JP2009249471A - インクジェット記録用インク、記録方法及び記録装置 - Google Patents

インクジェット記録用インク、記録方法及び記録装置 Download PDF

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Abstract

【課題】加熱手段による定着工程を有するインクジェット記録方法に適し、熱可塑性樹脂を含むインクでありながら、得られた記録物が、印字品質に優れ、記録媒体全般に対しての耐擦過性や耐マーカー性といった画像堅牢性に極めて優れ、しかも、インクの保存安定性が良好であるインクの提供。さらに、広範囲な駆動条件で吐出した際、とりわけサーマルインクジェット方式に適用した場合にも、良好で安定した応答性を維持できるインクジェット記録用インクの提供。
【解決手段】記録媒体上で加熱されることで、該記録媒体に定着される水系インクであって、水と、熱可塑性樹脂により被覆された被覆顔料と、該顔料を分散させるための分散剤とを含有してなり、かつ、その分散平均粒径が50nm以上500nm以下であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
【選択図】なし

Description

本発明は、加熱定着機構を有するインクジェット記録方法に好適な、インクジェット記録用インク(以下「インク」と略す)と、これを用いたインクジェット記録方法、インクジェット記録装置に関する。特に、形成した記録物が印字品位と耐擦過性に優れ、インクの保存安定性が良好で、広範囲な駆動条件で吐出した際にも良好で安定した応答性を維持でき、サーマルインクジェット方式のヘッドにも対応できるインク、これを用いた記録方法、及び記録装置に関する。
インクジェット記録方法は、インクの小滴を飛翔させ、紙などの記録媒体に付着させて記録を行うものである。中でも、吐出エネルギー供給手段として電気熱変換体を用い、熱エネルギーをインクに与えて気泡を発生させることにより液滴を吐出させるサーマルインクジェット方式によれば、下記のような効果が得られる。すなわち、サーマル方式のインクジェット記録方法によれば、記録ヘッドの高密度マルチノズル化が容易に実現でき、高解像度、高品質の画像を高速で記録することができる(例えば、特許文献1〜3参照)。
近年、銀塩写真レベルの極めて高品位なインクジェット記録画像に対応するために、単一のノズルから吐出させるインク液滴のサイズが小さくなってきている。現在では、インクの液滴量が約10pl(ピコリットル)以下のインクジェットプリンタが市販されるまでになっている。また、記録速度に関しても、より一層の高速化を求められてきており、それに伴って吐出時における、より高い駆動周波数への対応が急務である。
さらに、インクジェット記録画像の堅牢性に関してもより一層の向上が望まれており、それに伴ってインクを構成する色材に顔料を採用することの検討が活発となってきている。顔料をインクジェット用の水性インクの色材として用いる場合には、水性媒体中に顔料を安定して分散させることが肝要である。一般に、顔料を水性媒体中に均一に分散させるためには、分散剤を用いる方法や、顔料表面を改質して親水化して、顔料に自己分散性を付与する方法などが知られており、種々の工夫がなされている。例えば、分散剤を用いる方法には、水性媒体に対して顔料を安定に分散させるための親水基と、疎水性である顔料表面に物理的に吸着するための疎水部とを有する樹脂分散剤を用いる方法(例えば、特許文献4参照)がある。また、顔料表面を改質する方法としては、酸化反応などにより顔料表面を親水化処理する方法(例えば、特許文献5参照)などが知られている。
顔料表面を酸化反応などにより親水化処理する方法によって得られた顔料を用いた形態のインクによれば、普通紙などの記録媒体に印字した場合、樹脂分散剤を用いる方法によって得られた形態のインクに比べ、印字濃度の高い記録物を得ることができる。しかし、この形態のインクを用いて得られた画像は、耐擦過性や蛍光マーカーペンによる耐マーカー性は十分でないことがあった。また、光沢紙への印刷物の場合には、光沢性に支障があった。
一方、インク打ち込み量が少ない場合には、樹脂分散剤によって顔料分散してなるインクを用いることで、耐擦過性、光沢性の比較的良好な画像が得られる場合もある。しかし、この場合には、上記の親水化処理した顔料を用いた場合に比べて、インクの保存安定性や吐出安定性の確保が難しいという別の問題がある。
上記の技術に関連したものとして、カーボンブラックに樹脂を被覆処理してなるインクジェット記録液用カーボンブラックが提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、この従来技術ではインクを自然乾燥により定着させているが、本発明者らの検討によれば、この場合には、本発明が目的とするような高いレベルの耐擦過性を画像に発現できる強固な定着を実現させることは難しい。
本発明者らは、上記したような今後の技術トレンドを背景とした課題に対し、顔料インクの分散安定性、吐出安定性を確保しつつ、記録物の耐擦過性や耐マーカー性といった高いレベルの画像堅牢性を満足し得るインクの開発が重要であると認識するに至った。本発明が目的とする各課題の概要を以下に説明する。
1.画像の耐擦過性・耐マーカー性
インクを記録媒体に印字し、得られた記録物に対して蛍光ペンなどのマーカーや指でなぞると、記録物が汚れてしまうことがある。この問題は、浸透力が強く、インク中の着色剤が染料である場合のように、記録媒体中に着色剤が吸収されるタイプのインクではあまり生じない。しかし、浸透力が弱く、かつ、着色剤が顔料のような記録媒体の表層部に留まるタイプのインクでは問題となることが多い。特に、分散樹脂などが使用されていない自己分散型の顔料を用いたインクの場合、この現象は顕著である。また分散樹脂を用いたタイプの顔料インクでも、打ち込み量が多くなる、例えば、減法混色法によって2次色のレッド、グリーン、ブルーなどを表現する場合に、大きな技術的課題となっている。そして、上記した場合におけるカラー画像の耐擦過性・耐マーカー性は、電子写真方式によって得られるカラー画像と比して、格段に劣る結果となっている。
2.吐出安定性
