JP7226375B2 - 金属粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
特に、本発明の製造方法では、金属塩溶液に配合する錯化剤として、塩基性アミノ酸と、1価以上のカルボン酸又はその塩とを組み合わせて用いることを特徴としている。
金属粉末となる金属としては、積層セラミックコンデンサの内部電極層を構成する材料等に用い得る金属が挙げられ、具体的にはNi、Cu、Pt及びAg等である。
また、これらの塩の水和物であってもよい。
金属粉末としてニッケル粉末を製造する場合、ニッケル塩としては、安価で容易に調達できるという観点から、塩化ニッケル、硫酸ニッケル又はこれらの混合物が好ましい。
塩基性アミノ酸は、1種又は2種以上を用いてもよい。平均粒径が小さく、かつCV値が低い金属粉末が得られることから、塩基性アミノ酸としてはL-アルギニンがより好ましい。
塩基性アミノ酸は、金属粉末の析出工程において金属粉末の平均粒径を小さく抑える効果(金属粒子成長抑制効果)を有し、粒度分布を均一化させる効果を有する。
1価以上のカルボン酸又はその塩としては、クエン酸若しくはその塩、及び、アスコルビン酸若しくはその塩から選択された少なくとも1種であることがより好ましい。
1価以上のカルボン酸を使用することで金属粒子が析出する。
貴金属触媒は、製造する金属粉末となる金属よりも貴な金属の塩であり、金塩、銅塩、銀塩、パラジウム塩、プラチナ塩、ロジウム塩、イリジウム塩等の水溶性の貴金属塩が挙げられる。貴金属触媒の例として具体的には、硫酸銅、硝酸銀、塩化パラジウム(II)ナトリウム、塩化パラジウム(II)アンモニウム、硝酸パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)、ヘキサクロロ白金酸等が挙げられる。これらの塩の水和物を使用してもよい。貴金属触媒は、1種又は2種以上を用いることができる。
ニッケル粉末を製造する場合、貴金属触媒としては硫酸銅又は塩化パラジウムが好ましい。
還元剤溶液は、アルカリ性のpH調整剤、還元剤及び水を含む。
pH調整剤としては、特に限定されるものではないが、入手の容易さや価格の面から、アルカリ金属水酸化物を用いることができる。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。アルカリ性のpH調整剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
ヒドラジンとしては、具体的には、市販されている工業グレードの60質量%抱水ヒドラジンを用いることができる。
還元剤溶液に配合される各成分の混合順序は、特に限定されない。
次いで、還元剤溶液を金属塩溶液に添加して混合する工程を行う。金属塩溶液と還元剤溶液とを混合することにより、金属塩溶液と還元剤溶液とを含む混合溶液中で、還元剤の還元反応により金属粉末が析出する。以下では、「還元剤溶液を金属塩溶液に添加して混合する工程」を「析出工程」ともいう。
還元剤溶液の金属塩溶液への添加は、一括で行ってもよいし、複数回に分割して行ってもよいし、還元剤溶液を連続して滴下することも可能である。
混合前に金属塩溶液及び還元剤溶液を還元温度に加熱しておくと、混合時に急激な温度変化が起こらず、混合直後に始まる析出の反応開始温度を還元温度と同程度に保つことができる。
析出工程においては、混合溶液をpH11以上の高アルカリにして還元剤の還元力を高めて混合溶液中で貴金属の核を発生させることが好ましい。混合溶液のpHが11以上であると、多くの初期核を均一に形成でき、金属粉末の微粒化と粒度分布の狭小化が達成可能となる。
pHの調製は、上述のpH調整剤を含む還元剤溶液の添加で行われる。
上記の析出工程で得られた金属粉末を含む金属粉末スラリーから、公知の手順、たとえば、洗浄、固液分離、乾燥の手順を経ることにより、金属粉末のみが分離される。
析出工程で得られた金属粉末は、そのまま最終製品の金属粉末として用いることも可能ではあるが、必要に応じて解砕処理を施すことにより、金属が析出する過程で形成された粗大粒子や連結粒子などの低減を図ることがより好ましい。解砕処理としては、スパイラルジェット解砕処理、カウンタージェットミル解砕処理などの乾式解砕方法や、高圧流体衝突解砕処理などの湿式解砕方法、その他の汎用の解砕方法を適用することが可能である。
