本発明に用いられる有彩色の着色インクは、マゼンタインク、シアンインク、及びイエローインクからなる群より選ばれた1種以上であることが好ましいが、マゼンタインク、シアンインク及びイエローインクがより好ましい。
本発明のインクセットは、更にブラックインクを含有することが好ましい。好適な「ブラックインク」としては、NIPPON DENSHOKU Spectro Color Meter SE2000〔日本電色工業(株)製、商品名〕を用い、上質普通紙〔エプソン(株)製、商品名:KA4250NT 〕の印字物を D65/2°の光の波長で反射光を測定し、CIELABで表示したとき、L * が50以下、a* が−5以上、5以下、b* が−5以上、5以下の色差を有するインクが例示される。
本明細書にいう「有彩色の着色インク」とは、ブラックインク及び白色インク以外のインクを意味する。また、本明細書にいう「着色インク」とは、有彩色の着色インク及びブラックインクの双方を意味する。
ブラックインクとして、アニオン性の着色インク及び/又はカチオン性の着色インクを用いることが好ましく、アニオン性の着色インク及びカチオン性の着色インクの2種類のインクを用いることが更に好ましい。
ブラックインクに用いられる着色剤としては、後述する〔着色剤〕の欄に記載されている、例えば、C.I.ソルベント・ブラック3、7、27、29、34、カーボンブラック、C.I.ピグメント・ブラック7等が好ましい。
以下に本発明に用いられる成分について説明をする。
〔着色剤〕
有彩色の着色インク及びブラックインクには、染料及び顔料のいずれが用いられていてもよい。本発明のインクセットの使用目的等に応じて、これらうちのいずれかを選択すればよく、また双方を混合して用いてもよい。
染料には、特に制限されず、疎水性染料及び水溶性染料のいずれが用いられていてもよい。
疎水性染料の例としては、油性染料、分散染料、塩基性染料等が挙げられる。これらの中では、油性染料及び分散染料がポリマー粒子中に良好に含有させることができることから好ましい。
油性染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、C.I.ソルベント・ブラック3、7、27、29、34;C.I.ソルベント・イエロー14、16、29、56、82;C.I.ソルベント・レッド1、3、8、18、24、27、43、51、72、73;C.I.ソルベント・バイオレット 3;C.I.ソルベント・ブルー2、11、70;C.I.ソルベント・グリーン3、7;C.I.ソルベント・オレンジ2等が挙げられる。
分散染料としては、特に限定されるものではないが、好ましい例としては、C.I.ディスパーズ・イエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100 、119 、122 、124 、126 、160 、184:1 、186 、198 、199 、204 、224 、237 ;C.I.ディスパーズ・オレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118 、119 、163 ;C.I.ディスパーズ・レッド54、60、72、73、86、88、91、93、111 、126 、127 、134 、135 、143 、145 、152 、153 、154 、159 、164 、167:1 、177 、181 、204 、206 、207 、221 、239 、240 、258 、277 、278 、283 、311 、323 、343 、348 、356 、362 ;C.I.ディスパーズ・バイオレット33;C.I.ディスパーズ・ブルー56、60、73、87、113 、128 、143 、148 、154 、158 、165 、165:1 、165:2 、176 、183 、185 、197 、198 、201 、214 、224 、225 、257 、266 、267 、287 、354 、358 、365 、368 ;C.I.ディスパーズ・グリーン6:1 、9等が挙げられる。
疎水性染料は、後述する水に不溶なポリマー粒子中に効率的に含有させる観点から、有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン、20℃)に2g/L 以上、好ましくは20〜500 g/L 溶解するものが好ましい。
水溶性染料の例としては、酸性染料、反応染料等が挙げられる。
酸性染料としては、特に限定されず、例えば、C.I.アシッド・オレンジ67;C.I.アシッド・イエロー127 ;C.I.アシッド・レッド138 、265 ;C.I.アシッド・ブルー140 、185 等が挙げられる。
反応染料としては、特に限定されず、例えば、C.I.リアクティブ・イエロー2、17、85、95;C.I.リアクティブ・オレンジ5、13;C.I.リアクティブ・レッド3:1 、22、24、33;C.I.リアクティブ・ブルー2、5、19、49等が挙げられる。
直接染料としては、特に限定されず、例えば、ポリアゾ系、トリジン系、ジアニシジンアゾ系、スチルベンアゾ系、チアゾールアゾ系、ジアミノジフェニルアミンアゾ系の染料等が挙げられる。
アニオン性基を有する染料とは、カルボキシ基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基等の酸性の官能基を有する染料である。アニオン性基を有する染料としては、前記の酸性染料等が好ましい。
カチオン性基を有する染料とは、アミノ基、アンモニウム基等の塩基性の官能基を有する染料である。カチオン性基を有する染料としては、前記直接染料が好ましい。
顔料も特に制限されることはなく、公知の無機顔料及び有機顔料のいずれを用いることもできる。また、必要により、それらと体質顔料とを併用することもできる。無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
顔料として、親水性基が直接又は他の原子団を介して顔料に結合している自己分散型顔料も好ましい。自己分散型顔料としては、例えば、特開平10-140064 号公報、特開平10-110127 号公報等に記載されているもの等が挙げられる。自己分散型顔料具体例としては、キャボット社製のCAB-O-JET (登録商標)300 等が挙げられる。自己分散型顔料は、印字濃度を高めるうえで好ましい。
〔水溶性ポリマー〕
着色剤をインク中に分散させるのに水溶性ポリマーを用いることができる。
水溶性ポリマーは、水溶性ビニルポリマー、水溶性エステルポリマー、水溶性ウレタンポリマー等が挙げられる。これらのポリマーの中では、水溶性ビニルポリマーが好ましい。
本明細書にいう「水溶性ポリマー」とは、中和後に25℃の水100 gに対する溶解度が1g以上のポリマーをいう。また、本明細書にいう「水不溶性ポリマー」とは、前記水溶性ポリマー以外のポリマーをいう。
