JP7292577B2 - ニッケル連結粒子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明のニッケル連結粒子の製造方法は、湿式法であって、少なくとも水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、還元剤としてのヒドラジン、ニッケル錯イオンを形成させるための錯化剤、pH調整剤としての水酸化アルカリと水を含む反応液中において、ヒドラジンによる還元反応でニッケル連結粒子を得る晶析工程を備え、上記反応液中では、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子がニッケルイオン(Ni2+)やニッケル錯イオンを含む溶液中に分散したニッケル前駆体スラリー中で還元反応が進行し、上記ニッケル前駆体粒子が還元反応で消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成される時点で、反応液中に上記ニッケル錯イオンがニッケルに対する割合[モル%](ニッケル錯イオンのモル数/ニッケルのモル数×100)で0.5モル%~40モル%の範囲となるように上記錯化剤を配合することを特徴としている。
前述の通り、晶析工程では、水酸化アルカリとニッケルよりも貴な金属の金属塩の共存下でニッケル塩をヒドラジンで還元する。
まず、上記晶析工程における還元反応について述べると、ニッケル(Ni)の反応は下記の式(1)の2電子反応、ヒドラジン(N2H4)の反応は下記の式(2)の4電子反応であって、例えば、後述のように、ニッケル塩として塩化ニッケル、水酸化アルカリとして水酸化ナトリウムを用いた場合には、還元反応全体は下記の式(3)のように表され、化学量論的には(理論値としては)、ニッケル(Ni)1モルに対し、ヒドラジン(N2H4)0.5モルが必要である。実際には、還元反応で生じるニッケル粒子が高い表面活性を有してヒドラジンの自己分解反応(3N2H4→N2↑+4NH3)を促進するため、ヒドラジンは上記0.5モルよりも多く必要である。
Ni2++2e-→Ni↓ (2電子反応) (1)
(化2)
N2H4→N2↑+4H++4e- (4電子反応) (2)
(化3)
2NiCl2+N2H4+4NaOH
→2Ni↓+N2↑+4NaCl+4H2O (3)
(a)ニッケル塩
本発明に用いるニッケル塩は、水に易溶であるニッケル塩であれば、特に限定されるものではなく、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルから選ばれる1種以上を用いることができる。これらのニッケル塩の中では、塩化ニッケル、硫酸ニッケルあるいはこれらの混合物がより好ましい。
ニッケルよりも貴な金属をニッケル塩溶液に含有させることで、ニッケルを還元析出させる際に、ニッケルよりも貴な金属が先に還元されて初期核となり、この初期核が粒子成長することで微細なニッケル粉末を作製することができる。
本発明では、還元剤としてヒドラジン(N2H4、分子量:32.05)を用いる。なお、ヒドラジンには、無水のヒドラジンの他にヒドラジン水和物である抱水ヒドラジン(N2H4・H2O、分子量:50.06)があり、どちらを用いてもかまわない。ヒドラジンは、その還元反応は前述の式(2)に示す通りであるが、(特にアルカリ性で)還元力が高いこと、還元反応の副生成物が反応液中に生じないこと(窒素ガスと水)、不純物が少ないこと、および入手が容易なこと、という特徴を有しているため還元剤に好適であり、例えば、市販されている工業グレードの60質量%抱水ヒドラジンを用いることができる。
前述の通り、ヒドラジンの還元力は、反応液のアルカリ性が強い程大きくなるため(式(2)参照)、本発明では水酸化アルカリを、アルカリ性を高めるpH調整剤として用いている。水酸化アルカリは特に限定されるものではないが、入手の容易さや価格の面から、アルカリ金属水酸化物を用いることが好ましく、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる1種以上とすることがより好ましい。
本発明で用いる錯化剤は、水溶性でニッケルイオン(Ni2+)の錯化作用が大きいものが好ましく、一分子中に1級~3級アミノ基(1級:-NH2、2級:-NH-、3級:-N=)、カルボキシ基(-COOH)およびその中和基(-COOX:X=アルカリ金属)から選ばれる少なくともいずれか2つ以上を有する有機錯化剤が好適である。これらの有機錯化剤は、アミノ基やカルボキシ基により親水性(水溶性)が付与され、それを使用することで、反応液中にニッケル錯体イオンが形成され、粒径が細かく粒度分布が狭い上に、球状度も良好なニッケル一次粒子を得ることが可能となると同時に、前述したとおり、ニッケル粒子フロックの鎖状に凝集したニッケル一次粒子上へ析出してニッケル一次粒子同志の連結部を強化してニッケル連結粒子の形成を促進できる。
