JP6904523B2 - インクジェット印刷用水系インク - Google Patents

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Description

本発明は、非平面の非吸液性印刷媒体に印刷するインクジェット印刷用水系インク、及び該インクを用いる非平面印刷媒体へのインクジェット印刷方法に関する。
インクジェット印刷方式は、微細なノズルからインク液滴を直接吐出し、印刷媒体に付着させて、文字や画像が記録された印刷物等を得る方式である。この方式は、フルカラー化が容易でかつ安価であり、印刷媒体に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。近年特に、記録物の耐候性や耐水性の観点から、着色剤に顔料を用いるものが主流となってきている。
アルミニウムやスチール等の金属からなる金属缶は、使用後に回収してリサイクルすることが可能であり、ポリエチレンテレフタレート製容器(PET容器)等に比べて環境にやさしいという利点がある。
さらに、PET容器を飲料容器として用いる場合、商品名や特徴を見栄えよく表示するために、合成樹脂フィルムに印刷を行い、これを外装として用いることが一般的であるが、金属缶ではその表面に直接図柄等を印刷することができるため、より環境負荷を低減できる。
金属缶への印刷は、今後、版を必要としないデジタル印刷に主流が移っていくとみられており、その中でも装置の小型化が可能で経済性に優れるインクジェット印刷方式が注目されている。
インクジェット印刷方式による金属等の非吸液性印刷媒体への印刷においては、印刷媒体に着弾したインクを直ちに固化させる紫外線硬化型インクが主に用いられてきた。
紫外線硬化型インクは硬化反応を開始させる光重合開始剤が必須であるが、この光重合開始剤の安全性に懸念があることが知られている。そのため光重合開始剤を用いない電子線硬化インクを用いるインクジェット印刷方法(特許文献1参照)や、油性インクの温度を25〜100℃に調節してインクジェット印刷を行う円筒形容器の製造方法(特許文献2参照)が提案されている。
近年、金属缶印刷用インクに含まれる有機溶剤が環境に与える影響を考慮し、水を主成分とする水系インクへの置き換えの要求が高まっている。
特許文献3には、印刷媒体に着弾した水性インクを速やかに固化させるため、水性インクを凝集させる反応液として、多価金属塩やポリアミン等を用いて増粘させる曲面記録媒体用の記録装置が開示されている。
一方、水系インクによる非吸液性印刷媒体へのインクジェット印刷は、吸液性印刷媒体への印刷に比べて定着性が著しく劣るため、良好な印刷品質を得ることは困難であった。
水系インクを用いて、平面の非吸液性基材に印刷する方法として、特許文献4には、ラテックスバインダーを用いて、最低被膜形成温度を70℃未満にしたインクを用いる印刷方法が開示されている。
特開2004−42464号公報 特開2013−177571号公報 特開2001−315316号公報 特表2014−507305号公報
球面や円筒面のような非平面の印刷媒体にインクジェット印刷を行う場合は、インク液滴が重力によって移動してしまういわゆる「液だれ」が避けられない。これを解決するためにはインクの粘度を高めることが考えられるが、粘度を上げると、インクジェット印刷におけるインクの吐出性が低下し、印刷速度を上げられなくなるという問題がある。
特許文献3及び4等に記載の従来の水系インクでは、非平面の非吸液性印刷媒体に対して満足し得る印刷ができていないのが実情である。
本発明は、印刷媒体が非平面であっても、インクが着弾した後に液だれが起こらず、高品質の印刷物を得ることができるインクジェット印刷用水系インク、及び該インクを用いる非平面印刷媒体へのインクジェット印刷方法を提供することを課題とする。
本発明者は、特定の酸価を有するポリマーで被覆された顔料と、特定の水溶性有機溶媒とを組み合わせ、水の含有量を45質量%以上85質量%以下とした水系インクにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1]非平面の非吸液性印刷媒体に印刷するインクジェット印刷用水系インクであって、
顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子、水溶性有機溶媒、及び水を含み、
該ポリマー粒子を構成するポリマーの酸価が85mgKOH/g以上280mgKOH/g以下であり、
該水溶性有機溶媒中の沸点100℃以上260℃以下の水溶性有機溶媒の含有量が75質量%以上であり、水の含有量が45質量%以上85質量%以下である、
インクジェット印刷用水系インク。
[2]前記[1]に記載の水系インクを用いて、非平面の非吸液性印刷媒体に印刷する、インクジェット印刷方法。
本発明によれば、印刷媒体が非平面であっても、インクが着弾した後に液だれが起こらず、高速であっても高品質の印刷物を得ることができるインクジェット印刷用水系インク、及び該インクを用いる非平面印刷媒体へのインクジェット印刷方法を提供することができる。
[インクジェット印刷用水系インク]
本発明のインクジェット印刷用水系インク(以下、単に「水系インク」又は「インク」ともいう)は、非平面の非吸液性印刷媒体に印刷するインクジェット印刷用水系インクであって、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子、水溶性有機溶媒、及び水を含み、
該ポリマー粒子を構成するポリマーの酸価が85mgKOH/g以上280mgKOH/g以下であり、
該水溶性有機溶媒中の沸点100℃以上260℃以下の水溶性有機溶媒の含有量が75質量%以上であり、水の含有量が45質量%以上85質量%以下である。
なお、「水系」とは、媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味する。
「非吸液性」とは、インク吸収能がない、又はインク吸収能が殆どないことを意味する。すなわち、インクの非吸液性、低吸液性を含む概念である。非吸液性は、純水の吸水性で評価することができる。より具体的には、印刷媒体と純水との接触時間100m秒における該印刷媒体の表面積あたりの吸水量が0g/m以上10g/m以下であることを意味する。該吸水量は、自動走査吸液計を用いて測定することができる。
「印刷」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念である。
本発明の水系インクは、印刷媒体が非平面であっても、インクジェットインクが着弾した後に液だれが起こらず、高品質の印刷物を得ることができる。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明においては、酸価が85mgKOH/g以上280mgKOH/g以下の水不溶性ポリマーを顔料分散剤として用いるため、インク中での顔料の分散安定性が向上し、インクジェット印刷におけるインクドットサイズが大きくなり、レベリング性(インクの広がり性)、画像均一性が向上し、高品質の印刷物を得ることができると考えられる。
また、印刷後乾燥して水が減少し、有機溶媒リッチな状態になると粘度が上昇するため、液だれを防止でき、有機溶媒が少ないことから臭気も低減することができる。
さらに、水溶性有機溶媒は、沸点100℃以上260℃以下の有機溶媒を75質量%以上含有し、水を45質量%以上85質量%以下含有するため、インクの粘度を適度に調整でき、インクジェット印刷において、広いドットサイズを維持しながら液だれを効果的に防止することができると考えられる。
<非平面の非吸液性印刷媒体>
本明細書において「非平面」とは、曲面、多角面を意味する。曲面とは、球面、及び円柱面、円錐面、円錐台面等の非球面を包含する。その中でも、インクジェット印刷の対象としては、円柱面、円錐面、円錐台面又は球面が好ましく、印刷操作におけるインクジェットヘッドや印刷媒体の移動又は搬送操作の観点から、円柱面がより好ましい。
円柱の半径が小さくなると、インク液滴が付着する部分の傾きが大きくなり、適正な印刷が困難になるおそれがあるため、円柱の半径は、好ましくは0.5cm以上、より好ましくは1.5cm以上、更に好ましくは3cm以上、より更に好ましくは4cm以上である。また、円柱の半径が大きくなると印刷媒体としての質量が大きくなり、印刷操作が困難になるため、円柱の半径は、好ましくは1m以下、より好ましくは50cm以下、更に好ましくは30cm以下、より更に好ましくは10cm以下である。
非吸液性印刷媒体としては、金属、合成樹脂、ガラス、セラミック、ゴム、皮革、コート紙、アート紙、合成紙、加工紙等からなるパイプ、棒状物等の媒体が挙げられるが、金属又は合成樹脂からなる印刷媒体が好ましく、金属からなる印刷媒体がより好ましい。
