JP2011122096A - 塗料組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】可視光線及び赤外線を反射することで遮熱性を発揮する塗膜を形成し得る塗料組成物の提供。
【解決手段】本発明は、外殻部と前記外殻部の内部の中空部とを有し、前記中空部の平均径が0.1以上5μm未満である中空無機酸化物粒子を含有する塗料組成物に関する。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、外殻部と前記外殻部の内部の中空部とを有し、前記中空部の平均径が0.1以上5μm未満である中空無機酸化物粒子を含有する塗料組成物に関する。
【選択図】図1
Description
本発明は、塗料組成物に関する。
建造物、構造物等の、太陽光等の熱エネルギーによる温度上昇を抑制するため、従来、建造物や構造物の表面、屋根、内壁面、外壁面、天井などに遮熱性塗膜を形成する塗装処理が行われている。
地球表面に到達する太陽光線中には約3μm以下の波長領域の光線が含まれており、紫外線、可視光線、赤外線の比率を順に示すとおおよそ、3%、47%、50%となる。したがって、遮熱性塗膜を形成する方法の1つとして、太陽光、とりわけ可視光線及び/又は赤外線を反射することができる顔料や材料を含有する塗料組成物を用いる方法がある。例えば、白色顔料として用いられる一次粒子径が0.2〜0.4μmの酸化チタンは効果的に可視光線(波長0.4〜0.8μm)を効率よく反射・散乱する(特許文献1)。
もう1つの方法として、低熱伝導率の材料を含有する塗料組成物を用いる方法がある。例えば、空気の低熱伝導性に着目し、粒径が5〜150μmの中空セラミックバルーンを塗膜に配置して低熱伝導性と高放射性を実現する方法がある(特許文献2)。
しかしながら、特許文献1の酸化チタンは光触媒活性が問題になることがある。すなわち、酸化チタンの光触媒活性によって塗料中の樹脂が劣化しやすいという問題がある。また、特許文献2に開示されるセラミックバルーンは低熱伝導性、強度や生産性に着目しているため粒子径が大きくなり、塗膜に凹凸が生じやすいことや塗膜厚膜が厚くなりやすい傾向にあり、さらに太陽光の反射率も低いという問題がある。
本発明は、これらの問題の回避が可能であり、可視光線及び赤外線を反射することで遮熱性を発揮する塗膜を形成し得る塗料組成物を提供する。
本発明は、外殻部と前記外殻部の内部の中空部とを有し、前記中空部の平均径が0.1μm以上5μm未満である中空無機酸化物粒子を含有する塗料組成物に関する。
本発明の塗料組成物によれば、可視光線及び赤外線を効果的に反射でき、それにより遮熱性を発揮する塗膜を形成し得る。
本発明は、中空部の平均径が0.1〜5μm程度の中空無機酸化物粒子が、塗料において、白色顔料として使用できるとともに、可視光線及び赤外線を効果的に反射することができ、遮熱性が良好な塗料組成物が提供できるという知見に基く。
中空部の平均径が0.1μm以上5μm未満の中空無機酸化物粒子が可視光線及び赤外線を効果的に反射できるメカニズムの詳細は明らかではないが、中空部が光の波長と同程度の大きさに設定することによりMie散乱理論より、波長との関係から可視光線及び赤外線領域の反射が強いものと考えられる。また、粒子−樹脂界面と比較して粒子−中空部界面の方がより屈折率差及び屈折率比が大きいことから、粒子−中空部界面で可視光線及び赤外線の反射が大きくなるものと考えられる。また、0.1μm以上5μm未満の中空部径を持つ中空無機酸化物粒子は可視光線及び赤外線の反射に好適であると共に、これらを含有する塗膜は表面の凹凸も少なく利用価値も高い。但し、本発明はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
すなわち、本発明は、外殻部と前記外殻部の内部の中空部とを有し、前記中空部の平均径が0.1μm以上5μm未満である中空無機酸化物粒子を含有する塗料組成物(以下、「本発明の塗料組成物」ともいう。)に関する。本発明の塗料組成物によれば、可視光線及び赤外線を効果的に反射でき、それにより遮熱性を発揮する塗膜を形成し得る。
[中空無機酸化物粒子]
本発明の塗料組成物に含まれる中空無機酸化物粒子は、外殻部と前記外殻部の内部の中空部を有する粒子である。良好な遮熱性を発揮する観点から、中空部は、気体が充填されているか又は真空であることが好ましく、外殻部の光屈折率よりも中空部の光屈折率が低いことが好ましい。前記気体としては、特に制限されないが、例えば、空気、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。
