JP2020007633A - ニッケル連結粒子およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】純度の高いニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子と、その製造方法の提供。【解決手段】不可避不純物とニッケルからなる、ニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子であって、窒素の含有量が0.05質量%以下であり、アルカリ金属元素の含有量が0.03質量%以下のニッケル連結粒子である。このニッケル連結粒子は、還元反応によりニッケル一次粒子が鎖状に連結する晶析工程を備え、反応液では、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子がニッケル錯イオンを含む溶液中に分散したニッケル前駆体スラリー中で還元反応が進行し、還元反応終盤で水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子が還元反応により消失してニッケル粒子フロックがニッケル錯イオンを含む反応液中に形成された後、反応液中のニッケル錯イオンのニッケルに対する割合が0.5モル%〜40モル%の範囲とすることで製造される。【選択図】図7

Description

本発明は、ニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子およびその製造方法に関する。
金属粉末、特にニッケル粉末は、電池の電極材料や触媒材料として広く利用されている。これらの用途においては、粉末表面の反応性を利用するため、比表面積が高いほど各用途においてその機能性が向上する。また、ニッケル粉末を一つの集合体としてみた時に、粉末(集合体)の外部に向けられた表面だけでなく、粉末(集合体)の内部にも反応に寄与する表面があれば有利である。このようなニッケル粉末としては、一次粒子が集合した二次粒子の形態であり、かつ粉末(集合体)の内部も反応に寄与できることの指標として、二次粒子が開空孔(オープンポア)を有する比表面積の高いニッケル粉末が求められている。
開空孔(オープンポア)を有する比表面積の高い金属粉末を製造する方法としては、特許文献1に第1の金属粒子と第1の金属の融点よりも低い融点の第2の金属粒子の混合物を用意し、その混合物を加熱して第2の金属粒子を溶融させ、第1の金属粒子が連結した粒子を得る方法が開示されている。特許文献2には、第1の金属粒子の表面に、第1の金属よりも融点が低い第2の金属を被覆し、この被覆された第1の粒子を加熱して第2の金属を溶融させ、第1の金属粒子が連結した粒子を得る方法も開示されている。これらの連結した金属粒子では連結させるために異種金属を用いるため、粒子表面の有効な反応面が減少するだけでなく、異種金属の影響も考慮しなければならないため、電池の電極材料や触媒材料に用いられるニッケル粉末に適用するには制約が多いとの問題があった。
一方特許文献3には、電解コンデンサに用いられる高比表面積のタンタルやニオブの粉末の製造において、タンタルやニオブの酸化物を不活性雰囲気下で加熱した溶融塩を、アルカリ金属のハロゲン化物と、Mg、Ca、Sr、Ba、Ceからなる群から選ばれる1種以上の金属のハロゲン化物との存在下で還元する方法が開示されている。しかしながら、この方法により得られたタンタルやニオブの粉末は、不活性雰囲気として窒素を用いた場合には窒素の不純物量が0.1質量%程度と高く、電池の電極材料や触媒材料に用いるニッケル粉末に適用するには問題があった。また不活性雰囲気にアルゴンを用いた場合には、製造コストが高くなる問題があった。さらに、還元熱処理しただけでは酸素含有量が高く、脱酸処理をして酸素含有量を低下させている。
特開2012−224885号公報 特開2013−40358号公報 特表2005−517091号公報
上記説明した方法では、第2の金属を溶融させて連結させる工程が必要(特許文献1および特許文献2)であったり、脱酸工程が必要(特許文献3)であったりするので製造工程が複雑で長く、二次粒子の粒径に対して比表面積が高い金属粉末を得るには製造コストが高いとの問題があった。またこれらの金属粉末は純度が低く、電池の電極材料は触媒に用いるには障害となっていた。
そこで本発明では、純度の高いニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子および複雑な製造工程を必要としないその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、ニッケル一次粒子径及びニッケル一次粒子の連結度合を制御可能な湿式法に着目して鋭意検討した結果、ニッケル前駆体のスラリーを含む反応液中で還元反応を行う晶析工程において、ニッケル前駆体のスラリーを含む反応液に特定の錯化剤を特定の量配合させることで、ニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子を晶析させることができることを見出した。
すなわち、本発明の第一の発明は、不可避不純物とニッケルからなる、ニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子であって、窒素の含有量が0.05質量%以下であり、アルカリ金属元素の含有量が0.03質量%以下であることを特徴とするニッケル連結粒子である。
本発明の第二の発明は、前記ニッケル一次粒子の平均の連結個数が5個以上であることを特徴とするニッケル連結粒子である。
本発明の第三の発明は、前記ニッケル一次粒子の平均粒径は0.05μm〜0.5μmであることを特徴とするニッケル連結粒子である。
本発明の第四の発明は、少なくとも水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の塩、還元剤、錯化剤、水酸化アルカリと水とを含む反応液中において、還元反応によりニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子を得る晶析工程を備えるニッケル連結粒子の製造方法であって、前記還元剤はヒドラジンであり、前記反応液では、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子がニッケルイオン(Ni2+)やニッケル錯イオンを含む溶液中に分散したニッケル前駆体スラリー中で還元反応が進行し、還元反応終盤で前記水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子が還元反応による消費により消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)がニッケル錯イオンを含む反応液中に形成された後、前記ニッケル錯イオンの還元反応による消費が進行するとともに、前記ニッケル前駆体粒子が消失してニッケル粒子フロックが形成された時点において、反応液中のニッケル錯イオンのニッケルに対する割合[モル%](ニッケル錯イオンのモル数/ニッケルのモル数×100)が0.5モル%〜40モル%の範囲であることを特徴とするニッケル連結粒子の製造方法である。
本発明の第五の発明は、前記錯化剤が、一分子中に1級〜3級アミノ基(1級:−NH、2級:−NH−、3級:−N=)、カルボキシ基(−COOH)およびその中和基(−COOX:X=アルカリ金属)から選ばれる少なくともいずれか2つ以上を有する有機錯化剤であることを特徴とするニッケル連結粒子の製造方法である。
本発明の第六の発明は、前記有機錯化剤が、エチレンジアミン(HNCNH)、ジエチレントリアミン(HNCNHCNH)、トリエチレンテトラミン(HN(CNH)NH)、テトラエチレンペンタミン(HN(CNH)NH)、ペンタエチレンヘキサミン(HN(CNH)NH)、プロピレンジアミン(CHCH(NH)CHNH)、トリス(2−アミノエチル)アミン(N(CNH)、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン(HNCNHCOH)、N−(2−アミノエチル)プロパノールアミン(HNCNHCOH)、1,2−シクロヘキサンジアミン(HNC10NH)、N,N’−ジアセチルエチレンジアミン(CHCONHCNHCOCH)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン(CHNHCNHCH)、N,N’−ジエチルエチレンジアミン(CNHCNHC)、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン(CH(CH)CHNHCNHCH(CH)CH)、1,2−シクロヘキサンジアミン(HNC10NH)、グリシン(HNCHCOOH)、2,3−ジアミノプロピオン酸(HNCHCH(NH)COOH)、エチレンジアミン−N,N’−二酢酸(HOOCCHNHCNHCHCOOH)、エチレンジアミン四酢酸((HOOCCHNCHCHN(CHCOOH))、酒石酸((CH(OH)COOH))、クエン酸(C(OH)(CHCOOH)COOH)、およびそれらのアルカリ金属塩から選ばれる1種以上であることを特徴とするニッケル連結粒子の製造方法である。
