JP7293591B2 - ニッケル粉末およびニッケル粉末の製造方法 - Google Patents
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CV値(個数)(%)=標準偏差÷個数平均粒径×100 ・・・(1)
CV値(体積)(%)=標準偏差÷体積平均粒径×100 ・・・(2)
1.ニッケル粉末の製造方法
1-1.混合工程
1-1-1.混合する薬剤
1-2.晶析工程
1-2-1.還元反応
1-2-2.混合物の温度
1-2-3.ニッケル晶析粉末の回収
1-3.解砕工程
2.ニッケル粉末
まず、本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法について説明する。本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法は、水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、還元剤としてのヒドラジン、pH調整剤としての水酸化アルカリ、水、必要に応じてアミン化合物、を含む反応液中において、ヒドラジンによる還元反応でニッケル晶析粉末を得る晶析工程を主体とし、特に、水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、ヒドラジンおよび水酸化アルカリを10秒以内に混合して混合物を得る混合工程を含むことで、微細なニッケル粉末を晶析させている。また、必要に応じて行う解砕工程を後処理工程として付加したものである。なお、本発明において、「粉末」および「粉」は、粒子が多数集合して集合体となっている状態であり、晶析したニッケル粒子がスラリー状に分散しているものや、乾燥させて固体の集合体となったものはニッケル粉末やニッケル粉に該当する。例えば、「ニッケル晶析粉」は晶析工程で還元された状態のニッケル粉である。
混合工程は、水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、ヒドラジンおよび水酸化アルカリを10秒以内に混合して混合物を得る工程である。すなわち、これらの各種薬剤の混合時間を10秒以内とする。ここで、溶媒としての水は、得られるニッケル粉末中の不純物量を低減させる観点から、超純水(導電率:≦0.06 μS/cm)や純水(導電率:≦1μS/cm)といった高純度のものがよく、中でも安価で入手が容易な純水を用いることが好ましい。なお、還元反応は反応液が調合された時点で開始される。以下、上記各種薬剤について、それぞれ詳述する。
(a)水溶性ニッケル塩
本発明に用いる水溶性ニッケル塩は、水に易溶である水溶性ニッケル塩であれば、特に限定されるものではなく、例えば、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルから選ばれる1種以上を用いることができる。これらのニッケル塩の中では、塩化ニッケル、硫酸ニッケルあるいはこれらの混合物を用いることが、より好ましい。
ニッケルよりも貴な金属の金属塩は、ニッケルよりもイオン化傾向が低いことにより、ニッケルを還元析出させる際にニッケルよりも先に還元されるため、ニッケル粒子が晶析するための初期核となる核剤として作用することができる。この初期核から粒子成長することで、さらに微細なニッケル晶析粉末(ニッケル粉末)を作製することができる。
本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法では、還元剤としてヒドラジン(N2H4、分子量:32.05)を用いる。なお、ヒドラジンには、無水のヒドラジンの他にヒドラジン水和物である抱水ヒドラジン(N2H4・H2O、分子量:50.06)があるが、どちらを用いてもかまわない。ヒドラジンの還元反応は、後述する式(2)に示す通りであるが、特にアルカリ性で還元力が高いこと、還元反応の副生成物が窒素ガスと水であるために反応による不純物が反応液中に生じないこと、ヒドラジン中の不純物がそもそも少ないこと、および入手が容易なこと、という特徴を有しているため、還元剤に好適である。例えば、市販されている工業グレードの60質量%抱水ヒドラジンを用いることができる。
ヒドラジンの還元力は、反応液のアルカリ性が強い程大きくなるため(後述する式(2)参照)、本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法では、水酸化アルカリを、アルカリ性を高めるpH調整剤として用いる。水酸化アルカリとしては、特に限定されるものではないが、入手の容易さや価格の面から、アルカリ金属水酸化物を用いることが好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる1種以上を用いることがより好ましい。
