以下、本発明の一実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係るデバイス製造処理システムの概略構成が示されている。図1に示されるように、デバイス製造処理システム1000は、半導体ウエハを処理し、マイクロデバイスを製造するためにデバイス製造工場内に構築されたシステムである。図1に示されるように、このデバイス製造処理システム1000は、露光装置100と、その露光装置100に隣接して配置されたトラック200と、管理コントローラ160と、解析装置500と、ホストシステム600と、デバイス製造処理装置群900とを備えている。
露光装置100は、デバイスパターンを、フォトレジストが塗布されたウエハに転写する装置である。図2には、露光装置100の概略構成が示されている。露光装置100は、露光光IL1、IL2を射出する照明系10、その露光光IL1により照明されるデバイスパターン等が形成されたレチクルR1とその露光光IL2により照明されるデバイスパターン等が形成されたレチクルR2とをレチクルホルダRHを介して保持するレチクルステージRST、露光光IL1、IL2により照明されたレチクルR1、R2に形成されたデバイスパターンの一部をウエハWの被露光面上に投影する両側テレセントリックな投影光学系PL、露光対象となるウエハWを保持するウエハステージWST及びこれらを統括制御する主制御装置20を備えている。
レチクルR1、R2上には、それぞれ回路パターン等を含むデバイスパターンが形成されている。照明系10からの照明光IL1、IL2は、レチクルホルダRHを介してレチクルステージRSTにそれぞれ保持されたレチクルR1、R2のパターン形成面の一部に照射される。この照射領域を照明領域IAR1、IAR2とする。
照明領域IAR1、IAR2をそれぞれ経由した照明光IL1、IL2は、投影光学系PLを介して、ウエハステージWSTに保持されたウエハWの被露光面(ウエハ面)の一部に入射し、そこに照明領域IAR1、IAR2のデバイスパターンの投影像が重なるように形成される。この投影像が形成される領域をそれぞれ露光領域IAとする。ウエハWの被露光面には、フォトレジストが塗布されており、露光領域IAに対応する部分に投影像のパターンが転写されるようになる。
ここで、投影光学系PLの光軸に沿った座標軸をZ軸とするXYZ座標系を考える。ウエハホルダWHを介してウエハWを保持するウエハステージWSTは、XY平面を移動可能であるとともに、ウエハWの被露光面を、Z軸方向のシフト、θx(X軸回りの回転)方向、θy(Y軸回りの回転)方向に調整することが可能である。また、レチクルR1、R2を保持するレチクルステージRSTは、ウエハWを保持するウエハステージWSTに同期してXY面内を移動することが可能である。
このレチクルステージRSTと、ウエハステージWSTとの投影光学系PLの投影倍率に応じた同期走査により、レチクルR1、R2上のデバイスパターンが照明領域IAR1、IAR2を通過するのに同期して、ウエハWの被露光面が、露光領域IAを通過するようになる。これにより、レチクルR1、R2上のパターン形成面の全体のデバイスパターンが、ウエハWの被露光面上の一部の領域(ショット領域)に転写されるようになる。露光装置100は、露光光IL1、IL2に対し、上述したレチクルステージRSTの相対同期走査と、ウエハWを保持するウエハステージWSTのステッピングを繰り返すことにより、レチクルR1、R2上のデバイスパターンをウエハW上の複数のショット領域に転写している。すなわち、露光装置100は、いわゆる多重露光(二重露光)を行う走査露光(ステップ・アンド・スキャン)方式の露光装置である。
レチクルR1、R2は、レチクルステージRST上に設けられたレチクルホルダRH上にそれぞれ保持されている。図3(A)には、レチクルR1を保持するレチクルホルダRHの斜視図が示されている。レチクルホルダRHは、例えば真空吸着により、レチクルR1を、そのパターン形成面が−Z側を向くように吸着保持している。レチクルホルダRHには、レチクルR1をそのX軸両端で吸着保持するY軸方向に延びる3つの吸着部(ランド部L1〜L3)が設けられている。図3(B)に示されるように、この3つの吸着部の吸着面には、それぞれレチクルR1と当接するプラテン部17と、真空源と配管を介して連通する凹部18とがそれぞれ設けられている。レチクルR1を保持した状態で、凹部18が真空状態となると、外気圧の力によりレチクルR1がプラテン部17に吸着保持されるようになる。レチクルR1に対する吸着力は、この凹部18の真空度に応じたものとなる。露光装置100では、主制御装置20の指示の下、不図示の真空源による排気力を調整することにより、レチクルR1に対する吸着力を制御することが可能となっている。
なお、ランド部L1〜L3の吸着面(プラテン部17)の平坦度には、所定の規格が設けられており、3つのプラテン部17の平坦度は、その規格に適合するようなレベルとなっている。
図3(B)に示されるように、ランド部L1〜L3の各凹部18は、複数の領域に分割されている。凹部18では、分割された領域毎に、その真空圧を制御することが可能である。すなわち、凹部18では、分割領域毎に、吸着力を調整することができる。
このレチクルホルダRHは、レチクルステージRSTに真空吸着されており、この真空吸着の解除により、レチクルステージRSTから取り外すことが可能である。露光装置100には、レチクル測定検査器130との間で、レチクルステージRSTのレチクルホルダRHを交換可能な不図示のレチクルホルダ交換機が設けられている。このレチクルホルダ交換機は、レチクルホルダRHがレチクルR1を吸着保持したままで、レチクルホルダRHを交換することが可能である。レチクルホルダRHには、凹部18に連通する管に栓が設けられており、その栓が閉じられ、凹部18の真空圧が維持された状態で、レチクルR1を吸着保持したままレチクルホルダRHを交換することが可能である。
すなわち、露光装置100では、レチクルホルダRHは、レチクルステージRSTと一体化してはおらず、脱着が可能である。勿論、レチクルR1を保持していない状態でも、この脱着は可能であり、レチクルホルダRHの吸着面の平坦度不良や、その吸着面のキズや異物などによってレチクルのパターン形成面の平坦度が悪化し、ウエハWのパターンの転写精度が低下すると予想される場合には、レチクルホルダRHのクリーニングや交換を行うことが可能である。
レチクルR2を保持するレチクルホルダRHも、レチクルR1を保持するレチクルホルダRHと同型のホルダであり、レチクルホルダ交換機により交換可能となっている。ここで、レチクル測定検査器130の機能自体が露光装置100の中に含まれていてもよい。