本発明の第七の発明は、前記水溶性ニッケル塩が、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、および硝酸ニッケルから選ばれる1種以上であることを特徴とするニッケル連結粒子の製造方法である。
本発明の第八の発明は、前記ニッケルよりも貴な金属の塩が、銅塩、金塩、銀塩、白金塩、およびパラジウム塩から選ばれる1種以上であることを特徴とするニッケル連結粒子の製造方法である。
本発明の第九の発明は、前記水酸化アルカリが、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムから選ばれる1種以上であることを特徴とするニッケル連結粒子の製造方法である。
本発明の第十の発明は、前記還元反応によりニッケル連結粒子を得る晶析工程が、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩とを水に溶解させたニッケル塩溶液、および、少なくとも還元剤と水酸化アルカリと水とを含む還元剤溶液を用意し、前記還元剤溶液と前記ニッケル塩溶液の少なくともいずれかに前記錯化剤を加えた後、還元剤溶液にニッケル塩溶液を添加混合するか、またはニッケル塩溶液に還元剤溶液を添加混合して行うことを特徴とするニッケル連結粒子の製造方法である。
本発明の第十一の発明は、前記還元反応によりニッケル連結粒子を得る晶析工程が、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩を水に溶解させたニッケル塩溶液、少なくとも還元剤と水を含む還元剤溶液、および少なくとも水酸化アルカリと水を含む水酸化アルカリ溶液を用意し、前記還元剤溶液、前記ニッケル塩溶液、および前記水酸化アルカリ溶液の少なくともいずれかに前記錯化剤を加えた後、ニッケル塩溶液と還元剤溶液を混合してニッケル塩・還元剤含有液を得、当該ニッケル塩・還元剤含有液に水酸化アルカリ溶液を添加混合して行うことを特徴とするニッケル連結粒子の製造方法である。
本発明の第十二の発明は、前記還元反応によりニッケル連結粒子を得る晶析工程が、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩とを水に溶解させたニッケル塩溶液、および、少なくとも還元剤と水酸化アルカリと水とを含む還元剤溶液を用意し、前記還元剤溶液に前記ニッケル塩溶液を添加混合するか、または前記ニッケル塩溶液に前記還元剤溶液を添加混合して晶析反応を開始させた後、前記錯化剤を加えて行うことを特徴とするニッケル連結粒子の製造方法である。
本発明の第十三の発明は、前記還元反応によりニッケル連結粒子を得る晶析工程が、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩を水に溶解させたニッケル塩溶液、少なくとも還元剤と水を含む還元剤溶液、少なくとも水酸化アルカリと水を含む水酸化アルカリ溶液を用意し、前記ニッケル塩溶液と前記還元剤溶液を混合してニッケル塩・還元剤含有液を得、当該ニッケル塩・還元剤含有液に水酸化アルカリ溶液を添加混合して晶析反応を開始させた後、前記錯化剤を加えて行うことを特徴とするニッケル連結粒子の製造方法である。
本発明の第十四の発明は、前記還元反応によりニッケル連結粒子を得る晶析工程において、還元反応を開始させる時点の反応液の温度(反応開始温度)が、40℃〜95℃であることを特徴とするニッケル連結粒子の製造方法である。
本発明に係るニッケル連結粒子の製造方法によれば、ニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子を製造することができ、電池の電極材料や触媒材料として好適に利用することができる。また、制御が容易な湿式法を用い、複雑な製造工程を必要としないため、工業的価値も高い。
従来の湿式法でのニッケル粒子形成過程を示す概略図である。 本発明の湿式法でのニッケル連結粒子形成過程を示す概略図である。 本発明に係るニッケル粉末(ニッケル連結粒子)の製造工程の一例を示す模式図である。 本発明に係るニッケル粉末(ニッケル連結粒子)の製造工程の別の一例を示す模式図である。 本発明に係るニッケル粉末(ニッケル連結粒子)の製造工程のさらに別の一例を示す模式図である。 本発明に係るニッケル粉末(ニッケル連結粒子)の製造工程の他の一例を示す模式図である。 実施例1に係るニッケル連結粒子の走査電子顕微鏡写真(SEM像)である。 実施例5に係るニッケル連結粒子の走査電子顕微鏡写真(SEM像)である。 実施例6に係るニッケル連結粒子の走査電子顕微鏡写真(SEM像)である。 比較例1に係るニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)である。 比較例2に係るニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)である。
従来の湿式法でのニッケル粒子の製造方法や本発明に係る(湿式法での)ニッケル連結粒子の製造方法では、それぞれ図1、図2に示すように、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子がニッケル錯イオンを含む溶液中に分散したニッケル前駆体スラリー(反応液)中でニッケル錯イオンおよびニッケル前駆体粒子が還元されてニッケル一次粒子が生成する段階(ニッケル錯イオンが還元されて消費されると、新たにニッケル前駆体粒子が錯化されてニッケル錯イオンが生成されるため、結局のところ還元反応によりニッケル前駆体粒子が消費される)と、ニッケル一次粒子間に物理的に介在して凝集抑制作用を発揮していたニッケル前駆体粒子が消費され消失してニッケル一次粒子同志の反応液中での衝突・結合確率が高まることでニッケル一次粒子が鎖状に凝集したニッケル粒子フロックが生じる段階、という共通した過程を有している。
ところが、その後の過程については、従来の湿式法でのニッケル粒子の製造方法では、反応液中には極わずかのニッケル錯イオンしか残存していないため、それが還元されてニッケル粒子フロックの鎖状に凝集したニッケル一次粒子上へ析出しても、ニッケル一次粒子同志の連結は弱いままであって(図1参照)、晶析工程後の洗浄・ろ過・乾燥などの工程で鎖状の連結状態が破壊されてニッケル連結粒子は形成されない。一方で、本発明に係る(湿式法での)ニッケル連結粒子の製造方法では、反応液中にニッケル錯イオンが高濃度で残存しており、それが還元されてニッケル粒子フロックの鎖状に凝集したニッケル一次粒子上へニッケルとして析出すると、ニッケル一次粒子同志の連結部を強化してニッケル連結粒子を形成する過程(図2参照)が起こることを見出した。従って、ニッケル連結粒子の連結の程度を制御するためには、ニッケル前駆体粒子が消失してニッケル一次粒子が鎖状に凝集したニッケル粒子フロックが生じる時点で、反応液中に含まれているニッケル錯イオンの量が重要であることも見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成したものである。
以下、本発明のニッケル連結粒子の製造方法について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
[ニッケル連結粒子の製造方法]
本発明のニッケル連結粒子の製造方法は、湿式法であって、少なくとも水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、還元剤としてのヒドラジン、ニッケル錯イオンを形成させるための錯化剤、pH調整剤としての水酸化アルカリと水を含む反応液中において、ヒドラジンによる還元反応でニッケル連結粒子を得る晶析工程を備え、上記反応液中では、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子がニッケルイオン(Ni2+)やニッケル錯イオンを含む溶液中に分散したニッケル前駆体スラリー中で還元反応が進行し、上記ニッケル前駆体粒子が還元反応で消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成される時点で、反応液中に上記ニッケル錯イオンがニッケルに対する割合[モル%](ニッケル錯イオンのモル数/ニッケルのモル数×100)で0.5モル%〜40モル%の範囲となるように上記錯化剤を配合することを特徴としている。