顔料インクを、記録ヘッド微細孔(オリフィス)からエネルギー作用によってインクを飛翔させて記録を行う方式のインクジェット記録装置に使用した場合、その分散安定性がよくないインクでは、吐出安定性に著しい障害を起こすことがある。吐出安定性に障害が起こると、印字不良を発生し、画像品位が損なわれるという欠点があった。液滴量が10pl以下の微小液適量のプリンタの場合、従来のプリンタに比して、流路中のフィルタの目が細かくなっており、インクの制約も多い。とりわけ熱可塑性樹脂を含むインクは、この点、深刻な課題であり、その対策がとられたインクの開発が望まれている。
また、サーマルインクジェット方式により、液滴を吐出させて記録を行う際に、従来の水性顔料インクを使用すると、下記のような問題があった。すなわち、インクにパルスを印加すると、ある駆動電圧時においてはその熱により薄膜抵抗体上に堆積物ができ、インクの発泡が不完全で液滴の吐出が印加パルスに応答できないで不吐出が発生する場合がある。中でもインク中に熱可塑性樹脂を含有したインクの場合、問題が生ずる場合が多く、その対策がとられたインクの開発が待望されている。
特公昭61−59911号公報 特公昭61−59912号公報 特公昭61−59914号公報 特開平9−241564号公報 特開平8−3498号公報 特開2001−214089公報
したがって、本発明の目的は、加熱手段による定着工程を有するインクジェット記録方法に適し、熱可塑性樹脂を含むインクでありながら、下記のような優れた記録物が安定して得られるインクを提供することにある。すなわち、得られた記録物が、印字品質に優れ、記録媒体全般に対しての耐擦過性や耐マーカー性といった画像堅牢性に極めて優れ、しかも、インクの保存安定性が良好であるインクを提供することにある。さらに、広範囲な駆動条件で吐出した際、とりわけサーマルインクジェット方式に適用した場合にも、良好で安定した応答性を維持できるインクジェット記録用インクを提供することにある。本発明の別の目的は、上記優れたインクを提供することで、高品質の画像を安定して得ることができるインクジェット記録方法、インクジェット記録装置を提供することにある。
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、記録媒体上で加熱されることで、該記録媒体に定着される水系インクであって、水と、熱可塑性樹脂により被覆された被覆顔料と、該顔料を分散させるための分散剤とを含有してなり、かつ、その分散平均粒径が50nm以上500nm以下であることを特徴とするインクジェット記録用インクである。
また、本発明の別の実施形態は、インクジェット記録ヘッドを用いて、10pl以下のインク液滴を付与して記録を行うインクジェット記録方法において、上記インクが、上記構成のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法である。
また、本発明の別の実施形態は、インクジェット記録ヘッドを用いて、上記構成のインクを記録媒体上に付与する工程、得られた記録物を120℃以上220℃以下の範囲で加熱定着させる工程とを有することを特徴とするインクジェット記録方法である。
また、本発明の別の実施形態は、上記構成のインクを収容してなるインク収容部と、該インクを吐出させるインクジェット記録ヘッドと加熱定着部を具備してなることを特徴とするインクジェット記録装置である。
本発明によれば、加熱手段による定着工程を有するインクジェット記録方法に適し、熱可塑性樹脂を含むインクでありながら、下記のような優れた記録物が安定して得られるインクが提供される。すなわち、得られた記録物が、印字品質に優れ、記録媒体全般に対しての耐擦過性や耐マーカー性といった画像堅牢性に極めて優れたものであり、しかも、インクの保存安定性が良好であるインクが提供される。さらに、広範囲な駆動条件で吐出した際、とりわけサーマルインクジェット方式に適用した場合にも、良好で安定した応答性を維持できるインクが提供される。本発明によれば、上記優れたインクを提供することで、高品質の画像を安定して得ることができるインクジェット記録方法、インクジェット記録装置の提供が可能となる。
以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。本発明者らは、先に述べた従来技術の課題を解決し、今後の技術トレンドに最適なインクを開発すべく鋭意検討の結果、本発明に至ったものである。まず、従来の自然乾燥による定着では、本発明が目的とする高いレベルの画像の耐擦過性を実現することは難しいことに鑑み、インクを適用する記録装置が加熱定着機構を持つことを前提に、記録媒体上で加熱されて該媒体に定着されるインクの開発を行った。その結果、水系インクの構成を、熱可塑性樹脂にて被覆された被覆顔料を分散剤にて高度に分散させ、かつ、その分散平均粒径が特定の範囲内となるように設計することで、本発明の目的を極めて高いレベルで達成できることを見出し、本発明を為すに至った。より具体的には、インク中に分散されている分散物の平均粒径が、50nm以上500nm以下となるようにする。
本発明のインクは、水、熱可塑性樹脂により被覆された被覆顔料、該顔料を分散するための分散剤を必須成分として含有してなるが、これらの成分について説明する。
(顔料)
本発明のインクに使用される顔料については、特に限定されず、例えば、下記のものが挙げられる。インク中における顔料の含有量も特に限定されるものではないが、以下のような範囲にすることが好ましい。インク全量に対して、樹脂により被覆された被覆顔料としての形態で、0.1質量%以上15質量%以下、好ましくは0.2質量%以上12質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上10質量%以下とする。
黒色を有する顔料としては、カーボンブラックが好適に使用される。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック顔料が挙げられる。中でも、一次粒径が15nm以上40nm以下、BET法による比表面積が50m2/g以上300m2/g以下、DBP吸油量が40ml/100g以上150ml/100g以下、揮発分が0.5質量%以上10質量%以下の特性を持つものが好ましい。
