JP2017150074A - ニッケル粉末の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
1.ニッケル粉末の製造方法
1−1.晶析工程
1−1−1.晶析工程で用いる薬剤
1−1−2.晶析反応の手順(晶析手順)
1−1−3.晶析反応(還元反応、ヒドラジン自己分解反応)
1−1−4.晶析条件(反応開始温度)
1−1−5.ニッケル晶析粉の回収
1−2.解砕工程(後処理工程)
2.ニッケル粉末
まず、本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法について説明する。図1には、本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法における製造工程の一例を示す模式図を示す。本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法は、水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、還元剤としてのヒドラジン、pH調整剤としての水酸化アルカリと水を含む反応液中において、ヒドラジンによる還元反応でニッケル晶析粉を得る晶析工程を主体とし、必要に応じて行う解砕工程を後処理工程として付加したものである。ここで、本発明に係るニッケル粉末の製造方法では、上記晶析工程での反応液中に、分子内にスルフィド基(−S−)を1個以上含有するスルフィド化合物をあらかじめ配合し、ニッケル晶析粉の微細化や球状化を促進しながら、晶析中のニッケル粒子同士の合体による粗大粒子(連結粒子)の形成を抑制していることを特徴としている。
晶析工程では、あらかじめスルフィド化合物が配合された、少なくとも水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の塩、還元剤、および水酸化アルカリと水とを混合した反応液中でニッケル塩(正確には、ニッケルイオン、またはニッケル錯イオン)をヒドラジンで還元すると同時に、極微量の特定のスルフィド化合物の作用で核発生やより等方的な核成長を大幅に促進したり、粗大粒子(連結粒子)の形成を抑制することで、例えば、平均粒径0.02μm〜0.15μmまで微細化され、球状性が改善されて充填性が向上したニッケル晶析粉を得ている。
本発明の晶析工程では、ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、還元剤、水酸化アルカリ、スルフィド化合物などの各種薬剤と水を含む反応液が用いられている。溶媒としての水は、得られるニッケル粉末中の不純物量を低減させる観点から、超純水(導電率:≦0.06 μS/cm(マイクロジーメンス・パー・センチメートル)、純水(導電率:≦1μS/cm)という高純度のものがよく、中でも安価で入手が容易な純水を用いることが好ましい。以下、上記各種薬剤について、それぞれ詳述する。
本発明に用いるニッケル塩は、水に易溶であるニッケル塩であれば、特に限定されるものではなく、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルから選ばれる1種以上を用いることができる。これらのニッケル塩の中では、塩化ニッケル、硫酸ニッケルあるいはこれらの混合物がより好ましい。
ニッケルよりも貴な金属をニッケル塩溶液に含有させることで、ニッケルを還元析出させる際に、ニッケルよりも貴な金属が先に還元されて初期核となる核剤として作用しており、核発生促進剤である特定のスルフィド化合物の効果で、この初期核が多く生じ、その後に粒子成長することで微細なニッケル晶析粉(ニッケル粉末)を作製することができる。
本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法では、還元剤としてヒドラジン(N2H4、分子量:32.05)を用いる。なお、ヒドラジンには、無水のヒドラジンの他にヒドラジン水和物である抱水ヒドラジン(N2H4・H2O、分子量:50.06)があるが、どちらを用いてもかまわない。ヒドラジンは、その還元反応は後述する式(2)に示す通りであるが、(特にアルカリ性で)還元力が高いこと、還元反応の副生成物が反応液中に生じないこと(窒素ガスと水)、不純物が少ないこと、および入手が容易なこと、という特徴を有しているため還元剤に好適であり、例えば、市販されている工業グレードの60質量%抱水ヒドラジンを用いることができる。
ヒドラジンの還元力は、反応液のアルカリ性が強い程大きくなるため(後述する式(2)参照)、本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法では、水酸化アルカリをアルカリ性を高めるpH調整剤として用いる。水酸化アルカリは特に限定されるものではないが、入手の容易さや価格の面から、アルカリ金属水酸化物を用いることが好ましく、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる1種以上とすることがより好ましい。
