JP4472245B2 - インクセット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクセットに関する。更に詳しくは、インクジェット記録用プリンター等に好適に使用しうるインクセットに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式によれば、使用する装置が低騒音で操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易であり、かつ記録部材として普通紙が使用できるという利点も有するため、近年広く用いられている。
【0003】
インクジェット記録用インクとしては、取扱い性の観点から水系のインクが多く用いられている。水系の色材としては、吐出信頼性及び発色性の観点から、水溶性染料が主に使用されている。しかしながら、水溶性染料が用いられた水系インクには、耐水性、耐光性、耐オゾン性等の印字物の保存性に劣るという欠点がある。
【0004】
そこで、近年、顔料が用いられた色材が徐々に使用されている。
しかしながら顔料色材は、インク中で均一に溶解している染料色材とは異なり、インク中である大きさの粒子として不均一に存在するため、分散安定性、及びインクジェット記録用インクとして用いる場合に、細いノズル内でインク目詰まりを発生させやすいといった問題がある。そこで、分散安定性並びにノズル内でのインク目詰まりを防止させる目的から、顔料色材の平均粒径及び粒径分布を規定した技術が多く報告されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0005】
しかし、これら顔料色材を用いた場合は、分散安定性及びノズル内でのインク目詰まりが良好となっても、十分にきれいな画質が得られないといった問題がある。通常、インクジェット記録用プリンターは、ブラックインク、イエローインク、マゼンタインク、シアンインクを組み合わせたインクセットを画像形成に用いる。前述の平均粒径及び粒径分布を規定したブラックインク並びにカラーインクを用いて、表面の平滑なメディアに全てのインクを用いて画像を形成した場合、光沢が高い部分と光沢が低い部分が色の異なる部分で存在し、見栄えの悪い画質になりやすい。
【0006】
【特許文献1】
特開平3-163175号公報
【特許文献2】
特開平8-218015号公報
【特許文献3】
特開平8-295837号公報
【特許文献4】
特開平10−67958 号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、表面が平滑なメディアに印字した場合であっても、光沢感が均一である印字面を与えるインクセット、更には光沢が高く、水系インクであっても耐水性、耐擦過性及び耐マーカー性にも優れたインクジェット記録用インクセット等のインクセットを提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ブラックインク用水不溶性色材を含むブラックインクと、カラーインク用水不溶性色材を含むカラーインクとからなり、ブラックインク用水不溶性色材とカラーインク用水不溶性色材からなる群の中の色材の最大平均粒径と最小平均粒径の粒径差が45nm以下の範囲内にあるインクセットに関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のインクセットは、ブラックインクとカラーインクとからなる。ここで、本発明書にいう「ブラックインク」とは、NIPPON DENSHOKU Spectro Color Meter SE2000〔日本電色工業(株)製、商品名〕を用い、印字物をD65/2 の光の波長で反射光を測定し、CIELABで表示したとき、L * が50以下、a* +b* が6以下、a* が−2以上、b* が5以下の色差を有するインクをいう。「カラーインク」は、ブラック以外のインクをいう。
【0010】
ブラックインクはブラックインク用水不溶性色材を含有する。また、カラーインクは、カラーインク用水不溶性色材を含有する。
【0011】
水不溶性色材としては、
(1)顔料を界面活性剤、顔料誘導体又は水溶性ポリマーで水中に分散させたもの(以下、顔料分散体という)、
(2)親水性基が直接又は他の原子団を介して顔料に結合している自己分散型顔料、及び(3)顔料又は疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体等が挙げられる。水不溶性色材(以下、単に「色材」という)の詳細な説明は、後述する。
【0012】
本発明においては、ブラックインク用色材とカラーインク用色材からなる群の中の色材の最大平均粒径と最小平均粒径の粒径差が45nm以下の範囲にある点に、1つの大きな特徴がある。本発明のインクセットは、かかる特徴を有するので、表面が平滑なメディアに印字した場合であっても、光沢感が均一な印字物を与える。
【0013】
本発明のインクセットが、表面が平滑なフォトペーパー、光沢紙等のメディアに印字しても光沢感が均一な印字物を与えるのは、全てのインク中に含有されている色材の粒径が揃っていることに起因する。
【0014】
色材の粒径と光沢との関係は、表面が平滑なフォトペーパー、光沢紙等のメディアに例えば10cm×10cmの大きさでベタ印字を行なうと、粒径が大きい色材を含むインクの場合、印字した面の表面粗さが大きく(凹凸が大きい)、光沢が低下する。また、粒径の小さい色材を用いると、逆に印字面の表面粗さが小さく(凹凸が小さい)、光沢が増す。即ち、色差の異なる数種類のインクを用い、表面が平滑なメディアに画像を形成させた場合、印字面の光沢感の均一性といった点では、色差の異なる全てのインク中に含有されている色材の粒径がある粒径差の範囲に入っていれば、粒径による光沢の違いがあるものの、光沢感の均一な印字面が得られる。即ち、全てのインクの色材粒径が大きく、粒径差がある範囲に入っていれば、均一なマット調の画像が得られ、 全てのインクの色材粒径が小さく、粒径差がある範囲に入っていれば、均一な高光沢の画像が得られる。