また、カラーインクに使用される顔料としては、主として有機顔料が好適に使用される。具体的には、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料。リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの水溶性アゾ顔料。アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体。フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料。キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系顔料。ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系顔料。イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系顔料。ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッドなどのイミダゾロン系顔料。ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系顔料。インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料。フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレットなどの顔料が例示できる。
また、有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、下記に挙げるものを使用することが好ましい。C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、55、74、83、86、93、97、98、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185。C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71。C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272。C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50。C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64。C.I.ピグメントグリーン7、36。C.I.ピグメントブラウン23、25、26などが例示できる。
中でも好適な顔料としては、下記のものが挙げられる。しかし、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー13、17、55、74、93、97、98、110、128、139、147、150、151、154、155、180、185が挙げられる。シアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4が挙げられる。マゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド122、202、209、C.I.ピグメントバイオレット19が挙げられる。
(熱可塑性樹脂)
本発明のインクは、上記で説明したような顔料を熱可塑性樹脂で被覆してなる被覆顔料で構成する。以下、この際に使用する熱可塑性樹脂について説明する。顔料を被覆する熱可塑性樹脂としては、これらに限定されるものではないが、例えば、下記のようなものが使用できる。ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などのポリ塩化ビニル系樹脂。ポリ酢酸ビニルなどのポリ酢酸ビニル系樹脂。ポリスチレン系樹脂。ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂。ナイロン−6などのポリアミド系樹脂。ポリメチル(メタ)アクリレート、シリコーンアクリル樹脂などのアクリル系樹脂。ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂。ポリカーボネート、セルロース系樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、ノリル樹脂、ポリスルフォン、ケイ素系樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリイミドアミドなどが挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。顔料に対する被覆する熱可塑性樹脂の割合は、質量比で、0.1以上20以下であるが、好ましくは0.3以上15以下、より好ましくは0.45以上10以下である。
本発明のインクを構成する好適な被覆顔料(マイクロカプセル)を形成する方法としては、コア、シェル型の構造が得られるものであれば手段を選ばないが、特に好ましい方法として、転相法が挙げられる。中でも顔料の混合物と分散機能を有する樹脂を含有する混合体を有機溶媒相とし、該有機溶媒相に水を注入するか、水中に該有機溶媒相を注入する方法が、本発明の構成を達成する被覆顔料を得るのには極めて有効である。具体的な樹脂を被覆する方法例としては、限定されるものではないが、例えばテトラヒドロフラン(THF)中に所望の顔料と熱可塑性樹脂を投入して混錬させ、簡易分散の後、THFを蒸発除去させる方法などがある。
(分散剤)
本発明のインクは、上記のようにして得られる被覆顔料が、少なくとも水を含む水系媒体に分散されて構成される。この際に使用する分散剤としては、分散機能を有するものであればいずれのものも使用できるが、中でも水溶性ポリマーを利用したものがよく、ランダム構造よりも両親媒性のブロック構造を有するポリマーが好ましい。この理由は、吸着できなかったポリマー分散剤が、ブロック構造の場合、自己ミセルを形成し、保存時においても分散に悪影響を与えないからである。さらに好適なものとしては、少なくとも、疎水性モノマー、非イオン性親水性モノマー及びイオン性親水性モノマーの3成分を重合してなるブロック構造を有するポリマーが挙げられる。この場合におけるブロック構造とは、少なくとも上記の3成分で形成されるユニットによるブロック構造を有しているものを意味する。ポリマーの重量平均分子量は、30,000未満、好ましくは20,000未満、より好ましくは2,000以上10,000以下の範囲内である。