主制御装置20は、露光光IL1、IL2の強度(露光量)を制御する露光量制御系と、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期制御や、投影光学系PLの焦点深度内にウエハWの被露光面を一致させるオートフォーカス/レベリング制御(以下、単に、フォーカス制御という)などを行うステージ制御系と、投影光学系PLの結像状態を制御するレンズ制御系とを備えている。
露光量制御系は、露光量を検出可能な各種露光量センサ(不図示)の検出値に基づいて、露光量をその目標値に一致させるように制御するフィードバック制御を行っている。
ステージ制御系のうち、両ステージRST、WSTとの同期制御を行う制御系を同期制御系とし、ステージ位置(ウエハWの被露光面)のZ位置やX軸回り、Y軸回りの回転量を制御する制御系を、フォーカス制御系とする。
同期制御系は、XYZ座標系の下で、ウエハステージWST、レチクルステージRSTの位置を計測する干渉計の計測値に基づいてフィードバック制御を行い、両ステージRST、WSTの位置制御及び速度制御を実現している。
露光装置100には、ウエハ面のフォーカス/レベリングずれを複数検出点にて検出する不図示の多点AF(オートフォーカス)センサが設けられている。ステージ制御系は、この多点AFセンサの複数検出点のうち、例えば9個の検出点(9チャンネル)でウエハ面高さを検出し、露光領域IAに対応するウエハ面を、投影光学系PLの像面に一致させるようなフィードバック制御を行うことにより、ウエハWの被露光面のフォーカス・レベリング制御を実現している。
投影光学系PLは、複数枚の屈折光学素子(レンズ素子)を含む光学系PL1、PL2、PL3と、複数のミラーを備えた、両側テレセントリックな光学系である。照明領域IAR1を介した光は、光学系PL1に入射し、複数のミラーで反射した後、光学系PL3に入射して、ウエハWの被露光面に導かれる。一方、照明領域IAR2を介した光は、光学系PL2に入射し、複数のミラーで反射した後、光学系PL3に入射して、ウエハWの被露光面に導かれる。露光領域IAには、これらの光学系PL1〜PL3を介して、所定の倍率で、照明領域IAR1、IAR2内のパターンの部分倒立像が、重なるように投影される。光学系PL1〜PL3は、個々の結像性能を調整することが可能である。レンズ制御系は、大気圧、露光装置100のチャンバ内の温度、露光量、投影光学系PLのレンズの温度をモニタし、そのモニタ結果に基づいて投影光学系PLの倍率変動量と、フォーカス変動量を算出し、その変動量に基づいて、投影光学系PLの結像特性がその目標値に追従するように、光学系PL1〜PL3等を駆動制御している。
露光装置100の動作は、装置パラメータの値をその設定可能範囲内で変更することにより、調整可能である。上記制御系のゲインなどの制御系パラメータや、照明系10におけるコヒーレンスファクタなどの照明条件などはその一例である。照明条件は、露光するパターンに要求される解像度などによって決定される。
主制御装置20は、露光装置100の各種構成要素を制御するコンピュータシステムである。主制御装置20は、デバイス製造処理システム1000内に構築された通信ネットワークに接続され、その通信ネットワークを介して外部とのデータ送受信が可能となっている。
図1に戻り、露光装置100内には、露光に用いられるレチクルR1、R2を、レチクルステージRSTに保持する前に検査するレチクル測定検査器130が設けられている。レチクル測定検査器130は、レチクルR1、R2のパターン形成面の面形状の測定等を行う。
このレチクル測定検査器130は、露光装置100におけるレチクルステージRSTに相当するステージと、フィゾー干渉計(不図示)とを備えている。このステージは、レチクルステージRSTと同様に、レチクルR1、R2を保持した状態のレチクルホルダRHを真空吸着保持することが可能となっている。このステージには、前述のレチクルホルダ交換機により、レチクルホルダRHが載置され、このレチクルホルダRHを例えば真空吸着保持する。露光装置100にレチクルR1、R2を搬入する前に、不図示のレチクル搬送系により、レチクル測定検査器130にレチクルR1、R2を吸着保持したレチクルホルダRHが搬入されており、適当な真空圧の下で、このステージに吸着保持されている。
レチクル測定検査器130は、レチクルホルダRHに吸着保持された状態でのレチクルR1、R2のパターン形成面の面形状を計測する。レチクルホルダRHに保持されたレチクルR1、R2のパターン形成面側に、フィゾー干渉計が設けられている。このフィゾー干渉計は、レーザ光束が被検体を1回だけ通過するシングル型の干渉計としてもよいが、レーザ光束が被検体を2度通過するダブルパス型の干渉計とすれば、その検出精度をさらに向上させることが可能である。
このフィゾー干渉計において、参照面で反射された光(参照光)と、レチクルR1、R2のパターン形成面で反射された光(測定光)とは、CCD(電荷結合素子)から成る干渉縞検出部に導かれ、そこで、それらの位相差による干渉縞が検出される。
レチクル測定検査器130は、この干渉縞に基づいて、レチクルR1、R2のパターン形成面の面形状を算出する。より具体的には、干渉縞の検出結果に基づいて、干渉縞の明線及び暗線の数を累積演算することにより、その干渉縞の分布状態に従ったレチクルR1、R2のパターン形成面の勾配に応じた「面形状データ」を仮決定する。そして、その累積演算に伴い、決定された面形状データに含まれる一定の勾配や一定のデフォーカス(オフセット成分)を、面形状データに内在する累積誤差として除去し、最終的なレチクルR1、R2の面形状データを算出する。この面形状データは、例えば、ある面内位置(XY位置)に対する面高さ(Z位置)のデータなどのディジタルデータとして算出される。
ところで、レチクルR1、R2は、クロムパターンが形成されたレチクルであり、パターン形成面には、クロム部と、光透過部とが存在する。クロム部に入射した光は反射し、透過部に入射した光はそのまま透過するので、両方の部分の面形状を測定すべく、フィゾー干渉計では、反射光束を測定する反射計測部と、透過光束を測定する透過計測部とを備えている。これにより、このフィゾー干渉計では、クロム部と透過部とが混在するパターン形成面全面の面形状を測定可能である。
さらに、レチクル測定検査器130は、レチクルR1、R2のパターン形成面を、レーザでスキャンして、その反射光や散乱光を検出し、反射光又は散乱光の強度変化によって、デバイスパターン上の異物を検出したり、デバイスパターンを撮像し、その撮像結果に基づいて、パターン線幅を測定したり、パターン欠陥を検出したりすることも可能である。
レチクル測定検査器130は、測定した面形状データを管理し、反射光や散乱光の検出結果や、デバイスパターンの撮像結果に基づいて、デバイスパターン上の異物やパターン欠陥の有無の判断を行う(すなわち異常を検出する)情報処理装置を備えている。面形状の測定データや、反射光や散乱光の検出信号やパターンの撮像信号などに相当する計測生データは、不図示の記憶装置に格納される。この情報処理装置は、外部の通信ネットワークと接続されており、外部の装置とデータの送受信が可能となっている。