【0015】
一方、色差の異なる数種類のインクを用い画像を形成させる場合、インク中の色材の粒径が、他のインク中の色材の粒径と比べてある範囲以上の粒径差になっていると、得られる画像は光沢が低いところと高いところが存在し、光沢感の均一性の低い、見栄えの悪い印字物となる。
【0016】
また光沢に関しては、写真のような高光沢の画質を要望するユーザーが多く、顔料を用いた系においても、水性染料を用いたような高光沢を呈する画質が強く望まれている。
【0017】
なお、本発明書における色材の粒径差とは、インクセットに用いる個々のインク中の色材の平均粒径をまず全て求め、平均粒径が最も大きい色材と最も小さい色材との平均粒径の差の絶対値として求めた値である。但し、インクに複数の色材が含まれる等により、インクの粒度分布に色材由来のピークが複数ある場合には、各ピーク毎の平均粒径を用いるが、各ピークの面積が全ピーク面積に占める比率が、40重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下のピークは、粒径差を算出する対象から除く。例えば、ブラックインク、イエローインク、マゼンタインク、シアンインクからなるインクセットにおいて、それぞれが含有する色材の平均粒径が、ブラックインクが130nm、イエローインクが140nm、マゼンタインクが100nm、シアンインクが90nmの場合、本発明書でいう色材の粒径差とは、最も粒径の大きいイエローインクの140nmと最も粒径の小さいシアンインクの90nmの差の絶対値として、50nmとなる
【0018】
また、本発明におけるポリマー粒子の平均粒径は、実施例に示されているように、大塚電子(株)製、ELS-8000を用いて測定し、キュムラント解析した値である。
【0019】
色差の異なる複数のインクを組み合わせたインクセットから得た画像の光沢感は、 全てのインク中の色材の粒径が同等であればあるほど均一となる。かかる観点から、ブラックインク用色材とカラーインク用色材の全ての粒径差が45nm以下、好ましくは40nm以下、より好ましくは35nm以下、更に好ましくは25nm以下である。
【0020】
また、ブラックインク用色材及びカラーインク用色材の平均粒径は、分散安定性を向上させる観点、印字濃度を高める観点及び高い光沢を得る観点から、10〜200nm 、好ましくは30〜180nm 、より好ましくは50〜150nm 、更に好ましくは70〜130nm であることが望ましい。
【0021】
色材の中では、耐水性、耐擦過性及び耐マーカー性の観点から、顔料又は疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を用いるのが好ましい。
【0022】
顔料分散体に用いられる顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。必要により、それらの顔料と体質顔料とを併用してもよい。
【0023】
無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物等が挙げられる。
【0024】
ブラックインク用色材の場合には、カーボンブラック等の黒色顔料が好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
【0025】
カラーインク用色材の場合には、有機顔料、体質顔料等の着色顔料が好ましい。有機顔料としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【0026】
顔料を界面活性剤で分散させる際の界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤又は両性界面活性剤が挙げられる。これらの中では、分散安定性及び吐出性の観点から、β−ナフタレンスルフォン酸−ホルマリン縮合物のNa塩〔例えば、花王(株)製、商品名:デモールN、デモールRN、デモールMS等〕、カルボン酸型高分子活性剤〔例えば、花王(株)製、商品名:ポイズ520 、ポイズ521 、ポイズ530 等〕が好ましい。
【0027】
界面活性剤の量は、インクにおける色材の分散安定性及びインクの吐出性の観点から、顔料100 重量部に対して、界面活性剤1〜120 重量部、好ましくは3〜70重量部、更に好ましくは5〜30重量部であることが望ましい。
【0028】
顔料を水中に分散させる際に用いられる顔料誘導体としては、イオン性官能基又はイオン性官能基の塩を有する、アゾ誘導体、ジアゾ誘導体、フタロシアニン誘導体、キナクリドン誘導体、イソインドリノン誘導体、ジオキサジン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、チオインジゴ誘導体、アントラキノン誘導体、キノフタロン誘導体等が挙げられる。
【0029】
顔料を水中に分散させる際に用いられる水溶性ポリマーとしては、水溶性ビニルポリマー、水溶性エステルポリマー、水溶性ウレタンポリマー等が挙げられる。これらのポリマーの中では、水溶性ビニルポリマーが好ましい。
【0030】
本明細書でいう「水溶性ポリマー」とは、中和後に25℃の水100 gに対する溶解度が1g以上のポリマーをいう。また、本明細書にいう「水不溶性ポリマー」とは、前記水溶性ポリマー以外のポリマーをいう。
【0031】
水溶性ビニルポリマーとしては、塩生成基含有モノマー(a)及び疎水性モノマー(b)を含有するモノマー組成物を重合させてなる共重合体が挙げられる。なお、このモノマー組成には、必要に応じてノニオン性の親水性モノマー(c)が含有されていてもよい。
【0032】