また、これらのポリマーについての製造方法は、下記に開示されている。特開平05−179183号公報、特開平06−136311号公報、特開平07−053841号公報、特開平10−87768号公報、特開平11−043639号公報、特開平11−236502号公報、特開平11−269418号公報が挙げられる。
ブロックポリマーに用いることができる代表的な疎水性モノマーとしては、次のモノマーがあるがこれらに限定されるものではない:ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート(BMA又はNBMA)、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート(LMA)、ステアリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシルエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、メタクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、p−トリルメタクリレート、ソルビルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、フェニルアクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、p−トリルアクリレート及びソルビルアクリレートなどである。好ましい疎水性モノマーはベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートであり、これらから製造されたホモポリマー及びコポリマー、例えばメチルメタクリレートとブチルメタクリレートとのコポリマーを用いてブロックポリマーを製造することが好ましい。
また、ブロックポリマーに用いることができる代表的な親水性モノマーとしては、次のモノマーがあるがこれらに限定されるものではない:メタクリル酸(MAA)、アクリル酸、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、ジエチルアミノエチルメタクリレート、第3−ブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、アクリルアミド及びジメチルアクリルアミドなどが挙げられる。メタクリル酸、アクリル酸又はジメチルアミノエチルメタアクリレートのホモポリマー又はコポリマーを用いてブロックポリマーを製造することが好ましい。
酸を含有するポリマーは直接製造されるか又は重合後除去されるブロッキング基を有するブロックされたモノマーから製造される。ブロッキング基の除去後に、アクリル酸又はメタクリル酸を生ずるブロックされたモノマーの例としては、トリメチルシリルメタクリレート(TMS−MAA)、トリメチルシリルアクリレート、1−ブトキシエチルメタクリレート、1−エトキシエチルメタクリレート、1−ブトキシエチルアクリレート、1−エトキシエチルアクリレート、2−テトラヒドロピラニルアクリレート及び2−テトラヒドロピラニルメタクリレートが挙げられる。
さらに、ポリマーが、ポリビニルエーテル構造を繰り返し単位としてなるユニットによってブロック構造を有しているものは、特に本発明のインクにおいて好適である。モノマーを重合し、上記したような構造のポリマーを得るために好ましく用いられる具体的な合成方法としては、下記に挙げる方法がある。すなわち、ポリマーブレタン誌15巻(1986年、417頁)、特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報などに記載されている青島らによるカチオンリビング重合による方法である。
本発明で使用するポリマーを形成するための親水性のモノマーの具体的な構造としては、下記の一般式(1)で表される構造のものが挙げられる。本発明では、このようなモノマーを重合してなるユニットによるブロック構造を有するポリマーを、分散剤として使用することが好ましい。勿論、本発明は、これに限定されるものではない。
Figure 2009249471
(式中、R0は、−X−(COOH)r、−X−(COO−M)rを表わす。−X−は、炭素数1から20までの直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、又は−(CH(R5)−CH(R6)−O)p−(CH2)m−CH3-r−若しくは−(CH2)m−(O)n−(CH2)q−CH3-r−、又は、それらのメチレン基の少なくとも一つがカルボニル基又は芳香環構造で置換された構造を表わす。上記rは1又は2を表わす。pは、1から18までの整数を表わす。mは0から35までの整数を表わす。nは1又は0を表わす。qは0から17の整数を表わす。Mは一価又は多価のカチオンを表わす。R5、R6はアルキル基を表わす。R5、R6は同じでも又は異なっていてもよい。)
上記一般式(1)で表される親水性のモノマーの具体例を以下に挙げる。これらの式中にあるM1は、水素、リチウム、ナトリウム、カリウムから選ばれ、Phは、フェニレン基を表わす。
Figure 2009249471
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Figure 2009249471
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本発明で好適に使用できるポリマーを形成するための疎水性モノマー或いは非イオン性親水性モノマーの具体的な構造としては、下記の一般式(2)で表される構造のものが挙げられる。また、本発明では、このようなモノマーを重合してなるユニットによるブロック構造を有するポリマーを、分散剤として使用することが好ましい。勿論、本発明は、これらに限定されるものではない。
Figure 2009249471
