JP2005042011A - 水系インク - Google Patents

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泰陽 竹野
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繁美 若林
Akishi Azuma
晃志 東
Tatsuma Mizushima
龍馬 水島
Takehiro Tsutsumi
武弘 堤
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Abstract

【課題】 光沢性及び分散安定性に優れ、高印字濃度を付与しうる水分散体及びその製造法、並びに前記水分散体が用いられた水系インクを提供すること。
【解決手段】 顔料を含有する水不溶性ビニルポリマーのポリマー粒子の水分散体と水溶性着色成分を含む水系インク用水分散体;水不溶性ビニルポリマー、有機溶媒、顔料、水、水溶性着色成分、中和剤、及び必要に応じて界面活性剤を混合した後、有機溶媒を留去する前記水分散体の製造法;並びに前記水系インク用水分散体を含有してなる水系インク。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水系インクに関する。更に詳しくは、インクジェット記録用水系インク等として好適に使用しうる水系インク、並びにそれに用いられる水分散体及びその製造法に関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式によれば、使用する装置が低騒音で操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易であり、かつ記録部材として普通紙を使用することができるという利点があるため、近年広く用いられている。インクジェットプリンタに使用されるインクには、耐水性や耐光性を向上させるため、近年、顔料系インクが使用されている。
しかしながら、顔料系インクは粒子として存在するため、染料系インクと比較すると、被記録媒体上で凝集塊を形成しやすく、印字表面の平滑性が失われ、光沢性の低下や印字表面の均一性にやや劣るという欠点がある。この原因の1つとして、顔料粒子の分散安定性が不充分であることが挙げられ、分散剤が充分に顔料表面を被覆していないことが考えられる。
そこで、顔料と分散剤の吸着性を高める手段として、顔料を水不溶性ポリマーで被覆した技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この技術には、充分な光沢度を付与することができないという課題がある。
近年、光沢性や分散性等を向上させる目的で、インク中に分散している顔料の粒子径を限定すること(例えば、特許文献2参照)や、インク成分中にアミン類を含有させること(例えば、特許文献3及び4参照)、顔料と顔料誘導体を同時に含有させること(例えば、特許文献5〜7参照)等が提案されている。
これらの技術は、いずれも顔料の分散剤として水溶性ポリマーを用いており、その中でも、顔料と顔料誘導体とを併用した場合については、酸性処理が施された顔料誘導体と窒素含有ポリマーとのイオン的相互作用を利用することにより、顔料と水溶性ポリマーとの吸着性を向上させ、顔料の分散性や光沢性が改善されるものと考えられる。
しかしながら、このような水溶性ポリマーと顔料からなる水系インクは、長期間に及ぶ保存安定性の確保が困難となり、インク粘度の上昇等により、吐出安定性が課題であり、さらなる光沢性が求められている。
国際公開第00/39226号パンフレット 特開2002-356637 号公報 特開2001-171733 号公報 特開平8-253719号公報 特開2002-294134 号公報 特開平7-133456号公報 特開平6-212088号公報
本発明は、光沢性及び分散安定性に優れ、高印字濃度を付与しうる水分散体及びその製造法、並びに前記水分散体が用いられた水系インクを提供することを課題とする。
本発明は、
(1) 顔料を含有する水不溶性ビニルポリマーのポリマー粒子の水分散体と水溶性着色成分を含む水系インク用水分散体、
(2)水不溶性ビニルポリマー、有機溶媒、顔料、水、水溶性着色成分、中和剤、及び必要に応じて界面活性剤を混合した後、有機溶媒を留去する前記(1)記載の水分散体の製造法、並びに
(3)前記水系インク用水分散体を含有してなる水系インク
に関する。
なお、本明細書にいう「(メタ)アクリ」とは、「アクリ」又は「メタクリ」を意味する。
本発明の水分散体が用いられた水系インクは、光沢性、耐擦過性及び分散安定性に優れ、高印字濃度を付与しうるので、インクジェット記録用水系インクとして好適に使用することができるものである。
〔顔料〕
顔料は、有機顔料及び無機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジスアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー 13, 74, 83, 109, 110, 128, 151, C.I. ピグメント・レッド 48, 57, 122, 184, 188, C.I.ピグメント・バイオレット 19, C.I. ピグメント・ブルー 15, 15:1, 15:2, 15:3, 15:4, 16, C.I. ピグメント・グリーン 7, 36等が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。これらの中では、特に黒色水系インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
顔料の量は、印字濃度及びポリマー粒子中に含有させやすさの観点から、水不溶性ビニルポリマーの樹脂固形分100 重量部に対して、好ましくは20〜1200重量部、より好ましくは50〜900 重量部である。
〔水溶性着色成分〕
本明細書における水溶性着色成分とは、25℃の水に対する溶解度が0.01〜30重量%である着色成分をいう。
水溶性着色成分は、有機顔料誘導体及び水溶性染料のいずれであってもよい。水溶性着色成分は、用いる顔料と同一の骨格を有していることが好ましい。
