以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記の実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。ここで、下記の実施の形態では、本発明にかかるトロイダル式無段変速機に伝達される駆動力を発生する駆動源としてエンジントルクを発生する内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなど)を用いるが、これに限定されるものではなく、モータトルクを発生するモータなどの電動機などを用いても良い。また、駆動源として内燃機関および電動機を併用しても良い。
[実施の形態]
図1は、実施の形態にかかるトロイダル式無段変速機の概略構成例を示す図である。図2は、トロイダル式無段変速機の詳細構成例を示す図である。なお、図2は、トロイダル式無段変速機を構成する各パワーローラのうち任意のパワーローラと、このパワーローラに接触する入力ディスクとを示す図である。ここで、正回転とは図示しない車両が前進する際に、入力ディスク10が回転する方向であり、逆回転とは車両が後進する際に入力ディスク10が回転する方向である。
図1に示すように、内燃機関100と車輪160との間には、トルクコンバータ110と、前後進切換機構120と、トロイダル式無段変速機1と、動力伝達機構130と、ディファレンシャルギヤ140とにより構成されるトランスミッションが配置されている。なお、150は、車輪160とディファレンシャルギヤ140とを連結するドライブシャフトである。また、170は、内燃機関100の運転制御を行うエンジンECUである。また、180は、内燃機関100が搭載された車両の運転者に警報を発する警報装置である。また、190は、車両に制動力を作用させる制動装置である。200は、制動装置190と接続され、制動装置190により発生する制動力を制御することができるブレーキECUである。
内燃機関100は、接線力低減手段であり、内燃機関100が搭載された車両を前進あるいは後進させるためのエンジントルク、すなわち駆動力を出力するものである。また、内燃機関100は、エンジンECU170と接続されており、エンジンECU170により出力する駆動力が制御される。内燃機関100からの駆動力は、クランクシャフト101を介してトルクコンバータ110に伝達される。
トルクコンバータ110は、発進機構であり、流体伝達装置である。トルクコンバータ110は、駆動源である内燃機関100からの駆動力を前後進切換機構120を介してトロイダル式無段変速機1に伝達するものである。トルクコンバータ110は、ポンプ111と、タービン112と、ロックアップクラッチ113とにより構成されている。トルクコンバータ110は、ポンプ111とタービン112との間に介在する作動流体である作動油を介して、クランクシャフト101を介してポンプ111に伝達された駆動力を前後進切換機構120に連結されたタービン112に伝達するものである。また、トルクコンバータ110は、タービン112に連結されたロックアップクラッチ113をポンプ111に係合することで、作動油を介さずに、ポンプ111に伝達されたエンジントルクを直接タービン112に伝達するものでもある。つまり、トロイダル式無段変速機1の後述する入力ディスク10に伝達される内燃機関100からの駆動力は、作動流体を介さずに直接伝達するロックアップクラッチ113を有するトルクコンバータ110を介して伝達される。ここで、ロックアップクラッチ113の係合、係合の解除、すなわちON、OFFを行うON/OFF制御は、油圧制御装置50から供給される作動油により行われる。油圧制御装置50は、トランスミッションECU60と接続されている。従って、ロックアップクラッチ113のON/OFF制御は、トランスミッションECU60により行われる。なお、トルクコンバータ110と前後進切換機構120との間には、油圧制御装置50に加圧された作動油を供給するオイルポンプ52(図1では、図示省略)が設けられている。オイルポンプ52は、内燃機関100からのエンジントルクによりトルクコンバータ110が回転することで、駆動するものである。
前後進切換機構120は、トルクコンバータ110を介して伝達された内燃機関100からの駆動力をトロイダル式無段変速機1の後述する入力ディスク10に伝達するものである。前後進切換機構120は、例えば遊星歯車機構であり、内燃機関100からの駆動力を直接あるいは反転して、駆動力入力軸11を介して、入力ディスク10に伝達するものである。つまり、入力ディスク10には、入力ディスク10を正回転させる方向に作用する正回転駆動力として、あるいは入力ディスク10を逆回転させる方向に作用する逆回転駆動力として伝達される。ここで、前後進切換機構120による駆動力の伝達方向の切換制御は、油圧制御装置50から供給される作動油により行われる。従って、前後進切換機構120の切換制御は、トランスミッションECU60により行われる。
トロイダル式無段変速機1は、図1および図2に示すように、入力ディスク10と、出力ディスク20と、パワーローラ30と、トラニオン40とにより構成されている。実施の形態にかかるトロイダル式無段変速機1は、2つの入力ディスク10と、1つの出力ディスク20と、4つのパワーローラ30と、2つのトラニオン40と、油圧制御装置50と、トランスミッションECU60とにより構成されている。ここで、実施の形態にかかるトロイダル式無段変速機1は、各入力ディスク10と出力ディスク20との間にそれぞれ構成されるキャビティーC1、C2に、2つのパワーローラ30がそれぞれ配置された構造である。
各入力ディスク10は、前後進切換機構120の出力軸である駆動力入力軸11と連結されている。つまり、各入力ディスク10には、内燃機関100のエンジントルクが駆動力として伝達される。各入力ディスク10は、駆動力入力軸11により回転自在に支持されている。従って、各入力ディスク10は、駆動力入力軸11の軸線X1を中心として回転可能(図2に示す矢印A)である。ここで、前後進切換機構120により各入力ディスク10には、回転方向うち正回転方向A1の駆動力である正回転駆動力あるいは逆回転方向A2の駆動力である逆回転駆動力が伝達される。各入力ディスク10は、円板形状であり、出力ディスク20を挟んで軸方向において対向して配置されている。各入力ディスク10の出力ディスク20と対向する面には、各キャビティーC1,C2の2つのパワーローラ30がそれぞれ接触する接触面12が形成されている。
出力ディスク20は、動力伝達機構130と連結されている。出力ディスク20には、動力伝達機構130、ディファレンシャルギヤ140、ドライブシャフト150を介して車輪160からの後述する被駆動力が伝達される。被駆動力は、パワーローラ30を介して入力ディスク10に伝達される。出力ディスク20は、円板形状であり、駆動力入力軸11と同軸上に駆動力入力軸11に対して回転自在に支持され、各入力ディスク10の間に配置されている。従って、出力ディスク20は、駆動力入力軸11の軸線X1を中心として回転可能(図2に示す矢印A)である。出力ディスク20の各入力ディスク10と対向する面、すなわち出力ディスク20の軸方向において対向する面には、各キャビティーC1,C2のパワーローラ30がそれぞれ接触する接触面21が形成されている。
各パワーローラ30は、各入力ディスク10からの駆動力を出力ディスク20に、あるいは出力ディスク20からの被駆動力を各入力ディスク10に伝達するものである。パワーローラ30は、入力ディスク10および出力ディスク20と接触し、トロイダル式無段変速機1に供給されるトラクションオイルによりパワーローラ30と入力ディスク10の接触面12および出力ディスク20の接触面21との間に形成される油膜のせん断力を用いて駆動力あるいは被駆動力を伝達するものである。パワーローラ30は、パワーローラ本体31と、外輪32とより構成されている。なお、パワーローラ30は、トラニオン40の後述する本体部41に形成された空間部41aに配置されている。
パワーローラ本体31は、外周面に入力ディスク10および出力ディスク20に接触する接触面31aが形成されている。パワーローラ本体31は、外輪32に形成された回転軸32aに対して、ラジアルベアリングRBを介して回転自在に支持されている。また、パワーローラ30は、外輪32のパワーローラ30と対向する面に対してスラストベアリングSBを介して回転自在に支持されている。従って、パワーローラ30は、回転軸32aの軸線X2を中心として回転可能(図2に示す矢印B)である。
外輪32は、回転軸32aと偏芯軸32bとが形成されている。偏芯軸32bは、軸線X3が回転軸32aの軸線X2に対してずれた位置となるように形成されている。偏芯軸32bは、トラニオン40に対して、ラジアルベアリングRBを介して回転自在に支持されている。従って、外輪32は、偏芯軸32bの軸線X3を中心として回転可能(図2に示す矢印C)である。つまり、パワーローラ30は、トラニオン40に対して、軸線X2および軸線X3を中心として回転可能となる。これにより、パワーローラ30は、公転可能でかつ自転可能となる。
トラニオン40は、パワーローラ移動手段の一部を構成するものであり、パワーローラ30を入力ディスク10および出力ディスク20に対して移動させるものである。トラニオン40は、軸線X2および軸線X3が入力ディスク10および出力ディスク20の軸線X1と垂直な平面と平行となるように配置される。つまり、トラニオン40は、パワーローラ本体31の回転中心を入力ディスク10および出力ディスク20の回転中心に対して移動させるものである。ここで、各キャビティーC1,C2にそれぞれ2つのパワーローラ30が配置される場合は、入力ディスク10および出力ディスク20を挟んで、2つのパワーローラ30が向かい合うように、各パワーローラ30をそれぞれ支持する2つのトラニオン40が対向して配置されている。つまり、各キャビティーC1、C2には、それぞれ2つのトラニオン40が配置される。トラニオン40は、本体部41と、揺動軸42,43と、ピストン44とにより構成されている。
本体部41は、パワーローラ30が配置される空間部41aが形成されている。また、本体部41は、パワーローラ30の移動方向における両端部に揺動軸42,43がそれぞれ形成されている。
