JP2004169719A - トロイダル型無段変速機及び無段変速装置 - Google Patents

トロイダル型無段変速機及び無段変速装置 Download PDF

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Abstract

【課題】減速状態で通過トルクが急増した場合でも、オーバシュートに基づいて押圧装置23aの油圧室90内の油圧が一時的に低下する事を防止する。そして、トラクション部で過度の滑りが発生する事を防止して、伝達効率及び耐久性を確保する。
【解決手段】通過トルクが急増する際に、上記油圧室90内に導入する油圧を一時的に高める信号を送る。この信号に基づく油圧上昇分と、上記オーバシュートに基づく油圧低下分とが相殺されて、上記押圧装置23aが発生する押圧力を適正値に維持する。この結果、上記滑りの発生がなくなり、上記課題が解決される。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明に係るトロイダル型無段変速機及び無段変速装置は、自動車用の自動変速機を構成する変速ユニットとして利用する。特に本発明は、伝達するトルクが急激に変動する状況下でも、構成各部材の弾性変形に基づく過度な滑りの発生を防止する事により、伝達効率及び耐久性を確保する事を目的とするものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用自動変速装置として、図7〜9に示す様なトロイダル型無段変速機を使用する事が研究され、一部で実施されている。このトロイダル型無段変速機は、ダブルキャビティ型と呼ばれるもので、入力軸1の両端部周囲に1対の入力側ディスク2、2を、ボールスプライン3、3を介して支持している。従ってこれら両入力側ディスク2、2は、互いに同心に、且つ、同期した回転を自在に支持されている。又、上記入力軸1の中間部周囲に出力歯車4を、この入力軸1に対する相対回転を自在として支持している。そして、この出力歯車4の中心部に設けた円筒部の両端部に出力側ディスク5、5を、それぞれスプライン係合させている。従ってこれら両出力側ディスク5、5は、上記出力歯車4と共に、同期して回転する。
【0003】
又、上記各入力側ディスク2、2と上記各出力側ディスク5、5との間には、それぞれ複数個ずつ(通常2〜3個ずつ)のパワーローラ6、6を挟持している。これら各パワーローラ6、6はそれぞれ、請求項1に記載した支持部材であるトラニオン7、7の内側面に、支持軸8、8及び複数の転がり軸受を介して、回転自在に支持されている。上記各トラニオン7、7は、それぞれの長さ方向(図7、9の上下方向、図8の表裏方向)両端部に、これら各トラニオン7、7毎に互いに同心に設けられた枢軸9、9を中心として揺動変位自在である。これら各トラニオン7、7を傾斜させる動作は、油圧式のアクチュエータ10、10により、これら各トラニオン7、7を上記枢軸9、9の軸方向に変位させる事で行なうが、総てのトラニオン7、7の傾斜角度は、油圧式及び機械式に互いに同期させる。
【0004】
即ち、前記入力軸1と出力歯車4との間の変速比を変えるべく、上記各トラニオン7、7の傾斜角度を変える場合には、上記各アクチュエータ10、10により上記各トラニオン7、7を、それぞれ逆方向に、例えば、図9の右側のパワーローラ6を同図の下側に、同図の左側のパワーローラ6を同図の上側に、それぞれ変位させる。この結果、これら各パワーローラ6、6の周面と上記各入力側ディスク2、2及び各出力側ディスク5、5の内側面との当接部に作用する、接線方向の力の向きが変化(当接部にサイドスリップが発生)する。そして、この力の向きの変化に伴って上記各トラニオン7、7が、支持板11、11に枢支された枢軸9、9を中心として、互いに逆方向に揺動(傾斜)する。この結果、上記各パワーローラ6、6の周面と上記入力側、出力側各ディスク2、5の内側面との当接位置が変化し、上記入力軸1と出力歯車4との間の回転変速比が変化する。
【0005】
上記各アクチュエータ10、10への圧油の給排状態は、これら各アクチュエータ10、10の数に関係なく1個の変速比制御弁12により行ない、何れか1個のトラニオン7の動きをこの変速比制御弁12にフィードバックする様にしている。この変速比制御弁12は、ステッピングモータ13により軸方向(図9の左右方向、図7の表裏方向)に変位させられるスリーブ14と、このスリーブ14の内径側に軸方向の変位自在に嵌装されたスプール15とを有する。又、上記各トラニオン7、7と上記各アクチュエータ10、10のピストン16、16とを連結するロッド17、17のうち、何れか1個のトラニオン7に付属のロッド17の端部にプリセスカム18を固定しており、このプリセスカム18とリンク腕19とを介して、上記ロッド17の動き、即ち、軸方向の変位量と回転方向との変位量との合成値を上記スプール15に伝達する、フィードバック機構を構成している。又、上記各トラニオン7、7同士の間には同期ケーブル20を掛け渡して、油圧系の故障時にも、これら各トラニオン7、7の傾斜角度を、機械的に同期させられる様にしている。
【0006】
変速状態を切り換える際には、上記ステッピングモータ13により上記スリーブ14を、得ようとする変速比に見合う所定位置にまで変位させて、上記変速比制御弁12の所定方向の流路を開く。この結果、上記各アクチュエータ10、10に圧油が、所定方向に送り込まれて、これら各アクチュエータ10、10が上記各トラニオン7、7を所定方向に変位させる。即ち、上記圧油の送り込みに伴ってこれら各トラニオン7、7が、前記各枢軸9、9の軸方向に変位しつつ、これら各枢軸9、9を中心に揺動する。そして、上記何れか1個のトラニオン7の動き(軸方向及び揺動変位)が、上記ロッド17の端部に固定したプリセスカム18とリンク腕19とを介して上記スプール15に伝達され、このスプール15を軸方向に変位させる。この結果、上記トラニオン7が所定量変位した状態で、上記変速比制御弁12の流路が閉じられ、上記各アクチュエータ10、10への圧油の給排が停止される。
【0007】
この際の上記トラニオン7及び上記プリセスカム18のカム面21の変位に基づく上記変速比制御弁12の動きは、次の通りである。先ず、上記変速比制御弁12の流路が開かれる事に伴って上記トラニオン7が軸方向に変位すると、前述した様に、パワーローラ6の周面と入力側ディスク2及び出力側ディスク5の内側面との当接部に発生するサイドスリップにより、上記トラニオン7が上記各枢軸9、9を中心とする揺動変位を開始する。又、上記トラニオン7の軸方向変位に伴って上記カム面21の変位が、上記リンク腕19を介して上記スプール15に伝わり、このスプール15が軸方向に変位して、上記変速比制御弁12の切り換え状態を変更する。具体的には、上記アクチュエータ10により上記トラニオン7を中立位置に戻す方向に、上記変速比制御弁12が切り換わる。
【0008】
従って上記トラニオン7は、軸方向に変位した直後から、中立位置に向け、逆方向に変位し始める。但し、上記トラニオン7は、中立位置からの変位が存在する限り、上記各枢軸9、9を中心とする揺動を継続する。この結果、上記プリセスカム18のカム面21の円周方向に関する変位が、上記リンク腕19を介して上記スプール15に伝わり、このスプール15が軸方向に変位する。そして、上記トラニオン7の傾斜角度が、得ようとする変速比に見合う所定角度に達した状態で、このトラニオン7が中立位置に復帰すると同時に、上記変速比制御弁12が閉じられて、上記アクチュエータ10への圧油の給排が停止される。この結果上記トラニオン7の傾斜角度が、前記ステッピングモータ13により前記スリーブ14を軸方向に変位させた量に見合う角度になる。
【0009】
上述の様なトロイダル型無段変速機の運転時には、エンジン等の動力源に繋がる駆動軸22により一方(図7、8の左方)の入力側ディスク2を、図示の様なローディングカム式の、或は油圧式の押圧装置23を介して回転駆動する。この結果、前記入力軸1の両端部に支持された1対の入力側ディスク2、2が、互いに近づく方向に押圧されつつ同期して回転する。そして、この回転が、上記各パワーローラ6、6を介して上記各出力側ディスク5、5に伝わり、前記出力歯車4から取り出される。
【0010】
