JP4010145B2 - トロイダル型無段変速機及び無段変速装置 - Google Patents

トロイダル型無段変速機及び無段変速装置 Download PDF

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    • F16H37/084Combinations of mechanical gearings, not provided for in groups F16H1/00 - F16H35/00 comprising essentially only toothed or friction gearings with a plurality of driving or driven shafts; with arrangements for dividing torque between two or more intermediate shafts with differential gearing with arrangements for dividing torque between two or more intermediate shafts, i.e. with two or more internal power paths at least one power path being a continuously variable transmission, i.e. CVT
    • F16H37/086CVT using two coaxial friction members cooperating with at least one intermediate friction member

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明に係るトロイダル型無段変速機及び無段変速装置は、自動車用の自動変速機を構成する変速ユニットとして利用する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用の自動変速機として、図3〜4に略示する様なトロイダル型無段変速機が、一部で実施されている。このトロイダル型無段変速機は、例えば実開昭62−71465号公報に開示されている様に、入力軸1と同心に入力側ディスク2を支持し、この入力軸1と同心に配置された出力軸3の端部に出力側ディスク4を固定している。トロイダル型無段変速機を納めたケーシング5(後述する図6〜7参照)の内側には、上記入力軸1並びに出力軸3に対し捻れの位置にある枢軸6、6を中心として揺動する、請求項1に記載した支持部材である、トラニオン7、7を設けている。
【0003】
これら各トラニオン7、7は、両端部外側面に上記枢軸6、6を、各トラニオン7、7毎に1対ずつ、互いに同心に設けている。これら各枢軸6、6の中心軸は、上記各ディスク2、4の中心軸と交差する事はないが、これら各ディスク2、4の中心軸の方向に対して直角方向若しくは直角に近い方向である、捩れの位置に存在する。又、上記各トラニオン7、7の中心部には変位軸8、8の基半部を支持し、上記枢軸6、6を中心として各トラニオン7、7を揺動させる事により、上記各変位軸8、8の傾斜角度の調節を自在としている。各トラニオン7、7に支持された変位軸8、8の先半部周囲には、それぞれパワーローラ9、9を回転自在に支持している。そして、これら各パワーローラ9、9を、上記入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4a同士の間に挟持している。
【0004】
上記入力側、出力側両ディスク2、4の互いに対向する内側面2a、4aは、それぞれ断面が、上記枢軸6を中心とする円弧若しくはこの様な円弧に近い曲線を回転させて得られる、断面円弧状の凹面をなしている。そして、球状凸面に形成された各パワーローラ9、9の周面9a、9aを、上記内側面2a、4aに当接させている。又、上記入力軸1と入力側ディスク2との間には、ローディングカム装置等の押圧装置10を設け、この押圧装置10によって上記入力側ディスク2を、出力側ディスク4に向け弾性的に押圧しつつ、回転駆動自在としている。
【0005】
上述の様に構成されるトロイダル型無段変速機の使用時、入力軸1の回転に伴って上記押圧装置10が上記入力側ディスク2を、上記複数のパワーローラ9、9に押圧しつつ回転させる。そして、この入力側ディスク2の回転が、上記複数のパワーローラ9、9を介して出力側ディスク4に伝達され、この出力側ディスク4に固定の出力軸3が回転する。
【0006】
入力軸1と出力軸3との回転速度を変える場合で、先ず入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、枢軸6、6を中心として前記各トラニオン7、7を揺動させ、各パワーローラ9、9の周面9a、9aが図3に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接する様に、各変位軸8、8を傾斜させる。
【0007】
反対に、増速を行なう場合には、上記各トラニオン7、7を揺動させ、各パワーローラ9、9の周面9a、9aが図4に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、各変位軸8、8を傾斜させる。各変位軸8、8の傾斜角度を図3と図4との中間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比を得られる。
【0008】
更に、図5〜6は、実願昭63−69293号(実開平1−173552号)のマイクロフィルムに記載された、より具体化されたトロイダル型無段変速機を示している。入力側ディスク2と出力側ディスク4とは円管状の入力軸11の周囲に、それぞれ回転自在に支持している。又、この入力軸11の端部と上記入力側ディスク2との間に、押圧装置10を設けている。一方、上記出力側ディスク4には、出力歯車12を結合し、これら出力側ディスク4と出力歯車12とが同期して回転する様にしている。
【0009】
1対のトラニオン7、7の両端部に互いに同心に設けた枢軸6、6は1対の支持板(ヨーク)13、13に、揺動並びに軸方向(図5の表裏方向、図6の上下方向)の変位自在に支持している。そして、上記各トラニオン7、7の中間部に、変位軸8、8の基半部を支持している。これら各変位軸8、8は、基半部と先半部とを互いに偏心させている。そして、このうちの基半部を上記各トラニオン7、7の中間部に回転自在に支持し、それぞれの先半部にパワーローラ9、9を回転自在に支持している。又、上記各トラニオン7、7の端部同士の間には同期ケーブル27を、襷掛けで掛け渡して、これら各トラニオン7、7同士の傾斜角度を、機械的に同期させる様にしている。
【0010】
尚、上記1対の変位軸8、8は、上記入力軸11に対して180度反対側位置に設けている。又、これら各変位軸8、8の基半部と先半部とが偏心している方向は、上記入力側、出力側両ディスク2、4の回転方向に関して同方向(図6で上下逆方向)としている。又、偏心方向は、上記入力軸11の配設方向に対してほぼ直交する方向としている。従って上記各パワーローラ9、9は、上記入力軸11の配設方向に関して若干の変位自在に支持される。
【0011】
又、上記各パワーローラ9、9の外側面と上記各トラニオン7、7の中間部内側面との間には、これら各パワーローラ9、9の外側面の側から順に、スラスト玉軸受14、14とスラストニードル軸受15、15とを設けている。このうちのスラスト玉軸受14、14は、上記各パワーローラ9、9に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ9、9の回転を許容する。又、上記各スラストニードル軸受15、15は、上記各パワーローラ9、9から上記各スラスト玉軸受14、14を構成する外輪16、16に加わるスラスト荷重を支承しつつ、上記各変位軸8、8の先半部及び上記外輪16、16が、これら各変位軸8、8の基半部を中心として揺動する事を許容する。更に、上記各トラニオン7、7は、油圧式のアクチュエータ(油圧シリンダ)17、17により、前記各枢軸6、6の軸方向に変位自在としている。
【0012】
