JP3963438B2 - インクセット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクセットに関する。更に詳しくは、インクジェット記録用プリンター等に好適に使用しうるインクセットに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式は、その装置が低騒音で操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易であり、また記録部材として普通紙を使用することができるという利点がある。
【0003】
インクジェット記録方式には、近年、ブラックインクとカラーインクとからなるインクセットが用いられている。しかし、この2種類のインクが記録部材上で乾燥前に接触した際に、その接触部分でインクのにじみ(ブリード)が発生することがある。
【0004】
このインクのにじみ(ブリード)が抑制されたインクセットとして、酸性カーボンブラック、塩基性界面活性剤及び水溶性有機溶媒を含有する酸性のブラックインクと、塩基性のカラーインクとからなるインクセット(特開平9−183224号公報)、カーボンブラックの表面に親水性基が直接又は他の原子団を介して結合された自己分散型カーボンブラックを含有するブラックインクと、このブラックインク中の色材に対して逆極性の色材を有するカラーインクとを含むインクセット(特開平10−140064号公報)等が知られている。
【0005】
しかし、これらのインクセットを用いた場合には、その印字物の耐ブリード性が良好となる反面、インクの吐出時やヘッドのクリーニング時に、プリンターのフェイス面やインクの吐出口でこれらのインクが接触し、インクが凝集することによってインクの吐出不良が生じたり、インクの直進性が阻害され、ヨレが発生するという欠点がある。
【0006】
そこで、これらの欠点を解消するために、イオン性が異なるインクを別々のヘッドで吐出させることが検討されているが、この手段を採用した場合には、装置が必然的に大型化したり、複雑化するため、その製造費が高くなるという欠点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐ブリード性、耐水性、耐擦過性及び耐マーカー性に優れたインクセットを提供することを課題とする。本発明は、またそのインクの種類に応じてプリンターのヘッドを変更しなくても、優れた吐出性を示すインクジェット記録に好適に使用しうるインクセットを提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水不溶性のブラックインク用色材を含むブラックインクと、水不溶性のカラーインク用色材を含むカラーインクとからなり、前記ブラックインク用色材が、水不溶性ポリマーに黒色顔料又は黒色疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体からなり、前記カラーインク用色材が、水不溶性ポリマーに着色顔料又は着色疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体からなり、該水不溶性ポリマーが、塩生成基含有モノマー及び疎水性モノマーを含有するモノマー組成物を共重合させてなる水不溶性ビニルポリマーであり、ブラックインク用色材における黒色顔料又は黒色疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の平均粒径がカラーインクに含まれている1種類以上のカラーインク用色材における着色顔料又は着色疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の平均粒径よりも10nm以上大きいインクセットに関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のインクセットは、ブラックインクと、カラーインクとからなる。ここで、本明細書にいう「カラーインク」とは、ブラックインク以外のインクをいう。「カラーインク」は、黒色以外の色彩を有するインク1種類が用いられている場合(例えば、赤色インクのみが用いられている場合)、及び黒色以外の色彩を有し、その色彩が異なるインクが複数用いられている場合(例えば、赤色インク、青色インク及び黄色インクの3色のインクが用いられている場合)の双方を意味する。
【0010】
黒色以外の色彩を有するインク1種類が用いられている場合、そのインクの色彩は、インクの用途に応じて適宜決定すればよく、例えば、赤色、青色、黄色、緑色、紫色等が挙げられる。
【0011】
黒色以外の色彩を有し、その色彩が異なるインクが複数用いられている場合においては、その色彩が異なるインクが2種類以上用いられている。その色彩が異なるインクの組合せは任意であり、例えば、赤色インク、青色インク及び黄色インク等のように、3原色が用いられていてもよい。
【0012】
カラーインクに含まれている1種類以上のカラーインク用色材は、黒色以外の色彩を有するインク1種類が用いられている場合には、そのインクに用いられている1種類のカラーインク用色材を意味し、また黒色以外の色彩を有し、その色彩が異なるインクが複数用いられている場合には、色彩が異なる複数のインクそれぞれに用いられているカラーインク用色材のうちの少なくとも1種類のカラーインク用色材を意味する。
【0013】
ブラックインクは、水不溶性のブラックインク用色材を含有する。また、カラーインクは、水不溶性のカラーインク用色材を含有する。
【0014】
本発明においては、ブラックインク用色材の平均粒径がカラーインク用色材の平均粒径よりも10nm以上大きい点に、1つの大きな特徴がある。本発明のインクセットは、かかる特徴を有するので、耐ブリード性に優れている。
【0015】
ここで、本明細書にいう「ブリード」とは、ブラックインクとカラーインクとを装着したプリンターを用い、ブラックインクとカラーインクとが接触するようにメディア上で印字したときの接触部分のインク間でのにじみという現象をいう。
【0016】
また、本明細書にいう「耐ブリード性」とは、ブリードのし難さをいう。
