≪第1の実施形態≫
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図14に基づいて説明する。図1には、本発明に係る計測方法及び露光方法を好適に実施可能な第1の実施形態の露光システム200の全体構成が概略的に示されている。
この露光システム200は、感光物体としての半導体ウエハやガラスプレート等の基板(以下、総称して「ウエハ」とする。)を処理して、マイクロデバイス等の装置を製造する「基板処理工場」に設置されている。図1に示されるように、露光システム200は、レーザ光源1等を備えた露光装置100、該露光装置100に隣接して配置された塗布現像装置(以下、「トラック」と呼ぶこととする)300、レチクルの面形状を計測するレチクル計測機800Aとを備えている。トラック300内には、ウエハ計測機400Aが設けられている。
この露光装置100及びトラック300の組合せについては、これらを一体として「基板処理装置」とみなすことができる。基板処理装置では、ウエハ上にフォトレジスト等の感光剤を塗布する塗布工程と、ウエハの平坦度に関する情報(面形状)を事前に取得する事前取得工程と;感光剤が塗布されたウエハ上に、レチクル上に形成されたパターンを転写する露光工程と、露光工程が終了したウエハを現像する現像工程等を、必要なときには露光システム200内の他の装置と協調しつつ行う。このうち、塗布工程及び現像工程は、トラック300により実施され、露光工程は、露光装置100により実施され、事前取得工程は、トラック300及び後述する解析システム600により実施される。なお、レチクルの面形状の事前取得工程は、レチクル計測機800A及び後述する解析システム600によって実施される。
基板処理装置において、露光装置100及びトラック300は、相互にインライン接続されている。ここでのインライン接続とは、装置間及び各装置内の処理ユニット間を、ロボットアームやスライダ等のウエハを自動搬送する搬送装置を介して接続することを意味する。
なお、図1では、紙面の都合上、基板処理装置が1つだけしか図示されていないが、実際には、露光システム200には、複数台の基板処理装置が設置されている。すなわち、露光システム200においては、露光装置100と、露光装置100にインライン接続されたトラック300とが複数台設けられている。
さらに、露光システム200は、各露光装置100により実施される露光工程を集中的に管理する露光工程管理コントローラ500と、各種演算処理や解析処理を行う解析システム600と、基板処理工場内の各装置を全体的に管理する工場内生産管理ホストシステム700とを備えている。
この露光システム200を構成している各装置のうち、少なくとも各基板処理装置(100、300)及びレチクル計測機800Aは、温度及び湿度が管理されたクリーンルーム内に設置されている。また、各装置は、基板処理工場内に敷設されたLAN(Local Area Network)等のネットワーク又は専用回線(有線又は無線)を介して接続されており、これらの間で適宜にデータ通信を行うことができるようになっている。
ウエハ計測機400Aは、露光装置100とは独立して動作する装置であり、後に詳述するが、トラック300内に配置される複数の処理ユニットのうちの1つとして設けられており、露光装置100にウエハを搬入する前に、予めウエハの露光対象面の面形状を計測する装置である。また、レチクル計測機800Aは、他の装置(基板処理装置(100、300)等)とは独立して設けられた計測装置であり、この露光システム200において単一又は複数設けられている。
[露光装置]
露光装置100は、本第1の実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(走査型露光装置)であるものとする。図2には、露光装置100の概略構成が模式的に示されている。図2に示されるように、この露光装置100は、図1に示されるレーザ光源1及び不図示の照明光学系を含む照明系、この照明系からのエネルギビームとしての露光用照明光(以下、「照明光」と略述する)ILにより照明されるレチクルRを保持するレチクルステージRST、投影光学系PL、搬入されるウエハWが搭載されるウエハステージWST及びこれらの制御系等を備えている。
前記レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動部56Rによって、上記照明系の光軸(後述する投影光学系PLの光軸AXに一致)に垂直なXY平面内で微少駆動可能(Z軸回りの回転を含む)であるとともに、所定の走査方向(ここではY軸方向とする)に指定された走査速度で駆動可能となっている。
前記レチクルステージRST上には、レチクルホルダRHが設けられている。該レチクルホルダRHは、例えば真空吸着により、レチクルRを、そのパターン領域側の面(以下、「パターン面」という)が−Z側を向くように吸着保持している。図3(A)の斜視図に示されるように、レチクルホルダRHには、レチクルRをそのX軸両端でレチクルRを吸着保持するY軸方向に延びる3つの吸着面が設けられている。この3つの吸着面には、それぞれレチクルRと当接するプラテン部と、真空源と配管を介して連通する溝部とがそれぞれ設けられている。図3(A)では、両部を図示していない。レチクルRを吸着保持する際には、プラテン部に支持されたレチクルRによって外気から遮蔽された溝部が真空状態となり、外気圧の力によりレチクルRが吸着保持されるようになる。したがって、レチクルRに対する吸着力は、この溝部の真空度に応じたものとなる。露光装置100では、主制御装置20の指示の下、不図示の真空源による排気力を調整することにより、レチクルRに対する吸着力を制御することが可能となっている。
図2に戻り、レチクルステージRSTには、レチクルRの下方に、照明光ILの通路となる開口が形成されている。この開口の大きさは、照明領域IARより大きくなるように設定されている。
レチクルステージRST上には、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)54Rからのレーザビームを反射する移動鏡52Rが固定されており、レチクルステージRSTのXY面内の位置はレチクル干渉計54Rによって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。ここで、実際には、図3(A)に示されるように、レチクルステージRST上には、走査露光時の非走査方向(X軸方向)に直交する反射面を有する移動鏡が設けられ、レチクルステージRSTの走査方向(Y軸方向)に関しては、コーナーキューブ型ミラー(例えばレトロリフレクタなど)が2つ設けられ、それぞれに対応する測長軸を有する干渉計が設けられているが、図2ではこれらが代表的に移動鏡52R、レチクル干渉計54Rとして示されている。すなわち、Y軸方向に関しては、レチクル干渉計54Rは、測長軸を2軸有する2軸干渉計であり、このレチクル干渉計54Rの計測値に基づきレチクルステージRSTのY位置に加え、Z軸回りの回転(θz回転)も計測できるようになっている。なお、例えば、レチクルステージRSTの端面を鏡面加工して反射面(移動鏡52Rの反射面に相当)を形成しても良い。
レチクル干渉計54RからのレチクルステージRSTの位置情報は、ステージ制御装置19及びこれを介して主制御装置20に送られるようになっている。ステージ制御装置19は、主制御装置20の指示に応じてレチクルステージ駆動部56Rを介してレチクルステージRSTの移動を制御する。
なお、図2では図示していないが、レチクルステージRSTには、下側(−Z側)の平面度の良好なガラス基板よりなるレチクルフィデューシャルマーク板(以下、「レチクルマーク板」と略述する)が設けられている。このレチクルマーク板は、レチクルRと同材質のガラス素材、例えば合成石英やホタル石、フッ化カリウムその他のフッ化物結晶などから成り、レチクルステージRSTに固定されている。このレチクルマーク板の基準面は、設計上でレチクルRのパターン面と同じ高さ、かつ前述のスリット状の照明領域IARとほぼ同一の大きさに設定されている。この基準面は、高い平坦度を有しており、複数の評価マークが、その基準面全体にほぼ均等に(例えばマトリクス状に)に形成されている。レチクルステージRSTの移動により、レチクルマーク板が、投影光学系PLの光軸AX上に位置すると、投影光学系PLを介して得られる複数の評価マーク像を、ウエハステージWST側に形成することが可能となっている。この複数の評価マーク像からなる結像面は、レチクルマーク板の基準面の投影像面であるとみなすことができる。本第1の実施形態では、この投影像面が、ウエハステージWSTのフォーカス・レベリング制御を行う際の基準像面となる。
前記投影光学系PLは、その光軸AXの方向がZ軸方向となるように、レチクルステージRSTの図2における下方に配置されている。投影光学系PLは、両側テレセントリックな縮小系であり、光軸AXの方向に沿って所定間隔で配置された複数枚のレンズエレメントから成る屈折光学系が使用されている。この投影光学系PLの投影倍率は、例えば1/4、1/5等となっている。このため、不図示の照明系からの照明光ILによってレチクルR上のスリット状の照明領域IARが照明されると、レチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(部分縮小像)が表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARと共役な露光領域IAに形成される。
投影光学系PLとしては、複数枚、例えば10〜20枚程度の屈折光学素子(レンズ素子)13のみから成る屈折系が用いられている。この投影光学系PLを構成する複数枚のレンズ素子13のうち、物体面側(レチクルR側)の複数枚(ここでは、説明を簡略化するために4枚とする)のレンズ素子131,132,133,134は、結像特性補正コントローラ48によって外部から駆動可能な可動レンズとなっている。レンズ素子131〜134は、不図示の二重構造のレンズホルダをそれぞれ介して鏡筒に保持されている。これらレンズ素子131〜134は、内側レンズホルダにそれぞれ保持され、これらの内側レンズホルダが不図示の駆動素子、例えばピエゾ素子などにより重力方向に3点で外側レンズホルダに対して支持されている。そして、これらの駆動素子に対する印加電圧を独立して調整することにより、レンズ素子131〜134のそれぞれを投影光学系PLの光軸方向であるZ軸方向にシフト駆動、及びXY面に対する傾斜方向(すなわちX軸回りの回転方向(θx方向)及びY軸回りの回転方向(θy方向)に駆動可能(チルト可能)な構成となっている。
その他のレンズ素子13は、通常のレンズホルダを介して鏡筒に保持されている。なお、レンズ素子131〜134に限らず、投影光学系PLの瞳面近傍、又は像面側に配置されるレンズ素子、あるいは投影光学系PLの収差、特にその非回転対称成分を補正する収差補正板(光学プレート)などを駆動可能に構成しても良い。更に、それらの駆動可能な光学素子の自由度(移動可能な方向)は3つに限られるものではなく1つ、2つあるいは4つ以上でも良い。
各駆動素子の駆動電圧(駆動素子の駆動量)が、主制御装置20からの指令に応じて結像特性補正コントローラ48により制御され、これによって、投影光学系PLの結像特性、例えば、フォーカス、像面湾曲、ディストーション、倍率、球面収差、非点収差及びコマ収差などを補正することが可能となっている。
前記ウエハステージWSTは、XYステージ42と、該XYステージ42上に搭載されたZチルトステージ38とを含んで構成されている。
前記XYステージ42は、ウエハステージWSTの稼動範囲に敷設された不図示のウエハステージベースの上面の上方に不図示のエアベアリングによって例えば数μm程度のクリアランスを介して浮上支持され、ウエハステージ駆動部56Wを構成する不図示のリニアモータ等によって走査方向であるY軸方向(図2における紙面直交方向)及びこれに直交するX軸方向(図2における紙面内左右方向)に2次元駆動が可能に構成されている。
