JP6002963B2 - インクジェット記録用水性顔料分散液及びインクジェット記録用水性インク並びにインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法 - Google Patents
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Description
また従来、インクジェット記録用水性インクとしては、溶解安定性が高く、ノズル目詰まりが少なく、良好な発色性を有し高画質の印刷を可能とすることから、着色剤として染料が用いられてきた。しかし染料の使用に対しては、従来より画像の耐水性、耐光性に劣るという問題があった。さらに昨今優れた耐水性、耐光性、長期における画質安定性が家庭用にも求められるようになり、各用途において、染料から顔料への着色剤の転換が活発に図られている。顔料を用いたインクは優れた耐水性、耐光性を期待できるが、一方、顔料の粗大粒子の残存、凝集の発生から、沈降に伴うノズル目詰まりが発生しやすい。そこで、高分子系の分散剤を用いて顔料を水性媒体中に分散させる方法が種々検討され、例えば、顔料及び高分子分散剤、湿潤剤と、塩基性化合物を含有する固形分比の高い混合物の混練を行う混練工程を導入して顔料を分散させることが行われている(特許文献1参照)。該工程においては、顔料の解砕による微粒子化と、微粒子化された顔料表面の樹脂被覆による凝集防止を行って、分散安定性の向上及び粗大粒子数の低減が図られている。
例えば、粒径0.6μm以上のカーボンブラックの全カーボンブラックに対する比率が20%以下である記録液が検討されているが(特許文献2参照)、実施例ではカーボンブラック原料の粉砕処理のみで微細化をはかっており、カーボンブラックの粗大粒子数は充分に低減されていない。
また、粒子径0.5μm以上の粗大粒子数が100万個/5μL以下であることを特徴とするインクジェット記録用顔料分散液が検討されているが(特許文献3参照)、使用されている手法はビーズを使用した分散手法のみであり、カーボンブラック表面の樹脂による被覆が充分に行われていない可能性があり、また実際に分散安定性に課題がある。
メディアを用いた分散装置で長時間分散することにより、インクジェット記録用インクの顔料粒子は微細化され、分散粒径は小さくなる。このため粗大粒子数を低減させることができる。しかし、カーボンブラックを被覆するべき分散樹脂は上記長時間の分散で水性媒体中に遊離しやすくなる。このため、粘度上昇や顔料凝集が発生しやすくなり分散安定性が低下しやすい。
一方カーボンブラックについては、インクジェット記録用水性インクに要求される様々な特性に適合した、種々の化学的特性、物理的、形状的特性を有するカーボンブラックが使用されている。しかし粗大粒子数の低減を課題とした場合、その課題解決の観点から原料であるカーボンブラックの選択について、必ずしも充分な検討が行われているわけではない。特に常温で固形の顔料分散体を作製後、該顔料分散体を水性媒体に分散して作製されるインクジェット記録用水性顔料分散液や、該水性顔料分散液から作製されるインクジェット記録用水性インクに対しては、粗大粒子の抑制に効果のあるカーボンブラックの選定について、従来充分な検討がなされて来ていなかった。
例えばカーボンブラックの灰分については、灰分が0.05重量%以下のカーボンブラックを記録液に使用して、加熱型インクジェットプリンターの加熱手段である電極板上の不純物の析出を低減することが検討されているが(特許文献4参照)、記録液中の粗大粒子数との関係については全く検討されていない。
あるいはDBP吸油量とBET比表面積については、(BET比表面積(m2/g)/DBP吸油量(ml/100g))の値が0.3〜2.5のカーボンブラックを用いて、OD値に優れたブラックインク組成物を作製することが検討されているが(特許文献5参照)、該インク組成物中の粗大粒子数との関係については全く検討されていない。
しかも、引用文献4、5に記載されたインクは、いずれもビーズミルを用いた分散装置によって製造されており、本願発明におけるインクジェット記録用水性顔料分散液及びインクジェット記録用水性インクのように、カーボンブラックとアニオン性基を有する樹脂を含有する常温で固形の顔料分散体を使用し、これを経て製造されたものではない。