上述の様に構成されるトロイダル型無段変速機の場合、入力軸11の回転は、押圧装置10を介して入力側ディスク2に伝えられる。そして、この入力側ディスク2の回転が、1対のパワーローラ9、9を介して出力側ディスク4に伝えられ、更にこの出力側ディスク4の回転が、出力歯車12より取り出される。
【0013】
入力軸11と出力歯車12との間の回転速度比を変える場合には、上記各アクチュエータ17、17により上記1対のトラニオン7、7を、それぞれ逆方向に、例えば、図6の右側のパワーローラ9を同図の下側に、同図の左側のパワーローラ9を同図の上側に、それぞれ変位させる。この結果、これら各パワーローラ9、9の周面9a、9aと上記入力側ディスク2及び出力側ディスク4の内側面2a、4aとの当接部に作用する、接線方向の力の向きが変化(当接部にサイドスリップが発生)する。そして、この力の向きの変化に伴って上記各トラニオン7、7が、支持板13、13に枢支された枢軸6、6を中心として、互いに逆方向に揺動する。この結果、前述の図3〜4に示した様に、上記各パワーローラ9、9の周面9a、9aと上記各内側面2a、4aとの当接位置が変化し、上記入力軸11と出力歯車12との間の回転速度比が変化する。
【0014】
上記各アクチュエータ17、17への圧油の給排状態は、これら各アクチュエータ17、17の数に関係なく1個の制御弁により行ない、何れか1個のトラニオン7の動きをこの制御弁にフィードバックする様にしている。この部分の構造に就いては、例えば特開平6−257661号公報に記載されて、従来から知られているが、後述する、従来の具体的構造の第2例を示す、図9により簡単に説明する。制御弁18は、ステッピングモータ19により軸方向(図9の左右方向)に変位させられるスリーブ20と、このスリーブ20の内径側に軸方向の変位自在に嵌装されたスプール21とを有する。上記何れか1個のトラニオン7に付属のロッド22の端部にはプリセスカム23を固定しており、このプリセスカム23とリンク腕24とを介して、上記ロッド22の動きを上記スプール21に伝達する、フィードバック機構を構成している。
【0015】
変速状態を切り換える際には、上記ステッピングモータ19により上記スリーブ20を、所定量だけ変位させて、上記制御弁18の流路を開く。この結果、上記各アクチュエータ17、17に圧油が、所定方向に送り込まれて、これら各アクチュエータ17、17が上記各トラニオン7、7を所定方向に変位させる。即ち、上記圧油の送り込みに伴ってこれら各トラニオン7、7が、前記各枢軸6、6の軸方向に変位しつつ、これら各枢軸6、6を中心に揺動する。そして、上記何れか1個のトラニオン7の動き(軸方向及び揺動変位)が、上記ロッド22の端部に固定したプリセスカム23とリンク腕24とを介して上記スプール21に伝達され、このスプール21を軸方向に変位させる。この結果、上記トラニオン7が所定量変位した状態で、上記制御弁18の流路が閉じられ、上記各アクチュエータ17、17への圧油の給排が停止される。従って、上記各トラニオン7、7の軸方向及び揺動方向の変位量は、上記ステッピングモータ19によるスリーブ20の変位量に応じただけのものとなる。
【0016】
尚、トロイダル型無段変速機による動力伝達時には、構成各部の弾性変形に基づいて、上記各パワーローラ9、9が上記入力軸11(図5〜6)の軸方向に変位する。そして、これら各パワーローラ9、9を支持した前記各変位軸8、8が、それぞれの基半部を中心として僅かに回動する。この回動の結果、上記各スラスト玉軸受14、14の外輪16、16の外側面と上記各トラニオン7、7の内側面とが相対変位する。これら外側面と内側面との間には、前記各スラストニードル軸受15、15が存在する為、この相対変位に要する力は小さい。
【0017】
更に、伝達可能なトルクを増大すべく、図7〜9に示す様に、入力軸11aの周囲に入力側ディスク2A、2Bと出力側ディスク4、4とを2個ずつ設け、これら2個ずつの入力側ディスク2A、2Bと出力側ディスク4、4とを動力の伝達方向に関して互いに並列に配置する、所謂ダブルキャビティ型の構造も、従来から知られている。この図7〜9に示した構造は、上記入力軸11aの中間部周囲に出力歯車12aを、この入力軸11aに対する回転を自在として支持し、この出力歯車12aの中心部に設けた円筒部の両端部に上記各出力側ディスク4、4を、スプライン係合させている。又、上記各入力側ディスク2A、2Bは、上記入力軸11aの両端部に、この入力軸11aと共に回転自在に支持している。この入力軸11aは、駆動軸25により、ローディングカム式の押圧装置10を介して回転駆動する。
【0018】
上述の様なダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機の場合には、入力軸11aから出力歯車12aへの動力の伝達を、一方の入力側ディスク2Aと出力側ディスク4との間と、他方の入力側ディスク2Bと出力側ディスク4との間との、2系統に分けて行なうので、大きな動力の伝達を行なえる。尚、この様なダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機の場合も、変速時には油圧式のアクチュエータ17、17により、トラニオン7、7を枢軸6、6の軸方向に変位させる。変速の為に上記各アクチュエータ17、17への圧油の給排を制御する為の制御弁18は、前述した通り、トロイダル型無段変速機全体で1個だけ設けている。そして、この1個の制御弁18により、複数のアクチュエータ17、17への圧油の給排を制御している。
【0019】
上述の様に構成され作用するトロイダル型無段変速機を実際の自動車用の無段変速機に組み込む場合、遊星歯車機構と組み合わせて無段変速装置を構成する事が、特開平1−169169号公報、同1−312266号公報、同10−196759号公報、同11−63146号公報等に記載されている様に、従来から提案されている。このうちのパワー・スプリット型と呼ばれる無段変速装置は、、低速走行時にはエンジンの駆動力をトロイダル型無段変速機のみで伝達し、高速走行時には上記駆動力を遊星歯車機構で伝達する事により、高速走行時に上記トロイダル型無段変速機に加わるトルクの低減を図る様にしている。この様に構成する事により、上記トロイダル型無段変速機の構成各部材の耐久性を向上させる事ができる。或は、トロイダル型無段変速機と遊星歯車機構とを組み合わせる事により、入力軸を回転させたまま出力軸を停止させる事を可能とした、ギヤード・ニュートラルと呼ばれる無段変速装置も、従来から知られている。
【0020】
図10は、上記各公報のうちの特開平10−196759号公報に記載された無段変速装置を示している。この無段変速装置は、駆動源であるエンジン26のクランクシャフト28の出力側端部(図10の右端部)と入力軸29の入力側端部(図10の左端部)との間に発進クラッチ30を設けている。又、上記入力軸29の回転に基づく動力を取り出す為の出力軸31を、この入力軸29と平行に配置している。そして、この入力軸29の周囲にトロイダル型無段変速機32を、上記出力軸31の周囲に遊星歯車機構33を、それぞれ設けている。
【0021】
上記トロイダル型無段変速機32の押圧装置10を構成するカム板34は、上記入力軸29の中間部で出力側端部寄り(図10の右寄り)部分に固定している。又、入力側ディスク2と出力側ディスク4とは、上記入力軸29の周囲に、ニードル軸受等、図示しない軸受により、この入力軸29に対し、互いに独立した回転を自在に支持している。そして、上記カム板34と入力側ディスク2とにより、上記押圧装置10を構成している。従って、上記入力側ディスク2は上記入力軸29の回転に伴い、上記出力側ディスク4に向け押圧されつつ回転する。又、上記入力側ディスク2の内側面2aと上記出力側ディスク4の内側面4aとの間に複数個のパワーローラ9、9を挟持して、前述の図5〜6に示した如きトロイダル型無段変速機32を構成している。尚、このトロイダル型無段変速機32は、図10及び図5〜6に示したシングルキャビティ型のものに限らず、前述した図7〜8に示す様なダブルキャビティ型のものでも良い。ダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機を組み込んだ無段変速装置は、前記特開平11−63146等に記載されている。
【0022】
