JP5245187B2 - ポリアミドイミド、液晶配向剤ワニス、および液晶表示素子 - Google Patents

ポリアミドイミド、液晶配向剤ワニス、および液晶表示素子 Download PDF

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Description

本発明は、電子材料分野において使用される、液晶配向性、電気特性ならびにその信頼性に優れた新規なポリアミドイミドに関する。
液晶表示素子は、現在ネマチック液晶を用いた表示素子が主流であり、液晶が90度ツイストしたTN型液晶表示素子、通常180度以上ツイストしたSTN型液晶表示素子、薄膜トランジスタ−を使用した、いわゆるTFT型液晶表示素子が知られている。さらに昨今では、視角特性を改良した横電界型のIPS型液晶表示素子、垂直配向状態を利用したVA型液晶表示素子、或いはベンド配向状態を利用したOCB型液晶表示素子等の種々の方式による表示素子が実用化、あるいは検討されている。液晶表示素子の進展は、単にこれらの方式の進展のみならず、液晶表示素子の特性向上に向けた周辺材料での改良によっても活発に行われている。また、液晶配向剤は液晶表示素子の表示品質に係わる重要な要素の一つであるが、表示素子の高品質化が要求されるにつれ一層液晶配向剤の役割が大きくなっている。
現在、主として用いられている液晶配向剤は、ポリアミド酸をイミド化して使用するポリアミド酸および可溶性ポリイミド等のポリイミド系である。ポリイミド系配向剤以外にも種々の液晶配向剤が検討されているが、これらは耐熱性、耐薬品性(耐液晶性)、塗布性、液晶配向性、電気特性、表示特性等が不十分であると考えられる。ポリイミド系配向剤の中で、ポリアミド酸は溶剤に対する溶解性が高く基板塗布性が良好であるが、配向膜の形成時に加熱によるイミド化という焼成工程を必要とし、低温焼成では特性が悪化するという問題がある。一方、可溶性ポリイミドは、可溶性とはいっても溶剤に対する溶解性が比較的悪いという問題や、限られた溶剤しか使えないため印刷性が劣るといった欠点がある。
ポリイミド系配向剤以外にも、ポリアミドやポリアミドのアミド結合(CONH)の水素原子を他の基で置換した、いわゆるN置換ポリアミド等の高分子化合物も検討されている。ポリアミドは液晶配向性等は良好であるが、溶解性、印刷性に若干難があり、電気特性についても問題がある。逆に、N置換ポリアミドについては溶解性、印刷性、電気特性は良好であるが、液晶配向性に若干劣る場合がある。また、複数の高分子化合物をブレンドしたり、ブロック共重合した高分子化合物を使用した液晶配向剤もあるが、消費電流、残留電荷、電圧保持率、焼き付き等の電気特性、あるいは液晶配向性において難点があるのが現状である。液晶配向剤に要求される課曄は、特定の性質だけが優れていても実用化は難しく、総合的にバランスのとれた特性を有することが必要である。
液晶表示素子の使用分野が広がるにつれて、液晶表示素子に要求される特性はより高性能になりつつある。これらの要求の中には、液晶のプレチルト角に代表される液晶の配向性に対する要求、また、消費電流値、電圧保持率、残留電荷等の液晶表示素子の電気特性に対する要求、あるいはこれらの諸特性の長期使用における信頼性に対する要求、さらには液晶表示素子の残像現象、表示むら等の表示品位に対する要求などが挙げられる。
これらの特性の中で液晶のプレチルト角は、液晶表示素子の駆動方式により、必要とされる値が異なっている。例えば、液晶が90度ツイストしているTN型液晶表示素子あるいはTFT型液晶表示素子では1〜6度程度、ツイスト角が大きいSTN型液晶表示素子では3〜8度程度のプレチルト角が必要である。しかしながら、これらの要求されるプレチルト角の値は用途によって多少変化していて、最近では、STN型液晶表示素子においても2〜3度あるいは8度以上のものが要求される場合がある。一方、IPS型液晶表示素子においては、液晶が基板に対して水平方向に動くため、プレチルト角を大きくする必要はなく、プレチルト角はおおむね1〜3度程度あればよい。逆に、VA型液晶表示素子においては90度近傍の大きなプレチルト角が必要であり、OCB型液晶表示素子においても、ベンド配向状態を安定化させるために5〜20度の大きなプレチルト角が要求される。
また、プレチルト角だけでなく配向均一性、配向安定性あるいは液晶−配向膜界面のアンカリングエネルギー等の液晶の配向性に関する特性も液晶表示素子の性能に大きく関わってくるため重要である。さらに、液晶表示素子の製造工程におけるこれらの特性のプロセスマージンも重要であり、配向剤の塗布後における溶剤の乾燥条件、あるいは液晶注入後のアニール処理条件等によって、プレチルト角や配向性が変化するようでは大きな問題となる。
STN型液晶表示素子、特に携帯機器分野で用いられる低電圧タイプの表示素子では、駆動電圧が低いため消費電流に対する要求が重要である。すなわち、液晶表示素子の消費電流が大きくなると、相対的に液晶に印加される電圧が低下するため、液晶の立ち上がりが不十分となりコントラストが低下する。また、低電圧タイプの液晶表示素子においては、液晶表示素子の長期使用中におこる消費電流値の変化(信頼性)も重要である。STN型表示素子では表示のON−OFFをわずかな電位差でおこなっているため、素子の消費電流値が変化してしまうと液晶に印加される電圧にも変化が起こり正常な駆動ができなくなる。極端な場合、長時間駆動により液晶表示素子の画像が全く表示されない現象さえ発生する。
一方、TFT型液晶表示素子では、特に電圧保持率および残留電荷に対する要求が重要である。電圧保持率が低いとフレーム期間中に液晶にかかる電圧が低下し、コントラストが低下する問題が発生する。また、残留電荷が大きい場合は電圧印加後に電圧をOFFにしても電荷が残ったままの状態になり、消去されるべき像が残像として残ってしまう。TFT型液晶表示素子において、この残像現象はかなり重要な問題の1つである。
さらに、近年駆動電圧の低電圧化に伴って誘電率異方性が大きい液晶が用いられるようになるにつれて、ディスプレイの面内に発生する表示むら(輝度むら)が問題視されるようになっている。特に、配向膜をラビング処理したときに発生する削りかすを除去するための水洗を行うと、水洗した跡が表示むらとして残ってしまう現象が発生する場合があり、大きな問題となっている。
発明が解決しようとする課題
本発明は、前述の液晶表示素子に要求される諸特性の中で、特に適度なプレチルト角を有し、液晶配向性や電気特性(消費電流値、電圧保持率、残留電荷、焼き付き)など総合的にバランスの優れた液晶表示素子を得るための液晶配向剤を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
本発明者等は上記の課題の解決のため鋭意研究した結果、液晶表示素子に使用される液晶配向剤ワニスとして、下記の構成によるポリアミドイミドを含有するものを使用する事により、所期の目的が達成できることを見いだした。
すなわち、
(1)下記の式(1−1)、式(1−2)および式(1−3)のそれぞれで表される構造単位のうち式(1−1)で表される構造単位のみを有するか、またはこれら3種の構造単位のうちの2種以上を有するポリアミドイミドであって、カルボン酸類由来の有機残基およびジアミノ化合物由来の有機残基の少なくとも1種が炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基であり、ポリマー中の全アミド結合の30モル%以上がNに1価の有機基が結合したアミド結合であることを特徴とするポリアミドイミド。
Figure 0005245187
(式中、T〜Tはカルボン酸類由来の有機残基であり、D〜Dはジアミノ化合物由来の有機残基であり、R〜Rはそれぞれ独立して水素または1価の有機基である。この1価の有機基は、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐のヒドロキシアルキル、炭素数2〜20の直鎖もしくは分岐のアルコキシアルキル、炭素数2〜15の不飽和脂肪族基、脂環式基を有する基、芳香族系炭化水素基、O含有複素環系の基、ステロイド骨格を有する基、カルボニル基を有する基、オルガノシリル基、およびオルガノシリル基含有基からなる群から選択される1種以上の基であり、前記のアルキル中の任意のHはFで置換されてもよく、前記の芳香族系の炭化水素基においては、芳香環とアルキルまたはアルキレンとがOを介して結合してもよく、芳香環の置換基であるアルキルのHはFで置換されてもよく、また芳香環の1個のHがCNで置換されてもよい。)
(2)式(2)〜式(5)のそれぞれで表される基の群から選ばれるジアミノ化合物由来の有機残基が少なくとも1種含まれていることを特徴とする、前記(1)項に記載のポリアミドイミド。
Figure 0005245187
(式中、RはHまたは炭素数1〜12のアルキルであり、環Aは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり、ZおよびZはそれぞれ独立して単結合、CH、CHCHまたはOであり、rは0〜3、sは0〜5、t1は0〜3、t2は0〜3のそれぞれ整数であるが、t1が2〜3である時の複数のZは互いに同じであっても異なっていてもよいし、またt2が2〜3である時の複数のZも互いに同じであっても異なっていてもよい。また、1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンの任意のHは炭素数1〜4のアルキルで置換されていてもよい。)
Figure 0005245187
(式中、XおよびXはそれぞれ独立して単結合、O、COO、OCO、NH、CONHまたは炭素数1〜12のアルキレンであり、GおよびGはそれぞれ独立して単結合、または芳香族環および脂環式環から選ばれる1〜3個の環を含む二値の基であり、RはH、F、CN、OHまたは炭素数1〜12のアルキル、フルオロアルキルもしくはアルコキシであり、ベンゼン環に対する置換基の結合位置および2個の遊離基の位置は任意の位置である。但し、Gが単結合でありXが単結合でもなくアルキレンでもない場合は、RはHまたはアルキルであり、またGおよびGが共に単結合である場合は、X、XおよびRの合計の炭素数が3以上である。)
Figure 0005245187
(式中、XおよびXはそれぞれ独立して単結合、CH、CHCHまたはOであり、RおよびRはそれぞれ独立してH、炭素数1〜12のアルキル、または炭素数1〜12のパ−フルオロアルキルであるが、RおよびRの少なくとも一方は炭素数3以上のアルキルまたはパ−フルオロアルキルであり、u1およびu2はそれぞれ独立して0〜3の整数であるが、u1が2〜3である時の複数のXは互いに同じであっても異なっていてもよいし、u2が2〜3である時の複数のXも互いに同じであっても異なっていてもよい。また、1,4−フェニレンの任意のHは炭素数1〜4のアルキルで置換されていてもよい。)
Figure 0005245187
(式中、RはH、または炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐状のアルキルであり、このアルキル中の1個もしくは隣り合わない複数のCHはOで置換されていてもよく、Xは単結合、または炭素数1〜5のアルキレンであり、このアルキレン中の1個もしくは隣り合わない複数のCHはOで置換されていてもよく、mは0〜3の整数であり、nは1〜5の整数である。また、ベンゼン環に対する置換基および遊離基の結合位置は任意の位置である。)