水溶性ビニルポリマーとしては、塩生成基含有モノマー(a)及び疎水性モノマー(b)を含有するモノマー組成物を重合させることによって得られる共重合体が挙げられる。なお、このモノマー組成には、必要に応じてノニオン性の親水性モノマー(c)が含有されていてもよい。
塩生成基含有モノマー(a)としては、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが挙げられる。
アニオン性モノマーの例としては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸〔(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの混合物を意味する〕、スチレンカルボン酸、マレイン酸系モノマー〔無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸モノアミド、又はそれらのうちの2種類以上の混合物〕、イタコン酸等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
不飽和スルホン酸モノマーとしては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2- アルキル(炭素数1〜4)プロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
不飽和リン酸モノマーとしては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル-2- アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル-2- メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル-2- アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル-2- メタクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
アニオン性モノマーの中では、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、中でもアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
カチオン性モノマーの例としては、不飽和3級アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。
カチオン性モノマーの具体例としては、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-(N',N'- ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート等が挙げられる。これらの中では、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
疎水性モノマー(b)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、2-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系モノマー等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
なお、前記(イソ又はターシャリー)及び(イソ)は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルを示す。
ノニオン性の親水性モノマー(c)としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2 〜30)(メタ)アクリレート、炭素数が1〜12のモノアルコキシポリプロピレングリコール(n=2 〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート、炭素数が1〜12のモノアルコキシポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、ポリプロピレングリコール(n=2 〜30)(メタ)アクリレート、炭素数が1〜12のモノアルコキシポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレートが好ましい。
塩生成基含有モノマー(a)、疎水性モノマー(b)及びノニオン性の親水性モノマー(c)の割合は、中和後に水に可溶であり、インクにおける着色剤の分散安定性及びインクの吐出性に優れているのであればよく、特に限定がない。通常、塩生成基含有モノマー(a)/疎水性モノマー(b)/ノニオン性の親水性モノマー(c)〔重量比〕は、好ましくは1〜100 /0 〜70/0〜50である。
水溶性ポリマーの重量平均分子量は、インクにおける着色剤の分散安定性及びインク粘度を考慮して、500 〜30000 、好ましくは800 〜20000 、更に好ましくは1000〜10000 であることが望ましい。なお、水溶性ポリマーの重量平均分子量は、中和前において、後述する実施例に記載のゲルクロマトグラフィーと同様にして測定することができる。
水溶性ポリマーは、中和されていることが好ましい。中和度は、インクにおける着色剤の分散安定性を良好に保持するのであればよく、特に限定がない。通常、水溶性ポリマーを構成している塩生成基含有モノマー中の塩生成基1モルあたり、中和剤を30〜200 モル%添加することが好ましい。
中和の際に用いられる中和剤としては、水溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、水溶性ポリマーにカチオン性モノマーを用いた場合は、中和剤として酢酸、メトキシ酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等を用いることができる。また、水溶性ポリマーにアニオン性モノマーが用いられている場合には、中和剤として、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等を用いることができる。
水溶性ポリマーがアニオン性ポリマーであるためには、前記モノマー組成物に、塩生成基含有モノマーとして、アニオン性モノマーが用いられていることが好ましい。
水溶性ポリマーがカチオン性ポリマーであるためには、前記モノマー組成物に、塩生成基含有モノマーとして、カチオン性モノマーが用いられていることが好ましい。