前記Zチルトステージ38は、3つのZ駆動部27A,27B,27C(但し、紙面奥側のZ駆動部27Cは不図示)によってXYステージ42上で3点にて支持されている。これらのZ駆動部27A〜27Cは、Zチルトステージ38の下面のそれぞれの支持点を投影光学系PLの光軸方向(Z軸方向)に独立して駆動する3つのアクチュエータ(例えばボイスコイルモータなど)21A、21B、21C(但し、紙面奥側のアクチュエータ21Cは不図示)と、これらのアクチュエータ21A、21B、21Cそれぞれによる各支持点のZ軸方向の駆動量(基準位置からの変位)をそれぞれ検出するエンコーダ23A〜23C(但し、紙面奥側のエンコーダ23Cは不図示)とを含んで構成されている。ここで、エンコーダ23A〜23Cとしては、例えば光学式又は静電容量式等のリニアエンコーダを使用することができる。
本第1の実施形態では、上記アクチュエータ21A〜21CによってZチルトステージ38を、光軸AXの方向(Z軸方向)及び光軸に直交する面(XY面)に対する傾斜方向、すなわちX軸回りの回転方向であるθx方向、Y軸回りの回転方向であるθy方向に駆動する駆動装置が構成されている。また、エンコーダ23A〜23Cで計測されるZチルトステージ38のZ駆動部27A〜27Cによる各支持点のZ軸方向の駆動量(基準点からの変位量)は、ステージ制御装置19及びこれを介して主制御装置20に供給されるようになっている。
Zチルトステージ38上には、移動鏡52Wが固定されており、外部に配置されたウエハレーザ干渉計(以下、「ウエハ干渉計」という)54Wによって、移動鏡52Wを介して、Zチルトステージ38(ウエハステージWST)のXY面内の位置が例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。
ここで、実際には、Zチルトステージ38上には、走査露光時の走査方向であるY軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡と非走査方向であるX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられ、これに対応してウエハ干渉計もX軸方向位置計測用のXレーザ干渉計とY軸方向位置計測用のYレーザ干渉計とが設けられているが、図2ではこれらが代表的に移動鏡52W、ウエハ干渉計54Wとして示されている。なお、例えば、Zチルトステージ38の端面を鏡面加工して反射面(前述のX移動鏡、Y移動鏡の反射面に相当)を形成しても良い。また、Xレーザ干渉計及びYレーザ干渉計は測長軸を複数有する多軸干渉計であり、ウエハステージWSTのX、Y位置の他、回転(ヨーイング(Z軸回りの回転であるθz回転)、ピッチング(X軸回りの回転であるθx回転)、ローリング(Y軸回りの回転であるθy回転))も計測可能となっている。従って、以下の説明ではウエハ干渉計54Wによって、Zチルトステージ38のX、Y、θz、θy、θxの5自由度方向の位置が計測されるものとする。また、多軸干渉計は45°傾いてZチルトステージ38に設置される反射面を介して、投影光学系PLが載置される架台(不図示)に設置される反射面にレーザビームを照射し、投影光学系PLの光軸方向(Z軸方向)に関する相対位置情報を検出するようにしても良い。
ウエハステージWSTの位置情報(又は速度情報)は、ステージ制御装置19及びこれを介して主制御装置20に供給されるようになっている。ステージ制御装置19は、主制御装置20の指示に応じてウエハステージ駆動部56Wを介してウエハステージWSTのXY面内の位置を制御するとともに、Z駆動部27A〜27Cを駆動してZチルトステージ38のZ位置及び傾斜を制御する。
前記Zチルトステージ38上に、ウエハホルダWHが設けられ、該ウエハホルダWH上に、ウエハWが真空吸着されている。図3(B)に示されるように、ウエハホルダWHは、その外観が所定肉厚の円形板状の本体部26、該本体部26の上面(図2における紙面手前側の面)の外周部近傍の所定幅の環状領域を除く中央部の所定面積の領域に所定の間隔で設けられた複数の突起状のピン部32,32,……、これら複数のピン部32が配置された前記領域を取り囲む状態で外周縁近傍に設けられた環状の凸部(以下、「リム部」と称する)28等を備えている。ピン部32が配置された領域は、真空源と、配管等を介して連通しており、ウエハWを載置する際には、この領域が真空状態となり、ウエハWがピン32等に支持された状態で吸着保持される。
図2に戻り、また、ウエハステージWST上には、後述するレチクルアライメント用の複数対の第1基準マーク、後述するアライメント系ALGのベースライン計測用の基準マーク等が形成された基準マーク板FMが、その表面がほぼウエハWの表面と同一高さとなるように固定されている。なお、基準マーク板FM上には、前述のレチクルマーク板の基準面の投影像や、後述する焦点位置検出系の計測点領域をカバーする大きさの鏡面加工が施された平面も設けられている。この平面の高さも、ウエハWの表面と同じ高さとなるように規定されている。
本第1の実施形態の露光装置100には、主制御装置20によってオン・オフが制御される光源を有し、投影光学系PLの結像面に向けて多数のピンホール又はスリットの像を形成するための結像光束を光軸AXに対して斜め方向より照射する照射系60aと、それらの結像光束のウエハWの表面での反射光束を受光する受光系60bとからなる射入射方式の多点焦点位置検出系(以下、単に「焦点位置検出系」と呼ぶ)が設けられている。この多数のスリット像が形成される地点が、この焦点位置検出系(60a、60b)の計測点となり、この計測点から成る領域を、以下では「計測点領域」ともいう。この計測点領域は、露光領域IA及びその周辺の領域に対応するように配置されている。すなわち、焦点位置検出系(60a,60b)の複数の計測点では、それぞれその点でのウエハWのZ軸方向の位置(高さ)を検出することができるようになっており、全ての計測点のウエハWの面位置から、複数の計測点の計測結果から、露光領域IA及びその周辺全体のウエハWの表面のZ位置すなわち傾斜を求めることができるようになっている。
なお、本第1の実施形態の焦点位置検出系(60a、60b)と同様の多点焦点位置検出系の詳細な構成は、例えば特開平6−283403号公報(対応米国特許第5,448,332号)等に開示されている。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び対応する米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。なお、上記公報等に記載の多点焦点位置検出系は、前述のように、ウエハW上の露光領域IAだけでなく、その周辺のZ位置も計測することができるようになっており、走査方向のウエハWの起伏を先読みする機能等を有しているが、それらの機能は有していなくても良く、また、照射系60aによって照射される光束の形状は、平行四辺形その他の形状であっても良い。
ステージ制御装置19では、走査露光時等に、受光系60bからの焦点ずれ信号(デフォーカス信号)、例えばSカーブ信号に基づいて焦点ずれが零あるいは焦点深度内となるように、ウエハWのZ位置及びXY面に対する傾斜を、ウエハステージ駆動部56Wを介して制御することにより、オートフォーカス(自動焦点合わせ)及びオートレベリングを実行する。
さらに、露光装置100は、ウエハステージWST(正確にはウエハホルダWH)に保持されたウエハW上のアライメントマーク及び基準マーク板FM上に形成された基準マークの位置計測等に用いられるオフ・アクシス(off-axis)方式のアライメント系ALGを備えている。このアライメント系ALGとしては、例えばウエハW上のレジストを感光させないブロードバンドな検出光束を対象マークに照射し、その対象マークからの反射光により受光面に結像された対象マークの像と不図示の指標の像とを撮像素子(CCD等)を用いて撮像し、それらの撮像信号を出力する画像処理方式のFIA(Field
Image Alignment)系のセンサが用いられる。FIA系のセンサは、例えば特開平2−54103号公報(対応する米国特許第4,962,318号明細書)などに開示されている。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び対応する米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。なお、FIA系に限らず、コヒーレントな検出光を対象マークに照射し、その対象マークから発生する散乱光又は回折光を検出したり、その対象マークから発生する2つの回折光(例えば同次数)を干渉させて検出したりするアライメントセンサを単独であるいは適宜組み合わせて用いることは勿論可能である。
さらに、本第1の実施形態の露光装置100では、図示は省略されているが、レチクルRの上方に、投影光学系PLを介してレチクルR上の一対のレチクルマークと対応する基準マーク板上の一対の第1基準マークとを同時に観察するための露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)アライメント系から成る一対のレチクルアライメント系が設けられている。これらのレチクルアライメント系としては、例えば特開平7−176468号公報(対応する米国特許第5,646,413号)などに開示されるものと同様の構成のものが用いられる。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び対応する米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
前記制御系は、図2中、前記主制御装置20によって主に構成される。主制御装置20は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等からなるいわゆるワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等から構成され、前述した種々の制御動作を行う他、装置全体を統括して制御する。ステージ制御装置19は、主制御装置20の指示に従って、ウエハステージWST(XYステージ42、Zチルトステージ38)及びレチクルステージRSTの位置制御を行う。
[レチクル計測機]
次に、レチクル計測機800Aの構成について図4に基づいて説明する。このレチクル計測機800Aでは、露光装置100におけるレチクルステージRSTに相当するレチクルステージRST’と、レチクルホルダRHと同型のホルダであるレチクルホルダRH’と、フィゾー干渉計60とを備えている。
このレチクル計測機800Aは、露光システム200のレチクルRを搬送する不図示のレチクル搬送系による搬送経路中に設置されている。露光システム200では、例えば露光工程管理コントローラ500の管理の下、この露光装置100にレチクルRを搬入する前に、不図示のレチクル搬送系により、レチクル計測機800AにレチクルRが搬入され、レチクルホルダRH’上に適切なバキューム圧で、真空吸着保持されるようになる。レチクル計測機800Aは、レチクルホルダRH’上に吸着保持された状態でのレチクルRのパターン面の面形状を計測する。
このとき、レチクルRは、そのパターン面が−Z側を向くように保持されるものとする。レチクルRのパターン面の面形状の計測を可能とするために、レチクル計測機800Aにおいては、レチクルホルダRH’の−Z側、すなわちレチクルホルダRH’上に保持されたレチクルRのパターン面側に、フィゾー干渉計60が設けられている。
このフィゾー干渉計60は、レーザ光源61、レンズ62、絞り63、ビームスプリッタ64、λ/4波長板65、コリメータレンズ66、参照面67A、68Aが形成された参照面用部材67、68、レンズ69、干渉縞検出部70及び処理装置71などを含んで構成されている。
