JP6805873B2 - ニッケル粉末の製造方法 - Google Patents

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本発明は、積層セラミック部品の電極材として用いられる安価で高性能なニッケル粉末の製造方法、特に湿式法により得られる安価で高性能なニッケル粉末の製造方法に関する。
ニッケル粉末は、電子回路のコンデンサの材料として、特に、積層セラミックコンデンサ(MLCC:multilayer ceramic capacitor)や多層セラミック基板などの積層セラミック部品の内部電極などを構成する厚膜導電体の材料として利用されている。
近年、積層セラミックコンデンサの大容量化が進み、積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に用いられる内部電極ペーストの使用量も大幅に増加している。このため、厚膜導電体を構成する内部電極ペースト用の金属粉末として、高価な貴金属の使用に代替して、主としてニッケルなどの安価な卑金属が使用されている。
積層セラミックコンデンサを製造する工程では、ニッケル粉末、エチルセルロースなどのバインダ樹脂、ターピネオールなどの有機溶剤を混練した内部電極ペーストを、誘電体グリーンシート上にスクリーン印刷する。内部電極ペーストが印刷・乾燥された誘電体グリーンシートは、内部電極ペースト印刷層と誘電体グリーンシートとが交互に重なるように積層され圧着されて積層体が得られる。
この積層体を、所定の大きさにカットし、次に、バインダ樹脂を加熱処理により除去し(脱バインダ処理)、さらに、この積層体を1300℃程度の高温で焼成することにより、セラミック成形体が得られる。
そして、得られたセラミック成形体に外部電極が取り付けられ、積層セラミックコンデンサが得られる。内部電極となる内部電極ペースト中の金属粉末としてニッケルなどの卑金属が使用されていることから、積層体の脱バインダ処理は、これらの卑金属が酸化しないように、不活性雰囲気などの酸素濃度が極めて低い雰囲気下にて行われる。
積層セラミックコンデンサの小型化および大容量化に伴い、内部電極や誘電体はともに薄層化が進められている。これに伴って、内部電極ペーストに使用されるニッケル粉末の粒径も微細化が進行し、平均粒径0.5μm以下のニッケル粉末が必要とされ、特に平均粒径0.2μm〜0.3μm程度のニッケル粉末の使用が主流となっている。
ニッケル粉末の製造方法には、大別すると、気相法と湿式法がある。気相法としては、例えば、特許文献1に記載されている塩化ニッケル蒸気を水素により還元してニッケル粉末を作製する方法や、特許文献2に記載されているニッケル金属をプラズマ中で蒸気化してニッケル粉末を作製する方法がある。また、湿式法としては、例えば、特許文献3に記載されている、ニッケル塩溶液に還元剤を添加してニッケル粉末を作製する方法がある。
気相法は、1000℃程度以上の高温プロセスのため、優れた表面平滑性と球状性による高充填性(高密度化性能)を有し、かつ高結晶性による良好な焼結特性(熱収縮挙動)のニッケル粉末を得るためには有効な手段ではあるが、得られるニッケル粉末の粒径分布が広くなるという問題がある。上述の通り、内部電極の薄層化においては、粗大粒子を含まず、比較的粒径分布の狭い平均粒径0.5μm以下のニッケル粉末が必要とされるため、気相法でこのようなニッケル粉末を得るためには、高価な分級装置の導入による分級処理が必須となる。
なお、分級処理では、0.6μm〜2μm程度の任意の値の分級点を目途に、分級点よりも大きな粗大粒子の除去が可能であるが、分級点よりも小さな粒子の一部も同時に除去されてしまうため、製品実収が大幅に低下するという問題もある。したがって、気相法では、上述の高額な設備導入も含めて、製品のコストアップが避けられない。
さらに、気相法では、平均粒径が0.2μm以下、特に、0.1μm以下のニッケル粉末を用いる場合に、分級処理による粗大粒子の除去自体が困難になるため、今後の内部電極の一層の薄層化に対応できない。
一方で、湿式法は、気相法と比較して、得られるニッケル粉末の粒径分布が狭いという利点がある。特に、特許文献3に記載されているニッケル塩に銅塩を含む溶液に還元剤としてヒドラジンを含む溶液を添加してニッケル粉末を作製する方法では、ニッケルよりも貴な金属の金属塩(核剤)との共存下でニッケル塩(正確には、ニッケルイオン(Ni2+)、またはニッケル錯イオン)がヒドラジンで還元されるため、核発生数が制御され(すなわち、粒径が制御され)、かつ核発生と粒子成長が均一となって、より狭い粒径分布で微細なニッケル粉末が得られることが知られている。
特許文献4には、ニッケルなどのVIII族元素や銀などのIB族元素の金属化合物とヒドラジンなどの還元剤とを液相中で反応させる際に、メルカプトカルボン酸(メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、ジメルカプトコハク酸、チオジグリコール酸、システインなど)を存在させて金属粒子を得る方法が記載されており、還元反応の際にメルカプトカルボン酸の作用で、特に微細な金属コロイド粒子が得られるため好ましい方法であることが開示されている。
また、特許文献5では、塩化ニッケル(NiCl)とNaOHの中和物である水酸化ニッケル(Ni(OH))を液相中で水素ガス還元によりニッケル粉末を得る際に、硫化水素、アルカリ硫化物、アルカリ土類硫化物などの硫化物を上記水酸化ニッケル1モルに対し2〜50mgの硫黄濃度(ニッケル1モルに対し0.006mol%〜0.156mol%の硫黄濃度)で存在させて上記還元を行うと、粒径が約0.03μmまでの極めて微細な球形の均質ニッケル粉末が得られることが開示されている(実際に、硫黄成分(NaS)を加えなかった場合の例2では粒径が約0.3μmだったのに対し、ニッケル0.5モルに4mgの硫黄濃度(NaSとして配合)を加えた場合(ニッケル1モルに対し0.025mol%の硫黄濃度)の例1では、平均粒径が約0.04μmの球形の均質なニッケル粉末が得られている)。
また、特許文献6には、湿式法(液相還元法)において、めっき用光沢剤に適用されるサッカリン、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホこはく酸ジ2−エチルヘキシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸、チオ尿素、ベンゼンチオールなどの硫黄含有化合物を添加することで、表面の凹凸を小さくして表面平滑性に優れる金属粉末(ニッケル粉末)を得る方法が開示されている。
このように、メルカプト基(別名:チオール基)(−SH)やスルフィド基(−S−)を有する化合物、あるいは、硫化物イオン(S2−)を水溶液中で生成できるある種の硫黄含有化合物は、湿式法によるニッケル粉末(湿式ニッケル粉末)の微細化に有効であることが知られ、そしてまたニッケルめっき用光沢剤に適用されるようなスルホニル基(−S(=O)−)、スルホン酸基(−S(=O)−O−)、チオケトン基(−C(=S)−)、メルカプト基(−SH)などを有するある種の硫黄含有化合物は、湿式法によるニッケル粉末(湿式ニッケル粉末)の表面平滑化に有効であることが知られていた。
特開平4−365806号公報 特表2002−530521号公報 特開2002−53904号公報 特開2008-127680号公報 特開昭49−70862号公報 特開2010−53409号公報
ところで、前述した積層セラミックコンデンサの内部電極においては、内部電極の膜密度を向上させて、内部電極膜の表面粗さの低下、膜欠陥発生の低減、容量増加などが図られており、これにはニッケル粉末の充填性の向上が必要である。湿式法では、前述の特許文献3〜5に記載されたように、ニッケル塩の還元反応を水とアルコールの混合溶液中で行ったり、還元反応時に、メルカプト化合物(別名:チオール化合物)、スルフィド化合物、硫化物などのある種の硫黄含有化合物を添加することで、0.1μm以下の微細なニッケル粉末を得ているが、特に、ニッケル粉末が微細化してくるとニッケル粒子同士が互いに密に充填できなくなるため、ニッケル粉末の充填性の向上は重要である。
なお、特許文献6では、湿式法で、めっき用光沢剤に適用されるスルホニル基(−S(=O)−)、スルホン酸基(−S(=O)−O−)、チオケトン基(−C(=S)−)、メルカプト基(−SH)などを有するある種の硫黄含有化合物を添加して金属粉末(ニッケル粉末)の表面平滑性を向上させ、積層セラミックコンデンサの内部電極の印刷形成に用いる金属粉末(ニッケル粉末)ペーストにおいて、金属粉末(ニッケル粉末)と例えばチタン酸バリウム粉末などの添加剤との均等分散を図ることが示されている。しかしながら、湿式ニッケル粉末の充填性に関する課題については全く触れられていない。
ところで、湿式法における晶析反応においては、生成したニッケル粒子同士が反応液中で合体する粗大粒子(連結粒子)の形成は避けがたく、後述のように解砕処理などで形成された連結粒子を連結部でばらして粗大粒子(連結粒子)の数を低減させる試みも行われているが、この粗大粒子(連結粒子)の形成も湿式ニッケル粉末の充填性が悪化する一因と推定している。
このため、湿式法で得られるニッケル粉末(湿式ニッケル粉末)は、気相法によるニッケル粉末(気相ニッケル粉末)の有する、優れた球状性および分級処理による粗大粒子除去による高充填性(高密度化性能)を満足させることができないという問題があった。
