JP5942791B2 - ニッケル粉末の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ニッケル粉末およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、積層セラミックコンデンサの内部電極として好適に用いることができるニッケル粉末およびその製造方法に関する。
ニッケル粉末は、厚膜導電体を作製するための導電ペーストの材料として、使用されている。厚膜導電体は、電気回路の形成や積層セラミックコンデンサ、多層セラミック基板等の積層セラミック部品の電極などに用いられている。
積層セラミックコンデンサは、電子回路に用いられており、積層セラミックコンデンサの構造は、内部電極層と誘電体層とが交互に積み重なり、両端に外部電極が設けられた構造となっている。
上記積層セラミックコンデンサの内部電極は、金属からなっており、その材料として、従来は、銀やパラジウムなどの貴金属が用いられてきたが、現在では、低価格なニッケルへの転換が進んでいる。
上記積層セラミックコンデンサは、例えば、次のような方法で製造されている。
先ず、ニッケル粉末と、エチルセルロース等の樹脂と、ターピネオール等の有機溶剤等とを混練して得られた導電ペーストを、誘電体グリーンシート上に、スクリーン印刷して内部電極を作製する。
次に、印刷された内部電極が交互に重なるように誘電体グリーンシートを積層し、圧着する。その後、積層体を所定の大きさにカットし、有機バインダとして使用したエチルセルロース等の樹脂の燃焼除去を行うための脱バインダ処理を行った後、1300℃まで高温焼成して、セラミック体を得る。
そして、このセラミック体に外部電極を取り付け、積層セラミックコンデンサとする。
上記積層セラミックコンデンサは、小型化・高容量化が要求され、多層化が進んでいるため、内部電極用として、用いられるニッケル粉末においても、粒径の微細化と均一化が要求されている。このような粒径に関する要求に対して、パラジウムと銀の分散コロイド溶液と還元剤とアルカリ性物質とからなるアルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加して、ニッケル粒子を生成させるニッケル粉末の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1など参照。)。
上記製造方法によって、平均粒径が小さく、均一な粒度分布、良好な分散性を有し、かつ、粗大粒子が少ない球状ニッケル粉末が得られると、されているが、内部電極材料として用いられるニッケル粉末に要求される特性として、熱をかけた際の焼結挙動制御が重要となっている。その理由は、以下の通りである。
すなわち、粉末の熱収縮挙動を測定した際に、主流の平均粒径が0.4μm以下の内部電極用ニッケル粉末は、チタン酸バリウムなどと比べて、収縮開始温度が低温になり、積層体を焼成した際に、誘電体層と内部電極層で応力がかかり、クラックが発生しやすくなるからである。なお、こうした熱収縮開始温度を遅延することを目的として、硫黄を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、積層セラミックコンデンサの内部電極に用いられるニッケル粉末には、クラックを防止するだけではなく、膜の連続性が求められている。つまりは、積層セラミックコンデンサ用のニッケル粉末は、クラックを防止するために熱収縮開始温度が遅延され、かつ、焼成した際に、内部電極として導電性が確保されるために途切れることなく連続であることが重要である。しかし、上記特許文献2では、熱収縮開始温度が遅延される効果は示されているものの、内部電極として重要な役割である膜の連続性に関しての検討が示されていない。
特開2007−138291号公報 特開2007−191771号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、積層セラミックコンデンサの内部電極用として好適なニッケル粉末およびその製造方法を提供することにあり、具体的には、熱収縮開始温度を遅延し、かつ、ペースト膜で焼成した際に途切れが見られない連続的な膜が得られるニッケル粉末を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、微細なニッケル粉末の焼結挙動に関して、鋭意研究した結果、微細なニッケル粉末の内部にまで硫黄を含有させることにより、ペースト膜として焼成した際に、連続的な膜が得られるとの知見を、また、上記ニッケル粉末は、貴金属の核を用いて、ニッケル塩水溶液を還元して、ニッケル粒子を成長させる際に、ニッケル塩水溶液に硫黄を含有させることで、得られるとの知見を、得た。そして、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、還元剤を含むアルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加して、ニッケル粒子に対して100〜300質量ppmの硫黄を含有するニッケル粒子を生成させるニッケル粉末の製造法であって、