有機顔料誘導体としては、有機顔料に直接に又はその他の原子団を介して水溶性官能基が導入された化合物が挙げられる。有機顔料誘導体の具体例としては、アゾ系、ジスアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、アントラキノン系、キノフタロン系等の骨格を有する有機顔料誘導体が挙げられる。原子団として、エーテル基、エステル基、アミド基又はヘテロ原子を有していてもよいアリーレン基、アルキレン基等が挙げられる。
水溶性官能基としては、例えば、酸性官能基、塩基性官能基等が挙げられる。酸性官能基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基等が挙げられる。有機顔料中に導入される酸性官能基の数は、有機顔料1分子あたり1個以上あればよいが、1〜3個であることが好ましい。
酸性官能基は、遊離酸のままであってもよく、1〜3価の金属塩又はアンモニア、有機アミンとの塩であってもよい。金属塩の例としては、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。有機アミンの例としては、オクチルアミン、ドデシルアミン等の1級アミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン等の2級アミン、ジメチルウラリルアミン、ジメチルステアリルアミン等の3級アミン、トリメチルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム等の4級アミン等が挙げられる。
水溶性染料の具体例としては、C.I.ダイレクトイエロー8 、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100 、110 ;C.I.ダイレクトレッド2 、4 、9 、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197 、201 、218 、220 、224 、225 、226 、227 、228 、230 ;C.I.ダイレクトブルー1 、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106 、108 、120 、158 、163 、168 、199 、226 ;C.I.ダイレクトブラック17、19、22、31、32、51、62、71、74、112 、113 、154 、168 、195 ;C.I.アシッドイエロー1 、3 、7 、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99;C.I.アシッドレッド6 、8 、9 、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、106 、114 、115 、133 、134 、145 、158 、198 、249 、265 、289 ;C.I.アシッドブルー1 、7 、9 、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100 、102 、104 、117 、127 、138 、158 、161 ;C.I.アシッドブラック2 、48、51、52、110 、115 、156 ;C.I.リアクティブイエロー2 、3 、17、25、37、42;C.I.リアクティブレッド7 、12、13、15、17、20、23、24、31、42、45、46、59;C.I.リアクティブブルー4 、5 、7 、13、14、15、18、19、21、26、27、29、32、38、40、44、100 ;C.I.リアクティブブラック1 、8 、12、13;C.I.フードイエロー3 ;C.I.フードレッド87、92、94;C.I.フードブラック1 、2 等が挙げられる。
水溶性着色成分の量は、顔料100 重量部に対して、好ましくは0.1 〜30重量部、より好ましくは0.5 〜10重量部、更に好ましくは1〜5重量部である。
本発明の水系インク用の水分散体の製造において、水溶性着色成分を添加する時期については特に限定がない。
例えば、(i) 顔料を水不溶性ビニルポリマーに含有させるときに、顔料とともに水溶性着色成分を存在させることで、本発明の水分散体を製造することができる。具体的には、後述する顔料を含有する水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体の製造時に、有機溶媒、水不溶性ビニルポリマー、顔料、水、水溶性着色成分、中和剤、及び必要に応じて界面活性剤を加えて混合した後、必要に応じて水で希釈し、有機溶媒を留去する方法が挙げられる。あるいは、(ii)予め製造しておいた水不溶性ビニルポリマーのポリマー粒子の水分散体と水溶性着色成分を混合させることで製造してもよい。
また、本発明の水系インクの製造においても、水溶性着色成分を添加する時期については特に限定はない。
例えば、(iii) 水溶性着色成分を含む水系インク用水分散体を用いることで、更に、水溶性着色成分を添加してもしなくてもよく、他の添加成分を混合して本発明の水系インクを製造することができる。あるいは、(iv)水溶性着色成分を含まない水系インク用の水分散体を用いる場合には、他の添加成分とともに、水溶性着色成分を混合することで製造することができる。
これらの中で、水不溶性ビニルポリマー粒子の良好な分散安定性及び印字した際の光沢性の観点から、(i) の製造法が好ましい。
水分散体中の水溶性着色成分の含有量は、好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.01〜10重量%、更に好ましくは0.01〜5重量%である。また、水系インク中の水溶性着色成分の含有量は、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.01〜5重量%、更に好ましくは0.01〜3重量%である。
水溶性着色成分の量は、水不溶性ビニルポリマー100 重量部に対して、印字した際の印字濃度を高め、インクに含まれる顔料を含有する水不溶性ビニルポリマー粒子の安定性及び光沢性を高める観点から、好ましくは2〜400 重量部、より好ましくは2〜200 重量部である。
また、本発明の水分散体として、顔料と水溶性着色成分を含有する水不溶性ビニルポリマー粒子の水系インク用水分散体が好ましい。
〔水不溶性ビニルポリマー〕
