ところで、上述したタイプの変速機装置では、Nレンジのときに係合するブレーキ(クラッチ)を専用のリニアソレノイドを用いてオンオフすることを考えることができるが、リニアソレノイドは入力した作動油の一部をドレンしながら残余を出力することにより調圧することから、リニアソレノイド自身で消費される流量が多くなり油圧回路全体で必要で消費される流量が多くなる結果、油圧発生源の容量増加を招いたり装置全体の消費エネルギが増加してしまう。また、新たなリニアソレノイドの追加により装置全体が大型化してしまう。
本発明の変速機装置およびこれを搭載する車両は、装置全体の消費エネルギを抑制すると共に装置の小型化を図ることを主目的とする。
本発明の変速機装置およびこれを搭載する車両は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明の変速機装置は、
車両に搭載され、後進用ポジションにシフト操作されたときには複数の係合要素のうち第1の係合要素と第2の係合要素とを係合し、中立ポジションにシフト操作されたときには前記第1の係合要素を係合することが可能な自動変速機を備える変速機装置であって、
流体圧源の流体圧を調圧してライン圧として出力する圧送手段と、
前記後進用ポジションにシフト操作されたときには前記ライン圧を入力して複数の出力ポートのうち後進ポジション用出力ポートから出力し、前記中立ポジションにシフト操作されたときには前記複数の出力ポートを遮断する流体圧入出力手段と、
前記ライン圧を入力すると共に調圧して出力する第1の調圧手段と、
前記後進用ポジションにシフト操作されたときには前記後進ポジション用出力ポートから出力された流体圧を前記第1の係合要素に出力すると共に前記第1の調圧手段から出力された流体圧を前記第2の係合要素に出力し、前記中立ポジションにシフト操作されたときには前記第1の調圧手段から出力された流体圧を前記第1の係合要素に出力する選択出力手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の変速機装置では、後進用ポジションにシフト操作されたときには複数の係合要素のうち第1の係合要素と第2の係合要素とを係合し、中立ポジションにシフト操作されたときには前記第1の係合要素を係合することが可能なものにおいて、流体圧入出力手段が後進用ポジションにシフト操作されたときには複数の出力ポートのうち後進ポジション用出力ポートから出力し、中立ポジションにシフト操作されたときには複数の出力ポートを遮断し、第1の調圧手段がライン圧を入力すると共に調圧して出力し、選択出力手段が後進用ポジションにシフト操作されたときには後進ポジション用出力ポートから出力された流体圧を第1の係合要素に出力すると共に第1の調圧手段から出力された流体圧を第2の係合要素に出力し、中立ポジションにシフト操作されたときには第1の調圧手段から出力された流体圧を第1の係合要素に出力する。これにより、後進用ポジションにシフト操作されたときに第1の係合要素と第2の係合要素とを同時に係合する場合に比して、本発明は第1の係合要素に流体圧を供給すればよく、ポンプなどの流体圧源の吐出容量を抑えることができる。さらに、一般的にバルブなどの調圧手段は絶えず少量の作動流体が漏れていることから、中立ポジションのときに第1の係合要素を係合するために専用の調節手段を配置した場合、調圧手段から漏れる作動流体の分だけ圧送手段の吐出容量を増やす必要があるが、本発明では中立ポジションにシフト操作されたときに第1の係合要素を係合するための調圧手段を別途設ける必要がない。この結果、装置全体の消費エネルギを抑制し、ひいては燃費を向上させることができると共に変速機装置の小型化を図ることができる。
前進用ポジションにシフト操作されたときには前記複数の係合要素のうち前記第1の係合要素と第3の係合要素とを係合することにより発進用変速段を形成し前記複数の係合要素のうち少なくとも前記第2の係合要素を係合することにより前記発進用変速段以外の変速段を形成可能な本発明の変速機装置において、前記選択出力手段は、前記前進用ポジションにシフト操作されたときには、前記第1の調圧手段から出力される流体圧を前記前進用ポジションのうち前記第2の係合要素か前記第1の係合要素かに選択的に出力する手段であるものとすることもできる。こうすれば、中立ポジションから前進用ポジションへの切り換え時も流体圧源の吐出容量を抑えることができ、燃費を向上させることができる。この態様の本発明の変速機装置において、前記第2の係合要素は、前記前進用ポジションにシフト操作されたときには、前記発進用変速段との間で直接に切り換えを伴わない変速段を形成可能な要素であるものとすることもできる。この場合、第1の調圧手段を用いて解放する係合要素の流体圧を完全に排出した後、第1の調圧手段を用いて係合する係合要素に流体圧を供給する変速が起こらないため、変速時間の長い変速を無くすことができる。
また、本発明の変速機装置において、前記第1の調圧手段は、前記中立ポジションにシフト操作されたときには、前記第1の係合要素が完全に係合するときの係合圧よりも低い低係合圧で係合されるよう調圧する手段であるものとすることもできる。こうすれば、変速時に素早く第1の係合要素から流体圧を排出することができ、変速に要する時間を短縮することができる。特に、発進変速段から他の前進変速段に変速するときにはその効果がより顕著なものとなる。
さらに、本発明の変速機装置において、前記選択出力手段は、前記第1の調圧手段から出力された流体圧を入力する第1の入力ポートと前記流体入出力手段の前記後進ポジション用出力ポートから出力された流体圧を入力する第2の入力ポートと前記第1の係合要素に流体圧を出力する第1の出力ポートと前記第2の係合要素に流体圧を出力する第2の出力ポートとを有し、前記第1の入力ポートに入力された流体圧を前記第1の出力ポートから出力する状態と前記第1の入力ポートに入力された流体圧を前記第2の出力ポートから出力すると共に前記第2の入力ポートに入力された流体圧を該第1の出力ポートから出力する状態とを選択的に切り換える切り換えバルブと、前記切り換えバルブを駆動する信号圧を出力する信号圧出力手段とを備える手段であるものとすることもできる。こうすれば、1つの切り換えバルブで状態を切り換えることができるため、流体圧回路をコンパクトにすることができる。さらに、後進用ポジションから前進用ポジションにシフト操作された場合に、1つの切り換えバルブを切り換えることにより第1の調圧手段の出力圧の出力先を第2の係合要素から第1の係合要素に切り換えることができる。したがって、後進用ポジションから前進用ポジションにシフト操作された場合の変速に要する時間を短縮することができる。
前進用ポジションにシフト操作されたときには前記複数の係合要素のうち前記第1の係合要素と第3の係合要素とを係合することにより発進用変速段を形成し前記複数の係合要素のうち少なくとも第4の係合要素を係合することにより前記発進用変速段以外の変速段を形成可能な本発明の変速機装置において、前記流体圧入出力手段は、前記前進用ポジションにシフト操作されたときに前記ライン圧を入力して前記複数の出力ポートのうち前進ポジション用出力ポートから出力する手段であり、前記前進ポジション用出力ポートから出力された流体圧を入力すると共に調圧して出力する第2の調圧手段を備え、前記選択出力手段は、前記前進用ポジションにシフト操作されたときには、前記第2の調圧手段から出力される流体圧を前記前進用ポジションのうち前記第4の係合要素か前記第1の係合要素かに選択的に出力する手段であるものとすることもできる。こうすれば、中立ポジションから前進用ポジションへの切り換え時も流体圧源の吐出容量を抑えることができ、燃費を向上させることができる。さらに、発進用変速段以外の変速段から発進用変速段に変更する際に第4の係合要素の係合解除と第3の係合要素の係合とをスムーズに行なうことができる。この態様の本発明の変速機装置において、前記第4の係合要素は、前記前進用ポジションにシフト操作されたときには、前記発進用変速段との間で直接に切り換えを伴わない変速段を形成可能な要素であるものとすることもできる。第4の係合要素が発進変速段との間で直接に切り換えが行なわれる変速段(低速段)を形成する係合要素である場合、低速段から発進用変速段にダウンシフトした場合に、第2の調圧手段から出力される流体圧を第4の係合要素から第1の係合要素へ切り換える必要が生じ、スムーズな変速を損なう。