JP4196621B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明に係るトロイダル型無段変速機は、自動車用の自動変速装置を構成する変速ユニットとして利用する。特に本発明は、トラニオンの弾性変形に基づく変速比の変動を抑える事により、運転者に与える違和感を低減する事を目的とするものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用自動変速装置として、図16〜18に示す様なトロイダル型無段変速機を使用する事が研究され、一部で実施されている。このトロイダル型無段変速機は、ダブルキャビティ型と呼ばれるもので、入力軸1の両端部周囲に1対の入力側ディスク2、2を、ボールスプライン3、3を介して支持している。従ってこれら両入力側ディスク2、2は、互いに同心に、且つ、同期した回転を自在に支持されている。又、上記入力軸1の中間部周囲に出力歯車4を、この入力軸1に対する相対回転を自在として支持している。そして、この出力歯車4の中心部に設けた円筒部の両端部に出力側ディスク5、5を、それぞれスプライン係合させている。従ってこれら両出力側ディスク5、5は、上記出力歯車4と共に、同期して回転する。
【0003】
又、上記各入力側ディスク2、2と上記各出力側ディスク5、5との間には、それぞれ複数個ずつ(通常2〜3個ずつ)のパワーローラ6、6を挟持している。これら各パワーローラ6、6はそれぞれトラニオン7、7の内側面に、支持軸8、8及び複数の転がり軸受を介して、回転自在に支持されている。上記各トラニオン7、7は、それぞれの長さ方向(図16、18の上下方向、図17の表裏方向)両端部に、これら各トラニオン7、7毎に互いに同心に設けられた枢軸9、9を中心として揺動変位自在である。これら各トラニオン7、7を傾斜させる動作は、油圧式のアクチュエータ10、10により、これら各トラニオン7、7を上記枢軸9、9の軸方向に変位させる事で行なうが、総てのトラニオン7、7の傾斜角度は、油圧式及び機械式に互いに同期させる。
【0004】
即ち、前記入力軸1と出力歯車4との間の変速比を変えるべく、上記各トラニオン7、7の傾斜角度を変える場合には、上記各アクチュエータ10、10により上記各トラニオン7、7を、それぞれ逆方向に、例えば、図18の右側のパワーローラ6を同図の下側に、同図の左側のパワーローラ6を同図の上側に、それぞれ変位させる。この結果、これら各パワーローラ6、6の周面と上記各入力側ディスク2、2及び各出力側ディスク5、5の内側面との当接部に作用する、接線方向の力の向きが変化(当接部にサイドスリップが発生)する。そして、この力の向きの変化に伴って上記各トラニオン7、7が、支持板11、11に枢支された枢軸9、9を中心として、互いに逆方向に揺動(傾斜)する。この結果、上記各パワーローラ6、6の周面と上記入力側、出力側各ディスク2、5の内側面との当接位置が変化し、上記入力軸1と出力歯車4との間の回転変速比が変化する。
【0005】
上記各アクチュエータ10、10への圧油の給排状態は、これら各アクチュエータ10、10の数に関係なく1個の変速比制御弁12により行ない、何れか1個のトラニオン7の動きをこの変速比制御弁12にフィードバックする様にしている。この変速比制御弁12は、ステッピングモータ13により軸方向(図18の左右方向、図16の表裏方向)に変位させられるスリーブ14と、このスリーブ14の内径側に軸方向の変位自在に嵌装されたスプール15とを有する。又、上記各トラニオン7、7と上記各アクチュエータ10、10のピストン16、16とを連結するロッド17、17のうち、何れか1個のトラニオン7に付属のロッド17の端部にプリセスカム18を固定しており、このプリセスカム18とリンク腕19とを介して、上記ロッド17の動き、即ち、軸方向の変位量と回転方向との変位量との合成値を上記スプール15に伝達する、フィードバック機構を構成している。又、上記各トラニオン7、7同士の間には同期ケーブル20を掛け渡して、油圧系の故障時にも、これら各トラニオン7、7の傾斜角度を、機械的に同期させられる様にしている。
【0006】
変速状態を切り換える際には、上記ステッピングモータ13により上記スリーブ14を、得ようとする変速比に見合う所定位置にまで変位させて、上記変速比制御弁12の所定方向の流路を開く。この結果、上記各アクチュエータ10、10に圧油が、所定方向に送り込まれて、これら各アクチュエータ10、10が上記各トラニオン7、7を所定方向に変位させる。即ち、上記圧油の送り込みに伴ってこれら各トラニオン7、7が、前記各枢軸9、9の軸方向に変位しつつ、これら各枢軸9、9を中心に揺動する。そして、上記何れか1個のトラニオン7の動き(軸方向及び揺動変位)が、上記ロッド17の端部に固定したプリセスカム18とリンク腕19とを介して上記スプール15に伝達され、このスプール15を軸方向に変位させる。この結果、上記トラニオン7が所定量変位した状態で、上記変速比制御弁12の流路が閉じられ、上記各アクチュエータ10、10への圧油の給排が停止される。
【0007】
この際の上記トラニオン7及び上記プリセスカム18のカム面21の変位に基づく上記変速比制御弁12の動きは、次の通りである。先ず、上記変速比制御弁12の流路が開かれる事に伴って上記トラニオン7が軸方向に変位すると、前述した様に、パワーローラ6の周面と入力側ディスク2及び出力側ディスク5の内側面との当接部に発生するサイドスリップにより、上記トラニオン7が上記各枢軸9、9を中心とする揺動変位を開始する。又、上記トラニオン7の軸方向変位に伴って上記カム面21の変位が、上記リンク腕19を介して上記スプール15に伝わり、このスプール15が軸方向に変位して、上記変速比制御弁12の切り換え状態を変更する。具体的には、上記アクチュエータ10により上記トラニオン7を中立位置に戻す方向に、上記変速比制御弁12が切り換わる。
【0008】
従って上記トラニオン7は、軸方向に変位した直後から、中立位置に向け、逆方向に変位し始める。但し、上記トラニオン7は、中立位置からの変位が存在する限り、上記各枢軸9、9を中心とする揺動を継続する。この結果、上記プリセスカム18のカム面21の円周方向に関する変位が、上記リンク腕19を介して上記スプール15に伝わり、このスプール15が軸方向に変位する。そして、上記トラニオン7の傾斜角度が、得ようとする変速比に見合う所定角度に達した状態で、このトラニオン7が中立位置に復帰すると同時に、上記変速比制御弁12が閉じられて、上記アクチュエータ10への圧油の給排が停止される。この結果上記トラニオン7の傾斜角度が、前記ステッピングモータ13により前記スリーブ14を軸方向に変位させた量に見合う角度になる。
【0009】
上述の様なトロイダル型無段変速機の運転時には、エンジン等の動力源に繋がる駆動軸22により一方(図16、17の左方)の入力側ディスク2を、図示の様なローディングカム式の、或は油圧式の押圧装置23を介して回転駆動する。この結果、前記入力軸1の両端部に支持された1対の入力側ディスク2、2が、互いに近づく方向に押圧されつつ同期して回転する。そして、この回転が、上記各パワーローラ6、6を介して上記各出力側ディスク5、5に伝わり、前記出力歯車4から取り出される。
【0010】
上記入力軸1と出力歯車4との回転速度を変える場合で、先ず入力軸1と出力歯車4との間で減速を行なう場合には、上記各アクチュエータ10、10により上記各トラニオン7、7を上記各枢軸9、9の軸方向に移動させ、これら各トラニオン7、7を図17に示す位置に揺動させる。そして、上記各パワーローラ6、6の周面をこの図17に示す様に、上記各入力側ディスク2、2の内側面の中心寄り部分と上記各出力側ディスク5、5の内側面の外周寄り部分とにそれぞれ当接させる。
【0011】
反対に、増速を行なう場合には、上記各トラニオン7、7を図17と反対方向に揺動させ、上記各パワーローラ6、6の周面を、この図17に示した状態とは逆に、上記各入力側ディスク2、2の内側面の外周寄り部分と上記各出力側ディスク5、5の内側面の中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、上記各トラニオン7、7を傾斜させる。これら各トラニオン7、7の傾斜角度を中間にすれば、入力軸1と出力歯車4との間で、中間の変速比(速度比)を得られる。
【0012】
