JP5253694B2 - インクジェット用記録液 - Google Patents

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Description

本発明はインクジェット記録液用カーボンブラック及びインクジェット記録液に関するものであり、更に詳しくは優れた印字濃度、吐出性を保持しつつ、耐擦過性に極めて優れた印字物を得ることができるインクジェット記録液用カーボンブラック及びインクジェット記録液に関するものである。
従来、インクジェット記録用の記録液としては酸性染料や直接染料を水性媒体中に溶解した水性インク、あるいは、油溶性染料を有機溶剤中に溶解した溶剤系インクが使用されている。溶剤系インクは溶剤を使用するため、環境安全面で問題があり、オフィスや家庭などでの使用は適さないなどの理由で用途が限定されている。一般的な水性インクは水溶性色素(染料)を使用しており、印字物の耐水性、耐光性が不十分であるという問題を抱えている。
この問題点を改良するため、色材として耐水性、耐光性に優れた顔料を用い、顔料を水性媒体中に分散した水性分散インクが用いられている。インクジェット記録用の水性顔料分散インクは吐出安定性、保存安定性を確保するために、他の顔料インクに比べて分散剤樹脂の添加量が極めて少なく、耐擦過性に劣るという問題があった。インク中に高分子分散剤などの水溶性樹脂を多量に添加すれば耐擦過性は向上させることができるが、インクジェット記録用インクとしての必要条件である吐出安定性が損なわれるという問題があり、従来これらの特性を全て満足するインクは得られていなかった。
更に、インクジェット記録液の保存安定性を確保するためにはカーボンブラックの一次粒子径は小さい方が好ましいことが知られている。このようなカーボンブラックは同時にその表面積が増大するため、分散させるために必要な分散剤の量も必然的に多くなるが、その結果吐出安定性や保存安定性が悪化するという問題もあった。
発明が解決しようとする課題
本発明は保存安定性、吐出安定性に優れ、かつ印字物の耐擦過性にも優れたインクジェット用記録液を与えるカーボンブラック、及び該カーボンブラックを用いたインクジェット用記録液を提供することを目的とするものである。
課題を解決するための手段
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、インクジェット記録液用のカーボンブラック及び該カーボンブラックを含むインクジェット記録液を種々検討した結果、カーボンブラックの表面を樹脂で被覆した表面処理カーボンブラックを使用することによって、優れた吐出安定性、保存安定性、記録濃度を確保しつつ、かつインクジェット方式で記録した印字物表面の耐擦過性に極めて優れた記録液が得られることを見出した。つまり、樹脂によってカーボンブラック表面に存在する微細な凹凸が被覆され、カーボンブラックの表面積が減少した結果、分散時に必要な分散剤量も相対的に減少し、結果的に保存安定性と吐出安定性が極めて良好になると同時に、このカーボンブラックを用いて調整したインクジェット記録液は、樹脂成分を含むことによって紙面で乾燥する過程において樹脂塗膜を形成し得るために耐擦過性にも優れることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、一次粒子径が17nm以下かつpHが6以下であるカーボンブラックを非水溶性樹脂で被覆処理したインクジェット記録液用カーボンブラックと水とを含有するインクジェット用記録液であって、該非水溶性樹脂が水性ウレタン樹脂であることを特徴とするインクジェット用記録液を要旨とする。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるカーボンブラックとしてはアセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラックが使用できるが、チャンネルブラック、ファーネスブラックが好ましく、ファーネスブラックが特に好ましい。
そして、本発明に用いられるカーボンブラックは揮発分を多く含んでいる方が被覆される樹脂との親和性が高いため好ましく、カーボンブラックの窒素吸着比表面積あたりの揮発分含有量が0.01重量%・g/m2以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.02重量%・g/m2以上である。カーボンブラックの窒素吸着比表面積あたりの揮発分含有量が0.01重量%・g/m2に満たない場合には、カーボンブラック表面に存在する樹脂の反応吸着点の数が少なくなり、カーボンブラックを樹脂で緊密に被覆できなくなくなる傾向にあるため、得られる記録液が与える印字面の耐擦過性が不十分となる恐れがある。
