JP2012219145A - インクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法、及びインクジェット記録用水性インク - Google Patents

インクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法、及びインクジェット記録用水性インク Download PDF

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Abstract

【課題】粗大粒子数が極めて少なく、吐出安定性に優れたインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法、及びインクジェット記録用水性インクを提供する。
【解決手段】本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法は、顔料、アニオン性基を有する樹脂、及びアルカリ金属水酸化物を含有する混合物を混練して、固形分含有比率50質量%以上の顔料分散体を製造する混練工程と、前記顔料分散体を水性媒体中に混合、撹拌する混合工程と、を有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法、及びインクジェット記録用水性インクに関する。
従来から、被記録材上での記録画像の耐水性や耐光性が良好なインクジェット記録用インクとして、水性媒体中に分散した顔料と、アニオン性基を有する樹脂、及び塩基性化合物を含有するインクジェット記録用の水性顔料インクが提案されている。
顔料自体はインク溶媒(水や親水性有機溶媒等)に不溶であるため、微粒子化しかつ分散させる必要がある。しかしながら、微粒子化しきれずにインク溶媒中に残存する粗大粒子や、微粒子化するに伴って分散安定性が低下して凝集して生成する粗大粒子によって、インクジェットプリンターのヘッド内のインク流路(オリフィス)に目詰まりを生じて、インクの吐出不良を起こすという問題があった。
インクジェット記録方法は、近年、オフィス用途ばかりでなく、従来の産業用の各種印刷分野にも急速に適用が拡がっており、高速印刷性や長期の吐出安定性が重要となっている。このため、上記のような目詰まりを防いで、安定的に吐出するインクジェットインクが従来以上に切実に求められている。
これらの問題を解決するための手段として、分散後の液中から物理的な方法、すなわち濾過や遠心で粗大粒子を除去する方法(特許文献1、2)等が提案されているが、必ずしも近年における上記の要請を満足する性能を得るには至っていない。
粗大粒子の低減はこれら分散後の後工程によるよりも、後工程以前に除去すべき粗大粒子自体の低減を図ることが、生産効率と、製造収率の向上の点でも好ましい。出願人等は顔料、樹脂、塩基性化合物、および湿潤剤を含有する混合物を混練して着色混練物を作製する混練工程を有するインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法を提案しており、該方法によれば混練工程において顔料が微細粒子へ解砕され、かつ解砕された顔料表面の樹脂による被覆が同時に進行するため、粗大粒子の低減に対して有力であった(特許文献3、4)。
しかしこれらの製造方法によっても近年の粗大粒子低減の要請に対して必ずしも十分なものではなかった。
一方、顔料分散性の向上のため、分散樹脂中に長鎖アルキル基を有する構成成分を追加して、疎水性部分の顔料に対する吸着性を増す試みが行われている(特許文献5、6、7)。
特開2008−222980号公報 特開2009−067911号公報 特開2003−226832号公報 特開2005−048014号公報 特開平9−100428号公報 特開平10−158562号公報 特開2000−265083号公報
しかし該方法によっても顔料分散性は向上するものの、粗大粒子を有効に低減することはできなかった。
本発明は、粗大粒子数が極めて少なく、吐出安定性に優れたインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法、及びインクジェット記録用水性インクを提供することを目的とするものである。
本発明者らは、顔料、樹脂、及び塩基性化合物を含有するインクジェット記録用水性インクにおいて、一定の顔料濃度を確保しつつ、優れた長期保存安定性及び吐出安定性を具備せしめるには、特定の化合物を共重合した樹脂を使用した顔料分散体が有効であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
(1)本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法は、顔料、アニオン性基を有する樹脂、及びアルカリ金属水酸化物を含有する混合物を混練して、固形分含有比率50質量%以上の顔料分散体を製造する混練工程と、前記顔料分散体を水性媒体中に混合、撹拌する混合工程と、を有するインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法であって、前記アニオン性基を有する樹脂は、
(a)下記一般式(1)
Figure 2012219145
(式中、Rは直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が8〜20のアルキル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
で表される単量体、
(b)スチレン系単量体、
(c)α,β-エチレン性不飽和結合とアニオン性基とを有する単量体を含有する組成物を共重合して得られ、
前記組成物の全単量体の総量中、前記(a)成分の割合が5質量%以上であり、前記(b)成分の割合が30質量%以上であり、酸価が、50〜300mgKOH/gであり、かつ、質量平均分子量が5000〜30000であることを特徴とする。
(2)本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法は、前記混練工程における前記混合物は、前記アルカリ金属水酸化物及び前記アニオン性基を有する樹脂と、他の配合成分を一括配合してなることが好ましい。