【0017】
本発明のインクセットがこのように優れた耐ブリード性を有するのは、ブラックインク用色材の平均粒径がカラーインク用色材の平均粒径よりも10nm以上大きいことに起因して、ブラックインク用色材にカラーインク用色材が吸着することにより、両者が凝集し、この凝集により、粒径が大きくなった凝集粒子は、その運動性(ブラウン運動)が低下するので、メディア上へ沈降しやすくなり、インク間での液拡散が減少し、にじみの発生が抑制されることに基づくものと考えられる。また、ブラックインク用色材の平均粒径がカラーインク用色材の平均粒径よりも大きいので、カラーインクにブラックインクが拡散しがたくなり、にじみが視認されにくくなる。
【0018】
すなわち、インクが接触した際に、カラーインク、例えば、黄色インクにブラックインクが拡散すると、黄色の部分が黒色に変わってしまうため、にじみが目立つようになる。しかし、これとは逆にブラックインクにカラーインクが拡散しても黒色の部分の色はそのままであるか、あるいは黒色に例えば黄色が混合しても黒色度がやや低下する程度であるので、にじみが目立たない。かかる結果をもとに、ブラックインク用色材の平均粒径は、カラーインク用色材の平均粒径よりも大きくなるように調整されている。
【0019】
ところで、色材の粒径が異なる2種類のインクを用いた場合には、プリンターのヘッドからインクを吐出させる際やヘッドを洗浄する際に、これらのインクが互いに接触することにより、両者の凝集物が生成することが考えられる。しかしながら、実際には、それらのインクの凝集力は、従来のようなイオン性の異なる色材を用いた場合と比べて弱く、ノズル詰まりを引き起こすまでには至らない。したがって、本発明のインクセットは、インクジェット記録用インクセットとして好適に使用しうるものである。
【0020】
なお、本明細書における色材の平均粒径は、大塚電子(株)製、ELS −8000を用いて色材の粒径を測定し、その色材の粒径をキュムラント解析することによって求められた色材の粒径の平均値である。なお、その測定条件は、温度が25℃、入射光と検出器との角度が90°、積算回数が100 回である。分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333) を入力する。標準物質として、セラディン(Seradyn)社製のユニフォーム・マイクロパーティクルズ(Uniform Microparticles)(粒径204nm)を用いる。
【0021】
ブラックインク用色材の平均粒径がカラーインク用色材の平均粒径よりも大きければ大きいほどブリードが減少するので、ブラックインクとカラーインクの耐ブリード性が良好となる。かかる観点から、ブラックインク用色材の平均粒径は、カラーインク用色材の平均粒径よりも10nm以上、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは75nm以上大きくなるように調整される。
【0022】
なお、ブラックインク用色材の平均粒径が大きすぎる場合には、ブラックインク用色材の分散安定性が低下する傾向がある。したがって、ブラックインク用色材の平均粒径は、カラーインク用色材の平均粒径よりも、好ましくは150nm 以下、より好ましくは120nm 以下、更に好ましくは100nm 以下大きくなるように調整される。これらの観点から、ブラックインク用色材の平均粒径は、カラーインク用色材の平均粒径よりも、好ましくは10〜150nm 、より好ましくは20〜120nm 、更に好ましくは50〜100nm 、最も好ましくは75〜100nm 大きくなるように調整される。
【0023】
なお、ブラックインクとイエローインクとのブリードは、ブラックインクとイエローインク以外の他のカラーインクとのブリードよりも強く認識される。したがって、カラーインク用色材としてイエローインク用色材を用いる場合には、ブリードを目立たないようにするために、ブラックインク用色材の平均粒径は、イエローインク用色材の平均粒径よりも20nm以上、好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは75nm以上大きいことが望ましい。
【0024】
また、カラーインク用色材としてイエローインク用色材を用いる場合には、ブラックインク用色材の平均粒径は、イエローインク用色材の平均粒径よりも、好ましくは160nm 以下、より好ましくは130nm 以下、更に好ましくは110nm 以下大きくなるように調整される。これらの観点から、ブラックインク用色材の平均粒径は、イエローインク用色材の平均粒径よりも、好ましくは20〜160nm 、より好ましくは40〜130nm 、更に好ましくは60〜110nm 、最も好ましくは75〜110nm 大きくなるように調整される。
【0025】
ところで、ブラックインク用色材の平均粒径は、分散安定性を向上させる観点及び印字濃度を高める観点から、40〜300nm 、好ましくは60〜250nm 、更に好ましくは90〜200nm であることが望ましい。他方、カラーインク用色材の平均粒径は、ブラックインク用色材と同様に、分散安定性を向上させ、印字濃度を高めるとともに、更に耐ブリード性を高める観点から、30〜290nm 、好ましくは50〜240nm 、更に好ましくは80〜190nm であることが望ましい。
【0026】
水不溶性の色材としては、
(1)顔料を界面活性剤、顔料誘導体又は水溶性ポリマーで水中に分散させた顔料分散体(以下、顔料分散体という)、
(2)親水性基が直接又は他の原子団を介して結合している自己分散型顔料、及び
(3)顔料又は疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体
等が挙げられる。これらの中では、耐水性、耐擦過性及び耐マーカー性の観点から、顔料又は疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を用いるのが好ましい。
【0027】
顔料分散体に用いられる顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。必要により、それらの顔料と体質顔料とを併用してもよい。