金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム及び銅からなる群から選択される少なくとも1種からなるコロイド粒子と、還元剤と、アルカリ性物質を含むアルカリ性コロイド溶液を得る工程と、
前記アルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加して、ニッケル粒子を生成させる工程を、含み、
前記ニッケル塩水溶液は、該ニッケル塩水溶液中のニッケル量に対して、27〜41質量%の硫黄を含有することを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記コロイド粒子がパラジウムと銀からなる複合コロイド粒子であることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記ニッケル塩水溶液に、硫黄を含むニッケル化合物を含有させることを特徴とするニッケル粉末の製造方法。
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、前記硫黄を含むニッケル化合物が硫酸ニッケルであることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記ニッケル塩水溶液は、塩化ニッケルと、硫黄を含有するニッケル化合物との混合水溶液であることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、前記ニッケル粒子を生成させる工程で得られたニッケル粒子を、還元雰囲気中で熱処理する工程を、さらに含むことを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
本発明のニッケル粉末の製造法の製造方法によれば、焼成時に、熱収縮開始温度が遅延され、かつ、膜途切れが抑制され連続性に優れた焼成膜の実現が可能なニッケル粉末を得ることができる。
また、本発明のニッケル粉末の製造方法は、晶析方法を用いたものであり、容易で、工業的規模の生産にも適したものであり、その工業的価値は、極めて大きい。
実施例および比較例で得られたニッケル粉末の走査型電離顕微鏡による観察結果を示す写真である。 実施例および比較例で得られたニッケル粉末を用いて得られた焼成膜の走査型電離顕微鏡による観察結果を示す写真である。
本発明のニッケル粉末の製造方法は、還元剤を含むアルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加して、硫黄を含有するニッケル粒子を生成させるニッケル粉末の製造法であって、
金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム及び銅からなる群から選択される少なくとも1種からなるコロイド粒子と、還元剤と、アルカリ性物質を含むアルカリ性コロイド溶液を得る工程と、
前記アルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加して、ニッケル粒子を生成させる工程を、含み、
前記ニッケル塩水溶液は、該ニッケル塩水溶液中のニッケル量に対して、27〜41質量%の硫黄を含有することを特徴とする。
上記ニッケル粉末の製造方法において、アルカリ性コロイド溶液の作製方法は、アルカリ性還元溶液中に、コロイド粒子を分散させる方法であればよく、特に限定されるものではない。また、市販のコロイド溶液を用いることもできるが、アルカリ金属などの不純物含有量の少ないコロイドを用いることが好ましい。
上記コロイド粒子は、ニッケルより貴な金属のコロイドであればよく、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウムおよび銅からなる群から選択される少なくとも1種からなるコロイド粒子を用いることができる。
