄を付着させる方法が検討され、ニッケル粉末の硫黄含有量を0.01〜1.0質量%とすることが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、ニッケル粉末の表面に硫黄含有化合物の被覆層あるいはニッケル−硫黄化合物層が形成されると記載されているが、単にニッケル粉末表面に硫黄を付着させるだけでなく、付着した硫黄の形態によっても差がみられ、特に触媒活性の制御には、硫化ニッケルが効果的であると言われている。
硫化ニッケルの割合を高めるために、本出願人は、ニッケル粉末を水中にてスラリー化し、得られたスラリー中に、特定の硫黄化合物を添加することで、ニッケル粉の触媒活性を制御する方法を提案している(特許文献2参照)。
この特許文献2によれば、ニッケル表面の硫黄の形態が、硫化ニッケルが50%以上になるので触媒活性を制御できるが、硫化ニッケルと硫酸ニッケルの両方で存在しており、ニッケル表面の硫化物形態へ完全には制御できておらず、触媒活性の制御がまだ十分ではない。硫酸ニッケルができる理由としては、水中の溶存酸素等により硫化物が硫酸形態になってしまうことが影響していると考えられる。
ニッケル塩溶液を還元する湿式法では、均一な粒径のニッケル粉末が得られるものの、CVD還元法などの気相法と比べると、酸素含有量が多くなる傾向にある。この酸素含有量を抑える手法としては、例えば、凝集体を含むニッケル粉を原粉として用いて解粒処理を実施する際に、該原粉を含有するスラリー中に還元剤を添加して、湿式解粒処理か、あるいは、乾式解粒処理を実施する際に、不活性ガス又は還元性ガス雰囲気中で該原粉の解粒処理を実施するニッケル粉の製造方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、ニッケル粉が微細になると、湿式解粒処理後の乾燥において、再凝集や酸化する問題が生じる。また、不活性ガス又は還元性ガス雰囲気中で乾式解粒処理しても、酸化を十分に抑制できないという問題があった。
また、真空下で130〜300℃の温度範囲で熱乾燥するニッケル粉の製造方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。この方法においても、微細なニッケル粉では、乾燥凝集や酸化を十分に抑制できないという問題があった。
一方、粒子形状および粒径制御が容易なニッケル粉末の製造方法として、水熱合成法を用いた方法が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。この方法によれば、水熱反応後の結果物を、脱イオン水及びエタノールを用いて洗浄するが、得られるニッケル粉末は、分散性に優れると記載されているものの、酸素含有量に関しては、記載がない。
以上のように、これまでの方法では、積層セラミックコンデンサの薄層化に対応した微細で粒径の均一性に優れ、ニッケル粉末の触媒活性を抑制し、酸素含有量の少ないニッケル粉末は得られておらず、その製造方法の開発が求められている。
WO2005/123307号公報 特開2010−043339号公報 特開2001−247903号公報 特開2011−174121号公報 特開2012−126991号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、積層セラミックコンデンサの内部電極用として好適な微細で粒径の均一性に優れ、触媒活性が抑制され、酸素含有量が少なく硫黄を含むニッケル粉末の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、均一な粒径のニッケル粉末が得られるニッケル塩溶液を還元する湿式法におけるニッケル粉末の酸素含有量の低減について、鋭意研究した結果、水溶液中でニッケル塩を還元して得たニッケル粒子を、大気雰囲気に暴露することなく揮発性の高い溶媒で水を希釈除去してから、有機硫黄化合物で処理することにより、ニッケル粒子の表面に硫黄が付着するので、酸素含有量が低減され、触媒活性が抑制され、分散性にも優れたニッケル粉末が得られることを見出し、これらの知見により、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、水溶液中のニッケル塩を還元してニッケル粒子を得る湿式還元反応によるニッケル粉末の製造方法であって、
(A)水溶液系中のニッケル塩から還元剤を用いた湿式還元反応により、ニッケル粒子を生成させ、ニッケル粒子と反応後液との混合物を得る第1工程、
(B)得られた混合物に水を添加して、前記ニッケル粒子が外気雰囲気中の酸素と遮断されている状態を維持し、反応後液を希釈除去して水と置換する第2工程、
(C)反応後液を希釈除去した混合物に、沸点が120℃以下の水溶性有機溶媒を添加して、前記ニッケル粒子が外気雰囲気中の酸素と遮断されている状態を維持し、前記混合物に含まれる液体成分中の水を希釈除去して水溶性有機溶媒と置換する第3工程、
(D)水溶性有機溶媒と置換することで得られたニッケルスラリーに有機硫黄化合物を添加して、ニッケル表面に有機硫黄化合物を付着させる第4工程、
(E)水溶性有機溶媒と置換した混合物から、ニッケル粒子を固液分離する第5工程、
及び、
(F)固液分離後のニッケル粒子に残留している水溶性有機溶媒を気化除去する第6工程、