上記入力軸1と出力歯車4との回転速度を変える場合で、先ず入力軸1と出力歯車4との間で減速を行なう場合には、上記各アクチュエータ10、10により上記各トラニオン7、7を上記各枢軸9、9の軸方向に移動させ、これら各トラニオン7、7を図8に示す位置に揺動させる。そして、上各パワーローラ6、6の周面をこの図8に示す様に、上記各入力側ディスク2、2の内側面の中心寄り部分と上記各出力側ディスク5、5の内側面の外周寄り部分とにそれぞれ当接させる。
【0011】
反対に、増速を行なう場合には、上記各トラニオン7、7を図8と反対方向に揺動させ、上各パワーローラ6、6の周面を、この図8に示した状態とは逆に、上記各入力側ディスク2、2の内側面の外周寄り部分と上記各出力側ディスク5、5の内側面の中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、上記各トラニオン7、7を傾斜させる。これら各トラニオン7、7の傾斜角度を中間にすれば、入力軸1と出力歯車4との間で、中間の変速比(速度比)を得られる。
【0012】
更に、上述の様に構成され作用するトロイダル型無段変速機24を、トロイダル型無段変速ユニットとして実際の自動車用の無段変速装置に組み込む場合、遊星歯車機構と組み合わせて無段変速装置を構成する事が、特許文献1〜4等に記載されている様に、従来から提案されている。
【0013】
図10は、上記各特許文献のうちの特許文献4に記載された無段変速装置を示している。この無段変速装置は、所謂パワー・スプリット型と呼ばれるもので、ダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機24と、請求項5に記載した遊星歯車機構に相当する遊星歯車式変速機25とを組み合わせて成る。そして、低速走行時には動力を上記トロイダル型無段変速機24のみで伝達し、高速走行時には動力を、主として上記遊星歯車式変速機25により伝達すると共に、この遊星歯車式変速機25による速度比を、上記トロイダル型無段変速機24の速度比を変える事により調節自在としている。
【0014】
この為に、上記トロイダル型無段変速機24の中心部を貫通し、両端部に1対の入力側ディスク2、2を支持した入力軸1の先端部(図10の右端部)と、上記遊星歯車式変速機25を構成するリング歯車26を支持した支持板27の中心部に固定した、請求項5に記載した第二の動力伝達機構に相当する伝達軸28とを、高速用クラッチ29を介して結合している。上記トロイダル型無段変速機24の構成は、次述する押圧装置23aの点を除き、前述の図7〜9に示した従来構造の場合と、実質的に同様である。
【0015】
又、駆動源であるエンジン30のクランクシャフト31の出力側端部(図10の右端部)と上記入力軸1の入力側端部(=基端部=図10の左端部)との間に、発進クラッチ32と油圧式の押圧装置23aとを、動力の伝達方向に関して互いに直列に設けている。又、上記入力軸1の回転に基づく動力を取り出す為の出力軸33を、上記入力軸1と同心に配置している。そして、この出力軸33の周囲に前記遊星歯車式変速機25を設けている。この遊星歯車式変速機25を構成する太陽歯車34は、上記出力軸33の入力側端部(図10の左端部)に固定している。従ってこの出力軸33は、上記太陽歯車34の回転に伴って回転する。この太陽歯車34の周囲には前記リング歯車26を、上記太陽歯車34と同心に、且つ、回転自在に支持している。そして、このリング歯車26の内周面と上記太陽歯車34の外周面との間に、複数の遊星歯車35、35を設けている。これら各遊星歯車35、35は、それぞれ1対ずつの遊星歯車素子36a、36bにより構成している。これら各遊星歯車素子36a、36bは、互いに噛合すると共に、外径側に配置した遊星歯車素子36aが上記リング歯車26に噛合し、内径側に配置した遊星歯車素子36bが上記太陽歯車34に噛合している。この様な各遊星歯車35、35は、キャリア37の片側面(図10の左側面)に回転自在に支持している。又、このキャリア37は、上記出力軸33の中間部に、回転自在に支持している。
【0016】
又、上記キャリア37と、前記トロイダル型無段変速機24を構成する1対の出力側ディスク5、5とを、請求項5に記載した第一の動力伝達機構に相当する動力伝達機構38により、回転力の伝達を可能な状態に接続している。この動力伝達機構38は、上記入力軸1及び上記出力軸33と平行な伝達軸39と、この伝達軸39の一端部(図10の左端部)に固定したスプロケット40aと、上記各出力側ディスク5、5に固定したスプロケット40bと、これら両スプロケット40a、40b同士の間に掛け渡したチェン41と、上記伝達軸39の他端(図10の右端)と上記キャリア37とにそれぞれ固定されて互いに噛合した第一、第二の歯車42、43とにより構成している。従って上記キャリア37は、上記各出力側ディスク5、5の回転に伴って、これら出力側ディスク5、5と反対方向に、上記第一、第二の歯車42、43の歯数及び上記1対のスプロケット40a、40bの歯数に応じた速度で回転する。
【0017】
一方、上記入力軸1と上記リング歯車26とは、この入力軸1と同心に配置された前記伝達軸28を介して、回転力の伝達を可能な状態に接続自在としている。この伝達軸28と上記入力軸1との間には、前記高速用クラッチ29を、これら両軸28、1に対し直列に設けている。従って、この高速用クラッチ29の接続時にこの伝達軸28は、上記入力軸1の回転に伴って、この入力軸1と同方向に同速で回転する。
【0018】
又、図10に示した無段変速装置は、請求項5に記載したモード切換手段を構成するクラッチ機構を備える。このクラッチ機構は、上記高速用クラッチ29と、上記キャリア37の外周縁部と上記リング歯車26の軸方向一端部(図10の右端部)との間に設けた低速用クラッチ44と、このリング歯車26と無段変速装置のハウジング(図示省略)等、固定の部分との間設けた後退用クラッチ45とから成る。各クラッチ29、44、45は、何れか1個のクラッチが接続された場合には、残り2個のクラッチの接続が断たれる。
【0019】
上述の様に構成する無段変速装置は、先ず、低速走行時には、上記低速用クラッチ44を接続すると共に、上記高速用クラッチ29及び後退用クラッチ45の接続を断つ。この状態で前記発進クラッチ32を接続し、前記入力軸1を回転させると、トロイダル型無段変速機24のみが、この入力軸1から上記出力軸33に動力を伝達する。この様な低速走行時には、それぞれ1対ずつの入力側ディスク2、2と、出力側ディスク5、5との間の速度比を、前述の図7〜9に示したトロイダル型無段変速機単独の場合と同様にして調節する。
【0020】
これに対して、高速走行時には、上記高速用クラッチ29を接続すると共に、上記低速用クラッチ44及び後退用クラッチ45の接続を断つ。この状態で上記発進クラッチ32を接続し、上記入力軸1を回転させると、この入力軸1から上記出力軸33には、前記伝達軸28と前記遊星歯車式変速機25とが、動力を伝達する。即ち、上記高速走行時に上記入力軸1が回転すると、この回転は上記高速用クラッチ29及び伝達軸28を介してリング歯車26に伝わる。そして、このリング歯車26の回転が複数の遊星歯車35、35を介して太陽歯車34に伝わり、この太陽歯車34を固定した上記出力軸33を回転させる。この状態で、上記トロイダル型無段変速機24の速度比を変える事により上記各遊星歯車35、35の公転速度を変化させれば、上記無段変速装置全体としての速度比を調節できる。
【0021】
即ち、上記高速走行時に上記各遊星歯車35、35が、上記リング歯車26と同方向に公転する。そして、これら各遊星歯車35、35の公転速度が遅い程、上記太陽歯車34を固定した出力軸33の回転速度が速くなる。例えば、上記公転速度とリング歯車26の回転速度(何れも角速度)が同じになれば、上記リング歯車26と出力軸33の回転速度が同じになる。これに対して、上記公転速度がリング歯車26の回転速度よりも遅ければ、上記リング歯車26の回転速度よりも出力軸33の回転速度が速くなる。反対に、上記公転速度がリング歯車26の回転速度よりも速ければ、上記リング歯車26の回転速度よりも出力軸33の回転速度が遅くなる。
【0022】