本発明の塗料組成物に含まれる中空無機酸化物粒子は、外殻部と前記外殻部の内部の中空部を有する粒子である。良好な遮熱性を発揮する観点から、中空部は、気体が充填されているか又は真空であることが好ましく、外殻部の光屈折率よりも中空部の光屈折率が低いことが好ましい。前記気体としては、特に制限されないが、例えば、空気、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。
[中空部の平均径]
中空無機酸化物粒子の中空部の平均径は、良好な遮熱性を発揮する観点から、0.1μm以上であり、好ましくは0.15μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.25μm以上であり、5μm未満であり、好ましくは4.5μm以下、より好ましくは4.0μm以下、さらに好ましくは3.8μm以下であり、0.1μm以上5μ未満であり、好ましくは0.15〜4.5μm、より好ましくは0.2〜4.0μm、さらに好ましくは0.25〜3.8μmである。中空部の平均径は、後述のようにTEMの観察により測定でき、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
中空無機酸化物粒子の中空部の平均径は、良好な遮熱性を発揮する観点から、0.1μm以上であり、好ましくは0.15μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.25μm以上であり、5μm未満であり、好ましくは4.5μm以下、より好ましくは4.0μm以下、さらに好ましくは3.8μm以下であり、0.1μm以上5μ未満であり、好ましくは0.15〜4.5μm、より好ましくは0.2〜4.0μm、さらに好ましくは0.25〜3.8μmである。中空部の平均径は、後述のようにTEMの観察により測定でき、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
[平均粒子径]
中空無機酸化物粒子の平均粒子径は、良好な遮熱性を発揮する観点から、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.25μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上であり、さらに、塗膜の凹凸を低減し、薄い塗膜へも適用可能とする観点から、好ましくは5μm未満、より好ましくは4.8μm以下、さらに好ましくは4.5μm以下であり、好ましくは0.2μm以上5μm未満、より好ましくは0.25〜4.8μm、さらに好ましくは0.3〜4.5μmである。
中空無機酸化物粒子の平均粒子径は、良好な遮熱性を発揮する観点から、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.25μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上であり、さらに、塗膜の凹凸を低減し、薄い塗膜へも適用可能とする観点から、好ましくは5μm未満、より好ましくは4.8μm以下、さらに好ましくは4.5μm以下であり、好ましくは0.2μm以上5μm未満、より好ましくは0.25〜4.8μm、さらに好ましくは0.3〜4.5μmである。
[外殻部の平均厚み]
中空無機酸化物粒子の外殻部の平均厚みは、良好な遮熱性の発揮及び粒子強度の観点から、好ましくは30〜700nm、より好ましくは40〜500nm、さらに好ましくは50〜400nmである。そして、外殻部の平均厚みと平均粒子径の比(外殻部厚み/平均粒子径)は、粒子の強度の観点から、好ましくは0.01〜0.6、より好ましくは0.05〜0.5、さらに好ましくは0.1〜0.4である。そして中空部平均径と外殻部厚みとの比(中空部平均径/外殻部厚み)は、良好な遮熱性を発揮する観点から、好ましくは0.1〜100、より好ましくは1〜50である。
中空無機酸化物粒子の外殻部の平均厚みは、良好な遮熱性の発揮及び粒子強度の観点から、好ましくは30〜700nm、より好ましくは40〜500nm、さらに好ましくは50〜400nmである。そして、外殻部の平均厚みと平均粒子径の比(外殻部厚み/平均粒子径)は、粒子の強度の観点から、好ましくは0.01〜0.6、より好ましくは0.05〜0.5、さらに好ましくは0.1〜0.4である。そして中空部平均径と外殻部厚みとの比(中空部平均径/外殻部厚み)は、良好な遮熱性を発揮する観点から、好ましくは0.1〜100、より好ましくは1〜50である。