更に、上述の様に構成され作用するトロイダル型無段変速機24を、トロイダル型無段変速ユニットとして実際の自動車用の無段変速装置に組み込む場合、遊星歯車機構と組み合わせて無段変速装置を構成する事が、特許文献1〜4等に記載されている様に、従来から提案されている。
【0013】
図19は、上記各特許文献のうちの特許文献4に記載された無段変速装置を示している。この無段変速装置は、所謂パワー・スプリット型と呼ばれるもので、ダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機24と、請求項4に記載した遊星歯車機構に相当する遊星歯車式変速機25とを組み合わせて成る。そして、低速走行時には動力を上記トロイダル型無段変速機24のみで伝達し、高速走行時には動力を、主として上記遊星歯車式変速機25により伝達すると共に、この遊星歯車式変速機25による速度比を、上記トロイダル型無段変速機24の速度比を変える事により調節自在としている。
【0014】
この為に、上記トロイダル型無段変速機24の中心部を貫通し、両端部に1対の入力側ディスク2、2を支持した入力軸1の先端部(図19の右端部)と、上記遊星歯車式変速機25を構成するリング歯車26を支持した支持板27の中心部に固定した、請求項4に記載した第二の動力伝達経路に相当する伝達軸28とを、高速用クラッチ29を介して結合している。上記トロイダル型無段変速機24の構成は、次述する押圧装置23aの点を除き、前述の図16〜18に示した従来構造の場合と、実質的に同様である。
【0015】
又、駆動源であるエンジン30のクランクシャフト31の出力側端部(図19の右端部)と上記入力軸1の入力側端部(=基端部=図19の左端部)との間に、発進クラッチ32と油圧式の押圧装置23aとを、動力の伝達方向に関して互いに直列に設けている。又、上記入力軸1の回転に基づく動力を取り出す為の出力軸33を、上記入力軸1と同心に配置している。そして、この出力軸33の周囲に前記遊星歯車式変速機25を設けている。この遊星歯車式変速機25を構成する太陽歯車34は、上記出力軸33の入力側端部(図19の左端部)に固定している。従ってこの出力軸33は、上記太陽歯車34の回転に伴って回転する。この太陽歯車34の周囲には前記リング歯車26を、上記太陽歯車34と同心に、且つ、回転自在に支持している。そして、このリング歯車26の内周面と上記太陽歯車34の外周面との間に、複数の遊星歯車35、35を設けている。これら各遊星歯車35、35は、それぞれ1対ずつの遊星歯車素子36a、36bにより構成している。これら各遊星歯車素子36a、36bは、互いに噛合すると共に、外径側に配置した遊星歯車素子36aが上記リング歯車26に噛合し、内径側に配置した遊星歯車素子36bが上記太陽歯車34に噛合している。この様な各遊星歯車35、35は、キャリア37の片側面(図19の左側面)に回転自在に支持している。又、このキャリア37は、上記出力軸33の中間部に、回転自在に支持している。
【0016】
又、上記キャリア37と、前記トロイダル型無段変速機24を構成する1対の出力側ディスク5、5とを、請求項4に記載した第一の動力伝達経路に相当する動力伝達機構38により、回転力の伝達を可能な状態に接続している。この動力伝達機構38は、上記入力軸1及び上記出力軸33と平行な伝達軸39と、この伝達軸39の一端部(図19の左端部)に固定したスプロケット40aと、上記各出力側ディスク5、5に固定したスプロケット40bと、これら両スプロケット40a、40b同士の間に掛け渡したチェン41と、上記伝達軸39の他端(図19の右端)と上記キャリア37とにそれぞれ固定されて互いに噛合した第一、第二の歯車42、43とにより構成している。従って上記キャリア37は、上記各出力側ディスク5、5の回転に伴って、これら出力側ディスク5、5と反対方向に、上記第一、第二の歯車42、43の歯数及び上記1対のスプロケット40a、40bに応じた速度で回転する。
【0017】
一方、上記入力軸1と上記リング歯車26とは、この入力軸1と同心に配置された前記伝達軸28を介して、回転力の伝達を可能な状態に接続自在としている。この伝達軸28と上記入力軸1との間には、前記高速用クラッチ29を、これら両軸28、1に対し直列に設けている。従って、この高速用クラッチ29の接続時にこの伝達軸28は、上記入力軸1の回転に伴って、この入力軸1と同方向に同速で回転する。
【0018】
又、図19に示した無段変速装置は、請求項4に記載したモード切換手段を構成するクラッチ機構を備える。このクラッチ機構は、上記高速用クラッチ29と、上記キャリア37の外周縁部と上記リング歯車26の軸方向一端部(図19の右端部)との間に設けた低速用クラッチ44と、このリング歯車26と無段変速装置のハウジング(図示省略)等、固定の部分との間設けた後退用クラッチ45とから成る。各クラッチ29、44、45は、何れか1個のクラッチが接続された場合には、残り2個のクラッチの接続が断たれる。
【0019】
上述の様に構成する無段変速装置は、先ず、低速走行時には、上記低速用クラッチ44を接続すると共に、上記高速用クラッチ29及び後退用クラッチ45の接続を断つ。この状態で前記発進クラッチ32を接続し、前記入力軸1を回転させると、トロイダル型無段変速機24のみが、この入力軸1から上記出力軸33に動力を伝達する。この様な低速走行時には、それぞれ1対ずつの入力側ディスク2、2と、出力側ディスク5、5との間の速度比を、前述の図16〜18に示したトロイダル型無段変速機単独の場合と同様にして調節する。
【0020】
これに対して、高速走行時には、上記高速用クラッチ29を接続すると共に、上記低速用クラッチ44及び後退用クラッチ45の接続を断つ。この状態で上記発進クラッチ32を接続し、上記入力軸1を回転させると、この入力軸1から上記出力軸33には、前記伝達軸28と前記遊星歯車式変速機25とが、動力を伝達する。即ち、上記高速走行時に上記入力軸1が回転すると、この回転は上記高速用クラッチ29及び伝達軸28を介してリング歯車26に伝わる。そして、このリング歯車26の回転が複数の遊星歯車35、35を介して太陽歯車34に伝わり、この太陽歯車34を固定した上記出力軸33を回転させる。この状態で、上記トロイダル型無段変速機24の速度比を変える事により上記各遊星歯車35、35の公転速度を変化させれば、上記無段変速装置全体としての速度比を調節できる。
【0021】
即ち、上記高速走行時に上記各遊星歯車35、35が、上記リング歯車26と同方向に公転する。そして、これら各遊星歯車35、35の公転速度が遅い程、上記太陽歯車34を固定した出力軸33の回転速度が速くなる。例えば、上記公転速度とリング歯車26の回転速度(何れも角速度)が同じになれば、上記リング歯車26と出力軸33の回転速度が同じになる。これに対して、上記公転速度がリング歯車26の回転速度よりも遅ければ、上記リング歯車26の回転速度よりも出力軸33の回転速度が速くなる。反対に、上記公転速度がリング歯車26の回転速度よりも速ければ、上記リング歯車26の回転速度よりも出力軸33の回転速度が遅くなる。
【0022】
従って、上記高速走行時には、前記トロイダル型無段変速機24の速度比を減速側に変化させる程、無段変速装置全体の速度比は増速側に変化する。この様な高速走行時の状態では、上記トロイダル型無段変速機24に、入力側ディスク2、2からではなく、出力側ディスク5から力(トルク)が加わる(低速時に加わるトルクをプラスのトルクとした場合にマイナスのトルクが加わる)。即ち、前記高速用クラッチ29を接続した状態では、前記エンジン30から入力軸1に伝達されたトルクは、前記伝達軸28を介して前記遊星歯車式変速機25のリング歯車26に伝達される。従って、入力軸1の側から各入力側ディスク2、2に伝達されるトルクは殆どなくなる。
【0023】
一方、上記伝達軸28を介して前記遊星歯車式変速機25のリング歯車26に伝達されたトルクの一部は、前記各遊星歯車35、35から、キャリア37及び動力伝達機構38を介して各出力側ディスク5、5に伝わる。この様に各出力側ディスク5、5からトロイダル型無段変速機24に加わるトルクは、無段変速装置全体の速度比を増速側に変化させるべく、トロイダル型無段変速機24の速度比を減速側に変化させる程小さくなる。この結果、高速走行時に上記トロイダル型無段変速機24に入力されるトルクが小さくなる。
【0024】