また、pHが6以下のいわゆる酸性カーボンブラックは、カーボンブラック表面に存在する樹脂の反応吸着点密度が多いこと、及びカーボンブラックを水中に分散して樹脂被覆を行う場合には、水中分散粒子径(アグロメレート径)が細かくなり、カーボンブラックの微細な構造に渡って樹脂被覆できることのために好ましく用いられる。このような単位比表面積あたりの揮発分の多いカーボンブラック、あるいはpHが6以下の酸性カーボンブラックは酸素雰囲気で製造することによっても得られるし、不活性雰囲気で製造して得られる中性カーボンブラックを過酸化水素、オゾンなどの酸化剤を用いて後に酸化することによっても得られる。
カーボンブラックの灰分は1.0重量%以下であるものが好ましい。灰分の組成はナトリウム、カリウム、カルシウムなどのアルカリ(土類)金属塩等であるが、これらを低減する方法としてはカーボンブラックを製造する際の原料油や燃料油(又はガス)並びに反応停止水として、これらの含有量が極力少ないものを選定すること、及びストラクチャーを調整するアルカリ物質の添加量を極力少なくすることが挙げられる。他の方法としては炉から製出したカーボンブラックを水や塩酸などで洗い、ナトリウムやカリウム等のアルカリ(土類)金属イオンなどを溶解し、除去する方法が挙げられる。具体的にはカーボンブラックを水又は塩酸、過酸化水素水に混合分散させた後、水に難溶の溶媒を添加していくと、カーボンブラックは溶媒側に移行して水と完全に分離するとともに、カーボンブラック中に存在したほとんどのアルカリ(土類)金属イオンは水や酸に溶解、除去される。灰分の含有量低減は、カーボンブラック製造工程における原材料の選定、及び水や酸による洗浄によって達成されるが、両者を併用することにより更に容易に達成することができる。灰分が1.0重量%を超えると、得られるインクジェット記録液の保存安定性が悪化する傾向がある。カーボンブラックの一次粒子径は20nm以下、好ましくは16nm以下、更に好ましくは15nm以下であるものがよい。一次粒子径が20nmを超える場合は、得られるインクジェット記録液の保存安定性が悪化する傾向がある。
本発明ではカーボンブラックの灰分が1.0重量%以下、かつ一次粒子径が20nm以下であるのが特に好ましい。
なお、本発明でいうカーボンブラックの揮発分、窒素吸着比表面積、灰分はJIS K6221の方法で測定した値を指し、1次粒子径は電子顕微鏡による算術平均径(数平均)、pHはカーボンブラック水懸濁液を煮沸後に冷却した泥状物のpH値を指す。
以上の如きカーボンブラックの具体例としては、三菱カーボンブラック#2700、#2650、#2450B、#2400B、#2350、#2200、#1000、#970、MA77、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA100S、MA230、MA200、MA200RB、MA14(以上三菱化学社製品)、ColorBlack FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S170、SpecialBlack6(以上デグッサ社製品)、CONDUCTEX 975 ULTRA(コロンビアン製品)等が挙げられる。
また本発明の記録液に使用されるカーボンブラックとしては、上記のカーボンブラックを化学的に処理したもの(酸化処理、フッ素化処理等)や、分散剤、界面活性剤などを物理的または化学的に結合させたもの(グラフト化処理、分散剤を分散前にあらかじめ吸着させたもの等)等を使用してもよい。
カーボンブラックを被覆処理するのに用いられる樹脂の種類は特に限定されるものではないが、後述する分散媒に溶解しないものであればよく、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
前記熱可塑性樹脂の代表例としては、たとえばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体などのポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ酢酸ビニルなどのポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリスチレンなどのポリスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6などのポリアミド系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、シリコーンアクリル樹脂などのアクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、セルロース系樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、ノリル樹脂、ポリスルフォン、フッ素系樹脂、ケイ素系樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリジフェニルエーテルなどがあげられ、これは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでは、フッ素系樹脂、ケイ素系樹脂、シリコーンアクリル樹脂、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリジフェニルエーテルなどが好ましい。
前記熱硬化性樹脂の代表例としては、たとえばフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが被覆性にすぐれる点でとくに好ましい。
中でも、構造中にベンゼン核を有する樹脂がカーボンブラックとの親和性に優れるため特に好ましく用いられる。
また、カーボンブラックの被覆処理に用いる樹脂としては、カーボンブラックの表面に存在する官能基と相互に反応可能な樹脂であれば親和性が高く均一な被覆が形成しやすいので好ましい。具体的には、カーボンブラック表面に揮発分として存在するカルボキシル基やフェノール性水酸基などの官能基と水素結合や酸塩基結合、共有結合等の結合を形成し得る官能基を有する樹脂、即ちカルボキシル基、水酸基、グリシジル基、ウレタン基、イソシアネート基、アミノ基、アミド基、アミンオキシド基、ベタイン基等を構造中に有する樹脂が好ましい。このような樹脂は一度吸着した樹脂の脱着が抑制されるために好ましい。特にグリシジル基を有するエポキシ樹脂及びウレタン基やイソシアネート基を有するウレタン樹脂が好ましく、さらに上記のような官能基を有するものがより好ましい。エポキシ樹脂の具体例としては、グリシルアミン系エポキシ樹脂、トリフェニルグリシジルメタン系エポキシ樹脂、テトラフェニルグリシジルメタン系エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミドジフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂などが、ウレタン樹脂の具体例としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂などが、各々例示される。
カーボンブラックを被覆処理するに用いられる樹脂として、構造中に親水性官能基及び疎水性官能基の両方を必須成分として含む樹脂を、好ましく用いることができる。このような樹脂としては、一般に非イオン性高分子分散剤やイオン性高分子分散剤として使用されている、公知の樹脂を使用することができる。
非イオン性高分子分散剤としては、親水性官能基としてエチレンオキサイド構造又は、プロピレンオキサイド構造を有するものが特に好ましい。非イオン系高分子分散剤の具体例としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アミノポリオキシエチレン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ナフトールエチレンオキシド付加物、アセチレングリコールエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等を例示することができる。
イオン性高分子分散剤としては陽イオン性官能基を有する陽イオン系高分子分散剤、及び両性イオン基を有する両性イオン系高分子分散剤、及び陰イオン性官能基を有する陰イオン系高分子分散剤を用いることができる。陽イオン性官能基の具体例としては、アルキルアミン(塩)基、第4級アンモニウム(塩)基等が、両性イオン性官能基の具体例としてはアルキルベタイン基、アミンオキシド基等が挙げられる。陰イオン性官能基の具体例としては、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基及びリン酸(塩)基等が挙げられる。非イオン性性高分子分散剤及び/又はイオン性高分子分散剤中に含まれる疎水基としては、例えばフェニル基、ベンジル基、ナフチル基等の芳香環を有する官能基、炭素数4以上の直鎖又は分岐状の置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等を例示することができる。これらの官能基は樹脂の構造中に一種だけ含まれていても良いし、二種以上が含まれていても良い。