揺動軸42は、本体部41の両端部のうち、パワーローラ30の移動方向のうち一方向、すなわち第1方向Eの端部から第1方向Eに向かって突出して形成されている。揺動軸42は、支持部材70に対して、ラジアルベアリングRBにより、回転自在に支持されている。従って、揺動軸42は、支持部材70に対して、軸線X4を中心に回転可能(図2に示す矢印D)である。また、揺動軸42は、支持部材70に対して、ラジアルベアリングRBにより、パワーローラ30の移動方向である第1方向Eおよび第1方向Eと反対方向である第2方向Fに移動自在に支持されている。なお、支持部材70は、トロイダル式無段変速機1の図示しないハウジングに対して、揺動自在に支持されており、各キャビティーC1,C2にそれぞれ配置される2つのトラニオン40の揺動軸42が両端部に回転自在およびパワーローラ30の移動方向に移動自在にそれぞれ支持されている。ここで、第1方向Eとは、後述する第1油圧室OP1の油圧により、ピストン44の移動する方向、すなわちパワーローラ30が移動する方向である。また、第2方向Fとは、後述する第2油圧室OP2の油圧により、ピストン44が移動する方向、すなわちパワーローラ30が移動する方向である。
揺動軸43は、本体部41の両端部のうち、パワーローラ30の移動方向のうち他方向、すなわち第2方向Fの端部から第2方向Fに向かって突出して形成されている。揺動軸43は、揺動軸42と同一軸線X4上に形成されている。揺動軸43は、支持部材80に対して、ラジアルベアリングRBにより回転自在に支持されている。従って、揺動軸43は、支持部材80に対して、軸線X4を中心に回転可能(図2に示す矢印D)である。また、揺動軸43は、支持部材80に対して、ラジアルベアリングRBにより、第1方向Eおよび第2方向Fに移動自在に支持されている。なお、支持部材80は、トロイダル式無段変速機1の図示しないハウジングに対して、揺動自在に支持されており、各キャビティーC1,C2にそれぞれ配置される2つのトラニオン40の揺動軸43が両端部に回転自在およびパワーローラ30の移動方向に移動自在に支持されている。
以上の構成により、トラニオン40に回転自在に支持されたパワーローラ30は、接触した入力ディスク10および出力ディスク20に対して回転可能であり、入力ディスク10および出力ディスク20に対して第1方向Eおよび第2方向Fに移動可能であり、入力ディスク10および出力ディスク20に対して軸線X4を中心として揺動、すなわち傾転可能に支持されている。ここで、パワーローラ30の位置は、パワーローラ30の回転中心である軸線X2が入力ディスク10および出力ディスク20の回転中心である軸線X1と一致する中立位置を0として中立位置から第1方向Eあるいは第2方向Fへの移動量であるストローク量Lおよびパワーローラ30の回転中心である軸線X2が入力ディスク10および出力ディスク20の回転中心である軸線X1と直交する基準位置を0として基準位置から入力ディスク10および出力ディスク20に対する傾斜角度である傾転角θにより決定される。
ピストン44は、作動油の油圧を受けることで、トラニオン40を二方向、すなわち第1方向Eあるいは第2方向Fのいずれかに移動させるものである。ピストン44は、ピストンベース44aと、フランジ部44bとにより構成されている。
ピストンベース44aは、揺動軸43に固定されている。ピストンベース44aは、円筒形状であり、揺動軸43の先端部に挿入され固定されている。また、ピストンベース44aは、油圧室構成部材90に形成された連通孔91にシール部材を介して摺動自在に支持されている。なお、油圧室構成部材90は、トロイダル式無段変速機1の図示しないハウジングなどに固定されている。
フランジ部44bは、油圧室構成部材90に形成された連通孔91と連通する油圧室空間部92を2つの油圧室である第1油圧室OP1(図2に示す上側)と第2油圧室OP2(図2に示す下側)に区画するものである。フランジ部44bは、円板形状であり、ピストンベース44aの略中央部からピストンベース44aの径方向に突出して形成されている。ここで、フランジ部44bの径方向外側の端部には、シール部材Sが設けられている。従って、フランジ部44bにより区画された第1油圧室OP1と第2油圧室OP2とは、それぞれシール部材Sにより互いに作動油が漏れないようにシールされている。
ここで、第1油圧室OP1および第2油圧室OP2は、実施の形態では、キャビティーC1,C2ごとにそれぞれ2つ形成されることとなる。このとき、同一キャビティーC1,C2における2つのトラニオン40では、第1油圧室OP1および第2油圧室OP2の位置がトラニオン40ごとに入れ替わっている。つまり、一方のトラニオン40の第1油圧室OP1とした油圧室が他方のトラニオン40の第2油圧室OP2となり、一方のトラニオン40の第2油圧室OP2とした油圧室が他方のトラニオン40の第1油圧室OP1となる。従って、同一キャビティーC1,C2における2つのパワーローラ30は、第1油圧室OP1の油圧により第1方向E(トラニオン40ごとに向きが反対)に移動し、第2油圧室OP2の油圧により第2方向F(トラニオン40ごとに向きが反対)に移動する。
油圧制御装置50は、パワーローラ移動手段の一部を構成するものであり、トランスミッションの各部に作動油を供給するものである。油圧制御装置50は、少なくともオイルタンク51と、オイルポンプ52と、第1流量制御弁53と、第2流量制御弁54と、第1通路55と、第2通路56と、供給通路57と、排出油路58とにより構成されている。
オイルタンク51には、トランスミッションの各部に供給する作動油が貯留されている。
オイルポンプ52は、上述のように、内燃機関100の運転、例えばクランクシャフト101の回転に連動して作動するものであり、オイルタンク51に貯留されている作動油を吸引、加圧し、吐出するものである。この加圧されて吐出された作動油は、図示しないプレッシャーレギュレータを介して、第1流量制御弁53および第2流量制御弁54や、他の流量制御弁などに供給される。なお、プレッシャーレギュレータは、プレッシャーレギュレータよりも下流側における油圧が所定油圧以上となった際に、下流側にある作動油の一部をオイルタンク51に戻すものである。
第1流量制御弁53は、第1移動手段であり、第1油圧室OP1に作動油を供給し、第2油圧室OP2から作動油を排出するものである。第1流量制御弁53は、油路構成本体部53aと、スプール弁子53bと、作動油供給ポート53cと、作動油排出ポート53dと、第1油圧室連通ポート53eと、第2油圧室連通ポート53fと、第1弾性部材53gと、第1ソレノイド53hとにより構成されている。
油路構成本体部53aは、油路を構成するものであり、構成された油路と連通する作動油供給ポート53c、作動油排出ポート53d、第1油圧室連通ポート53eおよび第2油圧室連通ポート53fが形成されるものである。また、油路構成本体部53aに構成された油路は、スプール弁子53bが移動可能に挿入されている。
スプール弁子53bは、各ポートの連通状態を切り替えるものである。スプール弁子53bは、作動油供給ポート53cと第1油圧室連通ポート53eとの連通、連通の遮断を行うものである。また、スプール弁子53bは、作動油排出ポート53dと第2油圧室連通ポート53fとの連通、連通の遮断を行うものである。
作動油供給ポート53cは、供給油路57を介して、オイルポンプ52と接続されている。従って、作動油供給ポート53cには、オイルポンプ52により加圧された作動油が供給される。
作動油排出ポート53dは、排出油路58を介して、オイルタンク51と接続されている。
第1油圧室連通ポート53eは、第1通路55を介して第1油圧室OP1と接続されている。また、第1油圧室連通ポート53eは、第1通路55を介して、第2流量制御弁54の後述する第1油圧室連通ポート54fと接続されている。なお、第1通路55は、同一キャビティー(例えば、キャビティーC1)や、他のキャビティー(例えば、キャビティーC2)に配置される他のトラニオン40に形成された他の第1油圧室とも連通している。
第2油圧室連通ポート53fは、第2通路56を介して第2油圧室OP2と接続されている。なお、第2油圧室連通ポート53fは、第2通路56を介して、第2流量制御弁54の後述する第2油圧室連通ポート54eと接続されている。なお、第2通路56は、同一キャビティー(例えば、キャビティーC1)や、他のキャビティー(例えば、キャビティーC2)に配置される他のトラニオン40に形成された他の第2油圧室とも連通している。
第1弾性部材53gは、スプール弁子53bをOFF側(図2に示す左側)に移動させる付勢力を発生するものである。第1弾性部材53gは、スプール弁子53bの両端部のうち、ON側(図2に示す右側)端部と、油路構成本体部53aのON側油路端部との間に付勢された状態で配置されている。従って、スプール弁子53bには、第1弾性部材53gにより、スプール弁子53bをOFF側に移動させる付勢力が作用する。
第1ソレノイド53hは、スプール弁子53bをON側に移動させる押圧力を発生する。第1ソレノイド53hは、供給される駆動電流に応じて発生する電磁力により、スプール弁子53bと同軸上に配置された駆動軸53iをON側に移動させるものである。第1ソレノイド53hは、油路構成本体部53aのOFF側油路端部に設けられている。第1ソレノイド53hは、トランスミッションECU60と接続されており、トランスミッションECU60により駆動電流が制御される。従って、スプール弁子53bには、第1ソレノイド53hにより、スプール弁子53bをON側に移動させる押圧力が供給される駆動電流に応じて作用する。
ここで、第1流量制御弁53の動作について説明する。第1流量制御弁53がOFF状態(図2に示すOFFの部分)では、トランスミッションECU60は、第1ソレノイド53hに供給する駆動電流を0Aとする。従って、スプール弁子53bには、第1ソレノイド53hにより押圧力が発生しないため、第1弾性部材53gにより発生する付勢力のみが作用する。従って、スプール弁子53bは、OFF側に移動し、OFF位置(図2に示すOFFの部分)に位置する。このとき、作動油供給ポート53cと第1油圧室連通ポート53eとの連通が遮断され、作動油排出ポート53dと第2油圧室連通ポート53fとの連通が遮断される。つまり、第1流量制御弁53がOFF状態では、第1油圧室OP1にオイルポンプ52により加圧された作動油が供給されず、第2油圧室OP2から作動油が排出されない。