(3)R、RおよびRがそれぞれ独立してHまたは炭素数5以下の1価の有機基であって、R〜Rの総量の50モル%以上が該1価の有機基であることを特徴とする、前記(1)または(2)項に記載のポリアミドイミド。
(4)R、RおよびRがそれぞれ独立してH、炭素数5以下のアルキルまたは炭素数5以下の酸素含有アルキルであって、R〜Rの総量の70モル%以上がこれらのアルキルおよび酸素含有アルキルから選ばれる1価の有機基であることを特徴とする、前記(1)または(2)項に記載のポリアミドイミド。
(5)前記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載のポリアミドイミドを含有することを特徴とする液晶配向剤ワニス。
(6)前記(5)項に記載の液晶配向剤ワニスが用いられていることを特徴とする液晶表示素子。
上記の構成による本発明のポリアミドイミドは、配向膜、保護膜、絶縁膜等として使用でき、とりわけ、液晶表示素子用の配向膜を形成するための配向剤ワニスとして最適である。そして、本発明のポリアミドイミドは、ポリアミド酸、可溶性ポリイミド、ポリアミド等の他の高分子化合物と併用することにより、配向剤ワニス等の特性を更に向上させることができる。
本発明のポリアミドイミドは、下記の式(1−1)、式(1−2)および式(1−3)のそれぞれで表される構造単位のうち式(1−1)で表される構造単位のみを有するか、またはこれら3種の構造単位のうちの2種以上を有するポリアミドイミドであって、炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基が少なくとも1種含まれていることを特徴とするポリアミドイミドである。即ち、分子内にアミド結合とイミド結合の両者を有し、炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基を少なくとも1種含む化合物であり、かつアミド結合(CONH)の水素原子の一部または全部を1価の有機基で置換したポリアミドイミド(以下、N置換ポリアミドイミドと称することがある。)である。
Figure 0005245187
式(1−1)で表される構造単位中のTはトリカルボン酸類に由来する有機残基であり、式(1−2)で表される構造単位中のTはジカルボン酸類に由来する有機残基であり、そして式(1−3)で表される構造単位中のTはテトラカルボン酸類に由来する有機残基である。なお本発明においては、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸およびこれらをまとめて呼ぶときの名称である多価カルボン酸について、これらの誘導体である無水物や酸ハロゲン化物等を含めた総称として、それぞれジカルボン酸類、トリカルボン酸類、テトラカルボン酸類および多価カルボン酸類と称する。これらの多価カルボン酸類は、芳香族系(複素環を含む)、脂環族系(複素環を含む)または脂肪族系(非環状)の何れの族に属するものであってもよいが、中でも環構造を有するものが液晶の配向性を良好に保つ上から好ましい。従って、脂肪族系(非環状)のものを用いる際には、これを脂環族系、あるいは芳香族系のものと併用することが好ましく、しかもその使用量は液晶配向性に悪影響を与えない範囲内とすべきである。さらに、T〜Tは、一般的には液晶表示素子の電気特性の低下原因となりやすいエーテル、エステル、チオエーテル、チオエステル等の基を、その構造中に含まない構造のものが好ましいが、そのような構造を有していてもこれらの特性に影響を与えないかぎり何ら問題とはならない。
本発明のポリアミドイミドに使用することのできるジカルボン酸類の具体例として、下記の化合物を挙げることができる。
即ち、マロン酸ジハライド、蓚酸ジハライド、ジメチルマロン酸ジハライド、コハク酸ジハライド、フマル酸ジハライド、グルタル酸ジハライド、アジピン酸ジハライド、ムコン酸ジハライド、2−メチルアジピン酸ジハライド、トリメチルアジピン酸ジハライド、ピメリン酸ジハライド、2,2−ジメチルグルタル酸ジハライド、3,3−ジエチルコハク酸ジハライド、アゼライイン酸ジハライド、セバシン酸ジハライドおよびスベリン酸ジハライド等の脂肪族ジカルボン酸ジハライド;
1,1−シクロプロパンジカルボン酸ジハライド、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ジハライド、1,1−シクロブタンジカルボン酸ジハライド、1,2−シクロブタンジカルボン酸ジハライド、1,3−シクロブタンジカルボン酸ジハライド、3,4−ジフェニル−1,2−シクロブタンジカルボン酸ジハライド、2,4−ジフェニル−1,3−シクロブタンジカルボン酸ジハライド、3,4−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−1,2−シクロブタンジカルボン酸ジハライド、2,4−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−シクロブタンジカルボン酸ジハライド、1−シクロブテン−1,2−ジカルボン酸ジハライド、1−シクロブテン−3,4−ジカルボン酸ジハライド、1,1−シクロペンタンジカルボン酸ジハライド、1,2−シクロペンタンジカルボン酸ジハライド、1,3−シクロペンタンジカルボン酸ジハライド、1,1−シクロヘキサンジカルボン酸ジハライド、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジハライド、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジハライド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジハライド、1,4−(2−ノルボルネン)ジカルボン酸ジハライド、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジハライド、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジカルボン酸ジハライド、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3−ジカルボン酸ジハライド、2,5−ジオキソ−1,4−ビシクロ[2.2.2]オクタンジカルボン酸ジハライド、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジハライド、4,8−ジオキソ−1,3−アダマンタンジカルボン酸ジハライド、2,6−スピロ[3.3]ヘプタンジカルボン酸ジハライド、1,3−アダマンタン二酢酸ジハライド、カンファー酸ジハライド等の脂環式ジカルボン酸ジハライド;
o−フタル酸ジハライド、イソフタル酸ジハライド、テレフタル酸ジハライド、5−メチルイソフタル酸ジハライド、5−tert−ブチルイソフタル酸ジハライド、5−アミノイソフタル酸ジハライド、5−ヒドロキシイソフタル酸ジハライド、2,5−ジメチルテレフタル酸ジハライド、テトラメチルテレフタル酸ジハライド、1,4−ナフタレンジカルボン酸ジハライド、2,5−ナフタレンジカルボン酸ジハライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジハライド、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジハライド、1,4−アントラセンジカルボン酸ジハライド、1,4−アントラキノンジカルボン酸ジハライド、2,5−ビフェニルジカルボン酸ジハライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジハライド、1,5−ビフェニレンジカルボン酸ジハライド、4,4”−タ−フェニルジカルボン酸ジハライド、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸ジハライド、4,4’−ジフェニルエタンジカルボン酸ジハライド、4,4’−ジフェニルプロパンジカルボン酸ジハライド、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジカルボン酸ジハライド、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジハライド、4,4’−ビベンジルジカルボン酸ジハライド、4,4’−スチルベンジカルボン酸ジハライド、4,4’−トランジカルボン酸ジハライド、4,4’−カルボニル二安息香酸ジハライド、4,4’−スルホニル二安息香酸ジハライド、4,4’−ジチオ二安息香酸ジハライド、p−フェニレン二酢酸ジハライド、3,3’−p−フェニレンジプロピオン酸ジハライド、4−カルボキシ桂皮酸ジハライド、p−フェニレンジアクリル酸ジハライド、3,3’−(4,4’−(メチレンジ−p−フェニレン))ジプロピオン酸ジハライド、4,4’−(4,4’−(オキシジ−p−フェニレン))ジプロピオン酸ジハライド、4,4’−(4,4’−(オキシジ−p−フェニレン))二酪酸ジハライド、(イソプロピリデンジ−p−フェニレンジオキシ)二酪酸ジハライド、ビス(p−カルボキシフェニル)ジメチルシラン、1,5−(9−オキソフルオレン)ジカルボン酸ジハライド、3,4−フランジカルボン酸ジハライド、4,5−チアゾールジカルボン酸ジハライド、2−フェニル−4,5−チアゾールジカルボン酸ジハライド、1,2,5−チアジアゾール−3,4−ジカルボン酸ジハライド、1,2,5−オキサジアゾール−3,4−ジカルボン酸ジハライド、2,3−ピリジンジカルボン酸ジハライド、2,4−ピリジンジカルボン酸ジハライド、2,5−ピリジンジカルボン酸ジハライド、2,6−ピリジンジカルボン酸ジハライド、3,4−ピリジンジカルボン酸ジハライド、3,5−ピリジンジカルボン酸ジハライド、6−ピリジンジカルボン酸ジハライド等の芳香族ジカルボン酸ジハライドである。
本発明のN置換ポリアミドイミドを製造するためのジカルボン酸類は、これらのジカルボン酸ジハライドに限定されることはなく、式(1−2)で示される構造単位中のジカルボン酸類由来の有機残基を与えるものであれば、その他の形のジカルボン酸誘導体を用いてもよい。そのようなジカルボン酸誘導体として活性アシル誘導体を挙げることができ、例えば、ジカルボン酸ジハライドのハロゲンの代わりに、アセチルオキシ、アルキルオキシ、フェニルオキシまたはフェニルチオなどの基が結合したジカルボン酸誘導体を用いることができる。更には、カルボキシル基のHが全く置換されていないジカルボン酸そのものも用いることができる。そして、本発明で用いるジカルボン酸類は、直線的な構造のポリアミドイミドを与えることが可能なジカルボン酸類であることが、液晶の配向性を保つ上から好ましい。このような好ましいジカルボン酸類の例として、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジハライド、テレフタル酸ジハライド、イソフタル酸ジハライド、ピリジンジカルボン酸ジハライド、ナフタレンジカルボン酸ジハライド、1,4−アントラセンジカルボン酸ジハライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジハライド、4,4”−タ−フェニルジカルボン酸ジハライド、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸ジハライド、4,4’−ジフェニルエタンジカルボン酸ジハライド、4,4’−ジフェニルプロパンジカルボン酸ジハライド、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジカルボン酸ジハライド、4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジハライド等を挙げることができる。また前述のように、これらの化合物と同じ残基を与える、酸ジハライド以外の種類の化合物も好ましく用いられる。
