JP7183504B2 - 湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法 - Google Patents

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Description

本発明は、積層セラミック部品の電極材として用いられる、安価で高性能なニッケル粉末の粗大粒子低減方法に関するものであり、特に湿式法により得られる安価で高性能な湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法に関する。
従来、導電性粉末、樹脂および有機溶剤を主成分とする導電性ペーストは、電気回路の配線基板を構成する導電層、電極層、層間接続材や、電子部品の電極層などの形成に使用されている。これらの配線基板や電子部品の小型化および高密度化に伴って、導電層および電極層の幅や厚みが縮小される傾向にある。このため、これらを形成する材料として用いられる導電性ペーストの材料である導電性粉末についても、その小径化が要求されている。粉体には、通常、特定の大きさの粒径を超える粗大粒子が存在するが、導電性粉末の小径化に伴って、導電性粉末中に粗大粒子が存在することによる導電性粉末の特性に対する悪影響が問題となっている。そのため、導電性粉末には、粗大粒子が含まれないこと、あるいは粗大粒子が非常に少ないことという特性が求められている。
この粉体中における粗大粒子の存在による問題は、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の内部電極用導電性ペーストの分野で、特に問題となっている。積層セラミックコンデンサは、例えば誘電体グリーンシート上に、導電性粉末として主にニッケル粉末を分散させた導電性ペーストをスクリーン印刷することにより内部電極を形成し、この内部電極が印刷された複数のグリーンシートを、内部電極が交互に重なるように積層して圧着することにより積層体を得て、この積層体を、所定の大きさに切断し、脱バインダ処理を行った後、1300℃まで高温焼成してセラミック焼結体を得て、最後に、このセラミック焼結体に外部電極を取り付ける工程により、作製されている。
現在、この積層セラミックコンデンサの内部電極用導電性ペーストの材料としては、主として数平均粒径が0.5μm以下であるニッケル粉末が用いられている。また、内部電極の膜厚にもよるが、導電性粉末において、通常、粉体全体の数平均粒径の3倍~5倍程度以上の粒径を基準粒径として、この基準粒径よりも大きな粒子が粗大粒子とみなされる。ここで、導電性粉末が主として一次粒子で構成されている場合、粗大粒子には、一次粒子径が基準以上の大きな粒子だけでなく、一次粒子が強固に連結ないしは凝集して容易に解砕できない状態である二次粒子で、基準の粒径以上の粒径を有する粒子も含まれる。
ニッケル粉末の製造方法には、大別すると、気相法と湿式法がある。気相法としては、例えば、特許文献1に記載されている塩化ニッケル蒸気を水素により還元してニッケル粉末(気相ニッケル粉末)を作製する方法や、特許文献2に記載されているニッケル金属をプラズマ中で蒸気化してニッケル粉末(気相ニッケル粉末)を作製する方法がある。また、湿式法としては、例えば、特許文献3に記載されている、ニッケル塩溶液に還元剤を添加してニッケル粉末(湿式法で得たニッケル粉末を「湿式ニッケル粉末」とする)を作製する方法がある。
気相法は、1000℃程度以上の高温プロセスのため、結晶性に優れる高特性のニッケル粉末を得るためには有効な手段ではある。しかしながら、得られるニッケル粉末の粒径分布が広くなるという問題がある。上述の通り、内部電極の薄層化においては、粗大粒子を含まず、比較的粒径分布が狭く、数平均粒径0.5μm以下のニッケル粉末が必要とされる。そのため、気相法でこのようなニッケル粉末を得るためには、高価な分級装置の導入による分級処理が、追加処理として必須となる。
なお、分級処理では、0.6μm~2μm程度の任意の値の分級点を目途に、分級点よりも大きな粗大粒子の除去が可能であるが、分級点よりも小さな粒子の一部も同時に除去されてしまう。そのため、製品実収が大幅に低下するという問題もある。したがって、気相法では、上述の高価な分級設備の導入も含めて、製品のコストアップを避けることが困難である。
一方で、湿式法は、気相法と比較して、得られるニッケル粉末の粒径分布が狭いという利点がある。特に、特許文献3に記載されているニッケル塩と銅塩を含む溶液に還元剤としてヒドラジンを含む溶液を添加してニッケル粉末を作製する方法では、ニッケルよりも貴な金属の金属塩(銅塩)が核剤となり、この核剤の共存下でニッケル塩(正確には、ニッケルイオン(Ni2+)、またはニッケル錯イオン)がヒドラジンで還元される。そのため、核発生数を制御することで粒径を制御することができ、かつ核の発生とニッケル粒子の成長が均一となるため、気相法より狭い粒径分布で微細なニッケル粉末を得られることが知られている。
ニッケル粉末中の粗大粒子を低減するための手段としては、気相ニッケル粉では上述の分級処理による粗大粒子の除去が挙げられるが、特許文献4に記載されるように、分級処理を行うニッケル粉スラリー中においてグルタミン酸などを用いて気相ニッケル粉末の凝集体形成を抑制する手法なども用いられている。一方で、湿式ニッケル粉末では、粗大粒子を低減するための手段として解砕処理などが提案されている。たとえば、特許文献5には、特定の解砕処理により、特定の粒度分布を有し、かつ、特定の範囲の平均一次粒子径を有する湿式ニッケル粉末およびその製造方法が開示されている。
しかしながら、上記分級処理や解砕処理は、平均粒径が0.2μm以下、特に、0.1μm以下のニッケル粉末を対象とした場合に、粗大粒子の除去または解砕自体がますます困難になってくる。そのため、分級処理や解砕処理によって、今後の内部電極の薄層化へ対応することの難度が一層高まっている。
一方、分散性に優れたニッケル粉末の製造方法として、たとえば、特許文献6には水熱合成法を用いた方法が報告されている。この提案された方法によれば、水熱反応後の結果物を、脱イオン水およびエタノールを用いて洗浄することが開示されているが、得られるニッケル粉末は、その凝集度合いをSEM観察のみで判断しており、粗大粒子の含有量に関して定量評価を行っていない。そのため、粗大粒子の発生を抑制する観点から、水熱合成法が有効であるか、明らかとなっていない。
また、特許文献7には、湿式法による晶析後に、デカンテーションによって反応後液を水で希釈除去し、さらに同様に水を水溶性有機溶媒で希釈除去する方法が報告されている。この提案された方法によれば、得られるニッケル粉末は酸素含有量が少ないこと、および凝集が抑制されていることが記載されているものの、粗大粒子に関する評価はSEM観察のみであり、定量化した結果は報告されていない。そのため、粗大粒子の発生を抑制する観点から、この方法が有効であるか、明らかとなっていない。