イオン性高分子分散剤として、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基及びリン酸(塩)基から選ばれるアニオン性官能基を有するアニオン性高分子を特に好ましく使用することができる。このようなアニオン性高分子の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸の脂肪族炭化水素及び/又は芳香族炭化水素エステル、マレイン酸の脂肪族炭化水素及び/又は芳香族炭化水素エステルなどの疎水性ビニル単量体単位と、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸など及び/又はこれらの塩等のアニオン性ビニル単量体単位を構成成分として含む水系アクリル樹脂や、アニオン性ポリエステル系ウレタン樹脂やアニオン性ポリエーテル系ウレタン樹脂等の水系ウレタン樹脂などが好ましく例示される。これらの高分子分散剤は一種のみを用いても良いし、二種以上を併用しても良い。また、本発明の記録液には、表面張力調整剤や防腐剤等の他の添加剤を用いても良い。
以上の如き高分子分散剤又は高分子分散剤溶液又は高分子分散剤エマルションとして市販されているものとしては、ジョンクリル67、678、680、682、690及び/またはその塩、ジョンクリル52、57、60、62、63、70、354、501、6610(以上ジョンソンポリマー社製)、ハイドランHWシリーズ、ハイドランAPシリーズ(以上大日本インキ化学社製)等が具体例として挙げられる。
カーボンブラックに対する樹脂の被覆量はカーボンブラックと樹脂の合計量に対して1〜30重量%が好ましい。1重量%未満では得られるインクジェット用記録液の耐擦過性が不十分となり、30重量%を超えると樹脂同士が融着して、インクジェット用記録液製造時のカーボンブラックの分散が困難になる恐れがある。
カーボンブラックを樹脂で被覆する方法については特に制限されないが、たとえばカーボンブラックおよび樹脂の配合量を適宜調整したのち、(1)樹脂とシクロヘキサノン、トルエン、キシレンなどの溶剤とを混合して加熱溶解させた樹脂溶液と、カーボンブラックおよび水を混合した懸濁液とを混合撹拌し、カーボンブラックと水とを分離させたのち、水を除去して加熱混練してえられた組成物をシート状に成形し、粉砕したのち、乾燥させる方法;(2)前記と同様にして調製した樹脂溶液と懸濁液とを混合撹拌してカーボンブラックおよび樹脂を粒状化したのち、えられた粒状物を分離、加熱して残存する溶剤および水を除去する方法;(3)前記例示した溶剤にマレイン酸、フマル酸などのカルボン酸を溶解させ、カーボンブラックを添加、混合して乾燥させ、溶剤を除去してカルボン酸添着カーボンブラックをえたのち、これに樹脂を添加してドライブレンドする方法;(4)被覆させる樹脂を構成する反応性基含有モノマー成分と水とを高速撹拌して懸濁液を調製し、重合後冷却して重合体懸濁液から反応性基含有樹脂をえたのち、これにカーボンブラックを添加して混練し、カーボンブラックと反応性基とを反応させ(カーボンブラックをグラフトさせ)、冷却および粉砕する方法などを採用することができる。
中でも、上記(2)の被覆方法は、カーボンブラックの粒径を均一にでき、かつ小粒径化できるので好ましい。
本発明に係る樹脂で被覆処理されたカーボンブラックは、常法により水性媒体中に分散させることによりインクジェット用記録液として使用することができる。分散にあたっては公知の分散剤を記録液に適宜添加してもよい。本発明において好ましく使用される分散剤としては、各種の陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び高分子系分散剤等が挙げられる。高分子系分散剤を用いた場合には得られる記録液が形成する印字物の耐擦過性が極めて良好になるため、特に好ましい。
陰イオン性界面活性剤の具体例としては、脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、アルキルリン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類、アルカンスルホン酸塩類、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物類、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類、N−メチル−N−オレオイルタウリン酸塩、αーオレフィンスルホン酸塩類等が挙げられる。陽イオン性界面活性剤の具体例としてはアルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等が、両性界面活性剤としてはアルキルベタイン類、アミンオキシド類等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、カーボンブラックを被覆処理するに用いられる樹脂として例示された非イオン性高分子分散剤と同様のものを好ましく用いることができる。中でもエチレンオキサイド構造又は、プロピレンオキサイド構造を有するノニオン性添加剤が保存安定性、印字濃度の点で好ましく、その中でもHLBが9〜17であるものが更に好ましい。また中でも、HLBが10〜16であるものが特に好ましい。