また、基板に対するポリアミドイミドの接着性を高めること等を目的として、式(6)で表されるポリシロキサンジカルボン酸ジハライド、またはこれと同じ残基を与える、酸ジハライド以外の活性アシル誘導体を用いてもよい。場合によっては、式(6)におけるXがHである化合物を用いてもよい。
Figure 0005245187
(式中、RおよびR10はそれぞれ独立してメチル、エチル、フェニルまたはシクロヘキシルであり、Xはハロゲンであり、v、wおよびxはそれぞれ独立して1〜5の整数である。)
本発明のN置換ポリアミドイミドは、炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基を少なくとも1種有しており、これによって液晶に大きなプレチルト角を発現させる機能を与えられている。そして、この炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基の導入を、式(7)または式(8)で表されるジカルボン酸ジハライド、またはそれらと同じ残基を与える、酸ジハライド以外の活性アシル誘導体を用いることによって行ってもよい。更には、これらの式においでXがHである化合物も用いることができる。
Figure 0005245187
(式中、Xは単結合、O、COO、OCO、NH、NHCO、CONH、Sまたは炭素数1〜6のアルキレンであり、Xはハロゲンであり、R11は炭素数3〜20のアルキルもしくはフルオロアルキル基、または置換基を有しても良いステロイド基である。ステロイド骨格としては、コレステリル、アンドロステリル、βコレステリル、エピアンドロステリル、エリゴステリル、エストリル、11α−ヒドロキシメチルステリル、11α−プロゲステリル、ラノステリル、メラトラニル、メチルテストロステリル、ノレチステリル、プレグネノニル、β−シトステリル、スチグマステリル、テストステリル、酢酸コレステロールエステル等を挙げることが出来る。)
Figure 0005245187
(式中、R12およびR13はそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキルであるが、それらの炭素数の合計は4以上であり、Xはハロゲンである。)
本発明のN置換ポリアミドイミドの製造に使用できるジカルボン酸類は、上記の例示化合物に限定されることはなく、またこれらを2種以上組み合わせて用いることもできる。
次に、本発明のN置換ポリアミドイミドの製造に使用することのできるトリカルボン酸類の具体例の一部として、以下に示すトリカルボン酸無水物ハライドを挙げることができる。
Figure 0005245187
(これらの式中のXはハロゲン原子を示す。)
本発明のN置換ポリアミドイミドを製造するためのトリカルボン酸類は、これらのトリカルボン酸無水物ハライドに限定されることはなく、式(1−1)で示される構造単位中のトリカルボン酸類由来の有機残基を与えるトリカルボン酸類はすべて含まれる。また、トリカルボン酸無水物ハライドのハロゲンの代わりに、アセチルオキシ、アルキルオキシ、フェニルオキシまたはフェニルチオなどの基が結合した、ハライド以外の活性アシル誘導体を用いてもよい。更には、トリカルボン酸の2個のカルボキシル基が脱水縮合して無水物構造となり、残りの1個がカルボキシル基のままの化合物や、トリカルボン酸そのものなども用いることができる。これらの中でも、式(9)のトリメリット酸無水物ハライドが好ましく用いられる。また、これらのトリカルボン酸類は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明のN置換ポリアミドイミドの製造に使用できるテトラカルボン酸類の具体例の一部として、以下に示す化合物を挙げることができる。
まず、脂環式系のテトラカルボン酸二無水物の例として、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ(2,2,2)−オクト(7)−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,3’−ビシクロヘキシル−1,1’,2,2’−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2,−c]−フラン−1,3−ジオン、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物等、およびこれらの化合物の環に結合したHの一部をメチル、エチルなどの低級アルキルで置換した化合物等を挙げることができる。
次に、脂肪族系のテトラカルボン酸類の例として、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ペンタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ヘプタンテトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
また、芳香族系のテトラカルボン酸類の例として、ピロメリット酸二無水物、3、3’、4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3、6、7−ナフタレン酸二無水物、3、3’−4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエ−テルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パ−フルオロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルスルフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエ−テル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げることができる。
これらの中で、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物等を特に好ましく使用することができる。本発明のN置換ポリアミドイミドを製造するためのテトラカルボン酸類は、これらのテトラカルボン酸二無水物に限定されることはなく、式(1−3)で示される構造単位中のテトラカルボン酸類由来の有機残基を与えるテトラカルボン酸類はすべて含まれる。また、二無水物以外の種類のテトラカルボン酸類を使用してもよく、例えばテトラカルボン酸の2個のカルボキシル基が脱水縮合して無水物となり、残りのカルボキシル基のHがハロゲン、アセチルオキシ、アルキルオキシ、フェニルオキシまたはフェニルチオなどの基で置換された誘導体や、テトラカルボン酸の4個のカルボキシル基のすべてのHが前記の基で置換された誘導体などを用いることができる。更には、カルボキシル基のHが置換されていないテトラカルボン酸そのものを用いることもできる。また、これらのテトラカルボン酸類は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
前述のように、本発明のN置換ポリアミドイミドは、炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基を少なくとも1種有するものであり、これによって液晶に大きなプレチルト角を発現させる機能を与えられている。そして、この炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基は、カルボン酸由来の有機残基であってもよいし、ジアミン由来の有機残基であってもよいし、またこれらの両者であってもよい。即ち、式(1−1)で表される構造単位を含み、式(1−2)で表される構造単位も式(1−3)で表される構造単位も含まないN置換ポリアミドイミドである場合には、トリカルボン酸類由来の有機残基であるTおよび/またはジアミン由来の有機残基であるDが炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基である必要がある。そして、Dが炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基であることが好ましく、更にDとTが共に炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基であってもよい。
式(1−1)で表される構造単位と式(1−2)で表される構造単位とを含むN置換ポリアミドイミドである場合には、トリカルボン酸類由来の有機残基であるT、ジカルボン酸類由来の有機残基であるT、ジアミン由来の有機残基であるDおよびDのうち少なくとも1種が、炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基である必要がある。そして、DおよびDのうち少なくとも1種が炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基であることが好ましく、更にDおよびDのうちの少なくとも1種と共にTも、炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基であってよい。
式(1−1)で表される構造単位と式(1−3)で表される構造単位とを含むN置換ポリアミドイミドである場合には、トリカルボン酸類由来の有機残基であるT、テトラカルボン酸類由来の有機残基であるT、ジアミン由来の有機残基であるDおよびDのうち少なくとも1種が、炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基である必要がある。そして、DおよびDのうち少なくとも1種が炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基であることが好ましい。
式(1−2)で表される構造単位と式(1−3)で表される構造単位とを含むN置換ポリアミドイミドである場合には、ジカルボン酸類由来の有機残基であるT、テトラカルボン酸類由来の有機残基であるT、ジアミン由来の有機残基であるDおよびDのうち少なくとも1種が、炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基である必要がある。そして、DおよびDのうち少なくとも1種が炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基であることが好ましく、更にDおよびDのうちの少なくとも1種と共にTも、炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基であってよい。