(式中、−R1は、炭素数1から18までの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、−Ph、−Pyr、−Ph−Ph、−Ph−Pyr、−(CH(R5)−CH(R6)−O)p−R7及び−(CH2)m−(O)n−R7から選ばれる。なお、芳香環であるPh又はPyr中の水素原子は、炭素数1から4の直鎖状又は分岐状のアルキル基と、また、芳香環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換していてもよい。上記pは1から18の整数、mは1から36の整数、nは0又は1である。R5、R6はそれぞれ独立に水素原子若しくは−CH3である。−R7は、水素原子、炭素数1から18までの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、−Ph、−Pyr、−Ph−Ph、−Ph−Pyr、−CHO、−CH2CHO、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2、−CH2COOR8からなる。R7が水素原子以外である場合、R7中の炭素原子に結合している水素原子は、炭素数1から4の直鎖状又は分岐状のアルキル基又は−F、−Cl、−Brと、また芳香環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換することができる。R8は、水素原子又は炭素数1から5のアルキル基である。Phはフェニル基、Pyrはピリジル基を表わす。)
上記一般式(2)で表される疎水性のモノマーの具体例を以下に挙げる。なお、これらの式中にあるPhはフェニレン基であり、C108はナフタレン基を表わす。
Figure 2009249471
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上記一般式(2)で表される非イオン性親水性モノマーの具体例を以下に挙げる。
Figure 2009249471
Figure 2009249471
Figure 2009249471
Figure 2009249471
なお、インク中における分散剤の含有量は、インク全量に対して0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましい。さらには、0.3質量%以上10質量%以下の範囲であることがより好ましい。インク中における分散剤の含有量がこの範囲よりも高いと、インクジェット記録用として所望されるインク粘度を維持するのが困難となる。また、顔料と分散剤の比は1:5乃至10:1であることが好ましい。顔料と分散剤の比がこの範囲から外れると、保存をしない製造直後のインクであっても、吐出性、とりわけサーマル方式での吐出性が悪くなるか、耐マーカー性・耐擦過性が悪くなる場合がある。
本発明の特徴は、先に説明した熱可塑性樹脂によって被覆された被覆顔料を、上記したような分散剤で分散させてインクとした場合に、その分散粒径が平均粒径で50nm以上500nm以下となるようにしたことにある。より好ましくは、50nm以上300nm以下、さらに好ましくは、50nm以上200nm以下とする。インク中の分散物の粒径が上記範囲になるようにインクを設計すれば、該インクは、分散安定性やインクジェット記録ヘッドからの吐出適正に優れ、しかも、該インクによって極めて高いレベルの耐擦過性を有する画像を安定して得ることができるものになる。これに対し、本発明者らの検討によれば、平均粒径が50nm未満であると、保存時に増粘する場合があり、インクの分散安定性やインクの吐出適正が損なわれるという問題がある。また、平均粒径が500nmを超えると簡易的な攪拌機構などの機械的な防止手段を導入しても、顔料沈降による不具合が生ずる場合があり、インクの分散安定性やインクの吐出適正に劣ったものになるという問題がある。平均粒径の測定方法としては、例えば、レーザ光の散乱を利用した、FPAR−1000、ELS−8000(大塚電子製)、マイクロトラックUPA 150(日機装製)などを使用して測定できる。
前記したような被覆顔料と分散剤として機能するポリマーを用いることで、本発明が必須とする、その分散粒径が平均粒径で50nm以上500nm以下となった状態のインクを容易に得ることができる。特に、これらの材料を用い、ビーズミルなどの分散機を用いて分散処理をし、その際に分散条件を適宜にコントロールすることで、本発明で所望する分散粒径の顔料分散体を容易に得ることができる。
(水性媒体)
本発明のインクは、水を必須成分とするが、インク中の水の含有量は、インク全質量に対して、30質量%以上であることが好ましく、また、95質量%以下であることが好ましい。また、水と水溶性溶剤が併用された水性媒体が使用される場合も多い。水と併用される構成材料としては、下記のものが挙げられる。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンタノールなどの炭素数1乃至5のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類。アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類。ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのオキシエチレン又はオキシプロピレン重合体。エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールなどのアルキレン基が2乃至6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類。1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、ブチル)エーテルなどのグリコールの低級アルキルエーテル類。トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテルなどの多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類。モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類。スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、尿素、エチレン尿素、ビスヒドロキシエチルスルフォン、ジグリセリン、トリグリセリンなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。特に良好なものとしては、エチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、エチレン尿素、トリメチロールプロパンが挙げられる。水と併用される水溶性溶剤の種類や含有量は特に限定されないが、インク全量に対して、例えば、3質量%以上であることが好ましく、また、60質量%以下であることが好ましい。
