以下、図面を参照して、この発明の実施の形態を説明する。
具体的な実施形態の説明に先立ち、この発明の技術的な背景を説明する。ReRAMのメモリセルは、抵抗変化素子(可変抵抗素子)VRとダイオードDiを直列接続して構成されるものとする。また可変抵抗素子VRは、高抵抗状態と低抵抗状態を持ち、ここではそれぞれをリセット状態とセット状態と定義して、高抵抗状態(リセット状態)の可変抵抗素子にセット電圧(Vset)以上の電圧を印加すると低抵抗状態(セット状態)に遷移し、低抵抗状態の可変抵抗素子にリセット電流(Ireset)以上の電流を流すとジュール熱によって高抵抗状態に遷移するものとする。
以上の基本的なメモリセル構成と動作において、なんらかの手当てをしないと、書き込み時にデータ状態が振動する。このことを、図1を参照して説明する。図1は、メモリセルの状態遷移を可変抵抗素子VRとダイオードDiの特性上で説明するものである。
即ち、ダイオードDiと可変抵抗素子VRの直列回路からなるメモリセルMCの両端に、リセット電流Iresetを流せるような高レベル側電圧Va(>Vset)と低レベル側電圧Vsを与えると、素子VRがリセット状態(高抵抗)にあると素子VRにセット電圧Vset以上がかかってセット状態(低抵抗)に遷移し、セット状態になるとリセット電流Ireset以上の電流が素子VRに流れて、リセット状態に遷移する、という振動が起こる。
このため、可変抵抗素子VRのリセット状態を例えばデータ“0”、セット状態をデータ“1”と対応付けてメモリセルとして利用する場合、セルにデータを設定する書き込み(プログラム)時にはVaを一定にせずに、可変抵抗素子VRの状態が振動しないで安定状態になるように制御することが必要となる。
本実施形態では、書き込み時に上述の状態振動を抑えて、メモリセルの印加電圧Vaの制御を行なう簡便な書き込みバッファ方式を提案する。その書き込み制御の内容は、(1)MOSトランジスタの飽和領域と非飽和領域の特性を利用して、自律的に安定状態を実現するパッシブな書き込み制御法と、(2)寄生抵抗等の大きな変動要因に応じて、書かれるべきデータ状態を適応的に安定化させるアクティブな書き込み制御法とを備える。
この実施の形態は、同一の選択線に多くのセルをぶら下げてセル占有率を増やすために多ビット同時に書き込みを行う場合に、特に適している。さらにこの様な書き込み方式に際して、書き込みスピードに適した仕様の検討も行う。
前述の(1)パッシブな書き込み制御法については、先に本発明者による提案がなされている(特願2008−121594号)。その概要をまず説明する。
基本的な考え方は、リセット状態への遷移の際には、遷移後可変抵抗素子にセット電圧Vsetがかからず、セット状態への遷移の際には、遷移後可変抵抗素子にリセット電流Iresetを超える電流が流れないように、メモリセルの電流経路に挿入したPMOSトランジスタとNMOSトランジスタのセル状態遷移に伴う自動的な特性変化を利用する。
図2は、その状態安定化手法の一つであり、可変抵抗素子VRとダイオードDiの直列接続に更に直列に、NMOSトランジスタQNとPMOSトランジスタQPを挿入して、書込みバッファを構成している。これらNMOSトランジスタQNとPMOSトランジスタQPのゲート電圧Vg,Vmは、セット状態とリセット状態の遷移に際して独立に最適設定され、自動的に状態遷移が安定化されるようにしている。
具体的に説明する。図2の各素子の電圧−電流特性は、PMOSトランジスタQPのソースに与えられる電圧をVdd、NMOSトランジスタQNのドレイン電圧をVd、ダイオードDiのアノード電圧をVa、可変抵抗素子VRの低レベル側端子電圧をVsとして、以下のように表される。但し、Vs<Va<Vd<Vddである。
・可変抵抗素子VR:I=(Vc−Vs)/R
・ダイオードDi:
I0[exp{(Va−Vc)/Vf}−1];Va−Vc≧Vf
・NMOSトランジスタQN:
3極管領域(電流非飽和領域)では、
I=K{(Vg-Va-Vt)(Vd-Va)-(Vd-Va)2/2};Vg-Vt≧Vd
5極管領域(電流飽和領域)では、
I=(K/2)(Vg-Va-Vt)2;Vg-Vt<Vd
・PMOSトランジスタQP
3極管領域(電流非飽和領域)では、
I=Kp{(Vm-Vdd+Vtp)(Vd-Vdd)-(Vd-Vdd)2/2};Vd≧
Vm+Vtp
5極管領域(電流飽和領域)では、
I=(Kp/2)(Vm-Vdd+Vtp)2;Vd<Vm+Vd
である。
図3は、以上の各素子の特性のセット、リセットに伴う変化を、電圧軸(横軸)に沿って並べて示している。
セット状態への遷移では、NMOSトランジスタQNのゲート電圧Vgを高くして、NMOSトランジスタQNを十分に非飽和状態にしてその抵抗を下げ、PMOSトランジスタQPのゲート電圧Vmも上げて飽和領域での電流値を十分に小さくし、リセット電流Iresetよりかなり小さい電流しか流れないように、電流をクランプする。
一方、リセット状態への遷移では、Vmを下げて、PMOSトランジスタを十分な非飽和状態にして低抵抗とし、もってVdの変動を小さくし、またVgを下げてNMOSトランジスタQNを飽和領域で動作させて、リセット状態になっても可変抵抗素子にかかる電圧をセット電圧Vset以下に抑えるようにする。
このように、メモリセルのセット、リセット動作に伴うNMOSトランジスタQNとPMOSトランジスタQPの特性変化により、自動的に状態遷移の安定化が図られる。
図4は、上述したパッシブな書き込み制御方式を適用した書き込みシステムの例を示している。メモリセルMCの記号は、可変抵抗素子VRとダイオードDiの直列接続されたものを統合的に表したもので、以下同様である。
ここでは、セルダイオードのアノード側をビット線BLに接続してクロスポイントセルアレイを構成した場合を想定している。メモリセルMCのカソード側のワード線WLは、ワード線選択スイッチWSを介してVssに接続され、ビット線BLは、ビット線選択スイッチBSを介してローカルバス線LBに接続される。ローカルバス線LBは、書き込みバッファ41を構成するNMOSトランジスタQN及びPMOSトランジスタQPを介してVddに接続される。
それぞれゲート電圧Vg及びVmが与えられるNMOSトランジスタQN及びPMOSトランジスタQPは、図2で説明したそれらに対応し、状態安定化のためにセルに直列に挿入されたものである。これらNMOSトランジスタQNとPMOSトランジスタQPの接続ノードが読み出しスイッチRSを介してセンスアンプ42に接続される。センスアンプ42は、参照電流値との微小電流の差を検出できるものであればどの様なものでも良い。
ワード線スイッチWSは、ロウデコーダからの信号“from rdec.”でゲート電圧が高レベルの選択状態になる。ビット線スイッチBSは、カラムデコーダからの信号“from cdec.”でゲート電圧が高レベルの選択状態になる。読み出しスイッチRSは、読み出し時、読み出し信号“read”が高レベルになり選択される。これらのスイッチにNMOSトランジスタを用いた場合は、ゲート電圧の高レベルをVdd+Vt以上にする。
読み出しスイッチRSの読み出し信号“read”と、書き込み回路41を構成するNMOSトランジスタQN及びPMOSトランジスタQPのゲート電圧Vg,Vmのレベルについて、先に説明した状態安定化手法に従って、例えば図5に示すように設定する。
図5において、Vss<Vm_set〜Vg_read<Vg_reset<Vddである。即ち、Vmは、リセット時にはVss、セット時は高くVm_setに設定する。Vgは、リセット時Vg_resetであり、セット時は高くVdd+Vt以上に設定する。以上のセット又はリセット時、即ち書き込み時、読み出し信号“read”はVssであり、読み出しスイッチRSはオフである。
読み出し時、読み出し信号“read”がVddになり、セルデータがセンスアンプSAに転送される。
以上のように、モードに応じて各ノードの制御レベルを選ぶことにより、各書き込みモードや読み出しモードを安定的に行なうことが可能になる。
しかし、以上に説明したパッシブな書き込み制御による状態安定化の方式は、可変抵抗素子VRの低レベル側ノードの電圧Vsは安定しているという前提の下で考えられている。もし、電圧Vsが変動するものとすると、その変動分、動作マージンが低下し、トランジスタQN,QPや可変抵抗素子VRの特性、ダイオードDiの特性のばらつきと相俟って状態安定化を実現できる実用的条件が満たされなくなる可能性もある。
例えば、用途によって大容量メモリシステムを実際に実現する場合では、次に説明するようにデータの転送効率を上げるために長いワード線WLに対して多くのセルをぶら下げてこれらに出来るだけ多くの情報を並列に書き込むことが必要となる。この際に問題となるのはビット線BLやワード線WLに存在する寄生抵抗と寄生容量である。
