JP6135935B2 - 湿式ニッケル粉末の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、湿式ニッケル粉末の製造方法に関する。
詳しくは、積層セラミックコンデンサ(multilayer ceramic capacitors;MLCC)の内部電極に適用した場合に、コンデンサの容量低下や信頼性低下を効果的に抑制可能な、高い結晶性を有し、かつ粗大粒子(例えば、粒径1μm以上)の含有が極めて少ない、湿式ニッケル粉末の製造方法に関するものである。
従来から、ニッケル粉末は、厚膜導電体を作製するための導電ペーストの材料として使用されている。
この厚膜導電体は、電気回路の形成、積層セラミックコンデンサ及び多層セラミック基板等の積層セラミック部品の電極等に用いられている。特に、積層セラミックコンデンサでは、小型・高容量化の要求から高積層化が進み、そのために用いる導電ペーストの使用量も大幅に増加している。
このため、導電ペーストに使用する金属粉末としては、PdやAg−Pdのような高価な貴金属の使用を避け、安価なニッケルなどの卑金属が主流となっている。
この厚膜導電体が使用される積層セラミックコンデンサは、例えば、金属粉末にニッケル粉末を用いた場合は、次のような方法で製造される。
まず、ニッケル粉末と、エチルセルロース等の樹脂と、ターピネオール等の有機溶剤等とを混練して得られた導電ペーストを、誘電体グリーンシート(セラミックグリーンシート)上にスクリーン印刷・乾燥して内部電極用のニッケル塗膜を作製する。
次に、印刷された内部電極用のニッケル塗膜と誘電体グリーンシートが交互に重なるように積層し、圧着して積層体を作製する。
その後、その積層体を所定の大きさにカットし、有機バインダとして使用したエチルセルロース等の樹脂の燃焼除去を行うための脱バインダ処理を行った後、1300℃程度の高温焼成による誘電体、および内部電極(ニッケル膜)の焼結を進め、誘電体層と内部電極層が互いに積層したセラミック体を得る。そして、このセラミック体に外部電極を取り付け、積層セラミックコンデンサとする。
なお、上記積層体の脱バインダ処理は、ニッケル粉末が酸化しないように、極めて微量の酸素を含んだ雰囲気下にて行われる。
ところで、近年、小型化及び大容量化が求められている積層セラミックコンデンサでは、それを構成する内部電極及び誘電体ともに、薄層化が進められている。特に、内部電極に使用されるニッケル粉末の粒径としては、0.3μm程度が主流となっており、一部の高積層タイプでは0.2μm程度のより微細なものも用いられている。
このような内部電極の薄層化に伴い、いくつかの問題が顕在化しており、その一つが、積層セラミックコンデンサの容量低下である。
内部電極用のニッケル塗膜中のニッケル粉末の充填密度は粉末冶金における成形体の充填密度に比べてはるかに低く、しかも基板となる誘電体グリーンシート(セラミックグリーンシート)の焼結に伴う収縮量はニッケル膜の収縮に比べて小さいために、薄層化したニッケル膜では焼結の進行に伴ってニッケル膜が島状に途切れるという現象がより発生しやすくなる。
この内部電極(ニッケル膜)の途切れは、コンデンサの容量低下を引き起こすため、この途切れを抑制して高容量のコンデンサを得るためには、焼結時の収縮をできるだけ小さく抑えながら、緻密で薄い内部電極(ニッケル膜)を形成することが不可欠である。
そのためには、ニッケル塗膜の密度(乾燥膜密度(DFD:Dry Film Density))を高めること、ニッケル粉末の真比重を高めること、ニッケル粉末の急激な焼結を抑制すること、等の対策が必要である。
そこで、ニッケル塗膜の密度を高める方法としては、一般に導電ペースト中のニッケル粉末の分散性を良くなるように、導電ペーストの配合組成(樹脂、分散剤、溶剤、等)を最適化する手法が用いられるため、ニッケル粉末自体の特性改善というよりも、導電ペーストの特性改善の側面が強い。
したがって、コンデンサの容量低下抑制に向けたニッケル粉末自体の特性改善としては、真比重を高めること、および、ニッケル粉末の急激な焼結を抑制すること、となるが、これらの双方に、ニッケル粉末の結晶性を高めこと(結晶子径を大きくすること)が有効と考えられている。
また、内部電極の薄層化に伴う他の問題点は、絶縁破壊による信頼性低下である。
内部電極の薄層化と同時に誘電体も薄層化されており、例えばニッケル膜に突起があると、その突起部分で誘電体層の層間距離が短くなって絶縁破壊が発生しやすくなる。これを抑制するためには、内部電極(ニッケル膜)の表面平滑性を高める必要があり、ニッケル粉末中の粗大粒子(例えば、粒径1μm以上)の低減、導電ペースト中でのニッケル粉末の分散性の向上、等の対策が必要である。
ここで、上記導電ペースト中でのニッケル粉末の分散性の向上は、表面平滑性の場合と同様に、導電ペーストの特性改善の側面が強いため、絶縁破壊による信頼性低下の抑制に向けた、ニッケル粉末自体の特性改善としては、ニッケル粉末中の粗大粒子(例えば、粒径1μm以上)を徹底的に低減することである。
ところで、上記内部電極に使用されるニッケル粉末の製造方法は、気相法(乾式法)と湿式法に大別される。
前者の気相法には、例えば塩化ニッケル等のニッケル化合物の蒸気を高温で還元性ガスにより還元する化学気相析出法(CVD法)(例えば、特許文献1参照)、金属ニッケルの蒸気を気相中で凝縮させる物理気相析出法(PVD法)、硝酸ニッケル等のニッケル化合物を水や有機溶媒に溶解または分散させた溶液または懸濁液を微細な液滴にし、その液滴を高温加熱して熱分解することでニッケル粉末を析出させる噴霧熱分解法(例えば、特許文献2参照)、等がある。
一方、後者の湿式法には、例えばニッケル塩水溶液中からヒドラジン等の還元剤を用いてニッケル粒子を還元析出させてニッケル粉末を得る方法(例えば、特許文献3参照)等が知られている。
気相法で得られるニッケル粉末(気相ニッケル粉末)は、数百度以上の高温プロセスでニッケル粒子が合成されるため、例えば粒径0.2〜0.3μmだと結晶子径100nm程度と大きくできるが、その製造方法ゆえに、どうしても粒度分布が大きくなって粗大粒子(例えば、粒径1μm以上)が多く含まれることは避けられない。
そこで、得られたニッケル粉末の精密分級(液体サイクロン、気流分級装置、等)を行い、粗大粒子を除去する方法(例えば、特許文献4参照)が試みられているが、例えばニッケル粉末の粒径が0.3μm以下(特に0.2μm以下)になってくると、粗大粒子の分級除去効率や製品歩留りが低下してくる問題がある。
以上のように、気相ニッケル粉末は、結晶子径が大きいため、真比重が高く、かつニッケル粉末の急激な焼結を抑制でき、コンデンサの容量低下抑制には有効ではあるが、そのままでは粗大粒子が多いため、絶縁破壊によるコンデンサの信頼性低下を引き起こしやすい。