本発明のスルフィド化合物は、前述したように核発生促進剤、ニッケル粒子同士の連結抑制剤、ヒドラジンの自己分解抑制剤の作用を有しており、分子内にスルフィド基(−S−)を1個以上含有する化合物である。
晶析工程の反応液中には、必要に応じて、錯化剤(または錯化剤水溶液)をニッケル塩溶液、還元剤溶液、水酸化アルカリ溶液の少なくともいずれかに少量配合してもよいし、晶析時に添加や滴下で投入することもできる。錯化剤は、適切なものを適正量用いれば、還元反応促進剤として働いて晶析時間の制御が可能なったり、ニッケル晶析粉の粒状性(球状性)や粒子表面平滑性を改善できたり、粗大粒子低減が可能になる場合がある。
晶析工程の反応液中には、本発明のスルフィド化合物による核発生促進剤、ニッケル粒子同士の連結抑制剤、ヒドラジンの自己分解抑制剤の各作用を阻害せず、薬剤コスト増が問題とならない範囲内であれば、上述のニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、還元剤(ヒドラジン)、水酸化アルカリ、スルフィド化合物に加え、分散剤、消泡剤などの各種添加剤を少量含有させてもよい。分散剤は、適切なものを適正量用いれば、ニッケル晶析粉の粒状性(球状性)や粒子表面平滑性を改善できたり、粗大粒子低減が可能になる場合がある。また、消泡剤も、適切なものを適正量用いれば、晶析反応で生じる窒素ガス(後述の式(2)〜式(4)参照)に起因する晶析工程での発泡を抑制することが可能となる。前述の錯化剤と分散剤の境界線は曖昧であるが、分散剤としては、公知の物質を用いることができ、例えば、アラニン(CH3CH(COOH)NH2)、グリシン(H2NCH2COOH)、トリエタノールアミン(N(C2H4OH)3)、ジエタノールアミン(別名:イミノジエタノール)(NH(C2H4OH)2)などが挙げられる。
図2及び図3は、本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法での晶析工程における晶析手順を説明するための図であって、晶析手順は以下の第1の実施形態、第2の実施形態に大別される。
晶析工程では、反応液中において、水酸化アルカリとニッケルよりも貴な金属の金属塩の共存下でニッケル塩(正確には、ニッケルイオン、またはニッケル錯イオン)をヒドラジンで還元し、初期核を発生させると同時に、極微量の特定のスルフィド化合物の作用で核発生を促進させ、次いで粒成長させることで、貴金属化合物を主成分とする高価な核剤を多量に用いずとも、例えば、平均粒径0.02μm〜0.15μmの微細で、かつ連結粒子の少ないニッケル晶析粉を得ることができる。また、上記微細化を行わない場合(上記高価な核剤を少量用いた場合)においても、球状性が改善し、かつ連結粒子が少なくなって充填性が向上したニッケル晶析粉を得ることが可能となる。
N2H4→N2↑+4H++4e− (4電子反応) ・・・(2)
2NiCl2+N2H4+4NaOH→2Ni(OH)2+N2H4+4NaCl
→2Ni↓+N2↑+4NaCl+4H2O
・・・(3)
晶析工程の晶析条件として、少なくとも、ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の塩、ヒドラジン、水酸化アルカリ、スルフィド化合物、必要に応じてアルキレンアミンなどの錯化剤を含む反応液が調合された時点、すなわち、還元反応が開始する時点の反応液の温度(反応開始温度)が、40℃〜90℃とすることが好ましく、50℃〜80℃とすることがより好ましく、60℃〜70℃とすることがさらに好ましい。なお、ニッケル塩溶液、還元剤溶液、水酸化アルカリ溶液などの個々の溶液の温度は、それらを混合して得られる反応液の温度(反応開始温度)が上記温度範囲になれば特に制約はなく自由に設定することができる。反応開始温度は、高いほど還元反応は促進され、かつニッケル晶析粉は高結晶化する傾向にあるが、一方で、ヒドラジンの自己分解反応がそれ以上に促進される側面があるため、ヒドラジンの消費量が増加するとともに、反応液の発泡が激しくなる傾向がある。したがって、反応開始温度が高すぎると、ヒドラジンの消費量が大幅に増加したり、多量の発泡で晶析反応を継続できなくなる場合がある。一方で、反応開始温度が低くなり過ぎると、ニッケル晶析粉の結晶性が著しく低下したり、還元反応が遅くなって晶析工程の時間が大幅に延長して生産性が低下する傾向がある。以上の理由から、上記温度範囲にすることで、ヒドラジン消費量を抑制しながら、高い生産性を維持しつつ、高性能のニッケル晶析粉を安価に製造することができる。