図4に示されるように、例えば発振波長633nmのHe−Neレーザ等のレーザ光源61から発した光は、可干渉性を有し、紙面に平行な偏光方位(X軸方向)を有する直線偏光の光束となるように設定されている。この光束は、レンズ62及び迷光等を除去するための絞り63を経た後、ビームスプリッタ64に入射する。
ビームスプリッタ64は、X軸方向に偏光方位を有する直線偏光の光束を透過させる。透過した光束は、λ/4波長板65に入射し、円偏光に変換されて、コリメータレンズ66で平行光に変換された後、参照面用部材67に入射する。参照面用部材67に形成された参照面67Aでは、この平行光が一部反射し、残りが透過するようになる。この透過した光束は、レチクルホルダRH’に保持されたレチクルRのパターン面全面に照射され、例えば、レチクルRのパターン面全面がクロム蒸着されている場合には、照射された平行光はそのパターン面で反射する。
参照面用部材67の参照面67Aで反射された光(参照光)と、レチクルRのパターン面で反射された光(測定光)とは、λ/4波長板65によりY軸方向に偏光変位を有する直線偏光に変換され、コリメータレンズ66を通って集光されながらビームスプリッタ64で反射される。ビームスプリッタ64で反射された光束は、レンズ69で平行光に変換されてCCD(電荷結合素子:Charge Coupled Device)から成る干渉縞検出部70に導かれる。この干渉縞検出部70の受光面には、参照面用部材67の参照面67Aと、レチクルRのパターン面の両方の反射面から反射されて合成された光の干渉縞が形成され、干渉縞検出部70により、この干渉縞が検出される。
すなわち、参照面用部材67の参照面67Aと、レチクルRのパターン面との距離をdとすると、1回の往復で2dの光路差で参照光と測定光が干渉し、その光路差がレーザ波長の1/2の奇数倍であるときには、互いに打ち消し合って暗線を生じさせ、光路差がレーザ波長の整数倍であるときには、互いに強め合って明線を生じさせ、この結果、干渉縞検出部70の受光面上に干渉縞が生じる。
この干渉縞の検出結果は、処理装置71に送られる。処理装置71は、この干渉縞の検出結果に基づいてレチクルホルダRH’に保持されたレチクルRのパターン面の面形状を算出する。具体的には、処理装置71は、干渉縞の検出結果に基づいて、干渉縞の明線及び暗線の数を累積演算することにより、その干渉縞の分布状態に従ったレチクルRのパターン面の勾配に応じた面形状データを仮決定する。そして、その累積演算に伴い、仮決定された面形状データに含まれる一定の勾配や一定のデフォーカス(オフセット成分)を、面形状データに内在する累積誤差として除去し、最終的なレチクルRの面形状データを算出する。この面形状データは、例えば、ある面内位置(XY位置)に対する面高さ(Z位置)のデータなどのディジタルデータとして算出される。
一方、レチクルRが、そのパターン面にクロム蒸着が施されていない透過レチクルであった場合、レチクルRのパターン面全面に照射された光束の一部はそのパターン領域で反射するものの、残りの光束は、レチクルRのパターン面とは反対側の面まで達し、その面を一部は反射し、残りは透過する。レチクルRを透過した光束は、もう1つの参照面用部材68の参照面68Aまで達する。この参照面68Aは、反射率が高い面であり、この面でこの光束が反射し、レチクルRまで戻るようになる。そして、上述したのと同様の光路で、参照面用部材67、68の参照面67A、68Aをそれぞれ反射した参照光と、レチクルRのパターン面を反射した、あるいは、その反対側の面を反射した測定光との干渉縞が、干渉縞検出部70において検出される。
このように、このレチクル計測機800Aにおいては、パターン面にクロムが全面蒸着されたレチクルをレチクルホルダRH’に保持させた場合には、参照面用部材67の参照面67Aで反射した参照光とパターン面で反射した測定光との干渉縞が、干渉縞検出部70で観測されるようになり、レチクルRとして透過レチクルをレチクルホルダRH’に保持させた場合には、参照面用部材68の参照面68Aでそれぞれ反射した参照光と、パターン面とその裏面で反射した測定光との干渉縞が観測されるようになる。これにより、レチクル計測機800Aでは、全面がクロム蒸着されたレチクルであっても、透過レチクルであっても、そのパターン領域に回路パターンが形成されたレチクルであっても、そのパターン面全面の面形状を計測することが可能である。ここで、レチクル平坦度の計測は、パターン全面について行う必要はなく、レチクルパターン設計データに基づき、X軸方向、Y軸方向に所定のピッチで均等に、レチクル面の透過、又は、反射部分の複数の計測点から近似的に求めてもよい。例えば、Y軸方向(スキャン方向)に7点、X軸方向に5点で、レチクル面内35点の計測点における計測値より近似的にレチクル平坦度を求める。
なお、このレチクルステージRST’には、レチクルステージRSTと同様に、レチクルマーク板に相当するマーク板が設けられている。フィゾー干渉計60によりレチクルホルダRH’に保持されたレチクルRのパターン面の面形状を計測する際には、このマーク板の面形状もあわせて計測されるようになる。すなわち、レチクル計測機800Aの計測結果によれば、マーク板の面位置を基準としたレチクルRのパターン面の面形状データが得られることになる。
また、レチクル計測機800Aでは、このフィゾー干渉計60を、レーザ光束が被検体を2度通過するダブルパス型の干渉計とすることにより、その検出精度を向上させることが可能である。
[塗布現像装置]
次に、各基板処理装置が備えるトラック300について、図5を参照して説明する。トラック300は、露光装置100を囲むチャンバ内に、露光装置100にインライン方式で接続可能となるように設置されている。トラック300には、その中央部を横切るようにウエハWを搬送する搬送ライン301が配置されている。この搬送ライン301の一端に未露光若しくは前工程の基板処理装置で処理がなされた多数のウエハWを収納するウエハキャリア302と、本基板処理装置で露光工程及び現像工程を終えた多数のウエハWを収納するウエハキャリア303とが配置されており、搬送ライン301の他端に露光装置100のチャンバ側面のシャッタ付きの搬送口(不図示)が設置されている。
また、トラック300に設けられた搬送ライン301の一側に沿ってコータ部(塗布部)310が設けられており、他側に沿ってデベロッパ部(現像部)320が設けられている。コータ部310は、ウエハWにフォトレジストを塗布するレジストコータ311と、そのウエハW上のフォトレジストをプリベークするためのホットプレートからなるプリベーク装置312と、プリベークされたウエハWを冷却するためのクーリング装置313を含んで構成されている。
デベロッパ部320は、露光処理後のウエハW上のフォトレジストをベーキングする、いわゆるPEB(Post-Exposure Bake)を行うためのポストベーク装置321、PEBが行われたウエハWを冷却するためのクーリング装置322及びウエハWのフォトレジストの現像を行うための現像装置323を備えて構成されている。
[ウエハ計測機]
さらに、本第1の実施形態では、ウエハWを露光装置100に搬入する前に、当該ウエハWの平坦度に関する情報(面形状)を事前計測するウエハ計測機400Aがインライン設置されている。図6に示されるように、ウエハ計測機400Aは、ウエハステージWST’と、ウエハホルダWH’と、フィゾー干渉計60’とを含んで構成されている。ウエハステージWST’は、ウエハステージWSTとほぼ同型のステージであるが、移動可能でない固定のステージであってもよい。また、ウエハホルダWH’は、ウエハホルダWHと同型のホルダであり、ウエハWを真空吸着することにより(すなわち露光装置100のウエハホルダWHと同じようにして)、これを保持する。
このウエハ計測機400Aでは、レチクル計測機800Aと同様に、ウエハホルダWH’に吸着保持された状態でのウエハWの面形状を、フィゾー干渉計60’を用いて計測する。このフィゾー干渉計60’は、参照面用部材68を備えていないほかは、フィゾー干渉計60と同等の構成とすることができるので、その構成については、詳細な説明を省略する。すなわち、このフィゾー干渉計60’は、反射計測型の干渉計である。
なお、このウエハステージWST’には、ウエハステージWSTと同様に、基準マーク板FMに相当するマーク板が設けられている。このマーク板の面は、厳格にほぼ平面として規定されているので、マーク板の面形状に相当する信号は、そのマーク板の高さを示す信号となる。したがって、このマーク板の面形状に相当する信号と、ウエハWの面形状に相当する信号とを比較すれば、マーク板の面の高さとウエハWの面形状の計測対象面の高さとの相対的関係が明らかとなり、それらの差分を求めることができるようになる。すなわち、マーク板の面を基準として、フィゾー干渉計60’によりウエハホルダWH’に保持されたウエハWの面形状を計測することができる。
なお、図5に示される、コータ部310を構成する各ユニット(レジストコータ311、プリベーク装置312、クーリング装置313)、デベロッパ部320を構成する各ユニット(ポストベーク装置321、クーリング装置322、現像装置323)及びウエハ計測機400Aの構成及び配置は、あくまで一例であって、実際にはさらに複数の他の処理ユニットやバッファユニット等が設けられるとともに、各ユニットは空間的に配置され、各ユニット間でウエハW又はウエハホルダWHを搬送するロボットアームや昇降機等も設けられている。また、ウエハWが各ユニット間をどのような経路で通過して処理されるかは、処理ユニットの処理内容や全体としての処理時間の高速化等の観点から最適化され、動的に変更され得る。
露光装置100が備える主制御装置20、コータ部310及びデベロッパ部320、ウエハ計測機400A及び解析システム600は、前述のように、有線又は無線で接続されており、各々の処理開始又は処理終了を示す信号が送受信される。また、本第1の実施形態では、ウエハ計測機400Aで計測された計測結果(ウエハ計測機400Aの処理装置71で算出されたウエハWの面形状に相当するデータ(面形状データ))は、解析システム600に送られるが(通知されるが)、解析システム600でなく、露光装置100の主制御装置20に直接的に、あるいは解析システム600を介して露光装置100の主制御装置20に送られるようにしてもよい。
なお、ウエハ計測機400AによるウエハWの面形状の計測は、ウエハWの前層のマーク形成が完了した後であれば行うことができるが、ウエハWがトラック300に搬入された後、望ましくはレジスト塗布後であって、かつ、露光装置100への搬入前に行われる。なお、ウエハ計測機400Aの設置場所は、本第1の実施形態のようにトラック300内には限られず、露光装置100のチャンバ内であれば、例えばトラック300内の外部でもよく、あるいはこれらの装置とは独立した計測専用の装置を設けて搬送装置で接続するようにしても良い。しかし、ウエハ計測機400Aをトラック300内に設置した場合には、ウエハWの前処理と、その面形状の自動計測を一括して行うことができるため、スループットに有利となる。
この露光システム200における、ウエハプロセス処理は、各基板処理装置でそれぞれ行われており、各基板処理装置は、露光工程管理コントローラ500により統括的に制御・管理される。露光工程管理コントローラ500は、これに付属する記憶装置に、露光システム200で処理する各ロットあるいは各ウエハについてのプロセスを制御するための種々の情報、そのための種々のパラメータあるいは露光履歴データ等の種々の情報を蓄積する。そして、これらの情報に基づいて、各ロットに適切な処理が施されるように、各基板処理装置を制御・管理する。
また、解析システム600は、露光装置100、トラック300(ウエハ計測機400A)、露光装置100の光源、レチクル計測機800A等とは独立して動作する装置であり、それら各種装置からネットワークを経由して各種データを収集し、必要な解析処理を行う。
