JP5274809B2 - 低誘電率膜の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、セラミック前駆体、触媒、界面活性剤及び溶媒からなるフィルム形成性液体を調製し、それを基板上で溶媒を除去することによる、誘電率2〜3を示すメソポーラスシリカフィルム等のセラミックフィルムの製造方法が開示されている。
特許文献3には、シリコン原子と酸素原子の結合を含み且つ空孔を有する微粒子と、樹脂と、溶媒とを含む溶液を基板上に塗布して薄膜を形成した後、この基板を加熱して低誘電率絶縁膜を形成する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1及び2は、膜作製時に使用される界面活性剤を除去するために焼成工程が必要であり、基板の種類が限定される等、汎用的ではないという問題があり、特許文献3は、膜の誘電率の点において満足できるものではない。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔3〕を提供する。
〔1〕マトリクス樹脂に中空構造を有するメソポーラスシリカ粒子が分散されてなる低誘電率膜。
〔2〕下記工程(1)及び(2)を含む低誘電率膜の製造方法。
工程(1):マトリクス樹脂形成材に中空構造を有するメソポーラスシリカ粒子を分散させた分散液を調製する工程
工程(2):工程(1)で得られた分散液を基板上に塗布後、固化させる工程
〔3〕マトリクス樹脂形成材に中空構造を有するメソポーラスシリカ粒子が分散された低誘電率膜用コーティング剤。
本発明の低誘電率膜は、中空構造を有するメソポーラスシリカ粒子がマトリクス樹脂に分散されてなることを特徴とする。
本発明の低誘電率膜では、中空構造を有するメソポーラスシリカ粒子を分散して含有していることによりその誘電率の低下が図られるが、特に、メソポーラスシリカ粒子のメソ細孔内や中空部にマトリクス樹脂が存在しないことが有利である。これは、マトリクス樹脂がメソポーラスシリカ粒子のメソ細孔内や中空部に存在すると、空隙率が低下し、膜の誘電率が増大してしまうためである。
低誘電率膜の誘電率は、例えば、1MHzの周波数では、2.5以下が好ましく、2.2以下がより好ましく、2.0以下が更に好ましく、1.5〜2.0が特に好ましい。なお、誘電率の測定は、LCRメーターやインピーダンスアナライザー等を用いて、電極接触法や電極非接触法等の常法により行うことができる。
低誘電率膜の厚みは特に制限はないが、製造上及び低誘電率の性能発現の観点から、10〜700μmが好ましく、30〜500μmがより好ましく、50〜300μmが更に好ましい。
本発明で使用しうるマトリクス樹脂に特に制限はない。例えば、加熱により硬化する熱硬化性樹脂、紫外線等の光の照射により硬化する光硬化性樹脂、及び熱可塑性樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、環状脂肪族型、ノボラック型、ナフタレン型、ジシクロペンタジエン型等の各種のエポキシ樹脂が挙げられる。
不飽和ポリエステル樹脂としては、オルソフタル酸系、イソフタル酸系、テレフタル酸系、脂環式不飽和酸系、脂肪式飽和酸系、ビスフェノール系、含ハロゲン酸系、含ハロゲンビスフェノール系の各種の不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。
フェノール樹脂としては、レゾール型、ノボラック型等のフェノール樹脂が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、α−オレフィンコポリマー樹脂、ポリブテン−1樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系重合体樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂、アイオノマー等が挙げられる。
ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリ乳酸樹脂等が挙げられる。
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン樹脂、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー樹脂、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、エチレン・クロロトリフルオロエチレンコポリマー樹脂、テトラフルオロエチレン・パーフルオロジオキソールコポリマー樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂等が挙げられる。