ヒドラジンによる還元反応で反応液中に生成したニッケル晶析粉は、前述の通り、必要に応じて、メルカプト化合物やジスルフィド化合物などの硫黄化合物で硫黄コート処理を施こした後、公知の手順を用いて反応液から分離すればよい。具体的な方法として、デンバーろ過器、フィルタープレス、遠心分離機、デカンターなどを用いて反応液中からニッケル晶析粉を固液分離すると共に、純水(導電率:≦1μS/cm)等の高純度の水で十分に洗浄し、大気乾燥機、熱風乾燥機、不活性ガス雰囲気乾燥機、真空乾燥機などの汎用の乾燥装置を用いて50〜300℃、好ましくは、80〜150℃で乾燥し、ニッケル晶析粉(ニッケル粉末)を得ることができる。なお、不活性ガス雰囲気乾燥機、真空乾燥機などの乾燥装置を用いて、不活性雰囲気、還元性雰囲気、真空雰囲気中で200℃〜300℃程度で乾燥した場合は、単なる乾燥に加え、熱処理を施したニッケル晶析粉(ニッケル粉末)を得ることが可能である。
晶析工程で得られたニッケル晶析粉(ニッケル粉末)は、前述の通り、スルフィド化合物や(錯化剤として少量用いた場合は)アルキレンアミンやアルキレンアミン誘導体が晶析中においてニッケル粒子の連結抑制剤として作用するため、ニッケル粒子が還元析出の過程で互いに連結して形成される粗大粒子の含有割合はそもそもそれ程大きくない。ただし、晶析手順や晶析条件によっては、粗大粒子の含有割合が幾分大きくなって問題になる場合もあるため、図1に示すように、晶析工程に引き続いて解砕工程を設け、ニッケル粒子が連結した粗大粒子をその連結部で分断して粗大粒子の低減を図ることが好ましい。解砕処理としては、スパイラルジェット解砕処理、カウンタージェットミル解砕処理などの乾式解砕方法や、高圧流体衝突解砕処理などの湿式解砕方法、その他の汎用の解砕方法を適用することが可能である。
本発明のニッケル粉末の製造方法で得られるニッケル粉末は、還元剤としてヒドラジンを用い、かつ特定のスルフィド化合物を適用した水溶液系の湿式法により得られ、安価で、高性能で、かつ微細であって充填性に優れ、積層セラミックコンデンサの内部電極の一層の薄層化に好適である。ニッケル粉末の特性としては、以下の、平均粒径、不純物含有量(塩素含有量、アルカリ金属含有量)、硫黄含有量、結晶子径、粗大粒子の含有量、をそれぞれ求めて評価している。
近年の積層セラミックコンデンサの内部電極の薄層化に対応するという観点からは、ニッケル粉末の平均粒径は0.02μm以上0.15μm以下が好ましいが、積層セラミックコンデンサは多品種であり、平均粒径0.15μm超〜0.4μm未満程度のニッケル粉末もまだ広く用いられている。本発明の平均粒径は、ニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)から求めた数平均の粒径である。
湿式法によるニッケル粉末には、薬剤起因の不純物である塩素やアルカリ金属が含有される。これらの不純物は、積層セラミックコンデンサの製造時において内部電極の欠陥発生の原因となる可能性があるため、可能な限り低減することが好ましい。具体的には、塩素、アルカリ金属ともに、0.01質量%以下であることが好ましい。
積層セラミックコンデンサの内部電極に適用されるニッケル粉末は、硫黄を含有していることが好ましい。ニッケル粉末表面は、内部電極ペーストに含まれるエチルセルロースなどのバインダ樹脂の熱分解を促進する作用があり、積層セラミックコンデンサ製造時の脱バインダ処理にて、低温からバインダ樹脂が分解されて分解ガスが多量に発生しクラックが発生することがある。このバインダ樹脂の熱分解を促進する作用は、ニッケル粉末の表面に硫黄を付着させることで大幅に抑制されることが知られている。硫黄含有量は、上記の目的を達成するためには、1質量%以下がよく、これを超えると硫黄に起因した内部電極の欠陥等が生じるため好ましいとはいえない。
結晶子径は、結晶化の程度を示す指標であり、大きいほど結晶性が高いことを表す。前述の通り、気相法によるニッケル粉末は、1000℃程度以上の高温プロセスを経るため、平均粒径にもよるが、例えば平均粒径0.2μm以上であれば、その結晶子径は80nm以上と結晶性に優れている。湿式法によるニッケル粉末も、その結晶子径は大きい方が好ましく、平均粒径0.2μm以上であれば、25nm以上、好ましくは30nm以上が望ましい。同様に、平均粒径0.1μm以上0.2μm未満であれば、18nm以上、好ましくは23nm以上、平均粒径0.02μm以上0.1μm未満であれば、10nm以上、好ましくは15nm以上が望ましい。結晶子径の測定方法には幾つかの手法があるが、本発明ではX線回折測定を行いScherrer法により求めている。Scherrer法では、結晶歪の影響を強く受けるため、歪が多く生じる解砕処理工程後のニッケル粉末ではなくて、歪が少ないニッケル晶析粉を測定対象とし、その測定値を結晶子径としている。
本発明の粗大粒子の含有量は、平均粒径が0.1μm以上のニッケル粉末については、走査電子顕微鏡写真(SEM像)(倍率10000倍)を20視野で撮影し、その20視野のSEM像において、主にニッケル粒子が連結して形成された粒径0.5μm以上の粗大粒子の含有量(%)、すなわち、粗大粒子の個数/全粒子の個数×100、を計測して求めている。また、平均粒径が0.1μm未満のニッケル粉末については、走査電子顕微鏡写真(SEM像)(倍率20000倍)を20視野で撮影し、その20視野のSEM像において、主にニッケル粒子が連結して形成された粒径0.3μm以上の粗大粒子の含有量(%)、すなわち、粗大粒子の個数/全粒子の個数×100、を計測して求めている。上記粒径0.5μm以上、あるいは、粒径0.3μm以上の粗大粒子の含有量は、積層セラミックコンデンサの内部電極の薄層化に対応するという観点からすると、1%以下であることが好ましい。