【0028】
無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。
【0029】
水不溶性のブラックインク用色材には、カーボンブラック等の黒色顔料が好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ガスブラック等が挙げられる。
【0030】
水不溶性のカラーインク用色材には、有機顔料、体質顔料等の着色顔料が好ましい。有機顔料としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【0031】
顔料を水中に分散させる際に用いられる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。これらの中では、分散安定性及び吐出性の観点から、β―ナフタレンスルホン酸−ホルマリン縮合物のナトリウム塩〔例えば、花王(株)製、商品名:デモールN、デモールRN、デモールMS等〕、カルボン酸型高分子活性剤〔例えば、花王(株)製、商品名:ポイズ520 、ポイズ521 、ポイズ530 等〕等が好ましい。
【0032】
界面活性剤の量は、インクにおける色材の分散安定性及びインクの吐出性の観点から、顔料100 重量部に対して、1〜120 重量部、好ましくは3〜70重量部、更に好ましくは5〜30重量部であることが望ましい。
【0033】
顔料を水中に分散させる際に用いられる顔料誘導体としては、イオン性官能基又はイオン性官能基の塩を有する、アゾ誘導体、ジアゾ誘導体、フタロシアニン誘導体、キナクリドン誘導体、イソインドリノン誘導体、ジオキサジン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、チオインジゴ誘導体、アントラキノン誘導体、キノフタロン誘導体等が挙げられる。
【0034】
顔料を水中に分散させる際に用いられる水溶性ポリマーとしては、水溶性ビニルポリマー、水溶性エステル系ポリマー、水溶性ウレタン系ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーの中では、水溶性ビニルポリマーが好ましい。
【0035】
本明細書でいう「水溶性ポリマー」とは、中和後に25℃の水100gに対する溶解度が1g以上のポリマーをいう。また、本明細書にいう「水不溶性ポリマー」とは、前記水溶性ポリマー以外のポリマーをいう。
【0036】
水溶性ビニルポリマーとしては、塩生成基含有モノマー(a)及び疎水性モノマー(b)を含有するモノマー組成物を重合させてなる共重合体が挙げられる。なお、このモノマー組成物には、必要に応じて(c)ノニオン性の親水性モノマーが含有されていてもよい。
【0037】
塩生成基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、3級アミン基、4級アンモニウム基等が挙げられる。
【0038】
塩生成基含有モノマー(a)としては、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが挙げられる。
【0039】
アニオン性モノマーの例としては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。これらの中では、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、なかでもアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
【0040】
カチオン性モノマーの例としては、不飽和3級アミン含有モノマー、不飽和4級アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。カチオン性モノマーの具体例としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N’,N’ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、前記「(メタ)アクリ」とは、「アクリ」又は「メタクリ」を意味する。
【0041】
疎水性モノマー(b)の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、2-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系モノマー等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、前記(イソ又はターシャリー)及び(イソ)は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルを示す。
【0042】
ノニオン性の親水性モノマー(c)の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート、炭素数1〜12のモノアルコキシポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び炭素数1〜12のモノアルコキシポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレートが好ましい。
【0043】
塩生成基含有モノマー(a)、疎水性モノマー(b)及びノニオン性の親水性モノマー(c)の割合は、中和後に水に可溶であり、インクにおける色材の分散安定性及びインクの吐出性に優れているのであれば特に限定がない。通常、塩生成基含有モノマー(a)/疎水性モノマー(b)/ノニオン性の親水性モノマー(c)〔重量比〕は、好ましくは1〜80/20〜70/0〜50、より好ましくは5〜75/25〜65/5〜45である。
【0044】
水溶性ポリマーの重量平均分子量は、インクにおける色材の分散安定性及びインクの粘度を考慮して、500 〜30000 、好ましくは800 〜20000 、更に好ましくは1000〜10000 であることが望ましい。なお、水溶性ポリマーの重量平均分子量は、その中和前において、以下に示す実施例に記載のゲルクロマトグラフィーによって測定したときの値である。