一方、湿式法で得られるニッケル粉末(湿式ニッケル粉末)は、その製造原理からして、粒度分布がシャープで含まれる粗大粒子(例えば、粒径1μm以上)を極めて少なくできるものの、数十度の低温プロセスのため、結晶子径40nm以下程度のニッケル粒子しか得ることができなかった。
以上のように、湿式ニッケル粉末は、結晶子径が小さいため、真比重が低く、かつニッケル粉末の急激な焼結を生じやすいので、コンデンサの容量低下の引き起こしやすいものの、粗大粒子が少ないため、絶縁破壊によるコンデンサの信頼性低下を抑制できるという特徴がある。
そこで、粗大粒子の少ない湿式ニッケル粉末において、粗大粒子の発生を伴わずにその結晶子径を増大させることができれば、コンデンサの容量低下や絶縁破壊による信頼性低下という課題を効果的に解消できるため、いくつかの試みがなされている。
例えば、特許文献5では、湿式ニッケル粉末をTiやSiの添加処理後に非酸化性雰囲気中で400〜600℃で加熱保持し、結晶子径を30nm(=300Å[オングストローム])以上とすることが可能と記載されている(段落「0010」参照)。
この特許文献5に開示されている実施例には、湿式ニッケル粉末の加熱処理による高結晶化の具体的な記載は全く見られないが、平均粒径0.56〜0.58μmと非常に大きな湿式ニッケル粉末を対象としており、上記近年の内部電極の薄層化に対応することは難しい。
さらに、これまで述べてきたように、近年の内部電極の薄層化に伴い、平均粒径0.3μm以下の微細な湿式ニッケル粉末が用いられるようになっており、湿式ニッケル粉末の熱処理温度を、特許文献5に記載の400〜600℃の加熱温度まで高くすると、ニッケル粒子同士が強く焼結して粗大粒子を形成するため好ましくないと考えられる。
また、特許文献5では、平均粒径0.56〜0.58μmと非常に大きな湿式ニッケル粉末を対象としているためか、高結晶化のための加熱処理を行った場合において、その後の解砕処理の必要性が述べられていない。この点でも、加熱処理によって、平均粒径0.3μm以下の微細な湿式ニッケル粉末の高結晶化を図る場合の問題点が認識されていないことが明らかである。
さらに、特許文献5と同様に、湿式ニッケル粉末に加熱処理を施して、積層体の脱バインダ処理時の急激なガス発生の抑制や、内部電極(ニッケル膜)の焼結時の熱収縮速度の制御を行う方法も開示されている(特許文献6、非特許文献1参照)。
特許文献6では、湿式ニッケル粉末を還元雰囲気中で150〜350℃の温度で熱処理してニッケル粉末の表面改質を行い、脱バインダ処理時の急激なガス発生の抑制を行うものであり、水素(H)等の還元性ガス濃度は、ニッケル粉末表面の酸化物、水酸化物等の除去(ニッケルにまで還元)を十分に行なうために1体積%以上が必要と記載されている(段落「0026」〜「0027」参照)。
この還元雰囲気中での熱処理の湿式ニッケル粉末の結晶子径に及ぼす影響については全く記載されておらず、実施例1では150℃の加熱温度の熱処理が行われているが、このような低温の熱処理では湿式ニッケル粉末の高結晶化が達成されないのは明らかであり、この点からも、特許文献6の熱処理が湿式ニッケル粉末の高結晶化を目的としていないことが判る。また、還元雰囲気中での加熱処理後に解砕処理が施されていない点は、特許文献5と同様である。
非特許文献1は、ディスプロシウムを含有する湿式ニッケル粉末により内部電極(ニッケル膜)の焼結時の熱収縮速度の制御を行うものであるが、特許文献6と同様に、湿式ニッケル粉末を還元雰囲気中で150〜350℃の温度で加熱処理してニッケル粉末の表面改質(表面状態変化、不純物除去)が行われている。
還元雰囲気に使用した水素(H)等の還元性ガス濃度は、ニッケル粉末表面の状態変化や不純物除去を十分に行なうために1体積%以上が必要と記載されている。
さらに、上記加熱処理で生じるニッケル粉末の凝集をほぐすためにジェットミル等による解砕処理を施すことが記載されている。しかしながら、還元雰囲気中での加熱処理の湿式ニッケル粉末の結晶子径に及ぼす影響については全く記載されておらず、非特許文献1の加熱処理が湿式ニッケル粉末の高結晶化を目的としていないことは明らかである。
特開平11−80817号公報 特開平10−102108号公報 特開2005−23395号公報 特開2001−073007号公報 特開2000−178601号公報 特開2011−149080号公報
公技番号2012−503694
このような状況の中で、本発明は、積層セラミックコンデンサの内部電極に適用した場合に、コンデンサの容量低下や信頼性低下を効果的に抑制可能な、高い結晶性を有し、かつ粗大粒子(例えば、粒径1μm以上)の含有が極めて少ない、湿式ニッケル粉末の製造方法を提供するものである。
上記目的を達成するために、発明者らは、鋭意研究を行なったところ、平均粒径が小さく、かつ本質的に粗大粒子の含有割合の少ない湿式ニッケル粉末に対し、特定の条件で加熱処理する高結晶化工程、次いで、解砕工程を施すことで、高い結晶性を有し、かつ粗大粒子(例えば、粒径1μm以上)の含有が極めて少ない、湿式ニッケル粉末を得ることができることを見出し、本発明を完成したものである。
すなわち、上記の目的を達成するための本発明の第1の発明は、ニッケル塩溶液の還元反応法である湿式法を用いて作製した原料ニッケル粉末に、高結晶化工程、解砕工程の各工程を施して得られる湿式ニッケル粉末の製造方法であって、その原料ニッケル粉末は、0.3μm以下の平均粒径を有し、かつ結晶子径(CS:nm)が40nm以下で、その高結晶化工程が、原料ニッケル粉末を還元雰囲気中で250℃〜350℃の温度で熱処理して結晶子を増大させ、高結晶子径のニッケル粉末を得る工程であり、その解砕工程が、高結晶化工程で得られた高結晶子径のニッケル粉末に解砕処理を施して、高結晶化工程で凝集・焼結が生じた高結晶子径のニッケル粉末を分散させる工程で、得られた湿式ニッケル粉末は、0.3μm以下の平均粒径を有し、かつ結晶子径(CS:nm)が、CS≧1.3×CS、であり、粒径1μm以上の粗大粒子の個数が全粒子個数の50ppm以下であることを特徴とする湿式ニッケル粉末の製造方法である。
本発明の第2の発明は、ニッケル塩溶液の還元反応法である湿式法を用いて作製した原料ニッケル粉末に、高結晶化工程、解砕工程の各工程を施して得られる湿式ニッケル粉末の製造方法であって、その原料ニッケル粉末は、0.3μm以下の平均粒径を有し、かつ結晶子径(CS:nm)が40nm以下で、その高結晶化工程が、原料ニッケル粉末を、不活性ガス雰囲気中で300℃〜400℃の温度(T:℃)で熱処理して結晶子を増大させた後、還元雰囲気中で150〜350℃以下の温度(T:℃、T≦T)で熱処理してニッケル粉末の酸素含有量を低減させる、高結晶子径のニッケル粉末を得る工程であり、その解砕工程が、高結晶化工程で得られた高結晶子径のニッケル粉末に解砕処理を施して、高結晶化工程で凝集・焼結が生じた高結晶子径のニッケル粉末を分散させる工程で、得られた湿式ニッケル粉末は、0.3μm以下の平均粒径を有し、かつ結晶子径(CS:nm)が、CS≧1.3×CS、であり、粒径1μm以上の粗大粒子の個数が全粒子個数の50ppm以下であることを特徴とする湿式ニッケル粉末の製造方法である。