本発明のインクセットに好適に用いることができるアニオン性ポリマーとしては、ポリアクリル酸又はその塩、ポリメタクリル酸又はその塩、スチレン−アクリル酸共重合体又はその塩、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体又はその塩、スチレン−マレイン酸共重合体又はその塩、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体又はその塩、スチレン−メタクリル酸共重合体又はその塩、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体又はその塩、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体又はその塩、ビニルナフタレンーマレイン酸共重合体又はその塩、アルギン酸又はその塩、カルボキシメチルセルロース等の多糖類又はその塩、硫酸ポリビニル又はその塩等が挙げられる。なお、前記塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。
本発明のインクセットに好適に用いることができるカチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリイソプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン類、ポリアルキレンポリアミン、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等のポリアミン類、水溶性アニリン樹脂及びその塩等が挙げられる。
水溶性ポリマーの量は、インクにおける着色剤の分散安定性及びインクの吐出性の観点から、着色剤100 重量部に対して、5〜100 重量部、好ましくは10〜80重量部、更に好ましくは15〜60重量部であることが望ましい。
〔水不溶性ポリマー〕
着色剤をインク中に分散させるのに水不溶性ポリマーを用いることができる。なお、増粘を抑制するためには、水不溶性ポリマーを用いることが好ましい。
水不溶性ポリマーとしては、水不溶性ビニルポリマー、水不溶性エステル系ポリマー、水不溶性ウレタン系ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーの中では、水不溶性ビニルポリマーが好ましい。
水不溶性ビニルポリマーとしては、塩生成基含有モノマー(a)及び疎水性モノマー(b)を含有するモノマー組成物を重合させてなる共重合体が挙げられる。なお、モノマー組成物には、必要により、ノニオン性の親水性モノマー(c)及び/又はマクロマー(d)が含まれていてもよい。これらの中では、インクにおける着色剤の分散安定性及びインクの吐出安定性の観点から、マクロマー(d)を共重合させることが好ましい。
塩生成基含有モノマー(a)、疎水性モノマー(b)及びノニオン性の親水性モノマー(c)は、前記水溶性ポリマーに用いられるものと同様のものが例示される。
マクロマー(d)としては、数平均分子量500 〜100000、好ましくは1000〜10000 の重合可能な不飽和基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。マクロマー(d)の数平均分子量は、溶媒として1mmol/L のドデシルメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィーにより、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
マクロマー(d)の代表例としては、シリコーンマクロマー及びスチレン系マクロマーが挙げられ、 これらは単独で用いてもよく、併用してもよい。
シリコーンマクロマーの中では、式(I):
X1(Y1)q Si(R1)3-r (Z1)r (I)
(式中、X1 は重合可能な不飽和基、Y1 は2価の結合基、R1 はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5の低級アルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数2〜12のアルコキシ基、Z1 は500 以上の数平均分子量を有する1価のシロキサンポリマーの残基、qは0又は1、rは1〜3の整数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーは、インクジェットプリンターのヘッドの焦げ付きを防止する観点から、好適に使用しうるものである。
式(I)で表されるシリコーンマクロマーにおいて、X1 としては、CH2 =CH−基、CH2 =C(CH3 )−基等の炭素数2〜6の1価の不飽和炭化水素基が挙げられる。Y1 としては、−COO−基、−COO(CH2)a −基(aは1〜5の整数を示す)、フェニレン基等の2価の結合基が挙げられ、−COOC3 H6 −が好ましい。R1 としては、水素原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基;フェニル基等の炭素数6〜20のアリール基、メトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基等が挙げられる。これらの中では、メチル基が好ましい。Z1 は、好ましくは数平均分子量500 〜5000のジメチルシロキサンポリマーの1価の残基である。qは0又は1であるが、好ましくは1である。rは1〜3の整数であるが、好ましくは1である。
シリコーンマクロマーの代表例としては、式(I−1):
CH2=CR2-COOC3H6-[Si(R3)2-O] b -Si(R3)3 (I−1)
(式中、R2 は水素原子又はメチル基、R3 はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、bは5〜60の数を示す)
で表されるシリコーンマクロマー、式(I−2):
CH2=CR2-COO-[Si(R3)2-O] b -Si(R3)3 (I−2)
(式中、R2 、R3 及びbは前記と同じ)
で表されるシリコーンマクロマー、式(I−3):
CH2 =CR2-Ph-[Si(R3)2-O] b Si(R3)3 (I−3)
(式中、Phはフェニレン基、R2 、R3 及びbは前記と同じ)
で表されるシリコーンマクロマー、式(I−4):
CH2 =CR2-COOC3H6-Si(OE)3 (I−4)
〔式中、R2 は前記と同じ。Eは式:-[Si(R2)2O] c -Si(R2)3基
(R2 は前記と同じ。cは5〜65の数を示す)を示す〕
で表されるシリコーンマクロマー等が挙げられる。
これらの中では、式(I−1)で表されるシリコーンマクロマーが好ましく、特に、式(I−1a):
CH2=C(CH3)-COOC3H6-[Si(CH3)2-O] d -Si(CH3)3 (I−1a)