を含むことを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明の前記第4工程(D)において、前記有機硫黄化合物は、チオール基を含有していることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第2の発明の前記第4工程(D)において、前記有機硫黄化合物は、トリアジン環を有するチオール類、チオグリコール酸、及びこれらの誘導体から選ばれる1種以上であることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明の前記第4工程(D)において、前記有機硫黄化合物は、前記第3工程(C)で用いられた沸点が120℃以下の水溶性有機溶媒に溶解されていることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明の前記第4工程(D)において、前記有機硫黄化合物を、20〜50℃でニッケルスラリーに添加して、0.5〜24時間攪拌することを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、前記第3工程(C)における水溶性有機溶媒として、アルコールを用いることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第6の発明の前記第3工程(C)における水溶性有機溶媒として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、又は2−プロパノールから選択される1種類以上を用いることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明の前記第3工程(C)において、ニッケル粒子に対する水の残留分の比率が1質量%以下になるまで希釈除去することを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明の前記第1工程(A)において、貴金属のコロイド粒子と還元剤を含むアルカリ性コロイド溶液にニッケル塩水溶液を添加して、ニッケル粒子を生成させ、混合物を得ることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明の前記第2工程(B)における水として、溶存酸素を除去した純水を用いることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明の前記第5工程(E)において、ニッケル粒子の固液分離は、不活性ガス雰囲気中で行うことを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第12の発明によれば、第1〜11のいずれかの発明において、前記第6工程(F)において、ニッケル粒子に残留している水溶性有機溶媒を、真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中で、加熱することにより除去することを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
一方、本発明の第13の発明によれば、第1〜12のいずれかの発明において、ニッケル粉末をエチルセルロースの共存下で熱重量測定したとき、エチルセルロースの分解速度のピーク温度が300℃以上であり、該ニッケル粉末の酸素含有量が0.8〜1.5質量%であることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第14の発明によれば、第13の発明において、前記ニッケル粉末の硫黄含有量が0.1〜1.0質量%であることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第15の発明によれば、第13又は14の発明において、前記ニッケル粉末の粒子平均径が0.05〜0.3μmの範囲にあることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
本発明のニッケル粉末の製造方法は、湿式法であるため、操作が容易で生産性が良好であり、工業的規模の生産に好適である。そして、得られたニッケル粉末は、微細で粒径の均一性に優れ、ニッケル表面に硫黄が付着しているので、触媒活性が抑制され、しかも酸素含有量が少ないため、焼成時の収縮が少なく、積層セラミックコンデンサの内部電極用として好適であるので、その工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明のニッケル粉末とその製造方法を詳細に説明する。
1.ニッケル粉末の製造方法
本発明のニッケル粉末の製造方法は、水溶液中のニッケル塩を還元してニッケル粒子を得る湿式還元反応によるニッケル粉末の製造方法であって、
(A)水溶液系中のニッケル塩から還元剤を用いた湿式還元反応により、ニッケル粒子を生成させ、ニッケル粒子と反応後液との混合物を得る第1工程、
(B)得られた混合物に水を添加して、反応後液を希釈除去して水と置換する第2工程、
(C)反応後液を希釈除去した混合物に、沸点が120℃以下の水溶性有機溶媒を添加して、混合物に含まれる液体成分中の水を希釈除去して水溶性有機溶媒と置換する第3工程、
(D)水溶性有機溶媒と置換することで得られたニッケルスラリーに有機硫黄化合物を添加して、ニッケル表面に有機硫黄化合物を付着させる第4工程、
(E)水溶性有機溶媒と置換した混合物から、ニッケル粒子を固液分離する第4工程、及び、
(F)固液分離後のニッケル粒子に残留している水溶性有機溶媒を気化除去する第5工程、