マトリクス樹脂の重量平均分子量は、200〜100,000が好ましく、500〜10,000より好ましい。
マトリクス樹脂の含有量は、低誘電率膜の性能発現の観点から、30〜98質量%が好ましく、50〜95質量%がより好ましく、60〜90質量%が更に好ましい。
中空構造を有するメソポーラスシリカ粒子(以下、「中空メソポーラスシリカ粒子」ともいう)は、シリカを主成分する外殻部を有すると共に、その粒子内部が中空構造に構成され、外殻部にその内側と外側を連通する多数のメソ細孔が、粒子中心から外殻部の外側に向かって放射状に形成された構造を有する。なお、中空メソポーラスシリカ粒子の外殻部及び粒子内部の中空構造は、透過型電子顕微鏡(TEM)により確認することができる。
外殻部を構成するシリカは、水素原子の一部がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数1〜22の炭化水素基やフェニレン基等の有機基を有していてもよい。また、中空メソポーラスシリカ粒子は、本発明の目的を阻害しない範囲内で、シリカ骨格内にAl、Ti、Nb、P、V、Fe、Co、Mo、Ni、Cu、Zn、Ga等他の金属元素を含有していてもよい。
中空メソポーラスシリカ粒子の平均細孔径は、マトリクス樹脂がメソ細孔内、中空部に侵入することを抑制し、低誘電率を発現させる観点から、1〜10nmが好ましく、1.3〜5.0nmがより好ましく、1.3〜2.0nmが更に好ましい。また、中空メソポーラスシリカ粒子は、全粒子のうち平均細孔径の±30%以内の粒子径を有する粒子が70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。この平均細孔径及びその分布は、実施例に記載のように窒素吸着等温線からBJH法により求めることができる。
中空メソポーラスシリカ粒子の平均中空部径は、低誘電率膜の性能発現の観点から、10〜1000nmが好ましく、50〜800nmがより好ましく、200〜500nmが更に好ましい。
中空メソポーラスシリカ粒子の平均外殻部厚みは、低誘電率膜の性能発現及び粒子強度の観点から、30〜700nmが好ましく、50〜500nmがより好ましく、70〜400nmが更に好ましい。
なお、平均一次粒子径、平均中空部径、及び平均外殻部厚みの測定は、実施例記載の方法により行うことができる。
中空メソポーラスシリカ粒子における細孔の配列状態(細孔配列構造)は特に制限されない。例えば、ヘキサゴナルの細孔配列構造であっても、キュービックやディスオーダの細孔配列構造であってもよいが、安定性及び低誘電率膜の性能発現の観点から、ヘキサゴナルの細孔配列構造を有することが好ましい。
中空メソポーラスシリカ粒子の平均凝集粒子径は、マトリクス樹脂中の中空メソポーラスシリカ粒子の分散性や低誘電率膜の性能発現の観点から、0.1〜10μmが好ましく、0.2〜1.0μmがより好ましい。
中空メソポーラスシリカ粒子のBET比表面積は、低誘電率膜の性能発現の観点から、900〜1500m2/gが好ましく、1000〜1300m2/gがより好ましい。なお、平均凝集粒子径、及びBET比表面積の測定は、実施例記載の方法により行うことができる。
中空メソポーラスシリカ粒子の含有量は、低誘電率膜の性能発現の観点から、2〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%が更に好ましい。
本発明における中空メソポーラスシリカ粒子の製造方法に特に制限はないが、例えば、以下の第1方法及び第2方法によれば、中空メソポーラスシリカ粒子を効率的に製造することができる。
(第1方法)
第1方法としては、下記工程(I)、(III)及び(IV)を含む方法が挙げられる。
工程(I):(a)下記一般式(1)及び(2)で表される第四級アンモニウム塩から選ばれる1種以上を0.1〜100ミリモル/L、及び(b−1)加水分解可能でかつ加水分解速度の異なる2種以上のシリカ源を0.1〜100ミリモル/Lを含有する水溶液を調製する工程
[R1(CH3)3N]+X- (1)
[R1R2(CH3)2N]+X- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、Xは1価陰イオンを示す。)
工程(III):工程(I)で得られた水溶液を10〜100℃の温度で撹拌して、メソポーラスシリカ粒子が分散した水分散液を調製する工程
工程(IV):工程(III)の水分散体からシリカ粒子を分離し、焼成する工程
