JP2012188644A - インクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】顆粒状カーボンブラックを使用したインクジェット記録用インクの製造方法であって、インクジェット記録用インク中の粗大粒子数を大幅に低減することが可能で、該インクの吐出安定性を顕著に向上させることのできるインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法を提供すること。
【解決手段】造粒された顆粒状カーボンブラックを、アニオン性基を有する樹脂、塩基性化合物とともに水性媒体中に分散するインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法であって、前記造粒試料中へのトリエチレングリコールの浸透速度に係わる特性測定を行って、造粒状態が好適な顆粒状カーボンブラックを選定し、これを使用するインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、造粒されたカーボンブラックを用いたインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法に関する。
水性インクは油性のような火災の危険性や変異原性などの毒性が皆無か、より低減できるという優れた特徴を有していることから、産業用以外のインクジェット記録用インクとしては、主溶剤として水を用いた水性インクがインクジェット記録の主流となっている。
また従来、インクジェット記録用水性インクとしては、溶解安定性が高く、ノズル目詰まりが少なく良好な発色性を有し高画質の印刷を可能とすることから、着色剤として染料が用いられてきた。しかし染料は、画像の耐水性、耐光性に劣るという問題があった。さらに昨今優れた耐水性、耐光性、長期における画質安定性等を有した高性能がオフィス用、家庭用にも求められるようになり、各用途において、染料から顔料への着色剤の転換が活発に図られている。顔料インクは優れた耐水性、耐光性を期待できるが、一方、顔料の粗大粒子の残存、凝集の発生から、沈降に伴うノズル目詰まりが発生しやすい。このような粗大粒子はインクジェット記録用水性インクの製造工程において、遠心分離やフィルター等を用いた工程で除去することは可能であるが、それら工程への過度の依存は製造効率やインクの収率を著しく低下させる原因となる。そこで、高分子系の分散剤を用いて顔料を水性媒体中に分散させる方法が種々検討され、例えば、顔料及び高分子分散剤、湿潤剤と、塩基性化合物を含有する固形分比の高い混合物の混練を行う混練工程を導入することが行われている(特許文献1)。該工程においては、顔料の解砕による微粒子化と、微粒子化された顔料表面の樹脂被覆による凝集防止を行って、分散安定性の向上及び粗大粒子数の低減が図られている。
現在インクジェット記録法は従来の版を用いた印刷法による印刷分野を徐々に置き換えつつあり、インクジェット記録による連続印刷性、高速印刷性の向上がますます重要になっている。そのような中でインク中に存在する粗大粒子は、インク流路の閉塞等を引き起こす原因となるため、分散安定性の向上と共に、吐出安定性を向上させるための粗大粒子数の低減が極めて重要となってきている。特にテキスト印刷に用いられるブラック色インクは、カラーインクと比べて使用される量が格段に多く、インク流路閉塞等の問題は製品の致命的な欠陥になる。ブラック色インクの色材には主にカーボンブラックが用いられており、一般的に取り扱いの平易さや、輸送コスト削減の観点から顆粒化された状態で使用されることが多い。しかし、これら顆粒状カーボンブラックを用いて、インクジェット記録用水性インク、あるいは該水性インクを作製するためのインクジェット記録用水性顔料分散液を作製したときの分散特性と、顆粒の形成状態との関係を検討した例は多くない。特に、どのようなカーボンブラックの顆粒状態が、粗大粒子数の低減に効果があるのかが不明確であった。
顆粒状態のカーボンブラックに関しては、例えば造粒工程がカーボンブラックの分散性に与える影響が検討されており、粉化率を用いて造粒後のカーボンブラックが評価されている(特許文献2)。粉化率は、造粒物の壊れやすさを表す指標であり、粉化率の高い造粒カーボンを使用することで、樹脂、塗料、溶媒等への分散性を向上させることができる。しかしそのようなカーボンブラックを用いた具体的なインクの製造については言及されておらず、粗大粒子の低減に与える効果については具体的な開示がなされていない。一方、特許文献3は、インクジェット記録用水性顔料分散液に関し、カーボンブラックとスチレン−アクリル系共重合体と塩基性物質を含有する水性顔料分散液が記載され、インク吐出安定性の向上を解決課題とするものである。しかし使用されるカーボンブラックは粒径、比表面積、DBP吸油量で規定されているのみであり、顆粒状態の物性については全く言及されていない。
特開2004−083893 特開2004−182803 特開2009−144060
本発明が解決しようとする課題は、顆粒状カーボンブラックを使用したインクジェット記録用水性インクあるいは、該水性インクを製造するためのインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法であって、インクジェット記録用水性インクや、インクジェット記録用水性顔料分散液中の粗大粒子数を大幅に低減することができ、生産効率、製造収率を顕著に向上させることが可能なインクジェット記録用水性インク、及びインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法を提供することである。
本発明においては、造粒後で顆粒状態のカーボンブラックの諸特性に着目し、また該カーボンブラックを用いた水性顔料分散液やインクジェット記録用水性インクの分散性を検討した結果、顆粒状態のカーボンブラックと水性顔料分散液やインクジェット記録用インクに用いる湿潤剤との濡れ性が、水性顔料分散液やインクジェット記録液インク中に残存する粗大粒子数に影響を与えることを見出し本発明に到達した。すなわち本発明は、造粒されたカーボンブラックを、アニオン性基を有する樹脂、塩基性化合物とともに水性媒体中に分散するインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法であって、前記造粒試料が充填された容器の底部から高沸点の水溶性有機溶剤であるトリエチレングリコールを上方に向かって浸透させ、測定開始t、t秒後のトリエチレングリコールの浸透重量mとmから式(1)
Va=((m−(m)/(t−t) (1)
で求められる顆粒状カーボンブラックの浸透速度係数Vaと、前記顆粒状カーボンブラックを造粒化前のカーボンブラックに置き換えて同様に測定される浸透速度係数Vbとの比率R=(Va/Vb)が1.0以上であることを特徴とするインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法を提供する。
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法においては、製造に使用する顆粒状態のカーボンブラックに対して、該顆粒状態が湿潤剤に対する塗れ性を損なうことなく形成され、トリエチレングリコールの浸透速度が極めて速い。その結果、分散工程に使用している湿潤剤等の高沸点の水溶性有機溶剤が、製造時における顆粒状態のカーボンブラックに速やかに浸透し、かつ解砕に伴って新たに現れる該カーボンブラックの表面を速やかに濡らすため、カーボン粒子の解砕がより強力に進行するとともに、カーボンブラックの表面がより効率的に分散樹脂によって被覆され、粗大粒子が低減され、その結果水性媒体中のカーボンブラックの分散安定性が向上する。さらにこのため該水性顔料分散液から作製したインクジェット記録用インクの吐出性が向上する。