【0045】
水溶性ポリマーは、中和されていることが好ましい。中和度は、顔料分散体の分散安定性を良好に保持するのであれば特に限定がない。通常、水溶性ポリマーを構成している塩生成基含有モノマー中の塩生成基1モルあたり中和剤を30〜200 モル%添加することが望ましい。
【0046】
中和の際に用いられる中和剤は、水溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、水溶性ポリマーにカチオン性モノマーが用いられている場合には、中和剤として、酢酸、メトキシ酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等を用いることができる。また、水溶性ポリマーにアニオン性モノマーが用いられている場合には、中和剤として、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等を用いることができる。
【0047】
顔料誘導体又は水溶性ポリマーの量は、 インクにおける色材の分散安定性及びインクの吐出性の観点から、顔料100 重量部に対して、5〜100 重量部、好ましくは10〜80重量部、更に好ましくは15〜60重量部であることが望ましい。
【0048】
親水性基が直接又は他の原子団を介して結合している自己分散型顔料としては、特開平10-140064 号公報、特開平10-110127 号公報等に記載されている自己分散型顔料が挙げられ、具体的にはキャボット社製のCAB-O-JET (登録商標)300 等が例示される。
【0049】
顔料又は疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体に用いられる顔料は、前記顔料分散体に用いられる顔料と同様であればよい。
【0050】
疎水性染料の例として油溶性染料、分散染料等が挙げられる。これらの中では、油溶性染料及び分散染料がポリマー粒子中に良好に含有させることができることから好ましい。
【0051】
油溶性染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、C.I.ソルベント・ブラック3、7、27、29、34;C.I.ソルベント・イエロー14、16、29、56、82;C.I.ソルベント・レッド1、3、8、18、24、27、43、51、72、73;C.I.ソルベント・バイオレット 3;C.I.ソルベント・ブルー2、11、70;C.I.ソルベント・グリーン3、7;C.I.ソルベント・オレンジ2等が挙げられる。
【0052】
分散染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、C.I.ディスパーズ・イエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100 、119 、122 、124 、126 、160 、184:1 、186 、198 、199 、204 、224 、237 ;C.I.ディスパーズ・オレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118 、119 、163 ;C.I.ディスパーズ・レッド54、60、72、73、86、88、91、93、111 、126 、127 、134 、135 、143 、145 、152 、153 、154 、159 、164 、167:1 、177 、181 、204 、206 、207 、221 、239 、240 、258 、277 、278 、283 、311 、323 、343 、348 、356 、362 ;C.I.ディスパーズ・バイオレット33;C.I.ディスパーズ・ブルー56、60、73、87、113 、128 、143 、148 、154 、158 、165 、165:1 、165:2 、176 、183 、185 、197 、198 、201 、214 、224 、225 、257 、266 、267 、287 、354 、358 、365 、368 ;C.I.ディスパーズ・グリーン6:1 、9等が挙げられる。
【0053】
疎水性染料は、水不溶性ポリマー粒子中に効率的に含有させる観点から、25℃において、使用する有機溶媒に2g/L 以上、好ましくは20〜500 g/L 溶解するものが望ましい。
【0054】
水不溶性ポリマーとしては、水不溶性ビニルポリマー、水不溶性エステル系ポリマー及び水不溶性ウレタン系ポリマーが挙げられる。これらのポリマーの中では、水不溶性ビニルポリマーが好ましい。
【0055】
水不溶性ビニルポリマーとしては、塩生成基含有モノマー(a)及び疎水性モノマー(b)を含有するモノマー組成物を重合させてなる共重合体が挙げられる。なお、モノマー組成物には、必要により、ノニオン性の親水性モノマー(c)及び/又はマクロマー(d)が含まれていてもよい。これらの中では、インクにおける色材の分散安定性及びインクの吐出安定性の観点から、マクロマー(d)が含まれていることが好ましい。
【0056】
塩生成基含有モノマー(a)、疎水性モノマー(b)及びノニオン性の親水性モノマー(c)は、前記水溶性ポリマーに用いられるものと同様のものが例示される。
【0057】
マクロマー(d)としては、数平均分子量500 〜100000、好ましくは1000〜10000 の重合可能な不飽和基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。マクロマー(d)の数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィーにより、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
【0058】
マクロマー(d)の代表例としては、シリコーンマクロマー及びスチレン系マクロマーが挙げられ、これらは単独で使用してもよく、併用してもよい。
【0059】