図1に、従来の湿式ニッケル粉末の製造過程を示すが、固液分離工程や乾燥工程において、例えば、固液分離工程で得られるニッケル粉ケーキ(ニッケル晶析粉+付着液)がそのハンドリング中に空気と触れる時間が長くなると、図2に示すように、ニッケル晶析粉1が酸化して水酸化ニッケルが生成して複数のニッケル晶析粉1を包み込んだ1μm程度以上のサイズの粗大粒子2(以後、この粗大粒子を「水酸化ニッケル含有粗大粒子」とする場合がある)を形成する場合が多くなり、また、ニッケル粉ケーキの乾燥が進むと付着液(水が主成分)の高い表面張力に起因してニッケル粒子同士が互いに強く引付けあって強い凝集(乾燥凝集)を生じる場合が多くなる。これらの場合、水酸化ニッケル含有粗大粒子や乾燥凝集によって、湿式ニッケル粉末中の粗大粒子が単に多くなるのみならず、湿式ニッケル粉末を用いて導電性ペーストを製造する際に、ニッケル粒子の分散性が低下するという問題も生じてしまう。
特開平4-365806号公報 特表2002-530521号公報 特開2002-53904号公報 特開2006-219688号公報 特開2001-247903号公報 特許第5421339号公報 特許第6065699号公報
本発明は、水溶液系の湿式法を用いてニッケル粉末を製造する場合において、粗大粒子が少なく分散性の良いニッケル粉末を得るための湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法は、水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、ヒドラジンおよび水酸化アルカリと、水とを含む反応液中において、前記ヒドラジンによる還元反応でニッケル晶析粉を得る晶析工程と、前記ニッケル晶析粉を固液分離してニッケル粉ケーキを得る第1固液分離工程と、前記ニッケル粉ケーキを水溶性有機溶剤でスラリー化してスラリーを得るスラリー化工程と、前記スラリーを固液分離してニッケル粉ケーキを得る第2固液分離工程と、前記第2固液分離工程後、前記ニッケル粉ケーキを乾燥してニッケル粉末を得る乾燥工程と、を含む。
前記水溶性有機溶剤は、水溶性有機溶剤成分の純度が70質量%以上であってもよい。
前記水溶性有機溶剤は、沸点が50℃~120℃であってもよい。
前記水溶性有機溶剤は、アセトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、および2-プロパノールのいずれかを含んでもよい。
前記水溶性有機溶剤は、アルコールを主成分としていてもよい。
前記反応液は、アミン化合物を含み、前記アミン化合物は、分子内に第1級アミノ基(-NH)または第2級アミノ基(-NH-)を合わせて2個以上含有していてもよい。
以上説明したように、本発明によれば、水溶液系の湿式法を用いてニッケル粉末を製造する場合において、粗大粒子が少なく分散性の良いニッケル粉末を得ることができる湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法を提供することができる。
は、従来の湿式ニッケル粉末の製造工程の一例を示す模式図である。 は、従来の湿式ニッケル粉末中にみられる水酸化ニッケル含有粗大粒子を示す模式図である。 は、本発明の一実施形態に係る湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法における製造工程の一例を示す模式図である。 は、実施例1~5、比較例1、2、および参考例に示す製造方法により得た湿式ニッケル粉末の粗大粒子の含有量を評価するために用いた、吸引ろ過装置の概略図である。 は、実施例1~5、比較例1、2、および参考例に示す製造方法により得た、解砕処理されていない湿式ニッケル粉末の粗大粒子(>0.7μm)の含有量の測定結果を示すグラフである。 は、実施例1~5、および比較例1、2に示す製造方法により得た、解砕処理された湿式ニッケル粉末の粗大粒子(>0.4μm)の含有量の測定結果を示すグラフである。
以下、本発明に係る湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法について図面を参照しながら以下の順序で説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能である。
1.湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法(製造方法)
1-1.晶析工程
1-1-1.晶析工程で用いる薬剤
1-1-2.晶析反応の手順(晶析手順)
1-1-3.晶析反応(還元反応、ヒドラジン自己分解反応)
1-1-4.晶析条件(反応開始温度)
1-2.第1固液分離工程
1-3.スラリー化工程
1-4.第2固液分離工程
1-5.乾燥工程
1-6.解砕工程
<1.湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法(製造方法)>
まず、本発明の一実施形態に係る湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法について説明する。図3には、本発明の一実施形態に係る湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法における製造工程の一例である模式図を示す。本発明の一実施形態に係る湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法は、晶析工程と、第1固液分離工程と、スラリー化工程と、第2固液分離工程と、乾燥工程とを含む。
なお、所望により、ニッケル晶析粉を含む反応液や、洗浄液に硫黄化合物を添加して、硫黄成分でニッケル晶析粉の表面を修飾する表面処理(硫黄コート処理)を施して、湿式ニッケル粉末(ニッケル晶析粉)を得てもよい。このように湿式ニッケル粉末を表面処理することにより、ニッケルが有機物を分解する活性を弱めることが可能であり、例えば導電性ペースト中にて湿式ニッケル粉末と共存する樹脂の劣化を抑制することができる。なお、本発明において、「粉末」および「粉」は、粒子が多数集合して集合体となっている状態であり、晶析したニッケル粒子がスラリー状に分散しているものや、乾燥させて固体の集合体となったものはニッケル粉末やニッケル粉に該当する。例えば、「ニッケル晶析粉」は晶析工程で還元された状態のニッケル粉である。
(1-1.晶析工程)
晶析工程では、水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の塩、ヒドラジン還元剤および水酸化アルカリと、水とを含む反応液中で、ニッケル塩(正確には、ニッケルイオン、またはニッケル錯イオン)をヒドラジンで還元する。
(1-1-1.晶析工程で用いる薬剤)
溶媒としての水は、得られる湿式ニッケル粉末中の不純物量を低減させる観点から、超純水(導電率:≦0.06μS/cm(マイクロジーメンス・パー・センチメートル)、または純水(導電率:≦1μS/cm)という高純度のものがよく、中でも安価で入手が容易な純水を用いることが好ましい。以下、上記した各種薬剤について、それぞれ詳述する。
(a)水溶性ニッケル塩
水溶性ニッケル塩は、水に易溶であるニッケル塩であれば、特に限定されるものではなく、例えば、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルから選ばれる1種以上を用いることができる。これらのニッケル塩の中では、塩化ニッケル、硫酸ニッケルあるいはこれらの混合物を用いることが、より好ましい。
(b)ニッケルよりも貴な金属の金属塩
