JP5942791B2 - ニッケル粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
積層セラミックコンデンサは、電子回路に用いられており、積層セラミックコンデンサの構造は、内部電極層と誘電体層とが交互に積み重なり、両端に外部電極が設けられた構造となっている。
上記積層セラミックコンデンサの内部電極は、金属からなっており、その材料として、従来は、銀やパラジウムなどの貴金属が用いられてきたが、現在では、低価格なニッケルへの転換が進んでいる。
先ず、ニッケル粉末と、エチルセルロース等の樹脂と、ターピネオール等の有機溶剤等とを混練して得られた導電ペーストを、誘電体グリーンシート上に、スクリーン印刷して内部電極を作製する。
次に、印刷された内部電極が交互に重なるように誘電体グリーンシートを積層し、圧着する。その後、積層体を所定の大きさにカットし、有機バインダとして使用したエチルセルロース等の樹脂の燃焼除去を行うための脱バインダ処理を行った後、1300℃まで高温焼成して、セラミック体を得る。
そして、このセラミック体に外部電極を取り付け、積層セラミックコンデンサとする。
上記製造方法によって、平均粒径が小さく、均一な粒度分布、良好な分散性を有し、かつ、粗大粒子が少ない球状ニッケル粉末が得られると、されているが、内部電極材料として用いられるニッケル粉末に要求される特性として、熱をかけた際の焼結挙動制御が重要となっている。その理由は、以下の通りである。
すなわち、粉末の熱収縮挙動を測定した際に、主流の平均粒径が0.4μm以下の内部電極用ニッケル粉末は、チタン酸バリウムなどと比べて、収縮開始温度が低温になり、積層体を焼成した際に、誘電体層と内部電極層で応力がかかり、クラックが発生しやすくなるからである。なお、こうした熱収縮開始温度を遅延することを目的として、硫黄を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム及び銅からなる群から選択される少なくとも1種からなるコロイド粒子と、還元剤と、アルカリ性物質を含むアルカリ性コロイド溶液を得る工程と、
前記アルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加して、ニッケル粒子を生成させる工程を、含み、
前記ニッケル塩水溶液は、該ニッケル塩水溶液中のニッケル量に対して、27〜41質量%の硫黄を含有することを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記ニッケル塩水溶液に、硫黄を含むニッケル化合物を含有させることを特徴とするニッケル粉末の製造方法。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記ニッケル塩水溶液は、塩化ニッケルと、硫黄を含有するニッケル化合物との混合水溶液であることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
また、本発明のニッケル粉末の製造方法は、晶析方法を用いたものであり、容易で、工業的規模の生産にも適したものであり、その工業的価値は、極めて大きい。
金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム及び銅からなる群から選択される少なくとも1種からなるコロイド粒子と、還元剤と、アルカリ性物質を含むアルカリ性コロイド溶液を得る工程と、
前記アルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加して、ニッケル粒子を生成させる工程を、含み、
前記ニッケル塩水溶液は、該ニッケル塩水溶液中のニッケル量に対して、27〜41質量%の硫黄を含有することを特徴とする。
特に、パラジウムと銀からなる複合コロイド粒子は、容易に、分散性が良好で均一な粒径のコロイド粒子が得られるため、好ましい。
上記アルカリ性コロイド溶液の作製方法としては、例えば、前記特許文献1の特開2007−138291号公報に開示されている方法を用いることができる。
その製造方法は、
(1)前記コロイド粒子が分散したコロイド溶液と還元剤とアルカリ性物質を混合する、
(2)前記コロイド粒子が分散したコロイド溶液に、還元剤とアルカリ性物質を添加する、
(3)前記コロイド粒子が分散したコロイド溶液と、還元剤を含有するアルカリ性溶液とを混合する、
という工程を挙げることができ、いずれの工程も、採用できる。