更に、自動車を後退させるべく、前記出力軸33を逆回転させる際には、前記低速用、高速用両クラッチ44、29の接続を断つと共に、前記後退用クラッチ45を接続する。この結果、上記リング歯車26が固定され、上記各遊星歯車35、35が、このリング歯車26並びに前記太陽歯車34と噛合しつつ、この太陽歯車34の周囲を公転する。そして、この太陽歯車34並びにこの太陽歯車34を固定した出力軸33が、前述した低速走行時並びに上述した高速走行時とは逆方向に回転する。
【0025】
尚、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを組み合わせて成る無段変速装置としては、上述の様なパワー・スプリット型の他、ギヤード・ニュートラル型と呼ばれるものも、従来から知られている。このギヤード・ニュートラル型と呼ばれる無段変速装置の場合には、低速モード時には、トロイダル型無段変速機の変速比を変える事により、無段変速装置の入力軸の回転速度を一定としたまま、この無段変速装置の出力軸の回転速度を、停止状態を挟んで、前進状態と後退状態とで変換自在である。尚、この様なギヤード・ニュートラル型の無段変速装置の具体的構造に就いては、本発明の実施の形態を表した図1〜3により、後で詳しく説明する。
【0026】
上述した様な無段変速装置等に組み込んだ状態で使用される、前述の様なトロイダル型無段変速機は、前記プリセスカム18による前記変速比制御弁12の開閉制御に拘らず、変速比が不必要に変動して、エンジンの回転数が急激に変動し、運転者に違和感を与える可能性がある事が、特許文献5に記載されて、従来から知られている。この様な変速比の不必要な変動は、上記トロイダル型無段変速機を通過するトルクの変動時にこのトロイダル型無段変速機の構成部品の弾性変形等の影響により生じる事が、上記特許文献5に記載されている。この点に就いて、図20〜21により説明する。
【0027】
上記プリセスカム18は、何れかのトラニオン7にその基端部(図20の左端部)を結合固定したロッド17の先端部(図20の右端部)に支持固定している。又、上記プリセスカム18のカム面21は、このプリセスカム18の中心軸を中心とする部分螺旋状の傾斜面である。一方、トロイダル型無段変速機の運転時に上記トラニオン7は、その内側面側に支持したパワーローラ6から大きなスラスト荷重Fが加わる。このスラスト荷重に基づいて上記トラニオン7は、その内側面側が凹面となる方向に弾性変形し、この弾性変形に基づいて、上記トラニオン7の端部にその基端部を結合固定した上記ロッド17が、図20の矢印α方向に変位する。図20に示す様に、上記トラニオン7の両端部を支持した状態で上記パワーローラ6に加えるスラスト荷重を変化させつつ、上記ロッド17の先端部の変位量を変位センサ46により測定すると、図21に示す様な結果を得られる事が、上記特許文献5に記載されている。即ち、上記プリセスカム18を装着すべき、上記ロッド17の先端部は、上記スラスト荷重が大きくなる程、このプリセスカム18の直径方向に関する変位量が多くなる。尚、この様にロッド17の先端部が変位する方向は、上記パワーローラ6の回転中心軸である支持軸8の先半部(図20の上半部)の中心軸を含み、トラニオン7の両端部の枢軸9、9の中心軸に平行な仮想平面の面方向にほぼ一致する。
【0028】
この様なロッド17の先端部の変位に基づく変速比の変動を抑える事に就いて特に考慮しないと、アクセルのON・OFF等により、トロイダル型無段変速機に入力されるトルクが大きく変動した場合には、前述した様に変速比が不必要に変動する。そして、エンジンの回転数が急激に変動し、運転者に違和感を与える可能性がある。特に、前記図19に示す様な無段変速装置の場合には、低速モードと高速モードとの切換時に、トロイダル型無段変速機24に伝わるトルクの正負が切り換わる(動力の伝達方向が変化する)為、上述の様な不必要な変動が大きくなり易い。即ち、無段変速装置全体の変速比は、入力軸の回転速度と出力軸の回転速度とに基づいて、マイクロコンピュータを内蔵した制御器が適切に調節するが、上記トルク変動時にはこの制御器の制御が追い付かず、上記変速比が不必要に変動する。
【0029】
この様な原因で生じる、トロイダル型無段変速機の変速比の不必要な変動を抑える為に、上記特許文献5には、プリセスカムとリンク腕との当接部の位置を、このプリセスカムを設けたトラニオンの中心軸よりも入力側ディスク側に片寄せる構造が記載されている。この様な構造によれば、トルクの急激な変動に基づく変速比の変動を抑え、運転者に与える違和感を低減できる。即ち、プリセスカムとリンク腕との当接部の位置を、このプリセスカムを設けたトラニオンの中心軸よりも入力側ディスク側に片寄らせた場合には、上記当接部の位置を他の部分に設けた場合に比べて、上記変速比の変動を抑えられる。この為、上述の様に、変速比の変動を抑えて運転者に与える違和感の低減を図れる。
【0030】
【特許文献1】
特開平1−169169号公報
【特許文献2】
特開平1−312266号公報
【特許文献3】
特開平10−196759号公報
【特許文献4】
特開平11−63146号公報
【特許文献5】
特開2001−317601号公報
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献5に記載されている様に、プリセスカムとリンク腕との当接部の位置を、このプリセスカムを設けたトラニオンの中心軸よりも入力側ディスク側に片寄らせる事で、不必要な変速比の変動を抑えられるが、未だ改良の余地がある。即ち、単にリンク腕の設置位置を上記入力側ディスクの軸方向に変えただけでは、未だ図20の矢印α方向のプリセスカム18の変位の影響を十分に小さく抑える事は難しい。この為、未だ無段変速装置のモード切換時に、運転者に違和感を与える可能性がある。この点を確認する為に本発明者が行なったコンピュータ・シミュレーションの結果に就いて、図22〜29により説明する。
【0032】
このシミュレーションでは、特許文献5に記載されている図30の様に、プリセスカム18のカム面21とリンク腕19の先端との当接部(接触点)の位置xとこのプリセスカム18の中心軸とを結ぶ線イが、入力側ディスク2の中心軸ロと平行な場合に就いて検証した。具体的には、図16〜18に示す様なダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機を、後述する図1〜3に示す様なギヤード・ニュートラル型の無段変速装置に組み込み、このトロイダル型無段変速機を通過するトルクを短時間(0.1秒)の間に変動させた場合に於ける、上記無段変速装置の挙動を求めた。尚、上記シミュレーションは、多数回行なった実験の結果と整合性を持たせた、十分に信頼性の置けるものである。
【0033】
先ず、図22は、上記無段変速装置の入力軸を2000min-1 前後で回転させ、出力軸を800min-1 で回転させる事を前提として、上記入力軸のトルクを+330Nmから−160Nmまで急減させた場合に就いて示している。尚、上記入力軸のトルクが「+」であるとは、入力側ディスクから出力側ディスクに動力が加えられている状態を、同じく「−」であるとは、反対に出力側ディスクから入力側ディスクに動力が伝達される(逆流する)状態を言う。この様な条件で行なったシミュレーションの結果を表した図22で、(A)の曲線aは入力軸のトルク(Torque)を、同じく曲線bは出力軸のトルクを、(B)の曲線cは上記トロイダル型無段変速機の変速比(iv)を、同じく曲線dは入力軸の回転速度(Revolution)を、同じく直線eは出力軸の回転速度を、それぞれ表している。又、図22(A)(B)の横軸は経過時間(Time)で単位は秒[sec ]である。又、図22(A)の縦軸はトルク[Nm]、(B)の縦軸は回転速度[ min -1 ]及び変速比である。
次に、図23は、図22と同様の条件で、入力軸のトルクを−160Nmから+330Nmまで急増させた場合に就いて示している。図23(A)(B)の曲線a〜e及び縦横軸の意味は、図22と同様である。
【0034】
次に、図24は、上記無段変速装置の入力軸を3000min-1 前後で回転させ、出力軸を1100min-1 で回転させる事を前提に、上記入力軸のトルクを+330Nmから−160Nmまで急減させた場合に就いて示している。図24(A)(B)の曲線a〜e及び縦横軸の意味は、図22と同様である。
次に、図25は、図24と同様の条件で、入力軸のトルクを−160Nmから+330Nmまで急増させた場合に就いて示している。図25(A)(B)の曲線a〜e及び縦横軸の意味は、図22と同様である。
【0035】