なお、デバイス製造処理システム100では、同じパターンが形成されたレチクルが複数枚用意されている。すなわち、レチクルR1として使用される可能性のあるレチクルが複数枚、レチクルR2として使用される可能性のあるレチクルが複数枚用意されている。露光装置100では、これらのレチクルから、互いのパターン形成面の相関性が高いレチクルを用いて、露光を行うことになる。
[トラック]
トラック200は、露光装置100を囲むチャンバ(不図示)に接するように配置されている。トラック200は、内部に備える搬送ラインにより、主として露光装置100に対するウエハの搬入・搬出を行っている。
[コータ・デベロッパ]
トラック200内には、レジスト塗布及び現像を行うコータ・デベロッパ(C/D)110が設けられている。C/D110は、ウエハW上に対しフォトレジストの塗布及び現像を行う。C/D110は、これらの処理状態を観測し、その観測データをログデータとして記録することができるようになっている。観測可能な処理状態としては、例えば、レジスト塗布膜厚均一性、現像モジュール処理、PEB(Post-Exposure-Bake)の温度均一性(ホットプレート温度均一性)、ウエハ加熱履歴管理(PEB処理後のオーバベークを回避、クーリングプレート)の各状態がある。C/D110も、その装置パラメータの設定により、その処理状態を、ある程度調整することができるようになっている。このような装置パラメータには、例えば、ウエハW上のレジストの塗布むらに関連するパラメータ、例えば、設定温度、ウエハWの回転速度、レジストの滴下量や滴下間隔などが装置パラメータがある。
C/D110は、露光装置100や、ウエハ測定検査器120とは、独立して動作可能である。C/D110は、トラック200の搬送ラインに沿って配置されている。したがって、この搬送ラインによって、露光装置100とC/D110との間でウエハWの搬送が可能となる。また、C/D110は、デバイス製造処理システム1000内の通信ネットワークと接続されており、外部とのデータ送受信が可能となっている。C/D110は、例えば、そのプロセスに関する情報(上記トレースデータなどの情報)を出力可能である。
[ウエハ測定検査器]
トラック200内には、露光装置100でのウエハWの露光前後(すなわち、事前、事後)において、そのウエハWに対する様々な測定検査を行うことが可能な複合的なウエハ測定検査器120が設けられている。ウエハ測定検査器120は、露光装置100やC/D110とは、独立して動作可能である。ウエハ測定検査器120は、露光前に測定を行う事前測定検査処理と、露光後に測定を行う事後測定検査処理とを行う。
事前測定検査処理では、ウエハWが露光装置100に搬送される前に、ウエハWの被露光面の面形状の測定、ウエハW上の異物の検査、ウエハW上のレジスト膜検査を行う。ウエハ測定検査器120は、事前測定検査の結果を、システム内の通信ネットワークを介して外部にデータ出力することができるようになっている。
一方、事後測定検査処理では、露光装置100で転写されC/D110で現像された露光後(事後)のウエハW上のレジストパターン等の線幅や重ね合わせ誤差、投影光学系PLの波面収差、照明ムラの測定を行い、ウエハ膜検査、ウエハ欠陥・異物検査などを行う。ここで、ウエハ膜検査とは、ウエハW上に形成された膜の膜厚、膜厚ムラ、膜不良、異物、スクラッチなどの検査を含む。
ウエハWの面形状を測定するセンサとしては、レチクル測定検査器130と同様にフィゾー干渉計を用いることができるが、露光装置100の多点AFセンサと同様の斜入射AF方式をセンサを用いるようにしてもよい。斜入射方式のAFセンサは、ハロゲンランプ光で投影スリットを照明し、幅0.1mm程度の細長いスリットとしてウエハW上に結像する。このスリット像は、ウエハ面で反射して受光レンズによって受光スリット上に再結像する。このスリット像は、ウエハ面で反射して受光レンズによって受光スリット上に再結像する。ウエハ面が上下すると、スリット像が受光スリット状で光軸に垂直な方向にずれる。このずれの変動がウエハ面の凹凸を表していることになる。
このような多点AFセンサは、レジスト表面の反射光を強くひろい、下地パターンの影響を受けずらいこと、フォトレジストが感光しないこと、高いスループットに対応することができること、多点計測が可能で面形状の計測に適していることなどの利点を有している。
なお、ウエハ測定検査器120と露光装置100との間で、ウエハWを吸着保持した状態でウエハホルダWHを交換可能なウエハホルダ交換機を備えている。これにより、ウエハ測定検査器120と露光装置100との間では、ウエハWを保持したウエハホルダWHが搬送され、ウエハホルダWHに保持されたウエハWに対して測定検査が可能となる。
ウエハ測定検査器120は、トラック200の搬送ラインに沿って配置されている。したがって、この搬送ラインによって、露光装置100と、C/D110と、ウエハ測定検査器120との間でウエハWの搬送が可能となる。すなわち、露光装置100と、トラック200と、ウエハ測定検査器120とは、相互にインライン接続されている。ここで、インライン接続とは、装置間及び各装置内の処理ユニット間を、ロボットアームやスライダ等のウエハWを自動搬送するための搬送装置を介して接続することを意味する。このインライン接続により、露光装置100とC/D110とウエハ測定検査器120との間でのウエハWの受け渡し時間を格段に短くすることができる。
インライン接続された露光装置100とC/D110とウエハ測定検査器120と、レチクル測定検査器130とは、これを一体として、1つの基板処理装置(100、110、120、130)とみなすこともできる。基板処理装置(100、110、120、130)は、レチクルR1、R2に対する測定検査工程と、ウエハWに対する、フォトレジスト等の感光剤を塗布する塗布工程と、感光剤が塗布されたウエハW上にレチクルR1、R2のパターンの像を投影露光する露光工程と、露光工程が終了したウエハWを現像する現像工程等を行う。これらの工程の詳細については後述する。
デバイス製造処理システム1000では、露光装置100と、C/D110と、ウエハ測定検査器120と、レチクル測定検査器130とが(すなわち基板処理装置(100、110、120、130)が)、複数台設けられている。各基板処理装置(100、110、120、130)、デバイス製造処理装置群900は、温度及び湿度が管理されたクリーンルーム内に設置されている。また、各装置の間では、所定の通信ネットワーク(例えばLAN:Local Area Network)を介して、データ通信を行うことができるようになっている。この通信ネットワークは、顧客の工場、事業所あるいは会社に対して設けられたいわゆるイントラネットと呼ばれる通信ネットワークである。