工場内生産管理ホストシステム700は、基板処理工場内の全ての半導体製造プロセスを統括管理する。
[レチクルパターン面の面形状の事前計測の準備処理]
次に、図1に示される露光システム200において、レチクルホルダRHに保持された状態と同等の状態でのレチクルRのパターン面の面形状を事前計測するための準備処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。この準備処理は、基板処理工場内における、露光装置100やレチクル計測機800A、トラック300の組み立ての際にあわせて行われる。なお、このとき、すなわち、露光システム200内のレチクル計測機800A及び露光装置100以外の構成要素の組み立て及び調整はすでに完了しているものとし、工場内生産管理ホストシステム700、露光工程管理コントローラ500はすでに稼動しているものとする。また、この準備処理では、そのパターン面にクロムが全面蒸着された基準物体としての基準レチクルRTが用いられる。
まず、ステップS10において、レチクル計測機800A内にフィゾー干渉計60を設置し、このフィゾー干渉計60により、図4に示されるレチクルRのパターン面(被検面)の面形状の計測を可能な状態に調整する。すなわち、フィゾー干渉計60内の光学系を図4に示される状態に設置する。この調整は、組み立て用ロボットにより自動的に行われるようにしてもよい。この調整では、フィゾー干渉計60の計測結果を、処理装置71から解析システム600へ送信することができるような調整も併せて行われる。なお、この時点で、レチクル計測機800A内において、レチクルステージRST’及びレチクルホルダRH’を、図4に示される状態には設置しないものとする。また、参照面用部材68については、この時点でまだ、図4に示されるように設置しておく必要はない。
次のステップS12では、露光装置100に設置されることとなるレチクルステージRST及びレチクルホルダRHを、図4に示されるレチクルステージRST’及びレチクルホルダRH’と同じように設置し、レチクルホルダRH’上にレチクルRを吸着保持可能な状態に調整するとともに、フィゾー干渉計60を用いてレチクルR及びマーク板の面形状を適切な状態で計測できるように、フィゾー干渉計60に対するそれらの位置及び姿勢等を調整する。
次のステップS14では、不図示のレチクル搬送系を用いて基準レチクルRTをレチクルホルダRH上にロードし、レチクルホルダRHに基準レチクルRTを吸着保持させる。そして、次のステップS16では、フィゾー干渉計60を用いて、基準レチクルRTのパターン面の面形状を計測する。この計測結果は、処理装置71から解析システム600に送られる。さらに、次のステップS18では、基準レチクルRTを不図示のレチクル搬送系を用いてアンロードし、適当な場所に待機させる。
次のステップS20では、レチクルステージRST及びレチクルホルダRHを、レチクル計測機800Aから取り外し、レチクルステージRST’及びレチクルホルダRH’を設置し、レチクルホルダRH上に基準レチクルRTを吸着保持可能な状態に調整するとともに、フィゾー干渉計60を用いてレチクルR及びマーク板の面形状を適切な状態で計測できるように、フィゾー干渉計60に対するそれらの位置及び姿勢等を調整する。
次のステップS22では、待機させていた不図示のレチクル搬送系を用いて待機させていた基準レチクルRTをレチクルホルダRHにロードし、レチクルホルダRHに基準レチクルRTを吸着保持させる。そして、次のステップS24では、フィゾー干渉計60を用いて、基準レチクルRTのパターン面の面形状を計測する。この計測結果は、処理装置71から解析システム600に送られる。さらに、次のステップS26では、レチクル搬送系を用いて基準レチクルRTをアンロードし、保管場所に戻す。
次のステップS28では、解析システム600が、ステップS16で取得されたレチクルホルダRHに保持された状態での基準レチクルRTのパターン面の面形状データと、ステップS24で取得されたレチクルホルダRH’に保持された状態での基準レチクルRTのパターン面の面形状データとの差分に相当する面形状差データを算出する。ここでは、レチクルステージRST’のマーク板の高さの計測結果を基準とした(一致させた)ときの面形状差(マーク板に相当する信号を重ね合わせたときの各パターン面の面形状に相当する信号の差分)が算出される。解析システム600は、この算出結果を記憶し、いつでも読み出せるように管理する。ステップS28の終了後は、この準備処理を終了する。
このような準備処理を経た後、最終的に露光システム200の各構成要素が組み立てられ(例えば、露光装置100内で、レチクルステージRST及びレチクルホルダRHが図2に示されるように設置される。レチクル計測機800A内におけるレチクルステージRST’及びレチクルホルダRH’は、上述した工程を行った後、図4に示されるような状態に、すでに設置されている)、実際に運用可能な状態に調整される。
なお、ウエハ計測機400Aについても、上述したような処理と同様の処理が行われる。すなわち、ウエハステージWST’及びウエハホルダWH’の代わりにウエハステージWST及びウエハホルダWHを設置し、表面が鏡面加工された基準物体としての基準ウエハを吸着保持させたときの基準ウエハの面形状をフィゾー干渉計60’により計測し、ウエハステージWST’及びウエハホルダWH’を設置し、ウエハホルダWHに基準ウエハを保持させたときの基準ウエハの面形状をフィゾー干渉計60’により計測し、基準マーク板FMに相当するマーク板の表面を基準とした、それぞれの場合の面形状差データを、解析システム600により求める。解析システム600は、この面形状差データを不図示の記憶装置に格納し、そのデータをいつでも読み出せるように管理する。
上述した準備処理は、露光システム200内の全ての露光装置100各々について行われる。また、露光装置1台1台が、複数のレチクルホルダRHの中から露光に用いるレチクルホルダ(すなわち実際にレチクルRを保持するホルダ)を択一的に選択可能である場合には、複数のレチクルホルダRHそれぞれについて、上述の動作が行われ、レチクル計測機800AのレチクルホルダRH’との面形状差が解析システム600により求められる。解析システム600は、これらすべてのレチクルホルダRHと、そのレチクルホルダRHについて上述のようにして算出された面形状差データとを関連付けて、不図示の記憶装置に格納し、いずれかのレチクルホルダRHが用いられる際には、そのレチクルホルダRHに対応する面形状差データを読み出すことができるように管理している。
[ウエハプロセス]
次に、図1に示される露光システム200において、すでに1層目の露光が完了した1枚のウエハWに対する露光処理を行う場合の動作について図8〜図10のフローチャート及び図11〜図13に基づいて説明する。なお、前提として、露光装置100においては、レチクルステージRSTに設けられたレチクルマーク板の投影像(空間像)計測処理又はテスト露光などにより、そのレチクルマーク板の投影光学系PLによる投影像面(最良結像面)が検出されており、ステージ制御装置19によるウエハステージWSTのフォーカス・レベリング制御においては、検出されたこの最良結像面に、ウエハWの露光領域IAに対応する表面が合致するようなフォーカス・レベリング制御が行われるように、焦点位置検出系(60a,60b)の検出オフセットが調整されているものとする。
図8に示されるように、まず、ステップS50では、工場内生産管理システム700の管理の下、露光工程管理コントローラ500が、不図示のレチクル搬送系により、露光装置100にロードされることになるレチクルRを、レチクル計測機800Aまで搬送させ、レチクルホルダRH’上にロードさせる。次のステップS52では、レチクル計測器800Aが、レチクルホルダRH’に保持された状態でのレチクルRのパターン面に相当する面形状を計測する。この計測された面形状データR(x,y)(x、yは、レチクルRのパターン中心を原点とするX軸方向、Y軸方向の位置座標)は、解析システム600に送信される。図11、図12には、計測された面形状R(x、y)の一例が示されている。図11では、+Z側から見たときのXY面に対するレチクルRのパターン面のZ位置の変化が示され、図12は、XY面に対するレチクルRのパターン面のZ位置を、3次元グラフ表示したものである。図11、図12に示されるように、レチクルRは、レチクルホルダRH’に保持されることにより、その保持部分に対しレチクルRのパターン面の中心付近が落ち込むような形状に変形する。図12に示されるように、レチクルRのパターン面のZ位置の最大値と最小値との差は、0.5ミクロン程度となっている。なお、図12のグラフにおいては、レチクルRのマーク板の面のZ位置の最小値を原点として表示している。
図8に戻り、ステップS54では、不図示のレチクル搬送系により、レチクルRをレチクル計測機800Aからアンロードさせる。引き続き、レチクル搬送系は、このレチクルRを、露光装置100に搬送する。
次のステップS56では、解析システム600は、露光装置100のレチクルホルダRHに保持された状態とほぼ等価な状態でのレチクルRの面形状データを算出する。すなわち、解析システム600は、上記ステップS28で算出された面形状差データ(これをdR(x、y)とする)と、ステップS52で取得されたレチクルホルダRH’に保持された状態でのレチクルRの面形状データ(R(x,y))とに基づいて、レチクルホルダRHに保持された状態とほぼ等価な状態でのレチクルRの面形状データ(R’(x,y)=R(x,y)+dR(x,y))を算出する。レチクルRの面形状データR’(x、y)は、解析システム600から露光工程管理コントローラ500に送られる。
次のステップS58では、露光工程管理コントローラ500は、レチクルRのパターン面の平坦度が異常であるか否か、換言すれば、平坦度に関する要求精度を満たすことができないレチクルRであるか否かを判断する。ここでは、上述のようにして求められたレチクルRのパターン面の面形状データR’(x,y)から、その平坦度に関する指標値を算出し、上記判断を、その値に基づいて行う。例えば、ここでは、面形状データR’(x,y)における面位置の最大値と最小値との差が、許容範囲内になければ、レチクルRは平坦度異常であると判断する。この判断が肯定されれば、ステップS60に進み、そのレチクルRをリジェクトするように指示し(或いはモニタ上での表示機能などを用いて、そのレチクルRのリジェクトを促し)、処理を終了する。一方、この判断が肯定されれば、ステップS62に進む。
ステップS62では、露光工程管理コントローラ500は、主制御装置20に、面形状データR’(x、y)を送るか、又は解析システム600に、このレチクルRのパターン面の面形状データR’(x,y)を、主制御装置20に送らせる。次のステップS64では、レチクルRを、露光装置100に搬入させ、レチクルRを図2に示されるようにレチクルホルダRH上に吸着保持させる。そして、次のステップS66では、露光装置100に対し、不図示のレチクルアライメント系によるレチクルアライメント及びベースライン計測などのレチクルRに関する準備作業を、不図示のレチクルアライメント系及びアライメント系ALGなどを用いて行うように指示する。なお、このような露光装置100における一連の動作は、通常のスキャナと同様であるから、詳細説明については省略する。ステップS66完了後は、図9のステップS70に進む。
次のステップS70では、露光工程管理コントローラ500は、基板処理装置、すなわち露光装置100及びトラック300(コータ部310、デベロッパ部320及びウエハ計測機400A等)に対し、所定の手順でウエハWに対する処理をおこなうように指示する。この指示を受けると、ウエハキャリア302から取り出された1枚のウエハWは、搬送ライン301上をレジストコータ311まで搬送される。そして、レジストコータ311内に搬入されたウエハWに対しフォトレジストが塗布され、さらに、そのウエハWは搬送ライン301に沿ってプリベーク装置312及びクーリング装置313に搬送され、そのウエハWに対するレジスト処理が行われる。レジスト処理が完了すると、トラック300から露光工程管理コントローラ500に対し、レジスト処理完了通知が送られる。ステップS72において、露光工程管理コントローラ500は、この通知を取得する。