造粒後のカーボンブラックの粗大粒子数と浸透速度係数との関係を、粗大粒子数と浸透速度係数それぞれの値を造粒前の値を基準としてその比率で表したときのグラフである。
以下に本発明の製造方法に用いる各種原材料について詳細な説明を行い、さらにそれら原材料を用いた製造方法について詳細な説明を行う。
本発明で使用するカーボンブラックは造粒され顆粒状態となっており、以下の特性測定方法で測定された特定の測定値を有するものを使用する。
すなわち、特性測定方法として、前記顆粒状カーボンブラックが充填された容器の底部から高沸点の水溶性有機溶剤を上方に向かって浸透させ、測定開始t、t秒後のトリエチレングリコールの浸透重量mとmから、
V=((m−(m)/(t−t
で求められる造粒化カーボンブラックの浸透速度係数Vaと、造粒化前のカーボンブラックの浸透速度係数Vbとの比率R=(Va/Vb)を用い、前記比率Rが1.0以上である顆粒状カーボンブラックを使用する。
浸透速度係数の比が高いことは、顆粒状態にすることで、溶剤との濡れ性が増し、カーボンの凝集がほぐれ易くなることを示す。その結果、比率Rが1.0以上の顆粒状カーボンブラックにおいては、インクジェット記録用水性顔料分散液製造時の分散工程で、解砕時に新たに現れる該カーボンブラックの表面が分散樹脂によって効率的に被覆され、顆粒状とする前のカーボンブラックを使用した場合よりも粗大粒子が低減されるとともに分散安定性が向上する。浸透速度係数の比、(Va/Vb)は1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましく、2.3以上であることがさらにより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましい。
カーボンブラックの造粒化は、例えば造粒前のカーボンブラックに一定の割合の水又は造粒助剤入りの水溶液を添加し、連続的に撹拌することで得られるが、顆粒状態となる前のカーボンブラックとしては、従来インクジェット記録用インクに使用されるものを特に限定なく使用することができ、アセチレンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック等の通常のカーボンブラックを用いて良い。これらの中では、チャネルブラック及びファーネスブラックが好ましく、特に湿式または乾式造粒法で造粒されたファーネスブラックが好ましく、湿式法の造粒法で造粒されたものであるとなお好ましい。そしてこれらを造粒し顆粒状のカーボンブラックとしてから、インクジェット記録用インクの製造に供することができる。
通常カーボンブラックの物性を表す特性値でインクジェット記録用水性インクに好適に使用できるカーボンブラックを規定すれば以下のようになり、以下に示すような諸特性の特性値範囲を考慮して、使用するカーボンブラックの予備的な選択をおこなうことが出来る。
造粒の有無に関わらず、カーボンブラックの灰分は、通常3.0%以下、好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。またDBP吸油量は、通常40ml/100g以上、好ましくは60〜200ml/100g、さらに好ましくは80〜150ml/100gである。灰分及びDBP吸油量が上記の範囲内のカーボンブラックを使用することにより、水性分散液中の粗粒数が抑制される傾向があり好ましい。
造粒の有無に関わらず、カーボンブラックのBET比表面積は、通常30m/g以上、好ましくは50〜700m/g、さらに好ましくは100〜600m/gである。また一次粒子径は、通常60nm以下、好ましくは40nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。BET比表面積及び一次粒子径が上記の範囲内のカーボンブラックを使用すると、水性分散液の保存安定性を良好に維持できる傾向がある。なお、一次粒子径の下限は通常5nmであり、該下限を下回る一次粒子径を有するカーボンブラックの場合は分散が困難となる傾向がある。
造粒の有無に関わらず、カーボンブラックの揮発分は、通常8重量%以下、好ましくは4重量%以下である。また、カーボンブラックのpHは、通常1〜14、好ましくは3〜11、さらに好ましくは6〜9である。揮発分及びpHが上記の範囲内のカーボンブラックを使用すると、水性分散液の保存安定性を良好に維持できる傾向がある。
なお、上記の物性値は灰分はJIS K612218−2の方法で測定した値、DBP吸油量はJIS K6217−4の方法で測定した値、BET比表面積はJIS K6217−2の方法で測定した値を指す。さらに、一次粒子径は電子顕微鏡写真から画像処理により実測した測定値の算術平均径、揮発分、pHは旧JIS規格 JIS K6221に準拠した方法で測定した値を指す。
本発明においては上記の特性を有するインクジェット記録用水性インクに使用可能なカーボンブラックに対し、一定の割合の水又は造粒助剤入りの水溶液を添加し、連続的に撹拌することで造粒を行ったものを使用する。
これらカーボンブラックからインクジェット記録用水性顔料分散液を作製したときの各種特性の良否は、少なくとも上記カーボンブラックの特性値によって影響を受け、粗大粒子数もその例外ではない。しかしこれらカーボンブラックから造粒された顆粒状カーボンブラックを使用して水性顔料分散液を作製する場合、本願発明に規定した製造方法を使用することにより分散性を低下させることがなく、また粗大粒子数低減の点で、造粒前のカーボンブラックを使用したとき以上の特性を有する水性顔料分散液を作製することができる。
本発明で測定対象となるカーボンブラックは造粒されて顆粒状態となっている。このため、粉体状態のカーボンブラックが本来有する上記特性に加えて、顆粒の形状、あるいは造粒工程における水の添加、撹拌などの造粒操作に起因する特に粒子表面に係わる化学的特徴を新たに有している。
以下に造粒後の顆粒状カーボンブラックの特性について記載する。
顆粒状カーボンブラックの嵩比重は0.30〜0.50g/cm、好ましくは0.35〜0.45g/cmである。また粒の大きさは目開き2.73mmのふるいを通過するもの、好ましくは目開き1.02mmのふるいを通過するものがよい。なお、粒の大きさは通常目開き0.15mmを通過しないものが下限である。なお顆粒状カーボンブラックの嵩比重はJISK6219−2の方法で測定した値である。
顆粒状カーボンブラックの加熱減水分は通常5.0%以下、好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。これは、JISK6218−1に従い求められる。吸着水分量が過度に多いカーボンブラックは、流動性やマスストレングスを低下させ、輸送系閉塞の原因となる。
本発明で使用するカーボンブラックの浸透速度に係わる特性測定方法は、それを用いることにより得られる特性が、上記の顆粒状カーボンブラックが示す新たな特徴の一つであり、インクジェット記録用インクの製造工程における粗大粒子数の減少率や、カーボンブラック分散後の水性顔料分散液中の粗大粒子数と極めて良好に相関し、しかもそれらを一つの特性数値の値で簡潔に表現することのできる測定方法である。
本発明の製造方法で使用するアニオン性基を有する樹脂の構成としては、ホモポリマー、コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーなど、種々の構造のものが使用できる。
