JP7183504B2 - 湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法 - Google Patents
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Description
1-1.晶析工程
1-1-1.晶析工程で用いる薬剤
1-1-2.晶析反応の手順(晶析手順)
1-1-3.晶析反応(還元反応、ヒドラジン自己分解反応)
1-1-4.晶析条件(反応開始温度)
1-2.第1固液分離工程
1-3.スラリー化工程
1-4.第2固液分離工程
1-5.乾燥工程
1-6.解砕工程
まず、本発明の一実施形態に係る湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法について説明する。図3には、本発明の一実施形態に係る湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法における製造工程の一例である模式図を示す。本発明の一実施形態に係る湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法は、晶析工程と、第1固液分離工程と、スラリー化工程と、第2固液分離工程と、乾燥工程とを含む。
晶析工程では、水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の塩、ヒドラジン還元剤および水酸化アルカリと、水とを含む反応液中で、ニッケル塩(正確には、ニッケルイオン、またはニッケル錯イオン)をヒドラジンで還元する。
溶媒としての水は、得られる湿式ニッケル粉末中の不純物量を低減させる観点から、超純水(導電率:≦0.06μS/cm(マイクロジーメンス・パー・センチメートル)、または純水(導電率:≦1μS/cm)という高純度のものがよく、中でも安価で入手が容易な純水を用いることが好ましい。以下、上記した各種薬剤について、それぞれ詳述する。
水溶性ニッケル塩は、水に易溶であるニッケル塩であれば、特に限定されるものではなく、例えば、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルから選ばれる1種以上を用いることができる。これらのニッケル塩の中では、塩化ニッケル、硫酸ニッケルあるいはこれらの混合物を用いることが、より好ましい。
ニッケルよりも貴な金属の金属塩は、ニッケルよりもイオン化傾向が低いことにより、ニッケルを還元析出させる際にニッケルよりも先に還元されるため、ニッケル晶析粉が晶析するための初期核となる核剤として作用することができる。この初期核が粒子成長することで、微細なニッケル晶析粉を生成することができる。
還元剤としては、ヒドラジン(N2H4、分子量:32.05)を用いる。なお、ヒドラジンには、無水のヒドラジンのほかにヒドラジン水和物である抱水ヒドラジン(N2H4・H2O、分子量:50.06)があるが、どちらを用いてもかまわない。ヒドラジンの還元反応は、後述する式(2)に示す通りであるが、特に、アルカリ性で還元力が高いこと、還元反応の副生成物が窒素ガスと水であるために反応による不純物が生じないこと、そもそもの不純物が少ないこと、および入手が容易なこと、という特徴を有しているため、還元剤として好適である。例えば、市販されている工業グレードの60質量%抱水ヒドラジンを、晶析工程に用いることができる。
ヒドラジンの還元力は、反応液のアルカリ性が強い程大きくなるため(後述する式(2)参照)、晶析工程において、アルカリ性を高めるpH調整剤として水酸化アルカリを用いることができる。水酸化アルカリとしては、特に限定されるものではないが、入手の容易さや価格の面から、アルカリ金属水酸化物を用いることが好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる1種以上を用いることがより好ましい。
本発明の湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法において、前記反応液は、アミン化合物を含むことができる。アミン化合物は、ヒドラジンの自己分解抑制剤、還元反応促進剤、さらにはニッケル粒子同士の連結抑制剤の作用を有しており、分子内に第1級アミノ基(-NH2)または第2級アミノ基(-NH-)を合わせて2個以上含有する化合物である。上記アミン化合物としては、アルキレンアミンまたはアルキレンアミン誘導体の少なくともいずれかを用いることができる。一例としては、分子内のアミノ基の窒素原子が炭素数2の炭素鎖を介して結合した下記式Aの構造を有するアミン化合物を用いることができる。