塩生成基含有モノマー(a)としては、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが挙げられる。
【0033】
アニオン性モノマーの例としては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。これらの中では、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、中でもアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
【0034】
カチオン性モノマーの例としては、不飽和3級アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。カチオン性モノマーの具体例としてはN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート等が挙げられる。これらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0035】
疎水性モノマー(b)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系モノマー等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、前記(イソ又はターシャリー)及び(イソ)は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルを示す。
【0036】
ノニオン性モノマー(c)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート、炭素数が1〜12のモノアルコキシポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート等が挙げられる。それらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、炭素数が1〜12のモノアルコキシポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレートが好ましい。
【0037】
塩生成基含有モノマー(a)、疎水性モノマー(b)及びノニオン性の親水性モノマー(c)の割合は、中和後に水に可溶であり、インクにおける色材の分散安定性及びインクの吐出性に優れているのであれば特に限定がない。通常、塩生成基含有モノマー(a)/疎水性モノマー(b)/ノニオン性の親水性モノマー(c)〔重量比〕は1〜80/20〜70/0〜50であることが好ましい。
【0038】
水溶性ポリマーの重量平均分子量は、インクにおける色材の分散安定性及びインク粘度を考慮して、500 〜30000 、好ましくは800 〜20000 、更に好ましくは1000〜10000 であることが望ましい。なお、水溶性ポリマーの重量平均分子量は、中和前において、以下に示す実施例に記載のゲルクロマトグラフィーによって測定したときの値である。
【0039】
水溶性ポリマーは、中和されていることが望ましい。中和度は、顔料分散体の分散安定性を良好に保持するのであれば特に限定がない。通常、水溶性ポリマーを構成している塩生成基含有モノマー中の塩生成基1モルあたり中和剤を30〜200 モル%添加することが望ましい。
【0040】
中和の際に用いられる中和剤としては、水溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、水溶性ポリマーにカチオン性モノマーを用いた場合は、中和剤として酢酸、メトキシ酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等を用いることができる。また、水溶性ポリマーにアニオン性モノマーが用いられている場合には、中和剤として、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等を用いることができる。
【0041】
顔料誘導体又は水溶性ポリマーの量は、インクにおける色材の分散安定性及びインクの吐出性の観点から、顔料100 重量部に対して、5〜100 重量部、好ましくは10〜80重量部、更に好ましくは15〜60重量部であることが望ましい。
【0042】
親水性基が直接又は他の原子団を介して結合している自己分散型顔料としては、特開平10−140064号公報、特開平10−110127号公報等に記載されている自己分散型顔料が挙げられ、具体的にはキャボット社製のCAB-O-JET (登録商標)300 が例示される。
【0043】
顔料又は疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体に用いられる顔料は、前記顔料分散体に用いられる顔料と同様であればよい。
【0044】
疎水性染料の例として油溶性染料、分散染料等が挙げられる。これらの中では、油溶性染料及び分散染料がポリマー粒子中に良好に含有させることができることから好ましい。
【0045】
油溶性染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、C.I.ソルベント・ブラック3、7、27、29、34;C.I.ソルベント・イエロー14、16、29、56、82;C.I.ソルベント・レッド1、3、8、18、24、27、43、51、72、73;C.I.ソルベント・バイオレット 3;C.I.ソルベント・ブルー2、11、70;C.I.ソルベント・グリーン3、7;C.I.ソルベント・オレンジ2等が挙げられる。
【0046】