このようにカーボンブラックの物性値が、それらカーボンブラックを水性媒体中に分散させて製造するインクジェット記録用水性顔料分散液や、インクジェット記録用水性インク中の粗大粒子数と関連付けて検討されることはこれまでにほとんどないことであった。まして常温で固形の顔料分散体の製造を経て作製されるインクジェット記録用水性顔料分散液やインクについては、粗大粒子数の低減を目的とした検討がほとんど行われてきていない。
本発明が解決しようとする課題は、カーボンブラックを使用したインクジェット記録用水性インク、及び該水性インクを製造するためのインクジェット記録用水性顔料分散液であって、それら水性顔料分散液やインクジェット記録用水性インク中の粗大粒子数が大幅に低減され、インクジェット記録用水性インクの保存安定性及び
吐出安定性が向上するとともに、該水性インクを製造するための生産効率、製造収率を顕著に向上させることが可能なインクジェット記録用水性インク、及びインクジェット記録用水性顔料分散液、ならびに該インクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法を提供することである。
すなわち、本発明は、カーボンブラック、及びアニオン性基を有する共重合体を含有する常温で固形の顔料分散体を水性媒体中に混合、撹拌してなるインクジェット記録用水性顔料分散液であって、前記カーボンブラックの灰分が1.0質量%以下、かつDBP吸油量A(ml/100g)とBET比表面積B(m2/g)との比A/Bが0.75以下であることを特徴とするインクジェット記録用水性顔料分散液、及び該インクジェット記録用水性顔料分散液を含有するインクジェット記録用インク組成物を提供する。
本発明はまた、カーボンブラック、及びアニオン性基を有する共重合体を含有する混合物を混練し、常温で固体の顔料分散体を作製する混練工程と、前記顔料分散体を水性媒体中に混合、撹拌する混合工程を有し、前記カーボンブラックの灰分が1.0質量%以下、かつDBP吸油量A(ml/100g)とBET比表面積B(m2/g)との比A/Bが0.75以下であることを特徴とするインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法を提供する。
以下本発明で使用するカーボンブラックの特徴を記載する。
本発明で使用するカーボンブラックは灰分が1.0質量%以下、かつDBP吸油量A(ml/100g)とBET比表面積B(m2/g)との比A/Bが0.75以下であることを特徴とする。
なお、本発明における灰分の測定値としては、JIS K6128−2に準拠した方法で測定した値を使用する。
上記A/Bの値がインクジェット記録用水性顔料分散液、またはインクジェット記録用水性インク中の粗大粒子数に影響を及ぼす理由は必ずしも明らかではない。しかし、DBP吸油量が主にストラクチャー構造に関係しているため、DBP吸油量をBET比表面積あたりの数値として算出したA/Bは、ストラクチャーの形成による網目状の構造の発達状態を、それを構成しているカーボンブラックの粒子径にあまり影響を受けることなく表現していると考えられる。カーボンブラックと共重合樹脂を含有した混合物を混練して、常温で固形の顔料分散体を製造する混練工程においては、高い剪断力下でカーボンブラック同士が接近し加圧されるため、ストラクチャー構造を持つカーボンブラック同士の絡み合いが促進されるため、粒子同士がほぐれにくくなる。その結果、カーボンブラックの粗粒が解砕されにくい状況に陥り、カーボンブラック表面が共重合体樹脂によって充分に被覆されることなく、凝集して粗大粒子となることが考えられる。
なお本発明においてDBP吸油量はJIS K6217−4に準拠した方法で測定した値を使用し、BET比表面積はJIS K6217−2に準拠した方法で測定した値を使用する。
また、カーボンブラックのpHは、3〜11が好ましく、6〜9がより好ましい。揮発分及びpHが上記の範囲内のカーボンブラックを使用すると、分散液の保存安定性を良好に維持できる傾向がある。ここでpHは旧JIS規格 JIS K6221に準拠した方法で測定した値を使用する。