晶析工程の反応液中には、上記に加え、分散剤、錯化剤、消泡剤などの各種添加剤を含有させてもよい。例えば、分散剤や錯化剤は、適切なものを適正量用いれば、ニッケル晶析粉の粒状性(球状性)やニッケル晶析粉の粒子表面平滑性を改善することや、粗大粒子を低減することが可能になる場合がある。また、消泡剤も、適切なものを適正量用いれば、晶析反応で生じる窒素ガス(後述の式(2)~式(4)参照)に起因する晶析工程での発泡を抑制することで、例えば反応液が容器からあふれてしまうことを防止することが可能となる。分散剤としては、公知の物質を用いることができ、例えば、アラニン(CH3CH(COOH)NH2)、グリシン(H2NCH2COOH)、トリエタノールアミン(N(C2H4OH)3)、ジエタノールアミン(別名:イミノジエタノール)(NH(C2H4OH)2)などが挙げられる。また、錯化剤としては、公知の物質を用いることができ、ヒドロキシカルボン酸、カルボン酸(少なくとも一つのカルボキシル基を含む有機酸)、ヒドロキシカルボン酸塩やヒドロキシカルボン酸誘導体、カルボン酸塩やカルボン酸誘導体、具体的には、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、蟻酸、酢酸、ピルビン酸、およびそれらの塩や誘導体などが挙げられる。さらに、消泡剤としては、アルカリ性条件下において破泡性に優れたものであれば、特に限定されず、オイル型や溶剤型のシリコーン系またはノンシリコーン系の消泡剤を用いることができる。
晶析工程における具体的な晶析手順としては、被還元物である水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の金属塩を含む溶液に、あらかじめ還元剤(ヒドラジン)と水酸化アルカリを添加混合させた溶液を添加混合して反応液を調合する手順(手順1)と、被還元物(水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の金属塩)を含む溶液に還元剤(ヒドラジン)を添加混合させた溶液に、水酸化アルカリを含む溶液を添加混合して反応液を調合する手順(手順2)の2種類が挙げられる。手順1は水酸化アルカリによりアルカリ性が高く還元力を高めた還元剤(ヒドラジン)を被還元物の溶液に添加混合するのに対し、手順2は還元剤(ヒドラジン)を被還元物の溶液に混合させておいてから、水酸化アルカリによりpHを調整して還元力を高めるという点で、手順1と2に違いがある。
晶析工程では、反応液中において、水酸化アルカリとニッケルよりも貴な金属の金属塩の共存下でニッケル塩(正確には、ニッケルイオン、またはニッケル錯イオン)をヒドラジンで還元することにより、ニッケル晶析粉を得ている。また、この還元反応と同時に、極微量の特定のアミン化合物の作用でヒドラジンの自己分解を大幅に抑制することができる。
晶析工程の晶析条件として、少なくとも、水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、ヒドラジン、水酸化アルカリが調合された時点、すなわち、還元反応が開始する時点の反応液の温度(以降、「反応開始温度」とすることもある)を、40℃~90℃とすることが好ましく、50℃~80℃とすることがより好ましく、60℃~70℃とすることがさらに好ましい。なお、ニッケル塩溶液、還元剤溶液、水酸化アルカリ溶液などの個々の溶液の温度は、それらを混合して得られる反応液の温度(反応開始温度)が上記温度範囲になれば特に制約はなく自由に設定することができる。反応開始温度は、高いほど還元反応は促進され、かつニッケル晶析粉は高結晶化する傾向にあるが、一方で、ヒドラジンの自己分解反応がそれ以上に促進される側面があるため、ヒドラジンの消費量が増加するとともに、反応液の発泡が激しくなる傾向がある。したがって、反応開始温度が高すぎると、ヒドラジンの消費量が大幅に増加したり、多量の発泡で晶析反応を継続できなくなる場合がある。一方で、反応開始温度が低くなり過ぎると、ニッケル晶析粉の結晶性が著しく低下したり、還元反応が遅くなって晶析工程の時間が大幅に延長してニッケル粉末の生産性が低下する傾向がある。以上の理由から、上記温度範囲にすることで、ヒドラジン消費量を抑制しながら、高い生産性を維持しつつ、高性能の湿式ニッケル粉末を安価に製造することができる。