そして、式(1−1)で表される構造単位、式(1−2)で表される構造単位および式(1−3)で表される構造単位を含むN置換ポリアミドイミドである場合には、トリカルボン酸類由来の有機残基であるT、ジカルボン酸類由来の有機残基であるT、テトラカルボン酸類由来の有機残基であるT、ジアミン由来の有機残基であるD〜Dのうち少なくとも1種が、炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基である必要がある。そして、D〜Dのうち少なくとも1種が炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基であることが好ましく、更にD〜Dのうちの少なくとも1種と共にTも、炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基であってよい。
本発明のN置換ポリアミドイミドの製造に使用できるジアミノ化合物は、前述のカルボン酸類と同様に、芳香族系(複素環系を含む)、脂環式系(複素環を含む)または脂肪族系(非環状)の何れに属するものであってもよいが、環構造を有するものが液晶の配向性を良好に保つ上から好ましい。また、これらのジアミノ化合物は、一般的には、その有機残基に液晶表示素子の電気特性の低下原因となりやすいエーテル、エステル、チオエーテル、チオエステル等の基を、その構造中に含まない構造のものが好ましいが、そのような構造を有していてもこれらの特性に影響を与えないかぎり何ら問題とはならない。
本発明のN置換ポリアミドイミドの製造に用いるジアミノ化合物は、カルボン酸類由来の有機残基が炭素数3以上の側鎖基を有するものである場合は、側鎖の無いジアミノ化合物を使用できるが、この場合でも炭素数3以上の側鎖基を有するカルボン酸類と炭素数3以上の側鎖基を有するジアミノ化合物を併用することが好ましい。また、炭素数3以上の側鎖基を有するカルボン酸類を使用しない場合は、炭素数3以上の側鎖基を有するジアミノ化合物の使用が必須となる。この場合、炭素数3以上の側鎖基として、脂肪族系炭化水素基、脂環式構造を含む炭化水素基、芳香族を含む炭化水素基、シロキサン基を有する基、ステロイド骨格を有する基、あるいはこれらの構造が混在する側鎖基を挙げる事ができる。脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基には、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、OH等の置換基を有していても良い。これらの炭化水素の一部は酸素などの他の原子で置換されてもよいが、O,CO,COO、S、SO等のような、酸素原子や硫黄原子またはこれらを含む基を含まない方が好ましい。なお側鎖基の炭素数については、シクロヘキサン等の環状構造を含む場合には、その環を構成する炭素を含めた数で表すものとする。
本発明のN置換ポリアミドイミドの製造に好ましく用いることのできる、炭素数3以上の側鎖基を有するジアミノ化合物は、式(2)〜式(5)のそれぞれで表される有機残基を与える化合物である。そして、本発明のN置換ポリアミドイミドには、これらの有機残基の群から選ばれる少なくとも1種の残基が含まれていることが好ましい。
Figure 0005245187
(式中、RはHまたは炭素数1〜12のアルキルであり、環Aは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり、ZおよびZはそれぞれ独立して単結合、CH、CHCHまたはOであり、rは0〜3、sは0〜5、t1は0〜3、t2は0〜3のそれぞれ整数であるが、t1が2〜3である時の複数のZは互いに同じであっても異なっていてもよいし、またt2が2〜3である時の複数のZも互いに同じであっても異なっていてもよい。また、1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンの任意のHは炭素数1〜4のアルキルで置換されていてもよい。)
Figure 0005245187
(式中、XおよびXはそれぞれ独立して単結合、O、COO、OCO、NH、CONHまたは炭素数1〜12のアルキレンであり、GおよびGはそれぞれ独立して単結合、または芳香族環および脂環式環から選ばれる1〜3個の環を含む二価の基であり、RはH、F、CN、OHまたは炭素数1〜12のアルキル、フルオロアルキルもしくはアルコキシであり、ベンゼン環に対する置換基の結合位置および2個の遊離基の位置は任意の位置である。但し、Gが単結合でありXが単結合でもなくアルキレンでもない場合は、RはHまたはアルキルであり、またGおよびGが共に単結合である場合は、X、XおよびRの合計の炭素数が3以上である。)
Figure 0005245187
(式中、XおよびXはそれぞれ独立して単結合、CH、CHCHまたはOであり、RおよびRはそれぞれ独立してH、炭素数1〜12のアルキル、または炭素数1〜12のパーフルオロアルキルであるが、RおよびRの少なくとも一方は炭素数3以上のアルキルまたはパーフルオロアルキルであり、u1およびu2はそれぞれ独立して0〜3の整数であるが、u1が2〜3である時の複数のXは互いに同じであっても異なっていてもよいし、u2が2〜3である時の複数のXも互いに同じであっても異なっていてもよい。また、1,4−フェニレンの任意のHは炭素数1〜4のアルキルで置換されていてもよい。)
Figure 0005245187
(式中、RはH、または炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐状のアルキルであり、このアルキル中の1個もしくは隣り合わない複数のCHはOで置換されていてもよく、Xは単結合、または炭素数1〜5のアルキレンであり、このアルキレン中の1個もしくは隣り合わない複数のCHはOで置換されていてもよく、mは0〜3の整数であり、nは1〜5の整数である。また、ベンゼン環に対する置換基および遊離基の結合位置は任意の位置である。)
式(2)で表される有機残基を与えるジアミノ化合物は、式(17)で表される。
Figure 0005245187
(式中のR、A、Z、Z、r、s、t1およびt2の意味は、式(2)における場合と同じである。)
この式(17)で表されるジアミノ化合物の具体例の一部を、R、環A、Z、r、sおよびtの組み合わせによって、表1〜表5に示す。なお、Z=Z=Zであり、t1=t2=tである。また、これらの表の環Aの欄に記載されたBは1,4−フェニレン、Chは1,4−ジクロヘキシレンを示す。
Figure 0005245187
Figure 0005245187
Figure 0005245187
Figure 0005245187
Figure 0005245187
式(17)で表されるジアミノ化合物は、これらの例示化合物に限定されることはなく、また2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのジアミノ化合物において、rが0で、RがHまたは短鎖のアルキルの場合は、液晶に小さめのプレチルト角を発現させる液晶配向膜を与え、rが1〜3の場合は、RがHであっても液晶に大きいプレチルト角を発現させる液晶配向膜を与える。小さいプレチルト角を発現させる液晶配向膜の場合はIPS型液晶表示素子に好適であり、プレチルト角が3〜8°程度の場合は、TN型液晶表示素子に好適である。また、STN型液晶表示素子、VA型液晶表示素子およびOCB型液晶表示素子の場合は、さらに大きなプレチルト角が要求される場合もあるが、この場合は側鎖基の長いジアミノ化合物を用いればよい。
さらに、式(18)、式(19)および式(20)のそれぞれで表されるような、炭素数3以上の側鎖基を有するジアミノ化合物を用いてもよい。
Figure 0005245187
Figure 0005245187
Figure 0005245187
(これらの式中のZ、Z、t1およびt2の意味は、式(2)における場合と同じであり、R14およびR15はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜12のアルキルである。但し、式(18)および式(19)のステロイド骨格における任意の環は、縮小、拡大または開裂したものでもよく、ビシクロ環であってもよく、不飽和結合が任意の位置において増加または減少したものであってもよく、任意の位置のHまたはアルキルが他の1価の有機基で置換されたものであってもよい。)
式(3)で表される有機残基を与えるジアミノ化合物は、式(21)で表される。
Figure 0005245187
(式中のX、X、G、GおよびRの意味は式(3)における場合と同じであり、またベンゼン環に対する置換基および2個のアミノ基の結合位置は任意の位置である。)
式(21)で表されるジアミノ化合物の具体例の一部を、X、X、G、GおよびRの組み合わせによって、表6〜表12に示す。これらの表においては、「−」は単結合、「B」は1,4−フェニレン、「Ch」は1,4−シク口ヘキシレンを示す。また、「B−Ch」、「Ch−B」、「B−Ch−Ch」などは、環の種類と結合の順序を示す。例えば、Gの欄のB−Chは、Xに1,4−フェニレンが結合し、この1,4−フェニレンに結合した1,4−シクロヘキシレンにXが結合していることを意味し、Gの欄のCh−Bは、Xに1,4−シクロヘキシレンが結合し、この1,4−シクロヘキシレンに結合した1,4−フェニレンにRが結合していることを意味する。なお、これらの表に記載した化合物は1,3−ジアミノベンゼン誘導体であり、Xがジアミノベンゼンの5位に結合したジアミノ化合物である。
Figure 0005245187
Figure 0005245187
Figure 0005245187
Figure 0005245187
Figure 0005245187
Figure 0005245187
Figure 0005245187
式(21)で表されるジアミノ化合物は、これらの例示化合物に限定されることはなく、また2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのジアミノ化合物において、Gおよび/またはGの環数が多くなり、Xおよび/またはXが長鎖のアルキレンで、Rが長鎖のアルキル、フルオロアルキルもしくはアルコキシの場合は、液晶に大きなプレチルト角を発現させる液晶配向膜を与える。
式(4)で表される有機残基を与えるジアミノ化合物は、式(22)で表される。
Figure 0005245187
(式中のX、X、R、R、u1およびu2の意味は、式(4)における場合と同じである。)
式(22)で表されるジアミノ化合物の具体例の一部を、式(22)においてX=Xであり、u2=u1である場合について、X、u1、RおよびRの組み合わせによって、表13〜表19に示す。なお、これらの表において、「−」は単結合を示す。
Figure 0005245187
Figure 0005245187
Figure 0005245187
Figure 0005245187
Figure 0005245187
Figure 0005245187
Figure 0005245187
式(22)で表されるジアミノ化合物は、これらの例示化合物に限定されることはなく、また2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのジアミノ化合物が、RおよびRが水素、または短鎖のアルキルもしくはパーフルオロアルキルである場合には、これを用いて得られる本発明の液晶配向剤は、液晶に小さめのプレチルト角を発現する液晶配向膜を与える
式(5)で表される有機残基を与えるジアミノ化合物は、式(23)で表される。
Figure 0005245187
(式中のX、R、mおよびnの意味は、式(5)における場合と同じであり、ベンゼン環に対する置換基およびアミノ基の結合位置は任意の位置である。)