本発明で使用するアニオン性基を有する樹脂は、水性媒体中で安定した顔料表面の被覆を形成することが好ましく、かつ塩基性化合物で酸基が中和されて安定した水分散性を有することが好ましい。このために酸価50〜300mgKOH/gのものを使用することが好ましい。酸価が50mgKOH/gより小さいと、親水性が小さくなり、顔料の分散安定性が低下する傾向がある。一方、酸価が300mgKOH/gより大きいと、顔料の凝集が発生し易くなり、また本分散液を用いたインク組成物で形成された画像の画像耐水性が低下する傾向がある。樹脂の酸価の値としては、60〜250mgKOH/gが好ましく、70〜200mgKOH/gの範囲であることがさらに好ましい。
本発明で使用するアニオン性基を有する樹脂の重量平均分子量は7500から40000の範囲内にあることが好ましく、7500から30000の範囲内にあることがより好ましい。中でも、10000〜25000の範囲内にあることが特に好ましい。重量平均分子量が7500未満であると、インクジェット記録用水性顔料分散液の保存安定性が悪くなる傾向にあり、顔料の凝集などによる沈降が発生する場合がある。一方、アニオン性基を有する樹脂の重量平均分子量が40000を超えると、これを用いたインクジェット記録用水性顔料分散液から調製したインクジェット記録用水性インクの粘度が高くなって、インクの吐出安定性が不安定になる傾向にある。
具体的なアニオン性基を有する樹脂の構成としては、スチレン−アクリルエステル−アクリル酸系樹脂、スチレン−アクリル酸系樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸系樹脂、ビニルナフタレン−アクリルエステル−アクリル酸系樹脂、ビニルナフタレン−アクリル酸系樹脂、アクリルエステル−アクリル酸系樹脂、アクリル酸系樹脂、アルケニルエーテル系樹脂、ピロリドン系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、アミド系樹脂、エステル系樹脂、カーボネート系樹脂、エーテル系樹脂、エポキシ系樹脂、アルコール系樹脂などが挙げられ、これら樹脂の中から適宜選択して使用することができる。
これら樹脂の中では二重結合を有する不飽和脂肪族カルボン酸によるアニオン性基を有し、スチレン系モノマーを疎水性部分の構成成分として含有するスチレンアクリル酸系樹脂が好ましい。さらに全モノマー成分に対して60質量%以上のスチレン系モノマーと、ラジカル重合性の二重結合を有する不飽和脂肪族カルボン酸を含有するモノマーを共重合させたスチレンアクリル酸系樹脂であり、且つ既述のように該スチレンアクリル酸系樹脂の酸価が50〜300mgKOH/g、重量平均分子量が7500〜40000の範囲内の樹脂であることが好ましい。
スチレン系モノマーとしては公知の化合物を用いることができる。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2、4−ジメチルスチレン、α−エチルスチレン、α−ブチルスチレン、α−ヘキシルスチレンの如きアルキルスチレン、4−クロロスチレン、3−クロロスチレン、3−ブロモスチレンの如きハロゲン化スチレン、更に3−ニトロスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルトルエン等がある。
スチレンアクリル酸系樹脂を構成する全構成モノマー単位中の、スチレン系モノマーの、の使用比率は、60〜90質量%であることがより好ましく、中でも70〜90質量%であることが特に好ましい。スチレン系モノマーの使用比率が60質量%未満であると、カーボンブラックへのスチレンアクリル酸系樹脂の親和性が不充分となり、インクジェット記録用水性顔料分散液の分散安定性が低下する傾向がある。また、スチレン系モノマー単位の総和が、全モノマー単位の総和の90質量%以下であると、分散に寄与するアニオン性基を有するモノマー単位の含有量を確保できるため、水系での分散安定性、長期保存安定性が悪化する危険性を防ぐことができる。スチレン系モノマーの量が上記範囲であると、スチレンアクリル酸系樹脂の水性媒体に対する分散性を良好にすることができ、インクジェット記録用水性顔料分散液における顔料の分散性や分散安定性を向上させることができる。
スチレン系モノマーと共重合させるラジカル重合性の二重結合を有する不飽和脂肪族カルボン酸としては、公知の化合物を使用することができる。例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、α−メチルクロトン酸、α−エチルクロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタアクリル酸を使用するのが好ましく、両者を併用するのが特に好ましい。アクリル酸とメタクリル酸を併用することによって、樹脂合成時の共重合性が向上して、樹脂の均一性が良くなる。この結果、保存安定性が良好なインクジェット記録用水性顔料分散液を得られる傾向がある。
スチレンアクリル酸系樹脂には、スチレン系モノマー及びラジカル重合性の二重結合を有する不飽和脂肪族カルボン酸以外の公知のモノマーを使用できる。そのようなモノマーの例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、1、3−ジメチルブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、エチルメタアクリレート、n−ブチルメタアクリレート、2−メチルブチルメタアクリレート、ペンチルメタアクリレート、ヘプチルメタアクリレート、ノニルメタアクリレート等のアクリル酸エステル類及びメタアクリル酸エステル類;3−エトキシプロピルアクリレート、3−エトキシブチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、エチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレートのようなアクリル酸エステル誘導体及びメタクリル酸エステル誘導体;フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルエチルアクリレート、フェニルエチルメタアクリレートのようなアクリル酸アリールエステル類及びアクリル酸アラルキルエステル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ビスフェノールAのような多価アルコールのモノアクリル酸エステル類あるいはモノメタアクリル酸エステル類;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルのようなマレイン酸ジアルキルエステル、酢酸ビニル等を挙げることができる。これらのモノマーはその1種又は2種以上をモノマー成分として添加することができる。
スチレンアクリル酸系樹脂の製造方法としては、通常の重合方法を採ることが可能で、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等、重合触媒の存在下に重合反応を行う方法が挙げられる。重合触媒としては、例えば、2、2´−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、2、2´−アゾビスイソブチロニトリル、1、1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられ、その使用量はビニルモノマー成分の0.1〜10.0質量%が好ましい。