次に、図26は、上記無段変速装置の入力軸を2000min-1 前後で回転させ、出力軸を2700min-1 で回転させる事を前提に、上記入力軸のトルクを+350Nmから−280Nmまで急減させた場合に就いて示している。図26(A)(B)の曲線a〜e及び縦横軸の意味は、図22と同様である。
次に、図27は、図26と同様の条件で、入力軸のトルクを−280Nmから+350Nmまで急増させた場合に就いて示している。図27(A)(B)の曲線a〜e及び縦横軸の意味は、図22と同様である。
【0036】
次に、図28は、上記無段変速装置の入力軸を3000min-1 前後で回転させ、出力軸を4000min-1 で回転させる事を前提に、上記入力軸のトルクを+350Nmから−280Nmまで急減させた場合に就いて示している。図28(A)(B)の曲線a〜e及び縦横軸の意味は、図22と同様である。
次に、図29は、図28と同様の条件で、入力軸のトルクを−280Nmから+350Nmまで急増させた場合に就いて示している。図29(A)(B)の曲線a〜e及び縦横軸の意味は、図22と同様である。
【0037】
この様な図22〜29にその結果を示したシミュレーションから明らかな通り、入力軸のトルクが変動すると変速比も変動する。そして、出力軸の回転速度を一定とする事を前提に無段変速装置の変速比を制御すると、入力軸の回転速度が変動する。特に、図23、25、27、29に示した、入力軸のトルクが急増する場合には、上記変速比の変動が著しく、この結果、入力軸の回転速度も大きく変動する。この場合に、変速比が過度に調節された後、適正値に調節される、所謂オーバシュートの程度が著しくなり、その際に入力軸の回転速度が急上昇する。しかも、入力軸のトルクが急増する場合には、回転速度が早くなる程、上記オーバシュートの程度が著しくなり、変速比が細かく変動しつつ所望値に収束する、所謂ハンチングが発生する。この様な著しいオーバシュートやハンチングは、エンジン回転速度の急変動等、運転者に違和感を与える原因となる為、好ましくない。
本発明のトロイダル型無段変速機は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0038】
【課題を解決するための手段】
本発明のトロイダル型無段変速機は、前述した従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様に、入力側ディスク及び出力側ディスクと、複数のトラニオンと、複数の支持軸と、複数のパワーローラと、複数のアクチュエータと、制御弁とを備える。
このうちの入力側ディスク及び出力側ディスクは、それぞれが断面円弧形の凹面である互いの内側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、且つ回転自在に支持されている。
又、上記各トラニオンは、上記入力側ディスク及び出力側ディスクの中心軸に対し捻れの位置にある枢軸を中心として揺動する。
又、上記各支持軸は、上記各トラニオンの中間部に、これら各トラニオンの内側面から突出する状態で支持されている。
又、上記各パワーローラは、上記各トラニオンの内側面側に配置され且つ上記入力側ディスク及び出力側ディスクの間に挟持された状態で、上記各支持軸の周囲に回転自在に支持されたもので、その周面を球状凸面としている。
又、上記各アクチュエータは、上記各トラニオン毎に設けて、これら各トラニオンを上記各枢軸の軸方向に変位させる事により、これら各トラニオンをこれら各枢軸を中心に揺動変位させて上記入力側ディスクと上記出力側ディスクとの間の変速比を変化させるもので、油圧式である。
更に、上記制御弁は、上記各アクチュエータへの圧油の給排状態を切り換える為のものである。
そして、何れかのトラニオンと共に変位する部材にプリセスカムを固定し、このプリセスカムの変位をリンク腕により上記制御弁に伝えるフィードバック機構を設ける事により、当該トラニオンの動きをこの制御弁に伝えてこの制御弁の給排状態を切り換える。
特に、本発明のトロイダル型無段変速機に於いては、上記リンク腕の先端と上記プリセスカムのカム面との接触点を、上記入力側ディスクと上記出力側ディスクとの間で伝達するトルクの値が不連続的に急変動する状態での、上記プリセスカムを設けたトラニオンに支持したパワーローラの回転中心軸に平行(一致する場合を含む)な仮想直線を含み、且つ、上記プリセスカムの揺動中心を通過する仮想平面上にほぼ位置させている。
【0039】
【作用】
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機によれば、トルクの急激な変動に基づく変速比の変動を抑え、運転者に与える違和感を低減できる。即ち、図20を使用して行なった前述の説明から明らかな通り、トロイダル型無段変速機を通過するトルクの変動に伴ってプリセスカムが変位する方向は、このプリセスカムを設けたトラニオンに支持されたパワーローラの回転中心軸に平行な仮想直線を含み、このトラニオンの揺動中心に平行な仮想平面にほぼ一致する方向である。
【0040】
本発明の場合、リンク腕の先端と上記プリセスカムのカム面との接触点を、入力側ディスクと出力側ディスクとの間で伝達するトルクの値が不連続的に急変動する状態での、上記仮想平面上に位置させている為、上記プリセスカムの変位に拘らず、上記リンク腕の先端が変位しにくい。即ち、上記トルクの変動に伴って上記プリセスカムが変位した場合でも、上記接触点は上記カム面上を、このプリセスカムの直径方向に変位するのみである。このカム面の高さは、このプリセスカムの直径方向に関しては変化しないので、上記リンク腕の先端部は殆ど変位しない。この結果、上記トルクの急変動時にも、このリンク腕が制御弁の構成部材を動かす事がなくなり、不必要な変速比の変動を抑える事ができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
図1〜4は、本発明の実施の形態の第1例として、本発明のトロイダル型無段変速機を、ギヤード・ニュートラル型の無段変速装置に組み込んだ場合に就いて示している。尚、図1〜4には縦横比等の寸法関係を、実際の寸法関係で示している。又、図3には、上半部にトロイダル型無段変速機の変速比が最大減速時の状態を、下半部に同じく最大増速時の状態を、それぞれ描いている。本例の無段変速装置は、特許請求の範囲に記載したトロイダル型無段変速機に対応するトロイダル型無段変速ユニット47と、それぞれが請求項2に記載した遊星歯車機構に相当する第一〜第三の遊星歯車式変速ユニット48〜50とを組み合わせて成り、入力軸1aと、出力軸51とを有する。図示の例では、これら入力軸1aと出力軸51との間に伝達軸52を、これら両軸1a、51と同心に、且つ、これら両軸1a、51に対する相対回転を自在に設けている。そして、上記第一、第二の遊星歯車式変速ユニット48、49を上記入力軸1aと上記伝達軸52との間に掛け渡す状態で、上記第三の遊星歯車式変速ユニット50をこの伝達軸52と上記出力軸51との間に掛け渡す状態で、それぞれ設けている。
【0042】
このうちのトロイダル型無段変速ユニット47は、1対の入力側ディスク2a、2bと、一体型の出力側ディスク5aと、複数のパワーローラ6、6とを備える。そして、上記1対の入力側ディスク2a、2bは、上記入力軸1aを介して互いに同心に、且つ、同期した回転を自在として結合されている。又、上記出力側ディスク5aは、上記両入力側ディスク2a、2b同士の間に、これら両入力側ディスク2a、2bと同心に、且つ、これら両入力側ディスク2a、2bに対する相対回転を自在として支持されている。更に、上記各パワーローラ6、6は、軸方向に関して上記出力側ディスク5aの軸方向両側面と上記両入力側ディスク2a、2bの軸方向片側面との間に、それぞれ複数個ずつ挟持されている。そして、これら両入力側ディスク2a、2bの回転に伴って回転しつつ、これら両入力側ディスク2a、2bから上記出力側ディスク5aに動力を伝達する。
【0043】
又、本例の場合、図2に示す様に、上記各パワーローラ6、6を支持するトラニオン7a、7aの長さ方向両端部に設けた、1対の折れ曲がり壁部53、53の先端部同士を、連結部材54、54により連結している。この様な連結部材54は、上記パワーローラ6を跨ぐ様に設けると共に、その両端面を上記トラニオン7aの各折れ曲がり壁部53、53の互いに対向する内側面に突き当てた状態で、ねじ55、55により、上記各トラニオン7a、7aに結合固定している。この様な連結部材54、54を設けた本例の場合には、これら各トラニオン7a、7aの曲げ剛性の向上を図れ、これら各トラニオン7a、7aを弾性変形しにくくできる。この結果、これら各トラニオン7a、7aの変形に基づく支持軸8a及び後述するロッド17aの傾斜を防止し、この支持軸8aの先半部に支持した上記各パワーローラ6、6やこのロッド17aの先端部(下端部)に固定したプリセスカム18の位置がずれるのを抑える事ができるので、変速動作をより安定させる事ができる。尚、本例の場合、上記支持軸8aと、上記パワーローラ6を回転自在に支持するスラスト玉軸受56を構成する外輪とを、一体に形成している。