従って、上記高速走行時には、前記トロイダル型無段変速機24の速度比を減速側に変化させる程、無段変速装置全体の速度比は増速側に変化する。この様な高速走行時の状態では、上記トロイダル型無段変速機24に、入力側ディスク2、2からではなく、出力側ディスク5から力(トルク)が加わる(低速時に加わるトルクをプラスのトルクとした場合にマイナスのトルクが加わる)。即ち、前記高速用クラッチ29を接続した状態では、前記エンジン30から入力軸1に伝達されたトルクは、前記伝達軸28を介して前記遊星歯車式変速機25のリング歯車26に伝達される。従って、入力軸1の側から各入力側ディスク2、2に伝達されるトルクは殆どなくなる。
【0023】
一方、上記伝達軸28を介して前記遊星歯車式変速機25のリング歯車26に伝達されたトルクの一部は、前記各遊星歯車35、35から、キャリア37及び動力伝達機構38を介して各出力側ディスク5、5に伝わる。この様に各出力側ディスク5、5からトロイダル型無段変速機24に加わるトルクは、無段変速装置全体の速度比を増速側に変化させるべく、トロイダル型無段変速機24の速度比を減速側に変化させる程小さくなる。この結果、高速走行時に上記トロイダル型無段変速機24に入力されるトルクが小さくなる。
【0024】
更に、自動車を後退させるべく、前記出力軸33を逆回転させる際には、前記低速用、高速用両クラッチ44、29の接続を断つと共に、前記後退用クラッチ45を接続する。この結果、上記リング歯車26が固定され、上記各遊星歯車35、35が、このリング歯車26並びに前記太陽歯車34と噛合しつつ、この太陽歯車34の周囲を公転する。そして、この太陽歯車34並びにこの太陽歯車34を固定した出力軸33が、前述した低速走行時並びに上述した高速走行時とは逆方向に回転する。
【0025】
尚、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを組み合わせて成る無段変速装置としては、上述の様なパワー・スプリット型の他、ギヤード・ニュートラル型と呼ばれるものも、特許文献5等に記載されて従来から知られている。このギヤード・ニュートラル型と呼ばれる無段変速装置の場合には、低速モード時には、トロイダル型無段変速機の変速比を変える事により、無段変速装置の入力軸の回転速度を一定としたまま、この無段変速装置の出力軸の回転速度を、停止状態を挟んで、前進状態と後退状態とに変換自在である。尚、この様なギヤード・ニュートラル型の無段変速装置の具体的構造に就いては、本発明の実施の形態を表した図1〜3により、後で詳しく説明する。
【0026】
上述した様な無段変速装置等に組み込んだ状態で使用される、前述の様なトロイダル型無段変速機は、前記プリセスカム18による前記変速比制御弁12の開閉制御に拘らず、変速比が不必要に変動して、エンジンの回転数が急激に変動し、運転者に違和感を与える可能性がある事が、特許文献6に記載されて、従来から知られている。この様な変速比の不必要な変動は、上記トロイダル型無段変速機を通過するトルクの変動時にこのトロイダル型無段変速機の構成部品の弾性変形等の影響により生じる事が、上記特許文献6に記載されている。そして、この様な弾性変形に基づくトロイダル型無段変速機の変速比の不必要な変動を抑える為に、上記特許文献6には、プリセスカムとリンク腕との当接部の位置を、このプリセスカムを設けたトラニオンの中心軸よりも入力側ディスク側に片寄せる構造が記載されている。
【0027】
【特許文献1】
特開平1−169169号公報
【特許文献2】
特開平1−312266号公報
【特許文献3】
特開平10−196759号公報
【特許文献4】
特開平11−63146号公報
【特許文献5】
特開2000−220719号公報
【特許文献6】
特開2001−317601号公報
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
図10に示す様な油圧式の押圧装置23aを備えたトロイダル型無段変速機24の耐久性及び伝達効率を確保する為には、上記押圧装置23aの油圧室内に導入する油圧を、上記トロイダル型無段変速機24を通過するトルク(通過トルク)に応じて調節する事が好ましい。即ち、この通過トルクが小さい場合には上記油圧を低くして、入力側、出力側各ディスク2、5の内側面とパワーローラ6、6の周面との転がり接触部(トラクション部)の面圧を低く抑える。この結果、各トラクション部での伝達効率並びに上記各面の転がり疲れ寿命の向上を図れる。これに対して、上記通過トルクが大きい場合には、上記油圧を高くして、上記トラクション部の面圧を高くする。この結果、各トラクション部で滑りが生じる事を防止して、これら各トラクション部での伝達効率の確保を図れる。
【0029】
この様に、上記押圧装置23aの油圧室内に導入する油圧を通過トルクに応じて調節する事により、上記トロイダル型無段変速機24の伝達効率と耐久性とを確保できる。この場合に、これら伝達効率と耐久性との確保とを高次元で図る為には、上記油圧を、上記通過トルクに応じた値、又は、この値よりも少しだけ大きな値とする制御を行なう事が必要である。但し、この様な制御を行なうと、上記通過トルクが急上昇する際に、過大なオーバシュートが発生し、一時的とは言え、上記トラクション部で過大な滑りが発生する可能性がある事が、本発明者が行なった実験により分かった。この実験は、エンジン相当の低い慣性質量を有する入力ダイナモと実車相当の大きな慣性を有する出力ダイナモとを組み合わせて、実車に即した構成を有するダイナモメータを使用して行なった。
【0030】
図11は、この様なダイナモメータを使用して行なった第一の実験の結果を示している。この実験では、トロイダル型無段変速機を、図8に示す様な最大減速状態として、図10に示す様な油圧式の押圧装置23aの油圧室内に一定の油圧を導入した状態のまま、上記トロイダル型無段変速機の入力軸1(図1)に付加するトルク(入力トルク、単位=Nm)を急変動させた。そして、この入力トルクの急変動に伴う、出力側ディスク5、5のトルク(出力トルク、単位=Nm)と、上記押圧装置23aの押圧力との変化を測定した。尚、この押圧力は、上記油圧室内の油圧(単位=MPa)として測定した。上記入力軸1の回転速度は2000min−1 で一定とし、上記トロイダル型無段変速比の変速比(減速比)は2とした。又、実験には、後述する図1〜4に示した、本発明の実施の形態の1例の無段変速装置に組み込んだトロイダル型無段変速機24aと同様の構造を有するものを使用した。
【0031】
この様な実験の結果を表す図11のうちの(A)は、上記入力トルクを−160Nmから+330Nmに急増させる制御を行なった場合に於ける、上記出力トルク及び押圧力を表している。図11(A)のうちの鎖線aが上記入力トルクを、破線bが上記出力トルクを、実線cが上記押圧力を、それぞれ表している。又、図11(B)は、上記入力トルクを+330Nmから−160Nmに急減させる制御を行なった場合に於ける、上記出力トルク及び押圧力を表している。図11(B)のうちの鎖線a´が上記入力トルクを、破線b´が上記出力トルクを、実線c´が上記押圧力を、それぞれ表している。尚、実験装置では、入力側と出力側との間に歯車変速機が存在する。又、オーバシュートの発生を予測して、上記押圧装置23aによる押圧力を過大にしている為、トロイダル型無段変速機の伝達効率は実際に使用する場合よりも、かなり低くなっている。従って、変速比とトルク比との間に、その分のずれが存在する。
【0032】
この様な実験の結果を示す図11から明らかな通り、入力トルク及び出力トルクは、目標とするトルクよりも行き過ぎてから徐々に目標トルクに収束する、所謂オーバシュートが発生する。この様に、小さいながらもオーバシュートが発生する理由は、トロイダル型無段変速機の通過トルクの変動により、このトロイダル型無段変速機の変速比が変化する為である。即ち、トロイダル型無段変速機の変速比を一定に保持する指令を出したまま、上記通過トルクを変動させると、図12に示す様に、この通過トルクに応じて上記変速比が変化する事が、従来から知られている。
【0033】