図6は、図4で説明した書き込みシステムを、多ビットアクセス対応のセンスシステムとしてまとめたものであり、これを用いて問題点を明らかにする。長いワード線WL(WL1,WL2…)に対して、個別にアクセスが可能なビット線群(BL1,BL2,…)が設けられ、これらに並列にデータが書き込まれる。複数のビット線に対して一つの参照ビット線RBLが用意される。
書き込みは2ステップにて行われる。これは同時並列書き込みの際のバッファの設定をすべて同一に出来るので共通部分を多く出来るからである。すなわちセルをセット状態からリセット状態にする“0”書き込みのステップと、リセット状態からセット状態にする“1”書き込みステップとが行われる。
もちろん、システムの複雑さを増すことが出来れば、“0”と“1”を同時に1ステップで書き込むことも可能であるが、これはデータ転送効率を犠牲にすることになる(例えば、特願2009−60945号)。
ワード線スイッチWSにつながった連続するワード線WLに多数のセルをぶら下げて、参照ビット線RBLと同時に複数のビット線BLをビット線スイッチBSにより選択してアクセスする。ローカルバスLB(LB1,LB2,…)は、複数のビット線に共通であって、このローカルバスLBに書き込みおよびデータ読み出し用のセンスバッファ回路が各々設けられるものとする。
そして、同時書き込みのローカルバスLBが選択され、さらに1本のビット線BLが各々のローカルバスで選択されて、それらの複数の選択ビット線と一つの選択ワード線の各交点でセルに書込みが行われる。
同時書き込みのセル数を増やし、デコーダなどの数を極力減らすためには、ワード線WLは長く設定され、その結果ワード線WLは大きな寄生抵抗と寄生容量を持つ。この場合、前述のパッシブな書き込み制御方式を適用するには、ワード線の寄生抵抗と容量を勘案して、書き込みバッファのトランジスタQN,QPのサイズやゲートレベルの設定を、バスの書き込みバッファ毎に細かく設定することが必要になる。
これは、パッシブな自律的な状態安定化方式の場合、その性能がトランジスタの特性に全面的に依存するので、大きな寄生抵抗と容量の変動に対してマージンをもった設定をする必要があるからである。しかしこのような細分化した設定には限界があり、トランジスタの特性限界を超えた設定が求められる場合は、それ以上ワード線WLを長くすることができないことになる。
従って、大きな容量のセルアレイに対応できる書き込みバッファを新たに考案しないと、メモリのセル占有率を上げてかつ高速なデータ転送を実現することは困難となる。そのひとつの方法としては、セルの状態遷移が完了したらセルへの電源供給パスを積極的に切るスイッチ方式が考えられる。しかしこの方式には以下のような問題点がある。
まず、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移(reset to set)に関しては、セル抵抗が低くなったときに大きな電流が流れてセル状態を再び高抵抗状態に遷移しないようにすること、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移(set to reset)に関してはセル抵抗が高くなったときにセルに高電圧がかかり再び低抵抗状態への遷移が起こらないようにすることが、スイッチ方式などの書き込み制御の役割になる。
図7に示すように、メモリセルMCにスイッチ素子SWが接続されていて、セル状態遷移に伴う発生電圧がAからBになるとして、スイッチSWの電源側ノード電圧“a”とセル側ノード電圧“b”を、スイッチSWのオンとオフ時で比較して見る。
スイッチSWのオン・オフ制御は、図7のノード電圧aとbの変化をモニターして、スイッチSWをオフし、オフ後のノード電圧a'とb'をモニターしてスイッチSWのオフ状態を維持するものとする。
電圧Aがセルの高抵抗(高R)状態で、電圧Bがセルの低抵抗(低R)状態での発生電圧とした場合の各々の電位レベルは、図8の表のようになる。すなわちスイッチSWがオンでは、ノード電圧がa=bを維持して発生電圧がAからBに変化するが、セルの低抵抗化により、電源に強い電流制限を設ければ、電圧BはAよりかなり低くなる。
この状態変化を受けてスイッチSWをオフにすると、電圧a'は〜Aに、b'は〜Bになる。a’〜Aは、スイッチSWがオフしたことにより電源側は、電源出力レベルと等しいレベル、即ち発生電圧Aより高いレベルになることを意味する。b’〜Bは、低抵抗化したセルMCの放電により、セルMCが状態遷移する前の電圧Aより低いレベル〜Bになることを意味する。
従ってこの状態遷移の場合は、セルが状態遷移後にスイッチをオフにすることで、遷移状態が影響を受けることはない。即ち、高抵抗から低抵抗の状態遷移(reset to set)ではスイッチ方式に特に問題はないが、これはわざわざスイッチを設けなくても抵抗性素子の直列挿入で簡単に対応できる。
一方、図9は、電圧Aがセルの低抵抗(低R)状態で、電圧Bがセルの高抵抗(高R)状態での発生電圧とした場合の電位レベル変化を示している。すなわちスイッチSWがオンでは、a=bを維持して、電圧はAから、より高いレベルBに変化する。これは低抵抗に電圧を印加するために出力インピーダンスの小さな電圧源を用いているとして、セルMCが高抵抗状態に遷移することにより、セル電位が急激に上がるためである。
この状態変化を受けてスイッチSWがオフすると、電圧a'は〜Bに、電圧b'はBから〜Aなるレベルになる。a’〜Bは、スイッチSWがオフしたことにより、電源側は電源の出力レベルとほぼ等しく、Bより高いレベル〜Bになることを意味する。電圧b’の変化B→〜Aは、高抵抗セルの放電により、セルMCに電圧が発生しないときの低抵抗状態での電圧Aより低いレベルになることを意味する。
但し電圧b' の変化B→〜Aは、高抵抗セルの自然放電によっているのでゆっくりであり、Bのレベルとセルの特性によっては高抵抗から低抵抗への遷移のセル電圧閾値を超えるので、この遷移に必要な十分な時間をセルに与えることがある。これによってセルは再び低抵抗状態に遷移する可能性が大きくなる。b' の電位を急速に放電したくてもスイッチSWがオフであるのでセルの時間の長い放電に頼るしかない。
このように低抵抗状態から高抵抗状態への遷移(set to reset)では、スイッチ方式には問題点がある。
この実施形態では、上述したスイッチ方式の欠点を考慮して、改善したアクティブな書き込み制御方式として、電流バイパス方式を採用する。この電流バイパス方式は、セルの状態遷移に合わせてセルの電流経路に並列に、新たな電流バイパスを接続するものである。
図10は、電流バイパス方式の説明図である。図示のように、メモリセルMCに対して、スイッチSWにより並列に接続される、電流バイパスとなる電流制限抵抗CRRを設ける。電流制限抵抗CRRは、メモリセルMCの高抵抗状態の抵抗値よりかなり低い抵抗値になるようにする。
図10に示したように、セルの抵抗状態変化は、前述のスイッチ方式のときと同じ電圧AからBへと変化するものとする。書き込みの初期にはバイパススイッチSWはオフである。書き込みが行なわれてセルMCの状態遷移(電圧A→B)が起こり、セルの電圧aがAからBに遷移すると、これをモニターしてスイッチSWをオンにする。
電圧Aが高Rであり、Bが低Rの場合について、スイッチSWがオフのときのセルMCのノード電圧aと電流制限抵抗CRRのノード電圧b、オンした後のそれらのノード電圧a’,b’の変化を、図11にまとめている。電圧bの初期値は〜Bであり、スイッチがオンでa'=b'のレベルは、Bと〜Bの中間B’となる。ここで、〜Bは、電圧Bより低いレベルであり、B’は〜Bより高く、Bに近いレベルである。
従って電圧Bで流れるセル電流が、スイッチオンによってセルMCと電流制限抵抗CRRにバイパスして分散され、セルMCが再び高Rに状態遷移するのを抑制する。
図12は、Aが低Rであり、Bが高Rの場合である。この場合は電圧bの初期値は〜Aであり、スイッチSWがオンでa'=b'のレベルは〜Aから急速にBと〜Aの中間レベルA’ となる。〜Aは電圧Aより低いレベルであり、A’は〜Aより高く、Aに近いレベルである。
従って高Rに遷移したセルMCに替わり、電流制限抵抗CRRがその低抵抗値分の電流をバイパスして、セルMCの電圧をA’に抑制する結果、セルMCには遷移の閾値電圧が発生せず、安定した状態遷移となる。
このようにスイッチSWのオンの制御を状況に合わせてセル状態の情報から自動的に行うことが出来るようなコンプライアントな、適応的なシステムを用いることにより、長いワード線の寄生抵抗や寄生容量の影響による誤動作を防止した書込みが可能になる。