式(23)で表されるジアミノ化合物の具体例の一部を、X、R、mおよびnの組み合わせによって、表20〜表21に示す。なお、これらの表において、「−」は単結合を示す。また、これらの表に記載のジアミノ化合物は、2個のアミノ基がそれぞれベンゼン環のメチレン基の結合位置に対してパラ位に結合し、シクロヘキシレンが同じくオルソ位に結合している化合物である。
Figure 0005245187
Figure 0005245187
式(23)で表されるジアミノ化合物は、これらの例示化合物に限定されることはなく、また2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのジアミノ化合物において、mが0、RがHまたは短鎖のアルキルであり、Xが単結合または短鎖のアルキレンである場合にはプレチルト角が小さめになり、mが1〜3である場合には、RがHであり、Xが単結合であってもプレチルト角が大きくなる。
以上はあくまでも、式(2)〜式(5)のそれぞれで表される有機残基を与えるジアミノ化合物について、それらの一部を具体例として示したに過ぎないのであり、本発明に係る炭素数3以上の側鎖基を有するジアミノ化合物はこれらに限定されることはない。これらの他にも、例えばフェニレンジアミンにステロイド系の側鎖を設けたジアミノ化合物等のような炭素数3以上の側鎖基を有するジアミノ化合物を、本発明の目的が達成されることを条件に、広い範囲から選択することができる。
本発明においては、プレチルト角を要求される値に調整するために、上記の液晶のプレチルト角を大きくすることに効果的な炭素数3以上の側鎖基を有するジアミノ化合物(以下、第1群のジアミノ化合物と称することがある。)と炭素数3以上の側鎖基を持たないジアミノ化合物(以下、第2群のジアミノ化合物と称することがある。)とを併用することができる。本発明において使用することのできる第2群のジアミノ化合物には、芳香族系ジアミノ化合物、脂環式系ジアミノ化合物および脂肪族系ジアミノ化合物などがあり、これらを多数の公知文献に記載されているものから選択することがきる。そして、公知文献の一例として、WO 01/00732A1公報の19〜20ページおよび34〜37ページに記載のジアミノ化合物を挙げることができる。この他、この公報に記載のジアミノ化合物に関連して、そのアミノ基の結合位置が異なるもの、その構造中のアルキルおよび/またはアルキレンの炭素数が異なるもの、任意のHがFで置換されているもの、芳香環が異なる個数のアルキルで置換されているものなどを挙げることができる。更にまた、上記のジアミノ化合物の他、アルキレン中に酸素原子を有する構造のジアミノ化合物なども挙げることができる。
このように、本発明で用いる第2群のジアミノ化合物は、非常に多くの化合物の中から任意に選択して利用することが可能であり、また2種以上を組み合わせて用いることができる。ただ、第2群のジアミノ化合物の内の脂肪族系のものは、液晶の配向性を良好に保つ範囲内で使用されることが好ましい。また、液晶表示素子の電気的性質を高く保つため、第2群のジアミノ化合物についても、エーテル、エステル、チオエーテル、チオエステル等の基を、その構造中に含まない構造のものであることが好ましい。
本発明のN置換ポリアミドイミドを製造するにあたり、第1群のジアミノ化合物と第2群のジアミノ化合物とを併用する場合、両者の比率は、併用される化合物の種類と要求されるプレチルト角の値によって異なるので一様でないが、モル比(第1群のジアミノ化合物/第2群のジアミノ化合物)で表した場合(100/0)〜(1/99)、好ましくは(100/0)〜(10/90)、さらに好ましくは(100/0)〜(20/80)の範囲が適当である。なお、第1ジアミノ化合物の割合を増やすとプレチルト角が大きくなる。
本発明のポリアミドイミドは、ポリマー中の全アミド結合の30モル%以上がNに1価の有機基が結合したアミド結合であることを特徴とするN置換ポリアミドイミドである。この1価の有機基は、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐のヒドロキシアルキル、炭素数2〜20の直鎖もしくは分岐のアルコキシアルキル、炭素数2〜15の不飽和脂肪族基、脂環式基を有する基、芳香族系炭化水素基、ステロイド骨格を有する基、カルボニル基を有する基、オルガノシリル基、およびオルガノシリル基含有基からなる群から選択される1種以上の基である。そして、前記のアルキル中の任意のHはFで置換されてもよく、また前記の芳香族系の炭化水素基においては、芳香環とアルキルまたはアルキレンとがOを介して結合してもよく、芳香環の置換基であるアルキルのHはFで置換されてもよく、芳香環の1個のHがCNで置換されてもよい。
しかしながら、この1価の有機基として屈曲性の高い基を用いると液晶配向性が極端に悪化することがあるため、液晶配向性への影響を考慮すると炭素数5以下の有機基、特に炭素数5以下のアルキルが好ましく、このアルキル中の任意のCHは、Oが2個続くようなことがない限り、O、COまたはCOOで置換されていてもよい。しかしながらこの1価の有機基は、液晶配向性に問題がなければ前記の有機基のいずれであってもよい。そして、この1価の有機基による置換割合は、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましい。該1価の有機基をポリアミドイミド中に導入することにより、特に液晶配向剤ワニスとして使用した場合の電気特性の向上に多大な効果がある。なお、N置換ポリアミドイミドにおける該1価の有機基の割合は、液晶表示素子の電気特性の向上効果を十分に発揮するために、30モル%以上でなければならない。
このような1価の有機基のうちのアルキルの具体例として、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−ノナデシル、n−エイコシル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、イソヘキシル、1−エチルペンチル、2−エチルペンチル、3−エチルペンチル、4−エチルペンチル、2,4−ジメチルヘキシル、2,3,5−トリエチルヘプチル、トリフルオロメチル、パーフルオロエチル、n−パーフルオロプロピル、n−パーフルオロブチル、n−パーフルオロペンチル、n−パーフルオロヘキシル、n−パーフルオロヘプチル、n−パーフルオロオクチル、n−パーフルオロノニル、n−パーフルオロデシル、n−パーフルオロウンデシル、n−パーフルオロドデシル、n−パーフルオロトリデシル、n−パーフルオロテトラデシル、n−パーフルオロペンタデシル、n−パーフルオロヘキサデシル、n−パーフルオロヘプタデシル、n−パーフルオロオクタデシル、n−パーフルオロノナデシル、およびn−パーフルオロエイコシル等を挙げることができる。
ヒドロキシアルキルの具体例としてヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチルおよびヒドロキシヘキシル等、アルコキシアルキルの具体例としてメトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、メトキシペンチル、メトキシヘキシル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、エトキシペンチル、エトキシヘキシル、ヘキシルオキシメチル、ヘキシルオキシエチル、ヘキシルオキシプロピル、ヘキシルオキシブチル、ヘキシルオキシペンチルおよびヘキシルオキシヘキシル等、また不飽和脂肪族基の具体例としてビニル、エチニル、1−プロペニル、2−プロペニル、イソプロペニル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル、2−ペンチニル、2−ペンチン−4−イル、および2−ノニル−2−ブテニル等を挙げることができる、
脂環式基を有する基の具体例としてシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、ビシクロヘキシルメチル、2−シクロペンテン−1−イル、および2,4−シクロペンタジエン−1−イル等、芳香族系炭化水素基の具体例としてフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニル、ビフェニル、トリフェニル、ターフェニル、ベンジル、ビフェニルメチル、トリフェニルメチル、ターフェニルメチル、4−メチルベンジル、4−(tert−ブチル)ベンジル、α−メチルベンジル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アントリルメチル、5−フェニル−2,4−ペンタジイニル、4−メトキシベンジル、フェノキシメチル、ベンジルオキシメチル、ビフェニルオキシメチル、ナフチルオキシメチル、4−トリフルオロメチルベンジル、シアノフェニル、シアノビフェニル、シアノターフェニル、シアノベンジル、シアノフェニルメチル、シアノビフェニルメチル、およびシアノターフェニルメチル等、O含有複素環系の基の具体例としてフルフリル、(3−フリル)メチル、2−オキセタニルメチル、3−オキセタニルメチル、オキソラニルメチル、およびジオキソラニルメチル等を挙げることができる。
そして次に、ステロイド骨格を有する基の具体例としてコレステリル、アンドロステリル、β−コレステリル、エピアンドロステリル、エリゴステリル、エストリル、11α−ヒドロキシメチルステリル、11α−プロゲステリル、ラノステリル、メラトラニル、メチルテストロステリル、ノレチステリル、プレグネノニル、β−シトステリル、スチグマステリル、テストステリル、および酢酸コレステロ−ルエステル等、カルボニル基を有する基の具体例としてホルミル、アセチル、ベンゾイル、メトキシカルボニル、およびフェニルメトキシカルボニル等、オルガノシリルおよびオルガノシリル含有基の具体例としてトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、および4−トリメチルシリルベンジル等を挙げることができる。
これらの中でもメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ビニル、エチニル、1−プロペニル、2−プロペニル、イソプロペニル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル、2−ペンテニル、2−ペンテン−4−イル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、2−シクロペンテン−1−イル、2,4−シクロペンタジエン−1−イル、トリフルオロメチル、パーフルオロエチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル、フルフリル、(3−フリル)メチル、2−オキセタニルメチル、3−オキセタニルメチル、オキソラニルメチル、ジオキソラニルメチル、ホルミル、アセチル等の炭素数5以下の1価の有機基が好ましく用いられる。
本発明のN置換ポリアミドイミドは、以下に示す何れの方法によっても合成することができる。まず最初の方法は、ジアミノ化合物とカルボン酸類とを反応させてポリアミドイミドを合成し、次いで、得られたポリアミドイミドのアミド結合(CONH)の水素原子を1価の有機基で置換する方法(以下、後置換法と称することがあある。)である。即ち、ポリアミドイミドをジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルアセトアミド等の溶媒に溶解し、ナトリウムメトキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ブチルリチウムまたはトリエチルアミン等の塩基と反応させた後、前記1価の有機基のハロゲン化物と反応させることにより、N置換ポリアミドイミドを得ることができる。