前者の段階では、水酸化アルカリによりアルカリ性が高く還元力を高めたヒドラジンを含む溶液Bを、水溶性ニッケル塩およびニッケルよりも貴な金属の金属塩といった被還元物を含む溶液Aに添加混合する。
後者の段階は、還元剤であるヒドラジンを、水溶性ニッケル塩およびニッケルよりも貴な金属の金属塩といった被還元物と予め混合させておいて溶液Cとし、溶液Cへ水酸化アルカリを含む溶液Dを混合する段階である。還元剤と被還元物が共存する環境下のpHを、水酸化アルカリにより調整して還元力を高めることで晶析させるという点で、前者の段階との違いがある。
アミン化合物は、ヒドラジンの自己分解抑制剤、還元反応促進剤、さらにはニッケル粒子同士の連結抑制剤の作用を有しており、分子内に第1級アミノ基(-NH2)を2個以上含有するか、あるいは、分子内に第1級アミノ基(-NH2)を1個、かつ第2級アミノ基(-NH-)を1個以上含有する化合物である。本発明において必須の薬剤ではないものの、これらの作用を得るべく、使用することが好ましい。
晶析工程の反応液中には、ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、ヒドラジンおよび水酸化アルカリに加え、分散剤、錯化剤、消泡剤などの各種添加剤を含有させてもよい。例えば、分散剤や錯化剤は、適切なものを適正量用いれば、ニッケル晶析粉末の粒状性(球状性)やニッケル晶析粉末の粒子表面平滑性を改善することや、粗大粒子を低減することが可能になる場合がある。また、消泡剤も、適切なものを適正量用いれば、晶析反応で生じる窒素ガス(後述の式(2)~式(4)参照)に起因する晶析工程での発泡を抑制することで、例えば水溶液が容器からあふれてしまうことを防止することが可能となる。分散剤としては、公知の物質を用いることができ、例えば、アラニン(CH3CH(COOH)NH2)、グリシン(H2NCH2COOH)、トリエタノールアミン(N(C2H4OH)3)、ジエタノールアミン(別名:イミノジエタノール)(NH(C2H4OH)2)などが挙げられる。また、錯化剤としては公知の物質を用いることができ、ヒドロキシカルボン酸、カルボン酸(少なくとも一つのカルボキシル基を含む有機酸)、ヒドロキシカルボン酸塩やヒドロキシカルボン酸誘導体、カルボン酸塩やカルボン酸誘導体、具体的には、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、蟻酸、酢酸、ピルビン酸、およびそれらの塩や誘導体などが挙げられる。さらに、消泡剤としては、アルカリ性条件下において破泡性に優れたものであれば、特に限定されず、オイル型や溶剤型のシリコーン系またはノンシリコーン系の消泡剤を用いることができる。また、メチオニンは、ヒドラジンの自己分解抑制補助剤や連結粗大粒子生成抑制剤としての役割を果たすことができ、加えて、ニッケル粒子の球状化(表面平滑化)に寄与することのできるものである。
晶析工程は、前記混合物中の水溶性ニッケル塩を還元させてニッケル晶析粉末を得る工程である。以下、具体的に説明する。
前記混合物(すなわち反応液)中において、水酸化アルカリの共存下で水溶性ニッケル塩をヒドラジンで還元することにより、ニッケル晶析粉末を得ている。また、この還元反応と同時に、微量の特定のアミン化合物の作用で、ヒドラジンの自己分解を大幅に抑制することができる。
Ni2++2e-→Ni↓ (2電子反応) ・・・(1)
N2H4→N2↑+4H++4e- (4電子反応) ・・・(2)
2NiCl2+N2H4+4NaOH→2Ni(OH)2+N2H4+4NaCl
→2Ni↓+N2↑+4NaCl+4H2O ・・・(3)
3N2H4→N2↑+4NH3 ・・・(4)
混合工程により得た混合物の温度、すなわち、混合工程において、混合物が調合された時点での当該混合物の温度は、10℃~30℃とする。この温度が10℃未満の場合は、それぞれの溶液を冷却するコストや冷却するための時間の負担が大きくなるおそれがある。また、この温度が30℃よりも高いと、混合途中で晶析反応が本格的に始まってしまい、微細化した狭い粒度分布のニッケル晶析粉末を得ることが困難となるおそれがある。この温度が10℃~25℃であれば、微細化した狭い粒度分布のニッケル晶析粉末をより容易に得ることができるため、より好ましい。なお、混合物の温度を10℃~30℃とする場合には、溶液A~Dの個々の溶液の温度は、それらを混合して混合物となったときの温度が上記の温度範囲になれば、特に制約はなく自由に設定することができる。