本発明のニッケル連結粒子の製造方法としては、少なくとも水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、還元剤としてのヒドラジン、pH調整剤としての水酸化アルカリと水を含む反応液中で、還元反応によりニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル粒子連結体を晶析させる晶析工程において、反応開始時点の反応液は、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子がニッケルイオン(Ni2+)やニッケル錯イオンを含む溶液中に分散したニッケル前駆体スラリーであって、晶析工程は以下の3段階(a、b、c)に分けることができる。
b)ニッケル前駆体粒子が消費され消失してニッケル一次粒子同志の衝突確率が高まることによりニッケル一次粒子の粗大凝集が起こる段階(ニッケル粒子フロックの形成)
c)さらに反応液中に残存したニッケル錯イオンの還元によってニッケルフロックの鎖状に凝集したニッケル一次粒子上へニッケルとして析出してニッケル一次粒子同志の連結部を強化する段階(ニッケル連結粒子の形成)
この3段階をさらに詳細に説明する。
晶析工程で還元反応により反応液中に生じたニッケル連結粒子は、公知の手順を用いて反応液から分離すればよく、その後に、たとえば、洗浄、固液分離、乾燥の手順を経ることにより、ニッケル連結粒子からなるニッケル粉末が得られる。具体的には、反応液中にニッケル連結粒子を晶析させた後、ニッケル連結粒子に対して、ろ過と純水を用いた洗浄を行い、ろ過後のニッケル連結粒子の含水ケーキを温風または減圧雰囲気下で乾燥すればよい。また、所望により、乾燥後のニッケル連結粒子からなるニッケル粉末に熱処理を施したりしてもよい。
上記説明した製造方法により得られたニッケル連結粒子は、薬剤および薬剤に含まれる不純物や酸化被膜中の酸素(これらをまとめて以降不可避不純物とする。)を除けば他の成分がニッケル連結粒子に混入することはなく、極めてニッケル純度が高い粒子となる。つまり、本発明に係るニッケル連結粒子は不可避不純物とニッケルからなり、窒素の含有量が0.05質量%以下であり、アルカリ金属の含有量は0.03質量%以下である。
ニッケル粉末のニッケル一次粒子の平均粒径は、SEM観察像において200個以上のニッケル一次粒子の輪郭を抽出し、画像処理によりそれらニッケル一次粒子の面積から真円換算で算出した直径の平均値として求めた。
ニッケル連結粒子は、ニッケル粉末のSEM観察像において、少なくとも3個以上のニッケル一次粒子が鎖状に連結しているニッケル粉末を指し、そのニッケル一次粒子の平均の連結個数は、SEM観察像から選択されたニッケル連結粒子のニッケル一次粒子の連結個数を計測して平均値を計算した。
[ニッケル塩溶液の調整]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)0.53mg(ミリグラム)、錯化剤として酒石酸((CH(OH)COOH)2、分子量:150.09)25.57gを純水1780mLに溶解して、主成分としてのニッケル塩とニッケルより貴な金属の金属塩である核剤と錯化剤を含有する水溶液である、ニッケル塩溶液を調整した。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し2.0質量ppm(1.1モルppm)、酒石酸のニッケルに対する割合は10.0モル%であった。
還元剤として、抱水ヒドラジン(N2H4・H2O、分子量:50.06)を純水で1.67倍に希釈した市販の60%抱水ヒドラジン(エムジーシー大塚ケミカル株式会社製)を355.4g秤量し、水酸化アルカリを含まず、主成分としてのヒドラジンを含有する水溶液である還元剤溶液を調整した。還元剤溶液に含まれるヒドラジンのニッケルに対するモル比は2.5であった。
水酸化アルカリとして、水酸化ナトリウム(NaOH、分子量:40.0)204gを、純水560mLに溶解して、主成分としての水酸化ナトリウムを含有する水溶液である水酸化アルカリ溶液を用意した。水酸化アルカリ溶液に含まれる水酸化ナトリウムのニッケルに対するモル比は3.0であった。
なお、上記ニッケル塩溶液、還元剤溶液、および水酸化アルカリ溶液における使用材料には、60%抱水ヒドラジンを除き、いずれも和光純薬工業株式会社製の試薬を用いた。
図4に示すとおり、上記ニッケル塩溶液と還元剤溶液を、それぞれ液温60℃になるように加熱した後、2液を撹拌混合(混合による発熱あり)してニッケル塩・還元剤含有液とし、さらに該ニッケル塩・還元剤含有液に液温60℃の水酸化アルカリ溶液を混合して液温65℃の反応液(塩化ニッケル+パラジウム塩+酒石酸+ヒドラジン+水酸化ナトリウム)を調合した。調合直後の反応液は、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子がニッケル錯イオン(ニッケル酒石酸錯イオン)を含む溶液中に分散したニッケル前駆体スラリーの状態である。この状態から還元反応(晶析反応)を開始させ(反応開始温度65℃)、ニッケル粉末を晶析させた。還元反応の途中では晶析反応の発熱により液温の約70℃程度までの一時的な上昇が見られた。還元反応が進行して反応液中のニッケル前駆体粒子が消費・消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成された時点で、反応液をサンプリングしニッケル粒子をろ別して、薄緑色透明の液中に溶解しているニッケル錯イオン濃度を化学分析(ICP分析)で求め、ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合[モル%]を算出したところ、1.2モル%であった。