又、上記遊星歯車機構33を構成する太陽歯車35は、前記出力軸31の入力側端部(図10の右端部)に固定している。従ってこの出力軸31は、上記太陽歯車35の回転に伴って回転する。この太陽歯車35の周囲にはリング歯車36を、上記太陽歯車35と同心に、且つ回転自在に支持している。そして、このリング歯車36の内周面と上記太陽歯車35の外周面との間に、複数個(通常は3〜4個)の遊星歯車組37、37を設けている。図示の例ではこれら各遊星歯車組37、37は、それぞれ1対ずつの遊星歯車38a、38bを組み合わせて成る。これら1対ずつの遊星歯車38a、38bは、互いに噛合すると共に、外径側に配置した遊星歯車38aを上記リング歯車36に噛合させ、内径側に配置した遊星歯車38bを上記太陽歯車35に噛合させている。この様に各遊星歯車組37、37をそれぞれ1対ずつの遊星歯車38a、38bにより構成するのは、上記リング歯車36と太陽歯車35との回転方向を一致させる為である。従って、他の構成部分との関係で、これらリング歯車36と太陽歯車35との回転方向を一致させる必要がなければ、単一の遊星歯車をこれらリング歯車36と太陽歯車35との両方に噛合させても良い。上述の様な遊星歯車組37、37は、キャリア39の片側面(図10の右側面)に回転自在に支持している。又、このキャリア39は、前記出力軸31の中間部に、回転自在に支持している。
【0023】
又、上記キャリア39と前記出力側ディスク4とを、第一の動力伝達機構40により、回転力の伝達を可能な状態に接続している。この第一の動力伝達機構40は、互いに噛合した第一、第二の歯車41、42により構成している。従って上記キャリア39は、上記出力側ディスク4の回転に伴って、この出力側ディスク4と反対方向に、上記第一、第二の歯車41、42の歯数に応じた速度で回転する。
【0024】
一方、前記入力軸29と上記リング歯車36とは、第二の動力伝達機構43により、回転力の伝達を可能な状態に接続自在としている。この第二の動力伝達機構43は、第一、第二のスプロケット44、45と、これら両スプロケット44、45同士の間に掛け渡したチェン46とにより構成している。即ち、第一のスプロケット44を上記入力軸29の出力側端部(図10の右端部)で前記カム板34から突出した部分に固定すると共に、第二のスプロケット45を伝達軸47の入力側端部(図10の右端部)に固定している。従ってこの伝達軸47は、上記入力軸29の回転に伴って、この入力軸29と同方向に、上記第一、第二のスプロケット44、45の歯数に応じた速度で回転する。
【0025】
又、無段変速装置は、請求項3に記載したモード切換手段を構成するクラッチ機構を備える。このクラッチ機構は、上記キャリア39と第二の動力伝達機構43の構成部材である上記伝達軸47との何れか一方のみを、上記リング歯車36に接続する。図10に示した構造の場合に、このクラッチ機構は、低速用クラッチ48と高速用クラッチ49とから成る。このうちの低速用クラッチ48は、上記キャリア39の外周縁部と上記リング歯車36の軸方向一端部(図10の左端部)との間に設けている。この様な低速用クラッチ48は、接続時には、前記遊星歯車機構33を構成する太陽歯車35とリング歯車36と遊星歯車組37、37との相対変位を阻止し、これら太陽歯車35とリング歯車36とを一体的に結合する。又、高速用クラッチ49は、上記伝達軸47と、上記リング歯車36に支持板50を介して固定した中心軸51との間に設けている。これら低速用クラッチ48と高速用クラッチ49とは、何れか一方のクラッチが接続された場合には、他方のクラッチの接続が断たれる。
【0026】
又、図10の例では、上記リング歯車36と、無段変速装置のハウジング(図示省略)等、固定の部分との間に、後退用クラッチ52を設けている。この後退用クラッチ52は、自動車を後退させるべく、前記出力軸31を逆方向に回転させる為に設けている。この後退用クラッチ52は、上記低速用クラッチ48と高速用クラッチ49との何れか一方が接続された状態では、接続が断たれる。又、この後退用クラッチ52が接続された状態では、上記低速用クラッチ48と高速用クラッチ49とは、何れも接続が断たれる。
【0027】
更に、図示の例では、上記出力軸31とデファレンシャルギヤ53とを、第三〜第五の歯車54〜56で構成する第三の動力伝達機構57により接続している。従って、上記出力軸31が回転すると、これら第三の動力伝達機構57及びデファレンシャルギヤ53を介して左右1対の駆動軸58、58が回転し、自動車の駆動輪を回転駆動させる。
【0028】
上述の様に構成する無段変速装置は、先ず、低速走行時には、上記低速用クラッチ48を接続すると共に、上記高速用クラッチ49及び後退用クラッチ52の接続を断つ。この状態で上記発進クラッチ30を接続し、前記入力軸29を回転させると、トロイダル型無段変速機32のみが、この入力軸29から上記出力軸31に動力を伝達する。この様な低速走行時に、入力側、出力側両ディスク2、4同士の間の変速比を変える際の作用は、前述の図5〜6に示したトロイダル型無段変速機単独の場合と同様である。勿論、この状態では、上記入力軸29と出力軸31との間の変速比、即ち、無段変速装置全体としての変速比は、トロイダル型無段変速機32の変速比に比例する。又、この状態では、このトロイダル型無段変速機32に入力されるトルクは、上記入力軸29に加えられるトルクに等しくなる。
【0029】
これに対して、高速走行時には、上記高速用クラッチ49を接続すると共に、上記低速用クラッチ48及び後退用クラッチ52の接続を断つ。この状態で上記発進クラッチ30を接続し、上記入力軸29を回転させると、この入力軸29から上記出力軸31には、前記第二の動力伝達機構43を構成する第一、第二のスプロケット44、45及びチェン46と前記遊星歯車機構33とが、動力を伝達する。
【0030】
即ち、上記高速走行時に上記入力軸29が回転すると、この回転は上記第二の動力伝達機構43並びに高速用クラッチ49を介して中心軸51に伝わり、この中心軸51を固定したリング歯車36を回転させる。そして、このリング歯車36の回転が複数の遊星歯車組37、37を介して太陽歯車35に伝わり、この太陽歯車35を固定した上記出力軸31を回転させる。上記リング歯車36が入力側となった場合に上記遊星歯車機構33は、上記各遊星歯車組37、37が停止している(太陽歯車35の周囲で公転しない)と仮定すれば、上記リング歯車36と太陽歯車35との歯数の比に応じた変速比で増速を行なう。但し、上記各遊星歯車組37、37は上記太陽歯車35の周囲を公転し、無段変速装置全体としての変速比は、これら各遊星歯車組37、37の公転速度に応じて変化する。そこで、上記トロイダル型無段変速機32の変速比を変えて、上記遊星歯車組37、37の公転速度を変えれば、上記無段変速装置全体としての変速比を調節できる。
【0031】
即ち、上記高速走行時に上記各遊星歯車組37、37が、上記リング歯車36と同方向に公転する。そして、これら各遊星歯車組37、37の公転速度が遅い程、上記太陽歯車35を固定した出力軸31の回転速度が速くなる。例えば、上記公転速度とリング歯車36の回転速度(何れも角速度)が同じになれば、上記リング歯車36と出力軸31の回転速度が同じになる。これに対して、上記公転速度がリング歯車36の回転速度よりも遅ければ、上記リング歯車36の回転速度よりも出力軸31の回転速度が速くなる。反対に、上記公転速度がリング歯車36の回転速度よりも速ければ、上記リング歯車36の回転速度よりも出力軸31の回転速度が遅くなる。
【0032】
従って、上記高速走行時には、前記トロイダル型無段変速機32の変速比を減速側に変化させる程、無段変速装置全体の変速比は増速側に変化する。この様な高速走行時の状態では、上記トロイダル型無段変速機32に、入力側ディスク2からではなく、出力側ディスク4からトルクが加わる(低速時に加わるトルクをプラスのトルクとした場合にマイナスのトルクが加わる)。即ち、前記高速用クラッチ49を接続した状態では、前記エンジン26から入力軸29に伝達されたトルクは、前記押圧装置10が前記入力側ディスク2を押圧する以前に、前記第二の動力伝達機構43を介して前記遊星歯車機構33のリング歯車36に伝達される。従って、入力軸29の側から上記押圧装置10を介して入力側ディスク2に伝達されるトルクは殆どなくなる。
【0033】