そこで、本発明は、積層セラミックコンデンサの内部電極ペーストに使用されるニッケル粉末で、特に主流となっている粒径領域において、湿式法を用いた場合であっても、粗大粒子(連結粒子)が少なくて優れた充填性(高密度化性能)を有するニッケル粉末を、安価、かつ簡便に得ることができるニッケル粉末の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、湿式法によるニッケル粉末の製造方法における晶析工程、すなわち、反応液中で初期の核発生から粒子成長までの一連の還元反応(晶析反応)を行う工程において、スルフィド化合物を還元反応の開始後に添加することで、極微量の特定のスルフィド化合物がニッケル粉末の球状化に効果的で、かつ、晶析中にニッケル粒子同士が連結して生じる粗大粒子(連結粒子)を形成しにくくする連結抑制剤として作用してニッケル粉末の充填性を高めることを見出した。さらには、上記極微量の特定のスルフィド化合物は、所定の還元剤としてのヒドラジンの自己分解抑制剤と併用した場合に、その作用を強めるヒドラジンの自己分解抑制補助剤としても作用することも見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明の一態様は、粗大粒子(連結粒子)が少なくて充填性に優れたニッケル粉末の製造方法であって、少なくとも水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の塩、還元剤、および水酸化アルカリと水とを混合した反応液中において還元反応を開始させ、還元反応の開始後にスルフィド化合物を反応液に添加してニッケル晶析粉を得る晶析工程を有し、還元剤はヒドラジン(N)であり、スルフィド化合物は、分子内にスルフィド基(−S−)を1個以上含有しており、反応液中のスルフィド化合物とニッケルの割合である(スルフィド化合物のモル数/ニッケルのモル数)×100が0.01モル%〜5モル%の範囲であることを特徴とする。
このとき、本発明の一態様では、ニッケル粉末の平均粒径が0.15μmを超えるようにすることができる。
本発明の一態様において、晶析工程では、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩を水に溶解させたニッケル塩溶液、および、少なくとも還元剤と水酸化アルカリと水とを含む還元剤溶液を用意し、還元剤溶液にニッケル塩溶液を添加混合するか、あるいは逆にニッケル塩溶液に還元剤溶液を添加混合した後、スルフィド化合物を添加混合する。
あるいは、本発明の一態様において、晶析工程では、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩を水に溶解させたニッケル塩溶液、少なくとも還元剤と水を含む還元剤溶液、少なくとも水酸化アルカリと水を含む水酸化アルカリ溶液を用意し、ニッケル塩溶液と還元剤溶液を混合してニッケル塩・還元剤含有液を得、さらにそのニッケル塩・還元剤含有液に水酸化アルカリ溶液を添加混合した後、スルフィド化合物を添加混合する。
また、本発明の一態様では、スルフィド化合物が、分子内にさらにカルボキシ基(−COOH)、水酸基(−OH)、アミノ基(第1級:−NH、第2級:−NH−、第3級:−N<)、チアゾール環(CNS)から選ばれる構造を少なくとも1個以上含有するカルボキシ基含有スルフィド化合物、水酸基含有スルフィド化合物、アミノ基含有スルフィド化合物、チアゾール環含有スルフィド化合物のいずれかとすることができる。
このとき、本発明の一態様では、カルボキシ基含有スルフィド化合物、水酸基含有スルフィド化合物、アミノ基含有スルフィド化合物、チアゾール環含有スルフィド化合物のいずれかを、メチオニン(CHSCCH(NH)COOH)、エチオニン(CSCCH(NH)COOH)、N−アセチルメチオニン(CHSCCH(NH(COCH))COOH)、ランチオニン(HOOCCH(NH)CHSCHCH(NH)COOH)、チオジプロピオン酸(HOOCCSCCOOH)、メチオノール(CHSCOH)、チオジグリコール(HOCSCOH)、チオモルホリン(CNS)、チアゾール(CNS)、ベンゾチアゾール(CNS)から選ばれる1種以上とすることができる。
また、本発明の一態様では、水溶性ニッケル塩が、塩化ニッケル(NiCl)、硫酸ニッケル(NiSO)、硝酸ニッケル(Ni(NO)から選ばれる1種以上であってもよい。
また、本発明の一態様では、ニッケルよりも貴な金属の塩が、銅塩、金塩、銀塩、白金塩、パラジウム塩、ロジウム塩、イリジウム塩から選ばれる1種以上であってもよい。
また、本発明の一態様では、水酸化アルカリが、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)から選ばれる1種以上であってもよい。
また、本発明の一態様では、還元反応によりニッケル晶析粉を得る晶析工程において、還元反応を開始させる時点の反応液の温度(反応開始温度)が、40℃〜90℃であってもよい。
本発明に係るニッケル粉末の製造方法は、還元剤としてヒドラジンを用いた水溶液系の湿式法によるニッケル粉末の製造方法でありながら、特定のスルフィド化合物を晶析中のニッケル粒子同士の連結抑制剤として極微量用いて還元反応の開始後に添加することで充填性に優れたニッケル粉末を容易に得ることができる。さらに、上記特定のスルフィド化合物は所定の還元剤としてのヒドラジンの自己分解抑制剤と併用した場合に、その作用を強める作用も有しており、積層セラミックコンデンサの内部電極に好適な高性能、かつ充填性(高密度化)に優れるニッケル粉末を安価に製造することができる。
本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法における製造工程の一例を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法における晶析工程の、第1の実施形態に係る晶析手順を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法における晶析工程の、第2の実施形態に係る晶析手順を示す模式図である。 実施例1に係るニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)である。 実施例2に係るニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)である。 比較例1に係るニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)である。 比較例2に係るニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)である。 各実施例と各比較例に係るニッケル粉末の平均粒径と圧粉体密度の関係を示す図である。
以下、本発明に係るニッケル粉末の製造方法について図面を参照しながら以下の順序で説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能である。
1.ニッケル粉末の製造方法
1−1.晶析工程
1−1−1.晶析工程で用いる薬剤
1−1−2.晶析反応の手順(晶析手順)
1−1−3.晶析反応(還元反応、ヒドラジン自己分解反応)
1−1−4.晶析条件(反応開始温度)
1−1−5.ニッケル晶析粉の回収
1−2.解砕工程(後処理工程)
2.ニッケル粉末
<1.ニッケル粉末の製造方法>
まず、本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法について説明する。図1には、本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法における製造工程の一例を示す模式図を示す。本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法は、水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、還元剤としてのヒドラジン、pH調整剤としての水酸化アルカリと水を含む反応液中において、ヒドラジンによる還元反応でニッケル晶析粉を得る晶析工程を主体とし、必要に応じて行う解砕工程を後処理工程として付加したものである。ここで、本発明に係るニッケル粉末の製造方法では、上記晶析工程での反応液中において還元反応を開始させた後、該反応液に分子内にスルフィド基(−S−)を1個以上含有するスルフィド化合物を配合し、還元反応を進めながら連結抑制剤として作用させてニッケル晶析粉の球状化を促進しながら、粗大粒子(連結粒子)の形成を抑制して、その充填性を高めていることを特徴としている。
還元反応で生成したニッケル晶析粉は、公知の手順を用いて反応液から分離すればよく、例えば、洗浄、固液分離、乾燥の手順を経ることにより、ニッケル粉末(ニッケル晶析粉)が得られる。なお、所望により、ニッケル晶析粉を含む反応液や、洗浄液にメルカプト化合物(メルカプト基(−SH)を含む化合物)やジスルフィド化合物(ジスルフィド基(−S−S−)を含む化合物)等の硫黄化合物を添加して、硫黄成分でニッケル晶析粉表面を修飾する表面処理(硫黄コート処理)を施こしてニッケル粉末(ニッケル晶析粉)を得てもよい。また、得られたニッケル粉末(ニッケル晶析粉)に、例えば不活性雰囲気や還元性雰囲気中で200℃〜300℃程度の熱処理を施してニッケル粉末を得ることもできる。これらの硫黄コート処理や熱処理は、前述の積層セラミックコンデンサ製造時の内部電極での脱バインダ挙動やニッケル粉末の焼結挙動を制御できるため、適正範囲内で用いれば非常に有効である。