しかし、高速段から発進用変速段へ変速する場合は、変速ショックや自動変速機の入力軸に接続される内燃機関の回転数のオーバーレブを考慮すると高速段から中間変速段を経て発進用変速段へ変速することが一般的であるため、第2の調圧手段から出力される流体圧を第4の係合要素から第1の係合要素へ切り換える必要が生じず、前進走行時のスムーズな変速を損なうことなく、前進ポジションから後進ポジションへの切り換え時の流体圧源の吐出容量を抑えることができる。また、本発明の変速機装置において、前記選択出力手段は、前記前進用ポジションにシフト操作されたときには、前記第1の調圧手段から出力される流体圧を前記第2の係合要素に出力し、前記第2の係合要素は、前記前進用ポジションにシフト操作されたときには、前記発進用変速段以外の変速段であり、かつ、前記発進用変速段との間で直接に切り換えを伴う変速段を形成可能な要素であるものとすることもできる。この場合、前進用ポジションにシフト操作されたときには、第1の係合要素には第2の調圧手段から出力される流体圧が、第2の係合要素には第1の調圧手段から出力される流体圧がそれぞれ供給される。したがって、第2の係合要素を係合して形成される変速段から発進用変速段に直接に切り換えを行なう場合に、第1の係合要素への流体圧の供給と、第2の係合要素の流体圧の排出とを同時に行なうことができ、変速に要する時間を短縮することができる。さらに、本発明の変速機装置において、前記第1の調圧手段は、前記中立ポジションにシフト操作されたときには、前記第1の係合要素が完全に係合するときの係合圧よりも低い低係合圧により係合されるよう調圧する手段であるものとすることもできる。こうすれば、変速時に素早く第1の係合要素から流体圧を排出することができ、変速に要する時間を短縮することができる。特に、発進変速段から他の前進変速段に変速するときにはその効果がより顕著なものとなる。
また、本発明の変速機装置において、前記選択出力手段は、前記第1の調圧手段から出力された流体圧を入力して第1の出力ポートか前記第2の係合要素に流体圧を供給する第2の出力ポートかに選択的に出力する第1の切り換えバルブと、前記第1の切り換えバルブの前記第1の出力ポートから出力された流体圧を入力する第1の入力ポートと前記流体入出力手段の前記後進ポジション用出力ポートから出力された流体圧を入力する第2の入力ポートとを有し該第1および第2の入力ポートに入力された流体圧を前記第1の係合要素に選択的に出力する第2の切り換えバルブと、前記第1および第2の切り換えバルブを駆動する信号圧を出力する信号圧出力手段とを備える手段であるものとすることもできる。
また、第2の調圧手段を備え、前進用ポジションにシフト操作されたときに少なくとも第4の係合要素を係合して発進用変速段以外の変速段を形成する態様の本発明の変速機装置において、前記選択出力手段は、前記第1の調圧手段から出力された流体圧を入力して第1の出力ポートか前記第2の係合要素に流体圧を供給する第2の出力ポートかに選択的に出力する第1の切り換えバルブと、第1の入力ポートと前記流体入出力手段の前記後進ポジション用出力ポートから出力された流体圧を入力する第2の入力ポートとを有し該第1または第2の入力ポートに流体圧を選択的に入力して前記第1の係合要素に出力する第2の切り換えバルブと、前記第1の切り換えバルブの前記第1の出力ポートから出力された流体圧を入力する第3の入力ポートと前記第2の調圧手段から出力された流体圧を入力する第4の入力ポートと前記第2の切り換えバルブの前記第1の入力ポートに流体圧を出力する第3の出力ポートと前記第4の係合要素に流体圧を出力する第4の出力ポートとを有し前記第4の入力ポートに入力された流体圧を前記第3の出力ポートに出力するか前記第3の入力ポートに流体圧を入力して該第3の出力ポートに出力すると共に前記第4の入力ポートに流体圧を入力して前記第4の係合要素に出力する第3の切り換えバルブと、前記第1〜第3の切り換えバルブを駆動する信号圧を出力する信号圧出力手段とを備える手段であるものとすることもできる。
本発明の車両は、上述した各態様のいずれかの本発明の変速機装置、即ち、基本的には、車両に搭載され、後進用ポジションにシフト操作されたときには複数の係合要素のうち第1の係合要素と第2の係合要素とを係合し、中立ポジションにシフト操作されたときには前記第1の係合要素を係合することが可能な自動変速機を備える変速機装置であって、
流体圧源の流体圧を調圧してライン圧として出力する圧送手段と、
前記後進用ポジションにシフト操作されたときには前記ライン圧を入力して複数の出力ポートのうち後進ポジション用出力ポートから出力し、前記中立ポジションにシフト操作されたときには前記複数の出力ポートを遮断する流体圧入出力手段と、
前記ライン圧を入力すると共に調圧して出力する第1の調圧手段と、
前記後進用ポジションにシフト操作されたときには前記後進ポジション用出力ポートから出力された流体圧を前記第1の係合要素に出力すると共に前記第1の調圧手段から出力された流体圧を前記第2の係合要素に出力し、前記中立ポジションにシフト操作されたときには前記第1の調圧手段から出力された流体圧を前記第1の係合要素に出力する選択出力手段と、
を備える車両に搭載され、後進用ポジションにシフト操作されたときには複数の係合要素のうち第1の係合要素と第2の係合要素とを係合し、中立ポジションにシフト操作されたときには前記第1の係合要素を係合することが可能な自動変速機を備える変速機装置であって、流体圧源の流体圧を調圧してライン圧として出力する圧送手段と、前記後進用ポジションにシフト操作されたときには前記ライン圧を入力して複数の出力ポートのうち後進ポジション用出力ポートから出力し、前記中立ポジションにシフト操作されたときには前記複数の出力ポートを遮断する流体圧入出力手段と、前記ライン圧を入力すると共に調圧して出力する第1の調圧手段と、前記後進用ポジションにシフト操作されたときには前記後進ポジション用出力ポートから出力された流体圧を前記第1の係合要素に出力すると共に前記第1の調圧手段から出力された流体圧を前記第2の係合要素に出力し、前記中立ポジションにシフト操作されたときには前記第1の調圧手段から出力された流体圧を前記第1の係合要素に出力する選択出力手段と、を備える変速機装置を搭載することを要旨とする。
この本発明の車両では、上述した各態様のいずれかの本発明の変速機装置を搭載するから、本発明の変速機装置が奏する効果、例えば、装置全体の消費エネルギを抑制すると共に装置の小型化を図ることができる効果などを奏することができる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は本発明の一実施例としての変速機装置を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図であり、図2はオートマチックトランスミッション20の作動表を示し、図3はオートマチックトランスミッション20の油圧回路50の構成の概略を示す構成図である。実施例の自動車10は、図1に示すように、ガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料の爆発燃焼により動力を出力する内燃機関としてのエンジン12と、エンジン12のクランクシャフト14に取り付けられたロックアップクラッチ付きのトルクコンバータ24と、このトルクコンバータ24の出力側に入力軸21が接続されると共にギヤ機構26およびデファレンシャルギヤ28を介して駆動輪18a,18bに出力軸22が接続され入力軸21に入力された動力を変速して出力軸22に伝達する有段のオートマチックトランスミッション20と、車両全体をコントロールするメイン電子制御ユニット(以下、メインECUという)90とを備える。