図13は、以上の電流バイパス方式の考えをもとにした、コンプライアントな書き込みバッファ回路の基本構成を示す。この書き込みバッファ回路は、電流バイパス(Bypass)を備えた書き込みバッファ(Write Buffer)という意味で、以下BWB回路と呼ぶ。
ソースが電圧源V1に接続されたPMOSトランジスタQPとこれに直列接続されたNMOSトランジスタQNを含む書き込みバッファ131が、ローカルバス線LBに接続される。これは、図4の書き込みバッファ41に対応し、ローカルバス線LBはビット線選択スイッチBSを介してビット線BLに接続される。図では省略したが、ビット線BLは更に選択メモリセルを介して選択ワード線WLにつながる。
NMOSトランジスタQNのドレインノード“c”に抵抗Rcomと抵抗R0が直列に挿入され、抵抗Rcom,R0の接続ノードには、抵抗R0を介し、NMOSトランジスタQN’を介して参照抵抗素子Rrefが接続された、参照セル回路132が設けられている。
参照抵抗Rrefは、対をなしてゲートが共通駆動されるNMOSトランジスタQN,QN’のドレインノード“c”,“r”の間で、ビット線を介して選択メモリセルにつながる電流経路のノード電圧(書き込みバッフアの出力ノード電圧)をモニターするためのものである。即ち参照抵抗Rrefは、セルの抵抗変化の基準となる参照電圧を発生するためのもので、その抵抗値はビット線選択スイッチBS以降のセルへのパスの寄生抵抗を考慮して決められる。
抵抗Rcom,R0の接続ノードに更に、電流バイパス回路133が接続されている。電流バイパス回路133は、二つのスイッチNMOSトランジスタN1,N2と、バイパス抵抗素子としてのダイオード接続された二つのNMOSトランジスタN3,N4により構成される。
一方のスイッチNMOSトランジスタN1は、セルがセット状態からリセット状態へと遷移する書き込みモードの場合に発生される信号“s2r”(set to reset)によりオン駆動される。もう一方のスイッチNMOSトランジスタN2は、ノード“c”,“r”をモニターするセンスアンプ134の出力、より具体的にはその出力段インバータ135の出力信号“sw”により、オン駆動される。
Vmがゲートに入ったPMOSトランジスタQPは、セルが高抵抗から低抵抗に遷移する“reset to set”の書込みモードでは、低抵抗になったセルに過剰な電流が流れて再びリセットされないように電流を制限する電流制限素子として機能する。ゲートレベルが高いPMOSトランジスタが定電流特性で電流を制限する働きのあることは前に説明したとおりである。
そして、この状態遷移の書込みモードでは、信号“s2r”が“L”であり、NMOSトランジスタN1がオフで、電流バイパスは機能しない。基本的な動作ではこの様にバイパスは“reset to set”では機能しなくても問題ないことは先のスイッチ方式で説明したとおり、電流制限を十分に行えば対応できるからである。
電源となるPMOSトランジスタQPのドレインからの電流パスはセルに向かうもの、参照セル回路132に向かうもの、電流バイパス133に向かうものそしてセルの状態をモニターするセンスアンプ134の電源Vsへ向かうもの、と4つの電流パスに分岐する。セルと参照抵抗Rrefと電流バイパス133に向かうパスには共通に挿入されている抵抗Rcomは、電流バイパスの効果をセンスアンプ133の入力となるノード“c”と“r”に共通に反映させるためである。
センスアンプ133の入力となるノード“c”と“r”へは同じ大きさの抵抗R0が挿入され、これによりビット線BLを介してセルに流れる電流と参照セル(参照抵抗Rref)に流れる電流を電位レベルに変換する。参照抵抗Rrefは、ビット線選択スイッチBS以降のセルへのパスの寄生抵抗値を込みで決められる抵抗値である。
また、ゲートがセンスアンプ134の電源レベルに等しいNMOSトランジスタQN,QN’がいずれのパスにもモニターノードの後に挿入されていて、電流値を非線形に制御してモニターノード“c”と“r”の電位レベルの変化がセル状態変化をよりはっきりと反映できるようにしている。これらのトランジスタQN,QN’はセルの抵抗が低いとソース側のレベルが低くなるので、より電流を流す様になり実効的により低抵抗に見え、セルの抵抗が高いとソース側のレベルが高くなるのでより電流を流さない様になり実効的により高抵抗に見える。
電流バイパス回路133は、リセット書き込みの場合に選択的に活性化されるものであって、セル状態が高抵抗に遷移したらオンして、抵抗Rcomを介してセルに流れていた電流をバイパスさせる。即ち、セルの低抵抗状態から高抵抗状態への遷移“set to reset”に際して、高抵抗になったセルに大きな電圧がかからない様にするためのバイパスとして機能するように、信号“s2r”と“sw”によりオン制御されたNMOSトランジスタN1,N2を介して、ダイオード接続されたNMOSトランジスタN3,N4のスタックを介して電源Vbに電流を流す。電源VbはVsと同じでも良いが、さらに電流値の制御が可能なようにここでは別電源とした。
センスアンプ134は、ノード“c”と“r”の電位を入力とするドライバPMOSトランジスタP1,P2の対と、NMOSトランジスタN5,N6によるカレントミラーとを用いた差動増幅回路を用いているが、同様のモニターができる他のセンスアンプ構成を用いてもよい。電源は微妙な変化をセンス出来る様に電源用トラジスタから直接持ってくる。
センスアンプ134からの出力はインバータ135で信号“sw”に必要な振幅レベルを得るように変換する。インバータ135の電源は電流パスとは別に設けてセンスアンプ134の出力の振幅が小さいのに伴うインバータ135の貫通電流が大きくならないよう、電源レベルV1からダイオード接続のNMOSトランジスタN7で供給している。
ここでこのセンスアンプ134は、読み出し時に用いられるセンスアンプとは共用することは出来ない。その理由は、書き込みと読み出しでは、電圧環境が全く異なり、書込みではより高電圧を使用すること、読み出しは微少電流の差をセンスするが、書き込みでは大きな電流変化を検知すること、読み出し時のセンスはタイミングで動作を制御するが、書込みではセルの状態変化を自己検出する、などである。
以上のようにこのBWB回路では、書き込みバッファ131の部分は、“reset to set”遷移時、自動的に電流制限がかかって状態遷移を安定化させる働きをするパッシブ(Passive)部130aとなる。一方、参照セル回路132、電流バイパス回路133、センスアンプ134及びインバータ135の部分は、“set to reset”遷移時に選択的に活性化されて、セル電流をバイパスさせることにより状態遷移を安定化させるコンプライアント(Compliant)部或いはリアクティブ(Reactive)部130bということができる。
リアクティブ部130bは、いいかえれば、書き込み時に書き込みバッファ131から選択メモリセルに供給される電流の一部を、セルの書き込み状態変化に応じてバイパスさせるという制御を行なう書き込み制御回路である。
図14は、図13のBWB回路を、抵抗をトランジスタに置き換えたより実際的な回路としたものである。即ち抵抗RcomをNMOSトランジスタN11に置き換えている。また、二つの抵抗R0の部分をNMOSトランジスタN12,N13に置き換え、かつそれらに前述のNMOSトランジスタQN,QN’の働きをさせている。電圧レベルモニターノード“c”,“r”は、NMOSトランジスタN12,N13のソース側に変更している。
図13及び図14で説明したBWB回路は、“set to reset”遷移で高抵抗になったセルが過剰な電圧を受けて再びセットされないように、電流バイパスを機能させるものであった。これに対して、“reset to set”遷移の場合にも、自動的な電流の制限に加えて電流バイパスを効かせて、動作マージンをさらに拡大することが出来る。そのようなBWB回路方式を次に説明する。
図15は、そのようなBWB回路の一つである。図14と対応する部分には同一符号を付して詳細な説明は省く。図14のBWB回路との相違を説明すれば、次の通りである。
参照セル回路132には、2系統の参照抵抗Rref1とRref2を、スイッチNMOSトランジスタN21,N22で選択できるように用意している。NMOSトランジスタN21及び22はそれぞれ、“set to reset”遷移時及び“reset to set”遷移時にリセット書き込み選択信号“s2r”及びセット書き込み選択信号“r2s”によりオン駆動される。即ち参照抵抗Rref1及びRref2は、それぞれ“set to reset”遷移時及び“reset to set”遷移時に必要な最適参照抵抗値に設定されている。
