JP2005060431A - 水性顔料分散液用混練物及びこれを用いた水性顔料分散液とインク組成物の製造方法 - Google Patents

水性顔料分散液用混練物及びこれを用いた水性顔料分散液とインク組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】分散性及び分散安定性に優れ、高温での長期放置でも粒径の増加が少なく、且つ物性変化も少ない保存安定性に優れた水性顔料分散液およびこれを用いたインクジェット記録用水性インクの製造方法を提供する。さらに同時に分散時間など製造に要する時間が短く製造効率が高い製造方法を提供する。
【解決手段】アニオン性基を有する樹脂、顔料、湿潤剤及び塩基性化合物を混練し、着色混練物を製造し、該着色混練物を水性媒体に希釈して液体状の混合物とし、該混合物を分散させる水性顔料分散液の製造方法であって、混練工程と希釈工程の温度を、前記樹脂のガラス転移点より低い特定温度範囲に維持して製造を行う。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性顔料分散液および水性顔料分散液の製造方法に関し、特にインクジェット記録用水性インク組成物の製造に適した水性顔料分散液、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
環境保全、作業の安全性、安定性の向上などを目的に、昨今になって特に油性インク、油性塗料の水性化への要請が高まっている。一方、印刷画像の耐水性、耐光性向上を目的として、従来の染料を用いた水性インクの着色剤を顔料に転換する要請も高く、各種の画像形成用途のインクを製造するための中間材料として、水性顔料分散液の開発、改良が進められている。
【0003】
水性顔料分散液を製造するにあたっては、顔料を水性媒体中に安定して分散させる必要があり、各種の樹脂が被記録材への定着剤を兼ねて高分子分散剤として使用されている。このような水性顔料分散液としては、水性溶媒中へ水溶性樹脂を分散剤として含有させる樹脂溶解型のものと、顔料を樹脂で被覆して、マイクロカプセル化する樹脂分散型のものに分類される。特に樹脂分散型の水性顔料分散液は、分散液の水分の蒸発に伴う粘度上昇が少ないため、吐出安定性や保存安定性の重要なインクジェット記録用インクとしてに優れた特性が期待でき、各種の水性顔料分散液がインクジェット記録用に提案されている。
【0004】
インクジェット記録用水性インク組成物は、このように作製された水性顔料分散液を希釈し、成分を調整することで作製されるが、微細なノズルからの吐出安定性を実現するためには、100nm程度の微小な顔料粒子を安定して分散させる必要があり、その配合組成や分散方法が検討されている。
【0005】
例えば、樹脂に水酸化ナトリウム溶液、メチルエチルケトンを添加して該樹脂を溶解したのち、メチルエチルケトンを蒸留して作製した樹脂溶液に、顔料、水性媒体を添加した後ペイとシェーカーやサンドミル用いて分散させて水性顔料分散液を得る方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、顔料と水溶性樹脂又は水分散性樹脂と、必要に応じて水及び/又は有機溶剤とを2本ロールにより混練し固形チップとし、前記固形チップを塩基性化合物を含む水性溶媒に分散させることによって水性顔料分散液を製造する製造方法が提案されている(特許文献2、特許文献3参照)。
【0007】
さらに、アニオン性基を有する樹脂に水、有機溶剤と塩基性化合物を添加して水性樹脂溶液を作製し、前記水性樹脂溶液と顔料とを含有する混合物を、ロールにより混練して固形チップとし、水性溶媒中に分散させて水性顔料分散液を得る製造方法が提案されている(特許文献4参照)。
【0008】
しかしながら、顔料分散にサンドミルを用いる特許文献1に記載された製造方法においては、分散は通常顔料、樹脂等の固形分比率の小さい低粘度の混合物を用いて行われる。そのため、分散時に顔料に強力なシェアがかかりにくく、顔料の粗大粒子を粉砕するのに多くの時間がかかり、製造効率が低いという問題があった。また、このようにして得られた水性顔料分散液には、分散後にも相当量の粒径1μm以上の粗大粒子が含まれているため、さらに遠心分離、濾過などによってこの粗大粒子を除去する工程が必要であり、さらなる製造効率の低下と収率の低下という問題があった。
【0009】
また、特許文献2、特許文献3、特許文献4に記載されたような、二本ロールによる方法においては、顔料の樹脂中への分散に先立ち、顔料と樹脂と溶剤を含む混合物の混練を行う。すなわち、予め水又は水溶性有機溶剤によって樹脂溶液を作製し、前記樹脂溶液と顔料との混合物を作製したのち、前記水または水溶性有機溶剤を揮散させ固形分比を上げつつ前記樹脂を溶融させて顔料との混練を行うため、混練時にかかる強力なシェアによって顔料の解砕が進行する。そして、該混練物を水性媒体中へ分散させることによって、粗大粒子の少ない水性顔料分散液を作製することができる。
【0010】
しかしこのような方法によると、顔料と樹脂は高シェアで混練されるが、混練後の混合物は固形分比が90%程度の固体状混練物となるため、実際に分散工程を経て水性顔料分散液を作製するためには、予め固形チップ状に粉砕しなくてはならない。サンドミル等による分散工程においては、さらに水性媒体を添加して該固形チップの粉砕と分散が行われるが、十分な分散には時間がかかり、また、たとえ長時間の分散を行ったとしても、粗大粒子の残存する可能性があった。
【0011】
また、ロールで練肉した後の混練物は顔料の表面が被覆されていても、前記固形チップを作製する工程、該固形チップを粉砕する工程を経るため顔料表面が露呈し、分散工程後の顔料表面に被覆が必ずしも十分でないことがあった。
【0012】
一方顔料と樹脂を含む混合物の混練を、前記固形チップ形成しないような低温で行うためには、前記混合物に低温において混練可能な適性な粘度を与えるために樹脂に対する溶解力の強い溶剤を添加する必要がある。しかし混練工程で使用された該溶剤は分散液中、あるいはインク組成物中に残存し、顔料表面に吸着した樹脂を溶解もしくは軟化させるため、顔料の凝集を誘起して分散液やインク組成物の分散安定性が低下し易い。これを防ぐためには、樹脂の溶解力の強い溶剤を揮散させる新たな工程を設ける必要があるが製造効率、製造コストの点で極めて不都合である。
【0013】
【特許文献1】
特開2001−262038号公報
【特許文献2】
特開平6−157954号公報
【特許文献3】
特開2000−80299号公報
【特許文献4】
特開2001−81390号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記事情に鑑てなされたもので、顔料が安定に分散し、該分散状態が長期保存においても維持される水性顔料分散液とインク組成物を得る製造方法を提供することを課題とする。
また、分散時間などの製造に要する時間が短く、製造効率が高い水性顔料分散液とインク組成物を得ることができる製造方法を提供することを課題とする。