基板処理装置(100、110、120、130)においては、ウエハWは複数枚(例えば25枚)を1単位(ロットという)として処理される。デバイス製造処理システム1000においては、ウエハWは1ロットを基本単位として処理され製品化されている。したがって、デバイス製造処理システム1000におけるウエハプロセスをロット処理ともいう。
なお、このデバイス製造処理システム1000では、ウエハ測定検査器120は、トラック200内に置かれ、露光装置100やC/D110とインライン接続されているが、これらを、トラック200外に配置し、露光装置100やC/D110とはオフラインに構成してもよい。また、レチクル測定検査器130を、露光装置100内、又は、トラック200内に置くようにしてもよい。要は、レチクル測定検査器130は、レチクルR1、R2の搬送経路上に置くようにすればよい。
上述した、ウエハ測定検査器120及びレチクル測定検査器130における情報処理装置を実現するハードウエアとしては、例えばパーソナルコンピュータを採用することができる。この場合、この情報処理装置のCPU(不図示)で実行されるプログラムの実行により実現される。解析プログラムは、CD−ROMなどのメディア(情報記録媒体)により供給され、PCにインストールされた状態で実行される。
[解析装置]
解析装置500は、露光装置100、トラック200とは独立して動作する装置である。解析装置500は、デバイス製造処理システム1000内の通信ネットワークと接続されており、外部とデータ送受信が可能となっている。解析装置500は、この通信ネットワークを介して各種装置から各種データ(例えばその装置の処理内容)を収集し、ウエハに対するプロセスに関するデータの解析を行う。このような解析装置500を実現するハードウエアとしては、例えばパーソナルコンピュータを採用することができる。この場合、解析処理は、解析装置500のCPU(不図示)で実行される解析プログラムの実行により実現される。この解析プログラムは、CD−ROMなどのメディア(情報記録媒体)により供給され、PCにインストールされた状態で実行される。
解析装置500は、レチクル測定検査器130の測定検査結果に基づいて、レチクルR1、R2の処理条件の最適化を行う。ここでのレチクルR1、R2の最適化は、レチクルR1、R2の選択、C/D110、レチクル測定検査器130の処理内容など多岐に渡る。解析装置500には、これまでに、行われたデバイスの製造工程で得られた各種情報を内部に備えるデータベースに蓄積しており、必要に応じてデータベースを参照して、処理条件を最適化する。ここで、解析装置500の機能自体が、レチクル測定検査器130の中、あるいは、露光装置100の中に含まれていてもよい。
[デバイス製造処理装置群]
デバイス製造処理装置群900としては、CVD(Chemical Vapor Depositon:化学気相成長法)装置910と、エッチング装置920と、化学的機械的研磨を行いウエハを平坦化する処理を行うCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)装置930と、酸化・イオン注入装置940とが設けられている。CVD装置910は、ウエハ上に薄膜を生成する装置であり、エッチング装置920は、現像されたウエハに対しエッチングを行う装置である。また、CMP装置930は、化学機械研磨によってウエハの表面を平坦化する研磨装置であり、酸化・イオン注入装置940は、ウエハWの表面に酸化膜を形成し、又はウエハW上の所定位置に不純物を注入するための装置である。また、CVD装置910、エッチング装置920、CMP装置930及び酸化・イオン注入装置940も、露光装置100などと同様に複数台設けられており、相互間でウエハを搬送可能とするための搬送経路が設けられている。デバイス製造処理装置群900には、この他にも、プロービング処理、リペア処理、ダイシング処理、パッケージング処理、ボンディング処理などを行う装置も含まれている。
[管理コントローラ]
管理コントローラ160は、露光装置100により実施される露光工程を集中的に管理するとともに、トラック200内のC/D110及びウエハ測定検査器120の管理及びそれらの連携動作の制御を行う。このようなコントローラとしては、例えば、パーソナルコンピュータを採用することができる。管理コントローラ160は、デバイス製造処理システム1000内の通信ネットワークを通じて、処理、動作の進捗状況を示す情報や、処理結果、測定・検査結果を示す情報を各装置から受信し、デバイス製造処理システム1000の製造ライン全体の状況を把握し、露光工程等が適切に行われるように、各装置の管理及び制御を行う。
[ホストシステム]
ホストシステム(以下、「ホスト」と呼ぶ)600は、デバイス製造処理システム1000全体を統括管理し、露光装置100、トラック200、ウエハ測定検査器120、レチクル測定検査器130、デバイス製造処理装置群900を統括制御するメインホストコンピュータである。このホスト600についても、例えばパーソナルコンピュータなどを採用することができる。ホスト600と、他の装置との間は、有線又は無線の通信ネットワークを通じて接続されており、相互にデータ通信を行うことができるようになっている。このデータ通信により、ホスト600は、このシステムの統括制御を実現している。
[デバイス製造工程]
次に、デバイス製造処理システム1000における一連のプロセスの流れについて説明する。図4には、このプロセスのフローチャートが示されている。このデバイス製造処理システム1000の一連のプロセスは、ホスト600及び管理コントローラ160によってスケジューリングされ管理されている。
図4に示されるように、まず、ステップ201では、レチクルR1、R2をレチクル測定検査器130にロードする。レチクル測定検査器130のステージ上には、2つのレチクルホルダRHが吸着保持されており、レチクルR1、R2がそれぞれのレチクルホルダRHに吸着保持される。
次のステップ203では、レチクルの最適化を行う。ここでは、測定検査器120におけるレチクルR1、R2の面形状の測定などの測定検査と、その測定検査結果に基づく解析装置500におけるレチクルR1、R2の最適化が行われる。
図5には、ステップ203で行われるレチクルR1、R2の最適化のフローが示されている。図5に示されるように、ステップ301において、ホスト600が処理開始指令を、レチクル測定検査器130に発する。レチクル測定検査器130は、指令受信待ちとなっており、この指令を受信すると、ステップ303に進む。ステップ303において、レチクル測定検査器130は、レチクルR1のパターン形成面の面形状と、レチクルR2のパターン形成面の面形状とを測定する。ここで、レチクル測定検査器130は、面形状の測定データに基づいて、レチクルR1、R2のパターン形成面の平坦度が悪く、平坦度異常であると判定した場合には、レチクルホルダRHのレチクル吸着面の平坦度不良か、レチクルホルダRHの吸着面のキズや異物などによる異常が生じているものと判断して、レチクルホルダRHの交換や、レチクルホルダRHの吸着面のクリーニングなどを行った後、レチクルR1、R2のパターン形成面の再測定を行う。次のステップ305において、レチクル測定検査器130は、この計測結果(最終的に取得された面形状データ)を、解析装置500に送る。解析装置500では、面形状データの受信待ちとなっており、面形状データを受信すると、ステップ307に進む。