圧粉体密度は、ニッケル粉末の充填性を示す指標であり、大きいほど高充填性(高密度化性能)であることを表す。ニッケル粉末を約0.3g秤量して内径5mmの円柱状穴を有する金型内に充填させ、プレス機で100MPa(メガパスカル)となるように荷重をかけて、直径5mm、高さ3mm〜4mmのペレットに成形した後、そのペレットの質量と室温での厚み(高さ)を正確に求めて、算出した値である。
[ニッケル塩溶液の調製]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405g、スルフィド化合物として分子内にスルフィド基(−S−)を1個含有するL−メチオニン(CH3SC2H4CH(NH2)COOH、分子量:149.21)2.542g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)1.60mgを、純水1880mLに溶解して、主成分としてニッケル塩と、スルフィド化合物と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩溶液を調製した。ここで、ニッケル塩溶液において、スルフィド化合物であるL−メチオニンはニッケルに対し、モル比で0.01(1.0モル%)と微量で、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し6.0質量ppm(3.3モルppm)である。
還元剤として抱水ヒドラジン(N2H4・H2O、分子量:50.06)を純水で1.67倍に希釈した市販の工業グレードの60%抱水ヒドラジン(エムジーシー大塚ケミカル株式会社製)を276g秤量し、水酸化アルカリを含まず、主成分としてのヒドラジンを含有する水溶液である還元剤溶液を調製した。還元剤溶液に含まれるヒドラジンのニッケルに対するモル比は1.94であった。
水酸化アルカリとして、水酸化ナトリウム(NaOH、分子量:40.0)230gを、純水560mLに溶解して、主成分としての水酸化ナトリウムを含有する水溶液である水酸化アルカリ溶液を用意した。水酸化アルカリ溶液に含まれる水酸化ナトリウムのニッケルに対するモル比は5.75であった。
錯化剤として、分子内に第1級アミノ基(−NH2)を2個含有するアルキレンアミンであって、還元反応促進剤および自己分解抑制剤の作用を有する、エチレンジアミン(略称:EDA)(H2NC2H4NH2、分子量:60.1)1.024gを、純水18mLに溶解して、主成分としてのエチレンジアミンを含有する水溶液であるアミン化合物溶液を用意した。アミン化合物溶液に含まれるエチレンジアミンはニッケルに対し、モル比で0.01(1.0モル%)と微量であった。
上記各薬剤を用い、図3に示す晶析手順で晶析反応を行い、ニッケル晶析粉を得た。すなわち、塩化ニッケル、スルフィド化合物、およびパラジウム塩を純水に溶解したニッケル塩溶液を撹拌羽根付テフロン被覆ステンレス容器内に入れ液温75℃になるように撹拌しながら加熱した後、液温25℃でヒドラジンと水を含む上記還元剤溶液を混合時間20秒で添加混合してニッケル塩・還元剤含有液とした。このニッケル塩・還元剤含有液に液温25℃で水酸化アルカリと水を含む上記水酸化アルカリ溶液を混合時間80秒で添加混合し、液温63℃の反応液(塩化ニッケル+パラジウム塩+ヒドラジン+水酸化ナトリウム+スルフィド化合物)を調合し、還元反応(晶析反応)を開始した(反応開始温度63℃)。反応液の色調は、前述の式(3)で示されるように、反応液調合直後は水酸化ニッケル(Ni(OH)2)の黄緑色であったが、反応開始(反応液調合)から2分程度すると、核剤(パラジウム塩)の働きによる核発生に伴い反応液が変色(黄緑色→暗灰色)した。反応液が黒色に変化した反応開始後3分後から18分後までの15分間にかけて上記アミン化合物溶液を上記反応液に滴下混合し、ヒドラジンの自己分解を抑制しながら還元反応を進めてニッケル晶析粉を反応液中に析出させた。反応開始から30分以内には、式(3)の還元反応は完了し、反応液の上澄み液は透明で、反応液中のニッケル成分はすべて金属ニッケルに還元されていることを確認した。
図1に示すように、晶析工程に引き続いて解砕工程を実施し、ニッケル粉末中の主にニッケル粒子が連結して形成された粗大粒子の低減を図った。具体的には、晶析工程で得られた上記ニッケル晶析粉(ニッケル粉末)に、乾式解砕方法であるスパイラルジェット解砕処理を施し、湿式法の晶析反応に微量のスルフィド化合物(L−メチオニン)が適用された、実施例1に係るニッケル粉末を得た。