ニッケルよりも貴な金属の金属塩は、ニッケルよりもイオン化傾向が低いことにより、ニッケルを還元析出させる際にニッケルよりも先に還元されるため、ニッケル晶析粉が晶析するための初期核となる核剤として作用することができる。この初期核が粒子成長することで、微細なニッケル晶析粉を生成することができる。
ニッケルよりも貴な金属の金属塩としては、水溶性でニッケルよりもイオン化傾向が低い金属の金属塩であればよく、例えば水溶性の銅塩や、金塩、銀塩、プラチナ塩、パラジウム塩、ロジウム塩、イリジウム塩などの水溶性の貴金属塩が挙げられる。例えば、水溶性の銅塩としては硫酸銅を、水溶性の銀塩としては硝酸銀を、水溶性のパラジウム塩としては塩化パラジウム(II)ナトリウム、塩化パラジウム(II)アンモニウム、硝酸パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)などを用いることができるが、これらには限定されない。
ニッケルよりも貴な金属の金属塩としては、特に上述したパラジウム塩を用いると、粒度分布は幾分広くなるものの、得られるニッケル粉末の粒径をより微細に制御することが可能となるため好ましい。パラジウム塩を用いた場合の、パラジウム塩とニッケルの割合[モルppm](パラジウム塩のモル数/ニッケルのモル数×10)は、湿式ニッケル粉末の目的とする数平均粒径によって適宜選択することができる。例えば、湿式ニッケル粉末の数平均粒径を0.05μm~0.5μmに設定するのであれば、パラジウム塩とニッケルの割合を0.2モルppm~100モルppmの範囲内、好ましくは0.5モルppm~25モルppmの範囲内とすることが好ましい。この割合が0.2モルppm未満だと、製造された湿式ニッケル粉末の数平均粒径が0.5μmを超えてしまう場合がある。一方で、この割合が100モルppmを超えると、高価なパラジウム塩を多く使用することとなり、湿式ニッケル粉末を製造するためのコスト増につながるおそれがある。
(c)還元剤
還元剤としては、ヒドラジン(N、分子量:32.05)を用いる。なお、ヒドラジンには、無水のヒドラジンのほかにヒドラジン水和物である抱水ヒドラジン(N・HO、分子量:50.06)があるが、どちらを用いてもかまわない。ヒドラジンの還元反応は、後述する式(2)に示す通りであるが、特に、アルカリ性で還元力が高いこと、還元反応の副生成物が窒素ガスと水であるために反応による不純物が生じないこと、そもそもの不純物が少ないこと、および入手が容易なこと、という特徴を有しているため、還元剤として好適である。例えば、市販されている工業グレードの60質量%抱水ヒドラジンを、晶析工程に用いることができる。
(d)水酸化アルカリ
ヒドラジンの還元力は、反応液のアルカリ性が強い程大きくなるため(後述する式(2)参照)、晶析工程において、アルカリ性を高めるpH調整剤として水酸化アルカリを用いることができる。水酸化アルカリとしては、特に限定されるものではないが、入手の容易さや価格の面から、アルカリ金属水酸化物を用いることが好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる1種以上を用いることがより好ましい。
水酸化アルカリの配合量は、還元剤としてのヒドラジンの還元力が十分高まるように、反応液のpHが、反応温度において、9.5以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは10.5以上となるように決定するとよい。反応液のpHは、例えば、25℃と70℃程度を比較すると、高温の70℃の方が小さくなる。
(e)アミン化合物
本発明の湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法において、前記反応液は、アミン化合物を含むことができる。アミン化合物は、ヒドラジンの自己分解抑制剤、還元反応促進剤、さらにはニッケル粒子同士の連結抑制剤の作用を有しており、分子内に第1級アミノ基(-NH)または第2級アミノ基(-NH-)を合わせて2個以上含有する化合物である。上記アミン化合物としては、アルキレンアミンまたはアルキレンアミン誘導体の少なくともいずれかを用いることができる。一例としては、分子内のアミノ基の窒素原子が炭素数2の炭素鎖を介して結合した下記式Aの構造を有するアミン化合物を用いることができる。
Figure 0007183504000001
より具体的には、アルキレンアミンとしては、エチレンジアミン(HNCNH)、ジエチレントリアミン(HNCNHCNH)、トリエチレンテトラミン(HN(CNH)NH)、テトラエチレンペンタミン(HN(CNH)NH)、ペンタエチレンヘキサミン(HN(CNH)NH)、プロピレンジアミン(別名称:1,2-ジアミノプロパン、1,2-プロパンジアミン)(CHCH(NH)CHNH)から選ばれる1種以上を用いることができる。また、アルキレンアミン誘導体としては、トリス(2-アミノエチル)アミン(N(CNH)、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(別名称:2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(HNCNHCOH)、N-(2-アミノエチル)プロパノールアミン(別名称:2-(2-アミノエチルアミノ)プロパノール)(HNCNHCOH)、L(または、D、DL)-2,3-ジアミノプロピオン酸(別名称:3-アミノ-L(または、D、DL)-アラニン)(HNCHCH(NH)COOH)、エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(別名称:エチレン-N,N’-ジグリシン)(HOOCCHNHCNHCHCOOH)、N,N’-ジアセチルエチレンジアミン(別名称:N,N’-エチレンビスアセトアミド)(CHCONHCNHCOCH)、1,2-シクロヘキサンジアミン(別名称:1,2-ジアミノシクロヘキサン)(HNC10NH)から選ばれる1種以上を用いることができる。これらのアルキレンアミン、アルキレンアミン誘導体は水溶性であり、中でもエチレンジアミン、ジエチレントリアミンは、ヒドラジンの自己分解抑制作用が比較的強く、入手が容易で安価のため好ましい。
上記アミン化合物の還元反応促進剤としての作用は、反応液中のニッケルイオン(Ni2+)を錯化してニッケル錯イオンを形成する錯化剤としての働きによると考えられる。また、ヒドラジンの自己分解抑制剤や、ニッケル粒子同士の連結抑制剤としての作用については、アミン化合物分子内の第1級アミノ基(-NH)や第2級アミノ基(-NH-)と、ヒドラジンやニッケル晶析粉の表面との相互作用により、発現しているものと推測される。
なお、アミン化合物であるアルキレンアミンまたはアルキレンアミン誘導体が、分子内のアミノ基の窒素原子が炭素数2の炭素鎖を介して結合した上記式Aの構造を有することが好ましい。その構造だと、ヒドラジン分子の自己分解抑制作用が大きくなるからである。一方で、ニッケル晶析粉に強く吸着するアミノ基の窒素原子が炭素数3以上の炭素鎖を介して結合した構造の場合には、炭素鎖が長くなることでアミン化合物分子の炭素鎖部分の運動の自由度(分子の柔軟性)が大きくなると考えられ。その結果として、ニッケル晶析粉へのヒドラジン分子の接触を効果的に妨害できなくなってくるため、ニッケルの活性によりヒドラジン分子の自己分解抑制作用が低下する傾向ものと考えられる。