本発明の第3の発明は、第1または第2の発明における原料ニッケル粉末が、少なくとも有機硫黄化合物と無機硫黄化合物のいずれかで表面修飾されていることを特徴とする湿式ニッケル粉末の製造方法である。
本発明の第4の発明は、第1〜第3の発明における還元性雰囲気が、水素ガスと不活性ガスの混合雰囲気であり、その混合雰囲気中の水素ガス濃度が0.1体積%を超え5.7体積%未満であることを特徴とする湿式ニッケル粉末の製造方法である。
本発明の第5の発明は、第2および第4の発明における不活性ガスが、窒素ガス、希ガスの内のいずれか1種類以上であることを特徴とする湿式ニッケル粉末の製造方法である。
本発明の第6の発明は、第1〜第5の発明における解砕工程が、湿式解砕工程または乾式解砕工程であることを特徴とする湿式ニッケル粉末の製造方法である。
本発明の第7の発明は、第6の発明における湿式解砕工程が高圧衝突式分散機を用い、前記乾式解砕工程が気流式微粉砕機(ジェットミル)を用いて行われることを特徴とする湿式ニッケル粉末の製造方法である。
本発明に係る湿式ニッケル粉末の製造方法によれば、高い結晶性を有し、かつ粗大粒子(例えば、粒径1μm以上)の含有が極めて少ない、湿式ニッケル粉末を得ることが可能となる。
そして、その湿式ニッケル粉末は、積層セラミックコンデンサの内部電極に適用した場合に、コンデンサの容量低下や信頼性低下を効果的に抑制できる顕著な効果を奏するものである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の湿式ニッケル粉末の製造方法では、湿式法(ニッケル塩溶液の還元反応法)を用いて作製した原料ニッケル粉末に、高結晶化工程、解砕工程の各工程を施すことにより、高い結晶性を有し、かつ粗大粒子(例えば、粒径1μm以上)の含有が極めて少ない、湿式ニッケル粉末を得ている。
[原料ニッケル粉末]
本発明で用いる原料ニッケル粉末には、湿式法で作製されたニッケル粉末を用いる。
湿式法によるニッケル粉末の製造は、ニッケル塩水溶液に、必要に応じて錯化剤、分散剤、アルカリ成分を添加し、ヒドラジン等の還元剤によりニッケル粉末を晶析させて行うことができ、例えば、特許文献3や特許文献6に記載されるような公知の方法を利用することができる。
得られるニッケル粒子の形状は、晶析条件等にもよるが、一般的には、粒状、略球状、球状等である。また湿式法を用いるため、粒度分布がシャープで含まれる粗大粒子(例えば、粒径1μm以上)を極めて少なくでき、製品歩留りが高い。
用いるニッケル塩水溶液は特に限定されるものではなく、例えば、塩化ニッケル、硝酸ニッケルおよび硫酸ニッケル等から選ばれる少なくとも1種類を含む水溶液を用いることができる。
錯化剤やアルカリ成分も特に限定されるものではなく、例えば錯化剤では、クエン酸、酒石酸等の有機多価カルボン酸やその塩(クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム等)が、アルカリ成分では水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)、水酸化カリウム(苛性カリ)等が適用可能である。
原料ニッケル粉末の平均粒径は、近年の内部電極(ニッケル膜)の薄層化に対応するため、0.3μm以下が必要であり、好ましくは、0.05〜0.2μm、さらに好ましくは0.07〜0.18μmである。
平均粒径が0.3μmを超えると、薄層化された内部電極(ニッケル膜)において、内部電極各層のニッケル粒子の個数が減少してニッケル膜の連続性が損なわれ、内部電極(ニッケル膜)に突起が生じて平坦性が低下するなどの悪影響が生じるからである。
湿式法においてニッケル粉末の粒径を制御するには、このニッケル塩水溶液からのヒドラジン等の還元剤による晶析の過程で、ニッケルよりも還元されやすく、かつニッケルと固溶性の高い元素(Cu、Au、Pt、Pd、Rh等)またはそれらの化合物を核剤として用いる方法が知られており、それら既知の方法を活用すればよい。
上記核剤の活用例としては、例えば特許文献6に、アルカリ性水溶液中に分散したパラジウムと銀からなるコロイド粒子を核剤に用いて湿式ニッケル粉末を製造する方法が開示されているが、この方法に限定されるわけでなく、これ以外の既知の核剤を用いた粒径制御方法が適用可能である。
本発明の原料ニッケル粉末(湿式法で得られるニッケル粉末)は、前述したように、気相ニッケル粉末と異なり、粒度分布が狭く、例えば粒径1μm以上の粗大粒子(粒径の大きな単一粒子や連結粒子)が少ないという特長を有している。
ここで、原料ニッケル粉末(平均粒径0.3μm以下)における、粒径1.0μm以上の粗大粒子の割合はできるだけ小さい方が好ましいが、具体的には、全粒子個数の50ppm以下である。この程度の粗大粒子の割合であれば、湿式法における晶析条件等を最適化すれば、それ程達成は困難ではない。50ppmを超えると、前述のように、内部電極(ニッケル膜)に突起が生じて、誘電体層の絶縁破壊を引き起しやすくなるため好ましくない。
また、原料ニッケル粉末(平均粒径0.3μm以下)の結晶子径(CS:nm)は40nm以下と、気相ニッケル粉末(平均粒径0.2〜0.3μm)の結晶子径100nm程度と比べて小さいため、真比重が低目で、かつニッケル粉末の急激な焼結を生じやすいという欠点を有している。
原料ニッケル粉末は、晶析反応後にろ過等で固液分離され、洗浄後に、乾燥して得られるため、粒子表面は少なからず酸化されており、酸化ニッケル(NiO)や水酸化ニッケル(Ni(OH))等が存在している。
原料ニッケル粉末の酸素含有量は、平均粒径や乾燥方法等にも依存するが、平均粒径0.2〜0.3μm程度であれば、通常、0.5〜1.5重量%程度の範囲内に収まる。ニッケル粉末の酸化が進んで酸素含有量が1.5重量%を超えてくると、積層セラミックコンデンサの焼結時にニッケル粉末の体積収縮が大きくなって、内部電極(ニッケル膜)が途切れて連続性が保てなくなり、さらにニッケル粉末表面のニッケル酸化物が還元・分解して発生するガスによって、コンデンサ内にクラックやデラミネーションを生じる可能性が高くなるため好ましくない。
なお、上記晶析反応後のろ過や乾燥の方法は、公知の方法を適宜選択すればよく、ろ過であれば、フィルタープレス、遠心分離機、デカンタ、等が、乾燥であれば、熱風乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、等が挙げられるが、これらに限定されない。
ここで、原料ニッケル粉末は、少なくとも有機硫黄化合物と無機硫黄化合物のいずれかで表面修飾してもよい。上記表面修飾により、ニッケル粉末表面の触媒活性(導電ペーストに配合された樹脂の分解に対する触媒活性)が抑制されるため、内部電極(ニッケル膜)の焼結時に、その焼結性を改善する効果が期待できる。