金属としては、鉄及び鉄合金、アルミニウム及びアルミニウム合金等が挙げられるが、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。また、各種の表面処理をした金属板、金属にポリエステルやポリオレフィン等の樹脂フィルムを被覆した積層体も好ましい。
合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、ポリカーボネート(PC)、PCとABS(50/50)ポリマーアロイ、トリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられる。これらの中では、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が好ましい。
<顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子>
(顔料)
本発明で用いられる顔料は、インクの液だれを防止し、高品質の印刷物を得る観点から、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子(以下、単に「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)として含有される。
顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよく、レーキ顔料、蛍光顔料を用いることもできる。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロム等の金属酸化物、真珠光沢顔料等が挙げられる。特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料の具体例としては、アゾレーキ顔料、不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料類;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンツイミダゾロン顔料、スレン顔料等の多環式顔料類等が挙げられる。
色相は特に限定されず、ホワイト、ブラック、グレー等の無彩色顔料;イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
前記顔料は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
<顔料含有ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマー>
顔料含有ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマー(以下、「ポリマーa」ともいう)は、少なくとも顔料分散能を有するものであれば特に制限はない。
本発明において水不溶性ポリマーの「水不溶性」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下であることを意味する。前記溶解量は、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。ポリマーaがアニオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。ポリマーaがカチオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのカチオン性基を塩酸で100%中和した時の溶解量である。
インク中でのポリマーaの存在形態は、顔料に吸着している状態、顔料を含有している顔料内包(カプセル)状態、及び顔料を吸着していない形態がある。これらの中では、顔料の分散安定性の観点から、顔料を水不溶性ポリマーが含有している顔料内包状態が好ましい。
ポリマーaは、顔料の分散安定性、保存安定性を向上させる観点から、イオン性基を有するものが好ましい。該イオン性基としては、酸基が好ましく、カルボキシ基(−COOM)、スルホン酸基(−SO3M)、リン酸基(−OPO32)等の解離して水素イオンが放出されることにより酸性を呈する基、又はそれらの解離したイオン形(−COO-、−SO3 -、−OPO3 2-、−OPO3 -M)等の酸基がより好ましい。上記化学式中、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。これらの中でも、顔料の分散安定性、保存安定性を向上させる観点から、カルボキシ基(−COOM)が好ましい。
ポリマーaの酸価は、インクの液だれを防止し、高品質の印刷物を得る観点から、85mgKOH/g以上であり、好ましくは95mgKOH/g以上、より好ましくは110mgKOH/g以上、更に好ましくは140mgKOH/g以上、より更に好ましくは180mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは400mgKOH/g以下、より好ましくは350mgKOH/g以下、更に好ましくは290mgKOH/g以下である。
なお、ポリマーaの酸価は、実施例に記載の方法により測定される。
ポリマーaの分子中に含まれるイオン性基は、イオン性モノマー(a−1)によりポリマー骨格に導入されてなるものが好ましい。すなわち、ポリマーaは、イオン性モノマー(a−1)由来の構成単位を含むものが好ましい。ポリマーaとしては、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。
これらの中では、ビニル系樹脂が好ましく、イオン性モノマー(a−1)(以下、「(a−1)成分」ともいう)と、疎水性モノマー(a−2)(以下、「(a−2)成分」ともいう)とを含む原料モノマー(a)(以下、単に「原料モノマー(a)」ともいう)を共重合させてなるビニル系樹脂がより好ましい。
該ビニル系樹脂は、(a−1)成分由来の構成単位と(a−2)成分由来の構成単位とを含むことが好ましい。該ビニル系樹脂は、顔料の分散安定性、定着性等を向上させる観点から、更にノニオン性モノマー(a−3)(以下、「(a−3)成分」ともいう)由来の構成単位を含むことができる。
〔イオン性モノマー(a−1)〕
イオン性モノマー(a−1)は、好ましくは酸基を有するモノマーであり、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等のカルボキシ基を有するモノマー;スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基を有するモノマー;ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等のリン酸基を有するモノマーが挙げられる。
これらの中でも、好ましくはカルボキシ基を有するモノマーであり、より好ましくは、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及び2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸から選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸である。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種を意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及びメタクリレートから選ばれる少なくとも1種である。
〔疎水性モノマー(a−2)〕
本発明において疎水性モノマー(a−2)の「疎水性」とは、モノマーを25℃のイオン交換水100gへ飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g未満であることをいう。疎水性モノマー(a−2)の前記溶解量は、顔料への定着性の観点から、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。
疎水性モノマー(a−2)は、好ましくは脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート及び芳香族基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種である。
脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートは、好ましくは炭素数が1以上22以下の脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有するものである。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート;イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、より好ましくは炭素数1以上10以下のアルキル基を有するものであり、更に好ましくは炭素数1以上8以下のアルキル基を有するものである。
芳香族基含有モノマーは、好ましくはヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい炭素数6以上22以下の芳香族基を有するビニルモノマーであり、より好ましくはスチレン系モノマー及び芳香族基含有(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上である。芳香族基含有モノマーの分子量は、500未満が好ましい。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン等が挙げられ、芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン及びベンジル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上である。
ポリマーaは、疎水性モノマー(a−2)としてマクロモノマー由来の構成単位を含むことができる。マクロモノマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上100,000以下の化合物であり、顔料の分散安定性の観点から、ビニル系樹脂のモノマー成分として用いられる。片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
マクロモノマーの数平均分子量は1,000以上10,000以下が好ましい。なお、該数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
マクロモノマーとしては、顔料の分散安定性の観点から、芳香族基含有モノマー系マクロモノマー及びシリコーン系マクロモノマーが好ましく、芳香族基含有モノマー系マクロモノマーがより好ましい。芳香族基含有モノマーとしては、前述の疎水性モノマーで記載した芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。
商業的に入手しうるスチレン系マクロモノマーの具体例としては、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
〔ノニオン性モノマー(a−3)〕
ノニオン性モノマー(a−3)としては、顔料の分散安定性、定着性等を向上させる観点から、好ましくは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す。以下、nは当該オキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。)(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール(n=1〜30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;フェノキシ(エチレングリコール/プロピレングリコール共重合)(n=1〜30、その中のエチレングリコール:n=1〜29)(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、更に好ましくはメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。
商業的に入手しうるノニオン性モノマー(a−3)の具体例としては、NKエステルM−40G、同90G、同230G等(以上、新中村化学工業株式会社の商品名)、ブレンマーPE−90、同200、同350等、ブレンマーPME−100、同200、同400等、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー50POEP−800B等(以上、日油株式会社の商品名)が挙げられる。
(原料モノマー(a)中又はビニル系樹脂中における各成分又は構成単位の含有量)
ビニル系樹脂製造時における、(a−1)成分、(a−2)成分、及び(a−3)成分の原料モノマー(a)中の含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又はビニル系樹脂中における(a−1)成分由来の構成単位、(a−2)成分由来の構成単位、及び(a−3)成分由来の構成単位の含有量は、顔料の分散安定性を向上させる観点から、次のとおりである。
(a−1)成分の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
(a−2)成分の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
(a−3)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
(a−2)成分に対する(a−1)成分の質量比[(a−1)成分/(a−2)成分]は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.25以上、更に好ましくは0.3以上であり、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.0以下である。
(ビニル系樹脂の製造)
ビニル系樹脂は、原料モノマー(a)を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により共重合させることにより製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に特に制限はないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール、炭素数3以上5以下のケトン類、エーテル類、酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましく、メチルエチルケトン又はそれと水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができる。
重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、tert−ブチルペルオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤の量は、原料モノマー(a)1モルあたり、好ましくは0.001モル以上5モル以下、より好ましくは0.01モル以上2モル以下である。
重合連鎖移動剤としては、メルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸等のカルボキシ基含有メルカプタン類;ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール等のアルキルメルカプタン;2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール等のヒドロキシ基含有メルカプタン類;チウラムジスルフィド類等の公知の連鎖移動剤を用いることができる。
また、重合モノマーの連鎖の様式に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト等のいずれの重合様式でもよい。
好ましい重合条件は、使用する重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるが、通常、重合温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは80℃以下である。重合時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上であり、そして、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下である。また、重合雰囲気は、好ましくは窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気である。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
ビニル系樹脂の数平均分子量は、顔料への吸着性及び分散安定性を向上させる観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは5,000以上であり、そして、好ましくは20,000以下、より好ましくは18,000以下である。