【0044】
更に、本例の場合には、上記出力側ディスク5aの軸方向両端部を、1対のスラストアンギュラ玉軸受57、57等の転がり軸受により、回転自在に支持している。この為に本例の場合には、上記各トラニオン7a、7aの両端部を支持する為の1対の支持板58a、58bを支持する為にケーシング59の内側に、アクチュエータボディー60を介して1対の支柱61、61を設けている。これら各支柱61、61はそれぞれ、前記入力軸1aを挟んで径方向反対側に、互いに同心に設けられた1対の支持ポスト部62a、62bを、円環状の支持環部63により連結して成る。上記入力軸1aは、この支持環部63の内側を挿通している。
【0045】
又、上記各支柱61、61の下端部は、上記アクチュエータボディー60の上面に、それぞれ複数本ずつのボルト64、64により結合固定している。これに対して上記各支柱61、61の上端部は、連結板65の下面に、それぞれボルト66、66により結合固定している。上記1対の支柱61、61は、この様に上記アクチュエータボディー60の上面と上記連結板65の下面との間に掛け渡す様に連結固定している。この状態で、上記各支柱61、61の両端部近傍に設けた、前記各支持ポスト部62a、62bのうち、下側の支持ポスト部62a、62aは上記アクチュエータボディー60の上面の直上位置に存在する。そして、上記両支柱61、61の支持ポスト部62a、62aに、前記1対の支持板58a、58bのうちの下側の支持板58aを外嵌支持している。又、上側の支持ポスト部62b、62bは上記連結板65の下面の直下位置に存在する。そして、上記両支柱61、61の支持ポスト部62b、62bに、前記1対の支持板58a、58bのうちの上側の支持板58bを外嵌支持している。
【0046】
又、上記1対の支柱61、61により互いに結合された、前記アクチュエータボディー60と上記連結板65とのうち、アクチュエータボディー60は前記ケーシング59の下部に固定している。この為に、このケーシング59の内面下端開口寄り部分に段部67a、67bを形成している。上記アクチュエータボディー60を上記ケーシング59内に固定する際には、このアクチュエータボディー60の上面幅方向両端寄り部分を上記各段部67a、67bに突き当てる。そして、上記アクチュエータボディー60の一部でこれら各段部67a、67bに整合する部分に形成したボルト挿通孔を下方から挿通した図示しないボルトを、上記各段部67a、67bに開口したねじ孔に螺合し更に緊締する。
【0047】
上記アクチュエータボディー60内には、前記各トラニオン7a、7aを、それぞれの両端部に互いに同心に設けた枢軸9、9の軸方向に変位させる為の、油圧式のアクチュエータ10、10を設けている。これら各アクチュエータ10、10を構成するピストン16、16と上記各トラニオン7a、7aとは、これら各トラニオン7a、7a及び枢軸9、9と一体のロッド17a、17bにより連結している。これら各ロッド17a、17bのうち、何れか1本のロッド17aは他のロッド17bよりも長くして、その先端部(下端部)を、上記アクチュエータボディー60の下面から突出させている。そして、上記1本のロッド17aの先端部に、プリセスカム18を外嵌固定している。
【0048】
この様にして上記ロッド17aの先端部に設けたプリセスカム18のカム面21には、図4に示す様に、リンク腕19aの先端部を当接させている。本発明の場合、上記カム面21とこのリンク腕19aの先端部とが滑り接触している接触点xを、次の様に規制している。即ち、この接触点xを、前記各入力側ディスク2a、2bと前記出力側ディスク5aとの間の変速状態を最大減速状態とした状態での、上記プリセスカム18を設けたトラニオン7aに支持したパワーローラ6の回転中心軸に平行(一致する場合も含む)な仮想直線を含み、且つ、上記プリセスカム18の揺動中心(トラニオン7aの端部に設けた枢軸9の中心と同じ)を通過する仮想平面上に位置させている。この点が本発明の特徴部分であるから、この点に就いて、より詳しく説明する。
【0049】
前記トロイダル型無段変速ユニット47を組み込んだ本例の無段変速装置の場合、無段変速装置全体としての変速比は、後述する様に、低速モード時には、上記トロイダル型無段変速ユニット47の変速比を減速側にする程増速側に変化する。これに対して、高速モード時には、上記トロイダル型無段変速ユニット47の変速比を増速側にする程増速側に変化する。従って、低速モードと高速モードとの切り換えは、上記トロイダル型無段変速ユニット47が最大減速状態で行なう。この様にこのトロイダル型無段変速ユニット47が最大減速状態である場合に、上記プリセスカム18と上記ロッド17aにより連結されたトラニオン7aに支持されたパワーローラ6の回転中心軸(支持軸8aの先半部の中心軸)は、図4の鎖線β方向に存在する。
【0050】
前記接触点xは、この様な鎖線βと上記プリセスカム18をその先端部に固定したロッド17aの中心軸とを含む仮想平面、即ち、図4で、上記鎖線β上で紙面の直角方向に存在する仮想平面上に位置する。上記トロイダル型無段変速ユニット47が最大減速状態にあり、上記パワーローラ6の回転中心軸が上記鎖線βと平行な状態で、このパワーローラ6に加わるスラスト荷重に基づいて前記トラニオン7aが弾性変形すると、上記プリセスカム18の中心軸(揺動中心軸)は、上記鎖線β上を移動する。そして、上記接触点xも、この鎖線β上で前記カム面21に対し、上記プリセスカム18の直径方向に変位する。このカム面21の高さは、このプリセスカム18の直径方向に関しては変化しない為、上記接触点xが上記鎖線β上で変位しても、この接触点xは図4の表裏方向に変位しない。従って、前記リンク腕19aとコネクティングロッド68を介して連結されたスプール15aが押し引きされる事はなく、このスプール15aを含んで構成される変速比制御弁12(図18参照)が切り換わる事はない。尚、上記接触点xの位置は、上記鎖線β状に厳密に一致させなくても、本発明の効果を得られる。例えば、この鎖線βを挟み、上記プリセスカム18の揺動中心をその中心とする±10度(より好ましくは±5度)の扇形の範囲内に上記接触点xを設ければ、本発明の効果を得られる。
【0051】
尚、図示の例の場合には、上記リンク腕19aの先端部を球状に形成し、この先端部と上記カム面21とを点接触させている。従って、このカム面21に対する上記リンク腕19aの配設方向を特に規制しなくても、これらカム面21とリンク腕19aの先端との接触状態を適正にできる。これに対して、リンク腕の先端部と上記カム面21とが線接触する構造を採用した場合には、上記プリセスカム18の変位(通常の回転及び軸方向変位及びトラニオンの弾性変形に伴う変位)に拘らず、上記先端部とカム面21との当接状態が不良にならない様にすべく、上記リンク腕の配設方向を規制する事が好ましい。
【0052】
一方、前記連結板65は、前記ケーシング59内の所定位置に設置されている。図示の例の場合、この連結板65の上面と、前記ケーシング59の天板部69の下面との、互いに対向する部分にそれぞれ形成した位置決め凹部70a、70b同士の間に円筒状の位置決めスリーブ71、71を掛け渡している。この構造により、前記1対の支柱61、61の上下両端部を上記ケーシング59に対し、位置決めした状態で支持固定している。
【0053】
この様にして上記ケーシング59内の所定位置に固定した1対の支柱61、61の中間部に設けられ、それぞれが前記入力側ディスク2a、2bと前記出力側ディスク5aとの側面同士の間に存在する各キャビティ(空間)の中央部に存在する前記各支持環部63、63により、前記出力側ディスク5aを、回転自在に支持している。この為に、これら各支持環部63、63とこの出力側ディスク5aの軸方向両端面、即ち、この出力側ディスク5aの軸方向両側面に設けた出力側面よりも内径側部分との間に、前記各スラストアンギュラ玉軸受57、57を設けている。この構成により上記出力側ディスク5aを、各キャビティ内に1対ずつ設けた上記各支柱61、61同士の間に、回転自在に支持している。尚、本例の場合、上記出力側ディスク5aの外周縁に径方向に関する凹凸を円周方向等間隔に設けると共に、回転速度検出装置88を上記ケーシング59に固定した状態で上記出力側ディスク5aの外周縁に近接対向させる事により、この出力側ディスク5aの回転速度を検出自在としている。