実施例及び比較例において、析出反応開始から60分後の混合溶液を調べて、析出反応が完了しているかを判定した。また、得られた金属粉末について、以下の方法により、平均粒径(nm)及び粒度分布(CV値)の測定及び算出を行った。
析出反応開始から60分後の混合溶液の液色及びイオン検出紙による変色の有無により、混合溶液中に金属イオンが残存しているかを調べた。混合溶液の液色は目視で確認した。イオン検出紙は、ADVANTEC社製ニッケルチェックを用いた。
判定は、混合溶液の液色が無色透明、かつイオン検出紙の色の変化がないものに「〇」印、混合溶液の液色が有色、かつイオン検出紙の色が変化したものに「×」印を付した。
得られた金属粉末について、走査型電子顕微鏡(SEM:JEOL Ltd.製、JSM-7100F)を用いて1000個以上の金属粉末を観察(倍率:20000倍)し、観察像(SEM像)の画像解析の結果から、数平均で求められた平均粒径(nm)とその標準偏差(σ)を算出し、平均粒径の標準偏差を平均粒径で除した値(%)であるCV値[平均粒径の標準偏差(σ)/平均粒径(nm))×100]を得た。
判定は、平均粒径が100nm以下、かつCV値が25%以下のものに「〇」印、平均粒径が100nmを超えるか、又はCV値が25%を超えるものに「×」を付した。
[金属塩溶液の調製]
金属塩として硫酸ニッケル6水和物(NiSO4・6H2O、分子量:262.85)、貴金属触媒として硫酸銅5水和物(CuSO4・5H2O、分子量:249.7)1.52mg、塩基性アミノ酸としてL-アルギニン、1価以上のカルボン酸又はその塩としてクエン酸三ナトリウム2水和物(Na3(C3H5O(COO)3)・2H2O)、分子量:294.1)を、表1に示す割合になるように純水に溶解し、金属塩溶液を調製した。
還元剤として、ピラゾールなどの有機不純物を除去して精製した60%抱水ヒドラジン(N2H4・H2O、分子量:50.06)65g、pH調整剤として水酸化ナトリウム(NaOH、分子量:40.0)57gを、純水280mLに溶解して、還元剤溶液を調製した。
金属塩溶液と還元剤溶液を、それぞれ液温60℃になるように加熱した後、2液を撹拌混合して混合溶液とし、析出反応を開始した。それぞれの液温が60℃の金属塩溶液と還元剤溶液の撹拌混合時の発熱により、混合溶液の温度は65℃に上昇したため、反応開始温度は65℃であった。析出反応開始時の混合溶液のpHは13であった。反応開始(2液の撹拌混合)から2分~3分程度すると、貴金属触媒の働きによる核発生に伴い反応液が変色(黄緑色→灰色)するが、さらに撹拌を続けながら還元反応を行い、ニッケル析出粉を得た。還元反応が終了した反応液の上澄み液は透明であり、イオン検出紙を用いて反応液中のニッケルの存在を確認し、反応液中のニッケル成分はすべて金属ニッケルに還元されていることを確認した。
析出工程で得られたニッケル析出粉に、乾式解砕方法であるスパイラルジェット解砕処理を施し、粒度が均一でほぼ球形の実施例1に係るニッケル粉末を得た。
上記の手順で反応完了判定、並びに、得られたニッケル粉末の平均粒径及びCV値の測定及び算出を行った。結果を表1に示す。
貴金属触媒及び塩基性アミノ酸の添加量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様に析出反応を行った。結果を表1に示す。
一方、比較例1~3に示すように、塩基性アミノ酸を混合しないと、核剤である貴金属触媒のみを増加させても、平均粒径100nm以下かつCV値25%以下のニッケル粉末は得られなかった。
1価以上のカルボン酸を添加せず、塩基性アミノ酸の添加量を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様に反応を行った。しかしながら、いずれの比較例においても析出反応が開始しなかった。結果を表2に示す。
塩基性アミノ酸を添加せず、1価以上のカルボン酸の添加量を表3に示す割合に変更した以外は実施例1と同様に析出反応を行った。結果を表3に示す。
一方、ニッケル粉末の粒子成長にエネルギーが使用されるため、1価以上のカルボン酸の添加量が増加するとCV値は低下した。しかしながら、塩基性アミノ酸を添加せず、1価以上のカルボン酸の添加量を調整するのみでは、平均粒径100nm以下かつCV値25%以下のニッケル粉末は得られなかった。
塩基性アミノ酸の添加量と1価以上のカルボン酸の添加量を表4に示すように変更した以外は実施例1と同様に析出反応を行った。結果を表4に示す。