(3)本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法は、前記混練工程における前記混合物、及び該混練工程において製造される前記顔料分散体の固形分含有比率が50〜80質量%であることが好ましい。
(4)本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法は、前記顔料分散体中の前記アニオン性基を有する樹脂/前記顔料の質量比率が1/10〜2/1であることが好ましい。
(5)本発明のインクジェット記録用水性インクは、先に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法により製造されたインクジェット記録用水性顔料分散液を含有することを特徴とする。
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法によれば、粗大粒子数が極めて少なく、吐出安定性に優れたインクジェット記録用水性顔料分散液の製造を可能とすることができる。該インクジェット記録用水性顔料分散液を含有する本発明のインクジェット記録用水性インクは、顔料インクとしての良好な耐光性、耐水性を保持しつつ長期保存安定性と吐出安定性とを有する。
以下に、発明を実施するための形態を詳細に記載する。
≪インクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法≫
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法は、顔料、アニオン性基を有する樹脂、及びアルカリ金属水酸化物を含有する混合物を混練して、固形分含有比率50質量%以上の顔料分散体を製造する混練工程と、前記顔料分散体を水性媒体中に混合、撹拌する混合工程と、を有する。
尚、本明細書においては、固形分含有比率50質量%以上の顔料分散体を製造する混練工程において、混練前のものを混合物、混練中あるいは混練後のものを混練物とする。
〔アニオン性基を有する樹脂〕
前記アニオン性基を有する樹脂は、
(a)下記一般式(1)
Figure 2012219145
(式中、Rは直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が8〜20のアルキル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
で表される単量体、
(b)スチレン系単量体、
(c)α,β-エチレン性不飽和結合とアニオン性基とを有する単量体を含有する組成物を共重合して得られる。
前記(a)成分は、前記一般式(1)で表される化合物からなる単量体であり、例えば、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら単量体は単独で用いてもよいし、混合して使用してもよい。
前記一般式(1)中、Rにおける炭素数は、8〜20であり、12〜20が好ましい。
前記組成物の全単量体の総量中、前記(a)成分の割合は5質量%以上であり、5質量%〜40質量%が好ましく、8質量%〜40質量%がより好ましい。前記(a)成分の割合を5質量%以上とすることにより、分散安定性に優れた樹脂を得ることができる。
前記(a)成分の割合を40質量%以下とすることにより、アニオン性基を有する樹脂中の親水性及び疎水性のバランスを容易に保つことができ、粗大粒子数の低減に有効となる。
前記一般式(1)のRは鎖長の長いアルキル基であるため、(a)成分は強アルカリによる分解を受けにくい。そのため、前記(a)成分を含む樹脂は、アルカリ金属水酸化物と共に水性顔料分散液を調製した場合でも、長期安定性が高い。
前記(b)成分において、スチレン系単量体として例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−n−オクチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム、4−ビニル安息香酸、4−アミノスチレン、4−メトキシスチレン、4−ニトロスチレン、スチルベン等が挙げられ、スチレンが好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、混合して使用してもよい。
前記組成物の全単量体中、分散安定性、長期保存安定性の点から、前記(b)成分の割合は30質量%以上であり、30質量%〜80質量%が好ましく、50質量%〜80質量%がより好ましい。
前記組成物の全単量体の総量中、前記(b)成分の割合を30質量%以上とすることにより、アニオン性基を有する樹脂の疎水性が増加し、水系においてはより強固に顔料への樹脂被覆が行われ、安定な粒子を形成する。このため、該アニオン性基を有する樹脂を用いて作製されたインクジェット記録用水性顔料分散液から得られたインクジェット記録用水性インクは、ノズル目詰まりも発生しにくい。さらにこのようなインクジェット記録用水性インクを用いて普通紙上に印字を行うと、印刷画像の良好な耐水性が得られるとともに、高い画像濃度と良好な発色を得ることができる。
一方で、前記(b)成分の割合を80質量%以下とすることにより、アニオン性基を有する樹脂中の親水性及び疎水性のバランスを容易に保つことができる。
前記(c)成分において、α,β-エチレン性不飽和結合とアニオン性基とを有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、及び(無水)マレイン酸、またはそのモノエステル等のカルボン酸基を有する単量体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、混合して使用してもよい。
前記組成物の全単量体の総量中、前記(c)成分の割合は、5質量%〜50質量%が好ましく、8質量%〜40質量%がより好ましい。
このように、アニオン性基を有する樹脂は、(a)成分と、疎水性モノマー成分である(b)成分と、アニオン性基を有する(c)成分と、を含有する組成物を共重合して得られるため、分散安定性、長期保存安定性に優れている。