次のステップS74では、露光工程管理コントローラ500は、ウエハ計測機400AにウエハWをロードさせ、ステップS76において、ウエハ計測機400Aにより、ウエハWの面形状を計測させ、その面形状データW(x、y)を取得させる。図13には、ここで、取得されたウエハWの面形状データW(x、y)の一例が示されている。
次のステップS78では、ウエハ計測機400AからウエハWをアンロードし、不図示の搬送系により、ウエハWを露光装置100に搬送させる。そして、ステップS80では、露光工程管理コントローラ500は、解析システム600に、上記ステップS28で算出された面形状差データ(dW(x、y)とする)と、ステップS52で取得されたウエハホルダWH’に保持された状態でのウエハWの面形状データ(W(x,y))とに基づいて、ウエハホルダWHに保持された状態とほぼ等価な状態でのウエハWの面形状データ(W’(x,y)=W(x,y)+dW(x,y))を算出させる。算出したウエハWの面形状データW’
(x,y)は、解析システム600から露光工程管理コントローラ500に送られる。
次のステップS82では、露光工程管理コントローラ500は、ウエハWの平坦度が、要求精度を満たすことができないものであるか否かを判断する。この判断は、ウエハWの面形状データW’(x、y)に基づいてその平坦度を表す指標値を算出し、その値を判断基準としてなされる。例えば、面形状データW’(x,y)における最大値と最小値との差が、許容範囲でなければ、その平坦度は、要求精度を満たしておらず異常であると判断することができる。この判断が肯定されれば、ステップS84に進み、露光工程管理コントローラ500は、そのウエハWをリジェクトするように指示し(或いはモニタ上での表示機能などを用いて、そのウエハWのリジェクトを促し)、処理を終了する。
一方、この判断が肯定されれば、ステップS86に進む。ステップS86では、露光工程管理コントローラ500は、ウエハWの面形状データW’(x,y)を、主制御装置20に送るか、又は解析システム600に対し、求められたウエハWの面形状データW’(x,y)を、主制御装置20に送るように指示する。そして、次のステップS88では、露光工程管理コントローラ500は、トラック300に対し、ウエハWを露光装置100に搬送させるように指示する。これにより、ウエハWが露光装置100に搬入される。これにあわせて、露光工程管理コントローラ500は、露光装置100に対し、一連の露光動作を開始するように指示する。以降、図10のステップS90〜ステップS108までの動作は、露光装置100の主制御装置20によって行われるものである。
この指示が送られた主制御装置20では、ステップS90において、不図示のプリアライメント装置により、ウエハステージWSTの移動位置(ウエハ干渉計54Wの計測置に基づく位置)を規定するステージ座標系(本第1の実施形態では、XY座標系とする)と、ウエハW上のショット領域の配列により規定される座標系(ウエハ座標系)とがある程度まで一致するように、ウエハステージWSTに対するウエハWの回転ずれと中心位置ずれが高精度に調整されるいわゆるウエハプリアライメントを行う。
次のステップS92では、不図示のウエハローダを介して、ウエハWをウエハステージWST上のウエハホルダWH上にロードする。
次のステップS94では、ウエハアライメントを行う。ここでは、アライメント系ALGなどを用いた、EGA方式などのウエハアライメントが行われる。なお、このEGA方式のウエハアライメントについては、例えば特開昭61−44429号公報及びこれに対応する米国特許第4,780,617号などに開示されているので、詳細な説明を省略する。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び対応する米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
次のステップS96では、レチクルRのパターン面の面形状データR’(x,y)を、像面上の曲面に換算する。この換算は、投影光学系PLの投影倍率を用いて行われる。この換算された面形状データをR’’(x,y)とする。このR’’(x、y)は、レチクルマーク板の評価マーク像による基準面からのレチクルRのパターン像の像面のずれ量を示データであるとみなすことができる。
次いで、ステップS98では、ショット領域の配列番号を示すカウンタpの値(以下、「カウンタ値p」とする)に1をセットし、最初のショット領域を露光対象領域とする。
次に、ステップS100では、露光対象領域の配列座標(各ショット領域の中心位置座標)に基づいて、ウエハWの位置が露光対象領域を露光するための加速開始位置となるように、ステージ制御装置19、ウエハステージ駆動部56Wを介してウエハステージWSTを移動させるとともに、レチクルRの位置が加速開始位置となるようにステージ制御装置19、レチクルステージ駆動部56Rを介して、レチクルステージRSTを移動させる。すなわち、主制御装置20は、ウエハアライメントの結果として得られたウエハW上の各ショット領域の配列情報及びアライメント系ALGのベースラインに基づいて、干渉計54W、54Rからの位置情報をモニタしつつ、ステージ制御装置19の制御により、ウエハWの第1ショット領域の露光のための走査開始位置(加速開始位置)に、Zチルトステージ38(ウエハステージWST)を移動させるとともに、レチクルステージRSTを走査開始位置(加速開始位置)に移動させる。
次のステップS102では、レチクルステージRSTとウエハステージWSTの相対走査を開始する。そして両ステージRST、WSTがそれぞれの目標走査速度に達し、等速同期状態に達すると、不図示の照明系からの照明光ILによってレチクルRのパターン領域が照明され始め、走査露光が開始される。そして、レチクルRのパターン領域の異なる領域が照明光ILで逐次照明され、パターン領域の全面に対する照明が完了することにより走査露光が終了する。これにより、レチクルRの回路パターン等が投影光学系PLを介してウエハW上の露光対象領域に縮小転写される。すなわち、ここでは、ステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われる。
この走査露光中に、上記ステップS96で求められたウエハ像面換算のレチクルRの面形状データR’’(x,y)に基づいて、レチクルステージRSTのY座標に応じて結像特性補正コントローラ48を介して可動レンズを駆動するとともに、焦点位置検出系(60a,60b)の出力に基づいてステージ制御装置19及びアクチュエータ21A〜21Cを介してZチルトステージ38を駆動して、その補正後の走査像面にウエハWの面を一致させるように制御する。
これにより、走査露光中においては、非スキャン方向(X軸方向)のレチクルRの照明領域IARに相当する部分の面形状の変化による像面変化の1次成分は、Zチルトステージ38のローリング(X軸方向チルト)制御で補正され、その2次以上の成分は可動レンズの駆動により補正され、スキャン方向(Y軸方向)の像面変化は、Zチルトステージ38のピッチング(Y軸方向チルト)制御で補正され、像面のオフセット成分は、Zチルトステージ38のZ軸方向の制御(フォーカス制御)によって補正される。
なお、走査露光中の可動レンズの駆動による投影光学系PLの結像特性の補正、例えば像面湾曲の補正は、走査露光中に常時行うことは必須ではなく、例えば走査露光に先立って行うものとすることもできる。この場合、可動レンズの駆動によりフォーカス位置が変化する場合には、主制御装置20は、発生するフォーカス位置の変化量ΔZ’を走査露光前に算出しておき、走査露光中は、−ΔZ’だけ変化させたフォーカス位置の目標値に基づいて、前述のフォーカス・レベリング制御を実行することとしても良い。これによって、レチクルRのパターン面の撓みによる像面湾曲及びデフォーカスが補正されて、ウエハWの表面が高精度にレチクルRのパターン面に対する実際の像面に焦点深度の範囲内で合わせ込まれる。
また、この走査露光中においては、レチクルRの面形状データR’’(x、y)による補正と同時に、ウエハWの面形状データW(x、y)を用いたウエハステージWSTの位置制御の補正も同時に行う。すなわち、ウエハ干渉計54Wの計測値から得られる、ウエハステージWSTのX位置、Y位置に基づいて、露光領域IAに相当するウエハWの位置(x、y)を割り出す。そして、そのウエハWの位置(x,y)におけるウエハの面形状データW(x、y)から算出された露光領域IAに対応するウエハWの表面に基づいて、例えば、焦点位置検出系(60a,60b)の検出オフセットを調整する。これにより、そのウエハWの基準マーク板のZ位置に対する露光領域IAに対応するウエハWの面形状の変化に関わらず、パターンの最良結像面と、ウエハWの表面とが焦点深度の範囲内で一致するようになる。
次のステップS104では、カウンタ値pを参照し、全てのショット領域に露光が行われたか否かを判断する。ここでは、p=1、すなわち、最初のショット領域に対して露光が行なわれたのみであるので、ステップS104での判断は否定され、ステップS106に進む。ステップS106では、カウンタ値pをインクリメント(p←p+1)して、次のショット領域を露光対象領域とし、ステップS100に戻る。
以下、ステップS104での判断が肯定されるまで、ステップS100→ステップS102→ステップS104→ステップS106の処理、判断が繰り返され、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルRの回路パターン等が転写される。ウエハW上の全てのショット領域へのパターンの転写が終了すると、ステップS104での判断が肯定され、ステップS108に移行する。ステップS108では、不図示のウエハローダによるウエハWのアンロードを指示する。
この指示により、ウエハステージWSTからアンロードされたウエハWは、不図示のウエハアンローダにより、トラック300の搬送ライン301まで搬送された後、搬送ライン301に沿って順次ポストベーク装置321及びクーリング装置322を経て現像装置323に送られる。次のステップS110では、現像装置323において、ウエハWの各ショット領域上に、レチクルのデバイスパターンに対応したレジストパターン像が現像される。現像が完了したウエハWは、必要に応じて形成されたパターンの線幅、重ね合わせ誤差等の不図示の計測装置で検査され、搬送ライン301によってウエハキャリア303内に収納される。
次のステップS112では、ウエハキャリア303に収納されたウエハWは、他の処理装置に搬送され、エッチング(レジストで保護されていない部分を削り取る)を行い、ステップS114において、レジスト剥離(ステップS96、不要となったレジストを取り除く)を行う。露光装置100で露光を行う次のウエハWがある場合には、上述したS70〜S114の処理をそのウエハWに対し繰り返し行う。これにより、ウエハキャリア302に収納された例えば1ロットのウエハWに対し、多重に回路パターンが形成される。
[パイプライン処理]
上述した本第1の実施形態の処理手順においては、ウエハ計測機400AによるウエハWの面形状の露光装置100搬入前の計測工程(図9のステップS70〜ステップS88)を行うことにより、ウエハプロセス処理のスループットが低下することが懸念されるが、以下のようなパイプライン処理を適用することにより、スループットの低下を防止することが可能である。これについて図14に基づいて説明する。