これら樹脂の中では二重結合を有する不飽和脂肪族カルボン酸によるアニオン性基を有し、スチレン系モノマーを疎水性部分の構成成分として含有するスチレン(メタ)アクリル酸系樹脂が好ましい。なお、本明細書中、(メタ)アクリルと表記されているものは、メタクリル及び/又はアクリルのことを指すものとする。スチレン(メタ)アクリル酸系樹脂の中では、さらに全モノマー成分に対して60質量%以上のスチレン系モノマーと、ラジカル重合性の二重結合を有する不飽和脂肪族カルボン酸を含有するモノマーを、共重合させたスチレンアクリル酸系樹脂であることが好ましい。さらに既述のように該スチレンアクリル酸系樹脂の酸価が50〜300、重量平均分子量が7500〜40000の範囲内の樹脂であることが好ましい。
混合工程における顔料分散体への水性媒体の添加は、顔料分散体を撹拌しながら少量ずつ連続的、もしくは間歇的に行って徐々に顔料分散体の粘度を低下させ液体状態とすることが好ましい。このような水性媒体の添加を伴う混合工程は、混練工程で作製された顔料分散体に対して、混練工程に使用した装置と同一の装置で顔料分散体に徐々に水性媒体を添加しつつ、混練操作を継続することで行うこともでき、生産効率、製造収率の点で好ましい。
この様にして作製されたインクジェット記録用水性顔料分散液の顔料濃度は、インクジェット記録用水性インクを調整する際の自由度を考慮すると高顔料濃度が好ましく、分散安定性とのバランスから10〜30質量%の顔料濃度であることが好ましい。
水性顔料分散液を希釈する水性媒体は水のみでもよいが、インクジェット記録用インク中で、乾燥防止、粘度調整、濃度調整等の諸機能を発揮することができる水溶性有機溶剤を配合することができる。水溶性有機溶剤としては、上述の水性顔料分散液用混練物を分散するために用いたと同様のものを添加し使用することもできる。また、記録媒体への浸透性を示す水溶性有機溶剤が配合されていると、顔料インクに浸透性を付与することができ好ましい。
最終的にインクを作製するためのインク化の工程において、濾過や遠心分離等の粗大粒子除去工程によって水性顔料分散液中の粗大粒子数をさらに低減することができる。しかしこれら工程前の粗大粒子数の大小は、該工程にかかる負担の大小に直接影響し、生産効率の差となって現れると共に、工程前の粗大粒子数の大小関係が工程後もそのまま維持されて最終的なインクジェット記録用インクの特性に反映される。
顔料インクであるインクジェット記録用インクには、水性媒体と水性顔料分散液の他に、例えば公知の添加剤などを配合することができる。配合可能なものとしては、例えばアルカリ剤、p H 調整剤、界面活性剤、防腐剤、キレート剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線硬化性樹脂などを例示することができる。
このようにして製造されたインクジェット記録用インクは、適用するインクジェットの方式によっては特に限定されず、連続噴射型( 荷電制御型、スプレー型など) 、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式など)などの種々の方式のインクジェット記録装置に適用できる。特にサーマル方式のインクジェット記録装置に適用した場合に、分散安定性、保存安定性に加え、コゲーションの発生を長期にわたって抑制することができ、極めて安定したインク吐出が可能となる。また粗大粒子が大幅に低減されていることから、長期の連続安定吐出を必要とする適用分野において大きな効果を発揮する。
さらに長期間の保存においても顔料の沈降が生じることがなく、インクジェットプリンターのメインテナンスを軽減することができる。
本実施例で用いるスチレンアクリル系樹脂Aは、溶液重合で作製された粉体状(直径1mm以下)の樹脂であり、モノマー組成比において、スチレン/アクリル酸/メタクリル酸=77/10/13(質量比)であり、分子量11000、酸価152mgKOH/g、ガラス転移点107℃である。
なお、本発明における重量平均分子量は、GPC(ゲル・浸透・クロマトグラフィー)法で測定される値であり、標準物質として使用するポリスチレンの分子量に換算した値である。なお測定は以下の装置及び条件により実施した。
送液ポンプ:LC−9A
システムコントローラー:SLC−6B
オートインジェクター:S1L−6B
検出器:RID−6A
以上島津製作所社製
データ処理ソフト:Sic480IIデータステーション(システムインスツルメンツ社製)。
カラム:GL−R400(ガードカラム)+GL−R440+GL−R450+GL−R400M(日立化成工業社製)