得られたニッケル粉末のSEMで観察した。ニッケル粉末のニッケル一次粒子の平均粒径は、SEMの観察像から、全様が一様に観察できるニッケル粉末を画像処理することにより求めた。また、同じくSEMの観察像から、ニッケル一次粒子の連結の有無を観察した。その結果、ニッケル粉末は、ニッケル一次粒子の平均粒径が0.33μmで、ニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子で構成されていることを確認した。図7に得られたニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)を示す。この写真から求めたニッケル一次粒子の平均の連結個数は15個であった。
実施例1におけるニッケル塩溶液中のニッケルよりも貴な金属の金属塩である塩化パラジウム(II)アンモニウムの量を2.67mgとした以外は実施例1と同様にしてニッケル粉末を得た。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し10.0質量ppm(5.5モルppm)であった。還元反応が進行して反応液中のニッケル前駆体粒子が消費・消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成された時点で、反応液をサンプリングしニッケル粒子をろ別して、薄緑色透明の液中に溶解しているニッケル錯イオン濃度を化学分析(ICP分析)で求め、ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合[モル%]を算出したところ、0.8モル%であった。
実施例1におけるニッケル塩溶液中の錯化剤として、酒石酸に代えてクエン酸三ナトリウム二水和物(Na3(C(OH)(CH2COO)2COO)・2H2O)、分子量:294.1)250.5gを使用した以外は実施例1と同様にしてニッケル粉末を得た。ここで、ニッケル塩溶液において、クエン酸三ナトリウム二水和物はニッケル(Ni)に対し50モル%であった。還元反応が進行して反応液中のニッケル前駆体粒子が消費・消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成された時点で、反応液をサンプリングしニッケル粒子をろ別して、緑色透明の液中に溶解しているニッケル錯イオン濃度を化学分析(ICP分析)で求め、ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合[モル%]を算出したところ、1.0モル%であった。
[ニッケル塩溶液の調整]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)0.53mg(ミリグラム)を純水1780mLに溶解して、主成分としてのニッケル塩とニッケルより貴な金属の金属塩である核剤を含有する水溶液である、ニッケル塩溶液を調整した。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し2.0質量ppm(1.1モルppm)であった。
図6に示すとおり、上記ニッケル塩溶液と実施例1の還元剤溶液を、それぞれ液温55℃になるように加熱した後、2液を撹拌混合(混合による発熱あり)してニッケル塩・還元剤含有液とし、さらに該ニッケル塩・還元剤含有液に液温55℃とした実施例1の水酸化アルカリ溶液を混合して液温60℃の反応液(塩化ニッケル+パラジウム塩+ヒドラジン+水酸化ナトリウム)を調合した。調合直後の反応液は、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子が微量のニッケルイオン(Ni2+)を含む溶液中に分散したニッケル前駆体スラリーの状態である。この状態から還元反応(晶析反応)を開始させ(反応開始温度60℃)、還元反応開始後に(還元反応でニッケル粒子が生成されて反応液の色が黒化する時点で)、錯化剤としてのエチレンジアミン(H2NC2H4NH2、分子量:60.1)51.2gを滴下により添加してニッケル粉末を晶析させた。ここで、ニッケル塩溶液において、エチレンジアミンはニッケル(Ni)に対し50モル%であった。還元反応の途中では晶析反応の発熱により液温の約65℃程度までの一時的な上昇が見られた。還元反応が進行して反応液中のニッケル前駆体粒子が消費・消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成された時点で、反応液をサンプリングしニッケル粒子をろ別して、薄青色透明の液中に溶解しているニッケル錯イオン濃度を化学分析(ICP分析)で求め、ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合[モル%]を算出したところ、0.9モル%であった。