上記有機硫黄化合物と無機硫黄化合物には、公知の物質を適宜選択すればよく、有機硫黄化合物であれば、有機チオール化合物、有機スルフィド化合物、等が、無機硫黄化合物であれば、硫化水素ナトリウム、硫化水素アンモニウム、硫化ナトリウム、硫化アンモニウム、等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、上記有機硫黄化合物や無機硫黄化合物の表面修飾量は、原料ニッケル粉末(平均粒径0.3μm以下)に対し硫黄量換算で0.05〜0.6質量%、好ましくは0.1〜0.4質量%が良い。
0.05質量%未満では、原料ニッケル粉末の単位表面当りの硫黄化合物量が少なく、上記触媒活性抑制や焼結性の改善が不十分となる場合があり、一方、0.6質量%を超えると、原料ニッケル粉末の単位表面当りの硫黄化合物量が多くなりすぎて、積層セラミックコンデンサの製造工程において腐食ガスの発生等の別の問題が生じる可能性がある。
[高結晶化工程]
本発明の高結晶化工程では、湿式法で得られた上記原料ニッケル粉末に特定の雰囲気と温度範囲での熱処理を施し、原料ニッケル粉末の結晶子を増大させて高結晶子径を有するニッケル粉末を得る工程である。
原料ニッケル粉末の結晶子径(CS)は、この高結晶化工程により増大し、後述する解砕工程において若干低下するものの、最終的に得られる湿式ニッケル粉の結晶子径(CS)は、CS≧1.3×CS、好ましくはCS≧1.7×CS、より好ましくはCS≧2.0×CS、で表される範囲まで到達させることができる。
本発明の高結晶化工程は、熱処理の雰囲気と温度範囲によって、以下の第1の実施形態と第2の実施形態に分けられる。
<第1の実施形態>
上記高結晶化工程における、第1の実施形態は、平均粒径が0.3μm以下で、かつ結晶子径(CS:nm)が40nm以下の原料ニッケル粉末を還元雰囲気中で250℃〜350℃の温度で熱処理し、原料ニッケル粉中の結晶子を増大させて高結晶子径のニッケル粉末を得るものである。
上記還元雰囲気は、水素ガスと不活性ガスの混合雰囲気が望ましく、不活性ガスとしては、窒素ガス(N)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の希ガスのいずれか1種類以上が挙げられるが、中でも安価でかつ高純度品を得やすい窒素ガスが望ましい。
還元雰囲気(例えば、上記水素ガスと不活性ガスの混合雰囲気)を用いると、原料ニッケル粉末において、その結晶粒界近傍や微細な開空孔(オープンポア)内に極微量存在すると想定されるニッケル酸化物や水酸化ニッケル物等が還元除去(Niに還元)されるためか、原料ニッケル粉末の高結晶化(結晶子径増大)が促進されやすい。
一方で、原料ニッケル粉末表面に所定量存在するニッケル酸化物や水酸化ニッケル物等も同様に還元除去(Niに還元)されるが、これは、ニッケル粉末の酸素含有量が低下するという点では好ましい側面ではあるが、焼結抑制作用を有するニッケル酸化物や水酸化ニッケル物の除去により、ニッケル粒子同士が焼結(ネッキング)しやすくなって、粗大粒子の形成が促進される恐れがある。そのため、過度に還元性を高めた雰囲気(例えば高濃度の水素ガス含有する窒素ガス雰囲気等)は避けた方が良い。
原料ニッケル粉末の酸素含有量は、還元雰囲気を用いる上記高結晶化工程を経ることで、粉末表面に存在するニッケル酸化物や水酸化ニッケル物等が還元除去(Niに還元)されるため、0.2〜0.5重量%程度低下する傾向にある(なお、高結晶化工程の完了に当たり、一旦還元されたニッケル粉末は、大気中に取り出す際に再酸化されている(徐々に酸化させて極薄の安定な酸化ニッケル被膜を形成する徐酸化処理が行われる))。
上記混合雰囲気中の水素ガス濃度は0.1体積%を超え5.7体積%未満、より好ましくは、0.1体積%を超え4.0体積%未満、さらに好ましくは0.2体積%以上1.0体積%未満である。
水素ガス濃度が0.1体積%以下だと、上記原料ニッケル粉末の高結晶化(結晶子径増大)の促進効果が薄れるため、望ましくない。一方、水素ガス濃度が5.7体積%未満だと、水素と窒素の混合ガス雰囲気では不燃性になるため、高結晶化工程の加熱装置(加熱炉)における取扱いがより簡便となり好ましい。
水素ガス濃度を5.7体積%以上にしても、高結晶化(結晶子径増大)の促進効果に変わりがなく、原料ニッケル粉末表面のニッケル酸化物や水酸化ニッケル物が除去されやすくなってニッケル粒子同士の焼結(ネッキング)の促進を招くだけである。
熱処理の加熱温度は250〜350℃、好ましくは300〜350℃である。
熱温度が250℃未満だと、原料ニッケル粉末の高結晶化(結晶子径増大)が促進されず(CS<1.3×CS)、好ましくない。また、加熱温度が350℃より高いと、高結晶化(結晶子径増大)は促進される(CS≧1.3×CS)ものの、原料ニッケル粉末同士の焼結(ネッキング)が進行して、次工程の解砕工程で分散しきれずに残存する粗大粒子が生じるため望ましくない。
熱処理の加熱時間は、加熱温度にもよるが(加熱温度が高い程、加熱時間を短くできる)、高結晶化工程の処理効率を考慮すると、10分〜4時間、好ましくは20分〜3時間、さらに好ましくは30分〜2時間である。
加熱時間が10分未満だと、加熱時間が短すぎて原料ニッケル粉末の温度分布が大きくなって高結晶化(結晶子径増大)にバラツキが生じる可能性があり好ましくない。また、加熱時間が4時間を超えると、高結晶化工程の処理効率が著しく低下するため望ましくない。
<第2の実施形態>
高結晶化工程における、第2の実施形態は、平均粒径が0.3μm以下で、かつ結晶子径(CS:nm)が40nm以下の原料ニッケル粉末を不活性ガス雰囲気中で300℃〜400℃の温度(T:℃)で熱処理して結晶子を増大させた後、還元雰囲気中で150〜350℃以下の温度(T:℃、T≦T)で熱処理してニッケル粉末の酸素含有量を低減させて、高結晶子径のニッケル粉末を得るものである。
上記不活性ガス雰囲気中の熱処理では、原料ニッケル粉末表面に所定量存在するニッケル酸化物や水酸化ニッケル物等が還元除去(Niに還元)されずに粉末表面に残存し、原料ニッケル粉末同士の焼結を抑制するため、前述した第1の実施形態の還元雰囲気での熱処理に比べ、加熱温度を高めることができ(第2の実施形態の加熱温度(T)=300〜400℃、第1の実施形態の加熱温度=250〜350℃)、原料ニッケル粉末の高結晶化(結晶子径増大)を促進できる側面がある。
上記不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の希ガスのいずれか1種類以上が挙げられるが、中でも安価でかつ高純度品を得やすい窒素ガスが望ましい。
不活性ガスに含まれる、不純物としての酸素ガス(O)濃度は10ppm以下、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下がよい。酸素ガス濃度が10ppmを超えると、不活性ガス雰囲気中の熱処理において、原料ニッケル粉末の酸化が進行し、粉末表面のニッケル酸化物等が過剰なまでに増加するため好ましくない。
