以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。ここで、下記の実施の形態では、本発明にかかるトロイダル式無段変速機に伝達される駆動力を発生する駆動源としてエンジントルクを発生する内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなど)を用いるが、これに限定されるものではなく、モータトルクを発生するモータなどの電動機などを用いても良い。また、駆動源として内燃機関および電動機を併用しても良い。
〔実施の形態1〕
図1は、実施の形態にかかるトロイダル式無段変速機の概略構成例を示す図である。図2は、実施の形態にかかるトロイダル式無段変速機の詳細構成例を示す図である。図3は、制御装置のブロック図である。図4は、実施の形態1にかかる制御装置の制御フローを示す図である。図5は、傾転角ゲイン、ストロークゲイン設定マップを示す図である。図6は、所定値、補正ゲイン設定マップを示す図である。図7は、実施の形態1における目標基準ストローク量と目標ストローク量との関係を示す図である。
車両(以下、単に「車両CA」と称する)には、図1に示すように、内燃機関100と車輪160との間に、トルクコンバータ110と、前後進切換機構120と、トロイダル式無段変速機1と、動力伝達機構130と、ディファレンシャルギヤ140とにより構成されるトランスミッションが配置されている。なお、150は、車輪160とディファレンシャルギヤ140とを連結するドライブシャフトである。また、170は、内燃機関100の運転制御を行うエンジンECUである。
内燃機関100は、駆動源であり、内燃機関100が搭載された車両CAを前進あるいは後進させるためのエンジントルク、すなわち駆動力を出力するものである。また、内燃機関100は、エンジンECU170と接続されており、エンジンECU170により運転制御されることで、出力する駆動力が制御される。内燃機関100からの駆動力は、クランクシャフト101を介してトルクコンバータ110に伝達される。
トルクコンバータ110は、発進機構であり、流体伝達装置である。トルクコンバータ110は、駆動源である内燃機関100からの駆動力を前後進切換機構120を介してトロイダル式無段変速機1に伝達するものである。トルクコンバータ110は、ポンプ111と、タービン112と、ロックアップクラッチ113とにより構成されている。トルクコンバータ110は、ポンプ111とタービン112との間に介在する作動流体である作動油を介して、クランクシャフト101を介してポンプ111に伝達された駆動力を前後進切換機構120に連結されたタービン112に伝達するものである。また、トルクコンバータ110は、タービン112に連結されたロックアップクラッチ113をポンプ111に係合することで、作動油を介さずに、ポンプ111に伝達された駆動力を直接タービン112に伝達するものでもある。なお、トルクコンバータ110と前後進切換機構120との間には、油圧制御装置70に加圧された作動油を供給するオイルポンプ72(図1では、図示省略)が設けられている。オイルポンプ72は、内燃機関100からのエンジントルクによりトルクコンバータ110が回転することで、駆動するものである。
前後進切換機構120は、トルクコンバータ110を介して伝達された内燃機関100からの駆動力をトロイダル式無段変速機1の入力ディスク10に伝達するものである。前後進切換機構120は、例えば遊星歯車機構であり、内燃機関100からの駆動力を直接あるいは反転して、駆動力入力軸11を介して、入力ディスク10に伝達するものである。つまり、入力ディスク10には、入力ディスク10を正回転させる方向に作用する正回転駆動力として、あるいは入力ディスク10を逆回転させる方向に作用する逆回転駆動力として伝達される。ここで、前後進切換機構120による駆動力の伝達方向の切換制御は、油圧制御装置70から供給される作動油により行われる。従って、前後進切換機構120の切換制御は、トランスミッションECU80により行われる。
実施の形態にかかるトロイダル式無段変速機1は、図1および図2に示すように、入力ディスク10と、出力ディスク20と、パワーローラ30と、トラニオン40と、油圧サーボ機構50と、ディスク押圧機構60と、油圧制御装置70と、トランスミッションECU80とにより構成されている。ここで、トロイダル式無段変速機1は、実施の形態1では、対向する1対の入力ディスク10と出力ディスク20との間に構成されるキャビティーを2つ備え、各キャビティーC1,C2に、2つのパワーローラ30がそれぞれ配置された構造である。つまり、トロイダル式無段変速機1は、2つの入力ディスク10と、1つの出力ディスク20と、4つのパワーローラ30と、4つのトラニオン40を備える。なお、201は、パワーローラ30の傾転角θを検出する傾転角センサであり、トランスミッションECU80に接続されている。また、202は、パワーローラ30の中立位置からのストローク量Xを検出するストロークセンサであり、トランスミッションECU80に接続されている。また、203は、入力ディスク10の回転数である入力回転数Ninを検出する入力回転数センサであり、トランスミッションECU80に接続されている。つまり、トランスミッションECU80には、検出された傾転角θ、すなわち実際の傾転角と、ストローク量Xと、入力回転数Ninとが出力される。
各入力ディスク10は、前後進切換機構120の出力軸である駆動力入力軸11と連結されている。つまり、各入力ディスク10には、内燃機関100の駆動力として伝達される。各入力ディスク10は、駆動力入力軸11により回転自在に支持されている。従って、各入力ディスク10は、駆動力入力軸11の軸線X1を中心として回転可能(図2に示す矢印A)である。ここで、前後進切換機構120により各入力ディスク10には、回転方向Aのうち正回転方向の駆動力である正回転駆動力あるいは逆回転方向の駆動力である逆回転駆動力が伝達される。各入力ディスク10は、円板形状であり、出力ディスク20を挟んで軸方向において対向して配置されている。各入力ディスク10の出力ディスク20と対向する面には、各キャビティーC1,C2の各パワーローラ30がそれぞれ接触する接触面12が形成されている。