この様に通過トルクの変動に応じて変速比が変動する理由は、通過トルクが変動すると、このトロイダル型無段変速機の構成各部材の弾性変形量が変化する為である。そして、この変速比が変化すると、このトロイダル型無段変速機を組み込んだ動力伝達系の見掛け上の回転慣性が変化し、上記入力トルク及び出力トルクにオーバシュートが発生する。この様なトルクのオーバシュートが生じる可能性は、以前から予想されていたが、今回行なった実験により、この様なオーバシュートに基づいて、油圧式の押圧装置23aによる押圧力が変動する事が、新たに分かった。即ち、上記入力トルクを急増させる際には、図11(A)の実線cに示す様に、上記押圧力が一時的に低下する。これに対して、上記入力トルクを急減させる際には、図11(B)に実線c´で示す様に、上記押圧力が一時的に上昇する。
【0034】
この様に、トルクの急変時に上記押圧力が一時的に変動する理由に就いて本発明者は、トルク変動に基づくトロイダル型無段変速機の構成各部材の弾性変形量並びに変速比の変化に基づくものであると考えた。即ち、トロイダル型無段変速機を減速状態で運転する際に上記構成各部材は、上記押圧装置23aが発生する大きな押圧力並びにトルクの変動に基づくねじれ量の変化等に基づいて弾性変形量が変化する。又、トルクの大きさ及び方向の変化により、上記トロイダル型無段変速機の変速比が変動し、この変動に伴って上記押圧力が変化する。この為、上記トルクの大きさだけでなく、方向も、上記弾性変形量の変化に結び付く。更には、上記変速比の変化は、出力軸側に存在する回転慣性の影響で、更なる変速比の変動を招き、上記弾性変形量の変化に繋がる。何れにしても、この弾性変形量の変化に基づいて、軸方向に可動の入力側ディスク2、2は、軸方向位置を固定された出力側ディスクに向け、この弾性変形量の変化に見合う分だけ近づいたり(トルクが急増する場合)、遠ざかる(トルクが急減する場合)。この結果、何れかの入力側ディスク2に付設した上記押圧装置23aの油圧室の容積が拡がったり(弾性変形量が増大する場合)、又は狭まり(弾性変形量が減少する場合)、この油圧室内の油圧が一時的に低下又は増大する。
【0035】
即ち、上記押圧装置23aの油圧室46は、例えば図13に示す様に、入力側ディスク2の外側面により軸方向片側(図13の右側)を仕切られている。この状態で上記オーバシュートに基づいて弾性変形量が急変し、上記入力側ディスク2が出力側ディスク5(図1、3、10参照)に向け、図13の右方向に変位する瞬間が生じると、その瞬間に、上記油圧室46の容積が増大する。この油圧室46内には給油通路47を通じて所定の油圧を導入する様にしているが、上記入力側ディスク2の変位が急激に行なわれた場合には、上記給油通路47を通じての圧油の補充が間に合わなくなる。この結果、図11(A)の実線cの様に、上記押圧装置23aが発生する押圧力が一時的に低下する。
【0036】
この様に、上記押圧装置23aが発生する押圧力が一時的にしろ低下した場合には、入力側、出力側各ディスク2、5の内側面と各パワーローラ6、6の周面との転がり接触部(トラクション部)の面圧が不足し、このトラクション部で過度の滑りが発生する。この様な過度の滑りは、トロイダル型無段変速機の伝達効率を低下させる為でなく、著しい場合には、上記トラクション部に存在する潤滑油(トラクションオイル)の膜を一時的にしろ消滅させ、このトラクション部で金属接触を生じさせる可能性がある。金属接触の発生は、上記入力側、出力側各ディスク2、5の内側面及び各パワーローラ6、6の周面の耐久性を著しく低下させる為、確実に避ける必要がある。
【0037】
上述の様に、トロイダル型無段変速機を減速状態としてこのトロイダル型無段変速機の入力トルクを急増させた場合に、過度な滑りを生じる可能性が高い。これに対して、同様の状態で入力トルクを急減させたり、或は増速状態で入力トルクを急変動させた場合には、上述の様な過度の滑りを生じにくい。但し、上記入力トルクを急減させたり、或は増速状態で入力トルクを急変動させた場合でも、このトルクの大きさや方向の急変動に伴って生じるトルクのオーバシュートにより、上記押圧力が一時的に不足し、上記トラクション部で滑りが発生する可能性がある。
【0038】
先ず、減速状態で入力トルクを急減させた場合には、各部の弾性変形量の減少により、入力側ディスク2が出力側ディスク5から遠ざかり、図13に示した押圧装置23aの油圧室46の容積が減少する傾向になる。この結果、前述の図11(B)の実線c´で示す様に、上記押圧装置23aの押圧力が一時的に高くなる。この押圧力が一時的に高くなっても、過度の滑りが発生する事はなく、又、伝達効率や耐久性の低下も極く限られたもので済む。
【0039】
又、増速状態で入力トルクを急変動させた場合には、構成各部材の弾性変形量は少なく、従って、入力、出力各トルクのオーバシュート、並びにこのオーバシュートに基づく押圧力の変化は少なくて済む。図14は、トロイダル型無段変速比を最大増速状態(変速比0.5)とし、前述の場合とほぼ同様の条件の下で行なった第二の実験の結果を示している。上記図14の(A)は入力トルクを−280Nmから+350Nmに急増させる制御を行なった場合に於ける、上記出力トルク及び押圧力を表している。図14(A)のうちの鎖線aが上記入力トルクを、破線bが上記出力トルクを、実線cが上記押圧力を、それぞれ表している。又、図14(B)は、上記入力トルクを+350Nmから−300Nmに急減させる制御を行なった場合に於ける、上記出力トルク及び押圧力を表している。図14(B)のうちの鎖線a´が上記入力トルクを、破線b´が上記出力トルクを、実線c´が上記押圧力を、それぞれ表している。
【0040】
トロイダル型無段変速機の技術分野で周知の様に、最大増速時の状態では、弾性変形し易い入力側ディスク2、2の内側面の外径寄り部分に各パワーローラ6、6の周面が当接する等の理由により、構成各部材の弾性変形量が少ない。この為、図14(A)(B)の各線から明らかな通り、入力、出力各トルクのオーバシュート、並びにこのオーバシュートに基づく押圧力の変化は少なくて済む。従って、特別な配慮を行なわなくても、トラクション部に過度の滑りが発生する可能性は低い。但し、オーバシュートに基づく滑りが発生する可能性はある。
本発明は、この様な事情に鑑みて、特に厳しい状況でも、トラクション部に過度の滑りが発生する事を防止し、トロイダル型無段変速機の伝達効率及び耐久性を確保すべく発明したものである。
【0041】
【課題を解決するための手段】
本発明のトロイダル型無段変速機は、前述した従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様に、入力側ディスク及び出力側ディスクと、複数の支持部材と、複数のパワーローラと、押圧装置とを備える。
このうちの入力側ディスク及び出力側ディスクは、それぞれが断面円弧形の凹面である互いの内側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、且つ互いに独立した回転自在に支持されている。
又、上記各支持部材は、上記入力側ディスク及び出力側ディスクの中心軸に対し捻れの位置にある枢軸を中心として揺動する。
又、上記各パワーローラは、上記各支持部材に支持された状態で上記入力側ディスク及び出力側ディスク同士の間に挟持されたもので、その周面を球状凸面としている。
又、上記押圧装置は、上記入力側ディスクと上記出力側ディスクとを互いに近づく方向に押圧する。
【0042】
特に、本発明のトロイダル型無段変速機に於いては、上記押圧装置は、圧油の送り込みに伴って油圧に応じた押圧力を発生させる油圧式である。
そして、上記押圧装置は、上記入力側ディスクと上記出力側ディスクとの間で伝達するトルクの大きさに応じた押圧力を発生する他、このトルクの大きさとは独立した押圧力を、制御器からの信号に基づいて発生自在としたものである。
又、この制御器は、上記入力側ディスクと上記出力側ディスクとの間で伝達されるトルクの大きさが急変動する際に、当該時点でこれら両ディスク同士の間で伝達されるトルクに見合う押圧力を上記押圧装置に発生させる為に必要な油圧よりも大きな油圧を、この押圧装置の油圧室内に導入すべき旨の指令信号を発する機能を有するものである。
【0043】
【作用】
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機によれば、トルクの急変動時にも油圧式の押圧装置が発生する押圧力が不足する事を防止して、この急変動時にトラクション部で過度の滑りが発生する事を防止できる。又、トルクの急変動時にのみ押圧力を高める為の制御を行なうので、それ以外の場合には、上記押圧装置が発生する押圧力を適正値に維持し、上記トラクション部の面圧を、伝達効率及び耐久性確保の面から適正値にできる。