分散染料としては、特に限定されるものではないが、好ましい例としては、C.I.ディスパーズ・イエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100 、119 、122 、124 、126 、160 、184:1 、186 、198 、199 、204 、224 、237 ;C.I.ディスパーズ・オレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118 、119 、163 ;C.I.ディスパーズ・レッド54、60、72、73、86、88、91、93、111 、126 、127 、134 、135 、143 、145 、152 、153 、154 、159 、164 、167:1 、177 、181 、204 、206 、207 、221 、239 、240 、258 、277 、278 、283 、311 、323 、343 、348 、356 、362 ;C.I.ディスパーズ・バイオレット33;C.I.ディスパーズ・ブルー56、60、73、87、113 、128 、143 、148 、154 、158 、165 、165:1 、165:2 、176 、183 、185 、197 、198 、201 、214 、224 、225 、257 、266 、267 、287 、354 、358 、365 、368 ;C.I.ディスパーズ・グリーン6:1 、9等が挙げられる。
【0047】
疎水性染料は、水不溶性ポリマー粒子中に効率的に含有させる観点から、25℃において、有機溶媒に2g/L 以上、好ましくは20〜500 g/L 溶解するものが望ましい。
【0048】
顔料又は染料を水不溶性ポリマーに含有させる際の水不溶性モノマーとしては、水不溶性ビニルポリマー、水不溶性エステル系ポリマー、水不溶性ウレタン系ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーの中では、水不溶性ビニルポリマーが好ましい。
【0049】
水不溶性ビニルポリマーとしては、塩生成基含有モノマー(a)及び疎水性モノマー(b)を含有するモノマー組成物を重合させてなる共重合体が挙げられる。なお、モノマー組成物には、必要により、ノニオン性の親水性モノマー(c)及び/又はマクロマー(d)が含まれていてもよい。これらの中では、インクにおける色材の分散安定性及びインクの吐出安定性の観点からマクロマー(d)を共重合させるのが好ましい。
【0050】
塩生成基含有モノマー(a)、疎水性モノマー(b)及びノニオン性の親水性モノマー(c)は、前記水溶性ポリマーに用いられるものと同様のものが例示される。
【0051】
マクロマー(d)としては、数平均分子量500 〜100000、好ましくは1000〜10000 の重合可能な不飽和基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。マクロマー(d)の数平均分子量は、溶媒として1mmol/L のドデシルメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィーにより、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
【0052】
マクロマー(d)の代表例としては、シリコーンマクロマー及びスチレン系マクロマーが挙げられ、 これらは単独で使用してもよく、併用してもよい。
【0053】
シリコーンマクロマーの中では、式(I):
1 (Y1 ) q Si(R1 3-r (Z1 r (I)
(式中、X1 は重合可能な不飽和基、Y1 は2価の結合基、R1 はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5の低級アルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数2〜12のアルコキシ基、Z1 は500 以上の数平均分子量を有する1価のシロキサンポリマーの残基、qは0又は1、rは1〜3の整数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーは、インクジェットプリンターのヘッドの焦げ付きを防止する観点から好適に使用しうるものである。
【0054】
式(I)で表されるシリコーンマクロマーにおいて、X1 としては、CH2 =CH−基、CH2 =C(CH3 )−基等の炭素数2〜6の1価の不飽和炭化水素基が挙げられる。Y1 としては、−COO−基、−COOCa12a1 −基(a1は1〜5の整数を示す)、フェニレン基等の2価の結合基が挙げられ、−COOC3 6 −が好ましい。R1 としては、水素原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基;フェニル基等の炭素数6〜20のアリール基、メトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基等が挙げられ、これらの中ではメチル基が好ましい。Z1 は、好ましくは数平均分子量500 〜5000のジメチルシロキサンポリマーの1価の残基である。qは0又は1であるが、好ましくは1である。rは1〜3の整数であるが、好ましくは1である。
【0055】
シリコーンマクロマーの代表例としては、式(I−1):
CH2=CR5-COOC3H6-[Si(R6) 2-O] b -Si(R6)3 (I−1)
(式中、R5 は水素原子又はメチル基、R6 はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、bは5〜60の数を示す)
で表されるシリコーンマクロマー、式(I−2):
CH2=CR5-COO-[Si(R6)2-O] b -Si(R6)3 (I−2)
(式中、R5 、R6 及びbは前記と同じ)
で表されるシリコーンマクロマー、式(I−3):
CH2=CR5-Ph-[Si(R6)2-O]b Si(R6)3 (I−3)
(式中、Phはフェニレン基、R5 、R6 及びbは前記と同じ)