[ニッケル塩溶液の調製]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405g、スルフィド化合物として分子内にスルフィド基(−S−)を1個含有するL−メチオニン(CH3SC2H4CH(NH2)COOH、分子量:149.21)2.542g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)5.34mgを、純水1880mLに溶解して、主成分としてニッケル塩と、スルフィド化合物と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩溶液を調製した。ここで、ニッケル塩溶液において、スルフィド化合物であるL−メチオニンはニッケルに対し、モル比で0.01(1.0モル%)と微量で、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し20.0質量ppm(11.0モルppm)である。
上記ニッケル塩溶液を用いた以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。
[ニッケル塩溶液の調製]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405g、スルフィド化合物として分子内にスルフィド基(−S−)を1個含有するL−メチオニン(CH3SC2H4CH(NH2)COOH、分子量:149.21)2.542g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)13.36mgを、純水1880mLに溶解して、主成分としてニッケル塩と、スルフィド化合物と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩溶液を調製した。ここで、ニッケル塩溶液において、スルフィド化合物であるL−メチオニンはニッケルに対し、モル比で0.01(1.0モル%)と微量で、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し50.0質量ppm(27.6モルppm)である。
上記ニッケル塩溶液を用いた以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。
[ニッケル塩溶液の調製]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405g、スルフィド化合物として分子内にスルフィド基(−S−)を1個含有するL−メチオニン(CH3SC2H4CH(NH2)COOH、分子量:149.21)0.254g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)1.60mgを、純水1880mLに溶解して、主成分としてニッケル塩と、スルフィド化合物と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩溶液を調製した。ここで、ニッケル塩溶液において、スルフィド化合物であるL−メチオニンはニッケルに対し、モル比で0.001(0.1モル%)と微量で、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し6.0質量ppm(3.3モルppm)である。
上記ニッケル塩溶液を用い、反応開始から45分以内に式(3)の還元反応を完了させた以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。
[ニッケル塩溶液の調製]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405g、スルフィド化合物として分子内にスルフィド基(−S−)を1個含有するL−メチオニン(CH3SC2H4CH(NH2)COOH、分子量:149.21)2.542g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)0.134mgを、純水1880mLに溶解して、主成分としてニッケル塩と、スルフィド化合物と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩溶液を調製した。ここで、ニッケル塩溶液において、スルフィド化合物であるL−メチオニンはニッケルに対し、モル比で0.01(1.0モル%)と微量で、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し0.50質量ppm(0.28モルppm)である。
上記ニッケル塩溶液を用い、錯化剤溶液の滴下混合のタイミングを下記の通り行った以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。すなわち、晶析反応では、反応液の色調は、反応液調合直後は水酸化ニッケル(Ni(OH)2)の黄緑色であったが、反応開始(反応液調合)から数分すると、核剤(パラジウム塩)の働きによる核発生に伴い反応液が変色(黄緑色→灰色)した。反応液が暗灰色に変化した反応開始後8分後から18分後までの10分間にかけて錯化剤溶液を反応液に滴下混合し、ヒドラジンの自己分解を抑制しながら還元反応を進めてニッケル晶析粉を反応液中に析出させた。反応開始から90分以内には、式(3)の還元反応は完了し、反応液の上澄み液は透明で、反応液中のニッケル成分はすべて金属ニッケルに還元されていることを確認した。