本発明で使用するスチレンアクリル酸系樹脂等のアニオン性基を有する樹脂のガラス転移点は90℃以上であることが好ましい。100℃以上で150℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移点が90℃以上であると、インク組成物の熱安定性が向上する。このため前記水性顔料分散液から作製されたインクジェット記録用水性インクをサーマルジェット方式のインクジェット記録用に用いても、繰り返し加熱によって吐出不良を起こすような特性変化を生じず、好ましい。なお本発明で使用するスチレンアクリル酸系樹脂等のアニオン性基を有する樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計で測定される値である。
本発明で使用するスチレンアクリル酸系樹脂等のアニオン性基を有する樹脂は、既述のようにランダム共重合体でもよいが、グラフト共重合体であっても良い。例えばスチレンアクリル酸系樹脂の場合、グラフト共重合体としてはポリスチレンあるいはスチレンと共重合可能な非イオン性モノマーとスチレンとの共重合体が幹又は枝となり、アクリル酸、メタクリル酸とスチレンを含む他のモノマーとの共重合体を枝又は幹とするグラフト共重合体をその一例として示すことができる。スチレンアクリル酸系樹脂は、このグラフト共重合体とランダム共重合体の混合物であってもよい。
本発明のインクジェット記録用顔料分散液においては、カーボンブラック100質量部に対する、スチレンアクリル酸系樹脂等のアニオン性基を有する樹脂の含有量は10から50質量部であることが好ましく、10から40質量部であることがさらに好ましい。スチレンアクリル酸系樹脂等のアニオン性基を有する樹脂の含有量が10質量部未満であると、インクジェット記録用顔料分散液の分散安定性が低下するとともに、本分散液を用いたインク組成物の画像耐摩擦性が低下する傾向にあり、50質量部を超えた場合は、該インク組成物の粘度が高くなりすぎる傾向が認められる。
本発明において用いられる塩基性化合物としては、アニオン性基を有する樹脂中のアニオン性基を中和するためのものであるが、公知慣用のものがいずれも使用でき、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアの様な無機塩基性物質や、トリエチルアミン、アルカノールアミンの様な有機塩基性物質を用いることができる。中でも、熱安定性に優れ、無臭である水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物の使用が好ましい。特に水酸化カリウムが好ましい。また、塩基性化合物の添加量は、スチレンアクリル酸系樹脂等のアニオン性基を有する樹脂が有する全カルボキシル基等のアニオン性基を中和するために必要な量の0.8〜1.2倍に相当する量であることが好ましい。
塩基性化合物は水溶液、又は有機溶剤溶液として添加することが好ましい。この場合、塩基性化合物の水溶液又は有機溶剤溶液の濃度は、20質量%〜50質量%であることが好ましい。また、塩基性化合物を溶解する有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、等のアルコール系溶剤を用いることが好ましい。中でも、本発明では、水溶液を用いることが好ましい。
本発明においてはカーボンブラックの分散媒体であり、また分散工程において使用される水性媒体中に湿潤剤としての水溶性有機溶剤を用いても良い。また、後述するように混練工程を行う時、被混練物である顔料分散体中に湿潤剤を含有させることもできる。用いられる湿潤剤としては公知慣用のものが使用でき、例えばグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、1、2、6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類、1、3−ジメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。
本発明に用いることができる上記湿潤剤は、スチレンアクリル酸系樹脂等のアニオン性基を有する樹脂の溶解力が強くなく、該樹脂濃度を25質量%として前記湿潤剤と前記スチレンアクリル酸系樹脂を撹拌したときに、均一溶液とならないものが好ましい。さらにインクジェット記録用水性インク組成物中に前記湿潤剤が5質量%以上残存した場合、該水性インク組成物の特性を低下させないものであることが好ましい。湿潤剤の添加量は、カーボンブラック100質量部に対して、60〜200質量部であることが好ましい。
以上に記載された原材料を使用して水性顔料分散液を製造する方法を、以下に詳細に説明する。
本発明の製造方法においては、既述した顆粒状カーボンブラックを、アニオン性基を有する樹脂、及び塩基性化合物とともに水性媒体中に分散する。水性顔料分散液の製造方法については公知の分散方法が広く適用できるが、水性媒体中への分散に際しては、造粒化されたカーボンブラック、アニオン性基を有する樹脂、塩基性化合物、湿潤剤を含有する固形分比率の高い顔料分散体を作製し、該顔料分散体を水性媒体中に分散することが好ましい。さらに好ましくは、造粒化されたカーボンブラック、アニオン性基を有する樹脂、塩基性化合物、湿潤剤を含有する混合物を混練して、固形着色混練物である顔料分散体を作製する混練工程を有することが好ましく、前記固形着色混練物である顔料分散体を水性媒体中に混合、撹拌する混合工程を経て分散をおこなうことが好ましい。混練する際には、上記混合物を高剪断力下で混練することが好ましい。高剪断力下で混練することにより、顆粒カーボンブラックが粉砕され、更にその表面にスチレンアクリル酸系樹脂等のアニオン性基を有する樹脂の吸着が進行し、均一な混練物としての顔料分散体が得られる。
水性媒体中に分散される前記顔料分散体の固形分濃度は40〜80質量%であることが好ましい。この固形分濃度は、前記混練工程において混練する際の、インクジェットインク用着色混練物である顔料分散体中の固形分濃度であるが、50〜80質量%であることがさらに好ましい。固形分濃度をこのような範囲にすることで、混練物に十分な剪断力を与えることができ、顆粒状カーボンブラックの粉砕が不十分となることがなく、均一な顔料分散体である混練物を得ることができる。また混練時の温度は混練物に十分な剪断力が加わるように、前記スチレンアクリル酸系樹脂等のアニオン性基を有する樹脂の温度特性を考慮して適宜調整を行うことができるが、前記スチレンアクリル酸系樹脂等のアニオン性基を有する樹脂のガラス転移点より低く、かつ該ガラス転移点との温度差が50℃より小さい範囲で行うことが好ましい。このような温度範囲で混練を行うことにより、被混練物温度上昇が適度に抑えられ、混練温度の上昇に伴う混練物の粘度低下によって剪断力が不足することがない。また温度上昇が抑えられるため固形分濃度が上昇しにくく、被混練物中に液体成分を十分に残存させることができるため混練終了後の顔料分散体である混練物の分散が困難となることがない。
インクジェットインク用着色混練物を製造する際には、二本ロール等の撹拌槽を有しない開放型の混練機を用いるよりは、撹拌槽を有する密閉型の混練機を用いることが好ましい。このような混練機を使用すると、顔料分散体である混練物を水性媒体中に混合、撹拌する混合工程を経て、インクジェット記録用水性顔料分散液を作製することがより容易であり、顔料分散体を直接希釈して、インクジェット記録用水性顔料分散液を製造することが可能である。撹拌槽を有する混練機の具体例としてはプラネタリーミキサーが好ましい。プラネタリーミキサーは二本ロール等と比較すると、広い範囲の粘度領域で混練処理が可能であり、更に水性媒体の添加及び減圧溜去も可能であるため、混練時の粘度及び負荷剪断力の調整が容易である。