前記アニオン性基を有する樹脂は、水性媒体中で安定した顔料表面の被覆を形成することが好ましく、又中和されたアニオン性基に起因する安定した水分散性を有することが好ましい。このような長期的な保存安定性の点から、樹脂の酸価は50〜300mg水酸化カリウム(KOH)/gであり、80〜200mgKOH /gが好ましく、100〜200mgKOH /gがより好ましい。
なお酸価とは、樹脂1gを中和するに必要なKOHのミリグラム(mg)数であり、mgKOH/gにて示す量である。
酸価が50mgKOH/gより小さいと、親水性が小さくなり、顔料の分散安定性が低下するおそれがある。一方、酸価が300mgKOH/gより大きいと、インク組成物を用いた印字品の耐水性が低下するおそれがある。
また、前記アニオン性基を有する樹脂の質量平均分子量は、5000〜30000であり、5000〜20000がより好ましく、5000〜15000が特に好ましい。5000以上とされる理由は、低分子量であるほど初期的な分散性が優れているが、長期的な保存安定性が低下する傾向があるためである。なお、30000を超えると水性顔料分散液の粘度が高くなる傾向にあり、樹脂の分散性、溶解性等が低下する傾向にあり、インクジェット用記録液として、特にサーマルジェット方式のインクジェット用記録液として用いたときに吐出安定性が低下する傾向にある。
本発明で用いられるアニオン性基を有する樹脂を得るには、窒素等の不活性ガス雰囲気下、有機溶媒中に(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を添加混合し、重合開始剤を添加して、100〜200℃で1〜10時間共重合させた後、脱溶剤させる方法が利用できる。
使用する有機溶媒は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、i−プロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノアルキルエーテル類またはそのアセテート類;プロピレングリコールモノアルキルエーテル類またはそのアセテート類;ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の極性有機溶媒;トルエン、キシレン等の非極性溶媒等が挙げられる。これら溶媒は単独で用いてもよいし、混合して使用してもよい。このうち、工業的に安価なキシレン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が好ましく使用できる。
使用する重合開始剤は特に限定されないが、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−へキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。これら開始剤は単独で用いてもよいし、混合して使用してもよい。
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法は、顔料、アニオン性基を有する樹脂、及びアルカリ金属水酸化物を含有する混合物を混練して、固形分含有比率50質量%以上の顔料分散体を製造する混練工程を有する。
前記混練工程において、前記アニオン性基を有する樹脂は、粉体状または粒状であることが好ましい。粉体状または粒状の樹脂を使用することにより、樹脂と顔料が高い剪断力を受けるので、顔料の解砕と、アルカリ金属水酸化物による中和により、前記アニオン性基を有する樹脂の膨潤または溶解が同時に進行し、解砕された顔料が直ちに樹脂によって被覆されるため、混練が効率的にかつ良好に進行し好ましい。
〔顔料〕
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液に使用する顔料としては、市販品をそのまま使用することもできる。
カーボンブラック等の無機顔料、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、金属錯体系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ベリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系の各顔料の他、ローダミンBレーキ顔料等の有機顔料のいずれも使用できる。
一般に水性顔料分散液を希釈して、一定顔料濃度のインク組成物を得るため、水性顔料分散液中の濃度を極力上げて生産することは、より多くのインク組成物を製造できることから生産効率上有利となる。
しかし、顔料濃度を上げることは、水性顔料分散液の保存安定性が悪化するため、実質的には顔料の分散安定性を考慮して水性顔料分散液中の顔料濃度を設定すればよく、通常5質量%〜50質量%が好ましく、5質量%〜40質量%がより好ましく、10質量%〜30質量%が特に好ましい。
また樹脂(Resin)と顔料(Pigment)の質量比率(R/P=樹脂/顔料の質量比)に関しては、樹脂は顔料表面を安定に被覆するのに必要な量、存在していれば十分であり、それを超える樹脂の含有はむしろ好ましくない。樹脂が過剰量存在すると、水性顔料分散液やインク組成物を作製したときに、顔料に吸着しない遊離の樹脂が増加するため、特にインクジェット記録用インク組成物として使用したときに該樹脂がインクノズルに固着してインク吐出不良の原因となりやすく、特にサーマルジェットプリンターにおいてはこの吐出不良の問題が発生する危険性が高い。
そのため、本発明の水性顔料分散液において、樹脂/顔料の質量比率は1/10〜2/1となる様にすることが好ましく、1/10〜1/1となる様にすることがより好ましく、
1/10〜1/2となる様にすることが特に好ましい。樹脂に対して顔料の配合比率が少なすぎると前記の問題点が発生し易く、顔料の配合比率が多すぎると顔料が樹脂によって充分に被覆されず、分散安定性、長期保存安定性が低下するおそれがある。
〔アルカリ金属水酸化物〕
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法に使用するアルカリ金属水酸化物は、前記アニオン性基を有する樹脂のアニオン性基を中和するためのものであり、公知慣用のものがいずれも使用できる。