またこれらの参照抵抗Rref1,Rref2は、直接電源ではなく、実際のセルアレイにおけるワード線とワード線スイッチと同様の模擬ワード線minicWLに接続される。模擬ワード線は、ワード線と同じ長さをもち、その複数個所に接続ノードが設けられて、どのワード線位置のセルが選択されたかに応じて、BWB回路の参照抵抗Rrefに接続される接続ノードを切り換えるように構成される。
ワード線が長い場合に、このような模擬ワード線を採用することによって、参照セル回路の参照抵抗Rrefの抵抗値に、ワード線位置の影響を相殺するような付加抵抗を与えることができる。この模擬ワード線minicWLの具体例は後述する。
電流バイパス回路133は、選択信号“/r2s”及び“/s2r”により選択されるスイッチPMOSトランジスタP11及びP12を有し、更にこれらに直列接続されてノード“c”,“r”の電圧センス結果の信号/sw,swにより制御されるスイッチNMOSトランジスタN23及びN24を有する。抵抗素子を構成するダイオード接続されたNMOSトランジスタN3,N4の一方は、電源V1の設定によっては省略される。
即ち、PMOSトランジスタP11,P12及びNMOSトランジスタN23,N24の部分は、書き込みモードに応じ、かつ書き込み状態変化に応じて電流バイパスを活性化するためのスイッチ回路を構成している。
電流バイパス回路133に相補信号/sw,swを必要とするため、出力段インバータ135でこれらを出力する。
このBWB回路は、“reset to set”の際には、PMOSトランジスタQPにより電流制限を行なうパッシブ部130aと、低抵抗になったセルを流れる電流を電流バイパスで逃がすリアクティブ部(書き込み制御回路)130bとを、同時並行的に利用する。“set to reset”の際の電流バイパスの役割は先のBWB回路と同じである。
以上のようなリアクティブ部130bの機能の追加利用により、選択ワード線への電流集中を緩和して同一ワード線への多ビット同時書き込みのビット数を増やすことが可能になる。
なお電流バイパス133への動作モード信号/r2sと/s2rによるスイッチ回路はPMOSトランジスタP11とP12として電流バイパスへの電流パスの抵抗を下げカスケード接続されたNMOSトランジスタN3,N4の寸法によってのみ電流量が決められるようにしている。
電流制限トランジスタQPのゲートレベルVm、電流バイパス回路133の電流の流れる先の電源レベルVb、信号/r2sと/s2rの論理レベルは、図16に示した。“set to reset”遷移及び“reset to set”遷移のそれぞれの書き込みモードでVmやVbは変えなくても良い。
しかし、書き込みモードに応じてVm,Vbを変えてより細かい制御をすることもできる。その場合には、図16に示すように、Vmは、“reset to set”遷移で“set to reset”遷移より高くして電流制限を効かし、Vbは、“reset to set”遷移で“set to reset”遷移より低くしてセルへの電流を小さくする。
センスアンプ134の出力はノードcとrのレベルを比較してその結果を出力するだけではない。セルが低抵抗の場合でかつ電流バイパスが有効になるとその電源レベルが極端に下がるので、そのときは入力比較よりもセンスアンプの不感帯に入ることになるが、このときには信号/swがHで信号swがLとなるように、センスアンプ出力はLとみなされるようにして、電流バイパスが“reset to set”でも維持されるようにする。
更に補足すると、電流バイパス133の電流量は書き込みモードによって変えてそれぞれに最適な動作となるように出来る。“reset to set”では一般に電圧印加後の遷移時間は短いので多数のセルに書き込みを行っても直ぐに全書き込みは短時間で終了する。そこでバイパス電流を大きくしても消費電流が問題となるほど長い時間バッファを有効にしなくても良い。むしろ遷移後のセット状態でのセル電流を減らして同一ワード線への同時書き込みセル数の増加が出来るようにしてやることが重要となる。
“set to reset”ではセル状態の遷移に長い時間を要するので、セル遷移の時間のばらつきによりバイパス電流を長い時間流し続けることになる。必要最小限にバイパスの電流値を絞ってやる。
図17は、センスアンプ134についてその出力と電流バイパス回路133のオンとオフをまとめた。“reset to set (r2s)”ではセルの低抵抗状態(セット)とバイパスのオンが重なりセンスアンプの電源が極端に低くなるが、それでもセンスアンプの“L”レベル出力を維持しないとバイパスがオフしてしまう。そこでセンスアンプの特性として電源が低く入力信号の差がないときには出力が“L”を維持する特性を持たせる必要がある。
またこれに関連して出力レベルの変換の役目をするインバータ135の閾値設定も信号/swやswがセンスアンプ134の出力に対して所望のレベルが出るように調整する。これらの回路はアナログ動作を基本として動作を考える必要がある。
図18は、以上の説明したBWB回路即ち、電流バイパスを利用した書き込み制御システムの概念をまとめたものである。書き込みバッファ131の電流制限素子CRR0の出力ノードVappに3つの回路ブロックがぶら下がる形になる。
一つ目は抵抗の状態変化を起こさせる可変抵抗型メモリセルMCであり、電流電圧変換素子IVD1を介して電流パスを形成する。この電流電圧変換素子IVD1の出力は電位レベルVcである。
二つ目は参照抵抗素子Refに向かう電流パスで、セルまでのパスに挿入された電流電圧変換素子IVD1と同様の電流電圧変化素子IVD2を介して参照抵抗素子Refがつながる。この電流電圧変換素子IVD2の出力は電位レベルVrである。
三つ目は電流バイパスを形成するスイッチ素子SWと電流制限素子CRR1である。スイッチ素子SWは信号swtと/swtによってオンとオフが制御され電流制限素子CRR1に電流を共通ノードVappからバイパスする。
信号swtと/swtはコンパレータCMPとそれに続くインバータINVによって作られる。電圧比較を行なうコンパレータCMPの入力はVcとVrであり、その入出力の関係は、図19に示した。
このコンパレータCMPの特性の特徴は、VcとVrがほぼ等しいかコンパレータのゲインが1に近いときは、出力outとして論理レベルLを出力しなければならないことである。出力outをインバータINVで受けて信号/swtとswtを作りバイパスのスイッチ回路SWのオンオフ制御を行う。
信号swtと/swtによるスイッチ回路SWの制御は用いられるセルMCの可変抵抗素子特性に依存し、遷移後の状態と抵抗との関係でセル状態が遷移した後にノードVappのレベルが下がる様にオンオフの制御を行う。
さてメモリチップをセルアレイから構成する場合に、コスト面からはメモリセル占有率の高さ、性能面からはデータ転送効率の高さが重要となる。セルアレイから見たときにここで重要となるのがセルアレイの一本のワード線にぶら下がるセルの数と同時に並列アクセスできるセルの数である。
以下に、セルアレイブロックとデータバスなどの関係を具体的なメモリチップ構成例について検討する。
図20は、ReRAMセルアレイブロック140の一例の積層構造を示している。この例では、セルアレイブロック140が、半導体基板150上に8層のセルアレイMA0−MA7を積層して構成されている。各セルアレイ層のワード線WLとビット線BLは、上下の隣接セルアレイで共有されるものとする。
ワード線WLは、例えばセルアレイブロック140の両側に交互に引き出されて、下地半導体基板150に垂直配線で接続される。この場合例えば、偶数層のワード線WL0,WL2,WL4は、垂直配線で互いに共通接続されて引き出され、奇数層のワード線WL1,WL3は同様に垂直配線で共通接続されて引き出されて、それぞれワード線選択回路(ワード線デコーダ/ドライバDEC/DRV)151に入る。
各層のビット線BL0−BL3は、一方の端部からそれぞれ独立に垂直配線により引き出されて、ビット線選択回路152に入る。ビット線選択回路(ビット線デコーダ/マルチプレクサDEC/MUX)152で選択されたビット線がデータバス領域153のローカルバス線LBに接続される。
実際にはこのようなセルアレイブロック140を単位として、複数のセルアレイブロックが並べて配列されて、必要な容量が実現される。この例では、ワード線WLをセルアレイブロックの両側から引き出し、ビット線BLを片側から引き出す場合を示しているが、これに限られるわけではない。例えば、各層内のビット線を1本ずつ交互に両側から引き出し、ワード線を片側から引き出すようにしてもよいし、或いは双方とも両側から引き出すようにしてもよい。