溶出溶媒:THF
溶出流量:2ml/min
カラム温度:35℃
下記組成の混合物を、容量50LのプラネタリーミキサーPLM−50V(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを60℃に加温し、自転回転数60回転/分、公転回転数20回転/分で撹拌してカーボンブラックとスチレンアクリル系樹脂の混練物を得た。
(a)カーボンブラックa 50部
(b)スチレンアクリル系樹脂A 15部
(c)8N−酸化カリウム水溶液 7部
(d)ジエチレングリコール 30部
カーボンブラックaは灰分が0.05質量%、DBP吸油量Aが59ml/100g、BET比表面積Bが128m2/gで、A/Bが0.47であった。混練物の形成を確認後、3.5時間混練を継続した後混合工程を開始し、60℃に加温したイオン交換水を徐々に加えながらさらに混練を継続した。最終的にイオン交換水を150部加え、カーボンブラック濃度が約20%の分散液を得た。分散液を得るためには原料の撹拌開始後約5時間を要した。プラネタリーミキサーから取り出したブラック色分散液をイオン交換水で更に希釈し、カーボンブラック濃度14.5%の水性顔料分散液を得た(混練製法)。
実施例1において、カーボンブラックaに代えて、カーボンブラックbを使用したことと、ジエチレングリコールを50部使用したこと以外は、実施例1と同様にして、カーボンブラック濃度14.5%の水性顔料分散液を得た。カーボンブラックbは灰分が0.04質量%、DBP吸油量Aが101ml/100g、BET比表面積Bが258m2/gで、A/Bが0.39であった。
実施例1において、カーボンブラックaに代えて、カーボンブラックcを使用したことと、ジエチレングリコールを47部使用したこと以外は、実施例1と同様にして、カーボンブラック濃度14.5%の水性顔料分散液を得た。カーボンブラックcは灰分が0.40%、DBP吸油量Aが94ml/100g、BET比表面積Bが371m2/gで、A/Bが0.25であった。
実施例1において、カーボンブラックaに代えて、カーボンブラックdを使用したことと、ジエチレングリコールを35部使用したこと以外は、実施例1と同様にして、カーボンブラック濃度14.5%の水性顔料分散液を得た。カーボンブラックdは灰分が0.74質量%、DBP吸油量Aが70ml/100g、BET比表面積Bが292m2/gで、A/Bが0.24であった。
実施例1において、カーボンブラックaに代えて、カーボンブラックeを使用したことと、ジエチレングリコールを35部使用したこと以外は、実施例1と同様にして、カーボンブラック濃度14.5%の水性顔料分散液を得た。カーボンブラックeは灰分が0.04質量%、DBP吸油量Aが69ml/100g、BET比表面積Bが108m2/gで、A/Bが0.64であった。
実施例1において、カーボンブラックaに代えて、カーボンブラックfを使用したことと以外は、実施例1と同様にして、カーボンブラック濃度14.5%の水性顔料分散液を得た。カーボンブラックfは灰分が2.79質量%、DBP吸油量Aが61ml/100g、BET比表面積Bが302m2/gで、A/Bが0.20であった。
実施例1において、カーボンブラックaに代えて、カーボンブラックgを使用したことと以外は、実施例1と同様にして、カーボンブラック濃度14.5%の水性顔料分散液を得た。カーボンブラックgは灰分が1.54質量%、DBP吸油量Aが65ml/100g、BET比表面積Bが320m2/gで、A/Bが0.20であった。
実施例1において、カーボンブラックaに代えて、カーボンブラックhを使用したことと、ジエチレングリコールを50部使用したこと以外は、実施例1と同様にして、カーボンブラック濃度14.5%の水性顔料分散液を得た。カーボンブラックhは灰分が0.01質量%、DBP吸油量Aが96ml/100g、BET比表面積Bが116m2/gで、A/Bが0.83であった。
実施例1において、カーボンブラックaに代えて、カーボンブラックiを使用したことと、ジエチレングリコールを65部使用したこと以外は、実施例1と同様にして、カーボンブラック濃度14.5%の水性顔料分散液を得た。カーボンブラックiは灰分が0.01質量%、DBP吸油量Aが130ml/100g、BET比表面積Bが146m2/gで、A/Bが0.89であった。