アルカリ金属水酸化物としては、熱安定性に優れ、無臭である水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、より強い塩基性が発揮できる水酸化カリウムがより好ましい。
これらアルカリ金属水酸化物は、混合性向上の観点から、通常20〜50質量%程度の水溶液の形態で用いられることが好ましい。
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法においては、前記アニオン性基を有する樹脂はアルカリ金属水酸化物によって中和され、該アルカリ金属水酸化物によって膨潤状態または溶解状態となり、顔料とともに混練される。前記アニオン性基を有する樹脂をアルカリ金属水酸化物で中和状態に保ちつつ、混練物の混練を進めることができる。
アルカリ金属水酸化物の配合量は、使用している水性顔料分散体用樹脂のアニオン性基の中和率として通常50%以上200%以下の範囲であることが好ましく、80%以上120%以下の範囲であることがより好ましい。
中和率がこの範囲ならば、水性媒体中への分散速度の向上、分散安定性、長期保存安定性が効率よく維持できる。なお、ここで中和率とは、下記の式によって計算される値である。
中和率(%)=([アルカリ金属水酸化物の質量(g)×56.1×1000]/
[樹脂酸価×アルカリ金属水酸化物の当量×樹脂の質量(g)])×100
さらにアルカリ金属水酸化物と前記アニオン性基を有する樹脂は、混練する前に、混合物に配合する他の配合成分とともに一括混合して混合物としておくことが好ましい。例えば混合物は、予めアニオン性基を有する樹脂と水とアルカリ金属水酸化物を混合して樹脂水溶液を作製しておき、これを顔料等の他の配合成分に添加する等して、複数段階に分けて混合し、製造することもできるが、アルカリ金属水酸化物及び前記アニオン性基を有する樹脂と、他の配合成分を一括配合して混練用の混合物を作製するほうが、該樹脂の顔料の表面への吸着が効率的に進行する点で好ましい。
〔湿潤剤〕
顔料分散体を製造するにあたっては、ある程度の溶剤存在下で混練することが好ましい。溶剤が存在しないと充分に混練することができず、顔料の表面が濡れないため、樹脂による被覆が不充分となるおそれがある。
そこで、顔料分散体に湿潤剤を配合すると、この湿潤剤にて前記樹脂を溶解、一部溶解若しくは膨潤させることにより、顔料の粒子の表面に樹脂の均一な被膜を形成することができる。
その結果、水性顔料分散液とインク組成物において分散安定性をさらに向上させることができる。
なお、本発明においては、アルカリ金属水酸化物の水溶液を用いるため、これらが上記の溶剤の役割を果し、湿潤剤を敢えて添加する必要がない場合もある。
湿潤剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。
例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびこれらと同族のジオール等のジオール類;ラウリン酸プロピレングリコール等のグリコールエステル;ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシルの各エーテル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブ等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ペンチルアルコール、およびこれらと同族のアルコール等のアルコール類;あるいは、スルホラン;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドン等のラクタム類;グリセリンや、ポリオキシアルキレンを付加したグリセリン等のグリセリン誘導体等;水溶性有機溶剤として知られる他の各種の溶剤等を挙げることができる。
これらの湿潤剤は1種または2種以上混合して用いることができる。湿潤剤の選択は、使用する樹脂によって決まるが、ある程度の溶解性を持つものが好ましく、樹脂の溶解性によりその添加量が調整される。
中でも、水性顔料分散液やインク組成物において、湿潤剤、乾燥防止剤としての役割も果たすため、高沸点、低揮発性で、高表面張力の常温で液体の多価アルコール類が好ましく、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類が好ましい。グリコール類は一般的にインク組成物に含まれている場合が多く、最終製品中に残留しても問題がない。特に本発明の製造方法においてはアルカリ金属水酸化物の存在下で混練するため、水溶性有機溶剤として、特に樹脂の溶解力の高いものは不要である。
なお、湿潤剤は、使用する樹脂によっても異なるが、仕込みの混合物中に10〜50質量%配合されることが好ましく、20〜40質量%配合されることがより好ましい。
また、湿潤剤の配合量は、樹脂量の1/2〜5倍程度が好ましく、樹脂量の1〜4倍程度がより好ましい。湿潤剤の量が樹脂量の1/2未満では樹脂を溶解、部分溶解、または膨潤させることができない場合があり、顔料の分散安定性が低下するおそれがある。
一方で、5倍を超えると混練用混合物粘度が低下し、効率よく混練が行えない場合があり、顔料の分散性が低下し、インク組成物において、吐出不良等の画質低下を生じさせるおそれがある。
なお、上述の様に、アルカリ金属水酸化物水溶液等に由来して溶剤の役割を果たすものが他に配合されている場合には、これを考慮して湿潤剤の配合量を決定すると好ましい。
また、湿潤剤は顔料に対して、質量比で1/5倍以上配合すると好ましく、1/3〜1倍配合するとより好ましい。これにより、樹脂が常に半溶解もしくは膨潤状態となりつつ混練工程が進行し、顔料表面への樹脂被覆が良好に行われる。1/5倍未満では、混練初期に顔料の表面を充分に濡らすことができない場合や、樹脂を溶解、部分溶解、または膨潤させることができない場合があり、その効果を充分に得ることができないおそれがある。
〔他の樹脂〕