水不溶性ビニルポリマーは、(A)ポリオキシアルキレン基含有モノマーA〔以下、モノマー(A)という〕、(B)塩生成基含有モノマーB〔以下、モノマー(B)という〕、(C)モノマー(A)及びモノマー(B)と共重合可能なモノマーC〔以下、モノマー(C)という〕を含有するモノマー混合物(以下、モノマー混合物という)を重合させることによって得られる。
なお、本発明の課題を解決しうる範囲内であれば、モノマー(A)、モノマー(B)及びモノマー(C)以外のモノマーを用いることができる。
塩生成基を中和させた後の水不溶性ビニルポリマーの25℃の水に対する溶解度は、水系インクの分散安定性の観点から、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、1重量%以下であることが更に好ましい。
モノマー(A)は、印字濃度が高く、保存安定性に優れた水系インクを与えるという利点を有する。これは、モノマー(A)が有する末端基のアルキル基が紙の表面に残りやすいことに基づくものと考えられる。
モノマー(A)の代表例としては、一般式(I):
Figure 2005042011
(式中、R1 は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、R2 は炭素数2〜5のアルキレン基、R3 は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルキル基を有していてもよいフェニル基、nは1〜30の数を示す)
で表されるモノマーが挙げられる。
一般式(I) において、R1 は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であるが、重合性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましい。
2 は炭素数2〜5のアルキレン基であるが、エチレン基、プロピレン基及びテトラメチレン基が好ましい。n個のR2 は、それぞれ同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。R2 が2種類以上存在するとき、オキシアルキレン基は、ランダム付加、ブロック付加及び交互付加のいずれでもよい。
3 は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8のアルキル基)、又は炭素数1〜20のアルキル基を有していてもよいフェニル基であるが、耐水性及び耐擦過性の観点から、オクチル基及びノニルフェニル基が好ましい。
nは、1〜30の数であるが、印字濃度及び保存安定性の観点から、2〜25の数が好ましい。
モノマー(A)の中で、一般式(I) において、R2 が炭素数2のアルキレン基であるモノマー(A-1)は、印刷画像の光沢に優れた水系インクを得ることができるという利点を有する。これは、モノマー(A-1) が有する親水性の高いオキシエチレン基の親水性水和層が、水系インクの中で広がることに基づくものと考えられる。
また、モノマー(A)の中で、一般式(I) において、R2 が炭素数3のアルキレン基であるモノマー(A-2) は、吐出性に優れた水系インクを得ることができるという利点がある。これは、モノマー(A-2) の疎水性の高いオキシプロピレン基と顔料との間で疎水性相互作用が強くなるので、水不溶性ビニルポリマーが着色剤に対して強い吸着性を発現するようになり、更に顔料を含む水不溶性ビニルポリマー粒子の疎水性が強くなる結果、水系インクの粘度が低くなることに基づくものと考えられる。
また、モノマー(A)として、モノマー(A-1) 及びモノマー(A-2) を用いた場合には、水系インク中における顔料を含む水不溶性ビニルポリマーの分散安定性を高めることができる。これは、親水性の高いオキシエチレン基又はオキシプロピレン基の親水性水和層が水系インク中で広がることに基づくものと考えられる。
モノマー(A)の具体例としては、モノマー(A-1) に該当するポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
モノマー(A-2) の具体例としては、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
商業的に入手しうるモノマー(A-1) 及びモノマー(A-2) の例としては、新中村化学(株)製のNKエステル M-20G, 40G, 90G, 230G; 日本油脂(株)のブレンマーPEシリーズ、 PME-100, 200, 400, 1000, ブレンマーPP-1000, PP-500, PP-800,AP-150,AP-400,AP-550,AP-800, 50PEP-300,70PEP-350B,AEP シリーズ,30PPT-800,50PPT-800,70PPT-800, APTシリーズ,10PPB-500B,10APB-500B,50POEP-800B,50AOEP-800B, ASEP シリーズ,PNEPシリーズ,PNPE シリーズ,43ANEP-500,70ANEP-550等が挙げられる。
モノマー(A-1) 及びモノマー(A-2) 以外のモノマー(A)としては、例えば、エチレングリコール・プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
モノマー(A)の中では、インク粘度及び吐出性の観点から、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコール・プロピレングリコール(メタ)アクリレート及びポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートが好ましい。
モノマー混合物におけるモノマー(A)の含有量(原料基準)は、印字濃度及びインク粘度の観点から、5〜45重量%、好ましくは10〜35重量%、更に好ましくは10〜30重量%である。
モノマー(A)として、モノマー(A-1) を用いる場合、モノマー混合物におけるモノマー(A-1) の含有量(原料基準)は、印字濃度及びインク粘度の観点から、5〜45重量%、好ましくは5〜35重量%、更に好ましくは10〜30重量%である。