また、必要に応じて、晶析工程で得られたニッケル粉末(ニッケル晶析粉)に解砕処理を施す解砕工程(後処理工程)を追加して、晶析工程のニッケル粒子生成過程で生じたニッケル粒子の連結による微量の粗大粒子などのより一層の低減を図ったニッケル粉末を得ることが好ましい。本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法では、主に平均粒径が0.15μmを超えるニッケル粉末を得ることができる。
本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法では、特定のスルフィド化合物を所定の割合で還元反応開始後の反応液に添加することにより、スルフィド化合物が晶析反応初期の核発生過程(初期核数、すなわち粒径を決定する過程)に影響を及ぼすことなく、積層セラミックコンデンサの内部電極に好適な高性能で、かつ充填性(高密度化)に優れるニッケル粉末を安価に製造することができる。以下、本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法の詳細について晶析工程、解砕工程の順に説明する。
(1−1.晶析工程)
晶析工程では、少なくとも水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の塩、還元剤および水酸化アルカリと水とを混合した反応液中でニッケル塩(正確には、ニッケルイオン、またはニッケル錯イオン)をヒドラジンで還元する還元反応を開始させた後(すなわち、初期核が発生した後)に、極微量の特定のスルフィド化合物を配合し、還元反応を進めながら充填性(高密度化)に優れた球状のニッケル晶析粉を得ている。
(1−1−1.晶析工程で用いる薬剤)
本発明の晶析工程では、ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、還元剤、水酸化アルカリ、スルフィド化合物などの各種薬剤と水を含む反応液が用いられている。溶媒としての水は、得られるニッケル粉末中の不純物量を低減させる観点から、超純水(導電率:≦0.06 μS/cm(マイクロジーメンス・パー・センチメートル)、純水(導電率:≦1μS/cm)という高純度のものがよく、中でも安価で入手が容易な純水を用いることが好ましい。以下、上記各種薬剤について、それぞれ詳述する。
(a)ニッケル塩
本発明に用いるニッケル塩は、水に易溶であるニッケル塩であれば、特に限定されるものではなく、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルから選ばれる1種以上を用いることができる。これらのニッケル塩の中では、塩化ニッケル、硫酸ニッケルあるいはこれらの混合物がより好ましい。
(b)ニッケルよりも貴な金属の金属塩
ニッケルよりも貴な金属をニッケル塩溶液に含有させることで、ニッケルを還元析出させる際に、ニッケルよりも貴な金属が先に還元されて初期核となる核剤として作用しており、核発生促進剤である特定のスルフィド化合物の効果で、この初期核が多く生じ、その後に粒子成長することで微細なニッケル晶析粉(ニッケル粉末)を作製することができる。
ニッケルよりも貴な金属の金属塩としては、水溶性の銅塩や、金塩、銀塩、プラチナ塩、パラジウム塩、ロジウム塩、イリジウム塩などの水溶性の貴金属塩が挙げられる。例えば、水溶性の銅塩としては硫酸銅を、水溶性の銀塩としては硝酸銀を、水溶性のパラジウム塩としては塩化パラジウム(II)ナトリウム、塩化パラジウム(II)アンモニウム、硝酸パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)などを用いることができるが、これらには限定されない。
本発明において、核剤としてのニッケルよりも貴な金属の金属塩は、特定のスルフィド化合物と併用することになるが、特に上述したパラジウム塩を用いると、粒度分布は幾分広くなるものの、得られるニッケル粉末の粒径をより微細に制御することが可能となるため好ましい。パラジウム塩を用いた場合の、パラジウム塩とニッケルの割合[モルppm](パラジウム塩のモル数/ニッケルのモル数×10)は、本発明の平均粒径0.02μm〜0.15μmについては、0.2モルppm〜100モルppmの範囲内、好ましくは0.5モルppm〜50モルppmの範囲内がよい。上記割合が0.2モルppm未満だと、平均粒径が大きくなり過ぎてしまい、一方で、100モルppmを超えると、高価なパラジウム塩を多く使用することとなり、ニッケル粉末のコスト増につながり、現実的でない。
(c)還元剤
本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法では、還元剤としてヒドラジン(N、分子量:32.05)を用いる。なお、ヒドラジンには、無水のヒドラジンの他にヒドラジン水和物である抱水ヒドラジン(N・HO、分子量:50.06)があるが、どちらを用いてもかまわない。ヒドラジンは、その還元反応は後述する式(2)に示す通りであるが、(特にアルカリ性で)還元力が高いこと、還元反応の副生成物が反応液中に生じないこと(窒素ガスと水)、不純物が少ないこと、および入手が容易なこと、という特徴を有しているため還元剤に好適であり、例えば、市販されている工業グレードの60質量%抱水ヒドラジンを用いることができる。
(d)水酸化アルカリ
ヒドラジンの還元力は、反応液のアルカリ性が強い程大きくなるため(後述する式(2)参照)、本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法では、水酸化アルカリをアルカリ性を高めるpH調整剤として用いる。水酸化アルカリは特に限定されるものではないが、入手の容易さや価格の面から、アルカリ金属水酸化物を用いることが好ましく、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる1種以上とすることがより好ましい。
水酸化アルカリの配合量は、還元剤としてのヒドラジンの還元力が十分高まるように、反応液のpHが、反応温度において、9.5以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは10.5以上となるようにするとよい。(液のpHは、例えば、25℃と70℃程度では、高温の70℃の方が小さくなる。)
(e)スルフィド化合物
本発明のスルフィド化合物は、前述したように、ニッケル粒子同士の連結抑制剤、ヒドラジンの自己分解抑制剤の作用を有しており、分子内にスルフィド基(−S−)を1個以上含有する化合物である。
上記スルフィド化合物は、水溶性が高い方が望ましく、したがって、分子内にさらにカルボキシ基(−COOH)、水酸基(−OH)、アミノ基(第1級:−NH、第2級:−NH−、第3級:−N<)のいずれかを少なくとも1個以上含有するカルボキシ基含有スルフィド化合物、水酸基含有スルフィド化合物、アミノ基含有スルフィド化合物のいずれかであることが好適であり、チアゾール環(CNS)を少なくとも1個以上含有するチアゾール環含有スルフィド化合物も水溶性は高くないが適用可能であり、より具体的には、下記(化1)〜(化10)に一例を示すが、L(またはD、DL)−メチオニン(CHSCCH(NH)COOH)、L(または、D、DL)−エチオニン(CSCCH(NH)COOH)、N−アセチル−L(または、D、DL)−メチオニン(CHSCCH(NH(COCH))COOH)、ランチオニン(別名称:3,3’−チオジアラニン)(HOOCCH(NH)CHSCHCH(NH)COOH)、チオジプロピオン酸(別名称:3,3’−チオジプロピオン酸)(HOOCCSCCOOH)、メチオノール(別名称:3−メチルチオ−1−プロパノール)(CHSCOH)、チオジグリコール(別名称:2,2’−チオジエタノール)(HOCSCOH)、チオモルホリン(CNS)、チアゾール(CNS)、ベンゾチアゾール(CNS)から選ばれる1種以上である。
上記スルフィド化合物の中では、メチオニンは、食品添加用や飼料用として大量に販売されており、入手が容易で安価(例えば400〜600円/kg)のため好ましい。
上記スルフィド化合物のニッケル粒子同士の連結抑制剤としての作用は、反応液中に生じたニッケル粒子表面にスルフィド化合物がスルフィド基(−S−)を介して特定の結晶面に吸着することで、ニッケル粒子内の1次結晶の異方成長(ニッケルは、面心立方格子構造(fcc)のため最密充填面(111)が成長しにくく、{101}面が優先的に成長して板状結晶等に異方成長しやすい)が抑制されて、より等方的な成長が起きるためと考えられる。このように、スルフィド化合物のニッケル粒子同士の連結抑制剤の作用は、スルフィド化合物が反応液中のニッケル晶析粉の表面に吸着してニッケル粒子同士の凝集を抑制して発現しているものと推測される。ヒドラジンの自己分解抑制剤としての作用も、その詳細な作用メカニズムは、未だ明らかにはなっていないが、連結抑制剤の場合と同様に、スルフィド化合物が反応液中のニッケル晶析粉の表面に吸着して、分解触媒として働く粒子表面の活性なニッケル原子とヒドラジン分子の接触を阻害して発現しているものと推測される。