シリコーンマクロマーの中では、式(I):
X1(Y1) q Si(R1)3-r(Z1) r (I)
(式中、X1 は重合可能な不飽和基、Y1 は2価の結合基、R1 はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、アリール基又はアルコキシ基、Z1 は500 以上の数平均分子量を有する1価のシロキサンポリマーの残基、qは0又は1、rは1〜3の整数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーは、インクジェットプリンターのヘッドの焦げ付きを防止する観点から好適に使用しうるものである。
【0060】
式(I)で表されるシリコーンマクロマーにおいて、X1 の代表例としては、CH2 =CH−基、CH2 =C(CH3 )−基等の炭素数2〜6の1価の不飽和炭化水素基が挙げられる。Y1 としては、−COO−基、−COOCa H2a−基(aは1〜5の整数を示す)、フェニレン基等の2価の結合基が挙げられ、−COOC3 H6 −が好ましい。R1 としては、水素原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基;フェニル基等の炭素数6〜20のアリール基、メトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基等が挙げられ、これらの中ではメチル基が好ましい。Z1 は、好ましくは数平均分子量500 〜5000のジメチルシロキサンポリマーの1価の残基である。qは0又は1であるが、好ましくは1である。rは1〜3の整数であるが、好ましくは1である。
【0061】
シリコーンマクロマーの代表例としては、式(I-1):
CH2=CR2-COOC3H6-[Si(R3)2- O] b -Si(R3) 3 (I-1)
(式中、R2 は水素原子又はメチル基、R3 はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、bは5〜60の数を示す)
で表されるシリコーンマクロマー、式(I-2):
CH2=CR2-COO-[Si(R3)2- O]b -Si(R3) 3 (I-2)
(式中、R2 、R3 及びbは前記と同じ)
で表されるシリコーンマクロマー、式(I-3):
CH2=CR2-Ph-[Si(R3)2-O]b -Si(R3) 3 (I-3)
(式中、Phはフェニレン基、R2 、R3 及びbは前記と同じ)
で表されるシリコーンマクロマー、式(I-4):
CH2=CR2-COOC3H6-Si(OE)3 (I-4) 〔式中、R2 は前記と同じ。Eは式:
-[Si(R2)2O] c -Si(R2)3
(式中、R2 は前記と同じ。cは5〜65の数を示す)
で表される基を示す〕
で表されるシリコーンマクロマー等が挙げられる。
【0062】
これらの中では、式(I-1) で表されるシリコーンマクロマーが好ましく、特に、式(I-1a):
CH2=C(CH3)-COOC3H6-[Si(CH3)2-O] d -Si(CH3)3 (I-1a)
(式中、dは8〜40の数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーが好ましい。その例として、FM-0711 〔チッソ(株)製、商品名〕等が挙げられる。
【0063】
スチレン系マクロマーは、水不溶性ビニルポリマーに顔料を十分に含有させる観点から、好適に使用しうるものである。
【0064】
スチレン系マクロマーの代表例としては、片末端に重合性官能基を有するスチレン単独重合体及びスチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。これらの中では、片末端に重合性官能基としてアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するスチレン単独重合体が好ましい。
【0065】
スチレンと他のモノマーとの共重合体におけるスチレン含量は、顔料が十分に水不溶性ビニルポリマーに含有されるようにする観点から、60重量%以上、好ましくは70重量%以上であることが望ましい。他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0066】
水不溶性ビニルポリマーにおける塩生成基含有モノマー(a)の含量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、1〜50重量%、好ましくは2〜40重量%、より好ましくは5〜35重量%が望ましい。
【0067】
水不溶性ビニルポリマーにおける疎水性モノマー(b)の含量は、印字濃度及び分散安定性の観点から、5〜93重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜70重量%が望ましい。
【0068】
水不溶性ビニルポリマーにおけるノニオン性の親水性モノマー(c)の含量は、吐出安定性及び印字濃度の観点から、0 〜40重量%、好ましくは2 〜40重量%、より好ましくは5〜30重量%が望ましい。
【0069】
水不溶性ビニルポリマーにおけるマクロマー(d)の含量は、バブルジェットのインクジェットプリンターにおいて、ヒーター面の焦げ付きを抑制する観点及び分散安定性の観点から、0 〜30重量%、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%が望ましい。
【0070】
水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、色材の分散安定性及びインク粘度への影響から、1000〜100000、好ましくは1500〜100000、更に好ましくは2000〜70000 である。水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、前記水溶性ポリマーと同様にして測定した値である。
【0071】