出力ディスク20は、動力伝達機構130と連結されている。出力ディスク20は、パワーローラ30を介して入力ディスク10に伝達された内燃機関100からの駆動力が伝達される。従って、出力ディスク20は、動力伝達機構130、ディファレンシャルギヤ140、ドライブシャフト150を介して車輪160に内燃機関100からの駆動力を伝達するものである。また、出力ディスク20には、動力伝達機構130、ディファレンシャルギヤ140、ドライブシャフト150を介して車輪160からの被駆動力が伝達される。つまり、被駆動力は、パワーローラ30を介して入力ディスク10に伝達される。出力ディスク20は、円板形状であり、駆動力入力軸11と同軸上に駆動力入力軸11に対して回転自在に支持され、各入力ディスク10の間に配置されている。従って、出力ディスク20は、駆動力入力軸11の軸線X1を中心として回転可能(図2に示す矢印A)である。出力ディスク20の各入力ディスク10と対向する面、すなわち出力ディスク20の軸方向において対向する面には、各キャビティーC1,C2の各パワーローラ30がそれぞれ接触する接触面21が形成されている。
パワーローラ30は、ディスク押圧機構60により、各入力ディスク10および出力ディスク20に接触し、転動することで、各入力ディスク10から出力ディスク20に駆動力を、あるいは出力ディスク20から各入力ディスク10に被駆動力を伝達するものである。パワーローラ30は、トロイダル式無段変速機1に供給されるトラクションオイルによりパワーローラ30と入力ディスク10の接触面12および出力ディスク20の接触面21との間に形成される油膜のせん断力を用いて駆動力あるいは被駆動力を伝達するものである。パワーローラ30は、パワーローラ本体31と、外輪32とより構成されている。なお、パワーローラ30は、トラニオン40の後述する本体部41に形成された空間部41aに配置されている。
パワーローラ本体31は、外周面に入力ディスク10および出力ディスク20に接触するものである。パワーローラ本体31は、外輪32に形成された図示しない回転軸に対して回転自在に支持されている。また、パワーローラ30は、外輪32のパワーローラ30と対向する面に対してスラストベアリングSBを介して回転自在に支持されている。従って、パワーローラ30は、図示しない回転軸の軸線X2を中心として回転可能(図2に示す矢印B)である。
外輪32は、図示しない回転軸および偏芯軸が形成されている。偏芯軸は、軸線X3が回転軸の軸線X2に対してずれた位置となるように形成されている。偏芯軸は、トラニオン40に対して回転自在に支持されている。従って、外輪32は、偏芯軸の軸線X3を中心として回転可能(図2に示す矢印C)である。つまり、パワーローラ30は、トラニオン40に対して、軸線X2および軸線X3を中心として回転可能となる。これにより、パワーローラ30は、公転可能でかつ自転可能となる。
トラニオン40は、入力ディスク10および出力ディスク20に対してパワーローラ30を支持するものである。トラニオン40は、軸線X2および軸線X3が入力ディスク10および出力ディスク20の軸線X1と垂直な平面と平行となるように配置される。ここで、各キャビティーC1,C2にそれぞれ2つのパワーローラ30が配置される場合は、入力ディスク10および出力ディスク20を挟んで、2つのパワーローラ30が向かい合うように、各パワーローラ30をそれぞれ支持する2つのトラニオン40が対向して配置されている。つまり、各キャビティーC1、C2には、それぞれ2つのトラニオン40が配置される。トラニオン40は、本体部41と、揺動軸42,43とにより構成されている。
本体部41は、パワーローラ30が配置される空間部41aが形成されている。また、本体部41は、パワーローラ30の移動方向における両端部に揺動軸42,43がそれぞれ形成されている。
揺動軸42は、本体部41の両端部のうち、パワーローラ30の移動方向のうち一方向、すなわち第1方向Eの端部から第1方向Eに向かって突出して形成されている。揺動軸42は、支持部材91に対して、ラジアルベアリングRBにより、回転自在に支持されている。従って、揺動軸42は、支持部材91に対して、軸線X4を中心に回転可能(図2に示す矢印D)である。また、揺動軸42は、支持部材91に対して、ラジアルベアリングRBにより、パワーローラ30の移動方向である第1方向Eおよび第1方向Eと反対方向である第2方向Fに移動自在に支持されている。なお、支持部材91は、トロイダル式無段変速機1の図示しないハウジングに対して、揺動自在に支持されており、各キャビティーC1,C2にそれぞれ配置される2つのトラニオン40の揺動軸42が両端部に回転自在およびパワーローラ30の移動方向に移動自在にそれぞれ支持されている。ここで、第1方向Eとは、後述する第1油圧室OP1の油圧により、ピストン51の移動する方向、すなわちパワーローラ30がストロークする方向である。また、第2方向Fとは、後述する第2油圧室OP2の油圧により、ピストン51が移動する方向、すなわちパワーローラ30がストロークする方向である。
揺動軸43は、本体部41の両端部のうち、パワーローラ30の移動方向のうち他方向、すなわち第2方向Fの端部から第2方向Fに向かって突出して形成されている。揺動軸43は、揺動軸42と同一軸線X4上に形成されている。揺動軸43は、支持部材92に対して、ラジアルベアリングRBにより回転自在に支持されている。従って、揺動軸43は、支持部材92に対して、軸線X4を中心に回転可能(図2に示す矢印D)である。また、揺動軸43は、支持部材92に対して、ラジアルベアリングRBにより、第1方向Eおよび第2方向Fに移動自在に支持されている。なお、支持部材92は、トロイダル式無段変速機1の図示しないハウジングに対して、揺動自在に支持されており、各キャビティーC1,C2にそれぞれ配置される2つのトラニオン40の揺動軸43が両端部に回転自在およびパワーローラ30の移動方向に移動自在に支持されている。
以上の構成により、トラニオン40に回転自在に支持されたパワーローラ30は、接触した入力ディスク10および出力ディスク20に対して回転可能であり、入力ディスク10および出力ディスク20に対して第1方向Eおよび第2方向Fに移動可能であり、入力ディスク10および出力ディスク20に対して軸線X4を中心として揺動、すなわち傾転可能に支持されている。ここで、パワーローラ30の入力ディスク10および出力ディスク20に対する相対位置は、傾転角θおよびストローク量Xにより決定される。傾転角θは、パワーローラ30の回転中心である軸線X2が入力ディスク10および出力ディスク20の回転中心である軸線X1と直交する基準位置を0として基準位置から入力ディスク10および出力ディスク20に対する傾斜角度である。ストローク量は、パワーローラ30の回転中心である軸線X2が入力ディスク10および出力ディスク20の回転中心である軸線X1と一致する中立位置を0として中立位置から軸線X4と平行な方向である第1方向Eあるいは第2方向Fへの移動量である。