なお、含硫黄化合物としてはジスルフィド結合(−S−S−)やチオール基(−SH)を有する化合物も考えられるが、ジスルフィド結合はその全てが容易に切断されて、切断後に硫黄元素とニッケル原子が結合して、ニッケル粒子表面にニッケル−硫黄結合(−Ni−S−)を多量に形成してしまう。同様にチオール基(−SH)もニッケル原子と極めて容易に結合してニッケル−硫黄結合(−Ni−S−)を多量に形成してしまうため、これらの化合物では上述した効果は得られない。したがって、分子内にスルフィド基(−S−)を1個以上含有する本発明のスルフィド化合物が最も適している。
ここで、反応液中の上記スルフィド化合物とニッケルの割合[モル%](スルフィド化合物のモル数/ニッケルのモル数×100)は0.01モル%〜5モル%の範囲、好ましくは0.03モル%〜2モル%の範囲がよい。上記割合が0.01モル%未満だと、上記スルフィド化合物が少なすぎて、ニッケル粒子同士の連結抑制剤、ヒドラジンの自己分解抑制剤の各作用が得られなくなる。一方で、上記割合が5モル%を超えると、ニッケル粒子の表面へのスルフィド化合物の吸着量が多くなり過ぎて、粒成長速度が著しく低下し、晶析反応時間が大幅に延長するため、好ましくない。
(f)錯化剤
晶析工程の反応液中には、必要に応じて、錯化剤(または錯化剤水溶液)をニッケル塩溶液、還元剤溶液、水酸化アルカリ溶液の少なくともいずれかに少量配合してもよいし、晶析時に添加や滴下で投入することもできる。錯化剤は、適切なものを適正量用いれば、還元反応促進剤として働いて晶析時間の制御が可能なったり、ニッケル晶析粉の粒状性(球状性)や粒子表面平滑性を改善できたり、粗大粒子低減が可能になる場合がある。
錯化剤としては、公知の物質を用いることができ、カルボン酸、カルボン酸塩やカルボン酸誘導体、アルキレンアミンまたはアルキレンアミン誘導体などが挙げられる。カルボン酸、カルボン酸塩やカルボン酸誘導体には、より具体的には、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、蟻酸、酢酸、ピルビン酸、およびそれらの塩や誘導体、があり、アルキレンアミンまたはアルキレンアミン誘導体は、分子内のアミノ基(第1級:−NH、第2級:−NH−、第3級:−N<)の窒素原子が炭素数2の炭素鎖を介して結合した下記式Aの構造を少なくとも有したものであり、より具体的には、アルキレンアミンとして、エチレンジアミン(HNCNH)、ジエチレントリアミン(HNCNHCNH)、トリエチレンテトラミン(HN(CNH)NH)、テトラエチレンペンタミン(HN(CNH)NH)、ペンタエチレンヘキサミン(HN(CNH)NH)、プロピレンジアミン(CHCH(NH)CHNH)から選ばれる1種以上、アルキレンアミン誘導体として、トリス(2−アミノエチル)アミン(N(CNH)、N−(2−アミノエチル)アミノエタノール(HNCNHCOH)、N−(2−アミノエチル)プロパノールアミン(HNCNHCOH)、L(または、D、DL)−2,3−ジアミノプロピオン酸(HNCHCH(NH)COOH)、エチレンジアミン−N,N’−二酢酸(HOOCCHNHCNHCHCOOH)、N,N’−ジアセチルエチレンジアミン(CHCONHCNHCOCH)、1,2−シクロヘキサンジアミン(HNC10NH)から選ばれる1種以上である。
ここで、上記アルキレンアミンまたはアルキレンアミン誘導体は水溶性であり、上述の還元反応促進剤の働きに加えて、還元剤としてのヒドラジンの自己分解抑制剤、ニッケル粒子同士の連結抑制剤としての作用もあるため、錯化剤としてより好ましい。中でもエチレンジアミン、ジエチレントリアミンは、入手が容易で安価のためより好ましい。
上記アルキレンアミンまたはアルキレンアミン誘導体を錯化剤として用いた場合の還元反応促進剤としての作用は、反応液中のニッケルイオン(Ni2+)を錯化してニッケル錯イオンを形成する錯化剤としての働きによると考えられる。一方、ヒドラジンの自己分解抑制剤、ニッケル粒子同士の連結抑制剤としての作用については、その詳細な作用メカニズムは、未だ明らかにはなっていないが、スルフィド化合物の場合と同様に、アルキレンアミンまたはアルキレンアミン誘導体の分子内の第1級アミノ基(−NH)や第2級アミノ基(−NH−)と、反応液中のニッケル晶析粉の表面との何らかの相互作用により、上記作用が発現しているものと推測される。
ここで、反応液中の上記アルキレンアミンまたはアルキレンアミン誘導体とニッケルの割合[モル%](アルキレンアミンまたはアルキレンアミン誘導体のモル数/ニッケルのモル数×100)は、錯化剤としての還元反応促進剤の作用、その他のヒドラジンの自己分解抑制剤、ニッケル粒子同士の連結抑制剤の作用を有効に機能させる観点からすると、0.01モル%〜5モル%の範囲、好ましくは0.03モル%〜2モル%の範囲がよい。上記割合が0.01モル%未満だと、ヒドラジンの核発生促進剤、ニッケル粒子同士の連結抑制剤の各作用が得られなくなる。一方で、上記割合が5モル%を超えると、ニッケル錯イオンを形成する錯化剤としての働きが強くなりすぎる結果、粒子成長に異常をきたしてニッケル粉末の粒状性・球状性が失われていびつな形状となったり、ニッケル粒子同士が互いに連結した粗大粒子が多く形成されるなどのニッケル粉末の特性劣化を生じる恐れがある。
(g)その他の含有物
晶析工程の反応液中には、本発明のスルフィド化合物による表面平滑化剤、ニッケル粒子同士の連結抑制剤、ヒドラジンの自己分解抑制剤の各作用を阻害せず、薬剤コスト増が問題とならない範囲内であれば、上述のニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、還元剤(ヒドラジン)、水酸化アルカリ、スルフィド化合物に加え、分散剤、消泡剤などの各種添加剤を少量含有させてもよい。分散剤は、適切なものを適正量用いれば、ニッケル晶析粉の粒状性(球状性)や粒子表面平滑性を幾分改善できたり、粗大粒子低減が可能になる場合がある。また、消泡剤も、適切なものを適正量用いれば、晶析反応で生じる窒素ガス(後述の式(2)〜式(4)参照)に起因する晶析工程での発泡を抑制することが可能となる。前述の錯化剤と分散剤の境界線は曖昧であるが、分散剤としては、公知の物質を用いることができ、例えば、アラニン(CHCH(COOH)NH)、グリシン(HNCHCOOH)、トリエタノールアミン(N(COH))、ジエタノールアミン(別名:イミノジエタノール)(NH(COH))などが挙げられる。
(1−1−2.晶析反応の手順(晶析手順))
図2及び図3は、本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法での晶析工程における晶析手順を説明するための図であって、晶析手順は以下の第1の実施形態、第2の実施形態に大別される。
第1の実施形態に係る晶析手順は、図2に示すように、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩を水に溶解させたニッケル塩溶液、および、少なくとも還元剤と水酸化アルカリと水とを含む還元剤溶液を用意し、還元剤溶液にニッケル塩溶液を添加混合するか、あるいは逆にニッケル塩溶液に還元剤溶液を添加混合した後、スルフィド化合物を添加混合して晶析反応を行うものである。
第2の実施形態に係る晶析手順は、図3に示すように、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩を水に溶解させたニッケル塩溶液、少なくとも還元剤と水を含む還元剤溶液、少なくとも水酸化アルカリと水を含む水酸化アルカリ溶液を用意し、ニッケル塩溶液と還元剤溶液を混合してニッケル塩・還元剤含有液を得、さらにそのニッケル塩・還元剤含有液に水酸化アルカリ溶液を添加混合した後、スルフィド化合物を添加混合して晶析反応を行うものである。
ここで、第1の実施形態に係る晶析手順(図2)は、ニッケル塩溶液(ニッケル塩+ニッケルよりも貴な金属の塩)に還元剤溶液(ヒドラジン+水酸化アルカリ)を添加混合するか、逆に還元剤溶液(ヒドラジン+水酸化アルカリ)にニッケル塩溶液(ニッケル塩+ニッケルよりも貴な金属の塩)を添加混合して、反応液を調合する晶析手順である。反応液(ニッケル塩+ニッケルよりも貴な金属の塩+ヒドラジン+水酸化アルカリ)が調合された時点、すなわち還元反応が開始する時点での温度(反応開始温度)にもよるが、ニッケル塩溶液と還元剤溶液の添加混合に要する時間(原料混合時間)が長くなると、添加混合の途中の段階から、ニッケル塩溶液と還元剤溶液の添加混合領域の局所においてアルカリ性が上昇してヒドラジンの還元力が高まり、ニッケルよりも貴な金属の塩(核剤)に起因した核発生が生じてしまうため、原料混合時間の終盤になるほど添加された核剤の核発生作用が弱まるという核発生の原料混合時間依存性が大きくなってしまい、ニッケル晶析粉の微細化や狭い粒度分布を得にくくなるという傾向がある。この傾向は、アルカリ性の還元剤溶液に弱酸性のニッケル塩溶液を添加混合する場合により顕著である。上記傾向は、原料混合時間が短いほど抑制できるため、短時間が望ましいが、量産設備面の制約などを考慮すると、好ましくは10秒〜180秒、より好ましくは20秒〜120秒、さらに好ましくは30秒〜80秒がよい。