【0044】
【発明の実施の形態】
図1〜4は、本発明の実施の形態の第1例として、本発明のトロイダル型無段変速機を、ギヤード・ニュートラル型の無段変速装置に組み込んだ場合に就いて示している。尚、図1〜4には縦横比等の寸法関係を、実際の寸法関係で示している。又、図3には、上半部にトロイダル型無段変速機の変速比が最大減速時の状態を、下半部に同じく最大増速時の状態を、それぞれ描いている。
【0045】
本例の無段変速装置は、特許請求の範囲に記載したトロイダル型無段変速機に対応するトロイダル型無段変速ユニット48と、それぞれが請求項5に記載した遊星歯車機構に相当する第一〜第三の遊星歯車式変速ユニット49〜51とを組み合わせて成り、入力軸1aと、出力軸52とを有する。図示の例では、これら入力軸1aと出力軸52との間に伝達軸53を、これら両軸1a、52と同心に、且つ、これら両軸1a、52に対する相対回転を自在に設けている。そして、上記第一、第二の遊星歯車式変速ユニット49、50を上記入力軸1aと上記伝達軸53との間に掛け渡す状態で、上記第三の遊星歯車式変速ユニット51をこの伝達軸53と上記出力軸52との間に掛け渡す状態で、それぞれ設けている。
【0046】
このうちのトロイダル型無段変速ユニット48は、1対の入力側ディスク2a、2bと、一体型の出力側ディスク5aと、複数のパワーローラ6、6とを備える。そして、上記1対の入力側ディスク2a、2bは、上記入力軸1aを介して互いに同心に、且つ、同期した回転を自在として結合されている。又、上記出力側ディスク5aは、上記両入力側ディスク2a、2b同士の間に、これら両入力側ディスク2a、2bと同心に、且つ、これら両入力側ディスク2a、2bに対する相対回転を自在として支持されている。更に、上記各パワーローラ6、6は、軸方向に関して上記出力側ディスク5aの軸方向両側面と上記両入力側ディスク2a、2bの軸方向片側面との間に、それぞれ複数個ずつ(図示の例では2個ずつ)挟持されている。そして、これら両入力側ディスク2a、2bの回転に伴って回転しつつ、これら両入力側ディスク2a、2bから上記出力側ディスク5aに動力を伝達する。
【0047】
又、本例の場合、図2に示す様に、上記各パワーローラ6、6を支持するトラニオン7a、7aの長さ方向両端部に設けた、1対の折れ曲がり壁部54、54の先端部同士を、連結部材55、55により連結している。この様な連結部材55は、上記パワーローラ6を跨ぐ様に設けると共に、その両端面を上記トラニオン7aの各折れ曲がり壁部54、54の互いに対向する内側面に突き当てた状態で、ねじ56、56により、上記各トラニオン7a、7aに結合固定している。この様な連結部材55、55を設けた本例の場合には、これら各トラニオン7a、7aの曲げ剛性の向上を図れ、これら各トラニオン7a、7aを弾性変形しにくくできる。この結果、これら各トラニオン7a、7aの変形に基づく支持軸8a及び後述するロッド17aの傾斜を防止し、この支持軸8aの先半部に支持した上記各パワーローラ6、6や上記ロッド17aの先端部(下端部)に固定したプリセスカム18の位置がずれるのを抑える事ができるので、変速動作をより安定させる事ができる。尚、本例の場合、上記支持軸8aと、上記パワーローラ6を回転自在に支持するスラスト玉軸受57を構成する外輪とを、一体に形成している。
【0048】
更に、本例の場合には、上記出力側ディスク5aの軸方向両端部を、1対のスラストアンギュラ玉軸受58、58等の転がり軸受により、回転自在に支持している。この為に本例の場合には、上記各トラニオン7a、7aの両端部を支持する為の1対の支持板59a、59bを支持する為にケーシング60の内側に、アクチュエータボディー61を介して1対の支柱62、62を設けている。これら各支柱62、62はそれぞれ、前記入力軸1aを挟んで径方向反対側に、互いに同心に設けられた1対の支持ポスト部63a、63bを、円環状の支持環部64により連結して成る。上記入力軸1aは、この支持環部64の内側を挿通している。
【0049】
又、上記各支柱62、62の下端部は、上記アクチュエータボディー61の上面に、それぞれ複数本ずつのボルト65、65により結合固定している。これに対して上記各支柱62、62の上端部は、連結板66の下面に、それぞれボルト67、67により結合固定している。上記1対の支柱62、62は、この様に上記アクチュエータボディー61の上面と上記連結板66の下面との間に掛け渡す様に連結固定している。この状態で、上記各支柱62、62の両端部近傍に設けた、前記各支持ポスト部63a、63bのうち、下側の支持ポスト部63a、63aは、上記アクチュエータボディー61の上面の直上位置に存在する。そして、上記両支柱62、62の支持ポスト部63a、63aに、前記1対の支持板59a、59bのうちの下側の支持板59aを外嵌支持している。又、上側の支持ポスト部63b、63bは、上記連結板66の下面の直下位置に存在する。そして、上記両支柱62、62の支持ポスト部63b、63bに、前記1対の支持板59a、59bのうちの上側の支持板59bを外嵌支持している。
【0050】
又、上記1対の支柱62、62により互いに結合された、前記アクチュエータボディー61と上記連結板66とのうち、アクチュエータボディー61は前記ケーシング60の下部に固定している。この為に、このケーシング60の内面下端開口寄り部分に段部68a、68bを形成している。上記アクチュエータボディー61を上記ケーシング60内に固定する際には、このアクチュエータボディー61の上面幅方向両端寄り部分を上記各段部68a、68bに突き当てる。そして、上記アクチュエータボディー61の一部でこれら各段部68a、68bに整合する部分に形成したボルト挿通孔を下方から挿通した図示しないボルトを、上記各段部68a、68bに開口したねじ孔に螺合し更に緊締する。
【0051】
上記アクチュエータボディー61内には、前記各トラニオン7a、7aを、それぞれの両端部に互いに同心に設けた枢軸9、9の軸方向に変位させる為の、油圧式のアクチュエータ10、10を設けている。これら各アクチュエータ10、10を構成するピストン16、16と上記各トラニオン7a、7aとは、これら各トラニオン7a、7a及び枢軸9、9と一体のロッド17a、17bにより連結している。これら各ロッド17a、17bのうち、何れか1本のロッド17aは他のロッド17bよりも長くして、その先端部(下端部)を、上記アクチュエータボディー61の下面から突出させている。そして、上記1本のロッド17aの先端部に、プリセスカム18を外嵌固定している。
【0052】
この様にして上記ロッド17aの先端部に設けたプリセスカム18のカム面21には、図4に示す様に、リンク腕19aの先端部を当接させている。本例の場合、上記カム面21とこのリンク腕19aの先端部とが滑り接触している接触点xを、次の様に規制している。即ち、この接触点xを、前記各入力側ディスク2a、2bと前記出力側ディスク5aとの間の変速状態を最大減速状態とした状態での、上記プリセスカム18を設けたトラニオン7aに支持したパワーローラ6の回転中心軸に平行(一致する場合も含む)な仮想直線を含み、且つ、上記プリセスカム18の揺動中心(トラニオン7aの端部に設けた枢軸9の中心と同じ)を通過する仮想平面上に位置させている。
【0053】
前記トロイダル型無段変速ユニット48を組み込んだ本例の無段変速装置の場合、無段変速装置全体としての変速比は、後述する様に、低速モード時には、上記トロイダル型無段変速ユニット48の変速比を減速側にする程増速側に変化する。これに対して、高速モード時には、上記トロイダル型無段変速ユニット48の変速比を増速側にする程増速側に変化する。従って、低速モードと高速モードとの切り換えは、上記トロイダル型無段変速ユニット48が最大減速状態で行なう。この様にこのトロイダル型無段変速ユニット48が最大減速状態である場合に、上記プリセスカム18と上記ロッド17aにより連結されたトラニオン7aに支持されたパワーローラ6の回転中心軸(支持軸8aの先半部の中心軸)は、図4の鎖線α方向に存在する。
【0054】