実施例1において、カーボンブラックaに代えて、カーボンブラックjを使用したことと、ジエチレングリコールを50部使用したこと以外は、実施例1と同様にして、カーボンブラック濃度14.5%の水性顔料分散液を得た。カーボンブラックgは灰分が0.01質量%、DBP吸油量Aが102ml/100g、BET比表面積Bが117m2/gで、A/Bが0.87であった。
下記組成の混合物を、250mlのポリ容器に仕込み、直径1.25mmのジルコニアビーズと共にペイントシェイカーで4時間撹拌し、カーボンブラック濃度が14.5%の水性顔料分散液を得た(ビーズミル製法)。
(a)カーボンブラックd 50部
(b)スチレンアクリル系樹脂A 15部
(c)8N−酸化カリウム水溶液 7部
(d)ジエチレングリコール 35部
(e)イオン交換水 238部
比較例6において、カーボンブラックdに代えて、カーボンブラックgを使用した以外は、比較例6と同様にして、カーボンブラックを分散した。しかしカーボンブラックの分散が不十分となり、水性顔料分散液を得ることができなかった。
(カーボンブラックの灰分測定方法)
JIS K6218−2に準拠した方法でカーボンブラックの灰分を測定した。灰分の単位は質量%である。
JIS K6217−4に準拠した方法でカーボンブラックのDBP吸油量を測定した。DBP吸油量の単位は「ml/100g」である。本実施例では、カーボンブラックのDBP吸油量を「A」と表記する。
JIS K6217−2に準拠した方法でカーボンブラックのBET比表面積を測定した。BET比表面積の単位は「m2/g」である。本実施例では、カーボンブラックのBET比表面積を「B」と表記する。具体的な測定方法は以下の通りである。
(1)ガラス製セルにカーボンブラックを充填した。この時、被測定物の総表面積が1〜50m2になるようにカーボンブラックの充填量を調整した。
(2)マウンテック製BET比表面積測定装置(Macsorb HM Model−1201)を用いて、BET法にてカーボンブラックの比表面積を測定した。
(3)2回の測定を行い測定値の平均値をBET比表面積とした。この時、測定値の差が10%を超えないことを必要とし、これを超えた場合はさらに測定を行って測定値の差が10%を超えない測定値となるまで測定を繰り返した。
前記測定方法で測定したDBP吸油量の測定値をBET比表面積の測定値で除し(A/B)を算出した。本実施例では、DBP吸油量A(ml/100g)と比表面積B(m2/g)との比を「A/B」と表記する。
Particle Sizing Systems社製粗大粒子数測定装置(Accusizer 780 APS)を用いて、イオン交換水で500〜1000倍に希釈した顔料分散液に含まれる直径0.5μm以上の粗大粒子数を測定した。該測定は、約4mlの顔料分散液を装置に充填し、測定部を通過する粒子の数と粒径を光学的手段を用いて検出するものである。測定時に分散液の希釈倍率、装置への充填重量をパラメータとして入力する。得られた測定結果に希釈濃度の数値をかけ、実施例、比較例で作製される顔料濃度14.5質量%の顔料分散液1ml中に含まれる粒子の個数を算出し、これを粗大粒子数とする。2回測定を行い得られた結果の平均値を粗大粒子数とした。この時、測定値の差が10%を超えないことを必要とし、これを超えた場合はさらに測定を行って測定値の差が10%を超えない測定値となるまで測定を繰り返した。
日機装社製ナノトラック粒度分布測定装置(UPA150)を用いて、イオン交換水で2000倍に希釈した顔料分散液の平均分散粒子径を測定した。該測定においては、約4mlの顔料分散液を測定セルに入れて、レーザー光の散乱光を検出することにより、粒子径が測定される。測定時に入力するパラメータとしては、粘度(イオン交換水希釈後の顔料分散液粘度)、分散粒子の密度(カーボンブラックの真比重)、イオン交換水の密度がある。なお、測定温度は25℃であった。測定結果として得られ表示される体積平均粒子径(MV)を平均分散粒子径の値(単位:nm)とした。測定時間30秒で3回測定を行い、得られた結果の平均値を求め、下記表1に記載の平均分散粒子径とした。
分散液をポリプロピレン容器に密封し、60℃で4週間保存した後の分散液の平均分散粒子径を上記と同様の方法で測定した。結果を以下の基準に従って評価した。