実際に、分子内のアミノ基の窒素原子が炭素数2の炭素鎖を介して結合したエチレンジアミン(HNCNH)やプロピレンジアミン(別名称:1,2-ジアミノプロパン、1,2-プロパンジアミン)(CHCH(NH)CHNH)と比べると、分子内のアミノ基の窒素原子が炭素数3の炭素鎖を介して結合したトリメチレンジアミン(別名称:1,3-ジアミノプロパン、1,3-プロパンジアミン)(HNCNH)は、ヒドラジンの自己分解抑制作用が劣っていることが確認されている。
ここで、反応液中の上記アミン化合物とニッケルの割合[モル%]((アミン化合物のモル数/ニッケルのモル数)×100)は、0.01モル%~5モル%の範囲、好ましくは0.03モル%~2モル%の範囲がよい。上記割合が0.01モル%未満の場合、上記アミン化合物の量が少なすぎて、ヒドラジンの自己分解抑制剤、還元反応促進剤、またはニッケル粒子同士の連結抑制剤としての各作用を得ることができない場合がある。一方で、上記割合が5モル%を超えると、アミン化合物がニッケル錯イオンを形成する錯化剤としての働きが強くなりすぎる結果、ニッケル晶析粉の粒子の成長に異常をきたす場合があり、ニッケル粉末の粒状性や球状性が失われていびつな形状となったり、ニッケル粒子同士が互いに連結した粗大粒子が多く形成されるなど、ニッケル粉末の特性の劣化が生じるおそれがある。
(f)その他の含有物
晶析工程の反応液中には、上記に加え、分散剤、錯化剤、消泡剤などの各種添加剤を含有させてもよい。例えば、分散剤や錯化剤は、適切なものを適正量用いれば、ニッケル晶析粉の粒状性(球状性)やニッケル晶析粉の粒子表面平滑性を改善することや、粗大粒子を低減することが可能になる場合がある。また、消泡剤も、適切なものを適正量用いれば、晶析反応で生じる窒素ガス(後述の式(2)~式(4)参照)に起因する晶析工程での発泡を抑制することで、例えば反応液が容器からあふれてしまうことを防止することが可能となる。分散剤としては、公知の物質を用いることができ、例えば、アラニン(CHCH(COOH)NH)、グリシン(HNCHCOOH)、トリエタノールアミン(N(COH))、ジエタノールアミン(別名:イミノジエタノール)(NH(COH))などが挙げられる。また、錯化剤としては、公知の物質を用いることができ、ヒドロキシカルボン酸、カルボン酸(少なくとも一つのカルボキシル基を含む有機酸)、ヒドロキシカルボン酸塩やヒドロキシカルボン酸誘導体、カルボン酸塩やカルボン酸誘導体、具体的には、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、蟻酸、酢酸、ピルビン酸、およびそれらの塩や誘導体などが挙げられる。さらに、消泡剤としては、アルカリ性条件下において破泡性に優れたものであれば、特に限定されず、オイル型や溶剤型のシリコーン系またはノンシリコーン系の消泡剤を用いることができる。
(1-1-2.晶析反応の手順(晶析手順))
晶析工程における具体的な晶析手順としては、被還元物である水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の金属塩を含む溶液に、あらかじめ還元剤(ヒドラジン)と水酸化アルカリを添加混合させた溶液を添加混合して反応液を調合する手順(手順1)と、被還元物(水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の金属塩)を含む溶液に還元剤(ヒドラジン)を添加混合させた溶液に、水酸化アルカリを含む溶液を添加混合して反応液を調合する手順(手順2)の2種類が挙げられる。手順1は水酸化アルカリによりアルカリ性が高く還元力を高めた還元剤(ヒドラジン)を被還元物の溶液に添加混合するのに対し、手順2は還元剤(ヒドラジン)を被還元物の溶液に混合させておいてから、水酸化アルカリによりpHを調整して還元力を高めるという点で、手順1と2に違いがある。
ニッケル塩溶液と還元剤溶液の添加混合や、ニッケル塩および還元剤を含有する溶液への水酸化アルカリ溶液の添加混合をする場合には、溶液を撹拌しながら混合する撹拌混合を行うことが好ましい。撹拌混合性が良いと、核発生の場所によるが、不均一性が低下(均一化)し、かつ、前述したような核発生の原料を混合する時間への依存性や水酸化アルカリを混合する時間への依存性が低下する。そのため、ニッケル晶析粉の微細化や狭い粒度分布の粒子を得やすくなる。撹拌混合の方法は、公知の方法を用いればよく、撹拌混合性の制御や設備コストの面から、撹拌羽根を用いることが好ましい。
(1-1-3.晶析反応(還元反応、ヒドラジン自己分解反応))
晶析工程では、反応液中において、水酸化アルカリとニッケルよりも貴な金属の金属塩の共存下でニッケル塩(正確には、ニッケルイオン、またはニッケル錯イオン)をヒドラジンで還元することにより、ニッケル晶析粉を得ている。また、この還元反応と同時に、極微量の特定のアミン化合物の作用でヒドラジンの自己分解を大幅に抑制することができる。
まず、晶析工程における還元反応について説明する。ニッケルイオンが晶析してニッケル(Ni)となる場合の反応は、下記の式(1)に示す2電子反応である。また、ヒドラジン(N)の反応は、下記の式(2)に示す4電子反応である。例えば、上述のように、ニッケル塩として塩化ニッケル(NiCl)、水酸化アルカリとして水酸化ナトリウム(NaOH)を用いた場合には、還元反応全体は下記の式(3)のように、塩化ニッケルと水酸化ナトリウムの中和反応で生じた水酸化ニッケル(Ni(OH))がヒドラジンで還元される反応で表され、化学量論的には(理論値としては)、ニッケル(Ni)1モルに対し、ヒドラジン(N)0.5モルが必要である。
ここで、式(2)のヒドラジンの還元反応から、ヒドラジンはアルカリ性が強い程、その還元力が大きくなることが分かる。上記水酸化アルカリはアルカリ性を高めるpH調整剤として用いており、ヒドラジンの還元反応を促進する働きを担っている。
Figure 0007183504000002
上述の通り、従来の晶析工程では、ニッケル晶析粉の活性な表面が触媒となって、下記の式(4)で示されるヒドラジンの自己分解反応が促進され、還元剤としてのヒドラジンが還元以外に大量に消費される場合があった。そのため、反応開示温度などの晶析条件にもよるが、例えば、ニッケル1モルに対しヒドラジン2モル程度(前述の還元に必要な理論値の4倍程度)が一般的に用いられていた。さらに、ヒドラジンの自己分解では多量のアンモニアが副生して(式(4)参照)、反応液中にアンモニアが高濃度で含有されて含窒素廃液を生じることとなる。このように、高価な薬剤であるヒドラジンの過剰量の使用や、含窒素廃液の処理コストの発生が、湿式法によるニッケル粉末(湿式ニッケル粉末)の製造コストを増加させる要因となっていた。
Figure 0007183504000003
本発明の湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法では、特定のアミン化合物を反応液に加えることで、ヒドラジンの自己分解反応を著しく抑制することができるため、薬剤として高価なヒドラジンの使用量の大幅な削減を実現している。アミン化合物がヒドラジンの自己分解を抑制することができるのは、(I)上記特定のアミン化合物の分子が、反応液中のニッケル晶析粉の表面に吸着し、ニッケル晶析粉の活性表面とヒドラジン分子との接触を妨害しているためであることや、(II)特定のアミン化合物の分子がニッケル晶析粉の表面に作用し、表面の触媒活性を不活性化しているためであること、などが考えられる。
