JP5253694B2 - インクジェット用記録液 - Google Patents
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Description
本発明者らは、インクジェット記録液用のカーボンブラック及び該カーボンブラックを含むインクジェット記録液を種々検討した結果、カーボンブラックの表面を樹脂で被覆した表面処理カーボンブラックを使用することによって、優れた吐出安定性、保存安定性、記録濃度を確保しつつ、かつインクジェット方式で記録した印字物表面の耐擦過性に極めて優れた記録液が得られることを見出した。つまり、樹脂によってカーボンブラック表面に存在する微細な凹凸が被覆され、カーボンブラックの表面積が減少した結果、分散時に必要な分散剤量も相対的に減少し、結果的に保存安定性と吐出安定性が極めて良好になると同時に、このカーボンブラックを用いて調整したインクジェット記録液は、樹脂成分を含むことによって紙面で乾燥する過程において樹脂塗膜を形成し得るために耐擦過性にも優れることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、一次粒子径が17nm以下かつpHが6以下であるカーボンブラックを非水溶性樹脂で被覆処理したインクジェット記録液用カーボンブラックと水とを含有するインクジェット用記録液であって、該非水溶性樹脂が水性ウレタン樹脂であることを特徴とするインクジェット用記録液を要旨とする。
本発明に用いられるカーボンブラックとしてはアセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラックが使用できるが、チャンネルブラック、ファーネスブラックが好ましく、ファーネスブラックが特に好ましい。
そして、本発明に用いられるカーボンブラックは揮発分を多く含んでいる方が被覆される樹脂との親和性が高いため好ましく、カーボンブラックの窒素吸着比表面積あたりの揮発分含有量が0.01重量%・g/m2以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.02重量%・g/m2以上である。カーボンブラックの窒素吸着比表面積あたりの揮発分含有量が0.01重量%・g/m2に満たない場合には、カーボンブラック表面に存在する樹脂の反応吸着点の数が少なくなり、カーボンブラックを樹脂で緊密に被覆できなくなくなる傾向にあるため、得られる記録液が与える印字面の耐擦過性が不十分となる恐れがある。
なお、本発明でいうカーボンブラックの揮発分、窒素吸着比表面積、灰分はJIS K6221の方法で測定した値を指し、1次粒子径は電子顕微鏡による算術平均径(数平均)、pHはカーボンブラック水懸濁液を煮沸後に冷却した泥状物のpH値を指す。
カーボンブラックを被覆処理するのに用いられる樹脂の種類は特に限定されるものではないが、後述する分散媒に溶解しないものであればよく、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
また、カーボンブラックの被覆処理に用いる樹脂としては、カーボンブラックの表面に存在する官能基と相互に反応可能な樹脂であれば親和性が高く均一な被覆が形成しやすいので好ましい。具体的には、カーボンブラック表面に揮発分として存在するカルボキシル基やフェノール性水酸基などの官能基と水素結合や酸塩基結合、共有結合等の結合を形成し得る官能基を有する樹脂、即ちカルボキシル基、水酸基、グリシジル基、ウレタン基、イソシアネート基、アミノ基、アミド基、アミンオキシド基、ベタイン基等を構造中に有する樹脂が好ましい。このような樹脂は一度吸着した樹脂の脱着が抑制されるために好ましい。特にグリシジル基を有するエポキシ樹脂及びウレタン基やイソシアネート基を有するウレタン樹脂が好ましく、さらに上記のような官能基を有するものがより好ましい。エポキシ樹脂の具体例としては、グリシルアミン系エポキシ樹脂、トリフェニルグリシジルメタン系エポキシ樹脂、テトラフェニルグリシジルメタン系エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミドジフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂などが、ウレタン樹脂の具体例としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂などが、各々例示される。
非イオン性高分子分散剤としては、親水性官能基としてエチレンオキサイド構造又は、プロピレンオキサイド構造を有するものが特に好ましい。非イオン系高分子分散剤の具体例としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アミノポリオキシエチレン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ナフトールエチレンオキシド付加物、アセチレングリコールエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等を例示することができる。
カーボンブラックに対する樹脂の被覆量はカーボンブラックと樹脂の合計量に対して1〜30重量%が好ましい。1重量%未満では得られるインクジェット用記録液の耐擦過性が不十分となり、30重量%を超えると樹脂同士が融着して、インクジェット用記録液製造時のカーボンブラックの分散が困難になる恐れがある。