本発明に使用されるイオン性高分子分散剤は特に限定されるものではないが、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ランダムコポリマー等の共重合体高分子が好ましく用いられ、製造コストの点でグラフトコポリマー、ランダムコポリマーが更に好ましく、ランダムコポリマーが特に好ましく用いられる。これら高分子の重量平均分子量は5万以下であることが好ましく、1万5千以下のものが更に好適に用いられる。重量平均分子量が5万を越えた場合には得られる記録液の吐出安定性が悪化する可能性がある。
高分子分散剤としては、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基及びリン酸(塩)基から選ばれるアニオン性官能基を有するアニオン性高分子を好ましく使用することができ、疎水基及び/又はpKaが3以下のアニオン性官能基を併せて含有する高分子が、得られる記録液の保存安定性と吐出安定性が良好となるために特に好適に用いられる。アニオン性官能基としてカルボン酸(塩)基及び/又はスルホン酸(塩)基を有する高分子がカーボンブラックの分散性と得られる記録液の吐出安定性がともに良好となるために特に好ましい。本発明で使用できるアニオン性高分子分散剤の具体例としては、カーボンブラックを被覆処理するに用いられるアニオン性高分子分散剤として例示されたものと同種のものが挙げられる。これらの分散剤は一種のみを用いても良いし、二種以上を併用しても良い。また、本発明の記録液には、表面張力調整剤や防腐剤等の他の添加剤を用いても良い。
本発明の記録液に用いられる水性媒体は水を主体とするが、水に水溶性有機溶剤を添加して用いるのが好ましい。水溶性有機溶剤としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(#200、#300、#400、#4000、#6000)、グリセリン、グリセリンのエチレングリコール付加物(具体例:リポケミカル社製品Liponic EG-1等)、上記グリコール類のアルキルエーテル類(ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル等)、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリノン、チオジグリコール、2−ピロリドン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ネオペンチルアルコール、トリメチロールプロパン、2,2−ジメチルプロパノール等が挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は一種のみを用いても良いし、二種以上を用いても良い。
本発明の記録液には上記の成分の他に、水溶性樹脂、防黴剤、殺菌剤、pH調整剤、尿素等を必要に応じて添加しても良い。
本発明の記録液を調製するための分散機としてはボールミル、ロールミル、サンドグラインドミル以外に、メディアを用いずに粉砕処理できるナノマイザー、アルティマイザー等のジェットミルが用いられるが、特にサンドグラインドミル、もしくはメディアに由来する汚染の少ないジェットミルが好ましい。この摩砕、分散処理の後、濾過機あるいは遠心分離機を用いて粗大粒子を除去する。また摩砕、分散処理は高濃度で調製することにより効率的に実施できるので、高濃度で調製した処理液を、水性媒体で希釈して記録液の濃度を調整してもよい。
また記録液中の非水溶性色材の平均粒径は0.01〜0.4μmの範囲に調製することが分散安定性並びに吐出安定性の点で好ましいが、0.01〜0.3μmが更に好ましく、0.1〜0.3μmが特に好ましい。更に非水溶性色材の最大粒径は5μm以下であることが分散安定性並びに吐出安定性上好ましい。
記録液中におけるカーボンブラックの使用量は記録液全重量に対し1〜20重量%の範囲とするのが良く、好ましくは3〜15重量%、更に好ましくは3〜10重量%である。分散剤の使用量は通常カーボンブラックの重量に対して2〜100重量%の範囲で用いられ、好ましくは3〜50重量%、更に好ましくは10〜20重量%である。分散剤及び耐擦過性向上剤としての高分子の使用量は記録液全重量に対し、0.1〜5重量%の範囲とするのが良いが、0.2〜3重量%が更に好ましい。
記録液中の水溶性有機溶剤の使用量は5〜30重量%の範囲であるが5〜20重量%が保存安定性上好ましく、8〜20重量%が特に好ましい。