特に、パラジウムと銀からなる複合コロイド粒子は、容易に、分散性が良好で均一な粒径のコロイド粒子が得られるため、好ましい。
以下、パラジウムと銀の複合コロイド粒子からなるコロイド溶液を、具体的な例に挙げて説明するが、他のコロイド粒子からなるコロイド溶液にも適用することができる。
上記アルカリ性コロイド溶液の作製方法としては、例えば、前記特許文献1の特開2007−138291号公報に開示されている方法を用いることができる。
その製造方法は、
(1)前記コロイド粒子が分散したコロイド溶液と還元剤とアルカリ性物質を混合する、
(2)前記コロイド粒子が分散したコロイド溶液に、還元剤とアルカリ性物質を添加する、
(3)前記コロイド粒子が分散したコロイド溶液と、還元剤を含有するアルカリ性溶液とを混合する、
という工程を挙げることができ、いずれの工程も、採用できる。
上記コロイド溶液は、保護コロイド剤を添加した水溶液に、パラジウムおよび銀の水溶性化合物を混合し、還元剤で還元して複合コロイド粒子を分散させることで、作製することが好ましい。
上記保護コロイド剤は、コロイド粒子の凝集を抑制するために、添加する。保護コロイド剤としては、パラジウムと銀からなる複合コロイド粒子を取り囲み、保護コロイドの形成に寄与するものであればよく、特にゼラチンが好ましいが、その他、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリビニルアルコールを用いることもできる。
パラジウムと銀とゼラチンの質量比を適切な値の範囲内に制御することにより、パラジウム、銀および保護コロイド剤の使用量を抑制しても、粒径がより均一で単分散状態の前記コロイド粒子を生成させることができる。
パラジウムのコロイド粒子のために用いられるパラジウム塩水溶液は、特に限定されるものではない。例えば、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム等から選ばれる少なくとも1種類を含む水溶液を、パラジウム塩水溶液として、用いることができる。これらの中では、液調整が容易な塩化パラジウムが最も好ましい。
また、銀塩水溶液としては、例えば、硝酸銀水溶液を用いることができる。
パラジウムのみならず、銀を添加する理由は、パラジウムの凝集が抑制されるため、粗大粒子や連結粒子の形成が抑制されるためである。特に、パラジウムと銀の質量比が適切な値の範囲内に制御されることによって、粒径がより均一で、単分散状態のパラジウムと銀の複合コロイド粒子が生成され、粗大粒子や連結粒子の形成が抑制される。
上記還元剤は、特に限定されるものではないが、前述のように、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)や、ヒドラジン(HNNH)、ヒドラジン化合物等から選ばれる少なくとも1種類を含む水溶性ヒドラジン化合物を用いて作製したヒドラジン水溶液等を用いることが好ましい。これらの水溶性ヒドラジン化合物の中では、特に不純物が少ない点で、ヒドラジン(N)が最も好ましい。
上記アルカリ性物質は、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の水溶性のアルカリ性物質であればよい。本発明においては、これらの水溶性のアルカリ性物質と、ヒドラジン、ヒドラジン水和物等の水溶性ヒドラジン化合物を純水中で混合して、アルカリ性のヒドラジン水溶液を作製して用いることができる。
上記アルカリ性コロイド溶液のpHは、10以上に調整することが好ましい。一方、pHが10未満では、反応速度が遅くなるため、ニッケルの還元析出が起こりにくくなるので好ましくない。
本発明のニッケル粉末の製造方法においては、上記工程で得られた前記アルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加して、ニッケル粒子を生成させる。ここで、前記ニッケル塩水溶液に、ニッケル塩水溶液中のニッケル量に対して、27〜41質量%の硫黄を含有させることが重要である。これにより、ニッケル粒子を形成するニッケル中に、ニッケル粒子に対して、硫黄を100〜300質量ppm含有したニッケル粉末が得られる。ニッケル塩水溶液中の硫黄含有量が27〜41質量%の範囲外になると、ニッケル粉末の硫黄含有量が上記範囲に制御されなくなる。
上記ニッケル塩水溶液中への硫黄の含有は、ニッケル塩水溶液中へ、硫黄を含むニッケル化合物を含有させることにより行うことが好ましい。