(1)晶析工程
前述の通り、晶析工程では、水酸化アルカリとニッケルよりも貴な金属の金属塩の共存下でニッケル塩をヒドラジンで還元する。
(1−1)晶析反応(還元反応)
まず、上記晶析工程における還元反応について述べると、ニッケル(Ni)の反応は下記の式(1)の2電子反応、ヒドラジン(N24)の反応は下記の式(2)の4電子反応であって、例えば、後述のように、ニッケル塩として塩化ニッケル、水酸化アルカリとして水酸化ナトリウムを用いた場合には、還元反応全体は下記の式(3)のように表され、化学量論的には(理論値としては)、ニッケル(Ni)1モルに対し、ヒドラジン(N24)0.5モルが必要である。実際には、還元反応で生じるニッケル粒子が高い表面活性を有してヒドラジンの自己分解反応(3N→N↑+4NH)を促進するため、ヒドラジンは上記0.5モルよりも多く必要である。
ここで、式(2)のヒドラジンの還元反応から、ヒドラジンはアルカリ性が強い程、その還元力が大きくなることが分かる。上記水酸化アルカリはアルカリ性を高めるpH調整剤として用いており、ヒドラジンの還元反応を促進する働きを担っている。
(化1)
Ni2++2e-→Ni↓ (2電子反応) (1)
(化2)
24→N2↑+4H++4e- (4電子反応) (2)
(化3)
2NiCl2+N24+4NaOH
→2Ni↓+N2↑+4NaCl+4H2O (3)
このようにヒドラジンの還元反応を促進するために、反応液に水酸化アルカリを配合させることから、反応液は、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子のスラリー(ニッケル前駆体スラリー)となる。ニッケル前駆体は水に難溶性であればよく、後述するように反応液中でスラリー状となれば、水酸化ニッケルに限定されることはなく、例えば炭酸ニッケルなど別の態様でもかまわない。
(1−2)晶析工程に用いる薬剤
(a)ニッケル塩
本発明に用いるニッケル塩は、水に易溶であるニッケル塩であれば、特に限定されるものではなく、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルから選ばれる1種以上を用いることができる。これらのニッケル塩の中では、塩化ニッケル、硫酸ニッケルあるいはこれらの混合物がより好ましい。
(b)ニッケルよりも貴な金属の金属塩
ニッケルよりも貴な金属をニッケル塩溶液に含有させることで、ニッケルを還元析出させる際に、ニッケルよりも貴な金属が先に還元されて初期核となり、この初期核が粒子成長することで微細なニッケル粉末を作製することができる。
ニッケルよりも貴な金属の金属塩としては、水溶性の銅塩や、金塩、銀塩、プラチナ塩、パラジウム塩、ロジウム塩、イリジウム塩などの水溶性の貴金属塩が挙げられ、例えば、水溶性の銅塩としては硫酸銅を、水溶性の銀塩としては硝酸銀を、水溶性のパラジウム塩としては塩化パラジウム(II)ナトリウム、塩化パラジウム(II)アンモニウム、硝酸パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)などを用いることができるが、これらには限られない。
ニッケルよりも貴な金属の金属塩として、特に上記に例示したパラジウム塩を用いると、粒度分布は幾分広くなるものの、得られるニッケル粉末の粒径をより微細に制御することが可能となるため好ましい。パラジウム塩を用いた場合の、パラジウム塩とニッケルの割合[モルppm](パラジウム塩のモル数/ニッケルのモル数×106)は、ニッケル粉末の目的とする平均粒径にもよるが、例えば平均粒径0.05μm〜0.5μmであれば、0.2モルppm〜100モルppmの範囲内、好ましくは0.5モルppm〜25モルppmの範囲内がよい。上記割合が0.2モルppm未満だと、平均粒径が0.5μmを超えてしまい、一方で、100モルppmを超えると、高価なパラジウム塩を多く使用することとなり、ニッケル粉末のコスト増につながる。
(c)還元剤
本発明では、還元剤としてヒドラジン(N24、分子量:32.05)を用いる。なお、ヒドラジンには、無水のヒドラジンの他にヒドラジン水和物である抱水ヒドラジン(N24・H2O、分子量:50.06)があり、どちらを用いてもかまわない。ヒドラジンは、その還元反応は前述の式(2)に示す通りであるが、(特にアルカリ性で)還元力が高いこと、還元反応の副生成物が反応液中に生じないこと(窒素ガスと水)、不純物が少ないこと、および入手が容易なこと、という特徴を有しているため還元剤に好適であり、例えば、市販されている工業グレードの60質量%抱水ヒドラジンを用いることができる。
(d)水酸化アルカリ
前述の通り、ヒドラジンの還元力は、反応液のアルカリ性が強い程大きくなるため(式(2)参照)、本発明では水酸化アルカリを、アルカリ性を高めるpH調整剤として用いている。水酸化アルカリは特に限定されるものではないが、入手の容易さや価格の面から、アルカリ金属水酸化物を用いることが好ましく、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる1種以上とすることがより好ましい。
また、水酸化アルカリを用いることで、反応液中でニッケル前駆体粒子となる難溶性の水酸化ニッケル粒子が形成され、水酸化ニッケルスラリー中で還元反応が進行することとなる。
(e)錯化剤
本発明で用いる錯化剤は、水溶性でニッケルイオン(Ni2+)の錯化作用が大きいものが好ましく、一分子中に1級〜3級アミノ基(1級:−NH、2級:−NH−、3級:−N=)、カルボキシ基(−COOH)およびその中和基(−COOX:X=アルカリ金属)から選ばれる少なくともいずれか2つ以上を有する有機錯化剤が好適である。これらの有機錯化剤は、アミノ基やカルボキシ基により親水性(水溶性)が付与され、それを使用することで、反応液中にニッケル錯体イオンが形成され、粒径が細かく粒度分布が狭い上に、球状度も良好なニッケル一次粒子を得ることが可能となると同時に、前述したとおり、ニッケル粒子フロックの鎖状に凝集したニッケル一次粒子上へ析出してニッケル一次粒子同志の連結部を強化してニッケル連結粒子の形成を促進できる。
上記有機錯化剤としては、具体的には、エチレンジアミン(HNCNH)、ジエチレントリアミン(HNCNHCNH)、トリエチレンテトラミン(HN(CNH)NH)、テトラエチレンペンタミン(HN(CNH)NH)、ペンタエチレンヘキサミン(HN(CNH)NH)、プロピレンジアミン(CHCH(NH)CHNH)、トリス(2−アミノエチル)アミン(N(CNH)、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン(HNCNHCOH)、N−(2−アミノエチル)プロパノールアミン(HNCNHCOH)、1,2−シクロヘキサンジアミン(HNC10NH)、N,N’−ジアセチルエチレンジアミン(CHCONHCNHCOCH)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン(CHNHCNHCH)、N,N’−ジエチルエチレンジアミン(CNHCNHC)、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン(CH(CH)CHNHCNHCH(CH)CH)、1,2−シクロヘキサンジアミン(HNC10NH)、グリシン(HNCHCOOH)、2,3−ジアミノプロピオン酸(HNCHCH(NH)COOH)、エチレンジアミン−N,N’−二酢酸(別名称:エチレン−N,N’−ジグリシン、HOOCCHNHCNHCHCOOH)、エチレンジアミン四酢酸((HOOCCHNCHCHN(CHCOOH))、酒石酸((CH(OH)COOH))、クエン酸(C(OH)(CHCOOH)COOH)が挙げられる。これらの有機錯化剤は水溶性であり、酒石酸、クエン酸やそれらのアルカリ金属塩は、錯化能力が高く、かつ入手が容易で安価のため好ましい。
