JP2004068090A - 導電性粉末の製造方法、導電性粉末、導電性ペーストおよび積層セラミック電子部品 - Google Patents
導電性粉末の製造方法、導電性粉末、導電性ペーストおよび積層セラミック電子部品 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】Ni粉末、Cu粉末、ならびにNiおよび/またはCuを主成分とする粉末のうちの少なくとも1種の金属粉末とNi塩とを含む、スラリーに、水素化硼化物および/またはアミンボランを含む、還元剤溶液を添加し、混合して、金属粉末11の表面にNi−B合金粉末12を析出させ、次いで、これを水洗する。次に、水洗によって金属粉末11に付着した水分を有機溶媒により置換し、その後、金属粉末を乾燥させることによって、導電性粉末13を得る。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、導電性粉末の製造方法、この製造方法によって得られた導電性粉末、この導電性粉末を含む導電性ペースト、およびこの導電性ペーストを用いて構成された積層セラミック電子部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
積層セラミックコンデンサに代表される積層セラミック電子部品に備える内部電極のような内部導体膜を形成するため、導電性ペーストが用いられている。
【0003】
導電性ペーストは、導電性粉末と有機ビヒクルとを含むものであるが、導電性粉末としては、近年では、Ni粉末、Cu粉末、Niおよび/またはCuを主成分とする粉末というように、安価な卑金属粉末が用いられるようになってきている。
【0004】
他方、導電性ペーストを内部導体膜の形成に用いる場合、内部導体膜となる導電性ペースト膜は、積層セラミック電子部品に備えるセラミック層となる複数のセラミックグリーンシート間の界面に沿って形成されるので、積層セラミック電子部品の製造に際して、セラミックグリーンシートと同時に焼成されることによって、内部導体膜を構成するように焼結される。
【0005】
上述した焼成工程、より具体的には脱バインダ工程および本焼成工程を実施するにあたっては、導電性ペーストに含まれるNi粉末やCu粉末の酸化を防止するため、雰囲気制御が非常に重要となる。たとえば、脱バインダ工程においては、Ni粉末やCu粉末のような卑金属粉末の酸化を防止するため、窒素気流中等の中性雰囲気が適用されたり、あるいは、酸化性雰囲気が適用される場合には、卑金属粉末が酸化されにくい比較的低温での処理とされたりして、有機物の分解を行なうようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
有機物を熱分解させるためには、有機物の燃焼に必要な十分な酸素量と温度とが要求されるが、卑金属粉末を含有する導電性ペーストを用いる場合には、上述したように、酸素量が限られた中性雰囲気か、あるいは卑金属粉末が酸化されにくい比較的低温しか適用することができない。したがって、雰囲気または温度といった脱バインダ工程での条件のばらつきによって、有機物の分解や除去が不十分になることがある。
【0007】
このように、有機物の分解や除去が不十分になると、残留したカーボン成分が本焼成工程においてセラミックの焼結を阻害し、セラミックが焼結不足となり、得られた積層セラミック電子部品において、たとえば、十分な静電容量や絶縁抵抗が得られないという問題に遭遇することがある。
【0008】
他方、逆に、有機物の熱分解を確実に行なうために、十分な酸素を与えかつ高温で熱処理を行なうと、脱バインダ時に卑金属粉末が酸化し、そのため、卑金属粉末の膨張が生じることによって、脱バインダ工程において層剥がれといった構造不良が発生することがある。また、酸化による卑金属の焼結不良が生じ、そのため、たとえば、取得容量の低下や等価直列抵抗およびtanδの増加等の不具合が発生することがある。
【0009】
このようなことから、脱バインダ工程においては、微妙な雰囲気および温度管理が必要となり、そのため、工程管理が煩雑となる問題がある。
【0010】