ヒドラジンによる還元反応で反応液中に生成したニッケル晶析粉は、前述の通り、必要に応じて、メルカプト化合物やジスルフィド化合物などの硫黄化合物で硫黄コート処理を施した後、公知の手順を用いて反応液から分離してニッケル粉ケーキとすればよい。具体的な方法として、デンバーろ過器、フィルタープレス、遠心分離機、デカンターなどを用いて反応液中からニッケル晶析粉を固液分離することができる。また、第1固液分離工程前または後のニッケル晶析粉を、デカンテーション等によって純水(導電率:≦1μS/cm)等の高純度の水で十分に洗浄することにより、残存する未反応物や不純物等を除去し、乾燥時の不純物濃縮によるニッケル粉末の固着を防ぐことができる。
スラリー化工程は、第1固液分離工程後のニッケル粉ケーキに水溶性有機溶剤を投入してニッケルスラリー(リスラリー化)とし、デカンテーションなどによりニッケル粉ケーキに含有される水分を水溶性有機溶剤で押し出すことで、水分と水溶性有機溶剤を置換する工程である。
スラリー化工程によってニッケル粉ケーキをアルコールでスラリー化したニッケルスラリーは、再度公知の手順を用いて固液分離されて、ニッケル粉ケーキとする(第2固液分離工程)。具体的な方法として、デンバーろ過器、フィルタープレス、遠心分離機、デカンターなどを用いればよい。
乾燥工程は、第2固液分離工程後のニッケル粉ケーキを乾燥して湿式ニッケル粉末を得る工程である。具体的には、大気乾燥機、熱風乾燥機、不活性ガス雰囲気乾燥機、真空乾燥機などの汎用の乾燥装置を用いて、乾燥温度を30℃~300℃、好ましくは50℃~200℃、さらに好ましくは80℃~150℃として所定時間乾燥することで、ニッケル粉ケーキ中の水分が除去されてニッケル粉末が得られる。なお、不活性ガス雰囲気乾燥機、真空乾燥機などの乾燥装置を用いて、不活性雰囲気、還元性雰囲気、または真空雰囲気中で200℃~300℃程度で乾燥した場合は、単なる乾燥に加え、熱処理を施した湿式ニッケル粉末を得ることが可能である。熱処理を施すことでニッケル粒子表面に形成される酸化被膜中の表面組成(例えば、ニッケルメタル、酸化ニッケル、および水酸化ニッケルの比率)を変えることができる。具体的には、酸化被膜中の酸化ニッケル割合の増加および水酸化ニッケル割合の減少が起きる。加えて、熱処理により結晶成長が進むことから、乾燥温度が高温であるほど結晶子径の大きな湿式ニッケル粉末が得られる。
上記した各工程を経て得られた湿式ニッケル粉末は、水溶性有機溶剤を用いたスラリー化工程によって水酸化ニッケル含有粗大粒子の生成や乾燥凝集が大幅に抑制されるため、粗大粒子(水酸化ニッケル含有粗大粒子や乾燥凝集粒子)の含有割合は少なく、結合強度も弱い。そのため、解砕工程により、湿式ニッケル粉末を解砕することは必須ではないが、晶析手順や晶析条件によっては、晶析中に生じる粒子同士の連結による粗大粒子の含有割合が幾分大きくなって、問題になる場合もあるため、解砕工程を設け、ニッケル粒子が連結した粗大粒子をその連結部で分断して粗大粒子の低減を図ってもよい。解砕工程としては、スパイラルジェット解砕処理、カウンタージェットミル解砕処理などの乾式解砕方法や、高圧流体衝突解砕処理などの湿式解砕方法、その他の汎用の解砕方法を適用することが可能である。
<湿式ニッケル粉末の製造>
[ニッケル塩およびニッケルよりも貴な金属の金属塩の溶液の調製]
塩化ニッケル六水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)を、101gのNi金属が1Lの純水中に存在するように溶解した水溶液(「101g-Ni/L水溶液」とする)と、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)を、0.11gのPd金属が1Lの純水中に存在するように溶解した水溶液(「0.11g-Pd/L水溶液」とする)を調製した。そして、101g-Ni/L水溶液990mLと0.11g-Pd/L水溶液0.46mLを、純水910mLに溶解して、主成分としてニッケル塩とニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩核剤含有溶液を調製した。ここで、ニッケル塩核剤含有溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し0.5質量ppm(0.3モルppm)とした。