なお、従来の湿式法での晶析工程では、還元反応時間(晶析反応時間)を実用的な範囲にまで短縮するために、酒石酸やクエン酸などのニッケルイオン(Ni2+)と錯イオンを形成してイオン状ニッケル濃度を高める錯化剤を還元反応促進剤として用いるのが一般的である。しかしながら、これら酒石酸やクエン酸などの錯化剤は、上記特定のアミン化合物のようなヒドラジンの自己分解抑制剤の作用は有していない。
一方で、上記特定のアミン化合物は、酒石酸やクエン酸などと同様に錯化剤としても働き、ヒドラジンの自己分解抑制剤と還元反応促進剤の作用を兼ね備える利点を有している。加えて、上記特定のアミン化合物は、晶析中にニッケル粒子同士が連結して生じる粗大粒子を形成しにくくする連結抑制剤としての作用も有している。
(1-1-4.晶析条件(反応開始温度))
晶析工程の晶析条件として、少なくとも、水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、ヒドラジン、水酸化アルカリが調合された時点、すなわち、還元反応が開始する時点の反応液の温度(以降、「反応開始温度」とすることもある)を、40℃~90℃とすることが好ましく、50℃~80℃とすることがより好ましく、60℃~70℃とすることがさらに好ましい。なお、ニッケル塩溶液、還元剤溶液、水酸化アルカリ溶液などの個々の溶液の温度は、それらを混合して得られる反応液の温度(反応開始温度)が上記温度範囲になれば特に制約はなく自由に設定することができる。反応開始温度は、高いほど還元反応は促進され、かつニッケル晶析粉は高結晶化する傾向にあるが、一方で、ヒドラジンの自己分解反応がそれ以上に促進される側面があるため、ヒドラジンの消費量が増加するとともに、反応液の発泡が激しくなる傾向がある。したがって、反応開始温度が高すぎると、ヒドラジンの消費量が大幅に増加したり、多量の発泡で晶析反応を継続できなくなる場合がある。一方で、反応開始温度が低くなり過ぎると、ニッケル晶析粉の結晶性が著しく低下したり、還元反応が遅くなって晶析工程の時間が大幅に延長してニッケル粉末の生産性が低下する傾向がある。以上の理由から、上記温度範囲にすることで、ヒドラジン消費量を抑制しながら、高い生産性を維持しつつ、高性能の湿式ニッケル粉末を安価に製造することができる。
(1-2.第1固液分離工程)
ヒドラジンによる還元反応で反応液中に生成したニッケル晶析粉は、前述の通り、必要に応じて、メルカプト化合物やジスルフィド化合物などの硫黄化合物で硫黄コート処理を施した後、公知の手順を用いて反応液から分離してニッケル粉ケーキとすればよい。具体的な方法として、デンバーろ過器、フィルタープレス、遠心分離機、デカンターなどを用いて反応液中からニッケル晶析粉を固液分離することができる。また、第1固液分離工程前または後のニッケル晶析粉を、デカンテーション等によって純水(導電率:≦1μS/cm)等の高純度の水で十分に洗浄することにより、残存する未反応物や不純物等を除去し、乾燥時の不純物濃縮によるニッケル粉末の固着を防ぐことができる。
(1-3.スラリー化工程)
スラリー化工程は、第1固液分離工程後のニッケル粉ケーキに水溶性有機溶剤を投入してニッケルスラリー(リスラリー化)とし、デカンテーションなどによりニッケル粉ケーキに含有される水分を水溶性有機溶剤で押し出すことで、水分と水溶性有機溶剤を置換する工程である。
ニッケル晶析粉を、水分を含んだ状態のニッケル粉ケーキのままで乾燥すると、水分の高い表面張力(約73mN/m;20℃)に起因してニッケル晶析粉が乾燥凝集を起こして粗大粒子が増大し、さらには、ニッケル粉ケーキがそのハンドリング中に空気と触れてニッケル晶析粉が酸化され水酸化ニッケル含有粗大粒子が形成されやすくなって、粗大粒子の増加だけでなく湿式ニッケル粉末の分散性の低下を招くおそれがある。そこで、スラリー化によってニッケル粉ケーキに含まれる水分を水溶性有機溶剤で希釈し、後工程である第2固液分離工程により水分を含む水溶性有機溶剤をろ別・除去して、主に水溶性有機溶剤を含むニッケル粉ケーキとすることで、ニッケル粉ケーキから水分をほとんど除去することができる。
これにより、後工程として、主に水溶性有機溶剤を含むニッケル粉ケーキを乾燥させる乾燥工程において、ニッケル粉ケーキがほとんど水分を含まないため、水の高い表面張力に起因する乾燥凝集が抑制され、さらには、ニッケル晶析粉が空気と触れて酸化が進んだ場合でも、水酸化ニッケルが、水溶性有機溶剤液中では水酸化ニッケル粒子が複数のニッケル晶析粉を包み込むように成長しないため、水酸化ニッケル含有粗大粒子も抑制することができるため、粗大粒子の増加や湿式ニッケル粉末の分散性の低下を防止することができる。
このとき、水溶性有機溶剤の必要量を抑えるために、ニッケル粉ケーキを予め純水等で洗浄し、固液分離によって一定割合の水分を除去した上で水溶性有機溶剤での置換を行ってもよい。さらに、スラリー化工程を複数回繰り返すことにより、ニッケル粉ケーキを水溶性有機溶剤によって再度スラリー化にすることができる。スラリー化工程を複数回繰り返す場合は、作業は煩雑にはなるものの、スラリー化せずにニッケル粉ケーキに水溶性有機溶剤を通液する処理を行う場合よりも、はるかに少ない水溶性有機溶剤の使用量で効率的に水を水溶性有機溶剤で置換でき、水分除去効率を高くできる。
スラリー化工程に用いる水溶性有機溶剤は、水溶性有機溶剤成分を合計した純度が70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であることが望ましい。純度が70質量%以上であることで、水酸化ニッケル含有粗大粒子や乾燥凝集の抑制を効果的に発揮することができる。水溶性有機溶剤の純度が低くなると、水酸化ニッケル含有粗大粒子や乾燥凝集の抑制効果が不十分となるおそれがある。
また、水溶性有機溶剤は沸点が50℃~120℃、好ましくは50℃~100℃、さらに好ましくは50℃~90℃であることが望ましい。沸点が50℃未満だと揮発性が高過ぎて取扱いが難しくなると同時に揮発引火の面で危険性が増すため好ましくなく、120℃を超えると、後工程である乾燥工程にて水溶性有機溶剤を揮発させることが容易となる。水溶性有機溶剤の沸点が高すぎると、乾燥工程に時間がかかり過ぎるため、乾燥効率が大幅に悪化し、コスト面で不利となる。
水溶性有機溶剤に代えて、水溶性でない有機溶剤を用いると水との置換が困難となるため好ましくない。なお、水と水溶性有機溶剤との共沸混合物をつくる場合は、共沸混合物における水の濃度が30質量%未満、好ましくは20質量%未満、さらに好ましくは10質量%未満のものとすることが望ましい(例えば、水-エタノールの共沸混合物組成での水の濃度は4質量%)。比較的低温で揮発除去が可能な水溶性有機溶剤として、具体的には、水溶性で揮発除去が可能な、アセトン(沸点:56.5℃)や、メタノール(沸点:64.7℃)、エタノール(沸点:78.3℃)、1-プロパノール(別名称:n-プロピルアルコール)(沸点:97.2℃)、および2-プロパノール(別名称:イソプロピルアルコール)(沸点:82.4℃)から選択される1種類以上のアルコール溶液、またはそれらを主成分として含有するアルコール溶液(例えば、各種変性アルコールなど)を用いることができる。これらの中でも、揮発性や安全性(有害性、引火性)を考慮するとアルコール系有機溶剤が好ましく、またコスト面も考慮すると、エタノールを主成分とする変性アルコールが最も好ましい。