エンジン12は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)16により運転制御されている。エンジンECU16は、詳細に図示しないが、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。このエンジンECU16には、クランクシャフト14に取り付けられた回転数センサなどのエンジン12を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されており、エンジンECU16からは、スロットル開度を調節するスロットルモータへの駆動信号や燃料噴射弁への制御信号,点火プラグへの点火信号などが出力ポートを介して出力されている。エンジンECU16は、メインECU90と通信しており、メインECU90からの制御信号によってエンジン12を制御したり、必要に応じてエンジン12の運転状態に関するデータをメインECU90に出力する。
オートマチックトランスミッション20は、6段変速の有段変速機として構成されており、シングルピニオン式の遊星歯車機構30とラビニヨ式の遊星歯車機構40と三つのクラッチC1,C2,C3と二つのブレーキB1,B2とワンウェイクラッチF1とを備える。シングルピニオン式の遊星歯車機構30は、外歯歯車としてのサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車としてのリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31はケースに固定されており、リングギヤ32は入力軸21に接続されている。ラビニヨ式の遊星歯車機構40は、外歯歯車の二つのサンギヤ41a,41bと、内歯歯車のリングギヤ42と、サンギヤ41aに噛合する複数のショートピニオンギヤ43aと、サンギヤ41bおよび複数のショートピニオンギヤ43aに噛合すると共にリングギヤ42に噛合する複数のロングピニオンギヤ43bと、複数のショートピニオンギヤ43aおよび複数のロングピニオンギヤ43bとを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリア44とを備え、サンギヤ41aはクラッチC1を介してシングルピニオン式の遊星歯車機構30のキャリア34に接続され、サンギヤ41bはクラッチC3を介してキャリア34に接続されると共にブレーキB1を介してケースに接続され、リングギヤ42は出力軸22に接続され、キャリア44はクラッチC2を介して入力軸21に接続されている。また、キャリア44はブレーキB2を介してケースに接続されると共にワンウェイクラッチF1を介してケースに接続されている。
こうして構成されたオートマチックトランスミッション20では、図2の作動表に示すように、クラッチC1〜C3のオンオフ(オンが係合でオフが係合解除とも呼ぶ、以下同じ)とブレーキB1,B2のオンオフとの組み合わせにより前進1速〜6速と後進とニュートラルとを切り換えることができるようになっている。
前進1速の状態は、クラッチC1をオンとすると共にクラッチC2,C3とブレーキB1,B2とをオフとしたりクラッチC1とブレーキB2とをオンとすると共にクラッチC2,C3とブレーキB1とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに伝達されると共にサンギヤ41aに入力される動力はワンウェイクラッチF1によるキャリア44の固定によりキャリア44側で反力を受け持つことにより減速されてリングギヤ42を介して出力軸22に出力されるから、入力軸21に入力される動力は比較的大きな減速比をもって減速して出力軸22に出力される。前進1速の状態では、エンジンブレーキ時には、ブレーキB2をオンとすることにより、ワンウェイクラッチF1に代えてキャリア44が固定される。前進2速の状態は、クラッチC1とブレーキB1とをオンとすると共にクラッチC2,C3とブレーキB2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに伝達されると共にサンギヤ41aに入力される動力はブレーキB1によるサンギヤ41bの固定によりサンギヤ41b側で反力を受け持つことにより減速されてリングギヤ42を介して出力軸22に出力されるから、入力軸21に入力される動力は前進1速よりも小さな減速比をもって減速して出力軸22に出力される。前進3速の状態は、クラッチC1,C3をオンとすると共にクラッチC2とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに伝達されると共にサンギヤ41aに入力される動力はクラッチC1およびクラッチC3のオンによるラビニヨ式の遊星歯車機構40の一体回転により等速をもってリングギヤ42を介して出力軸22に出力されるから、入力軸21に入力される動力は前進2速よりも小さな減速比をもって減速して出力軸22に出力される。前進4速の状態は、クラッチC1,C2をオンとすると共にクラッチC3とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに伝達される一方で入力軸21からクラッチC2を介して直接にラビニヨ式の遊星歯車機構40のキャリア44に伝達されてリングギヤ42すなわち出力軸22の駆動状態が決定されるから、入力軸21に入力される動力は前進3速よりも小さな減速比をもって減速して出力軸22に出力される。前進5速の状態は、クラッチC2,C3をオンとすると共にクラッチC1とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC3を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41bに伝達される一方で入力軸21からクラッチC2を介して直接にラビニヨ式の遊星歯車機構40のキャリア44に伝達されてリングギヤ42すなわち出力軸22の駆動状態が決定されるから、入力軸21に入力される動力は増速して出力軸22に出力される。前進6速の状態は、クラッチC2とブレーキB1とをオンとすると共にクラッチC1,C3とブレーキB2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からクラッチC2を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のキャリア44に入力される動力はブレーキB1によるサンギヤ41bの固定によりサンギヤ41b側で反力を受け持つことにより増速されてリングギヤ42を介して出力軸22に出力されるから、入力軸21に入力される動力は前進5速よりも小さな減速比をもって増速して出力軸22に出力される。
後進1速の状態は、クラッチC3とブレーキB2とをオンとすると共にクラッチC1,C2とブレーキB1とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC3を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41bに伝達されると共にサンギヤ41bに入力される動力はブレーキB2によるキャリア44の固定によりキャリア44側で反力を受け持つことにより逆回転してリングギヤ42を介して出力軸22に出力されるから、入力軸21に入力される動力は比較的小さな減速比をもって減速して逆回転の動力として出力軸22に出力される。
ニュートラルの状態は、ブレーキB2をオンとすると共にクラッチC1〜C3とブレーキB1とをオフとすることにより形成したり、クラッチC1〜C3とブレーキB1,B2をすべてオフとすることにより形成することができる。実施例では、前者によりニュートラルの状態を形成するものとした。こうする理由については後述する。