一方で、第2の実施形態に係る晶析手順(図3)は、ニッケル塩溶液(ニッケル塩+ニッケルよりも貴な金属の塩)に還元剤溶液(ヒドラジン)を添加混合するか、逆に還元剤溶液(ヒドラジン)にニッケル塩溶液(ニッケル塩+ニッケルよりも貴な金属の塩)を添加混合してニッケル塩・還元剤含有液(ニッケル塩+ニッケルよりも貴な金属の塩+ヒドラジン)を得、さらにそのニッケル塩・還元剤含有液に、水酸化アルカリ溶液(水酸化アルカリ)を所定の時間(水酸化アルカリ混合時間)で添加混合して、反応液を調合する晶析手順である。ニッケル塩・還元剤含有液中では還元剤のヒドラジンが予め添加混合されて均一濃度となっているため、水酸化アルカリ溶液を添加混合する際に生じる核発生の水酸化アルカリ混合時間依存性は、上記第1の実施形態に係る晶析手順の場合の核発生の原料混合時間依存性ほど大きくならず、ニッケル晶析粉の微細化や狭い粒度分布が得やすいという特徴がある。ただし、上記第1の実施形態に係る晶析手順の場合と同様の理由で、水酸化アルカリ混合時間は短時間が望ましく、量産設備面の制約などを考慮すると、好ましくは10秒〜180秒、より好ましくは20秒〜120秒、さらに好ましくは30秒〜80秒がよい。
第1及び第2の実施形態に係る晶析手順(図2、図3)では、ニッケルよりも貴な金属の塩(核剤)に起因した核発生が生じる晶析工程の極初期段階を経た後に、スルフィド化合物を反応液に添加混合するため、スルフィド化合物のニッケル粒子同士の連結抑制剤、ヒドラジンの自己分解抑制剤としての作用が幾分遅れるものの、スルフィド化合物の核発生過程への関与がなくなるため、得られるニッケル晶析粉の粒径や粒度分布がスルフィド化合物によって影響を受けにくくなり、それらを制御しやすくなる利点がある。ここで、第1及び第2の実施形態に係る晶析手順でのスルフィド化合物の反応液への添加混合における混合時間は、数秒以内の一気添加でも良いし、数分間〜30分間程度にわたり分割添加や滴下添加してもよい。スルフィド化合物は、ニッケル晶析粒子表面に吸着して異方成長を抑制し等方的な成長を促すが、逆に言えば結晶成長しやすい結晶面の結晶成長を抑制して結晶成長速度自体を低下させる作用があるが、連結抑制作用の効果も徐々に発現することとなるため、上記混合時間は、これら両者のバランスをみながら適宜決定すればよい。なお、第1及び第2の実施形態に係る晶析手順において、必要に応じて用いるアルキレンアミンやアルキレンアミン誘導体などの錯化剤の添加混合タイミングについては、目的に応じ総合的に判断して適宜選択することができる。
ニッケル塩溶液と還元剤溶液の添加混合や、ニッケル塩・還元剤含有液への水酸化アルカリ溶液の添加混合は、溶液を撹拌しながら混合する撹拌混合が好ましい。撹拌混合性が良いと、核発生の場所によるが不均一が低下(均一化)し、かつ、前述したような核発生の原料混合時間依存性や水酸化アルカリ混合時間依存性が低下するため、ニッケル晶析粉の微細化や狭い粒度分布を得やすくなる。撹拌混合の方法は、公知の方法を用いればよく、撹拌混合性の制御や設備コストの面から撹拌羽根を用いることが好ましい。
(1−1−3.晶析反応(還元反応、ヒドラジン自己分解反応))
晶析工程では、反応液中において、水酸化アルカリとニッケルよりも貴な金属の金属塩の共存下でニッケル塩(正確には、ニッケルイオン、またはニッケル錯イオン)をヒドラジンで還元し、初期核を発生させ、その後、極微量の特定のスルフィド化合物を反応液に配合し、その作用でニッケル粒子同士の連結抑制効果を促進させながら粒成長させることで、ニッケル晶析粉を得ている。
まず、晶析工程における還元反応について説明する。ニッケル(Ni)の反応は下記の式(1)の2電子反応、ヒドラジン(N)の反応は下記の式(2)の4電子反応であって、例えば、上述のように、ニッケル塩として塩化ニッケル、水酸化アルカリとして水酸化ナトリウムを用いた場合には、還元反応全体は下記の式(3)のように、塩化ニッケルと水酸化ナトリウムの中和反応で生じた水酸化ニッケル(Ni(OH))がヒドラジンで還元される反応で表され、化学量論的には(理論値としては)、ニッケル(Ni)1モルに対し、ヒドラジン(N)0.5モルが必要である。
ここで、式(2)のヒドラジンの還元反応から、ヒドラジンはアルカリ性が強い程、その還元力が大きくなることが分かる。上記水酸化アルカリはアルカリ性を高めるpH調整剤として用いており、ヒドラジンの還元反応を促進する働きを担っている。
Ni2++2e→Ni↓ (2電子反応) ・・・(1)
→N↑+4H+4e (4電子反応) ・・・(2)
2NiCl+N+4NaOH→2Ni(OH)+N+4NaCl
→2Ni↓+N↑+4NaCl+4H
・・・(3)
上述の通り、晶析工程では、ニッケル晶析粉の活性な表面が触媒となって、下記の式(4)で示されるヒドラジンの自己分解反応が促進され、還元剤としてのヒドラジンが還元以外に大量に消費されるため、晶析条件(反応開示温度など)にもよるが、例えば、ニッケル1モルに対しヒドラジン2モル程度(前述の還元に必要な理論値の4倍程度)が一般的に用いられている。さらに、ヒドラジンの自己分解では多量のアンモニアが副生して(式(4)参照)、反応液中に高濃度で含有されて含窒素廃液を生じることとなる。このような高価な薬剤であるヒドラジンの過剰量の使用や、含窒素廃液の処理コスト発生が、湿式法によるニッケル粉末(湿式ニッケル粉末)のコスト増要因となるが、前述の通り、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどのアルキレンアミンやアルキレンアミン誘導体は、錯化剤として少量用いると、本発明のスルフィド化合物と同様に、ヒドラジンの自己分解抑制剤として作用するため、これらの問題を大幅に改善できる。
3N→N↑+4NH ・・・(4)
本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法では、極微量の特定のスルフィド化合物を反応液に加えることで、晶析中にニッケル粒子同士が連結して生じる粗大粒子(連結粒子)の形成が抑制され、かつ、球状化が大幅に促進されて、球状で充填性(高密度化)に優れるニッケル粉末(ニッケル晶析粉)を実現している。この詳細なメカニズムは未だ明らかではないが、前述した特定のスルフィド化合物の分子が、反応液中のニッケル晶析粒子の表面に吸着し、吸着したスルフィド化合物の分子によりニッケル粒子同士の合体が抑制されるともに、上記吸着が異方成長を抑制してより等方的な成長を促進し球状化が進んだためと考えられる。
したがって、特定のスルフィド化合物は、従来の表面平滑化剤としての作用に加えて、晶析中にニッケル粒子同士が連結して生じる粗大粒子を形成しにくくする連結抑制剤、ヒドラジンの自己分解抑制剤としての作用も有している。本発明は、このような知見に基づいて完成したものである。
(1−1−4.晶析条件(反応開始温度))
晶析工程の晶析条件として、少なくとも、ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の塩、ヒドラジン、水酸化アルカリ、必要に応じてアルキレンアミンなどの錯化剤を含む反応液が調合された時点、すなわち、還元反応が開始する時点の反応液の温度(反応開始温度)が、40℃〜90℃とすることが好ましく、50℃〜80℃とすることがより好ましく、60℃〜70℃とすることがさらに好ましい。なお、ニッケル塩溶液、還元剤溶液、水酸化アルカリ溶液などの個々の溶液の温度は、それらを混合して得られる反応液の温度(反応開始温度)が上記温度範囲になれば特に制約はなく自由に設定することができる。反応開始温度は、高いほど還元反応は促進され、かつニッケル晶析粉は高結晶化する傾向にあるが、一方で、ヒドラジンの自己分解反応がそれ以上に促進される側面があるため、ヒドラジンの消費量が増加するとともに、反応液の発泡が激しくなる傾向がある。したがって、反応開始温度が高すぎると、ヒドラジンの消費量が大幅に増加したり、多量の発泡で晶析反応を継続できなくなる場合がある。一方で、反応開始温度が低くなり過ぎると、ニッケル晶析粉の結晶性が著しく低下したり、還元反応が遅くなって晶析工程の時間が大幅に延長して生産性が低下する傾向がある。以上の理由から、上記温度範囲にすることで、ヒドラジン消費量を抑制しながら、高い生産性を維持しつつ、高性能のニッケル晶析粉を安価に製造することができる。
(1−1−5.ニッケル晶析粉の回収)
ヒドラジンによる還元反応で反応液中に生成したニッケル晶析粉は、前述の通り、必要に応じて、メルカプト化合物やジスルフィド化合物などの硫黄化合物で硫黄コート処理を施こした後、公知の手順を用いて反応液から分離すればよい。具体的な方法として、デンバーろ過器、フィルタープレス、遠心分離機、デカンターなどを用いて反応液中からニッケル晶析粉を固液分離すると共に、純水(導電率:≦1μS/cm)等の高純度の水で十分に洗浄し、大気乾燥機、熱風乾燥機、不活性ガス雰囲気乾燥機、真空乾燥機などの汎用の乾燥装置を用いて50〜300℃、好ましくは、80〜150℃で乾燥し、ニッケル晶析粉(ニッケル粉末)を得ることができる。なお、不活性ガス雰囲気乾燥機、真空乾燥機などの乾燥装置を用いて、不活性雰囲気、還元性雰囲気、真空雰囲気中で200℃〜300℃程度で乾燥した場合は、単なる乾燥に加え、熱処理を施したニッケル晶析粉(ニッケル粉末)を得ることが可能である。
(1−2.解砕工程(後処理工程))