また、硫黄を含むニッケル化合物としては、硫酸ニッケル、硫酸ニッケル(II)アンモニウム六水和物、硫酸カリウムニッケル、亜硫酸ニッケルなどから選ばれる少なくとも1種類を含む水溶液を用いることができる。これらの水溶液の中では、水に溶け易く、硫黄量が調整しやすい硫酸ニッケルが特に好ましい。
上記ニッケル化合物を用いることにより、ニッケル粉末中への有害な不純物の混入を抑制することができる。
上記硫黄が添加されるニッケル塩水溶液は、特に限定されるものではなく、例えば、塩化ニッケル、硝酸ニッケル等から選ばれる少なくとも1種類を含む水溶液を用いることができる。これらの水溶液の中では、特に廃液処理が簡易である塩化ニッケル水溶液が好ましい。
上記方法により還元析出したニッケル粒子を固液分離した後に、真空乾燥し、凝集体の解砕、篩別を行い、本発明のニッケル粉末が得られる。
本発明のニッケル粉末の製造方法においては、乾燥後のニッケル粉末を、還元雰囲気中で熱処理する工程を、さらに含むことが好ましい。これにより、ニッケル表面の不純物が除去されるとともに、ニッケル粒子の結晶性が向上して、焼結性が改善される。
上記還元雰囲気は、1〜50体積%の水素ガスと不活性ガスからなる混合ガス雰囲気が好ましい。水素ガス濃度が1体積%未満であると、ニッケルの表面状態の変化、不純物の除去が十分に進行しないことがある。一方、水素ガス濃度が50体積%より多くても、その効果に変わりはない。上記不活性ガスは、特に限定されず、窒素ガス、アルゴンガスなどが使用できる。
上記熱処理温度は、150〜350℃であることが好ましい。熱処理温度が150℃未満であると、熱処理による水分などの不純物の除去が不十分となる場合がある。また、熱処理温度が350℃より高い場合、ニッケル粒子同士の焼結が起こるため、微細な粉末を得ることができないことがある。熱処理に用いる炉は、還元雰囲気で使用できるものであれば特に限定されず、バッチ炉、ローラーハース炉またはプッシャー炉などを用いることができる。
上記熱処理後のニッケル粒子粉は、凝集して、分散性が求められる内部電極用のニッケル粉末として、不十分な場合がある。そのため、ジェットミル等で解砕処理を施すことが好ましい。ジェットミルとしては、スパイラル式、カウンター式などを用いることができ、通常の条件で解砕処理すればよい。
本発明のニッケル粉末は、パラジウムと銀を含む微粒子と、該微粒子を包含するニッケル質部で構成されたニッケル粒子からなり、硫黄含有量がニッケル粉末に対して100〜300質量ppmであり、硫黄が前記ニッケル質部に含有されることを特徴とする。
上記ニッケル粉末においては、上記含有量の硫黄が上記ニッケル質部に含有されることにより、焼成時に熱収縮開始温度が遅延され、かつ、膜途切れが抑制され、連続性に優れた焼成膜の実現が可能なニッケル粉末が得られる。
ニッケル粒子に硫黄を含有させることで、焼成時の熱収縮開始温度は遅延されるが、表面付近にのみ硫黄が存在するような形態では、熱収縮開始温度を超えて、焼結による収縮が開始されると、収縮が急激に起こり、焼成膜の途切れが生じてしまう。
したがって、表面付近にのみ硫黄が存在するようなニッケル粉末を用いると、焼成時の熱収縮開始温度は遅延されるが、連続性に優れた焼成膜が得られない。
本発明のニッケル粉末は、硫黄が上記ニッケル質部の内部にも含有されるため、熱収縮開始温度が高く、熱収縮開始後の焼結による収縮が緩やかであり、膜途切れが抑制され、連続性に優れた焼成膜が得られる。
したがって、積層セラミックコンデンサの内部電極に用いられると、連続性に優れた内部電極が得られ、導電性が確保されるため、積層セラミックコンデンサの高容量化が可能となる。
上記硫黄含有量が、ニッケル粉末に対して、100質量ppm未満になると、焼成時の熱収縮開始温度の遅延や膜途切れの抑制が十分でなくなる。一方、300質量ppmを超えると、残留硫黄による内部電極や他の電子部品の腐食などの悪影響が生じる。
上記ニッケル粉末の平均粒径は、50〜300nmであることが好ましい。本発明のニッケル粉末は、積層セラミックコンデンサの小型化・高容量化の要求に対応するものであり、粒径が微細であることが好ましい。平均粒径が50nm未満になると、硫黄が添加されていても、熱収縮開始温度が低くなりすぎることがある。また、平均粒径が300nmを超えると、上記小型化・高容量化の要求に対応できなくなることがある。
以下、本発明を、実施例及び比較例により、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって、何ら限定されるものではない。