還元剤として抱水ヒドラジン(N2H4・H2O、分子量:50.06)を純水で1.67倍に希釈した市販の工業グレードの60%抱水ヒドラジン(エムジーシー大塚ケミカル株式会社製)を207g秤量し、水酸化アルカリを含まず、主成分としてのヒドラジンを含有する水溶液である還元剤溶液を調製した。
水酸化アルカリとして、水酸化ナトリウム(NaOH、分子量:40.0)を純水に溶解し、主成分として水酸化ナトリウムを382g/Lの濃度で含有する水溶液である水酸化アルカリ溶液を755mL用意した。
アミン化合物として、分子内に第1級アミノ基(-NH2)を2個含有するアルキレンアミンであるエチレンジアミン(略称:EDA)(H2NC2H4NH2、分子量:60.1)1.02gを、純水18mLに溶解して、主成分としてのエチレンジアミンを含有する水溶液であるアミン化合物溶液を用意した。
ニッケル塩核剤含有溶液を撹拌羽根付テフロン(登録商標)被覆ステンレス容器内に入れ、液温が85℃になるように撹拌しながら加熱した後、液温27℃の還元剤溶液を、Ni金属と抱水ヒドラジンとのモル比が1:1.46となるように、混合時間10秒で添加混合してニッケル塩・還元剤含有液とした。このニッケル塩・還元剤含有液に液温27℃の水酸化アルカリ溶液を、Ni金属と水酸化ナトリウムとのモル比が1:3.54となるように、混合時間120秒で添加混合し、液温70℃の反応液(塩化ニッケル+パラジウム塩+ヒドラジン+水酸化ナトリウム)を調合し、還元反応(晶析反応)を開始した(反応開始温度70℃)。反応開始後8分後から28分後までの20分間にかけて上記アミン化合物溶液を、Ni金属とエチレンジアミンとのモル比が1:0.01(1.0モル%)となるように、上記反応液に滴下混合し、ヒドラジンの自己分解を抑制しながら還元反応を進めてニッケル晶析粉を反応液中に析出させた。反応開始から60分以内に還元反応は完了し、反応液の上澄み液は透明であることから、反応液中のニッケル成分はすべて金属ニッケルに還元されて、ニッケル晶析粉となったことを確認した。
表面処理後、導電率が1μS/cmの純水を用い、ニッケル晶析粉含有スラリーをろ過して固液分離し、ろ過後のろ液の導電率が15μS/cm以下になるまでろ過洗浄し、ニッケル粉ケーキを得た。
前記ニッケル粉ケーキをエタノール(沸点:78.3℃)に浸漬してスラリー化した後、デカンテーションにより前記ニッケル粉ケーキが含有する水とエタノールとの置換を行った。その後、再び固液分離によりアルコール置換処理済みのニッケル粉ケーキを得た。なお、これらの工程でのエタノール使用量は、100mlであった。
前記アルコール置換処理済みニッケル粉ケーキを、100℃の温度に設定した真空乾燥器中で6時間乾燥して湿式ニッケル粉末を得た。その一部は、その後、乾式解砕方式の超小型ジェット粉砕装置(日本ニューマチック株式会社製、JKE-30)を用いた解砕処理(粉砕空気圧力:0.5MPa)を施して解砕処理された湿式ニッケル粉末も得た。
(数平均粒径)
得られた湿式ニッケル粉末を、走査型電子顕微鏡(SEM、JEOL Ltd.製、JSM-7100F)で観察し、SEM画像を画像処理することにより全体の形状が確認できる100~200個の粒子の面積を測定し、測定した面積から真円換算によりそれぞれの粒子の直径を算出して、さらに算出した直径の平均値を算出し、これを数平均粒径とした。近年の積層セラミックコンデンサの内部電極の薄層化に対応するという観点から、ニッケル粉末の数平均粒径が0.5μm以下であることを設定目標とした。その結果、各実施例と各比較例における数平均粒径は0.17μmであった。
解砕処理していない湿式ニッケル粉末については、数平均粒径の約4倍である0.7μmを超える粒径を有する粒子を粗大粒子とし、解砕処理された湿式ニッケル粉末については、数平均粒径の約2.5倍である0.4μmを超える粒径を有する粒子を粗大粒子とした。