[ニッケル塩溶液の調整]
ニッケル塩として硫酸ニッケル6水和物(NiSO4・6H2O、分子量:262.85)448g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)0.27mg(ミリグラム)、錯化剤として酒石酸((CH(OH)COOH)2、分子量:150.09)255.7gを純水1780mLに溶解して、主成分としてのニッケル塩とニッケルより貴な金属の金属塩である核剤と錯化剤を含有する水溶液である、ニッケル塩溶液を調整した。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し1.0質量ppm(0.55モルppm)、酒石酸のニッケルに対する割合は100モル%であった。
還元剤として、抱水ヒドラジン(N2H4・H2O、分子量:50.06)を純水で1.67倍に希釈した市販の60%抱水ヒドラジン(エムジーシー大塚ケミカル株式会社製)を355.4g、水酸化ナトリウム(NaOH、分子量:40.0)184gを、純水560mLに溶解して、主成分としてのヒドラジンと水酸化ナトリウムを含有する水溶液である還元剤溶液を調整した。還元剤溶液に含まれるヒドラジンのニッケルに対するモル比は2.5で、水酸化ナトリウムのニッケルに対するモル比は2.7であった。
なお、上記ニッケル塩溶液、および還元剤溶液における使用材料には、60%抱水ヒドラジンを除き、いずれも和光純薬工業株式会社製の試薬を用いた。
図3に示すとおり、上記ニッケル塩溶液と、還元剤溶液(ヒドラジン+NaOH)を、それぞれ液温55℃になるように加熱した後、2液を撹拌混合して(混合による発熱あり)、液温60℃の反応液(硫酸ニッケル+パラジウム塩+酒石酸+ヒドラジン+水酸化ナトリウム)を調合した。調合直後の反応液は、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子がニッケル錯イオン(ニッケル酒石酸錯イオン)を含む溶液中に分散したニッケル前駆体スラリーの状態である。この状態から還元反応(晶析反応)を開始させ(反応開始温度60℃)、ニッケル粉末を晶析させた。還元反応の途中では晶析反応の発熱により液温の約63℃程度までの一時的な上昇が見られた。還元反応が進行して反応液中のニッケル前駆体粒子が消費・消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成された時点で、反応液をサンプリングしニッケル粒子をろ別して、緑色透明の液中に溶解しているニッケル錯イオン濃度を化学分析(ICP分析)で求め、ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合[モル%]を算出したところ、28.3モル%であった。
[ニッケル塩溶液の調整]
ニッケル塩として硫酸ニッケル6水和物(NiSO4・6H2O、分子量:262.85)448g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH4)2PdCl4、分子量:284.31)0.27mg(ミリグラム)、錯化剤としてクエン酸三ナトリウム二水和物(Na3(C(OH)(CH2COO)2COO)・2H2O)、分子量:294.1)285gを純水1780mLに溶解して、主成分としてのニッケル塩とニッケルより貴な金属の金属塩である核剤と錯化剤を含有する水溶液である、ニッケル塩溶液を調整した。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し1.0質量ppm(0.55モルppm)、クエン酸三ナトリウムのニッケルに対する割合は57モル%であった。
上記ニッケル塩溶液を用いた以外は、実施例5と同様の還元反応(晶析反応)を行い(反応開始温度60℃)、ニッケル粉末を晶析させた。還元反応が進行して反応液中のニッケル前駆体粒子が消費・消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成された時点で、反応液をサンプリングしニッケル粒子をろ別して、緑色透明の液中に溶解しているニッケル錯イオン濃度を化学分析(ICP分析)で求め、ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合[モル%]を算出したところ、25.7モル%であった。
前記ニッケル粒子フロックが形成された後もニッケル錯イオンの還元反応は進行し、還元反応が終了した反応液の上澄み液はほぼ無色透明であり(ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合が0.1モル%程度)、反応液中のニッケル成分はほぼすべて金属ニッケルに還元されていることを確認した。ニッケルを晶析させるまでのそれぞれの条件を、表1にまとめて示す。