得られたニッケル粉末は、以下の方法により評価した。
1.粒子形状観察
ニッケル粉末を、走査型電子顕微鏡(JSM−5510、日本電子製、以下SEMと記載)を用いて、観察した。
2.熱収縮開始温度の測定
ニッケル粉末0.3gを円柱形の金型(底面の直径0.5cm)に入れ、アムスラー試験機(102500A、(株)東京衡機製作所製)を用いて、1000kgf/cmの圧力をかけ、ペレットを作製した。
そのペレットを用いて、熱収縮開始温度をTMA(4000SA、Bruker axs製)により測定した。ここで、試料装着荷重は10.0g、雰囲気は2.0%の水素ガスと窒素ガスの混合ガス雰囲気、ガス流量は200ml/分、昇温速度は5℃/分、測定温度範囲は25〜1300℃とした。熱収縮開始温度は、TMAの測定において、ペレット高さが初期より5%収縮した温度として、評価した。
3.焼結膜の連続性の判定
ターピネオール溶液に対して20質量%のエチルセルロースを80質量%のターピネオールに添加し、撹拌しながら、80℃に加熱して、エチルセルロースの溶け込んだターピネオール溶液を作製した。
続いて、導電ペーストに対して、このターピネオール溶液18質量%と、得られたニッケル粉末54質量%と、ターピネオール29質量%とを、3本ロールミルにて混練し、導電ペーストを作製した。
さらに、PETフィルム上に200μmの厚みで上記導電ペーストを塗布し、120℃で1時間乾燥させた。この乾燥膜をPETフィルムから剥離し、1cm角で切り出して、ペースト乾燥膜を得た。
そのペースト乾燥膜を、空気雰囲気(5L/分)で300℃まで昇温し、同一雰囲気にて300℃で1時間、脱バイ処理した。その後、300℃で2体積%水素−窒素混合ガス雰囲気(5L/分)にて20分間ガス置換を行った。その後、1300℃まで昇温して、20分間保持した後、室温まで降温し、焼結膜を得た。
その焼結膜を走査型電子顕微鏡(JSM−5510、日本電子製)で観察して、倍率500倍のSEM写真(縦170μm×横255μm)を得た。この写真から、結晶粒界の有無を確認し、膜の連続性の判定をした。
4.ニッケル粉末が含有する硫黄量
硫黄含有量は、炭素、硫黄同時分析装置(LECO社製、型番GS−600)にて、測定した。
[実施例1]
1.アルカリ性コロイド溶液の作製
先ず、6.5Lの純水に、ゼラチンを溶解させた後、ヒドラジンの濃度が0.02g/Lとなるように、ヒドラジンを混合した。
次に、パラジウムと微量の銀の混合溶液を作製し、ゼラチンとヒドラジンが含まれる前記溶液に滴下して、コロイド溶液とした。このコロイド溶液に、水酸化ナトリウムを加え、pHを10以上とした後、さらに、ヒドラジンの濃度が26g/Lとなるまで、ヒドラジンを加え、パラジウムと微量の銀からなるコロイドが混合されたアルカリ性コロイド溶液を得た。
上記アルカリ性コロイド溶液におけるパラジウム、銀、ゼラチンの含有量は、後に添加されるニッケル塩水溶液中のニッケルの全質量に対して、パラジウム:40質量ppm、銀:0.4質量ppm、ゼラチン:800質量ppmとした。
2.ニッケル粉末の作製
ニッケル濃度が100g/Lの塩化ニッケル水溶液250mLと、純水に硫酸ニッケル6水和物を溶解させたニッケル濃度が100g/Lの硫酸ニッケル水溶液250mLとを、混合し、ニッケル塩水溶液中のニッケル量に対して、27.32質量%の硫黄が含有されたニッケル塩水溶液500mLを準備した。
次に、上記アルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液500mLを添加して、ニッケル粒子を還元晶析させ、真空乾燥機にて乾燥した。
乾燥後のニッケル粒子を2.0%水素−窒素の混合ガス雰囲気中において、300℃で60分間の熱処理を行った。熱処理後、スパイラル式ジェットミル((株)パウレック製)で解砕処理して、ニッケル粉末を得た。解砕処理条件は、粉砕圧0.50MPa、供給圧0.55MPa、給粉量50g/分とした。
図1に、得られたニッケル粉末のSEM観察結果を、図2に得られたニッケル粉末を用いて得られた焼成膜のSEM観察結果を示す。
また、得られたニッケル粉末の硫黄含有量、熱収縮開始温度、焼成膜の膜途切れの判定結果を、表1にそれぞれ示す。
以下の実施例2および比較例1〜3については、実施例1と異なる条件のみを記載し、同様の内容について、図1、図2及び表1に、示す。
[実施例2]