(1-4.第2固液分離工程)
スラリー化工程によってニッケル粉ケーキをアルコールでスラリー化したニッケルスラリーは、再度公知の手順を用いて固液分離されて、ニッケル粉ケーキとする(第2固液分離工程)。具体的な方法として、デンバーろ過器、フィルタープレス、遠心分離機、デカンターなどを用いればよい。
(1-5.乾燥工程)
乾燥工程は、第2固液分離工程後のニッケル粉ケーキを乾燥して湿式ニッケル粉末を得る工程である。具体的には、大気乾燥機、熱風乾燥機、不活性ガス雰囲気乾燥機、真空乾燥機などの汎用の乾燥装置を用いて、乾燥温度を30℃~300℃、好ましくは50℃~200℃、さらに好ましくは80℃~150℃として所定時間乾燥することで、ニッケル粉ケーキ中の水分が除去されてニッケル粉末が得られる。なお、不活性ガス雰囲気乾燥機、真空乾燥機などの乾燥装置を用いて、不活性雰囲気、還元性雰囲気、または真空雰囲気中で200℃~300℃程度で乾燥した場合は、単なる乾燥に加え、熱処理を施した湿式ニッケル粉末を得ることが可能である。熱処理を施すことでニッケル粒子表面に形成される酸化被膜中の表面組成(例えば、ニッケルメタル、酸化ニッケル、および水酸化ニッケルの比率)を変えることができる。具体的には、酸化被膜中の酸化ニッケル割合の増加および水酸化ニッケル割合の減少が起きる。加えて、熱処理により結晶成長が進むことから、乾燥温度が高温であるほど結晶子径の大きな湿式ニッケル粉末が得られる。
(1-6.解砕工程)
上記した各工程を経て得られた湿式ニッケル粉末は、水溶性有機溶剤を用いたスラリー化工程によって水酸化ニッケル含有粗大粒子の生成や乾燥凝集が大幅に抑制されるため、粗大粒子(水酸化ニッケル含有粗大粒子や乾燥凝集粒子)の含有割合は少なく、結合強度も弱い。そのため、解砕工程により、湿式ニッケル粉末を解砕することは必須ではないが、晶析手順や晶析条件によっては、晶析中に生じる粒子同士の連結による粗大粒子の含有割合が幾分大きくなって、問題になる場合もあるため、解砕工程を設け、ニッケル粒子が連結した粗大粒子をその連結部で分断して粗大粒子の低減を図ってもよい。解砕工程としては、スパイラルジェット解砕処理、カウンタージェットミル解砕処理などの乾式解砕方法や、高圧流体衝突解砕処理などの湿式解砕方法、その他の汎用の解砕方法を適用することが可能である。
以下、本発明について、実施例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において用いた評価項目およびその方法は、以下のとおりである。
(実施例1)
<湿式ニッケル粉末の製造>
[ニッケル塩およびニッケルよりも貴な金属の金属塩の溶液の調製]
塩化ニッケル六水和物(NiCl・6HO、分子量:237.69)を、101gのNi金属が1Lの純水中に存在するように溶解した水溶液(「101g-Ni/L水溶液」とする)と、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH)2PdCl、分子量:284.31)を、0.11gのPd金属が1Lの純水中に存在するように溶解した水溶液(「0.11g-Pd/L水溶液」とする)を調製した。そして、101g-Ni/L水溶液990mLと0.11g-Pd/L水溶液0.46mLを、純水910mLに溶解して、主成分としてニッケル塩とニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩核剤含有溶液を調製した。ここで、ニッケル塩核剤含有溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し0.5質量ppm(0.3モルppm)とした。
[還元剤溶液の調製]
還元剤として抱水ヒドラジン(N・HO、分子量:50.06)を純水で1.67倍に希釈した市販の工業グレードの60%抱水ヒドラジン(エムジーシー大塚ケミカル株式会社製)を207g秤量し、水酸化アルカリを含まず、主成分としてのヒドラジンを含有する水溶液である還元剤溶液を調製した。
[水酸化アルカリ溶液]
水酸化アルカリとして、水酸化ナトリウム(NaOH、分子量:40.0)を純水に溶解し、主成分として水酸化ナトリウムを382g/Lの濃度で含有する水溶液である水酸化アルカリ溶液を755mL用意した。
[アミン化合物溶液]
アミン化合物として、分子内に第1級アミノ基(-NH)を2個含有するアルキレンアミンであるエチレンジアミン(略称:EDA)(HNCNH、分子量:60.1)1.02gを、純水18mLに溶解して、主成分としてのエチレンジアミンを含有する水溶液であるアミン化合物溶液を用意した。
なお、上記ニッケル塩核剤含有溶液、還元剤溶液、水酸化アルカリ溶液、およびアミン化合物溶液における使用材料には、60%抱水ヒドラジンを除き、いずれも和光純薬工業株式会社製の試薬を用いた。
[晶析工程]
ニッケル塩核剤含有溶液を撹拌羽根付テフロン(登録商標)被覆ステンレス容器内に入れ、液温が85℃になるように撹拌しながら加熱した後、液温27℃の還元剤溶液を、Ni金属と抱水ヒドラジンとのモル比が1:1.46となるように、混合時間10秒で添加混合してニッケル塩・還元剤含有液とした。このニッケル塩・還元剤含有液に液温27℃の水酸化アルカリ溶液を、Ni金属と水酸化ナトリウムとのモル比が1:3.54となるように、混合時間120秒で添加混合し、液温70℃の反応液(塩化ニッケル+パラジウム塩+ヒドラジン+水酸化ナトリウム)を調合し、還元反応(晶析反応)を開始した(反応開始温度70℃)。反応開始後8分後から28分後までの20分間にかけて上記アミン化合物溶液を、Ni金属とエチレンジアミンとのモル比が1:0.01(1.0モル%)となるように、上記反応液に滴下混合し、ヒドラジンの自己分解を抑制しながら還元反応を進めてニッケル晶析粉を反応液中に析出させた。反応開始から60分以内に還元反応は完了し、反応液の上澄み液は透明であることから、反応液中のニッケル成分はすべて金属ニッケルに還元されて、ニッケル晶析粉となったことを確認した。
ニッケル晶析粉を含む反応液はスラリー状であり、このニッケル晶析粉含有スラリーにメルカプト酢酸(チオグリコール酸)(HSCHCOOH、分子量:92.12)の水溶液を加えて、ニッケル晶析粉の表面処理(硫黄コート処理)を施した。
[第1固液分離工程]
表面処理後、導電率が1μS/cmの純水を用い、ニッケル晶析粉含有スラリーをろ過して固液分離し、ろ過後のろ液の導電率が15μS/cm以下になるまでろ過洗浄し、ニッケル粉ケーキを得た。
[スラリー化工程、第2固液分離工程]
前記ニッケル粉ケーキをエタノール(沸点:78.3℃)に浸漬してスラリー化した後、デカンテーションにより前記ニッケル粉ケーキが含有する水とエタノールとの置換を行った。その後、再び固液分離によりアルコール置換処理済みのニッケル粉ケーキを得た。なお、これらの工程でのエタノール使用量は、100mlであった。
[乾燥工程、解砕工程]
前記アルコール置換処理済みニッケル粉ケーキを、100℃の温度に設定した真空乾燥器中で6時間乾燥して湿式ニッケル粉末を得た。その一部は、その後、乾式解砕方式の超小型ジェット粉砕装置(日本ニューマチック株式会社製、JKE-30)を用いた解砕処理(粉砕空気圧力:0.5MPa)を施して解砕処理された湿式ニッケル粉末も得た。