ステップ307では、解析装置500は、解析処理を行う。図6には、この解析処理のフローチャートが示されている。図6に示されるように、まず、ステップ401において、レチクルR1のパターン形成面の面形状データと、レチクルR2のパターン形成面の面形状データとを用いて、それらの相関度を算出する。図7(A)には、レチクルR1のパターン形成面の面形状データが模式的に示され、図7(B)には、レチクルR2のパターン形成面の面形状データが模式的に示されている。図7(A)及び図7(B)に示されるように、それぞれの面形状データは、M行N列のマトリクス状に配置されたサンプル地点(○で示される地点)における面位置データのマトリクスである。i行j列のサンプル地点は、両者で一致しており、ウエハWの被露光面上の同一地点に対応する点である。レチクルR1のパターン形成面の各サンプル地点のデータをTij(i<M,j<N)とし、レチクルR2のパターン形成面の各サンプル地点のデータをSijとすると、両者の相関度CV0は次式を用いて算出される。
ここで、W
ijは、i行j列のサンプル点にそれぞれ付与された重みである。上記式(1)に示されるように、相関度C
V0は、レチクルR1とレチクルR2のパターン形成面における同一サンプル地点の面位置の測定値の差分の二乗和となっている。
もっとも、面形状の相関度としては、次式に示されるものを採用することができる。
すなわち、この相関度C
V0は、レチクルR1のパターン形成面と、レチクルR2のパターン形成面との同一サンプル地点の面位置の測定値の差分絶対値和である。
他にも、相関度CV0としては、次式に示されるように、正規化された相関係数を採用することができる。
ここで、ρ
V0は、共分散であり、σ
T0、σ
S0は、標準偏差である。共分散ρ
V0は、次式で与えられる。
相関度CV0は、レチクルR1、R2のパターン形成面の面形状の類似性を示すものである。相関度CV0として、上記式(1)、式(2)を採用した場合には、この値が、小さければ小さいほど、両者の相関性は高いといえる(上記式(3)、又は、式(4)を採用した場合は、この逆であるが、以下では、式(1)、式(2)を採用したものとして説明する)。本実施形態では、この相関度CV0を、2つの閾値と比較することにより、後続する処理手順を制御する。図7(C)には、閾値Aと閾値Bとの関係が示されている。図7(C)に示されるように、閾値A、Bは、ともに正の値であり、閾値A<閾値Bとなるように設定されている。
次のステップ403では、相関度CV0が閾値A以下であるか否かを判断する。相関度CV0が、閾値A以下であれば、図7(C)に示されるように、レチクルR1とレチクルR2との相関性が高いとみなし、判断は肯定され、ステップ405に進む。ステップ405では、レチクルOKを設定する。
相関度CV0が閾値Aよりも大きいと判定された場合には、ステップ407に進む。ステップ407では、相関度CV0が閾値B以下であるか否かを判断する。この判断が肯定されれば、ステップ409に進む。ステップ409では、レチクルの再計測を設定する。
一方、ステップ407の判断が否定された場合には、ステップ411に進み、レチクル変更を設定する。ステップ407、409、411終了後は、図5のステップ309に戻る。
なお、相関度CV0として、両レチクル間の平坦度の共分散(上記式(4))、又は、この共分散(上記式(4))を、各レチクルの平坦度のばらつき(標準偏差)で正規化した値(上記式(3))を採用した場合には、その値が大きくなればなるほど、両者のパターン形成面の面形状の相関性が高くなるため、閾値A、Bは、閾値A>閾値Bとなるように設定される。そして、ステップ403では、相関度が、閾値A以上であるか否かが判断され、ステップ407では、相関度が、閾値B以上であるか否かが判断されるようになる。
ステップ309では、レチクル変更の有無をホスト600に通知する。ここで、ホスト600は、この通知の受信待ちとなっており、この通知を受けると、ステップ311に進む。ステップ311では、レチクル変更が必要であるか否かを判断し、この判断が肯定された場合には、ステップ313に進み、レチクルR1、R2を収納し、すべての処理をリセットする。このリセットが行われば、新たにレチクルR1、R2として選択された2つのレチクルを用いてステップ201から処理が再スタートすることになる。一方、ステップ311で、レチクル変更が必要でないと判断された場合には、ホスト600は、再び受信待ちとなる。
一方、解析装置500は、ステップ309からステップ317に進み、レチクル測定検査器130に、レチクルR1、R2の調整の有無を通知する。レチクル測定検査器130は、この通知の受信待ちとなっており、この通知を受信すると、ステップ319に進む。ステップ319において、レチクル測定検査器130は、レチクルR1、R2の調整が必要であるか否かを判断する。必要であると判断した場合には、判断が肯定され、ステップ321に進み、レチクルの調整を行なう。
[レチクルの調整]
図8には、ステップ321で行われるレチクルR1、R2の調整の概念図が示されている。レチクルR1、R2の調整としては、主としてレチクルR1、R2の吸着保持位置の調整、レチクルR1、R2に対する吸着保持力の調整と、部分的な吸着保持力の調整が可能であり、ここでは、このうちの少なくとも1つの調整を行うことにより、レチクルR1、R2のパターン形成面の相関性を高める。
また、図8に示されるように、これら3つの調整を組み合わせて順番に行うことにより、レチクルR1、R2の調整を行うようにしてもよい。例えば、吸着保持力の調整を行い、さらに、吸着保持力の部分的な調整を行い、レチクルR1、R2の相関性が改善されなかった場合には、吸着保持位置を変更し、さらに、吸着保持力の調整を行い、さらに、吸着保持力の部分的な調整を行うことが可能であり、また、その逆も可能である。
レチクルR1、R2の保持位置を調整するためには、レチクルR1、R2の吸着を一旦解除して、レチクルR1、R2をレチクルホルダRH上に置きなおす必要があるため、保持力の調整を優先的に行うようにするのが望ましい。
保持力の調整には、個々のレチクルR1の面形状データが用いられる。図9(A)〜図9(E)には、レチクルR1の面形状の一例が示されている。通常、レチクルR1は、それらの自重のみを考えると、通常は、その中央部分が凹むようになると考えられるが、レチクルホルダRHの真空圧による吸着力に伴って発生する回転モーメントにより、図9(B)に示されるように、自重に抗して、中央部分がそり上がる場合もある。