[ニッケル塩溶液の調製]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405g、スルフィド化合物として分子内にスルフィド基(−S−)を1個含有するチオモルホリン(C4H9SN、分子量:103.18)0.176g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)1.60mgを、純水1880mLに溶解して、主成分としてニッケル塩と、スルフィド化合物と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩溶液を調製した。ここで、ニッケル塩溶液において、スルフィド化合物であるチオモルホリンはニッケルに対し、モル比で0.001(0.1モル%)と微量で、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し6.0質量ppm(3.3モルppm)である。
上記ニッケル塩溶液を用い、反応開始から45分以内に式(3)の還元反応を完了させた以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。
比較例1では、実施例1において、晶析工程でスルフィド化合物を用いなかった。すなわち、以下の通りである。
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)1.60mgを、純水1880mLに溶解して、主成分としてニッケル塩と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩溶液を調製した。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し6.0質量ppm(3.3モルppm)である。
上記ニッケル塩溶液を用い、反応開始から90分以内に式(3)の還元反応を完了させた以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。
比較例2では、実施例2において、晶析工程でスルフィド化合物を用いなかった。すなわち、以下の通りである。
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)5.34mgを、純水1880mLに溶解して、主成分としてニッケル塩と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩溶液を調製した。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し20.0質量ppm(11.0モルppm)である。
上記ニッケル塩溶液を用い、反応開始から90分以内に式(3)の還元反応を完了させた以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。
比較例3では、実施例3における核剤(貴な金属の金属塩)の配合量を2倍に増量し、かつ、晶析工程でスルフィド化合物を用いなかった。すなわち、以下の通りである。
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)26.72mgを、純水1880mLに溶解して、主成分としてニッケル塩と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩溶液を調製した。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し100.0質量ppm(55.2モルppm)である。
上記ニッケル塩溶液を用い、反応開始から45分以内に式(3)の還元反応を完了させた以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。
[ニッケル塩溶液の調製]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)2.14mg(ミリグラム)、還元反応促進剤(錯化剤)としての酒石酸(HOOC)CH(OH)CH(OH)(COOH)、分子量:150.09)2.56gを、純水1780mLに溶解して、主成分としてのニッケル塩と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤と、還元反応促進剤(錯化剤)としての酒石酸と、を含有する水溶液であるニッケル塩溶液を調製した。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し8.0質量ppm(4.4モルppm)である。また、酒石酸はニッケルに対し、モル比で0.01(1.0モル%)である。