晶析工程で得られたニッケル晶析粉(ニッケル粉末)は、前述の通り、スルフィド化合物や(錯化剤として少量用いた場合は)アルキレンアミンやアルキレンアミン誘導体が晶析中においてニッケル粒子の連結抑制剤として作用するため、ニッケル粒子が還元析出の過程で互いに連結して形成される粗大粒子の含有割合はそもそもそれ程大きくない。ただし、晶析手順や晶析条件によっては、粗大粒子の含有割合が幾分大きくなって問題になる場合もあるため、図1に示すように、晶析工程に引き続いて解砕工程を設け、ニッケル粒子が連結した粗大粒子をその連結部で分断して粗大粒子の低減を図ることが好ましい。解砕処理としては、スパイラルジェット解砕処理、カウンタージェットミル解砕処理などの乾式解砕方法や、高圧流体衝突解砕処理などの湿式解砕方法、その他の汎用の解砕方法を適用することが可能である。
<2.ニッケル粉末>
本発明のニッケル粉末の製造方法で得られるニッケル粉末は、還元剤としてヒドラジンを用い、かつ特定のスルフィド化合物を適用した水溶液系の湿式法により得られ、安価で、高性能で、かつ充填性(高密度化)に優れており、積層セラミックコンデンサの内部電極に好適である。本発明のニッケル粉末の製造方法では、主に平均粒径が0.15μmを超えるニッケル粉末を得ることができる。ニッケル粉末の特性としては、以下の、平均粒径、不純物含有量(塩素含有量、アルカリ金属含有量)、硫黄含有量、結晶子径、粗大粒子の含有量、をそれぞれ求めて評価している。
(平均粒径)
近年の積層セラミックコンデンサの内部電極の薄層化に対応するという観点からは、ニッケル粉末の平均粒径は0.15μm以下が好ましいが、積層セラミックコンデンサは多品種であり、平均粒径0.15μm超〜0.4μm未満程度のニッケル粉末もまだ広く用いられている。本発明の平均粒径は、ニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)から求めた数平均の粒径である。
(不純物含有量(塩素含有量、アルカリ金属含有量))
湿式法によるニッケル粉末には、薬剤起因の不純物である塩素やアルカリ金属が含有される。これらの不純物は、積層セラミックコンデンサの製造時において内部電極の欠陥発生の原因となる可能性があるため、可能な限り低減することが好ましい。具体的には、塩素、アルカリ金属ともに、0.01質量%以下であることが好ましい。
(硫黄含有量)
積層セラミックコンデンサの内部電極に適用されるニッケル粉末は、硫黄を含有していることが好ましい。ニッケル粉末表面は、内部電極ペーストに含まれるエチルセルロースなどのバインダ樹脂の熱分解を促進する作用があり、積層セラミックコンデンサ製造時の脱バインダ処理にて、低温からバインダ樹脂が分解されて分解ガスが多量に発生しクラックが発生することがある。このバインダ樹脂の熱分解を促進する作用は、ニッケル粉末の表面に硫黄を付着させることで大幅に抑制されることが知られている。硫黄含有量は、上記の目的を達成するためには、1質量%以下がよく、これを超えると硫黄に起因した内部電極の欠陥等が生じるため好ましいとはいえない。
(粗大粒子の含有量)
本発明の粗大粒子の含有量は、走査電子顕微鏡写真(SEM像)(倍率10000倍)を20視野で撮影し、その20視野のSEM像において、主にニッケル粒子が連結して形成された粒径0.5μm以上の粗大粒子の含有量(%)、すなわち、粗大粒子の個数/全粒子の個数×100、を計測して求めている。粒径0.5μm以上の粗大粒子の含有量は、積層セラミックコンデンサの内部電極の薄層化に対応するという観点からすると、1%以下であることが好ましい。
(圧粉体密度)
圧粉体密度は、ニッケル粉末の充填性を示す指標であり、大きいほど高充填性(高密度化性能)であることを表す。ニッケル粉末を約0.3g秤量して内径5mmの円柱状穴を有する金型内に充填させ、プレス機で100MPa(メガパスカル)となるように荷重をかけて、直径5mm、高さ3mm〜4mmのペレットに成形した後、そのペレットの質量と室温での厚み(高さ)を正確に求めて、算出した値である。
以下、本発明について、実施例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
[ニッケル塩溶液の調製]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl・6HO、分子量:237.69)405g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NHPdCl、分子量:284.31)1.60mgを、純水1880mLに溶解して、主成分としてニッケル塩と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩溶液を調製した。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し6.0質量ppm(3.3モルppm)である。
[還元剤溶液の調製]
還元剤として抱水ヒドラジン(N・HO、分子量:50.06)を純水で1.67倍に希釈した市販の工業グレードの60%抱水ヒドラジン(エムジーシー大塚ケミカル株式会社製)を276g秤量し、水酸化アルカリを含まず、主成分としてのヒドラジンを含有する水溶液である還元剤溶液を調製した。還元剤溶液に含まれるヒドラジンのニッケルに対するモル比は1.94であった。
[水酸化アルカリ溶液]
水酸化アルカリとして、水酸化ナトリウム(NaOH、分子量:40.0)230gを、純水560mLに溶解して、主成分としての水酸化ナトリウムを含有する水溶液である水酸化アルカリ溶液を用意した。水酸化アルカリ溶液に含まれる水酸化ナトリウムのニッケルに対するモル比は5.75であった。
[スルフィド化合物(連結抑制剤)溶液]
スルフィド化合物として分子内にスルフィド基(−S−)を1個含有するL−メチオニン(CHSCCH(NH)COOH、分子量:149.21)2.542gを、50℃の純水50mLに溶解して、主成分としてのL−メチオニンを含有する水溶液であるスルフィド化合物溶液を用意した。ここで、スルフィド化合物であるL−メチオニンは、ニッケル塩溶液中のニッケルに対し、モル比で0.01(1.0モル%)と微量である。
[錯化剤溶液]
錯化剤として、分子内に第1級アミノ基(−NH)を2個含有するアルキレンアミンであって、還元反応促進剤および自己分解抑制剤の作用を有する、エチレンジアミン(略称:EDA)(HNCNH、分子量:60.1)1.024gを、純水18mLに溶解して、主成分としてのエチレンジアミンを含有する水溶液である錯化剤溶液を用意した。錯化剤溶液に含まれるエチレンジアミンはニッケルに対し、モル比で0.01(1.0モル%)と微量であった。
なお、上記ニッケル塩溶液、還元剤溶液、水酸化アルカリ溶液、スルフィド化合物溶液、および錯化剤溶液における使用材料には、60%抱水ヒドラジンを除き、いずれも和光純薬工業株式会社製の試薬を用いた。
[晶析工程]
上記各薬剤を用い、図3に示す晶析手順で晶析反応を行い、ニッケル晶析粉を得た。すなわち、塩化ニッケルおよびパラジウム塩を純水に溶解したニッケル塩溶液を撹拌羽根付テフロン被覆ステンレス容器内に入れ液温75℃になるように撹拌しながら加熱した後、液温25℃でヒドラジンと水を含む上記還元剤溶液を混合時間20秒で添加混合してニッケル塩・還元剤含有液とした。このニッケル塩・還元剤含有液に液温25℃で水酸化アルカリと水を含む上記水酸化アルカリ溶液を混合時間80秒で添加混合し、液温63℃の反応液(塩化ニッケル+パラジウム塩+ヒドラジン+水酸化ナトリウム)を調合し、還元反応(晶析反応)を開始した(反応開始温度63℃)。反応液の色調は、前述の式(3)で示されるように、反応液調合直後は水酸化ニッケル(Ni(OH))の黄緑色であったが、反応開始(反応液調合)から数分すると、核剤(パラジウム塩)の働きによる核発生に伴い反応液が変色(黄緑色→灰色)した。反応液が暗灰色に変化した反応開始後7分後に、上記スルフィド化合物溶液を上記反応液に添加混合し、次いで、反応開始後8分後から18分後までの10分間にかけて上記錯化剤溶液を上記反応液に滴下混合し、ヒドラジンの自己分解を抑制しながら還元反応を進めてニッケル晶析粉を反応液中に析出させた。反応開始から90分以内には、式(3)の還元反応は完了し、反応液の上澄み液は透明で、反応液中のニッケル成分はすべて金属ニッケルに還元されていることを確認した。
ニッケル晶析粉を含む反応液はスラリー状であり、このニッケル晶析粉含有スラリーにメルカプト酢酸(チオグリコール酸)(HSCHCOOH、分子量:92.12)の水溶液を加えて、ニッケル晶析粉の表面処理(硫黄コート処理)を施した。表面処理後、導電率が1 μS/cmの純水を用い、ニッケル晶析粉含有スラリーからろ過したろ液の導電率が10 μS/cm以下になるまでろ過洗浄し、固液分離した後、150℃の温度に設定した真空乾燥器中で乾燥して、ニッケル晶析粉(ニッケル粉末)を得た。
[解砕処理工程(後処理工程)]
図1に示すように、晶析工程に引き続いて解砕工程を実施し、ニッケル粉末中の主にニッケル粒子が連結して形成された粗大粒子の低減を図った。具体的には、晶析工程で得られた上記ニッケル晶析粉(ニッケル粉末)に、乾式解砕方法であるスパイラルジェット解砕処理を施し、湿式法の晶析反応に微量のスルフィド化合物(L−メチオニン)が適用された、実施例1に係るニッケル粉末を得た。