第1流量制御弁53がON状態(図2に示すONの部分)では、トランスミッションECU60は、第1ソレノイド53hに駆動電流を供給する。このとき、トランスミッションECU60は、トロイダル式無段変速機1の変速比や変速速度などに基づいて駆動電流を決定する。従って、スプール弁子53bには、第1ソレノイド53hにより発生する押圧力と、第1弾性部材53gにより発生する付勢力とが作用する。第1ソレノイド53hにより発生する押圧力が第1弾性部材53gにより発生する付勢力よりも大きくなると、スプール弁子53bは、ON側に移動し、OFF位置以外であるON位置(最大ON位置は、図2に示すONの部分)に位置する。このとき、作動油供給ポート53cと第1油圧室連通ポート53eとが連通され、作動油排出ポート53dと第1油圧室連通ポート53eとが連通される。つまり、第1流量制御弁53がON状態では、第1油圧室OP1にオイルポンプ52により加圧された作動油が供給され、第2油圧室OP2から作動油が排出される。これにより、第1油圧室OP1の油圧により、ピストン44が第1方向Eに押圧され、トラニオン40に回転自在に支持されたパワーローラ30が第1方向Eに移動する。このとき、スプール弁子53bのON側への移動量により、パワーローラ30の第1方向Eへの移動速度が調整される。
第2流量制御弁54は、第2移動手段であり、第2油圧室OP2に作動油を供給し、第1油圧室OP1から作動油を排出するものである。第2流量制御弁54は、油路構成本体部54aと、スプール弁子54bと、作動油供給ポート54cと、作動油排出ポート54dと、第2油圧室連通ポート54eと、第1油圧室連通ポート54fと、第2弾性部材54gと、第2ソレノイド54hとにより構成されている。
油路構成本体部54aは、油路を構成するものであり、構成された油路と連通する作動油供給ポート54c、作動油排出ポート54d、第2油圧室連通ポート54eおよび第1油圧室連通ポート54fが形成されるものである。また、油路構成本体部54aに構成された油路は、スプール弁子54bが移動可能に挿入されている。
スプール弁子54bは、各ポートの連通状態を切り替えるものである。スプール弁子54bは、作動油供給ポート54cと第2油圧室連通ポート54eとの連通、連通の遮断を行うものである。また、スプール弁子54bは、作動油排出ポート54dと第1油圧室連通ポート54fとの連通、連通の遮断を行うものである。
作動油供給ポート54cは、供給油路57を介して、オイルポンプ52と接続されている。従って、作動油供給ポート54cには、オイルポンプ52により加圧された作動油が供給される。
作動油排出ポート54dは、排出油路58を介して、オイルタンク51と接続されている。
第2油圧室連通ポート54eは、第2通路56を介して第2油圧室OP2と接続されている。
第1油圧室連通ポート54fは、第1通路55を介して第1油圧室OP1と接続されている。
第2弾性部材54gは、スプール弁子54bをOFF側(図2に示す左側)に移動させる付勢力を発生するものである。第2弾性部材54gは、スプール弁子54bの両端部のうち、ON側(図2に示す右側)端部と、油路構成本体部54aのON側油路端部との間に付勢された状態で配置されている。従って、スプール弁子54bには、第2弾性部材54gにより、スプール弁子54bをOFF側に移動させる付勢力が作用する。
第2ソレノイド54hは、スプール弁子54bをON側に移動させる押圧力を発生する。第2ソレノイド54hは、供給される駆動電流に応じて発生する電磁力により、スプール弁子54bと同軸上に配置された駆動軸54iをON側に移動させるものである。第2ソレノイド54hは、油路構成本体部54aのOFF側油路端部に設けられている。第2ソレノイド54hは、トランスミッションECU60と接続されており、トランスミッションECU60により駆動電流が制御される。従って、スプール弁子54bには、第2ソレノイド54hにより、スプール弁子54bをON側に移動させる押圧力が供給される駆動電流に応じて作用する。
ここで、第2流量制御弁54の動作について説明する。第2流量制御弁54がOFF状態(図2に示すOFFの部分)では、トランスミッションECU60は、第2ソレノイド54hに供給する駆動電流を0Aとする。従って、スプール弁子54bには、第2ソレノイド54hにより押圧力が発生しないため、第2弾性部材54gにより発生する付勢力のみが作用する。従って、スプール弁子54bは、OFF側に移動し、OFF位置(図2に示すOFFの部分)に位置する。このとき、作動油供給ポート54cと第2油圧室連通ポート54eとの連通が遮断され、作動油排出ポート54dと第1油圧室連通ポート54fとの連通が遮断される。つまり、第2流量制御弁54がOFF状態では、第2油圧室OP2にオイルポンプ52により加圧された作動油が供給されず、第1油圧室OP1から作動油が排出されない。
第2流量制御弁54がON状態(図2に示すONの部分)では、トランスミッションECU60は、第2ソレノイド54hに駆動電流を供給する。このとき、トランスミッションECU60は、トロイダル式無段変速機1の変速比や変速速度などに基づいて駆動電流を決定する。従って、スプール弁子54bには、第2ソレノイド54hにより発生する押圧力と、第2弾性部材54gにより発生する付勢力とが作用する。従って、第2ソレノイド54hにより発生する押圧力が第2弾性部材54gにより発生する付勢力よりも大きくなると、スプール弁子54bは、ON側に移動し、OFF位置以外であるON位置(最大ON位置は、図2に示すONの部分)に位置する。このとき、作動油供給ポート54cと第2油圧室連通ポート54eとが連通され、作動油排出ポート54dと第1油圧室連通ポート54fとが連通される。つまり、第2流量制御弁54がON状態では、第2油圧室OP2にオイルポンプ52により加圧された作動油が供給され、第1油圧室OP1から作動油が排出される。これにより、第2油圧室OP2の油圧により、ピストン44が第2方向Fに押圧され、トラニオン40に回転自在に支持されたパワーローラ30が第2方向Fに移動する。このとき、スプール弁子54bのON側への移動量により、パワーローラ30の第2方向Fへの移動速度が調整される。
トランスミッションECU60は、変速比制御手段である。トランスミッションECU60は、トランスミッション、特にトロイダル式無段変速機1の変速比γを制御するものである。トランスミッションECU60は、入力ディスク10の回転方向および入力ディスク10の回転数である入力回転数Ninを検出する入力回転数センサ61、パワーローラ30のストローク量Lを検出するストロークセンサ62、傾転角θを検出する傾転角センサ63、図示しないシフトレバーに設けられたシフトポジションを検出するシフトポジションセンサ64およびエンジンECU170が接続されている。従って、トランスミッションECU60には、入力ディスク10の回転方向および入力回転数Nin、パワーローラ30のストローク量Lおよび傾転角θ、シフトポジション、内燃機関100の運転状態などが入力される。トランスミッションECU60は、上記入力ディスク10の回転方向および入力回転数Nin、ストローク量L、傾転角θ、内燃機関100の運転状態およびシフトポジションなどに基づいて、油圧制御装置50を介して変速比γを制御するものである。トランスミッションECU60は、基本的には、まず、設定された目標変速比γoに基づいて、目標入力回転数Ninoを設定する。トランスミッションECU60に接続されたエンジンECU170は、入力回転数Ninが設定された目標入力回転数Ninoとなるようにフィードバック制御であるF/B制御を行う。次に、トランスミッションECU60は、検出されたパワーローラ30のストローク量Lおよび傾転角θに基づいて、変速比γが設定された目標変速比γoとなるようにフィードバック制御であるF/B制御を行う。また、トランスミッションECU60は、変速比γの応答性を向上するためにF/B制御とともに、フィードフォワード制御であるF/F制御を行う。
トランスミッションECU60は、変速比γを設定した目標変速比γoに変更する場合、すなわち変速比γの変速の場合は、入力ディスク10の回転方向に基づいて、第1ソレノイド53hあるいは第2ソレノイド54hに駆動電流を供給し、第1流量制御弁53あるいは第2流量制御弁54をON状態とすることで、パワーローラ30が設定した変速比γに応じた傾転角θとなるまで、中立位置から第1方向Eあるいは第2方向Fにトラニオン40を移動させる。例えば、入力ディスク10が正回転している状態では、第1流量制御弁53をON状態、第2流量制御弁54をOFF状態として、第1油圧室OP1の油圧により、パワーローラ30を中立位置から第1方向Eに移動させると、入力ディスク10の回転方向およびパワーローラ30の移動方向が一致することにより、パワーローラ30に入力ディスク10の中心へ向かわせる方向の力が作用し、変速比γが増加しダウンシフトが行われる。また、入力ディスク10が正回転している状態では、第1流量制御弁53をOFF状態、第2流量制御弁54をON状態として、第2油圧室OP2の油圧により、パワーローラ30を中立位置から第2方向Fに移動させると、入力ディスク10の回転方向およびパワーローラ30の移動方向が一致しないことにより、パワーローラ30に入力ディスク10の中心から遠ざける方向の力が作用し、変速比γが減少しアップシフトが行われる。また、設定された変速比γを固定する場合は、第1ソレノイド53hあるいは第2ソレノイド54hに駆動電流を供給し、第1流量制御弁53あるいは第2流量制御弁54をON状態とすることで、パワーローラ30が中立位置となるまで、第1方向Eあるいは第2方向Fにトラニオン40を移動させる。
ここで、車両が正回転駆動力により前進している場合に、ダウンシフトを行う場合には、第1油圧室OP1の油圧をP1、第2油圧室OP2の油圧をP2、正回転駆動力をTinとした場合、P1,P2,Tinが下記の式(1)の関係を満たすように、第1流量制御弁53を制御する。なお、Nはキャビティーの数、Mは1つのキャビティーに配置されるパワーローラ30の数、Apは第1油圧室OP1および第2油圧室PO2の受圧面積、r1は入力ディスク10とパワーローラ30との接触半径(軸線X1からの距離)である。
(P2−P1)×Ap×N×M×r1/2<Tin …(1)
一方、車両が正回転駆動力により前進している場合に、アップシフトを行う場合には、上記P1,P2,Tinが下記の式(2)の関係を満たすように、第2流量制御弁54を制御する。
(P2−P1)×Ap×N×M×r1/2>Tin …(2)