で表されるシリコーンマクロマー、式(I−4):
CH2=CR5-COOC3H6-Si(OE)3 (I−4)
〔式中、R5 は前記と同じ。Eは式:-[Si(R5)2O] c -Si(R5)3基(R5 は前記と同じ。cは5〜65の数を示す)を示す〕
で表されるシリコーンマクロマー等が挙げられる。
【0056】
これらの中では、式(I−1)で表されるシリコーンマクロマーが好ましく、特に、式(I−1a):
CH2=C(CH3)-COOC3H6-[Si(CH3) 2-O]d -Si(CH3)3 (I−1a)
(式中、dは8〜40の数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーが好ましい。その例として、FM-0711 〔チッソ(株)製、商品名〕等が挙げられる。
【0057】
スチレン系マクロマーは、ビニルポリマーに顔料を十分に含有させる観点から、好適に使用しうるものである。
【0058】
スチレン系マクロマーの代表例としては、片末端に重合性官能基を有するスチレン単独重合体又はスチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。これらの中では、片末端に重合性官能基としてアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するものが好ましい。
【0059】
スチレンと他のモノマーとの共重合体におけるスチレン含量は、顔料が十分にビニルポリマーに含有されるようにする観点から、60重量%以上、好ましくは70重量%以上であることが望ましい。他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0060】
水不溶性のビニルポリマーにおける塩生成基含有モノマー(a)の含量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、1〜50重量%、好ましくは2〜40重量%が望ましい。
【0061】
水不溶性ビニルポリマーにおける疎水性モノマー(b)の含量は、印字濃度及び分散安定性の観点から、5〜93重量%、好ましくは10〜80重量%が望ましい。
【0062】
水不溶性ビニルポリマーにおけるノニオン性の親水性モノマー(c)の含量は、吐出安定性及び印字濃度の観点から、0〜40重量%、好ましくは5〜30重量%が望ましい。
【0063】
水不溶性ビニルポリマーにおけるマクロマー(d)の含量は、バブルジェットのインクジェットプリンターにおいて、ヒーター面の焦げ付きを抑制する観点及び分散安定性の観点から、0〜30重量%、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%が望ましい。
【0064】
水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、色材の分散安定性及びインク粘度への影響から、1000〜100000、好ましくは1500〜100000、更に好ましくは2000〜70000 である。水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、前述の水溶性ポリマーと同様な方法を用い測定した値である。
【0065】
水不溶性ポリマーは、中和されていることが好ましい。中和度は、分散安定性が良好であれば特に限定がない。通常、水不溶性ポリマーを構成している塩生成基含有モノマー(a)中の塩生成基1モルあたり中和剤を30〜200 モル%添加することが望ましい。
【0066】
中和の際に用いられる中和剤は、水不溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて適宜選択することができる。中和剤の例としては、水溶性ポリマーの場合と同じものが挙げられる。
【0067】
水不溶性ポリマーの量は、インクにおける色材の分散安定性、並びに吐出性、耐擦過性及び耐マーカー性との兼ね合いから、顔料及び疎水性染料100 重量部に対して、5〜250 重量部、好ましくは10〜180 重量部、更に好ましくは15〜130 重量部であることが望ましい。
【0068】
以下に、色材が顔料又は疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体である場合の製造法について説明する。
【0069】
水不溶性ポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合法により、塩生成基含有モノマー(a)及び疎水性モノマー(b)、必要により、ノニオン性の親水性モノマー(c)及び/又はマクロマー(d)を含有するモノマー組成物を重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
【0070】
溶液重合法に用いられる溶媒は、極性有機溶媒であることが好ましい。極性有機溶媒が水混和性有機溶媒である場合には、水と混合して用いることもできる。
【0071】
極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、(イソ)プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらと水との混合液が好ましい。
【0072】
なお、重合の際には、ラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、2, 2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'- アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2'-アゾビスブチレート、2,2'- アゾビス(2- メチルブチロニトリル)、1,1'- アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物、t-ブチルペルオキシオクトエート、ジ-t- ブチルペルオキシド、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。