本明細書において、中空無機酸化物粒子の平均粒子径及びその分布の程度、外殻部の平均厚み、並びに中空部の平均径は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定された値を使用できる。具体的には、透過型電子顕微鏡観察下で、20〜30個の粒子が含まれる視野中の全粒子の直径及び外殻厚みを写真上で実測する。この操作を、視野を5回変えて行う。得られたデータから平均粒子径及びその分布の程度、並びに平均外殻厚みを求める。透過型電子顕微鏡の倍率の目安は1万〜10万倍であるが、中空無機酸化物粒子の大きさによって適宜調節される。
[外殻部の成分]
中空無機酸化物粒子の外殻部は、良好な遮熱性を発揮する観点から、炭素原子を除く周期表(長周期型周期表)の第2族、3族、4族、12族、13族、及び14族の元素から選ばれる1種以上の元素を含む無機酸化物から構成されることが好ましい。本明細書において、「酸化物を含む成分から構成される外殻部」とは、外殻部の骨格を形成する主成分が該酸化物であることをいい、外殻部の成分の好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらにより好ましくは95%以上が1種以上の元素の酸化物であることをいう。
中空無機酸化物粒子の外殻部は、良好な遮熱性を発揮する観点から、炭素原子を除く周期表(長周期型周期表)の第2族、3族、4族、12族、13族、及び14族の元素から選ばれる1種以上の元素を含む無機酸化物から構成されることが好ましい。本明細書において、「酸化物を含む成分から構成される外殻部」とは、外殻部の骨格を形成する主成分が該酸化物であることをいい、外殻部の成分の好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらにより好ましくは95%以上が1種以上の元素の酸化物であることをいう。
外殻部の光屈折率は、中空部に充填される空気若しくは気体又は真空よりも光屈折率が高いことが好ましく、良好な遮熱性を発揮する観点から、1.1〜4が好ましく、1.2〜3がより好ましい。
中空無機酸化物粒子の外殻部を構成する無機酸化物としては、良好な遮熱性を発揮する観点から、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム及びシリカが好ましく、シリカがより好ましい。
本発明の塗料組成物に含まれる中空無機酸化物粒子は、前述の規定を満たすものであれば特に制限無く使用できる。例えば、汎用性の観点から、中空シリカ粒子が挙げられる。
[中空シリカ粒子]
中空無機酸化物粒子の一態様である中空シリカ粒子は、外殻部にメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子、すなわち、中空メソポーラスシリカ粒子を焼成し、該メソ細孔構造を焼き締めることで得ることができる。焼成温度としては、例えば、350〜1500℃で1〜10時間が挙げられる。中空メソポーラスシリカ粒子は、特開2008−110905、特開2008−150229、及び特開2008−174435等に開示され方法で製造することができる。
中空無機酸化物粒子の一態様である中空シリカ粒子は、外殻部にメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子、すなわち、中空メソポーラスシリカ粒子を焼成し、該メソ細孔構造を焼き締めることで得ることができる。焼成温度としては、例えば、350〜1500℃で1〜10時間が挙げられる。中空メソポーラスシリカ粒子は、特開2008−110905、特開2008−150229、及び特開2008−174435等に開示され方法で製造することができる。
中空メソポーラスシリカ粒子の製造方法の一実施形態として、中空部形成剤(疎水性有機物)の油滴生成後に、メソ細孔形成剤(界面活性剤)と加水分解によってシラノール化合物を生成するシリカ源とを添加してメソ細孔構造を有する外殻部を形成させることを含む製造方法を以下に説明するが、本発明は、以下の実施形態の製造方法に限定されない。
[中空部形成剤の乳化方法]
本実施形態において中空部形成剤の油滴を調製する方法としては、水に中空部形成剤及びメソ細孔形成剤を添加し撹拌して乳化させる方法や、或いは、中空部形成剤の疎水性溶液及びメソ細孔形成剤に水を添加していくことにより中空部形成剤の油滴を得ても良い。後者のような乳化方法であれば、よりいっそう中空部形成剤の使用効率を向上できるため好ましい。中空部形成剤の油滴の形成と同時又はその後にシリカ源を添加して撹拌することにより、メソ細孔構造を有する外殻部を形成できる。