さらに又本発明は、インクの吐出安定性と分散安定に優れたインクジェット記録用水性インク組成物を提供することを課題とし、特に熱安定性に優れ、サーマルジェット方式のインクジェット用記録液として用いたときに良好な吐出安定性を示す水性インク組成物を得ることができる製造方法を提供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、アニオン性基を有し、該アニオン性基の中和により水分散性を有する樹脂、顔料、湿潤剤及び塩基性化合物を含有する混合物を、従来の水性顔料分散液の製造方法によるよりも低い特定の温度条件下で混練し、かつ特定の温度条件下において該混練物を希釈して分散工程へと供することにより、良好な混練条件を維持しつつ、かつ以後の分散工程における混練物の分散容易性を失わない混練が可能であることを見出し本発明に至ったものである。
【0016】
本発明は、アニオン性基を有し、該アニオン性基の中和により水分散性を有する樹脂、顔料、湿潤剤及び塩基性化合物を含有する混合物を混練し、混練物を作製する第1の工程と、前記混練物を引き続き混練しつつ水性媒体Bを添加して粘度を低下させ、液体状の混合物とする第2の工程と、前記混合物を分散する第3の工程とを有する、水性顔料分散液の製造方法であって、第1の工程と第2の工程を通しての混練物または混合物の温度Tmが、前記樹脂のガラス転移点Tgより低く、且つTgとの差が50℃以内であることを特徴とする水性顔料分散液の製造方法を提供する。
【0017】
本発明は又この水性顔料分散液の製造方法によって製造された水性顔料分散液を、水性媒体によって希釈する工程を有することを特徴とするインクジェット記録用水性インク組成物の製造方法を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本願発明の製造方法において用いられる水性顔料分散液の各種成分につの詳細を記載する。さらに本願発明の製造方法における、製造工程のさらなる詳細を記載する。
【0019】
(1) アニオン性基を有し該アニオン性基の中和により水分散性となり得る樹脂
本発明において使用するアニオン性基を有し該アニオン性基の中和により水分散性となり得る樹脂は、中和剤となる塩基性化合物の作用下で乳化剤等の分散安定剤を用いることなく、安定な水分散粒子を形成できる能力を有する樹脂である。
【0020】
このような樹脂としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの官能基を有するポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂及び、アクリル酸系樹脂、マレイン酸系樹脂、スチレン系樹脂、ポリビニール酢酸系樹脂等のビニル系共重合体などの中から、中和剤の添加によって水分散性となり得る樹脂を選定して用いることができる。
【0021】
上記樹脂のうち特にアニオン性基を有するビニル単量体成分と、疎水性基を有するビニル単量体成分とを含むビニル単量体成分を、反応させて得られたビニル系共重合体が好ましい。
また塩基性化合物により中和されるアニオン性基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの各官能基が挙げられるが、分散安定性、長期保存安定性の点からカルボキシル基を含む樹脂が好ましい。
【0022】
ビニル系共重合体を構成するカルボキシル基を有するビニル単量体成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、等を挙げることができる。
一方ビニル系共重合体の重合に用いる疎水性基を有するビニル単量体成分としては、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート,フェニルエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリルエステル;
アクリルアミド、メチルアクリルアミド、メタクリルアミド、マレアミドなどの不飽和脂肪酸アミド;
アクリロニトリリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;
エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどの不飽和エーテル類;
エチレン、
プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサンなどの不飽和炭化水素類;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレンなどの不飽和ハロゲン化炭化水素類;
スチレン、αメチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;
などを挙げることができる。
【0023】
本発明において使用するビニル系共重合体においては、疎水性基を有するビニル単量体成分としてスチレン系モノマーを用いたスチレン系樹脂であることが好ましい。さらに該スチレン系樹脂の疎水性基を有するビニル単量体であるスチレン系モノマーの成分量が50質量%以上であることがさらに好ましい。このような樹脂は分散安定性に優れるとともに、該樹脂を含有する水性顔料分散液から作製したインクジェット記録用インクによって形成される画像の画像濃度が高い。したがって、画像濃度向上のために水性顔料分散液中の顔料濃度を増加させる必要がなく分散安定性を損なうことが少ない。
【0024】
本発明において使用するスチレン系樹脂としては、水性顔料分散液およびインクジェット記録用インク組成物の分散安定性、長期保存安定性の点から、アニオン性基を含有するビニル単量体として特にアクリル酸又はメタクリル酸を用いたスチレン系樹脂を用いることが好ましく、又疎水基を有するビニル単量体としては、スチレンモノマーを用いたスチレン系樹脂を用いることが好ましい。
さらにカルボキシル基を有するビニル単量体として、アクリル酸、メタクリル酸を併用し、3成分以上のビニル単量体成分による共重合樹脂であるスチレンアクリル系樹脂を構成することにより、樹脂合成時のランダム共重合性が向上して樹脂の均一性が良くなるという効果がある。
【0025】
スチレンアクリル系樹脂としては、記録用水性インク組成物の分散安定性、長期保存安定性の点から、スチレンモノマー成分が50質量%以上、好ましくは70質量%以上、95質量%以下含まれていることが好ましい。
【0026】
このように特にスチレンアクリル系樹脂の重合に用いられるスチレンモノマー成分の含量を50質量%以上とすることにより、共重合樹脂の疎水性が増加し、水系においてはより強固に顔料への樹脂被覆が行われる。その結果、水性顔料分散液を経て作製されたインク組成物をサーマルジェット方式のインクジェット記録に用いても、樹脂被覆粒子の加熱に対して、その粒径が安定であり粒径安定性が向上する。その結果、吐出安定性が向上し、且つ高い印字濃度、発色性が得られる。さらに被記録媒体上の塗膜の耐水性の向上にも効果的である。
【0027】
なお、95質量%をこえると、分散に寄与するカルボキシル基を有するモノマー成分の含有量が低下し、水系での分散安定性、長期保存安定性が低下するおそれがある。
【0028】
添加する樹脂の形態としては、粉体状の樹脂を用いることもできる。粉体状の樹脂を用いると、樹脂と顔料が高い剪断力で混練されつつ樹脂の軟化が進行するため、顔料の解砕と樹脂による顔料表面の被覆が効率よく進行する。
【0029】