数平均分子量は、実施例に記載の方法により測定される。
〔顔料含有ポリマー粒子の製造〕
顔料含有ポリマー粒子は、顔料水分散体として下記の工程1及び2を有する方法により、効率的に製造することができる。
工程1:顔料、水不溶性ポリマー、有機溶媒、及び水を含む顔料混合物を分散処理して分散処理物を得る工程
工程2:工程1で得られた分散処理物から有機溶媒を除去して顔料含有ポリマー粒子の水分散体(以下、「顔料水分散体」ともいう)を得る工程
また、得られる水系インクの液だれを防止し、高品質の印刷物を得る観点から、必要に応じて、工程2で得られた顔料水分散体に架橋剤を添加して架橋し、顔料含有架橋ポリマー粒子の顔料水分散体とすることもできる。
(工程1)
工程1における顔料混合物は、水不溶性ポリマー(以下、「ポリマーa1」ともいう)を有機溶媒に溶解させ、次に顔料、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散液を得る方法により得ることが好ましい。ポリマーa1の有機溶媒溶液に加える順序に制限はないが、水、中和剤、顔料の順に加えることが好ましい。
工程1で用いる有機溶媒に制限はないが、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール等が好ましく、顔料への濡れ性、ポリマーa1の溶解性及び顔料への吸着性を向上させる観点から、炭素数4以上8以下のケトンがより好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが更に好ましく、メチルエチルケトンがより更に好ましい。ポリマーa1としてビニル系樹脂を溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
顔料混合物中のポリマーa1に対する有機溶媒の質量比[有機溶媒/ポリマーa1]は、顔料への濡れ性、吸着性及びポリマーa1の溶解性の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは1以上であり、そして、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.8以下である。
ポリマーa1が酸基を有する場合、該酸基の少なくとも一部は、中和剤を用いて中和されていることが好ましい。これにより、中和後に発現する電荷反発力が大きくなり、水系インクにおける顔料粒子の凝集を抑制し、顔料の分散安定性、保存安定性を向上できると考えられる。
中和する場合は、pHが7以上11以下になるように中和することが好ましい。
中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、各種アミン等の塩基が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム及びアンモニアである。
中和剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、ポリマーa1を予め中和しておいてもよい。
中和剤の使用当量は、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、また、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。
ここで中和剤の使用当量は、中和前のポリマーa1を「ポリマーa1’」とする場合、次式によって求めることができる。
中和剤の使用当量(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{ポリマーa1’の酸価(mgKOH/g)×ポリマー(B)の質量(g)}/(56×1,000)]〕×100
工程1における分散処理は、剪断応力による本分散だけで顔料粒子を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、均一な顔料水分散体を得る観点から、顔料混合物を予備分散した後、さらに本分散することが好ましい。
予備分散に用いる分散機としては、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。
本分散に用いる剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。これらの中でも、顔料を小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いて分散処理を行う場合、処理圧力やパス回数の制御により、顔料を所望の粒径になるように制御することができ、後述する顔料水散体の平均粒径も調整することができる。
処理圧力は、生産性及び経済性の観点から、好ましくは60MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは150MPa以上であり、そして、好ましくは300MPa以下、より好ましくは250MPa以下である。
また、パス回数は、顔料の小粒子径化及び分散安定性の観点から、好ましくは3パス以上、より好ましくは7パス以上であり、そして、好ましくは30パス以下、より好ましくは20パス以下である。
(工程2)
工程2は、工程1で得られた分散処理物から有機溶媒を除去して顔料水分散体を得る工程である。有機溶媒の除去は、公知の方法で行うことができる。得られた顔料水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残留していてもよい。残留有機溶媒の量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
また、粗大粒子等を除去する目的で、有機溶媒を除去した水分散体を、更に遠心分離した後、液層部分をフィルター等で濾過し、該フィルター等を通過してなるものを、顔料水分散体として得ることが好ましい。
工程2で得られた顔料水分散体に架橋剤を添加し、顔料含有ポリマー粒子を架橋させて、顔料含有架橋ポリマー粒子を含む顔料水分散体を得て、これを顔料水分散体として用いることもできる。この場合、架橋剤としては、分子中に2以上のエポキシ基を有する水不溶性多官能エポキシ化合物が好ましい。
顔料水分散体の不揮発成分濃度(固形分濃度)は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点及びインクの製造を容易にする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料水分散体中の顔料の含有量は、分散安定性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
顔料水分散体中の顔料含有ポリマー粒子を構成するポリマーaに対する顔料の質量比[顔料/ポリマーa]は、好ましくは50/50以上、より好ましくは55/45以上、更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下である。
顔料水分散体中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは60nm以上、より更に好ましくは70nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは130nm以下、より更に好ましくは110nm以下である。
なお、顔料が酸化チタンの場合には、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、白色度を高める観点から、好ましくは120nm以上、より好ましくは150nm以上、更に好ましくは200nm以上、より更に好ましくは250nm以上であり、そして、好ましくは600nm以下、より好ましくは550nm以下、更に好ましくは500nm以下、より更に好ましくは450nm以下である。
平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明の水系インクは、インクの液だれを防止し、高品質の印刷物を得る観点から、更に顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子を含有することができる。
顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子を構成するポリマーとしては、ポリウレタン及びポリエステル等の縮合系ポリマー;アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、スチレン−アクリル系ポリマー、ブタジエン系ポリマー、スチレン−ブタジエン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、及びアクリルシリコーン系ポリマー等のビニル系ポリマーが挙げられる。これらの中では、インクの液だれを防止し、高品質の印刷物を得る観点から、アクリル系ポリマー粒子、ポリウレタン樹脂粒子がより好ましい。