インクジェットインク用着色混練物である顔料分散体を混合、撹拌することにより、これを分散、希釈する際に使用する水性媒体は、インクジェット記録用水性顔料分散液の乾燥防止、および分散処理実施時の粘度調整の必要性から湿潤剤としての水溶性有機溶剤を含んでいても良く、その量はインクジェットインク用着色混練物中の湿潤剤と合わせて、インクジェット記録用水性顔料分散液中に3〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。この下限未満では、乾燥防止効果が不十分となる傾向にあり、上記上限を超えると分散液の分散安定性が低下する傾向にある。混練物の製造時に使用される湿潤剤と、これを希釈する際の水性媒体に使用される湿潤剤は、同一でも良く、異なっていても良い。
混練後のインクジェットインク用着色混練物である顔料分散体を、水性媒体中に混合、撹拌する工程を経て希釈、分散して得たインクジェット記録用水性顔料分散液は、更に分散機により分散処理することができる。分散処理を行うことによって、インクジェット記録用水性顔料分散液中の粗大分散粒子が更に粉砕され、インクジェット用インクを作製し使用したときのインク流路の閉塞を抑えることができるからである。
分散処理を行う際の分散機としては、公知慣用の機器が使用でき、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、ナノミル、SCミル、ナノマイザー等を挙げることができ、これらのうちの1つを単独で用いてもよく、2種類以上装置を組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明の製造方法においては、顆粒状カーボンブラックの浸透速度係数の比率Rが1.0以上となるものを使用しているため、混練工程における粗大粒子の低減が著しい。このため上記分散工程を用いずに、着色混練物である顔料分散体を水性媒体中に混合、撹拌するだけで、粗大粒子が十分に低減された水性顔料分散液を作製することができ、該水性顔料分散液から、粗大粒子の少ないインクジェット記録用水性インクを製造することができる。
上述のように作製されたインクジェット記録用水性顔料分散液からインクジェット記録用水性インクを製造するためには、上記水性顔料分散液を、さらに水性媒体にて希釈して、必要な添加剤成分を添加し、成分を調整することにより行うことができる。インクジェット記録用水性インクとしては最終的には顔料濃度は2〜10質量%程度が好ましく、この範囲の顔料濃度に調製される。
水性顔料分散液を希釈する水性媒体は水のみでもよいが、インクジェット記録用水性インク中で、乾燥防止、粘度調整、濃度調整等の諸機能を発揮することができる水溶性有機溶剤を配合することができる。水溶性有機溶剤としては、上述の水性顔料分散液用混練物を分散するために用いたと同様のものを使用することができる。また、記録媒体への浸透性を示す水溶性有機溶剤が配合されていると、顔料インクに浸透性を付与することができ好ましい。
インク化の工程において濾過や遠心分離等の粗大粒子除去工程によって水性顔料分散液中の粗大粒子数を低減することができる。しかしこれら工程前の粗大粒子数の大小は、該工程にかかる負担の大小に直接影響し、生産効率の差となって現れると共に、工程前の粗大粒子数の大小関係がそのまま維持されて最終的なインクジェット記録用水性インクの特性に反映される。
顔料インクであるインクジェット記録用水性インクには、上記水性媒体と水性顔料分散液の他に、例えば公知の添加剤などを配合することができる。配合可能なものとしては、例えばアルカリ剤、p H 調整剤、界面活性剤、防腐剤、キレート剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線硬化性樹脂などを例示することができる。
このようにして製造されたインクジェット記録用水性インクは、適用するインクジェットの方式によっては特に限定されず、連続噴射型( 荷電制御型、スプレー型など) 、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式など)などの種々の方式のインクジェット記録装置に適用できる。特にサーマル方式のインクジェット記録装置に適用した場合に、分散安定性、保存安定性に加え、コゲーションの発生を長期にわたって抑制することができ、極めて安定したインク吐出が可能となる。また粗大粒子が大幅に低減されていることから、上記インクジェットの方式にかかわらず、長期の連続安定吐出を必要とする適用分野において特に大きな効果を発揮する。
本発明において使用する顆粒状カーボンブラックを選定するための特性測定法において、特性値として使用する浸透速度係数の比率Rについて、以下にさらに詳細に説明する。
本発明で使用する顆粒状カーボンブラックの上記特性値の測定においては、体積圧縮率40〜95%に圧縮されたカーボンブラックが充填された円筒容器の底部の穴から、混練時に使用する溶剤を上方に向かって浸透させ、測定開始後t、t秒後の溶剤浸透重量m、mを測定する。浸透重量の自乗の値は、測定開始後その増加速度(m)/Δtが緩やかに上昇し、一定の増加速度で浸透重量が増加し続けた後、徐々に増加速度が低下して一定の浸透重量に到達して浸透が停止する。ここでt1,t2は,トリエチレングリコールの浸透が安定するのを確認した後から,浸透が飽和し始める前までの範囲で任意に決めることができる。すなわち浸透重量の自乗が増加する速度、Δ(m)/Δtが一定である区間でt、tを設定することが好ましい。より具体的には浸透開始から浸透終了までの測定時間の前後10〜20%の時間を除いた測定時間帯の両端にt、tを設定することが好ましい。通常測定時間の前後10%を除いた両端の時間でt、tを設定することが好ましく、15%を除いた両端の時間で設定することがさらに好ましく、20%を除いた両端の時間で設定すると、浸透重量の自乗mの時間的変化が直線的な測定領域で測定することとなるため好ましい。また比較するカーボンブラックが複数ある場合はt1,t2を同一にする必要がある。
得られた測定結果から、式(1) V=((m−(m)/(t−t)を用いて浸透速度係数を算出する。3回測定の平均値を測定値とし、特別な規定がないときは、測定値と平均値との差が20%を超えないことを必要とする。かりに3回測定の測定値と平均値との差が平均値の20%を超えた時は、さらにその差が20%以内となるように3回の測定を繰り返す。測定値の確定後に平均値を求め、造粒前後のカーボンブラックへのトリエチレングリコールの浸透速度係数を算出し、それぞれを「Va」、「Vb」としたとき、「Va/Vb」を浸透速度係数の比率Rとする。
本発明の水性顔料分散液の製造方法において、顆粒状カーボンブラックの特性測定に使用するトリエチレングリコールは、浸透速度係数の比率Rの評価基準を適宜調整することによって、他の高沸点水溶性有機溶剤を用いて測定することができる。このときはトリエチレングリコールを用いた浸透速度係数や比率Rの測定値と、トリエチレングリコール以外の特定の高沸点水溶性有機溶剤を用いた時の同様の測定値とを予め対比して、それらの換算値を決定しておくことが好ましい。特に水性顔料分散液の製造に使用される水溶性有機溶剤の中で、最も量の多いものを顆粒状カーボンブラックの特性測定に使用した場合には、造粒前後の浸透速度係数の比率Rと水性顔料分散液中の粗大粒子数がより良好に相関を示す。このため、造粒前のカーボンブラックに比較して浸透速度係数の低下しないことを示す「比率Rが1.0以上」との評価基準を、そのまま造粒化によって粗大粒子数が増加しないための必要条件として使用することができる。
ここで浸透速度係数の比は、造粒化されたカーボンブラックへの混練溶剤である特定の高沸点水溶性有機溶剤の浸透のしやすさ、つまりカーボンブラックと混練溶剤として好適に使用することができる湿潤剤の濡れやすさを示す指標である。浸透速度係数の大きい顆粒状カーボンブラックは混練溶剤との濡れ性が良好である。通常カーボンブラックの特性が大きく異ならない限り、粉末状態のカーボンブラックへの浸透速度係数は大きく変化しないため、造粒前のカーボンブラックの浸透速度係数は造粒による影響を除いたカーボンブラック粉末自身の溶剤との濡れやすさを示す。したがって粉末状態と顆粒状態のカーボンブラックへの溶剤の浸透速度係数とを比較し、その比を検討することによって、顆粒状カーボンブラックの造粒工程による濡れ性への影響部分、寄与部分のみを定量的に評価することができる。なお、粉体と液体の濡れを表すウォッシュバーンの拡張式、