一方、上記第二の動力伝達機構43を介して上記遊星歯車機構33のリング歯車36に伝達されたトルクの一部は、前記各遊星歯車組37、37から、キャリア39及び第一の動力伝達機構40を介して出力側ディスク4に伝わる。この様に出力側ディスク4からトロイダル型無段変速機32に加わるトルクは、無段変速装置全体の変速比を増速側に変化させるべく、トロイダル型無段変速機32の変速比を減速側に変化させる程小さくなる。この結果、高速走行時に上記トロイダル型無段変速機32に入力されるトルクを小さくして、このトロイダル型無段変速機32の構成部品の耐久性向上を図れる。
【0034】
更に、自動車を後退させるべく、前記出力軸31を逆回転させる際には、前記低速用、高速用両クラッチ48、49の接続を断つと共に、前記後退用クラッチ52を接続する。この結果、上記リング歯車36が固定され、上記各遊星歯車組37、37が、このリング歯車36並びに前記太陽歯車35と噛合しつつ、この太陽歯車35の周囲を公転する。そして、この太陽歯車35並びにこの太陽歯車35を固定した出力軸31が、前述した低速走行時並びに上述した高速走行時とは逆方向に回転する。
【0035】
【先発明の説明】
上述した様な無段変速装置等に組み込んだ状態で使用される、前述の様なトロイダル型無段変速機は、図11に示す様に、プリセスカム23による制御弁18(図9)の開閉制御に拘らず、トロイダル型無段変速機32の構成部品の組み付け隙間や弾性変形等の影響により、入力トルクの変動に伴って変速比が不必要に変動する。この結果、エンジンの回転数が急激に変動し、運転者に違和感を与える可能性がある。特に、トロイダル型無段変速機を通じて送られるトルクが変動する場合に、上記変速比の不必要な変動が著しくなる事が、本発明者等の研究により分かった。
【0036】
この様な事情に鑑みて本発明者等は先に、上記組み付け隙間や弾性変形等が、入力トルクの変動に伴う不必要な変速比の変動に結び付かない様にする発明をなした(特願2001−289673号)。図12は、この先発明の実施の形態の1例を示している。この図12に示した無段変速装置は、ダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機32aと遊星歯車機構33とを組み合わせて成る。そして、前述の図10に示した従来の無段変速装置の場合と同様に、低速走行時には動力を上記トロイダル型無段変速機32aのみで伝達し、高速走行時には動力を、主として上記遊星歯車機構33により伝達すると共に、この遊星歯車機構33による変速比を、上記トロイダル型無段変速機32aの変速比を変える事により調節自在としている。
【0037】
この為に、上記トロイダル型無段変速機32aの中心部を貫通し、両端部に1対の入力側ディスク2A、2Bを支持した入力軸11aの先端部(図12の右端部)と上記遊星歯車機構33を構成するリング歯車36を支持した支持板50の中心部に固定した伝達軸47aとを、高速用クラッチ49を介して結合している。尚、上記1対の入力側ディスク2A、2Bのうち、先端側(図12の右側)の入力側ディスク2Bは上記入力軸11aに対し、例えば前述の図7〜8に示した従来構造の場合と同様にして、この入力軸11aと同期した回転並びにこの入力軸11aの軸方向に関する実質的な移動を阻止した状態で支持している。これに対して基端側(図12の左側)の入力側ディスク2Aは上記入力軸11aに対し、例えばやはり図7〜8に示した従来構造の場合と同様にして、この入力軸11aと同期した回転並びにこの入力軸11aの軸方向に関する移動自在に支持している。
【0038】
又、駆動源であるエンジン26のクランクシャフト28の出力側端部(図12の右端部)と上記入力軸11aの入力側端部(=基端部=図12の左端部)との間に、発進クラッチ30と油圧式の押圧装置59とを、動力の伝達方向に関して互いに直列に設けている。この押圧装置59は、シリンダ60内に上記基端側の入力側ディスク2Aを油密に、且つ回転力の伝達を自在に嵌装する事により構成している。この為に、例えば、上記入力側ディスク2Aの外周縁部を上記シリンダ60を構成する周壁部61の内周面に油密に且つ軸方向の変位自在に、図示しないOリング等のシールリングを介して摺接すると共に、上記入力側ディスク2Aと上記シリンダ60との間に動力伝達機構を設ける。この様な動力伝達機構としては、例えば油密保持の為のシール構造に影響を及ぼさない部分に設けたキー係合部、或は、上記シリンダ60の中心部に固定した図示しないスプライン軸と上記入力側ディスク2A或は上記入力軸11aの基端中心部に形成した図示しないスプライン孔とのスプライン係合部等、適宜の構造を採用できる。何れにしても、上記シリンダ60内へは、図示しない制御器の信号に基づき、所望の油圧を導入自在としている。
【0039】
又、上記入力軸11aの回転に基づく動力を取り出す為の出力軸31を、この入力軸11aと同心に配置している。そして、この出力軸31の周囲に前記遊星歯車機構33を設けている。この遊星歯車機構33を構成する太陽歯車35は、上記出力軸31の入力側端部(図12の左端部)に固定している。従ってこの出力軸31は、上記太陽歯車35の回転に伴って回転する。この太陽歯車35の周囲には前記リング歯車36を、上記太陽歯車35と同心に、且つ回転自在に支持している。そして、このリング歯車36の内周面と上記太陽歯車35の外周面との間に、それぞれが1対ずつの遊星歯車38a、38bを組み合わせて成る、複数個の遊星歯車組37、37を設けている。そして、これら1対ずつの遊星歯車38a、38bは、互いに噛合すると共に、外径側に配置した遊星歯車38aを上記リング歯車36に噛合させ、内径側に配置した遊星歯車38bを上記太陽歯車35に噛合させている。この様な遊星歯車組37、37は、キャリア39の片側面(図12の左側面)に回転自在に支持している。又、このキャリア39は、上記出力軸31の中間部に、回転自在に支持している。
【0040】
又、上記キャリア39と前記トロイダル型無段変速機32aを構成する1対の出力側ディスク4、4とを、第一の動力伝達機構40aにより、回転力の伝達を可能な状態に接続している。この第一の動力伝達機構40aは、上記入力軸11a及び上記出力軸31と平行な伝達軸62と、この伝達軸62の一端部(図12の左端部)に固定したスプロケット63aと上記各出力側ディスク4、4に固定したスプロケット63bとの間に掛け渡したチェン64と、上記伝達軸62の他端(図12の右端)と上記キャリア39とにそれぞれ固定されて互いに噛合した第一、第二の歯車41、42とにより構成している。従って上記キャリア39は、上記各出力側ディスク4、4の回転に伴って、これら出力側ディスク4、4と反対方向に、上記第一、第二の歯車41、42の歯数に応じた速度で回転する。尚、これは、上記1対のスプロケット63a、63bの歯数が互いに同じ場合である。
【0041】
一方、上記入力軸11aと上記リング歯車36とは、この入力軸11aと同心に配置された別の伝達軸47aを介して、回転力の伝達を可能な状態に接続自在としている。この伝達軸47aと上記入力軸11aとの間には、前記高速用クラッチ49を、これら両軸47a、11aに対し直列に設けている。従って図12に示した例の場合には、上記伝達軸47aが、請求項3に記載した第二の動力伝達機構に相当する。そして、上記高速用クラッチ49の接続時にこの伝達軸47aは、上記入力軸11aの回転に伴って、この入力軸11aと同方向に同速で回転する。
【0042】
又、無段変速装置は、請求項3に記載したモード切換手段を構成するクラッチ機構を備える。このクラッチ機構は、上記入力軸11aと上記キャリア39との何れか一方のみを、上記リング歯車36に接続する。図12に示した例の場合に、このクラッチ機構は、上記高速用クラッチ49と、上記キャリア39の外周縁部と上記リング歯車36の軸方向一端部(図12の右端部)との間に設けた低速用クラッチ48とから成る。これら低速用クラッチ48と高速用クラッチ49とは、何れか一方のクラッチが接続された場合には、他方のクラッチの接続が断たれる。又、図12の例では、上記リング歯車36と、無段変速装置のハウジング(図示省略)等、固定の部分との間に、後退用クラッチ52を設けている。この後退用クラッチ52は、上記低速用クラッチ48と高速用クラッチ49との何れか一方が接続された状態では、接続が断たれる。又、この後退用クラッチ52が接続された状態では、上記低速用クラッチ48と高速用クラッチ49とは、何れも接続が断たれる。