前記アニオン性基を有する樹脂を、発明の効果を妨げない範囲で使用することも可能である。例えば、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法においては、混練工程における混合物、及び顔料分散体の固形分含有比率を50〜80質量%に維持して混練を行うことが好ましい。
このような固形分含有比率を維持しつつ混練を進行させることにより、混練開始から終了までの間、樹脂と顔料が高い剪断力を受けて混練され、顔料がより粒径の細かな微粉へと解砕されるとともに、前記樹脂による顔料表面の被覆が効果的に進行する。
その結果インク組成物の分散安定性、長期保存安定性を著しく向上させることができる。50質量%以上の場合、混合物の粘度が上昇するため、高シェアによる混練が行われ、顔料の解砕が効率よく行われるため、粗大粒子が水性顔料分散液に混入しにくい。
80質量%を超えると、混合物が固くなりすぎて混練が進まず顔料の分散が不十分になるおそれがある。また、混練終了後に混練物を水性媒体中に分散させることが困難となるおそれがある。固形分含有比率の調整には湿潤剤のほか、適宜水を用いても良い。
さらに、このような固形分含有比率で混練を行うと、混練終了後においても少なくとも20質量%の湿潤剤等の液体分が混練物中に残存しているため、混練後に水性媒体を加えて攪拌するだけで混練物の水性媒体への分散を、極めて短時間に進行させることができ製造効率を向上させることができる。
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法においては、閉鎖系の混練装置を用いると、混練中に水性媒体が揮散せず、固形分含有比率の上昇を防ぎ、一定固形分含有比率の範囲において混練を進行させることができ好ましい。さらに、水性媒体の総量を維持することができ、固体状の混練物の質量が実質的に変化しない様に混練することができる。
このため混練後にも混練物中に水性媒体が一定量残留するため、混合工程において水性媒体へ混練物を容易に分散させることができる。
なお本発明において、閉鎖系とは、必ずしも完全な密閉状態を指すものではなく、外気を完全に遮断した真空にもひけるほどの密閉状態による混練は必要ではない。
本発明における閉鎖系の混練装置とは、混練領域を閉鎖することのできる非開放的な混練装置であって、混練物の混練中の質量が90質量%以上の範囲で維持されるような混練装置である。
このような閉鎖系の混練装置としては、撹拌槽と、一軸あるいは多軸の撹拌羽根を備えた混練装置を用いると好ましい。撹拌羽根の数は特に限定しないが、高い混練作用を得るためには二つ以上の攪拌羽根のものが好ましい。
このような混練装置は例えば二本ロールや三本ロールと異なって、混練開始時における仕込み原料の形態に制約が少なく、液体、固体の原料を直接攪拌槽に投入して原料混合を攪拌槽内で行い、そのまま混練工程へと移行することができる。
またさらにこの様な構成の混練装置を用いると、混練物を製造した後、これを同一撹拌槽中で直接水性媒体で希釈し分散させて、前記混練物の粘度を低下させ分散工程へと移行させることができるため、製造効率が良い。
この様な混練装置としてはヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー等が例示される。
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法に用いる製造装置としては特にプラネタリーミキサーが好ましい。
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法においては、混練物の混練状態に依存して、混練物の粘度が広い範囲で変化するが、プラネタリーミキサーは特に低粘度から高粘度まで広範囲の粘度を有する混練物に対応することができ、攪拌槽中にデッドスペースが少なく、材料仕込みから混練、混練物の希釈に至るまで、攪拌槽中の混練物を一様に混練、攪拌できるため製造効率が良い。
次いで、混練工程で作製した顔料分散体を水性媒体中に分散させてインクジェット記録用水性顔料分散液を製造する。なお、顔料分散体中の顔料は混練工程における前記混練物の混練時に既に解砕されており、また、アルカリ金属水酸化物で中和されたアニオン性基を有する樹脂に被覆されていて、水に対する分散性が良好なので、混合工程で水性媒体中に速やかに分散し製造効率が向上する。
〔水性媒体〕
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液において、顔料及び前記アニオン性基を有する樹脂を分散もしくは溶解させる水性媒体は、水もしくは水と水溶性有機溶剤との混合物である。
水性媒体は水のみでもよいし、インクジェット記録用インク中で、乾燥防止、粘度調整、湿潤剤、濃度調整等の諸機能を発揮することができる水溶性有機溶剤を配合しても良い。
水溶性有機溶剤の具体例としては、上述した湿潤剤と同様のものが挙げられ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、およびこれらのポリオキシアルキレン付加物等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン等のグリセリン類;ジエチレングリコールジエチルエーテル、およびこれらのポリオキシアルキレン付加物等の多価アルコールのエーテル類;アセテート類;チオジグリコール;N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物類;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの水溶性有機溶剤は湿潤剤としても機能する場合がある。
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造に際し,必ずしも分散機を用いた分散工程は必要ではないが,分散機による分散を実施する場合には,分散機として公知のものを用いることができる。例えば、メディアを用いたものでは、ベイントシェーカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミル等を挙げられる。またメディアを用いないものとしては、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機等があげられるが、これらの中でもメディアを用いた分散機は分散能力が高いため好ましい。なお分散後に必要に応じて水性媒体で濃度調整を行っても良い。