ウエハWの面形状の計測工程を追加したことにより、ウエハプロセス処理は、レジスト膜を形成するレジスト処理工程A、ウエハ計測機400Aによるウエハの面形状の計測工程B、アライメント及び露光を行う露光工程C、露光後の熱処理や現像を行う現像工程D、レジストパターンの測定を行う場合にはパターン寸法計測工程Eの5つの工程で構成されることになる。これらの5つの工程で、数枚のウエハW(同じ図では3枚)について、並行的に処理するパイプライン処理を行う。具体的には、また、ウエハWの計測工程Bを先行するウエハWの露光工程Cとを並行して行うことにより、全体のスループットに与える影響を極めて小さく抑えることができる。
また、現像工程Dの実施後にレジスト寸法測定工程Eを実施する場合には、事前計測工程Bとレジスト寸法測定工程Eを互いに重ならないようなタイミングで、これらをウエハ計測機400Aでパイプライン的に計測することにより、レジスト寸法測定装置を別途設ける必要がないので装置コストを削減することができるうえ、且つスループットにもそれほど悪影響を与えることはない。
なお、図14に示されるパイプライン処理はあくまでも一例であり、先行するウエハに対する露光を行っている間に次のウエハWに対するウエハプリアライメントを行うように工程をスケジューリングしてもよいことは勿論である。
以上詳細に述べたように、本第1の実施形態によれば、露光に用いられるレチクルR及びウエハWを露光装置100に搬入する前に、レチクルホルダRH及びウエハホルダWHに保持された状態と等価な状態でのレチクルR及びウエハWの平坦度に関する情報(それらの面形状データR’’(x、y)、W’(x,y))を取得する。このようにすれば、露光装置100におけるスループットに影響を与えることなく、そのレチクルR及びウエハWの平坦度に関する情報を、それらを用いた露光装置100における露光動作を行う前に認識することができる。
より具体的には、本第1の実施形態では、レチクルホルダRH、ウエハホルダWHに保持された状態でのレチクルR、ウエハWの面形状と、そのレチクルR、ウエハWを保持したときのその面形状との差分(面形状差)が既知であるレチクルホルダRH’、ウエハホルダWH’によりレチクルR、ウエハWを保持した状態で、レチクルR、ウエハWの面形状を計測し、レチクルホルダRH、ウエハホルダWHに保持された状態でのレチクルR、ウエハWの面形状データと、前述の面形状差のデータとに基づいて、レチクルホルダRH、ウエハホルダWHに保持された状態と等価な状態でのレチクルRH、WHの面形状データを算出する。このようにすれば、露光装置100のレチクルホルダRH、ウエハホルダWHにレチクルR、ウエハWを直接保持した状態とせずとも、それらに保持された状態と等価な状態でのレチクルR、ウエハWの面形状を求めることが可能となる。これにより、レチクルR、ウエハWを露光装置100に搬入する前に、露光中のレチクルR、ウエハWの面形状を事前に取得することができるようになる。
また、本第1の実施形態では、このようなレチクルR、ウエハWの面形状を事前計測する工程に先立って、レチクルホルダRH、ウエハホルダWHに保持された基準レチクルRT、基準ウエハの面形状と、レチクルホルダRH’、ウエハホルダWH’に保持されたそれらの面形状とをそれぞれ計測し、それぞれの計測結果の差分をレチクルホルダRHとレチクルホルダRH’との面形状差、ウエハホルダWHとウエハホルダWH’との面形状差として算出する。この面形状差を求めることにより、レチクルホルダRH、ウエハホルダWHにレチクルR、ウエハWを保持させることなく、レチクルホルダRH、ウエハホルダWHに保持された状態でのレチクルR、ウエハWの面形状を算出することが可能となる。
また、本第1の実施形態によれば、レチクルR、ウエハWの面形状の計測結果に基づいて、それらの平坦度異常を検出し、異常と判断した場合には、そのレチクルR、ウエハWをリジェクトする。このようにすれば、平坦度異常とみなされたレチクルR、ウエハWは露光に用いないようにすることができ、露光工程を適切なものとすることができる。
また、本第1の実施形態によれば、上述したように、露光装置100に搬入される前に、レチクルホルダRH、ウエハホルダWHに保持された状態と等価な状態でのレチクルR、ウエハWの面形状を計測し、その計測結果に基づいて、投影光学系PLの結像特性の補正と、レチクルR及びウエハWの相対位置の補正を行いつつ、レチクルR上に形成された回路パターン等を、ウエハW上に転写するので、高精度な露光を実現することができる。
なお、本第1の実施形態では、レチクルRの面形状に応じて、結像特性補正コントローラ48を用いて、投影光学系PLの結像特性のうち、フォーカス、像面湾曲、ディストーションを補正した。これらの収差成分を補正することにより、レチクルRのパターンを所望のウエハW上の位置に転写することができるようになる。
また、本第1の実施形態では、ウエハWの面形状に関しては、焦点位置検出系(60a、60b)の検出オフセットを、随時その面形状にあわせて調整していったが、これには限られない。例えば、レチクルRの像面換算の面形状データR’’(x、y)とウエハWの面形状データW’(x、y)との和を、露光領域IAに対応する部分で加算した結果に基づいて、結像特性補正コントローラ48を用いて投影光学系PLの結像特性を調整するようにしてもよい。
なお、本第1の実施形態では、レチクルRの面形状と、ウエハWの面形状とを両方事前(露光装置100に搬入する前)に計測したが、どちらか一方だけ事前計測すればよいことは勿論である。レチクルRの面形状のみを露光時の投影光学系PLの結像特性に反映させる場合には、補正可能な収差成分として、投影光学系PLのフォーカス、像面湾曲、ディストーションを調整することになるが、ウエハWの面形状のみの場合には、投影光学系PLのフォーカスのみを調整することとなる。
また、本第1の実施形態では、レチクルR、ウエハWの平坦度が要求精度を満たすことができないものである場合には、そのレチクルR、ウエハWをリジェクトしたが、これには限られない。平坦度が悪化している面がごく一部である場合には、残りの部分を露光に用いるようにすることもできる。例えば、レチクルRのパターン領域に複数のチップ領域に対応する回路パターンが形成されている場合、平坦度が悪化しているチップ領域を露光しないように、不図示の照明系に備えられたレチクルブラインドを規定して露光を行うようにしてもよい。このことは、ウエハWについても同様であり、ウエハWの全体の平坦度が、許容値を上回っていても、それが一部の平坦度の悪化によるものか否かを判断し、平坦度が悪化している部分のショット領域のみを露光対象から除外することができる。
なお、平坦度異常が検出された場合には、レチクルホルダRHを別のホルダに交換するようにしてもよい。具体的には、露光工程管理コントローラ500は、図8のステップS58において、平坦度異常と判断した場合には、露光装置100の主制御装置20に対し、レチクルホルダRHの交換を指示する。主制御装置20は、レチクルRが搬入される前に、レチクルホルダRHの交換を不図示のレチクルホルダ交換系を用いて行う。
また、例えば、露光装置100が、複数のレチクルホルダRHの中から1つのレチクルホルダRHを選択して、レチクルステージRST上に載置可能である場合には、平坦度が許容範囲内となるレチクルホルダRHを選択するようにしてもよい。この場合、解析システム600は、露光装置100に備えられた複数のレチクルホルダRHそれぞれについて、レチクルホルダRH’との面形状差データdR(x、y)を不図示の記憶装置に記憶して管理しているものとする。そして、図8のステップS56では、解析システム600は、レチクルRの面形状データR(x、y)と、各レチクルホルダRHの面形状データdR(x、y)との和である面形状データR’(x、y)を算出し、露光工程管理コントローラ500は、その算出結果に基づいて、パターン面の平坦度が最も良好なレチクルホルダRHを選択する。露光工程管理コントローラ500は、この選択されたレチクルホルダRHに関する情報(例えばレチクルホルダRHの識別番号)などを露光装置100の主制御装置20に送る。主制御装置20は、レチクルRを搬入する前に、選択されたレチクルホルダRHをレチクルステージRSTにロードする。なお、この平坦度が最も良好であるホルダの選択については、ウエハホルダWHについても同じように実施することができることはいうまでもない。
さらに、レチクルホルダRH’とレチクルRとの間や、ウエハホルダWH’とウエハWとの間に異物が挟みこまれてそれらの平坦度が悪化していることも考えられるので、一端、レチクルホルダRH、ウエハホルダWH、レチクルR、ウエハWを洗浄し、レチクル計測機800A、ウエハ計測機400Aにおいて、再度、面形状の計測を行うようにしてもよい。具体的には、露光工程管理コントローラ500は、レチクルRの面形状データR’(x、y)から得られる平坦度が所定の閾値を超えていた場合には、平坦度異常であるとみなし、基板処理工場内に備えられた洗浄装置に、レチクルホルダRH、レチクルR又はウエハホルダWH、ウエハWを搬送させ、それらを洗浄させる。洗浄後、レチクルホルダRH及びレチクルR、ウエハホルダWH及びウエハWは、再び、レチクル計測機800A又はウエハ計測機400Aに搬送され、図8又は図9に示される面形状データの事前取得工程が行われる。
なお、本第1の実施形態では、レチクルホルダRH’又はウエハホルダWH’が保持するレチクルR又はウエハWの保持状態を調整可能であるとすることもできる。例えばウエハホルダWH’のピン32一本が、例えばピエゾ素子などに接続されており、その先端部の高さがそれぞれ調整可能であった場合、ウエハについて行われる、図7に示されるような準備処理を行った後、ウエハホルダWHに保持された状態での基準ウエハの面形状と、ウエハホルダWH’に保持された基準ウエハの面形状とがほぼ一致するように、ピン32を調整するようにしてもよい。このようにすれば、レチクルホルダRHに保持された状態での面形状と、レチクルホルダRH’に保持された状態での面形状とをほぼ同じ状態とすることができるので、それらの面形状の計測精度をさらに向上させることができる。
≪第2の実施形態≫
次に、本発明の第2の実施形態について、図15、図16に基づいて説明する。上記第1の実施形態では、ウエハホルダWHに保持された状態と等価な状態(面形状の差が既知である他のウエハホルダWH’に保持された状態)でのウエハWの面形状を露光装置100に搬入する前に計測したが、本第2の実施形態では、ウエハホルダWHに保持されたウエハWの面形状を直接事前計測する。ここで、上記第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用いるとともに、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。本発明に係る検査方法及び露光方法を好適に実施可能な第2の実施形態に係る露光システムは、前述した第1の実施形態におけるウエハ計測機400A(図6)に代えて、図15に示される、ウエハ計測機400Bを備え、露光装置100とウエハ計測機400Bとの間でウエハホルダWHを搬送することができる不図示の搬送系をさらに備える点に特徴を有する。
図15には、ウエハ計測機400Bの概略的な構成が示されている。図15に示されるように、ウエハ計測機400Bでは、専用のウエハホルダWH’でなく、露光装置100で用いられるウエハホルダWHがウエハステージWST’の上に載置されている。このウエハホルダWHは、上述したウエハホルダの搬送系により搬送され、ウエハステージWST’の上にロードされたものである。ウエハ計測機400Bでは、露光装置100で用いられるウエハホルダWHに吸着保持された状態、すなわち実際の露光中と同じ状態でのウエハWの面形状の計測を行う。
次に、図15に示されるウエハ計測機400Bを用いたウエハWの面形状の計測を行う場合の動作について図16のフローチャートに基づいて説明する。この計測動作は、本第1の実施形態における露光動作の図9のステップS74〜ステップS88の代わりに行われるものである。