本発明のN置換ポリアミドイミドを合成する別の方法は、予めアミノ基(NH)のHを前記1価の有機基で置換したジアミノ化合物(N置換ジアミノ化合物)を原料として用いて、ポリアミドイミドを製造する方法(以下、前置換法と称することがあある。)である。このN置換ジアミノ化合物は、(1)ジアミノ化合物と、プロピルアルデヒドもしくはベンズアルデヒド等のアルデヒド類、またはメチルエチルケトンもしくはシクロヘキサノン等のケトン類とを脱水縮合させてイミン化合物とし、このイミンの二重結合を還元する方法;(2)ジアミノ化合物と、アセチルクロリドまたは安息香酸クロリド等の酸ハライド類とを反応させてアミド化合物とし、このアミドのカルボニル基を水素化リチウムアルミニウム等で還元する方法;および(3)N−メチルアニリン、N,N−ジフェニルアミンあるいはN−メチル−3−アミノトルエン等のN−置換アニリン類とホルムアルデヒドとを酸触媒の存在下で反応させ、N,N’−置換ジアミノジフェニルメタン類を得る方法等の公知の有機合成法を参照することにより、容易に得ることができる。
次に、ポリアミドイミドの製造法について説明する。アミド結合を生成させる反応は、カルボン酸ハライドとアミノ基とを、必要によりジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドもしくはN,N−ジメチルアセトアミド等の溶媒の存在下、必要に応じピリジンまたはトリエチルアミン等とともに、0〜300℃の温度範囲で反応させることにより実施できる。または、カルボキシル基とアミノ基とを、必要により前記の溶媒の存在下、必要に応じて(PhO)P、(PhO)PCl、PhPOClまたは(CP(O)O等の縮合剤を用い、ピリジンとともに0〜300℃の範囲で反応させることによっても、アミド結合を生成させることができる。一方、イミド結合の生成は、環状のジカルボン酸無水物構造とアミノ基とを、必要により前記の溶媒の存在下0〜100℃の範囲で反応させてアミド酸構造とし、これにピリジンおよび無水酢酸を加え、0〜200℃の範囲で反応させることにより実施できる。
また、ジアミノ化合物とホスゲン2量体等とを反応させて得られるジイソシアネート化合物を用いても、アミド結合を生成させる反応とイミド結合を生成させる反応とを実施できる。この場合のアミド結合を生成させる反応は、カルボキシル基と前記ジイソシアネート化合物中のイソシアネート基とを、必要により前記の溶媒やジグライム、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、またはγ−ブチロラクトン等の溶媒の存在下、必要に応じ3級アミン類、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等の触媒あるいは少量の水やキシレン、トルエン等の芳香族炭化水素とともに、0〜300℃の範囲で反応させることにより行うことができる。そして、カルボキシル基に替えて環状のジカルボン酸無水物構造を用いれば、アミド結合を生成させる反応と同様にして、直接イミド結合を生成させることができる。
従って、本発明においてポリアミドイミドを合成する好ましい方法としては、(i)酸無水物構造と酸ハライド基とを有する少なくとも1種のカルボン酸類、(ii)酸無水物構造と酸ハライド基とを有するカルボン酸類の少なくとも1種およびジカルボン酸ジ酸ハライドの少なくとも1種、(iii)酸無水物構造と酸ハライド基とを有するカルボン酸類の少なくとも1種およびテトラカルボン酸類(テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸テトラ酸ハライド、またはテトラカルボン酸の2個のカルボキシル基が無水物構造となり、残りの2個のカルボキシル基が酸ハライド化された誘導体)の少なくとも1種、(iv)ジカルボン酸ジ酸ハライドの少なくとも1種および前記テトラカルボン酸類の少なくとも1種、または(v)環状のジカルボン酸無水物構造と酸ハライド基とを有するカルボン酸類の少なくとも1種、ジカルボン酸ジ酸ハライドの少なくとも1種および前記テトラカルボン酸類の少なくとも1種のいずれかの組み合わせのカルボン酸原料とジアミノ化合物とを用い、溶剤の存在下で最初に酸無水物構造とアミノ基を反応させ、次いでピリジンまたはトリエチルアミン等を加えて酸ハライド基とアミノ基を反応させてポリアミドアミド酸を合成した後、さらに無水酢酸を加えて加熱してアミド酸構造を脱水閉環する方法が挙げられる。
ポリアミドイミドを合成する方法の次の例は、(vi)酸無水物構造とカルボキシル基とを有する少なくとも1種のカルボン酸類、(vii)酸無水物構造とカルボキシル基とを有するカルボン酸類の少なくとも1種およびジカルボン酸の少なくとも1種、(viii)酸無水物構造とカルボキシル基とを有するカルボン酸類の少なくとも1種およびテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1種、(ix)ジカルボン酸の少なくとも1種およびテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1種、または(x)酸無水物構造とカルボキシル基とを有するカルボン酸類の少なくとも1種、ジカルボン酸の少なくとも1種およびテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1種のいずれかの組み合わせのカルボン酸原料とジイソシアネート化合物とを、溶媒の存在下、必要に応じ3級アミン類、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等の触媒あるいは少量の水やキシレン、トルエン等の芳香族炭化水素とともに、0〜300℃の範囲で反応させる方法である。
また、前記カルボン酸原料の組み合わせ(vi)〜(x)のいずれかとジアミノ化合物を用い、溶剤の存在下で最初に酸無水物構造とアミノ基を反応させ、次いで(PhO)P、(PhO)PCl、PhPOClまたは(CP(O)O等の縮合剤、およびピリジンとともに、0〜300℃の範囲で反応させることによってポリアミドアミド酸を合成した後、さらに無水酢酸を加えて加熱しアミド酸構造を脱水閉環してポリアミドイミドとしてもよい。
本発明のN置換ポリアミドイミドを前置換法により合成するには、前記のポリアミドイミド合成法において、ジアミノ化合物に替えて前記のN置換ジアミノ化合物を原料として用いればよい。場合によっては、酸無水物構造と酸ハライド基とを有するカルボン酸類と前記のN置換ジアミノ化合物とから式(24)で表されるN置換アミド結合を有するカルボン酸類を合成し、これとジアミノ化合物とを重合反応させてN置換アミド結合を有するポリアミド酸とした後、これをイミド化することにより得ることもできる。または、式(24)の化合物とジイソシアネート化合物とを反応させてもよい。
Figure 0005245187
(式中、Tはトリカルボン酸類由来の有機残基であり、Dはジアミノ化合物由来の有機残基であり、Rは1価の有機基である。)
しかしながらこの前置換法に比べると、前記の後置換法の方が、反応性に優れるため分子量の高いN置換ポリアミドイミドを与える。従って、これを液晶配向膜とした場合に、膜自体の機械的性質がよいため液晶配向性を付与するラビング工程で膜が削られたり液晶配向性が乱れる等の欠点を回避できる。
本発明のN置換ポリアミドイミドの分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で10,000〜500,000程度であることが好ましく、さらに好ましくは20,000〜200,000である。
本発明の液晶配向剤ワニスは、上述のN置換ポリアミドイミドと溶媒を含む組成物であり、均一溶液として用いられる。この液晶配向剤ワニスは、N置換ポリアミドイミドを必須成分とするものであるが、本発明の効果が損なわれない範囲内で他の高分子化合物を併用することができる。本発明のN置換ポリアミドイミドと併用可能な高分子化合物としては、一般的に液晶配向剤ワニスに用いられているポリアミド酸、可溶性ポリイミド、ポリアミド等の材料を挙げることができる。このような他の高分子化合物を併用することにより、液晶配向剤としての更なる特性向上を図ることができる。
本発明の液晶配向剤ワニス中の高分子化合物の濃度は、0.1〜40重量%とすることが好ましい。液晶配向剤ワニスを基板に塗布する際には、膜厚調整のため該ワニスを予め溶剤により希釈することが必要とされる場合があるが、ワニスに対して溶剤を均一に混合でき、良好に希釈できるためには、高分子化合物の濃度を40重量%を超えない範囲に保つことが必要である。スピンナ−法や印刷法の場合に膜厚を良好に保つためには、通常10重量%以下とすることが多い。その他の塗布方法、例えばディッピング法では、10重量%よりさらに低濃度とすることもあり得る。一方、高分子化合物の濃度が0.1重量%未満では、得られる液晶配向膜の膜厚が薄くなり過ぎるという問題を生じ易い。従って高分子化合物の濃度は、通常のスピンナ−法や印刷法等では0.1重量%以上、好ましくは0.5〜10重量%程度が適当である。しかし、ワニスの塗布方法によっては、さらに希薄な濃度で使用してもよい。
本発明の液晶配向剤ワニスにおいて、N置換ポリアミドイミドを溶解するための溶剤は、高分子化合物を溶解する能力を持った液体であればよく、その他に格別な制限はない。従って、ポリアミドイミド、ポリアミド酸、可溶性ポリイミド、ポリアミド等の製造工程や用途方面で通常使用されている溶剤の中から、使用目的に応じて適宜選択すればよい。これらの溶剤の例として、上記ポリマーに対し親溶剤である非プロトン性極性有機溶剤、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミドゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、N,Nジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミドまたはγ−ブチルラクトン等を用いることができる。
また、塗布性改善等を目的として、上記の溶剤に他の溶剤を添加した混合溶剤を使用することもできる。そのような目的で使用する他の溶剤として、例えば乳酸アルキル、3−メチル−3−メトキシブタノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルアセテート、エチレングリコールモノフェニルアセテート、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、マロン酸ジエチル等のマロン酸ジアルキル、およびこれらの溶剤のOHが酢酸エステル化された化合物等を挙げることができる。
本発明の液晶配向剤ワニスは、必要により各種の添加剤を含有することができる。例えば、塗布性の向上を望む場合にはかかる目的に沿った界面活性剤を、帯電防止の向上を必要とする場合は帯電防止剤を、また基板との密着性の向上望む場合にはシランカップリング剤やチタン系のカップリング剤を配合してもよい。このようにして得られる液晶配向剤ワニスは、主にTFT用液晶配向膜の形成にとって好適なものとなるが、適度なプレチルトを与えることができることから通常のTN型液晶表示素子用、STN型液晶表示素子用、IPS型液晶表示素子用、VA型液晶表示素子用、OCB型液晶表示素子用、強誘電性液晶用または反強誘電性液晶表示素子用の液晶配向膜を形成するに際しても有用であり、さらに液晶表示素子としての電気特性に優れているので保護膜や絶縁膜等にも使用することができる。