また、図9(C)、図9(D)に示されるように、吸着力により発生する内向きの力により、レチクルR1がその中央部を中心に、対称的にたわむ場合があり、また、図9(E)に示されるように、内向きの力により、非対称にたわむ場合もある。
このような場合には、レチクルホルダRHの吸着力を調整すれば、レチクルR1の平坦度が向上する可能性が高い。例えば、吸着力を全体的に弱くしたり、ランド部L1とランド部L2、L3の吸着力を変更したり、各ランド部の外側の凹部18の吸着力と内側の凹部18の吸着力とを変更したりすれば、レチクルR1の撓みが小さくなることが予想される。
また、この他、個々のレチクルR1の面形状に偏りがある場合には、部分的な保持力の調整が行われることになる。
なお、レチクルホルダRHの吸着保持力は、個々のレチクルの面形状データ、設計データ、レチクル間の相関度などを参照して適宜調整される。例えば、吸着力の調整範囲などは、これらのデータから決定される。
また、本実施形態では、レチクル間の相関度が高まるように、レチクルR1、R2の保持状態を調整するのであるから、一方のレチクルを基準として、他方のレチクルを調整するようにしてもよい。要は、両方のレチクルを調整して、最終的に、その相関度が高まるようにすればよい。この場合には、他方のレチクルの面形状データが必要となる。
また、過去の調整において取得されたログデータも、調整の際に参照することができる。このようなログデータを用いれば、レチクルR1、R2の保持状態を、どのように調整すればよいかを、レチクルR1、R2のパターン形成面の面形状の傾向などから判断することが可能である。
レチクルR1、R2の調整終了後は、再び、レチクルR1、R2のパターン形成面の面形状の再計測を行う。
図5に戻り、レチクル測定検査器130は、ステップ317からステップ323に進み、レチクル変更有り、又は、レチクル調整有りであるか否かを判断する。この判断が否定された場合のみ、ステップ325に進んで、ホスト600に対して正常終了を通知する。この通知後、あるいは、ステップ323において判断が肯定された後は、先頭に戻り、再び、受信待ち状態に戻る。一方、正常終了通知を受信したホスト600は、図4のステップ205に進む。
ステップ205では、レチクル交換機を用いて、レチクルR1を保持したレチクルホルダRHと、レチクルR2を保持したレチクルホルダRHとをレチクルステージRSTにロードし、レチクルR1、R2の位置合わせ(レチクルアライメント)や、ベースライン(オフアクシスのアライメントセンサ(不図示)と、レチクルR1、R2のパターン中心との距離)の計測などの準備処理を行う。この準備処理により、レチクルR1、R2のパターン形成面上のデバイスパターンを、ウエハステージWST上で位置合わせされたウエハW上の任意の領域に対し、重ね合わせることが可能となる。
上記ステップ201、203、205と平行して、ウエハWに対する処理が行われる。まず、CVD装置910においてウエハ上に膜を生成し(ステップ206)、そのウエハWをC/D110に搬送し、C/D110においてそのウエハ上にレジストを塗布する(ステップ207)。次に、ウエハWを、ウエハ測定検査器120に搬送し、ウエハ測定検査器120において、ウエハW上の面形状の測定、ウエハ上の異物の検査などの事前測定検査処理を行う(ステップ209)。ウエハ測定検査器120の測定結果(すなわち、面形状などのデータ)は、露光装置100及び解析装置500に送られる。この測定結果は、露光装置100における走査露光時のフォーカス制御に用いられる。
続いて、ウエハを露光装置100に搬送し、露光装置100にてレチクルR1、R2上の回路パターンをウエハW上に転写する露光処理を行う(ステップ211)。
露光装置100では、露光量制御系、ステージ制御系、レンズ制御系により露光量、同期精度、フォーカス、レンズの状態が目標値に追従した状態で、照明領域IAR1、IAR2内のパターンが、露光領域IAに投影され、投影光学系PLの焦点深度内にウエハWの被露光面が位置するようなフィードバック制御が行われる。前述のように、レチクルR1のパターン形成面と、レチクルR2のパターン形成面との面形状の相関性が高くなるように、レチクルR1、R2の選択や調整が行われるため、両パターン像の最良結像位置のずれは低減される。これにより、ウエハWの被露光面を、両者のパターン像の最良結像面とを合わせることが可能となる。図10には、走査露光中の制御の様子が示されている。
なお、これに先立って、レチクルR1、R2のパターン形成面の面形状の測定データは、レチクル測定検査器130、解析装置500から、直接、又はホスト600、管理コントローラ160を介して、露光装置100に送られている。なお、必要であれば、露光装置100の主制御装置20のレンズ制御系は、走査露光中において、このレチクルR1、R2のパターン形成面の面形状のデータに基づいて、投影光学系PLの結像特性、フォーカス、像面湾曲、ディストーションなどを補正する。図10に示されるように、レチクルR1のパターン形成面の照明領域IAR1内の面形状と、レチクルR2のパターン形成面の照明領域IAR2内の面形状との間に多少のずれがあり、それらのパターン像の結像面がずれる場合には、投影光学系内の光学系PL1と光学系PL2とを調整して、そのずれを少なくすればよい。
また、この露光の際には、ウエハWの事前測定検査処理で測定されたウエハWの被露光面の面形状を考慮するのが望ましい。この場合、両パターン像の結像面にずれがある場合には、図10に示されるように、両結像面の間に、ウエハWの被露光面を位置させるように制御すればよい。そして、レチクルR1の面形状と、ウエハW上の露光対象となっているショット領域の面形状との差分に基づいて、光学系PL1を調整し、フォーカス補正、位置ずれ補正、像面湾曲補正、ディストーション補正を行い、レチクルR2の面形状と、ウエハW上の露光対象となっているショット領域の面形状との差分に基づいて、光学系PL2を調整し、投影光学系の結像特性の補正、すなわち、フォーカス補正、像面湾曲補正、ディストーション補正を行うようにすればよい。
次に、ウエハWをC/D110に搬送して、C/D110にて現像処理を行う(ステップ213)。その後、このレジスト像の線幅の測定や、ウエハW上に転写されたデバイスパターンの線幅測定やパターン欠陥検査などの事後測定検査処理を行う(ステップ215)。