前述のとおり、ニッケル前駆体粒子が消失してニッケル粒子フロックが形成される時点での反応液中のニッケル錯イオンのニッケルに対する割合[モル%](ニッケル錯イオンのモル数/ニッケルのモル数×100)が0.5モル%〜40モル%の範囲となることが必要である。より好ましくは、上記割合を0.7モル%〜35モル%とし、さらに好ましくは0.8モル%〜30モル%とする。錯化剤の錯化力が強い場合、錯化剤の配合割合が大きい場合、反応温度が低い場合、反応液のアルカリ度合いが低い場合、のいずれの場合においてもニッケル錯イオンの形成が進みやすくなり、ニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成される時点において、ニッケル錯イオンが多く残存して、ニッケル連結粒子が生成しやすくなり、かつ、連結部の強化もより促進される。したがって、錯化剤としては、晶析条件に応じて、錯化剤の錯化力と配合量を適宜選定し、ニッケル一次粒子の連結度合いや連結個数を制御する必要がある。上記割合が0.5モル%より少ないとニッケル連結粒子が得られず、40モル%よりも多いと、ニッケル粒子フロックを形成するニッケル一次粒子の割合が少なくなりすぎて、ニッケル連結粒子の形状が連結形状から塊状になる傾向があり好ましくない。
(1−3)晶析工程の晶析手順および晶析条件
本発明のニッケル連結粒子の製造方法としては、少なくとも水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の金属塩、還元剤としてのヒドラジン、pH調整剤としての水酸化アルカリと水を含む反応液中で、還元反応によりニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル粒子連結体を晶析させる晶析工程において、反応開始時点の反応液は、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子がニッケルイオン(Ni2+)やニッケル錯イオンを含む溶液中に分散したニッケル前駆体スラリーであって、晶析工程は以下の3段階(a、b、c)に分けることができる。
a)上記ニッケル前駆体スラリー(反応液)中でニッケル錯イオンおよびニッケル前駆体粒子が還元されてニッケル一次粒子が生成する段階(ニッケル一次粒子の形成)
b)ニッケル前駆体粒子が消費され消失してニッケル一次粒子同志の衝突確率が高まることによりニッケル一次粒子の粗大凝集が起こる段階(ニッケル粒子フロックの形成)
c)さらに反応液中に残存したニッケル錯イオンの還元によってニッケルフロックの鎖状に凝集したニッケル一次粒子上へニッケルとして析出してニッケル一次粒子同志の連結部を強化する段階(ニッケル連結粒子の形成)
この3段階をさらに詳細に説明する。
a)ニッケル一次粒子の形成段階は、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子がニッケルイオン(Ni2+)やニッケル錯イオンを含む溶液中に分散したニッケル前駆体スラリー中でニッケル粒子の初期核が生成し粒子成長が起きている。ここで、反応液に配合する原料ニッケル塩は水に易溶であることから、水に難溶性の反応液中のニッケル化合物粒子を原料ニッケル塩と区別するために、ニッケル前駆体粒子としている。またpH調整に水酸化アルカリを用いることから、ニッケル前駆体粒子は水酸化ニッケル粒子とするのが好適である。
還元反応は、反応液が調製された時点から開始する。反応液の調製は、図3に示すように、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩と水とを含むニッケル塩溶液と、少なくとも還元剤と水酸化アルカリと水とを含む還元剤溶液を混合させる方法、あるいは、図4に示すように、還元剤と水酸化アルカリを別々の溶液とし、ニッケル塩溶液と少なくとも還元剤と水を含む還元剤溶液を混合してから、少なくとも水酸化アルカリと水を含む水酸化アルカリ溶液を添加する方法、のいずれであってもよい。上記図3と図4において、錯化剤は、少なくともニッケル塩溶液、還元剤溶液、水酸化アルカリ溶液のいずれかにあらかじめ配合しておくことができ、その場合は好ましくはニッケル塩溶液にあらかじめ配合しておくのがよい。また、錯化剤は、反応液が調製されて還元反応が開始された後の時点で反応液に添加することもできる。上記のように錯化剤を反応開始後に添加する場合は、図3と図4と同様の薬液配合方法の違いに応じて、図5と図6に示される薬液配合方法となる。
本発明では、初期核の生成と粒子成長が、難溶性であるニッケル前駆体粒子を含むニッケル前駆体スラリー(反応液)中で起きていることが重要である。還元反応により晶析したニッケル一次粒子は、ある程度成長すると互いに衝突してニッケル一次粒子同士で凝集しやすい。しかしながら本発明ではニッケル前駆体スラリー中でニッケル一次粒子が成長するため、ニッケル一次粒子間にニッケル前駆体粒子が介在してその凝集を阻害し、ニッケル一次粒子が凝集しないままで粒子成長が継続する。このようにニッケル前駆体粒子がニッケル一次粒子の凝集を阻害しているため、分散剤などのニッケル一次粒子の凝集を抑制する薬剤を反応液に配合しなくてもよい。
ニッケル前駆体粒子は難溶性であることから、還元反応は主として溶解度の高いニッケル錯イオンを介して進行し、ニッケル前駆体粒子はニッケル錯イオンのニッケル成分が還元反応で消費される分を補う働き(ニッケル前駆体粒子が消費されてニッケル成分をニッケル錯イオンに供給する働き)を有している。従って、ニッケル一次粒子の成長速度は、反応温度などの晶析条件に加え、ニッケル錯イオンの量、すなわち錯化剤の種類と量でも制御される。錯化剤の種類や量については、前述のとおり、ニッケル前駆体粒子が消失してニッケル粒子フロックが形成される時点での反応液中のニッケル錯イオンのニッケルに対する割合[モル%](ニッケル錯イオンのモル数/ニッケルのモル数×100)が0.5モル%〜40モル%の範囲となるように、晶析条件に応じて適宜選定すればよい。
b)ニッケル粒子フロックの形成段階では、還元反応の終盤において水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子が還元反応による消費により消失してニッケル一次粒子が凝集してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)がニッケル錯イオンを含む反応液中に形成される。上記説明したとおり、a)のニッケル一次粒子の形成段階では、ニッケル前駆体粒子によりニッケル一次粒子同志の凝集が阻害されるが、還元反応の進行とともにニッケル前駆体粒子は消費され、反応液中でニッケル一次粒子同志の衝突確率が高まってくる。そうなると、ニッケル一次粒子同志の凝集を阻害する能力が低下し、この能力が発揮しきれなくなった時点でニッケル粒子フロックが形成される。
c)ニッケル連結粒子の生成段階では、ニッケル粒子フロック形成時点において反応液中に高濃度で残存しているニッケルニッケル錯イオンが還元されてニッケル粒子フロックの鎖状に凝集したニッケル一次粒子上へニッケルとして析出し、ニッケル一次粒子同士の連結部を強化してニッケル連結粒子を形成する。ニッケル粒子フロックが形成された時点では、ニッケル前駆体粒子はほぼ消失して、反応液中にはニッケル錯イオンが残存しており、その残存量が、ニッケル連結粒子のニッケル一次粒子の連結度合いや連結個数を左右し、ニッケル錯イオンの残存量が多いほど、ニッケル粒子フロックの鎖状に凝集したニッケル一次粒子上へのニッケル析出量が増大し、図2に示すように連結部がより強固となる。
従って、錯化剤の種類(錯化力の違い)や配合量を、晶析条件に応じて適宜選定して、前述のとおり、ニッケル粒子フロックが形成された時点での反応液中のニッケル錯イオンのニッケルに対する割合[モル%](ニッケル錯イオンのモル数/ニッケルのモル数×100)は0.5モル%〜40モル%の範囲とするのが好ましい。この0.5モル%未満では、図1に示すように、ニッケル粒子フロックのニッケル一次粒子の連結が弱くなり、晶析工程以降の洗浄・ろ過・乾燥などの操作により上記連結が容易に解かれてしまうことがある。一方で、40モル%よりも多いと、前述のとおり、ニッケル粒子フロックを形成するニッケル一次粒子の割合が少なくなりすぎて、ニッケル連結粒子の形状が連結形状から塊状になる傾向があり好ましくない。
ニッケルに対するヒドラジンのモル比(ヒドラジンのモル数/ニッケルのモル数)を1.0〜3.0とすることが好ましく、1.5〜2.5の範囲とすることがより好ましい。
ヒドラジンの総量が上記モル比で1.0未満の場合には、反応液中のニッケルが全量還元されないことがあり好ましくない。一方で、ヒドラジンの総量が上記モル比で3.0を超えると、ニッケル粉末に含有される薬剤起因の不純物量が高くなることがあるだけでなく、過剰なヒドラジンを用いることで経済的にも不利である。