本発明で使用するアニオン性基を含有する樹脂は、水性媒体中で安定した顔料表面の被覆を形成することが好ましく、又中和されたアニオン性基に起因する安定した水分散性を有することが好ましい。このような長期的な保存安定性の点から、樹脂の酸価は60〜300mgKOH/g、好ましくは100〜180mgKOH/g、さらに好ましくは120〜170mgKOH/gの範囲とされる。
【0030】
なお酸価とは、樹脂1gを中和するに必要な水酸化カリウム(KOH)のミリグラム(mg)数であり、mgKOH/gにて示す量である。
酸価が60mgKOH/gより小さいと、親水性が小さくなり、顔料の分散安定性が低下するおそれがある。一方、酸価が300mgKOH/gより大きいと、顔料の凝集が発生し易くなり、又インク組成物を用いた印字品の耐水性が低下するおそれがある。
本発明において使用する樹脂のガラス転移点Tgは、示差走査熱量計によって測定した値を用いることができる。
【0031】
また、本発明で使用する樹脂の質量平均分子量は、5,000〜20,000が好ましく、最も好ましくは5,000〜15,000とされる。5,000以上とされる理由は、低分子量であるほど初期的な分散性が優れているが、長期的な保存安定性が低下する傾向があるためである。なお、20,000をこえると水性顔料分散液の粘度が高くなる傾向にあり、樹脂の分散性、溶解性などが低下する傾向にあり、インクジェット用記録液として、特にサーマルジェット方式のインクジェット用記録液として用いたときに吐出安定性が低下する傾向にある。
【0032】
また、樹脂のガラス転移点は90℃以上、130℃以下が好ましく、100℃以上がより好ましい。
ガラス転移点が90℃以上であると、インクジェット記録用インク組成物によって形成された画像の耐水性が向上し、又インク組成物の熱安定性が向上する。このため、前記水性顔料分散液から作製されたインクジェット記録用水性インク組成物を、サーマルジェットタイプのインクジェット記録用に用いても、加熱によって吐出不良を起こすような特性変化を生じず好ましい。
なお、本発明で使用する樹脂のガラス転移点は樹脂組成より計算で求められる値であるとする。
【0033】
(2) 顔料
本発明の水性顔料分散液の製造に用いる顔料は、公知のものを特に制限なく使用することができ、例えばカーボンブラック、チタンブラック、チタンホワイト、硫化亜鉛、ベンガラなどの無機顔料;モノアゾ系、ジスアゾ系などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、レーキ顔料などの有機顔料;などを用いることができる。
【0034】
前記顔料は、混合物中に35質量%以上配合されることが好ましく、40質量%以上配合されることがさらに好ましい。一般に水性顔料分散液を希釈して、一定顔料濃度のインク組成物を得るため、水性顔料分散液中の濃度を極力上げて生産することは、より多くのインク組成物を製造できることから生産効率上有利となる。しかし、顔料濃度を上げることは、水性顔料分散液の保存安定性が悪化するため、実質的には顔料の分散安定性、水性顔料分散液用混練物等の安定性確保の点から、60質量%以下、好ましくは50質量%以下とされる。
【0035】
さらに顔料(Pigment)と樹脂(Resin)の質量比率に関しては、樹脂は顔料表面を安定に被覆するのに必要な量存在していれば十分であり、それをこえる樹脂の含有はむしろ好ましくない。樹脂が過剰量存在すると、水性顔料分散液やインクジェット記録用インク組成物を作製したときに、顔料に吸着しない遊離の樹脂が増加するため、粘度上昇の原因となり、特にインクジェット記録用インク組成物として使用したときに、前記樹脂がインクノズルに固着してインク吐出不良の原因となりやすく、特にサーマルジェットプリンターにおいてはこの吐出不良の問題が発生する危険性が高い。
【0036】
そのため、本発明の水性顔料分散液の製造において、樹脂/顔料の質量比率は顔料の種類によって多少異なるが、一般的に1/10〜2/1、好ましくは1/10〜1/1となるようにすることが好ましい。
また、顔料の分散安定性を増すために、前記顔料あるいは他の顔料の誘導体を併用してもよい。
【0037】
(3) 湿潤剤
本発明において使用される湿潤剤は、従来、インクジェット記録用インクに使用される公知の湿潤剤を用いることができる。前記第1工程においては混練に伴いまず顔料表面が湿潤剤によって濡れ、塩基性化合物の添加によって軟化し膨潤状態または溶解状態となったスチレンアクリル酸系樹脂が該湿潤剤に置き換わって顔料表面を被覆する。このため混練中に揮散しないように混練温度より高い沸点の湿潤剤を用いることが好ましい。このように混練で使用された湿潤剤は基本的に着色混練物中に残存し、インクジェット記録用インク組成物中に最終的に含有されるが、湿潤剤は本来、インクジェット記録用インク組成物中の成分として用いられるものなので、インクの分散安定性、吐出性に対して支障となることはない。
【0038】
このような湿潤剤として使用することができる有機化合物を例示すれば、
グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、等の多価アルコール類;グリセリンおよびその誘導体;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類;1,3−ジメチルイミダゾリジン等が挙げられる。
【0039】
特に、沸点が150℃以上、より好ましくは200℃以上の湿潤剤を用いると、混練操作中にこれら湿潤剤が揮散しにくく、混練物の固形分比率を一定に保ちつつ混練を進行させることができる。特に高沸点、低揮発性で、高表面張力の多価アルコール類が好ましく、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類が好ましい。このような湿潤剤を用いて混練を行うことによって、たとえ長時間にわたる混練操作でも再現性良く良好な混練を行うことができる。
これらの湿潤剤は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0040】
なお、湿潤剤は、使用する樹脂によっても異なるが、通常は仕込みの混合物中に10〜60質量%、好ましくは20〜50質量%配合される。その添加量は、樹脂量の1/2〜6倍程度であり、好ましくは樹脂量の1〜4倍程度である。水溶性有機溶剤の量が樹脂量の1/2未満では樹脂を膨潤させることができず、顔料の表面を十分に濡らすことができないため分散安定性が低下するおそれがある。また6倍を超えると混練時の粘度が低下し、十分な混練が行えないため、顔料の分散性が低下し、インク組成物において、吐出不良等の画質低下を生じさせるおそれがある。
【0041】
第1工程の混練に使用する湿潤剤、あるいは第2工程である分散工程において、水性媒体として水と混合して使用することができる湿潤剤としては、使用したアニオン性基を有する樹脂に対して溶解力が強くなく、該樹脂濃度を25質量%として前記湿潤剤と樹脂とを撹拌した場合、均一溶液とならないものが好ましい。あるいは、インクジェット記録用水性インク組成物中に前記湿潤剤が5質量%以上残存した場合、該水性インク組成物の特性を低下させないものであることが好ましい
【0042】
(4) 塩基性化合物