オートマチックトランスミッション20のクラッチC1〜C3やブレーキB1,B2は、図3の油圧回路50により駆動される。この油圧回路50は、図示するように、エンジン12からの動力を用いてストレーナ51から作動油を吸引して圧送する機械式オイルポンプ52と、機械式オイルポンプ52により圧送された作動油の圧力(ライン圧PL)を調節するレギュレータバルブ54と、ライン圧PLから図示しないモジュレータバルブを介して入力されたモジュレータ圧PMODを用いてレギュレータバルブ54を駆動するリニアソレノイド56と、ライン圧PLを入力する入力ポート58aとDポジション用出力ポート58bとRポジション用出力ポート58cとが形成されシフトレバー91の操作に連動してシフトレバー91がニュートラル(N)ポジションにあるときには入力ポート58aと両出力ポート58b、58cとの連通を遮断しシフトレバー91がドライブ(D)ポジションにあるときには入力ポート58aとDポジション用出力ポート58bとを連通すると共に入力ポート58aとRポジション用出力ポート58cとの連通を遮断しシフトレバー91がリバース(R)ポジションにあるときには入力ポート58aとDポジション用出力ポート58bとの連通を遮断すると共に入力ポート58aとRポジション用出力ポート58cとを連通するマニュアルバルブ58と、ライン圧PLを入力すると共に調圧してクラッチC1に出力するノーマルクローズ型のリニアソレノイドSLC1と、マニュアルバルブ58のDポジション用出力ポート58bからのドライブ圧PDを入力すると共に調圧して出力するノーマルクローズ型のリニアソレノイドSLC2と、ライン圧PLを入力すると共に調圧して出力するノーマルオープン型のリニアソレノイドSLC3と、マニュアルバルブ58のDポジション用出力ポート58bからのドライブ圧PDを入力すると共に調圧してブレーキB1に出力するノーマルクローズ型のリニアソレノイドSLB1と、リニアソレノイドSLC3からの出力圧であるSLC3圧を入力すると共にクラッチC3か他方の油路69かに選択的に出力するC3リレーバルブ60と、リニアソレノイドSLC2からの出力圧であるSLC2圧を入力しクラッチC2か他方の油路79かに選択的に出力すると共にC3リレーバルブ60からの出力圧を他方の油路69を介して入力してSLC2圧をクラッチC2に出力するときにはC3リレーバルブ60からの出力圧を油路79に出力しSLC2圧を油路79に出力するときにはC3リレーバルブ60からの出力圧を遮断するC2リレーバルブ70と、油路79に出力されたC2リレーバルブ70からの出力圧とマニュアルバルブ58のRポジション用出力ポート58cから出力されたリバース圧PRとを選択的に入力してブレーキB2に出力するB2リレーバルブ80と、ライン圧PLからモジュレータバルブを介して入力されたモジュレータ圧PMODを用いてC2リレーバルブ70に駆動用の信号圧を出力するためのノーマルオープン型のオンオフソレノイドS1と、ライン圧PLからモジュレータバルブを介して入力されたモジュレータ圧PMODを用いてC3リレーバルブ60とB2リレーバルブ80とに駆動用の信号圧を出力するためのノーマルクローズ型のオンオフソレノイドS2などにより構成されている。なお、マニュアルバルブ58のRポジション用出力ポート58cとB2リレーバルブ80の入力ポート82dとの間の油路には、B2リレーバルブ80側の方向に逆止弁59aが設けられると共に逆止弁59aに並列してオリフィス59bが設けられている。ここで、ライン圧は、自動変速機に必要な油圧である。この自動変速機に必要な油圧は、オートマチックトランスミッション20の状態(変速中か否か)やエンジン12から出力されるトルク,車速,スロットル開度,作動油の温度(油温)などから算出される。
C3リレーバルブ60は、オンオフソレノイドS2からの信号圧を入力する信号圧用入力ポート62aとリニアソレノイドSLC3からの出力圧(SLC3圧)を入力する入力ポート62bとクラッチC3に油圧を出力する出力ポート62cと油路69に油圧を出力する出力ポート62dとドレンポート62eとが形成されたスリーブ62と、スリーブ62内を軸方向に摺動するスプール64と、スプール64を軸方向に付勢するスプリング66とにより構成されている。このC3リレーバルブ60は、オンオフソレノイドS2から信号圧用入力ポート62aに信号圧が入力されていないときにはスプリング66の付勢力によりスプール64が図中左半分の領域に示す位置に移動して入力ポート62bと出力ポート62c(クラッチC3側)とを連通すると共に入力ポート62bと出力ポート62d(C2リレーバルブ70側)との連通を遮断し、オンオフソレノイドS2から信号圧用入力ポート62aに信号圧が入力されているときにはこの信号圧がスプリング66の付勢力に打ち勝ってスプール64が図中右半分の領域に示す位置に移動して入力ポート62bと出力ポート62c(クラッチC3側)との連通を遮断すると共に入力ポート62bと出力ポート62d(C2リレーバルブ70側)とを連通する。なお、入力ポート62bと出力ポート62c(クラッチC3側)との連通が遮断されると、これに伴って出力ポート62cとドレンポート62eとが連通してクラッチC3側の作動油がドレンされるようになっている。
C2リレーバルブ70は、オンオフソレノイドS1からの信号圧を入力する信号圧用入力ポート72aとC3リレーバルブ60から油路69に出力された出力圧を入力する入力ポート72bとリニアソレノイドSLC2からの出力圧(SLC2圧)を入力する入力ポート72cと油圧をクラッチC2に出力する出力ポート72dと油圧を油路79に出力する出力ポート72eとドレンポート72fとが形成されたスリーブ72と、スリーブ72内を軸方向に摺動するスプール74と、スプール74を軸方向に付勢するスプリング76とにより構成されている。このC2リレーバルブ70は、オンオフソレノイドS1から信号圧用入力ポート72aに信号圧が入力されていないときにはスプリング76の付勢力によりスプール74が図中左半分の領域に示す位置に移動して入力ポート72b(C3リレーバルブ60側)と出力ポート72e(B2リレーバルブ80側)とを連通すると共に入力ポート72c(リニアソレノイドSLC2側)と出力ポート72d(クラッチC2側)とを連通し、オンオフソレノイドS1から信号圧用入力ポート72aに信号圧が入力されているときにはこの信号圧がスプリング76の付勢力に打ち勝ってスプール76が図中右半分の領域に示す位置に移動して入力ポート72b(C2リレーバルブ60側)を遮断し入力ポート72c(リニアソレノイドSLC2側)と出力ポート72e(B2リレーバルブ80側)とを連通すると共に入力ポート72cと出力ポート72d(クラッチC2側)との連通を遮断する。なお、入力ポート72cと出力ポート72d(クラッチC2側)との連通が遮断されると、これに伴って出力ポート72dとドレンポート72fとが連通してクラッチC2側の作動油がドレンされるようになっている。
B2リレーバルブ80は、オンオフソレノイドS2からの信号圧を入力する信号圧用入力ポート82aとオンオフソレノイドS1からの信号圧をこのB2リレーバルブ80を介してC2リレーバルブ70の信号圧用入力ポート72aに信号圧を出力するための信号圧用入力ポート82bおよび信号圧用出力ポート82cとマニュアルバルブ58のRポジション用出力ポート58cからのリバース圧PRを入力する入力ポート82dとC2リレーバルブ70の出力ポート72eからの出力圧を入力する入力ポート82eと油圧をブレーキB2に出力する出力ポート82fとが形成されたスリーブ82と、スリーブ82内を軸方向に摺動するスプール84と、スプール84を軸方向に付勢するスプリング86とにより構成されている。このB2リレーバルブ80は、オンオフソレノイドS1から信号圧用入力ポート82aに信号圧が入力されていないときにはスプリング86の付勢力によりスプール84が図中左半分の領域に示す位置に移動して信号圧用入力ポート82bを遮断してC2リレーバルブ70の信号圧用入力ポート72aへの信号圧をオフし入力ポート82d(マニュアルバルブ58のRポジション用出力ポート58側)と出力ポート82f(ブレーキB2側)とを連通すると共に入力ポート82e(C2リレーバルブ70側)を遮断し、オンオフソレノイドS2から信号圧用入力ポート82aに信号圧が入力されているときにはこの信号圧がスプリング86の付勢力に打ち勝ってスプール86が図中右半分の領域に示す位置に移動しS1信号圧用入力ポート82bとS1信号圧用出力ポート82cとを連通してオンオフソレノイドS1からの信号圧を信号圧用入力ポート82bおよび信号圧用出力ポート82cを介してC2リレーバルブ70の信号圧用入力ポート72aに出力可能な状態とし入力ポート82d(マニュアルバルブ58のRポジション用出力ポート58側)を遮断すると共に入力ポート82e(C2リレーバルブ70側)と出力ポート82f(クラッチC3側)とを連通する。