反応液は、還元剤の作用が高くなるように、pHを高くすることが好ましく、pHを10以上、好ましくは10.5〜13.0の範囲とすることで晶析工程全体の反応速度が高くなり、生産性を高めることができる。反応液のpHは、水酸化アルカリの量で調整される。
ニッケル塩溶液や還元剤溶液などの薬液を混合するのに要する時間は、できるだけ短くすることが好ましい。例えば、反応液の調合の場合について述べると、混合開始時点から混合液(反応液)中では還元反応が開始するため、混合時間が長くなりすぎると、初期の混合液(反応液)中と終期の混合液(反応液)中でニッケル粒子の析出タイミングや成長時間に違いが生じて粒度分布の悪化を招く恐れがあるからである。具体的には、混合時間は、混合開始から混合終了までの時間を2分以内とすることが好ましく、こうすれば、例えば、上記反応液の調合の場合であれば、粒度分布が狭いニッケル粉末を得ることができる。
晶析工程において、ニッケル塩溶液や還元剤溶液等の混合により反応液を調製する場合の、還元反応を開始させる時点の反応液の温度(反応開始温度)は40℃〜95℃とすることが好ましく、50℃〜70℃とすることがより好ましい。反応液の温度は、高いほどニッケル粒子の晶析反応速度を高めることができるが、温度が高くなりすぎるとニッケル粉末の粒径を所望の範囲に制御することが困難となるとともに、反応液中のニッケル錯イオン濃度が低下しやすくなってニッケル連結粒子が生成しにくくなる傾向がみられる。また、反応液の温度が低くなると、還元反応速度が低下してニッケル粉末の晶析に時間がかかりすぎて生産性が低下する恐れが生じる。以上の理由から、反応液の温度(反応開始温度)を上記範囲内に設定すれば、ニッケル連結粒子を、そのニッケル一次粒子径や連結状況を容易に制御しながら効率的に製造することができる。
(1−4)晶析工程後の手順
晶析工程で還元反応により反応液中に生じたニッケル連結粒子は、公知の手順を用いて反応液から分離すればよく、その後に、たとえば、洗浄、固液分離、乾燥の手順を経ることにより、ニッケル連結粒子からなるニッケル粉末が得られる。具体的には、反応液中にニッケル連結粒子を晶析させた後、ニッケル連結粒子に対して、ろ過と純水を用いた洗浄を行い、ろ過後のニッケル連結粒子の含水ケーキを温風または減圧雰囲気下で乾燥すればよい。また、所望により、乾燥後のニッケル連結粒子からなるニッケル粉末に熱処理を施したりしてもよい。
[ニッケル連結粒子]
上記説明した製造方法により得られたニッケル連結粒子は、薬剤および薬剤に含まれる不純物や酸化被膜中の酸素(これらをまとめて以降不可避不純物とする。)を除けば他の成分がニッケル連結粒子に混入することはなく、極めてニッケル純度が高い粒子となる。つまり、本発明に係るニッケル連結粒子は不可避不純物とニッケルからなり、窒素の含有量が0.05質量%以下であり、アルカリ金属の含有量は0.03質量%以下である。
窒素はヒドラジンに起因する不純物であり、アルカリ金属は水酸化アルカリに起因する不純物であるが、晶析工程においてニッケル粒子フロックを形成するまでニッケル一次粒子の形態で粒子成長することから、ニッケル一次粒子の内部に取り込まれる薬剤起因の不純物は少ない。なお、アルカリ金属は、アルカリ金属水酸化物として、水酸化ナトリウムを用いた場合にはナトリウムであり、水酸化カリウムを用いた場合にはカリウムであり、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの両方を用いた場合には、ナトリウムとカリウムの両方である。さらに晶析工程の後に洗浄を行うことにより、アルカリ金属の含有量など薬剤起因の不純物含有量を一層低減することができる。
ニッケル連結粒子を構成するニッケル一次粒子は、その平均粒径が0.05μm〜0.5μmであることが好ましい。また、(ニッケル粒子フロックを形成する時点での)ニッケル一次粒子は錯化剤の効果により球状性が高く、略球状の形状をしている。
本発明のニッケル連結粒子は、その製造方法において、反応液にニッケルよりも貴な金属の塩を配合していることから、初期核の生成が均一化され、粒子は微細化されかつその粒径分布は狭くなる。なお、ニッケル一次粒子の平均粒径は、SEM(走査型電子顕微鏡)写真を画像処理することにより、個々のニッケル一次粒子の面積を測定し、該面積から真円換算でそれぞれのニッケル一次粒子の直径を算出して、さらにその平均値を求めることにより得られる。
ニッケル連結粒子を構成するニッケル一次粒子の平均の連結個数は5個以上が好ましく、10個以上がより好ましい。粉末表面の反応性を利用する電池の電極材料や触媒材料などの用途では、ニッケル連結粒子(ニッケル粉末の二次粒子)の粒径に比して比表面積を高めることが好ましく、ニッケル連結粒子の一次粒子の連結個数は多くなるほど良好となる。従って、ニッケル連結粒子を構成するニッケル一次粒子の平均の連結個数が4個未満では、比表面積を高める効果が十分ではなく、電池の電極材料や触媒材料に用いた時に十分な効果が得られないことがある。また、ニッケル連結粒子の外観形態は特に限定されることはなく、直線の鎖状や分岐した鎖状であってもよく、ニッケル連結粒子の鎖状に連結した部分以外のニッケル一次粒子表面が、その表面での反応に寄与できるようにニッケル連結粒子の外部と繋がった開空孔(オープンポア)を有する形態(ニッケル一次粒子の連結により外部から閉ざされた空隙が形成されていない形態)であればよい。
以下、本発明について、実施例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、ニッケル粉末のニッケル一次粒子の平均粒径と、ニッケル連結粒子のニッケル一次粒子の平均の連結個数は以下の方法により求めた。
(ニッケル粉末のニッケル一次粒子の平均粒径)
ニッケル粉末のニッケル一次粒子の平均粒径は、SEM観察像において200個以上のニッケル一次粒子の輪郭を抽出し、画像処理によりそれらニッケル一次粒子の面積から真円換算で算出した直径の平均値として求めた。
(ニッケル連結粒子のニッケル一次粒子の平均の連結個数)
ニッケル連結粒子は、ニッケル粉末のSEM観察像において、少なくとも3個以上のニッケル一次粒子が鎖状に連結しているニッケル粉末を指し、そのニッケル一次粒子の平均の連結個数は、SEM観察像から選択されたニッケル連結粒子のニッケル一次粒子の連結個数を計測して平均値を計算した。
(実施例1)
[ニッケル塩溶液の調整]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH42PdCl4、分子量:284.31)0.53mg(ミリグラム)、錯化剤として酒石酸((CH(OH)COOH)2、分子量:150.09)25.57gを純水1780mLに溶解して、主成分としてのニッケル塩とニッケルより貴な金属の金属塩である核剤と錯化剤を含有する水溶液である、ニッケル塩溶液を調整した。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し2.0質量ppm(1.1モルppm)、酒石酸のニッケルに対する割合は10.0モル%であった。
[還元剤溶液調整]
還元剤として、抱水ヒドラジン(N24・H2O、分子量:50.06)を純水で1.67倍に希釈した市販の60%抱水ヒドラジン(エムジーシー大塚ケミカル株式会社製)を355.4g秤量し、水酸化アルカリを含まず、主成分としてのヒドラジンを含有する水溶液である還元剤溶液を調整した。還元剤溶液に含まれるヒドラジンのニッケルに対するモル比は2.5であった。
[水酸化アルカリ溶液]
水酸化アルカリとして、水酸化ナトリウム(NaOH、分子量:40.0)204gを、純水560mLに溶解して、主成分としての水酸化ナトリウムを含有する水溶液である水酸化アルカリ溶液を用意した。水酸化アルカリ溶液に含まれる水酸化ナトリウムのニッケルに対するモル比は3.0であった。
なお、上記ニッケル塩溶液、還元剤溶液、および水酸化アルカリ溶液における使用材料には、60%抱水ヒドラジンを除き、いずれも和光純薬工業株式会社製の試薬を用いた。
[晶析工程および後処理]