また、トランスミッションECU60は、異常検出手段でもある。トランスミッションECU60は、油圧制御装置50の第1流量制御弁53および第2流量制御弁54の異常を検出するものである。ここで、第1ソレノイド53hあるいは第2ソレノイド54hの少なくともいずれかに駆動電流を供給するための配線が断線すると、トランスミッションECU60がパワーローラ30を移動させるために駆動電流を供給しても、配線が断線していることによりソレノイドが駆動できず、パワーローラ30が第1油圧室OP1あるいは第2油圧室OP2の油圧により移動できなくなる。トランスミッションECU60は、例えば上記ストロークセンサ62により検出されたストローク量Lあるいは傾転角センサ63により検出された傾転角θに基づいて第1流量制御弁53および第2流量制御弁54の異常を検出することができる。
動力伝達機構130は、トロイダル式無段変速機1とディファレンシャルギヤ140との間で、駆動力あるいは被駆動力の伝達を行うものである。動力伝達機構130は、出力ディスク20とディファレンシャルギヤ140との間に配置されている。
ディファレンシャルギヤ140は、動力伝達機構130と車輪160との間で、駆動力あるいは被駆動力の伝達を行うものである。ディファレンシャルギヤ140は、動力伝達機構130と車輪160との間に配置されている。ディファレンシャルギヤ140には、ドライブシャフト150が連結されている。ドライブシャフト150には、車輪160が取り付けられている。
エンジンECU170は、内燃機関100の運転を制御するものである。つまり、エンジンECU170は、エンジントルクである駆動力を制御するものである。例えば、エンジンECU170は、図示しない車両の運転者の意志あるいは運転者の意志に拘わらず自動的に駆動力を制御する。なお、エンジンECU170は、トランスミッションECU60と電気的に接続されている。
警報装置180は、図示しない車両の運転者に警報を発するものである。警報装置180は、例えば、コントロールパネルに設けられたインジケータや、車室に設けられたスピーカーや、シートに設けられた振動装置などである。警報装置180は、トランスミッションECU60と接続されており、トランスミッションECU60により作動される。
制動装置190は、接線力低減手段であり、図示しない車両に制動力を作用させ、車両を手動あるいは自動的に減速および停止することができるものである。制動装置190は、ブレーキECU200と接続されている。制動装置190は、例えば運転者によるブレーキペダルの操作量、あるいはブレーキECU200により設定された要求制動力に応じた制動力を車輪160に作用させるブレーキ装置などである。
ブレーキECU200は、制動装置190を制御するものである。ブレーキECU200は、例えば制動装置190により図示しない車両を自動的に停止させるために必要な要求制動力を設定し、要求制動力に基づいて制動装置190を制御し、車両を停止させることができる。ブレーキECU200は、トランスミッションECU60と接続されており、トランスミッションECU60からの指令に基づいて制動装置190を制御することができる。
次に、実施の形態にかかるトロイダル式無段変速機1の制御方法について説明する。図3は、第1流量制御弁のみ異常時におけるトロイダル式無段変速機の制御フローを示す図である。図4〜図7は、第1流量制御弁のみ異常時におけるパワーローラの状態説明図である。ここでは、まず、トロイダル式無段変速機1の第1移動手段である第1流量制御弁53が異常で、第2移動手段である第2流量制御弁54が正常である場合におけるトロイダル式無段変速機1の制御方法について説明する。なお、トロイダル式無段変速機1の制御は、制御周期ごとに実行される。
まず、トランスミッションECU60は、第1流量制御弁53のみが異常であるか否かを判定する(ステップST101)。ここでは、トランスミッションECU60が第1流量制御弁53および第2流量制御弁54が異常であるか否かを検出し、第1流量制御弁53が異常で第2流量制御弁54が正常、すなわち第1油圧室OP1の油圧によるパワーローラ30の第1方向Eへの移動が不可能で、第2油圧室OP2の油圧による第2方向Fへの移動が可能な状態であるか否かを判定する。
次に、トランスミッションECU60は、第1流量制御弁53のみが異常であると判定する(ステップST101肯定)と、F/F制御を禁止する(ステップST102)。ここでは、トランスミッションECU60は、F/B制御とともに、F/F制御を行っている場合、第1流量制御弁53の異常を検出するとF/F制御を禁止し、F/B制御のみを行う。F/F制御は、第1流量制御弁53および第2流量制御弁54が正常である場合を前提に行える制御である。従って、第1流量制御弁53が異常である場合にも、F/F制御を行うと変速制御性が悪化する虞がある。これにより、トランスミッションECU60がF/F制御を禁止することで、第1流量制御弁53に異常が発生しても、トロイダル式無段変速機1の変速制御性の悪化を抑制することができる。
次に、トランスミッションECU60は、図示しないシフトレバーのポジションがニュートラルポジションであるか否かを判定する(ステップST103)。ここでは、トランスミッションECU60は、シフトポジションセンサ64により検出されたシフトレバーのポジションがニュートラルポジション、すなわちトロイダル式無段変速機1に内燃機関100からの駆動力が伝達されない状態であるか否かを判定する。
次に、トランスミッションECU60は、図示しないシフトレバーのポジションがニュートラルポジションでないと判定する(ステップST103否定)と、目標入力回転数Ninoの変化を制限する(ステップST104)。ここでは、トランスミッションECU60は、設定された目標変速比γoに基づいて、例えば、目標入力回転数Ninoの変化を調整するなまし係数に基づいて目標入力回転数Ninoが設定されている場合、なまし係数を変更することで、目標入力回転数Ninoの変化を制限する。ここで、第1流量制御弁53が異常であるフェール時においては、後述するように、入力ディスク10に伝達された正回転駆動力が被駆動力よりも大きい状態、すなわち駆動力により駆動する駆動状態と、被駆動力が入力ディスク10に伝達された駆動力よりも大きい状態、すなわち被駆動力により駆動する被駆動状態とが切り換わることで、変速比γの制御可能状態と、制御困難状態とが切り換わる。従って、変速比γの制御困難状態から制御可能状態に切り換わった際に、設定された目標変速比γoに急変速する虞がある。そこで、トランスミッションECU60は、目標入力回転数Ninoの変化を制限することで、設定された目標変速比γoへの変速速度を抑制する。これにより、第1流量制御弁53に異常が発生しても、変速比γが急変速することを抑制することができる。
次に、トランスミッションECU60は、変速比γの制御範囲を制限する(ステップST105)。ここでは、トランスミッションECU60は、第1流量制御弁53の異常を検出すると、目標変速比γoとして設定することができる変速比γの範囲を第1流量制御弁53および第2流量制御弁54が正常の場合において目標変速比γoとして設定することができる変速比γの範囲よりも狭くする。ここで、目標入力回転数Ninoの変化を制限された状態で、変速比γが最小変速比γmin近傍であると、車両の急停止時に最大変速比γmax近傍まで変速比γを変更することができない虞があり、車両の再発進時における発進性が悪化するという問題がある。また、変速比γが最大変速比γmax近傍であると、入力ディスク10に伝達された内燃機関100からの駆動力の変動が大きく伝達されるため、パワーローラ30に作用する力の変動を抑制することができないという問題がある。そこで、変速比γの最大変速比γmax近傍および最小変速比γmin近傍の変速比γを含まない範囲とする。これにより、第1流量制御弁53が異常であるフェール時においては、パワーローラ30に作用する力の変動を小さくすることができ、発進性が悪化することを抑制することができる。
次に、トランスミッションECU60は、図示しないシフトレバーのポジションが前進ポジションであるか否かを判定する(ステップST106)。ここでは、トランスミッションECU60は、シフトポジションセンサ64により検出されたシフトレバーのポジションが前進ポジション、すなわちトロイダル式無段変速機1に内燃機関100からの駆動力が正回転駆動力として伝達される状態であるか否かを判定する。
次に、トランスミッションECU60は、図示しないシフトレバーのポジションが前進ポジションであると判定する(ステップST106肯定)と、ロックアップクラッチ113をOFFとする(ステップST107)。ここでは、トランスミッションECU60は、トルクコンバータ110がロックアップクラッチ113を係合して、ロックアップクラッチ113をONとしている場合、第1流量制御弁53の異常を検出するとロックアップクラッチ113の係合を解除してロックアップクラッチ113をOFFとする。ここで、トルクコンバータ110は、ロックアップクラッチ113をONして作動油を介して内燃機関100からの駆動力を伝達する場合よりも、ロックアップクラッチ113をOFFして作動油を介して内燃機関100からの駆動力を伝達する場合のほうが作動油がダンパとして機能するため、内燃機関100からの駆動力の変動を入力ディスク10に伝達されることを抑制することができる。つまり、第1流量制御弁53が異常であるフェール時においては、ロックアップクラッチ113をOFFとすることで、内燃機関100からの駆動力の変動が入力ディスク10に伝達されることを抑制することができる。従って、駆動力の変動に応じたショックを抑制することができる。
次に、トランスミッションECU60は、入力ディスク10が正回転であるか否かを判定する(ステップST108)。ここでは、トランスミッションECU60は、入力回転数センサ61により検出された入力ディスク10の回転方向が図示しない車両が前進する正回転方向であるか否かを判定する。
次に、トランスミッションECU60は、入力ディスク10が正回転であると判定する(ステップST108肯定)と、エンジンECU170を介して、駆動力を増加する(ステップST109)。ここで、入力ディスク10は、入力ディスク10に伝達される駆動力である正回転駆動力により回転する方向と同一方向である正回転方向A1に回転している場合となる。