上述した問題を解決するためには、導電性ペーストに含まれる卑金属からなる導電性粉末に対して耐酸化性を与えることが有効である。このような耐酸化性を有する導電性粉末を効率的に製造できる方法として、本件特許出願人による特開2002−80902号公報に記載されている方法がある。
【0011】
この公報では、Ni粉末、Cu粉末、ならびにNiおよび/またはCuを主成分とする粉末の少なくとも1種の金属粉末とNi塩とを含む、スラリーに、水素化硼化物および/またはアミンボランを含む、還元剤溶液を混合し、それによって、金属粉末の表面にNi−B合金粉末を析出させる、導電性粉末の製造方法が記載されている。
【0012】
上述のように、Ni−B合金粉末を金属粉末の表面に析出させた、導電性粉末によれば、これを加熱することにより、Ni−B合金粉末が酸化されかつ溶融され、酸化硼素が金属粉末の表面をほぼ覆う状態となる。したがって、耐酸化性を有する導電性粉末が得られる。
【0013】
しかしながら、上述した製造方法によって得られた導電性粉末は、たとえば酸化開始温度のばらつきが比較的大きくなることがあり、そのため、耐酸化性の安定化という点では、さらなる改良が望まれるところである。
【0014】
そこで、この発明の目的は、安定した耐酸化性を有する導電性粉末の製造方法を提供しようとすることである。
【0015】
この発明の他の目的は、上述した製造方法によって得られた導電性粉末、この導電性粉末を含むペースト、およびこの導電性ペーストを用いて構成される積層セラミック電子部品を提供しようとすることである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る導電性粉末の製造方法は、Ni粉末、Cu粉末、ならびにNiおよび/またはCuを主成分とする粉末のうちの少なくとも1種の金属粉末とNi塩とを含む、スラリーを準備する工程と、水素化硼化物および/またはアミンボランを含む、還元剤溶液を準備する工程と、スラリーと還元剤溶液とを混合して、金属粉末の表面にNi−B合金粉末を析出するさせる工程と、Ni−B合金粉末が析出した金属粉末を水洗する工程とを備え、上述した技術的課題を解決するため、水洗によって金属粉末に付着した水分を有機溶媒により置換する工程と、次いで、金属粉末を乾燥する工程とをさらに備えることを特徴としている。
【0017】
この発明は、上述した製造方法によって得られた、平均粒径が1μm以下の導電性粉末にも向けられる。
【0018】
この発明は、また、上述した導電性粉末と有機ビヒクルとを含む、導電性ペーストにも向けられる。
【0019】
さらに、この発明は、積層された複数のセラミック層およびセラミック層間の特定の界面に沿って延びる内部導体膜を備える、積層セラミック電子部品にも向けられる。この発明に係る積層セラミック電子部品は、上述した導電性ペーストの焼結体から内部導体膜が形成されることを特徴としている。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明が適用される積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ1を図解的に示す断面図である。
【0021】
積層セラミックコンデンサ1は、誘電体セラミックからなる積層された複数のセラミック層2およびセラミック層2間の特定の界面に沿って延びる複数の内部導体膜3をもって構成される積層体4を備えている。
【0022】
積層体4の各端部には、外部端子電極5がそれぞれ形成される。上述した内部導体膜3は、一方の外部端子電極5に電気的に接続されるものと他方の外部端子電極5に電気的に接続されるものとが積層方向に関して交互に配列されている。外部端子電極5上には、必要に応じて、少なくとも1層のめっき膜6が形成される。
【0023】
このような積層セラミックコンデンサ1を製造するため、セラミック層2となる、たとえばBaTiO3 系誘電体セラミックの原料粉末を含むセラミックグリーンシートが積層され、かつ内部導体膜3となる導電性ペースト膜がセラミックグリーンシート間の界面に沿って形成された、積層体4の生の状態のものが作製される。
【0024】