油圧サーボ機構50は、ストローク制御手段を構成するものであり、パワーローラ30を中立位置からストロークさせるものである。パワーローラ30は、回転する入力ディスクあるいは回転する出力ディスクに接触する状態で、油圧サーボ機構50により中立位置からストロークすることで、傾転力が作用し、傾転する。油圧サーボ機構50は、ピストン51と、シリンダボディ52とにより構成されている。
ピストン51は、油圧制御装置70から供給される作動油の油圧を受けることで、トラニオン40を軸線X4と平行、すなわち第1方向Eあるいは第2方向Fのいずれかに移動させるものである。ピストン51は、ピストンベース51aと、フランジ部51bとにより構成されている。
ピストンベース51aは、揺動軸43に固定されている。ピストンベース51aは、円筒形状であり、揺動軸43の先端部に挿入され固定されている。つまり、ピストン51は、トラニオン40と一体回転する。これにより、ピストン51は、パワーローラ30と連結されていることとなる。従って、ピストン51は、パワーローラ30の傾転に伴い、揺動軸42,43の軸線X4を中心として回転する。また、ピストンベース51aは、シリンダボディ52の摺動孔52aにシール部材S1を介して摺動自在に支持されている。従って、ピストン51は、シリンダボディ52内に摺動自在に支持されている。なお、シリンダボディ52は、トロイダル式無段変速機1の図示しないハウジングなどに固定されている。
フランジ部51bは、シリンダボディ52の油圧室空間部52bを2つの油圧室である第1油圧室OP1(図2に示す上側)と第2油圧室OP2(図2に示す下側)に区画するものである。フランジ部51bは、円板形状であり、ピストンベース51aの略中央部からピストンベース51aの径方向外側に突出して形成されている。ここで、フランジ部51bの径方向外側の端部には、シール部材S2が設けられている。従って、フランジ部51bにより区画された第1油圧室OP1と第2油圧室OP2とは、それぞれシール部材S2により互いに作動油が漏れないようにシールされている。
ここで、第1油圧室OP1および第2油圧室OP2は、実施の形態では、キャビティーC1,C2ごとにそれぞれ2つ形成されることとなる。このとき、同一キャビティーC1,C2における2つのトラニオン40では、第1油圧室OP1および第2油圧室OP2の位置がトラニオン40ごとに入れ替わっている。つまり、一方のトラニオン40の第1油圧室OP1とした油圧室が他方のトラニオン40の第2油圧室OP2となり、一方のトラニオン40の第2油圧室OP2とした油圧室が他方のトラニオン40の第1油圧室OP1となる。従って、同一キャビティーC1,C2における2つのパワーローラ30は、第1油圧室OP1の油圧により第1方向E(同一キャビティーC1,C2のトラニオン40ごとに向きが反対)に移動し、第2油圧室OP2の油圧により第2方向F(同一キャビティーC1,C2のトラニオン40ごとに向きが反対)に移動する。
ディスク押圧機構60は、ストローク制御手段を構成するものであり、気に障る入力ディスク10と出力ディスク20との相対距離を油圧により短くするものである。これにより、ディスク押圧機構60は、入力ディスク10および出力ディスク20にパワーローラ30を接触させ、入力ディスク10および出力ディスク20によりパワーローラ30を挟持する挟持力を発生するものである。ディスク押圧機構60は、実施の形態では、油圧室構成部材61と前後進切換機構120側の入力ディスク10との間に形成されるディスク油圧室62を有する。従って、ディスク押圧機構60は、前後進切換機構120側の入力ディスク10と対向するように設けられ、ディスク油圧室62の油圧により前後進切換機構120側の入力ディスク10と出力ディスク20との相対距離を短くする方向、すなわち出力ディスク20側に向かって前後進切換機構120側の入力ディスク10を押圧する。
油圧制御装置70は、ストローク制御手段を構成するものであり、油圧サーボ機構50の油圧およびディスク押圧機構60の油圧を制御するものである。油圧制御装置70は、図示しないトランスミッションの各部に作動油を供給するものでもある。油圧制御装置70は、少なくともオイルタンク71と、オイルポンプ72と、第1流量制御弁73と、第2流量制御弁74と、ディスク流量制御弁75とにより構成されている。
オイルタンク71には、トランスミッションの各部に供給する作動油が貯留されている。
オイルポンプ72は、上述のように、内燃機関100の運転、例えばクランクシャフト101の回転に連動して作動するものであり、オイルタンク71に貯留されている作動油を吸引、加圧し、吐出するものである。この加圧されて吐出された作動油は、図示しないプレッシャーレギュレータを介して、第1流量制御弁73、第2流量制御弁74、ディスク流量制御弁75や、他の流量制御弁などに供給される。つまり、油圧制御装置70は、オイルポンプ72により加圧された作動油により、油圧サーボ機構50の油圧およびディスク押圧機構60の油圧を制御するものである。なお、プレッシャーレギュレータは、プレッシャーレギュレータよりも下流側における油圧が所定油圧以上となった際に、下流側にある作動油の一部をオイルタンク71に戻すものである。
第1流量制御弁73は、実施の形態では、オイルタンク71、オイルポンプ72、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2にそれぞれ接続されており、トランスミッションECU80により図示しないアクチュエータを駆動制御することで、これらの接続状態を切り替え、第1油圧室OP1に作動油を供給し、第2油圧室OP2から作動油を排出するものである。第1流量制御弁73をONとする場合、トランスミッションECU80から出力された弁制御量Duに基づいてアクチュエータに通電し、オイルポンプ72と第1油圧室OP1とを接続し、加圧された作動油を第1油圧室OP1に供給するとともに、オイルタンク71と第2油圧室OP2とを接続し、第2油圧室OP2内の作動油をオイルタンク71に排出する。これにより、第2油圧室OP2の油圧が低下する。第1流量制御弁73をOFFとする場合、弁制御量Duを0とし、アクチュエータへの通電を停止し、オイルポンプ72と第1油圧室OP1とを接続を遮断し、オイルタンク71と第2油圧室OP2とを接続を遮断する。