本実施形態において中空部形成剤の油滴を調製する方法としては、水に中空部形成剤及びメソ細孔形成剤を添加し撹拌して乳化させる方法や、或いは、中空部形成剤の疎水性溶液及びメソ細孔形成剤に水を添加していくことにより中空部形成剤の油滴を得ても良い。後者のような乳化方法であれば、よりいっそう中空部形成剤の使用効率を向上できるため好ましい。中空部形成剤の油滴の形成と同時又はその後にシリカ源を添加して撹拌することにより、メソ細孔構造を有する外殻部を形成できる。
[界面活性剤]
本実施形態で使用される界面活性剤は、メソ細孔形成を可能とするものであれば特に制限されず、粒子分散安定性の向上の点から、カチオン性界面活性剤が好ましく、下記一般式(1)及び(2)からなる群から選択される少なくとも1種類の第四級アンモニウム塩がより好ましい。
本実施形態で使用される界面活性剤は、メソ細孔形成を可能とするものであれば特に制限されず、粒子分散安定性の向上の点から、カチオン性界面活性剤が好ましく、下記一般式(1)及び(2)からなる群から選択される少なくとも1種類の第四級アンモニウム塩がより好ましい。
[第四級アンモニウム塩]
本実施形態において、下記一般式(1)及び(2)からなる群から選択される少なくとも1種類の第四級アンモニウム塩は、メソ細孔の形成と疎水性有機物の乳化のための界面活性剤として使用できる。
[R1(CH3)3N]+X- (1)
[R1R2(CH3)2N]+X- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、X-は1価陰イオンを示す。)
本実施形態において、下記一般式(1)及び(2)からなる群から選択される少なくとも1種類の第四級アンモニウム塩は、メソ細孔の形成と疎水性有機物の乳化のための界面活性剤として使用できる。
[R1(CH3)3N]+X- (1)
[R1R2(CH3)2N]+X- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、X-は1価陰イオンを示す。)
上記一般式(1)及び(2)におけるR1及びR2は、粒子分散安定性の向上の点から、好ましくは炭素数4〜22、より好ましくは炭素数6〜18、さらに好ましくは炭素数8〜16の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。炭素数4〜22のアルキル基としては、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種エイコシル基等が挙げられる。
一般式(1)及び(2)におけるXは、高い結晶性を得るという観点から、好ましくはハロゲンイオン、水酸化物イオン、硝酸化物イオン、硫酸化物イオン等の1価陰イオンから選ばれる1種以上である。Xとしては、より好ましくはハロゲンイオンであり、さらに好ましくは塩素イオン又は臭素イオンである。
一般式(1)で表されるアルキルトリメチルアンモニウム塩としては、ブチルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ブチルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
一般式(2)で表されるジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、ジブチルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキシルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキシルジメチルアンモニウムブロミド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロミド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
これらの第四級アンモニウム塩の中では、規則的なメソ細孔を形成させる点、及び、粒子分散安定性の向上の点から、一般式(1)で表されるアルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましく、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド又はクロリドがより好ましい。
[加水分解によってシラノール化合物を生成するシリカ源]
本実施形態で使用する「加水分解によってシラノール化合物を生成するシリカ源」とは、シリカ源はアルコキシシラン等の加水分解によりシラノール化合物を生成する物質であり、具体的には、下記一般式(3)〜(7)で示される化合物、又はこれらの組合せを挙げることができる。
SiY4 (3)
R3SiY3 (4)
R3 2SiY2 (5)
R3 3SiY (6)
Y3Si−R4−SiY3 (7)