(界面活性剤)
本発明のインクにおいて、よりバランスのよい吐出安定性を得るためには、インク中に界面活性剤をさらに併有させることが好ましい。中でもノニオン界面活性剤を併有させることが好適である。ノニオン界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が特に好ましい。これらのノニオン界面活性剤のHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値は、10以上である。こうして併用される界面活性剤の含有量は、インク全量に対して0.01質量%以上5質量%以下、好ましくは0.05質量%以上4質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下である。
(その他の添加剤)
また、本発明のインクは、所望の物性値を有するインクとするために、上記した成分の他に必要に応じて、添加剤として、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤などを添加することができる。添加剤の選択は、インクの表面張力が25mN/m以上、好ましくは28mN/m以上になるようにすることが好ましい。
次に、本発明のインクジェット記録装置について、インクジェットプリンタを具体例として説明する。具体例に挙げたプリンタは、サーマル方式のプリンタであるが、本発明のインクは、サーマルインクジェット用のプリンタ用インクとした場合に、より効果的である。サーマルインクジェット方式の場合、駆動源である発熱ヒータ上にインク構成成分に起因する不溶物が堆積され、不吐出を引き起こす。この現象は、染料インクの場合には、あまり発生しない現象であるが、顔料インクの場合は、問題となることが多いからである。
図1は、吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の液体吐出ヘッドとしての液体吐出ヘッド及びこのヘッドを用いる液体吐出装置であるインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。図1において、インクジェットプリンタは、搬送装置1030と、記録部1010と、該記録部1010を往復運動させる駆動手段としての移動駆動部1006とを含んで構成されている。搬送装置1030は、ケーシング1008内に長手方向に沿って設けられる記録媒体としての用紙1028を図中に示す矢印Pで示す方向に間欠的に搬送するように構成されている。また、記録部1010は、搬送装置1030による用紙1028の搬送方向Pに略直交する矢印S方向に、ガイド軸1014に沿って略平行に往復運動せしめられるように構成されている。
上記搬送装置1030は、下記の構造を有し、これにより下記のように駆動する。搬送装置1030は、互いに略平行に対向配置されている一対のローラユニット1022a及び1022bと、一対のローラユニット1024a及び1024bと、各ローラユニットを駆動させるための駆動部1020とを備えている。これらの構造により、搬送装置1030の駆動部1020が作動状態とされると、用紙1028が、それぞれのローラユニット1022a及び1022bと、ローラユニット1024a及び1024bにより狭持されて、矢印P方向に間欠送りで搬送される。
上記移動駆動部1006は、下記の構造を有し、これにより下記のように駆動する。移動駆動部1006は、プーリ1026aと、該プーリ1026bに巻きかけられるベルト1016と、ローラユニット1022aと、上記ベルト1016を順方向及び逆方向に駆動させるモータ1018とを含んで構成されている。上記プーリ1026aは、所定の間隔をもって対向配置される回転軸に配されている。そして、プーリ1026aに巻きかけられるベルト1016は、ローラユニット1022bに略平行に配置され記録部1010のキャリッジ部材1010aに連結されている。これらの構造を有することで、モータ1018が作動状態とされてベルト1016が矢印R方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは、矢印S方向に所定の移動量だけ移動される。また、モータ1018が作動状態とされてベルト1016が図中に示した矢印R方向とは逆方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは矢印S方向とは反対の方向に所定の移動量だけ移動される。
さらに、移動駆動部1006の一端部には、キャリッジ部材1010aのホームポジションとなる位置に、記録部1010の吐出回復処理を行うための回復ユニット1026が記録部1010のインク吐出口配列に対向して設けられている。
また、記録部1010には、インクジェットカートリッジ1012Y、1012M、1012C及び1012Bが、それぞれ、キャリッジ部材1010aに対して着脱自在に備えられる。インクジェットカートリッジ1012Y、1012M、1012C及び1012Bには、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色インクがそれぞれに収容され、これにより各色の記録をする。
図2は、上述のインクジェット記録装置に搭載可能なインクジェットカートリッジの一例を示す。図示した例におけるカートリッジ1012は、シリアルタイプのものであり、インクジェット記録ヘッド100と、インクを収容するインク収容部(以下、インクタンク)1001とで主要部が構成されている。
インクジェット記録ヘッド100には、インクを吐出するための多数の吐出口832が形成されており、インクは、インクタンク1001から図示しないインク供給通路を介して液体吐出ヘッド100の共通液室(不図示)へと導かれるようになっている。図2に示したカートリッジ1012は、インクジェット記録ヘッド100とインクタンク1001とを一体的に形成し、必要に応じてインクタンク1001内に液体を補給できる構造のものである。しかし、これに限定されず、この液体吐出ヘッド100に対し、インクタンク1001を交換可能に連結した構造を採用するようにしてもよい。なお、インクジェット記録ヘッドを備えたインクジェットカートリッジが記録ユニットである。