(式中、dは8〜40の数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーが好ましい。その例として、FM-0711 〔チッソ(株)製、商品名〕等が挙げられる。
スチレン系マクロマーは、ビニルポリマーに顔料を十分に含有させる観点から、好適に使用しうるものである。
スチレン系マクロマーの代表例としては、片末端に重合性官能基を有するスチレン単独重合体又はスチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。これらの中では、片末端に重合性官能基としてアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するものが好ましい。
スチレンと他のモノマーとの共重合体におけるスチレン含量は、顔料が十分にビニルポリマーに含有されるようにする観点から、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。他のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル等が挙げられる。
水不溶性のビニルポリマーにおける塩生成基含有モノマー(a)の含量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜40重量%である。
水不溶性ビニルポリマーにおける疎水性モノマー(b)の含量は、印字濃度及び分散安定性の観点から、好ましくは5〜93重量%、より好ましくは10〜80重量%である。
水不溶性ビニルポリマーにおけるノニオン性の親水性モノマー(c)の含量は、吐出安定性及び印字濃度の観点から、好ましくは0〜40重量%、より好ましくは5〜30重量%である。
水不溶性ビニルポリマーにおけるマクロマー(d)の含量は、バブルジェットのインクジェットプリンターにおいて、ヒーター面の焦げ付きを抑制する観点及び分散安定性の観点から、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは1〜25重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。
水不溶性ビニルポリマー等の水不溶性ポリマーがアニオン性ポリマーであるためには、塩生成基含有モノマーとして、アニオン性モノマーが前記モノマー組成物に用いられていることが好ましい。
水不溶性ビニルポリマー等の水不溶性ポリマーがカチオン性ポリマーであるためには、塩生成基含有モノマーとして、カチオン性モノマーが前記モノマー組成物に用いられていることが好ましい。
水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、インク中における着色剤の分散安定性及びインク粘度への影響を考慮して、好ましくは1000〜500000、より好ましくは1500〜400000、更に好ましくは2000〜300000、特に好ましくは2000〜70000 である。水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、前記水溶性ポリマーと同様の方法を用いて測定したときの値である。
水不溶性ポリマーは、中和されていることが好ましい。中和度は、分散安定性が良好であればよく、特に限定がない。通常、水不溶性ポリマーを構成している塩生成基含有モノマー(a)中の塩生成基1モルあたり中和剤を30〜200 モル%添加することが好ましい。
中和の際に用いられる中和剤は、水不溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて適宜選択することができる。中和剤の例としては、水溶性ポリマーの場合と同じものが挙げられる。
水不溶性ポリマーの量は、インクにおける着色剤の分散安定性、並びに吐出性、耐擦過性及び耐マーカー性との兼ね合いから、顔料及び疎水性染料100 重量部に対して、好ましくは5〜250 重量部、より好ましくは10〜180 重量部、更に好ましくは15〜130 重量部である。
〔界面活性剤〕
着色剤をインク中に分散させるために、界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、カルボン酸型高分子活性剤等が挙げられる。塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコーン系等の非イオン性活性剤が挙げられる。
カチオン性界面活性剤の例としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が挙げられる。塩を構成する陰イオンとしては、ハロゲンイオン、有機アニオン等が挙げられる。
両イオン性界面活性剤の例としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
界面活性剤の中では、分散安定性及び吐出性の観点から、アニオン性界面活性剤として、β−ナフタレンスルフォン酸−ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩〔例えば、花王(株)製、商品名:デモールN、デモールRN、デモールMS等〕、カルボン酸型高分子活性剤〔例えば、花王(株)製、商品名:ポイズ520 、ポイズ521 、ポイズ530 等〕、カチオン性界面活性剤として、第四級アンモニウム塩〔例えば、花王(株)製、商品名:コータミン24P 、コータミン60W 、コータミンD86P等〕等が好ましい。
界面活性剤の量は、インク中での着色剤の分散安定性及びインクの吐出性の観点から、着色剤100 重量部に対して、好ましくは1〜120 重量部、より好ましくは3〜70重量部、更に好ましくは5〜30重量部である。
〔水不溶性ポリマーに顔料及び/又は疎水性染料を含有させた水不溶性ポリマー粒子の水分散体〕
本発明に用いられる水分散体として、水不溶性ポリマーに着色剤である顔料及び/又は疎水性染料を含有させた水不溶性ポリマー粒子の水分散体を用いることが好ましい。
以下に、着色剤として顔料又は疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体である場合の製造法について説明する。尚、顔料、疎水性染料は、前記着色剤に記載しているものを用いることができる。
水不溶性ポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合法により、塩生成基含有モノマー(a)及び疎水性モノマー(b)、必要により、ノニオン性の親水性モノマー(c)及び/又はマクロマー(d)を含有するモノマー組成物を重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。なお、水不溶性ポリマーとして前記したものが挙げられる。