まず、ステップS200において、不図示のウエハホルダの搬送系により、ウエハホルダWHを露光装置100からウエハ計測機400Bまで搬送し、ウエハステージWST’上に載置する。次のステップS202では、ウエハWを、ウエハステージWST’に載置されたウエハホルダWH上にロードする。次のステップS204では、ウエハ計測機400Bは、ウエハWの面形状を計測し、ウエハWの面形状データW’(x、y)を露光工程管理コントローラ500に送る。ステップS206において、露光工程管理コントローラ500は、その面形状データW’(x、y)に基づく平坦度が許容範囲内であるか否かを判断する。この判断が否定されれば、ステップS208に進み、肯定されればステップS214に進む。ここでは、ウエハWの面形状データW’(x、y)が許容範囲外で、判断が否定され、ステップS208に進むものとする。ステップS208では、露光工程管理コントローラ500は、ウエハWの面形状の計測回数が所定回数(例えば2回)を超えたか否かを判断する。ここでは、1回目であるので、判断は否定され、ステップS210に進む。
ステップS210では、不図示の搬送系を用いてウエハWを一旦アンロードし、ステップS202に戻り、ウエハ計測機400BにウエハWを再びロードする。このとき、ウエハWのロード位置を、前回のステップS202におけるウエハWのロード位置に対し、所定距離(例えば100ミクロン程度)ずらした位置とする。そして、ステップS204において、ウエハ計測機400BにおいてウエハWの面形状を再び計測し、ステップS206において、露光工程管理コントローラ500は、その面形状データW’(x、y)を取得し、ウエハWの平坦度が許容範囲内であるか否かを判断する。
このように、ステップS206において判断が肯定されるか、ステップS208において、判断が肯定されるまで、ステップS202〜ステップS210のループ処理が繰り返され、ウエハホルダWH上のウエハWの保持位置を数百ミクロンずらしながら、その都度、ウエハWの面形状データW’(x、y)が取得される。このループ処理の繰り返し回数が所定回数以上となると、ステップS208における判断が肯定され、ステップS208に進み、そのウエハWをリジェクトして、処理を終了する。
一方、ウエハWの面形状データW’(x、y)に基づく平坦度が許容範囲内となり、ステップS206における判断が肯定されれば、ステップS214に進む。ステップS214では、ウエハWをアンロードし(或いはモニタ上での表示機能などを用いて、ウエハWのアンロードを促し)、続くステップS216では、ウエハホルダWHをアンロードして(或いはモニタ上での表示機能などを用いて、ウエハホルダWHのアンロードを促して)、露光装置100に搬送し、ウエハステージWST上に設置する。さらに、ステップS218では、露光工程管理コントローラ500は、最終的に取得されたウエハホルダWH上のウエハWの保持装置及びその保持位置でのウエハWの面形状データW’(x、y)を主制御装置20に送信し、さらに、ステップS220では、ウエハWを露光装置100に搬送する。
ステップS220の実行後は、上記第1の実施形態と同様に、図10のステップS90〜ステップS108の露光処理が行われ、現像(ステップS110)、エッチング(ステップS112)、レジスト剥離(ステップS114)が行われる。
以上詳細に述べたように、本第2の実施形態によれば、露光装置100で用いられるウエハホルダWHに保持された状態でのウエハWの平坦度に関する情報(面形状)を、直接的に、露光装置100にウエハWを搬入する前に事前計測するので、実際の露光中と同じ状態でのウエハWの面形状を直接計測することが可能となるので、高い計測精度が得られる。
また、本第2の実施形態によれば、観点を変えてみると、ウエハホルダWHに保持された状態でのウエハWの平坦度が良好となるように、ウエハWの保持状態を調整し、調整された保持状態でウエハホルダWHによりウエハWを保持しつつ、レチクルR上のパターンを、ウエハW上に転写する。かかる場合には、ウエハホルダWHに保持されたウエハWを用いて露光を行う際に、ウエハWの平坦度が良好となるように、その保持状態が調整されたウエハホルダWHによりウエハWを保持することができるので、高精度な露光を実現することができる。
なお、本第2の実施形態では、露光装置100で用いられるウエハホルダWHをウエハ計測機400Bに搬送し、ウエハWの面形状を計測するので、この計測中、露光装置100ではウエハホルダWHを用いることができない。したがって、本第2の実施形態では、複数のウエハホルダWHを用意し、それらを順番に用いるようにすれば、露光装置100における露光と、ウエハ計測機400Bにおける計測とを同時並行で行うことができるようになる。このようにすれば、スループットを低下させることなく、ウエハWの面形状を事前に計測することができるようになる。
また、本第2の実施形態によれば、ステップS202〜ステップS210において、ウエハホルダWHにおける、ウエハWの保持位置を調整しつつ、ウエハWの面形状の計測を行い、露光装置100内でウエハホルダWHによりウエハWを保持する際には、ウエハWの平坦度が最も良好だった保持位置でウエハWを保持する。このようにすれば、ウエハWの平坦度を最適化した状態でウエハホルダWHにより、ウエハWを保持することが可能となる。
なお、本第2の実施形態では、ウエハWの面形状W(x、y)から得られたその平坦度が許容範囲内でない場合には、ウエハホルダWH上のウエハWの保持位置を変更したが、これに限らず、ウエハホルダWHの吸着保持力を変更するようにしても良い。すなわち、ステップS206、S208において判断が否定された後に、ステップS210におけるウエハWをアンロードした後、ステップS202においてウエハWのロードを行ってウエハWの保持位置を変更する代わりに、ウエハホルダWHのバキューム圧を変更し、ステップS204に戻って、再びウエハWの面形状を計測するようにしても良い。そして、バキューム圧を所定範囲内で変化させ、ウエハWの面形状W(x、y)が許容範囲内となったときには、そのバキューム圧を、ウエハWを吸着保持するためのバキューム圧として、ウエハWの面形状W(x、y)とともに、露光装置100の主制御装置20に送るようにすればよい。
なお、この場合、バキューム圧を所定範囲内で変化させても、ウエハWの平坦度が許容範囲内とならなかった場合には、ウエハホルダWHに保持されたウエハWの保持位置を変更して、さらにバキューム圧の調整を行うようにしてもよい。また、ウエハWの保持位置を変化させても、ウエハWの平坦度が許容範囲内とならなかった場合には、最も平坦度が良好であった保持位置にウエハWを保持し、その保持位置でウエハWのバキューム圧を変化させて、最も良好であったバキューム圧を最適なバキューム圧として選択するようにしてもよい。
また、ウエハホルダWH上のウエハWの保持位置が好ましい位置であるか否かを判断するために、その保持位置でウエハWを保持したまま、ウエハホルダWHのバキューム圧を変化させ、ウエハWの面形状の変化を計測するようにしてもよい。ここで、その変化量が所定値よりも大きい場合には、その保持位置は、望ましい位置でないとし、ウエハホルダWHのウエハWの保持位置を変更するようにしても良い。すなわち、バキューム圧に応じてウエハWの平坦度がほとんど変わらないような保持位置を、ウエハWの最適な保持位置として選択するようにしてもよい。すなわち、ウエハホルダWHの真空吸着力の変動に伴うウエハWの面形状の変動の度合(大きさ)に基づいて、ウエハホルダWHにおけるウエハWの最適な保持位置を求めるようにしてもよい。
なお、本第2の実施形態では、ウエハWの面形状から得られるその平坦度が異常であると判断された場合には、ステップS212において、ウエハWをリジェクトしたが、ウエハWをウエハホルダWHからアンロードし、それぞれをクリーニングした後、上記事前計測処理をリトライするようにしてもよい(或いはモニタ上での表示機能などを用いて、その旨を、すなわちウエハWとウエハホルダWHのそれぞれをクリーニングする旨を促すようにしても良い)。
また、本第2の実施形態では、露光装置100において、複数のウエハホルダWHを有している場合には、そのうちの1つのウエハホルダWHにウエハWを保持した状態で、その面形状を計測し、平坦度が最も良好だったウエハホルダWHを選択的に用いるようにしても良い(或いはモニタ上での表示機能などを用いて、平坦度が最も良好だったウエハホルダWHを選択的に用いるように促しても良い)。具体的には、図16のステップS206で、平坦度許容値内において、判断が否定された場合には、他のウエハホルダWHを、ウエハ計測機400B上に載置し、そのウエハホルダWHにウエハWを保持した状態で、その面形状を計測する処理を、平坦度が許容範囲内となるまで繰り返すようにすればよい。
また、本第2の実施形態では、ウエハホルダWHに保持されたウエハWの面形状を直接的に、事前計測する場合について述べたが、レチクルホルダRHに保持されたレチクルRの面形状を直接事前計測するようにしてもよいことは勿論である。この場合、レチクルホルダRHに保持された状態でのレチクルRの面形状を事前に計測可能なレチクル計測機を備え、その計測機と露光装置との間でレチクルホルダRHを搬送することができる不図示の搬送系をさらに備える必要がある。
≪第3の実施形態≫
次に、本発明の第3の実施形態について、図17、図18に基づいて説明する。ここで、上記第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用いるとともに、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。この第3の実施形態に係る露光システムでは、図17の斜視図でその構成が模式的に示される、レチクル計測機800Cを備える点に特徴を有する。
図17に示されるように、レチクル計測機800Cは、光源801と、振動ミラー802と、走査レンズ803と、受光器808、809、810とを含んで構成されている。また、レチクルRのパターン面(被検面804)上には、回路パターンが形成されているものとし、その一部に異物806が付着しているものとする。
光源801から射出された光ビームL1は、振動ミラー(ガルバノスキャナーミラー又はポリゴンスキャナーミラー)802により偏向させられて走査レンズ803に入射し、この走査レンズ803から射出された光ビームL2が、被検面804上の走査線805上を走査する。この際に、光ビームL2の走査周期よりも遅い速度で被検面804をその走査線805に直交する方向に移動させると、光ビームL2により被検面804上の全面を走査することができる。この場合、被検面804の表面上に異物806が存在する領域に光ビームL2が照射されると散乱光L3が発生する。また、被検面804上に付着した異物やパターン欠陥とは異なる、例えばレチクルR上の回路パターン、ウエハW上の回路パターン等の周期的な構造(以下、「パターン」と総称する)807が存在する領域に光ビームL2が照射されると、そのパターン807からは回折光L4が発生する。
図17においては、受光器808、809及び810が相異なる方向から走査線805に対向するように配置されている。異物806から発生する散乱光L3はほとんど全方向に向かって発生する等方的散乱光であるのに対して、パターン807から発生する回折光L4は回折によって生じるために空間的に離散的な方向に射出される光(指向性の強い光)である。この散乱光L3と、回折光L4との性質の違いを用いて、受光器808、809及び810の全てで光を検出した場合には、その光は欠陥からの散乱光であり、受光器808、809及び810の内で1つでも光を検出しない受光器が存在する場合には、その光はパターンからの回折光であると判断する。これにより、パターン807と異物806とを区別して検出することができる。