図4に示すとおり、上記ニッケル塩溶液と還元剤溶液を、それぞれ液温60℃になるように加熱した後、2液を撹拌混合(混合による発熱あり)してニッケル塩・還元剤含有液とし、さらに該ニッケル塩・還元剤含有液に液温60℃の水酸化アルカリ溶液を混合して液温65℃の反応液(塩化ニッケル+パラジウム塩+酒石酸+ヒドラジン+水酸化ナトリウム)を調合した。調合直後の反応液は、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子がニッケル錯イオン(ニッケル酒石酸錯イオン)を含む溶液中に分散したニッケル前駆体スラリーの状態である。この状態から還元反応(晶析反応)を開始させ(反応開始温度65℃)、ニッケル粉末を晶析させた。還元反応の途中では晶析反応の発熱により液温の約70℃程度までの一時的な上昇が見られた。還元反応が進行して反応液中のニッケル前駆体粒子が消費・消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成された時点で、反応液をサンプリングしニッケル粒子をろ別して、薄緑色透明の液中に溶解しているニッケル錯イオン濃度を化学分析(ICP分析)で求め、ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合[モル%]を算出したところ、1.2モル%であった。
前記ニッケル粒子フロックが形成された後もニッケル錯イオンの還元反応は進行し、還元反応が終了した反応液の上澄み液は無色透明であり(ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合は0.05モル%未満)、反応液中のニッケル成分はすべて金属ニッケルに還元されていることを確認した。ニッケルを晶析させるまでのそれぞれの条件を、表1にまとめて示す。
得られたニッケル粉末はスラリー状であり、導電率が1 μS/cmの純水を用い、ニッケル粉末スラリーからろ過したろ液の導電率が10 μS/cm以下になるまでろ過洗浄し、固液分離した後、150℃の温度に設定した真空乾燥器中で乾燥して、ニッケル粉末を得た。
[ニッケル粉末の評価]
得られたニッケル粉末のSEMで観察した。ニッケル粉末のニッケル一次粒子の平均粒径は、SEMの観察像から、全様が一様に観察できるニッケル粉末を画像処理することにより求めた。また、同じくSEMの観察像から、ニッケル一次粒子の連結の有無を観察した。その結果、ニッケル粉末は、ニッケル一次粒子の平均粒径が0.33μmで、ニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子で構成されていることを確認した。図7に得られたニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)を示す。この写真から求めたニッケル一次粒子の平均の連結個数は15個であった。
(実施例2)
実施例1におけるニッケル塩溶液中のニッケルよりも貴な金属の金属塩である塩化パラジウム(II)アンモニウムの量を2.67mgとした以外は実施例1と同様にしてニッケル粉末を得た。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し10.0質量ppm(5.5モルppm)であった。還元反応が進行して反応液中のニッケル前駆体粒子が消費・消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成された時点で、反応液をサンプリングしニッケル粒子をろ別して、薄緑色透明の液中に溶解しているニッケル錯イオン濃度を化学分析(ICP分析)で求め、ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合[モル%]を算出したところ、0.8モル%であった。
前記ニッケル粒子フロックが形成された後もニッケル錯イオンの還元反応は進行し、還元反応が終了した反応液の上澄み液は無色透明であり(ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合は0.05モル%未満)、反応液中のニッケル成分はすべて金属ニッケルに還元されていることを確認した。ニッケルを晶析させるまでのそれぞれの条件を、表1にまとめて示す。
得られたニッケル粉末をSEMで観察した結果、ニッケル粉末は、ニッケル一次粒子の平均粒径が0.21μmで、ニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子で構成されていることを確認した。また、ニッケル一次粒子の平均の連結個数は23個であった。
(実施例3)
実施例1におけるニッケル塩溶液中の錯化剤として、酒石酸に代えてクエン酸三ナトリウム二水和物(Na3(C(OH)(CHCOO)COO)・2H2O)、分子量:294.1)250.5gを使用した以外は実施例1と同様にしてニッケル粉末を得た。ここで、ニッケル塩溶液において、クエン酸三ナトリウム二水和物はニッケル(Ni)に対し50モル%であった。還元反応が進行して反応液中のニッケル前駆体粒子が消費・消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成された時点で、反応液をサンプリングしニッケル粒子をろ別して、緑色透明の液中に溶解しているニッケル錯イオン濃度を化学分析(ICP分析)で求め、ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合[モル%]を算出したところ、1.0モル%であった。
前記ニッケル粒子フロックが形成された後もニッケル錯イオンの還元反応は進行し、還元反応が終了した反応液の上澄み液は無色透明であり(ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合は0.05モル%未満)、反応液中のニッケル成分はすべて金属ニッケルに還元されていることを確認した。ニッケルを晶析させるまでのそれぞれの条件を、表1にまとめて示す。
得られたニッケル粉末をSEMで観察した結果、ニッケル粉末は、ニッケル一次粒子の平均粒径は0.31μmで、ニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子で構成されていることを確認した。また、ニッケル一次粒子の平均の連結個数は14個であった。
(実施例4)
[ニッケル塩溶液の調整]
ニッケル塩として塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O、分子量:237.69)405g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH42PdCl4、分子量:284.31)0.53mg(ミリグラム)を純水1780mLに溶解して、主成分としてのニッケル塩とニッケルより貴な金属の金属塩である核剤を含有する水溶液である、ニッケル塩溶液を調整した。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し2.0質量ppm(1.1モルppm)であった。
[晶析工程および後処理]
図6に示すとおり、上記ニッケル塩溶液と実施例1の還元剤溶液を、それぞれ液温55℃になるように加熱した後、2液を撹拌混合(混合による発熱あり)してニッケル塩・還元剤含有液とし、さらに該ニッケル塩・還元剤含有液に液温55℃とした実施例1の水酸化アルカリ溶液を混合して液温60℃の反応液(塩化ニッケル+パラジウム塩+ヒドラジン+水酸化ナトリウム)を調合した。調合直後の反応液は、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子が微量のニッケルイオン(Ni2+)を含む溶液中に分散したニッケル前駆体スラリーの状態である。この状態から還元反応(晶析反応)を開始させ(反応開始温度60℃)、還元反応開始後に(還元反応でニッケル粒子が生成されて反応液の色が黒化する時点で)、錯化剤としてのエチレンジアミン(HNCNH、分子量:60.1)51.2gを滴下により添加してニッケル粉末を晶析させた。ここで、ニッケル塩溶液において、エチレンジアミンはニッケル(Ni)に対し50モル%であった。還元反応の途中では晶析反応の発熱により液温の約65℃程度までの一時的な上昇が見られた。還元反応が進行して反応液中のニッケル前駆体粒子が消費・消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成された時点で、反応液をサンプリングしニッケル粒子をろ別して、薄青色透明の液中に溶解しているニッケル錯イオン濃度を化学分析(ICP分析)で求め、ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合[モル%]を算出したところ、0.9モル%であった。