溶液重合法に用いられる溶媒は、極性有機溶媒であることが好ましい。極性有機溶媒が水混和性有機溶媒である場合には、水と混合して用いることもできる。
極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、(イソ)プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらと水との混合液が好ましい。
なお、重合の際には、ラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、2, 2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'- アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2'-アゾビスブチレート、2,2'- アゾビス(2- メチルブチロニトリル)、1,1'- アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物、t-ブチルペルオキシオクトエート、ジ-t- ブチルペルオキシド、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。
重合開始剤の量は、モノマー組成物100 重量部あたり、好ましくは0.001 〜5重量部、より好ましくは0.01〜2重量部である。
なお、重合の際には、更に重合連鎖移動剤を添加してもよい。重合連鎖移動剤の具体例としては、オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素類;ペンタフェニルエタン等の炭化水素類;アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2-エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジテルペン、α−メチルスチレンダイマー、9,10- ジヒドロアントラセン、1,4-ジヒドロナフタレン、インデン、1,4-シクロヘキサジエン等の不飽和環状炭化水素化合物;2,5-ジヒドロフラン等の不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
モノマー組成物の重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー及び溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができない。通常、重合温度は好ましくは30〜100 ℃、より好ましくは50〜80℃であり、重合時間は好ましくは1〜20時間である。重合雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガスであることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法によってポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することにより、精製することができる。
疎水性染料を含有させたポリマー粒子の水分散体は、公知の乳化法によって製造することができる。該水分散体は、例えば、水不溶性ポリマー及び疎水性染料を有機溶媒に溶解させ、得られた溶液に必要に応じて中和剤を加えて水不溶性ポリマーの塩生成基をイオン化し、これに水を添加した後、必要に応じて分散機又は超音波乳化機を用いて分散を行ない、その有機溶媒を留去して水系に転相することによって得ることができる。
また、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体は、例えば、水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、得られた溶液に顔料、水、中和剤及び必要に応じ界面活性剤を加えて混練し、ペーストとした後、該ペーストを必要に応じて水で希釈し、有機溶媒を留去して水系にすることによって得ることができる。
〔着色インク〕
本発明のインクセットに用いられる着色インクにおける着色剤の含有量は、十分な印字濃度を得る観点及び吐出性の観点から、好ましくは0.5 〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、更に好ましくは2〜15重量%である。なお、着色剤が前記水不溶性ポリマーによる顔料及び/又は疎水性染料を含有させた水不溶性ポリマー粒子の水分散体である場合には、着色剤の量は、水分散体の固形分である。
本発明のインクセットにおいては、アニオン性の着色インクとカチオン性の着色インクが用いられているが、アニオン性の着色インクは、(1a)アニオン性ポリマー若しくはアニオン性界面活性剤を含有する着色インク、(2a)アニオン性基を顔料表面に有する自己分散型顔料を含有する着色インク、又は(3a)アニオン性基を有する染料を含有する着色インクであることが好ましい。
また、カチオン性の着色インクは、(1b)カチオン性ポリマー若しくはカチオン性界面活性剤を含有する着色インク、(2b)カチオン性基を顔料表面に有する自己分散型顔料を含有する着色インク、又は(3b)カチオン性基を有する染料を含有する着色インクであることが好ましい。
〔アニオン性の着色インク〕
着色インクが(1a)アニオン性ポリマー若しくはアニオン性界面活性剤を含有する着色インクである場合、アニオン性ポリマーとして、前記水溶性ポリマー及び/又は水不溶性ポリマーを用いることができるが、好ましくは水不溶性ポリマーであり、より好ましくは顔料及び/又は疎水性染料を含有させた水不溶性ポリマー粒子の水分散体に用いられる水不溶性ポリマーである。
着色インクにおけるアニオン性ポリマーの含有量は、好ましくは0.1 〜10重量%、より好ましくは0.5 〜5重量%である。また、着色インクにおけるアニオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは0.1 〜10重量%、より好ましくは0.5 〜5重量%である。
(2a)アニオン性基を顔料表面に有する自己分散型顔料を含有する着色インクに用いられる顔料としては、前記着色剤に記載の自己分散型顔料が好ましい。
着色インクにおける自己分散型顔料の好ましい含有量は、前記着色インク中の着色剤の好ましい含有量と同じである。
(3a)アニオン性基を有する染料を含有する着色インクに用いられる染料としては、前記着色剤に記載のアニオン性染料が好ましい。
着色インクにおけるアニオン性染料の好ましい含有量は、前記着色インク中の着色剤の好ましい含有量と同じである。