モノマー(A)として、モノマー(A-2) を用いる場合、モノマー混合物におけるモノマー(A-2) の含有量(原料基準)は、印字物の光沢及び高い印字濃度の観点から、好ましくは5〜45重量%、より好ましくは5〜35重量%、更に好ましくは10〜30重量%である。
モノマー(B)としては、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが好ましい。アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
アニオン性モノマーとしては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー及び不飽和リン酸モノマーから選ばれた1種以上が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2 −メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
不飽和スルホン酸モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、2 −アクリルアミド−2 −メチルプロパンスルホン酸、3 −スルホプロピル(メタ)アクリル酸エステル、ビス−(3 −スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
不飽和リン酸モノマーとしては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2 −アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2 −メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2 −アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
アニオン性モノマーの中では、インク粘度及び吐出性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
カチオン性モノマーとしては、不飽和3級アミン含有ビニルモノマー及び不飽和アンモニウム塩含有ビニルモノマーから選ばれた1種以上が挙げられる。
不飽和3級アミン含有ビニルモノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアリールアミン、ビニルピロリドン、2 −ビニルピリジン、4 −ビニルピリジン、2 −メチル−6 −ビニルピリジン、5 −エチル−2 −ビニルピリジン等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
不飽和アンモニウム塩含有ビニルモノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート四級化物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
カチオン性モノマーの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
モノマー混合物におけるモノマー(B)の含有量(原料基準)は、分散安定性及び吐出安定性の観点から、3〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、更に好ましくは10〜25重量%である。
モノマー(C)としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、マクロマー等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。モノマー(C)には、耐水性及び耐擦過性の観点から、芳香環含有モノマー及びマクロマーから選ばれた1種以上が含有されていることが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2 −エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等のエステル部分が炭素数1〜18のアルキル基である(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
なお、前記(イソ又はターシャリー)及び(イソ)は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルを示す。また、(メタ)アクリレートは、メタクリレートとアクリレートの両方を意味する。以下においても同様である。
芳香環含有モノマーは、耐水性の観点から、スチレン、ビニルナフタレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、4 −ビニルビフェニル、1,1 −ジフェニルエチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2 −ヒドロキシ−3 −フェノキシプロピルアクリレート、2 −メタクリロイロキシエチル−2 −ヒドロキシプロピルフタレート、2 −アクリロイロキシエチルフタル酸及びネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステルからなる群より選ばれた1種以上が好ましい。これらの中ではスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン及びビニルナフタレンからなる群より選ばれた1種以上が、耐水性及び耐擦過性の観点からより好ましい。
マクロマーの代表例としては、片末端に重合性官能基を有し、好ましくは数平均分子量が500 〜500,000 、より好ましくは1,000 〜10,000であるマクロマーが挙げられる。
マクロマーの具体例としては、片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するメチルメタクリレート系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するスチレン・アクリロニトリル系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するブチルアクリレート系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するイソブチルメタクリレート系マクロマー等が挙げられる。これらの中では、ビニルポリマーに着色剤を十分に含有させる観点から、片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーが好ましい。