前記接触点xは、この様な鎖線αと上記プリセスカム18をその先端部に固定したロッド17aの中心軸とを含む仮想平面、即ち、図4で、上記鎖線α上で紙面の直角方向に存在する仮想平面上に位置する。上記トロイダル型無段変速ユニット48が最大減速状態にあり、上記パワーローラ6の回転中心軸が上記鎖線αと平行な状態で、このパワーローラ6に加わるスラスト荷重に基づいて前記トラニオン7aが弾性変形すると、上記プリセスカム18の中心軸(揺動中心軸)は、上記鎖線α上を移動する。そして、上記接触点xも、この鎖線α上で前記カム面21に対し、上記プリセスカム18の直径方向に変位する。このカム面21の高さは、このプリセスカム18の直径方向に関しては変化しない為、上記接触点xが上記鎖線α上で変位しても、この接触点xは図4の表裏方向に変位しない。従って、前記リンク腕19aとコネクティングロッド69を介して連結されたスプール15aが押し引きされる事はなく、このスプール15aを含んで構成される変速比制御弁12(図9参照)が切り換わる事はない。
【0055】
尚、図示の例の場合には、上記リンク腕19aの先端部を球状に形成し、この先端部と上記カム面21とを点接触させている。従って、このカム面21に対する上記リンク腕19aの配設方向を特に規制しなくても、これらカム面21とリンク腕19aの先端との接触状態を適正にできる。これに対して、リンク腕の先端部と上記カム面21とが線接触する構造を採用した場合には、上記プリセスカム18の変位(通常の回転及び軸方向変位及びトラニオンの弾性変形に伴う変位)に拘らず、上記先端部とカム面21との当接状態が不良にならない様にすべく、上記リンク腕の配設方向を規制する事が好ましい。
【0056】
一方、前記連結板66は、前記ケーシング60内の所定位置に設置されている。図示の例の場合、この連結板66の上面と、前記ケーシング60の天板部70の下面との、互いに対向する部分にそれぞれ形成した位置決め凹部71a、71b同士の間に円筒状の位置決めスリーブ72、72を掛け渡している。この構造により、前記1対の支柱62、62の上下両端部を上記ケーシング60に対し、位置決めした状態で支持固定している。
【0057】
この様にして上記ケーシング60内の所定位置に固定した1対の支柱62、62の中間部に設けられ、それぞれが前記入力側ディスク2a、2bと前記出力側ディスク5aとの側面同士の間に存在する各キャビティ(空間)の中央部に存在する前記各支持環部64、64により、前記出力側ディスク5aを、回転自在に支持している。この為に、これら各支持環部64、64とこの出力側ディスク5aの軸方向両端面、即ち、この出力側ディスク5aの軸方向両側面に設けた出力側面よりも内径側部分との間に、前記各スラストアンギュラ玉軸受58、58を設けている。この構成により上記出力側ディスク5aを、各キャビティ内に1対ずつ設けた上記各支柱62、62同士の間に、回転自在に支持している。尚、本例の場合、上記出力側ディスク5aの外周縁に径方向に関する凹凸を円周方向等間隔に設けると共に、上記ケーシング60に固定した回転速度検出用のセンサ73の検出部を上記出力側ディスク5aの外周縁に近接対向させる事により、この出力側ディスク5aの回転速度を検出自在としている。
【0058】
又、本発明の無段変速装置の場合、図示しない駆動源であるエンジンのクランクシャフトに前記入力軸1aの基端部(図1の左端部)を、駆動軸74を介して結合し、このクランクシャフトにより上記入力軸1aを回転駆動する様にしている。又、前記両入力側ディスク2a、2bの軸方向片側面及び上記出力側ディスク5aの軸方向両側面と上記各パワーローラ6、6の周面との転がり接触部(トラクション部)に適正な面圧を付与する為の押圧装置23aとして、油圧式のものを使用している。又、前記ケーシング60の前端壁75に内蔵した、油圧源であるギヤポンプ76により、上記押圧装置23a及び変速の為にトラニオン7a、7aを変位させる為の油圧式のアクチュエータ10、10、並びに、請求項5に記載したモード切換手段を構成する後述する低速用クラッチ44a及び高速用クラッチ29aを断接させる為の油圧シリンダに、圧油を供給自在としている。
【0059】
又、上記出力側ディスク5aに中空回転軸77の基端部(図1、3の左端部)をスプライン係合させている。そして、この中空回転軸77を、エンジンから遠い側(図1、3の右側)の入力側ディスク2bの内側に挿通して、上記出力側ディスク5aの回転力を取り出し自在としている。更に、上記中空回転軸77の先端部(図1、3の右端部)で上記入力側ディスク2bの外側面から突出した部分に、前記第一の遊星歯車式変速ユニット49を構成する為の、第一の太陽歯車78を固設している。
【0060】
一方、上記入力軸1aの先端部(図1、3の右端部)で上記中空回転軸77から突出した部分と上記入力側ディスク2bとの間に、第一のキャリア79を掛け渡す様に設けて、この入力側ディスク2bと上記入力軸1aとが、互いに同期して回転する様にしている。そして、上記第一のキャリア79の軸方向両側面の円周方向等間隔位置(一般的には3〜4個所位置)に、それぞれがダブルピニオン型である前記第一、第二の遊星歯車式変速ユニット49、50を構成する為の遊星歯車80〜82を、回転自在に支持している。更に、上記第一のキャリア79の片半部(図1の右半部)周囲に第一のリング歯車83を、回転自在に支持している。
【0061】
上記各遊星歯車80〜82のうち、前記トロイダル型無段変速ユニット48寄り(図1、3の左寄り)で上記第一のキャリア79の径方向に関して内側に設けた遊星歯車80は、上記第一の太陽歯車78に噛合している。又、上記トロイダル型無段変速ユニット48から遠い側(図1、3の右側)で上記第一のキャリア79の径方向に関して内側に設けた遊星歯車81は、請求項5に記載した第二の動力伝達機構を構成する前記伝達軸53の基端部(図1の左端部)に固設した、第二の太陽歯車84に噛合している。又、上記第一のキャリア79の径方向に関して外側に設けた、残りの遊星歯車82は、上記内側に設けた遊星歯車80、81よりも軸方向寸法を大きくして、これら両遊星歯車80、81に噛合させている。更に、上記残りの遊星歯車82と上記第一のリング歯車83とを噛合させている。尚、径方向外寄りの遊星歯車を、第一、第二の遊星歯車式変速ユニット49、50同士の間で互いに独立させる代りに、幅広のリング歯車をこれら両遊星歯車に噛合させる構造も、採用可能である。
【0062】
一方、前記第三の遊星歯車式変速ユニット51を構成する為の第二のキャリア85を、前記出力軸52の基端部(図1の左端部)に結合固定している。そして、この第二のキャリア85と上記第一のリング歯車83とを、前記低速用クラッチ44aを介して結合し、請求項5に記載した第一の動力伝達機構を構成している。又、上記伝達軸53の先端寄り(図1の右端寄り)部分に第三の太陽歯車86を固設している。又、この第三の太陽歯車86の周囲に、第二のリング歯車87を配置し、この第二のリング歯車87と前記ケーシング60等の固定の部分との間に、前記高速用クラッチ29aを設けている。更に、上記第二のリング歯車87と上記第三の太陽歯車86との間に配置した復数組の遊星歯車88、89を、上記第二のキャリア85に回転自在に支持している。これら各遊星歯車88、89は、互いに噛合すると共に、上記第二のキャリア85の径方向に関して内側に設けた遊星歯車88は上記第三の太陽歯車86に、同じく外側に設けた遊星歯車89は上記第二のリング歯車87に、それぞれ噛合している。
【0063】
上述の様に構成する本例の無段変速装置の場合、入力軸1aから1対の入力側ディスク2a、2b、各パワーローラ6、6を介して一体型の出力側ディスク5aに伝わった動力は、前記中空回転軸77を通じて取り出される。そして、前記低速用クラッチ44aを接続し、前記高速用クラッチ29aの接続を断った状態では、前記トロイダル型無段変速ユニット48の変速比を変える事により、上記入力軸1aの回転速度を一定にしたまま、上記出力軸52の回転速度を、停止状態を挟んで正転、逆転に変換自在となる。即ち、この状態では、上記入力軸1aと共に正方向に回転する第一のキャリア79と、上記中空回転軸77と共に逆方向に回転する前記第一の太陽歯車78との差動成分が、前記第一のリング歯車83から、前記低速用クラッチ44a、前記第二のキャリア85を介して、上記出力軸52に伝達される。この状態では、上記トロイダル型無段変速ユニット48の変速比を所定値にする事で上記出力軸52を停止させられる他、このトロイダル型無段変速ユニット48の変速比を上記所定値から増速側に変化させる事により上記出力軸52を、車両を後退させる方向に回転させられる。これに対して、上記トロイダル型無段変速ユニット48の変速比を上記所定値から減速側に変化させる事により上記出力軸52を、車両を前進させる方向に回転させられる。