(式中、R3はそれぞれ独立して、ケイ素原子に直接炭素原子が結合している有機基を示し、R4は炭素原子を1〜4個有する炭化水素基又はフェニレン基を示し、Yは加水分解によりヒドロキシ基になる1価の加水分解性基を示す。)
本実施形態で使用する「加水分解によってシラノール化合物を生成するシリカ源」とは、シリカ源はアルコキシシラン等の加水分解によりシラノール化合物を生成する物質であり、具体的には、下記一般式(3)〜(7)で示される化合物、又はこれらの組合せを挙げることができる。
SiY4 (3)
R3SiY3 (4)
R3 2SiY2 (5)
R3 3SiY (6)
Y3Si−R4−SiY3 (7)
(式中、R3はそれぞれ独立して、ケイ素原子に直接炭素原子が結合している有機基を示し、R4は炭素原子を1〜4個有する炭化水素基又はフェニレン基を示し、Yは加水分解によりヒドロキシ基になる1価の加水分解性基を示す。)
シリカ源は、疎水性有機物の利用効率の向上の点から、一般式(3)〜(7)において、R3は、それぞれ独立して、水素原子の一部がフッ素原子に置換していてもよい炭素数1〜22の炭化水素基であることが好ましく、疎水性有機物の利用効率の向上の点から、好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数4〜18、さらに好ましくは炭素数8〜16のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基である。R4は、疎水性有機物の利用効率の向上の点から、炭素数1〜4のアルカンジイル基(メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等)又はフェニレン基が好ましい。Yは、疎水性有機物の利用効率の向上の点から、好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数1〜8、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基、又はフッ素を除くハロゲン基が好ましい。
より具体的には、シリカ源としては、疎水性有機物の利用効率の向上の点から、次の化合物が好ましい。
・一般式(3)において、Yが炭素数1〜3のアルコキシ基であるか、又はフッ素を除くハロゲン基であるシラン化合物。
・一般式(4)〜(6)において、R3がフェニル基、ベンジル基、又は水素原子の一部がフッ素原子に置換されている炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5の炭化水素基であるトリアルコキシシラン又はジアルコキシシラン。
・一般式(7)において、Yがメトキシ基であって、R4がメチレン基、エチレン基又はフェニレン基である化合物。
・一般式(3)において、Yが炭素数1〜3のアルコキシ基であるか、又はフッ素を除くハロゲン基であるシラン化合物。
・一般式(4)〜(6)において、R3がフェニル基、ベンジル基、又は水素原子の一部がフッ素原子に置換されている炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5の炭化水素基であるトリアルコキシシラン又はジアルコキシシラン。
・一般式(7)において、Yがメトキシ基であって、R4がメチレン基、エチレン基又はフェニレン基である化合物。
これらの中でも、シリカ源としては、疎水性有機物の利用効率の向上の点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
[塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、前述の中空無機酸化物粒子のほか、塗膜形成材、溶媒、顔料、添加剤等を含有することができる。
本発明の塗料組成物は、前述の中空無機酸化物粒子のほか、塗膜形成材、溶媒、顔料、添加剤等を含有することができる。
[塗膜形成材]
本発明の塗料組成物に含有され得る塗膜形成材としては、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂の1種類又は複数種類が挙げられる。前述のとおり、本発明の塗料組成物の遮熱効果は中空無機酸化物粒子自身の反射作用によってもたらされるものであるから、塗膜形成材はその種類によらず本発明の塗料組成物に使用できる。
本発明の塗料組成物に含有され得る塗膜形成材としては、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂の1種類又は複数種類が挙げられる。前述のとおり、本発明の塗料組成物の遮熱効果は中空無機酸化物粒子自身の反射作用によってもたらされるものであるから、塗膜形成材はその種類によらず本発明の塗料組成物に使用できる。