ウエハWは、ウエハ測定検査器120からエッチング装置920に搬送され、エッチング装置920においてエッチングを行い、不純物拡散、配線処理、CVD装置910にて成膜、CMP装置930にて平坦化、酸化・イオン注入装置940でのイオン注入などを必要に応じて行う(ステップ219)。そして、全工程が完了し、ウエハ上にすべてのパターンが形成されたか否かを、ホスト600において判断する(ステップ221)。この判断が否定されればステップ206に戻り、肯定されればステップ223に進む。このように、成膜・レジスト塗布〜エッチング等という一連のプロセスが工程数分繰り返し実行されることにより、ウエハW上に回路パターンが積層されていき、半導体デバイスが形成される。
繰り返し工程完了後、プロービング処理(ステップ223)、リペア処理(ステップ225)が、デバイス製造処理装置群900において実行される。このステップ227において、メモリ不良検出時は、ステップ229において、例えば、冗長回路へ置換する処理が行われる。不図示の検査装置では、ウエハW上の線幅異常が発生した箇所については、チップ単位で、プロービング処理、リペア処理の処理対象から除外することができる。その後、ダイシング処理(ステップ227)、パッケージング処理、ボンディング処理(ステップ229)が実行され、最終的に製品チップが完成する。なお、ステップ215の事後測定検査処理は、ステップ219のエッチング後に行うようにしてもよい。この場合には、ウエハW上のエッチング像に対し線幅測定が行われるようになる。現像後、エッチング後の両方に行うようにしてもよい。この場合には、レジスト像に対しても、エッチング像に対しても線幅測定が行われるようになるので、それらの測定結果に違いに基づいて、エッチング処理の処理状態を検出することができるようになる。
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、レチクルR1、R2のパターン形成面の面形状データの事前測定結果に基づいて、レチクルR1のパターン形成面とレチクルR2のパターン形成面との間の面形状の相関値CV0を求める。この相関値CV0を参照して、レチクルR1、R2として用いるレチクルを選択したり、レチクルR1、R2の保持状態を調整したりすれば、面形状の相関性の高い複数のレチクルを用いて、複数のパターン像を同時に投影する投影光学系PLの焦点深度の範囲内に、ウエハWの被露光面を同時に位置させやすくなるので、高精度な多重露光が可能となる。
また、露光装置100ではなく、レチクル測定検査器130でレチクルのパターン形成面の面形状の測定を行うので、レチクルR1、R2の計2枚の面形状の測定を行っても、全体のスループットの低下はない。
また、本実施形態によれば、算出される相関値CV0を、複数のレチクルR1のパターン形成面とレチクルR2のパターン形成面との間の面形状データの差分二乗和、差分絶対値和、共分散、正規化された相関値とした。これらの値は、両者のパターン形成面の面形状の相関性を端的に表すものとなる。なお、上述したような相関値に限らず、面形状の相関性を表す数値であれば、任意のものを採用することができる。
また、本実施形態では、相関度を算出して、両者のパターン形成面の相関性を求めたが、面形状の差分の最大値と閾値との比較結果に基づいて、面形状の相関性を算出するようにしてもよい。例えば、面形状データの差が例えば0.5[μm]を超過していれば、レチクルR1、R2の組合せとして適切でないものと判断して、レチクルを変更したり、レチクルの保持状態を調整したりすることができる。
なお、本実施形態では、相関度に対する閾値を2つ設けたが、閾値を1つとし、相関度と閾値との比較により、レチクルの選択と、レチクルの保持状態との調整のいずれか一方を行うようにしてもよい。また、レチクルの保持状態の調整を所定回数行い、それでも、レチクルの面形状の相関度が閾値よりも改善されない場合には、レチクルの変更を行うようにしてもよい。
また、本実施形態によれば、レチクルR1、R2のパターン形成面の面形状のレチクル間の相関度を算出する際に、レチクルR1、R2のパターン形成面の面形状データTij、Sijを、そのパターン形成面内の位置(i,j)に応じて重み付けしている。このようにすれば、高い転写精度が要求されるクリティカルなパターンの領域については重みを重くし、要求される転写精度が比較的低くても許容されるパターンの領域については重みを軽くして、その要求転写精度に応じた相関度の演算が可能となる。
また、本実施形態によれば、求められた相関度CV0に基づいて、ウエハW上の被露光領域の同一の領域へ転写されるパターンが形成されたレチクルR1、R2を選択する。このようにすれば、相関性の高いマスクを選択することができるようになるので、高精度な多重露光が可能となる。
また、本実施形態によれば、レチクル測定検査器130と露光装置100との間には、レチクルホルダ交換機が搭載されている。そして、露光前に、露光装置100に搬送されるレチクルホルダRHを、レチクル測定検査器130のステージに吸着保持させておき、レチクルR1、R2を、それぞれのレチクルホルダRHに保持させる。すなわち、レチクル測定検査器130では、レチクルR1、R2が各レチクルホルダRHに保持された状態で、レチクルR1、R2の面形状が測定される。このようにすれば、露光時における実際のレチクルR1、R2の面形状を直接取得することができるようになる。このように、レチクルR1、R2がレチクルホルダRHに保持された状態とほぼ等価な状態で、それらの面形状を測定することできるので、その面形状に基づく露光を行えば、転写精度の低下が防止される。
なお、本実施形態によれば、露光時にレチクルR1、R2を保持するレチクルホルダRHとは異なるレチクルホルダでレチクルR1、R2を保持してそれらのパターン形成面の面形状を測定し、それらの相関度を求めるようにしてもよい。この場合には、そのレチクルホルダでレチクルR1、R2を保持した場合と、レチクルホルダRHでレチクルR1、R2を保持した場合との面形状の違い(差分)を求めておき、その違いを考慮して、相関値を求めればよい。このようにしても、レチクルホルダRHに保持された状態でのレチクルR1、R2のパターン形成面の面形状を把握することが可能となる。
なお、この場合には、露光装置100と、レチクル測定検査器130との間で、レチクルホルダ同士の違いを予め測定しておく必要がある。この測定は、クロムが全面に装着されたレチクル又は全面透過レチクルをそれぞれのレチクルホルダにロードし、そのときの面形状の差分データを取得すればよい。
このことは、ウエハ測定検査器120のウエハホルダについても同様のことがいえる。すなわち、露光装置100内のウエハホルダWHと、測定検査器120のウエハホルダとが別である場合には、基準鏡面ウエハなどを保持したときの面形状の差分を、ウエハWの面形状データに反映すればよい。
また、本実施形態によれば、相関度CV0に基づいて、レチクルホルダRHによる保持状態を調整する。具体的には、相関度CV0に基づいて、レチクルホルダRHによる保持状態を調整し、レチクルホルダRHによる保持状態が調整された状態でパターン形成面の面形状の測定を再度行い、レチクルR1とレチクルR2との間のパターン形成面の面形状の相関値を改めて求める。このようにすれば、レチクルホルダRHの保持状態の最適化が可能となる。