この生の積層体4は、次いで、脱バインダ処理および本焼成処理を含む焼成工程に付される。これによって、セラミックグリーンシートが焼結されてセラミック層2となり、また、同時に導電性ペースト膜が焼結されて内部導体膜3となる。
【0025】
次に、焼結後の積層体4の各端部に、導電性ペーストが付与され、焼き付けられることによって、外部端子電極5が形成される。
【0026】
次に、外部端子電極5上に、錫またはニッケル等の無電解めっきが施されたり、半田めっき等が施されることによって、少なくとも1層のめっき膜6が形成される。
【0027】
以上のような積層セラミックコンデンサ1において、内部導体膜3を形成するために用いられる導電性ペーストとして、後述するように、この発明に係る製造方法によって製造された導電性粉末を含む導電性ペーストが用いられる。
【0028】
なお、この発明に係る導電性ペーストを用いて内部導体膜が形成される積層セラミック電子部品は、上述したような積層セラミックコンデンサ1には限らない。たとえば、セラミック層2を構成するため、BaTiO3 系誘電体材料のほか、たとえばPbZrO3 系等の他の誘電体材料を用いても、あるいは、セラミック層2を構成するため、誘電体材料以外に、絶縁体材料、磁性体材料または半導体材料を用いてもよい。
【0029】
また、内部導体膜3の積層数や形成態様についても、積層セラミック電子部品が有する機能等に応じて変更されてもよい。
【0030】
また、外部端子電極5についても、積層セラミック電子部品の機能等に応じて、その形成位置および数が変更されることもある。
【0031】
内部導体膜3を形成するために用いられる導電性ペーストに含まれる導電性粉末は、次のようにして製造される。
【0032】
まず、Ni粉末、Cu粉末、ならびにNiおよび/またはCuを主成分とする粉末の少なくとも1種の金属粉末が用意される。上述のNiおよび/またはCuを主成分とする粉末としては、たとえば、Ni−P合金粉末、Ni−Cr合金粉末、Cu−Zn合金粉末、Pd粉末が付着したNi粉末、Ag粉末が付着したNi粉末、Pd−Ag合金粉末が付着したNi粉末、Pt粉末が付着したNi粉末、Pd粉末が付着したCu粉末、Ag粉末が付着したCu粉末、Pd−Ag合金粉末が付着したCu粉末、Pt粉末が付着したCu粉末等が挙げられ、積層セラミックコンデンサ1のセラミック層2のような積層セラミック電子部品に備えるセラミック層が有する特性に合わせて適宜選択される。
【0033】
次に、たとえば硫酸ニッケル水溶液のようなNi塩溶液が作製され、ここに上述した金属粉末を添加し、これを分散させることによって、スラリーが作製される。
【0034】
他方、水素化硼化物および/またはアミンボランを含む、還元剤溶液が準備される。
【0035】
次に、前述したスラリーに、還元剤溶液が添加され、混合される。これによって、図2に示すように、金属粉末11の表面に、Ni−B合金粉末12が析出した導電性粉末13が得られる。このとき、Ni−B合金粉末12の平均粒径は、金属粉末11の平均粒径よりも小さく、また、100重量部の金属粉末11に対して50重量部以下のNi−B合金粉末12が析出させることが好ましい。特定的な実施例では、Ni−B合金粉末12は、非晶質であり、そこに含まれているB成分の構成割合は約25モル%とされる。
【0036】
前述したように、金属粉末とNi塩とを予め混合したスラリーとしておくことにより、これに還元剤溶液を添加し混合した際、金属粉末の表面の触媒作用によって還元剤が金属粉末の表面で分解し、電子を放出する。したがって、金属粉末の近傍にはNiイオンが高濃度で存在するため、Niイオンの還元が直ちに生じて、金属粉末の表面にNi−B合金粉末が析出する。ここで、還元剤溶液中の水素化硼化物および/またはアミンボランの濃度および液相還元反応の反応温度等を調整することにより、Ni−B合金粉末の平均粒径や析出量を調整することができる。
【0037】
次に、図2に示すように、Ni−B合金粉末12が析出した金属粉末11は、たとえば純水によって水洗され、その後、この水洗によって金属粉末11に付着した水分が有機溶媒によって置換され、次いで、金属粉末11が乾燥される。
【0038】