【0043】
上述の様に構成する先発明に係る無段変速装置は、先ず、低速走行時には、上記低速用クラッチ48を接続すると共に、上記高速用クラッチ49及び後退用クラッチ52の接続を断つ。この状態で上記発進クラッチ30を接続し、前記入力軸11aを回転させると、トロイダル型無段変速機32aのみが、この入力軸11aから上記出力軸31に動力を伝達する。この様な低速走行時には、それぞれ1対ずつの入力側ディスク2A、2Bと出力側ディスク4、4との間の変速比を、前述の図7〜9に示したトロイダル型無段変速機単独の場合と同様にして調節する。
【0044】
これに対して、高速走行時には、上記高速用クラッチ49を接続すると共に、上記低速用クラッチ48及び後退用クラッチ52の接続を断つ。この状態で上記発進クラッチ30を接続し、上記入力軸11aを回転させると、この入力軸11aから上記出力軸31には、前記伝達軸47aと前記遊星歯車機構33とが、動力を伝達する。即ち、上記高速走行時に上記入力軸11aが回転すると、この回転は上記高速用クラッチ49及び伝達軸47aを介してリング歯車36に伝わる。そして、このリング歯車36の回転が複数の遊星歯車組37、37を介して太陽歯車35に伝わり、この太陽歯車35を固定した上記出力軸31を回転させる。この状態で、上記トロイダル型無段変速機32aの変速比を変える事により上記各遊星歯車組37、37の公転速度を変化させれば、上記無段変速装置全体としての変速比を調節できる。この点に関しては、前述の図10に示した従来構造の場合と同様である。
【0045】
更に、自動車を後退させるべく、前記出力軸31を逆回転させる際には、前記低速用、高速用両クラッチ48、49の接続を断つと共に、前記後退用クラッチ52を接続する。この結果、上記リング歯車36が固定され、上記各遊星歯車組37、37が、このリング歯車36並びに前記太陽歯車35と噛合しつつ、この太陽歯車35の周囲を公転する。そして、この太陽歯車35並びにこの太陽歯車35を固定した出力軸31が、前述した低速走行時並びに上述した高速走行時とは逆方向に回転する。
【0046】
上述の様な無段変速装置の運転時には、前述の図10に示した従来構造の場合と同様に、低速走行状態と高速走行状態との切り換え時に、上記トロイダル型無段変速機32aを介して伝達されるトルクが急激に変動する。そして、何らの対策も施さない場合には、前述した様に、このトルク変動に伴って上記トロイダル型無段変速機32aの変速比が不用意に変動してしまう。この様な、トルク変動時に於けるトロイダル型無段変速機32aの変速比の不用意な変動を抑えるべく、先発明の場合には、前記押圧装置59として、前述した様な構成を有し、前記1対の入力側ディスク2A、2Bと前記1対の出力側ディスク4、4との間で伝達するトルクの大きさに応じた押圧力を発生させる他、このトルクの大きさとは独立した押圧力を、図示しない制御器からの信号に基づいて発生自在としたものを使用している。
【0047】
しかも、上記無段変速装置に組み込んだ、先発明のトロイダル型無段変速機32aの場合には、上記制御器は、1対の入力側ディスク2A、2Bと上記1対の出力側ディスク4、4との間で伝達するトルクの大きさが変動する際に、上記押圧装置59に、大きな押圧力を発生させ続ける。即ち、図12に示した無段変速装置の運転時に伴う低速走行状態と高速走行状態との切り換え時には、上記トロイダル型無段変速機32aを通じて流れるトルクの大きさ(方向)が急激に変動する。又、この様なトルクの変動は、エンジンの出力の急激な変動によっても生じる。この様な変動に対して何らの対策も施さない場合には、前述した様に、上記トロイダル型無段変速機32aの変速比が不用意に変動する。
【0048】
これに対して先発明のトロイダル型無段変速機32aの場合には、上述した様なトルクの変動の間中、この変動の前後での大きい方のトルクに相当する押圧力以上の押圧力を、上記押圧装置59に発生させ続ける。例えば、上記トロイダル型無段変速機32aを通過するトルクが100N・mから300N・mに急上昇する様な場合には、図示しない制御器が上記押圧装置59に、実際にトルクが増大する以前から(トルクが未だ100N・m程度であるうちから)、300N・m以上のトルクの伝達を行なえる当接圧を確保するのに十分な押圧力を発生させる。反対に、上記トルクが300N・mから100N・mに急減する様な場合には、図示しない制御器が上記押圧装置59に、実際にトルクが低下し切った(トルクが100N・m程度になった)後までも、300N・m以上のトルクの伝達を行なえる当接圧を確保するのに十分な押圧力を発生させ続ける。そして、何れの場合も、上記トロイダル型無段変速機32aを通過するトルクが安定した後、上記押圧装置59による押圧力を、実際にこのトロイダル型無段変速機32aを通過するトルクに見合ったものにする。
【0049】
上述の様に構成する先発明のトロイダル型無段変速機によれば、伝達するトルクが変動した際に於ける変速比の変動を抑え、運転者に与える違和感を低減若しくは解消できる。即ち、図12に示した様な無段変速装置に組み込んだ先発明のトロイダル型無段変速機32aの場合には、伝達するトルクが変動した場合でも、上記押圧装置59が前記各入力側ディスク2A、2Bを前記各出力側ディスク4、4に向け押圧する力の大きさは変化しない。この為、トルク変動に基づく構成各部の変位量変化に基づく変速比のぶれを抑えて、トルク変動時に変速比が不必要に変化する事を抑える事ができる。
【0050】
【発明が解決しようとする課題】
上述の様な先発明に係るトロイダル型無段変速機及びこれを組み込んだ無段変速装置の場合、トルク変動時に変速比が不必要に変化する事を抑える事ができるが、油圧センサの故障時に、更に重大な故障が発生するのを防止する面からは、改良すべき点がある。即ち、図12に示した先発明に係る構造で、押圧装置59により一方の入力側ディスク2Aを他方の入力側ディスク2Bに押圧する力を所望値に規制する為には、上記押圧装置59を構成するシリンダ60内に導入する油圧を測定する為の油圧センサを使用する。この油圧センサが故障した場合、何らの対策も講じていない場合には、上記押圧装置59が上記一方の入力側ディスク2Aを押圧する力が不足する。
【0051】
即ち、何らの対策も講じていない場合には、故障に伴って油圧センサの出力信号が図13(A)に示す様に消失した場合に、伝達トルクが同図(B)に示す様にそのままであったとしても、上記押圧装置59の押圧力が同図(C)に示す様に(付属の予圧ばねの弾力だけに)低下する。そして、入力側、出力側各ディスク2A、2B、4の内側面2a、4aと各パワーローラ9、9の周面9a、9a(図8参照)との当接部(トラクション部)の当接圧が不足し、この当接部で著しい滑りが発生する。この結果、車両の運行が不能になるだけでなく、上記各面2a、4a、9aに、修理不能な程の、著しい損傷が発生する可能性がある。
【0052】
この場合に、トロイダル型無段変速機に組み込んだ油圧式の押圧装置に導入する油圧の制御方法として、特表平3−502597号公報に記載された方法を採用できれば、油圧センサの故障時にも、上記著しい滑りが発生する事を防止できる。即ち、上記公報に記載されている様に、パワーローラの支持部材(ハーフトロイダル型無段変速機の場合にはトラニオン)を変位させる為の油圧式のアクチュエータの高圧室側に導入するのと同じ油圧を、上記押圧装置内に導入する様に構成すれば、この押圧装置の断面積を適正にする限り、上記著しい滑りの発生を防止できる。
【0053】
但し、上記特表平3−502597号公報に記載された発明の場合、フルトロイダル型無段変速機を対象としており、本発明を表す図面に示した様な、ハーフトロイダル型無段変速機に適用する事は難しい。即ち、フルトロイダル型無段変速機の場合、押圧装置に必要とされる押圧力は、変速比に応じて変化し、減速側で大きく、増速側で小さくなる。そして、上記アクチュエータの高圧側の油圧は、大きなトラクション力を必要とする減速側で高くなり、小さなトラクション力で済む増速側で低くなる。この為、フルトロイダル型無段変速機の場合には、上記高圧側の油圧を上記押圧装置に導入する事で、必要な押圧力を得ると言った要求を満たす事ができる。これに対して、上記ハーフトロイダル型無段変速機の場合には、押圧力は変速比に拘らずほぼ一定で良いが、トラクション力は、減速側で大きくなり、増速側で小さくなる。従って、上記特表平3−502597号公報に記載された様に、アクチュエータの高圧側の油圧を押圧装置に導入すると言った発明を、ハーフトロイダル型無段変速機に適用する事は難しい。