第2流量制御弁74は、実施の形態では、オイルタンク71、オイルポンプ72、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2にそれぞれ接続されており、トランスミッションECU80により図示しないアクチュエータを駆動制御することで、これらの接続状態を切り替え、第2油圧室OP2に作動油を供給し、第1油圧室OP1から作動油を排出するものである。第2流量制御弁74をONとする場合、トランスミッションECU80から出力された弁制御量Duに基づいてアクチュエータに通電し、オイルポンプ72と第2油圧室OP2とを接続し、加圧された作動油を第2油圧室OP2に供給するとともに、オイルタンク71と第1油圧室OP1とを接続し、第1油圧室OP1内の作動油をオイルタンク71に排出する。これにより、第1油圧室OP1の油圧が低下する。第2流量制御弁74をOFFとする場合、弁制御量Duを0とし、アクチュエータへの通電を停止し、オイルポンプ72と第2油圧室OP2とを接続を遮断し、オイルタンク71と第1油圧室OP1とを接続を遮断する。
ディスク流量制御弁75は、実施の形態では、オイルタンク71、オイルポンプ72、ディスク油圧室62にそれぞれ接続されており、トランスミッションECU80により図示しないアクチュエータを駆動制御することで、これらの接続状態を切り替え、ディスク油圧室62に作動油を供給し、ディスク油圧室62から作動油を排出するものである。ディスク流量制御弁75をONとする場合、トランスミッションECU80により設定された押圧力Foに基づいた弁制御量に基づいてアクチュエータに通電し、オイルポンプ72とディスク油圧室62とを接続し、加圧された作動油をディスク油圧室62に供給する。ディスク流量制御弁75をOFFとする場合、弁制御量を0とし、アクチュエータへの通電を停止し、オイルタンク71とディスク油圧室62とを接続し、ディスク油圧室62から作動油をオイルタンク71に排出する。これにより、ディスク油圧室62の油圧が低下する。
トランスミッションECU80は、トロイダル式無段変速機1の制御装置である。トランスミッションECU80は、変速比制御手段でありトランスミッション、特にトロイダル式無段変速機1の変速比を制御するものである。また、トランスミッションECU80は、パワーローラ30の目標傾転角θoと検出された傾転角θ(実際の傾転角)との傾転角偏差Δθが小さくなるように目標制御量を設定し、設定された目標制御量に基づいて制御を行うものである。トランスミッションECU80は、実施の形態1では、パワーローラ30の目標傾転角θoと検出された傾転角θ(実際の傾転角)との傾転角偏差Δθが小さくなるように目標ストローク量を設定し、設定された目標ストローク量に基づいてフィードバック制御、特にカスケード制御を行うものである。トランスミッションECU80は、図3に示すように、目標傾転角設定部81と、目標基準ストローク設定部82と、補正部83と、弁制御量設定部84と、加減算部85,86とを備える。
目標傾転角設定部81は、目標傾転角設定手段であり、パワーローラ30の目標傾転角θoを設定するものである。目標傾転角設定部81は、例えば図示しないアクセルセンサにより検出されトランスミッションECU80に出力された図示しないアクセルペダルの開度αと、図示しない車速センサにより検出されトランスミッションECU80に出力された車両CAの車速Vと、図示しない回転数センサにより検出されトランスミッションECU80に出力された内燃機関100のエンジン回転数Neとに基づいて設定された目標変速比に基づいて目標傾転角θoを設定する。なお、目標傾転角設定部81により設定された目標傾転角θoは、加減算部85に出力される。ここで、加減算部85は、目標傾転角θoと、傾転角センサ201により検出されトランスミッションECU80に出力された傾転角θとの傾転角偏差Δθを算出する(Δθ=θo−θ)。
目標基準ストローク設定部82は、目標基準制御量設定手段であり、パワーローラ30の目標傾転角θoと検出された傾転角θ(実際の傾転角)との傾転角偏差Δθが小さくなるように目標基準制御量である目標基準ストローク量BXoを設定するものである。目標基準ストローク設定部82は、加減算部85により算出された傾転角偏差Δθと、傾転角ゲインKθとに基づいて目標基準ストローク量BXoを設定する(BXo=Δθ×Kθ)。なお、目標基準ストローク設定部82により設定された目標基準ストローク量BXoは、補正部83に出力される。
ここで、傾転角ゲインKθおよび後述するストロークゲインKxは、実施の形態では、入力回転数Ninと、傾転角θと、押圧力Foとに基づいて設定される。傾転角ゲインKθおよびストロークゲインKxは、入力回転数センサ203により検出されトランスミッションECU80に出力された入力回転数Ninと、傾転角センサ201により検出され、トランスミッションECU80に出力された傾転角θと、トランスミッションECU80により設定された押圧力Foと、傾転角ゲイン、ストロークゲイン設定マップとに基づいて設定される。傾転角ゲイン、ストロークゲイン設定マップは、図5に示すように、入力回転数Ninと、傾転角θと、押圧力Foとの関係から傾転角ゲインKθおよびストロークゲインKxを設定するものである。なお、傾転角ゲイン、ストロークゲイン設定マップは、既に公知技術であるため、傾転角ゲイン、ストロークゲイン設定マップの設定方法などの詳細な説明は省略する。