入力ディスク10に伝達された正回転駆動力が被駆動力よりも大きい状態、すなわち駆動力により駆動する駆動状態では、図4に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAは、正回転方向A1に作用する。従って、正回転駆動力および被駆動力に基づいてパワーローラ30に作用する接線力FTは、第1方向Eとなる。ここで、異常である第1流量制御弁53は上記接線力FTの接線力方向と同一方向にパワーローラ30を移動させることができ、正常である第2流量制御弁54は接線力FTの接線力方向と反対方向にパワーローラ30を移動させることができることとなる。つまり、トランスミッションECU60は、正常である第2流量制御弁54により第1方向Eの接線力FTに対向してパワーローラ30を第2方向Fに移動させることができるので、入力ディスク10が入力ディスク10に伝達される駆動力である正回転駆動力により回転する方向と同一方向である正回転方向A1に回転しており、駆動状態の場合は、変速比γの制御を行うことができる。
一方、入力ディスク10に伝達された正回転駆動力よりも被駆動力が大きい状態、すなわち被駆動力により駆動する被駆動状態では、図5に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAは、逆回転方向A2に作用する。従って、接線力FTは、第2方向Fとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第2流量制御弁54により第2方向Fの接線力FTに対向してパワーローラ30を第1方向Eに移動させることができないので、入力ディスク10が正回転方向A1に回転している状態で、パワーローラ30が接線力FTにより第2方向Fに移動してアップシフトが行われる虞がある。そこで、トランスミッションECU60は、第2方向Fへの接線力FTを低減させるために、接続されているエンジンECU170により内燃機関100を運転制御することで、正回転駆動力を増加する。
具体的には、エンジンECU170は、正回転駆動力を被駆動状態から駆動状態へと切り替わることができる、すなわち被駆動力以上となるまで増加するように、内燃機関100を運転制御する。ここで、被駆動力は、車両が前進している状態で発生するものであり、図示しない車両の走行抵抗(車輪160に装着されたタイヤの転がり抵抗、車両の空気抵抗、走行路面の勾配抵抗、コーナリング抵抗、制動装置190の引きずりなど)と、トロイダル式無段変速機1から車輪160までの下流側フリクションとに基づくものである。従って、エンジンECU170は、例えば現在の被駆動力を(走行抵抗+下流側フリクション)×タイヤ半径/ディファレンシャルギヤ140のギヤ比/動力伝達機構130のギヤ比/変速比γにより算出し、正回転駆動力を算出された現在の被駆動力以上となるように、内燃機関100を運転制御する。従って、第2方向Fへの接線力FTを低減あるいは0とすることができ、接線力FTによるアップシフトを抑制することができる。これにより、第1流量制御弁53に異常が発生しても、変速制御性の悪化を抑制することができる。また、予期せぬアップシフトを抑制することができるので、ショックの発生を抑制することができる。なお、エンジンECU170は、入力ディスク10が入力ディスク10に伝達される駆動力である正回転駆動力により回転する方向と同一方向である正回転方向A1に回転している場合に、正回転駆動力の下限値を現在の被駆動力に設定して、正回転駆動力を下限値以上となるように、内燃機関100を運転制御することで、被駆動状態で正回転駆動力を増加するようにしても良い。
また、トランスミッションECU60は、図3に示すように、入力ディスク10が正回転でない、すなわち逆回転であると判定する(ステップST108否定)と、ブレーキECU200を介して制動装置190が発生する制動力により車両を停止させる(ステップST110)。ここで、入力ディスク10は、入力ディスク10に伝達される駆動力である正回転駆動力により回転する方向と反対方向である逆回転方向A2に回転している場合となる。
入力ディスク10に伝達された正回転駆動力が被駆動力よりも大きい状態、すなわち駆動力により駆動する駆動状態では、図6に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAは、正回転方向A1に作用する。従って、接線力FTは、第1方向Eとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第2流量制御弁54により第1方向Eの接線力FTに対向してパワーローラ30を第2方向Fに移動させることができるので、入力ディスク10が入力ディスク10に伝達される駆動力である正回転駆動力により回転する方向と反対方向である逆回転方向A2に回転しており、駆動状態の場合は、変速比γの制御を行うことができる。
一方、入力ディスク10に伝達された正回転駆動力よりも被駆動力が大きい状態、すなわち被駆動力により駆動する被駆動状態では、図7に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAは、逆回転方向A2に作用する。従って、接線力FTは、第2方向Fとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第2流量制御弁54により第2方向Fの接線力FTに対向してパワーローラ30を第1方向Eに移動させることができないので、入力ディスク10が逆回転方向A2に回転している状態で、パワーローラ30が接線力FTにより第2方向Fに移動してダウンシフトが行われる虞がある。そこで、トランスミッションECU60は、第2方向Fへの接線力FTを低減させるために、接続されているブレーキECU200により制動装置190を制御することで、図示しない車両に制動力を作用させ、車両を停止させて、入力ディスク10の回転を停止する。
具体的には、ブレーキECU200は、制動装置190により制動力を自動的に発生させる。ここで、被駆動力は、車両が後進している状態で発生するものであり、図示しない車両のイナーシャに基づくものである。従って、制動装置190により制動力が発生することで、車速が低下し、被駆動力を減少することができる。そして、車両が停止することで、被駆動力を0とすることができる。これらにより、第2方向Fへの接線力FTを低減することができ、接線力FTによるダウンシフトを抑制することができる。これにより、第1流量制御弁53に異常が発生しても、変速制御性の悪化を抑制することができる。また、予期せぬダウンシフトを抑制することができるので、ショックの発生、内燃機関100の吹き上がりを抑制することができる。
また、トランスミッションECU60は、図3に示すように、シフトレバーのポジションが前進ポジションでない、すなわち後進ポジションであると判定する(ステップST106否定)と、入力ディスク10が正回転であるか否かを判定する(ステップST111)。
次に、トランスミッションECU60は、入力ディスク10が正回転であると判定する(ステップST111肯定)と、ロックアップクラッチ113をOFFとする(ステップST112)。従って、第1流量制御弁53が異常であるフェール時においては、ロックアップクラッチ113をOFFとすることで、内燃機関100からの駆動力の変動が入力ディスク10に伝達されることを抑制することができる。従って、上述のように、第1流量制御弁53が異常であるフェール時において、駆動力の変動に応じたショックを抑制することができる。
次に、トランスミッションECU60は、エンジンECU170を介して、駆動力を減少する(ステップST113)。ここで、入力ディスク10は、入力ディスク10に伝達される駆動力である逆回転駆動力により回転する方向と反対方向である正回転方向A1に回転している場合となる。
入力ディスク10に伝達された逆回転駆動力よりも被駆動力が大きい状態、すなわち被駆動力により駆動する被駆動状態では、図4に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAは、正回転方向A1に作用する。従って、パワーローラ30に作用する接線力FTは、第1方向Eとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第2流量制御弁54により第1方向Eの接線力FTに対向してパワーローラ30を第2方向Fに移動させることができるので、入力ディスク10が入力ディスク10に伝達される駆動力である逆回転駆動力により回転する方向と反対方向である正回転方向A1に回転しており、被駆動状態の場合は、変速比γの制御を行うことができる。
一方、入力ディスク10に伝達された逆回転駆動力が被駆動力よりも大きい状態、すなわち駆動力により駆動する駆動状態では、図5に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAは、逆回転方向A2に作用する。従って、接線力FTは、第2方向Fとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第2流量制御弁54により第2方向Fの接線力FTに対向してパワーローラ30を第1方向Eに移動させることができないので、入力ディスク10が正回転方向A1に回転している状態で、パワーローラ30が接線力FTにより第2方向Fに移動してアップシフトが行われる虞がある。そこで、トランスミッションECU60は、第2方向Fへの接線力FTを低減させるために、接続されているエンジンECU170により内燃機関100を運転制御することで、逆回転駆動力を減少する。
具体的には、エンジンECU170は、逆回転駆動力を駆動状態から被駆動状態へと切り替わることができる、すなわち被駆動力以下となるまで減少するように、内燃機関100を運転制御する。ここで、被駆動力は、車両が前進している状態で発生するものであり、図示しない車両の走行抵抗(車輪160に装着されたタイヤの転がり抵抗、車両の空気抵抗、走行路面の勾配抵抗、コーナリング抵抗、制動装置190の引きずりなど)と、トロイダル式無段変速機1から車輪160までの下流側フリクションとに基づくものである。従って、エンジンECU170は、例えば現在の被駆動力を(走行抵抗+下流側フリクション)×タイヤ半径/ディファレンシャルギヤ140のギヤ比/動力伝達機構130のギヤ比/変速比γにより算出し、逆回転駆動力を算出された現在の被駆動力以下となるように、内燃機関100を運転制御する。従って、第2方向Fへの接線力FTを低減あるいは0とすることができ、接線力FTによるアップシフトを抑制することができる。これにより、第1流量制御弁53に異常が発生しても、変速制御性の悪化を抑制することができる。また、予期せぬアップシフトを抑制することができるので、発進性が悪化することを抑制することができる。なお、エンジンECU170は、入力ディスク10が入力ディスク10に伝達される駆動力である逆回転駆動力により回転する方向と同一方向である逆回転方向A2に回転している場合に、逆回転駆動力の上限値を現在の被駆動力に設定して、逆回転駆動力を下限値以下となるように、内燃機関100を運転制御することで、駆動状態で逆回転駆動力を減少するようにしても良い。