(2a)アニオン性基を顔料表面に有する自己分散型顔料を含有する着色インク、(3a)アニオン性基を有する染料を含有する着色インクには、更に前記水溶性及び/又は水不溶性ポリマーのアニオン性ポリマー若しくは前記アニオン性界面活性剤を含有することも好ましい。そのアニオン性ポリマー及びアニオン性界面活性剤の着色インク中の好ましい含有量は、前記(1a)アニオン性ポリマー若しくはアニオン性界面活性剤を含有する着色インクの場合の好ましい含有量と同じである。
(1a)アニオン性ポリマー若しくはアニオン性界面活性剤を含有する着色インク、(2a)アニオン性基を顔料表面に有する自己分散型顔料を含有する着色インク、又は(3a)アニオン性基を有する染料を含有する着色インクを用いる場合、アニオン性ポリマー及びアニオン性界面活性剤の双方を含有させてもよい。
アニオン性の着色インクは、アニオン性ポリマーと顔料を含有することが、耐光性及び耐水性の観点から好ましい。
〔カチオン性の着色インク〕
(1b)カチオン性ポリマー若しくはカチオン性界面活性剤を含有する着色インクの場合、カチオン性ポリマーは、前記水不溶性及び/又は水溶性ポリマーを用いることができ、水不溶性ポリマーが好ましく、顔料及び/又は疎水性染料を含有させた水不溶性ポリマー粒子の水分散体に用いられる水不溶性ポリマーがより好ましい。
着色インクにおけるカチオン性ポリマーの含有量は、好ましくは0.1 〜10重量%、より好ましくは0.5 〜5重量%である。また、着色インクにおけるカチオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは0.1 〜10重量%、より好ましくは0.5 〜5重量%である。
(2b)カチオン性基を顔料表面に有する自己分散型顔料を含有する着色インクの場合、用いられる顔料は、前記着色剤に記載の自己分散型顔料が好ましい。
着色インクにおける自己分散型顔料の好ましい含有量は、前記着色インク中の着色剤の好ましい含有量と同じである。
(3b)カチオン性基を有する染料を含有する着色インクの場合、用いられる染料は、前記着色剤に記載のカチオン性染料が好ましい。
着色インクにおけるカチオン性染料の好ましい含有量は、前記着色インク中の着色剤の好ましい含有量と同じである。
(2b)カチオン性基を顔料表面に有する自己分散型顔料を含有する着色インク、(3b)カチオン性基を有する染料を含有する着色インクには、更に前記水溶性及び/又は水不溶性ポリマーのカチオン性ポリマー若しくは前記カチオン性界面活性剤を含有させることも好ましく、そのカチオン性ポリマー及びカチオン性界面活性剤の着色インクにおける好ましい含有量は、前記(1b)カチオン性ポリマー若しくはカチオン性界面活性剤を含有する着色インクの場合と同じである。
(1b)カチオン性ポリマー若しくはカチオン性界面活性剤を含有する着色インク、(2b)カチオン性基を顔料表面に有する自己分散型顔料を含有する着色インク又は(3b)カチオン性基を有する染料を含有する着色インクを用いる場合には、カチオン性ポリマーとカチオン性界面活性剤との双方を含有させてもよい。
カチオン性の着色インクは、カチオン性ポリマーと顔料を含有することが、耐光性及び耐水性の観点から好ましい。
本発明に用いられる着色インクは、水系インクであることが好ましい。水系インクにおける水分量は、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%である。
本発明に用いられる着色インクには、更に、各種添加剤、例えば、多価アルコール類用の湿潤剤、分散剤、消泡剤、防黴剤及び/又はキレート剤、pH調整剤等を適量で添加することができる。
湿潤剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、炭素数4〜8のアルキルジオール類、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリセリンモノn-ブチルエーテル等の多価アルコール及びそのエーテル、アセテート類、N-メチル-2- ピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン等の含窒素化合物等が挙げられる。着色インク中における湿潤剤の量は、好ましくは0.1 〜50重量%、より好ましくは0.1 〜30重量%である。
分散剤として、アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性系の分散剤を用いることができる。
更に、アニオン性の着色インクとカチオン性の着色インクの少なくとも一方に顔料が含まれていることが、耐光性及び耐水性の観点から好ましい。
特に、本発明のインクセットに用いられる着色インクが、顔料及び/又は疎水性染料を含有させた水不溶性ビニルポリマーのポリマー粒子の水分散体を含有する水系インクであることが、低粘度のインクに設計することができるので、吐出性がよくなり、また、耐水性及び耐擦過性に優れた印字物を得ることができるので、好ましい。
本発明に用いられるアニオン性の着色インクのpH (20℃) は、7以上11以下が好ましく、8〜11がより好ましい。また、カチオン性の着色インクのpH (20℃) は、3以上7未満が好ましく、3〜6がより好ましい。
アニオン性の着色インクに酸を添加してpHを調整することにより、カチオン性インクとして用いたり、カチオン性の着色インクにアルカリを添加してpHを調整することにより、アニオン性の着色インクとして用いることもできる。
〔インクセット〕
本発明のインクセットには、1種以上のアニオン性の有彩色の着色インクと1種以上のカチオン性の有彩色の着色インクが用いられているので、紙表面で接触したアニオン性の着色インクとカチオン性の着色インクが凝集を起こし、低解像度の印刷においても非常に高印字濃度の印字物を得ることができる。これはマゼンタインク、イエローインク及びシアンインクから選ばれたいずれの着色インクを用いても同様の結果を得ることができる。
特に、2 次色等は紙表面でインクが凝集するため、吐出量が増えても浸透が促進されず、同一のイオン性の着色インクによる組み合わせの印字物に比べて高印字濃度の印刷物を得ることができる。
ここで、2次色等とは、マゼンタインク、イエローインク及びシアンインクからなる群より選ばれた2種以上で調色された色を意味する。
2次色等を印刷する場合、アニオン性の有彩色の着色インクとカチオン性の有彩色の着色インクの組み合わせは、同色であることが印字濃度が高くなるので好ましいが、高印字濃度を達成することができるのであれば、経済性の点から、異なった色のアニオン性の着色インクとカチオン性の着色インクの組み合わせを用いてもよい。更に、印刷画質や紙種により使用する着色インクの組み合わせを変更することができる。
本発明のインクセットは、マゼンタインク、イエローインク及びシアンインクを有していることが好ましく、各々のインクには、アニオン性の着色インクとカチオン性の着色インクとの組み合わせが用いられていることがより好ましい。
