JP5204462B2 - 落石防護施設 - Google Patents
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(1)補強盛土と擁壁を主体とする落石防護用堤体にあっては、階層的に補強盛土を構築することに労力を要することと、緩衝性能を高めるために堤体の据付面積を大きく確保して大型堤体を構築しなければならないといった改善すべき点がある。
(2)エアーモルタルやエアーミルクを使用した落石防護用堤体にあっては擁壁パネルに直接作用するエアーモルタル等の発泡圧に対抗するため、複数の擁壁パネル間を強固に連結しなければならないことと、落石時に堤体が側方に膨張変形する際に、堤体と擁壁パネル間が分離しないように一体化対策を講じておく必要がある。
エアーモルタルやエアーミルクはセメント使用量の多いことにくわえて、上記したような擁壁パネル間の剛結や一体化対策にコストが嵩むことから、全体コストが高くつくといった問題がある。
さらに、落石時に硬化したエアモルタル等にクラックが入り易いために、それ以降の落石に対する緩衝性能が著しく低下するといった問題もある。
さらに本発明の目的は、落石時における擁壁への側圧を低減して擁壁の負荷を軽減できる落石防護施設を提供することにある。
さらに本発明の目的は、建造コストの低減が可能な落石防護施設を提供することにある。
本発明は上記した何れかひとつの落石防護施設を提供することにある。
本願の第2発明は、前記第1発明において、前記緩衝堤体の内部にグリット材を埋設し、該グリット材が擁壁から絶縁していることを特徴とする、落石防護施設を提供する。
本願の第3発明は、前記第1発明または第2発明において、前記受撃分散層を緩衝堤体の上面で緩衝堤体の長手方向沿って並列に載置した複数の衝撃分散バッグと、前記衝撃分散バッグ群の上に載置した複数の緩衝バッグとにより構成し、前記衝撃分散バッグは外力が加わると締め固まる単粒構造の中詰材を収容し、前記緩衝バッグは外力が加わっても締め固まらない粉体製の中詰材を収容して構成されていることを特徴とする、落石防護施設を提供する。
本願の第4発明は、前記第1発明乃至第3発明の何れかにおいて、前記擁壁が緩衝絶縁層を付設した複数の壁面パネルで構成されていることを特徴とする、落石防護施設を提供する。
そのため、緩衝堤体に衝撃力が作用したときにクラックの発生を抑えられるだけでなく、堤体の塑性変形も効果的に抑制できるので、従来の補強盛土製の堤体やエアーモルタルやエアーミルク製の堤体と比較して、緩衝性能を大幅に改善することができる。
(2)殊に緩衝堤体のクラック発生を確実に抑えられるので、落石が繰り返し作用しても優れた緩衝性能を持続できるので、長期に亘って緩衝性能を保証することができる。
(3)緩衝堤体にグリッド材を埋設すると、グリッド材と短繊維との相乗作用によりクラック発生の抑制効果と緩衝性能をさらに高めることができる。
(4)受撃分散層による緩衝堤体への衝撃の吸収分散作用と、緩衝堤体に混入した短繊維、または短繊維とグリッド材により緩衝堤体自体の横方向へ向けた膨張変形の拘束作用及び緩衝作用と、緩衝堤体と擁壁の間に介装した緩衝絶縁層の緩衝作用による複数の相乗的な作用によって、衝撃吸収性能の向上と、擁壁の負荷低減の両立を実現することができる。
殊に、緩衝堤体の側圧を緩衝堤体と擁壁の間に介装した緩衝絶縁層のみで吸収するのではなく、緩衝堤体自体に発生する側圧を低減できるので、擁壁の強度を従来と比較して低く設計することができる。
(5)緩衝堤体はセメントが貧配合であり、土砂も現地発生土を有効活用できるので資材コストが低く抑えられる。
さらに施工期間も短くて済むので、施設建造コストの削減を図ることができる。
(6)緩衝堤体の上面に設ける受撃分散層を緩衝バッグと衝撃分散バッグとの積層体で構成することで、落石の衝撃力を事前に吸収するとともに、締め固まった衝撃分散バッグを介して落石の衝撃力を緩衝堤体の広範囲に分散させて吸収することができる。
(7)先行して急速施工した擁壁のみでも落石の防護作用を期待することができる。
(8)緩衝堤体を打設する際に、落石の危険性がある擁壁の内部に作業者が立ち入る機会を大幅に少なくできて、作業の安全性を確保することができる。
図1,2に本発明に係る落石防護施設の一例を示す。
落石防護施設は、斜面10の裾部11に立設した支柱12に支持させた擁壁20と、擁壁20の背面側に設けた緩衝堤体30と、緩衝堤体30の上面に載置した受撃分散層40とから構成されている。
基礎コンクリート13に所定の間隔を隔てて立設した支柱12は、例えばH形鋼等の鋼材である。
本発明に係る落石防護施設は後述するように、受撃時において擁壁20に対する側圧が緩和されて伝達されるため、支柱12の曲げ強度や擁壁20を構成する壁面パネル21間の連結強度を過剰に大きく設計しないで済む。