を含むことを特徴とする。
本発明のニッケル粉末の製造方法においては、湿式還元反応により生成させたニッケル粒子の表面に残存している水を、沸点が120℃以下の水溶性有機溶媒で希釈除去した後、水溶性有機溶媒中のニッケル粒子に有機硫黄化合物を付着させ、その後、残留している該水溶性有機溶媒を気化除去することが重要である。
すなわち、本発明は、湿式還元反応により生成させたニッケル粒子を乾燥する際に、ニッケル粒子表面が水で覆われた状態であると、乾燥中に、塩基成分や炭酸根が濃縮された水とニッケルが反応して、酸化ニッケルや水酸化ニッケルが生成するため、ニッケル粉末の酸素含有量が増加し、また、生成された酸化ニッケルや水酸化ニッケルにより、ニッケル粒子が凝集して、粒子の分散性が低下するので、ニッケル粒子の表面に残存している水を、沸点が120℃以下の水溶性有機溶媒で希釈除去するとともに、ニッケル粒子を乾燥する際に、ニッケル粒子表面を沸点が120℃以下の水溶性有機溶媒で被覆する。
これにより、上記酸化ニッケルや水酸化ニッケルの生成反応を抑制して、ニッケル粉末の酸素含有量を低減するとともに、ニッケル粒子の凝集を抑制することができるが、本発明では、さらに、ニッケル粒子表面を沸点が120℃以下の水溶性有機溶媒で被覆した後で、沸点が120℃以下の水溶性有機溶媒に溶解した有機硫黄化合物を添加してニッケル粒子表面に有機硫黄化合物を付着させることで、触媒活性が低下したニッケル粒子が得られるようにした。
以下、本発明のニッケル粉末の製造方法について、工程ごとに説明し、得られるニッケル粉末についても述べる。
(1)第1工程(A)
第1工程(A)は、水溶液系中のニッケル塩から還元剤を用いた湿式還元反応により、ニッケル粒子を生成させ、ニッケル粒子と反応後液の混合物を得る工程である。
ニッケル粒子を生成させることが可能な湿式還元反応による方法であれば、特に制限なく採用することができるが、微細で均一な粒径のニッケル粒子を得るためには、貴金属のコロイド粒子と還元剤を含むアルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加して、ニッケル粒子を生成させ、反応後液を得る方法を用いることが好ましい。
生成するニッケル粒子は、平均粒径が0.05〜0.3μmであることが好ましく、貴金属コロイド粒子を利用することにより、このようなニッケル粒子を容易に得ることができる。
貴金属コロイド粒子を利用したニッケル粉末の製造には、公知の製造方法を利用することができ、例えば、特開2007−138291号公報に記載された方法を利用することができる。
具体的には、以下に記載の(i)〜(iii)のいずれかの方法によって、アルカリ性コロイド溶液を作製し、該アルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加することで、平均粒径が小さく、均一な粒度分布を有するとともに、良好な分散性を有し、粗大粒子や連結粒子が少ない球状ニッケル粉末が得られる。
(i)パラジウムと銀とからなる複合コロイド粒子が分散したコロイド溶液と、還元剤と、アルカリ性物質とを混合して、アルカリ性コロイド溶液を作製する。
(ii)パラジウムと銀とからなる複合コロイド粒子が分散したコロイド溶液を作製し、該コロイド溶液に還元剤とアルカリ性物質を添加して、アルカリ性コロイド溶液を作製する。
(iii)パラジウムと銀とからなる複合コロイド粒子が分散したコロイド溶液と、還元剤を含有するアルカリ性溶液とをそれぞれ作製し、前記コロイド溶液と前記アルカリ性溶液を混合して、アルカリ性コロイド溶液を作製する。
より具体的には、上記アルカリ性コロイド溶液は、パラジウム塩水溶液と銀塩水溶液を所定量混合して、作製した混合溶液を、保護コロイド剤の入った水溶性ヒドラジン化合物を用いて作製したヒドラジン水溶液等の還元剤溶液中に、滴下することにより作製できる。
前記アルカリ性コロイド溶液中のパラジウムの量は、後にニッケル塩水溶液として添加されるニッケルの量に対して、10〜500質量ppmとすること好ましく、銀の量は、後にニッケル塩水溶液として添加されるニッケルの量に対して0.1〜5質量ppmとすることが好ましい。
アルカリ性コロイド溶液作製に用いる前記還元剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ヒドラジン、ヒドラジン化合物、水素化ホウ素ナトリウム等から選ばれる少なくとも1種類を含む水溶性ヒドラジン化合物を用いて作製したヒドラジン水溶液等を用いることが好ましい。
また、前記保護コロイド剤の添加量は、後にニッケル塩水溶液として添加されるニッケルの量に対して、0.02〜1質量%とすることが好ましく、保護コロイド剤としては、特にゼラチンが好ましいが、その他、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリビニルアルコールを用いることもできる。
さらに、前記アルカリ性物質は、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の水溶性のアルカリ性物質であればよく、アルカリ性コロイド溶液としては、特にpHが10以上に調整された水酸化ナトリウムとヒドラジン水和物を含む混合水溶液であることが好ましい。
(2)第2工程(B)
第2工程(B)は、第1工程(A)で得られた混合物に、水を添加して、反応後液を希釈除去して水と置換する工程である。