塩基性化合物としては、無機系塩基性化合物、有機系塩基性化合物のいずれも用いることができる。塩基性強度を調整し易い点において、無機系塩基性化合物がより好ましい。
【0043】
有機系塩基性化合物としては、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの一般的なアミンを例示することができる。アミンの場合は一般に液体状であるので、そのままの形態で添加して用いることができる。
【0044】
無機系塩基性化合物としては、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム;カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、カルシム、バリウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩;などを例示することができる。
【0045】
中でも、アニオン性基を有する樹脂の中和によって前記樹脂の分散性を高めるためには強アルカリのものが好ましく、具体的には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物が好ましい。
なお、無機系塩基性化合物は混合性向上などの点から、通常、20〜50質量%程度の水溶液の形態で用いられる。
【0046】
塩基性化合物の配合量は、中和率が20%以上、好ましくは40%以上となるように設定されることが、第2工程に移ったときの水又は水溶性有機溶剤中の分散速度の向上、分散安定性、長期保存安定性の点から好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。上限値は特に限定しないが、実質的には、長期保存時に分散安定性があり、さらに塩基性化合物添加後の水性顔料分散液のpHが中性領域から大きくずれず、ゲル化しないためにも、中和率200%以下、好ましくは120%以下に相当する配合量であることが好ましい。
【0047】
なお本発明において200%、120%の中和率に相当する配合量とはアニオン性基を有する樹脂のカルボキシル基を全て中和するのに必要な配合量の、それぞれ2倍、1.2倍に相当する量という意味である。
【0048】
さらに塩基性化合物は、予め樹脂と混合し、あるいは樹脂溶液を作製してその溶液中に配合しておくことも可能であるが、他の配合成分とともに一括混合して用い、混練による顔料の解砕にあわせて膨潤中和過程が進行することが好ましい。
【0049】
なお、ここで中和率とは、下記の式によって計算される値である。
中和率(%)=((塩基性化合物の質量(g)×56×1000)/(樹脂酸価×塩基性化合物の当量×樹脂量(g)))×100
すなわち樹脂の全カルボキシル基を中和するのに必要な塩基性化合物の量の何%を配合したかを示す量である。
【0050】
(5)水性媒体A
本発明の製造方法の第2工程に用いられる水性媒体Aは、水または水と湿潤剤を主成分として含有する。
【0051】
(6) 水性媒体B
本発明の製造方法においてインクジェット記録用インク組成物の作製に使用される水性媒体Bは、水のみでも良いが、必要に応じて水溶性有機溶剤を添加することもできる。水溶性有機溶剤は、水性顔料分散液又はインクジェット記録用水性インク組成物に通常用いられる公知の水溶性有機溶剤が使用でき、例えば、
エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール;
ジメチルホルムアミドなどのアミド類、
ジエチレングリコール、グリセリンなどの高級アルコール;
エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルなどのアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物やプロピレングリコールプロピルエーテルなどのアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物などが挙げられる。
中でも高沸点のものが分散性向上には効果的で乾燥防止効果もあり、高級アルコール類が好適に用いられる。
【0052】
(6) 水性顔料分散液用混練物の製造方法
本発明における水性顔料分散液の製造方法は、アニオン性基を有し該アニオン性基の塩基性化合物による中和により水分散性となり得る樹脂と、顔料、湿潤剤、及び塩基性化合物を含有する混合物を配合し、これを混練して着色混練物を製造する工程を第1工程とする。
【0053】
第1工程である配合した混合物を混練する工程においては、混練物に対し外部から適性に加温することにより、混練物の温度を、樹脂のガラス転移点Tgより低く、且つTgとの差が50℃以内になるよう調節する。
【0054】
第1工程における、アニオン性基を有し該アニオン性基の中和により水分散性を有する樹脂と顔料とを合わせた固形分比率は、混練物中50〜80質量%、好ましくは55〜75質量%とされる。
50質量%未満では混合物の粘度が低下するため、高シェアによる混練が十分に行われず、顔料の解砕が不十分となるため粗大粒子が水性顔料分散液に混入する原因となり好ましくない。
80質量%を超えると、たとえ加温して樹脂を充分に軟化させたとしても混練が困難になる。また、水性顔料分散液製造時に水溶性溶媒に分散させることが困難となるおそれがある。
【0055】
本発明の製造方法においては、樹脂を溶融させるための加温は行わない。しかし塩基性化合物を使用し、混練物を適性に加温することで、このように高い固形分比率を維持して混練を行うことが可能となり、混練開始から終了までの間、樹脂と顔料が高いシェアを受けて混練され、顔料がより粒径の細かな微粉へと解砕されるとともに、混練初期に顔料の表面を濡らした水性媒体が樹脂に置き換えられ、前記樹脂による顔料表面の被覆が効果的に進行する。その結果インク組成物の分散安定性、長期保存安定性を著しく向上させることができる。
【0056】
なお混練物の温度の測定方法は、混練装置の内側に設置された観測用のセンサーによる数値を、温度計で校正して用いることができるが、そのようなセンサーが設置されていないときは、混練を短時間停止して混練中の混練物に直接温度計を挿入して測定してもよい。
【0057】
(7) 水性顔料分散液の製造方法
本発明における水性顔料分散液の製造方法は、第1工程で作製した混練物を引き続き混練しつつ、水性媒体Aを添加して粘度を低下させ液状とする工程を第2工程とする。
【0058】
第2工程においても、混合物の温度が樹脂のガラス転移点Tgより低く、且つTgとの差が50℃以内である温度で混練を行うことが好ましく、又、水性媒体Aの温度も樹脂ガラス転移点Tgより低く、且つTgとの差が50℃以内である温度で混練を行うことが好ましい。
【0059】
そして、第1工程で作製された混練物の温度を常温に低下させることなく、第2工程を開始し、第1工程と第2工程との間に待ち時間がないことが好ましい。そのためには、第1工程から第2工程への移行に際し、第1工程における混練を継続しつつ、少量づつ水性溶媒Bを添加することによって、前記混練物の粘度を低下させて前記第2工程へと移行することが好ましい。
【0060】