<水溶性有機溶媒>
本発明のインクジェット印刷用水系インクは、インクの液だれを防止し、高品質の印刷物を得る観点から、水溶性有機溶媒を含有するが、該水溶性有機溶媒は、沸点100℃以上260℃以下の水溶性有機溶媒を該水溶性有機溶媒中に75質量%以上含有する。
水溶性有機溶媒は、常温(25℃)で液体であっても固体であってもよい。水溶性有機溶媒は、有機溶媒を25℃の水100mlに溶解させたときに、その溶解量が10ml以上である有機溶媒をいう。
水溶性有機溶媒の沸点は、インクの液だれを防止し、高品質の印刷物を得る観点から、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、更に好ましくは118℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下、更に好ましくは235℃以下である。
ここで、沸点とは標準沸点(1気圧下での沸点)をいい、水溶性有機溶媒を2種以上用いる場合は、各水溶性有機溶媒の含有量(質量%)で重み付けした加重平均値を、水溶性有機溶媒全体の沸点とする。
沸点100℃以上260℃以下の水溶性有機溶媒としては、多価アルコール、グリコールエーテルの他、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等の含窒素複素環化合物、アルカノールアミン等が挙げられるが、これらの中では多価アルコール及びグリコールエーテルから選ばれる1種以上が好ましい。
多価アルコールとしては、エチレングリコール(沸点197℃)、プロピレングリコール(沸点188℃)、1,2−ブタンジオール(沸点193℃)、1,2−ペンタンジオール(沸点206℃)、1,2−ヘキサンジオール(沸点223℃)等の1,2−アルカンジオール、ジエチレングリコール(沸点245℃)、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール(沸点232℃)、1,3−プロパンジオール(沸点210℃)、1,3−ブタンジオール(沸点208℃)、1,4−ブタンジオール(沸点230℃)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(沸点203℃)、1,5−ペンタンジオール(沸点242℃)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(沸点196℃)、1,2,6−ヘキサントリオール(沸点178℃)、1,2,4−ブタントリオール(沸点190℃)、1,2,3−ブタントリオール(沸点175℃)、ペトリオール(沸点216℃)等が挙げられる。
これらの中では、インクの液だれを防止し、高品質の印刷物を得る観点から、炭素数2以上6以下のアルカンジオールが好ましく、エチレングリコール(沸点197℃)、プロピレングリコール(沸点188℃)、1,2−ヘキサンジオール(沸点223℃)、及びジエチレングリコール(沸点245℃)から選ばれる1種以上がより好ましい。
グリコールエーテルとしては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられるが、上記と同様の観点から、炭素数5以上10以下のグリコールエーテルが好ましく、炭素数5以上10以下のアルキレングリコールモノアルキルエーテルがより好ましい。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル基の炭素数は、1以上であり、そして、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。該アルキル基は、直鎖でも分岐鎖でもよい。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルの具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点136℃)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(沸点142℃)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(沸点151℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点171℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点202℃)、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(沸点207℃)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(沸点220℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点248℃)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点231℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点188℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点243℃)等が挙げられる。
これらの中では、炭素数5以上8以下のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましく、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましく、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(沸点220℃)、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点188℃)から選ばれる1種以上が更に好ましい。
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、沸点が100℃以上260℃以下の水溶性有機溶媒以外の他の有機溶媒を含有してもよい。沸点が100℃未満の水溶性有機溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等の一価アルコールが挙げられる。沸点が260℃を超える水溶性有機溶媒としては、トリエチレングリコール(沸点285℃)、トリプロピレングリコール(沸点273℃)、グリセリン(沸点290℃)、ポリプロピレングリコール(沸点260℃超)等が挙げられる。
本発明の水系インクは、界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤が好ましく、インクの液だれを防止し、高品質の印刷物を得る観点から、アセチレングリコール系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる1種以上がより好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤とを併用することが更に好ましい。
(アセチレングリコール系界面活性剤)
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール等のアセチレン系ジオール、及びそれらのエチレンオキシド付加物が挙げられる。
前記エチレンオキシド付加物のエチレンオキシ基(EO)の平均付加モル数の和(n)は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品例としては、日信化学工業株式会社製の「サーフィノール」シリーズ、「オルフィン」シリーズ、川研ファインケミカル株式会社製の「アセチレノール」シリーズ等が挙げられる。これらの中でも、サーフィノール104PG50(2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのプロピレングリコール溶液、有効分50%)、サーフィノール420(2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのEO付加物、n:1.3)、サーフィノール440(EO平均付加モル数:3.5)、サーフィノール465(EO平均付加モル数:10)、オルフィンE1010、アセチレノールE100、アセチレノールE200、アセチレノールE40、アセチレノールE60、アセチレノールE81、アセチレノールE100等が好ましい。