還元剤として抱水ヒドラジン(N2H4・H2O、分子量:50.06)を純水で1.67倍に希釈した市販の工業グレードの60%抱水ヒドラジン(エムジーシー大塚ケミカル株式会社製)を355g秤量し、水酸化アルカリを含まず、主成分としてのヒドラジンを含有する水溶液である還元剤溶液を調製した。還元剤溶液に含まれるヒドラジンのニッケルに対するモル比は2.50であった。
上記各薬剤(ニッケル塩溶液、還元剤溶液)を用い、アミン化合物溶液の添加混合(滴下混合)を行なわず、反応開始から90分以内に式(3)の還元反応を完了させた以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。
[ニッケル塩溶液の調製]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405g、スルフィド化合物として分子内にスルフィド基(−S−)を1個含有するL−メチオニン(CH3SC2H4CH(NH2)COOH、分子量:149.21)13.98g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)0.134mgを、純水1880mLに溶解して、主成分としてニッケル塩と、スルフィド化合物と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩溶液を調製した。ここで、ニッケル塩溶液において、スルフィド化合物であるL−メチオニンはニッケルに対し、モル比で0.055(5.5モル%)と微量で、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し0.50質量ppm(0.28モルppm)である。
上記ニッケル塩溶液を用い、錯化剤溶液の滴下混合のタイミングを下記の通り行った以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。すなわち、晶析反応では、反応液の色調は、反応液調合直後は水酸化ニッケル(Ni(OH)2)の黄緑色であったが、反応開始(反応液調合)から30〜50分すると、核剤(パラジウム塩)の働きによる核発生に伴い反応液が変色(黄緑色→灰色)した。反応液が暗灰色に変化した反応開始後65分後から75分後までの10分間にかけて錯化剤溶液を反応液に滴下混合し、ヒドラジンの自己分解を抑制しながら還元反応を進めてニッケル晶析粉を反応液中に析出させた。反応開始から210〜240分経過後に、式(3)の還元反応は完了し、反応液の上澄み液は透明で、反応液中のニッケル成分はすべて金属ニッケルに還元されていることを確認した。
[ニッケル塩溶液の調製]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405g、スルフィド化合物として分子内にスルフィド基(−S−)を1個含有するL−メチオニン(CH3SC2H4CH(NH2)COOH、分子量:149.21)50.84g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)1.60mgを、純水1880mLに溶解して、主成分としてニッケル塩と、スルフィド化合物と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩溶液を調製した。ここで、ニッケル塩溶液において、スルフィド化合物であるL−メチオニンはニッケルに対し、モル比で0.20(20モル%)と微量で、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し6.0質量ppm(3.3モルppm)である。
上記ニッケル塩溶液を用いた以外は、比較例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を開始させたが、反応液に大量のスルフィド化合物が配合されているため、還元反応が進まず、反応開始(反応液調合)から420分経過した時点でも核発生が生じず、反応液の色調は水酸化ニッケル(Ni(OH)2)の黄緑色のままだったため、晶析反応を中止し、ニッケル晶析粉は得られなかった。
実施例1〜5および比較例1〜3では、いずれもヒドラジンの自己分解抑制剤であるエチレンジアミン(EDA)がニッケルに対して1.0モル%添加されており、またヒドラジンの配合量がニッケルに対するモル比で1.94であるが、メチオニンを配合した実施例1〜5のヒドラジンの消費量はニッケルに対するモル比で1.0〜1.2(自己分解に消費されたヒドラジン量は0.5〜0.7)だったのに対し、メチオニンを配合していない比較例1〜3ではニッケルに対するモル比1.5〜1.7(自己分解に消費されたヒドラジン量は1.0〜1.2)であった(エチレンジアミン(EDA)、メチオニンのいずれも配合していない比較例4のヒドラジンの消費量はニッケルに対するモル比で2.53で、自己分解に消費されたヒドラジン量は2.03)。このことから、エチレンジアミン(EDA)単独でもヒドラジンの自己分解抑制剤として機能しているが、メチオニンを併用するとヒドラジンの自己分解を一層抑制できることが分かる。