オートマチックトランスミッション20(油圧回路50)は、オートマチックトランスミッション用電子制御ユニット(以下、ATECUという)29により駆動制御されている。ATECU29は、詳細に図示しないが、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。ATECU29には、入力軸21に取り付けられた回転数センサからの入力軸回転数Ninや出力軸22に取り付けられた回転数センサからの出力軸回転数Noutなどが入力ポートを介して入力されており、ATECU29からは、リニアソレノイド56,SLC1〜SLC3,SLB1への駆動信号,オンオフソレノイドS1,S2への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。ATECU29は、メインECU90と通信しており、メインECU90からの制御信号によってオートマチックトランスミッション20(油圧回路50)を制御したり、必要に応じてオートマチックトランスミッション20の状態に関するデータをメインECU90に出力する。
メインECU90は、詳細には図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。メインECU90には、シフトレバー91の操作位置を検出するシフトポジションセンサ92からのシフトポジションSP,アクセルペダル93の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ94からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル95の踏み込みを検出するブレーキスイッチ96からのブレーキスイッチ信号BSW,車速センサ98からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ここで、シフトレバー91は、実施例では、パーキング(P)ポジション,リバース(R)ポジション,ニュートラル(N)ポジション,ドライブ(D)ポジションから選択できるようになっており、選択されたポジションに応じてクラッチC1〜C3やブレーキB1,B2がオンオフされる。なお、メインECU90は、前述したように、エンジンECU16やATECU29と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU16やATECU29と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された自動車10では、シフトレバー91がDポジションにシフト操作されたときには、アクセル開度Accや車速Vに基づいて変速マップを用いて前進1速〜前進6速のいずれかを設定し、クラッチC1〜C3とブレーキB1,B2のうち設定した変速段に応じて必要なクラッチやブレーキがオンされるようリニアソレノイド56,SLC1〜SLC3,SLB1やオンオフソレノイドS1,S2が駆動制御される。
ここで、実施例の変速機装置としては、オートマチックトランスミッション20と、ATECU29が該当する。
次に、こうして構成された自動車10が備える実施例の変速機装置の動作、特に、シフトレバー91がNポジションとRポジションとの間で変更されたときの動作やDポジションとRポジションとの間で変更されたときの動作について説明する。まず、シフトレバー91がNポジションとRポジションとの間で変更されたときの動作について説明する。図4は、ATECU29により実行されるR−N切換処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、シフトレバー91がRポジションからNポジションに切り換えられたときやNポジションからRポジションに切り換えられたときに実行される。なお、シフトレバー91がRポジションからNポジションに切り換えられたときには、クラッチC3とブレーキB2とがオンの状態からブレーキB2のみがオンの状態に切り換える処理となり、シフトレバー91がNポジションからRポジションに切り換えられたときには、ブレーキB2のみがオンの状態からクラッチC3とブレーキB2とがオンの状態に切り換える処理となる。以下、図4のルーチンを図5に例示するタイムチャートを参照しながら説明する。
R−N切換処理ルーチンが実行されると、ATECU29のCPUは、まず、シフトレバー91の切り換えがRポジションからNポジションへの切り換えかNポジションからRポジションへの切り換えのいずれであるかを判定し(ステップS100)、RポジションからNポジションへの切り換えのときには(図5中の時刻t11)、リニアソレノイドSLC3からの出力圧であるSLC3圧が徐々に減少するようリニアソレノイドSLC3を駆動制御する(ステップS110)。これにより、クラッチC3に作用していたクラッチ圧PC3は徐々に小さくなり、クラッチC3の係合が解除される(図5中の時刻t11〜t12参照)。また、シフトレバー91がRポジションからNポジションへ切り換えられると、マニュアルバルブ58のライン圧PLを入力する入力ポート58aとRポジション用出力ポート58cとの連通が遮断されると共にブレーキB2側の作動油はオリフィス59bを介してドレンされるから、リバース圧PRによりブレーキB2に作用していたブレーキ圧PB2は値0に徐々に近づいていく(図5中時刻t11〜t12参照)。続いて、シフトレバー91がRポジションからNポジションに切り換えられてからSLC3圧が所定圧P0付近となる所定時間T(図5中の時刻t12)が経過するのを待って(ステップS120)、オンオフソレノイドS1とオンオフソレノイドS2とを共にONとし(ステップS130)、SLC3圧が所定圧P0で定圧保持されるようリニアソレノイドSLC3を駆動制御して(ステップS140)、本ルーチンを終了する。前述したように、オンオフソレノイドS1はノーマルオープン型のソレノイドとして構成されオンオフソレノイドS2はノーマルクローズ型のソレノイドとして構成されている。したがって、オンオフソレノイドS1,S2を共にONとすると、オンオフソレノイドS1からは信号圧は出力されなくなると共にオンオフソレノイドS2からは信号圧が出力されるから、リニアソレノイドSLC3からのSLC3圧は、クラッチC3側に供給される状態からC3リレーバルブ60,C2リレーバルブ70,B2リレーバルブ80を順に介してブレーキB2側に供給される状態に切り換えられることになる。実施例では、オンオフソレノイドS1とオンオフソレノイドS2とを共にONとした後、SLC3圧が所定圧P0で定圧保持されるようリニアソレノイドSLC3を駆動制御しているから、所定圧P0がブレーキB2に作用してブレーキB2を係合することになる。ここで、所定圧P0は、実施例では、ブレーキB2のピストンが摩擦板に当接する程度の油圧として設定するものとした。シフトレバー91がNポジションにあるときには、ブレーキB2を完全に係合する必要はないから、必要最小限の所定圧P0でブレーキB2を係合させることにより、エネルギの消費を抑制することができる。
一方、シフトレバー91の切り換えがNポジションからRポジションのときには(図5中の時刻t13)、オンオフソレノイドS1をONとすると共にオンオフソレノイドS2をOFFとして(ステップS150)、リニアソレノイドSLC3のSLC3圧が値0となるようリニアソレノイドSLC3を駆動制御する(ステップS160)。オンオフソレノイドS1をONとすると共にオンオフソレノイドS2をOFFとすると、オンオフソレノイドS1,S2のいずれからも信号圧は出力されなくなるから、リニアソレノイドSLC3のSLC3圧はクラッチC3側に供給される状態となると共にマニュアルバルブ58のRポジション用出力ポート58cからのリバース圧PRがブレーキB2側に供給される状態となる。また、シフトレバー91がRポジションに操作されると、ライン圧PLが入力されるマニュアルバルブ58の入力ポート58aとRポジション用出力ポート58cとが連通するから、ライン圧PLはマニュアルバルブ58の入力ポート58a,Rポジション用出力ポート58cを介してブレーキB2に作用してブレーキB2を係合することになる。そして、クラッチC3のパッククリアランスを詰めるために作動油を急速充填するファストフィルを実行し(ステップS170)、ファストフィルが完了した後にSLC3圧が徐々に増加し(ステップS180)、クラッチC3の係合に伴ってSLC3圧が最大となるようリニアソレノイドSLC3を駆動制御して(ステップS190)、本ルーチンを終了する。これにより、クラッチC3が係合されてRポジションが形成される。このように、シフトレバー91がRポジションのときにはマニュアルバルブ58のRポジション用出力ポート58からの油圧PRによりブレーキB2を係合すると共にリニアソレノイドSLC3からのSLC3圧によりクラッチC3を係合し、シフトレバー91がNポジションのときにはリニアソレノイドSLC3からのSLC3圧をクラッチC3に代えてブレーキB2に供給することによりブレーキB2を係合するのである。これにより、ブレーキB2を係合するための専用のリニアソレノイドを設ける必要をなくすことができる。