片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーとしては、片末端に重合性官能基を有するスチレン単独重合体及び片末端に重合性官能基を有する、スチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
片末端に重合性官能基を有する、スチレンと他のモノマーとの共重合体において、他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が挙げられる。また、そのスチレンの含有量は、顔料が十分にビニルポリマーに含有されるようにする観点から、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーの中では、片末端に重合性官能基としてアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するスチレン系マクロマーが好ましい。
商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成(株)製のAS-6, AS-6S, AN-6, AN-6S, HS-6, HS-6S 等が挙げられる。
シリコーンマクロマーの中では、一般式(II):
X(Y)q Si(R4)3-r (Z)r (II)
(式中、Xは重合可能な不飽和基、Yは2価の結合基、R4 はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、アリール基又はアルコキシ基、Zは500 以上の数平均分子量を有する1価のシロキサンポリマーの残基、qは0又は1、rは1〜3の整数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーが、インクジェットプリンターのヘッドの焦げ付きを防止する観点から好ましい。
一般式(II)で表されるシリコーンマクロマーにおいて、Xは重合可能な不飽和基であるが、その代表例としては、 CH2=CH- 、 CH2=C(CH3)−等の炭素数2〜6の1価の不飽和炭化水素基が挙げられる。
Yは、2価の結合基であるが、その代表例としては、-COO- 、-COO(CH2) a -(aは1〜5の整数を示す)、フェニレン基等の2価の結合基が挙げられる。これらの中では−COOC3H6-が好ましい。
4 は、それぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、アリール基又はアルコキシ基である。R4 の具体例としては、水素原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基;フェニル基等の炭素数6〜20のアリール基;メトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基等が挙げられる。これらの中では、メチル基が好ましい。
Zは、好ましくは500 以上の数平均分子量を有する1価のシロキサンポリマーの残基である。好ましいZとしては、数平均分子量500 〜5000のジメチルシロキサンポリマーの1価の残基が挙げられる。
qは0又は1であるが、好ましくは1である。rは1〜3の整数であるが、より好ましくは1である。
シリコーンマクロマーの代表例としては、以下の一般式(III) 、(IV)、(V) 及び(VI)で表されるシリコーンマクロマー等が挙げられる。
CH2=CR5-COOC3H6-[Si(R6)2-O]b -Si(R6)3 (III) CH2=CR5-COO-[Si(R6)2-O]b -Si(R6)3 (IV)
CH2=CR5-Ph- [Si(R6)2-O]b -Si(R6)3 (V)
CH2=CR5-COOC3H6-Si(OE)3 (VI) 〔式中、R5 は水素原子又はメチル基、R6 はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、bは5〜60の数、Phはフェニレン基、Eは−[Si(R5)2-O] c -Si(R5)3基(R5 は前記と同じ。cは5〜65の数を示す)を示す〕。
これらの中では、一般式(III) で表されるシリコーンマクロマーが好ましく、一般式(IIIa):
CH2 =C(CH3)-COOC3H5-[Si(CH3)2-O]d -Si(CH3)3 (II1a)
(式中、dは8〜40の数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーが好ましい。その具体例として、FM-0711 〔チッソ(株)製、商品名〕等が挙げられる。
なお、マクロマーの数平均分子量は、溶媒として1mmol/L のドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィーにより、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
モノマー混合物におけるモノマー(C)の含有量(原料基準)は、印字濃度及び耐水性の観点から、15〜87重量%、好ましくは35〜85重量%、更に好ましくは40〜83重量%である。
モノマー(C)として芳香環含有モノマーを使用する場合、モノマー(C)における芳香環含有モノマーの含有量は、耐水性、耐擦過性、分散安定性を向上させる観点から、好ましくは1〜100 重量%、より好ましくは5〜90重量%、更に好ましくは10〜80重量%である。
モノマー(C)としてマクロマーを使用する場合、モノマー(C)におけるマクロマーの含有量は、耐水性及び耐擦過性を向上させる観点から、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは2〜60重量%、更に好ましくは5〜40重量%である。
水不溶性ビニルポリマーの重量平均分子量(後述する製造例1〜3に記載の方法で測定)は、印字濃度と吐出安定性の観点から、好ましくは3,000 〜300,000 、より好ましくは5,000 〜200,000 である。