ニッケル濃度が100g/Lの塩化ニッケル水溶液125mLとニッケル濃度が100g/Lの硫黄ニッケル化合物水溶液375mLとを混合し、ニッケル塩水溶液中のニッケル量に対して40.97質量%の硫黄が含有されたニッケル塩水溶液500mLを準備し、アルカリ性コロイド溶液に添加した以外は、実施例1と同様にして、ニッケル粉末を得た。
[比較例1]
ニッケル濃度が100g/Lの塩化ニッケル水溶液500mLをニッケル塩水溶液としてアルカリ性コロイド溶液に添加した以外は、実施例1と同様にして、ニッケル粉末を得た。
[比較例2]
ニッケル濃度が100g/Lの硫酸ニッケル水溶液(硫黄含有量はニッケル塩水溶液中のニッケル量に対して54.63質量%)500mLをアルカリ性コロイド溶液に添加した以外は、実施例1と同様にして、ニッケル粉末を得た。
[比較例3]
ニッケル濃度が100g/Lの塩化ニッケル水溶液500mLをニッケル塩水溶液としてアルカリ性コロイド溶液に添加したこと、得られたニッケル粒子を純水2Lに添加してスラリー化し、該スラリーに水硫化ナトリウム水溶液をニッケル粒子に対して硫黄400質量ppm投入して30分間の撹拌後、固液分離し、真空乾燥機にて乾燥した以外は、実施例1と同様にして、ニッケル粉末を得た。
Figure 0005942791
図1から、実施例1、2及び比較例1〜3では、連結粒子、粗大粒子が見られないおおよそ球形のニッケル粒子からなるニッケル粉末が得られていることがわかる。しかしながら、図2から、実施例1、2では膜途切れがない連続膜が得られているが、比較例1および3では、結晶粒界が発達して膜途切れが発生していることが確認された。このことから、硫黄が表面にのみ存在する形態では、熱収縮開始温度は上昇するが、膜途切れは抑制できないことがわかる。一方、硫黄含有量が多い比較例2では、膜途切れは抑制されているものの、熱収縮開始温度が低下していることがわかる。
以上より、本発明のニッケル粉末は、熱収縮開始温度と膜途切れのいずれもが改善され、積層セラミックコンデンサの内部電極用として、好適なものであることがわかる。
本発明のニッケル粉末の製造法の製造方法は、晶析方法を用いたものであって、容易で工業的規模の生産にも適したものであり、焼成時に、熱収縮開始温度が遅延され、かつ、膜途切れが抑制され連続性に優れた焼成膜の実現が可能なニッケル粉末を得ることができ、その産業上の利用可能性は、極めて高い。

Claims (6)

  1. 還元剤を含むアルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加して、ニッケル粒子に対して100〜300質量ppmの硫黄を含有するニッケル粒子を生成させるニッケル粉末の製造法であって、
    金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム及び銅からなる群から選択される少なくとも1種からなるコロイド粒子と、還元剤と、アルカリ性物質を含むアルカリ性コロイド溶液を得る工程と、
    前記アルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加して、ニッケル粒子を生成させる工程を、含み、
    前記ニッケル塩水溶液は、該ニッケル塩水溶液中のニッケル量に対して、27〜41質量%の硫黄を含有することを特徴とするニッケル粉末の製造方法。
  2. 前記コロイド粒子がパラジウムと銀からなる複合コロイド粒子であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉末の製造方法。
  3. 前記ニッケル塩水溶液に、硫黄を含むニッケル化合物を含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル粉末の製造方法。
  4. 前記硫黄を含むニッケル化合物が硫酸ニッケルであることを特徴とする請求項3に記載のニッケル粉末の製造方法。
  5. 前記ニッケル塩水溶液は、塩化ニッケルと、硫黄を含有するニッケル化合物との混合水溶液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
  6. 前記ニッケル粒子を生成させる工程で得られたニッケル粒子を、還元雰囲気中で熱処理する工程を、さらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
JP2012245040A 2012-11-07 2012-11-07 ニッケル粉末の製造方法 Active JP5942791B2 (ja)

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