(シリコーン系界面活性剤)
シリコーン系界面活性剤としては、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン等が挙げられるが、上記と同様の観点から、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が好ましい。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤は、シリコーンオイルの側鎖及び/又は末端の炭化水素基を、ポリエーテル基で置換された構造を有するものである。該ポリエーテル基としては、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、エチレンオキシ基(EO)とプロピレンオキシ基(PO)がブロック状又はランダムに付加したポリアルキレンオキシ基が好適であり、シリコーン主鎖にポリエーテル基がグラフトした化合物、シリコーンとポリエーテル基がブロック状に結合した化合物等を用いることができる。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤のHLB(親水性親油性バランス)値は、水系インクへの溶解性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上である。ここで、HLB値は、グリフィン法により求めることができる。
また、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の25℃における動粘度は、好ましくは50mm/s以上、より好ましくは80mm/s以上であり、そして、好ましくは500mm/s以下、より好ましくは300mm/s以下である。なお、動粘度はウベローデ型粘度計で求めることができる。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の具体例としては、信越化学工業株式会社製のKFシリーズ;KF−353、KF−355A、KF−642等、日信化学工業株式会社製のシルフェイスSAG005、株式会社NUC製のFZ−2191、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK−348等が挙げられる。
[水系インクの製造]
本発明の水系インクは、前記工程2で得られた顔料含有ポリマー粒子の顔料水分散体と水溶性有機溶媒と、必要に応じて、更にその他の有機溶媒、界面活性剤とを混合することにより製造することができる。顔料水分散体、水溶性有機溶媒、その他の有機溶媒、界面活性剤との混合方法に特に制限はない。
本発明の水系インクには、更に必要に応じて、水系インキに通常用いられる保湿剤、湿潤剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種の添加剤を添加することができる。
本発明の水系インク中の各成分の含有量、インク物性は以下のとおりである。
(顔料の含有量)
水系インク中の顔料の含有量は、水系インクの印刷濃度、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましく6質量%以下である。
(顔料含有ポリマー粒子の含有量)
水系インク中の顔料含有ポリマー粒子の含有量は、水系インクの印刷濃度、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
(水溶性有機溶媒の含有量)
水系インク中の水溶性有機溶媒の含有量は、インクの液だれを防止し、高品質の印刷物を得る観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは18質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
水溶性有機溶媒全量中の沸点100℃以上260℃以下の水溶性有機溶媒の含有量は、75質量%以上であるが、インクの液だれを防止し、高品質の印刷物を得る観点から、好ましくは78質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上である。
((顔料含有ポリマー粒子/水溶性有機溶媒)の質量比)
水溶性有機溶媒に対する顔料含有ポリマー粒子の質量比(顔料含有ポリマー粒子/水溶性有機溶媒)は、インクの液だれを防止し、高品質の印刷物を得る観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.25以上であり、そして、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。
(界面活性剤の含有量)
水系インク中の界面活性剤の含有量は、印刷媒体への濡れ性向上の観点から、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
水系インキ中のアセチレングリコール系界面活性剤の含有量は、上記と同様の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、そして、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
水系インク中のシリコーン系界面活性剤の含有量は、上記と同様の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、そして、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
(水の含有量)
水系インク中の水の含有量は、インクの液だれを防止し、高品質の印刷物を得る観点から、45質量%以上85質量%以下であるが、好ましくは48質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
(水系インク物性)
水系インク中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、顔料水分散体中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径とほぼ同一であり、インクの液だれを防止し、高品質の印刷物を得る観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは60nm以上、より更に好ましくは70nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは130nm以下、より更に好ましくは110nm以下である。
水系インクの32℃の粘度は、インクの保存安定性を向上させる観点から、好ましくは2mPa・s以上、より好ましくは3mPa・s以上、更に好ましくは3.5mPa・s以上であり、そして、好ましくは7mPa・s以下、より好ましくは6.5mPa・s以下、更に好ましくは6mPa・s以下である。
水系インクのpHは、インクの保存安定性を向上させる観点から、好ましくは7以上、より好ましくは7.2以上、更に好ましくは7.5以上である。そして、部材耐性、皮膚刺激性の観点から、pHは、好ましくは11以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは9.5以下である。
なお、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径、水系インクの粘度、pHは、実施例に記載の方法により測定される。
[インクジェット印刷方法]
本発明のインクジェット印刷方法は、本発明の水系インクを用いて、非平面の非吸液性印刷媒体に印刷する。
印刷に際しては、本発明の水系インクを公知のインクジェット印刷装置に装填し、前述の非平面の印刷媒体にインク液滴として吐出させて画像等を印刷する。インクジェット印刷装置としては、サーマル式及びピエゾ式のいずれも使用できるが、ピエゾ式のインクジェット印刷装置がより好ましい。
印刷においては、非平面の非吸液性印刷媒体の表面温度を30℃以上100℃以下に加熱して印刷することが好ましい。印刷媒体の表面温度は、インクの液だれを防止し、高品質の印刷物を得る観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。
印刷媒体を加熱する方法としては、赤外線を照射する方法、オーブン等で加熱した雰囲気に曝す方法、加熱した金属等の物体と接触させる方法等の公知の方法が挙げられる。
本発明においては、インクジェット印刷した後、乾燥し又は乾燥せずに、更に、本発明の水系インクをインクジェット印刷することができる。