水不溶性ビニルポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物を重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒は、極性有機溶媒であることが好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。
極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらと水との混合液が好ましい。
なお、重合の際には、ラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、2, 2'-アゾビスイソブチロニトリル、2, 2'-アゾビス(2, 4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2, 2'-アゾビスブチレート、2, 2'-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1, 1'-アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物が好適である。また、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物を使用することもできる。
重合開始剤の量は、モノマー組成物1モルあたり、好ましくは0.001 〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
なお、重合の際には、更に重合連鎖移動剤を添加してもよい。重合連鎖移動剤の具体例としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素類;ペンタフェニルエタン等の炭化水素類;アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、タービノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、α−メチルスチレンダイマー、9, 10−ジヒドロアントラセン、1, 4−ジヒドロナフタレン、インデン、1, 4−シクロヘキサジエン等の不飽和環状炭化水素化合物;2, 5−ジヒドロフラン等の不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられる。これらの重合連鎖移動剤は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
モノマー混合物の重合条件は、モノマー、ラジカル重合開始剤、溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができない。通常、重合温度は、好ましくは30〜100 ℃、より好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、好ましくは1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したビニルポリマーを単離することができる。また、得られたビニルポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
また、顔料を含有する水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体を得る方法としては、水不溶性ビニルポリマーを有機溶媒に溶解させ、顔料、水、中和剤及び必要に応じて界面活性剤を加えて混合した後、必要に応じて水で希釈し、有機溶媒を留去して水系にする分散方法が好ましい。
有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく、親水性有機溶媒がより好ましい。
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、イソプロパノール、アセトン及びメチルエチルケトンが好ましい。
また、必要により、有機溶媒と、高沸点親水性有機溶媒とを併用してもよい。高沸点親水性有機溶媒としては、フェノキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
中和剤として、塩生成基の種類に応じて酸又は塩基を使用することができる。酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等の有機酸が挙げられる。塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
中和度には、特に限定がない。通常、得られる水分散体の液性が中性、例えば、pHが4.5 〜10であることが好ましい。
かくして水分散体が得られる。なお、水分散体中の水の含量は、50〜90重量%であることが好ましい。
本発明の水系インクは、前記水分散体を含有するものである。水系インクにおける顔料及び水溶性着色成分を含有するポリマー粒子の水分散体の量(固形分量)は、通常、印字濃度及び吐出安定性の観点から、水系インクにおけるポリマー粒子の含有量が、好ましくは0.5 〜30重量%、より好ましくは1〜15重量%となるように調整することが望ましい。
顔料を含有する水不溶性ビニルポリマー粒子の平均粒径は、水不溶性ビニルポリマーによる分散安定姓をより高める観点から、0.02〜0.50μm、好ましくは0.02〜0.30μm、より好ましくは0.05〜0.20μmである。平均粒径は、実施例に示す「保存前の平均粒径」に相当し、実施例に示す方法で測定される。
本発明の水系インクにおいて、ポリマー粒子以外は水であるが、必要により、湿潤剤、分散剤、消泡剤、防黴剤、キレート剤等の添加剤を含有させることできる。
湿潤剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリセリンモノn−ブチルエーテル等の多価アルコール及びそのエーテル、アセテート類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン等の含窒素化合物を使用することができる。水系インク中における湿潤剤の量は、好ましくは0.1 〜50重量%、より好ましくは0.1 〜30重量%である。水系インク中の水の含有量は、好ましくは、40〜90重量%である。