本発明の液晶配向剤ワニスを用いて液晶配向膜を形成した基板と、これと同一であっても異なっていてもよい液晶配向膜を形成させた他の基板とを、液晶配向膜が対向するように配置し、その間に液晶を挟み込んで液晶挟持基板とし、公知の方法により液晶表示素子とすることができる。液晶配向膜の形成は、液晶配向剤ワニスを基板上へ塗布する工程、これに続く乾燥工程、および脱水・閉環反応に必要な加熱処理工程により行われる。塗布の方法としてスピンナー法、印刷法、ディッピング法および滴下法等が一般に知られているが、これらの方法は本発明においても同様に適用可能である。また、乾燥工程および脱水・閉環反応に必要な加熱処理を施す工程の方法として、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法やホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られているが、これらの方法も本発明において同様に適用可能である。乾燥工程は溶剤の蒸発が可能な範囲内の比較的低温下で実施することが好ましく、また加熱処理工程は150〜300°C程度の温度下で行うことが好ましい。
本発明の液晶表示素子において好ましく用いられる液晶組成物は、例えばSTN型液晶表示素子用としては特開平8−157828号公報、特開平8−231960号公報、特開平9−241644号公報、および特開平9−302346号公報に開示されている液晶組成物を例示でき、TFT型液晶表示素子用(TN型、IPS型、VA型、OCB型)としては特開平8−199168号公報、特開平9−235552号公報、特開平9−241643号公報、特開平10−204016号公報、特開平10−204436号公報、特開平10−231482号公報、特開平2000−087040公報に開示されている液晶組成物を例示でき、これらに開示された組成物を主体として構成された液晶組成物を好ましク用いることができる。また、前記液晶組成物に一種以上の光学活性化合物を添加して使用することもできる。
以下に実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。また、本実施例においては、更なる特性向上を図る目的でN置換ポリアミドイミドとポリアミド酸とを併用した場合の例を挙げているが、本発明の効果が損なわれない限りN置換ポリアミドイミドを単独で用いても何ら問題とならない。
以下に、各実施例および比較例で使用した原料の略号およびそれに対応する化合物名を示す。
TPA:テレフタル酸ジクロリド
TMA:トリメリット酸無水物クロリド
PMDA:ピロメリット酸二無水物
CBDA:シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
BDA:ブタンテトラカルボン酸二無水物
DPM:4,4’−ジアミノジフェニルメタン
4CB1B:1,1−ビス(4−((4−アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン
5CCBOB:1,1−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)−4−(4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキサン
5CCB1P:5−(4−(4−(4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)フェニル)メチル−1,3−ジアミノベンゼン
6BOB:2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)−ヘキサン
5CCDPM:1−(4−ペンチルシクロヘキシル)−4−(5−アミノベンジル−2−アミノフェニル)シクロヘキサン
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BC:ブチルセロソルブ
実施例1
(ポリアミドイミドの合成)
温度計、攪拌機、コンデンサー、原料投入口、および窒素ガス導入口を備えた300mlの四つ口フラスコに、5.001gのDPM、6.828gの4CB1B、および100.0gの脱水NMPを入れ、乾燥窒素気流下に攪拌して溶解した。溶液を5℃に冷却し、TMAを8.171g添加して25℃で4時間反応させた。その後、ピリジン15.34gを加えて、さらに25℃で15時間反応させ、粘調なポリアミドアミド酸溶液を合成した。これに64.66gの脱水NMPと27.74gの無水酢酸を順次加え、50℃で3時間反応させた。そして、得られた反応容液を多量のメタノ−ル中に投入し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーを再度NMPに溶解した後、純水から再沈殿させて濾別し、減圧乾燥して16.5gのポリアミドイミドを得た。このポリアミドイミドをPAI−1とする。
カルボン酸類およびジアミノ化合物の種類と組成を変えた以外は同様の条件で操作して、PAI−2〜PAI−8のポリアミドイミドを合成した。得られたポリアミドイミドの原料組成を表22に示した。

Figure 0005245187
実施例2
(N置換ポリアミドイミドの合成)
温度計、攪拌機、コンデンサー、原料投入口、および窒素ガス導入口を備えた100mlの四つ口フラスコに、実施例1で得られたポリアミドイミド(PAI−1)3.00gと脱水NMP47.00gを入れ、25℃で1時間攪拌して溶解させた。この溶液に水素化ナトリウム0.651gを加えて25℃で15時間反応させ、さらに50℃で3時間反応させた。この反応液にヨウ化メチル2.402gを加えてさらに15時間反応させた。得られた最終反応液から、前述のポリアミドイミド(PAI−1)と同様の再沈殿操作によってポリマーを得、このポリマーを減圧乾燥して、2.2gのN置換ポリアミドイミドを得た。このN置換ポリアミドイミドをNPAI−1とする。
原料ポリアミドイミドの種類を替えるか、またはヨウ化メチルを他のハロゲン化物に替えた以外は、NPAI−1の場合と全く同様の手順によって、N置換ポリアミドイミド(NPAI−2〜NPAI−12)を合成した。得られたN置換ポリアミドイミドの置換基および重量平均分子量を表23に示した。
なお、表23中のNPAI9〜12は、ヨウ化メチルの代わりにそれぞれ臭化エチル、臭化n−ヘプチル、臭化ベンジル、および臭化アントリルメチルを用いて合成したN置換ポリアミドイミドのデータである。
Figure 0005245187
合成例1
(ポリアミド酸の合成)
温度計、攪拌機、コンデンサー、原料投入口、および窒素ガス導入口を備えた500mlの四つ口フラスコに、4.891gのDPM、および90.0gの脱水NMPを入れ、乾燥窒素気流下に攪拌して溶解させた。溶液の温度を5℃に保ちながら2.690gのPMDAおよび2.419gのCBDAを順次添加し、25℃で30時間反応させた。この反応液に100.0gのBCを加えて、ポリマー濃度が5.0%のポリアミド酸溶液200gを得た。このポリアミド酸溶液をPA酸−1とする。尚、得られたポリアミド酸の重量平均分子量は75,000であった。
合成例2
(ポリアミドの合成)
温度計、攪拌機、コンデンサー、原料投入口、および窒素ガス導入口を備えた500mlの四つ口フラスコに、3.216gのTPA、1.919gのDPM、および4.866gの4CBlBを入れ、これに8.63gの脱水NMPと9.33gのピリジンを加えて均一溶液とした。この溶液に12.01gの亜リン酸トリフェニル、4gの塩化リチウム、および12gの塩化カルシウムを順次加えた後、100℃で2時間反応させた。得られた反応容液から、前述のポリアミドイミド(PAI−1)の場合と同様の再沈殿操作によってポリマーを得、これを減圧乾燥して7.9gポリアミドを得た。このポリアミドをPA−1とする。尚、得られたポリアミドの重量平均分子量は88,000であった。
合成例3
(N置換ポリアミドの合成)
温度計、攪拌機、コンデンサー、原料投入口、および窒素ガス導入口を備えた200mlの四つ口フラスコに、合成例2で得られたポリアミド(PA−1)5.026gと26.39gの脱水NMPを入れ、室温で攪拌して溶解させた。この溶液に水素化ナトリウム0.934gを加えて40分間反応させた後、これにヨウ化メチル3.037gを加えてさらに1時間反応させた。得られた反応容液から、前述のポリアミドイミド(PAI−1)の場合と同様の再沈殿操作によってポリマーを得、これを減圧乾燥して3.5gのN置換ポリアミドを得た。このN置換ポリアミドをNPA−1とする。尚、得られたN置換ポリアミドの重量平均分子量は52,000であった。
合成例4
(可溶性ポリイミドの合成)
温度計、攪拌機、コンデンサー、原料投入口、および窒素ガス導入口を備えた300m1の四つ口フラスコに、5.125gのDPM、6.997gの4CB1Bおよび100.0gの脱水NMPを入れ、乾燥窒素気流下に攪拌して溶解させた。この溶液を5℃に冷却し、7.879gのBDAを添加した後、25℃で15時間反応させ粘調なポリアミド酸溶液を得た。この溶液に64.66gの脱水NMPと27.74gの無水酢酸を順次加えた後、100℃で3時間反応させた。得られた反応容液から、前述のポリアミドイミド(PAI−1)の場合と同様の再沈殿操作によってポリマーを得、これを減圧乾燥して16.0gの可溶性ポリイミドを得た。この可溶性ポリイミドをPI−1とする。尚、得られたポリイミドの重量平均分子量は49,000であった。
実施例3−1〜3−12、および比較例1〜3
(液晶配向剤ワニスの調合)
上記のN置換ポリアミドイミドNPAI−1〜12、ポリアミドPA−1、N置換ポリアミドNPA−1および可溶性ポリイミドPI−1のそれぞれ0.10gを、合成例1で得られたPA酸−1の各18.0gに個別に加えて溶解させた後、NMP−BC混合溶媒(重量比1/1)で希釈して、N置換ポリアミドイミドの種類等にそれぞれ対応する、ポリマー濃度3重量%の液晶配向剤ワニスを得た。これらの液晶配向剤ワニス中のポリアミド酸に対する、N置換ポリアミドイミドNPAI−1〜12、ポリアミドPA−1、N置換ポリアミドNPA−1および可溶性ポリイミドPI−1のそれぞれの割合は、すべて重量比で1/9である。
実施例4
(配向膜評価用セルの作製)
(1)残留電荷および電圧保持率評価用セル(電気特性測定用セル)の作製
透明電極ITO付きガラス基板上に、実施例3で得られたNPAI−1含有液晶配向剤ワニスをスピンナーにて塗布し、80℃にて約5分間予備焼成した後、250℃で30分間加熱処理を行った。この基板の配向膜を形成した面をラビング装置にてラビングして配向処理を行った。次いで、この基板の配向膜面上に7μ用のギャップ材を散布し、全く同様にして用意したもう1枚の基板を、配向膜を形成した面を内側にして重ね合わせた。そして、この重ね合わせた2枚の基板の周囲を、液晶注入孔を残してエポキシ硬化剤でシールし、ギャップ7μmのアンチパラレルセルを作製した。このセルに下記の液晶組成物を注入し、液晶注入孔に光硬化剤を塗布し、UV照射して硬化させ注入口を封止した。次いで、110℃にて30分間加熱処理を行い、残留電荷および電圧保持率評価用のセルとした。他の液晶配向剤ワニスについても、全く同様にして残留電荷および電圧保持率評価用のセルを作製した。