【0054】
又、図示の無段変速装置の場合、図示しない駆動源であるエンジンのクランクシャフトに前記入力軸1aの基端部(図1の左端部)を、駆動軸72を介して結合し、このクランクシャフトにより上記入力軸1aを回転駆動する様にしている。又、前記両入力側ディスク2a、2bの軸方向片側面及び上記出力側ディスク5aの軸方向両側面と上記各パワーローラ6、6の周面との転がり接触部(トラクション部)に適正な面圧を付与する為の押圧装置23aとして、油圧式のものを使用している。又、前記ケーシング59の前端壁73に内蔵した、油圧源であるギヤポンプ74により、上記押圧装置23a及び変速の為にトラニオン7a、7aを変位させる為の油圧式のアクチュエータ10、10、並びに、請求項2に記載したモード切換手段を構成する後述する低速用クラッチ44a及び高速用クラッチ29aを断接させる為の油圧シリンダに、圧油を供給自在としている。
【0055】
又、上記出力側ディスク5aに中空回転軸75の基端部(図1、3の左端部)をスプライン係合させている。そして、この中空回転軸75を、エンジンから遠い側(図1、3の右側)の入力側ディスク2bの内側に挿通して、上記出力側ディスク5aの回転力を取り出し自在としている。更に、上記中空回転軸75の先端部(図1、3の右端部)で上記入力側ディスク2bの外側面から突出した部分に、前記第一の遊星歯車式変速ユニット48を構成する為の、第一の太陽歯車76を固設している。
【0056】
一方、上記入力軸1aの先端部(図1、3の右端部)で上記中空回転軸75から突出した部分と上記入力側ディスク2bとの間に、第一のキャリア77を掛け渡す様に設けて、この入力側ディスク2bと上記入力軸1aとが、互いに同期して回転する様にしている。そして、上記第一のキャリア77の軸方向両側面の円周方向等間隔位置(一般的には3〜4個所位置)に、それぞれがダブルピニオン型である前記第一、第二の遊星歯車式変速ユニット48、49を構成する為の遊星歯車78〜80を、回転自在に支持している。更に、上記第一のキャリア77の片半部(図1の右半部)周囲に第一のリング歯車81を、回転自在に支持している。
【0057】
上記各遊星歯車78〜80のうち、前記トロイダル型無段変速ユニット47寄り(図1、3の左寄り)で上記第一のキャリア77の径方向に関して内側に設けた遊星歯車78は、上記第一の太陽歯車76に噛合している。又、上記トロイダル型無段変速ユニット47から遠い側(図1、3の右側)で上記第一のキャリア77の径方向に関して内側に設けた遊星歯車79は、請求項2に記載した第二の動力取り出し機構を構成する前記伝達軸52の基端部(図1の左端部)に固設した、第二の太陽歯車82に噛合している。又、上記第一のキャリア77の径方向に関して外側に設けた、残りの遊星歯車80は、上記内側に設けた遊星歯車78、79よりも軸方向寸法を大きくして、これら両遊星歯車78、79に噛合させている。更に、上記残りの遊星歯車80と上記第一のリング歯車81とを噛合させている。尚、径方向外寄りの遊星歯車を、第一、第二の遊星歯車式変速ユニット48、49同士の間で互いに独立させる代りに、幅広のリング歯車をこれら両遊星歯車に噛合させる構造も、採用可能である。
【0058】
一方、前記第三の遊星歯車式変速ユニット50を構成する為の第二のキャリア83を、前記出力軸51の基端部(図1の左端部)に結合固定している。そして、この第二のキャリア83と上記第一のリング歯車81とを、前記低速用クラッチ44aを介して結合し、請求項2に記載した第一の動力取り出し機構を構成している。又、上記伝達軸52の先端寄り(図1の右端寄り)部分に第三の太陽歯車84を固設している。又、この第三の太陽歯車84の周囲に、第二のリング歯車85を配置し、この第二のリング歯車85と前記ケーシング59等の固定の部分との間に、前記高速用クラッチ29aを設けている。更に、上記第二のリング歯車85と上記第三の太陽歯車84との間に配置した復数組の遊星歯車86、87を、上記第二のキャリア83に回転自在に支持している。これら各遊星歯車86、87は、互いに噛合すると共に、上記第二のキャリア83の径方向に関して内側に設けた遊星歯車86を上記第三の太陽歯車84に、同じく外側に設けた遊星歯車87を上記第二のリング歯車85に、それぞれ噛合している。
【0059】
上述の様に構成する本例の無段変速装置の場合、入力軸1aから1対の入力側ディスク2a、2b、各パワーローラ6、6を介して一体型の出力側ディスク5aに伝わった動力は、前記中空回転軸75を通じて取り出される。そして、前記低速用クラッチ44aを接続し、前記高速用クラッチ29aの接続を断った状態では、前記トロイダル型無段変速ユニット47の変速比を変える事により、上記入力軸1aの回転速度を一定にしたまま、上記出力軸51の回転速度を、停止状態を挟んで正転、逆転に変換自在となる。即ち、この状態では、上記入力軸1aと共に正方向に回転する第一のキャリア77と、上記中空回転軸75と共に逆方向に回転する前記第一の太陽歯車76との差動成分が、前記第一のリング歯車81から、前記低速用クラッチ44a、前記第二のキャリア83を介して、上記出力軸51に伝達される。この状態では、上記トロイダル型無段変速ユニット47の変速比を所定値にする事で上記出力軸51を停止させられる他、このトロイダル型無段変速ユニット47の変速比を上記所定値から増速側に変化させる事により上記出力軸51を、車両を後退させる方向に回転させられる。これに対して、上記トロイダル型無段変速ユニット47の変速比を上記所定値から減速側に変化させる事により上記出力軸51を、車両を前進させる方向に回転させられる。
【0060】
更に、上記低速用クラッチ44aの接続を断ち、上記高速用クラッチ29aを接続した状態では、上記出力軸51を、車両を前進させる方向に回転させる。即ち、この状態では、上記入力軸1aと共に正方向に回転する第一のキャリア77と、上記中空回転軸75と共にこの第一のキャリア77と逆方向に回転する前記第一の太陽歯車76との差動成分に応じて回転する、前記第一の遊星歯車式変速ユニット48の遊星歯車78の回転が、別の遊星歯車80を介して、前記第二の遊星歯車式変速ユニット49の遊星歯車79に伝わり、前記第二の太陽歯車82を介して、前記伝達軸52を回転させる。そして、この伝達軸52の先端部に設けた第三の太陽歯車84と、この第三の太陽歯車84と共に前記第三の遊星歯車式変速ユニット50を構成する第二のリング歯車85及び遊星歯車86、87との噛合に基づき、前記第二のキャリア83及びこの第二のキャリア83に結合した上記出力軸51を、前進方向に回転させる。この状態では、上記トロイダル型無段変速ユニット47の変速比を増速側に変化させる程、上記出力軸51の回転速度を速くできる。
【0061】
図5は、上記トロイダル型無段変速ユニット47の変速比(減速比)と、無段変速装置全体としての速度比との関係の1例を示している。図5の縦軸は、上記トロイダル型無段変速ユニット47の変速比を、同じく横軸は無段変速装置全体としての速度比を、それぞれ表している。この様な図5から明らかな通り、前記低速用クラッチ44aを接続し、前記高速用クラッチ29aの接続を断った状態で、上記トロイダル型無段変速ユニット47の変速比を0.6程度とする事により、上記入力軸1aを回転させた状態のまま、上記出力軸51を停止させる事ができる。又、上記トロイダル型無段変速ユニット47の変速比を、0.6程度を境にして変化させる事により、車両を前進或は後退させる事ができる。更に、上記トロイダル型無段変速ユニット47の変速比が2.2〜2.3程度を境に、上記低速用クラッチ44aの接続を断ち、上記高速用クラッチ29aを接続した状態で、上記トロイダル型無段変速ユニット47の変速比を増速側に変化させる事により、車両の速度を速くできる。
【0062】
上述の様な無段変速装置の作動時に上記トロイダル型無段変速ユニット47の入力軸1aに加わるトルクは、図6に曲線a1 、a2 で示す様に変化する。尚、図6の曲線bは、エンジンから駆動軸72に加えられるトルクである。上記トロイダル型無段変速ユニット47の入力軸1aに加わるトルクを表す曲線a1 、a2 の不連続部は、上記低速用クラッチ44aと上記高速用クラッチ29aとの断接により、高速モードと低速モードとの切り換えを行なう事に伴って生じる。そして、上記不連続部では、上記トロイダル型無段変速ユニット47を通過するトルクが急変動し、前述の特許文献5に記載された様な、不必要な変速比の変動が生じ易くなる。