補正部83は、目標制御量設定手段であり、パワーローラ30が中立位置付近において設定される目標ストローク量CXoの変化量が中立位置付近以外において設定される目標ストローク量CXoの変化量よりも大きくなるように、目標制御量である目標ストローク量CXoを設定するものである。補正部83は、実施の形態1では、パワーローラ30が中立位置付近では、設定される目標ストローク量CXoを上記設定された目標基準ストローク量BXoよりも増加した値とし、目標基準ストローク量BXoに対応したパワーローラ30の中立位置からのストローク量が中立位置を含む所定領域内である場合に、目標ストローク量CXoの目標基準ストローク量BXoに対する変化量を所定領域外における変化量よりも多くするものである。補正部83は、目標基準ストローク量BXoと、所定値Z(>0)と、補正ゲインKc(>1)とに基づいて目標ストローク量CXoを算出する。具体的には、補正部83は、目標基準ストローク量BXoの絶対値|BXo|が所定値Z以下、すなわち図7に示すように、パワーローラ30の中立位置からのストローク量となる目標基準ストローク量BXoが所定領域(−Z〜Z)内である場合は、設定された目標基準ストローク量BXoよりも増加して目標ストローク量CXoを設定する。また、目標基準ストローク量BXoの絶対値|BXo|が所定値Zを超える、すなわち同図に示すように、パワーローラ30の中立位置からのストローク量となる目標基準ストローク量BXoが所定領域(−Z〜Z)外である場合は、目標ストローク量CXoの目標基準ストローク量BXoに対する変化量が所定領域内である場合に設定された目標ストローク量CXoの目標基準ストローク量BXoに対する変化量よりも少なくなるように、目標ストローク量CXoを設定する。つまり、補正部83は、パワーローラ30が中立位置付近である基準ストローク量BXoが所定領域(−Z〜Z)内における目標ストローク量CXoの変化量が、中立位置付近以外である目標基準ストローク量BXoが所定領域(−Z〜Z)外における変化量よりも大きくなるように、目標ストローク量CXoを設定する。なお、補正部83により設定された目標ストローク量CXoは、加減算部86に出力される。ここで、加減算部86は、目標ストローク量CXoと、ストロークセンサ202により検出されトランスミッションECU80に出力されたパワーローラ30の中立位置からのストローク量Xとのストローク偏差ΔXを算出する(ΔX=CXo−X)。
ここで、所定領域、すなわち所定値Zおよび補正ゲインKcは、実施の形態1では、入力回転数Ninと、傾転角θと、押圧力Foとに基づいて設定される。所定値Zおよび補正ゲインKcは、入力回転数センサ203により検出されトランスミッションECU80に出力された入力回転数Ninと、傾転角センサ201により検出され、トランスミッションECU80に出力された傾転角θと、トランスミッションECU80により設定された押圧力Foと、所定値Z、補正ゲインKc設定マップとに基づいて設定される。所定値Z、補正ゲインKc設定マップは、図6に示すように、入力回転数Ninと、傾転角θと、押圧力Foとの関係から所定値Zおよび補正ゲインKcを設定するものである。
弁制御量設定部84は、外乱を抑制して弁制御量Duを設定するものである。弁制御量設定部84は、図3に示すように、加減算部86により算出されたストローク偏差ΔXと、ストロークゲインKxとに基づいて弁制御量Duを設定する(Du=ΔX×Kx)。なお、弁制御量設定部84により設定された弁制御量Duは、油圧制御装置70の第1流量制御弁73あるいは第2流量制御弁74のいずれかに出力される。
次に、実施の形態1にかかるトロイダル式無段変速機1の動作について説明する。まず、トロイダル式無段変速機1の基本的動作について説明する。変速比の固定は、トランスミッションECU80により油圧制御装置70から油圧サーボ機構50の第1油圧室OP1内の作動油あるいは第2油圧室OP2内の作動油の油圧を制御し、パワーローラ30の位置を中立位置、すなわちストローク量Xを0とすることで行われる。また、変速比の変更は、トランスミッションECU80により油圧制御装置70から油圧サーボ機構50の第1油圧室OP1内の作動油あるいは第2油圧室OP2内の作動油の油圧を制御し、パワーローラ30を中立位置から第1方向Eあるいは第2方向Fのいずれかの方向にストロークさせることで行われる。パワーローラ30が中立位置からストロークすると、パワーローラ30に作用する傾転力が外周方向あるいは内周方向に作用し、パワーローラ30が径方向外側あるいは径方向内側に傾転する。これにより、入力ディスク10とパワーローラ30との接触半径と出力ディスク20とパワーローラ30との接触半径が変更され、変速比が変更される。
次に、トランスミッションECU80の動作について説明する。図4に示すように、トランスミッションECU80は、傾転角θ、ストローク量X、入力回転数Nin、押圧力Foを取得する(ステップST1)。ここでは、トランスミッションECU80は、傾転角センサ201により検出された傾転角θを取得し、ストロークセンサ202により検出されたストローク量Xを取得し、入力回転数センサ203により検出された入力回転数Ninを取得し、設定された押圧力Foを取得する。
次に、トランスミッションECU80の目標傾転角設定部81は、目標傾転角θoを設定する(ステップST2)。ここでは、目標傾転角設定部81は、例えば図示しないアクセルセンサにより検出された図示しないアクセルペダルの開度αと、図示しない車速センサにより検出された車両CAの車速Vと、図示しない回転数センサにより検出された内燃機関100のエンジン回転数Neとに基づいて設定された目標変速比に基づいて目標傾転角θoを設定する。
次に、トランスミッションECU80の加減算部85は、傾転角偏差Δθを算出する(ステップST3)。ここでは、加減算部85は、目標傾転角設定部81により設定された目標傾転角θoから取得された傾転角θを減算した値を傾転角偏差Δθとして算出する(Δθ=θo−θ)。
次に、トランスミッションECU80の目標基準ストローク設定部82は、傾転角ゲインKθを設定する(ステップST4)。ここでは、目標基準ストローク設定部82は、取得された入力回転数Ninと、取得された傾転角θと、取得された押圧力Foと、図5に示す傾転角ゲイン、ストロークゲイン設定マップとに基づいて傾転角ゲインKθを設定する。
次に、目標基準ストローク設定部82は、目標基準ストローク量BXoを設定する(ステップST5)。ここでは、目標基準ストローク設定部82は、加減算部85により算出された傾転角偏差Δθに設定された傾転角ゲインKθを乗算した値を目標基準ストローク量BXoとして設定する(BXo=Δθ×Kθ)。
次に、トランスミッションECU80の補正部83は、所定値Z、補正ゲインKcを設定する(ステップST6)。ここでは、補正部83は、取得された入力回転数Ninと、取得された傾転角θと、取得された押圧力Foと、図6に示す傾転角ゲイン、ストロークゲイン設定マップとに基づいて傾転角ゲインKθを設定する。