上述のように、金属粉末11の表面にNi−B合金粉末12を析出させた後、水洗工程を実施するのは、余剰のスラリーまたは余剰の還元剤溶液中の金属イオン成分を除去するためであり、好ましくは、洗浄廃水の導電率が100μS/cm以下になるまで洗浄される。
【0039】
また、水洗工程の後に、水分を有機溶媒により置換した後に乾燥するのは、Ni−B合金粉末12が析出した金属粉末11を乾燥する際の含水量により耐酸化性が大きく影響されるためである。また、水分を有機溶媒により置換することを行なわずに乾燥工程を実施した場合には、Ni−B合金粉末12が析出した金属粉末11同士の凝集が激しく生じるという不都合を招くとともに、金属粉末11の表面にNi(OH)2 が生成され、それによって、導電性粉末13の比表面積が大きくなり、これを用いた導電性ペーストの作製時の取り扱いに問題が生じるという不都合も招く。
【0040】
なお、上述した有機溶媒としては、たとえば、アセトン、メタノール、エタノール等の水溶性の有機溶剤を好適に用いることができる。
【0041】
このようにして得られた導電性粉末13に対して、乾燥工程の後に、200℃以上の温度で熱処理を行ない、さらに粉砕処理を行なうことが好ましい。すなわち、熱処理を行なうことにより、図2に示したNi−B合金粉末12中のB成分が酸化硼素となるように酸化され、図3に示すように、酸化硼素膜14が金属粉末11の表面をほぼ覆う状態とすることができる。このように、酸化硼素膜14が金属粉末11の表面をほぼ覆う状態とすることにより、耐酸化効果をより顕著に発揮させることができる。
【0042】
また、上述の熱処理には、粉砕処理時または導電性ペーストの作製時において、Ni−B合金粉末12または酸化硼素膜14を金属粉末11の表面から離脱させにくくするという効果もある。
【0043】
なお、金属粉末11の表面にNi−B合金粉末12を析出させたり、これを熱処理したりすることによって、金属粉末11の凝集が起こりやすくなるため、粉砕処理は、熱処理後に実施することが好ましい。
【0044】
上述のようにして得られた導電性粉末13は、その平均粒径が1μm以下であることが好ましい。なぜなら、一般的に、金属粉末は、その平均粒径が小さくなるほど、比表面積が増大し、その結果、より活性となり、酸化されやすくなる。特に、金属粉末の平均粒径が1μm以下の場合に、このような酸化が起こりやすくなる傾向がある。そのため、この発明によって得られる耐酸化性は、導電性粉末13の平均粒径が特に1μm以下の場合において、その意義がより効果的に発揮されることになる。
【0045】
また、Ni−B合金粉末12の平均粒径は、0.1μm以下であり、かつ金属粉末11の平均粒径の1/2以下であることが好ましい。これによって、金属粉末11の表面がNi−B合金粉末12によって均一に被覆することが容易になり、その結果、十分な耐酸化性が得られるためである。
【0046】
このようにして得られた導電性粉末13と有機ビヒクルとを混合することによって、導電性ペーストが得られる。有機ビヒクルとしては、たとえば、エチルセルロース等の有機バインダをテルピネオール等の有機溶剤に溶解させたものを用いることができる。そして、この導電性ペーストが、図1に示した積層セラミックコンデンサ1に備える内部導体膜3を形成するために用いられる。
【0047】
次に、この発明を、実験例に基づいて、より具体的に説明する。
【0048】
【実験例】
1.粉末試料の作製
Ni粉末にNi−B合金粉末を析出させた導電性粉末を作製した。
【0049】
(1)実施例1
Ni塩としての30gの硫酸ニッケル(NiSO4 ・6H2 O)を1リットルの純水に溶解させ、液温30℃に設定したNi塩溶液を作製した。次に、このNi塩溶液に、平均粒径0.5μmであって400gのNi粉末を、Ni塩溶液を攪拌しながら添加し、Ni粉末をNi塩溶液に分散させた、スラリーを得た。
【0050】
他方、10gの水素化硼素ナトリウムと10gの水酸化ナトリウムとを1リットルの純水に溶解し、液温30℃に設定した還元剤溶液を得た。
【0051】
次に、上記スラリーを攪拌しながら、上記還元剤溶液をこれに添加し、還元析出反応を生じさせ、これによって、Ni粉末の表面にNi−B合金粉末を析出させた。Ni−B合金粉末の析出量は、Ni粉末100重量部に対して、1.80重量部となるようにし、また、B量は0.10重量部となるようにした。