【0063】
これに対して本例の無段変速装置の場合には、前述した様に、変速比制御弁のスプール15aを変位させる為のプリセスカム18とリンク腕19aとの位置関係を工夫しているので、上記不必要な変速比の変動を低く抑える事ができる。即ち、前述した通り、上記トルク変動に伴う前記トラニオン7aの弾性変形によって上記プリセスカム18が変位した場合でも、この変位が上記リンク腕19aの変位に結び付きにくい為、上記スプール15aが不必要に変位する事を防止して、上記変速比の変動を抑える事ができる。この点を確認する為に本発明者が行なったコンピュータ・シミュレーションの結果に就いて、図7〜14により説明する。尚、図示の例では、上記トラニオン7a自体の構造を工夫して弾性変形しにくくしている。この弾性変形を抑える事も、上記不必要な変速比の変動を抑える面から効果がある。但し、図7〜14にその結果を示すコンピュータ・シミュレーションの場合、トラニオンの弾性変形量に就いては、前述した従来構造に就いてのコンピュータ・シミュレーションの場合と同じとした。即ち、プリセスカム18に対するリンク腕19aの取り付け位置以外の条件は、前述した従来構造に就いてのコンピュータ・シミュレーションの場合と同じにした。
【0064】
先ず、図7は、上記無段変速装置の入力軸を2000min-1 前後で回転させ、出力軸を700min-1 で回転させる事を前提として、上記入力軸のトルクを+330Nmから−160Nmまで急減させた場合に就いて示している。この様な条件で行なったシミュレーションの結果を表した図7で、(A)の曲線aは入力軸のトルク(Torque)を、同じく曲線bは出力軸のトルクを、(B)の曲線cは上記トロイダル型無段変速機の変速比(iv)を、同じく曲線dは入力軸の回転速度(Revolution)を、同じく直線eは出力軸の回転速度を、それぞれ表している。又、図7(A)(B)の横軸は経過時間(Time)で単位は秒[sec ]である。又、図7(A)の縦軸はトルク[Nm]、(B)の縦軸は回転速度[ min -1 ]及び変速比である。
次に、図8は、図7と同様の条件で、入力軸のトルクを−160Nmから+330Nmまで急増させた場合に就いて示している。図8(A)(B)の曲線a〜e及び縦横軸の意味は、図7と同様である。
【0065】
次に、図9は、上記無段変速装置の入力軸を3000min-1 前後で回転させ、出力軸を1100min-1 で回転させる事を前提に、上記入力軸のトルクを+330Nmから−160Nmまで急減させた場合に就いて示している。図9(A)(B)の曲線a〜e及び縦横軸の意味は、図7と同様である。
次に、図10は、図9と同様の条件で、入力軸のトルクを−160Nmから+330Nmまで急増させた場合に就いて示している。図10(A)(B)の曲線a〜e及び縦横軸の意味は、図7と同様である。
【0066】
次に、図11は、上記無段変速装置の入力軸を2000min-1 前後で回転させ、出力軸を2700min-1 で回転させる事を前提に、上記入力軸のトルクを+350Nmから−280Nmまで急減させた場合に就いて示している。図11(A)(B)の曲線a〜e及び縦横軸の意味は、図7と同様である。
次に、図12は、図11と同様の条件で、入力軸のトルクを−280Nmから+350Nmまで急増させた場合に就いて示している。図12(A)(B)の曲線a〜e及び縦横軸の意味は、図7と同様である。
【0067】
次に、図13は、上記無段変速装置の入力軸を3000min-1 前後で回転させ、出力軸を4000min-1 で回転させる事を前提に、上記入力軸のトルクを+350Nmから−280Nmまで急減させた場合に就いて示している。図13(A)(B)の曲線a〜e及び縦横軸の意味は、図7と同様である。
次に、図14は、図13と同様の条件で、入力軸のトルクを−280Nmから+350Nmまで急増させた場合に就いて示している。図14(A)(B)の曲線a〜e及び縦横軸の意味は、図7と同様である。
【0068】
この様な図7〜14に示した、本発明の構造に関するコンピュータ・シミュレーションの結果と、前述の図22〜29に示した、従来構造に関するコンピュータ・シミュレーションの結果とを比較すれば明らかな通り、本発明の構造によれば、入力軸のトルク変動に伴う変速比の変動を低く抑えられる。
【0069】
次に、図15は、本発明の実施の形態の第2例として、本発明のトロイダル型無段変速機を、前述の図19に示す様な、パワー・スプリット型の無段変速装置に組み込んだ場合に就いて示している。前述した通り、パワー・スプリット型の無段変速装置は、低速モードと高速モードとの切り換え時にトロイダル型無段変速機24(図19)は、最大増速状態となっている。そこで本例の場合には、パワー・スプリット型の無段変速装置でトルクの急変動に伴う変速比の変動を抑えるべく、リンク腕19aの先端とプリセスカム18のカム面21との接触点x´の設置方向を、上述した第1例の場合とは逆方向にしている。即ち、この接触点x´を、入力側ディスク2、2と出力側ディスク5、5(図19参照)との間の変速状態を最大増速状態とした状態での、上記プリセスカム18を設けたトラニオン7aに支持したパワーローラ6(図2〜3参照)の回転中心軸に平行(一致する場合を含む)な仮想直線を含み、且つ、上記プリセスカム18の揺動中心を通過する仮想平面上に位置させている。この様な本例の場合も、モード変更に伴うトルクの急変動時にも、変速比が不必要に変動する事を抑える事ができる。
【0070】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、特に面倒な制御を行なう事なく、しかも運転者に違和感を与えないトロイダル型無段変速機並びにトロイダル型無段変速機を組み込んだ無段変速装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す断面図。
【図2】図1の拡大A−A断面図。
【図3】同拡大B−B断面図。
【図4】図2のC矢視図。
【図5】無段変速装置全体としての変速比と、トロイダル型無段変速機のみの変速比との関係を示す線図。
【図6】無段変速装置全体としての変速比とトロイダル型無段変速機に加わるトルクとの関係を示す線図。
【図7】本発明の構造で、トロイダル型無段変速機に加わるトルクの変動が変速比の変動に及ぼす影響を知る為に行なった第一のコンピュータ・シミュレーションの結果を示す線図。
【図8】同じく第二のコンピュータ・シミュレーションの結果を示す線図。
【図9】同じく第三のコンピュータ・シミュレーションの結果を示す線図。
【図10】同じく第四のコンピュータ・シミュレーションの結果を示す線図。
【図11】同じく第五のコンピュータ・シミュレーションの結果を示す線図。
【図12】同じく第六のコンピュータ・シミュレーションの結果を示す線図。
【図13】同じく第七のコンピュータ・シミュレーションの結果を示す線図。
【図14】同じく第八のコンピュータ・シミュレーションの結果を示す線図。
【図15】本発明の実施の形態の第2例を示す、図4と同様の図。
【図16】トロイダル型無段変速機の従来構造の1例を示す断面図。
【図17】図16のD−D断面図。
【図18】図16のE−E断面図。
【図19】トロイダル型無段変速機を組み込んだ無段変速装置の1例を示す略断面図。
【図20】トラニオンの変形に基づくプリセスカムの変位を測定する為に行なった実験の実施状態を示す切断側面図。
【図21】この実験の結果求められた、トラニオンに加わるトルクとプリセスカムの変位との関係を示す線図。
【図22】従来構造で、トロイダル型無段変速機に加わるトルクの変動が変速比の変動に及ぼす影響を知る為に行なった、第九のコンピュータ・シミュレーションの結果を示す線図。
【図23】同じく第十のコンピュータ・シミュレーションの結果を示す線図。
【図24】同じく第十一のコンピュータ・シミュレーションの結果を示す線図。
【図25】同じく第十二のコンピュータ・シミュレーションの結果を示す線図。
【図26】同じく第十三のコンピュータ・シミュレーションの結果を示す線図。
【図27】同じく第十四のコンピュータ・シミュレーションの結果を示す線図。
【図28】同じく第十五のコンピュータ・シミュレーションの結果を示す線図。