上記保護コロイド剤は、コロイド粒子の凝集を抑制するために、添加する。保護コロイド剤としては、パラジウムと銀からなる複合コロイド粒子を取り囲み、保護コロイドの形成に寄与するものであればよく、特にゼラチンが好ましいが、その他、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリビニルアルコールを用いることもできる。
また、銀塩水溶液としては、例えば、硝酸銀水溶液を用いることができる。
また、硫黄を含むニッケル化合物としては、硫酸ニッケル、硫酸ニッケル(II)アンモニウム六水和物、硫酸カリウムニッケル、亜硫酸ニッケルなどから選ばれる少なくとも1種類を含む水溶液を用いることができる。これらの水溶液の中では、水に溶け易く、硫黄量が調整しやすい硫酸ニッケルが特に好ましい。
上記ニッケル化合物を用いることにより、ニッケル粉末中への有害な不純物の混入を抑制することができる。
ニッケル粒子に硫黄を含有させることで、焼成時の熱収縮開始温度は遅延されるが、表面付近にのみ硫黄が存在するような形態では、熱収縮開始温度を超えて、焼結による収縮が開始されると、収縮が急激に起こり、焼成膜の途切れが生じてしまう。
したがって、表面付近にのみ硫黄が存在するようなニッケル粉末を用いると、焼成時の熱収縮開始温度は遅延されるが、連続性に優れた焼成膜が得られない。
したがって、積層セラミックコンデンサの内部電極に用いられると、連続性に優れた内部電極が得られ、導電性が確保されるため、積層セラミックコンデンサの高容量化が可能となる。
得られたニッケル粉末は、以下の方法により評価した。
ニッケル粉末を、走査型電子顕微鏡(JSM−5510、日本電子製、以下SEMと記載)を用いて、観察した。
ニッケル粉末0.3gを円柱形の金型(底面の直径0.5cm)に入れ、アムスラー試験機(102500A、(株)東京衡機製作所製)を用いて、1000kgf/cm2の圧力をかけ、ペレットを作製した。
そのペレットを用いて、熱収縮開始温度をTMA(4000SA、Bruker axs製)により測定した。ここで、試料装着荷重は10.0g、雰囲気は2.0%の水素ガスと窒素ガスの混合ガス雰囲気、ガス流量は200ml/分、昇温速度は5℃/分、測定温度範囲は25〜1300℃とした。熱収縮開始温度は、TMAの測定において、ペレット高さが初期より5%収縮した温度として、評価した。
ターピネオール溶液に対して20質量%のエチルセルロースを80質量%のターピネオールに添加し、撹拌しながら、80℃に加熱して、エチルセルロースの溶け込んだターピネオール溶液を作製した。
続いて、導電ペーストに対して、このターピネオール溶液18質量%と、得られたニッケル粉末54質量%と、ターピネオール29質量%とを、3本ロールミルにて混練し、導電ペーストを作製した。
さらに、PETフィルム上に200μmの厚みで上記導電ペーストを塗布し、120℃で1時間乾燥させた。この乾燥膜をPETフィルムから剥離し、1cm角で切り出して、ペースト乾燥膜を得た。
そのペースト乾燥膜を、空気雰囲気(5L/分)で300℃まで昇温し、同一雰囲気にて300℃で1時間、脱バイ処理した。その後、300℃で2体積%水素−窒素混合ガス雰囲気(5L/分)にて20分間ガス置換を行った。その後、1300℃まで昇温して、20分間保持した後、室温まで降温し、焼結膜を得た。
その焼結膜を走査型電子顕微鏡(JSM−5510、日本電子製)で観察して、倍率500倍のSEM写真(縦170μm×横255μm)を得た。この写真から、結晶粒界の有無を確認し、膜の連続性の判定をした。
硫黄含有量は、炭素、硫黄同時分析装置(LECO社製、型番GS−600)にて、測定した。
1.アルカリ性コロイド溶液の作製
先ず、6.5Lの純水に、ゼラチンを溶解させた後、ヒドラジンの濃度が0.02g/Lとなるように、ヒドラジンを混合した。
次に、パラジウムと微量の銀の混合溶液を作製し、ゼラチンとヒドラジンが含まれる前記溶液に滴下して、コロイド溶液とした。このコロイド溶液に、水酸化ナトリウムを加え、pHを10以上とした後、さらに、ヒドラジンの濃度が26g/Lとなるまで、ヒドラジンを加え、パラジウムと微量の銀からなるコロイドが混合されたアルカリ性コロイド溶液を得た。
上記アルカリ性コロイド溶液におけるパラジウム、銀、ゼラチンの含有量は、後に添加されるニッケル塩水溶液中のニッケルの全質量に対して、パラジウム:40質量ppm、銀:0.4質量ppm、ゼラチン:800質量ppmとした。