【0054】
しかも、上記先発明に係るトロイダル型無段変速機及びこれを組み込んだ無段変速装置の様に、上記押圧装置による押圧力を、伝達すべきトルクと関係ない値にも調節する必要がある場合には、上記特表平3−502597号公報に記載された制御方法を採用する事は不可能になる。
本発明のトロイダル型無段変速機及び無段変速装置は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0055】
【課題を解決するための手段】
本発明のトロイダル型無段変速機及び無段変速装置のうち、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機は、前述した従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様に、第一ディスク及び第二ディスクと、複数の支持部材と、変位軸と、パワーローラと、押圧装置とを備える。
このうちの第一ディスク及び第二ディスクは、それぞれが断面円弧形の凹面である互いの内側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、且つ互いに独立した回転自在に支持されている。
又、上記各支持部材は、上記第一ディスク及び第二ディスクの中心軸に対し捻れの位置にある枢軸を中心として揺動する。
又、上記各変位軸は、上記各支持部材に支持されている。
又、上記各パワーローラは、上記各変位軸の周囲に回転自在に支持された状態で、上記第一ディスク及び第二ディスクの内側面同士の間に挟持されたもので、それぞれの周面を球状凸面としている。
更に、上記押圧装置は、上記第一ディスクを上記第二ディスクに向け押圧するものである。
特に、本発明のトロイダル型無段変速機に於いては、上記油圧制御装置は、上記油圧センサの故障時に、上記押圧装置に送り込む油圧の値を最大とする。尚、この場合に於ける油圧の最大値とは、トロイダル型無段変速機の運転時に発生する可能性があると考えられる範囲で設定される最大値の事を言い、一般的には、最大トルクの伝達時に必要とされる押圧力を得る為の油圧となる。
【0056】
又、請求項2に記載したトロイダル型無段変速機の場合には、前述した先発明の場合と同様に、上記押圧装置は、上記第一ディスクと上記第二ディスクとの間で伝達するトルクの大きさに応じた押圧力を発生する他、このトルクの大きさとは独立した押圧力を、制御器からの信号に基づいて発生自在としたものである。又、この制御器は、上記第一ディスクと上記第二ディスクとの間で伝達するトルクの大きさが変動する際に、この変動の間中、この変動の前後での大きい方のトルクに相当する押圧力以上の押圧力を上記押圧装置に発生させ続ける機能を有するものである。
【0057】
更に、請求項3に記載した無段変速装置の場合には、やはり前述した従来から知られている無段変速装置と同様に、駆動源につながってこの駆動源により回転駆動される入力軸と、この入力軸の回転に基づく動力を取り出す為の出力軸と、トロイダル型無段変速機と、遊星歯車機構と、上記入力軸に入力された動力をこのトロイダル型無段変速機を介して伝達する第一の動力伝達機構と、上記入力軸に入力された動力を上記トロイダル型無段変速機を介する事なく伝達する第二の動力伝達機構とを備える。
そして、上記遊星歯車機構は、太陽歯車とこの太陽歯車の周囲に配置したリング歯車との間に設けられ、この太陽歯車と同心に且つ回転自在に支持したキャリアに回転自在に支持された遊星歯車を、上記太陽歯車とリング歯車とに噛合させて成るものである。
又、上記第一の動力伝達機構を通じて送られる動力と上記第二の動力伝達機構を通じて送られる動力とを、上記太陽歯車と上記リング歯車と上記キャリアとのうちの2個の部材に伝達自在とすると共に、これら太陽歯車とリング歯車とキャリアとのうちの残りの1個の部材に上記出力軸を結合している。
又、上記入力軸に入力された動力が上記第一の動力伝達機構と上記第二の動力伝達機構とを通じて上記遊星歯車機構に送られる状態を切り換えるモード切換手段を設けている。
そして、このモード切換手段は、少なくとも上記第一の動力伝達機構のみで動力の伝達を行なう第一のモードと、この第一の動力伝達機構と上記第二の動力伝達機構との双方で動力の伝達を行なう第二のモードとの切換を行なうものである。
特に、請求項3に記載した無段変速装置の場合には、上記トロイダル型無段変速機は、請求項1又は請求項2に記載した様に、油圧センサの故障時に押圧装置に送り込む油圧の値を最大とする油圧制御装置を組み込んでいる。又、この押圧装置は、前述した先発明の場合と同様に、上記モード切り換え手段が上記第一のモードと上記第二のモードとを切り換える間中、この切換の前後での大きい方のトルクに相当する押圧力以上の押圧力を上記押圧装置に発生させ続けるものである。
【0058】
尚、請求項2及び請求項3に係る発明を実施する場合で、トルクが急激に変動する場合にトルクの変動幅が予測できる条件下では、この予測に基づき大きい方のトルクに応じた押圧力を発生させる。例えば、上述した様な無段変速装置の場合には、第一のモードと第二のモードと(低速⇔高速)のクラッチ切り換え時に、この切り換えの前後に於いて上記トロイダル型無段変速機に加わるトルクの大きさを予測できる。そこで、この様な場合には、クラッチ切り換えとアクセルセンサ等とからの信号による、この予測に基づいて、上記押圧装置に適切な押圧力(大きい方のトルクを伝達可能にする押圧力)を発生させる。これに対して、急加速時や急激なエンジンブレーキ作動時等、トルク変動の予測を行なえない場合には、上記押圧装置により、上記トロイダル型無段変速機が伝達可能なトルクの最大値(結合されるエンジンの最大トルク)に対応する押圧力(最大トルクの伝達を可能にする当接圧を得られる押圧力)を発生させる事が現実的である。
【0059】
この理由は、次の通りである。トルクが急減する場合には、急減する直前のトルクに見合う押圧力を発生させれば、必ずしも上記最大トルクに見合う押圧力を発生させなくても済む。これに対してトルクが急増する場合には、その後どこまでトルクが増大するかは、必ずしも分からない。急激なエンジブレーキの作動時も、トルクの伝達方向が異なるが、同様である。これに対して、変速比のぶれを有効に防止する為には、アクセルセンサ等によりトルク変動の予兆を検知した状態で制御器により、直ちに上記押圧力を増大させる必要がある。そこで、トルクの変動幅の予測ができない条件下では、上記制御器に、アクセルセンサ、第一のモードと第二のモードと(低速⇔高速)のクラッチ切り換え等、トルク変動の予兆を検知するセンサ若しくはトルク変動に結び付く制御が行なわれた事を検知後、直ちに最大トルクに見合う押圧力を発生させる機能を持たせれば、上記変速比のぶれを有効に防止できる。勿論、上記制御器は、トルク変動が収束した後は、伝達すべきトルクに応じた押圧力を発生させる、通常の制御に戻る。この様に通常の制御に戻る際のトルク変動は、変化の方向及び大きさが既知である。従って、この際のトルク変動に基づく変速比のぶれを抑える為の制御は容易である。
【0060】
【作用】
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機及び無段変速装置によれば、油圧センサが故障した場合にも、車両の運行を可能にし、しかも、この故障がより重大な故障に結び付く事を防止できる。即ち、上記油圧センサの故障時には油圧制御装置が、押圧装置に送り込む油圧の値を最大とする為、各ディスクの内側面と各パワーローラの周面との当接部の当接圧を十分に確保して、この当接部で著しい滑りが発生する事を防止する。この為、車両の運行を可能にすると共に、上記各面の損傷を防止できる。
この場合に、上記当接部の当接圧が必要以上に高くなる為、この当接部の転がり抵抗が増大して、トロイダル型無段変速機の伝達効率が悪化する他、上記各面の転がり疲れ寿命が低下する。但し、伝達効率の悪化は限られたものであり、トロイダル型無段変速機を搭載した車両の運行に大きな支障を来すものではない。又、上記転がり疲れ寿命の低下にしても限られたものであり、上記油圧センサを早期に修理すれば、トロイダル型無段変速機の耐久性を、実用上問題となる程に低下させる事はない。