反応後液中には、ニッケル粉末に有害な塩基やアルカリなどが多量に含まれるため、これらの有害成分を除去する必要がある。通常は、固液分離と洗浄を繰り返して除去するが、第2工程(B)においては、ニッケル粒子を液体成分が被覆した状態、すなわち、液体成分によってニッケル粒子が外気雰囲気中の酸素と遮断されている状態を維持して、混合物に水を加えて希釈し、希釈された反応後液を除去する希釈除去を繰り返すことにより、上記有害成分を除去する。
ここで、第1工程(A)で得られた混合物は、スラリー状態であるため、そのままの状態で水を添加すると、反応後液が多いため、希釈除去に用いる水が大量に必要となる。したがって、希釈除去する前に、ニッケル粒子が外気雰囲気と接触しない程度まで、反応後液を減じておくことが好ましい。具体的には、前記混合物を静置沈降させ、上澄み液となっている反応後液を除去する、すなわち、ニッケル粒子が反応後液に浸って外気雰囲気中の酸素と遮断されている状態を保持できる程度まで、反応後液を除去することが好ましい。
さらに、反応後液を減じるためには、ニッケル粒子と反応後液の合計に対して、反応後液が60質量%以上となるように、固液分離してもよい。反応後液が60質量%以上残存する状態であれば、ニッケル粒子は、反応後液に覆われて、酸素との接触を抑制することができる。
その後、外気雰囲気中の酸素を巻き込まないように、ゆっくりと水を添加して、反応後液を希釈した後に、再度、静置沈降させ、上澄み液となっている希釈された反応後液を除去して、ニッケル粒子と反応後液が水で希釈された液体成分との混合物を得る。また、ニッケル粒子に掛け水をして、反応後液を希釈しながら除去してもよい。
反応後液の残留分は、乾燥後に上述のようにニッケル粉末に対して不純物となるので、反応後液の残留分を極力除去することが好ましい。このため、上記希釈と除去を繰り返して行うことが好ましく、ニッケル粒子に対する反応後液の残留分の比率が1質量%以下になるまで、希釈と除去を繰り返して、水と置換することが好ましい。ここで、反応後液の残留分の比率は、例えば、使用した原料から得られるニッケル粒子と反応後液の質量を算出し、除去した反応後液量を除去前の反応後液量から差し引いて残留分を算出し、その残留分をニッケル粒子量で除することで求めることができる。
反応後液の残留分の比率が1質量%を超えると、最終的に得られるニッケル粉末の不純物が多くなり、このニッケル粉末を用いて得られる積層セラミックコンデンサなどの電子機器の特性が低下することがある。
上記水を添加する際に酸素を巻き込むと、ニッケル粒子表面が酸化され、その結果、得られるニッケル粉末の酸素量が高くなることがある。このため、酸素を巻き込まないように、液体成分によってニッケル粒子が外気雰囲気中の酸素と遮断されている状態を維持しながら、水を添加することが好ましく、酸素との接触をさらに避けるためには、添加する水から溶存酸素を除去することが、より好ましい。また、不純物をさらに低減するためには、水中の不純物が除去された純水を用いることが好ましい。
ニッケル粒子の酸化を抑制するためには、不活性ガス雰囲気などの酸素を含まない雰囲気中で上記希釈除去を行うことが好ましいが、酸素とニッケル粒子の接触の低減に配慮して上記操作を行うことにより、得られるニッケル粉末の酸素含有量を低減することが可能である。
(3)第3工程(C)
第3工程(C)は、ニッケル粒子と反応後液が希釈除去されて置換された水とからなる混合物に、沸点が120℃以下の水溶性有機溶媒を添加して、混合物に含まれる液体成分中の水を希釈除去して、水溶性有機溶媒と置換する工程である。
これにより、乾燥、すなわち、水溶性有機溶媒を気化除去時に残留する水の量を大幅に減らし、酸化ニッケルや水酸化ニッケルの生成を抑制して、ニッケル粉末の酸素含有量や粒子の凝集を大幅に抑制することができる。
第2工程(B)終了後の混合物に、前記水溶性有機溶媒を添加してもよいが、混合物に含まれる水が多くスラリー状態となっている場合は、第2工程(B)と同様に、ニッケル粒子を静置沈降させ、上澄み液となっている水を除去する。その後、第2工程における水を前記水溶性有機溶媒に変更して、第2工程(B)と同様の操作を行い、水を希釈除去して、水溶性有機溶媒と置換する。第3工程(C)においても、ニッケル粒子と酸素の接触を抑制するため、酸素を巻き込まないように水溶性有機溶媒を添加することが好ましい。また、不活性ガス雰囲気中で上記希釈除去を行うことが好ましい。
ニッケル粒子を静置沈降させる際、さらに水を減じるため、第2工程(B)と同様に、ニッケル粒子と水の合計に対して水が60質量%以上となるように、固液分離した後、希釈除去を行ってもよい。
前記水溶性有機溶媒は、沸点が120℃を超えると、気化除去されにくくなるので、気化除去する際の雰囲気温度を高くし、時間も長くする必要がある。そのため、酸素を除去した雰囲気中で気化除去しても、凝集する粒子が増加して、分散性が低下する。一方、沸点が120℃以下の水溶性有機溶媒は、気化除去が容易であり、ニッケル粉末の酸素含有量や粒子の凝集を抑制することが可能である。また、水を希釈除去するため、水溶性であることが必要である。水溶性有機溶媒を用いることで、水を容易に、かつ均一に希釈することが可能であり、水が局部的に残留することを抑制して、効率的に除去することができる。
前記水溶性有機溶媒は、沸点が120℃以下であればよいが、水との相溶性に優れたアルコールが好ましく、特に、容易に気化して残渣がないメタノール、エタノール、1−プロパノール、および2−プロパノールから選択される1種類以上のアルコール溶液が好ましい。