これらのカーボンブラック、樹脂、分散剤、添加剤、有機溶剤は1種類の物を単独で用いても良いし、場合により2種以上の物を併用してもよい。
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例において「部」及び「%」は重量基準である。
[実施例1]
(樹脂被覆カーボンブラックの製造)
カーボンブラックはNa、Ca、Sの少ない原料油を使用し、反応停止水にイオン交換樹脂で処理した水を使用した以外は、通常のオイルファーネス法に則って製造した。得られたカーボンブラックA 100gを内径10cm、長さ10cmの円筒型キルンに入れ、9rpmで回転させつつ空気とオゾンの混合ガス(オゾン6000ppm)に揮発分が4.6重量%となるように一定時間接触させ、カーボンブラックBを得た。第1表にカーボンブラックの物性を示す。
カーボンブラックB 120gを純水5000gと共にホモミキサーを用いて分散させ、スラリーを得た。このスラリーをスクリュー型攪拌機付容器に移し、攪拌しながらエポキシ樹脂「エピコート828」(油化シェルエポキシ社製品) 14gをトルエン400mLに溶解した溶液を少量づつ添加した。約15分で水に分散していたカーボンブラックは全量トルエン側に移行し、直径約lmmの粒状塊を形成した。次に60メッシュ金網で水切りを行った後、真空乾燥機に入れ70℃で7時間乾燥し、トルエンと水を除去して、樹脂被覆カーボンブラックCを得た。
(記録液の調整)
【表1】
記録液の組成 使用量(部)
樹脂被覆カーボンブラックC 4.6
スチレン/アクリルアミド−2−メチルスルホン酸/アクリル酸共重合体(ランダムコポリマー、モノマー重量比=50/30/20、重量平均分子量=80
00)のNa塩
のアンモニウム塩 0.4
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン 4.0
イオン交換水 35
合計 44
上記の各成分を円筒形のステンレス容器に取り、平均0.5mm径のジルコニアビーズ67部と共にサンドグラインダーを用いて3時間分散処理を行った。得られた液に、グリセリン4部、エタノール3部及びイオン交換水49部をさらに加えた。この液をNo.5Cの濾紙を用いて加圧濾過し、ここで得られた液を記録液とした。
(印字試験)
上記実施例に記された方法で得られた記録液を日本電気製プリンタ「ピクティ700」用のインクカートリッジに充填し該プリンタで以って、電子写真用紙「Xerox 4024紙」(米国Xerox社製品)にベタ印字した。その結果、目詰まりなど無く安定でかつ良好な吐出性を示し、印字品位の良好な印字物が得られた。
塗膜密着性評価用として、別途インクジェット専用光沢フィルム「MJA4SP6」(セイコーエプソン社製)に印字した印字物も作成した。
(印字濃度評価)
上記の印字試験で得たXerox4024紙上印字物の濃度(OD値)をマクベス反射濃度計(RD914)を用いて測定した。OD値が1.2以上であれば印字濃度は良好であると判断できる。結果は下記第2表に示した。
(ラインマーカー試験)
耐擦過性の指標として、上記の印字試験で得たXerox4024紙上印字物の印字面を黄色ラインマーカーで擦って、字汚れの有無を目視評価した。結果は以下のように分類し、下記第2表に示した。
○ …字汚れはほとんどなく、耐擦過性は優良である。
△… 若干字汚れがあるものの実用上間題なく、耐擦過性は良好である。
× … 実用上問題がある程度に字汚れが激しく、耐擦過性は不良である。
(塗膜密着性試験)
耐擦過性の指標として、上記の印字試験で得た「MJA4SP6」印字物の印字面を金属性のヘラで擦り、印字面の剥離の有無を目視評価した。結果は以下のように分類し下記第2表に示した。
○ … 印字面の剥離はなく、耐擦過性は優良である。
△… 印字面の剥離はほとんどなく、耐擦過性は良好である。
× … 印字面が剥離して実用上問題があり、耐擦過性は不良である。
(分散粒子径測定)
得られた記録液をイオン交換水で希釈して粒子径測定機(粒子アナライザ−N4S(Coulter社製品))にて分散粒子径測定を行った。
【表2】
測定条件
Temperature = 25 degree
Viscosity = 0.894 cP
Refractive Index = 1.333
Angle = 90.0 degrees
Sample Time = 13.5 micro-sec
Pre-scale = 2
Run Time = 60 seconds
上記測定条件にて測定したときの3回の測定の平均値を記録液の平均分散粒子径の値とした。実施例1で得られた記録液の平均分散粒子径は0.156μmであった。
(保存安定性試験)