【0064】
更に、上記低速用クラッチ44aの接続を断ち、上記高速用クラッチ29aを接続した状態では、上記出力軸52を、車両を前進させる方向に回転させる。即ち、この状態では、上記入力軸1aと共に正方向に回転する第一のキャリア79と、上記中空回転軸77と共にこの第一のキャリア79と逆方向に回転する前記第一の太陽歯車78との差動成分に応じて回転する、前記第一の遊星歯車式変速ユニット49の遊星歯車80の回転が、別の遊星歯車82を介して、前記第二の遊星歯車式変速ユニット50の遊星歯車81に伝わり、前記第二の太陽歯車84を介して、前記伝達軸53を回転させる。そして、この伝達軸53の先端部に設けた第三の太陽歯車86と、この第三の太陽歯車86と共に前記第三の遊星歯車式変速ユニット51を構成する第二のリング歯車87及び遊星歯車88、89との噛合に基づき、前記第二のキャリア85及びこの第二のキャリア85に結合した上記出力軸52を、前進方向に回転させる。この状態では、上記トロイダル型無段変速ユニット48の変速比を増速側に変化させる程、上記出力軸52の回転速度を速くできる。
【0065】
図5は、上記トロイダル型無段変速ユニット48の変速比(減速比)と、無段変速装置全体としての速度比と、このトロイダル型無段変速機48を通過するトルク(通過トルク)との関係の1例を示している。図5の左側の縦軸は、上記トロイダル型無段変速ユニット48の変速比を、同じく右側の縦軸は通過トルクを、同じく横軸は無段変速装置全体としての速度比を、それぞれ表している。尚、この横軸は、上記トロイダル型無段変速機48の入力軸1aを4500min−1 で回転させた場合の車速として表している。又、図5の実線aが、上記トロイダル型無段変速ユニット48の変速比と無段変速装置全体としての速度比との関係を表している。この様な図5の実線aから明らかな通り、前記低速用クラッチ44aを接続し、前記高速用クラッチ29aの接続を断った状態で、上記トロイダル型無段変速ユニット48の変速比を0.6程度とする事により、上記入力軸1aを回転させた状態のまま、前記出力軸52を停止させる事ができる。又、上記トロイダル型無段変速ユニット48の変速比を、0.6程度を境にして変化させる事により、車両を前進或は後退させる事ができる。更に、上記トロイダル型無段変速ユニット48の変速比が2.2〜2.3程度を境に、上記低速用クラッチ44aの接続を断ち、上記高速用クラッチ29aを接続した状態で、上記トロイダル型無段変速ユニット48の変速比を増速側に変化させる事により、車両の速度を速くできる。尚、無段変速装置全体としての速度比が大きい場合(車速が0に近い場合)には、エンジンの出力を低くして、駆動輪に過大な(スリップを生じる程の)トルクが加わらない様にしている。
【0066】
上述の様な無段変速装置の作動時に上記トロイダル型無段変速ユニット48の通過トルクは、図5に破線b 、b で示す様に変化する。この通過トルクを表す曲線b 、b の不連続部は、上記低速用クラッチ44aと上記高速用クラッチ29aとの断接により、高速モードと低速モードとの切り換えを行なう事に伴って生じる。そして、上記不連続部では、上記トロイダル型無段変速ユニット48を通過するトルクの大きさ及び方向が急変動する。そして、この通過トルクの急変動に伴って、前述した様なオーバシュート、並びにこのオーバシュートに基づく、前記押圧装置23aによる押圧力の変化が発生する。又、前記ロッド17aを介して前記プリセスカム18を支持した前記トラニオン7aの弾性変形に伴って、前述の特許文献6に記載された様な、不必要な変速比の変動が生じ易くなる。尚、上記押圧力の変化や不必要な変速比の変動に結び付く通過トルクの変動は、上記高速モードと低速モードとの切り換えの他、アクセルペダルの急激な踏み込み、或は急なアクセルペダルの踏み込み停止に伴うエンジンブレーキの急作動によっても生じる。
【0067】
これに対して本例の場合には、上記押圧装置23aに導入する油圧を制御する事により、上記オーバシュートに基づく上記押圧力の変化を抑えている。即ち、前述の図11(A)に示す様に、上記通過トルク(の絶対値)が急増する際には、上記押圧装置23aに導入する油圧を一定としたままでは、この押圧装置23aの油圧室90内の油圧が、一時的に低下する。そして、この押圧装置23aの押圧力が一時的に低下して、前記トラクション部で過度の滑りが発生する可能性が大きくなる。この為に本例の場合には、上記通過トルクが急増する際に上記油圧室90内に導入する油圧信号を一時的に、図6(A)の(b)に示す様に、上記通過トルクに見合う値に比べて高くする(高い油圧を導入すべき指令を出す)。尚、実際の場合に上記油圧室90内に導入する油圧は、上記通過トルクが大きくなる程高くする。但し、通過トルクの変動に伴う油圧変動と上記オーバシュートに基づく油圧変動とを合わせて説明すると複雑になる。そこで、説明を簡略化して分かり易くする為、この通過トルクが変化した場合でも、上記油圧室90内に一定圧の油圧を導入したままに維持すると仮定して説明する。
【0068】
上記低速モードから高速モードへの切り換えにより、或はアクセルペダルの急激な踏み込みにより、上記通過トルクが、図6(A)(B)の(a)に示す様に急増する。尚、図6は模式図である為、オーバシュート等、実際に通過トルクの急増時に生じる細かい変動は描いていない。従来構造の如く、上記オーバシュートに基づく油圧変動を考慮する事なく、図6(B)の(b)に示す様に、上記油圧室90内に導入する油圧を一定のままとする信号を出し続けた場合にこの油圧室90内の油圧は、図6(B)の(c)に示す様に、一時的に低下する。実際の場合には、通過トルクの増大に伴って上記油圧室90内に導入する油圧も高くなるが、上記オーバシュートに基づく油圧変動により、必要とする油圧よりも低くなる。この結果、前記トラクション部で過度の滑りが発生する可能性が大きくなる。
【0069】
これに対して本例の場合には、図6(A)の(b)に示す様に、上記通過トルクが急増した場合に、図6(A)の(b)に示す様に、上記油圧室90内に導入する油圧を一時的に上昇させる信号を出す。この結果、この信号に基づく油圧上昇分と、上記オーバシュートに基づく油圧低下分とが相殺されて、上記油圧室90内の油圧は、図6(A)の(c)に示す様に一定のままとなる。実際の場合には、上記オーバシュートに基づく油圧低下を補償しつつ、通過トルクの増大に伴って上記油圧室90内に導入する油圧が高くなる。この結果、上記トラクション部の面圧が適正になり、このトラクション部で過度の滑りが発生する事がなくなる。
【0070】
更に、本例の無段変速装置の場合には、前述した様に、変速比制御弁12のスプール15aを変位させる為のプリセスカム18とリンク腕19aとの位置関係を工夫しているので、前記ロッド17aを介して前記プリセスカム18を支持した前記トラニオン7aの弾性変形に伴う、前記不必要な変速比の変動を低く抑える事ができる。即ち、前述した通り、前記トルク変動に伴う前記トラニオン7aの弾性変形によって上記プリセスカム18が変位した場合でも、この変位が上記リンク腕19aの変位に結び付きにくい為、上記スプール15aが不必要に変位する事を防止して、上記変速比の変動を抑える事ができる。
【0071】