上記水溶性有機溶媒による希釈除去は、ニッケル粒子に対する水の残留分の比率が1質量%以下になるまで、行うことが好ましい。水の残留分の比率が1質量%を超えると、後工程で前記水溶性有機溶媒を気化除去する際に、ニッケル粒子表面に残留する水が増加するため、酸化ニッケルや水酸化ニッケルの形成が増加し、得られるニッケル粉末の酸素含有量や粒子の凝集が多くなることがある。
(4)第4工程(D)
第4工程(D)は、水溶性有機溶媒と置換することで得られたニッケルスラリーに有機硫黄化合物を添加して、ニッケル表面に有機硫黄化合物を付着させる工程である。
第4工程(D)では、第3工程で得られたニッケル粒子と水溶性有機溶媒の混合物を撹拌し、その中へ水溶性有機溶媒に溶解させた有機硫黄化合物を添加し、撹拌を行う。この時、有機溶媒は第3工程と同様アルコールなどの有機溶媒を用いれば良く、処理温度は20〜50℃で行うことが好ましい。処理温度が20℃よりも低いとニッケル粒子への有機硫黄化合物の付着速度が低下し、撹拌時間が長くかかり、また、処理温度が50℃より高いと水溶性有機溶媒の揮発が促進され、処理が困難となることがある。
さらに、撹拌時間は0.5〜24時間にすることが好ましい。撹拌時間が0.5時間未満であると、ニッケル粒子への有機硫黄化合物の付着量が少なくなり、触媒活性の抑制効果が充分に得られないことがあり、また、撹拌時間を24時間より長くしても、有機硫黄化合物の付着量はほとんど増加せず、また、処理時間が長くなれば、その分ニッケル粉製造時間も長くなって、コストが高くなる可能性がある。
ここで有機硫黄化合物としては、チオール基を含有する化合物、スルホキシド、スルホンおよびチオケトン、スルホン酸およびそのエステルとアミド、スルフランとペルスルフランなどが例示できる。中でもチオール基を含有する化合物がより好ましく、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン等のトリアジン環を有するチオール類やその誘導体、メルカプト酢酸等のチオグリコール酸やその誘導体が特に好ましい。
最終的に得られるニッケル粉末の硫黄含有量は0.1〜1.0質量%であることが好ましいため、第4工程(D)ではこの硫黄含有量の範囲内となるように有機硫黄化合物の濃度を適宜調整する。より好ましくはニッケル粉末の硫黄含有量を0.1〜0.5質量%とする。
ニッケル粉末の硫黄含有量が0.1質量%より少ないと、ニッケル粉末表面の反応性を抑制し、積層セラミックコンデンサ製造時に脱バインダ工程にてクラックが発生することが多くなる。また、硫黄含有量が1.0質量%を超えると、ニッケル粉末表面の反応性を抑制する効果が向上しなくなることと、積層セラミックコンデンサ製造時に硫黄過多による別の不具合を生じる可能性や、脱バインダ工程やその後の焼成工程にて発生する硫黄含有ガスがコンデンサ製造装置を腐食する可能性がある。
なお、上記ニッケル粉末の硫黄含有量範囲内となる第4工程(D)での有機硫黄化合物の濃度範囲は、その有機硫黄化合物の種類により異なるので、有機硫黄化合物を選択時に調整することになる。
(5)第5工程(E)
第5工程(E)は、第4工程(D)で得られた有機硫黄化合物が付着したニッケル粒子と水溶性有機溶媒を含む混合物から、該ニッケル粒子を固液分離する工程である。
第5工程(E)においても、ニッケル粒子が酸素と接触することを抑制するため、ニッケル粒子と水溶性有機溶媒の合計に対して、水溶性有機溶媒が60質量%以上となるように、固液分離することが好ましい。
固液分離の方法は、ニッケル粒子が水溶性有機溶媒で覆われた状態を維持できれば、粉末の製造において通常に行われる方法でよく、例えば、吸引ろ過、遠心分離機等による固液分離方法を用いことができる。固液分離する際にも、残留する水が多い場合には、ニッケル粒子の酸化が進行することがあるため、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。これにより酸素による酸化をさらに抑制することができる。
(6)第6工程(F)
第6工程(F)は、固液分離後のニッケル粒子に残留している前記水溶性有機溶媒を気化除去する工程である。
本発明では沸点が120℃以下の水溶性有機溶媒用いるので、室温程度でも短時間で気化させることが可能であるが、微量に残留している水分を蒸発させるためには、加温された雰囲気とすることが好ましい。具体的には、50℃以下の範囲で加温することで、短時間で水溶性有機溶媒とともに残留している微量の水分を気化させることができ、ニッケル粉末の酸素含有量や粒子の凝集をさらに抑制することができる。50℃を超える温度まで加熱すると、水溶性有機溶媒の気化に対する効果が向上しないばかりか、過度に加熱すると、熱による粒子の凝集が進行することがある。
上記の製造方法により、平均粒径が0.05〜0.3μmであり、平均粒径(D)に対する粒径の標準偏差(σ)の比率(σ/D)が25%以下である微細で均一な粒径を有するニッケル粒子が得られる。ニッケル粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡観察により測定することができる。
2.ニッケル粉末
上記本発明のニッケル粉末の製造方法によって、ニッケル粒子の凝集を防止して、ニッケル粒子の分散性に優れ、また、微細で粒径の均一性に優れ、触媒活性が抑制され、酸素含有量が少ない硫黄を含有するニッケル粉末を得ることができる。