次に、シフトレバー91がDポジションとRポジションとの間で変更されたときの動作について説明する。図6は、ATECU29により実行されるD−R切換処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、シフトレバー91がDポジションからRポジションに切り換えられたときやRポジションからDポジションに切り換えられたときに実行される。なお、シフトレバー91がDポジションからRポジションに切り換えられたときには、クラッチC1とブレーキB2とがオンの状態からブレーキB2のみがオンの状態に切り換える処理となり、シフトレバー91がRポジションからDポジションに切り換えられたときには、前進1速の非エンジンブレーキの状態すなわちブレーキB2のみがオンの状態からクラッチC1とブレーキB2とがオンの状態に切り換える処理となる。以下、図6のルーチンを図7に例示するタイムチャートを参照しながら説明する。
D−R切換処理ルーチンが実行されると、ATECU29のCPUは、まず、シフトレバー91の切り換えがDポジションからRポジションへの切り換えかRポジションからDポジションへの切り換えのいずれであるかを判定し(ステップS200)、DポジションからRポジションへの切り換えのときには(図7中の時刻t21)、クラッチC1の係合を解除するためにリニアソレノイドSLC1からの出力圧であるSLC1圧が値0となるようリニアソレノイドSLC1を駆動制御し(ステップS210)、オンオフソレノイドS1をONとすると共にオンオフソレノイドS2をOFFとする(ステップS220)。これにより、オンオフソレノイドS1,S2のいずれからも信号圧は出力されなくなるから、リニアソレノイドSLC3のSLC3圧はクラッチC3側に供給される状態となると共にマニュアルバルブ58のRポジション用出力ポート58cからの油圧PRがブレーキB2側に供給される状態となり、ライン圧PLはマニュアルバルブ58の入力ポート58a,Rポジション用出力ポート58cを介してリバース圧PRとしてブレーキB2に作用してブレーキB2を係合することになる。そして、クラッチC3に対して前述したファストフィルを実行し(ステップS230)、リニアソレノイドSLC3のSLC3圧を徐々に増加し(ステップS240)、クラッチC3の係合に伴ってSLC3圧が最大となるようリニアソレノイドSLC3を駆動制御して(ステップS250)、本ルーチンを終了する。
一方、シフトレバー91の切り換えがRポジションからDポジションのときには(図7中の時刻t22)、リニアソレノイドSLC3のSLC3圧が徐々に減少するようリニアソレノイドSLC3を駆動制御する(ステップS260)。これにより、クラッチC3に作用していたクラッチ圧PC3は徐々に小さくなり、クラッチC3の係合が解除される(図7中の時刻22〜t23参照)。また、シフトレバー91がRポジションからDポジションへ切り換えられると、マニュアルバルブ58のライン圧PLを入力する入力ポート58aとRポジション用出力ポート58cとの連通が遮断されるから、Rポジション用出力ポート58cからブレーキB2に作用するブレーキ圧PB2は値0に近づいていく(図7中の時刻t22〜t23参照)。続いて、クラッチC1に対してファストフィルを実行し(ステップS270)、リニアソレノイドSLC1の出力圧であるSLC1圧を徐々に増加するようリニアソレノイドSLC1を駆動制御する(ステップS280)。続いて、シフトレバー91がRポジションからDポジションに切り換えられてから所定時間Tが経過するのを待って(ステップS290)、オンオフソレノイドS1をOFFとすると共にオンオフソレノイドS2をONとする(ステップS300)。これにより、オンオフソレノイドS1,S2のいずれからも信号圧が出力されるから、リニアソレノイドSLC2のSLC2圧はブレーキB2側に供給される状態となると共にリニアソレノイドSLC3のSLC3圧は遮断される状態となる。そして、リニアソレノイドSLC2のSLC2圧が前述した所定圧P0となると共にこの所定圧P0で定圧保持されるようリニアソレノイドSLC2を駆動制御し(ステップS310)、クラッチC1の係合に伴ってリニアソレノイドSLC1のSLC1圧が最大となるようリニアソレノイドSLC1を駆動制御して(ステップS320)、本ルーチンを終了する。これにより、クラッチC1が係合されると共にブレーキB2が係合されてDポジションの前進1速が形成される。このように、シフトレバー91がRポジションのときにはマニュアルバルブ58のRポジション用出力ポート58cからの油圧PRによりブレーキB2を係合すると共にリニアソレノイドSLC3からのSLC3圧によりクラッチC3を係合し、シフトレバー91がDポジションのときにはリニアソレノイドSLC2からのSLC2圧をブレーキB2に供給することによりブレーキB2を係合すると共にリニアソレノイドSLC1からのSLC1圧をクラッチC1に供給することによりクラッチC1を係合するのである。これにより、ブレーキB2を係合するための専用のリニアソレノイドを設ける必要をなくすことができる。
実施例では、シフトレバー91がNポジションのときには、リニアソレノイドSLC3のSLC3圧を用いてブレーキB2を係合し、シフトレバー91がDポジションのときには、リニアソレノイドSLC2のSLC2圧を用いてブレーキB2を係合している。これは、DポジションのときにもNポジションのときと同様にリニアソレノイドSLC3のSLC3圧を用いてブレーキB2を係合することもできるが、この場合、リニアソレノイドSLC3はSLC3圧を前進3速を形成するためのクラッチC3に供給するよう構成されているため、前進3速から前進1速(エンジンブレーキ時)にダウンシフト変速するときに一つのリニアソレノイドSLC3でクラッチC3からブレーキB2につかみ替える必要が生じ、スムーズなダウンシフト変速を妨げることに基づく。
以上説明した実施例の変速機装置によれば、シフトレバー91がRポジションのときにはマニュアルバルブ58のRポジション用出力ポート58からのリバース圧PRによりブレーキB2を係合すると共にリニアソレノイドSLC3からのSLC3圧によりクラッチC3を係合して後進1速の状態を形成し、シフトレバー91がNポジションのときにはリニアソレノイドSLC3からのSLC3圧をクラッチC3に代えてブレーキB2に供給することによりブレーキB2を係合してニュートラルの状態を形成するから、ブレーキB2を係合するための専用のリニアソレノイドを設ける必要がない。この結果、リニアソレノイドを別途配置することによる油圧回路50の消費流量(消費エネルギ)を増加を抑制して装置全体のエネルギ効率を向上させることができると共に装置全体の小型化を図ることができる。もとより、Rポジション時に係合されるクラッチC3とブレーキB2のうちブレーキB2をNポジション時に係合しておくことにより、NポジションからRポジションに切り換えるときにはクラッチC3のみを係合すればよいから、シフト操作に対する応答性(レスポンス)をより向上させることができる。しかも、シフトレバー91がDポジションのときには前進3速の形成に用いるクラッチC3に油圧を供給するリニアソレノイドSLC3とは異なるリニアソレノイドSLC2からのSLC2圧をブレーキB2に供給することによりブレーキB2を係合すると共にリニアソレノイドSLC1からのSLC1圧をクラッチC1に供給することによりクラッチC1を係合するから、前進3速から前進1速にダウンシフト変速をスムーズに行なうことができる。さらに、シフトレバー91がDポジション(前進1速の非エンジンブレーキ時)のときやNポジションのときには、ブレーキB2の係合圧を必要最小限の所定圧P0に設定するから、油圧回路50の消費流量(エネルギ消費)をさらに抑制することができる。