このような混練を行うことによって、第1工程で混練過程で解砕され高温で軟化した樹脂に被覆された顔料が、冷却されて後に再度粉砕の必要な剛性の高い塊となることがなく。混練物に水性媒体Aを加えて攪拌するだけで容易に低粘度の液状混合物を形成することができ、以後さらに分散機に適用する際の適正粘度にまで調整することができる。
【0061】
上記の製造方法で作製した液状混合物は、必要に応じて分散機を用いて分散させると、より顔料の分散性が向上し好ましい。
【0062】
分散機は、公知のものを用いることができ、例えば、メディアを用いたものでは、ベイントシェーカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミルなどが挙げられる。又メディアを用いないものとしては、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機などが挙げられるが、これらの中でもメディアを用いた分散機は分散能力が高いため好ましい。なお分散前もしくは後で必要に応じて水又は水溶性有機溶剤で濃度調整を行っても良い。
【0063】
また、必要に応じて水性顔料分散液調整時に、さらに塩基性化合物など各種公知の添加剤を配合することができる。塩基性化合物を添加すると分散安定性などが向上し好ましい。
【0064】
なお、本発明の製造方法においては、混練中の混練物の温度を一定温度以上に維持し、第1工程における混練を継続しつつ、待ち時間なく第2工程へ移行するためには、閉鎖系の混練装置を用いるのが好ましい。
なお本発明において閉鎖系とは、必ずしも完全な密閉状態を指すものではなく、外気を完全に遮断した真空にもひけるほどの密閉状態による混練は必ずしも必要ではない。本発明における閉鎖系の混練装置とは、混練領域を閉鎖することのできる非開放的な混練装置であって、混練物の混練中の質量が90質量%以上の範囲で維持されるような混練装置を意味している。
【0065】
前記閉鎖系の混練装置としては、撹拌槽と、一軸あるいは多軸の撹拌羽根を備えた混練装置を用いることが好ましい。撹拌羽根の数は特に限定しないが、高い混練作用を得るためには二つ以上の攪拌羽根を備えたものが好ましい。
前記閉鎖系の混練装置は、例えば二本ロールや三本ロールと異なって、混練開始時における仕込み原料の形態に制約が少なく、液体、固体の原料を直接攪拌槽に投入して混練に先立つ原料混合を攪拌槽内で行い、そのまま混練工程へと移行することができる。
【0066】
またさらに、前記閉鎖系の混練装置を用いると、混練物を製造した後、これを同一撹拌槽中で直接水性媒体で希釈し分散させて、前記混練物の粘度を低下させ、水性溶媒中へと分散させることができる。
本発明の製造方法においては、前記閉鎖系の混練装置を用いると、混練中に水性媒体が揮散せず、水性媒体の総量を維持することができ、固体状の混練物の質量が実質的に変化しないように混練することができ好ましい。
前記閉鎖系の混練装置を用いて混練することにより、特に水性媒体の追加をしなくても固形分比率を維持しつつ一定以上の剪断力を働かせながら混練を進行させることができる。さらに混練後にも混練物中に水性媒体が一定量残留するため、第2工程の分散時に水性媒体Bへ混練物を容易に分散させることができる。
【0067】
前記閉鎖系の混練装置としては、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサーなどが例示される。
本発明の製造方法に用いる製造装置としては、特にプレネタりーミキサーが好ましい。
【0068】
本発明においては、第1工程では顔料濃度と、顔料と樹脂からなる固形分濃度が高い状態で高シェアにて混練を行うことが好ましく、第2工程では水性媒体Aの添加により、混練物の粘度が広い範囲で変化するが、プラネタリーミキサーは特に低粘度から高粘度まで広範囲に対応することができ、攪拌槽中にシェアのかかりにくい箇所が少なく、材料仕込みから混練、混練物の希釈に至るまで、攪拌槽中の混練物を一様に混練、攪拌できるためである。
【0069】
本発明の製造方法を用いると、樹脂のTgより低い温度での混練が可能となる。このため二本ロールによる従来の混練方法では樹脂の溶融が難しいため顔料との混練が困難とされていた、Tg90℃以上の樹脂を用いたより低温での混練が可能となる。このため、これらTgの高い樹脂を用いた混練物から、加熱安定性の良い水性インク組成物、あるいは印刷画像の耐水性のよいインクジェット記録用水性インク組成物を作製することができる。
【0070】
また、本発明における水性顔料分散液用混練物の製造方法は、該混合物中に前記樹脂を溶解する有機溶剤を必要としない。
このような有機溶剤は、混合物中への樹脂の均一な混合のため、樹脂溶液の形態で樹脂を添加するために通常用いられる。特に有機溶剤が前記樹脂を合成するときの合成溶剤の場合は、合成終了後の樹脂を該有機溶剤の樹脂溶液としてそのまま混練用の混合物に供することが行われる。しかし本発明の製造方法においては、アニオン性基を有し該アニオン性基の中和により水分散性を有する樹脂を用い、塩基性化合物を混練時に添加することにより水性媒体A中で樹脂を軟化させることができ、樹脂溶液の形態で樹脂を導入しなくても、均一で良好な分散状態の混練物を得ることができる。
そのため、混練後に樹脂を溶解する有機溶剤を除去する必要がなく、溶剤除去工程の影響もしくは残留溶剤による顔料分散体凝集のおそれがのない、分散安定性に優れる水性顔料分散液用混練物を作製することができる。
【0071】
(8) インク組成物の製造方法
インク組成物は、上述のようにして得られた水性顔料分散液をさらに水性媒体Bにて希釈して製造することができる。インク組成物中に含有される顔料濃度は2〜10質量%程度が好ましい。
水性顔料分散液を希釈する水性媒体Bは水のみでもよいが、インク組成物において、乾燥防止、粘度調整、濃度調整に寄与する水溶性有機溶剤を配合することができる。水溶性有機溶剤としては、上述の水性顔料分散液用混練物を分散するために用いるものと同様のものを例示することができる。
また、記録媒体への浸透性を示す水溶性有機溶剤が配合されていると、インク組成物に浸透性を付与することができ好ましい。
【0072】
インク組成物には、水性媒体Bと水性顔料分散液の他に、例えば公知の添加剤などを配合することができる。配合可能なものとしては、例えばアルカリ剤、pH調整剤、界面活性剤、防腐剤、キレート剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線硬化性樹脂などを例示することができる。
このインク組成物は、インクジェット記録用のインクとして好適に用いることができる。適用するインクジェットの方式は特に限定するものではないが、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型など)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式など)などの公知のものを例示することができる。
このインク組成物は、これら各種のインクジェット方式に適用した場合、特にサーマル方式に適用した場合に、分散安定性、保存安定性に加え、極めて安定したインク吐出が可能となる。
【0073】
【実施例】
以下、本発明を実施例を示して詳しく説明する。
なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
【0074】
また、本実施例において用いた樹脂A、Bは以下の通りのものである。