なお、レチクルホルダRHの保持状態の調整では、レチクルホルダRHにおけるレチクルR1、R2の吸着保持位置と、各レチクルホルダRHの吸着保持力の強さと、その吸着保持力を作用させる有効面積との少なくとも1つの調整が行われる。なお、レチクルホルダにおいて、部分的な吸着保持力の調整ができない場合には、全体的な保持力の調整のみを行なうことになる。
なお、このような保持状態の調整は、レチクルR1、R2個別に管理されるが、さらに、各レチクルについて、レチクルステージRSTの走査方向、すなわち正方向、負方向とで、別々に設定可能とし、管理できるようにしてもよい。
また、本実施形態によれば、レチクルホルダRHに保持されたレチクルR1、R2のパターン形成面の面形状を測定し、測定後には、レチクルR1、R2を保持したままのレチクルホルダRHをそれぞれの露光位置へ搬送する。
また、本実施形態によれば、ウエハWの被露光面の面形状を、露光前に、ウエハ測定検査器120において測定し、ウエハWの被露光面の面形状と、レチクルR1、R2のパターン形成面の面形状との差分に基づいて、投影光学系PLを調整し、レチクルR1、R2のパターン像の最良結像面に、ウエハWの面形状を合わせこむことができるので、高精度な多重露光が可能となる。
また、本実施形態に係るレチクル最適化(ステップ203)及び露光処理(ステップ211)を含むデバイス製造処理方法、すなわちデバイス製造処理システムによれば、デバイス生産の歩留まりを向上させることができる。
なお、本実施形態では、解析装置500と、レチクル測定検査器130とを個別に備えるようにしたが、両者は一体であってもよい。すなわち、レチクル測定検査器130が、解析装置500の機能を有していもよい。
なお、本実施形態では、透過型のレチクルを用いたが、反射型のレチクルであっても構わない。また、本実施形態では、1回の露光処理に、2つのレチクルを使用したが、2つのパターン領域が形成された1つのレチクルを用いるようにしてもよい。
なお、本実施形態では、2つのレチクルR1、R2のパターン像を、同一の投影光学系PLを介して、ウエハW上に投影する露光装置100を用いたが、別々の投影光学系を介して、2つのパターン像を、ウエハW上に投影する露光装置であってもかまわない。
また、本実施形態に係る露光装置100は、パターンの同時二重露光により、デバイスパターンをウエハW上に転写したが、パターンを同時に3重露光、4重露光…、が可能な露光装置を用いてもよいことは勿論である。
また、本実施形態に係る露光装置100は、複数のパターンを同時に露光するいわゆる多重露光を行う露光装置を用いたが、レチクルを随時交換して多重露光を行う露光装置にも本発明を採用することができるのは勿論である。
また、上記実施形態では、真空吸着方式のレチクルホルダを使用したが、本発明は、静電吸着方式又はその他の方式のレチクルホルダにも適用することができる。
なお、上記実施形態では、レチクルR1、R2の面形状を計測するためにフィゾー干渉計を用いたが、これには限られない。レチクルR1、R2の面形状を計測する計測装置は、被検面に接触することなく、その面形状を計測可能な装置であればよい。例えば、ウエハ測定検査器120と同様に、多点AFセンサと同様の計測装置などを用いて、それらの面形状を計測するようにしてもよい。斜入射方式の検出系を用いれば、透明なレチクルであっても、複雑な回路パターンが形成されたウエハであっても、それらの面形状を精度良く計測することが可能となる。
さらに、特開平11−135400号公報や特開2000−164504号公報に開示されるように、ウエハWを保持するウエハステージと基準マークが形成された基準部材や各種の光電センサを搭載した計測ステージとを備えた露光装置にも本発明を適用することができる。
なお、上記実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式やステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置について説明したが、本発明は、これらの投影露光装置の他、プロキシミティ方式の露光装置など他の露光装置にも適用できることはいうまでもない。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも本発明を好適に適用することができる。これに代表されるように、各種装置についても、その種類には限定されない。
また、例えば国際公開WO98/24115号、WO98/40791号に開示されるような、ウエハステージを2基備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。また、例えば国際公開WO99/49504号に開示される液浸法を用いる露光装置にも本発明を適用することができるのは勿論である。この場合、投影光学系と基板との間に局所的に液体を満たす露光装置を採用しているが、本発明は、特開平6−124873号公報、特開平10−303114号公報、米国特許第5,825,043号明細書などに開示されているような露光対象の基板の被露光面全体が液体中に浸かっている状態で露光を行う液浸露光装置にも適用可能である。
また、本発明は、半導体製造工程に限らず、液晶表示素子などを含むディスプレイの製造工程にも適用可能である。また、デバイスパターンをガラスプレート上に転写する工程、薄膜磁気ヘッドの製造工程、及び撮像素子(CCDなど)、マイクロマシン、有機EL、DNAチップなどの製造工程の他、すべてのデバイス製造工程に本発明を適用することができるのは勿論である。
また、上記実施形態では、解析装置500を、例えばPCとした。すなわち解析装置500における解析処理は、解析プログラムが、PCで実行されることにより実現されている。この解析プログラムは、上述したようにメディアを介してPCにインストール可能となっていてもよいし、インターネットなどを通じてPCにダウンロード可能となっていてもよい。また、解析装置500がハードウエアで構成されていても構わないのは勿論である。
10…照明系、17…プラテン部、18…凹部、20…主制御装置、100…露光装置、110…C/D、120…ウエハ測定検査器、130…レチクル測定検査器、160…管理コントローラ、200…トラック、500…解析装置、600…ホストシステム、900…デバイス製造処理装置群、910…CVD装置、920…エッチング装置、930…CMP装置、940…酸化・イオン注入装置、1000…デバイス製造処理システム、IA…露光領域、IAR1、IAR2…照明領域、IL1、IL2…露光光、L1〜L3…ランド部、PL…投影光学系、PL1、PL2、PL3…光学系、R1、R2…レチクル、RH…レチクルホルダ、RST…レチクルステージ、W…ウエハ、WH…ウエハホルダ、WST…ウエハステージ。