次に、第2実施例の変速機装置について説明する。図8は、第2実施例の変速機装置が備える油圧回路150の構成の概略を示す構成図である。なお、第2実施例の変速機装置では、実施例の変速機装置と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は重複するから省略する。第2実施例の油圧回路150は、図示するように、実施例の油圧回路50が備えるC3リレーバルブ60とC2リレーバルブ70とB2リレーバルブ80の3つのリレーバルブとこれらを駆動するノーマルオープン型のオンオフソレノイドS1およびノーマルクローズ型のオンオフソレノイドS2に代えて、リニアソレノイドSLC3からの出力圧であるSLC3圧をクラッチC3に出力すると共にマニュアルバルブ58のRポジション用出力ポート58cからの出力圧であるリバース圧PRをブレーキB2に出力する状態とSLC3圧をブレーキB2に出力すると共にリバース圧PRを遮断する状態とを切り替えるC3リレーバルブ160と、このC3リレーバルブ160を駆動するノーマルクローズ型のオンオフソレノイドSとを備える。この油圧回路150を用いたときのオートマチックトランスミッション20の作動表を図9に示す。
C3リレーバルブ160は、図8に示すように、オンオフソレノイドSからの信号圧を入力する信号圧用入力ポート162aとマニュアルバルブ58のRポジション用出力ポート58cからのリバース圧PRを入力する入力ポート162bとリニアソレノイドSLC3からの出力圧(SLC3圧)を入力する入力ポート162cとクラッチC3に油圧を出力する出力ポート162dとブレーキB2に油圧を出力する出力ポート162eとドレンポート162fとが形成されたスリーブ162と、スリーブ162内を軸方向に摺動するスプール164と、スプール164を軸方向に付勢するスプリング166とにより構成されている。このC3リレーバルブ160は、オンオフソレノイドSから信号圧用入力ポート162aに信号圧が入力されていないときには、スプリング166の付勢力によりスプール164が図中左半分の領域に示す位置に移動し、入力ポート162b(マニュアルバルブ58のRポジション用出力ポート58c側)と出力ポート162e(ブレーキB2側)とを連通すると共に入力ポート162c(リニアソレノイドSLC3の出力ポート側)と出力ポート162d(クラッチC3側)とを連通する。一方、オンオフソレノイドSから信号圧用入力ポート162aに信号圧が入力されているときには、この信号圧がスプリング166の付勢力に打ち勝ってスプール164が図中右半分の領域に示す位置に移動し、入力ポート162b(マニュアルバルブ58のRポジション用出力ポート58c側)を閉塞し入力ポート162c(リニアソレノイドSLC3の出力ポート側)と出力ポート162d(クラッチC3側)との連通を遮断すると共に入力ポート162cと出力ポート162e(ブレーキB2側)とを連通する。なお、入力ポート162c(リニアソレノイドSLC3の出力ポート側)と出力ポート162d(クラッチC3側)との連通が遮断されると、これに伴って出力ポート162dとドレンポート162fとが連通してクラッチC3に供給されている作動油がドレンされるようになっている。
次に、こうして構成された第2実施例の変速機装置の動作について説明する。図10は、ATECU29により実行されるR−N切換処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、シフトレバー91がRポジションからNポジションに切り換えられたときやNポジションからRポジションに切り換えられたときに実行される。以下、図10のルーチンを図11に例示するタイムチャートを参照しながら説明する。
R−N切換処理ルーチンが実行されると、ATECU29のCPUは、まず、シフトレバー91の切り換えがRポジションからNポジションへの切り換えかNポジションからRポジションへの切り換えのいずれであるかを判定し(ステップS400)、RポジションからNポジションへの切り換えのときには(図11中の時刻t31)、リニアソレノイドSLC3からの出力圧であるSLC3圧が徐々に減少するようリニアソレノイドSLC3を駆動制御する(ステップS410)。これにより、クラッチC3に作用していたクラッチ圧PC3は徐々に小さくなり、クラッチC3の係合が解除される(図11中の時刻t31〜t32参照)。また、シフトレバー91がRポジションからNポジションへ切り換えられると、ブレーキB2に作用していたブレーキ圧PB2は値0に徐々に近づいていく(図11中の時刻t31〜t32参照)。続いて、シフトレバー91がRポジションからNポジションに切り換えられてからSLC3圧が所定圧P0付近となる所定時間T(図11中の時刻t32)が経過するのを待って(ステップS420)、オンオフソレノイドSをONとし(ステップS430)、SLC3圧が所定圧P0で定圧保持されるようリニアソレノイドSLC3を駆動制御して(ステップS440)、本ルーチンを終了する。前述したように、オンオフソレノイドSはノーマルクローズ型のソレノイドとして構成されており、オンオフソレノイドSをONとすると、オンオフソレノイドSから信号圧が出力されるから、リニアソレノイドSLC3からのSLC3圧は、C3リレーバルブ160を介してブレーキB2に供給されることになる。実施例では、オンオフソレノイドSをONとした後、SLC3圧が所定圧P0で定圧保持されるようリニアソレノイドSLC3を駆動制御しているから、所定圧P0がブレーキB2に作用してブレーキB2を係合することになる。ここで、所定圧P0は、実施例では、ブレーキB2のピストンが摩擦板に当接する程度の油圧(ストロークエンド圧Pse以下の油圧)として設定するものとした。シフトレバー91がNポジションにあるときには、ブレーキB2を完全に係合する必要はないから、必要最小限の所定圧P0でブレーキB2を係合させることにより、エネルギの消費を抑制することができる。
一方、シフトレバー91の切り換えがNポジションからRポジションのときには(図11中の時刻t33)、オンオフソレノイドSをOFFとして(ステップS450)、リニアソレノイドSLC3のSLC3圧がストロークエンド圧Pse以下の所定圧P0となるようリニアソレノイドSLC3を駆動制御する(ステップS460)。オンオフソレノイドSをOFFとすると、オンオフソレノイドSから信号圧は出力されなくなるから、C3リレーバルブ160により、リニアソレノイドSLC3からのSLC3圧がクラッチC3に供給され、ライン圧がマニュアルバルブ58の入力ポート58a,Rポジション用出力ポート58cを介してリバース圧PRとしてブレーキB2に供給される状態となる。そして、クラッチC3のパッククリアランスを詰めるために作動油を急速充填するファストフィルを実行し(ステップS470)、ファストフィルが完了した後にSLC3圧が徐々に増加し(ステップS480)、クラッチC3の係合に伴ってSLC3圧が最大となるようリニアソレノイドSLC3を駆動制御して(ステップS490)、本ルーチンを終了する。これにより、クラッチC3が係合されてRポジションが形成される。このように、シフトレバー91がRポジションのときにはマニュアルバルブ58のRポジション用出力ポート58からのリバース圧PRによりブレーキB2を係合すると共にリニアソレノイドSLC3からのSLC3圧によりクラッチC3を係合し、シフトレバー91がNポジションのときにはリニアソレノイドSLC3からのSLC3圧をクラッチC3に代えてブレーキB2に供給することによりブレーキB2を係合するのである。これにより、ブレーキB2を係合するための専用のリニアソレノイドを設ける必要をなくすことができる。
次に、シフトレバー91がDポジションとRポジションとの間で変更されたときの動作について説明する。図12は、ATECU29により実行されるD−R切換処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、シフトレバー91がDポジションからRポジションに切り換えられたときやRポジションからDポジションに切り換えられたときに実行される。以下、図12のルーチンを図13に例示するタイムチャートを参照しながら説明する。