<評価およびその結果>
(数平均粒径)
得られた湿式ニッケル粉末を、走査型電子顕微鏡(SEM、JEOL Ltd.製、JSM-7100F)で観察し、SEM画像を画像処理することにより全体の形状が確認できる100~200個の粒子の面積を測定し、測定した面積から真円換算によりそれぞれの粒子の直径を算出して、さらに算出した直径の平均値を算出し、これを数平均粒径とした。近年の積層セラミックコンデンサの内部電極の薄層化に対応するという観点から、ニッケル粉末の数平均粒径が0.5μm以下であることを設定目標とした。その結果、各実施例と各比較例における数平均粒径は0.17μmであった。
(粗大粒子の含有量)
解砕処理していない湿式ニッケル粉末については、数平均粒径の約4倍である0.7μmを超える粒径を有する粒子を粗大粒子とし、解砕処理された湿式ニッケル粉末については、数平均粒径の約2.5倍である0.4μmを超える粒径を有する粒子を粗大粒子とした。
まず、粗大粒子の評価においては、ニッケル粒子が分散媒中に分散したスラリーを得るために分散工程を行った。具体的には、ニッケル粉末0.03gと、分散媒として0.1質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液100mlと、を250ml容量のガラスビーカー内で撹拌混合した。次に、上記ビーカーを超音波洗浄機の槽内に設置して、超音波(26KHz、300W)を3分間印加して、湿式ニッケル粉末をヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に分散させた。以上の分散工程によりニッケル粒子が分散媒中に分散したスラリーを得た。
次に、図4に概略図を示した吸引ろ過装置100と同じ構成の吸引ろ過装置を用いて、上記スラリーをろ過工程に供した。解砕処理していない湿式ニッケル粉末については、メンブレンフィルター3として、直径90mmで孔径0.7μmの再生セルロース製メンブレンフィルター(富士フイルム社製、MICRO FILTER)を用い、解砕処理された湿式ニッケル粉末については、直径90mmで孔径0.4μmの再生セルロース製メンブレンフィルター(富士フイルム社製、MICRO FILTER)を用いた。メンブレンフィルター3をフィルターフォルダ4上に載置して、フィルターフォルダ4に、スラリー投入容器としての吸引カップ5を取り付けて、さらにフィルターフォルダ4をろ液回収容器6に設置し、減圧ポンプ7を稼働した状態で、吸引カップ5に分散媒10aにニッケル粒子10bが分散したスラリー10を注ぎ込み、吸引ろ過を行った。さらに、スラリーが入っていた250ml容量のビーカーに対して、分散媒として用いた50mlの0.1質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を、その壁面を洗い流すようにして吸引カップ5に注ぎ込み、吸引ろ過を行った。以上のろ過工程により、フィルター孔径よりも大きなサイズの粗大粒子が残渣として付着したフィルターと、分散媒20aとニッケル粒子20bを含むろ液20を得た。
上記残渣を構成するニッケル粒子をフィルター孔径よりも大きなサイズの粗大粒子として高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP法)を用いて算出し、ニッケル粉末中に含まれる粗大粒子の含有量を求めた。具体的には、上記のろ過工程により得られた、残渣が付着したメンブレンフィルターを自然乾燥させた後、王水により煮沸して粗大粒子を溶解させ、その後メンブレンフィルターを除去した王水溶液を試料溶液とした。この試料溶液をICP分光分析装置(アジレント・テクノロジー株式会社製、ICP720)を用いたICP分光分析法に供して、ニッケルの定量を行った。さらに、ニッケルの定量値から、粗大粒子として捕集された残渣のニッケルの総質量を算出して、評価に供した湿式ニッケル粉末(0.03g)に含まれる粗大粒子の含有量を算出した。その結果、評価に供した湿式ニッケル粉末における粗大粒子の含有量は、解砕処理前の0.7μmを超えるサイズで5800質量ppm(0.58質量%)、解砕処理後の0.4μmを超えるサイズで390質量ppm(約0.04質量%)であった。
(水酸化ニッケル含有粗大粒子の評価)
湿式ニッケル粉末中の水酸化ニッケル含有粗大粒子(図2参照)の有無を以下に示す方法で評価した。すなわち、前述した粗大粒子の含有量の測定の過程で得られる、粗大粒子が残渣として付着したメンブレンフィルターについて、倍率5000倍で異なる5視野を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、サイズが0.5μm以上の水酸化ニッケル含有粗大粒子の視野当りの平均個数で評価(1個未満:○、1個以上3個未満:△、3個以上:×)したところ、評価結果は「○」であった。
(実施例2)
乾燥工程において、ニッケル粉ケーキを150℃で6時間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた湿式ニッケル粉末の数平均粒径は0.17μmであり、粗大粒子の含有量は、解砕処理前の0.7μmを超えるサイズで6100質量ppm(0.61質量%)、解砕処理後の0.4μmを超えるサイズで410質量ppm(約0.04質量%)であった。また、水酸化ニッケル含有粗大粒子の評価結果は「○」であった。
(実施例3)
スラリー化工程と第2固液分離工程で、エタノール(沸点:78.3℃)の代わりに2-プロパノール(沸点:82.4℃)を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。得られた湿式ニッケル粉末の数平均粒径は0.17μmであり、粗大粒子の含有量は、解砕処理前の0.7μmを超えるサイズで6300質量ppm(0.63質量%)、解砕処理後の0.4μmを超えるサイズで400質量ppm(0.04質量%)であった。また、水酸化ニッケル含有粗大粒子の評価結果は「○」であった。
(実施例4)
スラリー化工程と第2固液分離工程で、エタノール(沸点:78.3℃)の代わりに変性アルコール(エタノール:85.5質量%、2-プロパノール:13.4質量%、メチルエチルケトン:1.1質量%)(主成分のエタノールの沸点:78.3℃)を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。得られた湿式ニッケル粉末の数平均粒径は0.17μmであり、粗大粒子の含有量は、解砕処理前の0.7μmを超えるサイズで5600質量ppm(0.56質量%)、解砕処理後の0.4μmを超えるサイズで360質量ppm(約0.04質量%)であった。また、水酸化ニッケル含有粗大粒子の評価結果は「○」であった。
(実施例5)
スラリー化工程と第2固液分離工程で、エタノール(沸点:78.3℃)の代わりにアセトン(沸点:56.5℃)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた湿式ニッケル粉末の数平均粒径は0.17μmであり、粗大粒子の含有量は、解砕処理前の0.7μmを超えるサイズで6500質量ppm(0.65質量%)、解砕処理後の0.4μmを超えるサイズで440質量ppm(約0.04質量%)であった。また、水酸化ニッケル含有粗大粒子の評価結果は「○」であった。