「加水分解速度の速いシリカ源」とは、例えば、シリカ源を単独で用いてシリカ粒子を製造する場合に、シリカ源を加えてからシリカ粒子が生成し、反応溶液が白濁するまでの時間が150秒以下、特に100秒以下であるシリカ源を意味し、「加水分解速度の遅いシリカ源」とは、例えば、シリカ粒子が生成し反応溶液が白濁するまでの時間が200秒以上、特に300秒以上であるシリカ源を意味する。
これらの中でも、均一な粒子径を有する中空メソポーラスシリカ粒子を得る観点から、特に好適な組合せは、加水分解速度の速いシリカ源であるテトラメトキシシランと、加水分解速度の遅いシリカ源であるビストリエトキシシリルメタン、ビストリエトキシシリルエタン、又はジメチルジメトキシシランとの組合せである。
加水分解速度の速いシリカ源(b−11)と加水分解速度の遅いシリカ源(b−12)との混合比率〔(b−11)/(b−12)〕は、シリカ元素比で、好ましくは90/10〜10/90、特に好ましくは70/30〜30/90である。
そして、工程(III)において、得られた分散液から分離した後のメソポーラスシリカ粒子を、電気炉等により、例えば350〜800℃で1〜10時間程度焼成すれば、シリカ粒子内部に充填されたアルコールや水が消失して、中空構造を有するメソポーラスシリカ粒子を得ることができる。
第2方法としては、下記工程(II)、(III)及び(IV)を含む方法が挙げられる。
工程(II):上記(a)一般式(1)及び(2)で表される第四級アンモニウム塩から選ばれる1種以上を0.1〜100ミリモル/Lと、(b−2)加水分解可能なシリカ源0.1〜100ミリモル/Lと、(c)疎水性有機化合物0.1〜100ミリモル/L、又は(d)ポリマー0.01〜10質量%とを含有する水溶液を調製する工程
工程(III):工程(II)で得られた水溶液を10〜100℃の温度で撹拌して、メソポーラスシリカ粒子が分散した水分散体を調製する工程
工程(IV):工程(III)の水分散体からシリカ粒子を分離し、焼成する工程
また、(c)疎水性有機化合物とは、水に対する溶解性が低く、水と分相を形成する化合物を意味する。好ましくは、前記の第四級アンモニウム塩の存在下で分散可能な化合物である。このような疎水性有機化合物としては、LogPOWが1以上、好ましくは2〜25の化合物が挙げられる。ここで、LogPとは、化学物質の1−オクタノール/水分配係数であり、logKOW法により計算で求められた値をいう。具体的には、化合物の化学構造を、その構成要素に分解し、各フラグメントの有する疎水性フラグメント定数を積算して求められる(Meylan, W.M. and P.H. Howard. 1995. Atom/fragment contribution method for estimating octanol-water partition coefficients. J. Pharm. Sci. 84: 83-92参照)。(c)疎水性有機化合物としては、例えば、炭化水素化合物、エステル化合物、炭素数6〜22の脂肪酸、炭素数6〜22のアルコール及びシリコーンオイル等の油剤や、香料成分、農薬用基材、医薬用基材等の機能性材料を挙げることができる。
(d)ポリマーの中では、カチオン性ポリマー及びノニオン性ポリマーが好ましく、シリカ粒子の形成し易さの観点から、カチオン性ポリマーがより好ましい。
カチオン性ポリマーとしては、陽イオン界面活性剤の存在下で、カチオン性基を有するエチレン性不飽和モノマー(混合物を含む)を乳化重合して得られるものが好ましい。
カチオン性モノマーとしては、ジアルキルアミノ基又はトリアルキルアンモニウム基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、ジアルキルアミノ基又はトリアルキルアンモニウム基を有する(メタ)アクリル酸エステルが特に好ましい。
カチオン性ポリマーは、前記カチオン性モノマー由来の構成単位を有するが、カチオン性モノマー由来の構成単位以外に、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン等の疎水性モノマーに由来する構成単位を含有することができる。
工程(IV)において、得られた分散液から、ろ過法、遠心分離法等の分離方法により、メソポーラスシリカ粒子を分離し、水、酸性水溶液等で洗浄して乾燥させる。これにより、シリカ粒子内部の中空部分に(c)疎水性有機化合物又は(d)ポリマーを含んだメソポーラスシリカ粒子が得られる。このメソポーラスシリカ粒子を、電気炉等により、例えば350〜800℃で1〜10時間程度焼成すれば、シリカ粒子内部の(c)疎水性有機化合物又は(d)ポリマーが消失して、中空構造有するメソポーラスシリカ粒子を得ることができる。
本発明の低誘電率膜の製造方法は、下記工程(1)及び(2)を含むことを特徴とする。