樹脂A:モノマー組成比で、スチレン/メタアクリル酸/アクリル酸=77/13/10(質量比)であり、質量平均分子量7,500、酸価150mgKOH/g、ガラス転移点107℃である樹脂。
樹脂B:モノマー組成比で、スチレン/メタアクリル酸/アクリル酸=77/13/10(質量比)であり、質量平均分子量12,000、酸価151mgKOH/g、ガラス転移点107℃である樹脂。
【0075】
(実施例1)
下記組成の混合物を、容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50V(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを加温し、内容物温度が60℃になるまで低速(自転回転数:21rpm,公転回転数:14rpm)で混練を行った。
樹脂A 1,500g
カーボンブラック(三菱化学製 #45L) 5,000g
ジエチレングリコール(以下、DEGと略記する。) 3,000g
34質量%水酸化カリウム水溶液 662g
30分混練することで内容物温度が60℃に達した後、高速(自転回転数:35rpm,公転回転数:24rpm)に切替、混練を継続した。高速への切替時のプラネタリーミキサー電流値は5Aであった。
【0076】
その後、混練を継続しながら、DEGをさらに少量ずつ添加し、800g追加した時点でプラネタリーミキサーの最大電流値が15Aを示したため、DEGの追加を停止した。このときの混練物温度は78℃であった。
以降、混練物の温度を60〜100℃の範囲内に調節しながらがら約2時間混練した。
ついで、混練を行いながら60℃に加温した5,000gのイオン交換水を200g/minの速度で加えて混練物の粘度調整を行った。こうして得た混練物の固形分濃度は、39.7質量%であった。
【0077】
この混練物10kgをビーズミルで分散するために、さらにDEG 3,757g、イオン交換水2,380gを分散撹拌機で撹拌しながら添加し再度粘度を調整した。
この粘度調整物を、ビーズミル(浅田鉄工製ナノミルNM−G2L)にて分散を実施し、水性カーボンブラック分散液A1を得た。なお、分散は4回分散機を通す(4パス)ことで行った。
ビーズ 直径0.3mmジルコニアビーズ
ビーズ充填量 85%
冷却水温度 10℃
回転数 2,660rpm (ディスク周速:12.5m/sec)
送液量 200g/min
水性カーボンブラック分散液A1は、固形分濃度25.2質量%、カーボンブラック濃度18.7質量%であった。
【0078】
(比較例1)
・樹脂水溶液の作製
下記配合で樹脂Aのメチルエチルケトン溶液を作製した。
メチルエチルケトン(以下、MEKと略記する。) 5,000g
樹脂A 5,000g
これにイオン交換水7,794g、34質量%の水酸化ナトリウム水溶液2,206gを加え、良く攪拌し樹脂溶液を得た。
【0079】
この樹脂溶液について、ウォーターバス温度45℃、40hPaの減圧条件でMEKを除去し、11,350gの樹脂溶解アルカリ水溶液を得た。そして、得た樹脂溶解アルカリ水溶液を固形分濃度25質量%になるよう、更にイオン交換水で希釈した。
・顔料分散液の作製
以下の配合物を分散攪拌機で混合した。
固形分濃度25質量%樹脂溶解アルカリ液 4,140g
カーボンブラック(三菱化学製 #45L) 3,000g
DEG 6,000g
イオン交換水 3,000g
この配合物を実施例1と同様に、ビーズミル(浅田鉄工製ナノミルNM−G2L)にて分散を試みたが、1パス目で、分散機への送液圧力が上がり、送液量を80g/minまで低下させて分散実施した。2パス目以降は、通常の200g/minで分散実施し、4パスまで実行して、水性カーボンブラック分散液B1を得た。
水性カーボンブラック分散液B1は、固形分濃度25.1質量%、カーボンブラック濃度18.7質量%であった。
【0080】
(比較例2)
下記組成の混合物を、容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50V(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットへの加温は行わずに低速(自転回転数:21rpm,公転回転数:14rpm)で混練を行った。
樹脂A 1,500g
カーボンブラック(三菱化学製 #45L) 5,000g
DEG 3,000g
34質量%水酸化カリウム水溶液 662g
30分混練することで内容物温度が25℃となった後、高速(自転回転数:35rpm,公転回転数:24rpm)に切替、混練を継続した。
高速への切替時のプラネタリーミキサー電流値は5Aであった。その後、混練を継続しながら、DEGをさらに少量ずつ添加した。800g追加した時点では電流値は5Aのままであり、混練物温度は32℃であった。
【0081】
以降、混練物の温度は成り行きで調整することなく約2時間混練したが、プラネタリーミキサーの電流値は5〜6Aであり最大電流値を示すことが無く、内容物は塊状とはならず粉体状のままであった。
ついで、混練を行いながら常温の5,000gのイオン交換水を200g/minの速度で加えた、こうして得た混練物の固形分濃度は38.9質量%であり、樹脂、カーボンブラックともに未分散状態で、粒子形状が認められた。
この混練物10kgをビーズミルで分散するために、さらにDEG 3,757g、イオン交換水2,380gを分散撹拌機で撹拌しながら添加し再度粘度を調整した。
作製した分散液を、実施例1と同様にビーズミル(浅田鉄工製ナノミルNM−G2L)にて分散を試みたが、1パス目で、分散機への送液圧力が上がり、送液量を40g/minまで低下させて分散実施した。2パス目以降は、通常の200g/minで分散実施し、4パスまで実行して、水性カーボンブラック分散液C1を得た。
水性カーボンブラック分散液C1は、固形分濃度25.2質量%、カーボンブラック濃度18.2質量%であった。
【0082】
(比較例3)
下記組成の混合物を、容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50V(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットへの加温は行わずに低速(自転回転数:21rpm,公転回転数:14rpm)で混練を行った。
樹脂A 1,500g
カーボンブラック(三菱化学製 #45L) 5,000g
DEG 3,000g
34質量%水酸化カリウム水溶液 662g
30分混練することで内容物温度が25℃となった後、高速(自転回転数:35rpm,公転回転数:24rpm)に切替、混練を継続した。
高速への切替時のプラネタリーミキサー電流値は5Aであった。その後、混練を継続しながら、DEGをさらに少量ずつ添加した、800g追加した時点では電流値は5Aのままであった。さらに600g追加した時点でプラネタリーミキサーの最大電流値が9Aを示したため、DEGの追加を停止した。このときの混練物温度は45℃であった。
【0083】
以降、プラネタリーミキサーの電流値は定常状態となる。混練物の温度は低下傾向であるが特に調整することなく約2時間混練した。
ついで、混練を行いながら常温の5,000gのイオン交換水を200g/minの速度で加えて混練物の粘度調整を行った。こうして得た混練物の固形分濃度は38.5質量%であった。