従って、上記油圧センサの故障時に、上記押圧装置に送り込む油圧の値を最大とすると共に、運転席のパネル等に故障の発生を知らせる表示を出して、乗員に修理を促せば、上記油圧センサの故障が重大な故障に結び付く事を有効に防止できる。
【0061】
又、請求項2に記載した様に、トルク変動の間中、この変動の前後での大きい方のトルクに相当する押圧力以上の押圧力を発生させ続ければ、伝達するトルクが変動した際に於ける変速比の変動を抑え、運転者に与える違和感を低減若しくは解消できる。
即ち、請求項2に係るトロイダル型無段変速機の場合には、伝達するトルクが変動した場合でも、押圧装置が第一ディスクを第二ディスクに向け押圧する力の大きさは変化しない。この為、トルク変動に基づく構成各部の変位量変化に基づく変速比のぶれを抑えて、トルク変動時に変速比が不必要に変化する事を抑える事ができる。尚、押圧装置の押圧力を増大させる事に基づく変速比の変動は予測可能である為、修正は容易である。
更に、請求項3に記載した様に、モード切換の間中、この切換の前後での大きい方のトルクに相当する押圧力以上の押圧力を発生させ続けた場合も、トロイダル型無段変速機を組み込んだ無段変速装置の変速比の変動を抑え、運転者に与える違和感を低減若しくは解消できる。
【0062】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本発明の特徴は、油圧センサ65の故障時にも、入力側、出力側各ディスク2A、2B、4の内側面2a、4aと各パワーローラ9、9の周面9a、9a(図8参照)との当接部(トラクション部)の当接圧を確保し、この当接部で著しい滑りが発生する事を防止する為の部分にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図12に示した、先発明に係る無段変速装置と同様であるから、同等部分には同一符号を付して重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。
【0063】
油圧式の押圧装置59に所望値の油圧を導入する為に、油圧回路中に給油ポンプ66と油圧制御弁67とを、上流側から順番に、互いに直列に設けている。このうちの給油ポンプ66は、オイルタンク内に存在する作動油(実際の場合にはケーシングの底部に溜まっているトラクションオイル)を吸引し、加圧してから送り出す。又、上記油圧制御弁67は、油圧制御回路68からの指令信号に基づいて動作し、上記給油ポンプ66から吐出される圧油の圧力を所定値に制御する。上記押圧装置59のシリンダ60内には、上記油圧制御弁67により所望値に制御された油圧が導入される。そして、上記押圧装置59が、一方の入力側ディスク2Aを他方の入力側ディスク2Bに向け、所望の押圧力で押圧する。
【0064】
この様に上記シリンダ60内に導入する油圧を所望値に制御する為、このシリンダ60と上記油圧制御弁67とを結ぶ配管中に前記油圧センサ65を設置し、このシリンダ60内に導入する油圧を検出自在としている。そして、この油圧センサ65の検出信号を上記油圧制御回路68に入力する事により、上記シリンダ60内に導入する油圧を、フィードバック制御により所望値に制御自在としている。上記油圧制御回路68には、上記油圧センサ65の検出信号の他、トロイダル型無段変速機32aからの信号αと、エンジン等、変速装置外からの信号βとを入力している。上記油圧制御回路68は、これら両信号α、βに基づいて上記押圧装置59のシリンダ60内に導入すべき油圧を算出し、上記油圧センサ65の検出信号に基づいてフィードバック制御を行ないつつ、上記シリンダ60内に適正圧力の油圧を導入する。
【0065】
尚、上記両信号α、βのうち、トロイダル型無段変速機32aからの信号αとしては、このトロイダル型無段変速機32aの通過トルク、各パワーローラ9、9の傾転角、入力側、出力側各ディスク2A、2B、4等の各回転部分の回転速度等がある。又、エンジン等からの信号βとしては、スロットル開度やクランクシャフトの回転数等がある。更に、発進クラッチ30や、低速用、高速用、後退用各クラッチ48、49、52等の繋がり状態を表す信号、エンジンの出力マップに基づく、このエンジンの出力を表す信号等、上記トロイダル型無段変速機32aのトラクション部に必要とされる接触圧に関連する、各種状態を表す信号を、上記油圧制御回路68に適宜入力する。
【0066】
又、前記給油ポンプ66から吐出される圧油の一部は、第二の油圧制御弁69を介して、トラニオン7を変位させる為のアクチュエータ17の高圧室70と低圧室71とに導入している。これら高圧室70と低圧室71との圧力差は、上記トロイダル型無段変速機32aの通過トルクが大きくなる程大きくする。尚、この点に就いては、トロイダル型無段変速機として一般的な技術であって、前述の特表平3−502597号公報にも記載されており、本発明とは直接関係しない為、詳しい説明は省略する。
【0067】
特に本例の場合には、上記油圧制御回路68は、上記油圧センサ65の故障時に、前記押圧装置59に送り込む油圧の値を最大とする。この為に、上記油圧制御回路68に対する上記油圧センサ65の接続状態をb接点とし、この油圧センサ65の故障に基づいて、油圧を表す信号が上記油圧制御回路68に送り込まれなくなった場合に、この油圧制御回路68内の接点が閉じられる様にしている。この為、上記油圧センサ65の故障時に上記油圧制御回路68は、上記押圧装置59に送り込む油圧の値を最大とする。尚、この場合に於ける油圧の最大値とは、上記トロイダル型無段変速機32aを組み込んだ無段変速装置の運転時に、このトロイダル型無段変速機32aを通じて流れる可能性があると考えられる範囲で設定される最大値の事を言う。上記無段変速装置の場合、低速用クラッチ48を接続し、高速用、後退用両クラッチ49、52の接続を断った状態で、上記トロイダル型無段変速機32aによりエンジンの最大トルクを伝達する際に必要とされる押圧力を得る為の油圧となる。
【0068】
上述の様に構成する、本例の上記トロイダル型無段変速機32aを組み込んだ無段変速装置によれば、上記油圧センサ65が故障した場合にも、この無段変速装置を搭載した車両の運行を可能にすると共に、この故障がより重大な故障に結び付く事を防止できる。即ち、図2(A)に示す様に、上記油圧センサ65の故障に伴ってこの油圧センサ65からの信号が途絶えた場合に、この油圧センサ65からの信号を受け入れて開閉動作される、前記油圧制御回路68の接点(b接点)が閉じられたままとなる。この結果、同図(C)に示す様に、この油圧制御回路68が前記油圧制御弁67に対し、前記押圧装置59に送り込む油圧の値を最大とする。従って、同図(B)に示す様に、伝達トルクがそのままであったとしても、この押圧装置59が、上記最大トルクを伝達可能な力で、前記一方の入力側ディスク2Aを他方の入力側ディスク2Bに向け押圧する。この為、これら各ディスク2A、2Bの内側面2a、4aと前記各パワーローラ9、9の周面9a、9aとの当接部の当接圧を十分に確保して、この当接部で著しい滑りが発生する事を防止する。そして、上記車両の運行を可能にして、例えば修理工場まで自走により持ち込む事を可能にすると共に、上記各面2a、4a、9aの損傷を防止できる。
【0069】
この様に、上記油圧センサ65の故障に伴って上記押圧装置59が上記一方の入力側ディスク2Aを大きな力で押圧する場合には、上記最大トルクを伝達する場合を除き、上記当接部の当接圧が必要以上に高くなる。この為、この当接部の転がり抵抗が増大して、上記トロイダル型無段変速機32aを組み込んだ無段変速装置の伝達効率が悪化する他、上記各面2a、4a、9aの転がり疲れ寿命が低下する。但し、伝達効率の悪化は限られたものであり、上記トロイダル型無段変速機32aを組み込んだ無段変速装置を搭載した車両の運行に大きな支障を来すものではない。又、上記転がり疲れ寿命の低下にしても限られたものであり、上記油圧センサ65を早期に修理すれば、上記トロイダル型無段変速機32aの耐久性を、実用上問題となる程に低下させる事はない。
【0070】