【0073】
重合開始剤の量は、モノマー組成物100 重量部あたり、0.001 〜5重量部、好ましくは0.01〜2重量部であることが望ましい。
【0074】
なお、重合の際には、更に重合連鎖移動剤を添加してもよい。重合連鎖移動剤の具体例としては、オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素類;ペンタフェニルエタン等の炭化水素類;アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2-エチルヘキシルチオグリコレート、タービノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペルテン、α−メチルスチレンダイマー、9,10- ジヒドロアントラセン、1,4-ジヒドロナフタレン、インデン、1,4-シクロヘキサジエン等の不飽和環状炭化水素化合物;2,5-ジヒドロフラン等の不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0075】
モノマー組成物の重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー及び溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができない。通常、重合温度は30〜100 ℃、好ましくは50〜80℃であり、重合時間は1〜20時間である。重合雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガスであることが好ましい。
【0076】
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法によってポリマーを単離することができる。また、得られた共重合体は、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することにより、精製することができる。
【0077】
疎水性染料を含有させたポリマー粒子の水分散体は、公知の乳化法によって製造することができる。該水分散体は、例えば、水不溶性ポリマー及び疎水性染料を有機溶媒に溶解させ、得られた溶液に必要に応じて中和剤を加えて水不溶性ポリマーの塩生成基をイオン化し、これに水を添加した後、必要に応じて分散機又は超音波乳化機を用いて分散を行ない、その有機溶媒を留去して水系に転相することによって得ることができる。
【0078】
また、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体は、例えば、水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、得られた溶液に顔料、水、中和剤及び必要に応じ界面活性剤を加えて混練し、ペーストとした後、該ペーストを必要に応じて水で希釈し、有機溶媒を留去して水系にすることによって得ることができる。
【0079】
ブラックインクにおける色材の含有量及びカラーインクにおける色材の含有量は、いずれも、十分な印字濃度を得る観点及び吐出性の観点から、0.5 〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、更に好ましくは2〜15重量%であることが望ましい。なお、色材が分散体である場合には、色材の量は、分散体の固形分である。
【0080】
なお、ブラックインク及びカラーインクには、各種添加剤、例えば多価アルコール類のような湿潤剤、分散剤、消泡剤、防黴剤及び/又はキレート剤、pH調整剤等を適量で添加することができる。
【0081】
【実施例】
製造例1〜4(ビニルポリマー合成)
反応容器に、メチルエチルケトン20重量部、表1の「初期仕込みモノマー」の欄に示す種類及び量のモノマー、並びに重合連鎖移動剤を仕込み、窒素ガス置換を十分に行なった。
【0082】
一方、滴下ロートに、表1の「滴下モノマー」の欄に示す種類及び量のモノマー及び重合連鎖移動剤、メチルエチルケトン60重量部、並びに2,2'- アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.1 重量部をメチルエチルケトン5重量部に溶解した溶液を加えた。反応容器内の混合溶液を70℃にし、反応容器内に、滴下ロート中の混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃で3時間重合させ、更に75℃で10時間熟成させて、ポリマー溶液を得た。
【0083】
得られたポリマー溶液の一部を、標準物質としてポリスチレン、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量を測定したところ、表1に示す重量平均分子量を有していた。
【0084】
製造例5〜20(顔料を含有するインク用色材の調製)
製造例1〜4で得られたポリマー溶液28重量部(ポリマー固形分:50重量%)に、表2に記載の顔料、メチルエチルケトン、イオン交換水及び中和剤を加えて十分に攪拌した後、3本ロールミル〔(株)ノリタケカンパニー製、商品名:NR-84A〕を用いて20回混練した。
【0085】
得られたペーストをイオン交換水250 重量部に投入し、十分に攪拌した後、エパポレーターを用いてメチルエチルケトン及び一部の水を留去し、固形分量が20重量%のインク用色材を得た。得られたインク用色材の平均粒径の測定結果を表2に示す。
【0086】