また、各々のインクに用いられる着色剤は、単一の種類であってもよく、2種類以上の着色剤が混合されて用いられていてもよい。更に、1つのインクセットは、着色剤が異なった、2種類以上のマゼンタインク、2種類以上のイエローインク及び/又は2種類以上のシアンインクを含有していてもよい。
専用紙に印字する場合は、紙表面に着色剤が残るためにイオン性の異なるインクを用いなくても高印字濃度となるが、印字濃度をより高めるためにイオン性の異なるインクを用いて印字を行うことが好ましい。更に、印刷画質や紙種により使用するインクの組み合わせを変更することができる。
ブラックインクを使用しない有彩色のインクセットの場合、マゼンタインク、イエローインク及びシアンインクによるコンポジットブラックで黒色を印字させることができる。一方、ブラックインクを使用しているインクセットの場合、黒色はコンポジットブラックで印字してもよく、ブラックインクで印字してもよい。印刷画質や紙種により、コンポジットブラックを用いてもよく、ブラックインクを用いてもよい。また、イオン性の異なる2種類のブラックインクを使用してもよい。更に、ブラックインクと異なるイオン性の有彩色の着色インクを印字した後にブラックインクを印字することにより、高印字濃度を付与することができる。
更に、本発明のインクセットは、混色を起こす速度よりも早く凝集することによって着色剤の拡散を抑えることができるので、混色防止効果を有する効果に優れている。また、紙表面上で個々の着色剤が残りやすいので、ブラックインクに求められる単一的な色の範囲とは異なり、広い色再現範囲を付与することができる。
本発明のインクセットは、インクジェット記録用インクセットとして好適に使用することができる。とりわけ、高速で印字させる場合にも、印字濃度を高めることができる。
〔記録方法〕
本発明は、1種類以上のアニオン性の有彩色の着色インクと1種類以上のカチオン性の有彩色の着色インクとを含有するインクセットを用いて印刷を行うことにより、記録することができる。
本発明のインクセットを用いた場合、アニオン性の着色インクを、先に記録媒体上に存在させた後、カチオン性の着色インクを記録媒体上に存在させてもよく、カチオン性の着色インクを先に記録媒体上に存在させた後、アニオン性の着色インクを後で記録媒体上に存在させてもよい。記録媒体上に共存させる方法として、記録ドットの同一箇所に両インクを存在させてもよく、隣接ドットに交互に存在させてもよい。両インクは、記録媒体上で接触させる必要がある。
一方の着色インクを記録媒体上に存在させた後、他方の着色インクを記録媒体上に存在させるまでの時間については、特に制限がないが、数秒間以内であることが好ましく、2秒間以内であることがより好ましい。
2次色等で記録する場合、同色であることが印字濃度が高くする観点から好ましいが、異なった色であってもよい。2次色等を同色で印字する場合は、アニオン性とカチオン性の着色インクをそれぞれ2回以上印字することになるため、特に印字濃度が高くなる。
製造例1及び2
反応容器内に、メチルエチルケトン20重量部及び重合連鎖移動剤(2- メルカプトエタノール)0.03重量部、表1に示す各モノマーの重量部数の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロートに、表1に示すモノマーの重量部数の90%を仕込み、重合連鎖移動剤(2- メルカプトエタノール)0.27重量部、メチルエチルケトン60重量部及び2,2'- アゾビス(2,4- ジメチルバレロニトリル)1.2重量部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、2,2'- アゾビス(2,4- ジメチルバレロニトリル)0.3重量部をメチルエチルケトン5重量部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液の一部を、減圧下、105 ℃で2時間乾燥させ、溶媒を除去することによって単離した。製造例1については、標準物質としてポリスチレン、溶媒として60mmol/Lのリン酸及び4.5mmol/L のリチウムブロマイド含有ジメチルホルムアミドを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量を測定した。製造例2については、標準物質としてポリスチレン、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。
なお、表1に示す化合物の詳細は、以下のとおりである。
・ポリプロピレングリコールモノメタクリレート:アルドリッチジャパン(株)製、数平均分子量:375
・スチレンマクロマー:東亜合成(株)製、商品名:AS-6 、数平均分子量:6000 、重合性官能基:メタクロイルオキシ基
製造例3
製造例1で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー6重量部をメチルエチルケトン45重量部に溶かし、その中に中和剤 (20%水酸化ナトリウム水溶液)を所定量加えて塩生成基を中和し、更にキナクリドン顔料〔C.I.ピグメント・レッド122 〕18重量部を加え、3本ロールミルで1時間混練した。
得られた混練物に、イオン交換水120 重量部を加え、攪拌した後、減圧下で60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、固形分濃度が20重量%の顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散体を得た。
得られた顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散体40重量部、グリセリン10重量部、2-ピロリドン5重量部、イソプロピルアルコール2重量部及びイオン交換水43重量部を混合し、得られた混合液を0.5 μmのフィルター〔アセチルセルロース膜、外径:2.5cm 、富士写真フイルム(株)製〕を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ〔テルモ(株)製〕で濾過し、粗大粒子を除去し、表2に記載の組成となるように添加剤及び水を含有させて、pH (20℃) が9.6 の水系インクを得た。
製造例4
製造例1で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー6重量部を、メチルエチルケトン45重量部に溶かし、その中に中和剤 (20%水酸化ナトリウム水溶液)を所定量加えて塩生成基を中和し、更にアゾ顔料〔C.I.ピグメント・イエロー74〕18重量部を加え、3本ロールミルで1時間混練した。
製造例3において、顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散体の代わりに、得られた顔料粒子の水分散体を用いた以外は製造例3と同様にして、水系インクを得た。