前記ニッケル粒子フロックが形成された後もニッケル錯イオンの還元反応は進行し、還元反応が終了した反応液の上澄み液は無色透明であり(ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合は0.05モル%未満)、反応液中のニッケル成分はすべて金属ニッケルに還元されていることを確認した。ニッケルを晶析させるまでのそれぞれの条件を、表1にまとめて示す。
得られたニッケル粉末をSEMで観察した結果、ニッケル粉末は、ニッケル一次粒子の平均粒径は0.30μmで、ニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子で構成されていることを確認した。また、ニッケル一次粒子の平均の連結個数は13個であった。
(実施例5)
[ニッケル塩溶液の調整]
ニッケル塩として硫酸ニッケル6水和物(NiSO・6H2O、分子量:262.85)448g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH42PdCl4、分子量:284.31)0.27mg(ミリグラム)、錯化剤として酒石酸((CH(OH)COOH)2、分子量:150.09)255.7gを純水1780mLに溶解して、主成分としてのニッケル塩とニッケルより貴な金属の金属塩である核剤と錯化剤を含有する水溶液である、ニッケル塩溶液を調整した。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し1.0質量ppm(0.55モルppm)、酒石酸のニッケルに対する割合は100モル%であった。
[還元剤溶液調整]
還元剤として、抱水ヒドラジン(N24・H2O、分子量:50.06)を純水で1.67倍に希釈した市販の60%抱水ヒドラジン(エムジーシー大塚ケミカル株式会社製)を355.4g、水酸化ナトリウム(NaOH、分子量:40.0)184gを、純水560mLに溶解して、主成分としてのヒドラジンと水酸化ナトリウムを含有する水溶液である還元剤溶液を調整した。還元剤溶液に含まれるヒドラジンのニッケルに対するモル比は2.5で、水酸化ナトリウムのニッケルに対するモル比は2.7であった。
なお、上記ニッケル塩溶液、および還元剤溶液における使用材料には、60%抱水ヒドラジンを除き、いずれも和光純薬工業株式会社製の試薬を用いた。
[晶析工程および後処理]
図3に示すとおり、上記ニッケル塩溶液と、還元剤溶液(ヒドラジン+NaOH)を、それぞれ液温55℃になるように加熱した後、2液を撹拌混合して(混合による発熱あり)、液温60℃の反応液(硫酸ニッケル+パラジウム塩+酒石酸+ヒドラジン+水酸化ナトリウム)を調合した。調合直後の反応液は、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子がニッケル錯イオン(ニッケル酒石酸錯イオン)を含む溶液中に分散したニッケル前駆体スラリーの状態である。この状態から還元反応(晶析反応)を開始させ(反応開始温度60℃)、ニッケル粉末を晶析させた。還元反応の途中では晶析反応の発熱により液温の約63℃程度までの一時的な上昇が見られた。還元反応が進行して反応液中のニッケル前駆体粒子が消費・消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成された時点で、反応液をサンプリングしニッケル粒子をろ別して、緑色透明の液中に溶解しているニッケル錯イオン濃度を化学分析(ICP分析)で求め、ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合[モル%]を算出したところ、28.3モル%であった。
前記ニッケル粒子フロックが形成された後もニッケル錯イオンの還元反応は進行し、還元反応が終了した反応液の上澄み液はほぼ無色透明であり(ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合が0.1モル%程度)、反応液中のニッケル成分はほぼすべて金属ニッケルに還元されていることを確認した。ニッケルを晶析させるまでのそれぞれの条件を、表1にまとめて示す。
得られたニッケル粉末をSEMで観察した結果、ニッケル粉末は、ニッケル一次粒子の平均粒径は0.42μmで、ニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子で構成されていることを確認した。図8に得られたニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)を示す。ニッケル一次粒子の平均の連結個数は30個以上であった。
(実施例6)
[ニッケル塩溶液の調整]
ニッケル塩として硫酸ニッケル6水和物(NiSO・6H2O、分子量:262.85)448g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH42PdCl4、分子量:284.31)0.27mg(ミリグラム)、錯化剤としてクエン酸三ナトリウム二水和物(Na3(C(OH)(CHCOO)COO)・2H2O)、分子量:294.1)285gを純水1780mLに溶解して、主成分としてのニッケル塩とニッケルより貴な金属の金属塩である核剤と錯化剤を含有する水溶液である、ニッケル塩溶液を調整した。ここで、ニッケル塩溶液において、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し1.0質量ppm(0.55モルppm)、クエン酸三ナトリウムのニッケルに対する割合は57モル%であった。
[晶析工程および後処理]
上記ニッケル塩溶液を用いた以外は、実施例5と同様の還元反応(晶析反応)を行い(反応開始温度60℃)、ニッケル粉末を晶析させた。還元反応が進行して反応液中のニッケル前駆体粒子が消費・消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成された時点で、反応液をサンプリングしニッケル粒子をろ別して、緑色透明の液中に溶解しているニッケル錯イオン濃度を化学分析(ICP分析)で求め、ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合[モル%]を算出したところ、25.7モル%であった。
前記ニッケル粒子フロックが形成された後もニッケル錯イオンの還元反応は進行し、還元反応が終了した反応液の上澄み液はほぼ無色透明であり(ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合が0.1モル%程度)、反応液中のニッケル成分はほぼすべて金属ニッケルに還元されていることを確認した。ニッケルを晶析させるまでのそれぞれの条件を、表1にまとめて示す。
得られたニッケル粉末をSEMで観察した結果、ニッケル粉末は、ニッケル一次粒子の平均粒径は0.47μmで、ニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子で構成されていることを確認した。図9に得られたニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)を示す。ニッケル一次粒子の平均の連結個数は30個以上であった。
(比較例1)
実施例1におけるニッケル塩溶液中の錯化剤である酒石酸の量を12.79gとした以外は実施例1と同様にしてニッケル粉末を得た。ここで酒石酸のニッケルに対して5.0モル%であった。還元反応が進行して反応液中のニッケル前駆体粒子が消費・消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成された時点で、反応液をサンプリングしニッケル粒子をろ別して、無色透明の液中に溶解しているニッケル錯イオン濃度を化学分析(ICP分析)で求め、ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合[モル%]を算出したところ、0.05モル%未満であった。
得られたニッケル粉末をSEMで観察した結果、ニッケル粉末は、ニッケル一次粒子の平均粒径が0.30μmで、鎖状に連結しているニッケル一次粒子は確認されなかった。図10に得られたニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)を示す。
(比較例2)
実施例1におけるニッケル塩溶液中に錯化剤を添加しない以外は実施例1と同様にしてニッケル粉末を得た。還元反応が進行して反応液中のニッケル前駆体粒子が消費・消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)が形成された時点で、反応液をサンプリングしニッケル粒子をろ別して、無色透明の液中に溶解しているニッケル錯イオン濃度を化学分析(ICP分析)で求め、ニッケル錯イオンの総量のニッケルに対する割合[モル%]を算出したところ、0.05モル%未満であった。