次に、トランスミッションECU60は、図3に示すように、ブレーキECU200を介して制動装置190が発生する制動力により車両を停止させる(ステップST114)。ここでは、ブレーキECU200は、制動装置190により制動力を自動的に発生することで、車両を停止させる。
また、トランスミッションECU60は、入力ディスク10が正回転でない、すなわち逆回転であると判定する(ステップST111否定)と、エンジンECU170を介して、駆動力を減少する(ステップST115)。ここで、入力ディスク10は、入力ディスク10に伝達される駆動力である逆回転駆動力により回転する方向と同一方向である逆回転方向A2に回転している場合となる。
入力ディスク10に伝達された逆回転駆動力よりも被駆動力が大きい状態、すなわち被駆動力により駆動する被駆動状態では、図6に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAは、正回転方向A1に作用する。従って、パワーローラ30に作用する接線力FTは、第1方向Eとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第2流量制御弁54により第1方向Eの接線力FTに対向してパワーローラ30を第2方向Fに移動させることができるので、入力ディスク10が入力ディスク10に伝達される駆動力である逆回転駆動力により回転する方向と反対方向である正回転方向A1に回転しており、被駆動状態の場合は、変速比γの制御を行うことができる。
一方、入力ディスク10に伝達された逆回転駆動力が被駆動力よりも大きい状態、すなわち駆動力により駆動する駆動状態では、図7に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAは、逆回転方向A2に作用する。従って、接線力FTは、第2方向Fとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第2流量制御弁54により第2方向Fの接線力FTに対向してパワーローラ30を第1方向Eに移動させることができないので、入力ディスク10が逆回転方向A2に回転している状態で、パワーローラ30が接線力FTにより第2方向Fに移動してダウンシフトが行われる虞がある。そこで、トランスミッションECU60は、第2方向Fへの接線力FTを低減させるために、接続されているエンジンECU170により内燃機関100を運転制御することで、逆回転駆動力を減少する。
ここで、トランスミッションECU60は、トロイダル式無段変速機1の現在の変速比γに応じて、エンジンECU170を介して逆回転駆動力の減少方法を変更する。
現在の変速比γが最大変速比γmaxからダウンシフトしても図示しない車両の挙動に影響を与えない範囲αを引いた値未満である場合(γ<γmax−α)、エンジンECU170は、逆回転駆動力を駆動状態から被駆動状態へと切り替わることができる、すなわち被駆動力以下となるまで減少するように、内燃機関100を運転制御する。ここで、被駆動力は、車両が後進している状態で発生するものであるので、図示しない車両の走行抵抗(車輪160に装着されたタイヤの転がり抵抗、車両の空気抵抗、走行路面の勾配抵抗、コーナリング抵抗、制動装置190の引きずりなど)と、トロイダル式無段変速機1から車輪160までの下流側フリクションとに基づくものである。従って、エンジンECU170は、例えば現在の被駆動力を(走行抵抗+下流側フリクション)×タイヤ半径/ディファレンシャルギヤ140のギヤ比/動力伝達機構130のギヤ比/変速比γにより算出し、逆回転駆動力を算出された現在の被駆動力以下となるように、内燃機関100を運転制御する。従って、第2方向Fへの接線力FTを低減あるいは0とすることができ、接線力FTによるダウンシフトを抑制することができる。これにより、第1流量制御弁53に異常が発生しても、変速制御性の悪化を抑制することができる。また、予期せぬダウンシフトを抑制することができるので、ショックの発生、内燃機関100の吹き上がりを抑制することができる。なお、エンジンECU170は、入力ディスク10が入力ディスク10に伝達される駆動力である逆回転駆動力により回転する方向と同一方向である逆回転方向A2に回転している場合に、逆回転駆動力の上限値を現在の被駆動力に設定して、逆回転駆動力を下限値以下となるように、内燃機関100を運転制御することで、駆動状態で逆回転駆動力を減少するようにしても良い。
ここで、トロイダル式無段変速機1では、最大傾転角θmaxを超えてパワーローラ30が軸線X4を中心に回転しないように、図示しないストッパが設けられている。つまり、トロイダル式無段変速機1では、最大変速比γmaxを超えるとトラニオン40がストッパに接触し、変速比γが最大変速比γmaxを超えないように機械的に構成されている。現在の変速比γが最大変速比γmaxからダウンシフトしても図示しない車両の挙動に影響を与えない範囲αを引いた値以上である場合(γ≧γmax−α)は、接線力FTによりパワーローラ30がダウンシフトした際に、トラニオン40がストッパに接触し、ストッパにパワーローラ30の傾転による傾転力が発生することとなる。そこで、エンジンECU170は、内燃機関100を運転制御することで、逆回転駆動力をトラニオン40が接触することでストッパに発生する傾転力によりストッパの強度が確保できる値とする。具体的には、逆回転駆動力をTin´とした場合に、Tin´が下記の式(3)の関係を満たすように、内燃機関100を運転制御する。これにより、予期せぬダウンシフトの際におけるストッパの強度を確保することができる。ここで、μdはトラクション係数、Mは1つのキャビティーに配置されるパワーローラ30の数、r1は入力ディスク10とパワーローラ30との接触半径(軸線X1からの距離)、Fφmaxは限界傾転力、κは安全率、Δμはトラクション係数の変化量、xsmaxは最大変速比γmaxにおけるトラニオン40のストローク量、koはキャビティアスペクト比、r2は出力ディスク20とパワーローラ30との接触半径(軸線X1からの距離)、φsmaxはトラニオン40がストッパに接触した状態での傾転角、Θはパワーローラ30の揺動中心から入力ディスク10とパワーローラ30との接触点へ延びる入力側直線と、揺動中心から出力ディスク20とパワーローラ30との接触点へ延びる出力側直線とのなす角の1/2である。
また、トランスミッションECU60は、図示しないシフトレバーのポジションがニュートラルポジションであると判定する(ステップST103肯定)と、入力ディスク10が正回転であるか否かを判定する(ステップST116)。
次に、トランスミッションECU60は、入力ディスク10が正回転であると判定する(ステップST116肯定)と、警報装置により警報を発する(ステップST117)。つまり、トランスミッションECU60は、駆動力が入力ディスク10に伝達されていない状態で、第1流量制御弁53に異常がある場合には、警報装置180により図示しない車両の運転者に警報を発する。
図示しないシフトレバーのポジションがニュートラルポジションである場合は、前後進切換機構120により内燃機関100とトロイダル式無段変速機1とのクラッチによる係合が解除され、内燃機関100からの駆動力を入力ディスク10に伝達しない。従って、正回転駆動力および逆回転駆動力は、入力ディスク10に作用しない。しかしながら、図示しない車両のイナーシャに基づいた被駆動力は、図示しない車両の前進時および後進時においても入力ディスクに作用する。車両が前進、すなわち入力ディスク10の正回転方向A1に回転している際に、被駆動力により駆動する被駆動状態では、図5に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAが逆回転方向A2に作用する。従って、パワーローラ30に作用する接線力FTは、第2方向Fとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第2流量制御弁54により第2方向Fの接線力FTに対向してパワーローラ30を第1方向Eに移動させることができないので、入力ディスク10が正回転方向A1に回転している状態で、パワーローラ30が接線力FTにより第2方向Fに移動してアップシフトが行われる虞がある。従って、第1流量制御弁53に異常が発生した際に、トロイダル式無段変速機1のアップシフトが行われ、発進性が悪化する旨を警報装置180により車両の運転者に警報を発することで認識させることができる。
なお、車両が後進、すなわち入力ディスク10の逆回転方向A2に回転している際に、被駆動力により駆動する被駆動状態では、図6に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAが正回転方向A1に作用する。従って、パワーローラ30に作用する接線力FTは、第1方向Eとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第2流量制御弁54により第1方向Eの接線力FTに対向してパワーローラ30を第2方向Fに移動させることができるので、変速比γの制御を行うことができる。
次に、トロイダル式無段変速機1の第1移動手段である第1流量制御弁53が正常で、第2移動手段である第2流量制御弁54が異常である場合におけるトロイダル式無段変速機1の制御方法について説明する。図8は、第2流量制御弁のみ異常時におけるトロイダル式無段変速機の制御フローを示す図である。図9〜図12は、第2流量制御弁のみ異常時におけるパワーローラの状態説明図である。なお、図8に示す第2流量制御弁のみ異常時におけるトロイダル式無段変速機の制御フローは、図3に示す第1流量制御弁のみ異常時におけるトロイダル式無段変速機の制御フローと基本的構成が同一であるため、同一箇所を簡略化あるいは省略して説明する。