尚、前述した説明から明らかな通り、本発明の様に、トルク変動時に押圧装置23aの油圧室90内に導入する油圧を一時的に高くして、トラクション部に過度の滑りが生じるのを防止するのは、トロイダル型無段変速ユニット48が減速状態で、且つ、通過トルク(の絶対値)が急増する場合に有効である。逆に言えば、通過トルク(の絶対値)が急減する場合や、トロイダル型無段変速ユニット48が増速状態にある場合には、前述の図11(B)或は図14に示す様に、過度の滑りの原因となる様な押圧力の低下は生じない。但し、この様な場合でも、トルク変動時に油圧室90内に導入する油圧を一時的に高くする{或は図11(B)の場合には一時的に低くする}制御を行なう事は自由である。例えば、前述の図10に示した様な、パワースプリット型の無段変速装置の場合、高速用クラッチ29と低速用クラッチ44との切り換えを、トロイダル型無段変速機24が最大増速状態にある場合に行なう。この様な構造で、上記両クラッチ29、44の切り換え時に、押圧装置23aの油圧室46内に導入する油圧を一時的に高くすれば、この押圧装置23aが発生する押圧力をより安定させて、無段変速装置の伝達効率及び耐久性の向上に寄与できる。
【0072】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、トルクの急変動時にトラクション部で過度の滑りが発生する事を防止して、優れた伝達効率及び耐久性を有する、トロイダル型無段変速機及び無段変速装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す断面図。
【図2】図1の拡大A−A断面図。
【図3】同拡大B−B断面図。
【図4】一部を省略して示す底面図。
【図5】無段変速装置全体としての速度比とトロイダル型無段変速機に加わるトルクとトロイダル型無段変速機の変速比との関係を示す線図。
【図6】通過トルクの急上昇時の押圧装置の油圧制御を説明する為の線図。
【図7】トロイダル型無段変速機の従来構造の1例を示す断面図。
【図8】
図7のC−C断面図。
【図9】
図7のD−D断面図。
【図10】
トロイダル型無段変速機を組み込んだ無段変速装置の1例を示す略断面図。
【図11】
トロイダル型無段変速機を減速状態として、このトロイダル型無段変速機への
入力トルクを急変動させた場合に於ける、出力トルクと油圧式の押圧装置の押圧
力との変化を示す線図。
【図12】
トロイダル型無段変速機の変速比が通過トルクの変動に伴って変化する状況を
示す線図。
【図13】
構成各部材の弾性変形に伴って押圧力が変化する理由を説明する為の、押圧装
置部分の断面図。
【図14】
トロイダル型無段変速機を増速状態として、このトロイダル型無段変速機への
入力トルクを急変動させた場合に於ける、出力トルクと油圧式の押圧装置の押圧
力との変化を示す線図。
【符号の説明】
1、1a 入力軸
2、2a、2b 入力側ディスク
3 ボールスプライン
4 出力歯車
5、5a 出力側ディスク
6 パワーローラ
7、7a トラニオン
8、8a 支持軸
9 枢軸
10 アクチュエータ
11 支持板
12 変速比制御弁
13 ステッピングモータ
14 スリーブ
15、15a スプール
16 ピストン
17、17a、17b ロッド
18 プリセスカム
19、19a リンク腕
20 同期ケーブル
21 カム面
22 駆動軸
23、23a 押圧装置
24 トロイダル型無段変速機
25 遊星歯車式変速機
26 リング歯車
27 支持板
28 伝達軸
29、29a 高速用クラッチ
30 エンジン
31 クランクシャフト
32 発進クラッチ
33 出力軸
34 太陽歯車
35 遊星歯車
36a、36b 遊星歯車素子
37 キャリア
38 動力伝達機構
39 伝達軸
40a、40b スプロケット
41 チェン
42 第一の歯車
43 第二の歯車
44、44a 低速用クラッチ
45 後退用クラッチ
46 油圧室
47 給油通路
48 トロイダル型無段変速ユニット
49 第一の遊星歯車式変速ユニット
50 第二の遊星歯車式変速ユニット
51 第三の遊星歯車式変速ユニット
52 出力軸
53 伝達軸
54 折れ曲がり壁部
55 連結部材
56 ねじ
57 スラスト玉軸受
58 スラストアンギュラ玉軸受
59a、59b 支持板
60 ケーシング
61 アクチュエータボディ
62 支柱
63a、63b 支持ポスト部
64 支持環部
65 ボルト
66 連結板
67 ボルト
68a、68b 段部
69 コネクティングロッド
70 天板部
71a、71b 位置決め凹部
72 位置決めスリーブ
73 センサ
74 駆動軸
75 前端壁
76 ギヤポンプ
77 中空回転軸
78 第一の太陽歯車
79 第一のキャリア
80 遊星歯車
81 遊星歯車
82 遊星歯車
83 第一のリング歯車
84 第二の太陽歯車
85 第二のキャリア
86 第三の太陽歯車
87 第二のリング歯車
88 遊星歯車
89 遊星歯車
90 油圧室

Claims (5)

  1. それぞれが断面円弧形の凹面である互いの内側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、且つ互いに独立した回転自在に支持された入力側ディスク及び出力側ディスクと、これら入力側ディスク及び出力側ディスクの中心軸に対し捻れの位置にある枢軸を中心として揺動する複数の支持部材と、これら各支持部材に支持された状態で上記入力側ディスク及び出力側ディスク同士の間に挟持された、その周面を球状凸面としたパワーローラと、上記入力側ディスクと上記出力側ディスクとを互いに近づく方向に押圧する押圧装置とを備えたトロイダル型無段変速機に於いて、この押圧装置は、圧油の送り込みに伴って油圧に応じた押圧力を発生させる油圧式であり、上記入力側ディスクと上記出力側ディスクとの間で伝達するトルクの大きさに応じた押圧力を発生する他、このトルクの大きさとは独立した押圧力を、制御器からの信号に基づいて発生自在としたものであり、この制御器は、上記入力側ディスクと上記出力側ディスクとの間で伝達されるトルクの大きさが急変動する際に、当該時点でこれら両ディスク同士の間で伝達されるトルクに見合う押圧力を上記押圧装置に発生させる為に必要な油圧よりも大きな油圧を、この押圧装置の油圧室内に導入すべき旨の指令信号を発する機能を有するものである事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
  2. 入力側ディスクと出力側ディスクとの間の変速状態が減速状態でのトルク急変動時に制御器が、当該時点でこれら両ディスク同士の間で伝達されるトルクに見合う以上の押圧力を押圧装置に発生させられる大きさの油圧を油圧室内に導入すべき旨の指令を発する、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機。
  3. 入力側ディスクから出力側ディスクに伝達するトルクが急上昇する際に、当該時点でこれら両ディスク同士の間で伝達されるトルクに見合う以上の押圧力を押圧装置に発生させられる大きさの油圧を油圧室内に導入すべき旨の指令を発する、請求項1〜2の何れかに記載したトロイダル型無段変速機。
  4. 押圧装置の油圧室が入力側ディスクの外側面により軸方向片側面を仕切られており、この押圧装置は、上記油圧室内への油圧の導入により上記入力側ディスクを出力側ディスクに向け押圧するものである、請求項1〜3の何れかに記載したトロイダル型無段変速機。
  5. 駆動源につながってこの駆動源により回転駆動される入力軸と、この入力軸の回転に基づく動力を取り出す為の出力軸と、トロイダル型無段変速機と、遊星歯車機構と、上記入力軸に入力された動力をこのトロイダル型無段変速機を介して伝達する第一の動力伝達機構と、上記入力軸に入力された動力を上記トロイダル型無段変速機を介する事なく伝達する第二の動力伝達機構とを備え、上記遊星歯車機構は、少なくとも1個の太陽歯車とこの太陽歯車の周囲に配置した少なくとも1個のリング歯車との間に設けられ、この太陽歯車と同心に且つ回転自在に支持した少なくとも1個のキャリアに回転自在に支持された複数の遊星歯車を、上記太陽歯車とリング歯車とに噛合させて成るものであり、上記第一の動力伝達機構を通じて送られる動力と上記第二の動力伝達機構を通じて送られる動力とを、上記遊星歯車機構を構成する2個の部材に伝達自在とすると共に、他の部材に上記出力軸を接続自在としており、又、上記入力軸に入力された動力が上記第一の動力伝達機構と上記第二の動力伝達機構とを通じて上記遊星歯車機構に送られる状態を切り換えるモード切換手段を設けたものであり、上記トロイダル型無段変速機は請求項1〜4の何れかに記載したトロイダル型無段変速機である無段変速装置。
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