【0052】
次に、Ni−B合金粉末が析出したNi粉末を純水にて洗浄した後、吸引ろ過により水分を除去した。その後、0.4kgのアセトンをNi粉末中に透過させることによって、Ni粉末に残存している水分をアセトンによって置換した。
【0053】
次いで、Ni粉末を100℃の温度で乾燥させた後、#150メッシュのふるいに通し、250℃の温度で5時間熱処理することによって、実施例1による粉末試料としての導電性粉末を得た。
【0054】
なお、同一条件下で作製した粉末試料間のばらつきを確認するため、以上のような工程を3回繰り返して実施し、実施例1として、3種類の粉末試料1−1、1−2および1−3を得た。
【0055】
(2)実施例2〜6
上述の実施例1に係る粉末試料の作製において、吸引ろ過により水分を除去した後のNi粉末中へのアセトン透過量を、実施例2では0.8kgとし、実施例3では1.2kgとし、実施例4では1.6kgとし、実施例5では2.0kgとし、実施例6では2.4kgとしたことを除いて、実施例1の場合と同様の条件で実施例2〜6の各々に係る粉末試料を作製した。
【0056】
なお、同一条件下で作製した粉末試料間のばらつきを確認するため、実施例2では、同一条件下で5種類の粉末試料2−1〜2−5を作製し、実施例3では、2種類の粉末試料3−1および3−2を作製した。実施例4〜6では、それぞれ、単に1種類の粉末試料4、5および6のみを作製した。
【0057】
(3)比較例1
実施例1に係る粉末試料の作製において、吸引ろ過により水分を除去した後、アセトンによる置換を行なわなかったことを除いて、実施例1の場合と同様の条件によって、比較例1に係る粉末試料を作製した。
【0058】
なお、比較例1の場合においても、同一条件下で作製した粉末試料間のばらつきを確認するため、5種類の粉末試料7−1〜7−5を作製した。
【0059】
(4)比較例2
Ni−B合金粉末を析出させていない平均粒径0.5μmのNi粉末を、比較例2に係る試料粉末8として用意した。
【0060】
2.耐酸化性の評価
上述した実施例1〜6ならびに比較例1および2の各々に係る導電性粉末の耐酸化性を評価するため、示差熱天秤を用いて、空気気流中で室温から700℃の温度までの導電性粉末の酸化増量値を測定した。その結果から、導電性粉末の酸化による重量増加が始まる温度を、酸化開始温度と規定して、各試料粉末の酸化開始温度を求めた。
【0061】
その結果が表1に示されている。また、表1には、各試料粉末の比表面積も併せて示されている。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示した酸化開始温度から、実施例1〜6のように、水洗後のアセトン置換工程を実施した場合には、酸化開始温度を極めて安定化させ得ることがわかる。
【0064】
これに対して、比較例1のように、アセトン置換工程を実施せずに、水洗後に乾燥する工程を実施した場合には、酸化開始温度が比較的上昇し、したがって耐酸化性の向上を確認することができるが、酸化開始温度のばらつきが比較的大きくなっている。
【0065】
これらの結果から、アセトン置換工程を実施することにより、酸化開始温度を安定化でき、耐酸化性を安定化できることがわかる。
【0066】
また、実施例1〜3の間で比較すれば、実施例1に比べて、実施例2および3の方が、酸化開始温度がより安定化されていることがわかる。このことから、アセトン置換量としては、400gのNi粉末に対してアセトン置換量を0.8kg以上、1kgのNi粉末に換算すれば、1kgのNi粉末に対して、アセトン置換量を2kg以上とすることが好ましいことがわかる。
【0067】
また、比較例2に係る試料粉末8においては、Ni−B合金粉末を析出させていないため、酸化開始温度が、実施例1〜6および比較例1のいずれに対しても低く、したがって、耐酸化性に劣ることがわかる。
【0068】
3.導電性ペースト試料の作製
(1)実施例
上述の実施例2において作製した粉末試料2−1〜2−5の各々に係る導電性粉末を用いて、以下のようにして、導電性ペースト試料2−1〜2−5を作製した。
【0069】