図21は、細長い四角形で示すセルアレイブロックCABを配列して構成される、1マット当たり8Gb+832Mbのメモリコア200を示している。ここでセアレイブロックCABは、図20に示した一つのセルアレイブロック140でもよいし、或いはこれを例えばワード線方向に複数個並べてユニット化したものでもよい。この構成例は、16ビットのデータを並列に読み書きする×16IOタイプの例である。
具体的には、セルアレイブロックCABが46Mbであり、これがx方向に8個、y方向に24個並べたマトリクスを構成する。一層で8Gb+832Mbのセルを持ち、積層数をmとして、8Gb×m+832Mb×mの容量を持つ。
この例では全体のメモリマットのうち1層が選択され、その中で4分の1の分割動作を行っている。図の破線で囲ったセルアレイブロック部分が、あるアクセスのときに同時活性化される部分のイメージである。チップの中でなるべく均等になる活性化としている。
このメモリシステムではECC回路202をオンチップで搭載して、4ビットまでのエラー訂正を可能とした例を示している。このECCのためのチェックビットは、エラー訂正のデータ範囲512ビットに対して40ビットであり、このチェックビット分のメモリ容量が各マットでの832Mbである。
セルアレイから一括で読み書きされるデータは、128ビット×16+40ビット×4であり、これらのデータはセルアレイブロックからの138ビットバスによって転送される。138ビット×4=512ビット(データ分)+40ビット(チェックビット分)である。
各IOあたり128ビットのデータがチップ外部とやり取りされるがこの単位をバーストと以下呼ぶ。バースト用のデータを一時保持するのがバッファレジスタ201であり、ECCのチェックビット(40ビット)と合わせて各IOあたり138ビットのバッファである。
このバッファレジスタ201とECCシステム202がデータをやり取りしてエラー訂正を行い、バッファレジスタ201上にこのデータを上書きして保持し、外部に、またはメモリセルアレイに転送する。
例えば、バッファレジスタ201を複数系統設け、これをインターリーブして使うことにより、ギャップレスのデータ読み書きをチップ外部と行うことができる。このバッファレジスタのインターリーブ動作によるデータ転送手法の具体例は、例えば本発明者による先の特許出願、特願2008−323524号明細書に説明されている。
このメモリを構成するセルアレイブロックの大きさがセル占有率を大きく左右するのは、図21の構成を見ればあきらかである。全体のセルの数を維持しセルアレイブロックが小さくなればチップに占めるバス領域やバスへのデータ接続とデコードのための領域がどんどん増えていく。
次にセルアレイブロックの構成例を見てみる。
図22は、先のメモリコア200を構成する一つのセルアレイブロックCABの回路構成例であり、図23はそのセルアレイブロックCABを、図21との対応を明らかにするため等価回路的に示したものである。選択ワード線への多ビットアクセスを利用して、セルアレイユニットが多くのセルからなる構成になっている。
セルアレイブロックCABを構成するマット(=セルアレイユニット)の大きさは、4k本のワード線WLと1k本のビット線BLの単位セルアレイ(その中に破線で示す1本の参照ビット線RBLが配置される)を、ワード線方向に11.5個一列に並べて構成される。すなわち4kWL×1kBLの容量を単位として、マット当たり46MbのセルアレイブロックCABが構成される。
セルアレイブロックCABには、単位セルアレイ毎に4個、全体で46個のセンスアンプSAが設けられる。即ち図の例では、マットの両辺からビット線デコーダ/マルチプレクサBL−DEC/MUX1,2にそれぞれ接続される23個ずつのセンスアンプSAが設けられる。具体的に、バスBUS1,2は、アドレス線と共に、前述の選択ビット線が接続される23本ずつのローカルバスLBを含み、これらにセンスアンプSAが接続される。
この例ではまたセルアレイブロックCABのワード線方向両端に、ワード線デコーダ/ドライバWL−DEC/DRV1,2が配置される。そして1本のワード線WLが選択されると、46本のビット線BLが両辺から23本ずつ選択され、46個のセルがアクセスされることになる。
ビット線デコーダ/マルチプレクサDEC/MUX1,2と、ワード線デコーダ/ドライバDEC/DRV1,2の交点位置には、ワード線デコーダ/ドライバを選択駆動するプリデコーダPre−DECが設けられる。その具体的な回路構成については、例えば、本発明者による先の特許出願、特願2008−221620号明細書に説明されている。
図23には、セルアレイブロックCABのデータバスとの関係を具体的に示している。11.5個の単位セルアレイのBL−DEC/MUX回路を貫通して走るデータバス(ローカルバス)は、それぞれ23ビットである。セルアレイユニットCAUの一端にはさらに138ビットのデータバスが走り、このデータバスにバスゲートを介して各単位セルアレイからのバスが選択的に接続される。
セルアレイブロックでひとつのワード線WLを選択した場合にアクセスする46個のセルをどの様な場合でも同時にアクセスできればよいが、電流モードでの書き込みの際には、1本のワード線WLに電流が集中するのを避けるために、セルをグループに分けて少しずつ書き込み動作を行うことが好ましい。すなわち、“set to reset”遷移の“0”書き込みでは、ワード線WLにつながる46個のセルを小分けして順にシリアル書き込みを行う。
図23には、その小分けするグループとそのアクセス順番の一例を示している。図では同時に電流モードで書き込むセルの数は2つとして、2MbからなるグループによってメモリセルアレイブロックCABをマット当たり23のグループに分割している。セルアレイブロックCAB内の1から23の番号がそれぞれのグループを表している。順次のグループ選択はシフトレジスタなどで行ってもよい。
この同時書き込みのセルの数を2以上に増やして大きく出来れば、データ転送効率が上がる。そこで書き込みバッファの設定の工夫が必要になる。
なお、“reset to set”遷移、即ち電圧モードでの“1”書き込みや、微小電流を流す読み出しモードでは、全てのグループの同時アクセスを行なう。また、読み出しの際に用いる参照ビット線RBLは、前述のように1kBL毎に1本設けて、センスするセルの環境に近い参照セルを用いてセルと参照セルの共通のディスターブ成分を除くようにしている。
セルアレイブロックを構成する長いワード線WLに書き込みを行う際の問題点を、図24及び図25を参照して説明する。
セルの書き込み(set to reset) ではセルの初期抵抗は低く電流iが流れてセルの状態遷移を準備する。このときワード線WLの抵抗Rwとダイオードのオン抵抗Rdの和に比例した電圧降下が生じてセルの可変抵抗体VRにかかる電圧vb−vaを減少させる。このためセルがワード線WL上に占める位置によってビット線BLにかけるレベルvbを変えて、リセットに必要な電流が得られる電圧を確保する必要がある。
セルに状態遷移が生じて高抵抗になると電流iはほぼ0になる。そうすると抵抗Rw+Rdによる電圧降下はなくなり、さらにビット線BLに印加したレベルも電源の出力電流が減るので出力インピーダンス分の電圧降下がなくなり高いレベルへとシフトする。このためワード線WLの電圧降下が大きな場合は、図25に示すように、セルがリセットされるとセルに印加される電圧がセルを低抵抗状態(セット状態)に遷移させるVsetよりも大きくなり、高抵抗になったセルが再び低抵抗に遷移してセルをリセットすることが出来なくなる。
この問題は、書き込みバッファとして前述したBWB回路を用いてワード線WLの抵抗の環境ごとにBWB回路の設定を変えることによって解決することができる。次にこのBWB設定方法を説明する。
BWBでは電流バイパスを設けるので、ビット線BL側の電位レベルを大きく変えることが出来る。そこでセルアレイをBWBの設定でカバーできる抵抗値の大きさの範囲に区分して、その区分ごとに一定の設定を行ったBWBを設けることにする。
たとえば、図26に示すように、ビット線BLの抵抗がb[kΩ]であり、ワード線WLの抵抗がw[kΩ]であるとして、セルアレイを破線で示すように格子状に区切り、その区切りのアドレスごとにBWBの設定を変えて書き込みを行う。設定の変更は同じBWBのアドレスに応じたパラメータ設定の変更でもよいし、予め異なったパラメータ設定が施された複数のBWBを区分領域ごとに設けてもよい。
このセルアレイ区分はBWBから見た抵抗で決まるので、ビット線BLの抵抗の効果が大きいと区分領域の形は、矩形ではなく、区分の隣接辺が直交しない平行四辺形のような形になることもある。