D−R切換処理ルーチンが実行されると、ATECU29のCPUは、まず、シフトレバー91の切り換えがDポジションからRポジションへの切り換えかRポジションからDポジションへの切り換えのいずれであるかを判定し(ステップS500)、DポジションからRポジションへの切り換えのときには(図13中の時刻t41)、クラッチC1の係合を解除するためにリニアソレノイドSLC1からの出力圧であるSLC1圧が値0となるようリニアソレノイドSLC1を駆動制御し(ステップS510)、オンオフソレノイドSをOFFとする(ステップS520)。これにより、オンオフソレノイドSから信号圧は出力されなくなるから、C3リレーバルブ160により、リニアソレノイドSLC3のSLC3圧はクラッチC3側に供給されると共にライン圧がマニュアルバルブ58の入力ポート58a,Rポジション用出力ポート58cを介してリバース圧PRとしてブレーキB2側に供給される状態となる。そして、リニアソレノイドSLC3のSLC3圧がストロークエンド圧Pse以下の所定圧P0となるようリニアソレノイドSLC3を駆動制御し(ステップS530)、クラッチC3に対して前述したファストフィルを実行し(ステップS540)、リニアソレノイドSLC3のSLC3圧を徐々に増加し(ステップS550)、クラッチC3の係合に伴ってSLC3圧が最大となるようリニアソレノイドSLC3を駆動制御して(ステップS560)、本ルーチンを終了する。
一方、シフトレバー91の切り換えがRポジションからDポジションのときには(図13中の時刻t42)、リニアソレノイドSLC3のSLC3圧が徐々に減少するようリニアソレノイドSLC3を駆動制御する(ステップS570)。これにより、クラッチC3に作用していたクラッチ圧PC3は徐々に小さくなり、クラッチC3の係合が解除される(図13中の時刻42〜t43参照)。また、シフトレバー91がRポジションからDポジションへ切り換えられると、マニュアルバルブ58のライン圧PLを入力する入力ポート58aとRポジション用出力ポート58cとの連通が遮断されるから、Rポジション用出力ポート58cからブレーキB2に作用するブレーキ圧PB2は値0に近づいていく(図13中の時刻t42〜t43参照)。続いて、シフトレバー91がRポジションからDポジションに切り換えられてからブレーキ圧PB2が所定圧P0付近となる所定時間T2(図13中の時刻t43)が経過を待って(ステップS580)、オンオフソレノイドSをONとして(ステップS590)、SLC3圧が所定圧P0で保持されるようリニアソレノイドSLC3を駆動制御する(ステップS600)。これにより、オンオフソレノイドSから信号圧が出力されるから、C3リレーバルブ160により、リニアソレノイドSLC3のSLC3圧はブレーキB2側に供給される状態となり、所定圧P0によりブレーキB2が係合されることになる。そして、リニアソレノイドSLC1を駆動制御することによりクラッチC1に対してファストフィルを実行し(ステップS610)、リニアソレノイドSLC1の出力圧であるSLC1圧を徐々に増加し(ステップS620)クラッチC1の係合に伴ってリニアソレノイドSLC1のSLC1圧が最大となるようリニアソレノイドSLC1を駆動制御して(ステップS630)、本ルーチンを終了する。これにより、クラッチC1が係合されると共にブレーキB2が係合されてDポジションの前進1速が形成される。このように、シフトレバー91がRポジションのときにはマニュアルバルブ58のRポジション用出力ポート58cからのリバース圧PRによりブレーキB2を係合すると共にリニアソレノイドSLC3からのSLC3圧によりクラッチC3を係合し、シフトレバー91がDポジションのときにはリニアソレノイドSLC3からのSLC3圧をブレーキB2に供給することによりブレーキB2を係合すると共にリニアソレノイドSLC1からのSLC1圧をクラッチC1に供給することによりクラッチC1を係合するのである。これにより、ブレーキB2を係合するための専用のリニアソレノイドを設ける必要をなくすことができる。
実施例や第2実施例の変速機装置では、シフトレバー91がNポジションのときにはリニアソレノイドSLC3のSLC3圧を用いてブレーキB2を係合しシフトレバー91がDポジションのとき(前進1速の非エンジンブレーキ時)にはリニアソレノイドSLC2のSLC2圧を用いてブレーキB2を係合するものとしたが、これに限定されるものではなく、DポジションのときにもNポジションのときと同様にリニアソレノイドSLC3のSLC3圧を用いてブレーキB2を係合するものとしても差し支えない。
実施例や第2実施例の変速機装置では、シフトレバー91がDポジションのとき(前進1速の非エンジンブレーキ時)にブレーキB2を係合するものとしたが、前進1速の非エンジンブレーキ時ではブレーキB2に代えてワンウェイクラッチF1が係合されるから、ブレーキB2を係合しないものとしても差し支えない。
実施例や第2実施例の変速機装置では、各リニアソレノイドSLC1〜SLC3としてライン圧PLから最適なクラッチ圧を生成して対応するクラッチやブレーキをダイレクトに制御するダイレクト制御用のリニアソレノイドとして構成するものとしたが、リニアソレノイドをパイロット制御用のものとして用いて別途コントロールバルブを駆動することによりこのコントロールバルブによりクラッチ圧を生成して対応するクラッチやブレーキを制御するものとしてもよい。
実施例や第2実施例の変速機装置では、オートマチックトランスミッション20を前進1速〜前進6速の6段変速の有段変速機により構成するものとしたが、これに限定されるものではなく、2〜5段変速の有段変速機により構成するものとしてもよいし、7段以上の有段変速機により構成するものとしてもよい。
ここで、実施例の主要な要素と発明の開示の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、ブレーキB2が「第1の係合要素」に相当し、クラッチC3が「第2の係合要素」に相当し、機械式オイルポンプ52やレギュレータバルブ54,リニアソレノイド56が「圧送手段」に相当し、マニュアルバルブ58が「流体圧入出力手段」に相当し、リニアソレノイドSLC3が「第1の調圧手段」に相当し、C3リレーバルブ60やC2リレーバルブ70,B2リレーバルブ80,オンオフソレノイドS1,S2が「選択出力手段」に相当する。また、クラッチC1が「第3の係合要素」に相当し、クラッチC2或いはクラッチC3が「第4の係合要素」に相当し、リニアソレノイドSLC2が「第2の調圧手段」に相当する。さらに、C3リレーバルブ60やC2リレーバルブ70,B2リレーバルブ80が「切り換えバルブ」に相当し、オンオフソレノイドS1,S2が「信号圧出力手段」に相当する。また、C3リレーバルブ160も「切り換えバルブ」に相当する。また、C3リレーバルブ60が「第1の切り換えバルブ」に相当し、B3リレーバルブ80が「第2の切り換えバルブ」に相当し、C2リレーバルブ70が「第3の切り換えバルブ」に相当する。また、出力ポート62dや出力ポート162eが「第1の出力ポート」に相当し、出力ポート62cや出力ポート162dが「第2の出力ポート」に相当し、出力ポート72eが「第3の出力ポート」に相当し、出力ポート72dが「第4の出力ポート」に相当し、入力ポート82eや入力ポート162cが「第1の入力ポート」に相当し、入力ポート82bや入力ポート162bが「第2の入力ポート」に相当し、入力ポート72bが「第3の入力ポート」に相当し、入力ポート72cが「第4の入力ポート」に相当する。なお、実施例の主要な要素と発明の開示の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が発明の開示の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、発明の開示の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、発明の開示の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は発明の開示の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本出願は、2008年9月12日に出願された日本国特許出願第2008−235747号を優先権主張の基礎としており、その内容の全てが引用により本明細書に含まれる。