本発明のインクジェット記録装置は、必須構成部として加熱定着部を有するものであることを要する。本発明の装置を構成する加熱定着部としては、熱ローラによるものが好適である。例えば、電子写真記録方式の熱定着機がそのまま使用できる。しかし、本発明のインクの顔料粒子は、電子写真のトナーに比べて粒径が1桁小さいため、トナーの場合よりも加熱温度を低減することができる。具体的には、120℃以上220℃以下の範囲で加熱定着できるものであればよい。より好ましくは130℃以上200℃以下、さらに好ましくは140℃以上180℃以下の範囲で加熱定着させることができればよい。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の記載で「部」、及び「%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。また、以下の記載で残部とは全体を100部とし、各成分を差し引いた残りをいう。
<被覆顔料1の調製例>
顔料として、比表面積220m2/g、一次粒径16nm、吸油量105ml/100gのカーボンブラックを使用し、熱可塑性樹脂として分子量10万のポリスチレンを使用した。まず、このポリスチレン3部と、上記のカーボンブラック10部とをTHF250gに共溶解し、減圧して脱気した。次に、超音波処理を併用して2時間攪拌後、ロータリーエバポレータで減圧乾固して、熱可塑性樹脂にて被覆された被覆顔料1を得た。得られた被覆顔料1の顔料に対する被覆樹脂の割合は、質量比で0.3であった。
<被覆顔料2の調製例>
ポリスチレンの投入量を5部とした以外は、被覆顔料1の調製例と同様な処理を行い、熱可塑性樹脂にて被覆された被覆顔料2を得た。被覆顔料2の顔料に対する熱可塑性樹脂の割合は、質量比で0.5であった。
<被覆顔料3の調製例>
ポリスチレン3部を、分子量6万のポリエチレンテレフタレート8部とした以外は、被覆顔料1の調製例と同様な処理を行い、熱可塑性樹脂にて被覆された被覆顔料3を得た。被覆顔料3の顔料に対する熱可塑性樹脂の割合は、質量比で0.8であった。
<樹脂1の調製例>
まず、表1に示したABCの各モノマーをポリマー原料として、カチオンリビング重合法(特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報記載)により、分散剤として使用する樹脂1を調製した。ABC各モノマーを用いて得られた樹脂1は、重合比A:B:C=48:24:12、数平均分子量Mn=16,300、数平均分子量と重量平均分子量の比Mn/Mw=1.1のABC型ブロックポリマーである。さらに、分散剤として良好に機能させるようにするために、下記のように処理してC成分がフリーのカルボン酸になったトリブロックポリマーを得た。すなわち、上記で得られたABC型ブロックポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質なポリマー水溶液を得、さらに、この水分散液中に塩酸を加えて中和した。なお、化合物の同定はNMR及びGPCを用いて行った。
Figure 2009249471
<顔料分散液1〜6の転相法による調製例>
上記で得たABC型の樹脂1と、先に調製した被覆顔料1、2、3とを用い、下記のようにして顔料濃度6%の顔料分散液1〜6を得た。15部の樹脂1に対して、被覆顔料1、2、3をそれぞれ15部混合しTHF250gに共溶解し、蒸留水500gを用いて水相へ変換した。その後、ビーズミル(商品名:スターミル MINICERアシザワファインテック製)を用いて、それぞれ表2に示した周速とパス数にて分散処理(0.1mmジルコニアビーズ、充填率85%)を行った。その後、THFを常温、減圧にて除去し、さらに、得られた各顔料分散液を水分除去により濃度調整を行って、顔料濃度6%の、分散条件のみが異なる顔料分散液1〜6を得た。表2に示した通り、それぞれの顔料分散液を調製する際の分散条件によって、各顔料分散液を含有させてなるインクの分散平均粒径は異なるものとなる。
<顔料分散液7の転相法による調製例>
被覆顔料の代わりに、被覆顔料の調製の際に原料として用いた未処理のカーボンブラック(未処理CBと略す)を使用し、周速及びパス数を表2の条件とした以外は、顔料分散液1〜6の調製と同様な処理を行い、顔料分散液7を得た。
<実施例インク1〜4と比較例インク1〜3の調製>
実施例及び比較例のインクの調製には、表2に示したように、上記で得た顔料分散液1〜7をそれぞれ使用した。そして、まず、下記処方にて、顔料分散液1〜7を含む各成分を混合(合計100部)し、これらを十分に混合撹拌した。次に、水酸化カリウムでpHを9.0に調整した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過して粗粒子を取り除き、それぞれのインクを得た。得られたインク名と分散平均粒径の値を、表2に示した。なお、比較例2のインクのみ、上記のようにしてインクを調製後、遠心分離により分球し、分散平均粒径が表2に示した値となるように調整した。
得られたインクについての分散平均粒径は、下記のようにして測定した。すなわち、実施例及び比較例の各インクを純水にて1,000倍希釈して、FPAR−1000(大塚電子製)にて測定した。表2に示した各インクの分散粒径値は、上記のようにして得た測定結果である。
[インク構成]
・各種顔料分散液 60部
・ジグリセリン 15部
・ポリエチレングリコール(分子量400) 5部
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数20、HLB17.5) 0.5部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH 川研ファインケミカル製)0.5部
・水 残部
<参考例インク1の調製>
各種分散液の代わりに染料としてC.I.フードブラック2(3.6部)を用いた以外は、実施例インク1〜4と比較例インク1〜3の調製と同様な処理を行い参考例インク1を得た。