また、セルアレイのビット線BL方向をワード線WLに比べて短くして、b[kΩ]の変動では設定を変える必要がないようにしておけば、ワード線WL方向の区分のみで対応できるので、システムが簡単になる。以下の具体的な実施例ではこのビット線BL方向の区分がない場合を用いる。
図27に示すように、BWBの設定は主に、その電流制限素子の実効抵抗値を変えてセル抵抗変化前のBL電位レベルの値と抵抗が遷移した後のバイパス電流での電圧降下が寄生抵抗の遷移前の電圧降下程度またはそれ以上になるように設定する。このためにバイパス電流は遷移前のセル電流以上の電流が流れるようにしておくことにより、電流制限素子の等価抵抗での電圧降下が遷移後の方が大きくなり、寄生抵抗による電圧降下の減少分を補うことが出来る。
従って区分ごとにBWBで値が変わるものとしては、セル抵抗状態をモニターする基準となる参照抵抗Refの抵抗値か、ビット線BLに電流を供給する電源回路の電流制限素子のパラメータかバイパス電流の値となる。
図28は、長いワード線WLに対して区分的にBWBを設定するものとして、ワード線WLとビット線BLの具体的システムを示す。多数あるビット線BLとワード線WLは、ワード線WLの抵抗環境が似た範囲で一つのワード線抵抗区分としてまとめられる。
図28では、BL1とBL2がその区分のひとつに属するビット線であり、これらは同時書き込みされるビット線BLである。これらのビット線BL1,BL2はそれぞれローカルバスLB1,LB2を介して異なるBWBに接続されるが、これらのBWBの設定は同一である。
また参照ビット線RBLは、いくつかのワード線区分に共通に、または区分内で複数設けられて、ビット線BLからのデータ読み出しの際の参照電流を供給する。参照ビット線RBLは選択スイッチRBSを介して参照ローカルバス線RLBに接続される。書き込みの際のワード線区分と読み出しの際の参照ビット線RBLを共有するビット線ブロックとは、動作の際の電圧環境がまったく異なるので直接的な関係はない。
なお、参照ビット線RBLに接続されるメモリセルは、常に低抵抗状態(データ“1”)に設定されて、ビット線BLとの間で寄生抵抗や容量の影響を相殺して参照電流を読み出しセンスアンプに供給する働きをする。即ち参照ビット線RBLが属するワード線区分では参照セルとしてのメモリセルに“1”が書かれるので、ワード線区分に対応するBWBの設定によって参照セルが書き込まれることになる。
各ローカルバスRLB,LBに属するビット線RBL,BLは、NMOSトランジスタを十分オンするレベルの選択信号“Ref.dec”,“from cdec-1”,“from cdec-2”などにてビット線選択スイッチRBS,BSが選択されてローカルバスにつながり、それぞれのローカルバスを駆動するBWBによって並列書き込みが行なわれる。
ワード線WLの選択スイッチWSを構成するNMOSトランジスタN31は、選択信号“from rdec-1”や“from rdec-2”などでオンすることによって、ワード線WLを低電位電源Vssに接続する。ワード線WLにはまた、非選択時にワード線レベルを持ち上げておいてセルの選択ダイオードのリークを減らしかつアクセス時のビット線からの非選択ワード線への余分な電荷供給によるアクセス遅延などを抑えるため、ゲートレベルがVd_iのNMOSトランジスタN32が電源VddとNMOSトランジスタN31との間に設けられている。
各ワード線WLには図のような抵抗と容量が等価的に分布寄生しているので、BWBでのセル状態の変化のモニターの際の参照抵抗には、後述するように、ワード線を模倣した模擬ワード線(mimicWL)が接続される。
図29は、ワード線WLの充電用NMOSトランジスタN32のゲートレベルVd_iを発生するワード線定常充電回路の構成例である。各ワード線での充電用NMOSトランジスタN32に大きな電流を流す必要はなく、また流し過ぎても選択ワード線のドライブ能力に影響するので問題となる。
そこでこの充電回路は、ワード線を一定範囲でグループ化し、そのグループでワード線が選択された場合に対応ワード線のVd_iを下げて充電用NMOSトランジスタN32をオフする。
WL定常充電回路ゲートレベルVdの発生回路は、例えば1μAの定電流回路301と、その出力電流を受けるダイオード接続したNMOSトランジスタN33とからなり、これによりNMOSトランジスタM33のしきい値電圧に相当するゲートレベルVdを発生させる。このゲートレベルVdをグループ化したワード線範囲のWLスイッチゲート群302の充電用NMOSトランジスタN32のゲートに供給する。
ここで、NMOSトランジスタN33は、充電用NMOSトランジスタN32のチャネル幅の100倍のチャネル幅を持つものとする。これにより、各ワード線の充電用NMOSトランジスタN32において最大約10nAの定常充電電流を発生させることができる。
ゲートレベルVdから高抵抗R0を介して、各ワード線毎の電圧信号Vd_iが得られる。Vd_iの出力端は、ワード線グループを表す選択信号WLS_iにより駆動されるNMOSトランジスタN35を介してVssに接続されている。したがって、選択ワード線ではVd_iがVssに引き下げられて充電用NMOSトランジスタN32はオフになり、それ以外の非選択ワード線は、Vd_iにより駆動される充電用NMOSトランジスタN32により定常充電されることになる。
書き込みバッファ回路BWBのセル状態のモニターに使用する参照抵抗Rrefは長いワード線WLのどこの位置のビット線BLをアクセスするかでワード線抵抗を反映させるべく、区分的に変化させる。図30は、その際に用いるBWB用の模擬ワード線mimicWLの説明図である。
ワード線スイッチを設けたワード線と出来るだけ環境をそろえた長い配線を作り、これにワード線区分の長さに相当する部分部分から接続用ノードを作る。図ではこの接続用ノードを番号1,2,3,4で示した。
各ワード線区分で使用されるBWBに対して、対応するこれらの接続ノードを切り換えてBWBの参照抵抗Rref1,Rref2への接続を行なうと、選択セルのワード線WLと参照抵抗の寄生抵抗と容量の環境をそろえることが出来る。
なお、ワード線スイッチゲートのNMOSトランジスタN31’への入力信号“from rdec”はセルアレイのワード線スイッチゲートを選択する信号を活性化するタイミング信号であり、充電用NMOSトランジスタN32’のゲートレベルVd_iは“from rdec”信号で“L”になるようにした、図29のゲート信号と同様にして作られるものである。
次に、上述したワード線の区分動作に対応したBWBの構成の詳細を、図31を参照して説明する。基本的に先に説明したBWBと同じ構成であるが、寄生抵抗と容量を考慮した対応が必要である。
先ず、BWBが接続されるローカルバスLBやその先のビット線BLなどには寄生容量などがかなりつくので、BWBをすぐには動作させることは出来ない。動作の初期状態を一定にしてセルの状態変化を正確にモニターできるようにしなければならない。
そこで、ローカルバスLBがビット線BLに選択開始信号BLSで接続された後にBWBを働かせるまでの間は、モニターすべきノード“c”と“r” の電位レベルをBWBの初期状態として期待される値に設定しておく。すなわちビット線BLとローカルバスLBが選択開始信号BLSによってつながる前と後もしばらく間、書き込みのモードによってノード“c”(即ちローカルバスLB自体)またはノード“r”を低い電源レベルVsへと引いておくための、初期化回路401を設ける。
具体的に初期化回路401は、モード“set to reset”では、ローカルバスのセル側のノード“c”を、モード“reset to set”では参照セル側のノード“r”を、それぞれ選択開始信号BLSより遅れて立ち上がる信号dBLSによってレベル設定する。これは“set to reset”では書き込むビット線のセルが低抵抗状態でノード“c”が低いレベルであること、“reset to set”では書き込むビット線のセルが高抵抗状態でノード“c”よりノード“r”が低いレベルであることを寄生容量にかかわらず初期設定するためである。
BWBでワード線区分の抵抗状態によって設定を変える部分は、書き込み回路131の電流制限素子である、PMOSトランジスタQPのゲートレベルVmとトランジスタ寸法、参照セル回路132のノード“r”の電位を決める参照抵抗Rref1,Rref2の値である。
Rref1は、“set to reset”の書き込みモード(リセット書き込み)で使い、Rref2は“reset to set”の書き込みモード(セット書き込み)で使用する。これらの値は各区分でそれぞれの書き込みモードに対して最適な値が設定される。
またそれぞれの書き込みモードで、図30に示した各接続ノード1〜4からmimicWLへのパスを形成するスイッチも、ビット線選択のスイッチと同じタイミングでオンするように、信号BLSとそれぞれのモード選択信号“s2r”や“r2s”とのANDによって発生される選択信号“s2r’”と“r2s’”で制御される。