晶析工程における還元反応で生成したニッケル晶析粉末は、公知の手順を用いて反応液から分離すればよく、例えば、洗浄、固液分離、乾燥の手順を経ることにより、ニッケル粉末が得られる。なお、所望により、ニッケル晶析粉末を含む反応液や洗浄液にメルカプト化合物やジスルフィド化合物などの硫黄化合物を添加して、硫黄成分でニッケル晶析粉末の表面を修飾する表面処理(硫黄コート処理)を施したニッケル粉末(ニッケル晶析粉末)を得てもよい。また、得られたニッケル粉末に、例えば不活性雰囲気や還元性雰囲気中で200℃~300℃程度の熱処理を施してニッケル粉末を得ることもできる。これらの硫黄コート処理や熱処理を行うことで、前述の積層セラミックコンデンサ等の製造時の内部電極での脱バインダ挙動やニッケル粉末の焼結挙動を制御できるため、適正範囲内でこれらの処理を用いれば非常に有効である。さらに、必要に応じて、晶析工程で得られたニッケル粉末に解砕処理を施す後述の解砕工程(後処理工程)を追加すれば、晶析工程におけるニッケル粒子の生成過程で生じたニッケル粒子の連結による粗大粒子等の低減を図ったニッケル粉末を得ることができるため、より好ましい。
晶析工程で得られたニッケル晶析粉末(ニッケル粉末)は、前述の通り、アミン化合物が晶析中においてニッケル粒子の連結抑制剤として作用するため、ニッケル粒子が還元析出の過程で互いに連結して形成される粗大粒子の含有割合は、そもそもそれ程大きくない。ただし、晶析手順や晶析条件によっては、粗大粒子の含有割合が幾分大きくなって問題になる場合もある。そのため、解砕工程を設け、ニッケル粒子が連結した粗大粒子をその連結部で分断して粗大粒子の低減を図ることが好ましい。解砕工程としては、特に限定されないが、スパイラルジェット解砕処理、カウンタージェットミル解砕処理などの乾式解砕方法や、高圧流体衝突解砕処理などの湿式解砕方法、その他の汎用の解砕方法を適用することが可能である。
本発明のニッケル粉末は、上記の製造方法で安価に製造することができ、高性能であって、積層セラミックコンデンサ等の内部電極の材料として好適である。本発明のニッケル粉末としては、平均粒径(個数平均粒径mn、体積平均粒径mv)、不純物含有量(塩素含有量、アルカリ金属含有量)、変動係数CV(Coefficient of Variation)値、粒度分布について、以下の特性を有する。
近年の積層セラミックコンデンサ等の内部電極の薄層化に対応するという観点から、ニッケル粉末の平均粒径は0.02μm~0.15μmであることが好ましい。ただし、積層セラミックコンデンサ等は多品種であり、平均粒径0.15μm超~0.4μm未満程度のニッケル粉末もまだ広く用いられていることを考慮すると、本発明の一実施形態に係るニッケル粉末も平均粒径を0.02μm~0.4μmに設定する。なお、本発明におけるニッケル粉末は、走査型電子顕微鏡写真(SEM像)から個数平均粒径mnおよび体積平均粒径mvを求めることができるが、上記に示す平均粒径はいずれも個数平均粒径mnによるものである。
湿式法によるニッケル粉末には、薬剤起因の不純物である塩素やアルカリ金属等が含有される場合がある。これらの不純物は、積層セラミックコンデンサ等の製造時において内部電極の欠陥発生の原因となる可能性があるため、可能な限り低減することが好ましい。具体的には、塩素、アルカリ金属ともに、含有量が0.01質量%以下であることが好ましい。なお、不純物含有量の測定については特に限定されるものではなく、公知の分析装置、分析手法を用いて求めれば良い。
本発明の一実施形態に係るニッケル粉末の製造方法では、核発生前もしくは核発生開始から短時間で反応液が均一となるように混合することで、微細かつ粒度分布の狭いニッケル粉末を得ることができる。粒度分布の狭さを評価する指標として、下記式(5)、(6)に示す変動係数CV値を求めることができる。CV値は、例えば倍率40000倍の走査型電子顕微鏡写真(SEM像)において、100~200個のニッケル粉末粒子の粒径を計測し、その粒子の個数平均粒径(または体積平均粒径)および標準偏差を求め、式(5)、(6)を計算することにより、変動係数CV値(個数)またはCV値(体積)として求めることができる。本発明におけるニッケル粉末は、近年の積層セラミックコンデンサの内部電極の薄層化に対応するという観点から、できるだけ均一な粒径のものが好まれることを考慮すれば、CV値(個数)として14%以下であることが好ましく、13%以下であることがより好ましい。また、CV値(体積)としては、16%以下であることが好ましい。
CV値(個数)(%)=標準偏差÷個数平均粒径×100 ・・・(5)
CV値(体積)(%)=標準偏差÷体積平均粒径×100 ・・・(6)
上記したように、ニッケル粉末としては、近年の積層セラミックコンデンサの内部電極の薄層化に対応するという観点から、できるだけ均一な粒径のものが好まれる。この点を考慮すると、本発明の一実施形態に係るニッケル粉末は、個数基準の粒度分布において、粒子径の最小値が0.09155μmであり、粒子径の最大値が0.259μmであることが好ましい。
(ニッケル塩水溶液(溶液A)の調製)