また、1価以上のカルボン酸の添加量が120重量%を超える比較例13~15では、CV値が25%よりも大きくなった。
更に、塩基性アミノ酸の添加量が35重量%以下でも、1価以上のカルボン酸の添加量が多く、(塩基性アミノ酸添加量)/(1価以上のカルボン酸添加量)が0.2以下では、塩基性アミノ酸の粒子成長抑制効果が十分に発現せず、平均粒径100nm以下かつCV値が25%以下にならなかった(比較例10、13、15)。
一方、塩基性アミノ酸の添加量が35重量%以下でも1価以上のカルボン酸の添加量が少なく、(塩基性アミノ酸添加量)/(1価以上のカルボン酸添加量)が1.0より大きいと、塩基性アミノ酸の粒子成長抑制効果が1価以上のカルボン酸による還元作用よりも上回り、析出反応が進行しなかった(比較例16)。
これらの結果から、塩基性アミノ酸の添加量が金属粉末の重量に対し35重量%以下かつ1価以上のカルボン酸の添加量が金属粉末の重量に対し120重量%以下で、(塩基性アミノ酸添加量)/(1価以上のカルボン酸添加量)が0.2より大きく1.0以下の範囲であることが、平均粒径がより小さく、かつ粒度分布がシャープな金属粉末を製造するために必要である。
金属塩を硫酸銅(II)5水和物に変更し、貴金属触媒を塩化パラジウム(II)アンモニウムに変更した以外は実施例2と同様に析出反応を行った。結果を表5に示す。
金属塩を硝酸銀に変更し、貴金属触媒を塩化パラジウム(II)アンモニウムに変更した以外は実施例2と同様に析出反応を行った。結果を表5に示す。
金属塩をヘキサクロロ白金酸に変更し、貴金属触媒を塩化パラジウム(II)アンモニウムに変更した以外は実施例2と同様に析出反応を行った。結果を表5に示す。
L-アルギニンを表6に示すアミノ酸に変更した以外は実施例2と同様にして析出反応を行った。結果を表6に示す。
一方、L-アルギニンの代わりに酸性アミノ酸であるL-アスパラギン酸又はL-グルタミン酸を使用した比較例17、18では、金属粉末の成長抑制効果が発現せず、金属粉末の平均粒径が100nm以下にならなかった。
Claims (7)
- 金属塩と、塩基性アミノ酸と、1価以上のカルボン酸又はその塩と、貴金属触媒とを水に混合し、金属塩溶液を調製する工程と、
アルカリ性のpH調整剤と、還元剤とを水に混合し、還元剤溶液を調製する工程と、
前記還元剤溶液を前記金属塩溶液に添加して混合する工程と、を行う金属粉末の製造方法であって、
前記塩基性アミノ酸の配合量は、前記金属塩溶液に含まれる前記金属塩がすべて還元された際に製造される金属粉末の重量に対して35重量%以下であり、
前記1価以上のカルボン酸又はその塩の配合量は、前記金属塩溶液に含まれる前記金属塩がすべて還元された際に製造される金属粉末の重量に対して120重量%以下であり、
前記1価以上のカルボン酸又はその塩の配合量に対する前記塩基性アミノ酸の配合量の比が0.2より大きく1.0以下であることを特徴とする金属粉末の製造方法。 - 前記還元剤溶液を前記金属塩溶液に添加して混合する工程の前に、前記金属塩溶液及び前記還元剤溶液のうち少なくとも一方の溶液を、前記還元剤による還元温度まで加熱する工程を含む請求項1に記載の金属粉末の製造方法。
- 前記還元剤溶液を前記金属塩溶液に添加して得られる混合溶液のpHを11以上とする請求項1又は2に記載の金属粉末の製造方法。
- 前記塩基性アミノ酸がリシン、アルギニン及びヒスチジンからなる群から選択された少なくとも1種である請求項1~3のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
- 前記1価以上のカルボン酸又はその塩が、還元性を有しかつ水に溶解性を有する請求項1~4のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
- 前記1価以上のカルボン酸又はその塩が、クエン酸若しくはその塩、及び、アスコルビン酸若しくはその塩から選択された少なくとも1種である請求項1~5のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
- 前記金属粉末となる金属は、Ni、Cu、Pt及びAgからなる群から選択された少なくとも1種である請求項1~6のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
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