まず、トランスミッションECU60は、第2流量制御弁54のみが異常であるか否かを判定する(ステップST201)。ここでは、トランスミッションECU60が第1流量制御弁53および第2流量制御弁54が異常であるか否かを検出し、第1流量制御弁53が正常で第2流量制御弁54が異常、すなわち第1油圧室OP1の油圧によるパワーローラ30の第1方向Eへの移動が可能で、第2油圧室OP2の油圧による第2方向Fへの移動が不可能な状態であるか否かを判定する。
次に、トランスミッションECU60は、第2流量制御弁54のみが異常であると判定する(ステップST201肯定)と、F/F制御を禁止する(ステップST202)。これにより、トランスミッションECU60がF/F制御を禁止することで、第2流量制御弁に異常が発生しても、トロイダル式無段変速機1の変速制御性の悪化を抑制することができる。
次に、トランスミッションECU60は、図示しないシフトレバーのポジションがニュートラルポジションであるか否かを判定する(ステップST203)。
次に、トランスミッションECU60は、図示しないシフトレバーのポジションがニュートラルポジションでないと判定する(ステップST203肯定)と、目標入力回転数Ninoの変化を制限する(ステップST204)。従って、第2流量制御弁54に異常が発生しても、変速比γが急変速することを抑制することができる。
次に、トランスミッションECU60は、変速比γの制御範囲を制限する(ステップST205)。これにより、第2流量制御弁54が異常であるフェール時においては、パワーローラ30に作用する力の変動を小さくすることができ、発進性が悪化することを抑制することができる。
次に、トランスミッションECU60は、図示しないシフトレバーのポジションが前進ポジションであるか否かを判定する(ステップST206)。
また、トランスミッションECU60は、図示しないシフトレバーのポジションが前進ポジションであると判定する(ステップST206肯定)と、入力ディスク10が正回転であるか否かを判定する(ステップST207)。
また、トランスミッションECU60は、入力ディスク10が正回転であると判定する(ステップST207肯定)と、エンジンECU170を介して、駆動力を減少する(ステップST208)。ここで、入力ディスク10は、入力ディスク10に伝達される駆動力である正回転駆動力により回転する方向と同一方向である正回転方向A1に回転している場合となる。
入力ディスク10に伝達された正回転駆動力が被駆動力よりも大きい状態、すなわち駆動力により駆動する駆動状態では、図9に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAは、正回転方向A1に作用する。従って、正回転駆動力および被駆動力に基づいてパワーローラ30に作用する接線力FTは、第1方向Eとなる。ここで、正常である第1流量制御弁53は上記接線力FTの接線力方向と同一方向にパワーローラ30を移動させることができ、異常である第2流量制御弁54は接線力FTの接線力方向と反対方向にパワーローラ30を移動させることができることとなる。つまり、トランスミッションECU60は、正常である第1流量制御弁53により第1方向Eの接線力FTに対向してパワーローラ30を第2方向Fに移動させることができないので、入力ディスク10が正回転方向A1に回転している状態で、パワーローラ30が接線力FTにより第1方向Eに移動してダウンシフトが行われる虞がある。そこで、トランスミッションECU60は、第1方向Eへの接線力FTを低減させるために、接続されているエンジンECU170により内燃機関100を運転制御することで、正回転駆動力を減少する。
ここで、トランスミッションECU60は、上述のように、トロイダル式無段変速機1の現在の変速比γに応じて、エンジンECU170を介して逆回転駆動力の減少方法を変更する。現在の変速比γが最大変速比γmaxからダウンシフトしても図示しない車両の挙動に影響を与えない範囲αを引いた値未満である場合(γ<γmax−α)、エンジンECU170は、逆回転駆動力を駆動状態から被駆動状態へと切り替わることができる、すなわち被駆動力以下となるまで減少するように、内燃機関100を運転制御する。また、現在の変速比γが最大変速比γmaxからダウンシフトしても図示しない車両の挙動に影響を与えない範囲αを引いた値以上である場合(γ≧γmax−α)、エンジンECU170は、内燃機関100を運転制御することで、逆回転駆動力をトラニオン40が接触することでストッパに発生する傾転力によりストッパの強度が確保できる値とする。
ここで、上記では、駆動力により駆動する駆動状態であり、接線力FTの接線力方向と、変速比γを増加させるためにパワーローラ30を移動させる方向が第1方向Eで一致する。この場合、駆動力によりトロイダル式無段変速機1のダウンシフトが行われる虞があり、内燃機関100の吹き上がりが発生しやすくなる。そこで、トランスミッションECU60は、ロックアップクラッチ113をOFFせず、すなわちロックアップクラッチ113をOFFすることを禁止して、駆動力の伝達に作動油を介すことで、内燃機関100が吹き上がることを抑制することができる。
一方、入力ディスク10に伝達された正回転駆動力よりも被駆動力が大きい状態、すなわち被駆動力により駆動する被駆動状態では、図10に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAは、逆回転方向A2に作用する。従って、パワーローラ30に作用する接線力FTは、第2方向Fとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第1流量制御弁53により第2方向Fの接線力FTに対向してパワーローラ30を第1方向Eに移動させることができるので、入力ディスク10が入力ディスク10に伝達される駆動力である正回転駆動力により回転する方向と同一方向である正回転方向A1に回転しており、被駆動状態の場合は、変速比γの制御を行うことができる。
また、トランスミッションECU60は、図8に示すように、入力ディスク10が正回転でない、すなわち逆回転であると判定する(ステップST207否定)と、ロックアップクラッチ113をOFFとする(ステップST209)。従って、第2流量制御弁54が異常であるフェール時において、駆動力の変動に応じたショックを抑制することができる。
次に、トランスミッションECU60は、エンジンECU170を介して、駆動力を減少する(ステップST210)。ここで、入力ディスク10は、入力ディスク10に伝達される駆動力である正回転駆動力により回転する方向と反対方向である逆回転方向A2に回転している場合となる。
入力ディスク10に伝達された正回転駆動力が被駆動力よりも大きい状態、すなわち駆動力により駆動する駆動状態では、図11に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAは、正回転方向A1に作用する。従って、接線力FTは、第1方向Eとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第1流量制御弁53により第1方向Eの接線力FTに対向してパワーローラ30を第2方向Fに移動させることができないので、入力ディスク10が逆回転方向A2に回転している状態で、パワーローラ30が接線力FTにより第1方向Eに移動してアップシフトが行われる虞がある。そこで、トランスミッションECU60は、第1方向Eへの接線力FTを低減させるために、接続されているエンジンECU170により内燃機関100を運転制御することで、正回転駆動力を減少する。
具体的には、エンジンECU170は、正回転駆動力を駆動状態から被駆動状態へと切り替わることができる、すなわち被駆動力以下となるまで減少するように、内燃機関100を運転制御する。従って、第1方向Eへの接線力FTを低減あるいは0とすることができ、接線力FTによるアップシフトを抑制することができる。これにより、第2流量制御弁54に異常が発生しても、変速制御性の悪化を抑制することができる。また、予期せぬアップシフトを抑制することができるので、発進性が悪化することを抑制することができる。
一方、入力ディスク10に伝達された正回転駆動力よりも被駆動力が大きい状態、すなわち被駆動力により駆動する被駆動状態では、図12に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAは、逆回転方向A2に作用する。従って、パワーローラ30に作用する接線力FTは、第2方向Fとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第1流量制御弁53により第2方向Fの接線力FTに対向してパワーローラ30を第1方向Eに移動させることができるので、入力ディスク10が入力ディスク10に伝達される駆動力である正回転駆動力により回転する方向と反対方向である逆回転方向A2に回転しており、被駆動状態の場合は、変速比γの制御を行うことができる。
次に、トランスミッションECU60は、図8に示すように、ブレーキECU200を介して制動装置190が発生する制動力により車両を停止させる(ステップST211)。ここでは、ブレーキECU200は、制動装置190により制動力を自動的に発生することで、車両を停止させる。
また、トランスミッションECU60は、図8に示すように、シフトレバーのポジションが前進ポジションでない、すなわち後進ポジションであると判定する(ステップST206否定)と、ロックアップクラッチ113をOFFとする(ステップST212)。従って、第2流量制御弁54が異常であるフェール時において、駆動力の変動に応じたショックを抑制することができる。
次に、トランスミッションECU60は、入力ディスク10が正回転であるか否かを判定する(ステップST213)。
次に、トランスミッションECU60は、入力ディスク10が正回転である(ステップST213肯定)と、ブレーキECU200を介して制動装置190が発生する制動力により車両を停止させる(ステップST214)。ここで、入力ディスク10は、入力ディスク10に伝達される駆動力である逆回転駆動力により回転する方向と反対方向である正回転方向A1に回転している場合となる。