【図29】同じく第十六のコンピュータ・シミュレーションの結果を示す線図。
【図30】トルク変動に伴う弾性変形による変速比の変動を抑える為の従来構造を示す、図4、15と同様の図。
【符号の説明】
1、1a 入力軸
2、2a、2b 入力側ディスク
3 ボールスプライン
4 出力歯車
5、5a 出力側ディスク
6 パワーローラ
7、7a トラニオン
8、8a 支持軸
9 枢軸
10 アクチュエータ
11 支持板
12 変速比制御弁
13 ステッピングモータ
14 スリーブ
15、15a スプール
16 ピストン
17、17a、17b ロッド
18 プリセスカム
19、19a リンク腕
20 同期ケーブル
21 カム面
22 駆動軸
23、23a 押圧装置
24 トロイダル型無段変速機
25 遊星歯車式変速機
26 リング歯車
27 支持板
28 伝達軸
29、29a 高速用クラッチ
30 エンジン
31 クランクシャフト
32 発進クラッチ
33 出力軸
34 太陽歯車
35 遊星歯車
36a、36b 遊星歯車素子
37 キャリア
38 動力伝達機構
39 伝達軸
40a、40b スプロケット
41 チェン
42 第一の歯車
43 第二の歯車
44、44a 低速用クラッチ
45 後退用クラッチ
46 変位センサ
47 トロイダル型無段変速ユニット
48 第一の遊星歯車式変速ユニット
49 第二の遊星歯車式変速ユニット
50 第三の遊星歯車式変速ユニット
51 出力軸
52 伝達軸
53 折れ曲がり壁部
54 連結部材
55 ねじ
56 スラスト玉軸受
57 スラストアンギュラ玉軸受
58a、58b 支持板
59 ケーシング
60 アクチュエータボディー
61 支柱
62a、62b 支持ポスト
63 支持環部
64 ボルト
65 連結板
66 ボルト
67a、67b 段部
68 コネクティングロッド
69 天板部
70a、70b 位置決め凹部
71 位置決めスリーブ
72 駆動軸
73 前端壁
74 ギヤポンプ
75 中空回転軸
76 第一の太陽歯車
77 第一のキャリア
78 遊星歯車
79 遊星歯車
80 遊星歯車
81 第一のリング歯車
82 第二の太陽歯車
83 第二のキャリア
84 第三の太陽歯車
85 第二のリング歯車
86 遊星歯車
87 遊星歯車
88 回転速度検出装置

Claims (5)

  1. それぞれが断面円弧形の凹面である互いの内側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、且つ回転自在に支持された入力側ディスク及び出力側ディスクと、これら入力側ディスク及び出力側ディスクの中心軸に対し捻れの位置にある枢軸を中心として揺動する複数のトラニオンと、これら各トラニオンの中間部に、これら各トラニオンの内側面から突出する状態で支持された複数の支持軸と、これら各トラニオンの内側面側に配置され且つ上記入力側ディスク及び出力側ディスクの間に挟持された状態で、上記各支持軸の周囲に回転自在に支持された、その周面を球状凸面とした複数のパワーローラと、上記各トラニオン毎に設けて、これら各トラニオンを上記各枢軸の軸方向に変位させる事により、これら各トラニオンをこれら各枢軸を中心に揺動変位させて上記入力側ディスクと上記出力側ディスクとの間の変速比を変化させるそれぞれが油圧式である複数のアクチュエータと、これら各アクチュエータへの圧油の給排状態を切り換える為の制御弁とを備え、何れかのトラニオンと共に変位する部材にプリセスカムを固定し、このプリセスカムの変位をリンク腕により上記制御弁に伝えるフィードバック機構を設ける事により、当該トラニオンの動きをこの制御弁に伝えてこの制御弁の給排状態を切り換えるトロイダル型無段変速機に於いて、上記リンク腕の先端と上記プリセスカムのカム面との接触点を、上記入力側ディスクと上記出力側ディスクとの間で伝達するトルクの値が不連続的に急変動する状態での、上記プリセスカムを設けたトラニオンに支持したパワーローラの回転中心軸に平行な仮想直線を含み、且つ、上記プリセスカムの揺動中心を通過する仮想平面上にほぼ位置させた事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
  2. トロイダル型無段変速機は無段変速装置中に組み込まれたものであって、この無段変速装置は、駆動源につながってこの駆動源により回転駆動される入力軸と、この入力軸の回転に基づく動力を取り出す為の出力軸と、上記トロイダル型無段変速機と、複数段の遊星歯車機構とを備えたものであり、このうちの第一段目の遊星歯車機構の太陽歯車が上記トロイダル型無段変速機の出力側ディスクに結合されており、このトロイダル型無段変速機の入力側ディスクは上記第一段目の遊星歯車機構のキャリアに結合されており、上記第一段目の遊星歯車機構のリングギヤから動力を取り出す第一のモードを実現する為の第一の動力取り出し機構と、この第一段目の遊星歯車機構の遊星歯車と第二段目の遊星歯車機構の遊星歯車とを介して、この第二段目の遊星歯車機構の太陽歯車から動力を取り出す第二のモードを実現する為の第二の動力取り出し機構と、この第二の動力取り出し機構と上記第一の動力取り出し機構とを選択する為のモード切換手段とを備えたものであり、リンク腕の先端とプリセスカムのカム面との接触点を、上記第一のモードと上記第二のモードとを切り換える状態での、上記プリセスカムを設けたトラニオンに支持したパワーローラの回転中心軸に平行な仮想直線を含み、且つ、上記プリセスカムの揺動中心を通過する仮想平面上にほぼ位置させた、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機。
  3. リンク腕の先端とプリセスカムのカム面との接触点を、入力側ディスクと出力側ディスクとの間の変速状態を最大減速状態とした状態での、上記プリセスカムを設けたトラニオンに支持したパワーローラの回転中心軸に平行な仮想直線を含み、且つ、上記プリセスカムの揺動中心を通過する仮想平面上にほぼ位置させた、請求項2に記載したトロイダル型無段変速機。
  4. トロイダル型無段変速機は無段変速装置中に組み込まれたものであり、この無段変速装置は、駆動源につながってこの駆動源により回転駆動される入力軸と、この入力軸の回転に基づく動力を取り出す為の出力軸と、上記トロイダル型無段変速機と、遊星歯車機構と、上記入力軸に入力された動力を上記トロイダル型無段変速機を介して伝達する第一の動力伝達経路と、上記入力軸に入力された動力を上記トロイダル型無段変速機を介する事なく伝達する第二の動力伝達経路とを備え、上記遊星歯車機構は、太陽歯車とこの太陽歯車の周囲に配置したリング歯車との間に設けられ、上記太陽歯車と同心に且つ回転自在に支持したキャリアに回転自在に支持された遊星歯車を、上記太陽歯車とリング歯車とに噛合させて成るものであり、上記第一の動力伝達経路を通じて送られる動力と上記第二の動力伝達経路を通じて送られる動力とを、上記太陽歯車と上記リング歯車と上記キャリアとのうちの2個の部材に伝達自在とすると共に、これら太陽歯車とリング歯車とキャリアとのうちの残りの1個の部材に上記出力軸を結合しており、上記入力軸に入力された動力が上記第一の動力伝達経路と上記第二の動力伝達経路とを通じて上記遊星歯車機構に送られる状態を切り換えるモード切換手段を設けており、このモード切換手段は、少なくとも上記第一の動力伝達経路のみで動力の伝達を行なう第一のモードと、この第一の動力伝達経路と上記第二の動力伝達経路との双方で動力の伝達を行なう第二のモードとの切り換えを行なうものであり、リンク腕の先端とプリセスカムのカム面との接触点を、上記第一のモードと上記第二のモードとを切り換える状態での、上記プリセスカムを設けたトラニオンに支持したパワーローラの回転中心軸に平行な仮想直線を含み、且つ、上記プリセスカムの揺動中心を通過する仮想平面上にほぼ位置させた、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機。
  5. リンク腕の先端とプリセスカムのカム面との接触点を、入力側ディスクと出力側ディスクとの間の変速状態を最大増速状態とした状態での、上記プリセスカムを設けたトラニオンに支持したパワーローラの回転中心軸に平行な仮想直線を含み、且つ、上記プリセスカムの揺動中心を通過する仮想平面上にほぼ位置させた、請求項4に記載したトロイダル型無段変速機。
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