ニッケル濃度が100g/Lの塩化ニッケル水溶液250mLと、純水に硫酸ニッケル6水和物を溶解させたニッケル濃度が100g/Lの硫酸ニッケル水溶液250mLとを、混合し、ニッケル塩水溶液中のニッケル量に対して、27.32質量%の硫黄が含有されたニッケル塩水溶液500mLを準備した。
次に、上記アルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液500mLを添加して、ニッケル粒子を還元晶析させ、真空乾燥機にて乾燥した。
乾燥後のニッケル粒子を2.0%水素−窒素の混合ガス雰囲気中において、300℃で60分間の熱処理を行った。熱処理後、スパイラル式ジェットミル((株)パウレック製)で解砕処理して、ニッケル粉末を得た。解砕処理条件は、粉砕圧0.50MPa、供給圧0.55MPa、給粉量50g/分とした。
図1に、得られたニッケル粉末のSEM観察結果を、図2に得られたニッケル粉末を用いて得られた焼成膜のSEM観察結果を示す。
また、得られたニッケル粉末の硫黄含有量、熱収縮開始温度、焼成膜の膜途切れの判定結果を、表1にそれぞれ示す。
ニッケル濃度が100g/Lの塩化ニッケル水溶液125mLとニッケル濃度が100g/Lの硫黄ニッケル化合物水溶液375mLとを混合し、ニッケル塩水溶液中のニッケル量に対して40.97質量%の硫黄が含有されたニッケル塩水溶液500mLを準備し、アルカリ性コロイド溶液に添加した以外は、実施例1と同様にして、ニッケル粉末を得た。
ニッケル濃度が100g/Lの塩化ニッケル水溶液500mLをニッケル塩水溶液としてアルカリ性コロイド溶液に添加した以外は、実施例1と同様にして、ニッケル粉末を得た。
ニッケル濃度が100g/Lの硫酸ニッケル水溶液(硫黄含有量はニッケル塩水溶液中のニッケル量に対して54.63質量%)500mLをアルカリ性コロイド溶液に添加した以外は、実施例1と同様にして、ニッケル粉末を得た。
ニッケル濃度が100g/Lの塩化ニッケル水溶液500mLをニッケル塩水溶液としてアルカリ性コロイド溶液に添加したこと、得られたニッケル粒子を純水2Lに添加してスラリー化し、該スラリーに水硫化ナトリウム水溶液をニッケル粒子に対して硫黄400質量ppm投入して30分間の撹拌後、固液分離し、真空乾燥機にて乾燥した以外は、実施例1と同様にして、ニッケル粉末を得た。
以上より、本発明のニッケル粉末は、熱収縮開始温度と膜途切れのいずれもが改善され、積層セラミックコンデンサの内部電極用として、好適なものであることがわかる。
Claims (6)
- 還元剤を含むアルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加して、ニッケル粒子に対して100〜300質量ppmの硫黄を含有するニッケル粒子を生成させるニッケル粉末の製造法であって、
金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム及び銅からなる群から選択される少なくとも1種からなるコロイド粒子と、還元剤と、アルカリ性物質を含むアルカリ性コロイド溶液を得る工程と、
前記アルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加して、ニッケル粒子を生成させる工程を、含み、
前記ニッケル塩水溶液は、該ニッケル塩水溶液中のニッケル量に対して、27〜41質量%の硫黄を含有することを特徴とするニッケル粉末の製造方法。 - 前記コロイド粒子がパラジウムと銀からなる複合コロイド粒子であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記ニッケル塩水溶液に、硫黄を含むニッケル化合物を含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記硫黄を含むニッケル化合物が硫酸ニッケルであることを特徴とする請求項3に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記ニッケル塩水溶液は、塩化ニッケルと、硫黄を含有するニッケル化合物との混合水溶液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記ニッケル粒子を生成させる工程で得られたニッケル粒子を、還元雰囲気中で熱処理する工程を、さらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
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