水不溶性ポリマーは、中和されていることが好ましい。中和度は、分散安定性が良好であれば特に限定がない。通常、水不溶溶性ポリマーを構成している塩生成基含有モノマー(a)中の塩生成基1モルあたり中和剤を30〜200 モル%添加することが望ましい。
【0072】
中和の際に用いられる中和剤は、水不溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて適宜選択することができる。中和剤の例としては、水溶性ポリマーの場合と同じものが挙げられる。
【0073】
水不溶性ポリマーの量は、インクにおける色材の分散安定性、並びにインクの吐出性、耐擦過性及び耐マーカー性の観点から、顔料又は疎水性染料100 重量部に対して、5〜250 重量部、好ましくは10〜180 重量部、更に好ましくは15〜130 重量部であることが望ましい。
【0074】
以下に、水不溶性の色材が顔料又は疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体である場合の製造法について説明する。
【0075】
水不溶性ポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合法により、塩生成基含有モノマー(a)及び疎水性モノマー(b)、必要により、ノニオン性の親水性モノマー(c)及び/又はマクロマー(d)を含有するモノマー組成物を重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
【0076】
溶液重合法に用いられる溶媒は、極性有機溶媒であることが好ましい。極性有機溶媒が水混和性有機溶媒である場合には、該水混和性有機溶媒は、水と混合して用いることもできる。
【0077】
極性有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、(イソ)プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらと水との混合液が好ましい。
【0078】
なお、重合の際には、ラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤の好適な例としては、2,2'- アゾビスイソブチロニトリル、2,2'- アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2'- アゾビスブチレート、2,2'- アゾビス(2- メチルブチロニトリル)、1,1'- アゾビス(1- シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。
【0079】
重合開始剤の量は、モノマー組成物100 重量部あたり、0.001 〜5重量部、好ましくは0.01〜2重量部であることが望ましい。
【0080】
なお、重合の際には、さらに重合連鎖移動剤を添加してもよい。重合連鎖移動剤の具体例としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素類;ペンタフェニルエタン等の炭化水素類;及びアクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2-エチルヘキシルチオグリコレート、タービノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジテルペン、α−メチルスチレンダイマー、さらに9, 10−ジヒドロアントラセン、1,4-ジヒドロナフタレン、インデン、1,4-シクロヘキサジエン等の不飽和環状炭化水素化合物;2,5-ジヒドロフラン等の不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられ、これらは単独で又は混合して用いることができる。
【0081】
モノマー組成物の重合条件は、ラジカル重合開始剤、モノマー及び溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができない。通常、重合温度は30〜100 ℃、好ましくは50〜80℃であり、重合時間は1〜20時間である。重合の際の雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガスであることが好ましい。
【0082】
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法によって水不溶性ポリマーを単離することができる。得られた水不溶性ポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することにより、精製することができる。
【0083】
疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体は、公知の乳化法によって製造することができる。該水分散体は、例えば、水不溶性ポリマー及び疎水性染料を有機溶媒に溶解させ、得られた溶液に必要に応じて中和剤を加えて水不溶性ポリマーの塩生成基をイオン化し、これに水を添加した後、必要に応じて分散機又は超音波乳化機を用いて分散を行い、その有機溶媒を留去して水系に転相することによって得ることができる。
【0084】
また、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体は、例えば、水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、得られた溶液に顔料、水、中和剤及び必要に応じ界面活性剤を加えて混練し、ペーストとした後、該ペーストを必要に応じて水で希釈し、有機溶媒を留去して水系にすることによって得ることができる。
【0085】
ブラックインクにおける色材の含有量及びカラーインクにおける色材の含有量は、いずれも、十分な印字濃度を得る観点及び吐出性の観点から、0.5 〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、更に好ましくは2〜15重量%であることが望ましい。なお、色材が分散体である場合には、色材の量は、分散体における固形分である。
【0086】