本発明により得られるニッケル粉末は、ニッケル粒子表面に有機硫黄化合物を付着させることで、ニッケル粉末表面が硫黄と有機成分に覆われている状態となっている。このような状態をとることで、硫黄の触媒被毒効果と有機被膜による樹脂や酸素との接触の低減により、触媒活性の抑制と酸素値の低減が行え、脱バインダ時の急激な樹脂分解による多量のガス発生が抑制されることで、内部電極の不連続性やデラミネーションが抑制され、更には、焼成時のクラックやデラミネーションも抑制することができる。
また、上記ニッケル粉末の平均粒径は、0.05〜0.3μmであることが好ましい。平均粒径がこの範囲にあると、積層セラミックコンデンサの薄層化に対応することが可能である。平均粒径が0.3μmを超えると、積層セラミックコンデンサにおける電極間の短絡や電極のクラックといった問題点が発生することがある。一方、平均粒径が0.05μm未満になると、乾燥状態での粉体の取り扱いが困難になる。
さらに、本発明により得られるニッケル粉末は、湿式還元反応により得られたニッケル粉末の粉体特性を継承しているため、コロイド粒子による湿式還元反応を用いてニッケル粉末を得た場合には、平均粒径(D)に対する粒径の標準偏差(σ)の比率(σ/D)が25%以下の均一な粒径を有する。これにより、焼成時の収縮の不均一性から生じるクラックやデラミネーションの発生をさらに抑制することができる。
本発明により得られるニッケル粉末は、ΔTGから求めた樹脂の分解速度のピーク温度が300℃以上であり、酸素含有量が0.8〜1.5質量%であることが好ましい。ΔTGとはニッケル粉末と樹脂であるエチルセルロースの共存下で熱重量測定に行い、エチルセルロース自体の熱重量の微分曲線(ΔTG)からエチルセルロースの分解挙動を評価したものである。
また、樹脂の分解速度のピーク温度が300℃未満であると、ニッケル粉末の触媒活性が充分に抑制されておらず、ニッケル粉末を用いていない誘電体層の樹脂が分解する前に、ニッケル粉末近傍の樹脂が分解し、発生したガスがコンデンサ内部に閉じ込められるため、内部電極の不連続性やデラミネーションが発生する。
また、ニッケル粉末の酸素含有量は、大気雰囲気中でも、取り扱いが容易であるとともに、焼成時の収縮量も抑制されるために0.8〜1.5質量%であることが好ましい。酸素含有量が0.8質量%未満では、大気雰囲気と接触した際に、急激に酸化して発熱したり、酸素含有量が逆に増加することがあり、一方、酸素含有量が1.5質量%を超えると、焼成時の収縮量が大きくなり、その結果、セラミック体の応力が大きくなり、クラックやデラミネーションといった問題点が発生することがある。
以上のように、本発明により得られるニッケル粉末は、微細で粒径の均一性に優れ、酸素含有量が少なく、表面に硫黄を含有し触媒活性が抑制されるので、電子部品の電極用、特に積層セラミックコンデンサの内部電極用として好適である。
以下、本発明の実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で用いたニッケル粉末の粒径、樹脂の分解速度のピーク温度、酸素含有量、硫黄含有量の測定方法または評価方法は、以下の通りである。
(1)ニッケル粉末の粒径:
平均粒径は、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−5510)を用いて、倍率20,000倍の写真(縦19.2μm×横25.6μm)を撮影し、写真中の粒子形状の全様が見える100個以上粒子の面積を測定し、面積から各粒子の粒径を求め、個数平均値により求めた。
(2)ニッケル粉末の触媒活性の評価
まず、有機バインダであるエチルセルロース(以下、ECと略記する場合がある。)をニッケル粉末に対して5質量%物理混合した混合物と、ニッケル粉末のみを、それぞれTG測定装置(マックサイエンス社製、2000SA)を用いて、窒素ガス中、5℃/minの昇温速度で重量変化を測定した。
その後、ECとニッケル粉末を混合したニッケル粉末の重量変化からニッケル粉末のみの重量変化を引き去り、ニッケル粉末中のECの重量変化を求めた。これらの結果を用いて、ECの重量変化を温度で一次微分して、EC分解速度を求め、ニッケル粉末の触媒活性を評価した。EC分解速度が最大を示す温度を、EC分解温度とした。
(3)ニッケル粉末の酸素含有量、硫黄含有量:
ニッケル粉末の酸素含有量は、酸素分析装置(LECO社製、型番TC−436AR)にて測定した。また、硫黄含有量は、炭素、硫黄同時分析装置(LECO社製、型番CS−600)にて測定した。
[実施例1]
1.第1工程:
10Lビーカーに純水6.5Lを入れ、撹拌しながら75℃まで昇温し保持した。その後、ゼラチン0.025gを溶解してゼラチン溶液を作製し、パラジウム0.0025g、銀0.000025gを含む溶液を滴下した後に、60質量%ヒドラジン水溶液0.1gを混合して、複合コロイド溶液を得た。
この複合コロイド溶液に水酸化ナトリウム顆粒50gを添加した後、60質量%ヒドラジン水溶液を185ml加え、ニッケルを還元するためのアルカリ性コロイド溶液とした。
次に、上記アルカリ性コロイド溶液に、100g/L塩化ニッケル水溶液500mlを滴下して、ニッケル粒子を還元析出させ、平均粒径が0.2μmのニッケル粉末を含む混合物を得た。
2.第2工程:
還元反応が終了した後、攪拌を停止し、混合物からニッケル粉末を静置沈降し反応後液を除去した。除去後の混合物(反応後液量とニッケル粉末)の総量は350gであった。この時点でニッケル粉末量は50g、反応後液量は300gであった。
次に、純水5.7Lをゆっくりと添加して撹拌し、反応後液を希釈した。
その後、静置沈降して、純水と反応後液の混合溶液を5.7kg除去した。更に純水5.7Lをゆっくりと添加した後、撹拌して希釈した。
その後、静置沈降させ、純水と反応後液の混合溶液を5.7kg除去することを繰り返し、ニッケル量に対して反応後液の残留分重量が理論値で1質量%以下になるまで純水で置換した。この時点で混合物(純水量とニッケル粉末)の総量は350gであり、ニッケル粉末量は50g、純水量は300gとなる。
3.第3工程:
次に、混合物にエタノール5.7kgをゆっくりと添加して撹拌し、純水を希釈した。
その後、静置沈降して、純水とエタノールの混合溶液を5.7kg除去した。更にエタノール5.7kgをゆっくりと添加して撹拌し、純水を希釈した。
その後、静置沈降させ、純水とエタノールの混合溶液を5.7kg除去することを繰り返し、ニッケル量に対して純水の残留分量が1質量%以下になるまでエタノールで置換した。
4.第4工程:
その後、ニッケル粒子を静置沈降させ、エタノールを5.85kg除去し、残ったエタノールとニッケル粒子を500mlビーカーへ移し替え、50gエタノールを加えてエタノール量200g、ニッケル粉末量50gのニッケルスラリーとした。
また、有機硫黄化合物として2−4−6トリメルカプト―s−トリアジンを用い、硫黄量がニッケル粉末に対し0.5質量%になる量をエタノール50gに溶解させ、有機硫黄化合物溶液を作製した。
引き続き、有機硫黄化合物溶液を、撹拌したニッケルスラリーへ添加し、20℃で30分撹拌をおこなって、有機硫黄化合物が付着したニッケル粒子を含むスラリーを得た。
5.第5工程:
次に、有機硫黄化合物が付着したニッケル粒子を含むスラリーに対して減圧濾過を行い、エタノールを除去し、ニッケル粉末ケーキとした。
6.第6工程
ニッケル粉末ケーキを真空雰囲気中で40℃に加温し、ニッケル粉末ケーキに残っているエタノールを、気化除去した。
その後、徐酸化を行わず、空気を導入し、大気圧まで戻し大気暴露させ、ニッケル粉末を得た。
得られたニッケル粉末の酸素含有量、硫黄含有量、樹脂分解温度を測定し、表1に示す。得られたニッケル粉末のSEM観察では、ニッケル粒子が凝集した粗大粒子は、観察されなかった。
[実施例2]
実施例1の第4工程で、有機硫黄化合物としてメルカプト酢酸を用いた以外は、実施例1と同様にして、ニッケル粉末を得るとともに、その物性を評価した。得られたニッケル粉末の粒径は0.2μmであった。
得られたニッケル粉末の酸素含有量、硫黄含有量、樹脂分解温度を表1に示す。得られたニッケル粉末のSEM観察では、ニッケル粒子が凝集した粗大粒子は、観察されなかった。
[実施例3]
実施例1の第4工程で、有機硫黄化合物として3−メルカプトプロパン酸オクタデシルを用いた以外は、実施例1と同様にして、ニッケル粉末を得るとともに評価した。得られたニッケル粉末の粒径は0.2μmであった。
得られたニッケル粉末の酸素含有量、硫黄含有量、樹脂分解温度を表1に示す。得られたニッケル粉末のSEM観察では、ニッケル粒子が凝集した粗大粒子は、観察されなかった。
[比較例1]
実施例1において、第4工程を除外した以外は、実施例1と同様にして実験した。すなわち、水溶液系中のニッケル塩から還元剤を用いた湿式還元反応により、ニッケル粒子を生成させ、得られたニッケル粒子と反応後液との混合物に水を添加して、反応後液を希釈除去して水と置換し、この混合物に、水溶性有機溶媒(エタノール)を添加して、混合物に含まれる液体成分中の水を希釈除去して水溶性有機溶媒と置換した。その後、有機硫黄化合物を添加することなく、スラリーからエタノールを除去しニッケル粉末を得るとともに評価した。得られたニッケル粉末の粒径は0.2μmであった。
得られたニッケル粉末の酸素含有量、硫黄含有量、樹脂分解温度を表1に示す。得られたニッケル粉末のSEM観察では、ニッケル粒子が凝集した粗大粒子は、観察されなかった。
[比較例2]
実施例1において、第2工程まで同様に行って得られたニッケル粉末を500mlビーカーに移し、純水200g中に分散させ、ニッケル水スラリーを得た後、水を水溶性有機溶媒(エタノール)に置換することなく、有機硫黄化合物溶液を撹拌したニッケル水スラリーに添加し、30分撹拌した。有機硫黄化合物としては、メルカプト酢酸を用い、硫黄量がニッケル粉末に対し0.5質量%になる量を純水50gに溶解させ、有機硫黄化合物溶液とした。
その後、有機硫黄化合物が付着ニッケル粒子を含むスラリーに対して、減圧濾過を行い、純水を除去し、真空雰囲気中で150℃に加温し、ニッケル粉末ケーキに残っている純水を、気化除去し、ニッケル粉末を得るとともに評価した。得られたニッケル粉末の粒径は0.2μmであった。
得られたニッケル粉末の酸素含有量、樹脂分解温度を表1に示す。得られたニッケル粉末のSEM観察では、ニッケル粒子が凝集した粗大粒子は、観察されなかった。
Figure 0006213301
「評価」 実施例と比較例の結果を示す表1から、次のことが分かる。本発明の製造方法により得られた実施例1、2、3のニッケル粉末は、0.1質量%以上の硫黄を含有しており、比較例1に示す有機硫黄化合物処理を行わなかったニッケル粉末よりも樹脂分解温度が高温化している。また、実施例2と比較例2を比較すると、実施例2と同じメルカプト酢酸を用いても比較例2では水中系にて処理を行ったので、酸素含有量の増加が確認された。