熱処理の加熱温度(T:℃)は300〜400℃、好ましくは350〜400℃である。加熱温度(T:℃)が300℃未満だと、原料ニッケル粉末の高結晶化(結晶子径増大)が促進されず(CS<1.3×CS)、好ましくない。また、加熱温度(T:℃)が400℃より高いと、高結晶化(結晶子径増大)は促進される(CS≧1.3×CS)ものの、原料ニッケル粉末同士の焼結(ネッキング)が進行して、次工程の解砕工程で分散しきれずに残存する粗大粒子が生じるため望ましくない。
熱処理の加熱時間は、加熱温度にもよるが(加熱温度が高い程、加熱時間を短くできる)、高結晶化工程の処理効率を考慮すると、10分〜4時間、好ましくは20分〜3時間、さらに好ましくは30分〜2時間である。
加熱時間が10分未満だと、加熱時間が短すぎて原料ニッケル粉末の温度分布が大きくなって高結晶化(結晶子径増大)にバラツキが生じる可能性があり好ましくない。また、加熱時間が4時間を超えると、高結晶化工程の処理効率が著しく低下するため望ましくない。
第2の実施形態では、不活性ガス雰囲気中での熱処理で原料ニッケル粉末の高結晶化を図った後、引き続き、還元雰囲気中で150〜350℃以下の温度(T:℃、T≦T)で熱処理し、ニッケル粉末表面に残存するニッケル酸化物等を還元除去(Niに還元)して、ニッケル粉末の酸素含有量を低減させる必要がある。
上記還元雰囲気は、水素ガスと不活性ガスの混合雰囲気が望ましく、不活性ガスとしては、窒素ガス(N)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の希ガスのいずれか1種類以上が挙げられるが、中でも安価でかつ高純度品を得やすい窒素ガスが望ましい。
上記還元雰囲気中の水素ガス濃度は0.1体積%を超え5.7体積%未満、より好ましくは、0.5〜4.0体積%、さらに好ましくは1.0〜4.0体積%である。
水素ガス濃度が0.1体積%以下だと、ニッケル粉末表面に残存するニッケル酸化物等の還元除去(Niに還元)が不十分となるため望ましくない。一方、水素ガス濃度を5.7体積%以上にしても、ニッケル酸化物等の還元除去(Niに還元)の効率に著しい改善が見られる訳ではなく、また、水素と窒素の混合ガス雰囲気では不燃性の扱いにならなくなるため、必ずしも好ましいとは言えない。
還元雰囲気中の熱処理の加熱温度(T:℃、T≦T)は、150〜350℃以下、好ましくは200〜300℃である。加熱温度(T:℃)が150℃未満だと、ニッケル粉末表面に残存するニッケル酸化物等の還元除去(Niに還元)が不十分となるため望ましくない。一方、加熱温度(T:℃)が350℃より高いと、ニッケル粉末同士の焼結(ネッキング)が進行して、次工程の解砕工程で分散しきれずに残存する粗大粒子が生じるため望ましくない。また還元雰囲気中の熱処理の加熱温度(T:℃)は不活性ガス雰囲気中熱処理の加熱温度(T:℃)以下とする。
還元雰囲気中の熱処理の加熱時間は、10分〜4時間、好ましくは20分〜3時間、さらに好ましくは30分〜2時間である。加熱時間が10分未満だと、加熱時間が短すぎて原料ニッケル粉末の温度分布が大きくなり、ニッケル粉末の酸素含有量の低減にバラツキが生じる可能性があり好ましくない。また、加熱時間が4時間を超えると、処理効率が著しく低下するため望ましくない。
高結晶化工程の第2の実施形態におけるニッケル粉末の酸素含有量は、上記還元雰囲気中の熱処理により、粉末表面に存在するニッケル酸化物等が還元除去(Niに還元)されるため、原料ニッケル粉末に比べて、0.2〜0.5重量%程度低下する傾向にある。なお、高結晶化工程の完了に当たり、一旦還元されたニッケル粉末は、大気中に取り出す際に再酸化されている(徐々に酸化させて極薄の安定な酸化ニッケル被膜を形成する徐酸化処理が行われる)。
上記高結晶化工程の第1の実施形態、および第2の実施形態において、還元雰囲気ガスや不活性ガスは、高結晶化工程で使用する加熱装置(加熱炉)に供給しながら用いられる。
加熱装置(加熱炉)としては、バッチ炉、ローラーハース炉、プッシャー炉などを用いることができるが、還元雰囲気および不活性ガス雰囲気で使用できるものであれば特に限定されない。
[解砕工程]
本発明の解砕処理では、上記高結晶化工程で得られた高結晶子径のニッケル粉末に解砕処理を施して、高結晶化工程で緩やかな凝集・焼結が生じた高結晶子径のニッケル粉末を分散させる工程である。
前述の通り、原料ニッケル粉末(平均粒径0.3μm以下)における、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合は50ppm以下のため、解砕工程を経ることによって、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合は50ppm以下にする必要がある。
上記解砕工程は、湿式解砕工程、乾式解砕工程のいずれでもよく、例えば、湿式解砕工程であれば高圧衝突式分散機等が、また乾式解砕工程であれば、気流式微粉砕機(ジェットミル)等、が挙げられるが、高結晶化工程で得られた高結晶子径のニッケル粉末における粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合は50ppm以下にできれば良く、これらに限定されない。
上記高圧衝突式分散機としては、例えばアルティマイザー(スギノマシン株式会社製)、マイクロフルイダイザー(みずほ工業株式会社製)、ナノマイザー(吉田機械工業株式会社製)等が挙げられ、気流式微粉砕機(ジェットミル)には、カウンター式ジェットミル、スパイラル式ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社、ホソカワミクロン株式会社)等が挙げられる。
ここで、解砕工程でジェットミルを用いる場合を一例として説明する。
ジェットミルを用いた解砕処理のガス媒体には空気が一般的であるが、高結晶子径のニッケル粉末の平均粒径が0.3μm以下と小さく酸化しやすいこと、粉塵濃度が高まると粉塵爆発の可能性があること、等を考慮すると、不活性ガスを用いても良い。
なお、ニッケル粉末が微細化するほど凝集性が強くなるため、より強力な解砕力を与える必要があり、この点からすると、空気よりも軽いガス媒体を用いることが望ましく、具体的には、窒素ガス、ヘリウムガスが挙げられる。
解砕工程は、高結晶化工程で得られた高結晶子径のニッケル粉末を分散させて粗大粒子を低減・消失させる作用を有するが、それ以外にも、ニッケル粉末同士もしくはニッケル粉末と分散・粉砕機の機壁での擦れ合いによるニッケル粉末の表面平滑化の作用も有している(原料ニッケル粉末よりも平滑な表面が得られる)。
なお、解砕工程では、ニッケル粉末に大きな解砕力が印加されるため、高結晶化工程で高結晶化したニッケル粉末の結晶子径は若干低下する。例えば、ジェットミルを用いた解砕処理が施されると、ニッケル粉末の結晶子径は1〜2nm程度低下する。