本発明に係る樹脂で被覆処理されたカーボンブラックは、常法により水性媒体中に分散させることによりインクジェット用記録液として使用することができる。分散にあたっては公知の分散剤を記録液に適宜添加してもよい。本発明において好ましく使用される分散剤としては、各種の陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び高分子系分散剤等が挙げられる。高分子系分散剤を用いた場合には得られる記録液が形成する印字物の耐擦過性が極めて良好になるため、特に好ましい。
本発明の記録液に用いられる水性媒体は水を主体とするが、水に水溶性有機溶剤を添加して用いるのが好ましい。水溶性有機溶剤としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(#200、#300、#400、#4000、#6000)、グリセリン、グリセリンのエチレングリコール付加物(具体例:リポケミカル社製品Liponic EG-1等)、上記グリコール類のアルキルエーテル類(ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル等)、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリノン、チオジグリコール、2−ピロリドン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ネオペンチルアルコール、トリメチロールプロパン、2,2−ジメチルプロパノール等が挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は一種のみを用いても良いし、二種以上を用いても良い。
本発明の記録液を調製するための分散機としてはボールミル、ロールミル、サンドグラインドミル以外に、メディアを用いずに粉砕処理できるナノマイザー、アルティマイザー等のジェットミルが用いられるが、特にサンドグラインドミル、もしくはメディアに由来する汚染の少ないジェットミルが好ましい。この摩砕、分散処理の後、濾過機あるいは遠心分離機を用いて粗大粒子を除去する。また摩砕、分散処理は高濃度で調製することにより効率的に実施できるので、高濃度で調製した処理液を、水性媒体で希釈して記録液の濃度を調整してもよい。
記録液中におけるカーボンブラックの使用量は記録液全重量に対し1〜20重量%の範囲とするのが良く、好ましくは3〜15重量%、更に好ましくは3〜10重量%である。分散剤の使用量は通常カーボンブラックの重量に対して2〜100重量%の範囲で用いられ、好ましくは3〜50重量%、更に好ましくは10〜20重量%である。分散剤及び耐擦過性向上剤としての高分子の使用量は記録液全重量に対し、0.1〜5重量%の範囲とするのが良いが、0.2〜3重量%が更に好ましい。
これらのカーボンブラック、樹脂、分散剤、添加剤、有機溶剤は1種類の物を単独で用いても良いし、場合により2種以上の物を併用してもよい。
(樹脂被覆カーボンブラックの製造)
カーボンブラックはNa、Ca、Sの少ない原料油を使用し、反応停止水にイオン交換樹脂で処理した水を使用した以外は、通常のオイルファーネス法に則って製造した。得られたカーボンブラックA 100gを内径10cm、長さ10cmの円筒型キルンに入れ、9rpmで回転させつつ空気とオゾンの混合ガス(オゾン6000ppm)に揮発分が4.6重量%となるように一定時間接触させ、カーボンブラックBを得た。第1表にカーボンブラックの物性を示す。
カーボンブラックB 120gを純水5000gと共にホモミキサーを用いて分散させ、スラリーを得た。このスラリーをスクリュー型攪拌機付容器に移し、攪拌しながらエポキシ樹脂「エピコート828」(油化シェルエポキシ社製品) 14gをトルエン400mLに溶解した溶液を少量づつ添加した。約15分で水に分散していたカーボンブラックは全量トルエン側に移行し、直径約lmmの粒状塊を形成した。次に60メッシュ金網で水切りを行った後、真空乾燥機に入れ70℃で7時間乾燥し、トルエンと水を除去して、樹脂被覆カーボンブラックCを得た。
(記録液の調整)
記録液の組成 使用量(部)
樹脂被覆カーボンブラックC 4.6
スチレン/アクリルアミド−2−メチルスルホン酸/アクリル酸共重合体(ランダムコポリマー、モノマー重量比=50/30/20、重量平均分子量=80
00)のNa塩
のアンモニウム塩 0.4
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン 4.0
イオン交換水 35
合計 44
上記実施例に記された方法で得られた記録液を日本電気製プリンタ「ピクティ700」用のインクカートリッジに充填し該プリンタで以って、電子写真用紙「Xerox 4024紙」(米国Xerox社製品)にベタ印字した。その結果、目詰まりなど無く安定でかつ良好な吐出性を示し、印字品位の良好な印字物が得られた。
塗膜密着性評価用として、別途インクジェット専用光沢フィルム「MJA4SP6」(セイコーエプソン社製)に印字した印字物も作成した。
上記の印字試験で得たXerox4024紙上印字物の濃度(OD値)をマクベス反射濃度計(RD914)を用いて測定した。OD値が1.2以上であれば印字濃度は良好であると判断できる。結果は下記第2表に示した。