本発明のニッケル粉末の製造方法により得られたニッケル粉末は、微細で粒径の均一性に優れ、硫黄を含有し触媒活性が抑制され、酸素含有量が少ないため、電気回路の形成や、積層セラミックコンデンサおよび多層セラミック基板等の積層セラミック部品の電極などに用いられる厚膜導電体を作製するための導電ペーストの材料として、好適である。

Claims (15)

  1. 水溶液中のニッケル塩を還元してニッケル粒子を得る湿式還元反応によるニッケル粉末の製造方法であって、
    (A)水溶液系中のニッケル塩から還元剤を用いた湿式還元反応により、ニッケル粒子を生成させ、ニッケル粒子と反応後液との混合物を得る第1工程、
    (B)得られた混合物に水を添加して、前記ニッケル粒子が外気雰囲気中の酸素と遮断されている状態を維持し、反応後液を希釈除去して水と置換する第2工程、
    (C)反応後液を希釈除去した混合物に、沸点が120℃以下の水溶性有機溶媒を添加して、前記ニッケル粒子が外気雰囲気中の酸素と遮断されている状態を維持し、前記混合物に含まれる液体成分中の水を希釈除去して水溶性有機溶媒と置換する第3工程、
    (D)水溶性有機溶媒と置換することで得られたニッケルスラリーに有機硫黄化合物を添加して、ニッケル表面に有機硫黄化合物を付着させる第4工程、
    (E)水溶性有機溶媒と置換した混合物から、ニッケル粒子を固液分離する第5工程、
    及び、
    (F)固液分離後のニッケル粒子に残留している水溶性有機溶媒を気化除去する第6工程、
    を含むことを特徴とするニッケル粉末の製造方法。
  2. 前記第4工程(D)において、前記有機硫黄化合物はチオール基を含有していることを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉末の製造方法。
  3. 前記第4工程(D)において、前記有機硫黄化合物はトリアジン環を有するチオール類、チオグリコール酸、及びこれらの誘導体から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項2に記載のニッケル粉末の製造方法。
  4. 前記第4工程(D)において、前記有機硫黄化合物は、前記第3工程(C)で用いられた沸点が120℃以下の水溶性有機溶媒に溶解されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
  5. 前記第4工程(D)において、前記有機硫黄化合物は、20〜50℃でニッケルスラリーに添加して、0.5〜24時間攪拌することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
  6. 前記第3工程(C)における水溶性有機溶媒として、アルコールを用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
  7. 前記第3工程(C)における水溶性有機溶媒として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、又は2−プロパノールから選択される1種類以上を用いることを特徴とする請求項6に記載のニッケル粉末の製造方法。
  8. 前記第3工程(C)において、ニッケル粒子に対する水の残留分の比率が1質量%以下になるまで希釈除去することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
  9. 前記第1工程(A)において、貴金属のコロイド粒子と還元剤を含むアルカリ性コロイド溶液にニッケル塩水溶液を添加して、ニッケル粒子を生成させ、混合物を得ることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
  10. 前記第2工程(B)における水として、溶存酸素を除去した純水を用いることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
  11. 前記第5工程(E)において、ニッケル粒子の固液分離は、不活性ガス雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
  12. 前記第6工程(F)において、ニッケル粒子に残留している水溶性有機溶媒を、真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中で、加熱することにより除去することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
  13. ニッケル粉末をエチルセルロースの共存下で熱重量測定したとき、エチルセルロースの分解速度のピーク温度が300℃以上であり、該ニッケル粉末の酸素含有量が0.8〜1.5質量%であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法
  14. 前記ニッケル粉末の硫黄含有量が0.1〜1.0質量%であることを特徴とする請求項13に記載のニッケル粉末の製造方法
  15. 前記ニッケル粉末の粒子平均径が0.05〜 0.3μmの範囲にあることを特徴とする請求項13又は14に記載のニッケル粉末の製造方法
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