本発明の湿式ニッケル粉末の製造方法では、高結晶化工程の熱処理により高結晶子径のニッケル粉末に緩やかな凝集・焼結が生じて粗大粒子が形成された場合であっても、解砕工程で分散させて粗大粒子を低減・消失させているので、最終的に得られる湿式ニッケル粉末は、その平均粒径が、原料ニッケル粉末と同等の0.3μm以下となっている。
以下に、本発明の実施例を用いて詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、ニッケル粉末の評価は以下のようにして行なった。
[平均粒径]
走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−5510、日本電子株式会社製)を用い、倍率10000倍のSEM像(視野:縦9.6μm×横12.8μm)の写真を得た。
このSEM像を画像解析ソフト(Mac−View、株式会社マウンテック製)を用いて像内の粒子形状の全様が見える粒子の面積と個数を計測し、これらから各粒子の直径を求め平均値により算出した。
[粗大粒子の数]
走査型電子顕微鏡を用い、倍率5000倍のSEM像(視野:縦19.2μm×横25.6μm)の写真を20視野得る。この20視野のSEM像を、画像解析ソフトを用いて像内の粒子形状の全様が見える粒子の面積と個数を計測し、これらから各粒子の直径を求め、直径が1.0μm以上のものを粗大粒子としてカウントした。
[ニッケル粉の酸素含有量]
ニッケル粉の酸素含有量は、分析装置(LECO社製、TC436AR)にて測定した。
[原料ニッケル粉末の作製]
以下に、湿式還元法を用いた原料ニッケル粉末作製の詳細を示す。
パラジウムと微量の銀とゼラチンからなるアルカリ性コロイド溶液に、アルカリ性のヒドラジン溶液を混合し、ニッケルを還元するためのアルカリ性コロイド溶液を作製した。
作製したアルカリ性コロイド溶液におけるパラジウム、銀、ゼラチンの含有量は、始液となるニッケル塩水溶液中のニッケルの全質量に対して、パラジウム:7.5質量ppm、銀:0.075質量ppm、ゼラチン:0.75質量%とした。なお、溶液中のパラジウムおよび銀の含有量は、ICP発光分光分析法により分析した。
上記ニッケルを還元するためのアルカリ性コロイド溶液の作製は、具体的には、次のように行った。
先ず、純水30Lに所定量のゼラチンを溶解させた後、ヒドラジンの濃度が0.015g/Lとなるようにヒドラジンを混合し、ゼラチンとヒドラジンを含む溶液を作製した。
次に、純水と所定量のパラジウム塩と銀塩の1Lの混合溶液を作製し、先に作製したゼラチンとヒドラジンを含む溶液に滴下して、コロイド溶液を得た。
このコロイド溶液に、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを10以上とした後、さらにヒドラジンをニッケル重量:ヒドラジン重量が1:3.75となるまで添加して、パラジウムと微量の銀からなる複合コロイド粒子が混合されたアルカリ性ヒドラジン溶液を作製し、ニッケルを還元するためのアルカリ性コロイド溶液とした。なお、この時点で、全溶液量は、40Lとなるように純水を更に添加した。
そして、このアルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液としてニッケル濃度が100g/Lの塩化ニッケル水溶液を2.5L滴下して、ニッケルの還元を行い、ニッケル粉末を合成し、ニッケル粉末を沈降させデカンテーションで上澄み液を取り除いた。
次に、上記上澄み液が取り除かれたニッケル粉末を含むスラリーを25g/Lになるように純水に添加し、さらに、ニッケル粉末に対して硫黄が0.075質量%になるように秤量した硫化水素ナトリウムを純水0.5リットルに溶解した溶液を、添加し30分間攪拌した後に固液分離した。次いで、エタノールで洗浄した後、固液分離し、150℃で真空乾燥し、硫黄化合物で表面修飾された原料ニッケル粉末を得た。
上記原料ニッケル粉末は、その平均粒径は0.2μm、結晶子径(CS)は15nm、酸素含有量は1.2重量%、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合は32ppmであった。
次に、高結晶化工程として、上記原料ニッケル粉末に、水素ガスと窒素ガスの混合ガス(H:0.2体積%、N:99.8体積%)からなる還元雰囲気中で、加熱温度350℃で加熱時間1時間の熱処理を施し、高結晶化したニッケル粉末を得た。
さらに、解砕工程として、上記高結晶化したニッケル粉末に、スパイラル式ジェットミル(日本ニューマチック株式会社製)による解砕処理を施して、実施例1に係る湿式ニッケル粉末を作製した。
作製した湿式ニッケル粉末の平均粒径、結晶子径、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合、酸素含有量、を測定し、その結果を表1に示す。
高結晶化工程として、原料ニッケル粉末に、水素ガスと窒素ガスの混合ガス(H:0.9体積%、N:99.1体積%)からなる還元雰囲気中で、加熱温度300℃で加熱時間1時間の熱処理を施した以外は、実施例1と同じ条件により実施例2に係る湿式ニッケル粉末を作製した。
作製した湿式ニッケル粉末の平均粒径、結晶子径、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合、酸素含有量、を測定し、その結果を表1に示す。
高結晶化工程として、原料ニッケル粉末に、水素ガスと窒素ガスの混合ガス(H:2.0体積%、N:98.0体積%)からなる還元雰囲気中で、加熱温度250℃で2時間の加熱時間の熱処理を施した以外は実施例1と同条件により実施例3に係る湿式ニッケル粉末を作製した。
作製した湿式ニッケル粉末の平均粒径、結晶子径、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合、酸素含有量、を測定し、その結果を表1に示す。
高結晶化工程として、原料ニッケル粉末に、窒素ガス(O濃度:0.5ppm)からなる不活性ガス雰囲気中で、加熱温度400℃で加熱時間1時間、引き続いて、水素ガスと窒素ガスの混合ガス(H:0.5体積%、N:99.5体積%)からなる還元雰囲気中で、加熱温度300℃で加熱時間1時間の熱処理を施した以外は実施例1と同条件により実施例4に係る湿式ニッケル粉末を作製した。
作製した湿式ニッケル粉末の平均粒径、結晶子径、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合、酸素含有量、を測定し、その結果を表1に示す。
高結晶化工程として、原料ニッケル粉末に、窒素ガス(O濃度:1ppm)からなる不活性ガス雰囲気中で、加熱温度350℃で加熱時間1時間、引き続いて、水素ガスと窒素ガスの混合ガス(H:2.0体積%、N:98.0体積%)からなる還元雰囲気中で、加熱温度250℃で加熱時間1時間の熱処理を施した以外は実施例1と同条件により実施例5に係る湿式ニッケル粉末を作製した。