湿式ニッケル粉末中の水酸化ニッケル含有粗大粒子(図2参照)の有無を以下に示す方法で評価した。すなわち、前述した粗大粒子の含有量の測定の過程で得られる、粗大粒子が残渣として付着したメンブレンフィルターについて、倍率5000倍で異なる5視野を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、サイズが0.5μm以上の水酸化ニッケル含有粗大粒子の視野当りの平均個数で評価(1個未満:○、1個以上3個未満:△、3個以上:×)したところ、評価結果は「○」であった。
乾燥工程において、ニッケル粉ケーキを150℃で6時間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた湿式ニッケル粉末の数平均粒径は0.17μmであり、粗大粒子の含有量は、解砕処理前の0.7μmを超えるサイズで6100質量ppm(0.61質量%)、解砕処理後の0.4μmを超えるサイズで410質量ppm(約0.04質量%)であった。また、水酸化ニッケル含有粗大粒子の評価結果は「○」であった。
スラリー化工程と第2固液分離工程で、エタノール(沸点:78.3℃)の代わりに2-プロパノール(沸点:82.4℃)を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。得られた湿式ニッケル粉末の数平均粒径は0.17μmであり、粗大粒子の含有量は、解砕処理前の0.7μmを超えるサイズで6300質量ppm(0.63質量%)、解砕処理後の0.4μmを超えるサイズで400質量ppm(0.04質量%)であった。また、水酸化ニッケル含有粗大粒子の評価結果は「○」であった。
スラリー化工程と第2固液分離工程で、エタノール(沸点:78.3℃)の代わりに変性アルコール(エタノール:85.5質量%、2-プロパノール:13.4質量%、メチルエチルケトン:1.1質量%)(主成分のエタノールの沸点:78.3℃)を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。得られた湿式ニッケル粉末の数平均粒径は0.17μmであり、粗大粒子の含有量は、解砕処理前の0.7μmを超えるサイズで5600質量ppm(0.56質量%)、解砕処理後の0.4μmを超えるサイズで360質量ppm(約0.04質量%)であった。また、水酸化ニッケル含有粗大粒子の評価結果は「○」であった。
スラリー化工程と第2固液分離工程で、エタノール(沸点:78.3℃)の代わりにアセトン(沸点:56.5℃)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた湿式ニッケル粉末の数平均粒径は0.17μmであり、粗大粒子の含有量は、解砕処理前の0.7μmを超えるサイズで6500質量ppm(0.65質量%)、解砕処理後の0.4μmを超えるサイズで440質量ppm(約0.04質量%)であった。また、水酸化ニッケル含有粗大粒子の評価結果は「○」であった。
湿式ニッケル粉末の製造において、第1固液分離工程までは、実施例1と同様の操作を行い、スラリー化工程以降のスラリー化工程・第2固液分離工程・乾燥工程は実施せず、第1固液分離工程で得られたニッケル粉ケーキを乾燥させず、空気にも触れさせないようにして、そのままの状態でニッケル粉末0.03g分を0.1質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液100mlに分散させて、水酸化ニッケル含有粗大粒子や乾燥凝集が生じていない場合の湿式ニッケル粉末(ニッケル晶析粉)の粗大粒子の含有量を求めた。粗大粒子の含有量は、乾燥も解砕処理も施されていないため、孔径0.7μmのフィルターを用い、0.7μmを超えるサイズで5600質量ppm(0.56質量%)であった。また、数平均粒径は0.17μmであった。
湿式ニッケル粉末の製造において、スラリー化工程および第2固液分離工程を実施しないことにより、有機溶剤での置換を行わないこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、平均粒径は0.17μmであり、粗大粒子の含有量は、解砕処理前の0.7μmを超えるサイズで98000質量ppm(9.8質量%)、解砕処理後の0.4μmを超えるサイズで2300質量ppm(0.23質量%)であった。また、水酸化ニッケル含有粗大粒子の評価結果は「×」であった。