擁壁20は複数のプレキャスト製の壁面パネル21で構成される。
図3に示すように本例で使用する壁面パネル21は、矩形のパネル本体22と、パネル本体22の背面に所定の間隔を隔てて突出させて一体成形した複数の張出部23,23と、パネル本体22の裏面に一体に付設した緩衝絶縁層50とを有する。
支柱12と各壁面パネル21の一体化の形態は図4に例示した形態に限定されず公知の固定形態を適用することができる。
本発明で使用する壁面パネル21の特徴のひとつは、パネル本体22の裏面全面、および張出部23,23の裏面に緩衝絶縁層50を一体に付設したことである。
緩衝絶縁層50は壁面パネル21と緩衝堤体30の間を構造的に絶縁するとともに、壁面パネル21へ向けて作用する緩衝堤体30の土圧や変形力を自己の変形性能により緩衝することを目的とした部材である。
緩衝絶縁層50を壁面パネル21に付設するには、例えば接着等の手段により緩衝絶縁層50の変形を許容する状態で固定してあればよい。
一つ目の理由は、壁面パネル21を積上げて擁壁20を構築するだけで、緩衝絶縁層50の設置工も同時に行なえ、施工工程の省略に伴う現場での作業時間と労力の削減を図り、急速施工を実現するためである。
二つ目の理由は、擁壁20を型枠に利用して緩衝堤体30を構築する関係から、擁壁20と緩衝堤体30間の狭小な空間域に別途に土砂等の緩衝材を充填することが技術的に難しいだけでなく、充填ムラを生じ易い。このような不具合を解消するために壁面パネル21に緩衝絶縁層50を予め一体化した。
緩衝絶縁層50の他の素材としては緩衝性を有するウレタン等の公知の素材を適用することができる。
緩衝堤体30は、土砂を主体とし、これに短繊維と水と貧配合のセメントと気泡剤(または発泡ビーズ)を混合した軽くて自立性のある気泡混合軽量土からなる。土砂は現地発生土、購入土、廃材等を使用できる。
短繊維を混入したのは、土粒子間の結合力を高めて、緩衝堤体30に柔軟性と塑性(粘り)を付与し、堤体全体としての一体性及び柔軟性を向上させ、最終的に緩衝堤体30に衝撃が加わったときにクラックの発生を抑制するためと、緩衝性能(耐衝撃性能)を高めるためである。
グリッド材31としては耐久性と引張強度に優れた「ロックデム」(前田工繊株式会社製)が好適であるが、公知のジオグリッドも使用可能である。
また一般の二方向に交差させて網状に形成されるグリッド材31は、一方向に対してのみ芯材が埋設してあるタイプと、二方向に芯材が埋設してあるタイプがあるが、前者の場合は上下のグリッド材31の間で引張方向が互いに直交するように交差させて敷設するとよい。
何れの場合も、緩衝堤体30の長手方向に向けてグリッド材31が敷設してあればよい。
敷設作業性の関係から、便宜的に支柱12にグリッド材31の一端を接続する。
グリッド材31の一端を支柱12に接続するには、例えば図4に示すように支柱12に多段的に横架した補助材14にグリッド材31の一端を折り返して巻き掛け、その折り返し重合部にコイルを巻き付けて連結する。
そこで、図1,2に示すように緩衝堤体30の斜面側と上面側を遮水シート32で被覆するとともに、緩衝堤体30の上下部に排水管33を設けるとよい。
受撃分散層40は緩衝堤体30に作用する落石による衝撃力を吸収しつつ分散させる為の袋詰めによる半一体化した柔軟な層で、本例では緩衝堤体30の上面で緩衝堤体30の長手方向沿って並列に載置した複数の衝撃分散バッグ41と、衝撃分散バッグ41群の上に載置して敷き詰めた複数の緩衝バッグ45とにより受撃分散層40を構成する場合について説明する。
両バッグ41,45を構成する袋体42,46は、引張強度に優れた素材で形成してある。
つぎに落石防護施設の構築方法について説明する
図5に示すように、基礎コンクリート13に所定の間隔を隔てて支柱12を立設し、各支柱12の前面に緩衝絶縁層50付きの壁面パネル21を順次積上げて擁壁20を構築する。
擁壁20の両側と斜面10との間にも、壁面パネル21、或いは別途のパネルを組み付けて閉鎖空間を形成する。
その結果、壁面20の背面全面は緩衝絶縁層50で覆われている。
つぎに図6に示すように、土砂と短繊維と水と貧配合のセメントと気泡剤(または発泡ビーズ)を混合した流動性を有する気泡混合軽量土を、型枠を兼ねた擁壁2の内側と遮水シート32で覆った斜面10との間の空間域に打設して所定の高さの緩衝堤体30を構築する。
緩衝堤体30の上下部の所定の位置にそれぞれ排水管33を配置する。
図7に示すように、硬化した緩衝堤体30の上面に、緩衝堤体30の長手方向沿って複数の衝撃分散バッグ41を並列に載置する。
衝撃分散バッグ41群の上に複数の緩衝バッグ45を敷き詰めて、受撃分散層40を得る。