Claims (10)
- 粗大粒子が少なくて、かつ充填性に優れた微細なニッケル粉末の製造方法であって、
あらかじめスルフィド化合物が配合された、少なくとも水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の塩、還元剤、および水酸化アルカリと水とを混合した反応液中において、還元反応によりニッケル晶析粉を得る晶析工程を有し、
前記還元剤はヒドラジン(N2H4)であり、
前記スルフィド化合物は、分子内にスルフィド基(−S−)を1個以上含有しており、
前記反応液中の前記スルフィド化合物とニッケルの割合である
(前記スルフィド化合物のモル数/ニッケルのモル数)×100
が0.01モル%〜5モル%の範囲であることを特徴とするニッケル粉末の製造方法。 - ニッケル粉末の平均粒径が0.02μm〜0.15μmである請求項1に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記晶析工程では、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩を水に溶解させたニッケル塩溶液、および、少なくとも還元剤と水酸化アルカリと水とを含む還元剤溶液を用意し、前記還元剤溶液と前記ニッケル塩溶液の少なくともいずれかに前記スルフィド化合物を加えた後、前記還元剤溶液に前記ニッケル塩溶液を添加混合するか、あるいは逆に前記ニッケル塩溶液に前記還元剤溶液を添加混合して行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記晶析工程では、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩を水に溶解させたニッケル塩溶液、少なくとも還元剤と水を含む還元剤溶液、少なくとも水酸化アルカリと水を含む水酸化アルカリ溶液を用意し、前記還元剤溶液、ニッケル塩溶液、および水酸化アルカリ溶液の少なくともいずれかに前記スルフィド化合物を加えた後、前記ニッケル塩溶液と前記還元剤溶液を混合してニッケル塩・還元剤含有液を得、さらに該ニッケル塩・還元剤含有液に前記水酸化アルカリ溶液を添加混合して行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記スルフィド化合物が、分子内にさらにカルボキシ基(−COOH)、水酸基(−OH)、アミノ基(第1級:−NH2、第2級:−NH−、第3級:−N<)、チアゾール環(C3H3NS)から選ばれる構造を少なくとも1個以上含有するカルボキシ基含有スルフィド化合物、水酸基含有スルフィド化合物、アミノ基含有スルフィド化合物、チアゾール環含有スルフィド化合物のいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記カルボキシ基含有スルフィド化合物、水酸基含有スルフィド化合物、アミノ基含有スルフィド化合物、チアゾール環含有スルフィド化合物のいずれかが、メチオニン(CH3SC2H4CH(NH2)COOH)、エチオニン(C2H5SC2H4CH(NH2)COOH)、N−アセチルメチオニン(CH3SC2H4CH(NH(COCH3))COOH)、ランチオニン(HOOCCH(NH2)CH2SCH2CH(NH2)COOH)、チオジプロピオン酸(HOOCC2H4SC2H4COOH)、メチオノール(CH3SC3H6OH)、チオジグリコール(HOC2H4SC2H4OH)、チオモルホリン(C4H9NS)、チアゾール(C3H3NS)、ベンゾチアゾール(C7H5NS)から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項5に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記水溶性ニッケル塩が、塩化ニッケル(NiCl2)、硫酸ニッケル(NiSO4)、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記ニッケルよりも貴な金属の塩が、銅塩、金塩、銀塩、白金塩、パラジウム塩、ロジウム塩、イリジウム塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記水酸化アルカリが、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記晶析工程において、還元反応を開始させる時点の前記反応液の温度(反応開始温度)が、40℃〜90℃であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
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