製造例5
製造例1で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー6重量部を、メチルエチルケトン45重量部に溶かし、その中に中和剤 (20%水酸化ナトリウム水溶液)を所定量加えて塩生成基を中和し、更に銅フタロシアニン顔料〔C.I.ピグメント・ブルー15:4〕18重量部を加え、3本ロールミルで1時間混練した。
製造例3において、顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散体の代わりに、得られた顔料粒子の水分散体を用いた以外は製造例3と同様にして、水系インクを得た。
製造例6
製造例2で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー6重量部を、メチルエチルケトン45重量部に溶かし、その中に中和剤 (50%グルコン酸水溶液)を所定量加えて塩生成基を中和し、更にキナクリドン顔料〔C.I.ピグメント・レッド122 〕18重量部を加え、3本ロールミルで1時間混練した。
製造例3において、顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散体の代わりに、得られた顔料粒子の水分散体を用いた以外は製造例3と同様にして、pH (20℃) が4.8 の水系インクを得た。
製造例7
製造例2で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー6重量部を、メチルエチルケトン45重量部に溶かし、その中に中和剤 (50%グルコン酸水溶液)を所定量加えて塩生成基を中和し、更にアゾ顔料〔C.I.ピグメント・イエロー74〕18重量部を加え、3本ロールミルで1時間混練した。
製造例3において、顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散体の代わりに、得られた顔料粒子の水分散体を用いた以外は製造例3と同様にして、水系インクを得た。
製造例8
製造例2で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー6重量部を、メチルエチルケトン45重量部に溶かし、その中に中和剤 (50%グルコン酸水溶液)を所定量加えて塩生成基を中和し、更に銅フタロシアニン顔料〔C.I.ピグメント・ブルー15:4〕18重量部を加え、3本ロールミルで1時間混練した。
製造例3において、顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散体の代わりに、得られた顔料粒子の水分散体を用いた以外は製造例3と同様にして、水系インクを得た。
実施例1
製造例3及び製造例6で得られた水系インクを組合せてインクセットを調製した。
実施例2〜9
実施例1において、カラーインクに用いられる水系インクを表3に示す製造例で得られたもの又はその詳細を表6に示す市販のインクに変更した以外は、実施例1と同様にして、インクセットを調製した。
比較例1〜12
実施例1において、カラーインクに用いられる水系インクを表4及び5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、インクセットを調製した。
なお、アニオン染料インク及びカチオン染料インクとして、表4に示す製造例で得られたもの又はその詳細を表6に示す市販のインクを用いた。
次に、各実施例及び各比較例で得られたインクセットの性能を以下の方法に従って調べた。その結果を表3〜5に示す。
(1)印字濃度
市販のインクジェットプリンター〔エプソン(株)製、型番:EM-900C〕を用いて、市販の普通紙〔上質普通紙、エプソン(株)製、商品名:KA4250NT)〕にベタ印字し〔印字条件=用紙種類:普通紙、モード設定:速い〕、25℃で1時間放置後、印字濃度をマクベス濃度計(マクベス社製、品番:RD914) で測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。なお、インクは第一のヘッドと第二のヘッドにセットし、同時に吐出させて印字物を得た。
〔評価基準〕
◎:印字濃度が1.20以上
○:印字濃度が1.10以上1.20未満
△:印字濃度が1.00以上1.10未満
×:印字濃度が1.00未満
(2) 耐光性
前記印字濃度を測定したベタ印字物に、キセノンフェードメーター(ATLAS 社製、商品名) で10000 カウント照射し続けた後、再びマクベス濃度計RD914 で照射前における測定と同じ印字箇所の印字濃度を測定した。照射前の印字濃度に対する照射後の印字濃度の残存率を式:
〔残存率〕=〔照射後の印字濃度〕/〔照射前の印字濃度〕×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて耐光性を評価した。
〔評価基準〕
◎:残存率95%以上
○:残存率80%以上95%未満
△:残存率60%以上80%未満
×:残存率60%未満
(3) 耐水性
前記プリンターを用い、前記市販の普通紙にベタ印字し、25℃で1時間乾燥させた試料の特定の印字箇所の印字濃度を測定後、静水中に垂直に10秒間浸漬し、そのまま垂直に引き上げた。25℃で24時間自然乾燥させた後、浸漬前と同じ箇所の印字濃度を測定し、浸漬前の印字濃度に対する浸漬後の印字濃度の残存率を式:
〔残存率〕=〔浸漬後の印字濃度〕/〔浸漬前の印字濃度〕×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて耐水性を評価した。
〔評価基準〕
◎:残存率95%以上
○:残存率80%以上95%未満
△:残存率60%以上80%未満
×:残存率60%未満
(4) 色再現範囲
前記印字濃度を測定したベタ印字物を、NIPPON DENSHOKU Spectro Color Meter SE2000〔日本電色工業(株)製、商品名〕を用い、印字物を D65/2°の光の波長で反射光の測定を行い、色再現範囲を測定した。原点から色座標a*、b*との距離を式:
Cab*={(a*)2+(b*)2 }1/2
に従って求め、以下の評価基準に基づいて色再現範囲を評価した。
〔評価基準〕
◎:各色のアニオン性染料×アニオン性染料のCab*に対して105 %以上
○:各色のアニオン性染料×アニオン性染料のCab*に対して95%以上105 %未満
△:各色のアニオン性染料×アニオン性染料のCab*に対して85%以上95%未満
×:各色のアニオン性染料×アニオン性染料のCab*に対して85%未満
表3〜5に示された結果から、各実施例で得られたインクセットは、いずれも、普通紙に高印字濃度を形成し、広い色再現範囲を有することがわかる。また、各実施例で得られたインクセットは、耐水性及び耐光性に優れた印字物を与えるものであることがわかる。