ブラックインクのイオン性と、カラーインクのイオン性とは同じであることが好ましい。なお、各インクのイオン性は、インクに用いられている界面活性剤、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマー又は自己分散型顔料の親水性基がイオン性を有するときに発現される。
【0087】
なお、ブラックインク及びカラーインクには、各種添加剤、例えば、多価アルコール類等の湿潤剤、分散剤、消泡剤、防黴剤、キレート剤、pH調整剤等を適量で添加することができる。
【0088】
【実施例】
製造例1〜4(ビニルポリマーの調製)
反応容器内に、メチルエチルケトン20重量部、表1の「初期仕込みモノマー」の欄に示す種類及び量のモノマー及び重合連鎖移動剤を仕込み、窒素ガス置換を十分に行った。
【0089】
一方、滴下ロートに、表1の「滴下モノマー」の欄に示す種類及び量のモノマー及び重合連鎖移動剤、メチルエチルケトン60重量部、並びに2,2'- アゾビス(2,4 −ジメチルバレロニトリル)0.1 重量部をメチルエチルケトン5重量部に溶解した溶液を加え、70℃で5時間、75℃で10時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。
【0090】
得られたポリマー溶液の一部を取り、標準物質としてポリスチレン、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量を測定したところ、得られたビニルポリマーは、表1に示す重量平均分子量を有していた。
【0091】
なお、表1に記載の各名称は、以下のことを意味する。
・シリコーンマクロマー:チッソ(株)製、商品名:FM-0711(数平均分子量:10 00)〔式(I-1a)で表される構造を有する〕
・スチレンマクロマー:東亜合成(株)製、商品名:AS-6〔スチレン単独重合マクロマー、片末端重合性官能基:メタクリロイルオキシ基、数平均分子量:60 00〕
【0092】
【表1】
【0093】
製造例5〜13(顔料を含有するインク用色材の調製)
製造例1〜4で得られたポリマー溶液28重量部(ポリマー固形分量:50重量%)に、表2に示す顔料、メチルエチルケトン、イオン交換水及び中和剤を加えて十分に攪拌した後、3本ロールミル〔(株)ノリタケカンパニー製、商品名:NR-84A〕を用いて20回混練した。
【0094】
得られたペーストをイオン交換水250 重量部に投入し、十分に攪拌した後、エパポレーターを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、固形分量が20重量%のインク用色材を得た。得られたインク用色材の平均粒径の測定結果を表2に示す。
【0095】
なお、製造例5で得られた色材は、含有されているポリマーのアクリル酸が100 モル%中和されており、水溶性を呈するため、水溶性ポリマーにより分散された顔料の水分散体である。
【0096】
製造例6〜13で得られた色材は、含有されているポリマーのメタクリル酸、アクリル酸およびジメチルアミノエチルメタクリレートが100 モル%中和されており、水不溶性を呈するため、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体である。
【0097】
製造例14(疎水性染料を含有するインク用色材の調製)
製造例2で得られたポリマー溶液28重量部(ポリマー固形分量:50重量%)に、表2に示す疎水性染料を加え、疎水性染料を完全に溶解させた後、表2に示す中和剤を加えてポリマーの塩生成基を中和し、更にイオン交換水200 重量部を加えて攪拌した後、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイダイザー社製)を用いて、30分間分散させた。
【0098】
得られた分散体を、エパポレーターを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、固形分量が20重量%のインク用色材を得た。得られたインク用色材の平均粒径の測定結果を表2に示す。
【0099】
製造例14で得られた色材は、含有されているポリマーのメタクリル酸が100 モル%中和されており、水不溶性を呈するため、疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体である。
【0100】
なお、表2に記載の各名称は、以下のことを意味する。
CB-1: カーボンブラック〔デグサ社製、商品名:Color Black FW18〕
CB-2: カーボンブラック〔デグサ社製、商品名:NIPex-170IQ 〕
CB-3: カーボンブラック〔キャボット社製、商品名:MONARCH880〕
CB-4: カーボンブラック〔デグサ社製、商品名:Printex95 〕
M-1:マゼンタ顔料〔チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:IRGAPHOR Mag enta DMQ〕
Y-1:イエロー顔料〔山陽色素(株)製、品番:7410〕
C-1:シアン顔料〔大日本インキ工業(株)製、商品名:Fastogen Blue TGR-SD〕
M-2:マゼンタ染料〔オリエント化学(株)製、商品名:オイルピンク312 〕
【0101】
【表2】
【0102】
実施例1
下記組成を有するブラックインク及びカラーインクを組合せてインクセットを調製した。なお、各インクは、各成分を混合した後、マイクロフィルター(孔径:5μm)を用いて加圧濾過することにより調製した。尚、実施例1は参考例である。
【0103】
〔組成〕
▲1▼ ブラックインク (重量部)
製造例5で得られた水溶性ポリマーによる顔料分散体
(固形分量:20重量%) 30
グリセリン 5
エチレングリコール 5
アセチレングリコール−エチレンオキシド付加物(界面活性剤)
〔川研ファインケミカル(株)製、商品名:アセチレノールEH〕 0.5
水 59.5
【0104】
▲2▼ カラーインク(マゼンタ) (重量部)
製造例10で得られた顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子