本発明においては、インクジェット印刷した後、印刷層上に、更に被覆層を形成することができる。被覆層を形成するための仕上げニス又はオーバーコートインクとしては、公知のものを使用できるが、変色を防止する観点から、顔料を含有しない仕上げニス又はオーバーコート水系インクが好ましい。
仕上げニス又はオーバーコートインクは、通常使用されている樹脂を含有しておればよく、その他については特に制限はない。用いることができる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、脂肪族炭化水素樹脂等が挙げられる。
被覆層を形成する場合は、本発明のインクジェット印刷方法によって、非平面の非吸液性印刷媒体上に印刷層を形成した後、インクジェットヘッドから仕上げニス又はオーバーコートインクを吐出させて、該印刷層上に付着させることにより被覆層を形成させることができる。
以下の合成例、製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
(1)ポリマーの数平均分子量の測定
N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8320GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSKgel SuperAWM−H、TSKgel SuperAW3000、TSKgel guardcolum Super AW−H)、流速:0.5mL/min〕により、標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンキット〔PStQuick B(F−550、F−80、F−10、F−1、A−1000)、PStQuick C(F−288、F−40、F−4、A−5000、A−500)、東ソー株式会社製〕を用いて測定した。
測定サンプルは、ガラスバイアル中にポリマー0.1gを前記溶離液10mLと混合し、25℃で10時間、マグネチックスターラーで撹拌し、シリンジフィルター(DISMIC−13HP、PTFE、0.2μm、アドバンテック株式会社製)で濾過したものを用いた。
(2)ポリマーの酸価の測定
電位差自動滴定装置(京都電子工業株式会社製、電動ビューレット、型番:APB−610)に樹脂をトルエンとアセトン(2+1)を混合した滴定溶剤に溶かし、電位差滴定法により0.1N水酸化カリウム/エタノール溶液で滴定し、滴定曲線上の変曲点を終点とした。水酸化カリウム溶液の終点までの滴定量から酸価を算出した。
(3)顔料含有ポリマー粒子の平均粒径の測定
レーザー粒子解析システム「ELS−8000」(大塚電子株式会社製)を用いてキュムラント解析を行い、平均粒径を測定した。測定する粒子の濃度が5×10-3重量%(固形分濃度換算)になるよう水で希釈した分散液を用いた。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力し、得られたキュムラント平均粒径を顔料含有ポリマー粒子の平均粒径とした。
(4)顔料水分散体の固形分濃度の測定
赤外線水分計「FD−230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させた後、測定試料の水分(%)を測定し、下記式により固形分濃度を算出した。
固形分濃度(%)=100−測定試料の水分(%)
(5)有機溶媒の沸点の測定
JIS K2254に準じて測定を行い、その初留点を沸点とした。
(6)水系インクの粘度の測定
E型粘度計(東機産業株式会社製、型番:TV−25、標準コーンロータ1°34’×R24使用、回転数50rpm)を用いて、35℃にて水系インクの粘度を測定した。
(7)水系インクのpHの測定
pH電極「6337−10D」(株式会社堀場製作所製)を使用した卓上型pH計「F−71」(株式会社堀場製作所製)を用いて、25℃における水系インクのpHを測定した。
<ポリマーの合成>
合成例1
アクリル酸(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬)61.5部、スチレン(和光純薬工業株式会社製、試薬)129.5部、α−メチルスチレン(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬)9.0部を混合しモノマー混合液を調製した。反応容器内に、メチルエチルケトン(MEK)20部、2−メルカプトエタノール(重合連鎖移動剤)0.3部、及び前記モノマー混合液の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、滴下ロートに、モノマー混合液の残りの90%、前記重合連鎖移動剤0.27部、MEK60部及びアゾ系ラジカル重合開始剤(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名:V−65、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))2.2部の混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の前記モノマー混合液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記重合開始剤0.3部をMEK5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、カルボキシ基を有するポリマー(a)(ポリマーの数平均分子量:12000、酸価240mgKOH/g)の溶液を得た。
合成例2〜3、比較合成例1〜2
合成例1において、表1に示すようにアクリル酸、スチレン、α−メチルスチレンの量を変更した以外は、合成例1と同様にしてポリマー(b)〜(e)の溶液を得た。結果を表1に示す。
Figure 0006904523
<顔料水分散体の製造>
製造例1
合成例1で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー25部をMEK39.3部と混合し、更に5N水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム固形分:16.9%、富士フイルム和光純薬株式会社製、容量滴定用)7.9部を加え、ポリマーのカルボキシ基のモル数に対する水酸化ナトリウムのモル数の割合が50%になるように中和し(中和度50%)、更にイオン交換水A 200部を加えた。この水系媒体中のポリマーはチンダル現象が認められ、水不溶性であることが確認された。
さらに、シアン顔料(C.I.ピグメント・ブルー15:3、DIC株式会社製、商品名:TGR−SD)58.3部を加え、ディスパー(浅田鉄工株式会社製、ウルトラディスパー:商品名)を用いて、20℃でディスパー翼を7000rpmで回転させる条件で60分間攪拌した。
得られた混合物をマイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)で200MPaの圧力で10パス分散処理した。得られた分散液にイオン交換水B 250部を加え、攪拌した後、減圧下、60℃でMEKを完全に除去し、更に一部の水を除去し、5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、粗大粒子を除去することにより、固形分濃度が20%の顔料水分散体A1(顔料含有ポリマー粒子の平均粒径:108nm)を得た。結果を表2に示す。
製造例2〜14、比較製造例1〜4
製造例1において、表2に示す条件に変えた以外は、製造例1と同様にして顔料水分散体を得た。結果を表2に示す。
なお、製造例12ではMEKを使用せず、マイクロフルイダイザーの代わりにビーズミルを用いて分散処理を行い、固形分濃度が66%の顔料水分散体を得た。
また、表2に示す顔料の詳細は、以下のとおりである。
・PB15:3: C.I.ピグメント・ブルー15:3(DIC株式会社製)
・PB60: C.I.ピグメント・ブルー60(DIC株式会社製)
・PBk7: C.I.ピグメント・レッド150(大日精化工業株式会社製)
・PV19: C.I.ピグメント・バイオレット74(大日精化工業株式会社製)
・PV23: C.I.ピグメント・バイオレット23(大日精化工業株式会社製)
・PR112: C.I.ピグメント・レッド112(大日精化工業株式会社製)
・PR254: C.I.ピグメント・レッド254(大日精化工業株式会社製)
・PY155: C.I.ピグメント・イエロー155(大日精化工業株式会社製)
・PG36: C.I.ピグメント・グリーン36(大日精化工業株式会社製)
・PO43: C.I.ピグメント・オレンジ43(大日精化工業株式会社製)
・PO34: C.I.ピグメント・オレンジ34(大日精化工業株式会社製)