○:平均分散粒子径の変化率が+2%以内
△:平均分散粒子径の変化率が+2%〜5%
×:平均分散粒子径の変化率が+5%以上
図1においてA/Bが小さい領域で粗大粒子数が大きい値を示している3点は比較例1、2、6に対応し、これらは灰分が多いことが原因となって粗大粒子数が増加している。
但し比較例6はビーズミル製法を用いているという製法上の差違も粗大粒子数増加の原因となっている。これら比較例においてA/Bが小さい値を示すのは、DBP吸油量が少ない、すなわちストラクチャーの成長が抑制されたカーボンブラックが使用されたからである。このようなカーボンブラックはストラクチャーの成長を抑制するために大量の調整剤(アルカリ金属塩)が使用されており、カーボンブラックの表面には調整剤が灰分として大量に残存している。
(インクジェット記録用水性顔料インクの吐出試験方法)
下記の組成で顔料濃度が3%となるインクジェット記録用水性顔料インクを作製した。
水性顔料分散液 20.7部
2−ピロリジノン 8部
トリエチレングリコール モノ−n−ブチルエーテル 8部
精製グリセリン 3部
サーフィノール440 (エアープロダクツ社製) 0.5部
純水 59.8部
作製したインクジェット記録用水性インクを黒色カートリッジに充填し、インクジェットプリンター(EPSON社製EM−930C)にてノズルチェックパターンを印刷した。更にモノクロモードでA4用紙1枚に黒色ベタパターンを印刷した後、再度ノズルチェックパターンを印刷した。黒色ベタパターン印刷試験前後のチェックパターンの欠損状態を以下の基準により評価を行った。
○:ノズル欠けが増加しない
△:ノズル欠けが1〜5ヶ所以下増加する
×:ノズル欠けが6ヶ所以上増加する
比較例での顔料分散液を用いると、特定の濾過や遠心分離等の粗大粒子除去工程を導入しない限り、粗大粒子によるノズル目詰まりなどが原因となってインク吐出性が低下することがわかる。
しかし、実施例と比較例に挙げたカーボンブラックでは、粗大粒子除去工程に要する時間及び収率に明確な違いが生じる。例えば実施例2と比較例2の分散液を、同一の遠心分離機を用いて処理した場合、約2時間で実施例2の分散液の粗大粒子数を500×106個/mlまで低減できたのに対し、比較例2の分散液では約4時間処理しても粗大粒子数を2000×106個/ml以下にすることができなかった。さらに遠心分離処理前後の分散液中の顔料重量の変化(収率)を比較すると、実施例2が95%であるのに対し、比較例2は79%となった。その後、両分散液を定格精度0.5μmのフィルターで濾過したところ、実施例2の分散液は差圧変化無しに全量通過したのに対し、比較例2の分散液は差圧変化が大きく全量は通過しなかった。このように実施例2に示すような本願発明で規定する特徴を有するカーボンブラックを用い、常温で固形の顔料分散体の形成を経て作製された水性顔料分散液は、生産効率及び収率に悪影響を及ぼすことなく粗大粒子数を低減でき、性能の高いインクジェット記録用水性顔料インクを得ることができる。
Claims (3)
- カーボンブラック、及びアニオン性基を有する共重合体を含有する混合物を混練し、顔料分散体を作製する混練工程と、前記顔料分散体を水性媒体中に混合、撹拌する混合工程を有し、前記カーボンブラックの灰分が1質量%以下、DBP吸油量Aが80〜150ml/100g、かつDBP吸油量A(ml/100g)と比表面積B(m2/g)との比A/Bが0.75以下であり、前記アニオン性基を有する共重合体は酸価50〜300、質量平均分子量7500〜40000のスチレンアクリル系のランダム共重合体であることを特徴とするインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
- 前記スチレンアクリル系共重合体は、全モノマー成分に対して60〜90質量%のスチレン系モノマー単位を含有する請求項1に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
- 前記顔料分散体は塩基性化合物及び湿潤剤を含有し、固形分比率が40〜80質量%である請求項1または2に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
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