実施例1におけるニッケル塩溶液中の錯化剤である酒石酸の量を12.79gとした以外は実施例1と同様にしてニッケル粉末を得た。ここで酒石酸のニッケルに対して5.0モル%であった。還元反応が進行して反応液中のニッケル前駆体粒子が消費・消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成された時点で、反応液をサンプリングしニッケル粒子をろ別して、無色透明の液中に溶解しているニッケル錯イオン濃度を化学分析(ICP分析)で求め、ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合[モル%]を算出したところ、0.05モル%未満であった。
実施例1におけるニッケル塩溶液中に錯化剤を添加しない以外は実施例1と同様にしてニッケル粉末を得た。還元反応が進行して反応液中のニッケル前駆体粒子が消費・消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成された時点で、反応液をサンプリングしニッケル粒子をろ別して、無色透明の液中に溶解しているニッケル錯イオン濃度を化学分析(ICP分析)で求め、ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合[モル%]を算出したところ、0.05モル%未満であった。
Claims (13)
- 不可避不純物とニッケルからなる、ニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子であって、
前記ニッケル一次粒子の平均の連結個数が10個以上であり、
窒素の含有量が0.05質量%以下であり、アルカリ金属元素の含有量が0.03質量%以下であることを特徴とするニッケル連結粒子。 - 前記ニッケル一次粒子の平均粒径は0.05μm~0.5μmであることを特徴とする請求項1に記載のニッケル連結粒子。
- 少なくとも水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の塩、還元剤、錯化剤、水酸化アルカリと水とを含む反応液中において、還元反応によりニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子を得る晶析工程を備えるニッケル連結粒子の製造方法であって、
前記ニッケル一次粒子の平均の連結個数が10個以上であり、
前記還元剤はヒドラジンであり、
前記反応液では、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子がニッケル錯イオンを含む溶液中に分散したニッケル前駆体スラリー中で還元反応が進行し、還元反応終盤で前記水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子が還元反応による消費により消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)がニッケル錯イオンを含む反応液中に形成された後、前記ニッケル錯イオンの還元反応が進行するとともに、
前記ニッケル前駆体粒子が消失してニッケル粒子フロックが形成された時点において、反応液中のニッケル錯イオンのニッケルに対する割合[モル%](ニッケル錯イオンのモル数/ニッケルのモル数×100)が0.5モル%~40モル%の範囲であることを特徴とするニッケル連結粒子の製造方法。 - 前記錯化剤が一分子中に1級~3級アミノ基(1級:-NH2、2級:-NH-、3級:-N=)、カルボキシ基(-COOH)およびその中和基(-COOX:X=アルカリ金属)から選ばれる少なくともいずれか2つ以上を有する有機錯化剤であることを特徴とする請求項3に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
- 前記有機錯化剤が、エチレンジアミン(H2NC2H4NH2)、ジエチレントリアミン(H2NC2H4NHC2H4NH2)、トリエチレンテトラミン(H2N(C2H4NH)2C2H4NH2)、テトラエチレンペンタミン(H2N(C2H4NH)3C2H4NH2)、ペンタエチレンヘキサミン(H2N(C2H4NH)4C2H4NH2)、プロピレンジアミン(CH3CH(NH2)CH2NH2)、トリス(2-アミノエチル)アミン(N(C2H4NH2)3)、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(H2NC2H4NHC2H4OH)、N-(2-アミノエチル)プロパノールアミン(H2NC2H4NHC3H6OH)、1,2-シクロヘキサンジアミン(H2NC6H10NH2)、N,N’-ジアセチルエチレンジアミン(CH3CONHC2H4NHCOCH3)、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(CH3NHC2H4NHCH3)、N,N’-ジエチルエチレンジアミン(C2H5NHC2H4NHC2H5)、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン(CH3(CH3)CHNHC2H4NHCH(CH3)CH3)、1,2-