湿式ニッケル粉末の製造において、スラリー化工程および第2固液分離工程を実施しないことにより、有機溶剤での置換を行わないこと以外は、実施例2と同様の操作を行った。その結果、平均粒径は0.17μmであり、粗大粒子の含有量は、解砕処理前の0.7μmを超えるサイズで150000質量ppm(15質量%)、解砕処理後の0.4μmを超えるサイズで3200質量ppm(0.32質量%)であった。また、水酸化ニッケル含有粗大粒子の評価結果は「×」であった。
以上の実施例1~5、比較例1、2、および参考例に示す製造方法により得た湿式ニッケル粉末の粗大粒子の含有量を、解砕処理前の0.7μmを超えるサイズおよび解砕処理後の0.4μmを超えるサイズについて、それぞれ図5、図6のグラフに示す。また、表1に、実施例1~5、比較例1、2、および参考例におけるスラリー化工程の有無、真空乾燥条件、解砕処理前後での粗大粒子の含有量、水酸化ニッケル含有粗粒の評価結果、および得られたニッケル粉末の数平均粒径を示す。
本発明に係る湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法は、還元剤としてヒドラジンを用いた湿式法によるニッケル粉末の粗大粒子低減方法であって、湿式法の一工程である乾燥工程前にスラリー化工程および第2固液分離工程による水溶性有機溶剤での置換処理を行うことで、水酸化ニッケル含有粗大粒子の形成を効果的に防止し、かつ、乾燥凝集により形成する粗大粒子の量および結合強度を抑制するため、分級処理などを行わずとも分散性に優れた粗大粒子の少ない湿式ニッケル粉末を得ることができる。そのため、積層セラミックコンデンサの内部電極に好適な高性能な湿式ニッケル粉末を安価に製造することができる。
2 成長した水酸化ニッケル
3 メンブレンフィルター
4 フィルターフォルダ
5 吸引カップ
6 ろ液回収容器
7 減圧ポンプ
10 スラリー
10a 分散媒
10b ニッケル粒子
20 第1のろ液
20a 分散媒
20b ニッケル粒子
100 吸引ろ過装置
Claims (6)
- 水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、ヒドラジンおよび水酸化アルカリと、水とを含む反応液中において、前記ヒドラジンによる還元反応でニッケル晶析粉を得る晶析工程と、
前記ニッケル晶析粉を前記反応液から固液分離してニッケル粉ケーキを得る第1固液分離工程と、
前記ニッケル粉ケーキを水溶性有機溶剤でスラリー化してスラリーを得るスラリー化工程と、
前記スラリーを固液分離してニッケル粉ケーキを得る第2固液分離工程と、
前記第2固液分離工程後、前記ニッケル粉ケーキを乾燥してニッケル粉末を得る乾燥工程と、
を含む、湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法。 - 前記水溶性有機溶剤は、水溶性有機溶剤成分の純度が70質量%以上である請求項1に記載の湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法。
- 前記水溶性有機溶剤は、沸点が50℃~120℃である請求項1または請求項2に記載の湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法。
- 前記水溶性有機溶剤は、アセトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、および2-プロパノールのいずれかを含む、請求項1~3のいずれか1に記載の湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法。
- 前記水溶性有機溶剤は、アルコールを主成分とする請求項3または4に記載の湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法。
- 前記反応液は、アミン化合物を含み、
前記アミン化合物は、分子内に第1級アミノ基(-NH2)または第2級アミノ基(-NH-)を合わせて2個以上含有している、請求項1~5のいずれか1項に記載の湿式ニッケル粉末の粗大粒子低減方法。
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