次に、本第3の実施形態に係る露光システム200の動作について説明する。図18には、図17のレチクルRの面形状の事前計測の処理手順を示すフローチャートが示されている。図18に示されるように、ステップS300において、レチクルRをレチクル計測機800Cにロードする。そして、ステップS302において、上述のようにして、レチクルRのパターン面(ゴミの付着及びパターンの欠陥)を計測する。この計測結果は、露光工程コントローラ500に送られる。次のステップS304では、レチクルRをレチクル計測機800Cからアンロードする。
次のステップS306では、露光工程管理コントローラ500は、この計測が2回目の計測であるか否かを判断する。この判断が肯定されればステップS312に進み、否定されればステップS308に進む。ここでは、まだ計測が1回目であるので判断は否定され、ステップS308に進む。ステップS308では、計測中に、散乱光L3が観測され、レチクルR上に異物(例えば、図17の異物806)が発見されたか否かを判断する。この判断が否定されればステップS314に進み、肯定されればステップS310に進む。
ステップS310では、不図示のクリーニング装置において、レチクルRのパターン面をクリーニングする(或いはモニタ上での表示機能などを用いて、レチクルRのパターン面のクリーニングを促す)。ステップS310終了後は、ステップS300に戻り、レチクルRをレチクル計測機800Cに再びロードし、ステップS302において、異物、パターン欠陥の事前計測を行い、ステップS304において、レチクル計測機800CからレチクルRをアンロードし、ステップS306では、2回目の計測であるので判断は肯定され、ステップS312に進む。
ステップS312では、パターン面上に欠陥があるか否かを判断する。クリーニング後のレチクルRに対する2回目の計測でも、散乱光L3が観測されるということは、パターン欠陥があるということを意味している。したがって、ここでは、2回目の計測においても散乱光L3が観測されていた場合には判断を肯定し、ステップS318に進む。ステップS318では、レチクルRをリジェクトし(或いはモニタ上での表示機能などを用いて、そのレチクルRのリジェクトを促し)、処理を終了する。
一方、ステップS308において判断が否定された後(1回目の計測においてレチクルR上に散乱光L3が観測されなかった場合)又はステップS312において判断が肯定された後(2回目の計測でもレチクルR上に散乱光L3が観測されなかった場合)は、ステップS314に進む。ステップS314では、レチクルRを露光装置100に搬入し、ステップS316において、第1の実施形態のステップS66(図8参照)と同様の準備処理を行う。ステップS316実行後は、図9、図10と同様の処理が行われる。
以上詳細に述べたように、本第3の実施形態によれば、露光に用いられるレチクルRを露光装置100に搬入する前に、レチクルRのパターン面上を計測し、レチクルR上に付着した異物及びパターン欠損に関する情報を取得する。このようにすれば、露光装置100におけるスループットに影響を与えることなく、そのレチクルRに付着した異物及びパターン欠損をいち早く検出し、対処することができる。
また、本第3の実施形態によれば、レチクルRのパターン面を計測し、散乱光L3が観測され異物が付着していると判断した場合には、ステップS310において一度レチクルRのパターン面をクリーニングし、再度上記計測を行っても、散乱光L3が観測された場合には、パターン欠陥があると判断するので、パターン面上の異物と、パターン欠陥とも区別することが可能となり、異物があると判断した場合にはクリーニングを行い、パターン欠陥があると判断した場合にはレチクルRのリジェクトを行うというように、それぞれ検出結果に応じて適切な処理を実行することができるようになる。
なお、本第3の実施形態では、レチクルR上の異物又はパターン欠陥を事前計測するレチクル計測機800Cを備える場合について述べたが、ウエハW上の異物又はパターン欠陥を事前計測するウエハ計測機を備えるようにしてもよいことは勿論である。このウエハ計測機の構成及び動作は、上述したレチクル計測機800Cの構成及び動作とほぼ同等とすることができるので、詳細な説明を省略する。
なお、本第3の実施形態においても、レチクルRのパターン欠陥が発生している箇所がごく一部である場合には、残りの部分を露光に用いるようにすることもできる。例えば、レチクルRのパターン領域に、複数のチップ領域に対応する回路パターンが形成されている場合、パターン欠陥が発生しているチップ領域を露光しないように、不図示の照明系に備えられたレチクルブラインドを規定して露光を行うようにしてもよい。
このことは、ウエハWについても同様であり、ウエハW上の一部のショット領域にパターン欠陥が発生していても、それが一部のショット領域に限られるものであれば、パターン欠陥が発生したショット領域のみを露光対象から除外することができる。
なお、上記第1、第2の実施形態では、レチクルR及びウエハWの平坦度に関する情報をそのレチクルR、ウエハWの面形状データとしたが、これには限られず、例えばその面形状の微分データ又は積分データであってもよい。また、そのレチクルR及びウエハWのZ位置の分散や標準偏差、最大値と最小値との差であってもよい。また、この面形状データとしては、各xy位置に対するZ位置の面形状マップ方式で表現されているものであっても良いし、関数形式で表現されているものであってもよい。
なお、上記各実施形態では、レチクルホルダRHを、3つの面で吸着保持するものとしたが、これには限らず、レチクルRの4角近傍を支持する4点支持のレチクルホルダであってもかまわない。
なお、上記各実施形態では、レチクルR又はウエハWを保持するレチクルホルダRH、RH’,ウエハホルダWH、WH’を真空吸着式のホルダであるものとしたが、静電吸着方式のホルダであってもよい。また、これらのホルダRH、RH’WH、WHへの保持に際しては、ステージRST、WSTの走査に際し生じる加速度によるレチクルR、ウエハWの位置ずれを防止するために、レチクルR、ウエハWをステージRST、WSTに押し付ける機械的なクランプ機構を併用することも可能である。この場合、事前の平坦度の計測をする際にも、同じようなクランプ機構を併用した状態とするのが望ましい。
なお、上記各実施形態では、レチクルR、ウエハWの面形状を計測するためにフィゾー干渉計を用いたが、これには限られない。レチクルR、ウエハWの面形状を計測装置は、被検面に接触することなく、その面形状を計測する計測装置であればよい。例えば、露光装置100に備えられた、焦点位置検出系(60a、60b)と同様の計測装置などを用いて、それらの面形状を計測するようにしてもよい。斜入射方式の検出系を用いれば、透明なレチクルであっても、複雑な回路パターンが形成されたウエハであっても、それらの面形状を精度良く計測することが可能となる。
また、上記各実施形態では、レチクル計測機800A、800Cを、露光装置100とはインラインに接続されていない計測機(レチクルの搬送経路上に備えられた計測機)とし、ウエハ計測機400A、400Bを、露光装置100とインラインに接続されている計測機とし、トラック300内に設けられるものとした。このようにすれば、効率良くレチクルとウエハの事前計測を行うことができる。しかしながら、これには限られず、その逆であってもよいし、両方とも露光装置にインライン接続又はオフラインに設置されていても良い。なおこれらレチクル計測器(或いはレチクル検査器)800A、800Cや、ウエハ計測器(ウエハ検査器)400A、400Bに、上述の解析システム600における解析機能や、その解析の結果出される指示(例えば既述したようなウエハやレチクルのリジェクト指示など)を出させるようにしても良い。
また、上記各実施形態では、照明光ILとして、露光装置に一般に用いられているものであれば適用することができる。例えば、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)、F2レーザ光(波長157nm)、銅蒸気レーザ、YAGレーザ、半導体レーザなどの高調波等を照明光ILとして用いることができる。
また、上記各実施形態の露光装置において、投影光学系は縮小系、等倍あるいは拡大系のいずれを用いても良いし、屈折系、反射屈折系、及び反射系のいずれであっても良い。いずれの光学系であっても、その結像特性を調整することができる光学系であれば、上記各実施形態のように、投影光学系の結像特性を調整して、露光精度を向上させることが可能である。
なお、上記各実施形態における露光装置を製造する際には、複数のレンズから構成される投影光学系を露光装置に組み込む。その後、光学調整をするとともに、多数の機械部品からなるレチクルステージやウエハステージWSTを露光装置に取り付けて配線や配管を接続し、更に総合調整(電気調整、動作確認等)をすることにより、上記各実施形態の露光装置を製造することができる。なお、上記第1の実施形態においては、このレチクルステージRST又はウエハステージWSTを露光装置に取り付ける前に、基準レチクルRT、基準ウエハを用いた平坦度差を算出する準備処理を行う必要がある。また、露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
なお、上記各実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置について説明したが、本発明は、ステップ・アンド・リピート型の投影露光装置の他、プロキシミティ方式の露光装置など他の露光装置にも適用できることはいうまでもない。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも本発明を好適に適用することができる。また、ウエハステージを2基備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。また、液浸法を用いる露光装置にも本発明を適用することができるのは勿論である。
また、本発明は、半導体製造用の露光装置に限らず、液晶表示素子などを含むディスプレイの製造に用いられる、デバイスパターンをガラスプレート上に転写する露光装置、薄膜磁気ヘッドの製造に用いられるデバイスパターンをセラミックウエハ上に転写する露光装置、及び撮像素子(CCDなど)、マイクロマシン、有機EL、DNAチップなどの製造に用いられる露光装置などにも適用することができる。また、EUV光、X線、あるいは電子線及びイオンビームなどの荷電粒子線を露光ビームとして用いる露光装置に本発明を適用しても良い。
また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。ここで、DUV(遠紫外)光やVUV(真空紫外)光などを用いる露光装置では一般的に透過型レチクルが用いられ、レチクル基板としては石英ガラス、フッ素がドープされた石英ガラス、螢石、フッ化マグネシウム、又は水晶などが用いられる。また、プロキシミティ方式のX線露光装置、又は電子線露光装置などでは透過型マスク(ステンシルマスク、メンブレンマスク)が用いられ、マスク基板としてはシリコンウエハなどが用いられる。
また、上記各実施形態では、レチクルR及びウエハWの平坦度、異物及び欠陥等の計測結果は、解析システム600に送られ、その計測結果を用いた演算を行い、露光工程管理コントローラ500がその計測結果、演算結果等に基づく工程の制御を行ったが、これには限られない。例えば、解析システム600によって、計測結果、演算結果等に基づく工程の制御が行われるようにしてもよく、レチクルR及びウエハWの平坦度、異物及び欠陥等の計測結果が直接、主制御装置20に送られるようにし、主制御装置20により、その計測結果を用いた演算を行ない、その演算結果に基づく工程の制御を行なうようにしてもよい。
半導体デバイスは、デバイスの製造、性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した上記各実施形態の露光システム200及び露光装置100によりレチクルのパターンをウエハWに転写するステップ、メモリリペアステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。