次に、補正部83は、目標基準ストローク量BXoの絶対値|BXo|が所定値Z以下であるか否かを判断する(ステップST7)。ここでは、補正部83は、目標基準ストローク量BXoが所定領域内(−Z〜Z)であるか否か、すなわちパワーローラ30が中立位置付近であるか否かを判断する。
次に、補正部83は、目標基準ストローク量BXoの絶対値|BXo|が所定値Z以下であると判断する(ステップST7肯定)と、設定された目標基準ストローク量BXoと補正ゲインKcとに基づいて、目標基準ストローク量BXoよりも増加して目標ストローク量CXoを設定する(ステップST8)。ここでは、補正部83は、設定された目標基準ストローク量BXoに補正ゲインKcを乗算した値を目標ストローク量CXoとして設定する(CXo=BXo×Kc)。
また、補正部83は、目標基準ストローク量BXoの絶対値|BXo|が所定値Zを超えると判断する(ステップST7否定)と、設定された目標基準ストローク量BXoと補正ゲインKcと所定値Zとに基づいて、目標ストローク量CXoの目標基準ストローク量BXoに対する変化量が所定領域内である場合に設定された目標ストローク量CXoの目標基準ストローク量BXoに対する変化量よりも少なくなるように、目標ストローク量CXoを設定する(ステップST15)。ここでは、補正部83は、所定値Zに補正ゲインKcを乗算した値に目標基準ストローク量BXoの絶対値|BXo|を加算し、所定値Zを減算した値(目標基準ストローク量BXoの符号と同一符号の値)を目標ストローク量CXoとして設定する(CXo=±(Z×Kc+|BXo|−Z))。つまり、補正部83は、目標基準ストローク量BXoの絶対値|BXo|のうち、所定値Zを超える部分は、目標基準ストローク量BXoの変化量と同一の変化量とする。
次に、トランスミッションECU80の加減算部86は、ストローク偏差ΔXを算出する(ステップST9)。ここでは、加減算部86は、補正部83により設定された目標ストローク量CXoから取得されたストローク量Xを減算した値をストローク量Xとして算出する(ΔX=CXo−X)。
次に、トランスミッションECU80の弁制御量設定部84は、ストロークゲインKxを設定する(ステップST10)。ここでは、弁制御量設定部84は、取得された入力回転数Ninと、取得された傾転角θと、取得された押圧力Foと、図5に示す傾転角ゲイン、ストロークゲイン設定マップとに基づいてストロークゲインKxを設定する。
次に、弁制御量設定部84は、弁制御量Duを設定する(ステップST11)。ここでは、目標基準ストローク設定部82は、加減算部86により算出されたストローク偏差ΔXに設定されたストロークゲインKxを乗算した値を弁制御量Duとして設定する(D=ΔX×Kx)。
次に、トランスミッションECU80は、設定された弁制御量Duに基づいて油圧制御装置70を制御する(ステップST12)。ここでは、トランスミッションECU80は、設定された弁制御量Duに基づいて油圧制御装置70の第1流量制御弁73あるいは第2流量制御弁74のいずれかの図示しないアクチュエータを駆動制御し、油圧サーボ機構50の第1油圧室OP1あるいは第2油圧室OP2に作動油Qを供給し、第1油圧室OP1内あるいは第2油圧室OP2内の作動油の油圧を制御する。
次に、油圧サーボ機構50は、設定された弁制御量Duに基づいた第1油圧室OP1内あるいは第2油圧室OP2内の作動油の油圧により作動し、パワーローラ30が第1方向Eあるいは第2方向Fに移動する(ステップST13)。つまり、トランスミッションECU80により、パワーローラ30の中立位置からのストローク量Xが制御される。
そして、パワーローラ30は、第1方向Eあるいは第2方向Fに移動することで作用する傾転力により、目標傾転角θoと傾転角θとの傾転角偏差が小さくなるように傾転する(ステップST14)。
以上のように、実施の形態1にかかるトロイダル式無段変速機1のトランスミッションECU80では、パワーローラ30の目標傾転角θoと実際の傾転角θとの傾転角偏差Δθが小さくなるように設定された目標基準ストローク量BXoからパワーローラ30が中立位置付近、すなわちパワーローラ30に作用する傾転力が小さい領域では目標ストローク量CXoの変化量が大きくなるように、目標ストローク量CXoを設定する。トランスミッションECU80は、設定された目標ストローク量CXoに基づいて油圧制御装置70を制御することで、パワーローラ30が目標基準ストローク量BXoに基づいて油圧制御装置70を制御した場合と比較して、中立位置からのストローク量が増加し、パワーローラ30に作用する傾転力を増加するので、パワーローラ30が傾転し易くなり、パワーローラ30の目標傾転角θoと実際の傾転角θとの傾転角偏差Δθが小さくなるようにパワーローラ30を傾転させることができる。従って、トロイダル式無段変速機1の変速速度が微少であり、通常のフィードバック制御では、パワーローラ30の中立位置からのストローク量が小さいため、パワーローラ30が傾転し難い場合であっても、傾転角偏差Δθを小さくすることができる。これにより、パワーローラ30の目標傾転角θoおよび実際の傾転角θのみからパワーローラ30の中立位置付近における応答性を向上することができる。
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2が実施の形態1と異なる点は、補正部83による目標基準ストローク量の補正方法である。図8は、実施の形態2にかかる制御装置の制御フローを示す図である。図9は、不感帯量設定マップを示す図である。図10は、実施の形態2にかかる目標基準ストローク量と目標ストローク量との関係を示す図である。なお、実施の形態2にかかるトロイダル式無段変速機は、実施の形態1にかかるトロイダル式無段変速機と基本構成は同一であるので、説明は省略する。