晶析工程で用いた各種薬剤と晶析条件を、表1にまとめて示す。また、得られたニッケル粉末の特性を表2にまとめて示す。また、図4に得られたニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)を示す。
(実施例2)
[スルフィド化合物(連結抑制剤)溶液]
スルフィド化合物として分子内にスルフィド基(−S−)を1個含有するL−メチオニン(CHSCCH(NH)COOH、分子量:149.21)7.627gを、50℃の純水150mLに溶解して、主成分としてのL−メチオニンを含有する水溶液であるスルフィド化合物溶液を用意した。ここで、スルフィド化合物であるL−メチオニンは、ニッケル塩溶液中のニッケルに対し、モル比で0.03(3.0モル%)と微量である。
[晶析工程]
上記スルフィド化合物溶液を用いた以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。
上記ニッケル晶析粉に、実施例1と同様のスパイラルジェット解砕処理を施し、湿式法の晶析反応に微量のスルフィド化合物(L−メチオニン)が適用された、実施例2に係るニッケル粉末を得た。
晶析工程で用いた各種薬剤と晶析条件を、表1にまとめて示す。また、得られたニッケル粉末の特性を表2にまとめて示す。また、図5に得られたニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)を示す。
(実施例3)
[ニッケル塩溶液の調製]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl・6HO、分子量:237.69)405g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NHPdCl、分子量:284.31)5.34mgを、純水1880mLに溶解して、主成分としてニッケル塩と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩溶液を調製した。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し20.0質量ppm(11.0モルppm)である。
[スルフィド化合物(連結抑制剤)溶液]
スルフィド化合物として分子内にスルフィド基(−S−)を1個含有するL−メチオニン(CHSCCH(NH)COOH、分子量:149.21)1.271gを、50℃の純水150mLに溶解して、主成分としてのL−メチオニンを含有する水溶液であるスルフィド化合物溶液を用意した。ここで、スルフィド化合物であるL−メチオニンは、ニッケル塩溶液中のニッケルに対し、モル比で0.005(0.5モル%)と微量である。
[晶析工程]
上記スルフィド化合物溶液を用いた以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。
上記ニッケル晶析粉に、実施例1と同様のスパイラルジェット解砕処理を施し、湿式法の晶析反応に微量のスルフィド化合物(L−メチオニン)が適用された、実施例3に係るニッケル粉末を得た。
晶析工程で用いた各種薬剤と晶析条件を、表1にまとめて示す。また、得られたニッケル粉末の特性を表2にまとめて示す。
(実施例4)
[スルフィド化合物(連結抑制剤)溶液]
スルフィド化合物として分子内にスルフィド基(−S−)を1個含有するDL−エチオニン(CSCCH(NH)COOH、分子量:163.24)2.781gを、50℃の純水150mLに溶解して、主成分としてのDL−エチオニンを含有する水溶液であるスルフィド化合物溶液を用意した。ここで、スルフィド化合物であるDL−エチオニンは、ニッケル塩溶液中のニッケルに対し、モル比で0.01(1.0モル%)と微量である。
[晶析工程]
上記スルフィド化合物溶液を用いた以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。
上記ニッケル晶析粉に、実施例1と同様のスパイラルジェット解砕処理を施し、湿式法の晶析反応に微量のスルフィド化合物(DL−エチオニン)が適用された、実施例4に係るニッケル粉末を得た。
晶析工程で用いた各種薬剤と晶析条件を、表1にまとめて示す。また、得られたニッケル粉末の特性を表2にまとめて示す。
(実施例5)
[スルフィド化合物(連結抑制剤)溶液]
スルフィド化合物として分子内にスルフィド基(−S−)を1個含有するメチオノール(CHSCOH、分子量:106.19)1.809gを、50℃の純水150mLに溶解して、主成分としてのメチオノールを含有する水溶液であるスルフィド化合物溶液を用意した。ここで、スルフィド化合物であるメチオノールは、ニッケル塩溶液中のニッケルに対し、モル比で0.01(1.0モル%)と微量である。
[晶析工程]
上記スルフィド化合物溶液を用いた以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。
上記ニッケル晶析粉に、実施例1と同様のスパイラルジェット解砕処理を施し、湿式法の晶析反応に微量のスルフィド化合物(メチオノール)が適用された、実施例5に係るニッケル粉末を得た。
晶析工程で用いた各種薬剤と晶析条件を、表1にまとめて示す。また、得られたニッケル粉末の特性を表2にまとめて示す。
(比較例1)
比較例1では、実施例1において、晶析工程で連結抑制剤としてのスルフィド化合物溶液の反応液への添加混合を行わなかった。すなわち、以下の通りである。
[晶析工程]
実施例1と同様のニッケル塩溶液、還元剤溶液、水酸化アルカリ溶液、錯化剤溶液を用い、スルフィド化合物溶液の反応液への添加混合を行わなかった以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。
上記ニッケル晶析粉に、実施例1と同様のスパイラルジェット解砕処理を施し、湿式法の晶析反応にスルフィド化合物が適用されなかった、比較例1に係るニッケル粉末を得た。
晶析工程で用いた各種薬剤と晶析条件を、表1にまとめて示す。また、得られたニッケル粉末の特性を表2にまとめて示す。また、図6に得られたニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)を示す。
(比較例2)
[ニッケル塩溶液の調製]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl・6HO、分子量:237.69)405g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NHPdCl、分子量:284.31)5.34mgを、純水1880mLに溶解して、主成分としてニッケル塩と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩溶液を調製した。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し20.0質量ppm(11.0モルppm)である。
[晶析工程]
上記ニッケル塩溶液と、実施例1と同様の還元剤溶液、水酸化アルカリ溶液、錯化剤溶液を用い、スルフィド化合物溶液の反応液への添加混合を行わなかった以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。
上記ニッケル晶析粉に、実施例1と同様のスパイラルジェット解砕処理を施し、湿式法の晶析反応にスルフィド化合物が適用されなかった、比較例2に係るニッケル粉末を得た。
晶析工程で用いた各種薬剤と晶析条件を、表1にまとめて示す。また、得られたニッケル粉末の特性を表2にまとめて示す。また、図7に得られたニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)を示す。
(比較例3)
[ニッケル塩溶液の調製]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl・6HO、分子量:237.69)405g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NHPdCl、分子量:284.31)2.14mg(ミリグラム)、還元反応促進剤(錯化剤)としての酒石酸(HOOC)CH(OH)CH(OH)(COOH)、分子量:150.09)2.56gを、純水1780mLに溶解して、主成分としてのニッケル塩と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤と、還元反応促進剤(錯化剤)としての酒石酸と、を含有する水溶液であるニッケル塩溶液を調製した。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し8.0質量ppm(4.4モルppm)である。また、酒石酸はニッケルに対し、モル比で0.01(1.0モル%)である。
[還元剤溶液の調製]
還元剤として抱水ヒドラジン(N・HO、分子量:50.06)を純水で1.67倍に希釈した市販の工業グレードの60%抱水ヒドラジン(エムジーシー大塚ケミカル株式会社製)を355g秤量し、水酸化アルカリを含まず、主成分としてのヒドラジンを含有する水溶液である還元剤溶液を調製した。還元剤溶液に含まれるヒドラジンのニッケルに対するモル比は2.50であった。
[晶析工程]