得られた記録液を70℃で1週間保存し、保存後室温に戻してからそのままの濃度で粒子径測定機(粒子アナライザーN4S(Coulter社製品))にて上記と同様の方法で粒子径測定を行った。得られた結果を前記粒子径測定試験の結果と比較し平均粒子径の差分を算出した。差分が10%以下であれば保存安定性良好と見なす。
[実施例2]
(樹脂被覆カーボンブラックの製造)
カーボンブラックB 120gに、攪拌しながら水性ウレタン樹脂「ハイドランHW140」(大日本インキ化学社製)の水分散液を固形分換算で14g滴下し、家庭用ジューサーミキサーを用いて十分に攪拌した。得られたカーボンブラックを真空乾燥機に入れ70℃で7時間乾燥し、水を留去して樹脂被覆カーボンブラックDを得た。
(記録液の調製)
実施例1で樹脂被覆カーボンブラックCを用いる代わりに樹脂被覆カーボンブラックDを用いる以外は実施例1と同様の方法で記録液を調製した。得られた記録液を用いて前記実施例と同様の評価を行った。結果は下記第2表に示した。
実施例1と同様の方法で測定した記録液の平均分散粒子径は0.136μmであった。
[実施例3]
(樹脂被覆カーボンブラックの製造)
実施例2で水性ウレタン樹脂「ハイドランHW140」を用いる代わりに、水系アクリル樹脂「ジョンクリル450」を用いる以外は実施例1と同様の方法で製造を行い、樹脂被覆カーボンブラックEを得た。
(記録液の調製)
実施例1で樹脂被覆カーボンブラックCを用いる代わりに樹脂被覆カーボンブラックEを用いる以外は実施例1と同様の方法で記録液を調製した。得られた記録液を用いて前記実施例と同様の評価を行った。結果は下記第2表に示した。
実施例1と同様の方法で測定した記録液の平均分散粒子径は0.128μmであった。
[比較例1]
実施例1で樹脂被覆カーボンブラックCを用いる代わりに樹脂被覆していないカーボンブラックAを用いる以外は実施例1と同様の方法で記録液を調製した。得られた記録液を用いて前記実施例と同様の評価を行った。結果は下記第2表に示した。
実施例1と同様の方法で測定した記録液の平均分散粒子径は0.156μmであった。
Figure 0005253694
Figure 0005253694
第1表、第2表より、樹脂被覆処理したカーボンブラックを用いて調整したインクジェット用記録液は優れた吐出性、印字濃度、保存安定性を保持しつつ、極めて優れた耐擦過性(ラインマーカー試験、塗膜密着性試験)を示すことがわかる(実施例1〜3)。一方、表面処理が施されていない通常のカーボンブラックAを用いて調整したインクジェット記録液は吐出性、印字濃度、保存安定性などは良好であるものの、耐擦過性が極めて悪化することがわかる(比較例1)。
発明の効果
本発明によれば、保存安定性、吐出安定性、印字濃度に優れ、かつ印字物の耐擦過性にも極めて優れたインクジェット用記録液を与えるカーボンブラック、及び該カーボンブラックを用いたインクジェット用記録液を提供することができ、その産業上の利用価値は極めて高い。

Claims (8)

  1. 一次粒子径が17nm以下かつpHが6以下であるカーボンブラックを非水溶性樹脂で被覆処理したインクジェット記録液用カーボンブラックと水とを含有するインクジェット用記録液であって、該非水溶性樹脂が水性ウレタン樹脂であることを特徴とするインクジェット用記録液。
  2. 該カーボンブラックが、窒素吸着比表面積あたりの揮発分含有量が0.01重量%・g/m2 以上であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用記録液。
  3. 該カーボンブラックの灰分が1.0重量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット用記録液。
  4. 該カーボンブラックが酸化処理されたものであることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載のインクジェット用記録液。
  5. 該カーボンブラックがファーネスブラックである請求項1〜の何れかに記載のインクジェット用記録液。
  6. 該非水溶性樹脂が構造中にベンゼン核を含有する樹脂であることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載のインクジェット用記録液。
  7. 該非水溶性樹脂の被覆量がカーボンブラックと樹脂の合計量に対し1〜30重量%であることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載のインクジェット用記録液。
  8. 記録液中の非水溶性色材の平均粒径が0.01〜0.3μmである請求項1〜7の何れかに記載のインクジェット用記録液。
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