また、擁壁20上部の背面と緩衝バッグ45の間に形成された隙間には、軽量なエアーミルクを打設して隔壁48を構築する。
必要に応じて支柱12を利用して耕地の防護柵14を構築する。
つぎに図2に基づいて落石防護施設に落石が衝突したときの緩衝作用について説明する。
落石防護施設に向けて落石が落下すると、その衝撃力は緩衝バッグ45を経て受撃分散層40に作用する。
受撃分散層40に作用した一部の衝撃力は、上位の緩衝バッグ45の緩衝作用により吸収される。
衝撃分散バッグ41においても落石の衝撃力はある程度緩衝はされるが、外力の作用に伴い長尺状の衝撃分散バッグ41の全体が土塊状に硬くなる。
その結果、落石の衝撃力は衝撃分散バッグ41の全長が接触する緩衝堤体30の広範囲な当接面に分散して伝達される。
既述したように緩衝堤体30はクラックの発生し易いエアーモルタルやエアーミルクを使用した堤体ではない。
そのため、受撃分散層40を介して衝撃力が作用すると、緩衝堤体30は衝撃力が作用した範囲の土砂が圧密変形と塑性変形をする。このとき、土中に混入した短繊維とグリッド材31が協働して土粒の圧密変形と塑性変形に抵抗するとともに、緩衝堤体30の変形時にクラックがほとんど生じることがない。
土砂自体が有する本来の緩衝作用にくわえて、短繊維とグリッド材31の相乗作用により、クラックの発生を抑止できるだけでなく、緩衝堤体30の塑性変形も効果的に抑制することができるので、緩衝堤体30に作用した衝撃力が効果的に減衰される。
より詳細には、落石が繰り返し落下しても緩衝堤体30が例えて言えばスポンジの如き弾力性を持続できるから、落石の防護機能を喪失しない
擁壁20に向けて生じた側圧は、擁壁20の背面に付設した緩衝絶縁層50の変形により吸収されるため、擁壁20に直接作用することがなくなる。
すなわち、短繊維とグリッド材31と緩衝絶縁層50の3つの部材の相乗作用により、擁壁20へ向けた側圧を著しく低減することが可能となる。
図8にグリッド材31の埋設形態の異なる緩衝堤体30を具備した落石防護施設のモデル図を示す。
本例では、緩衝堤体30の擁壁20側の縦方向に向けてグリッド材31bを追加して埋設したものである。
本例では水平に敷設したグリッド材31aに連続してグリッド材31bを縦方向に向けて埋設する場合について説明するが、水平のグリッド材31aと縦に向けたグリッド材31bを分離して埋設する場合もある。
殊に両方向のグリッド材31a,31bが連続していると、受撃時に水平のグリッド材31aの撓み変形に伴い発生する引張力が、縦向きのグリッド材31bに伝わる結果、縦向きのグリッド材31bが緩衝堤体30を内側に包み込むように緊張されるので、緩衝堤体30の側圧低減効果が格段に向上するといった利点が得られる。
擁壁20は複数のプレキャスト製の壁面パネル21で構成することに限定されず、一枚ものの擁壁であってもよい。この場合、擁壁20の背面に緩衝絶縁層50が付設された形態が得られるのであれば、擁壁20はプレキャスト製、或いは現場施工の何れのタイプであってもよい。
12・・・・・・支柱
20・・・・・・擁壁
21・・・・・・壁面パネル
30・・・・・・緩衝堤体
31・・・・・・グリッド材
40・・・・・・受撃分散層
41・・・・・・衝撃分散バッグ
45・・・・・・緩衝バッグ
50・・・・・・緩衝絶縁層
Claims (4)
- 型枠を兼ねた擁壁の背面側に緩衝堤体を形成し、緩衝堤体の上面に受撃分散層を載置して構成する落石防護施設であって、
前記緩衝堤体が土砂を主体とし、これに受撃時に緩衝堤体のクラック発生の抑制と堤体の塑性変形を抑制する短繊維と、水と、添加剤として貧配合のセメントと、気泡剤とを混合した塑性変形が可能な気泡混合軽量土からなり、
前記擁壁の裏面に予め付設した緩衝絶縁層を擁壁と緩衝堤体との間に介装させて緩衝堤体と擁壁とを絶縁したことを特徴とする、
落石防護施設。 - 請求項1において、前記緩衝堤体の内部にグリット材を埋設し、該グリット材が擁壁から絶縁していることを特徴とする、落石防護施設。
- 請求項1または請求項2において、前記受撃分散層を緩衝堤体の上面で緩衝堤体の長手方向沿って並列に載置した複数の衝撃分散バッグと、前記衝撃分散バッグ群の上に載置した複数の緩衝バッグとにより構成し、前記衝撃分散バッグは外力が加わると締め固まる単粒構造の中詰材を収容し、前記緩衝バッグは外力が加わっても締め固まらない粉体製の中詰材を収容して構成されていることを特徴とする、落石防護施設。
- 請求項1乃至請求項3の何れかにおいて、前記擁壁が緩衝絶縁層を付設した複数の壁面パネルで構成されていることを特徴とする、落石防護施設。
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