また、必要に応じて水性顔料分散液調整時に、さらに塩基性化合物等各種公知の添加剤を配合することができる。
塩基性化合物を添加すると分散安定性等が向上し好ましい。
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法により製造されるインクジェット記録用水性顔料分散液は、粗大粒子が非常に少なく、かつ保存安定性が非常に良好である。このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推察される。本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液に用いられる前記アニオン性基を有する樹脂は、(a)成分由来の炭素数8〜20のアルキル基がペンダント状に存在しており、該ペンダント状のアルキル基は、耐アルカリ性が高く、アルカリ金属水酸化物の存在下で長期保存した場合であっても分解されにくい。さらに、該ペンダント状のアルキル基は、顔料に対する親和性が高い上に、比較的とり得る構造の自由度が高い。したがって前記アニオン性基を有する樹脂は、該ペンダント状のアルキル基により、十分に顔料を被覆することができ、その結果、顔料粒子の再凝集が効果的に抑制されるためではないかと推察される。
〔インクジェット記録用水性インク〕
本発明のインクジェット記録用水性インクは、上述の様にして得られたインクジェット記録用水性顔料分散液をさらに水性媒体にて希釈して製造することができる。インクジェット記録用水性インク中に含有される顔料濃度は2〜10質量%程度が好ましい。
インクジェット記録用水性顔料分散液を希釈する水性媒体は水のみでもよいが、乾燥防止、粘度調整、濃度調整に寄与する湿潤剤を配合することができる。
また、前記水性媒体中に記録媒体への浸透性を示す水溶性有機溶剤が配合されていると、インクジェット記録用水性インクに浸透性を付与することができ、好ましい。
この他、インクジェット記録用水性インクには公知の添加剤等を配合することができる。 配合可能なものとしては、例えばアルカリ剤、pH調整剤、界面活性剤、防腐剤、キレート剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線硬化性樹脂等を例示することができる。
本発明のインクジェット記録用水性インクは、顔料を用いた水性のインクジェット記録用のインクとして好適に用いることができる。適用するインクジェットの方式は特に限定するものではなく、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型等)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等)等の公知の方式のプリンターに等しく適用が可能である。また、特にサーマル方式のインクジェットプリンターに好適に適用することができ、分散安定性、保存安定性に加え、極めて安定したインク吐出が可能となる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
〔樹脂酸価の測定〕
(全酸価:酸無水物を開環させて測定する方法)
樹脂酸価は、以下の様に測定した。
樹脂2.0gに1,4−ジオキサン30ml、ピリジン10mlと4−ジメチルアミノピリジン20mgを加え、加熱して30分〜1時間かけて溶解する。これにイオン交換水3.5mlを加え、4時間リフラックスさせる。
これを冷却後、指示薬として1%フェノールフタレインエタノール溶液を2〜3滴加え、0.5N水酸化カリウムエタノール溶液で滴定する。滴定の終点は、指示薬が30秒間持続する微紅色を呈した点とした。
酸価 = V×F×28.05/S
V : 0.5N水酸化カリウムエタノール溶液の使用量(ml)
F : 0.5N水酸化カリウムエタノール溶液の力価
S : 試料量(g)
〔樹脂の分子量の測定〕
質量平均分子量はGPC測定装置(東ソー(株)製HLC−8120GPC)を使用し、分離カラムとして東ソー(株)製TSK−GEL GMH HR−Hを2本組み合わせて使用し、カラム温度:40℃・溶媒:テトラヒドロフラン・溶媒濃度:0.1質量%、フィルター:0.5μm・流量:1ml/minにて測定し、標準ポリスチレンを用いて換算し分子量を求めた。
(樹脂合成例1)
温度計、リービッヒ冷却管、攪拌機、滴下ロート及び窒素導入管の付いた反応槽に、反応溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150質量部を仕込み、窒素置換しながら内温147℃で還流させた。そこへ滴下ロートを用いてメタクリル酸ステアリル20質量部、スチレン60質量部、アクリル酸20質量部、開始剤としてジ−t−ブチルパーオキサイド3.5質量部の混合溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後3時間保温した後、内温を170℃まで昇温しながら常圧蒸留し、内温170℃到達後、10hPaの減圧下で1時間未反応物を留去し、水性顔料分散用樹脂1を得た。この樹脂1の質量平均分子量は8,300、酸価147mgKOH/gであった。
(樹脂合成例2〜12)
(a)成分、(b)成分、(c)成分を表1に示す単量体及び質量部に変えた以外は、樹脂1と同様の操作を行い、水性顔料分散用樹脂2〜12を得た。また、使用した反応溶剤量と開始剤量は分子量調整用として適宜変更した。樹脂2〜12の物性値を表1に示した。
表1中、Stはスチレンを、AAはアクリル酸を、MAAはメタクリル酸を示す。
Figure 2012219145
(実施例1)
〔プラネタリーミキサーによる顔料分散工程〕
容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50V((株)井上製作所製) に、