但し、本発明によれば、上記油圧センサ65の故障時にも、上記トロイダル型無段変速機32aを組み込んだ無段変速装置は、通常と殆ど変わらない状態で作動する。言い換えれば、車両の性能に関して相当に敏感な運転者でない限り、上記押圧装置59による押圧力が大きくなったままの状態である事には気が付かない可能性がある。この為、そのまま対策を施さない場合には、上記トロイダル型無段変速機32aの耐久性を問題となる程に低下させる可能性がある。従って、本発明を実施する場合に好ましくは、上記油圧センサ65の故障時に、上記押圧装置59に送り込む油圧の値を最大とすると共に、運転席のパネル等に故障の発生を知らせる表示を出して、乗員に修理を促す。この様にすれば、上記油圧センサ65の故障が、上記各面2a、4a、9aの転がり疲れ寿命低下に基づく早期剥離等の重大な故障に結び付く事を有効に防止できる。
【0071】
尚、本発明は、図示の様な構造に限らず、トロイダル型無段変速機であれば、他の種々の構造を有するもので実施する事ができる。例えば、特開2000−220719号公報に記載されている様に、トロイダル型無段変速機と複数段の遊星歯車機構とを組み合わせた無段変速装置にも本発明を適用できる。この無段変速装置も、低速モードと高速モードとの2種類のモードを有し、モードを切り替える際に、前述の図1に示した無段変速装置の場合と同様にトルクの変動が生じる。従って、この様な無段変速装置に本発明を適用する事は有効である。
【0072】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用して、油圧センサの故障時にも、より重大な損傷が発生する事を防止できる。この為、特に面倒な制御を行なう事なく、しかも運転者に違和感を与えないトロイダル型無段変速機及び無段変速装置の信頼性を確保して、この様なトロイダル型無段変速機及び無段変速装置の実現に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する構造の1例を示す模式図。
【図2】本発明で、油圧センサが故障した場合に於ける、油圧センサの出力信号と、伝達すべきトルクと、押圧装置による押圧力とを示す線図。
【図3】トロイダル型無段変速機の基本構造を、最大減速時の状態で示す略側面図。
【図4】同じく最大増速時の状態で示す略側面図。
【図5】トロイダル型無段変速機の具体的構造の第1例を示す要部断面図。
【図6】図5のX−X断面図。
【図7】トロイダル型無段変速機の具体的構造の第2例を示す要部断面図。
【図8】図7のY−Y断面図。
【図9】同Z−Z断面図。
【図10】トロイダル型無段変速機を組み込んだ無段変速装置の1例を示す略断面図。
【図11】従来構造で、入力トルクの変動に対応して変速比がぶれる状態を示す線図。
【図12】先発明を実施する為の構造の1例を示す模式図。
【図13】先発明で何らの対策も施さなかった場合に、油圧センサが故障した場合に於ける、油圧センサの出力信号と、伝達すべきトルクと、押圧装置による押圧力とを示す線図。
【符号の説明】
1 入力軸
2、2A、2B 入力側ディスク
2a 内側面
3 出力軸
4 出力側ディスク
4a 内側面
5 ケーシング
6 枢軸
7 トラニオン
8 変位軸
9 パワーローラ
9a 周面
10 押圧装置
11、11a、11b 入力軸
12、12a、12b 出力歯車
13 支持板
14 スラスト玉軸受
15 スラストニードル軸受
16 外輪
17 アクチュエータ
18 制御弁
19 ステッピングモータ
20 スリーブ
21 スプール
22 ロッド
23 プリセスカム
24 リンク腕
25 駆動軸
26 エンジン
27 同期ケーブル
28 クランクシャフト
29 入力軸
30 発進クラッチ
31 出力軸
32、32a トロイダル型無段変速機
33 遊星歯車機構
34 カム板
35 太陽歯車
36 リング歯車
37 遊星歯車組
38a、38b 遊星歯車
39 キャリア
40、40a 第一の動力伝達機構
41 第一の歯車
42 第二の歯車
43 第二の動力伝達機構
44 第一のスプロケット
45 第二のスプロケット
46 チェン
47、47a 伝達軸
48 低速用クラッチ
49 高速用クラッチ
50 支持板
51 中心軸
52 後退用クラッチ
53 デファレンシャルギヤ
54 第三の歯車
55 第四の歯車
56 第五の歯車
57 第三の動力伝達機構
58 駆動軸
59 押圧装置
60 シリンダ
61 周壁部
62 伝達軸
63a、63b スプロケット
64 チェン
65 油圧センサ
66 給油ポンプ
67 油圧制御弁
68 油圧制御回路
69 第二の油圧制御弁
70 高圧室
71 低圧室

Claims (3)

  1. それぞれが断面円弧形の凹面である互いの内側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、且つ互いに独立した回転自在に支持された第一ディスク及び第二ディスクと、これら第一ディスク及び第二ディスクの中心軸に対し捻れの位置にある枢軸を中心として揺動する複数の支持部材と、これら各支持部材に支持された変位軸と、これら各変位軸の周囲に回転自在に支持された状態で、上記第一ディスク及び第二ディスクの内側面同士の間に挟持された、それぞれの周面を球状凸面としたパワーローラと、上記第一ディスクを上記第二ディスクに向け押圧する油圧式の押圧装置と、この押圧装置に導入する油圧を測定する油圧センサと、この油圧センサの測定値に基づいてこの押圧装置に導入する油圧を制御する油圧制御装置とを備えたトロイダル型無段変速機に於いて、この油圧制御装置は、上記油圧センサの故障時に、上記押圧装置に送り込む油圧の値を最大とする事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
  2. 油圧制御装置は、第一ディスクと第二ディスクとの間で伝達するトルクの大きさに応じた油圧を発生する他、このトルクの大きさとは独立した油圧を発生自在としたものであり、上記油圧制御装置は、上記第一ディスクと上記第二ディスクとの間で伝達するトルクの大きさが変動する際に、この変動の間中、この変動の前後での大きい方のトルクに相当する押圧力以上の押圧力を押圧装置に発生させる為の油圧をこの押圧装置に導入し続ける機能を有するものである、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機。
  3. 駆動源につながってこの駆動源により回転駆動される入力軸と、この入力軸の回転に基づく動力を取り出す為の出力軸と、トロイダル型無段変速機と、遊星歯車機構と、上記入力軸に入力された動力をこのトロイダル型無段変速機を介して伝達する第一の動力伝達機構と、上記入力軸に入力された動力を上記トロイダル型無段変速機を介する事なく伝達する第二の動力伝達機構とを備え、上記遊星歯車機構は、太陽歯車とこの太陽歯車の周囲に配置したリング歯車との間に設けられ、この太陽歯車と同心に且つ回転自在に支持したキャリアに回転自在に支持された遊星歯車を、上記太陽歯車とリング歯車とに噛合させて成るものであり、上記第一の動力伝達機構を通じて送られる動力と上記第二の動力伝達機構を通じて送られる動力とを、上記太陽歯車と上記リング歯車と上記キャリアとのうちの2個の部材に伝達自在とすると共に、これら太陽歯車とリング歯車とキャリアとのうちの残りの1個の部材に上記出力軸を結合しており、又、上記入力軸に入力された動力が上記第一の動力伝達機構と上記第二の動力伝達機構とを通じて上記遊星歯車機構に送られる状態を切り換えるモード切換手段を設けており、このモード切換手段は、少なくとも上記第一の動力伝達機構のみで動力の伝達を行なう第一のモードと、この第一の動力伝達機構と上記第二の動力伝達機構との双方で動力の伝達を行なう第二のモードとの切換を行なうものであり、上記トロイダル型無段変速機は請求項1又は請求項2に記載したトロイダル型無段変速機であって、このトロイダル型無段変速機に組み込んだ油圧制御装置は、上記モード切り換え手段が上記第一のモードと上記第二のモードとを切り換える間中、この切換の前後での大きい方のトルクに相当する押圧力以上の押圧力を上記押圧装置が発生する油圧をこの押圧装置に導入し続ける無段変速装置。
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