[溶媒]
溶媒としては、ガソリン、灯油、トルエン、キシレンなどの炭化水素、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、カルビトールセロソルブなどのエーテル類、水などを挙げることができる。
溶媒としては、ガソリン、灯油、トルエン、キシレンなどの炭化水素、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、カルビトールセロソルブなどのエーテル類、水などを挙げることができる。
[顔料]
前述した中空無機酸化物粒子は、可視光域における反射率が高いため、白色顔料として使用できる。よって、本発明の塗料組成物の一態様は、中空無機酸化物粒子を白色顔料として含む塗料組成物であり、さらに、その他の態様として、中空無機酸化物粒子を白色顔料として含む白色用(白色系)塗料組成物である。本発明の塗料組成物に含まれうるその他の顔料としては、チタン白、酸化クロムなどの金属酸化物、及び、紺青、ファスト・エロー、フタロシアニン・ブルーなどの無機顔料及び/又は有機顔料が挙げられる。
前述した中空無機酸化物粒子は、可視光域における反射率が高いため、白色顔料として使用できる。よって、本発明の塗料組成物の一態様は、中空無機酸化物粒子を白色顔料として含む塗料組成物であり、さらに、その他の態様として、中空無機酸化物粒子を白色顔料として含む白色用(白色系)塗料組成物である。本発明の塗料組成物に含まれうるその他の顔料としては、チタン白、酸化クロムなどの金属酸化物、及び、紺青、ファスト・エロー、フタロシアニン・ブルーなどの無機顔料及び/又は有機顔料が挙げられる。
[添加剤]
添加剤としては、各種可塑剤、硬化剤、顔料分散剤、乳化剤、乾燥剤、消泡剤、防腐剤、凍結防止剤などを挙げることができる。
添加剤としては、各種可塑剤、硬化剤、顔料分散剤、乳化剤、乾燥剤、消泡剤、防腐剤、凍結防止剤などを挙げることができる。
[塗料組成物の製造方法]
本発明の塗料組成物は、前述した中空無機酸化物粒子を塗料と混合し、必要に応じて撹拌、粉砕を行い分散させることにより得ることができる。混合する塗料としては、従来の塗料一般が使用できる。したがって、本発明はその他の態様において、前述した中空無機酸化物粒子を含む遮熱性向上添加剤である。
本発明の塗料組成物は、前述した中空無機酸化物粒子を塗料と混合し、必要に応じて撹拌、粉砕を行い分散させることにより得ることができる。混合する塗料としては、従来の塗料一般が使用できる。したがって、本発明はその他の態様において、前述した中空無機酸化物粒子を含む遮熱性向上添加剤である。
本発明の塗料組成物における中空無機酸化物粒子の含有量は、良好な遮熱性を発揮する観点から、塗膜形成材100重量部につき0.01〜400重量部が好ましく、0.1〜300重量部がより好ましく、0.5〜200重量部がさらに好ましい。また、塗料の製品安定性の観点から塗料組成物全量に対する中空無機酸化物粒子の含有量は、好ましくは0.0001重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、さらにより好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下、さらにより好ましくは60重量%以下であり、好ましくは0.0001〜90重量%、より好ましくは0.05〜80重量%、さらに好ましくは0.1〜70重量%、さらにより好ましくは0.5〜60重量%である。
[塗膜]
本発明の塗料組成物を塗布して得られる塗膜は、好ましくは遮熱性である。また、該塗膜は、好ましくはJIS K5602(2008年)に規格される日射反射率が10%以上であり、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上である。
[JIS K5602(2008年)]
JIS K5600−4−1:1999に規定する白部及び黒部を持つ隠ぺい率試験紙を平滑なガラス板に固定し、塗料組成物を塗装する。温度23±2℃、相対湿度50±5%の条件で乾燥、養生した後にガラス板を取り外し試験片とする。分光光度計を用いて得られた試験片の分光反射率を求める。各波長において求めた分光反射率とJIS K5602(2008年)表1に記載の重価係数との積算から日射反射率を算出する。
本発明の塗料組成物を塗布して得られる塗膜は、好ましくは遮熱性である。また、該塗膜は、好ましくはJIS K5602(2008年)に規格される日射反射率が10%以上であり、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上である。