この混練物10kgをビーズミルで分散するために、さらにDEG 3,393g、イオン交換水2,744gを分散撹拌機で撹拌しながら添加し再度粘度を調整した。
この粘度調整物を、実施例1と同様にビーズミル(浅田鉄工製ナノミルNM−G2L)にて分散を実施し、水性カーボンブラック分散液D1を得た。
水性カーボンブラック分散液D1は、固形分濃度25.2質量%、カーボンブラック濃度18.7質量%であった。
【0084】
(実施例2)
下記組成の混合物を、容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50V(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを加温し、内容物温度が60℃になるまで低速(自転回転数:21rpm,公転回転数:14rpm)で混練を行った、
樹脂B 750g
マゼンタ顔料(大日本インキ製 RTS) 5,000g
DEG 2,500g
34質量%水酸化カリウム水溶液 333g
30分混練する事で内容物温度が60℃に達した後、高速(自転回転数:35rpm,公転回転数:24rpm)に切替、混練を継続した。
高速への切替時のプラネタリーミキサー電流値は5Aであった。その後、混練を継続しながら、DEGをさらに少量ずつ添加し、400g追加した時点でプラネタリーミキサーの最大電流値が15Aを示したため、DEGの追加を停止した。このときの混練物温度は85℃であった。
【0085】
以降、混練物の温度を60〜100℃の範囲内に調節しながら約2時間混練した。
ついで、混練を行いながら60℃に加温した6000gのイオン交換水を200g/minの速度で加えて混練物の粘度調整を行った。こうして得た混練物の固形分濃度は39.7質量%であった。
この混練物10kgをビーズミルで分散するために、さらにDEG 4,812g、イオン交換水5,038gを分散撹拌機で撹拌しながら添加し再度粘度を調整した。
この粘度調整物を、実施例1と同様にビーズミル(浅田鉄工製ナノミルNM−G2L)にて分散を実施し、水性マゼンタ顔料分散液E1を得た。
水性マゼンタ顔料分散液E1は、固形分濃度20.2質量%、顔料濃度15.8質量%であった。
【0086】
(実施例3)
下記組成の混合物を、容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50V(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを加温し、内容物温度が60℃になるまで低速(自転回転数:21rpm,公転回転数:14rpm)で混練を行った、
樹脂B 750g
マゼンタ顔料(大日本インキ製 RTS) 5,000g
DEG 2,500g
34質量%水酸化カリウム水溶液 333g
30分混練することで内容物温度が60℃に達した後、高速(自転回転数:35rpm,公転回転数:24rpm)に切替、混練を継続した。
高速への切替時のプラネタリーミキサー電流値は5Aであった。その後、混練を継続しながら、DEGをさらに少量ずつ添加し、400g追加した時点でプラネタリーミキサーの最大電流値が15Aを示したため、DEGの追加を停止した。このときの混練物温度は85℃であった。
【0087】
以降、混練物の温度を60〜100℃の範囲内に調節しながら約2時間混練した。
ついで、混練を行いながら常温の6,000gのイオン交換水を200g/minの速度で加えて混練物の粘度調整を行った。混練物温度は低下して、実施例2に比較すると一様に希釈するのに時間が多くかかった。しかし、ジャケットを加温しているため混練物の温度は60℃以下には低下しなかった。こうして得た混練物の固形分濃度は39.7質量%であった。
この混練物10kgをビーズミルで分散するために、さらにDEG4,812g、イオン交換水5,038gを分散撹拌機で撹拌しながら添加し再度粘度を調整した。
この粘度調整物を、実施例1と同様にビーズミル(浅田鉄工製ナノミルNM−G2L)にて分散を実施し、水性マゼンタ顔料分散液G1を得た。水性マゼンタ顔料分散液F1は、固形分濃度20.2質量%、顔料濃度15.8質量%であった。
【0088】
(比較例4)
・樹脂水溶液の作製
下記配合で樹脂BのMEK溶液を作製した。
MEK 5,000g
樹脂B 5,000g
これにイオン交換水8,534g、34質量%水酸化ナトリウム水溶液2,221gを加え、良く攪拌し樹脂溶液を得た。
この樹脂溶液について、ウォーターバス温度45℃、40hPaの減圧条件でMEKを除去し、11,400gの樹脂溶解アルカリ水溶液を得た。得た樹脂溶解アルカリ水溶液を固形分25質量%になるよう、更にイオン交換水で希釈した。
・顔料分散液の作製
以下の配合物を分散攪拌機で混合した。
固形分25質量%樹脂溶解アルカリ液 2,764g
マゼンタ顔料(大日本インキ製 RTS) 4,000g
DEG 8,000g
イオン交換水 8,700g
作製した分散液を、実施例1と同様にビーズミル(浅田鉄工製ナノミルNM−G2L)にて分散を試みたが、1パス目で分散機への送液圧力が上がり、送液量を40g/minまで低下させて分散実施した。2パス目以降は、通常の200g/minで分散実施し、4パスまで実行して、水性マゼンタ顔料分散液F1を得た。
水性マゼンタ顔料分散液G1は、固形分濃度20.0質量%、顔料濃度15.8質量%であった。
【0089】
(比較例5)
下記組成の混合物を、容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50V(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを加温し、内容物温度が60℃になるまで低速(自転回転数:21rpm,公転回転数:14rpm)で混練を行った。
樹脂B 750g
マゼンタ顔料(大日本インキ製 RTS) 5,000g
DEG 2,500g
34質量%水酸化カリウム水溶液 333g
30分混練することで内容物温度が60℃に達した後、高速(自転回転数:35rpm,公転回転数:24rpm)に切替、混練を継続した。
高速への切替時のプラネタリーミキサー電流値は5Aであった。その後、混練を継続しながら、DEGをさらに少量ずつ添加し、400g追加した時点でプラネタリーミキサーの最大電流値が15Aを示したため、DEGの追加を停止した。このときの混練物温度は85℃であった。
【0090】
以降、混練物の温度を60〜100℃の範囲内に調節しながら約2時間混練した後に、混練物温度を常温に低下させ、攪拌層を閉めたまま一昼夜放置した。一昼夜放置した混練物5,000gに60℃に加温した6,000gのイオン交換水を200g/minの速度で加えて混練物の粘度調整を行った。こうして得た混練物の固形分濃度は39.7質量%であり、樹脂、マゼンタ顔料の凝集沈降が認められた。
作製した分散液を、実施例1と同様にビーズミル(浅田鉄工製ナノミルNM−G2L)にて分散を試みたが、1パス目で、分散機への送液圧力が上がり、送液量を100グラム/minまで低下させて分散実施した。2パス目以降は、通常の200g/minで分散実施し、4パスまで実行して、水性マゼンタ顔料分散液H1を得た。