・TiO:石原産業式会社製、ルチル型酸化チタン、CR-80、Al・Si処理、平均一次粒子径250nm
Figure 0006904523
<水系インクの製造と評価>
実施例1
製造例1で得られた顔料水分散体A1(固形分濃度20%、顔料3部、ポリマー1.3部)21.4部、プロピレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社製)25部、アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、サーフィノール104PG50、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのプロピレングリコール溶液、有効分50%)0.6部、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、シルフェイスSAG005、HLB:7)0.5部にイオン交換水を添加して、合計量を100部として、水系インク1(顔料含有ポリマー粒子の平均粒径:108nm)を得た。
実施例2〜16、19〜22、参考例17〜18、23〜31、比較例1〜11
実施例1において、表3又は表4に示す配合条件に変えた以外は、実施例1と同様にして、水系インク2〜12、15〜18(実施例)、水系インク13〜1419〜25(参考例)、及び水系インク31〜38(比較例)を得た。
実施例、参考例及び比較例の水系インクの25℃におけるpHは7.5〜9.5の範囲であった。結果を表3及び表4に示す。
表3及び表4中の各成分の詳細は、以下のとおりである。
〔有機溶媒〕
PG:プロピレングリコール、沸点188℃
EG:エチレングリコール、沸点197℃
1.2−HG:1,2−ヘキサンジオール、沸点223℃
DEDG:ジエチレングリコール、沸点245℃
MPDG:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、沸点188℃
MDG :ジエチレングリコールモノメチルエーテル、沸点194℃
iBDG:ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、沸点220℃
IPA :イソプロパノール、沸点83℃
PPG700:ポリプロピレングリコール700、沸点260℃超
〔界面活性剤〕
S-104PG50:アセチレングリコール系界面活性剤、サーフィノール104PG50
SAG005:ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、シルフェイスSAG005
実施例及び比較例で得られた水系インクを用いて、以下の方法で、液だれ、ドットサイズ、モットリング、臭気の評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
(印刷物の調製)
温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、インクジェット記録ヘッド(京セラ株式会社製、「KJ4B−HD06MHG−STDV」、ピエゾ式)を装備した印刷評価装置(株式会社トライテック製)に実施例及び比較例で得られた水系インクを充填した。
ヘッド電圧26V、周波数10kHz、吐出液滴量12pl、ヘッド温度32℃、解像度600dpi、吐出前フラッシング回数200発、負圧−4.0kPaを設定した。
非平面の非吸液性印刷媒体として、JIS H4040 A2017Bに定められているアルミニウム合金(銅4%とその他微量成分を含むアルミニウム合金)の押出丸棒(有限会社藤沢金属より購入、直径10mm、30mm、70mm、150mm、300mm、長さはすべて165mm)の側面をバフ研磨(#400番仕上げ)したもの(実施例1〜29、比較例1〜11)、ポリ塩化ビニル樹脂押出丸棒(白石工業株式会社製、直径70mm、長さ165mm、グレー;実施例30)、ポリメチルメタクリレート樹脂押出丸棒(白石工業株式会社製、直径70mm、長さ165mm透明;実施例31)をそれぞれ可動式の回転治具に固定した。
印刷媒体の表面温度を、超近赤外線ヒーター(Adophos社製、アドフォスNIR)を用いて、80℃に加熱し、前記印刷評価装置に印刷命令を転送し、前記棒状媒体を固定した回転治具を60rpmの速度で回転させながら、Duty100%の2cm四方のベタ画像部を有する印刷パターンを印刷し、それぞれの印刷物を得た。
また、前記非平面の非吸液性印刷媒体にドット形状が確認できる2cm四方のduty10%の画像を印刷した。
(液だれの評価)
ドット形状が確認できるDuty10%の画像部分を拡大観察し、真円性が崩れたドットを目視で判断し、真円性が崩れたドットの数を計測し、100個所の測定による平均値を算出した。その平均値から、以下の基準で液だれを評価した。
(評価基準)
・平均値が10%未満では、真円性の低いドットが殆ど確認されず、液だれがなく、十分に実使用ができる。
・平均値が10%以上40%未満では、ドットの真円性低下が確認されるが、実使用ができる。
・平均値が40%以上では、ドットの真円性低下が確認され、実使用ができない。
(ドットサイズの評価)
前記非平面の非吸液性印刷媒体にドット形状が確認できる2cm四方のduty10%の画像を印刷し、ドット形状が確認できるDuty10%の画像部分を拡大観察した。液だれによる伸長方向とは垂直の方向でドットの直径を測定し、その平均値から、以下の基準で印刷物の品質を評価した。
(評価基準)
・ドットサイズが70μm以上;レベリング性、画像均一性が向上し、高品質の印刷物を得ることができる。
・ドットサイズが60μm以上70μm未満;レベリング性が若干劣り、画像により下地の隠ぺいが不足することがあるが、十分に実使用ができる。
・ドットサイズが50μm以上60μm未満;レベリング性が若干劣り、画像により下地の隠ぺいが不足している部分があるが実使用ができる。
・ドットサイズが50μm未満;レベリング性、画像均一性が不十分となり、高品質の印刷物を得ることができない。
(モットリングの評価)
得られた印刷物のベタ画像を観察し、目視でモットリング(インク濃度の不規則なむら)の有無を確認し、以下の評価基準にて印刷画質を評価した。
(評価基準)
A:モットリングが目視で確認できない。
B:モットリングが確認できるが、実使用ができる。
C:モットリングが明確に確認でき、実使用ができない。
(臭気の評価)
得られた印刷物のベタ画像から感じられる臭いを評価した。
(評価基準)
A:臭気を感じない。
B:やや臭気を感じるが実使用ができる。
C:強い臭気を感じ、実使用ができない。
Figure 0006904523

Figure 0006904523
表3及び表4から、実施例の水系インクは、参考例、比較例の水系インクに比べて、印刷媒体が非平面であっても、インクジェットインクが着弾した後に液だれが起こらず、高品質の印刷物を得ることができることが分かる。

Claims (5)

  1. 非平面の非吸液性印刷媒体に印刷するインクジェット印刷用水系インクであって、
    顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子、水溶性有機溶媒、及び水を含み、
    非吸液性印刷媒体が、アルミニウム又はアルミニウム合金であり、
    該顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子を構成するポリマーに対する顔料の質量比[顔料/ポリマー]が50/50以上70/30以下であり、
    顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子を構成するポリマーの酸価が180mgKOH/g以上280mgKOH/g以下であり、
    該水溶性有機溶媒中の沸点100℃以上260℃以下の炭素数2以上6以下のアルカンジオールの含有量が90質量%以上であり、水の含有量が50質量%以上75質量%以下である、
    インクジェット印刷用水系インク。
  2. 35℃における粘度が3.5mPa・s以上mPa・s以下である、請求項に記載のインクジェット印刷用水系インク。
  3. 非平面が円柱面である、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷用水系インク。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の水系インクを用いて、非平面の非吸液性印刷媒体に印刷する、インクジェット印刷方法。
  5. 非平面が円柱面である、請求項4に記載のインクジェット印刷方法。
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