Figure 2009249471
<評価>
上記のようにして得られた実施例1〜4及び比較例1〜3の各インクを、下記の方法で、それぞれ評価した。
[評価項目]
(1)インクの分散安定性
製造後、常温で1日経過した各インクをインクタンク(BJF900用)に10g注入した。そして、該タンクを搭載したサーマルインクジェット方式プリンタであるキヤノン製BJF900(吐出液滴量4.5pl)を用いて、駆動周波数1kHzで2パス全ベタの条件で印字させた。そして、得られた印字物を用いて、印字の際におけるプリンタインク流路中のインク詰まりによる印字状況を観察した。試験は、インクタンクを交換しつつ、最大3タンク分まで、連続印字を行うことで実施した。そして、連続して安定したインク吐出ができたか否かを下記の基準で評価して、各インクの保存安定性の評価とした。得られた評価結果を表3に示した。
A:3タンク分、印字してもインク吐出不良発生なし
B:第2タンク又は第3タンクで印字中に、インク吐出不良発生
C:第1タンクで印字中に、インク吐出不良発生
(2)インクジェット吐出適性
実施例及び比較例の各インクをサーマルインクジェット方式プリンタ、キヤノン製BJF900搭載のインクジェット記録用ヘッドを用いて、駆動周波数10kHzにて、標準電圧にて吐出させた。そして、各インクの液滴の吐出速度を、従来の染料インクである参考例インク1を使用した場合と、それぞれ比較した。そして、参考例インク1との比較において、インクジェット吐出性を下記の基準で評価した。評価結果を表3に示した。
A:参考例インクに比して吐出速度の低下が、20%未満である
B:参考例インクに比して吐出速度の低下が、20%以上50%以下である
C:参考例インクに比して吐出速度の低下が、50%を超えるか、不吐出となる
(3)印字物の耐擦過性
実施例及び比較例の各インクで、下記のようにして印字物を得た。各インクを搭載したキヤノン(株)製インクジェットプリンタ(商品名:BJF900)を用い、普通紙モードにて、キヤノン(株)製PPC用紙NSKに文字パターンを印字した。印字後、印字物を180℃に設定した加熱ローラーに通して加熱定着処理をした。この加熱定着処理の、1分後及び1時間後に印字部を指でなぞり、得られた印字物の耐擦過性の評価を行った。得られた評価結果を表3に示した。
A:1分後及び1時間後とも印字部にインクの尾引きが全く見られない
B:1分後の印字部ではインクの尾引きが僅かに見られる
C:1分後及び1時間後とも印字部にインクの尾引きが見られる
なお、加熱ローラーを通過させない状態で上記評価を行ったところ、全てのインクで評価Cであった。また、実施例インクを用いて印字物を得る場合に、加熱定着温度を上記の場合よりも低くした以外は上記と同様にして、各印字物の耐擦過性について評価した。その結果、加熱ローラー温度を110℃とした場合は、実施例3のインクのみ評価Bで、残りの3種のインクは評価Aであった。さらに、加熱ローラー温度を120℃とした場合は、全ての実施例のインクで評価Aであった。
Figure 2009249471
表3に示した評価結果より、実施例1〜4における本発明のインクはいずれも、良好なインクの分散安定性とインクジェット吐出適性を備え、さらに、加熱定着することで、より充分な耐擦過性を有する印字物が得られることが確認された。しかも、加熱定着温度は、120℃程度の低い温度で十分な効果が得られることを確認した。
液体吐出ヘッドを搭載可能なインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。 液体吐出ヘッドを備えたインクジェットカートリッジの一例を示す概略斜視図である。

Claims (10)

  1. 記録媒体上で加熱されることで、該記録媒体に定着される水系インクであって、水と、熱可塑性樹脂により被覆された被覆顔料と、該顔料を分散させるための分散剤とを含有してなり、かつ、その分散平均粒径が50nm以上500nm以下であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
  2. 被覆顔料は、顔料に対する被覆樹脂の割合が質量比で0.45以上である請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
  3. 分散剤が、両親媒性のブロック構造を有するポリマーである請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インク。
  4. 分散剤が、疎水性モノマー、非イオン性親水性モノマー、イオン性親水性モノマーの3成分から重合されるブロック構造を有するポリマーである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
  5. ブロック構造を有するポリマーが、さらにポリビニルエーテル構造を繰り返し単位とするユニットを有する請求項3又は4に記載のインクジェット記録用インク。
  6. さらに、界面活性剤を併有してなる請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
  7. サーマルインクジェット用である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
  8. インクジェット記録ヘッドを用いて、10pl以下のインク液滴を付与して記録を行うインクジェット記録方法において、上記インクが、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
  9. インクジェット記録ヘッドを用いて、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクを記録媒体上に付与する工程、得られた記録物を120℃以上220℃以下の範囲で加熱定着させる工程とを有することを特徴とするインクジェット記録方法。
  10. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクを収容してなるインク収容部と、該インクを吐出させるインクジェット記録ヘッドと加熱定着部を具備してなることを特徴とするインクジェット記録装置。
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