工程(1):マトリクス樹脂形成材に中空構造を有するメソポーラスシリカ粒子を分散させた分散液を調製する工程
工程(2):工程(1)で得られた分散液を基板上に塗布後、固化させる工程
なお、「マトリクス樹脂形成材」とは、流動性を有し、一定の条件の下で固化してマトリクス樹脂を形成する材料を意味する。例えば、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂の硬化前の液状の樹脂材料、熱可塑性樹脂材料を加熱により流動性を有する状態にしたもの、熱可塑性樹脂材料を揮発性溶媒に溶解させたもの、熱可塑性樹脂の重合前物質又は重合途中物質等が含まれる。
また、マトリクス樹脂が熱可塑性樹脂の場合、(1)加熱により流動化されたマトリクス樹脂形成材に、中空メソポーラスシリカ粒子を分散させた後、冷却して固化させる方法、(2)揮発性溶媒に溶解させたマトリクス樹脂形成材に、中空メソポーラスシリカ粒子を分散させた後、溶媒を揮発させて固化させる方法、(3)モノマー又は中間重合物であるマトリクス樹脂形成材に、中空メソポーラスシリカ粒子を分散させた後、重合を開始して固化させる方法、(4)重合中であって固化前のマトリクス樹脂形成材に、中空メソポーラスシリカ粒子を分散させ、重合を完了させて固化させる方法等により、低誘電率膜を得ることができる。
用いる基板に特に制限はなく、シリコンウェハ、Si3N4、金属板(Al、Pt等)、ガラス板等が挙げられ、金属箔等の極薄のものも包含される。
コーティング剤(分散液)の塗布は、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法、スプレー法、グラビアコート法等の常法により行うことができる。
コーティング剤塗布後の固化は、乾燥ないし加熱、又は光照射により行うことができる。
乾燥ないし加熱は、膜構造の組成や材質、膜の用途により異なるが、生産性、生産容易性の観点から、好ましくは室温〜300℃、より好ましくは50〜200℃、更に好ましくは70〜150℃の温度で、好ましくは0.5〜20日間、より好ましくは1〜10日間保持することにより行うことができる。
膜の低誘電率発現のためには、中空メソポーラスシリカ粒子のメソ細孔内や中空部へのマトリクス樹脂の侵入が抑制され、できるだけ空隙が多くなっていることが重要であると考えられる。その観点から、マトリクス樹脂形成材がメソ細孔内や中空部へ侵入する前に固化されることが好ましく、従って、粘度の高いマトリクス樹脂形成材に中空メソポーラスシリカ粒子を分散後、できるだけ早く塗布、固化することが好ましい。
マトリクス樹脂形成材と中空メソポーラスシリカ粒子の混合時間は、見かけ上、該シリカ粒子が均一に分散する範囲でできる限り短時間が好ましく、0.1〜60分が好ましく、0.5〜10分がより好ましく、0.5〜2分が更に好ましい。また、両者を混合して分散液を調製後、できるだけ早く基板上に塗布して、固化することが好ましく、分散液調製から塗布までの時間は、0.1〜60分が好ましく、0.1〜10分がより好ましく、0.1〜2分が更に好ましい。なお、両者の均一混合は、スパチュラ攪拌、磁気攪拌、ブレード攪拌、ホモミキサー等の常法により行えばよい。
コーティング剤に含まれる中空メソポーラスシリカ粒子の濃度は、塗布操作性や得られる低誘電率膜の性能発現の観点から、10〜70質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましい。コーティング剤には溶媒(分散媒)が含まれていてもよく、樹脂の種類等にもよるが、通常、アルコール溶媒が好ましい。
また、本発明の低誘電率膜及びコーティング剤は、公知の酸化防止剤、光安定剤、耐電防止剤、核剤、難燃剤、可塑剤、安定化剤、着色剤(顔料、染料)、抗菌剤、界面活性剤、カップリング剤、離型剤等を含有することができる。
(1)粉末X線回折(XRD)パターンの測定
粉末X線回折装置(理学電機工業株式会社製、商品名:RINT2500VPC)を用いて、X線源:Cu-kα、管電圧:40mA、管電流:40kV、サンプリング幅:0.02°、発散スリット:1/2°、発散スリット縦:1.2mm、散乱スリット:1/2°、及び受光スリット:0.15mmの条件で粉末X線回折測定を行った。走査範囲を回折角(2θ)1〜20°、走査速度を4.0°/分とした連続スキャン法を用いた。なお、測定は、粉砕した試料はをアルミニウム板に詰めて行った。
(2)粒子形状の観察
電解放射型高分解能走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所社製、商品名:FE−SEM S−4000)を用いて粒子形状の観察を行った。
(3)平均一次粒子径、平均中空部径、及び平均外殻部厚みの測定