耐擦過性の指標として、上記の印字試験で得たXerox4024紙上印字物の印字面を黄色ラインマーカーで擦って、字汚れの有無を目視評価した。結果は以下のように分類し、下記第2表に示した。
○ …字汚れはほとんどなく、耐擦過性は優良である。
△… 若干字汚れがあるものの実用上間題なく、耐擦過性は良好である。
× … 実用上問題がある程度に字汚れが激しく、耐擦過性は不良である。
耐擦過性の指標として、上記の印字試験で得た「MJA4SP6」印字物の印字面を金属性のヘラで擦り、印字面の剥離の有無を目視評価した。結果は以下のように分類し下記第2表に示した。
○ … 印字面の剥離はなく、耐擦過性は優良である。
△… 印字面の剥離はほとんどなく、耐擦過性は良好である。
× … 印字面が剥離して実用上問題があり、耐擦過性は不良である。
得られた記録液をイオン交換水で希釈して粒子径測定機(粒子アナライザ−N4S(Coulter社製品))にて分散粒子径測定を行った。
測定条件
Temperature = 25 degree
Viscosity = 0.894 cP
Refractive Index = 1.333
Angle = 90.0 degrees
Sample Time = 13.5 micro-sec
Pre-scale = 2
Run Time = 60 seconds
得られた記録液を70℃で1週間保存し、保存後室温に戻してからそのままの濃度で粒子径測定機(粒子アナライザーN4S(Coulter社製品))にて上記と同様の方法で粒子径測定を行った。得られた結果を前記粒子径測定試験の結果と比較し平均粒子径の差分を算出した。差分が10%以下であれば保存安定性良好と見なす。
(樹脂被覆カーボンブラックの製造)
カーボンブラックB 120gに、攪拌しながら水性ウレタン樹脂「ハイドランHW140」(大日本インキ化学社製)の水分散液を固形分換算で14g滴下し、家庭用ジューサーミキサーを用いて十分に攪拌した。得られたカーボンブラックを真空乾燥機に入れ70℃で7時間乾燥し、水を留去して樹脂被覆カーボンブラックDを得た。
実施例1で樹脂被覆カーボンブラックCを用いる代わりに樹脂被覆カーボンブラックDを用いる以外は実施例1と同様の方法で記録液を調製した。得られた記録液を用いて前記実施例と同様の評価を行った。結果は下記第2表に示した。
実施例1と同様の方法で測定した記録液の平均分散粒子径は0.136μmであった。
[実施例3]
(樹脂被覆カーボンブラックの製造)
実施例2で水性ウレタン樹脂「ハイドランHW140」を用いる代わりに、水系アクリル樹脂「ジョンクリル450」を用いる以外は実施例1と同様の方法で製造を行い、樹脂被覆カーボンブラックEを得た。
(記録液の調製)
実施例1で樹脂被覆カーボンブラックCを用いる代わりに樹脂被覆カーボンブラックEを用いる以外は実施例1と同様の方法で記録液を調製した。得られた記録液を用いて前記実施例と同様の評価を行った。結果は下記第2表に示した。
実施例1と同様の方法で測定した記録液の平均分散粒子径は0.128μmであった。
[比較例1]
実施例1で樹脂被覆カーボンブラックCを用いる代わりに樹脂被覆していないカーボンブラックAを用いる以外は実施例1と同様の方法で記録液を調製した。得られた記録液を用いて前記実施例と同様の評価を行った。結果は下記第2表に示した。
実施例1と同様の方法で測定した記録液の平均分散粒子径は0.156μmであった。
Claims (8)
- 一次粒子径が17nm以下かつpHが6以下であるカーボンブラックを非水溶性樹脂で被覆処理したインクジェット記録液用カーボンブラックと水とを含有するインクジェット用記録液であって、該非水溶性樹脂が水性ウレタン樹脂であることを特徴とするインクジェット用記録液。
- 該カーボンブラックが、窒素吸着比表面積あたりの揮発分含有量が0.01重量%・g/m2 以上であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用記録液。
- 該カーボンブラックの灰分が1.0重量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット用記録液。
- 該カーボンブラックが酸化処理されたものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクジェット用記録液。
- 該カーボンブラックがファーネスブラックである請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット用記録液。
- 該非水溶性樹脂が構造中にベンゼン核を含有する樹脂であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のインクジェット用記録液。
- 該非水溶性樹脂の被覆量がカーボンブラックと樹脂の合計量に対し1〜30重量%であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のインクジェット用記録液。
- 記録液中の非水溶性色材の平均粒径が0.01〜0.3μmである請求項1〜7の何れかに記載のインクジェット用記録液。
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