作製した湿式ニッケル粉末の平均粒径、結晶子径、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合、酸素含有量、を測定し、その結果を表1に示す。
高結晶化工程として、原料ニッケル粉末に、窒素ガス(O濃度:2ppm)からなる不活性ガス雰囲気中で、加熱温度300℃で加熱時間2時間、引き続いて、水素ガスと窒素ガスの混合ガス(H:4.0体積%、N:96.0体積%)からなる還元雰囲気中で、加熱温度200℃で加熱時間1時間の熱処理を施した以外は実施例1と同条件により実施例6に係る湿式ニッケル粉末を作製した。
作製した湿式ニッケル粉末の平均粒径、結晶子径、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合、酸素含有量、を測定し、その結果を表1に示す。
[原料ニッケル粉末の作製]
以下に、湿式還元法を用いた原料ニッケル粉末作製の詳細を示す。
パラジウムと微量の銀とゼラチンからなるアルカリ性コロイド溶液に、アルカリ性のヒドラジン溶液を混合し、ニッケルを還元するためのアルカリ性コロイド溶液を作製した。
作製したアルカリ性コロイド溶液におけるパラジウム、銀、ゼラチンの含有量は、始液となるニッケル塩水溶液中のニッケルの全質量に対して、パラジウム:17質量ppm、銀:0.17質量ppm、ゼラチン:1.7質量%とした。なお、溶液中のパラジウムおよび銀の含有量は、ICP発光分光分析法により分析した。
上記ニッケルを還元するためのアルカリ性コロイド溶液の作製は、具体的には、次のように行った。
先ず、純水30Lに所定量のゼラチンを溶解させた後、ヒドラジンの濃度が0.05g/Lとなるようにヒドラジンを混合し、ゼラチンとヒドラジンを含む溶液を作製した。
次に、純水と所定量のパラジウム塩と銀塩の1Lの混合溶液を作製し、先に作製したゼラチンとヒドラジンを含む溶液に滴下して、コロイド溶液を得た。
このコロイド溶液に、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを10以上とした後、さらにヒドラジンをニッケル重量:ヒドラジン重量が1:3.75となるまで添加して、パラジウムと微量の銀からなる複合コロイド粒子が混合されたアルカリ性ヒドラジン溶液を作製し、ニッケルを還元するためのアルカリ性コロイド溶液とした。なお、この時点で、全溶液量は、40Lとなるように純水を更に添加した。
そして、このアルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液としてニッケル濃度が100g/Lの塩化ニッケル水溶液を2.5L滴下して、ニッケルの還元を行い、ニッケル粉末を合成し、ニッケル粉末を沈降させデカンテーションで上澄み液を取り除いた。
次に、上記上澄み液が取り除かれたニッケル粉末を含むスラリーを25g/Lになるように純水に添加し、さらに、ニッケル粉末に対して硫黄が0.1質量%になるように秤量した硫化水素ナトリウムを純水0.5リットルに溶解した溶液を、添加し30分間攪拌した後に固液分離した。次いで、エタノールで洗浄した後、固液分離し、150℃で真空乾燥し、硫黄化合物で表面修飾された原料ニッケル粉末を得た。
上記原料ニッケル粉末は、その平均粒径は0.15μm、結晶子径(CS)は14.5nm、酸素含有量は1.5重量%、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合は28ppmであった。
次に、高結晶化工程として、上記原料ニッケル粉末に、窒素ガス(O濃度:0.5ppm)からなる不活性ガス雰囲気中で、加熱温度350℃で加熱時間1時間、引き続いて、水素ガスと窒素ガスの混合ガス(H:2.0体積%、N:98.0体積%)からなる還元雰囲気中で、加熱温度250℃で加熱時間1時間の熱処理を施し、高結晶化したニッケル粉末を得た。
さらに、解砕工程として、上記高結晶化したニッケル粉末に、スパイラル式ジェットミル(日本ニューマチック株式会社製)による解砕処理を施して、実施例7に係る湿式ニッケル粉末を作製した。
作製した湿式ニッケル粉末の平均粒径、結晶子径、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合、酸素含有量、を測定し、その結果を表1に示す。
(比較例1)
高結晶化工程として、原料ニッケル粉末に、水素ガスと窒素ガスの混合ガス(H:0.2体積%、N:99.8体積%)からなる還元雰囲気中で、加熱温度400℃で加熱時間1時間の熱処理を施した以外は実施例1と同条件により比較例1に係る湿式ニッケル粉末を作製した。
作製した湿式ニッケル粉末の平均粒径、結晶子径、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合、酸素含有量、を測定し、その結果を表1に示す。
(比較例2)
高結晶化工程として、原料ニッケル粉末に、水素ガスと窒素ガスの混合ガス(H:2.0体積%、N:98.0体積%)からなる還元雰囲気中で、加熱温度200℃で加熱時間2時間の熱処理を施した以外は実施例1と同条件により比較例2に係る湿式ニッケル粉末を作製した。
作製した湿式ニッケル粉末の平均粒径、結晶子径、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合、酸素含有量、を測定し、その結果を表1に示す。
(比較例3)
高結晶化工程として、原料ニッケル粉末に、窒素ガス(O濃度:0.5ppm)からなる不活性ガス雰囲気中で、加熱温度450℃で加熱時間1時間、引き続いて、水素ガスと窒素ガスの混合ガス(H:0.5体積%、N:99.5体積%)からなる還元雰囲気中で、加熱温度300℃で加熱時間1時間の熱処理を施した以外は実施例1と同条件により比較例3に係る湿式ニッケル粉末を作製した。
作製した湿式ニッケル粉末の平均粒径、結晶子径、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合、酸素含有量、を測定し、その結果を表1に示す。
(比較例4)
高結晶化工程として、原料ニッケル粉末に、窒素ガス(O濃度:1ppm)からなる不活性ガス雰囲気中で、加熱温度250℃で加熱時間2時間、引き続いて、水素ガスと窒素ガスの混合ガス(H:4.0体積%、N:96.0体積%)からなる還元雰囲気中で、加熱温度200℃で加熱時間1時間の熱処理を施した以外は実施例1と同条件により比較例4に係る湿式ニッケル粉末を作製した。
作製した湿式ニッケル粉末の平均粒径、結晶子径、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合、酸素含有量、を測定し、その結果を表1に示す。
(比較例5)
高結晶化したニッケル粉末に解砕処理を施さなかった以外は実施例1と同条件により比較例5に係る湿式ニッケル粉末を作製した。