合成例1で得た樹脂1を1500質量部、ファストゲンブルーTGR( Pigment Blue 15:3)( DIC(株)製)を5000質量部、34質量%水酸化カリウム水溶液650質量部、及びジエチレングリコール2300質量部仕込み、ジャケットを加温し、内容物温度が60℃になるまで低速(自転回転数:21rpm,公転回転数:14rpm)で混練を行い、内容物温度が60℃に達した後、高速(自転回転数:35rpm,公転回転数:24rpm)に切替えて混練を継続した。
高速への切替時のプラネタリーミキサーが最大負荷電流値を示してから15分後、プラネタリーミキサーの負荷電流値は低下し安定した。この状態で混練を3時間継続して混練物を得た。続いて、撹拌槽内の混練物に、イオン交換水を500質量部加え、混練を継続し、均一に混合されたことを確認し、さらに500質量部のイオン交換水を加え、同様に均一に混合されるまで混練し、粘度調整を行った。以下同様にして、イオン交換水を500質量部ずつ加え、総量4000質量部のイオン交換水を加えた。次いで、混練を継続しながら、イオン交換水を加える量を1000質量部/回にし、上記と同様に均一に混合されたことを確認しながらさらに総量4000質量部のイオン交換水を加えた。
続いて、ジエチレングリコール1700質量部、イオン交換水14000質量部、及び防腐剤33質量部を加えて撹拌した後、さらにイオン交換水にて顔料濃度が15質量%になるように調整し、プラネタリーミキサーから水性顔料分散液を取り出した。
〔遠心処理工程〕
連続式遠心分離機(国産遠心機(株)製 H−600S、2L容量)に通じ、室温にて18900Gの遠心力、12分間の滞留時間で、連続的に遠心分離を行い、水性顔料分散体の遠心処理を行った。回収した分散体にイオン交換水を加えて顔料濃度が13.5質量%となるように調整して実施例1のインクジェット記録用水性顔料分散液を得た。
(実施例2)
(実施例1)における樹脂1の1500質量部に替えて2000質量部、34質量%水酸化カリウム水溶液650質量部に替えて865質量部とした以外は実施例1と同様にして、実施例2のインクジェット記録用水性顔料分散液を得た。
(実施例3〜11)
以下同様にして、表2に示した組成にて分散体の製造を行い、実施例3〜11のインクジェット記録用水性顔料分散液を得た。表2中、PLMはプラネタリーミキサーを、ビーズはビーズミルを、R/Pは樹脂(Resin)と顔料(Pigment)の質量比率を示す。
(比較例1)
〔ビーズミルによる顔料分散工程〕
清浄なステンレス製100L容器に、ジエチレングリコール4000質量部、イオン交換水22000質量部、合成例1で得た樹脂1を1500質量部、及びジエタノールアミン415質量部を仕込み、タービン型撹拌羽根を具備した分散撹拌機を用いて撹拌して溶解させた。
続いて、撹拌しながらファストゲンブルーTGR( Pigment Blue 15:3)(DIC(株)製)5000質量部を加えた後、さらに1時間撹拌しスラリー状物を得た。
このスラリー状物をビーズミル(浅田鉄工(株)製ナノミルNM−G2L) にて、下記条件で4回分散機を通す(4パス)ことで分散を行った後、防腐剤33質量部を加えて撹拌した後、さらにイオン交換水にて顔料濃度が15質量%になるように調整し、水性顔料分散液を得た。

<ビーズミルでの分散条件>
ビーズ φ0.3mmジルコニアビーズ
ビーズ充填量 85%
冷却水温度 10℃
回転数 2660rpm ( ディスク周速:12 .5m/sec)
送液量 200g/min
〔遠心処理工程〕
連続式遠心分離機(国産遠心機(株)製 H−600S、2L容量)に通じ、室温にて18900Gの遠心力、12分間の滞留時間で、連続的に遠心分離を行い、水性顔料分散液の遠心処理を行った。回収した分散体にイオン交換水を加えて顔料濃度が13.5質量%となるように調整して比較例1のインクジェット記録用水性顔料分散液を得た。
(比較例2)
比較例1におけるジエタノールアミン415質量部を34質量%水酸化カリウム水溶液650質量部に替えた以外は比較例1と同様にして、比較例2のインクジェット記録用水性顔料分散液を得た。
(比較例3〜5)
比較例1と同様にして、表2に示した組成にて水性顔料分散液の製造を行い、比較例3〜5のインクジェット記録用水性顔料分散液を得た。表2中、PLMはプラネタリーミキサーを、ビーズはビーズミルを、R/Pは樹脂(Resin)と顔料(Pigment)の質量比率を示す。
Figure 2012219145
実施例1〜11、及び比較例1〜5のインクジェット記録用水性顔料分散液の性状を以下の試験方法で測定し、結果を表3に示した。
〔体積平均粒径〕
上述の様にして得られた実施例、比較例のインクジェット記録用水性顔料分散液について、マイクロトラックUPA150EX粒度分析計(日機装(株)製)でセル温度25℃にて粒径測定を実施した。その際、粒径測定サンプルとしては、各サンプルともにイオン交換水で各分散体の顔料濃度を12.5質量%に希釈して調製し、更にイオン交換水で500倍に希釈したものを用いた。
〔粗大粒子数〕
粗大粒子数は、AccuSizer 780 (Particle Sizing Systems, Inc.)を用いて測定した。その際、粗大粒子数測定サンプルとしては、各サンプルともに200〜10000倍のイオン交換水を加えて顔料濃度を低下させ、検出器をサンプルが毎秒1ml通過する際に、粒子径が0.5μm以上の粗大粒子のカウント数が1000から4000となるように希釈を行ったものを用いた。
粗大粒子数を測定後に希釈倍率を考慮して、顔料濃度12.5質量%のインクジェット記録用水性顔料分散液1ml中に存在する粗大粒子数に換算した。
〔保存安定性〕
保存安定性については、実施例、比較例の水性顔料分散液を60℃条件下で保管して評価した。試験開始前の初期の粒径と試験開始6週間後の粒径との変化割合によって評価した。評価基準は以下の通りである。
5%以下のものを・・・・・◎、
5%を超えて10%以下のものを・・・・○、
10%を超えて20%以下のものを・・・△、
20%を超えるものを・・・・×
〔インクジェット吐出安定性〕
(試験用インクの調製)