電流バイパス133についても、書き込みモードとワード線区分によってスイッチトランジスタP11,P12,N23,N24の寸法を変えてバイパス電流を調節すれば、最適な動作とそこでの消費電流を減らせる。しかし、BWBの区分動作上は、書き込みバッファ部131の電流制限用PMOSトランジスタQPの寸法とそのゲートレベルVmの調整により、電源特性を変える方がより本質的である。
図32は、以下の説明の便のために、以上のBWBの回路構成とその記号化を示している。図のようにBWBの出力ノードは、二つの模擬ワード線mimic WL1,mimic WL2とローカルバスLBであり、入力信号はs2r,r2s,BLS,dBLSである。電源は省略している。
また参照抵抗Rref1,Rref2はその抵抗値を環境によって変更するので、その値R1,R2を参考のために回路ブロック内に記入する。その他環境によって設定を変える可能性のあるトランジスタ寸法などもあるが具体的な設計に用いるトランジスタ特性によるので省略する。
図33は、セルアレイブロックの全てのワード線WLが一方のアレイ端から駆動される場合のワード線区分とBWB配置の例を示している。ここではアレイブロックをワード線方向に3つに区分した場合を示している。
ここでは、セルアレイブロックのビット線BLはセルアレイブロックの両側から交互に引き出されるものとしている。従って下地半導体基板のセルアレイブロックのビット線方向両端に対応する位置にローカルバスLBiとLBi’(i=1〜3)が配置される。そして、これらの各ローカルバスを駆動するように、LBi,LBi’に対応してBWBが配置される。これによりローカルバスとビット線を選択的に接続してセルへの書き込みが行なわれる。
また、参照ビット線RBL用に特別の参照ローカルバスRLBi,RLBi’が設けられている。参照ビット線RBLはセルデータ読み出しに使うので、ワード線区分との対応関係は特にないが、書き込みの際は参照ビット線にはセル状態の例えば低抵抗状態を書き込むので、このときはワード線区分に従う。
なお、ワード線区分中には複数の参照ビット線があることもまた全くないこともあり得る。参照ビット線がないときには読み出し用の参照用ローカルバスとして隣の区分のものを利用する。図ではワード線区分にしたがって参照ローカルバスRLBi,RLBi’が設けられるものとした。
模擬ワード線mimicWLは、この例の場合ワード線WLがセルアレイブロックの一方の端部からドライブされるので、これの抵抗や容量の環境に出来るだけ似るように、ワード線WLの場合と同様に一端部にワード線スイッチを備えて他端にまで連続するように配置される。模擬ワード線の本数は、同時に並列に書き込むビット線の数の倍の本数とこれと同時に書き込む参照ビット線の本数分である。
そして、各ワード線区分に、同時並列書き込みビット線数のBWB回路が配置される。
ビット線BLに並列同時書き込みが行われるワード線区分上のBWBに書き込みデータが送られ、これらのBWBでmimicWLがその位置で接続されてセルの書き込み状態をモニターする参照抵抗が設定される。
図34は、ビット線BLと同様に、ワード線WLもセルアレイブロックの両側から交互に引き出される場合について、ワード線区分とBWB配置の例を、図33に対応させて示している。
ワード線WLを交互にセルアレイ端両側から駆動するとき、セルアレイ上のビット線BLを固定してみると、これと交差するワード線WLが左から駆動されるか右から駆動されるかでそのビット線の属するワード線区分が変わる。ワード線区分が変わればBWBの寸法設定なども変わるので、BWBは左から駆動されるワード線用と右から駆動されるワード線用との2種を同じビット線への書き込みで使い分ける必要がある。
図34ではセルアレイブロックを左からの区分と右からの区分で二つに分けたような図を描いているが、実際は各ワード線毎にこのワード線区分の切り替えが起こることになる。また、左右駆動のワード線区分が渾然と重なるために、mimicWLやBWBとローカルバスも左右駆動ワード線に対応したものをそれぞれ設ける必要があり、図33の場合に比べて倍の数の要素が必要となる。
次に、ワード線区分に具体的な抵抗値を割り当てて、各区分でのセル書き込み動作をシミュレーションした結果を説明する。
図35に示すように、BWBの効果を見るために長いワード線WLを想定し、ワード線区分I,II,III,IVを設定し、これらの区分との関係で選択セル位置P1〜P6でのシミュレーションを行なった。ビット線BLの抵抗は3kΩで容量が0.2pFとし、ビット線スイッチから最も遠い位置のセルを考えた。
ワード線区分I―IVは具体的に、IがWL抵抗56kΩから112kΩの区間、IIは28kΩから46kΩの区間、IIIは28kΩから7kΩの区間、IVは7kΩまでの区間であり、ワード線の総容量は9pFとした。
WL抵抗が大きくなるにつれてWL区分の範囲が広がるのは、WL抵抗変化の率がWLの抵抗が大きい領域では小さくなるためである。言い換えれば、ワード線区分が広くなれば、それだけBWBの設定をこまめに変える必要がなくなる。
図36〜38は、BWBの効果を検討するために使用した回路システムの概要である。
図36に示すように、セルアレイブロックの同時書き込みのビット線BLに、セットセル(低抵抗状態のセル)とリセットセル(高抵抗状態のセル)を隣接させて設けて、セット状態の同時書き込みやリセット状態の同時書き込みで一方が状態を変化させ他方が状態を維持することを確認するようにした。
セットセルをリセット状態にする“set to reset”セルの遷移電圧は0.9V、リセットセルをセット状態にする“reset to set”セルの遷移電圧は2.0Vとした抵抗変化メモリのモデルを用いており、セット状態は100kΩ、リセット状態は3000kΩとしている。
図37に示すように、セルのワード線端はワード線区分をモデル化した端子I〜IVにワード線区分に対応して接続する。BWBにも対応するmimicWL1,1’及びmimicWL2,2’の回路の端子I〜IVにワード線区分に対応して接続する。このワード線のモデルはセル用のワード線WLと4つの模擬ワード線mimicWL、合計5つある。
図38に示すように、セルへの同時書き込み用に2つのBWB、セットセル用とリセットセル用BWBを設ける。そして、ワード線区分のそれぞれで端子を切り替えるとともに、その参照抵抗値を次のように設定している。
ワード線区分Iでは、R1=70kΩ、R2=1220kΩ、ワード線区分IIでは、R1=140kΩ、R2=620kΩ、ワード線区分IIIでは、R1=180kΩ、R2=740kΩ、ワード線区分IVでは、R1=260kΩ、R2=920kΩ。この値は一例として示したもので実際のシステムではそれぞれ設定する。
以下、図39〜50にシミュレーション結果の波形を示し、セルへの状態設定が問題なく行なわれることを示す。これらの図で、横軸は秒単位の時間、左縦軸はボルト単位の電位レベル、右縦軸はアンペア単位の電流を示す。
図39は、ワード線区分Iのセル位置P1(112kΩワード線の112kΩ位置)でのセット書き込みのシミュレーション結果である。(g)BL選択信号に示すように、ビット線選択信号が6Vに立ち上がって(タイミングt1)、ビット線へ書き込み電圧と電流が供給される。この結果リセット状態のセルのビット線は、(a)reset cell BLに示されるように4V近い電位になる。セット状態のセルではBWBのバイパス回路がオンして(タイミングt2)、100μA程度の電流が流れて、(b)set cell BLに示されるように2V以下のビット線電位になる。
(c)リセットセルのダイオードノード、(d)セットセルのダイオードノードも示されているが、ビット線電位レベルとの差から、リセットセルには2V程度の電圧がかかり、セットセルには電圧がかからないことが分かる。ワード線レベルは、(f)WLに示すように徐々に下がるが、ダイオードの2V近い電圧降下によりセルのワード線側のノードレベルが浮いているのが分かる。
2.5μs辺りでリセットセルがセット状態に遷移して抵抗が下がると(タイミングt3)、ビット線レベルが下がりそれとほぼ同時にバイパス回路がオンして、(e)bypass電流に示すように、200μA程度の電流が流れる。この電流バイパスの働きでセット状態のセルにはほとんど電圧がかからないことが分かる。
図40は、同じセル位置P1でのリセット書き込みのシミュレーション結果である。(g)BL選択信号が6Vに立ち上がって(タイミングt1)、ビット線へ書き込み電圧と電流が供給されると、(a)reset cell BL と(b)set cell BL に示すように、これらのビット線はほぼ同じ3.5V程度のレベルに立ち上がる。