シクロヘキサンジアミン(H2NC6H10NH2)、グリシン(H2NCH2COOH)、2,3-ジアミノプロピオン酸(H2NCH2CH(NH)COOH)、エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(HOOCCH2NHC2H4NHCH2COOH)、エチレンジアミン四酢酸((HOOCCH2)2NCH2CH2N(CH2COOH)2)、酒石酸((CH(OH)COOH)2)、クエン酸(C(OH)(CH2COOH)2COOH)、およびそれらのアルカリ金属塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項4に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
- 前記水溶性ニッケル塩が、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、および硝酸ニッケルから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
- 前記ニッケルよりも貴な金属の塩が、銅塩、金塩、銀塩、白金塩、およびパラジウム塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項3~6のいずれか1項に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
- 前記水酸化アルカリが、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項3~7のいずれか1項に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
- 前記還元反応によりニッケル連結粒子を得る晶析工程が、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩とを水に溶解させたニッケル塩溶液、および、少なくとも還元剤と水酸化アルカリと水とを含む還元剤溶液を用意し、前記還元剤溶液と前記ニッケル塩溶液の少なくともいずれかに前記錯化剤を加えた後、還元剤溶液にニッケル塩溶液を添加混合するか、またはニッケル塩溶液に還元剤溶液を添加混合して行うことを特徴とする請求項3~8のいずれか1項に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
- 前記還元反応によりニッケル連結粒子を得る晶析工程が、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩を水に溶解させたニッケル塩溶液、少なくとも還元剤と水を含む還元剤溶液、および少なくとも水酸化アルカリと水を含む水酸化アルカリ溶液を用意し、前記還元剤溶液、前記ニッケル塩溶液、および前記水酸化アルカリ溶液の少なくともいずれかに前記錯化剤を加えた後、ニッケル塩溶液と還元剤溶液を混合してニッケル塩・還元剤含有液を得、当該ニッケル塩・還元剤含有液に水酸化アルカリ溶液を添加混合して行うことを特徴とする請求項3~8のいずれか1項に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
- 前記還元反応によりニッケル連結粒子を得る晶析工程が、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩とを水に溶解させたニッケル塩溶液、および、少なくとも還元剤と水酸化アルカリと水とを含む還元剤溶液を用意し、前記還元剤溶液に前記ニッケル塩溶液を添加混合するか、または前記ニッケル塩溶液に前記還元剤溶液を添加混合して晶析反応を開始させた後、前記錯化剤を加えて行うことを特徴とする請求項3~8のいずれか1項に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
- 前記還元反応によりニッケル連結粒子を得る晶析工程が、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩を水に溶解させたニッケル塩溶液、少なくとも還元剤と水を含む還元剤溶液、少なくとも水酸化アルカリと水を含む水酸化アルカリ溶液を用意し、前記ニッケル塩溶液と前記還元剤溶液を混合してニッケル塩・還元剤含有液を得、当該ニッケル塩・還元剤含有液に水酸化アルカリ溶液を添加混合して晶析反応を開始させた後、前記錯化剤を加えて行うことを特徴とする請求項3~8のいずれか1項に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
- 前記還元反応によりニッケル連結粒子を得る晶析工程において、還元反応を開始させる時点の反応液の温度(反応開始温度)が、40℃~95℃であることを特徴とする請求項3~12のいずれか1項に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
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