[JIS K5602(2008年)]
JIS K5600−4−1:1999に規定する白部及び黒部を持つ隠ぺい率試験紙を平滑なガラス板に固定し、塗料組成物を塗装する。温度23±2℃、相対湿度50±5%の条件で乾燥、養生した後にガラス板を取り外し試験片とする。分光光度計を用いて得られた試験片の分光反射率を求める。各波長において求めた分光反射率とJIS K5602(2008年)表1に記載の重価係数との積算から日射反射率を算出する。
本発明の塗料組成物の塗布法としては、通常用いられる方法を用いることができる。例えば、ハケ塗り、スプレーが多く用いられるが、塗布する対象物によってロールコータ、静電塗装、カーテン塗装、浸漬法なども適用可能である。さらに塗布後、乾燥させて塗膜化させる方法についても、自然乾燥、焼き付け等の方法を用いることができ、塗料の性状などによって適宜選択され得る。
本発明の塗料組成物を、例えば、家、工場などの建築物、又は、冷蔵庫、貯蔵タンク、電車、飛行機、車、船などの構造物の屋根、天井、外壁、内壁など、遮熱性を付与したい場所に塗布することができる。したがって、本発明はその他の態様として、遮熱方法であって、遮熱性を付与したい部分に本発明の塗料組成物を塗布することを含む方法である。
以下、実施例により本発明を説明する。後述する実施例及び比較例において、各種測定は、以下の方法により行った。
(1)平均粒子径、中空部の平均径、及び平均外殻厚みの測定
日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡(TEM)JEM−2100を用いて加速電圧160kVで測定を行い、それぞれ20〜30個の粒子が含まれる5視野中の全粒子の直径、中空部の径、及び外殻厚みを写真上で実測して、平均粒子径、中空部の平均径、及び平均外殻厚みを求めた。観察に用いた試料はマイクログリットタイプB((STEM150Cuグリッド、カーボン補強済)応研商事株式会社製)に付着させ、余分な試料をブローで除去して作製した。
日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡(TEM)JEM−2100を用いて加速電圧160kVで測定を行い、それぞれ20〜30個の粒子が含まれる5視野中の全粒子の直径、中空部の径、及び外殻厚みを写真上で実測して、平均粒子径、中空部の平均径、及び平均外殻厚みを求めた。観察に用いた試料はマイクログリットタイプB((STEM150Cuグリッド、カーボン補強済)応研商事株式会社製)に付着させ、余分な試料をブローで除去して作製した。
(2)日射反射率の算出
JIS K5602(2008年度版)に従い、各波長における分光反射率と重価係数の積の総和より求めた。
JIS K5602(2008年度版)に従い、各波長における分光反射率と重価係数の積の総和より求めた。
(3)ランプ照射後の温度
縦31cm、横22cm、高さ22.5cmの段ボールシート製のボックスの上面中央部に5cm×5cmの開口部を空け、HP金属板(太佑機材製、H−102MN)黒部に作製した塗膜を同サイズに切り取り貼り付けた。塗膜から鉛直方向15cm上部よりコピーランプ(エスエフシー製、250W)を15分間照射した。塗膜の裏面温度を卓上型温度調節装置(SHIMADEN製)により測定した。
縦31cm、横22cm、高さ22.5cmの段ボールシート製のボックスの上面中央部に5cm×5cmの開口部を空け、HP金属板(太佑機材製、H−102MN)黒部に作製した塗膜を同サイズに切り取り貼り付けた。塗膜から鉛直方向15cm上部よりコピーランプ(エスエフシー製、250W)を15分間照射した。塗膜の裏面温度を卓上型温度調節装置(SHIMADEN製)により測定した。
[中空無機酸化物粒子の製造]
反応容器にメタノール(和光純薬製)100g、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成製)1.7g、ヘキサン(和光純薬製)1gを入れて撹拌した。水300gに25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド溶液(和光純薬製)0.875gを加えて得られた水溶液を反応容器に加え、撹拌しながら5分間熟成した。熟成後、オルトけい酸テトラメチル(東京化成製)1.7gを加え、1時間撹拌し、粉末粒子の分散溶液を得た。粉末粒子をろ別し、100℃にて乾燥後、600℃で2時間焼成し、中空無機酸化物粒子を得た。この中空無機酸化物粒子は、外殻部の主成分がシリカで構成される中空シリカ粒子であり、平均粒径は0.77μmであり、中空部の平均径は0.65μmであった。