入力ディスク10に伝達された逆回転駆動力が被駆動力よりも大きい状態、すなわち駆動力により駆動する駆動状態では、図10に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAは、逆回転方向A2に作用する。従って、接線力FTは、第2方向Fとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第1流量制御弁53により第2方向Fの接線力FTに対向してパワーローラ30を第1方向Eに移動させることができるので、入力ディスク10が入力ディスク10に伝達される駆動力である逆回転駆動力により回転する方向と反対方向である正回転方向A1に回転しており、駆動状態の場合は、変速比γの制御を行うことができる。
一方、入力ディスク10に伝達された逆回転駆動力よりも被駆動力が大きい状態、すなわち被駆動力により駆動する被駆動状態では、図9に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAは、正回転方向A1に作用する。従って、接線力FTは、第1方向Eとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第1流量制御弁53により第1方向Eの接線力FTに対向してパワーローラ30を第2方向Fに移動させることができないので、入力ディスク10が正回転方向A1に回転している状態で、パワーローラ30が接線力FTにより第1方向Eに移動してダウンシフトが行われる虞がある。そこで、トランスミッションECU60は、第1方向Eへの接線力FTを低減させるために、接続されているブレーキECU200により制動装置190を制御することで、図示しない車両に制動力を作用させ、車両を停止させて、入力ディスク10の回転を停止する。従って、車両が停止することで、被駆動力を0とすることができ、第2方向Fへの接線力FTを低減することができ、接線力FTによるダウンシフトを抑制することができる。これにより、第1流量制御弁53に異常が発生しても、変速制御性の悪化を抑制することができる。また、予期せぬダウンシフトを抑制することができるので、ショックの発生、内燃機関100の吹き上がりを抑制することができる。
また、トランスミッションECU60は、図8に示すように、入力ディスク10が正回転ででない、すなわち逆回転であると判定する(ステップST213否定)と、エンジンECU170を介して、駆動力を増加する(ステップST215)。ここで、入力ディスク10は、入力ディスク10に伝達される駆動力である逆回転駆動力により回転する方向と同一方向である逆回転方向A2に回転している場合となる。
入力ディスク10に伝達された逆回転駆動力が被駆動力よりも大きい状態、すなわち駆動力により駆動する駆動状態では、図12に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAは、逆回転方向A2に作用する。従って、接線力FTは、第2方向Fとなる。従って、トランスミッションECU60は、正常である第1流量制御弁53により第2方向Fの接線力FTに対向してパワーローラ30を第1方向Eに移動させることができるので、入力ディスク10が入力ディスク10に伝達される駆動力である逆回転駆動力により回転する方向と同一方向である逆回転方向A2に回転しており、駆動状態の場合は、変速比γの制御を行うことができる。
一方、入力ディスク10に伝達された逆回転駆動力よりも被駆動力が大きい状態、すなわち被駆動力により駆動する被駆動状態では、図11に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAは、正回転方向A1に作用する。従って、接線力FTは、第1方向Eとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第1流量制御弁53により第1方向Eの接線力FTに対向してパワーローラ30を第2方向Fに移動させることができないので、入力ディスク10が逆回転方向A2に回転している状態で、パワーローラ30が接線力FTにより第1方向Eに移動してアップシフトが行われる虞がある。そこで、トランスミッションECU60は、第1方向Eへの接線力FTを低減させるために、接続されているエンジンECU170により内燃機関100を運転制御することで、逆回転駆動力を増加する。
具体的には、エンジンECU170は、逆回転駆動力を被駆動状態から駆動状態へと切り替わることができる、すなわち被駆動力以上となるまで増加するように、内燃機関100を運転制御する。従って、第1方向Eへの接線力FTを低減あるいは0とすることができ、接線力FTによるアップシフトを抑制することができる。これにより、第2流量制御弁54に異常が発生しても、変速制御性の悪化を抑制することができる。また、予期せぬアップシフトを抑制することができるので、ショックの発生を抑制することができる。
また、トランスミッションECU60は、図示しないシフトレバーのポジションがニュートラルポジションであると判定する(ステップST203否定)と、図8に示すように、入力ディスク10が正回転であるか否かを判定する(ステップST216)。
次に、トランスミッションECU60は、入力ディスク10が正回転でない、すなわち逆回転であると判定する(ステップST216否定)と、警報装置により警報を発する(ステップST217)。つまり、トランスミッションECU60は、駆動力が入力ディスク10に伝達されていない状態で、第2流量制御弁54に異常がある場合には、警報装置180により図示しない車両の運転者に警報を発する。
車両が後進、すなわち入力ディスク10の逆回転方向A2に回転している際に、被駆動力により駆動する被駆動状態では、図11に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAが正回転方向A1に作用する。従って、パワーローラ30に作用する接線力FTは、第1方向Eとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第2流量制御弁54により第1方向Eの接線力FTに対向してパワーローラ30を第2方向Fに移動させることができないので、入力ディスク10が逆回転方向A2に回転している状態で、パワーローラ30が接線力FTにより第1方向Eに移動してアップシフトが行われる虞がある。従って、第2流量制御弁54に異常が発生した際に、トロイダル式無段変速機1のアップシフトが行われ、発進性が悪化する旨を警報装置180により車両の運転者に警報を発することで認識させることができる。
なお、車両が前進、すなわち入力ディスク10の正回転方向A1に回転している際に、被駆動力により駆動する被駆動状態では、図10に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAが逆回転方向A2に作用する。従って、パワーローラ30に作用する接線力FTは、第2方向Fとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第2流量制御弁54により第2方向Fの接線力FTに対向してパワーローラ30を第1方向Eに移動させることができるので、変速比γの制御を行うことができる。
以上のように、第1流量制御弁53および第2流量制御弁54のうち、パワーローラ30に作用する接線力FTの接線力方向と反対方向にパワーローラ30を移動させることができる一方が異常である場合に、例えば駆動力を増加あるいは減少させ、接線力を低減させるので、パワーローラ移動手段に異常が発生しても変速制御性が悪化することを抑制することができる。
なお、上記実施の形態において、駆動力により図示しない車両が前進している際に、第1流量制御弁53および第2流量制御弁54のうち変速比γが増加する方向にパワーローラ30を移動させる一方に供給される作動油の油圧を他方に供給される作動油の油圧よりも高くしても良い。ここで、車両の走行としては、駆動力により前進している、すなわち図示しないシフトポジションが前進ポジションで、入力ディスク10が正回転方向A1に回転している状態が多い。従って、この状態でトロイダル式無段変速機1のダウンシフトを行わせ難くすることは、変速制御性の悪化を効果的に抑制することができる。シフトポジションが前進ポジションで、入力ディスク10が正回転方向A1に回転している場合に、駆動力により変速比γが増加する方向の接線力FTをパワーローラ30に作用させるのは、図9に示すように、第2流量制御弁54が異常である場合である。従って、オイルポンプ52から供給通路57を介して第2流量制御弁54に供給される作動油の油圧を第1流量制御弁53に供給される油圧よりも高くする。これにより、走行頻度の高い状態における変速比γの増加を抑制することができ、変速制御性の悪化を効果的に抑制することができる。
また、上記実施の形態では、前後進切換機構120が内燃機関100とトロイダル式無段変速機1との間、すなわちトロイダル式無段変速機1の上流側に配置されているが本発明はこれに限定されるものではない。前後進切換機構120がトロイダル式無段変速機1と車輪160との間、すなわちトロイダル式無段変速機1の下流側に配置されていても良い。この場合、内燃機関100からの駆動力は、トロイダル式無段変速機1に伝達されることとなる。車両が前進、すなわち入力ディスク10の正回転方向A1に回転している際には、トロイダル式無段変速機1の下流側に前後進切換機構120が配置されている場合は、内燃機関100の運転状態や前後進切換機構120の動作状態によって、内燃機関100からの駆動力が正回転駆動力として入力ディスクに作用する場合がある。つまり、駆動力により駆動する駆動状態となる場合があり、図9に示すように、入力ディスク10に作用する総トルクTAが正回転方向A1に作用することとなる。従って、パワーローラ30に作用する接線力FTは、第1方向Eとなる。トランスミッションECU60は、上述のように、正常である第2流量制御弁54により第1方向Eの接線力FTに対向してパワーローラ30を第2方向Fに移動させることができないので、入力ディスク10が正回転方向A1に回転している状態で、パワーローラ30が接線力FTにより第1方向Eに移動してダウンシフトが行われる虞がある。そこで、トランスミッションECU60は、第1方向Eへの接線力FTを低減させるために、接続されているエンジンECU170により内燃機関100を運転制御することで、正回転駆動力を減少させても良い。ここで、上述のように、トランスミッションECU60は、トロイダル式無段変速機1の現在の変速比γに応じて、エンジンECU170を介して逆回転駆動力の減少方法を変更しても良い。