すなわち、粉末試料2−1〜2−5の各々に係る50重量部の導電性粉末と、エチルセルロースおよびテルピネオールを1:4の重量比率で混合してなる50重量部の有機ビヒクルとを混合した後、3本ロールミルにて分散処理を行ない、導電性ペースト試料2−1〜2−5をそれぞれ作製した。
【0070】
(2)比較例
前述した比較例1において作製した粉末試料7−1〜7−5の各々に係る導電性粉末を用いて、上記実施例と同様の方法によって、比較例に係る導電性ペースト試料7−1〜7−5をそれぞれ作製した。
【0071】
4.積層セラミックコンデンサ試料の作製
(1)実施例
BaTiO3 を主成分とする耐還元性の誘電体材料を含むセラミックグリーンシートを準備し、所定枚数のセラミックグリーンシート上に、上記導電性ペースト試料2−1〜2−5の各々を用いて内部導体膜となるべき導電性ペースト膜を印刷により形成した。次いで、このように導電性ペースト膜が形成されたセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートを積層し、圧着して、生の積層体を得た。
【0072】
次いで、生の積層体を、大気中において、400℃の温度で60分間保持する条件をもって脱バインダ処理し、次いで、N2 −H2 −H2 O雰囲気中において、1250℃の温度で2時間保持する条件をもって本焼成工程を実施し、焼結後の積層体を得た。
【0073】
次いで、焼結後の積層体の両端部に、Agを導電成分として含む導電性ペーストを塗布し、乾燥させた後、焼き付け工程を実施し、内部導体膜に電気的に接続された外部端子電極を形成し、設計静電容量が1.0μFの積層セラミックコンデンサ試料を得た。
【0074】
(2)比較例
導電性ペースト試料2−1〜2−5に代えて、前述した比較例に係る導電性ペースト試料7−1〜7−5の各々を用いたことを除いて、上述の実施例の場合と同様の条件にて比較例に係る積層セラミックコンデンサを作製した。
【0075】
5.静電容量の評価
上述した実施例および比較例の各々に係る積層セラミックコンデンサ試料の静電容量を測定した。
【0076】
より詳細には、実施例については、導電性ペースト試料2−1〜2−5の各々を用いて作製された各々100個ずつの積層セラミックコンデンサの静電容量を測定し、各々100個ずつについての各平均値を求めた。
【0077】
他方、比較例についても、ペースト試料7−1〜7−5の各々を用いて作製された各々100個ずつの積層セラミックコンデンサの静電容量を測定し、各々100個ずつについての平均値を求めた。
【0078】
その結果が表2に示されている。
【0079】
【表2】
【0080】
表2から、実施例に係る導電性ペースト試料2−1〜2−5を用いて作製された実施例に係る積層セラミックコンデンサによれば、粉末試料の製造ロット間のばらつきがなく、設計静電容量である1.0μFの静電容量を有する積層セラミックコンデンサが安定して得られることがわかる。
【0081】
これに対して、比較例に係る導電性ペースト試料7−1〜7−5を用いて作製された比較例に係る積層セラミックコンデンサによれば、粉末試料の製造ロット間のばらつきが大きく、そのため、静電容量のばらつきも大きくなり、また、静電容量値も設計値に比べて低くなっている。
【0082】
上述の結果から、次のようなこともわかる。すなわち、積層セラミックコンデンサ試料を得るための焼成工程は、前述したように、酸素分圧および温度が制御された条件下で実施されたが、耐酸化性にばらつきのある導電性粉末を用いた場合には、制御された酸素分圧が変動することによって、導電性粉末の焼結状態が変動し、そのため、比較例のように、静電容量のばらつきが生じ、また、静電容量値も低くなってしまう。
【0083】
なお、以上の実験例は、Ni粉末にNi−B合金粉末を析出させた導電性粉末について実施したものであるが、Cu粉末、あるいはNiおよび/またはCuを主成分とする粉末にNi−B合金粉末を析出させて得られた導電性粉末についても、同様の効果が得られることが確認されている。
【0084】
【発明の効果】