(参考例)
湿式ニッケル粉末の製造において、第1固液分離工程までは、実施例1と同様の操作を行い、スラリー化工程以降のスラリー化工程・第2固液分離工程・乾燥工程は実施せず、第1固液分離工程で得られたニッケル粉ケーキを乾燥させず、空気にも触れさせないようにして、そのままの状態でニッケル粉末0.03g分を0.1質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液100mlに分散させて、水酸化ニッケル含有粗大粒子や乾燥凝集が生じていない場合の湿式ニッケル粉末(ニッケル晶析粉)の粗大粒子の含有量を求めた。粗大粒子の含有量は、乾燥も解砕処理も施されていないため、孔径0.7μmのフィルターを用い、0.7μmを超えるサイズで5600質量ppm(0.56質量%)であった。また、数平均粒径は0.17μmであった。
(比較例1)
湿式ニッケル粉末の製造において、スラリー化工程および第2固液分離工程を実施しないことにより、有機溶剤での置換を行わないこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、平均粒径は0.17μmであり、粗大粒子の含有量は、解砕処理前の0.7μmを超えるサイズで98000質量ppm(9.8質量%)、解砕処理後の0.4μmを超えるサイズで2300質量ppm(0.23質量%)であった。また、水酸化ニッケル含有粗大粒子の評価結果は「×」であった。
(比較例2)
湿式ニッケル粉末の製造において、スラリー化工程および第2固液分離工程を実施しないことにより、有機溶剤での置換を行わないこと以外は、実施例2と同様の操作を行った。その結果、平均粒径は0.17μmであり、粗大粒子の含有量は、解砕処理前の0.7μmを超えるサイズで150000質量ppm(15質量%)、解砕処理後の0.4μmを超えるサイズで3200質量ppm(0.32質量%)であった。また、水酸化ニッケル含有粗大粒子の評価結果は「×」であった。
(評価結果)
以上の実施例1~5、比較例1、2、および参考例に示す製造方法により得た湿式ニッケル粉末の粗大粒子の含有量を、解砕処理前の0.7μmを超えるサイズおよび解砕処理後の0.4μmを超えるサイズについて、それぞれ図5、図6のグラフに示す。また、表1に、実施例1~5、比較例1、2、および参考例におけるスラリー化工程の有無、真空乾燥条件、解砕処理前後での粗大粒子の含有量、水酸化ニッケル含有粗粒の評価結果、および得られたニッケル粉末の数平均粒径を示す。
Figure 0007183504000004
実施例1~5、比較例1、2、および参考例のいずれにおいても、同じ条件の晶析工程によりニッケル晶析粉を得ており、平均粒径は同じであった。実施例1~5のようにスラリー化工程および第2固液分離工程を実施して水溶性有機溶剤での置換処理を施すことで、水酸化ニッケル含有粗大粒子の生成やニッケル粒子の乾燥凝集を抑えることが可能であり、解砕処理前の段階については、乾燥工程を実施せず水酸化ニッケル含有粗大粒子や乾燥凝集が生じていない参考例とほぼ同等レベルの粗大粒子の含有量に維持することができた。また、解砕処理後の段階についても、水酸化ニッケル含有粗大粒子や乾燥凝集の抑制により、解砕効率が向上して、粗大粒子の含有量を低減できている。そして、乾燥工程における乾燥条件が同一である実施例1と比較例1、および実施例2と比較例2を対比すると、水溶性有機溶剤での置換処理の効果は極めて顕著であり、スラリー化工程および第2固液分離工程を行うことで、水酸化ニッケル含有粗大粒子や乾燥凝集に起因する粗大粒子は、ほとんど発生しないことを確認することができた。
[まとめ]
本発明に係る湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法は、還元剤としてヒドラジンを用いた湿式法によるニッケル粉末の粗大粒子低減方法であって、湿式法の一工程である乾燥工程前にスラリー化工程および第2固液分離工程による水溶性有機溶剤での置換処理を行うことで、水酸化ニッケル含有粗大粒子の形成を効果的に防止し、かつ、乾燥凝集により形成する粗大粒子の量および結合強度を抑制するため、分級処理などを行わずとも分散性に優れた粗大粒子の少ない湿式ニッケル粉末を得ることができる。そのため、積層セラミックコンデンサの内部電極に好適な高性能な湿式ニッケル粉末を安価に製造することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 ニッケル粒子
2 成長した水酸化ニッケル
3 メンブレンフィルター
4 フィルターフォルダ
5 吸引カップ
6 ろ液回収容器
7 減圧ポンプ
10 スラリー
10a 分散媒
10b ニッケル粒子
20 第1のろ液
20a 分散媒
20b ニッケル粒子
100 吸引ろ過装置

Claims (6)

  1. 水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、ヒドラジンおよび水酸化アルカリと、水とを含む反応液中において、前記ヒドラジンによる還元反応でニッケル晶析粉を得る晶析工程と、
    前記ニッケル晶析粉を前記反応液から固液分離してニッケル粉ケーキを得る第1固液分離工程と、
    前記ニッケル粉ケーキを水溶性有機溶剤でスラリー化してスラリーを得るスラリー化工程と、
    前記スラリーを固液分離してニッケル粉ケーキを得る第2固液分離工程と、
    前記第2固液分離工程後、前記ニッケル粉ケーキを乾燥してニッケル粉末を得る乾燥工程と、
    を含む、湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法。
  2. 前記水溶性有機溶剤は、水溶性有機溶剤成分の純度が70質量%以上である請求項1に記載の湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法。
  3. 前記水溶性有機溶剤は、沸点が50℃~120℃である請求項1または請求項2に記載の湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法。
  4. 前記水溶性有機溶剤は、アセトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、および2-プロパノールのいずれかを含む、請求項1~3のいずれか1に記載の湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法。
  5. 前記水溶性有機溶剤は、アルコールを主成分とする請求項3または4に記載の湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法。
  6. 前記反応液は、アミン化合物を含み、
    前記アミン化合物は、分子内に第1級アミノ基(-NH)または第2級アミノ基(-NH-)を合わせて2個以上含有している、請求項1~5のいずれか1項に記載の湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法。
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