透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製、商品名:JEM−2100)を用いて加速電圧160kVで粒子の観察を行った。20〜30個の粒子が含まれる5視野中の全粒子の直径、中空部径、及び外殻部厚みを写真上で実測し、平均一次粒子径、平均中空部径、及び平均外殻部厚みを求めた。なお、観察は、高分解能用カーボン支持膜付きCuメッシュ(応研商事株式会社製、200−Aメッシュ)に付着させ、余分な試料をブローで除去したものを用いて行った。
比表面積・細孔分布測定装置(株式会社島津製作所製、商品名:ASAP2020)を用いて、液体窒素を用いた多点法でBET比表面積を測定し、パラメータCが正になる範囲で値を導出した。BET比表面積の導出にはBJH法を採用し、そのピークトップを平均細孔径とした。試料には250℃で5時間の前処理を施した。
(5)平均凝集粒子径の測定
レーザー散乱粒度分布計(株式会社堀場製作所社製、商品名:LA−920)を用いて、相対屈折率1.06、超音波強度7、超音波照射時間1分、循環速度4、分散媒をエタノールとした条件で室温にて測定し、体積基準換算のメジアン径を平均凝集粒子径とした。
(6)マトリクス樹脂形成材の粘度測定
B型粘度計(東京計器工業株式会社製、商品名:B8L)を用いて、ローターNo.2を60rpmで30秒回転させた時のマトリクス樹脂形成材の粘度を、室温下で測定した。
(7)膜の誘電率測定、及び膜厚測定
精密LCRメーター(ヒューレットパッカード製、商品名:4284A)と誘電率テスト電極(38mm径、ヒューレットパッカード製、商品名:16451A)を用いて、電極接触法により1MHzの誘電率を8点測定し、その平均値を算出した。測定誤差は、±5%であった。また、誘電率テスト電極の位置目盛りから膜厚を求めた。
2L−セパラフルフラスコに、イオン交換水600部、メタクリル酸メチル99.5部、塩化メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム0.5部を入れ、内温70℃まで昇温させた。次いで、これに、水溶性開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬株式会社製、商品名:V−50)0.5部をイオン交換水5部に溶かした溶液を添加し、3時間加熱撹拌を行った。
その後、さらに75℃で3時間加熱撹拌を行って冷却した後、得られた混合液から凝集物を200メッシュろ過(目開き約75μm)し、カチオン性ポリマー粒子の懸濁液(固形分(有効分)含有量14質量%、平均一次粒子径270nm)を得た。
次に、10Lフラスコに、水6kg、メタノール2kg、1M水酸化ナトリウム水溶液45g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド35g、及び上記で得られたカチオン性ポリマー粒子の懸濁液33gを入れて撹拌し、その水溶液に、テトラメトキシシラン34gをゆっくりと加え、5時間撹拌した後、12時間熟成させた。
次いで、得られた白色沈殿物を、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過した後、10Lの水で洗浄し、100℃の温度条件で5時間乾燥した。
得られた乾燥粉末を、焼成炉(株式会社モトヤマ製、商品名:スーパーバーン)を用いて、エアーフロー(3L/min)しながら1℃/分の速度で600℃まで昇温し、600℃で2時間焼成することにより有機成分を除去した。
得られた焼成粉末を、ロータースピードミル(FRITSCH社製、商品名:pulverisettel4)を用いて、乾式解砕(20000rpmで孔径0.2mmスクリーンをパス)することにより、中空メソポーラスシリカ粒子粉末を得た。
この中空メソポーラスシリカ粒子粉末について、粉末X線回折(XRD)のパターンにおける、d=3.0nmの非常に強いXRDピーク、d=1.7nm及びd=1.5nmの弱いXRDピークにより、この中空メソポーラスシリカ粒子粉末のメソ細孔がヘキサゴナル配列を有することを確認した。また、SEM観察により、この中空メソポーラスシリカ粒子の粒子形状が球状であることを確認した。
さらに、TEM観察より、この中空メソポーラスシリカ粒子が中空構造を有し、平均一次粒子径が590nm、平均中空部径が270nm、平均外殻部厚みが160nmであり、外殻部がヘキサゴナル配列を示す均一なメソ細孔を有し、そのメソ細孔が粒子中心から外殻部の外側に向かって放射状に貫通していることを確認した。
また、この中空メソポーラスシリカ粒子粉末は、BET比表面積が1120m2/g、平均細孔径が1.5nm、平均凝集粒子径が0.70μmであった。