補正部83は、パワーローラ30が中立位置付近において設定される目標ストローク量CXoの変化量が中立位置付近以外において設定される目標ストローク量CXoの変化量よりも大きくなるように、目標制御量である目標ストローク量CXoを設定するものである。補正部83は、実施の形態2では、パワーローラ30が中立位置付近では、上記設定された目標基準ストローク量BXoよりも増加した値を目標ストローク量CXoとして設定し、目標基準ストローク量BXoに対応したパワーローラ30の中立位置からのストローク量が中立位置を含む所定領域Y1内である場合に、目標ストローク量CXoの目標基準ストローク量BXoに対する変化量を所定領域Y1外における変化量よりも多くするものである。また、補正部83は、目標基準ストローク量BXoに対応したパワーローラ30の中立位置からのストローク量が所定領域Y1外であり、かつ不一致領域Y2内である場合に、ストローク量が不一致領域外、すなわち一致領域Y3に近づくに伴い、目標基準ストローク量BXoに近づけて目標ストローク量CXoを設定し、目標ストローク量CXoの目標基準ストローク量BXoに対する変化量を所定領域Y1内における変化量よりも小さくするものである。
ここで、所定領域Y1は、図10に示すように、パワーローラ30の中立位置を含む−Xo〜Xoの領域、すなわち所定値Xo以下(−Xo以上)の領域であり、不感帯量Xthに基づいて設定されるものである。不感帯量Xthは、目標ストローク量Cxoに基づいて油圧制御装置70を介して油圧サーボ機構50を制御しても、パワーローラ30の中立位置からのストローク量が小さいために、パワーローラ30が実際に中立位置から移動できない目標ストローク量CXoの最大値である。補正部83は、目標ストローク量Cxoが不感帯量Xthを越えるまで、設定された目標基準ストローク量BXoよりも増加した値、すなわち目標基準ストローク量Bxoに補正ゲインKd(1>0)を乗算した値を目標ストローク量Cxoに設定する。従って、所定領域の基準となる所定値Xo(>0)は、不感帯量Xthと補正ゲインKdとに基づいて設定される(Xo=Xth/Kd)。ここで、不感帯量Xthは、傾転角センサ201により検出され、トランスミッションECU80に出力された傾転角θと、不感帯量Xth設定マップとに基づいて設定される。不感帯量Xth設定マップは、図9に示すように、不感帯量Xthと傾転角θとの関係から不感帯量Xthを設定するものである。また、補正ゲインKdは、実施の形態2では、実施の形態1の補正ゲインKcと同様に、入力回転数センサ203により検出されトランスミッションECU80に出力された入力回転数Ninと、傾転角センサ201により検出され、トランスミッションECU80に出力された傾転角θと、トランスミッションECU80により設定された押圧力Foと、補正ゲインKd設定マップとに基づいて設定される。
また、不一致領域Y2は、図10に示すように、パワーローラ30の中立位置を含む領域であり、所定領域Y1を含むとともに、一致ストローク量Xto未満(−Xtoを越える)の領域である。一致ストローク量Xto(>Xo)は、目標基準制御量に対応したパワーローラ30の中立位置からのストローク量と目標基準制御量に対応した実際のストローク量とが一致する、すなわち目標基準ストローク量Bxoに基づいて油圧制御装置70を介して油圧サーボ機構50を制御することでパワーローラ30が中立位置から実際にストロークしたストローク量が目標基準ストローク量Bxoと一致する目標ストローク量の最小値である。従って、不一致領域Y2は、目標基準制御量に対応したパワーローラ30の中立位置からのストローク量と目標基準制御量に対応した実際のストローク量とが異なる、すなわち目標基準ストローク量Bxoに基づいて油圧制御装置70を介して油圧サーボ機構50を制御することでパワーローラ30が中立位置から実際にストロークしたストローク量が目標基準ストローク量Bxoと異なる領域である。ここで、一致ストローク量Xtoは、実施の形態2では、入力回転数Ninと、入力トルクTinと、変速比γ、油温Toとに基づいて設定される。一致ストローク量Xtoは、入力回転数センサ203により検出されトランスミッションECU80に出力された入力回転数Ninと、エンジンECU170により設定される内燃機関100の要求出力トルクに基づいて設定される入力トルクTinと、入力回転数Ninと、図示しない出力回転数センサにより検出されトランスミッションECU80に出力された出力回転数Noutとに基づいて設定される変速比γと、図示しない温度センサにより検出されトランスミッションECU80に出力されたトラクションオイルの油温Toと、一致ストローク量Xto設定マップとに基づいて設定される。一致ストローク量Xto設定マップは、図示は省略するが、入力回転数Ninと、入力トルクTinと、変速比γと、油温Toとの関係から一致ストローク量を設定するものである。
補正部83は、目標ストローク量Cxoが不感帯量Xthを越え、一致ストローク量Xto以上となるまで、すなわち目標基準ストローク量Bxoが所定値Xoを越え、一致ストローク量Xto以上となるまで、不感帯量Xthおよび補正ゲインKdに基づいた値を目標ストローク量Cxoに設定する。補正部83は、実施の形態2では、目標基準ストローク量BXoが所定領域Y1外であり、かつ不一致領域Y2内である場合に、目標基準ストローク量BXoが不一致領域Y2外に近づくに伴い、目標基準ストローク量BXoに近づけて目標ストローク量CXoを設定する(図10参照)。
なお、補正部83は、不一致領域Y2外、すなわち一致領域Y3である場合に、目標基準ストローク量BXoを目標ストローク量CXoに設定する。一致領域Y3は、図10に示すように、一致ストロークXto(−Xto以下)以上の領域である。上述のように、一致領域Y3では、目標基準ストローク量Bxoに基づいて油圧制御装置70を介して油圧サーボ機構50を制御することでパワーローラ30が中立位置から実際にストロークしたストローク量が目標基準ストローク量Bxoと一致するので、目標ストローク量CXoとして目標基準ストローク量BXoを設定する。
次に、実施の形態2にかかるトロイダル式無段変速機1の動作、特に、トランスミッションECU80の動作について説明する。なお、実施の形態2にかかるトロイダル式無段変速機の動作のうち、実施の形態1にかかるトロイダル式無段変速機の動作と同一あるいはほぼ同一の部分は、その説明を省略あるいは簡略化する。
まず、トランスミッションECU80は、図8に示すように、傾転角θ、ストローク量X、入力回転数Nin、押圧力Foを取得する(ステップST101)。次に、トランスミッションECU80の目標傾転角設定部81は、目標傾転角θoを設定する(ステップST102)。次に、トランスミッションECU80の加減算部85は、傾転角偏差Δθを算出する(ステップST103)。次に、トランスミッションECU80の目標基準ストローク設定部82は、傾転角ゲインKθを設定する(ステップST104)。次に、目標基準ストローク設定部82は、目標基準ストローク量BXoを設定する(ステップST105)。