使用した液晶組成物の組成を下記に示す。この組成物のNI点は100.0℃であり、また、屈折率異方性値は0.093であった。
Figure 0005245187
(2)プレチルト角測定用セルの作製
7μ用のギャップ材に代えて20μ用のギャップ材を用いた以外は電気特性測定用セルの作製の場合と同様にして、20μのセル厚を有するアンチパラレルセルを作製し、プレチルト角測定用セルとした。なお、このセルを作製する際に用いた液晶組成物は、電気特性測定用セルを作製した際に用いたものと同じ液晶組成物である。
実施例5
(液晶配向剤ワニスの評価)
(1)評価方法
i)残留電荷の測定
残留電荷は、「三宅 他、信学技報 EID91−111、p19」に記載されている方法にてヒステリシス電圧を測定した。なお、液晶セルに50mV、1kHZの交流電圧を印加し、これに周波数0.0036HZの直流の三角波を重畳させて測定した。
ii)電圧保持率の測定
電圧保持率は、「水嶋他、第14回液晶討論会予稿集 p78」に記載されている方法にて測定した。測定条件は、ゲート幅69μs、周波数60HZ、波高±4.5Vであり、測定温度は60℃である。
iii)プレチルト角の測定
液晶のプレチルト角は、クリスタルローテーション法にて測定した。
iv)液晶配向性の評価
液晶配向性は、プレチルト角を測定する際のセルを偏光顕微鏡下で観察し、ドメインの有無で判定した。
v)塗布性の評価
液晶配向剤ワニスをスピンナーにて塗布して80℃で約5分間予備焼成し、次いで250℃で30分間加熱処理を行った後の配向膜表面を目視で観察して、ピンホールおよび塗布むらの有無で判定した。
(2)評価結果
実施例4で得られた、実施例3−1〜3−12および比較例1〜3の液晶配向剤ワニスのそれぞれに対応する評価用液晶セルについて、上記(1)の方法により評価し、その結果を表24に示した。
Figure 0005245187
残留電荷の値は低いほど好ましく、電圧保持率の値は高いほど好ましい。そして上記の結果から、本発明のN置換ポリアミドイミドを用いた液晶配向剤ワニスは、比較例のポリアミド、N置換ポリアミドおよび可溶性ポリイミドを用いた液晶配向剤ワニスに比べて、残留電荷、電圧保持率等の電気特性やプレチルト角、液晶配向性等の配向特性、および塗布性などに関し、総合的にバランスの優れたものであることがわかる。
発明の効果
本発明のN置換ポリアミドイミドを用いることにより、液晶配向性、塗布性がよく、プレチルト角が任意に調節でき、焼き付きがなく、電圧保持率、残留電荷が優れた液晶表示素子を得ることが出来る。本発明の液晶配向剤ワニスは、TFT型液晶表示素子(TN型、IPS型、VA型、OCB型)において特に好ましく用いられるが、電気特性に優れプレチルト角も任意に調節可能であるため、STN型液晶表示素子、強誘電性液晶、反強誘電性液晶表示素子用配向剤としても使用可能である。また、本液晶配向剤ワニスによる薄膜は、電気特性が優れているため、保護膜や絶縁膜として用いても良い。

Claims (5)

  1. 下記の式(1−1)、式(1−2)および式(1−3)のぞれぞれで表される構造単位のうち式(1−1)で表される構造単位のみを有するか、またはこれら3種の構造単位のうちの2種以上を有するポリアミドイミドであって、カルボン酸類由来の有機残基 およびジアミノ化合物由来の有機残基 〜D の少なくとも1種が炭素数3以上の側鎖基を有する有機残基であり、ポリマー中の全アミド結合の30モル%以上がNに1価の有機基が結合したアミド結合であることを特徴とするポリアミドイミド。
    【化1】
    Figure 0005245187
    (式中、T〜Tはカルボン酸類由来の有機残基であり、D〜Dはジアミノ化合物由来の有機残基であり、R〜Rはそれぞれ独立して水素または1価の有機基である。この1価の有機基は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐のヒドロキシアルキル、炭素数2〜20の直鎖もしくは分岐のアルコキシアルキル、炭素数2〜15の不飽和脂肪族基、脂環式基を有する基、芳香族系炭化水素基、O含有複素環系の基、ステロイド骨格を有する基、カルボニル基を有する基、オルガノシリル基、およびオルガノシリル基含有基からなる群から選択される1種以上の基であり、前記のアルキル中の任意のHはFで置換されてもよく、前記の芳香族系の炭化水素基においては、芳香環とアルキルまたはアルキレンとがOを介して結合してもよく、芳香環の置換基であるアルキルのHはFで置換されてもよく、また芳香環の1個のHがCNで置換されてもよい。ここで、トリカルボン酸類由来の有機残基Tは下記の式(9’)〜式(16’)で表される基の群から選択され、Tにおける炭素数3以上の側鎖を有するジカルボン酸類由来の有機残基は下記の式(7’)および式(8’)で表される基の群から選択され、テトラカルボン酸類由来の有機残基Tは、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ(2,2,2)−オクト(7)−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,3’−ビシクロヘキシル−1,1’,2,2’−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2,−c]−フラン−1,3−ジオン、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ペンタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ヘプタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3、3’、4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3、6、7−ナフタレン酸二無水物、3、3’−4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエ−テルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パ−フルオロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルスルフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエ−テル二無水物、およびビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物から選択される化合物の酸無水物基を削除することによって定義され、炭素数3以上の側鎖を有するジアミノ化合物由来の有機残基は下記の式(2)〜式(5)のそれぞれで表される基の群から選択される。)
    【化2】
    Figure 0005245187
    【化3】
    Figure 0005245187
    (式中、Xは単結合、O、COO、OCO、NH、NHCO、CONH、Sまたは炭素数1〜6のアルキレンであり、R11は炭素数3〜20のアルキルもしくはフルオロアルキル基、または置換基を有してもよいステロイド基である。)
    【化4】
    Figure 0005245187
    (式中、R12およびR13はそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキルであるが、それらの炭素数の合計は4以上である。)
    【化5】
    Figure 0005245187
    (式中、RはHまたは炭素数1〜12のアルキルであり、環Aは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロへキシレンであり、ZおよびZはそれぞれ独立して単結合、CH、CHCHまたはOであり、rは0〜3、sは0〜5、t1は0〜3、t2は0〜3のそれぞれ整数であるが、t1が2〜3である時の複数のZは互いに同じであっても異なっていてもよいし、またt2が2〜3である時の複数のZも互いに同じであっても異なっていてもよい。また、1,4−フェニレンまたは1,4−シクロへキシレンの任意のHは炭素数1〜4のアルキルで置換されていてもよい。)
    【化6】
    Figure 0005245187
    (式中、XおよびXはそれぞれ独立して単結合、O、COO、OCO、NH、CONHまたは炭素数1〜12のアルキレンであり、GおよびGはそれぞれ独立して単結合、または芳香族環および脂環式環から選ばれる1〜3個の環を含む二価の基であり、RはH、F、CN、OHまたは炭素数1〜12のアルキル、フルオロアルキルもしくはアルコキシであり、ベンゼン環に対する置換基の結合位置および2個の遊離基の位置は任意の位置である。但し、Gが単結合でありXが単結合でもなくアルキレンでもない場合は、RはHまたはアルキルであり、またGおよびGが共に単結合である場合は、X、XおよびRの合計の炭素数が3以上である。)
    【化7】
    Figure 0005245187
    (式中、XおよびXはそれぞれ独立して単結合、CH、CHCHまたはOであり、RおよびRはそれぞれ独立してH、炭素数1〜12のアルキル、または炭素数1〜12のパ−フルオロアルキルであるが、RおよびRの少なくとも一方は炭素数3以上のアルキルまたはパ−フルオロアルキルであり、u1およびu2はそれぞれ独立して0〜3の整数であるが、u1が2〜3である時の複数のXは互いに同じであっても異なっていてもよいし、u2が2〜3である時の複数のXも互いに同じであっても異なっていてもよい。また、1,4−フェニレンの任意のHは炭素数1〜4のアルキルで置換されていてもよい。)
    【化8】
    Figure 0005245187
    (式中、RはH、または炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐状のアルキルであり、このアルキル中の1個もしくは隣り合わない複数のCHはOで置換されていてもよく、Xは単結合、または炭素数1〜5のアルキレンであり、このアルキレン中の1個もしくは隣り合わない複数のCHはOで置換されていてもよく、mは0〜3の整数であり、nは1〜5の整数である。また、ベンゼン環に対する置換基および遊離基の結合位置は任意の位置である。)
  2. 、RおよびRがそれぞれ独立してHまたは炭素数5以下の1価の有機基であって、R〜Rの総量の50モル%以上が該1価の有機基であることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミドイミド。
  3. 、RおよびRがそれぞれ独立してH、炭素数5以下のアルキルまたは炭素数5以下の酸素含有アルキルであって、R〜Rの総量の70モル%以上がこれらのアルキルおよび酸素含有アルキルから選ばれる1価の有機基であることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミドイミド。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミドイミドを含有することを特徴とする液晶配向剤ワニス。
  5. 請求項に記載の液晶配向剤ワニスが用いられていることを特徴とする液晶表示素子。
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