の水分散体(固形分量:20重量%) 20
グリセリン 5
ジエチレングリコール 5
アセチレングリコール−エチレンオキシド付加物(界面活性剤)
〔川研ファインケミカル(株)製、商品名:アセチレノールEH〕 3
水 67
【0105】
実施例2〜5及び比較例1
実施例1において、ブラックインク及びカラーインクに含有される色材を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、インクセットを作製した。
【0106】
次に、実施例1〜5及び比較例1で得られたインクセットの物性を以下の方法に従って調べた。その結果を表3に示す。
【0107】
<評価方法>
(1)インクの吐出性
市販のバブルジェットプリンター〔キャノン(株)製、型番:BJC-430J〕を用いて、PPC 用再生紙〔日本加工製紙(株)製〕に、罫線を印刷したときのヨレの度合いを目視で観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0108】
(評価基準)
◎:ヨレなし
○:殆どヨレなし
△:少しヨレあり
×:ヨレ大
【0109】
(2)インクの耐水性
前記(1)に記載のバブルジェットプリンターを用い、PPC 用再生紙にベタ印字し、25℃で1時間乾燥させた後、この印字物を静水中に垂直に10秒間浸漬し、そのまま垂直に引き上げた。25℃にて自然乾燥させた後、印字部分において、初期の印字濃度に対する浸漬後の印字濃度の残存率を式:
〔残存率〕=〔浸漬後の印字濃度〕÷〔初期の印字濃度〕×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて耐水性を評価した。
【0110】
(評価基準)
◎:残存率95%以上
○:残存率90%以上95%未満
△:残存率70%以上90%未満
×:残存率70%未満
【0111】
(3)インクの耐擦過性
前記(1)に記載のバブルジェットプリンターを用い、PPC 用再生紙にベタ印字し、25℃で1日間乾燥させた後、指で強く印字面を擦った。その印字のとれ具合を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0112】
(評価基準)
◎:ほとんど印字はとれず、周りに色がつかない
○:少し印字が擦りとられ、周りに若干色がつく
×:かなり印字が擦りとられ、周りがひどく黒くなり、指も相当汚れる
【0113】
(4)ブラックインクの耐マーカー性
前記(1)に記載のバブルジェットプリンターを用い、PPC 用再生紙にブラックインクでテキスト印字し、6時間経過後、市販の水性蛍光ペンでなぞった場合の印字サンプルの汚れ度合いを目視により観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0114】
(評価基準)
◎:蛍光ペンでなぞっても尾引き等汚れがない
○:蛍光ペンでなぞると尾引きするが、実用上問題がないレベル
△:蛍光ペンでなぞると尾引きが幾分発生
×:蛍光ペンでなぞると尾引きが発生し、汚れがひどい
【0115】
(5)耐ブリード性
前記(1)に記載のバブルジェットプリンターを用い、PPC 用再生紙に各々のインクが隣接するように印字し、得られたベタ印字の境界部分を目視にて観察し、耐ブリード性を以下の評価基準に基づいて評価した。
【0116】
(評価基準)
◎:全ての境界部でブリーディングが認められない
○:僅かにブリーディングが見られるが、あまり気にはならない
×:殆ど全ての境界部でのブリーディングがひどい
【0117】
【表3】
【0118】
以上の結果から、各実施例で得られたインクセッットは、いずれも吐出性及び耐ブリード性に優れ、かつ色材の種類によっては耐水性、耐擦過性及び耐マーカー性に優れていることがわかる。
【0119】
【発明の効果】
本発明のインクセットは、耐ブリード性に優れ、そのインクの種類に応じてプリンターのヘッドを変更しなくても、優れた吐出性を示すとともに、耐水性、耐擦過性及び耐マーカー性にも優れるので、インクジェット記録に好適に使用することができる。
Claims (3)
- 水不溶性のブラックインク用色材を含むブラックインクと、水不溶性のカラーインク用色材を含むカラーインクとからなり、前記ブラックインク用色材が、水不溶性ポリマーに黒色顔料又は黒色疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体からなり、前記カラーインク用色材が、水不溶性ポリマーに着色顔料又は着色疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体からなり、該水不溶性ポリマーが、塩生成基含有モノマー及び疎水性モノマーを含有するモノマー組成物を共重合させてなる水不溶性ビニルポリマーであり、ブラックインク用色材における黒色顔料又は黒色疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の平均粒径がカラーインクに含まれている1種類以上のカラーインク用色材における着色顔料又は着色疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の平均粒径よりも10nm以上大きいインクセット。
- 水不溶性ポリマーが、塩生成基含有モノマー、疎水性モノマー及びマクロマーを含有するモノマー組成物を共重合させてなる水不溶性ビニルポリマーである請求項1記載のインクセット。
- カラーインク用色材がイエローインク用色材であり、ブラックインク用色材における黒色顔料又は黒色疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の平均粒径がイエローインク用色材における着色顔料又は着色疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の平均粒径よりも20nm以上大きい請求項1記載のインクセット。
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