また、分散剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性系の分散剤を用いることができる。
また、本発明の水系インクは、顔料と水溶性着色成分を水不溶性ポリマーで分散させることにより、顔料粒子の分散性及び印字表面の平滑性が良好となるので、専用紙での光沢度及び耐擦過性等の性能を向上させることができる。
製造例1〜3
反応容器内に、メチルエチルケトン20重量部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.03重量部、及び表1に示す各モノマーの量(重量部)のうちのそれぞれ10重量%ずつを入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロート中に、表1に示す各モノマーの量(重量部)のうちの残りの90重量%ずつを仕込み、次いで重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.27重量部、メチルエチルケトン60重量部及び2, 2' −アゾビス(2, 4−ジメチルバレロニトリル)1.2 重量部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、その混合溶液の液温を65℃で2時間維持した後、2, 2'-アゾビス(2, 4−ジメチルバレロニトリル)0.3 重量部をメチルエチルケトン5重量部に溶解した溶液を該混合溶液に加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液の一部を、減圧下で105 ℃で2時間乾燥させ、溶媒を除去することによって単離し、標準物質としてポリスチレン、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。
なお、表1に示す各化合物の詳細は、以下のとおりである。
・メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=4):新中村化学(株)製、商品名:NKエステルM-40G 〔式(I) において、R1 及びR3 がメチル基、R2 がエチレン基、nが4である〕
・メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=23):新中村化学(株)製、商品名:NKエステルM230G 〔式(I) において、R1 及びR3 がメチル基、R2 がエチレン基、nが23である〕
・ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(数平均分子量:375) :アルドリッチ・ジャパン(株)製〔式(I) において、R1 がメチル基、R2 がプロピレン基、R3 が水素原子、nが9である〕
・ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノメタクリレート:日本油脂(株)製、商品名:ブレンマー50PEP-300 、式(I) において、R1 がメチル基、R2 Oがオキシプロピレン基(nが3.5)とオキシエチレン基(nが2.5)、R3 が水素原子、nが3.5であり、オキシプロピレン基とオキシエチレン基とがランダム付加したモノマー
・スチレンマクロマー:東亜合成(株)製、商品名:AS-6S、数平均分子量:6000 、重合性官能基:メタクロイルオキシ基
Figure 2005042011
処方例1
製造例1で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー5重量部を、メチルエチルケトン45重量部に溶かし、その中に中和剤として20重量%水酸化ナトリウム水溶液を所定量加えて塩生成基を中和し、更にアゾ顔料〔山陽色素(株)製、C.I.ピグメント・イエロー74〕20重量部を加え、ビーズミルで2時間混練した。
得られた混練物に、イオン交換水120 重量部を加えて攪拌した後、減圧下で60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、固形分濃度が20重量%の顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散体を得た。
得られた水分散体30重量部、グリセリン10重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル7重量%、サーフィノール465 (エアプロダクツ社製)1重量部、Ploxel XL2(S)0.08 重量部及びイオン交換水48.92 重量%を混合し、得られた混合液を0.5 μmのフィルター〔アセチルセルロース膜、外径:2.5cm 、富士写真フイルム(株)製〕を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ〔テルモ(株)製〕で濾過し、粗大粒子を除去し、水系インクを得た。
処方例2
アゾ顔料20重量部に対して水溶性染料1重量部を顔料とともに添加した以外は、処方例1と同様にして、水系インクを得た。
処方例3
アゾ顔料20重量部に対して水溶性染料3重量部を顔料とともに添加した以外は、処方例1と同様にして、水系インクを得た。
処方例4
アゾ顔料20重量部に対して水溶性染料5重量部を顔料とともに添加した以外は、処方例1と同様にして、水系インクを得た。
処方例5
アゾ顔料20重量部の代わりに、キナクリドン顔料〔大日本インキ化学工業(株)製、C.I.ピグメント・レッド122 〕20重量部を用い、製造例1のポリマーの代わりに製造例2のポリマーを用いた以外は、処方例1と同様にして水系インクを得た。
処方例6
キナクリドン顔料20重量部に対して表3に記載の水溶性染料3重量部を顔料とともに添加した以外は、処方例5と同様にして水系インクを得た。
処方例7
アゾ顔料20重量部の代わりに、キナクリドン顔料〔大日精化(株)製、C.I.ピグメント・バイオレッド19〕20重量部を用い、製造例1のポリマーの代わりに製造例2のポリマーを用いた以外は、処方例1と同様にして水系インクを得た。
処方例8
キナクリドン顔料20重量部に対して水溶性染料5重量部を顔料とともに添加した以外は、処方例7と同様にして水系インクを得た。
処方例9