作製した湿式ニッケル粉末の平均粒径、結晶子径、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合、酸素含有量、を測定し、その結果を表1に示す。
(比較例6)
高結晶化したニッケル粉末に解砕処理を施さなかった以外は実施例4と同条件により比較例6に係る湿式ニッケル粉末を作製した。
作製した湿式ニッケル粉末の平均粒径、結晶子径、粒径1.0μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合、酸素含有量、を測定し、その結果を表1に示す。
Figure 0006135935
表1からも明らかなように、実施例1〜3と比較例1、2、5とを比べると、いずれも原料ニッケル粉末は、平均粒径が0.3μm以下で、かつ結晶子径(CS:nm)が40nm以下であるが、原料ニッケル粉末に、還元雰囲気中で250℃〜350℃の温度で熱処理して高結晶子径のニッケル粉末を得る高結晶化工程、および高結晶子径のニッケル粉末を分散させる解砕工程を施して得られた実施例1〜3の湿式ニッケル粉末は、平均粒径が0.3μm以下で、高い結晶子径(CS:nm)を有し(CS≧1.3×CS)、かつ粒径1μm以上の粗大粒子の割合も少ないことが判る。
一方、還元雰囲気中で所定温度の範囲外(250℃未満、または350℃超)で熱処理して高結晶子径のニッケル粉末を得る高結晶化工程、および高結晶子径のニッケル粉末を分散させる解砕工程を施して得られた比較例1、比較例2、および還元雰囲気中で250℃〜350℃の温度で熱処理して高結晶子径のニッケル粉末を得る高結晶化工程のみ施し、高結晶子径のニッケル粉末を分散させる解砕工程を施さずに得られた比較例5の湿式ニッケル粉末は、比較例1、5では、粒径1μm以上の粗大粒子の割合が多く、比較例2では結晶子径の増大が不十分(CS<1.3×CS)であることが判る。
次に、実施例4〜7と比較例3、4、6とを比べると、いずれも原料ニッケル粉末は、平均粒径が0.3μm以下で、かつ結晶子径(CS:nm)が40nm以下であるが、原料ニッケル粉末に、不活性ガス雰囲気中で300℃〜400℃の温度(T:℃)で熱処理して結晶子を増大させた後、還元雰囲気中で150〜350℃(T:℃、T≦T)の温度で熱処理してニッケル粉末の酸素含有量を低減させて高結晶子径のニッケル粉末を得る高結晶化工程、および高結晶子径のニッケル粉末を分散させる解砕工程を施して得られた実施例4〜7の湿式ニッケル粉末は、平均粒径が0.3μm以下で、高い結晶子径(CS:nm)を有し(CS≧1.3×CS)、かつ粒径1μm以上の粗大粒子の割合も少ないことが判る。
一方、不活性ガス雰囲気中で所定温度(T:℃)の範囲外(300℃未満、または400℃超)で熱処理して結晶子を増大させた後、還元雰囲気中で150〜350℃(T:℃、T≦T)の温度で熱処理してニッケル粉末の酸素含有量を低減させて高結晶子径のニッケル粉末を得る高結晶化工程、および高結晶子径のニッケル粉末を分散させる解砕工程を施して得られた比較例3、比較例4、および不活性ガス雰囲気中で300℃〜400℃の温度(T:℃)で熱処理して結晶子を増大させた後、還元雰囲気中で150〜350℃(T:℃、T≦T)の温度で熱処理してニッケル粉末の酸素含有量を低減させて高結晶子径のニッケル粉末を得る高結晶化工程のみ施し、高結晶子径のニッケル粉末を分散させる解砕工程を施さずに得られた比較例6の湿式ニッケル粉末は、比較例3、6では、粒径1μm以上の粗大粒子の割合が多く、比較例4では結晶子径の増大が不十分(CS<1.3×CS)であることが判る。

Claims (7)

  1. ニッケル塩溶液の還元反応法である湿式法を用いて作製した原料ニッケル粉末に、高結晶化工程、解砕工程の各工程を施して得られる湿式ニッケル粉末の製造方法であって、
    前記原料ニッケル粉末が、平均粒径が0.3μm以下、かつ結晶子径(CS:nm)が40nm以下で、
    前記高結晶化工程が、前記原料ニッケル粉末を還元雰囲気中で250℃〜350℃の温度で熱処理して結晶子を増大させて高結晶子径のニッケル粉末を得る工程、
    前記解砕工程が、前記高結晶化工程で得られた高結晶子径のニッケル粉末に解砕処理を施して、高結晶化工程で凝集・焼結が生じた高結晶子径のニッケル粉末を分散させる工程、
    前記湿式ニッケル粉末が、0.3μm以下の平均粒径を有し、
    かつ結晶子径(CS:nm)は、CS≧1.3×CS、で、
    粒径1μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合が50ppm以下であることを特徴とする湿式ニッケル粉末の製造方法。
  2. ニッケル塩溶液の還元反応法である湿式法を用いて作製した原料ニッケル粉末に、高結晶化工程、解砕工程の各工程を施して得られる湿式ニッケル粉末の製造方法であって、
    前記原料ニッケル粉末が、0.3μm以下の平均粒径を有し、かつ結晶子径(CS:nm)が40nm以下で、
    前記高結晶化工程が、前記原料ニッケル粉末を、不活性ガス雰囲気中で300℃〜400℃の温度(T:℃)で熱処理して結晶子を増大させた後、還元雰囲気中で150〜350℃(T:℃、T≦T)の温度で熱処理してニッケル粉末の酸素含有量を低減させる、高結晶子径のニッケル粉末を得る工程、
    前記解砕工程が、前記高結晶化工程で得られた高結晶子径のニッケル粉末に解砕処理を施して、高結晶化工程で凝集・焼結が生じた高結晶子径のニッケル粉末を分散させる工程、
    前記湿式ニッケル粉末が、0.3μm以下の平均粒径を有し、
    かつ結晶子径(CS:nm)が、CS≧1.3×CS、で、
    粒径1μm以上の粗大粒子の全粒子個数に対する割合が50ppm以下であることを特徴とする湿式ニッケル粉末の製造方法。
  3. 前記原料ニッケル粉末が、少なくとも有機硫黄化合物と無機硫黄化合物のいずれかで表面修飾されていることを特徴とする請求項1または2に記載の湿式ニッケル粉末の製造方法。
  4. 前記還元性雰囲気が、水素ガスと不活性ガスの混合雰囲気であり、該混合雰囲気中の水素ガス濃度が0.1体積%を超え5.7体積%未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の湿式ニッケル粉末の製造方法。
  5. 前記不活性ガスが、窒素ガス、希ガスの内のいずれか1種類以上であることを特徴とする請求項2または4に記載の湿式ニッケル粉末の製造方法。
  6. 前記解砕工程が、湿式解砕工程または乾式解砕工程であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の湿式ニッケル粉末の製造方法。
  7. 前記湿式解砕工程が高圧衝突式分散機を用い、前記乾式解砕工程が気流式微粉砕機(ジェットミル)を用いて行われることを特徴とする請求項6に記載の湿式ニッケル粉末の製造方法。
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