=t[(c・r)ε(πR)]ρ・σLV・cosθ / 2η
によると、浸透重量(m)の二乗は粉体と溶剤の接触角θの余弦と比例関係にある。つまり浸透重量(m)が大きいほど接触角(θ)は小さくなり、粉体と溶剤の濡れが良好であることを示す。ここで式中の各記号は以下の特性値または数値に対応するものである。m:浸透重量、c:毛管の配向定数、r:毛管の平均径、R:円筒容器の半径、ρ:液体の密度、σLV:液体の表面張力、θ:粉体と液体の接触角、η:液体の粘度。
本発明で使用する顆粒状態のカーボンブラックは、既述のインクジェット記録用水性インクに適した物性を有する粉状のカーボンブラックを用いて、以下の方法で作製することができる。
カーボンブラックの造粒法は、水またはその他の液体を使用して造粒する湿式法と、媒体を一切使用しない乾式法に大別される。本発明で使用されるカーボンブラックの造粒方法は特に限定されることは無いが、現状の造粒プロセスにおいては湿式法が主要な工業的手段とされている。湿式造粒機には種々の形式があり、例えばピン型造粒機は、円筒型の本体と円筒機内を貫通する螺旋状にピンが配されたシャフトにより構成されている。この造粒機に粉末状態のカーボンブラックと、水または造粒助剤入りの水溶液との混合物を連続的に供給し撹拌転動する。この時、カーボンブラックは塑性限界よりも若干低い含水率に相当するスラリー状態となっており、撹拌により顆粒状になる。このような造粒機では、ピンの配置、シャフトの回転数、カーボンブラックと水、または造粒助剤入りの水溶液の供給比などによって、顆粒の硬さ、密度、嵩比重、大きさ、粒度分布等の状態が変化する。
すなわちこのような造粒機では、ピンの配置等の造粒装置の形状的要因、シャフトの回転数、造粒時間等の造粒装置の運転条件の要因、カーボンブラックと水、または造粒助剤入り水溶液の供給比、水、または造粒助剤入り水溶液の液滴の大きさ、それらの被造粒物への添加量、添加方法、添加タイミング等の被造粒物の要因によって、顆粒の硬さ、密度、嵩比重、大きさ、粒度分布等の状態を制御することが可能である。特に被造粒物であるカーボンブラックへの水の添加量、添加方法、添加のタイミングが、造粒後の顆粒状カーボンブラックの浸透速度係数に係わる特性に大きな影響を与えると考えられる。嵩比重の調整はカーボンブラックと添加する水との比率の制御によっておこなうことが出来、また粉体となりやすい良好な粉化率を有する顆粒状カーボンブラックは、添加水を霧状にしてカーボンブラックに噴霧することによって作製されている。
本発明の水性顔料分散液の製造に好適に使用できる。高い浸透速度係数の比率Rを有するカーボンブラックは、例えば以下のようにして作製することができる。
例えば、造粒装置内のピンはシャフト軸にらせん状に配し、ピン間距離をカーボンブラックが装置内で閉塞しない程度に離すことが望ましい。シャフトは、造粒されたカーボンブラックを充分に撹拌しつつ、顆粒を粉化しない速さで回転させることが望ましい。また造粒水の液滴は適度に小さくし、造粒機内でカーボンブラックが適度に巻き上げられている箇所に、適当な供給比率で広範囲に噴霧することによって、造粒水でカーボンブラック表面を均一に濡らすことが望ましい。ただしこの時、液滴径が小さすぎると、液滴の運動量が低下してカーボンブラックに付着せず、所望の粒径までカーボンブラックを造粒できない。一方で、液滴径が大きすぎると、造粒効率が低下し製造コストが増加するだけでなく、カーボンブラック内の空隙率が低下し顆粒の空孔率が著しく低下する。またカーボンブラックと造粒水の供給比率が適正範囲を外れ、造粒水が少ない条件で造粒すると未造粒粉が残りやすくなり、造粒水が多い条件で造粒すると、カーボンブラックがペースト化して装置内部への付着による異常振動が発生することがある。水分の多いペレットは次工程の乾燥工程の負荷変動要因となるため、造粒中のカーボンブラックは水分量ができるだけ少ないことが望ましい。このようにして得られる顆粒状カーボンブラックは,アグロメレートによる圧密化が軽減され空隙率が高くなっており、ほぐれやすい粒状構造を持っている。その結果,溶剤が顆粒間または顆粒内部まで浸透しやすくなり,粗大粒子の残存確率を低くすることができる。このようにして顆粒状カーボンブラックへの浸透速度係数Vを測定しながら工程条件を変化させ、本発明に規定する顆粒状カーボンブラックを製造することができる。
顆粒状態となったカーボンブラックは次工程で回転式乾燥機、気流乾燥機、流動乾燥機、トンネル乾燥機などの外熱乾燥機によって乾燥される。本発明で使用されるカーボンブラックは乾燥方法を特に限定することは無いが、連続生産性,含水率や処理量の変化に対する適応性,顆粒の壊れにくさなどの観点から,主に回転式乾燥機が用いられる。この時、意図的である場合を除き,乾燥時の熱によってカーボンブラックを酸化しないこと、過度の乾燥により顆粒カーボンブラックを粉化しないことが好ましい。
一般的にカーボンブラックを造粒することにより、若干のDBP吸油量、ヨウ素吸着量、pHの低下と、大幅な嵩比重の増大がおこる。嵩比重の増大はカーボンブラック造粒化の主目的であり、取り扱いの平易さや輸送コスト削減を期待して実施される。また湿式造粒法ではカーボンブラックを一度水に濡らした後に乾燥する操作が加わっているため、吸着水分や造粒の際に添加した水の純度の影響を受けやすい。純度の低い水を使用するとカーボンブラックの表面に不純物が残存し灰分の上昇が認められることがある。
上記一般的なカーボンブラックの造粒方法のなかで、本発明で規定する特性測定方法における特性値範囲を満たす顆粒状カーボンンブラックの製造は、上記造粒方法における各種造粒条件、特に水分の添加量、添加方法、及び撹拌方法を主に調整することにより行うことができる。
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の例において「部」及び「%」は特に断りがない限り質量基準である。また以下の実施例で用いたカーボンブラックの物性値の測定方法及び評価方法は次の通りである。
(カーボンブラックへのトリエチレングリコール浸透速度係数測定方法)
KRUSS社製自動表面張力計(Tensiometer K100 MK2)を用いた測定を行うため、1.5gのカーボンブラックを専用の円筒容器(内径12mm×高さ46mm)に充填し、底部に放射状に配置された41個の穴(直径1.3mm)から、トリエチレングリコールを上方に向かって浸透させ、測定開始後t、t秒後の溶剤浸透重量m、mを測定した。なお,本実施例では,tはトリエチレングリコールの浸透が安定した測定開始から400秒後,tはトリエチレングリコールの浸透が飽和する前の測定開始1000秒後とした.測定結果から、式V=((m−(m)/(t−t)を用いて浸透速度係数を算出した。なお、桁数による混乱を避けるため、得られた係数を10倍し、有効数字を小数点1桁までとする。単位は「×10−4/s」である。3回の測定の平均値を測定値とし、特別な規定がないときは、測定値と平均値との差が20%を超えないことを必要とし、これを超えた場合はさらに測定を行って測定値と平均値との差が20%を超えない測定値となるまで3回の測定を繰り返した。同方法で造粒前後のカーボンブラックへのトリエチレングリコール浸透速度係数を算出し、それぞれを「Va」、「Vb」と呼称し、「Va/Vb」を浸透速度係数の比率Rとする。なお、本実施例においてカーボンブラックを円筒容器に充填する際は、容器に投入したカーボンブラックの高さが、容器底面から25mmになるまで容器付属の専用の蓋(ねじ込み式)で圧縮した。