各実施例、及び比較例で得たインクジェット記録用水性顔料分散液23.1質量部に対して、ジエチレングリコール5部、サンニックスGP−600(三洋化成工業(株)製)5質量部、グリセリン3質量部、及びイオン交換水63.9質量部を加えて均一に撹拌し、顔料濃度が3質量%であるインクジェット記録用水性インクを調製した。
(吐出試験):インク調製直後
調製した各インクジェット記録用水性インクを、インクジェットプリンター(HP社製Photosmart D5360)を用いて試験した。インクを黒色用カートリッジに充填後、試験開始時にノズルチェックテスト用パターンを印刷した。更にモノクロームモードでA4用紙1枚の340cm2の範囲に印刷濃度設定100%の印刷をした後にノズルチェックテスト用パターンを印刷し、試験前後のノズルの状態を比較し、
ノズル欠けが発生しないものを・・・・・・・・・◎、
ノズル欠けが増加しないものを・・・・・・・・・○、
ノズル欠けが1〜5ヶ所以下増加するものを・・・△、
ノズル欠けが6ヶ所以上増加するものを・・・・・×
として評価した。
(吐出試験):経時後
上記のインク調製直後の試験後、試験インクをカートリッジに充填したまま4週間放置した後、調製直後と同様の印刷試験を行った。
Figure 2012219145
表3に示されるように、実施例1〜11のインクジェット記録用水性顔料分散液の体積平均粒径は、比較例3、5のインクジェット記録用水性顔料分散液の体積平均粒径と同程度である。
しかしながら、実施例1〜11のインクジェット記録用水性顔料分散液は、比較例3、5のインクジェット記録用水性顔料分散液と比較して遠心処理前の粗大粒子数が少なく、同じ遠心処理条件であっても遠心処理後の粗大粒子数が低減されていることが確認された。
実施例中、特に粗大粒子数が少ない実施例1、2、5、8のインクジェット記録用水性顔料分散液は、保存安定性もより優れていることが確認された。
更に、実施例1〜11のインクジェット記録用水性顔料分散液を用いたインクジェット記録用水性インクは、比較例1〜5のインクジェット記録用水性顔料分散液を用いたインクジェット記録用水性インクと比較して、吐出安定性に優れていることが確認された。
特に、調製方法のみが異なる実施例1と比較例2のインクジェット記録用水性顔料分散液を比較すると、プラネタリーミキサーを用いて調製された実施例1のインクジェット記録用水性顔料分散液のほうが、ビーズミル法で調製された比較例2のインクジェット記録用水性顔料分散液よりも、遠心分離処理後の粗大粒子数が顕著に少なく、プラネタリーミキサーを用いた方法のほうが、効果的に粗大粒子数を低減し得ることが確認された。
加えて、使用した塩基性化合物の種類が異なる比較例1と比較例2のインクジェット記録用水性顔料分散液を比較すると、水酸化カリウムを用いた比較例2のインクジェット記録用水性顔料分散液に比べて、ジエタノールアミンを用いた比較例1のインクジェット記録用水性顔料分散液は、粗大粒子数が多く保存安定性と吐出安定性もより劣っていた。
また、(a)成分の含有量が異なる実施例5と比較例3のインクジェット記録用水性顔料分散液を比較すると、(a)成分の含有量が2%しかない比較例3のインクジェット記録用水性顔料分散液では、実施例5のインクジェット記録用水性顔料分散液よりも、粗大粒子数も非常に多く、保存安定性と吐出安定性も悪かった。
さらに、(a)成分のアルキルメタクリレートの炭素数が異なる実施例6と比較例4のインクジェット記録用水性顔料分散液を比較すると、炭素数4のアルキル基を側鎖に有するアルキルメタクリレートを用いて作製された樹脂を用いた比較例4のインクジェット記録用水性顔料分散液では、実施例6のインクジェット記録用水性顔料分散液よりも、体積平均粒子径が明らかに大きく、粗大粒子数も非常に多く、保存安定性と吐出安定性も非常に悪かった。

Claims (5)

  1. 顔料、アニオン性基を有する樹脂、及びアルカリ金属水酸化物を含有する混合物を混練して、固形分含有比率50質量%以上の顔料分散体を製造する混練工程と、
    前記顔料分散体を水性媒体中に混合、撹拌する混合工程と、を有するインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法であって、
    前記アニオン性基を有する樹脂は、
    (a)下記一般式(1)
    Figure 2012219145
    (式中、Rは直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が8〜20のアルキル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
    で表される単量体、
    (b)スチレン系単量体、
    (c)α,β-エチレン性不飽和結合とアニオン性基とを有する単量体を含有する組成物を共重合して得られ、
    前記組成物の全単量体の総量中、前記(a)成分の割合が5質量%以上であり、前記(b)成分の割合が30質量%以上であり、
    酸価が、50〜300mgKOH/gであり、かつ、質量平均分子量が5000〜30000であることを特徴とするインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
  2. 前記混練工程における前記混合物は、前記アルカリ金属水酸化物及び前記アニオン性基を有する樹脂と、他の配合成分を一括配合してなる請求項1に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
  3. 前記混練工程における前記混合物、及び該混練工程において製造される前記顔料分散体の固形分含有比率が50〜80質量%である請求項1または2に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
  4. 前記顔料分散体中の前記アニオン性基を有する樹脂/前記顔料の質量比率が1/10〜2/1である請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法の製造方法により製造されたインクジェット記録用水性顔料分散液を含有することを特徴とするインクジェット記録用水性インク。
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