得られたニッケル粉末をSEMで観察した結果、ニッケル粉末は、ニッケル一次粒子の平均粒径が0.32μmで、鎖状に連結しているニッケル一次粒子は確認されなかった。図11に得られたニッケル粉末の走査電子顕微鏡写真(SEM像)を示す。

Claims (14)

  1. 不可避不純物とニッケルからなる、ニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子であって、
    窒素の含有量が0.05質量%以下であり、アルカリ金属元素の含有量が0.03質量%以下であることを特徴とするニッケル連結粒子。
  2. 前記ニッケル一次粒子の平均の連結個数が5個以上であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル連結粒子。
  3. 前記ニッケル一次粒子の平均粒径は0.05μm〜0.5μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のニッケル連結粒子。
  4. 少なくとも水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の塩、還元剤、錯化剤、水酸化アルカリと水とを含む反応液中において、還元反応によりニッケル一次粒子が鎖状に連結したニッケル連結粒子を得る晶析工程を備えるニッケル連結粒子の製造方法であって、
    前記還元剤はヒドラジンであり、
    前記反応液では、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子がニッケル錯イオンを含む溶液中に分散したニッケル前駆体スラリー中で還元反応が進行し、還元反応終盤で前記水酸化ニッケルを主成分とするニッケル前駆体粒子が還元反応による消費により消失してニッケル粒子フロック(粗大凝集体)がニッケル錯イオンを含む反応液中に形成された後、前記ニッケル錯イオンの還元反応が進行するとともに、
    前記ニッケル前駆体粒子が消失してニッケル粒子フロックが形成された時点において、反応液中のニッケル錯イオンのニッケルに対する割合[モル%](ニッケル錯イオンのモル数/ニッケルのモル数×100)が0.5モル%〜40モル%の範囲であることを特徴とするニッケル連結粒子の製造方法。
  5. 前記錯化剤が一分子中に1級〜3級アミノ基(1級:−NH、2級:−NH−、3級:−N=)、カルボキシ基(−COOH)およびその中和基(−COOX:X=アルカリ金属)から選ばれる少なくともいずれか2つ以上を有する有機錯化剤であることを特徴とする請求項4に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
  6. 前記有機錯化剤が、エチレンジアミン(HNCNH)、ジエチレントリアミン(HNCNHCNH)、トリエチレンテトラミン(HN(CNH)NH)、テトラエチレンペンタミン(HN(CNH)NH)、ペンタエチレンヘキサミン(HN(CNH)NH)、プロピレンジアミン(CHCH(NH)CHNH)、トリス(2−アミノエチル)アミン(N(CNH)、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン(HNCNHCOH)、N−(2−アミノエチル)プロパノールアミン(HNCNHCOH)、1,2−シクロヘキサンジアミン(HNC10NH)、N,N’−ジアセチルエチレンジアミン(CHCONHCNHCOCH)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン(CHNHCNHCH)、N,N’−ジエチルエチレンジアミン(CNHCNHC)、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン(CH(CH)CHNHCNHCH(CH)CH)、1,2−シクロヘキサンジアミン(HNC10NH)、グリシン(HNCHCOOH)、2,3−ジアミノプロピオン酸(HNCHCH(NH)COOH)、エチレンジアミン−N,N’−二酢酸(HOOCCHNHCNHCHCOOH)、エチレンジアミン四酢酸((HOOCCHNCHCHN(CHCOOH))、酒石酸((CH(OH)COOH))、クエン酸(C(OH)(CHCOOH)COOH)、およびそれらのアルカリ金属塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項5に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
  7. 前記水溶性ニッケル塩が、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、および硝酸ニッケルから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
  8. 前記ニッケルよりも貴な金属の塩が、銅塩、金塩、銀塩、白金塩、およびパラジウム塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
  9. 前記水酸化アルカリが、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
  10. 前記還元反応によりニッケル連結粒子を得る晶析工程が、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩とを水に溶解させたニッケル塩溶液、および、少なくとも還元剤と水酸化アルカリと水とを含む還元剤溶液を用意し、前記還元剤溶液と前記ニッケル塩溶液の少なくともいずれかに前記錯化剤を加えた後、還元剤溶液にニッケル塩溶液を添加混合するか、またはニッケル塩溶液に還元剤溶液を添加混合して行うことを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
  11. 前記還元反応によりニッケル連結粒子を得る晶析工程が、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩を水に溶解させたニッケル塩溶液、少なくとも還元剤と水を含む還元剤溶液、および少なくとも水酸化アルカリと水を含む水酸化アルカリ溶液を用意し、前記還元剤溶液、前記ニッケル塩溶液、および前記水酸化アルカリ溶液の少なくともいずれかに前記錯化剤を加えた後、ニッケル塩溶液と還元剤溶液を混合してニッケル塩・還元剤含有液を得、当該ニッケル塩・還元剤含有液に水酸化アルカリ溶液を添加混合して行うことを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
  12. 前記還元反応によりニッケル連結粒子を得る晶析工程が、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩とを水に溶解させたニッケル塩溶液、および、少なくとも還元剤と水酸化アルカリと水とを含む還元剤溶液を用意し、前記還元剤溶液に前記ニッケル塩溶液を添加混合するか、または前記ニッケル塩溶液に前記還元剤溶液を添加混合して晶析反応を開始させた後、前記錯化剤を加えて行うことを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
  13. 前記還元反応によりニッケル連結粒子を得る晶析工程が、少なくとも水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の塩を水に溶解させたニッケル塩溶液、少なくとも還元剤と水を含む還元剤溶液、少なくとも水酸化アルカリと水を含む水酸化アルカリ溶液を用意し、前記ニッケル塩溶液と前記還元剤溶液を混合してニッケル塩・還元剤含有液を得、当該ニッケル塩・還元剤含有液に水酸化アルカリ溶液を添加混合して晶析反応を開始させた後、前記錯化剤を加えて行うことを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
  14. 前記還元反応によりニッケル連結粒子を得る晶析工程において、還元反応を開始させる時点の反応液の温度(反応開始温度)が、40℃〜95℃であることを特徴とする請求項4〜13のいずれか1項に記載のニッケル連結粒子の製造方法。
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