水性マゼンタ顔料分散液H1は、固形分濃度20.0質量%、顔料濃度15.8質量%であった。
【0091】
(水性顔料分散液の初期分散性の評価)
実施例1、2、比較例1〜6の水性カーボンブラック顔料分散液について、顔料濃度が14.5質量%になるように、イオン交換水を加えて濃度調整を行い、マイクロトラックUPA粒度分析計(Leeds & Northrup社製)で粒径測定を実施した。なお、粒径測定サンプルは粒径測定可能な濃度となるように、イオン交換水で適宜希釈した。
また、調整した顔料分散液をスライドグラス上に極少量採取し、スライドグラス上の分散液滴に空気を巻き込まないようにカバーグラスを乗せ、分散液膜厚を一定にした状態で、200倍の倍率で透過光による顕微鏡観察を行い、粗大粒子の観察を行った。
結果を表1に示した
【0092】
【表1】
Figure 2005060431
【0093】
* 顕微鏡観察評価基準
1:粒径2μm以上の粗大粒子が多い、もしくは粒径5μm以上の粗大粒子が存在する。
2:粗大粒子は多いが、粒径は2μm未満である。
3:粗大粒子はあるがまばらで、視野中に200個以下である。
4:粗大粒子はあるが、数えられる程度で視野中に50個以下である。
5:粗大粒子は殆ど観察されない。
【0094】
分散液の粒径、顕微鏡観察結果より、本発明に関わる実施例1、2、3においては、
▲1▼ 従来の方法である、顔料を樹脂水溶液と混合した後ビーズミルで分散する比較例1,4、
▲2▼ 実施例と同じくプラネタリーミキサーで混練して、混練工程及び粘度低下工程の混練物温度を樹脂のガラス転移点温度より50℃以上の低温とした比較例2,3
▲3▼ 実施例と同じくプラネタリーミキサーで混練して、混練工程で作製した混練物の温度を低下させ、粘度低下工程との間に待ち時間のあった比較例5
それぞれと比較して、粒径を細かくし、粗大粒子の残存量を少なくすることができた。
【0095】
(水性顔料分散液の分散安定性の評価)
実施例、比較例の水性顔料分散液について、顔料濃度が14.5質量%になるようにイオン交換水を加えて調整を行った分散液について、スクリュー管等のガラス容器に密栓し、60℃の恒温器で1週間の加熱試験を行い、加熱試験前後の粒径変化及び沈殿の有無等の分散液状態を目視で観察することにより、分散安定性の評価を実施した。
結果を表2に示した。
【0096】
【表2】
Figure 2005060431
【0097】
実施例1と比較例1,2,3の比較において、実施例1が粒径変化率が小さく、沈殿物の発生も無く、より分散性が安定であることがわかった。
実施例2,3と比較例4,5の比較において、実施例1が粒径変化率が小さく、沈殿物の発生も無く、より分散性が安定であることがわかった。
【0098】
(インク組成物の調整)
実施例1で得られたカーボンブラック分散液A1 26.3部にDEGを5.0部、サンニックスGP−600(三洋化成製)を5.0部、イオン交換水63.7部を加えて調整し、顔料濃度5質量%のインク組成物A2を得た。
同様に、カーボンブラック分散液A1に変えて比較例1,2,3で得られたカーボンブラック分散液B1,C1,D1を用いて顔料濃度5質量%のインク組成物B2,C2,D2を得た。
実施例2で得られたマゼンタ顔料分散液E1 11.8部にDEGを11.0部、サンニックスGP−600(三洋化成製)を5.0部、イオン交換水72.2部を加えて調整し、顔料濃度2質量%のインク組成物E2を得た。
同様に、マゼンタ顔料分散液E1に変えて実施例3,比較例4,5で得られたマゼンタ顔料分散液F1,G1,H1を用いて顔料濃度2質量%のインク組成物F2,G2,H2を得た。
【0099】
(印字試験)
得られたインク組成物を、ENCAD社製NOVAJET PROに搭載し、印字試験を実施した。
具体的には、A4の印字用紙(ユポインクジェット専用紙)4枚に、ベタ印字と細線印字を行い、インクの吐出状態を確認した。
結果を表3に示した。
【0100】
【表3】
Figure 2005060431
【0101】
◎:全ての印字サンプルにおいて、均一なベタ印字で細線部でも吐出不良が無い。
○:全ての印字サンプルにおいて、ほぼ均一なベタ印字で細線部では吐出不良は無いが印字位置ズレがわずかに見られる。
△:ベタ印字で吐出不良による印字ムラが見られ、細線部でも吐出不良による印字欠けが一部見られる。
×:吐出不良による印字ムラが顕著で、画像がかすれる。
表3に示した結果から明らかな様に、本発明に関わる実施例においていずれも比較例と比較し良好な結果が得られた。
【0102】
【発明の効果】
本発明の製造方法においては、粗大粒子を各段に減少し、粗大粒子を分離する特別な工程を経ることなく、高レベルな分散安定性を有する水性顔料分散液を得ることができる。特に、インクジェット用インクに適用した場合、従来の方法で製造されたインク組成物に対し、各段に信頼性の高いインク組成物を製造することができる。

Claims (9)

  1. インクジェット記録用インク組成物の製造に用いられる水性顔料分散液の製造方法であって、アニオン性基を有し、該アニオン性基の中和により水分散性を有する樹脂、顔料、湿潤剤及び塩基性化合物を含有する混合物を混練し、着色混練物を作製する第1の工程と、
    前記混練物を引き続き混練しつつ水性媒体ABを添加して粘度を低下させ、液体状の混合物とする第2の工程と、
    前記混合物を分散する第3の工程とを有し、
    前記第1の工程と前記第2の工程を通しての混練物及び混合物の最高温度Tmが、前記樹脂のガラス転移点より低く、且つ該ガラス転移点との差が50℃以内であることを特徴とする水性顔料分散液の製造方法。
  2. 前記第2工程において添加する水性媒体の温度が前記樹脂のガラス転移点Tgより低く、且つTgとの差が50℃以内である請求項1に記載の水性顔料分散液の製造方法。
  3. 前記樹脂のガラス転移点が90℃〜130℃である請求項1又は2に記載の水性顔料分散液の製造方法。
  4. 第1工程で作製された混練物の温度を常温に低下させることなく、第2工程を開始することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性顔料分散液の製造方法。
  5. 第1工程と第2工程との間に待ち時間のないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性顔料分散液の製造方法。
  6. 前記第1工程における混練物の混練中における固形分比が50〜80質量%である請求項1に記載の水性顔料分散液の製造方法。
  7. 撹拌漕と撹拌羽根を有し、該撹拌漕中の混練物を密閉可能な混練装置を用いて、前記第1工程と第2工程を行う請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性顔料分散液の製造方法。
  8. 前記混練装置がプラネタリーミキサーである請求項7に記載の水性顔料分散液の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の水性顔料分散液の製造方法によって製造された水性顔料分散液を、水性媒体Bによって希釈する工程を有することを特徴とするインクジェット記録用水性インク組成物の製造方法。
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