次に、トランスミッションECU80の補正部83は、不感帯量Xth、一致ストローク量Xto、補正ゲインKdを設定する(ステップST106)。ここでは、補正部83は、取得された傾転角θと不感帯量設定マップXthとに基づいて不感帯量Xthを設定する。また、補正部83は、取得された入力回転数Ninと、取得された入力トルクTinと、取得された変速比γと、取得された油温Toと、一致ストローク量設定マップとに基づいて一致ストローク量Xtoを設定する。また、補正部83は、取得された入力回転数Ninと、取得された傾転角θと、取得された押圧力Foと、補正ゲイン設定マップとに基づいて補正ゲインKdを設定する。
次に、補正部83は、目標基準ストローク量BXoの絶対値|BXo|が所定値Xo以下であるか否かを判断する(ステップST107)。ここでは、補正部83は、目標基準ストローク量BXoが所定領域Y1内であるか否か、すなわちパワーローラ30が中立位置付近であるか否かを判断する。
次に、補正部83は、目標基準ストローク量BXoの絶対値|BXo|が所定値Xo以下であると判断する(ステップST107肯定)と、設定された目標基準ストローク量BXoと補正ゲインKdとに基づいて、目標基準ストローク量BXoよりも増加して目標ストローク量CXo(CXo=BXo×Kd)を設定する(ステップST108)。
また、補正部83は、目標基準ストローク量BXoの絶対値|BXo|が所定値Xoを超えると判断する(ステップST107否定)と、目標基準ストローク量BXoの絶対値|BXo|が一致ストローク量Xto未満であるか否かを判定する(ステップST115)。ここでは、補正部83は、目標基準ストローク量BXoが所定領域Y1外であり、不一致領域Y2内であるか否かを判断する。
また、補正部83は、目標基準ストローク量BXoの絶対値|BXo|が一致ストローク量Xto未満であると判断する(ステップST115肯定)と、不感帯量Xthおよび補正ゲインKdに基づいた値を目標ストローク量Cxoに設定する(ステップST116)。ここでは、補正部83は、目標基準ストローク量BXoが不一致領域Y2外に近づくに伴い、すなわち一致領域Y3に近づくに伴い、目標基準ストローク量BXoに近づけて目標ストローク量CXoを設定する。補正部83は、不感帯量Xthと、所定値Xoと、下記の式(1)とにより求められる値(目標基準ストローク量BXoの符号と同一符号の値)目標ストローク量CXoを設定する。
Cxo=±((Xto-Xth)/(Xto-Xo)*(|Bxo|-Xo)+Xth) …(1)
また、補正部83は、目標基準ストローク量BXoの絶対値|BXo|が一致ストローク量Xto以上であると判断する(ステップST115否定)と、目標基準ストローク量BXoを目標ストローク量Cxoに設定する(ステップST117)。ここでは、補正部83は、目標基準ストローク量BXoが一致領域Y3である場合には、目標基準ストローク量Bxoに基づいて油圧制御装置70を介して油圧サーボ機構50を制御することでパワーローラ30が中立位置から実際にストロークしたストローク量が目標基準ストローク量Bxoと一致するので、設定される目標ストローク量CXoを目標基準ストローク量BXoとする(CXo=BXo)。
次に、トランスミッションECU80の加減算部86は、ストローク偏差ΔXを算出する(ステップST109)。次に、トランスミッションECU80の弁制御量設定部84は、ストロークゲインKxを設定する(ステップST110)。次に、弁制御量設定部84は、弁制御量Duを設定する(ステップST111)。次に、トランスミッションECU80は、設定された弁制御量Duに基づいて油圧制御装置70を制御する(ステップST112)。次に、油圧サーボ機構50は、設定された弁制御量Duに基づいた第1油圧室OP1内あるいは第2油圧室OP2内の作動油の油圧により作動し、パワーローラ30が第1方向Eあるいは第2方向Fに移動する(ステップST113)。つまり、トランスミッションECU80により、パワーローラ30の中立位置からのストローク量Xが制御される。そして、パワーローラ30は、第1方向Eあるいは第2方向Fに移動することで作用する傾転力により、目標傾転角θoと傾転角θとの傾転角偏差が小さくなるように傾転する(ステップST114)。
以上のように、実施の形態2にかかるトロイダル式無段変速機1のトランスミッションECU80では、目標基準ストローク量BXoが所定領域Y1、すなわち不感帯域である場合では、実施の形態1と同様に、トロイダル式無段変速機1の変速速度が微少であり、通常のフィードバック制御では、パワーローラ30の中立位置からのストローク量が小さいため、パワーローラ30が傾転し難い場合であっても、傾転角偏差Δθを小さくすることができる。これにより、パワーローラ30の目標傾転角θoおよび実際の傾転角θのみからパワーローラ30の中立位置付近における応答性を向上することができる。また、目標基準ストローク量BXoが不一致領域Y2のうち所定領域Y1を除く領域である場合では、目標ストローク量CXoを目標基準ストローク量BXoに近づけて設定し、目標基準ストローク量BXoが一致領域Y3となると、実際のストローク量が目標基準ストローク量BXoに設定するので、目標傾転角θoに基づいた変速制御の追従性を向上することができる。また、目標傾転角θoと実際の傾転角θとのずれを抑制することができる。
なお、上記実施の形態2においては、変速制御として、フィードバック制御のみついて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、応答性を向上させるためにフィードバック制御にフィードフォワード制御を組み合わせた変速制御を行っても良い。フィードフォワード制御は、例えば、目標傾転角θoを入力値として、目標FFストローク量を算出し、設定された目標基準ストローク量BXoに算出された目標FFストローク量を加算したもの補正部83により補正する。実施の形態2において、フィードフォワード制御を組み合わせた変速制御を行う場合は、急変速時における変速ショックを抑制することができる。