アゾ顔料20重量部の代わりに、フタロシアニン顔料〔東洋インキ製造(株)製、C.I.ピグメント・ブルー15:4〕20重量部を用い、製造例1のポリマーの代わりに製造例3のポリマーを用いた以外は、処方例1と同様にして水系インクを得た。
処方例10
フタロシアニン顔料20重量部に対して水溶性染料5重量部をインク配合時に水分散体と混合した以外は、処方例9と同様にして水系インクを得た。
処方例11
処方例1において、製造例1で得られたポリマーの代わりに、ジョンクリル62〔ジョンソンポリマー社製、スチレン−アクリル樹脂〕を用いた以外は、処方例1と同様にして水系インクを得た。
処方例12
処方例1において、製造例1で得られたポリマーの代わりに、ジョンクリル62〔ジョンソンポリマー社製、スチレン−アクリル樹脂〕、水溶性着色成分として顔料20重量部に対して水溶性染料3重量部を顔料とともに添加した以外は、処方例1と同様にして水系インクを得た。
処方例13
処方例1において、製造例1で得られたポリマーの代わりに、ジョンクリル62〔ジョンソンポリマー社製、スチレン−アクリル樹脂〕、顔料としてアゾ顔料の代わりにキナクリドン顔料〔大日本インキ化学工業(株)製、C.I.ピグメント・レッド122 〕、水溶性着色成分として顔料20重量部に対して水溶性染料3重量部を顔料とともに添加した以外は、処方例1と同様にして水系インクを得た。
処方例14
処方例1において、製造例1で得られたポリマーの代わりに、ジョンクリル62〔ジョンソンポリマー社製、スチレン−アクリル樹脂〕、顔料としてアゾ顔料の代わりにキナクリドン顔料〔大日精化(株)製、C.I.ピグメント・バイオレット19〕、水溶性着色成分として顔料20重量部に対して水溶性染料3重量部を顔料とともに添加した以外は、処方例1と同様にして水系インクを得た。
処方例15
処方例1において、製造例1で得られたポリマーの代わりに、ジョンクリル62〔ジョンソンポリマー社製、スチレン−アクリル樹脂〕、顔料としてアゾ顔料の代わりにフタロシアニン顔料〔東洋インキ製造(株)製、C.I.ピグメント・ブルー15:4〕、水溶性着色成分として顔料20重量部に対して水溶性染料3重量部を顔料とともに添加した以外は、処方例1と同様にして水系インクを得た。
以上の結果を表2に示す。
なお、表2に示す各化合物の詳細は、以下のとおりである。
・サーフィノール456:ノニオン活性剤、エアプロダクツ社製
・Ploxel XL2(S):抗菌剤、アビシア(株)製
Figure 2005042011
次に、得られた水系インクの物性を下記方法に基づいて評価した。その結果を表3に示す。
(1) 光沢
プリンター〔セイコーエプソン(株)製、型番:EM900C 〕を用い、市販のMC光沢紙にベタ印字し、25℃で1時間放置後、光沢を光沢計〔日本電色(株)製、商品名:HANDY GLOSSMETER、品番:PG-1〕で測定し、評価した。なお、その値が大きいほど、光沢がよいことを示す。
(2) 耐擦過性
前記プリンターを用い、市販のコピー用紙にベタ印字し、25℃で24時間乾燥させた後、指で強く印字面を擦った。その印字のとれ具合を以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
◎:印字は全くとれない
○:ほとんど印字はとれず、周りが汚れない
△:少し印字が擦りとられ、周りが少し汚れ、指も少し汚れる
×:かなり印字が擦りとられ、周りがかなりひどく汚れ、指も相当汚れる
(3) 印字濃度
前記プリンターを用い、市販のコピー用紙にベタ印字し、25℃で1時間放置後、印字濃度をマクベス濃度計(マクベス社製、品番:RD914) で測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
◎:印字濃度が1.2 以上
○:印字濃度が1.1 以上1.2 未満
△:印字濃度が1.0 以上1.1 未満
×:印字濃度が1.0 未満
(4) 平均粒径及び分散安定性
大塚電子(株)製、レーザー粒子解析システムELS-8000を用い、インクに含まれている顔料を含有するポリマー粒子の平均粒径(以下、「保存前の平均粒径」という)を測定した。インクを密閉容器に入れ、60℃の恒温槽に1ヵ月保存後、同様の方法にて平均粒径(以下、「保存後の平均粒径」という)を測定した。分散安定性の指標として、分散安定度を式:
〔分散安定度〕=(〔保存後の平均粒径〕/〔保存前の平均粒径〕)×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
◎:分散安定度が95%以上105 %未満
○:分散安定度が90%以上95%未満、又は105 %以上110 %未満
△:分散安定度が70%以上90%未満、又は110 %以上130 %未満
×:分散安定度が70%未満又は130 %以上
Figure 2005042011
表3に示された結果から、本発明の水系インクは、いずれも光沢紙で高い光沢が得られ、耐擦過性、更には分散安定性及び印字濃度にも優れたものであることがわかる。
本発明の水系インクは、光沢、耐擦過性、及び分散安定性に優れ、更に高印字濃度を付与しうる水分散体が用いられているので、インクジェット記録用水系インクとして好適に使用することができるものである。

Claims (6)

  1. 顔料を含有する水不溶性ビニルポリマーのポリマー粒子と水溶性着色成分を含む水系インク用水分散体。
  2. 顔料100 重量部に対する水溶性着色成分の量が、0.1 〜30重量部である請求項1記載の水分散体。
  3. 水不溶性ビニルポリマーが、
    (a) ポリオキシアルキレン基含有モノマーA、
    (b) 塩生成基含有モノマーB、及び
    (c) モノマーA及びBと共重合可能なモノマーC
    を含有するモノマー混合物を重合させてなる水不溶性ビニルポリマーである請求項1又は2記載の水分散体。
  4. 水不溶性ビニルポリマーの重量平均分子量が、3000〜300000である請求項1〜3いずれか記載の水分散体。
  5. 水不溶性ビニルポリマー、有機溶媒、顔料、水、水溶性着色成分、中和剤、及び必要に応じて界面活性剤を混合した後、有機溶媒を留去する請求項1〜4いずれか記載の水分散体の製造法。
  6. 請求項1〜4いずれか記載の水分散体を含有してなる水系インク。
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