水溶性ニッケル塩として、塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405gと、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として、塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)1.6mgと、メチオニン(CH3SC2H4CH(NH2)COOH、分子量:149.21)2.54gと、を純水1880mLに溶解して、ニッケル塩水溶液(溶液A)を調製した。ここで、ニッケル塩水溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し6.0質量ppm(3.3モルppm)とした。
還元剤として抱水ヒドラジン(N2H4・H2O、分子量:50.06)を純水で1.67倍に希釈した市販の工業グレードの60%抱水ヒドラジン(エムジーシー大塚ケミカル株式会社製)を138gと、水酸化アルカリとして、水酸化ナトリウム(NaOH、分子量:40.0)230gを、純水560mLに溶解して、主成分としての水酸化ナトリウムを含有する水溶液である水酸化アルカリ水溶液とを混合して還元剤水溶液(溶液B)を調整した。還元剤水溶液に含まれるヒドラジンのニッケルに対するモル比は0.97であった。水酸化アルカリ水溶液に含まれる水酸化ナトリウムのニッケルに対するモル比は3.38であった。
アミン化合物として、分子内に第1級アミノ基(-NH2)を2個含有するアルキレンアミンであるエチレンジアミン(略称:EDA)(H2NC2H4NH2、分子量:60.1)2.048gを、純水18mLに溶解して、主成分としてのエチレンジアミンを含有する水溶液であるアミン化合物水溶液を用意した。アミン化合物水溶液に含まれるエチレンジアミンはニッケルに対し、モル比で0.02(2.0モル%)と微量であった。
液温25℃の塩化ニッケルを純水に溶解したニッケル塩水溶液(溶液A)を、撹拌羽根付テフロン(登録商標)被覆ステンレス容器内に入れ撹拌した後、撹拌を継続した状態で液温25℃のヒドラジンと水酸化ナトリウムと純水とを含む上記還元剤水溶液(溶液B)を混合時間10秒で撹拌投入することにより添加混合して反応液(混合物)を得て(混合工程)、還元反応(晶析反応)を開始した。その後、反応槽を80℃のウォーターバスに入れ、撹拌を継続しつつ反応液を昇温させた。反応開始後8分後から18分後までの10分間にかけて、上記アミン化合物水溶液を上記反応液に撹拌投入することにより滴下混合し(アミン化合物混合工程)、ヒドラジンの自己分解を抑制しながら還元反応を進めて、ニッケル晶析粉を反応液中に析出させた。反応開始から90分以内には還元反応は完了し、反応液の上澄み液は透明であることから、反応液中のニッケル成分はすべて金属ニッケルに還元されていることを確認した。
晶析工程に引き続いて解砕処理工程を実施し、ニッケル粉末中の主にニッケル粒子が連結して形成された粗大粒子の低減を図った。具体的には、晶析工程で得られた上記ニッケル晶析粉(ニッケル粉末)に、乾式解砕方法であるスパイラルジェット解砕処理を施し、実施例1のニッケル粉末を得た。
このようにして得られたニッケル粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、画像解析ソフト(株式会社マウンテック製Mac-View)により粒度分布を測定することにより平均粒径を求めたところ、個数平均粒径mnは0.13μm、体積平均粒径mvは0.14μmであった(表1)。また、変動係数CV値を求めたところ、CV値(個数)は12.57%、CV値(体積)は15.83%であった(表1)。表2に、実施例1にて得られたニッケル粉末の粒度分布を示す表を、図3に、実施例1にて得られたニッケル粉末の個数基準の粒度分布を示すグラフである。実施例1のニッケル粉末は、個数基準の粒度分布において、粒子径の最小値が0.09155μmであり、粒子径の最大値が0.259μmであった。また、0.1295μmの粒子が最も多く、かつ0.1295μmの粒子の頻度が40%以上であった(図3)。この結果より、平均粒径、変動係数ともに小さく、微細で、かつ粒度分布の小さいニッケル粉末であることがわかった。また、ニッケル粉末中の塩素(Cl)、ナトリウム(Na)、および硫黄(S)の含有量は、塩素が0.002質量%、ナトリウムが0.003質量%、硫黄が0.22質量%といずれの不純物も少量であることがわかった。
(ニッケル粉末の作製)
塩化ニッケル水溶液(溶液A)と還元剤水溶液(溶液B)の混合時間を200秒とした以外は、実施例1と同様の条件で、ニッケル粉末を得た。