得られた色材の平均粒径は、大塚電子(株)製、ELS-8000を用い、キュムラント解析で求めた。その測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100 回であり、分散溶媒である水の屈折率(1.333) を入力した。標準物質としては、セラディン(Seradyn) 社製のUniform Microparticles(粒径204nm)を使用した。その結果を表2に示す。
【0087】
なお、製造例5〜8で得られた色材は、含有されているポリマーのアクリル酸由来の塩生成基が表2に示す中和剤及び中和剤量で中和されると、含有されているポリマーが水溶性を呈するため、水溶性ポリマーにより分散された顔料分散体である。
【0088】
また、製造例9〜20で得られた色材は、含有されているポリマーのメタクリル酸、アクリル酸及びジメチルアミノエチルメタクリレート由来の塩生成基が表2に示す中和剤及び中和剤量で中和されると、含有されているポリマーが水不溶性を呈するため、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体である。
【0089】
製造例21〜24(疎水性染料を含有するインク用色材の調製)
製造例2で得られたポリマー溶液28重量部(ポリマー固形分量:50重量%)に、表2に示す疎水性染料及びトルエン230 重量部を加え、疎水性染料を完全に溶解させた後、表2に示す中和剤を加えてポリマーの塩生成基を中和し、更にイオン交換水900 重量部を加え、攪拌した後、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイダイザー社製)を用いて、30分間分散させた。
【0090】
得られた分散体を、エパポレーターを用いてメチルエチルケトン及び一部の水を留去し、固形分量が20重量%のインク用色材を得た。得られたインク用色材の平均粒径の測定結果を表2に示す。
【0091】
製造例21〜24で得られた色材は、含有されているポリマーのメタクリル酸が表2に示す中和剤及び中和剤量において、水不溶性を呈するため、疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体である。
【0092】
なお、表1及び表2に記載の各名称は、以下のことを意味する。
シリコーンマクロマー:チッソ(株)製、商品名:FM-0711(数平均分子量:1000 )〔式 (I-1a) で表される構造を有する〕
スチレンマクロマー:東亜合成(株)製、商品名:AS-6(スチレン単独重合マクロマー、片末端重合性官能基:メタクリロイルオキシ基、数平均分子量:6000)
モノメトキシポリエチレングリコール(n=4) メタクリレート:新中村化学(株)製、商品名:NKエステルM-40G
【0093】
CB−1:カーボンブラック〔デグサ社製、商品名:Printex95 〕
M−1:マゼンタ顔料〔チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:IRGAPHOR Magenta DMQ〕
Y−1:イエロー顔料〔山陽色素(株)製、品番:7410〕
C−1:シアン顔料〔大日本インキ工業(株)製、商品名:Fastogen Blue TGR-SD〕
CB−2:カーボンブラック〔デグサ社製、商品名:Color Black FW18〕
M−2:マゼンタ顔料〔大日本インキ工業(株)製、商品名:Fastogen Super M agenta RG 〕
Y−2: イエロー顔料〔チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:Yellow8G-CF(K01)〕
【0094】
C−2: シアン顔料〔大日本インキ工業(株)製、商品名:Fastogen Blue TGR 〕
CB−3:ブラック染料〔オリエント化学(株)製、商品名:オイルブラック860 〕
M−3:マゼンタ染料〔オリエント化学(株)製、商品名:オイルピンク312 〕
Y−3:イエロー染料〔オリエント化学(株)製、商品名:VALIFAST Y 1101 〕
C−3:シアン染料〔クラリアント社製、商品名:Savinyl Blue GLS〕
【0095】
【表1】
Figure 0004472245
【0096】
【表2】
Figure 0004472245
【0097】
実施例1
下記組成を有するブラックインク及びカラーインクを組合せてインクセットを調製した。各インクは、各成分を混合した後、マイクロフィルター(孔径:5μm)を用いて加圧濾過することにより調製した。
【0098】
〔組成〕
▲1▼ブラックインク (重量部)
製造例5で得られた顔料を含有する顔料分散体
(色材固形分量:20重量%) 30
グリセリン 5
エチレングリコール 5
アセチレングリコール−エチレンオキシド付加物(界面活性剤)
〔川研ファインケミカル(株)製、商品名:アセチレノールEH〕 0.5
イオン交換水 59.5
【0099】
▲2▼カラーインク(マゼンタ)
製造例6で得られた顔料を含有する顔料分散体
(色材固形分量:20重量%) 20
グリセリン 5
ジエチレングリコール 5
アセチレングリコール−エチレンオキシド付加物(界面活性剤) 〔川研ファインケミカル(株)製、商品名:アセチレノールEH〕 3
イオン交換水 67
【0100】
▲3▼カラーインク(イエロー)
製造例7で得られた顔料を含有する顔料分散体
(色材固形分量:20重量%) 20
グリセリン 5
ジエチレングリコール 5
アセチレングリコール−エチレンオキシド付加物(界面活性剤)
〔川研ファインケミカル(株)製、商品名:アセチレノールEH〕 3
イオン交換水 67
【0101】
▲4▼カラーインク(シアン)
製造例8で得られた顔料を含有する顔料分散体
(色材固形分量:20重量%) 20
グリセリン 5
ジエチレングリコール 5
アセチレングリコール−エチレンオキシド付加物(界面活性剤)