なお造粒前のカーボンブラックの入手が困難なときは、顆粒状カーボンブラックを解砕して粉末状カーボンブラックとしてこれを造粒前のカーボンブラックとして測定を進めることができる。以下に顆粒状のカーボンブラックを解砕して、造粒前相当の測定用カーボンブラックを作製するための方法を記載する。
(顆粒状カーボンブラックの解砕方法)
乳鉢に所定量の顆粒カーボンブラックを入れ、乳棒で10分以上すり潰す。乳鉢と乳棒の材質は特に限定することはなく、磁製、ガラス製、ステンレス、メノウまたはアランダム製などを用いることができる。また顆粒カーボンブラックを乳鉢ですり潰す際、乳棒を乳鉢壁面に強く擦り付けると、粉砕された顆粒カーボンブラックが乳鉢表面で再び凝集することがあるので、上方より押し付けるように粉砕することが望ましい。粉砕されたカーボンブラックを目開き0.15mmのふるいで分離し、残存する顆粒を取り除いて造粒前のカーボンブラックの測定用試料とした。
(嵩比重測定方法)
JISK6219−2の方法に準拠して、顆粒カーボンブラックの嵩比重を測定した。具体的な測定方法は以下の通りである。
(1)体積30cmの円筒容器に、偏りが発生しないように顆粒カーボンを充填し、試料の質量を容器体積(30cm)で除して試料の密度を求め、これを4℃の水の密度(1.0cm/g)で除し、比重を求めた。
(2)3回測定の平均値を測定試料の嵩比重とする。
(加熱減水分測定法)
JISK6218−1の方法に準拠して、顆粒カーボンブラックの加熱減水分を測定した。
以下に実施例で使用する顆粒状カーボンブラックの浸透速度係数以外の特性値を表1に示す。嵩比重と加熱減水分は顆粒状態での特性、他は造粒の如何に係わらずカーボンブラック自体の特性であってその測定方法については既述の通りである。造粒前のA〜Dのカーボンブラックは、同一の製造工程を経て別途に作製されたファーネスブラックからなるカーボンブラックであり、下記に示す特性値は類似の値を示すものが多い。しかし以下、表2に示す様に浸透速度係数の値はそれぞれ大きく異なっており、分散液を作製したときの粗大粒子数に大きな差違が生じる原因となる。
Figure 2012188644
以下実施例で使用する顆粒状カーボンブラックの浸透速度係数に係わる特性値を表2に示す。
Figure 2012188644
以下に実施例において使用するスチレンアクリル系樹脂についてその特性を記載する。<スチレンアクリル系樹脂>
本実施例で用いるスチレンアクリル系樹脂Aは、溶液重合で作製された粉体状(直径1mm以下)の樹脂であり、モノマー組成比において、スチレン/アクリル酸/メタクリル酸=77/10/13(質量比)であり、分子量11000、酸価152mgKOH/g、ガラス転移点107℃である。
なお、本発明における重量平均分子量は、GPC(ゲル・浸透・クロマトグラフィー)法で測定される値であり、標準物質として使用するポリスチレンの分子量に換算した値である。なお測定は以下の装置及び条件により実施した。
送液ポンプ:LC−9A
システムコントローラー:SLC−6B
オートインジェクター:S1L−6B
検出器:RID−6A
以上島津製作所社製
データ処理ソフト:Sic480IIデータステーション(システムインスツルメンツ社製)。
カラム:GL−R400(ガードカラム)+GL−R440+GL−R450+GL−R400M(日立化成工業社製)
溶出溶媒:THF
溶出流量:2ml/min
カラム温度:35℃
(実施例1)
下記組成の混合物を、250mlのポリ容器に仕込み、直径1.25mmのジルコニアビーズと共にペイントシェイカーで4時間撹拌し、カーボンブラック濃度が14.5%のインクジェット記録用水性顔料分散液を得た(ビーズミル製法)。
(a)カーボンブラックA 50部
(b)スチレンアクリル酸系樹脂A 20部
(c)8N−酸化カリウム水溶液 9部
(d)トリエチレングリコール 55部
(e)イオン交換水 210部
さらに造粒工程が粗大粒子数に及ぼす影響のみを評価するため、使用したカーボンブラックであって造粒前のものを用い、上記と同様の配合のインクジェット記録用水性顔料分散液を得た。
(実施例2、3比較例1,2)
実施例1におけるカーボンブラックAを、表1、表2に記載した特性を有するカーボンブラックB、C、D、Eに換えた以外は実施例1と同様にして、実施例2、3、比較例1、2のインクジェット記録用水性顔料分散液を得た。さらにそれぞれの実施例、比較例で使用したカーボンブラックであって造粒前のものを用い、それぞれの実施例、比較例と同様の配合のインクジェット記録用水性顔料分散液を得た。
実施例1〜3、比較例1、2でそれぞれ作製した、造粒後のカーボンブラックを用いたインクジェット記録用水性顔料分散液について粗大粒子数(Na)、及び平均粒子径を以下の方法で測定した。さらに実施例、比較例それぞれについて作製した造粒前のカーボンブラックを用いたインクジェット記録用分散液について、粗大粒子数(Nb)を測定し、造粒後のカーボンブラックを用いた場合の粗大粒子数との比(Na/Nb)を算出した。以上で得られた測定結果を浸透速度係数に関連する測定値とともに表3に示す。
(粗大粒子数測定方法)
Particle Sizing Systems社製Accusizer 780 APSを用いて、イオン交換水で500〜1000倍に希釈した顔料分散液に含まれる直径0.5μm以上の粒子数を測定した。その測定は、顔料分散液4mlを装置に充填し、測定部を通過する粒子を光学的手段を用いて検出するものである。測定時に入力するパラメータとしては、分散液の希釈倍率、装置への充填重量がある。測定結果に希釈濃度の数値をかけ、実施例、比較例で作製される顔料濃度14.5質量%の顔料分散液1ml中に含まれる粒子の個数を粗大粒子数とする。通常得られる値は桁数が高く比較が困難なので、10で除し単位を「×10個/ml」とする。3回測定を行い得られた結果の平均値Naを測定試料の粗大粒子数とする。
(平均粒子径測定方法)
日機装社製ナノトラック粒度分布測定装置「UPA150」を用いて、イオン交換水で2000倍に希釈した顔料分散液の平均粒子径を測定した。顔料分散液約4mlを測定セルに入れて、レーザー光の散乱光を検出することにより、粒子径が測定される。測定時に入力するパラメータとしては、粘度(イオン交換水希釈後の顔料分散液粘度)、分散粒子の密度(カーボンブラックの真比重)、イオン交換水の密度がある。なお、測定温度は25℃であった。測定結果として得られ表示される体積平均粒子径(MV)を平均分散粒子径の値(単位:nm)とした。測定時間30秒で3回測定を行い、得られた結果の平均値を測定試料の平均分散粒子径とする。
Figure 2012188644
上記表3から明らかな様に、浸透速度係数比が大きい値を取れば取るほど、作製されたインクジェット記録用水性顔料分散液の粗大粒子数は少なくなり、良好な粗大粒子数低減効果が発揮されていることがわかる。上記表3の結果を粗大粒子数比(Na/Nb)を縦軸に、浸透速度係数比(Va/Vb)を横軸にしてプロットした図を図1に示す。図1からも明かなように、浸透速度係数比(Va/Vb)が1より小さくなると、顆粒状カーボンブラックから作製したインクジェット記録用水性顔料分散液の粗大粒子数は、造粒前のカーボンブラックで作製した水性顔料分散液の粗大粒子数より大きくなり、粗大粒子の低減効果が得られないことがわかる。
さらに顔料、アニオン性基を有する樹脂、塩基性化合物、及び湿潤剤を含有する混合物を混練して、常温で固体の顔料分散体を作製する混練工程を有する製造方法を使用して、上記顆粒状カーボンブラックを用いインクジェット記録用水性顔料分散液を作製した。