上記各薬剤(ニッケル塩溶液、還元剤溶液)を用い、アミン化合物溶液の添加混合(滴下混合)を行わなかった以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を行い、表面処理後に、洗浄・固液分離・乾燥してニッケル晶析粉を得た。
なお、反応開始温度63℃の上記晶析反応ではヒドラジン自己分解が激しく、還元剤溶液に配合した60%抱水ヒドラジン355gだけでは足りなかったため、晶析反応の途中で60%抱水ヒドラジンを追加で添加混合して還元反応を終了させた。最終的に晶析反応で消費された60%抱水ヒドラジン量は360gであり、ニッケルに対するモル比は2.53であった。
上記ニッケル晶析粉に、実施例1と同様のスパイラルジェット解砕処理を施し、湿式法の晶析反応にスルフィド化合物が適用されなかった、比較例3に係るニッケル粉末を得た。
(比較例4)
[スルフィド化合物(連結抑制剤)溶液]
スルフィド化合物として分子内にスルフィド基(−S−)を1個含有するL−メチオニン(CHSCCH(NH)COOH、分子量:149.21)25.4gを、50℃の純水300mLに溶解して、主成分としてのL−メチオニンを含有する水溶液であるスルフィド化合物溶液を用意した。ここで、スルフィド化合物であるL−メチオニンは、ニッケル塩溶液中のニッケルに対し、モル比で0.10(10.0モル%)と多量である。
[晶析工程]
上記ニッケル塩溶液を用いた以外は、実施例1と同様に、反応開始温度63℃の晶析反応を開始させたが、反応液に大量のスルフィド化合物を添加したため、還元反応が進まず、反応開始(反応液調合)から180分経過した時点でも、反応液の色は核発生に伴う暗灰色のままだったため、晶析反応を中止し、ニッケル晶析粉は得られなかった。
上述の通り、ニッケル晶析粉が得られなかったため、比較例4に係るニッケル粉末は得られなかった。
実施例1〜5および比較例1〜3では、90分間以内に晶析反応が終了しており、反応液の上澄み液中にはヒドラジンが残存していたため、その残存量を測定して晶析反応で消費されたヒドラジン量(還元反応に消費されたヒドラジン量[=ニッケルに対するモル比は前述の式(3)から0.5]+自己分解に消費されたヒドラジン量)を求めた。
実施例1〜5および比較例1〜2では、いずれもヒドラジンの自己分解抑制剤であるエチレンジアミン(EDA)がニッケルに対して1.0モル%添加されており、またヒドラジンの配合量がニッケルに対するモル比で1.94であるが、スルフィド化合物(メチオニン、エチオニン、エチオノール)を配合した実施例1〜5のヒドラジンの消費量はニッケルに対するモル比で0.95〜1.3(自己分解に消費されたヒドラジン量は0.45〜0.8)だったのに対し、スルフィド化合物(メチオニン、エチオニン、メチオノール)を配合していない比較例1〜2ではニッケルに対するモル比1.5〜1.7(自己分解に消費されたヒドラジン量は1.0〜1.2)であった(エチレンジアミン(EDA)、スルフィド化合物(メチオニン、エチオニン、メチオノール)のいずれも配合していない比較例3のヒドラジンの消費量はニッケルに対するモル比で2.53で、自己分解に消費されたヒドラジン量は2.03)。このことから、エチレンジアミン(EDA)単独でもヒドラジンの自己分解抑制剤として機能しているが、スルフィド化合物(メチオニン、エチオニン、メチオノール)を併用するとヒドラジンの自己分解を一層抑制できることが分かる。自己分解に消費されるヒドラジン量が低減できれば、最初に配合するヒドラジン量を低減することが可能となるため、ニッケル粉末の製造コスト削減に有効である。
実施例1、2に係る図4、5と比較例1、2に係る図6、7を比較すると分かるように、本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法により製造されたニッケル粉末(図4、5)の方が球状性に優れていることが分かる。
また、実施例1〜5のニッケル粉末は、粗大粒子(連結粒子)の含有量が非常に少ないことが確認された。
図8に、各実施例と各比較例で得られたニッケル粉末の平均粒径と圧粉体密度の関係をまとめて示すが、各実施例と各比較例の圧粉体密度を比較すると、同じ平均粒径であれば、本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法により製造されたニッケル粉末(実施例)の方が、圧粉体密度が大きく、充填性に優れていることがわかる。
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、ニッケル粉末の製造方法の構成、動作も本発明の各実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。

Claims (10)

  1. 粗大粒子が少なくて充填性に優れたニッケル粉末の製造方法であって、
    少なくとも水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の塩、還元剤、および水酸化アルカリと水とを混合した反応液中において還元反応を開始させ、該還元反応の開始後にスルフィド化合物を前記反応液に添加してニッケル晶析粉を得る晶析工程を有し、
    前記還元剤はヒドラジン(N)であり、
    前記スルフィド化合物は、分子内にスルフィド基(−S−)を1個以上含有しており、
    前記反応液中の前記スルフィド化合物とニッケルの割合である
    (前記スルフィド化合物のモル数/ニッケルのモル数)×100
    が0.01モル%〜5モル%の範囲であることを特徴とするニッケル粉末の製造方法。
  2. ニッケル粉末の平均粒径が0.15μmを超える請求項1に記載のニッケル粉末の製造方法。
  3. 前記晶析工程では、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩を水に溶解させたニッケル塩溶液、および、少なくとも還元剤と水酸化アルカリと水とを含む還元剤溶液を用意し、前記還元剤溶液に前記ニッケル塩溶液を添加混合するか、あるいは逆に前記ニッケル塩溶液に前記還元剤溶液を添加混合した後、前記スルフィド化合物を添加混合することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のニッケル粉末の製造方法。
  4. 前記晶析工程では、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩を水に溶解させたニッケル塩溶液、少なくとも還元剤と水を含む還元剤溶液、少なくとも水酸化アルカリと水を含む水酸化アルカリ溶液を用意し、前記ニッケル塩溶液と前記還元剤溶液を混合してニッケル塩・還元剤含有液を得、さらに該ニッケル塩・還元剤含有液に前記水酸化アルカリ溶液を添加混合した後、前記スルフィド化合物を添加混合することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のニッケル粉末の製造方法。
  5. 前記スルフィド化合物が、分子内にさらにカルボキシ基(−COOH)、水酸基(−OH)、アミノ基(第1級:−NH、第2級:−NH−、第3級:−N<)、チアゾール環(CNS)から選ばれる構造を少なくとも1個以上含有するカルボキシ基含有スルフィド化合物、水酸基含有スルフィド化合物、アミノ基含有スルフィド化合物、チアゾール環含有スルフィド化合物のいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
  6. 前記カルボキシ基含有スルフィド化合物、水酸基含有スルフィド化合物、アミノ基含有スルフィド化合物、チアゾール環含有スルフィド化合物のいずれかが、メチオニン(CHSCCH(NH)COOH)、エチオニン(CSCCH(NH)COOH)、N−アセチルメチオニン(CHSCCH(NH(COCH))COOH)、ランチオニン(HOOCCH(NH)CHSCHCH(NH)COOH)、チオジプロピオン酸(HOOCCSCCOOH)、メチオノール(CHSCOH)、チオジグリコール(HOCSCOH)、チオモルホリン(CNS)、チアゾール(CNS)、ベンゾチアゾール(CNS)から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項5に記載のニッケル粉末の製造方法。
  7. 前記水溶性ニッケル塩が、塩化ニッケル(NiCl)、硫酸ニッケル(NiSO)、硝酸ニッケル(Ni(NO)から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
  8. 前記ニッケルよりも貴な金属の塩が、銅塩、金塩、銀塩、白金塩、パラジウム塩、ロジウム塩、イリジウム塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
  9. 前記水酸化アルカリが、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
  10. 前記晶析工程において、還元反応を開始させる時点の前記反応液の温度(反応開始温度)が、40℃〜90℃であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
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