以上のように、この発明に係る導電性粉末の製造方法によれば、Ni粉末、Cu粉末、ならびにNiおよび/またはCuを主成分とする粉末の少なくとも1種の金属粉末の表面に、Ni−B合金粉末を析出させ、これを水洗した後、水洗によって金属粉末に付着した水分を有機溶媒により置換してから、乾燥工程を実施するようにしているので、平均粒径が1μm以下とされても、Ni−B合金粉末が析出した金属粉末同士の凝集を抑制しながら、安定した耐酸化性を有する導電性粉末を得ることができる。
【0085】
したがって、このようにして得られた導電性粉末は、導電性ペーストに含まれる導電性粉末として有利に用いることができる。
【0086】
また、この導電性ペーストを用いて内部導体膜が形成された積層セラミック電子部品によれば、この積層セラミック電子部品を得るための焼成工程における導電性粉末の焼結状態のばらつきを低減することができ、したがって、積層セラミック電子部品の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にとって興味ある積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ1を図解的に示す断面図である。
【図2】この発明に係る導電性粉末の製造方法によって得られた導電性粉末13を図解的に示す断面図である。
【図3】図2に示した導電性粉末13の熱処理後の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 積層セラミックコンデンサ
2 セラミック層
3 内部導体膜
11 金属粉末
12 Ni−B合金粉末
13 導電性粉末
14 酸化硼素膜
Claims (4)
- Ni粉末、Cu粉末、ならびにNiおよび/またはCuを主成分とする粉末のうちの少なくとも1種の金属粉末とNi塩とを含む、スラリーを準備する工程と、
水素化硼化物および/またはアミンボランを含む、還元剤溶液を準備する工程と、
前記スラリーと前記還元剤溶液とを混合して、前記金属粉末の表面にNi−B合金粉末を析出させる工程と、
前記Ni−B合金粉末が析出した前記金属粉末を水洗する工程と、
前記水洗によって前記金属粉末に付着した水分を有機溶媒により置換する工程と、次いで、
前記金属粉末を乾燥する工程と
を備える、導電性粉末の製造方法。 - 請求項1に記載の製造方法によって得られた、導電性粉末であって、平均粒径が1μm以下である、導電性粉末。
- 請求項2に記載の導電性粉末と有機ビヒクルとを含む、導電性ペースト。
- 積層された複数のセラミック層および前記セラミック層間の特定の界面に沿って延びる内部導体膜を備える、積層セラミック電子部品であって、
前記内部導体膜は、請求項3に記載の導電性ペーストの焼結体からなる、積層セラミック電子部品。
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JP2002229573A JP2004068090A (ja) | 2002-08-07 | 2002-08-07 | 導電性粉末の製造方法、導電性粉末、導電性ペーストおよび積層セラミック電子部品 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006196717A (ja) * | 2005-01-14 | 2006-07-27 | Nec Tokin Corp | 積層型圧電セラミックス素子およびその製造方法 |
JP2014189835A (ja) * | 2013-03-27 | 2014-10-06 | Sumitomo Metal Mining Co Ltd | ニッケル粉末とその製造方法 |
JP2015160964A (ja) * | 2014-02-26 | 2015-09-07 | 住友金属鉱山株式会社 | ニッケル粉末とその製造方法 |
KR20230122581A (ko) | 2020-12-23 | 2023-08-22 | 미쓰이금속광업주식회사 | 니켈 분말, 그 제조 방법, 도전성 조성물 및 도전막 |
-
2002
- 2002-08-07 JP JP2002229573A patent/JP2004068090A/ja active Pending
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