(d)セットセルのダイオードノードの方が、電流が流れるだけ少し高いレベルであるが、(c)リセットセルのダイオードノードとともに、2.5V近辺のレベルでセルには1Vほどの電圧がかかる。
2.4μs辺りでリセットセルのバイパス回路がオンして(タイミングt2)、(e)bypass電流が100μA流れて、(a)reset cell BL のレベルが下がり、リセットセルの電圧は更に低下する。従って、リセットセルが状態変化を起こすことはない。
4.3μs辺りでセットセルがリセット状態に遷移して抵抗が上がるとバイパス回路がオンして(タイミングt3)、(e)bypass電流が150μA程度流れ、(b)set cell BL のレベルが低下する。これにより、リセット状態のセルに過剰な電圧がかからないようになる。即ち状態遷移後のセルに状態を更に遷移させるような電圧が印加されないようになる。
図41は、ワード線区分Iのセル位置P2(112kΩワード線の56kΩ位置)でのセット書き込みのシミュレーション結果である。
各ノードの変化の様子は、図39に示したセル位置P1の場合と同様であるが、リセットセルの状態遷移が1.3μs辺りで起こり(タイミングt3)、図39の場合と比べて1μs以上早くなっている。これはワード線抵抗による電圧降下の減少によりセル電圧が速やかにかかるようになったことによる。
図42は、同じセル位置P2でのリセット書き込みのシミュレーション結果である。各ノードの変化の様子は、図40のセル位置P1の場合とほぼ同様であるが、セル位置P2でのリセット書き込みでは、(g)BL選択信号が6Vに立ち上がってビット線へ書き込み電圧と電流が供給されると(タイミングt1)、(a)reset cell BL と(b)set cell BL はほぼ同じ3.5V程度のレベルにゆっくり立ち上がる。
(d)set cell のdiodeノードの方が電流が流れるだけ少し高いレベルであるが、(c)reset cellのdiodeノードとともに2.5V近辺のレベルでセルには1Vほどの電圧がかかる。
700ns辺りでセットセルがリセット状態に遷移して(タイミングt2)、(d)set cell diode ノードのレベルが(c)reset cell diode ノードのレベルに一致して2V以下になり、ゆっくりと下がる。
リセットセルにかかる電圧は徐々に大きくなり、セット状態に移行する遷移電圧Vsetに近くなる2μs辺りで、リセットセルとセットセル用のBWBのバイパスがほぼ同時にオンして(タイミングt3)、(e)bypass電流が140μA程度流れる。これで ビット線のレベルが下がりリセットセルの電圧は低下して、Vset以下に抑えられて、リセットセルが状態変化を起こすことはない。しかし、状態遷移を生じる電圧Vsetぎりぎりとなり、これ以上このワード線区分を維持できないことが分かる。
図43は、ワード線区分IIのセル位置P3(56kΩワード線の56kΩ位置)でのセット書き込みのシミュレーション結果である。
各ノードの変化の様子はセル位置P1の図39の場合と同様である。リセットセルの状態遷移は1.6μs辺りで起こり(タイミングt3)、図39のそれより1μs程度早くなっているが、図41のセル位置p2の場合より遅い。これはワード線抵抗による電圧降下の減少によりセル電圧が速やかにかかるようになったことと、mimic WLの抵抗が下がったのでその分電源からのmimicWLに流れる電流が増えビット線への電圧供給がすぐとなりのセル位置P2の場合より下がったことによる。
図44は、同じセル位置P3でのリセット書き込みのシミュレーション結果である。
各ノードの変化の様子はセル位置P1の場合と同様であるが、セットセルの状態遷移が1μs辺りで起こり(タイミングt3)、図40と比べて3μs以上早くなっている。これはワード線抵抗による電圧降下の減少によりセル電圧が速やかにかかるようになったことによる。
また、リセットセルのバイパス回路がオンするのも、タイミングt1で(g)BL選択信号によりビット線がつながった直後のタイミングt2で生じるようになっており、これは図40の場合と比べて2μs以上早くなっている。これは各ノードの電位変化が抵抗減少により速やかになったことによる。
図45は、ワード線区分IIIのセル位置P4(28kΩワード線の28kΩ位置)でのセット書き込みのシミュレーション結果である。
各ノードの変化の様子はセル位置P1の場合と同様であるが、リセットセルの状態遷移が1μs辺りで起こり(タイミングt3)、図39の場合と比べて1.5μs程度早くなっている。これはワード線抵抗による電圧降下の減少によりセル電圧が速やかにかかるようになったことによる。
図46は、同じセル位置P4でのリセット書き込みのシミュレーション結果である。
各ノードの変化の様子はセル位置P1と同様であるが、セットセルの状態遷移が400ns辺りで起こり(タイミングt3)、図40の場合と比べて4μsほど早くなっている。これはワード線抵抗による電圧降下の減少によりセル電圧が速やかにかかるようになったことによる。
また、リセットセルのバイパス回路がオンするのも、(g)BL選択信号によりビット線がつながるタイミングt1の直後のタイミングt2で生じるようになっている。これも図44の場合と同様、ワード線抵抗減少の効果である。
図47は、ワード線区分IVのセル位置P5(7kΩワード線の7kΩ位置)でのセット書き込みのシミュレーション結果である。
各ノードの変化の様子はセル位置P1の場合と同様であるが、リセットセルの状態遷移が500ns辺りで起こり(タイミングt3)、図39の場合と比べて2μs程度早くなっている。これはワード線抵抗による電圧降下の減少によりセル電圧が速やかにかかるようになったことによる。
図48は、同じくセル位置P5でのリセット書き込みのシミュレーション結果である。
各ノードの変化の様子はセル位置P1の場合と同様であるが、セットセルの状態遷移が約400ns辺りで起こり(タイミングt3)、図40の場合と比べて4μsほど早くなっている。これはワード線抵抗による電圧降下の減少によりセル電圧が速やかにかかるようになったことによる。
しかし、セル位置P4とほぼ同じであるのはワード線区分の幅が小さくなっていることによる。また、リセットセルのバイパス回路がオンするのも、BL選択信号によりBLがつながった直後に生じるようになっている。これは各ノードの電位変化が抵抗減少により速やかになったことによる。
図49は、ワード線区分IVのセル位置P6(7kΩワード線の0kΩ位置)でのセット書き込みのシミュレーション結果である。
各ノードの変化の様子はセル位置P1の場合と同様であるが、リセットセルの状態遷移が450ns辺りで起こり(タイミングt3)、図39の場合とくべて2μs以上早くなっている。これはワード線抵抗による電圧降下の減少によりセル電圧が速やかにかかるようになったことによる。
図50は、同じセル位置P6でのリセット書き込みのシミュレーション結果である。
各ノードの変化の様子はセル位置P1の場合と同様であるが、セットセルの状態遷移が300ns辺りで起こり(タイミングt2)、図40の場合と比べて4μs以上早くなっている。これはワード線抵抗による電圧降下の減少によりセル電圧が速やかにかかるようになったことによる。
しかし、セル位置P4とほぼ同じであるのはワード線区分の幅が小さくなっていることによる。また、リセットセルのバイパス回路がオンするのも、BL選択信号によりBLがつながった直後に生じるようになっている。これは各ノードの電位変化が抵抗減少により速やかになったことによる。
以上のシミュレーション結果から、ワード線区分によって書き込みの時間が大きく変化することがわかる。検証に用いたシステムではリセット状態をセット状態にする書き込みで、ワード線末端で2.5μsを要したものが、ワード線のドライブ端側で2μsも早くなっている。また、セット状態をリセット状態にする書き込みでは、ワード線末端で4.5μsを要したものが、ワード線のドライブ端側で4μsも早くなっている。
これは、ワード線のどの位置のセル領域にデータを書き込むかによってスピード仕様を変えてメモリを利用すれば、データ転送効率を最大限に利用できることを意味する。
例えば図51に示すように、ワード線区分IとIIを低速アクセス領域、ワード線区分IIIとIVを高速アクセス領域として、それぞれの対応アドレス領域でスピード仕様を変えるのである。メモリを高速で利用したい場合は高速アクセス領域のアドレスを使用する。但し高速アクセス領域の総メモリ領域に占める割合は図から分かるように半分以下である。
対応するアドレスは同じワード線上について、ビット線のアドレスによって分かれることになる。