反応容器にメタノール(和光純薬製)100g、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成製)1.7g、ヘキサン(和光純薬製)1gを入れて撹拌した。水300gに25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド溶液(和光純薬製)0.875gを加えて得られた水溶液を反応容器に加え、撹拌しながら5分間熟成した。熟成後、オルトけい酸テトラメチル(東京化成製)1.7gを加え、1時間撹拌し、粉末粒子の分散溶液を得た。粉末粒子をろ別し、100℃にて乾燥後、600℃で2時間焼成し、中空無機酸化物粒子を得た。この中空無機酸化物粒子は、外殻部の主成分がシリカで構成される中空シリカ粒子であり、平均粒径は0.77μmであり、中空部の平均径は0.65μmであった。
[実施例1:塗料組成物及び塗膜の製造]
水性アクリル塗料(和信ペイント製、つや出しニス、アクリル樹脂を30重量%含有)3.6gに前記中空無機酸化物粒子を0.4g混合し、実施例1の塗料組成物を得た。この塗料組成物をバーコーター(250mm)を用いてHP金属板(H−102MN、太佑機材製)に塗布し、室温で1時間乾燥後、同条件にて再度塗布することで塗膜を作製した。得られた塗膜を分光光度計(島津製作所製、SOLID SPEC 2700)を用いて200〜2500nmの分光反射率の測定を行った。
水性アクリル塗料(和信ペイント製、つや出しニス、アクリル樹脂を30重量%含有)3.6gに前記中空無機酸化物粒子を0.4g混合し、実施例1の塗料組成物を得た。この塗料組成物をバーコーター(250mm)を用いてHP金属板(H−102MN、太佑機材製)に塗布し、室温で1時間乾燥後、同条件にて再度塗布することで塗膜を作製した。得られた塗膜を分光光度計(島津製作所製、SOLID SPEC 2700)を用いて200〜2500nmの分光反射率の測定を行った。
[比較例1]
水性アクリル塗料(和信ペイント製、つや出しニス、アクリル樹脂を30重量%含有)3.6gに市販の中空セラミックバルーン(富士シリシア製、富士バルーンS35、平均粒径43μm、中空部の平均径40μm))を0.4g混合し、比較例1の塗料組成物を得た。比較例1の塗料組成物をバーコーター(250mm)を用いてHP金属板(H−102MN、太佑機材製)に塗布し、室温で1時間乾燥後、同条件にて再度塗布することで塗膜を作製した。得られた塗膜を分光光度計(島津製作所製、SOLID SPEC 2700)を用いて200〜2500nmの分光反射率の測定を行った。
水性アクリル塗料(和信ペイント製、つや出しニス、アクリル樹脂を30重量%含有)3.6gに市販の中空セラミックバルーン(富士シリシア製、富士バルーンS35、平均粒径43μm、中空部の平均径40μm))を0.4g混合し、比較例1の塗料組成物を得た。比較例1の塗料組成物をバーコーター(250mm)を用いてHP金属板(H−102MN、太佑機材製)に塗布し、室温で1時間乾燥後、同条件にて再度塗布することで塗膜を作製した。得られた塗膜を分光光度計(島津製作所製、SOLID SPEC 2700)を用いて200〜2500nmの分光反射率の測定を行った。
各種測定結果を下記表1及び図1に示す。
図1に示すとおり、実施例1の塗料組成物は比較例1の塗料組成物に比べて可視光線及び赤外線に対して高い反射率を示した。また、上記表1に示すとおり、実施例1の塗料組成物を用いて塗膜を形成すると、比較例1の塗料組成物を用いた塗膜に比べて日射反射率が向上し、かつ、ランプ照射後の温度が低く、良好な遮熱性を示した。
以上説明したとおり、本発明は、例えば、建造物や構造物などに遮熱性を付与するための塗料組成物の分野において有用である。
Claims (5)
- 外殻部と前記外殻部の内部の中空部とを有し、かつ前記中空部の平均径が0.1μm以上5μm未満である中空無機酸化物粒子を含有する、塗料組成物。
- 中空無機酸化物粒子が、炭素原子を除く周期表第2族、3族、4族、12族、13族、及び14族の元素から選ばれる1種以上の元素を含む無機酸化物粒子である、請求項1記載の塗料組成物。
- 中空無機酸化物粒子が、シリカを含む成分から構成される外殻部を備える中空シリカ粒子である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
- JIS K5602(2008年)に規格される日射反射率が10%以上である塗膜を形成するために用いる、請求項1から3のいずれかに記載の塗料組成物。
- 遮熱性塗膜を形成するために用いる、請求項1から4のいずれかに記載の塗料組成物。
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