〔川研ファインケミカル(株)製、商品名:アセチレノールEH〕 3
イオン交換水 67
【0102】
実施例2〜5及び比較例1(但し、実施例3,4は参考例)
実施例1において、ブラックインク及びカラーインクに含有される色材を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、インクセットを作製した。
【0103】
次に、実施例1〜5及び比較例1で得られたインクセットの性能を以下の方法に従って調べた。その結果を表3に示す。
【0104】
<評価方法>
(1)光沢感の均一性
市販のバブルジェットプリンター〔キャノン(株)製、型番:BJC-430J 〕を用いて、表面の平滑度が高い市販のプロフェッショナルフォトペーパーPR-101〔キャノン販売(株)製〕に、セットしたインクの全てを4cm×4cmの大きさで各々ベタ印字したときのインク間での光沢やざらつき等の光沢感の違いを目視で観察し、光沢感の均一性として以下の評価基準に基づいて評価した。
【0105】
(評価基準)
◎:光沢感に差なし
○:光沢感に殆ど差なし
△:光沢感に気になる程度の差あり(実使用上問題なし)
×:光沢感に差あり
【0106】
(2)光沢
前記印字物を、目視で観察し、光沢が高光沢、光沢有り及びマット調(低光沢)のいずれに該当するのかを評価した。
【0107】
(3)インクの耐水性
前記(1)に記載のバブルジェットプリンターを用い、PPC用再生紙にベタ印字し、25℃で1時間乾燥させた後、初期の印字濃度を測定した。更にこの印字物を静水中に垂直に10秒間浸漬し、そのまま垂直に引き上げた。25℃にて自然乾燥させた後、浸漬後の印字濃度を測定した。初期の印字濃度に対する浸漬後の印字濃度の残存率を式:
〔残存率〕=〔浸漬後の印字濃度〕÷〔初期の印字濃度〕×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて耐水性を評価した。
【0108】
(評価基準)
◎:残存率95%以上
○:残存率90%以上95%未満
△:残存率70%以上90%未満
×:残存率70%未満
【0109】
(4)インクの耐擦過性
前記(1)に記載のバブルジェットプリンターを用い、PPC用再生紙にベタ印字し、25℃で1日間乾燥させた後、指で強く印字面を擦った。その印字のとれ具合を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0110】
(評価基準)
◎:ほとんど印字はとれず、周りに色がつかない。
○:少し印字が擦りとられ、周りに若干色がつく。
×:かなり印字が擦りとられ、周りがひどく黒くなり、指も相当汚れる。
【0111】
(5)ブラックインクの耐マーカー性
前記(1)に記載のバブルジェットプリンターを用い、PPC用再生紙にブラックインクでテキスト印字し、6時間経過後、市販の水性蛍光ペン〔(株)パイロット製、商品名:Spotliter S-8SL〕でなぞった場合の印字サンプルの汚れ度合いを目視により観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0112】
(評価基準)
◎:蛍光ペンでなぞっても尾引き等汚れがない。
○:蛍光ペンでなぞると尾引きするが、実用上問題ない。
△:蛍光ペンでなぞると尾引きが幾分発生。
×:蛍光ペンでなぞると尾引きが発生し、汚れがひどい。
【0113】
【表3】
Figure 0004472245
【0114】
以上の結果から、各実施例で得られたインクセットは、いずれも光沢感の均一性に優れ、かつ色材の種類によっては光沢が高く、また耐水性、耐擦過性及び耐マーカー性に優れていることがわかる。
【0115】
【発明の効果】
本発明のインクセットは、表面が平滑なメディアに印字した場合であっても、光沢感が均一である印字面を与えるインクセット、更には光沢が高く、水系インクであっても耐水性、耐擦過性及び耐マーカー性にも優れているので、インクジェット記録用インクセットとして好適に使用しうるものである。

Claims (6)

  1. ブラックインク用水不溶性色材を含むブラックインクと、カラーインク用水不溶性色材を含むカラーインクとからなり、ブラックインク用水不溶性色材とカラーインク用水不溶性色材からなる群の中の色材の最大平均粒径と最小平均粒径の粒径差が45nm以下の範囲内にあり、ブラックインク用水不溶性色材及びカラーインク用水不溶性色材を含む全ての色材の平均粒径が、70〜130nmの範囲内にあるインクセット(ただし、該平均粒径は大塚電子(株)製、ELS-8000(商品名)を用いて測定し、キュムラント解析した値である)
  2. 色材の最大平均粒径と最小平均粒径の粒径差が35nm以下の範囲内にある請求項1記載のインクセット。
  3. 色材の最大平均粒径と最小平均粒径の粒径差が25nm以下の範囲内にある請求項1記載のインクセット。
  4. 水不溶性色材が、水不溶性ポリマーに顔料又は疎水性染料を含有させた水不溶性ポリマー粒子の水分散体である請求項1〜3いずれか記載のインクセット。
  5. 水不溶性ポリマーが、塩生成基含有モノマー、疎水性モノマー及びマクロマーを含有するモノマー組成物を共重合させてなる水不溶性ビニルポリマーである請求項4記載のインクセット。
  6. 水不溶性ポリマー粒子の水分散体が、水不溶性ポリマー及び疎水性染料を有機溶媒に溶解させ、これに水を添加した後、分散を行い、その有機溶媒を留去して水系にすることによって得られるものであるか、又は、水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、これに顔料、水及び中和剤を加えて混練した後、有機溶媒を留去して水系にすることによって得られるものである、請求項4又は5記載のインクセット。
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