(実施例4)
下記組成の混合物を、容量50LのプラネタリーミキサーPLM−50V(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを60℃に加温し、自転回転数36回転/分、公転回転数12回転/分で混練してカーボンブラックとスチレンアクリル酸系樹脂の混練物である顔料分散体を得た(混練工程)。
(a)カーボンブラックA 50部
(b)スチレンアクリル酸系樹脂A 20部
(c)8N−酸化カリウム水溶液 9部
(d)トリエチレングリコール 55部
混練物の形成を確認後、1時間混練を継続した後、60℃に加温したイオン交換水を徐々に加えながらさらに混練を継続した。最終的にイオン交換水を120部加え、カーボンブラック濃度が約20%の分散液を得た(混合工程)。分散液を得るためには原料の撹拌開始後2時間を要した。プラネタリーミキサーから取り出したブラック色分散液をイオン交換水で更に希釈し、カーボンブラック濃度14.5%の分散液を得た(混練製法)。作製したインクジェット記録用水性顔料分散液の粗粒数と平均分散粒子径を、使用した顆粒状カーボンブラックの浸透速度係数に係わる特性値とともに表4に示す。
(実施例5、6、比較例3、4)
実施例4において、カーボンブラックAに代えて、カーボンブラックB、C、D、Eを使用した以外は、実施例1と同様にして、カーボンブラック濃度14.5%の実施例5、6、比較例3、4のインクジェット記録用水性顔料分散液を得た。作製したインクジェット記録用水性顔料分散液の粗粒数と平均分散粒子径を、使用した顆粒状カーボンブラックの浸透速度係数に係わる特性値とともに表4に示す。
Figure 2012188644
表4には比較のためビーズミル製法を用いた表3における実施例1と比較例2を転記した。本発明におけるトリエチレングリコール浸透速度係数の比率Rの高いカーボンブラックを使用し、さらに混練工程を有する製造方法(混練製法)を用いて製造されたインクジェット記録用水性顔料分散液は、ビーズミル製法を用いて製造されたインクジェット記録用水性顔料分散液よりさらに粗大粒子数が少ないことがわかる(実施例4〜6、実施例1)。一方、浸透速度係数の比率Rの低いカーボンブラックを使用したとしても、混練製法を用いることにより、同じカーボンブラックを使用してビーズミル製法を用いたときと比較して、遥かに粗大粒子数が低減されることがわかる(比較例3、4、比較例2)。表3及び図1に記載されたビーズミル製法による結果から、混練製法においても同様の結果、すなわち浸透速度係数が1より大きい顆粒状カーボンブラックを使用しないと、造粒前のカーボンブラックを用いた場合よりも粗大粒子数が改善されないことが類推される。
表4の結果から、インクジェット記録用水性顔料分散液は、平均粒子径には違いは無いものの、浸透速度係数の比率Rの低下とともに粗粒数が多くなっている。また同じ浸透速度係数の比率Rを有するカーボンブラックを使用したとしても、常温で固体の顔料分散体を作製する混練工程を有する製造方法を使用したほうが、より大きな粗大粒子数の減少を実現できることがわかる。
水性顔料分散液中の粗大粒子数が多くなると、該粗大粒子は特定の濾過工程や、遠心分離工程を経ない限り最終製品であるインクジェット記録用水性インクに混入するため、該水性インクをインクジェットプリンターに適用した際に、著しい特性低下を引き起こす。粗大粒子数が多くなると、インクジェット記録用水性インクを調整しインクジェット印刷機で印刷する際、インク流路の閉塞等を引き起こす可能性がある。特にサーマルジェット方式のインクジェット記録に適用すると、粗粒がヒーター上で凝集析出し、ヒーター機能を低下させる、又は析出物によりノズル部が閉塞する可能性もある。このように使用する顆粒状カーボンブラックによって、水性顔料分散液を作製したときの粗大粒子数には明確な差があるが、これら粗大粒子数の差は、表1に規定したような従来使用されているカーボンブラックの特性値からでは把握できないことが判る。仮にインクジェット記録用水性インクのインク化工程において、濾過や遠心分離でこれら粗大粒子を除去することが可能であるにしても、粗大粒子のみを選択的に除去するのは困難な上、それら粗大粒子の除去に費やされる工程には、含有される粗大粒子数が多くなればなるほど費やされる時間が多くなるため、著しい生産効率の低下、製造収率の低下をきたすことになる。
本発明による浸透速度係数比率Rを用いて、顆粒状のカーボンブラックを予め選定したのち、インクジェット記録用水性インクの製造を行うことにより、カーボンブラックの顆粒状態を正確に把握することができ、粗粒数の少ない分散液を得ることが可能となり、生産効率、製造収率を格段に向上させることが可能である。
本発明によれば、粗大粒子数が少なく、インクジェット記録用水性インクを作製したときに吐出安定性を顕著に向上させることのできるインクジェット記録用水性顔料分散液を提供することができ、その産業上の利用価値は極めて高い。

Claims (7)

  1. 造粒された顆粒状カーボンブラックを、アニオン性基を有する樹脂、塩基性化合物とともに水性媒体中に分散するインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法であって、前記造粒されたカーボンブラックが充填された容器の底部からトリエチレングリコールを上方に向かって浸透させ、浸透開始からt1、t2秒経過後のトリエチレングリコールの浸透重量m1とm2から式(1)
    Va=((m2)−(m1)/(t2−t1
    (1)
    で求められる顆粒状カーボンブラックの浸透速度係数Vaと、前記顆粒状カーボンブラックを造粒化前のカーボンブラックに置き換えて同様に測定される浸透速度係数Vbとの比率(Va/Vb)が1.0以上であることを特徴とするインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
  2. 前記カーボンブラックは、湿式または乾式造粒法にて造粒されたファーネスブラックである請求項1に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
  3. 造粒化されたカーボンブラック、アニオン性基を有する樹脂、塩基性化合物、湿潤剤を含有する混合物を混練して常温で固体の顔料分散体を作製する混練工程と、前記顔料分散体を水性媒体中に混合、撹拌する混合工程を有する請求項1または2に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
  4. 前記顔料分散体の固形分比率は40〜80質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
  5. 前記アニオン性基を有する樹脂は、酸価50〜300mgKOH/g、重量平均分子量7500〜40000であって、スチレンモノマー及び酸基を有するモノマーを構成単位として含有し、前記スチレンモノマーは前記アニオン性基を有する樹脂の全構成単位中60〜90質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
  6. 前記塩基性化合物はアルカリ金属水酸化物である請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
  7. 請求項1〜6のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法によって製造されたインクジェット記録用水性顔料分散液を含有するインクジェット記録用水性インク。
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