製造例1において、カチオン性ポリマー粒子を添加しなかった以外は、製造例1と同様にして、中空構造を有しない球状メソポーラスシリカ粒子粉末を製造した。
この球状メソポーラスシリカ粒子粉末について、粉末X線回折(XRD)のパターンにおける、d=3.0nmの非常に強いXRDピーク、d=1.7nm及びd=1.5nmの弱いXRDピークにより、この球状メソポーラスシリカ粒子粉末のメソ細孔がヘキサゴナル配列を有すること確認した。また、SEM観察より、この球状メソポーラスシリカ粒子の形状が球状であることを確認した。
さらに、TEM観察より、この球状メソポーラスシリカ粒子が中空構造ではなく中実構造を有し、平均一次粒子径が500nmであり、ヘキサゴナル配列を示す均一なメソ細孔を有し、そのメソ細孔が粒子中心から外側に向かって放射状に貫通していることを確認した。
また、この中実メソポーラスシリカ粒子粉末は、BET比表面積が1200m2/g、平均細孔径が1.5nm、平均凝集粒子径が0.65μmであった。
4−ビニルシクロヘキセンジオキシド(ポリサイエンス社製、商品名:ERL4206)10g、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル(ポリサイエンス社製、商品名:DER736)4.0g、ノネニル無水コハク酸(ポリサイエンス社製、商品名:NSA)26gの混合溶液に2−ジメチルアミノエタノール(ポリサイエンス社製、商品名:DMAE)0.40gを添加、室温で24時間攪拌して高粘度(500mPa.s)のエポキシ樹脂からなるマトリクス樹脂形成材を調製した。
上記マトリクス樹脂形成材1.2gと上記中空メソポーラスシリカ粒子粉末0.30gを室温下、1分間スパチュラ攪拌することにより、中空メソポーラスシリカ粒子を20質量%含有する低誘電率膜用コーティング剤を調製した。
上記中空メソポーラスシリカ粒子を含有する低誘電率膜用コーティング剤を調製後30秒以内で、アルミフォイル(膜厚20μm)上にバーコーター(設定膜厚164μm)を用いてバーコートした。バーコート後30秒以内で、70℃の温度条件で1日、さらに100℃の温度条件で7日間加熱して硬化させることにより、中空メソポーラスシリカを含有する低誘電率膜を作製した。誘電率測定結果を表1に示す。
中空メソポーラスシリカ粒子の代わりに上記中実メソポーラスシリカ粒子を用いた以外は実施例1と同様にして低誘電率膜を作製した。誘電率測定結果を表1に示す。
比較例2
中空メソポーラスシリカ粒子を配合しなかった以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂膜を作製した。誘電率測定結果を表1に示す。
Claims (7)
- 下記工程(1)及び(2)を含み、マトリクス樹脂形成材の粘度が100〜10000mPa.sであり、中空構造を有するメソポーラスシリカ粒子がシリカを主成分とする外殻部を有すると共に、その粒子内部が中空構造に構成され、外殻部にその内側と外側を連通する多数のメソ細孔が、粒子中心から外殻部の外側に向かって放射状に形成された構造を有するシリカ粒子である、低誘電率膜の製造方法。
工程(1):マトリクス樹脂形成材に中空構造を有するメソポーラスシリカ粒子を分散させた分散液を調製する工程
工程(2):工程(1)で得られた分散液を基板上に塗布後、固化させる工程 - 工程(1)が、マトリクス樹脂形成材と中空構造を有するメソポーラスシリカ粒子とを0.1〜60分で混合して分散液を調製する工程である、請求項1記載の低誘電率膜の製造方法。
- 分散液を調製した後、分散液を基板上に塗布するまでの時間が、0.1〜60分である、請求項1又は2記載の低誘電率膜の製造方法。
- メソ細孔の平均細孔径が1〜10nmである、請求項1〜3記載のいずれかに記載の低誘電率膜の製造方法。
- マトリクス樹脂に、シリカを主成分とする外殻部を有すると共に、その粒子内部が中空構造に構成され、外殻部にその内側と外側を連通する多数のメソ細孔が、粒子中心から外殻部の外側に向かって放射状に形成された、中空構造を有するメソポーラスシリカ粒子が分散されてなる低誘電率膜。
- メソポーラスシリカ粒子のメソ細孔が、ヘキサゴナルの細孔配列構造を有する、請求項5に記載の低誘電率膜。
- マトリクス樹脂形成材に、シリカを主成分とする外殻部を有すると共に、その粒子内部が中空構造に構成され、外殻部にその内側と外側を連通する多数のメソ細孔が、粒子中心から外殻部の外側に向かって放射状に形成された、中空構造を有するメソポーラスシリカ粒子が分散されてなる低誘電率膜用コーティング剤。
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