このようにして得られたニッケル粉末を、実施例1と同様に走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより、平均粒径を求めたところ、個数平均粒径mnは0.13μm、体積平均粒径mvは0.15μmであった(表1)。また、変動係数CV値を求めたところ、CV値(個数)は14.63%、CV値(体積)は28.94%であった(表1)。表2に、比較例1にて得られたニッケル粉末の粒度分布を示す表を、図4に、比較例1にて得られたニッケル粉末の個数基準の粒度分布を示すグラフである。これらの結果より、CV値(体積)が大きな値を示したことは、塩化ニッケル水溶液と還元剤水溶液の混合時間が長くなったことでニッケル粒子の核発生のタイミングおよび粒成長の度合いにばらつきが生じ、粒度分布が広くなったためと考えられる。粒度分布が広くなったことは、図4からも明らかであり、また、実施例1の場合よりも粒径の大きいニッケル粉末の頻度が高くなり、実施例1よりも大きい粒子が多く存在することがわかった。また、ニッケル粉末中の塩素(Cl)、ナトリウム(Na)、および硫黄(S)の含有量は、塩素が0.002質量%、ナトリウムが0.003質量%、硫黄が0.23質量%といずれの不純物も少量であることがわかった。
(ニッケル粉末の作製)
ニッケル塩水溶液(溶液A)の反応開始時の温度を75℃とした以外は、実施例1と同様の条件で、ニッケル粉末を得た。上記条件におけるニッケル塩水溶液(溶液A)と還元剤水溶液(溶液B)の混合後の反応開始温度は66℃であった。
このようにして得られたニッケル粉末を、実施例1と同様に走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより、平均粒径を求めたところ、個数平均粒径mnは0.16μm、体積平均粒径mvは0.17μmであった(表1)。また、変動係数CV値を求めたところ、CV値(個数)は15.35%、CV値(体積)は17.07%であった(表1)。表2に、比較例2にて得られたニッケル粉末の粒度分布を示す表を、図5に、比較例2にて得られたニッケル粉末の個数基準の粒度分布を示すグラフである。これらの結果より、ニッケル塩水溶液の投入温度を75℃としたことで、反応液の反応開始時の温度が高温になったことにより、反応液中でのニッケル粒子の核発生のタイミングは不均一となり、粒成長の程度にも差が生じ、結果として得られたニッケル粉末の平均粒径は実施例1と比べて大きくなったものと考えられる。なお、図5からも明らかなように、実施例1の場合よりも粒径の大きいニッケル粉末の頻度が高くなり、実施例1よりも大きい粒子が多く存在することがわかった。また、ニッケル粉末中の塩素(Cl)、ナトリウム(Na)、および硫黄(S)の含有量は、塩素が0.001質量%、ナトリウムが0.002質量%、硫黄が0.19質量%といずれの不純物も少量であることがわかった。
以上のように、本発明に係るニッケル粉末の製造方法によれば、核発生前または核発生開始から短時間で所定の原料を均一に混合することで、製造バッチサイズに依らず、微細かつ粒度分布が狭いニッケル粉末を得られることは、明らかである。
Claims (6)
- 水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、ヒドラジンおよび水酸化アルカリを10秒以内に混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物中の前記水溶性ニッケル塩を還元させてニッケル晶析粉末を得る晶析工程と、を含み、
前記混合工程は、水溶性ニッケル塩およびニッケルよりも貴な金属の金属塩を含む溶液Aに、ヒドラジンおよび水酸化アルカリを含む溶液Bを混合する段階、または、
水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩およびヒドラジンを含む溶液Cに、水酸化アルカリを含む溶液Dを混合する段階を含み、
前記混合工程により得た前記混合物の温度は、10℃~25℃である、ニッケル粉末の製造方法。 - 前記溶液AまたはBのいずれかはアミン化合物を含み、前記溶液CまたはDのいずれかはアミン化合物を含む、請求項1に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記混合工程後、前記混合物とアミン化合物を混合するアミン化合物混合工程を含む、請求項1に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 個数平均粒径が0.02μm~0.15μmであり、下記式(1)により得られるCV値(個数)が14%以下であり、かつ、下記式2により得られるCV値(体積)が16%以下である、ニッケル粉末。
[数1]
CV値(個数)(%)=標準偏差÷個数平均粒径×100 ・・・(1)
[数2]
CV値(体積)(%)=標準偏差÷体積平均粒径×100 ・・・(2) - 個数基準の粒度分布において、粒子径の最小値が0.09155μmであり、粒子径の最大値が0.259μmである、請求項4に記載のニッケル粉末。
- 個数基準の粒度分布において、0.1295μmの粒子が最も多く、かつ0.1295μmの粒子の頻度が40%以上である、請求項4または5に記載のニッケル粉末。
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